JP2004201648A - 遺伝子のスクリーニング方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】数万から数十万の分子量のタンパク質をコードする遺伝子ライブラリーの中から、目的とするタンパク質をコードする遺伝子を短時間且つ容易に単離することが可能な遺伝子のスクリーニング方法の提供。
【解決手段】下記工程を行う。
第1工程:被検遺伝子を細胞に導入し、その細胞の表面にタンパク質を発現させる。
第2工程:液中において、第1工程で得られたタンパク質発現細胞を、該タンパク質と結合するリガンド、および高分子とを介して磁性粒子に結合させる。
第3工程:第2工程の反応液から、タンパク質発現細胞と結合した磁性粒子を回収する。
第4工程:第3工程で回収された磁性粒子に結合したタンパク質発現細胞の表面に発現したタンパク質をコードする遺伝子を解析する。
【選択図】 なし
【解決手段】下記工程を行う。
第1工程:被検遺伝子を細胞に導入し、その細胞の表面にタンパク質を発現させる。
第2工程:液中において、第1工程で得られたタンパク質発現細胞を、該タンパク質と結合するリガンド、および高分子とを介して磁性粒子に結合させる。
第3工程:第2工程の反応液から、タンパク質発現細胞と結合した磁性粒子を回収する。
第4工程:第3工程で回収された磁性粒子に結合したタンパク質発現細胞の表面に発現したタンパク質をコードする遺伝子を解析する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は遺伝子のスクリーニング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
目的とするタンパク質をコードする未知の遺伝子を、DNAライブラリーの中から単離するためには、これまでバクテリオファージが用いられてきた。この方法はファージディスプレイ法と呼ばれ、抗原の抗体結合部位、抗原のエピトープ部位、または生理活性ペプチドなどをコードする遺伝子のスクリーニングに用いられている。
【0003】
ファージディスプレイ法は、通常次の工程を有する。
第1工程:DNAライブラリー中のDNA配列(以下「配列(1)」という)を、バクテリオファージのコートタンパク質をコードするDNA配列に連結することにより、配列(1)がコードするタンパク質をバクテリオファージ表面へ発現させる。
第2工程:予めリガンドが固定された固相に、タンパク質が発現したバクテリオファージを特異的に固定する。
第3工程:固相の洗浄により、固相に非特異的に吸着されているバクテリオファージを分離する。
第4工程:特異的に固相に固定されているバクテリオファージを分離する。
通常、この第1〜第4工程を一度行っただけでは目的とするタンパク質を発現したファージの割合が低い場合が多く、さらに、第4工程で分離されたバクテリオファージを大腸菌に感染、増殖させた後、再度第2工程〜第4工程を繰り返す必要があった。
【0004】
しかしながら、ファージディスプレイ法においてはバクテリオファージを用いるため、その表面に発現させることができるタンパク質は、比較的低い分子量のものに限られていた。また、前述の濃縮工程には煩雑な操作と数週間の時間が必要である。
【0005】
【非特許文献1】
サイエンス(Science)(1985年):228巻,1315〜1317頁
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上の記述からも明らかなように、本発明の課題は、数万から数十万ダルトンと云った比較的大きな分子量のタンパク質をコードする遺伝子のライブラリーであってもその中から、目的とするタンパク質をコードする遺伝子を短時間且つ容易に単離することが可能な遺伝子のスクリーニング方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の従来技術の課題に鑑み鋭意研究を重ねた。その結果、細胞の表層にタンパク質を発現させ、この細胞と、液中において、目的とするタンパク質と結合するリガンド、および高分子とを介して磁性粒子に結合させ、次いで、該磁性粒子を回収することにより、数万から数十万ダルトンと云った比較的大きな分子量を有するタンパク質を発現した細胞であっても効率良く濃縮できることを見出した。さらに、一度濃縮した細胞は直ちに再度培養することが出来るため、数回のスクリーニング工程が数日で完了することを見出した。本発明者らはこれらの知見に基づき本発明を完成させた。
【0008】
本発明を以下の構成を有する。
(1)下記工程を有することを特徴とする遺伝子のスクリーニング方法。
第1工程:被検遺伝子を細胞に導入し、その細胞の表面にタンパク質を発現させる。
第2工程:液中において、第1工程で得られたタンパク質発現細胞を、該タンパク質と結合するリガンドと高分子とを介して磁性粒子に結合させる。
第3工程:第2工程の反応液から、タンパク質発現細胞と結合した磁性粒子を回収する。
第4工程:第3工程で回収された磁性粒子に結合したタンパク質発現細胞の表面に発現したタンパク質をコードする遺伝子を解析する。
【0009】
(2)第3工程で回収された磁性粒子と結合しているタンパク質発現細胞を培養し、得られた菌体を、第1工程で得られたタンパク質発現細胞に代えて再度第2工程以降の工程を行うことを特徴とする前記第1項記載の遺伝子のスクリーニング方法。
【0010】
(3)細胞が酵母細胞である前記第1項記載の遺伝子スクリーニング方法。
【0011】
(4)細胞の表面に発現するタンパク質が抗体である前記第1項記載の遺伝子スクリーニング方法。
【0012】
(5)細胞の表面に発現するタンパク質が生理活性を有するタンパク質である前記第1項記載の遺伝子スクリーニング方法。
【0013】
(6)リガンドが薬効を有する化合物である前記第1項記載の遺伝子スクリーニング方法。
【0014】
(7)磁性粒子の平均粒子径が1〜1000nmの範囲である前記第1項記載の遺伝子スクリーニング方法。
【0015】
(8)高分子が刺激応答性高分子である前記第1項記載の遺伝子スクリーニング方法。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の第1工程は、被検遺伝子を細胞に導入し、該細胞の表面にタンパク質を発現させる工程である。
第1工程に用いる被検遺伝子は遺伝子ライブラリーを事前に調製し、これを用いることが好ましい。本発明において遺伝子ライブラリーの調製方法は特に限定されるものではなく、当技術分野で周知の方法に従えば良い。例えば抗体遺伝子ライブラリーを調製する場合、抗体遺伝子は、リンパ球 mRNA から抗体をコードする cDNA を調製することによって入手することができる。
【0017】
本発明に用いる被検遺伝子は特に限定されるものではないが、具体的には、人や動物の細胞から調製した cDNA などが挙げられる。
本発明においては、被検遺伝子を細胞に導入することによって発現されるタンパク質の種類は特に限定されるものではないが、例えば、抗体、酵素、受容体、生理活性を有するタンパク質、ペプチド、およびそれらに結合するリガンドを挙げることができる。
【0018】
第1工程に用いる細胞は、その表面にタンパク質を発現させることの出来るものなら何れのものであってもよい。具体的には、昆虫細胞、動物細胞、大腸菌細胞、乳酸菌細胞、および酵母細胞等を挙げることが出来る。
特に、真核生物由来のタンパク質を発現させる場合には、酵母細胞、昆虫細胞、または動物細胞を用いることが好ましい。その中でも取り扱いが容易な点を考慮すると酵母細胞を用いることが最も好ましい。
【0019】
被検遺伝子を細胞に導入し、該細胞の表面にタンパク質を発現させるには、まず、表層発現用の種々ベクターを宿主に合わせて適宜選択し、選択されたベクターに被検遺伝子を導入する必要がある。
本発明に使用可能なベクターは、プロモーター、選択マーカー、分泌シグナル、発現すべきタンパクをコードする遺伝子を導入するためのクローニング部位、表層に固定化するためのタンパク等からなる。この様なベクターとしては、例えばアプライド マイクロバイオロジー アンド バイオテクノロジー(Appl Microbiol Biotechnol)(2001年)57巻:500〜505頁にあるようなプラスミドpMWIZ1などを挙げることができる。プラスミドpMWIZ1の場合には、該プラスミドのZZをコードする遺伝子の代わりに被検遺伝子を導入すればよい。
【0020】
本発明の第2工程は、液中において、第1工程で得られたタンパク質発現細胞を、該タンパク質と結合するリガンドと高分子とを介して磁性粒子に結合させる工程である。
発現したタンパク質と結合するリガンドは、該タンパク質の種類により異なることから、本発明においては特に限定されるものではないが、例えば、酵素等の基質、酵素反応の生成物とその類似体、抗原、抗体、ペプチド、および生理活性物質を挙げることができる。本発明において、目的とするタンパク質と反応するリガンドを用いれば、目的とするタンパク質およびそれをコードする遺伝子を特異的に濃縮することが可能である。
【0021】
さらに本発明においては、リガンドとして薬効を有する化合物(以下「薬物」という)を用いることができる。例えば、新規の薬物の生体における薬効発現部位が未知の場合、被検遺伝子として生体から抽出した遺伝子を用い、且つリガンドとして該薬物を用いれば、該薬物の生体における薬効発現部位の遺伝子を得ることが可能であり、該薬効発現部位を特定することが可能となる。その場合には、生体からmRNA などを鋳型として cDNA を合成し、前述のベクター上に導入すればよい。
【0022】
本発明に使用する磁性粒子は、磁石で回収することの出来るものであれば何れのものであっても使用することができる。タンパク質とリガンドとの認識性を高めるためには、その平均粒径は1〜1000nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜200nmの範囲であることが好ましい。
【0023】
磁性粒子の素材として具体的には、マグネタイト粒子の他、酸化ニッケル粒子、フェライト粒子、コバルト鉄酸化物、バリウムフェライト、炭素鋼、タングステン鋼、KS鋼、希土類コバルト磁石の微粒子およびヘマタイトなどを挙げることができる。
これら磁性粒子の調製方法は特に限定されるものではない。例えば、マグネタイトの調製方法としては、オレイン酸とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いて、マグネタイトを二重のミセルとし、水溶液中に分散させる方法(バイオカタライシス(Biocatalysis)1991年、第5巻、61〜69頁)を挙げることができる。
【0024】
本発明に用いる高分子は特に限定されるものではないが、熱、pH、塩濃度、光、または電気などの刺激に対して反応し、液中において特定の条件で析出若しくは溶解するいわゆる刺激応答性高分子であることが好ましい。リガンドと磁性粒子との結合を介する高分子が刺激応答性高分子である場合には、磁性粒子の回収率が高い。
【0025】
刺激応答性高分子としては、下限臨界溶液温度を有するポリ−N−イソプロピルアクリルアミドや、上限臨界溶液温度を有するN−アセチルアクリルアミドとアクリルアミドとの共重合体、N−ホルミルアクリルアミドとアクリルアミドとの共重合体、およびN−アクリロイルグリシンアミドと重合性ビオチンとの共重合体などを挙げることができる。熱応答性高分子以外の高分子としては、pH応答性を示すアクリル酸のホモポリマー及びコポリマーなどを挙げることができる。刺激応答性高分子の中でも、上限臨界溶液温度、または下限臨界溶液温度を有する高分子は、分散状態か凝集状態かを温度により容易に制御でき、またその刺激の生体への影響が小さいことから本発明に最も好ましく使用することができる。
【0026】
第1工程で得られたタンパク質発現細胞を、リガンドと高分子とを介して磁性粒子に結合させる方法は、液中において行われるものであれば特に限定されるものではない。前記方法は化学反応による固定であってもよく、物理的な固定であってもよい。前記方法として例えば、予めリガンドを、高分子を介して磁性粒子に固定することでリガンド固定化磁性粒子を調製し、これと該タンパク質発現細胞とを液中において混合する方法を挙げることができる。また、リガンドを予めビオチン化しておき、タンパク質発現細胞に結合させ、ストレプトアビジンまたはアビジンを介して、ビオチン化した磁性粒子と混合する方法を挙げることができる。
【0027】
リガンドを、高分子を介して磁性粒子に固定する方法は特に限定されるものではないが、重合性を持つ様にリガンドを予めモノマー化しておき、高分子のモノマーと共に磁性粒子の存在下で共重合させる方法、または、カルボン酸、アミノ基、エポキシ基などの官能基を持つモノマーと高分子のモノマーとを用いて磁性粒子の存在下で共重合を行い、得られた共重合体に、当技術分野で周知の方法に従ってリガンドを該共重合体と結合させ、磁性粒子に固定する方法を挙げることができる。
【0028】
本発明に使用できる液としては細胞培養培地、緩衝液、および生理食塩水などを挙げることができる。その中でも、緩衝液は本発明に好ましく使用することができる。細胞培養培地としては、LB(Luria-Bertani)培地、ポテトデキストロース(PD)培地、グルコース・カザミノ酸(SDC)培地、動物細胞または昆虫細胞用無血清または血清培地を挙げることができる。緩衝液としては、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水、トリス緩衝液、ヘペス緩衝液、ホウ酸緩衝液、および酢酸緩衝液などを挙げることができる。
【0029】
本発明の第3工程は、第2工程で得られた反応液から、タンパク質発現細胞と結合した磁性粒子(以下「細胞結合磁性粒子」と云うことがある。)を回収し、タンパク質発現細胞を分離する工程である。
回収の方法は特に限定されるものではないが、本発明においては、磁石などの磁力を用いて細胞結合磁性粒子を集め分離する方法であれば、該細胞結合磁性粒子を選択的に分離することができる。高分子が刺激応答性高分子である場合には、磁力をかける前に、反応液を刺激応答性高分子が凝集する状態とすることが好ましい。
【0030】
細胞結合磁性粒子と共に反応液から分離されるタンパク質発現細胞の中には、リガンドとは反応しないもの、即ち、目的とするタンパク質とは異なるタンパク質を発現している細胞(以下「目的外タンパク質発現細胞」と云うこともある。)が存在する場合もある。細胞結合磁性粒子と共に分離されるタンパク発現細胞中の、目的外タンパク質発現細胞の割合を下げるためには、回収後の細胞結合磁性粒子を緩衝液に添加、拡散後、再度凝集、分離する洗浄操作を行えばよい。この洗浄操作を複数回行えば、目的外タンパク質発現細胞の割合を大幅に低下させることができる。
【0031】
しかしながら、洗浄操作のみで目的外タンパク質発現細胞の割合をゼロ、またはそれに近い値とすることは困難である。目的外タンパク質発現細胞の割合を極力減らしたい場合には、洗浄操作と共に、後述の再培養操作を行うことが好ましい。
【0032】
再培養操作とは、第3工程で回収された細胞結合磁性粒子、または該細胞結合磁性粒子から分離された細胞を適当な培地に添加して、該培地にて細胞結合磁性粒子と結合した細胞を培養し、この培養液を第1工程で得られた細胞に代えて、本発明の第2工程、第3工程を行う一連の操作のことである。この再培養操作を1回のみならず複数回行うことにより、目的外タンパク質発現細胞の割合をさらに下げることができる。
【0033】
本発明の第4工程は、第3工程で回収された細胞結合磁性粒子に結合したタンパク質発現細胞の表面に発現したタンパク質をコードする遺伝子を解析する工程である。遺伝子の解析方法は特に限定されるものではなく、当技術分野で周知の方法に従って解析すればよい。解析に際し、プラスミドを抽出する場合には、当技術分野で周知の方法に従ってプラスミドを抽出すればよい。例えば、宿主が大腸菌である場合は、アルカリ−SDS法によりプラスミドを抽出することができる。また、宿主が酵母である場合には、酵素処理等により細胞壁を弱めた後スフェロプラストをSDSで破壊することによりプラスミドを抽出することができる。次いで、該プラスミド中の目的とする遺伝子をコードする部分を当技術分野で周知の方法に従って解析すればよい。
【0034】
本発明の第2工程および第3工程は、第1工程で得られたタンパク質発現細胞の濃縮工程とも云うことができ、第1工程から第3工程までは目的とする遺伝子の濃縮方法であるとも云うことができる。
【0035】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されることはない。
《プラスミドの調製方法》
本発明に使用したプラスミドの調製方法を以下に示す。
<プラスミドpWI3αの調製>
分泌シグナルαファクターをコードする遺伝子を、2種のプライマー(5' - AACGAG ATC TAT GAG ATT TCC TTC AAT TTT TAC TGC AGT T - 3', 5' - GCC AGT CGA CTC TTT TAT CCA AAG ATA CCC CTT CTT CTT TAG - 3' )を用い、サッカロマイセス セレビシエW3031B(Saccharomyces cerevisiae W3031B)のゲノムを鋳型としてPCRで増幅した。PCR増幅産物とプラスミドpWI3{アプライドマイクロバイオロジーアンドバイオテクノロジー;Appl. Microbiol. Biotechnol. 44巻, 759〜765頁(1996年)}とを、制限酵素であるBglIIとSalIで切断し、電気泳動後ゲルより精製を行った。PCR増幅産物を、プラスミドpWI3に組み込みプラスミドpWI3αを構築した。
【0036】
<プラスミドpWI3αFloの調製>
酵母の凝集に関与し表層に発現される事で知られるタンパクFlo1のGPIアンカー領域を含むC末端から318アミノ残基をコードする遺伝子を、2種のプライマー (5' - GGA ACT CGA GCC CGG GAT TAC CAC CTG CTA CCA CTA CAA AAA CGA GCG AAC A 3', 5' - ATG CGT CGA CTT AAA TAA TTG CCA GCA ATA AGG ACG CAA TGA AGA C 3')を用い、サッカロマイセス セレビシエATCC60712(S. cerevisiae ATCC60712)のゲノムを鋳型としPCRで増幅した。pWI3αをXhoIで切断し、PCR増幅産物を制限酵素であるSalI及びXhoIで切断し、電気泳動後精製を行った。PCR増幅産物を、切断した pWI3αに組み込みプラスミドpWI3αFloを構築した。
【0037】
<pWI3αGFPFloの調製>
蛍光タンパク質である EGFPをコードする遺伝子を、2種のプライマー ( 5' CGG TCC ATG GAA TGG TGA GCA AGG GCG AGG AGC TGT TCA CC 3', 5' GCG GCT CGA GAA CTT GTA CAG CTC GTC CAT GCC GAG AGT GAT 3' ) を用いて、プラスミド pEGFP (Clonetech Laboratories, Polo Alto, CA, USA.) を鋳型としPCRで増幅した。PCR増幅産物及びpWI3αFloを制限酵素であるNcoI及びXhoIで切断し、電気泳動後精製を行った。PCR増幅産物を、切断したpWI3αFloに組み込みプラスミドpWI3αGFPFloを構築した。
【0038】
<pWI3αZZGFPFloの調製>
スタフィロコッカス アウレウス(Staphylococcus aureus)由来のプロテインAのZZ領域をコードする遺伝子を、2種のプライマー (5'-TCTGCCCATGGGGCGCAACACGATGAAGCC-3',5'-TGAGATAAAAGAGCTTTTGGCGCCATGGCC-3' ) を用い、プラスミドpMWIZ1(13) を鋳型としてPCRで増幅した。PCR増幅産物とプラスミドpWI3αGFPFloを制限酵素であるNcoIで切断し、電気泳動後精製を行った。PCR増幅産物を切断したpWI3αGFPFloに組み込みプラスミドpWI3αZZGFPFloを構築した。
【0039】
《磁性粒子の調製方法》
本発明に使用した磁性粒子の調製方法を以下に示す。
1L容のフラスコ内で、硫酸第一鉄(7水和物)83.4gと亜硝酸ナトリウム10.4gと蒸留水500mlとを、40℃で20分間撹拌した。その後、濃アンモニウム125mlを添加し、不溶物を集め蒸留水で2回洗浄しマグネタイトを得た。次いで、1L容のフラスコに、得られたマグネタイトの全量と蒸留水500mlとを投入し、内容物の温度を80℃とした後、オレイン酸ナトリウム7.5gを添加し、温度を80℃に維持したまま20分間撹拌した。その後、1Nの塩酸を用いて該内容物のpHを5.5に調整し、得られた不溶物をろ過により集め、蒸留水で2回洗浄し、オレイン酸の層を有するマグネタイトを得た。さらに、1L容のフラスコに、得られたオレイン酸の層を有するマグネタイトの全量と蒸留水500mlとを投入し、内容物の温度を70℃とした後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム7.5gを添加し一晩撹拌し、磁性粒子が分散された液を得た。
【0040】
100ml容のフラスコに、前述の磁性粒子が分散された液1mlと、N-イソプロピルアクリルアミド0.488gと、N-ビオチニル-N'-メタクロイルトリメチレンアミド15.9mg、蒸留水25mlとを投入し室温でよく撹拌した。そこに25mgの過硫酸カリウムを添加し、次いで、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン10μlを添加した後、窒素雰囲気下、室温で6時間撹拌し、下限臨界温度を有する磁性粒子を含有する液(以下「磁性粒子含有液」と云うことがある。)を得た。
【0041】
得られた磁性粒子含有液の下限臨界温度(以下「LCST」と云うこともある。)を測定したところ、約32℃であった。なお、LCSTは可視光の透過率を用いて求めた。磁性粒子含有液の温度がLCST以下である場合の該磁性粒子の粒径は、光散乱分光光度計を用いて測定したところ、およそ100nmであった。この状態で該磁性粒子は、0.2μmのフィルターをほぼ素通りした。この状態の該磁性粒子は磁石に反応しなかったが、溶液の温度をLCST以上とすることで該磁性粒子はただちに凝集し、磁石により回収することが出来た。
【0042】
実験例1
<第1工程>
プラスミドpWI3αFLoおよびpWI3αZZGFPFloを、それぞれサッカロマイセス セレビシエMT8-1(Saccharomyces cerevisiae MT8-1)に酢酸リチウム法で導入し、得られた酵母をMT8-1/Flo(以下「陰性酵母」と云うことがある。)およびMT8-1/ZZGFPFlo(以下「陽性酵母」と云うことがある。)と名付けた。得られた酵母をそれぞれSDC−TRP培地[0.67%アミノ酸要求性酵母用窒素源{yeast nitrogen base without amino acid(ディフコ社)}, 2% カザミノ酸、0.5% グルコース、30ppmロイシン、20ppmヒスチジン、20ppmアデニン、20ppmウラシル]で30℃、48時間培養し、それぞれの培養液の濁度を測定し、それらの培養液を混合することにより、全酵母数にしめる陽性酵母(蛍光を有する酵母)数の割合(以下「陽性酵母率」と云うことがある。)が0.1%である菌けん濁液を調製した。
【0043】
<第2工程>
第1工程で得られた菌けん濁液(陽性酵母率0.1%)をリン酸緩衝食塩水(NaCl:140mM、KCl:2.7mM、:Na2HPO4:10mM、KH2PO4:1.8mM、pH 7.2、以下「PBS」と云うこともある。)で濁度(600nmの吸光度)が1.0となるように希釈し、そのうち800μlをエッペンドルフチューブに分取した。次いで、ビオチン化抗IgG水溶液(1.5mg/ml)を2μl添加し、撹拌しつつ37℃で1時間インキュベートした。続いてアビジン水溶液(1.0mg/ml)を10μl添加し撹拌しつつ10分間インキュベートした。その後、前述の方法によって得られた磁性粒子含有液100μlを添加し、撹拌しつつ10分間室温でインキュベートした。
【0044】
<第3工程>
次いで、該リン酸緩衝食塩水の温度を37℃とすることにより、添加した磁性粒子を凝集させ、磁石により回収した。
<洗浄操作>
回収した磁性粒子にPBSを1ml添加し、撹拌しながら10分間インキュベートした。次いで、このPBSの温度を37℃とすることにより、磁性粒子を凝集させ、磁石により回収した。この洗浄操作を3回繰り返した後、最終的に得られた磁性粒子の全量を、PBS1mlに懸濁し、磁性粒子の懸濁液を得た。この懸濁液をフローサイトメトリーで分析し、陽性酵母率を算出したところ6.8%であった。
【0045】
<再培養操作>
洗浄操作後、最終的に得られた磁性粒子を、1mlの100mM グリシン・塩酸緩衝液(pH2.2)に懸濁し5分間放置し、細胞表層に発現しているZZとIgGを遊離させた。さらにその緩衝液の温度を37℃とし粒子を凝集させ磁石により磁性粒子を回収した。残液100μlを新たに調整したSDC−TRP培地5mlに添加し、30℃で24時間培養を行った。この培養液を第1工程で得られた菌けん濁液に代えて、前述の第2工程から第3工程の洗浄操作までを行った。この再培養操作を3回繰り返し、その都度、得られた菌けん濁液をフローサイトメトリーで分析し、その陽性酵母率を算出した。1回目の洗浄操作後の陽性酵母率も併せ、その結果を図1に示した。
【0046】
《第4工程》
再培養操作後、最後に得られた菌けん濁液100μlをSDC−TRP寒天培地に塗布した。この寒天培地を30℃にて48時間培養し、コロニーを形成させた。そこから5個のコロニーを無作為に選び、SDC−TRP培地0.5mlに接種し、ボルテックスで激しく攪拌し細胞を懸濁した。この培養液を30℃にて250rpmで振盪しながら一晩温置した。
【0047】
菌体を遠心分離で回収し、上清を取り除いた後、残留した液体(総量50μl程度)に該菌体を添加した。この液にリチカーゼ(Lyticase:1mg/ml)溶液10μlを展開し、ピペッティングを繰り返すことで細胞を完全に懸濁した。懸濁した液を200rpmで振盪しながら、37℃で30〜60分インキュベーションした後、20%SDSを10μl添加し、ボルテックスで1分間激しく攪拌した。この液を一度凍結(-20℃)し、溶解後、スピンカラム(CHROMA SPIN1000、クローンテック社製)を用いてプラスミドDNAを精製した。
【0048】
該プラスミドDNAを鋳型として、αファクター以降のDNA配列をDNAシーケンサー(ABI PRISM 377)を用いて決定したところ、該DNA配列には、ZZと一致する配列が組み込まれていることが確認された。このことから、ZZを表層に提示した酵母が選択的に濃縮された事は明らかである。
【0049】
実験例2
第1工程に使用する菌けん濁液を、陽性酵母率が0.01%である菌けん濁液に代えた以外は、実験例1に準じて第1工程〜第3工程(洗浄操作および再培養操作含む)の操作を行った。得られた懸濁液の陽性酵母率を図1に示した。
【0050】
実験例3
第1工程に使用する菌けん濁液を、陽性酵母率が0.001%である菌けん濁液に代えた以外は、実験例1に準じて第1工程〜第3工程(洗浄操作および再培養操作含む)の操作を行った。得られた懸濁液の陽性酵母率を図1に示した。図1に示したとおり、陽性酵母率が0.001%である菌けん濁液であっても、ほぼ100%にまで濃縮された。
【0051】
実験例4
第1工程に使用する磁性粒子をストレプトアビジン化ダイナビース(ダイナル社製、粒子径2.8μm、2mg/mlに希釈して使用)に代え、アビジン水溶液の添加を行わなかった以外は、実験例1に準じて第1工程〜第3工程(洗浄操作および再培養操作含む)の操作を行った。得られた懸濁液の陽性酵母率を図2に示した。
【0052】
実験例5
第1工程に使用する磁性粒子をストレプトアビジン化ダイナビース(ダイナル社製、粒子径2.8μm、2mg/mlに希釈して使用)に代え、アビジン水溶液の添加を行わなず、菌けん濁液を、陽性酵母率が0.01%である菌けん濁液に代えた以外は、実験例1に準じて第1工程〜第3工程(洗浄操作および再培養操作含む)の操作を行った。得られた懸濁液の陽性酵母率を図2に示した。
【0053】
実験例6
第1工程に使用する磁性粒子をストレプトアビジン化ダイナビース(ダイナル社製、粒子径2.8μm、2mg/mlに希釈して使用)に代え、アビジン水溶液の添加を行わなず、菌けん濁液を、陽性酵母率が0.001%である菌けん濁液に代えた以外は、実験例1に準じて第1工程〜第3工程(洗浄操作および再培養操作含む)の操作を行った。得られた懸濁液の陽性酵母率を図2に示した。
【0054】
【発明の効果】
本発明の遺伝子のスクリーニング方法により、様々なタンパク質を細胞の表層に発現した細胞や微生物のランダムな混合液中から目的のタンパクを発現しているもののみを特異的にかつ迅速に回収し、その遺伝子を得ることが出来る。さらに磁性粒子側に薬物を固定化することにより、薬物の作用しているタンパク質についての情報を得ることも出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】再培養に伴う陽性酵母率の変動を示した図
【図2】再培養に伴う陽性酵母率の変動を示した図
【発明の属する技術分野】
本発明は遺伝子のスクリーニング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
目的とするタンパク質をコードする未知の遺伝子を、DNAライブラリーの中から単離するためには、これまでバクテリオファージが用いられてきた。この方法はファージディスプレイ法と呼ばれ、抗原の抗体結合部位、抗原のエピトープ部位、または生理活性ペプチドなどをコードする遺伝子のスクリーニングに用いられている。
【0003】
ファージディスプレイ法は、通常次の工程を有する。
第1工程:DNAライブラリー中のDNA配列(以下「配列(1)」という)を、バクテリオファージのコートタンパク質をコードするDNA配列に連結することにより、配列(1)がコードするタンパク質をバクテリオファージ表面へ発現させる。
第2工程:予めリガンドが固定された固相に、タンパク質が発現したバクテリオファージを特異的に固定する。
第3工程:固相の洗浄により、固相に非特異的に吸着されているバクテリオファージを分離する。
第4工程:特異的に固相に固定されているバクテリオファージを分離する。
通常、この第1〜第4工程を一度行っただけでは目的とするタンパク質を発現したファージの割合が低い場合が多く、さらに、第4工程で分離されたバクテリオファージを大腸菌に感染、増殖させた後、再度第2工程〜第4工程を繰り返す必要があった。
【0004】
しかしながら、ファージディスプレイ法においてはバクテリオファージを用いるため、その表面に発現させることができるタンパク質は、比較的低い分子量のものに限られていた。また、前述の濃縮工程には煩雑な操作と数週間の時間が必要である。
【0005】
【非特許文献1】
サイエンス(Science)(1985年):228巻,1315〜1317頁
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上の記述からも明らかなように、本発明の課題は、数万から数十万ダルトンと云った比較的大きな分子量のタンパク質をコードする遺伝子のライブラリーであってもその中から、目的とするタンパク質をコードする遺伝子を短時間且つ容易に単離することが可能な遺伝子のスクリーニング方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の従来技術の課題に鑑み鋭意研究を重ねた。その結果、細胞の表層にタンパク質を発現させ、この細胞と、液中において、目的とするタンパク質と結合するリガンド、および高分子とを介して磁性粒子に結合させ、次いで、該磁性粒子を回収することにより、数万から数十万ダルトンと云った比較的大きな分子量を有するタンパク質を発現した細胞であっても効率良く濃縮できることを見出した。さらに、一度濃縮した細胞は直ちに再度培養することが出来るため、数回のスクリーニング工程が数日で完了することを見出した。本発明者らはこれらの知見に基づき本発明を完成させた。
【0008】
本発明を以下の構成を有する。
(1)下記工程を有することを特徴とする遺伝子のスクリーニング方法。
第1工程:被検遺伝子を細胞に導入し、その細胞の表面にタンパク質を発現させる。
第2工程:液中において、第1工程で得られたタンパク質発現細胞を、該タンパク質と結合するリガンドと高分子とを介して磁性粒子に結合させる。
第3工程:第2工程の反応液から、タンパク質発現細胞と結合した磁性粒子を回収する。
第4工程:第3工程で回収された磁性粒子に結合したタンパク質発現細胞の表面に発現したタンパク質をコードする遺伝子を解析する。
【0009】
(2)第3工程で回収された磁性粒子と結合しているタンパク質発現細胞を培養し、得られた菌体を、第1工程で得られたタンパク質発現細胞に代えて再度第2工程以降の工程を行うことを特徴とする前記第1項記載の遺伝子のスクリーニング方法。
【0010】
(3)細胞が酵母細胞である前記第1項記載の遺伝子スクリーニング方法。
【0011】
(4)細胞の表面に発現するタンパク質が抗体である前記第1項記載の遺伝子スクリーニング方法。
【0012】
(5)細胞の表面に発現するタンパク質が生理活性を有するタンパク質である前記第1項記載の遺伝子スクリーニング方法。
【0013】
(6)リガンドが薬効を有する化合物である前記第1項記載の遺伝子スクリーニング方法。
【0014】
(7)磁性粒子の平均粒子径が1〜1000nmの範囲である前記第1項記載の遺伝子スクリーニング方法。
【0015】
(8)高分子が刺激応答性高分子である前記第1項記載の遺伝子スクリーニング方法。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の第1工程は、被検遺伝子を細胞に導入し、該細胞の表面にタンパク質を発現させる工程である。
第1工程に用いる被検遺伝子は遺伝子ライブラリーを事前に調製し、これを用いることが好ましい。本発明において遺伝子ライブラリーの調製方法は特に限定されるものではなく、当技術分野で周知の方法に従えば良い。例えば抗体遺伝子ライブラリーを調製する場合、抗体遺伝子は、リンパ球 mRNA から抗体をコードする cDNA を調製することによって入手することができる。
【0017】
本発明に用いる被検遺伝子は特に限定されるものではないが、具体的には、人や動物の細胞から調製した cDNA などが挙げられる。
本発明においては、被検遺伝子を細胞に導入することによって発現されるタンパク質の種類は特に限定されるものではないが、例えば、抗体、酵素、受容体、生理活性を有するタンパク質、ペプチド、およびそれらに結合するリガンドを挙げることができる。
【0018】
第1工程に用いる細胞は、その表面にタンパク質を発現させることの出来るものなら何れのものであってもよい。具体的には、昆虫細胞、動物細胞、大腸菌細胞、乳酸菌細胞、および酵母細胞等を挙げることが出来る。
特に、真核生物由来のタンパク質を発現させる場合には、酵母細胞、昆虫細胞、または動物細胞を用いることが好ましい。その中でも取り扱いが容易な点を考慮すると酵母細胞を用いることが最も好ましい。
【0019】
被検遺伝子を細胞に導入し、該細胞の表面にタンパク質を発現させるには、まず、表層発現用の種々ベクターを宿主に合わせて適宜選択し、選択されたベクターに被検遺伝子を導入する必要がある。
本発明に使用可能なベクターは、プロモーター、選択マーカー、分泌シグナル、発現すべきタンパクをコードする遺伝子を導入するためのクローニング部位、表層に固定化するためのタンパク等からなる。この様なベクターとしては、例えばアプライド マイクロバイオロジー アンド バイオテクノロジー(Appl Microbiol Biotechnol)(2001年)57巻:500〜505頁にあるようなプラスミドpMWIZ1などを挙げることができる。プラスミドpMWIZ1の場合には、該プラスミドのZZをコードする遺伝子の代わりに被検遺伝子を導入すればよい。
【0020】
本発明の第2工程は、液中において、第1工程で得られたタンパク質発現細胞を、該タンパク質と結合するリガンドと高分子とを介して磁性粒子に結合させる工程である。
発現したタンパク質と結合するリガンドは、該タンパク質の種類により異なることから、本発明においては特に限定されるものではないが、例えば、酵素等の基質、酵素反応の生成物とその類似体、抗原、抗体、ペプチド、および生理活性物質を挙げることができる。本発明において、目的とするタンパク質と反応するリガンドを用いれば、目的とするタンパク質およびそれをコードする遺伝子を特異的に濃縮することが可能である。
【0021】
さらに本発明においては、リガンドとして薬効を有する化合物(以下「薬物」という)を用いることができる。例えば、新規の薬物の生体における薬効発現部位が未知の場合、被検遺伝子として生体から抽出した遺伝子を用い、且つリガンドとして該薬物を用いれば、該薬物の生体における薬効発現部位の遺伝子を得ることが可能であり、該薬効発現部位を特定することが可能となる。その場合には、生体からmRNA などを鋳型として cDNA を合成し、前述のベクター上に導入すればよい。
【0022】
本発明に使用する磁性粒子は、磁石で回収することの出来るものであれば何れのものであっても使用することができる。タンパク質とリガンドとの認識性を高めるためには、その平均粒径は1〜1000nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜200nmの範囲であることが好ましい。
【0023】
磁性粒子の素材として具体的には、マグネタイト粒子の他、酸化ニッケル粒子、フェライト粒子、コバルト鉄酸化物、バリウムフェライト、炭素鋼、タングステン鋼、KS鋼、希土類コバルト磁石の微粒子およびヘマタイトなどを挙げることができる。
これら磁性粒子の調製方法は特に限定されるものではない。例えば、マグネタイトの調製方法としては、オレイン酸とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いて、マグネタイトを二重のミセルとし、水溶液中に分散させる方法(バイオカタライシス(Biocatalysis)1991年、第5巻、61〜69頁)を挙げることができる。
【0024】
本発明に用いる高分子は特に限定されるものではないが、熱、pH、塩濃度、光、または電気などの刺激に対して反応し、液中において特定の条件で析出若しくは溶解するいわゆる刺激応答性高分子であることが好ましい。リガンドと磁性粒子との結合を介する高分子が刺激応答性高分子である場合には、磁性粒子の回収率が高い。
【0025】
刺激応答性高分子としては、下限臨界溶液温度を有するポリ−N−イソプロピルアクリルアミドや、上限臨界溶液温度を有するN−アセチルアクリルアミドとアクリルアミドとの共重合体、N−ホルミルアクリルアミドとアクリルアミドとの共重合体、およびN−アクリロイルグリシンアミドと重合性ビオチンとの共重合体などを挙げることができる。熱応答性高分子以外の高分子としては、pH応答性を示すアクリル酸のホモポリマー及びコポリマーなどを挙げることができる。刺激応答性高分子の中でも、上限臨界溶液温度、または下限臨界溶液温度を有する高分子は、分散状態か凝集状態かを温度により容易に制御でき、またその刺激の生体への影響が小さいことから本発明に最も好ましく使用することができる。
【0026】
第1工程で得られたタンパク質発現細胞を、リガンドと高分子とを介して磁性粒子に結合させる方法は、液中において行われるものであれば特に限定されるものではない。前記方法は化学反応による固定であってもよく、物理的な固定であってもよい。前記方法として例えば、予めリガンドを、高分子を介して磁性粒子に固定することでリガンド固定化磁性粒子を調製し、これと該タンパク質発現細胞とを液中において混合する方法を挙げることができる。また、リガンドを予めビオチン化しておき、タンパク質発現細胞に結合させ、ストレプトアビジンまたはアビジンを介して、ビオチン化した磁性粒子と混合する方法を挙げることができる。
【0027】
リガンドを、高分子を介して磁性粒子に固定する方法は特に限定されるものではないが、重合性を持つ様にリガンドを予めモノマー化しておき、高分子のモノマーと共に磁性粒子の存在下で共重合させる方法、または、カルボン酸、アミノ基、エポキシ基などの官能基を持つモノマーと高分子のモノマーとを用いて磁性粒子の存在下で共重合を行い、得られた共重合体に、当技術分野で周知の方法に従ってリガンドを該共重合体と結合させ、磁性粒子に固定する方法を挙げることができる。
【0028】
本発明に使用できる液としては細胞培養培地、緩衝液、および生理食塩水などを挙げることができる。その中でも、緩衝液は本発明に好ましく使用することができる。細胞培養培地としては、LB(Luria-Bertani)培地、ポテトデキストロース(PD)培地、グルコース・カザミノ酸(SDC)培地、動物細胞または昆虫細胞用無血清または血清培地を挙げることができる。緩衝液としては、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水、トリス緩衝液、ヘペス緩衝液、ホウ酸緩衝液、および酢酸緩衝液などを挙げることができる。
【0029】
本発明の第3工程は、第2工程で得られた反応液から、タンパク質発現細胞と結合した磁性粒子(以下「細胞結合磁性粒子」と云うことがある。)を回収し、タンパク質発現細胞を分離する工程である。
回収の方法は特に限定されるものではないが、本発明においては、磁石などの磁力を用いて細胞結合磁性粒子を集め分離する方法であれば、該細胞結合磁性粒子を選択的に分離することができる。高分子が刺激応答性高分子である場合には、磁力をかける前に、反応液を刺激応答性高分子が凝集する状態とすることが好ましい。
【0030】
細胞結合磁性粒子と共に反応液から分離されるタンパク質発現細胞の中には、リガンドとは反応しないもの、即ち、目的とするタンパク質とは異なるタンパク質を発現している細胞(以下「目的外タンパク質発現細胞」と云うこともある。)が存在する場合もある。細胞結合磁性粒子と共に分離されるタンパク発現細胞中の、目的外タンパク質発現細胞の割合を下げるためには、回収後の細胞結合磁性粒子を緩衝液に添加、拡散後、再度凝集、分離する洗浄操作を行えばよい。この洗浄操作を複数回行えば、目的外タンパク質発現細胞の割合を大幅に低下させることができる。
【0031】
しかしながら、洗浄操作のみで目的外タンパク質発現細胞の割合をゼロ、またはそれに近い値とすることは困難である。目的外タンパク質発現細胞の割合を極力減らしたい場合には、洗浄操作と共に、後述の再培養操作を行うことが好ましい。
【0032】
再培養操作とは、第3工程で回収された細胞結合磁性粒子、または該細胞結合磁性粒子から分離された細胞を適当な培地に添加して、該培地にて細胞結合磁性粒子と結合した細胞を培養し、この培養液を第1工程で得られた細胞に代えて、本発明の第2工程、第3工程を行う一連の操作のことである。この再培養操作を1回のみならず複数回行うことにより、目的外タンパク質発現細胞の割合をさらに下げることができる。
【0033】
本発明の第4工程は、第3工程で回収された細胞結合磁性粒子に結合したタンパク質発現細胞の表面に発現したタンパク質をコードする遺伝子を解析する工程である。遺伝子の解析方法は特に限定されるものではなく、当技術分野で周知の方法に従って解析すればよい。解析に際し、プラスミドを抽出する場合には、当技術分野で周知の方法に従ってプラスミドを抽出すればよい。例えば、宿主が大腸菌である場合は、アルカリ−SDS法によりプラスミドを抽出することができる。また、宿主が酵母である場合には、酵素処理等により細胞壁を弱めた後スフェロプラストをSDSで破壊することによりプラスミドを抽出することができる。次いで、該プラスミド中の目的とする遺伝子をコードする部分を当技術分野で周知の方法に従って解析すればよい。
【0034】
本発明の第2工程および第3工程は、第1工程で得られたタンパク質発現細胞の濃縮工程とも云うことができ、第1工程から第3工程までは目的とする遺伝子の濃縮方法であるとも云うことができる。
【0035】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されることはない。
《プラスミドの調製方法》
本発明に使用したプラスミドの調製方法を以下に示す。
<プラスミドpWI3αの調製>
分泌シグナルαファクターをコードする遺伝子を、2種のプライマー(5' - AACGAG ATC TAT GAG ATT TCC TTC AAT TTT TAC TGC AGT T - 3', 5' - GCC AGT CGA CTC TTT TAT CCA AAG ATA CCC CTT CTT CTT TAG - 3' )を用い、サッカロマイセス セレビシエW3031B(Saccharomyces cerevisiae W3031B)のゲノムを鋳型としてPCRで増幅した。PCR増幅産物とプラスミドpWI3{アプライドマイクロバイオロジーアンドバイオテクノロジー;Appl. Microbiol. Biotechnol. 44巻, 759〜765頁(1996年)}とを、制限酵素であるBglIIとSalIで切断し、電気泳動後ゲルより精製を行った。PCR増幅産物を、プラスミドpWI3に組み込みプラスミドpWI3αを構築した。
【0036】
<プラスミドpWI3αFloの調製>
酵母の凝集に関与し表層に発現される事で知られるタンパクFlo1のGPIアンカー領域を含むC末端から318アミノ残基をコードする遺伝子を、2種のプライマー (5' - GGA ACT CGA GCC CGG GAT TAC CAC CTG CTA CCA CTA CAA AAA CGA GCG AAC A 3', 5' - ATG CGT CGA CTT AAA TAA TTG CCA GCA ATA AGG ACG CAA TGA AGA C 3')を用い、サッカロマイセス セレビシエATCC60712(S. cerevisiae ATCC60712)のゲノムを鋳型としPCRで増幅した。pWI3αをXhoIで切断し、PCR増幅産物を制限酵素であるSalI及びXhoIで切断し、電気泳動後精製を行った。PCR増幅産物を、切断した pWI3αに組み込みプラスミドpWI3αFloを構築した。
【0037】
<pWI3αGFPFloの調製>
蛍光タンパク質である EGFPをコードする遺伝子を、2種のプライマー ( 5' CGG TCC ATG GAA TGG TGA GCA AGG GCG AGG AGC TGT TCA CC 3', 5' GCG GCT CGA GAA CTT GTA CAG CTC GTC CAT GCC GAG AGT GAT 3' ) を用いて、プラスミド pEGFP (Clonetech Laboratories, Polo Alto, CA, USA.) を鋳型としPCRで増幅した。PCR増幅産物及びpWI3αFloを制限酵素であるNcoI及びXhoIで切断し、電気泳動後精製を行った。PCR増幅産物を、切断したpWI3αFloに組み込みプラスミドpWI3αGFPFloを構築した。
【0038】
<pWI3αZZGFPFloの調製>
スタフィロコッカス アウレウス(Staphylococcus aureus)由来のプロテインAのZZ領域をコードする遺伝子を、2種のプライマー (5'-TCTGCCCATGGGGCGCAACACGATGAAGCC-3',5'-TGAGATAAAAGAGCTTTTGGCGCCATGGCC-3' ) を用い、プラスミドpMWIZ1(13) を鋳型としてPCRで増幅した。PCR増幅産物とプラスミドpWI3αGFPFloを制限酵素であるNcoIで切断し、電気泳動後精製を行った。PCR増幅産物を切断したpWI3αGFPFloに組み込みプラスミドpWI3αZZGFPFloを構築した。
【0039】
《磁性粒子の調製方法》
本発明に使用した磁性粒子の調製方法を以下に示す。
1L容のフラスコ内で、硫酸第一鉄(7水和物)83.4gと亜硝酸ナトリウム10.4gと蒸留水500mlとを、40℃で20分間撹拌した。その後、濃アンモニウム125mlを添加し、不溶物を集め蒸留水で2回洗浄しマグネタイトを得た。次いで、1L容のフラスコに、得られたマグネタイトの全量と蒸留水500mlとを投入し、内容物の温度を80℃とした後、オレイン酸ナトリウム7.5gを添加し、温度を80℃に維持したまま20分間撹拌した。その後、1Nの塩酸を用いて該内容物のpHを5.5に調整し、得られた不溶物をろ過により集め、蒸留水で2回洗浄し、オレイン酸の層を有するマグネタイトを得た。さらに、1L容のフラスコに、得られたオレイン酸の層を有するマグネタイトの全量と蒸留水500mlとを投入し、内容物の温度を70℃とした後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム7.5gを添加し一晩撹拌し、磁性粒子が分散された液を得た。
【0040】
100ml容のフラスコに、前述の磁性粒子が分散された液1mlと、N-イソプロピルアクリルアミド0.488gと、N-ビオチニル-N'-メタクロイルトリメチレンアミド15.9mg、蒸留水25mlとを投入し室温でよく撹拌した。そこに25mgの過硫酸カリウムを添加し、次いで、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン10μlを添加した後、窒素雰囲気下、室温で6時間撹拌し、下限臨界温度を有する磁性粒子を含有する液(以下「磁性粒子含有液」と云うことがある。)を得た。
【0041】
得られた磁性粒子含有液の下限臨界温度(以下「LCST」と云うこともある。)を測定したところ、約32℃であった。なお、LCSTは可視光の透過率を用いて求めた。磁性粒子含有液の温度がLCST以下である場合の該磁性粒子の粒径は、光散乱分光光度計を用いて測定したところ、およそ100nmであった。この状態で該磁性粒子は、0.2μmのフィルターをほぼ素通りした。この状態の該磁性粒子は磁石に反応しなかったが、溶液の温度をLCST以上とすることで該磁性粒子はただちに凝集し、磁石により回収することが出来た。
【0042】
実験例1
<第1工程>
プラスミドpWI3αFLoおよびpWI3αZZGFPFloを、それぞれサッカロマイセス セレビシエMT8-1(Saccharomyces cerevisiae MT8-1)に酢酸リチウム法で導入し、得られた酵母をMT8-1/Flo(以下「陰性酵母」と云うことがある。)およびMT8-1/ZZGFPFlo(以下「陽性酵母」と云うことがある。)と名付けた。得られた酵母をそれぞれSDC−TRP培地[0.67%アミノ酸要求性酵母用窒素源{yeast nitrogen base without amino acid(ディフコ社)}, 2% カザミノ酸、0.5% グルコース、30ppmロイシン、20ppmヒスチジン、20ppmアデニン、20ppmウラシル]で30℃、48時間培養し、それぞれの培養液の濁度を測定し、それらの培養液を混合することにより、全酵母数にしめる陽性酵母(蛍光を有する酵母)数の割合(以下「陽性酵母率」と云うことがある。)が0.1%である菌けん濁液を調製した。
【0043】
<第2工程>
第1工程で得られた菌けん濁液(陽性酵母率0.1%)をリン酸緩衝食塩水(NaCl:140mM、KCl:2.7mM、:Na2HPO4:10mM、KH2PO4:1.8mM、pH 7.2、以下「PBS」と云うこともある。)で濁度(600nmの吸光度)が1.0となるように希釈し、そのうち800μlをエッペンドルフチューブに分取した。次いで、ビオチン化抗IgG水溶液(1.5mg/ml)を2μl添加し、撹拌しつつ37℃で1時間インキュベートした。続いてアビジン水溶液(1.0mg/ml)を10μl添加し撹拌しつつ10分間インキュベートした。その後、前述の方法によって得られた磁性粒子含有液100μlを添加し、撹拌しつつ10分間室温でインキュベートした。
【0044】
<第3工程>
次いで、該リン酸緩衝食塩水の温度を37℃とすることにより、添加した磁性粒子を凝集させ、磁石により回収した。
<洗浄操作>
回収した磁性粒子にPBSを1ml添加し、撹拌しながら10分間インキュベートした。次いで、このPBSの温度を37℃とすることにより、磁性粒子を凝集させ、磁石により回収した。この洗浄操作を3回繰り返した後、最終的に得られた磁性粒子の全量を、PBS1mlに懸濁し、磁性粒子の懸濁液を得た。この懸濁液をフローサイトメトリーで分析し、陽性酵母率を算出したところ6.8%であった。
【0045】
<再培養操作>
洗浄操作後、最終的に得られた磁性粒子を、1mlの100mM グリシン・塩酸緩衝液(pH2.2)に懸濁し5分間放置し、細胞表層に発現しているZZとIgGを遊離させた。さらにその緩衝液の温度を37℃とし粒子を凝集させ磁石により磁性粒子を回収した。残液100μlを新たに調整したSDC−TRP培地5mlに添加し、30℃で24時間培養を行った。この培養液を第1工程で得られた菌けん濁液に代えて、前述の第2工程から第3工程の洗浄操作までを行った。この再培養操作を3回繰り返し、その都度、得られた菌けん濁液をフローサイトメトリーで分析し、その陽性酵母率を算出した。1回目の洗浄操作後の陽性酵母率も併せ、その結果を図1に示した。
【0046】
《第4工程》
再培養操作後、最後に得られた菌けん濁液100μlをSDC−TRP寒天培地に塗布した。この寒天培地を30℃にて48時間培養し、コロニーを形成させた。そこから5個のコロニーを無作為に選び、SDC−TRP培地0.5mlに接種し、ボルテックスで激しく攪拌し細胞を懸濁した。この培養液を30℃にて250rpmで振盪しながら一晩温置した。
【0047】
菌体を遠心分離で回収し、上清を取り除いた後、残留した液体(総量50μl程度)に該菌体を添加した。この液にリチカーゼ(Lyticase:1mg/ml)溶液10μlを展開し、ピペッティングを繰り返すことで細胞を完全に懸濁した。懸濁した液を200rpmで振盪しながら、37℃で30〜60分インキュベーションした後、20%SDSを10μl添加し、ボルテックスで1分間激しく攪拌した。この液を一度凍結(-20℃)し、溶解後、スピンカラム(CHROMA SPIN1000、クローンテック社製)を用いてプラスミドDNAを精製した。
【0048】
該プラスミドDNAを鋳型として、αファクター以降のDNA配列をDNAシーケンサー(ABI PRISM 377)を用いて決定したところ、該DNA配列には、ZZと一致する配列が組み込まれていることが確認された。このことから、ZZを表層に提示した酵母が選択的に濃縮された事は明らかである。
【0049】
実験例2
第1工程に使用する菌けん濁液を、陽性酵母率が0.01%である菌けん濁液に代えた以外は、実験例1に準じて第1工程〜第3工程(洗浄操作および再培養操作含む)の操作を行った。得られた懸濁液の陽性酵母率を図1に示した。
【0050】
実験例3
第1工程に使用する菌けん濁液を、陽性酵母率が0.001%である菌けん濁液に代えた以外は、実験例1に準じて第1工程〜第3工程(洗浄操作および再培養操作含む)の操作を行った。得られた懸濁液の陽性酵母率を図1に示した。図1に示したとおり、陽性酵母率が0.001%である菌けん濁液であっても、ほぼ100%にまで濃縮された。
【0051】
実験例4
第1工程に使用する磁性粒子をストレプトアビジン化ダイナビース(ダイナル社製、粒子径2.8μm、2mg/mlに希釈して使用)に代え、アビジン水溶液の添加を行わなかった以外は、実験例1に準じて第1工程〜第3工程(洗浄操作および再培養操作含む)の操作を行った。得られた懸濁液の陽性酵母率を図2に示した。
【0052】
実験例5
第1工程に使用する磁性粒子をストレプトアビジン化ダイナビース(ダイナル社製、粒子径2.8μm、2mg/mlに希釈して使用)に代え、アビジン水溶液の添加を行わなず、菌けん濁液を、陽性酵母率が0.01%である菌けん濁液に代えた以外は、実験例1に準じて第1工程〜第3工程(洗浄操作および再培養操作含む)の操作を行った。得られた懸濁液の陽性酵母率を図2に示した。
【0053】
実験例6
第1工程に使用する磁性粒子をストレプトアビジン化ダイナビース(ダイナル社製、粒子径2.8μm、2mg/mlに希釈して使用)に代え、アビジン水溶液の添加を行わなず、菌けん濁液を、陽性酵母率が0.001%である菌けん濁液に代えた以外は、実験例1に準じて第1工程〜第3工程(洗浄操作および再培養操作含む)の操作を行った。得られた懸濁液の陽性酵母率を図2に示した。
【0054】
【発明の効果】
本発明の遺伝子のスクリーニング方法により、様々なタンパク質を細胞の表層に発現した細胞や微生物のランダムな混合液中から目的のタンパクを発現しているもののみを特異的にかつ迅速に回収し、その遺伝子を得ることが出来る。さらに磁性粒子側に薬物を固定化することにより、薬物の作用しているタンパク質についての情報を得ることも出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】再培養に伴う陽性酵母率の変動を示した図
【図2】再培養に伴う陽性酵母率の変動を示した図
Claims (8)
- 下記工程を有することを特徴とする遺伝子のスクリーニング方法。
第1工程:被検遺伝子を細胞に導入し、その細胞の表面にタンパク質を発現させる。
第2工程:液中において、第1工程で得られたタンパク質発現細胞を、該タンパク質と結合するリガンドと高分子とを介して磁性粒子に結合させる。
第3工程:第2工程の反応液から、タンパク質発現細胞と結合した磁性粒子を回収する。
第4工程:第3工程で回収された磁性粒子に結合したタンパク質発現細胞の表面に発現したタンパク質をコードする遺伝子を解析する。 - 第3工程で回収された磁性粒子と結合しているタンパク質発現細胞を培養し、得られた菌体を、第1工程で得られたタンパク質発現細胞に代えて再度第2工程以降の工程を行うことを特徴とする請求項1記載の遺伝子のスクリーニング方法。
- 細胞が酵母細胞である請求項1記載の遺伝子のスクリーニング方法。
- 細胞の表面に発現するタンパク質が抗体である請求項1記載の遺伝子のスクリーニング方法。
- 細胞の表面に発現するタンパク質が生理活性を有するタンパク質である請求項1記載の遺伝子スクリーニング方法。
- リガンドが薬効を有する化合物である請求項1記載の遺伝子のスクリーニング方法。
- 磁性粒子の平均粒子径が1〜1000nmの範囲である請求項1記載の遺伝子のスクリーニング方法。
- 高分子が刺激応答性高分子である請求項1記載の遺伝子のスクリーニング方法。
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