JP2004198995A - 液晶表示装置用基板の表面凹凸形状を有する有機物層に用いられる感光性樹脂組成物及び感光性エレメント - Google Patents
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Abstract
【課題】液晶表示用基板において、形状特性に優れ、簡便にかつ安価な方法で表面凹凸形状を有する有機物層を形成できる感光性樹脂組成物及び感光性エレメントを提供する。
【解決手段】(I)基板上に、感光性樹脂組成物層を形成する工程、(II)感光性樹脂組成物層に活性光線を像的に照射する工程、(III)加熱する工程、により像的に対応した表面凹凸形状を形成する感光性樹脂組成物層であり、80℃における粘度が1×102〜1×107Pa・secである感光性樹脂組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】(I)基板上に、感光性樹脂組成物層を形成する工程、(II)感光性樹脂組成物層に活性光線を像的に照射する工程、(III)加熱する工程、により像的に対応した表面凹凸形状を形成する感光性樹脂組成物層であり、80℃における粘度が1×102〜1×107Pa・secである感光性樹脂組成物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示装置用基板の表面凹凸形状を有する有機物層、例えば拡散反射膜に使用される感エネルギー性ネガ型樹脂組成物及び感光性エレメントに関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置は、ノート型パソコン、電子手帳、携帯情報端末機、アミューズメント機器、携帯電話機、テレビ等、あらゆる用途で利用されており、今後これらは大画面化、軽量化および薄型化対応機種で需要が伸びると考えられる。
一般に液晶表示装置の中には、液晶配向膜、偏光板、位相差フィルム、散乱板など光学調整に関わる透明材料が用いられており、それらの多くは、表面上に設計制御された微細な凹凸形状を必要とする。
これを実現するための有用な手法として、パターン形成されたマスクを介して感光性樹脂層に紫外線を照射し、樹脂層の露光部分又は未露光部分を現像液で除去することにより、拡散反射板表面に凹凸形状を形成する方法等が用いられてきた。
しかしながら、従来の方法では、所望の凹凸形状を得るために、感エネルギー性ネガ型樹脂の膜厚、感エネルギー性ネガ型樹脂の受光感度、マスクの開口比、露光量、現像液濃度、現像液温度あるいは現像時間の調整が必要であるため、製造プロセス上の変動因子が多く、同一の条件で同一の凹凸形状を得ることは困難であり、比較的高価でもある等の問題があった。また液晶表示装置はその作製工程の中で高温にさらされることが多く、内蔵された上述の凹凸形状が熱により変形を受けることが多かった。
【0003】
【特許文献1】
特開平4−243226号公報
【特許文献2】
特開平11−42649号公報
【特許文献3】
特開2000−098375号公報
【0004】
【解決しようとする課題】
本発明の目的は、液晶表示用基板において、簡便にかつ安価な方法で表面凹凸形状を有する有機物層を形成できる感エネルギー性ネガ型樹脂組成物及び感光性エレメントを提供することにある。また、高温処理時の形状安定性を高めることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(I)基板上に、感光性樹脂組成物層を形成する工程、(II)感光性樹脂組成物層に活性光線を像的に照射する工程、(III)加熱する工程、により像的に対応した表面凹凸形状を形成する感光性樹脂組成物であり、80℃における粘度が1×102〜1×107Pa・secであることを特徴とする感光性樹脂組成物である。
また、本発明は、[2](a)バインダポリマー、(b)少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する光重合性不飽和化合物、(c)活光性線により遊離ラジカルを生成する光重合開始剤を含有することを特徴とする上記[1]に記載の感光性樹脂組成物である。
さらに、本発明は、[3]上記[1]または上記[2]に記載の感光性樹脂組成物の層を支持体上に積層してなる感光性エレメントである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、表面凹凸形状形成方法の一例を説明する。
本発明の感光性樹脂組成物を用いた表面凹凸形状形成方法は、(I)基板上に、感光性樹脂組成物層を形成する工程、(II)感光性樹脂組成物層に活性光線を像的に照射する工程、(III)加熱する工程を含み、これにより像的に対応した凹凸形状を形成する。
【0007】
〔(I)基板上に、感光性樹脂組成物層を形成する工程〕
本発明で使用される基板は、特に制限はなく、例えば、ガラス板、クロムやITOなどの無機化合物を成膜したガラス板、シリコン基板、セラミック、ポリカーボネート系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエーテルスルホン樹脂フィルム、フッ素系樹脂フィルム、前記のプラスチック板など、好ましくは複屈折率が少ない(Δn=0.01以下)基材を用いることができる。この基板上には、絶縁層、電極、TFT等が設けられていてもよい。
【0008】
本発明において、基板上に、後述する感光性樹脂組成物層を形成する方法としては、後述する本発明の感光性樹脂組成物を構成する各成分を溶解又は分散可能な溶剤に、溶解又は混合させることにより、均一に分散した溶液とし、前記基板上に、塗布、乾燥する方法等が挙げられる。
【0009】
本発明における塗布方法としては、公知の塗布方法を用いることができ、例えば、ドクターブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ロールコーティング法、スクリーンコーティング法、スピナーコーティング法、インクジェットコーティング法、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、グラビアコーティング法、カーテンコーティング法、ダイコーティング法等が挙げられる。
乾燥温度は、60〜130℃とすることが好ましく、乾燥時間は、1分〜1時間とすることが好ましい。
本発明における感光性樹脂組成物層の厚さは、液晶表示装置とした場合の電気的特性を考慮して、0.1〜20μmとすることが好ましく、0.3〜15μmとすることがより好ましく、0.5〜10μmとすることが特に好ましい。
【0010】
〔(II)感光性樹脂組成物層に活性光線を像的に照射する工程〕
本発明において、感光性樹脂組成物層に活性光線を像的に照射する方法としては、基板上に積層された前記感光性樹脂組成物層にフォトマスクを介して、公知の活性光線を照射する方法等が挙げられる。
活性光線のエネルギー線量は、従来のエッチング工程を含む表面凹凸形成方法の中で照射される、例えば紫外線量に比べて同等あるいは少なくて済み、100〜104J/m2が好ましく、100〜5×103J/m2がより好ましく、500〜1×103J/m2が特に好ましい。
また、本発明における活性光線としては、公知の活性光源が使用でき、例えば、カーボンアーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等が挙げられ、紫外線等の活性光線を有効に放射するものであれば特に制限されない。
【0011】
〔(III)加熱する工程、により像的に対応した表面凹凸形状を形成する工程〕本発明において、加熱することにより凹凸形状を形成する方法としては、熱風放射、赤外線照射加熱等の公知の方法が挙げられ、基板上に形成された感光性樹脂組成物層が有効に加熱される方法であれば特に制限されない。
加熱時の温度は、40〜300℃とすることが好ましく、50〜290℃とすることがより好ましく、60〜280℃とすることが特に好ましく、70〜270℃とすることが極めて好ましい。この加熱温度が、40℃未満では、凹凸を形成する効果が不十分となる傾向があり、300℃を超えると、感光性樹脂組成物層の構成成分が熱分解する傾向がある。
このようにして、活性光線を像的に照射された感光性樹脂組成物層は、表面に凹凸形状が形成されることとなる。
また、本発明において、高画質で高速表示可能なTFT駆動方式の液晶表示装置の拡散反射板等として適用する場合、TFTのドレイン電極と反射電極を導通するための微細なコンタクホール形成を目的として、現像により感光性樹脂組成物層を選択的に除去してコンタクホールパターンを形成する工程を行うこともできる。
感光性樹脂組成物層を選択的に除去する現像方法としては、アルカリ水溶液、水系現像液、有機溶剤等の公知の現像液を用いて、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法により現像を行い、不要部を除去する方法等が挙げられ、中でも、環境、安全性の観点からアルカリ水溶液が好ましいものとして挙げられる。
アルカリ水溶液の塩基としては、水酸化アルカリ(リチウム、ナトリウム又はカリウムの水酸化物等)、炭酸アルカリ(リチウム、ナトリウム又はカリウムの炭酸塩若しくは重炭酸塩等)、アルカリ金属リン酸塩(リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等)、アルカリ金属ピロリン酸塩(ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等)、水酸化テトラメチルアンモニウム、トリエタノールアミンなどが挙げられ、中でも、水酸化テトラメチルアンモニウム等が好ましいものとして挙げられる。
現像温度及び時間は、本発明における感光性樹脂組成物層の現像性に合わせて調整することができる。
また、アルカリ水溶液中には、界面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を混入させることができる。
また、現像後、光硬化後の感光性樹脂組成物層に残存したアルカリ水溶液の塩基を、有機酸、無機酸又はこれらの酸水溶液を用いて、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知方法により酸処理(中和処理)することができる。
さらに、酸処理(中和処理)の後、水洗する工程を行うこともできる。
【0012】
本発明において、感光性樹脂組成物層表面に形成された凹凸形状のパターンを高温下で維持すること、高温高湿下で基板密着性を向上させること、及び耐薬品性を向上させること等を目的に、凹凸形状パターンを形成した感光性樹脂組成物層に(現像工程を含む場合には、その後に)活性光線を照射する工程を行うこともできる。
【0013】
本発明において、凹凸形状パターンを形成した感光性樹脂組成物層に活性光線を照射する方法としては、基板上にパターンが形成された感光性樹脂組成物層に公知の活性光線が有効に照射される方法であれば特に制限されない。
また、本発明における活性光線としては、前記(II)の工程で使用できる公知の活性光源が挙げられ、紫外線等を有効に放射するものであれば特に制限されない。
この時の活性光線の照射量は、通常、1×102〜1×105J/m2であり、照射の際に、加熱を伴うこともできる。この活性光線照射量が、1×102J/m2未満では、効果が不十分となる傾向があり、1×105J/m2を超えると、感光性樹脂組成物層が変色する傾向がある。
【0014】
また、本発明において、感光性樹脂組成物層表面に形成された凹凸形状のパターンを高温下で維持すること、高温高湿下で基板密着性を向上させること、及び耐薬品性を向上させること等を目的に、パターンを形成した感光性樹脂組成物層をさらに加熱することもできる。加熱する方法としては、熱風放射、赤外線照射加熱等の公知の方法が挙げられ、基板上にパターンが形成された感光性樹脂組成物層が有効に加熱される方法であれば特に制限されない。
加熱時の温度は、140〜300℃とすることが好ましく、150〜290℃とすることがより好ましく、160〜280℃とすることが特に好ましい。この加熱温度が、140℃未満では、効果が不十分となる傾向があり、300℃を超えると、感光性樹脂組成物層の構成成分が熱分解する傾向がある。
【0015】
本発明の感光性樹脂組成物は、前記各工程により表面に凹凸形状を形成するための有機物層に用いられるものであって、凹凸形状を有効に形成させる観点から、80℃における粘度を1×102〜1×107Pa・secとする。5×102〜5×106Pa・secであることがより好ましく、1×103〜3×106Pa・secであることが特に好ましく、5×103〜1×106Pa・secであることが極めて好ましい。80℃での粘度が1×102Pa・sec未満である場合には、基板上に前記感光性樹脂組成物を形成する場合に、乾燥時の塗布膜厚均一性が低下する傾向にあり、80℃での粘度が1×107Pa・secを超える場合には、加熱することにより凹凸形状を形成する工程において、表面凹凸形状を有効に形成できない傾向にある。
【0016】
なお、本発明における粘度とは、直径7mm、厚さ2mmの円板形状の感光性樹脂組成物サンプル片を作製し、80℃において、試料の厚さ方向に1.96×10−2Nの圧力を加えて厚さの変化速度を測定し、この変化速度からニュートン流体を仮定して、下記の関係式(数1)を用いて粘度に換算した値である。
【0017】
【数1】
μ=(2FZ3/3πR4)/(dZ/dt)
μ:粘度
F:サンプルの厚さ方向に加えた力
Z:サンプルの厚さ
R:サンプルの半径
t:サンプルに力を加えた時間
【0018】
本発明の感光性樹脂組成物は、(a)バインダポリマー、(b)少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する光重合性不飽和化合物、(c)活性光線により遊離ラジカルを生成する光重合開始剤を有してなる。
【0019】
本発明における(a)バインダポリマーとしては、特に制限はなく、例えば、ビニル共重合体が挙げられ、ビニル共重合体に用いられるビニル単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n -プロピル、メタクリル酸n -プロピル、アクリル酸iso -プロピル、メタクリル酸iso -プロピル、アクリル酸n -ブチル、メタクリル酸n -ブチル、アクリル酸iso -ブチル、メタアクリル酸iso -ブチル、アクリル酸sec -ブチル、メタクリル酸sec -ブチル、アクリル酸tert -ブチル、メタクリル酸tert -ブチル、アクリル酸ペンチル、メタクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、メタクリル酸ヘプチル、アクリル酸2 -エチルヘキシル、メタクリル酸2 -エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、メタクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、メタクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸テトラデシル、メタクリル酸テトラデシル、アクリル酸ヘキサデシル、メタクリル酸ヘキサデシル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸エイコシル、メタクリル酸エイコシル、アクリル酸ドコシル、メタクリル酸ドコシル、アクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロペンチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸シクロヘプチル、メタクリル酸シクロヘプチル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシエチル、アクリル酸メトキシジエチレングリコール、メタクリル酸メトキシジエチレングリコール、アクリル酸メトキシジプロピレングリコール、メタクリル酸メトキシジプロピレングリコール、アクリル酸メトキシトリエチレングリコール、メタクリル酸メトキシトリエチレングリコール、アクリル酸2 -ヒドロキシエチル、メタクリル酸2 -ヒドロキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノプロピル、メタクリル酸ジメチルアミノプロピル、アクリル酸2 -クロロエチル、メタクリル酸2 -クロロエチル、アクリル酸2 -フルオロエチル、メタクリル酸2 -フルオロエチル、アクリル酸2 -シアノエチル、メタクリル酸2 -シアノエチル、スチレン、α -メチルスチレン、ビニルトルエン、塩化ビニル、酢酸ビニル、N -ビニルピロリドン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0020】
本発明における(a)バインダポリマーとしては、例えば、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、オキシラン環、酸無水物等の官能基を有するビニル共重合体に、少なくとも1個のエチレン性不飽和基と、オキシラン環、イソシアネート基、水酸基、カルボキシル基等の1個の官能基を有する化合物を付加反応させて得られる側鎖にエチレン性不飽和基を有するラジカル重合性共重合体等を使用することもできる。
【0021】
前記カルボキシル基、水酸基、アミノ基、オキシラン環、酸無水物等の官能基を有するビニル共重合体の製造に用いられる必須のビニル単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ケイ皮酸、アクリル酸2 -ヒドロキシエチル、メタクリル酸2 -ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド、イソシアン酸エチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、無水マレイン酸等のカルボキシル基、水酸基、アミノ基、オキシラン環、酸無水物等の官能基を有するビニル単量体等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0022】
このような側鎖にエチレン性不飽和基を有するラジカル重合性共重合体の製造には必要に応じ、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、オキシラン環、酸無水物等の官能基を有するビニル単量体以外の前記ビニル単量体を共重合させることができ、これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
また、側鎖にエチレン性不飽和基を有するラジカル重合性共重合体のエチレン性不飽和基濃度は、1.0×10 - 4〜6.0×10 - 3モル/gとすることが好ましく、2.0×10 - 4〜5.0×10 - 3モル/gとすることがより好ましく、3×10 - 4〜4.0×10 - 3モル/gとすることが特に好ましい。このエチレン性不飽和基濃度が1.0×10 - 4モル/g未満では、十分な硬化性が得られないために、液晶表示装置とした場合の耐熱性、耐湿性等が低下する傾向があり、6.0×10 - 3モル/gを超えると、側鎖にエチレン性不飽和基を有するラジカル重合性共重合体を製造する際にゲル化を起こす傾向がある。
【0024】
本発明における(a)バインダポリマーの重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定し、標準ポリスチレン換算した値)は、耐熱性、耐湿性、塗布性及び溶媒への溶解性等の点から、1,000〜300,000とすることが好ましく、5,000〜150,000とすることがより好ましい。
【0025】
本発明における(a)バインダポリマーは、前述のコンタクトホール等を形成する場合、現像により感光性樹脂組成物層を選択的に除去してパターンを形成する工程において、公知の各種現像液により現像可能となるように酸価を規定することができる。
【0026】
例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム等のアルカリ水溶液を用いて現像する場合には、酸価を50〜260mgKOH/gとすることが好ましい。この酸価が、50mgKOH/g未満では、現像が困難となる傾向があり、260mgKOH/gを超えると、耐現像液性(現像により除去されずに残りパターンとなる部分が、現像液によって侵されない性質)が低下する傾向がある。
【0027】
また、水又はアルカリ水溶液と1種以上の界面活性剤とからなるアルカリ水溶液を用いて現像する場合には、酸価を、16〜260mgKOH/gとすることが好ましい。この酸価が、16mgKOH/g未満では、現像が困難となる傾向があり、260mgKOH/gを超えると、耐現像液性が低下する傾向がある。
【0028】
本発明における(b)少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する光重合性不飽和化合物としては、例えば、多価アルコールにα,β -不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、2,2 -ビス(4 -(ジ(メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、グリシジル基含有化合物にα,β -不飽和カルボン酸を反応させで得られる化合物、ウレタンモノマー、ノニルフェニルジオキシレン(メタ)アクリレート、γ -クロロ -β -ヒドロキシプロピル -β' -(メタ)アクリロイルオキシエチル -o -フタレート、β -ヒドロキシエチル -β' -(メタ)アクリロイルオキシエチル -o -フタレート、β -ヒドロキシプロピル -β' -(メタ)アクリロイルオキシエチル -o -フタレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0029】
上記多価アルコールにα,β -不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンペンタエトキシトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート(ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート)、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記α,β -不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸等が拳げられる。
【0030】
上記2,2 -ビス(4 -(ジ(メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2 -ビス(4 -(ジ(メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2 -ビス(4 -(ジ(メタ)アクリロキシトリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2 -ビス(4 -(ジ(メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2 -ビス(4 -(ジ(メタ)アクリロキシデカエトキシ)フェニル)等が挙げられる。
【0031】
上記グリシジル基含有化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、2,2 -ビス(4 -(メタ)アクリロキシ -2 -ヒドロキシ -プロピルオキシ)フェニル等が拳げられる。
【0032】
上記ウレタンモノマーとしては、例えば、β位にOH基を有する(メタ)アクリルモノマーとイソホロンジイソシアネート、2,6 -トルエンジイソシアネート、2,4 -トルエンジイソシアネート、1,6 -ヘキサメチレンジイソシアネート等との付加反応物、トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート)ヘキサメチレンイソシアヌレート、エチレンオキシド変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド,プロピレンオキシド変性ウレタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0033】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸2 -エチルヘキシルエステル等が挙げられる。
また、本発明における表面に凹凸形状を形成する工程において、効果的に凹凸形状を形成できること及び基板と感光性樹脂組成物との密着性向上の観点から、テトラメチロールメタントリアクリレート(ペンタエリスリトールトリアクリレート)がより好ましい。
これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
本発明における(c)活光性線により遊離ラジカルを生成する光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N' -テトラメチル -4,4' -ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N' -テトラエチル -4,4' -ジアミノベンゾフェノン、4 -メトキシ -4' -ジメチルアミノベンゾフェノン、2 -ベンジル -2 -ジメチルアミノ -1 -(4 -モルホリノフェニル) -ブタノン -1(イルガキュア -369、チバスペシャリティーケミカルズ(株)商品名)、2 -メチル -1 -[4 -(メチルチオ)フェニル] -2 -モルフォリノ -プロパノン -1等の芳香族ケトン、2 -エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2 -tert -ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3 -ベンズアントラキノン、2 -フェニルアントラキノン、2,3 -ジフェニルアントラキノン、1 -クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、1,4 -ナフトキノン、9,10 -フェナントラキノン、2 -メチル -1,4 -ナフトキノン、2,3 -ジメチルアントラキノン等のキノン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2 -(o -クロロフェニル) -4,5 -ジフェニルイミダゾール二量体、2 -(o -クロロフェニル) -4,5 -ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2 -(o -フルオロフェニル) -4,5 -ジフェニルイミダゾール二量体、2 -(o -メトキシフェニル) -4,5 -ジフェニルイミダゾール二量体、2 -(p -メトキシフェニル) -4,5 -ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5 -トリアリールイミダゾール二量体、9 -フェニルアクリジン、1,7 -ビス(9,9' -アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、N -フェニルグリシン、N -フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物などが挙げられる。また、2,4,5 -トリアリールイミダゾール二量体において、2つの2,4,5 -トリアリールイミダゾールに置換した置換基は同一でも相違していてもよい。また、ジエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸の組み合わせのように、チオキサントン系化合物と3級アミン化合物とを組み合わせてもよい。
また、本発明における表面に凹凸形状を形成する工程において、基板と感光性樹脂組成物との密着性向上及び感度向上の観点から、2,4,5 -トリアリールイミダゾール二量体がより好ましい。
これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
本発明における(a)バインダポリマーの使用量は、(a)及び(b)成分の総量100重量部に対して、10〜80重量部とすることが好ましく、20〜75重量部とすることがより好ましく、25〜73重量部とすることが特に好ましく、30〜70重量部とすることが極めて好ましい。この使用量が10重量部未満では、塗布性が低下する傾向があり、80重量部を超えると、光硬化性、耐熱性あるいは表面に凹凸形状を形成する工程における凹凸形状形成性が低下する傾向がある。
【0036】
本発明における(b)少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する光重合性不飽和化合物の使用量は、(a)及び(b)成分の総量100重量部に対して、20〜90重量部とすることが好ましく、25〜80重量部とすることがより好ましく、27〜75重量部とすることが特に好ましく、30〜70重量部とすることが極めて好ましい。この使用量が20重量部未満では、光硬化性、耐熱性あるいは表面に凹凸形状を形成する工程における凹凸形状形成性が低下する傾向があり、90重量部を超えると、塗布性が低下する傾向がある。
【0037】
本発明における(c)活光性線により遊離ラジカルを生成する光重合開始剤の使用量は、(a)及び(b)成分の総量100重量部に対して、0.05〜20重量部とすることが好ましく、0.1〜15重量部とすることがより好ましく、0.15〜10重量部とすることが特に好ましい。この使用量が0.05重量部未満では、光硬化が不十分となる傾向があり、20重量部を超えると、前述の感光性樹脂組成物層に活性光線を像的に照射する工程において、感光性樹脂組成物層の活性光線照射表面での活性光吸収が増大して、内部の光硬化が不十分となる傾向がある。
また、本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、シランカップリング剤などの密着性付与剤、レベリング剤、可塑剤、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、香料、熱架橋剤、重合禁止剤等を(a)及び(b)成分の総量100重量部に対して各々0.01〜20重量部程度含有することができる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0038】
本発明の感光性樹脂組成物は、支持体上に積層して感光性エレメントとすることもできる。
本発明における支持体としては、特に制限はなく、公知のものを使用することができるが、基板上に感光性エレメントを貼り合わせる点及び貼り付けた後に、はく離する点で特に好適であるという理由から、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル等を材質としたフィルムが挙げられる。
本発明における感光性樹脂組成物層を前記支持体に形成する方法としては、公知の塗布方法を用いることができ、例えば、前記した基板上に、感光性樹脂組成物層を形成する工程で用いられる塗布方法全てが挙げられる。
本発明の感光性エレメントにおける感光性樹脂組成物層の厚さは、液晶表示装置とした場合の電気的特性を考慮して、0.1〜20μmとすることが好ましく、0.3〜15μmとすることがより好ましく、0.5〜10μmとすることが特に好ましい。
本発明の感光性エレメントは、感光性樹脂組成物層の上に、さらにカバーフィルムが積層されていてもよい。
カバーフィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等からなる厚さ5〜100μm程度のフィルムが挙げられる。
このようにして得られる感光性エレメントは、ロール状に巻いて保管し、あるいは使用できる。
【0039】
本発明の感光性エレメントを用いて表面に凹凸形状を形成する方法としては、前記本発明の感光性樹脂組成物を用いて表面に凹凸形状を形成する方法、すなわち(I)、(II)及び(III)工程の内、(I)の工程を(I')基板上に、感光性樹脂組成物層が基板に接するように感光性エレメントを積層する工程に代えた工程を含む方法等が挙げられる。以下、本発明における(I')基板上に、感光性樹脂組成物層が基板に接するように感光性エレメントを積層する工程の一例を説明する。
【0040】
〔(I')基板上に、感光性樹脂組成物層が基板に接するように感光性エレメントを積層する工程〕
本発明において、基板上に、前記感光性エレメントを積層する方法としては、感光性樹脂組成物層にカバーフィルムが接して存在しているときは、そのカバーフィルムを除去後、基板上に感光性樹脂組成物層が接するように、圧着ロールで圧着させること等により行うことができる。
【0041】
圧着ロールは、加熱圧着できるように加熱手段を備えたものであってもよく、加熱圧着する場合の加熱温度は、10〜180℃とすることが好ましく、20〜160℃とすることがより好ましく、30〜150℃とすることが特に好ましい。この加熱温度が、10℃未満では、感光性樹脂組成物層と基板との密着性が低下する傾向があり、180℃を超えると、感光性樹脂組成物層の構成成分が熱硬化あるいは熱分解する傾向がある。
【0042】
また、加熱圧着時の圧着圧力は、線圧で50〜1×105N/mとすることが好ましく、2.5×102〜5×104N/mとすることがより好ましく、5×102〜4×104N/mとすることが特に好ましい。この圧着圧力が、50N/m未満では、感光性樹脂組成物層と基板との密着性が低下する傾向があり、1×105N/mを超えると、基板が破壊される傾向がある。
【0043】
感光性エレメントを前記のように加熱すれば、基板を予熱処理することは必要ではないが、感光性樹脂組成物層と基板との密着性をさらに向上させる点から、基板を予熱処理することが好ましい。この時の予熱温度は、30〜180℃とすることが好ましい。
このようにして、本発明の感光性エレメントの感光性樹脂組成物層を基板上に積層することができる。
【0044】
また、本発明における液晶表示装置用基板の表面凹凸形状を有する有機物層に反射膜を形成することにより、反射型液晶表示装置用拡散反射板とすることもできる。前記有機物層に反射膜を形成する方法としては、公知の方法が使用でき、例えば、スパッタリング法、蒸着法等により、Ag、Al等の金属膜を形成する方法等が挙げられる。
【0045】
本発明の感光性樹脂組成物は、反射型液晶表示装置用拡散反射板の用途に限定されるものではなく、例えば、MVA -LCD用配向制御膜、反射型液晶表示装置用画素拡大レンズ膜、ノングレアシート、視野角制御フィルム、プロジェクタ用高反射スクリーン及びマイクロレンズ、リアプロジェクション用透過型スクリーン、ビューファインダ用マイクロレンズ、立体ディスプレイ用視野角制御フィルム、電気泳動表示装置、有機EL表示装置、無機EL表示装置、液晶用バックライト拡散板、照明及び標識用拡散反射板、簡易印刷用凸版等の各種部材凹凸形成用有機膜の用途、溝構造高分子液晶分子配向制御、溝構造低分子液晶分子配向制御等にも好適に使用することができる。
【0046】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0047】
製造例1
〔バインダポリマー溶液(a -1)の作製〕
撹拌機、還流冷却機、不活性ガス導入口及び温度計を備えたフラスコに、表1に示す(1)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で80℃に昇温し、反応温度を80℃±2℃に保ちながら、表1に示す(2)を4時間かけて均一に滴下した。
(2)の滴下後、80℃±2℃で6時間撹拌を続けた後、表1に示す(3)を添加した。
(3)を添加後、反応系を100℃に昇温し、0.5時間かけて表1に示す(4)を滴下した。(4)の滴下後、100℃で20時間撹拌を続けた後、室温(25℃)に冷却して、重量平均分子量が約30,000のフィルム性付与ポリマー溶液(固形分36.0重量%、エチレン性不飽和基濃度6.8×10 - 4モル/g)(a -1)を得た。
【0048】
【表1】
【0049】
(実施例1)
〔感光性樹脂組成物溶液(V -1)の作製〕
表2に示す材料を、攪拌機を用いて15分間混合し、感光性樹脂組成物溶液(V -1)を作製した。
支持体としてポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、得られた感光性樹脂組成物溶液(V -1)を支持体上にコンマコーターを用いて均一に塗布し、95℃の熱風対流式乾燥機で3分間乾燥して溶剤を除去し、感光性樹脂組成物層を形成した。得られた感光性樹脂組成物層を積層して、直径7mm、厚さ2mmの円板形状の感光性樹脂組成物サンプル片を作製し、80℃において、試料の厚さ方向に1.96×10 - 2Nの圧力を加えて厚さの変化速度を測定し、この変化速度からニュートン流体を仮定して、前述の関係式(数1)を用いて粘度を求めた。得られた感光性樹脂組成物の粘度は、2.2×105Pa・secであった。
【0050】
【表2】
【0051】
〔表面凹凸形状の形成〕
得られた感光性樹脂組成物溶液(V -1)を厚さ1mmのガラス基板上に塗布し、スピンコーターを使用して、1700回転/分で回転塗布して、ホットプレート上で90℃、5分間乾燥して、溶剤を除去し、膜厚4μmの感光性樹脂組成物層を形成した。
次いで、得られた感光性樹脂組成物層に、活性光線透過部と活性光線遮光部の境界線が規則的な10μm周期でパターニングされたフォトマスクを用い、縮小投影露光機(キヤノン株式会社製、FPA -3000iw)を使用して、マスク面垂直上方より露光量1.5×103J/m2で紫外線を像的に照射した後、120℃で30分間のボックス型乾燥機で加熱した。
次いで、東芝電材株式会社製東芝紫外線照射装置を使用して、3×104J/m2の紫外線照射を行い、感光性樹脂組成物層全体を光硬化した後、230℃で30分間のボックス型乾燥機で加熱し、さらにスパッタにより感光性樹脂組成物層上にAl金属膜0.1μmを成膜した。
得られた感光性樹脂組成物層は、パターン露光における活性光線透過部の断面が凸形状、活性光線遮光部の断面が凹形状である凹凸ピッチ10μmの形状を有し、その凹凸段差は約2μmであった。
また、得られた凹凸形状を有する感光性樹脂組成物層基板を液晶表示装置用拡散反射板として評価した結果、拡散反射特性に優れた凹凸形状面を維持しており、設計どおりの拡散反射特性が得られた。
【0052】
(実施例2)
〔表面凹凸形状の形成〕
実施例1と同様に、感光性樹脂組成物溶液(V -1)を用い、ガラス基板上に膜厚4μmの感光性樹脂組成物層を形成した。
次いで、得られた感光性樹脂組成物層に、活性光線透過部と活性光線遮光部の境界線が不規則的な曲線パターン及び直径10μmの活性光線不透過部分を有するフォトマスクを用い、平行光線露光機(オーク製作所株式会社製、EXM1201)を使用して、マスク面垂直上方より露光量5.0×102J/m2で紫外線を像的に照射した後、120℃で30分間のボックス型乾燥機で加熱した。
次いで、0.5重量%の界面活性剤が含有した0.5重量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を用いて、25℃で50秒間スプレー現像して、感光性樹脂組成物層を選択的に除去してホールパターンを形成した。
得られたホールパターンを観察したところ、光硬化した感光性樹脂組成物層が基板から剥がれることなく、直径10μmのホールパターンが良好に形成されていた。
次いで、東芝電材株式会社製東芝紫外線照射装置を使用して、3×104J/m2の紫外線照射を行い、感光性樹脂組成物層全体を光硬化した後、230℃で30分間のボックス型乾燥機で加熱し、さらにスパッタにより感光性樹脂組成物層上にAl金属膜0.1μmを成膜した。
得られた感光性樹脂組成物層は、パターン露光における活性光線透過部の断面が凸形状、活性光線遮光部の断面が凹形状である凹凸ピッチ10μmの形状を有し、その凹凸段差は約2μmであった。
また、得られた凹凸形状を有する感光性樹脂組成物層基板を液晶表示装置用拡散反射板として評価した結果、拡散反射特性に優れた凹凸形状面を維持しており、設計どおりの拡散反射特性が得られた。
【0053】
(実施例3)
〔感光性エレメント(i)の作製〕
支持体としてポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、実施例1で得られた感光性樹脂組成物溶液(V -1)を支持体上にコンマコーターを用いて均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で3分間乾燥して溶剤を除去し、感光性樹脂組成物層を形成した。得られた感光性樹脂組成物層の厚さは4μmであった。
次いで、得られた感光性樹脂組成物層の上に、さらに、25μmの厚さのポリエチレンフィルムを、カバーフィルムとして張り合わせて、感光性エレメント(i)を作製した。
【0054】
〔表面凹凸形状の形成〕
得られた感光性エレメント(i)のポリエチレンフィルムをはがしながら、厚さ1mmのガラス基板上に、感光性樹脂組成物層が接するようにラミネータ(日立化成工業株式会社製、商品名HLM -1500型)を用いて、ロール温度120℃、基板送り速度0.5m/分、圧着圧力(シリンダ圧力)4×105Pa(厚さが1mm、縦10cm×横10cmの基板を用いたため、この時の線圧は9.8×103N/m)の条件でラミネートして、ガラス基板上に、感光性樹脂組成物層及び支持体が積層された基板を作製した。
次いで、実施例1と同様に、活性光線透過部と活性光線遮光部の境界線が不規則的な曲線でパターニングされたフォトマスクを用い、縮小投影露光機(キヤノン株式会社製、FPA -3000iw)を使用して、マスク面垂直上方より露光量1.5×103J/m2で紫外線を像的に照射し、さらに支持体を引き剥がして除去した後、120℃で30分間のボックス型乾燥機で加熱した。
次いで、実施例1と同様に、東芝電材株式会社製東芝紫外線照射装置を使用して、3×104J/m2の紫外線照射を行い、感光性樹脂組成物層全体を光硬化した後、230℃で30分間のボックス型乾燥機で加熱し、さらにスパッタにより感光性樹脂組成物層上にAl金属膜0.1μmを成膜した。
得られた感光性樹脂組成物層は、パターン露光における活性光線透過部の断面が凸形状、活性光線遮光部の断面が凹形状である凹凸ピッチ10μmの形状を有し、その凹凸段差は約2μmであった。
また、得られた凹凸形状を有する感光性樹脂組成物層基板を液晶表示装置用拡散反射板として評価した結果、拡散反射特性に優れた凹凸形状面を維持しており、設計どおりの拡散反射特性が得られた。
【0055】
(比較例1)
〔感光性樹脂組成物溶液(V -2)の作製〕
表3に示す材料を、攪拌機を用いて15分間混合し、感光性樹脂組成物溶液(V -2)を作製した。
【0056】
【表3】
【0057】
支持体としてポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、得られた感光性樹脂組成物溶液(V -2)を支持体上にコンマコーターを用いて均一に塗布し、95℃の熱風対流式乾燥機で3分間乾燥して溶剤を除去し、感光性樹脂組成物層を形成した。得られた感光性樹脂組成物層を積層して、直径7mm、厚さ2mmの円板形状の感光性樹脂組成物サンプル片を作製し、80℃において、試料の厚さ方向に1.96×10 - 2Nの圧力を加えて厚さの変化速度を測定し、この変化速度からニュートン流体を仮定して、前述の関係式(数1)を用いて粘度を求めた。得られた感光性樹脂組成物の粘度は、2.0×107Pa・secであった。
【0058】
〔表面凹凸形状の形成〕
実施例1において、感光性樹脂組成物溶液(V -1)をここで得られた感光性樹脂組成物溶液(V -2)に代えた以外は実施例1と同様に、ガラス基板上に膜厚4μmの感光性樹脂組成物層を形成した。
次いで、実施例1と同様に、感光性樹脂組成物層に紫外線を像的に照射した後、120℃で30分間のボックス型乾燥機で加熱し、さらに東芝電材株式会社製東芝紫外線照射装置を使用して、3×104J/m2の紫外線照射を行い、感光性樹脂組成物層全体を光硬化した後、230℃で30分間のボックス型乾燥機で加熱し、さらにスパッタにより感光性樹脂組成物層上にAl金属膜0.1μmを成膜した。
得られた感光性樹脂組成物層は、凹凸形状を有しておらず、平坦な表面であった。また、得られた感光性樹脂組成物層基板を液晶表示装置用拡散反射板として評価した結果、正反射成分のみの反射特性であり、所望の拡散反射特性は得られなかった。
【0059】
(比較例2)
実施例1に記載の感光性樹脂組成物溶液(V -1)を用い、実施例1と同様にしてガラス基板上に膜厚4μmの感エネルギー性ネガ型樹脂組成物層を形成した。この感光性樹脂組成物層の上に紫外線照射部と紫外線遮光部の境界線が規則的な10μm周期でパターニングされたマスクを置き、マスク面垂直上方より1.5×103J/m2の紫外線を照射した後、室温(25℃)で1時間放置した。
この結果、感光性樹脂組成物層の表面には、紫外線照射部断面が凸、紫外線遮光部断面が凹の表面凹凸段差が観測されなかった。実施例では、表面凹凸段差が形成されるが,加熱する工程のない比較例では,所望の表面凹凸段差が生じなかった。
【0060】
(比較例3)
実施例1に記載の感光性樹脂組成物溶液(V -1)を用い、実施例1と同様にしてガラス基板上に膜厚4μmの感エネルギー性ネガ型樹脂組成物層を形成した。この感エネルギー性ネガ型樹脂組成物層の上に紫外線照射部と紫外線遮光部のパターニングされたマスクを置かずに、感エネルギー性ネガ型樹脂組成物層の垂直上方より1.5×103J/m2の紫外線を全面照射した後、120℃で30分間加熱した。感光性樹脂組成物層の表面に表面凹凸段差が観測されなかった。
実施例では,反射特性に極めて優れた表面凹凸段差が形成されるが,パターニングされたマスクを介して露光する工程のない比較例3では,表面凹凸段差が生じなかった。
【0061】
【発明の効果】
本発明の感光性樹脂組成物と感光性エレメントにより、簡便にかつ安価な方法で表面凹凸形状を有する有機物層を形成できる。また、高温処理時の形状安定性を高めることができ、金属膜の蒸着や熱処理時に表面凹凸形状が保たれ再現性の良好な凹凸形状を得ることができ、作業性が向上する。
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示装置用基板の表面凹凸形状を有する有機物層、例えば拡散反射膜に使用される感エネルギー性ネガ型樹脂組成物及び感光性エレメントに関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置は、ノート型パソコン、電子手帳、携帯情報端末機、アミューズメント機器、携帯電話機、テレビ等、あらゆる用途で利用されており、今後これらは大画面化、軽量化および薄型化対応機種で需要が伸びると考えられる。
一般に液晶表示装置の中には、液晶配向膜、偏光板、位相差フィルム、散乱板など光学調整に関わる透明材料が用いられており、それらの多くは、表面上に設計制御された微細な凹凸形状を必要とする。
これを実現するための有用な手法として、パターン形成されたマスクを介して感光性樹脂層に紫外線を照射し、樹脂層の露光部分又は未露光部分を現像液で除去することにより、拡散反射板表面に凹凸形状を形成する方法等が用いられてきた。
しかしながら、従来の方法では、所望の凹凸形状を得るために、感エネルギー性ネガ型樹脂の膜厚、感エネルギー性ネガ型樹脂の受光感度、マスクの開口比、露光量、現像液濃度、現像液温度あるいは現像時間の調整が必要であるため、製造プロセス上の変動因子が多く、同一の条件で同一の凹凸形状を得ることは困難であり、比較的高価でもある等の問題があった。また液晶表示装置はその作製工程の中で高温にさらされることが多く、内蔵された上述の凹凸形状が熱により変形を受けることが多かった。
【0003】
【特許文献1】
特開平4−243226号公報
【特許文献2】
特開平11−42649号公報
【特許文献3】
特開2000−098375号公報
【0004】
【解決しようとする課題】
本発明の目的は、液晶表示用基板において、簡便にかつ安価な方法で表面凹凸形状を有する有機物層を形成できる感エネルギー性ネガ型樹脂組成物及び感光性エレメントを提供することにある。また、高温処理時の形状安定性を高めることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(I)基板上に、感光性樹脂組成物層を形成する工程、(II)感光性樹脂組成物層に活性光線を像的に照射する工程、(III)加熱する工程、により像的に対応した表面凹凸形状を形成する感光性樹脂組成物であり、80℃における粘度が1×102〜1×107Pa・secであることを特徴とする感光性樹脂組成物である。
また、本発明は、[2](a)バインダポリマー、(b)少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する光重合性不飽和化合物、(c)活光性線により遊離ラジカルを生成する光重合開始剤を含有することを特徴とする上記[1]に記載の感光性樹脂組成物である。
さらに、本発明は、[3]上記[1]または上記[2]に記載の感光性樹脂組成物の層を支持体上に積層してなる感光性エレメントである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、表面凹凸形状形成方法の一例を説明する。
本発明の感光性樹脂組成物を用いた表面凹凸形状形成方法は、(I)基板上に、感光性樹脂組成物層を形成する工程、(II)感光性樹脂組成物層に活性光線を像的に照射する工程、(III)加熱する工程を含み、これにより像的に対応した凹凸形状を形成する。
【0007】
〔(I)基板上に、感光性樹脂組成物層を形成する工程〕
本発明で使用される基板は、特に制限はなく、例えば、ガラス板、クロムやITOなどの無機化合物を成膜したガラス板、シリコン基板、セラミック、ポリカーボネート系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエーテルスルホン樹脂フィルム、フッ素系樹脂フィルム、前記のプラスチック板など、好ましくは複屈折率が少ない(Δn=0.01以下)基材を用いることができる。この基板上には、絶縁層、電極、TFT等が設けられていてもよい。
【0008】
本発明において、基板上に、後述する感光性樹脂組成物層を形成する方法としては、後述する本発明の感光性樹脂組成物を構成する各成分を溶解又は分散可能な溶剤に、溶解又は混合させることにより、均一に分散した溶液とし、前記基板上に、塗布、乾燥する方法等が挙げられる。
【0009】
本発明における塗布方法としては、公知の塗布方法を用いることができ、例えば、ドクターブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ロールコーティング法、スクリーンコーティング法、スピナーコーティング法、インクジェットコーティング法、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、グラビアコーティング法、カーテンコーティング法、ダイコーティング法等が挙げられる。
乾燥温度は、60〜130℃とすることが好ましく、乾燥時間は、1分〜1時間とすることが好ましい。
本発明における感光性樹脂組成物層の厚さは、液晶表示装置とした場合の電気的特性を考慮して、0.1〜20μmとすることが好ましく、0.3〜15μmとすることがより好ましく、0.5〜10μmとすることが特に好ましい。
【0010】
〔(II)感光性樹脂組成物層に活性光線を像的に照射する工程〕
本発明において、感光性樹脂組成物層に活性光線を像的に照射する方法としては、基板上に積層された前記感光性樹脂組成物層にフォトマスクを介して、公知の活性光線を照射する方法等が挙げられる。
活性光線のエネルギー線量は、従来のエッチング工程を含む表面凹凸形成方法の中で照射される、例えば紫外線量に比べて同等あるいは少なくて済み、100〜104J/m2が好ましく、100〜5×103J/m2がより好ましく、500〜1×103J/m2が特に好ましい。
また、本発明における活性光線としては、公知の活性光源が使用でき、例えば、カーボンアーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等が挙げられ、紫外線等の活性光線を有効に放射するものであれば特に制限されない。
【0011】
〔(III)加熱する工程、により像的に対応した表面凹凸形状を形成する工程〕本発明において、加熱することにより凹凸形状を形成する方法としては、熱風放射、赤外線照射加熱等の公知の方法が挙げられ、基板上に形成された感光性樹脂組成物層が有効に加熱される方法であれば特に制限されない。
加熱時の温度は、40〜300℃とすることが好ましく、50〜290℃とすることがより好ましく、60〜280℃とすることが特に好ましく、70〜270℃とすることが極めて好ましい。この加熱温度が、40℃未満では、凹凸を形成する効果が不十分となる傾向があり、300℃を超えると、感光性樹脂組成物層の構成成分が熱分解する傾向がある。
このようにして、活性光線を像的に照射された感光性樹脂組成物層は、表面に凹凸形状が形成されることとなる。
また、本発明において、高画質で高速表示可能なTFT駆動方式の液晶表示装置の拡散反射板等として適用する場合、TFTのドレイン電極と反射電極を導通するための微細なコンタクホール形成を目的として、現像により感光性樹脂組成物層を選択的に除去してコンタクホールパターンを形成する工程を行うこともできる。
感光性樹脂組成物層を選択的に除去する現像方法としては、アルカリ水溶液、水系現像液、有機溶剤等の公知の現像液を用いて、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法により現像を行い、不要部を除去する方法等が挙げられ、中でも、環境、安全性の観点からアルカリ水溶液が好ましいものとして挙げられる。
アルカリ水溶液の塩基としては、水酸化アルカリ(リチウム、ナトリウム又はカリウムの水酸化物等)、炭酸アルカリ(リチウム、ナトリウム又はカリウムの炭酸塩若しくは重炭酸塩等)、アルカリ金属リン酸塩(リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等)、アルカリ金属ピロリン酸塩(ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等)、水酸化テトラメチルアンモニウム、トリエタノールアミンなどが挙げられ、中でも、水酸化テトラメチルアンモニウム等が好ましいものとして挙げられる。
現像温度及び時間は、本発明における感光性樹脂組成物層の現像性に合わせて調整することができる。
また、アルカリ水溶液中には、界面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を混入させることができる。
また、現像後、光硬化後の感光性樹脂組成物層に残存したアルカリ水溶液の塩基を、有機酸、無機酸又はこれらの酸水溶液を用いて、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知方法により酸処理(中和処理)することができる。
さらに、酸処理(中和処理)の後、水洗する工程を行うこともできる。
【0012】
本発明において、感光性樹脂組成物層表面に形成された凹凸形状のパターンを高温下で維持すること、高温高湿下で基板密着性を向上させること、及び耐薬品性を向上させること等を目的に、凹凸形状パターンを形成した感光性樹脂組成物層に(現像工程を含む場合には、その後に)活性光線を照射する工程を行うこともできる。
【0013】
本発明において、凹凸形状パターンを形成した感光性樹脂組成物層に活性光線を照射する方法としては、基板上にパターンが形成された感光性樹脂組成物層に公知の活性光線が有効に照射される方法であれば特に制限されない。
また、本発明における活性光線としては、前記(II)の工程で使用できる公知の活性光源が挙げられ、紫外線等を有効に放射するものであれば特に制限されない。
この時の活性光線の照射量は、通常、1×102〜1×105J/m2であり、照射の際に、加熱を伴うこともできる。この活性光線照射量が、1×102J/m2未満では、効果が不十分となる傾向があり、1×105J/m2を超えると、感光性樹脂組成物層が変色する傾向がある。
【0014】
また、本発明において、感光性樹脂組成物層表面に形成された凹凸形状のパターンを高温下で維持すること、高温高湿下で基板密着性を向上させること、及び耐薬品性を向上させること等を目的に、パターンを形成した感光性樹脂組成物層をさらに加熱することもできる。加熱する方法としては、熱風放射、赤外線照射加熱等の公知の方法が挙げられ、基板上にパターンが形成された感光性樹脂組成物層が有効に加熱される方法であれば特に制限されない。
加熱時の温度は、140〜300℃とすることが好ましく、150〜290℃とすることがより好ましく、160〜280℃とすることが特に好ましい。この加熱温度が、140℃未満では、効果が不十分となる傾向があり、300℃を超えると、感光性樹脂組成物層の構成成分が熱分解する傾向がある。
【0015】
本発明の感光性樹脂組成物は、前記各工程により表面に凹凸形状を形成するための有機物層に用いられるものであって、凹凸形状を有効に形成させる観点から、80℃における粘度を1×102〜1×107Pa・secとする。5×102〜5×106Pa・secであることがより好ましく、1×103〜3×106Pa・secであることが特に好ましく、5×103〜1×106Pa・secであることが極めて好ましい。80℃での粘度が1×102Pa・sec未満である場合には、基板上に前記感光性樹脂組成物を形成する場合に、乾燥時の塗布膜厚均一性が低下する傾向にあり、80℃での粘度が1×107Pa・secを超える場合には、加熱することにより凹凸形状を形成する工程において、表面凹凸形状を有効に形成できない傾向にある。
【0016】
なお、本発明における粘度とは、直径7mm、厚さ2mmの円板形状の感光性樹脂組成物サンプル片を作製し、80℃において、試料の厚さ方向に1.96×10−2Nの圧力を加えて厚さの変化速度を測定し、この変化速度からニュートン流体を仮定して、下記の関係式(数1)を用いて粘度に換算した値である。
【0017】
【数1】
μ=(2FZ3/3πR4)/(dZ/dt)
μ:粘度
F:サンプルの厚さ方向に加えた力
Z:サンプルの厚さ
R:サンプルの半径
t:サンプルに力を加えた時間
【0018】
本発明の感光性樹脂組成物は、(a)バインダポリマー、(b)少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する光重合性不飽和化合物、(c)活性光線により遊離ラジカルを生成する光重合開始剤を有してなる。
【0019】
本発明における(a)バインダポリマーとしては、特に制限はなく、例えば、ビニル共重合体が挙げられ、ビニル共重合体に用いられるビニル単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n -プロピル、メタクリル酸n -プロピル、アクリル酸iso -プロピル、メタクリル酸iso -プロピル、アクリル酸n -ブチル、メタクリル酸n -ブチル、アクリル酸iso -ブチル、メタアクリル酸iso -ブチル、アクリル酸sec -ブチル、メタクリル酸sec -ブチル、アクリル酸tert -ブチル、メタクリル酸tert -ブチル、アクリル酸ペンチル、メタクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、メタクリル酸ヘプチル、アクリル酸2 -エチルヘキシル、メタクリル酸2 -エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、メタクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、メタクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸テトラデシル、メタクリル酸テトラデシル、アクリル酸ヘキサデシル、メタクリル酸ヘキサデシル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸エイコシル、メタクリル酸エイコシル、アクリル酸ドコシル、メタクリル酸ドコシル、アクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロペンチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸シクロヘプチル、メタクリル酸シクロヘプチル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシエチル、アクリル酸メトキシジエチレングリコール、メタクリル酸メトキシジエチレングリコール、アクリル酸メトキシジプロピレングリコール、メタクリル酸メトキシジプロピレングリコール、アクリル酸メトキシトリエチレングリコール、メタクリル酸メトキシトリエチレングリコール、アクリル酸2 -ヒドロキシエチル、メタクリル酸2 -ヒドロキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノプロピル、メタクリル酸ジメチルアミノプロピル、アクリル酸2 -クロロエチル、メタクリル酸2 -クロロエチル、アクリル酸2 -フルオロエチル、メタクリル酸2 -フルオロエチル、アクリル酸2 -シアノエチル、メタクリル酸2 -シアノエチル、スチレン、α -メチルスチレン、ビニルトルエン、塩化ビニル、酢酸ビニル、N -ビニルピロリドン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0020】
本発明における(a)バインダポリマーとしては、例えば、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、オキシラン環、酸無水物等の官能基を有するビニル共重合体に、少なくとも1個のエチレン性不飽和基と、オキシラン環、イソシアネート基、水酸基、カルボキシル基等の1個の官能基を有する化合物を付加反応させて得られる側鎖にエチレン性不飽和基を有するラジカル重合性共重合体等を使用することもできる。
【0021】
前記カルボキシル基、水酸基、アミノ基、オキシラン環、酸無水物等の官能基を有するビニル共重合体の製造に用いられる必須のビニル単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ケイ皮酸、アクリル酸2 -ヒドロキシエチル、メタクリル酸2 -ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド、イソシアン酸エチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、無水マレイン酸等のカルボキシル基、水酸基、アミノ基、オキシラン環、酸無水物等の官能基を有するビニル単量体等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0022】
このような側鎖にエチレン性不飽和基を有するラジカル重合性共重合体の製造には必要に応じ、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、オキシラン環、酸無水物等の官能基を有するビニル単量体以外の前記ビニル単量体を共重合させることができ、これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
また、側鎖にエチレン性不飽和基を有するラジカル重合性共重合体のエチレン性不飽和基濃度は、1.0×10 - 4〜6.0×10 - 3モル/gとすることが好ましく、2.0×10 - 4〜5.0×10 - 3モル/gとすることがより好ましく、3×10 - 4〜4.0×10 - 3モル/gとすることが特に好ましい。このエチレン性不飽和基濃度が1.0×10 - 4モル/g未満では、十分な硬化性が得られないために、液晶表示装置とした場合の耐熱性、耐湿性等が低下する傾向があり、6.0×10 - 3モル/gを超えると、側鎖にエチレン性不飽和基を有するラジカル重合性共重合体を製造する際にゲル化を起こす傾向がある。
【0024】
本発明における(a)バインダポリマーの重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定し、標準ポリスチレン換算した値)は、耐熱性、耐湿性、塗布性及び溶媒への溶解性等の点から、1,000〜300,000とすることが好ましく、5,000〜150,000とすることがより好ましい。
【0025】
本発明における(a)バインダポリマーは、前述のコンタクトホール等を形成する場合、現像により感光性樹脂組成物層を選択的に除去してパターンを形成する工程において、公知の各種現像液により現像可能となるように酸価を規定することができる。
【0026】
例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム等のアルカリ水溶液を用いて現像する場合には、酸価を50〜260mgKOH/gとすることが好ましい。この酸価が、50mgKOH/g未満では、現像が困難となる傾向があり、260mgKOH/gを超えると、耐現像液性(現像により除去されずに残りパターンとなる部分が、現像液によって侵されない性質)が低下する傾向がある。
【0027】
また、水又はアルカリ水溶液と1種以上の界面活性剤とからなるアルカリ水溶液を用いて現像する場合には、酸価を、16〜260mgKOH/gとすることが好ましい。この酸価が、16mgKOH/g未満では、現像が困難となる傾向があり、260mgKOH/gを超えると、耐現像液性が低下する傾向がある。
【0028】
本発明における(b)少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する光重合性不飽和化合物としては、例えば、多価アルコールにα,β -不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、2,2 -ビス(4 -(ジ(メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、グリシジル基含有化合物にα,β -不飽和カルボン酸を反応させで得られる化合物、ウレタンモノマー、ノニルフェニルジオキシレン(メタ)アクリレート、γ -クロロ -β -ヒドロキシプロピル -β' -(メタ)アクリロイルオキシエチル -o -フタレート、β -ヒドロキシエチル -β' -(メタ)アクリロイルオキシエチル -o -フタレート、β -ヒドロキシプロピル -β' -(メタ)アクリロイルオキシエチル -o -フタレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0029】
上記多価アルコールにα,β -不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンペンタエトキシトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート(ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート)、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記α,β -不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸等が拳げられる。
【0030】
上記2,2 -ビス(4 -(ジ(メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2 -ビス(4 -(ジ(メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2 -ビス(4 -(ジ(メタ)アクリロキシトリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2 -ビス(4 -(ジ(メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2 -ビス(4 -(ジ(メタ)アクリロキシデカエトキシ)フェニル)等が挙げられる。
【0031】
上記グリシジル基含有化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、2,2 -ビス(4 -(メタ)アクリロキシ -2 -ヒドロキシ -プロピルオキシ)フェニル等が拳げられる。
【0032】
上記ウレタンモノマーとしては、例えば、β位にOH基を有する(メタ)アクリルモノマーとイソホロンジイソシアネート、2,6 -トルエンジイソシアネート、2,4 -トルエンジイソシアネート、1,6 -ヘキサメチレンジイソシアネート等との付加反応物、トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート)ヘキサメチレンイソシアヌレート、エチレンオキシド変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド,プロピレンオキシド変性ウレタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0033】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸2 -エチルヘキシルエステル等が挙げられる。
また、本発明における表面に凹凸形状を形成する工程において、効果的に凹凸形状を形成できること及び基板と感光性樹脂組成物との密着性向上の観点から、テトラメチロールメタントリアクリレート(ペンタエリスリトールトリアクリレート)がより好ましい。
これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
本発明における(c)活光性線により遊離ラジカルを生成する光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N' -テトラメチル -4,4' -ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N' -テトラエチル -4,4' -ジアミノベンゾフェノン、4 -メトキシ -4' -ジメチルアミノベンゾフェノン、2 -ベンジル -2 -ジメチルアミノ -1 -(4 -モルホリノフェニル) -ブタノン -1(イルガキュア -369、チバスペシャリティーケミカルズ(株)商品名)、2 -メチル -1 -[4 -(メチルチオ)フェニル] -2 -モルフォリノ -プロパノン -1等の芳香族ケトン、2 -エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2 -tert -ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3 -ベンズアントラキノン、2 -フェニルアントラキノン、2,3 -ジフェニルアントラキノン、1 -クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、1,4 -ナフトキノン、9,10 -フェナントラキノン、2 -メチル -1,4 -ナフトキノン、2,3 -ジメチルアントラキノン等のキノン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2 -(o -クロロフェニル) -4,5 -ジフェニルイミダゾール二量体、2 -(o -クロロフェニル) -4,5 -ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2 -(o -フルオロフェニル) -4,5 -ジフェニルイミダゾール二量体、2 -(o -メトキシフェニル) -4,5 -ジフェニルイミダゾール二量体、2 -(p -メトキシフェニル) -4,5 -ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5 -トリアリールイミダゾール二量体、9 -フェニルアクリジン、1,7 -ビス(9,9' -アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、N -フェニルグリシン、N -フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物などが挙げられる。また、2,4,5 -トリアリールイミダゾール二量体において、2つの2,4,5 -トリアリールイミダゾールに置換した置換基は同一でも相違していてもよい。また、ジエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸の組み合わせのように、チオキサントン系化合物と3級アミン化合物とを組み合わせてもよい。
また、本発明における表面に凹凸形状を形成する工程において、基板と感光性樹脂組成物との密着性向上及び感度向上の観点から、2,4,5 -トリアリールイミダゾール二量体がより好ましい。
これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
本発明における(a)バインダポリマーの使用量は、(a)及び(b)成分の総量100重量部に対して、10〜80重量部とすることが好ましく、20〜75重量部とすることがより好ましく、25〜73重量部とすることが特に好ましく、30〜70重量部とすることが極めて好ましい。この使用量が10重量部未満では、塗布性が低下する傾向があり、80重量部を超えると、光硬化性、耐熱性あるいは表面に凹凸形状を形成する工程における凹凸形状形成性が低下する傾向がある。
【0036】
本発明における(b)少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する光重合性不飽和化合物の使用量は、(a)及び(b)成分の総量100重量部に対して、20〜90重量部とすることが好ましく、25〜80重量部とすることがより好ましく、27〜75重量部とすることが特に好ましく、30〜70重量部とすることが極めて好ましい。この使用量が20重量部未満では、光硬化性、耐熱性あるいは表面に凹凸形状を形成する工程における凹凸形状形成性が低下する傾向があり、90重量部を超えると、塗布性が低下する傾向がある。
【0037】
本発明における(c)活光性線により遊離ラジカルを生成する光重合開始剤の使用量は、(a)及び(b)成分の総量100重量部に対して、0.05〜20重量部とすることが好ましく、0.1〜15重量部とすることがより好ましく、0.15〜10重量部とすることが特に好ましい。この使用量が0.05重量部未満では、光硬化が不十分となる傾向があり、20重量部を超えると、前述の感光性樹脂組成物層に活性光線を像的に照射する工程において、感光性樹脂組成物層の活性光線照射表面での活性光吸収が増大して、内部の光硬化が不十分となる傾向がある。
また、本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、シランカップリング剤などの密着性付与剤、レベリング剤、可塑剤、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、香料、熱架橋剤、重合禁止剤等を(a)及び(b)成分の総量100重量部に対して各々0.01〜20重量部程度含有することができる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0038】
本発明の感光性樹脂組成物は、支持体上に積層して感光性エレメントとすることもできる。
本発明における支持体としては、特に制限はなく、公知のものを使用することができるが、基板上に感光性エレメントを貼り合わせる点及び貼り付けた後に、はく離する点で特に好適であるという理由から、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル等を材質としたフィルムが挙げられる。
本発明における感光性樹脂組成物層を前記支持体に形成する方法としては、公知の塗布方法を用いることができ、例えば、前記した基板上に、感光性樹脂組成物層を形成する工程で用いられる塗布方法全てが挙げられる。
本発明の感光性エレメントにおける感光性樹脂組成物層の厚さは、液晶表示装置とした場合の電気的特性を考慮して、0.1〜20μmとすることが好ましく、0.3〜15μmとすることがより好ましく、0.5〜10μmとすることが特に好ましい。
本発明の感光性エレメントは、感光性樹脂組成物層の上に、さらにカバーフィルムが積層されていてもよい。
カバーフィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等からなる厚さ5〜100μm程度のフィルムが挙げられる。
このようにして得られる感光性エレメントは、ロール状に巻いて保管し、あるいは使用できる。
【0039】
本発明の感光性エレメントを用いて表面に凹凸形状を形成する方法としては、前記本発明の感光性樹脂組成物を用いて表面に凹凸形状を形成する方法、すなわち(I)、(II)及び(III)工程の内、(I)の工程を(I')基板上に、感光性樹脂組成物層が基板に接するように感光性エレメントを積層する工程に代えた工程を含む方法等が挙げられる。以下、本発明における(I')基板上に、感光性樹脂組成物層が基板に接するように感光性エレメントを積層する工程の一例を説明する。
【0040】
〔(I')基板上に、感光性樹脂組成物層が基板に接するように感光性エレメントを積層する工程〕
本発明において、基板上に、前記感光性エレメントを積層する方法としては、感光性樹脂組成物層にカバーフィルムが接して存在しているときは、そのカバーフィルムを除去後、基板上に感光性樹脂組成物層が接するように、圧着ロールで圧着させること等により行うことができる。
【0041】
圧着ロールは、加熱圧着できるように加熱手段を備えたものであってもよく、加熱圧着する場合の加熱温度は、10〜180℃とすることが好ましく、20〜160℃とすることがより好ましく、30〜150℃とすることが特に好ましい。この加熱温度が、10℃未満では、感光性樹脂組成物層と基板との密着性が低下する傾向があり、180℃を超えると、感光性樹脂組成物層の構成成分が熱硬化あるいは熱分解する傾向がある。
【0042】
また、加熱圧着時の圧着圧力は、線圧で50〜1×105N/mとすることが好ましく、2.5×102〜5×104N/mとすることがより好ましく、5×102〜4×104N/mとすることが特に好ましい。この圧着圧力が、50N/m未満では、感光性樹脂組成物層と基板との密着性が低下する傾向があり、1×105N/mを超えると、基板が破壊される傾向がある。
【0043】
感光性エレメントを前記のように加熱すれば、基板を予熱処理することは必要ではないが、感光性樹脂組成物層と基板との密着性をさらに向上させる点から、基板を予熱処理することが好ましい。この時の予熱温度は、30〜180℃とすることが好ましい。
このようにして、本発明の感光性エレメントの感光性樹脂組成物層を基板上に積層することができる。
【0044】
また、本発明における液晶表示装置用基板の表面凹凸形状を有する有機物層に反射膜を形成することにより、反射型液晶表示装置用拡散反射板とすることもできる。前記有機物層に反射膜を形成する方法としては、公知の方法が使用でき、例えば、スパッタリング法、蒸着法等により、Ag、Al等の金属膜を形成する方法等が挙げられる。
【0045】
本発明の感光性樹脂組成物は、反射型液晶表示装置用拡散反射板の用途に限定されるものではなく、例えば、MVA -LCD用配向制御膜、反射型液晶表示装置用画素拡大レンズ膜、ノングレアシート、視野角制御フィルム、プロジェクタ用高反射スクリーン及びマイクロレンズ、リアプロジェクション用透過型スクリーン、ビューファインダ用マイクロレンズ、立体ディスプレイ用視野角制御フィルム、電気泳動表示装置、有機EL表示装置、無機EL表示装置、液晶用バックライト拡散板、照明及び標識用拡散反射板、簡易印刷用凸版等の各種部材凹凸形成用有機膜の用途、溝構造高分子液晶分子配向制御、溝構造低分子液晶分子配向制御等にも好適に使用することができる。
【0046】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0047】
製造例1
〔バインダポリマー溶液(a -1)の作製〕
撹拌機、還流冷却機、不活性ガス導入口及び温度計を備えたフラスコに、表1に示す(1)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で80℃に昇温し、反応温度を80℃±2℃に保ちながら、表1に示す(2)を4時間かけて均一に滴下した。
(2)の滴下後、80℃±2℃で6時間撹拌を続けた後、表1に示す(3)を添加した。
(3)を添加後、反応系を100℃に昇温し、0.5時間かけて表1に示す(4)を滴下した。(4)の滴下後、100℃で20時間撹拌を続けた後、室温(25℃)に冷却して、重量平均分子量が約30,000のフィルム性付与ポリマー溶液(固形分36.0重量%、エチレン性不飽和基濃度6.8×10 - 4モル/g)(a -1)を得た。
【0048】
【表1】
【0049】
(実施例1)
〔感光性樹脂組成物溶液(V -1)の作製〕
表2に示す材料を、攪拌機を用いて15分間混合し、感光性樹脂組成物溶液(V -1)を作製した。
支持体としてポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、得られた感光性樹脂組成物溶液(V -1)を支持体上にコンマコーターを用いて均一に塗布し、95℃の熱風対流式乾燥機で3分間乾燥して溶剤を除去し、感光性樹脂組成物層を形成した。得られた感光性樹脂組成物層を積層して、直径7mm、厚さ2mmの円板形状の感光性樹脂組成物サンプル片を作製し、80℃において、試料の厚さ方向に1.96×10 - 2Nの圧力を加えて厚さの変化速度を測定し、この変化速度からニュートン流体を仮定して、前述の関係式(数1)を用いて粘度を求めた。得られた感光性樹脂組成物の粘度は、2.2×105Pa・secであった。
【0050】
【表2】
【0051】
〔表面凹凸形状の形成〕
得られた感光性樹脂組成物溶液(V -1)を厚さ1mmのガラス基板上に塗布し、スピンコーターを使用して、1700回転/分で回転塗布して、ホットプレート上で90℃、5分間乾燥して、溶剤を除去し、膜厚4μmの感光性樹脂組成物層を形成した。
次いで、得られた感光性樹脂組成物層に、活性光線透過部と活性光線遮光部の境界線が規則的な10μm周期でパターニングされたフォトマスクを用い、縮小投影露光機(キヤノン株式会社製、FPA -3000iw)を使用して、マスク面垂直上方より露光量1.5×103J/m2で紫外線を像的に照射した後、120℃で30分間のボックス型乾燥機で加熱した。
次いで、東芝電材株式会社製東芝紫外線照射装置を使用して、3×104J/m2の紫外線照射を行い、感光性樹脂組成物層全体を光硬化した後、230℃で30分間のボックス型乾燥機で加熱し、さらにスパッタにより感光性樹脂組成物層上にAl金属膜0.1μmを成膜した。
得られた感光性樹脂組成物層は、パターン露光における活性光線透過部の断面が凸形状、活性光線遮光部の断面が凹形状である凹凸ピッチ10μmの形状を有し、その凹凸段差は約2μmであった。
また、得られた凹凸形状を有する感光性樹脂組成物層基板を液晶表示装置用拡散反射板として評価した結果、拡散反射特性に優れた凹凸形状面を維持しており、設計どおりの拡散反射特性が得られた。
【0052】
(実施例2)
〔表面凹凸形状の形成〕
実施例1と同様に、感光性樹脂組成物溶液(V -1)を用い、ガラス基板上に膜厚4μmの感光性樹脂組成物層を形成した。
次いで、得られた感光性樹脂組成物層に、活性光線透過部と活性光線遮光部の境界線が不規則的な曲線パターン及び直径10μmの活性光線不透過部分を有するフォトマスクを用い、平行光線露光機(オーク製作所株式会社製、EXM1201)を使用して、マスク面垂直上方より露光量5.0×102J/m2で紫外線を像的に照射した後、120℃で30分間のボックス型乾燥機で加熱した。
次いで、0.5重量%の界面活性剤が含有した0.5重量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を用いて、25℃で50秒間スプレー現像して、感光性樹脂組成物層を選択的に除去してホールパターンを形成した。
得られたホールパターンを観察したところ、光硬化した感光性樹脂組成物層が基板から剥がれることなく、直径10μmのホールパターンが良好に形成されていた。
次いで、東芝電材株式会社製東芝紫外線照射装置を使用して、3×104J/m2の紫外線照射を行い、感光性樹脂組成物層全体を光硬化した後、230℃で30分間のボックス型乾燥機で加熱し、さらにスパッタにより感光性樹脂組成物層上にAl金属膜0.1μmを成膜した。
得られた感光性樹脂組成物層は、パターン露光における活性光線透過部の断面が凸形状、活性光線遮光部の断面が凹形状である凹凸ピッチ10μmの形状を有し、その凹凸段差は約2μmであった。
また、得られた凹凸形状を有する感光性樹脂組成物層基板を液晶表示装置用拡散反射板として評価した結果、拡散反射特性に優れた凹凸形状面を維持しており、設計どおりの拡散反射特性が得られた。
【0053】
(実施例3)
〔感光性エレメント(i)の作製〕
支持体としてポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、実施例1で得られた感光性樹脂組成物溶液(V -1)を支持体上にコンマコーターを用いて均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で3分間乾燥して溶剤を除去し、感光性樹脂組成物層を形成した。得られた感光性樹脂組成物層の厚さは4μmであった。
次いで、得られた感光性樹脂組成物層の上に、さらに、25μmの厚さのポリエチレンフィルムを、カバーフィルムとして張り合わせて、感光性エレメント(i)を作製した。
【0054】
〔表面凹凸形状の形成〕
得られた感光性エレメント(i)のポリエチレンフィルムをはがしながら、厚さ1mmのガラス基板上に、感光性樹脂組成物層が接するようにラミネータ(日立化成工業株式会社製、商品名HLM -1500型)を用いて、ロール温度120℃、基板送り速度0.5m/分、圧着圧力(シリンダ圧力)4×105Pa(厚さが1mm、縦10cm×横10cmの基板を用いたため、この時の線圧は9.8×103N/m)の条件でラミネートして、ガラス基板上に、感光性樹脂組成物層及び支持体が積層された基板を作製した。
次いで、実施例1と同様に、活性光線透過部と活性光線遮光部の境界線が不規則的な曲線でパターニングされたフォトマスクを用い、縮小投影露光機(キヤノン株式会社製、FPA -3000iw)を使用して、マスク面垂直上方より露光量1.5×103J/m2で紫外線を像的に照射し、さらに支持体を引き剥がして除去した後、120℃で30分間のボックス型乾燥機で加熱した。
次いで、実施例1と同様に、東芝電材株式会社製東芝紫外線照射装置を使用して、3×104J/m2の紫外線照射を行い、感光性樹脂組成物層全体を光硬化した後、230℃で30分間のボックス型乾燥機で加熱し、さらにスパッタにより感光性樹脂組成物層上にAl金属膜0.1μmを成膜した。
得られた感光性樹脂組成物層は、パターン露光における活性光線透過部の断面が凸形状、活性光線遮光部の断面が凹形状である凹凸ピッチ10μmの形状を有し、その凹凸段差は約2μmであった。
また、得られた凹凸形状を有する感光性樹脂組成物層基板を液晶表示装置用拡散反射板として評価した結果、拡散反射特性に優れた凹凸形状面を維持しており、設計どおりの拡散反射特性が得られた。
【0055】
(比較例1)
〔感光性樹脂組成物溶液(V -2)の作製〕
表3に示す材料を、攪拌機を用いて15分間混合し、感光性樹脂組成物溶液(V -2)を作製した。
【0056】
【表3】
【0057】
支持体としてポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、得られた感光性樹脂組成物溶液(V -2)を支持体上にコンマコーターを用いて均一に塗布し、95℃の熱風対流式乾燥機で3分間乾燥して溶剤を除去し、感光性樹脂組成物層を形成した。得られた感光性樹脂組成物層を積層して、直径7mm、厚さ2mmの円板形状の感光性樹脂組成物サンプル片を作製し、80℃において、試料の厚さ方向に1.96×10 - 2Nの圧力を加えて厚さの変化速度を測定し、この変化速度からニュートン流体を仮定して、前述の関係式(数1)を用いて粘度を求めた。得られた感光性樹脂組成物の粘度は、2.0×107Pa・secであった。
【0058】
〔表面凹凸形状の形成〕
実施例1において、感光性樹脂組成物溶液(V -1)をここで得られた感光性樹脂組成物溶液(V -2)に代えた以外は実施例1と同様に、ガラス基板上に膜厚4μmの感光性樹脂組成物層を形成した。
次いで、実施例1と同様に、感光性樹脂組成物層に紫外線を像的に照射した後、120℃で30分間のボックス型乾燥機で加熱し、さらに東芝電材株式会社製東芝紫外線照射装置を使用して、3×104J/m2の紫外線照射を行い、感光性樹脂組成物層全体を光硬化した後、230℃で30分間のボックス型乾燥機で加熱し、さらにスパッタにより感光性樹脂組成物層上にAl金属膜0.1μmを成膜した。
得られた感光性樹脂組成物層は、凹凸形状を有しておらず、平坦な表面であった。また、得られた感光性樹脂組成物層基板を液晶表示装置用拡散反射板として評価した結果、正反射成分のみの反射特性であり、所望の拡散反射特性は得られなかった。
【0059】
(比較例2)
実施例1に記載の感光性樹脂組成物溶液(V -1)を用い、実施例1と同様にしてガラス基板上に膜厚4μmの感エネルギー性ネガ型樹脂組成物層を形成した。この感光性樹脂組成物層の上に紫外線照射部と紫外線遮光部の境界線が規則的な10μm周期でパターニングされたマスクを置き、マスク面垂直上方より1.5×103J/m2の紫外線を照射した後、室温(25℃)で1時間放置した。
この結果、感光性樹脂組成物層の表面には、紫外線照射部断面が凸、紫外線遮光部断面が凹の表面凹凸段差が観測されなかった。実施例では、表面凹凸段差が形成されるが,加熱する工程のない比較例では,所望の表面凹凸段差が生じなかった。
【0060】
(比較例3)
実施例1に記載の感光性樹脂組成物溶液(V -1)を用い、実施例1と同様にしてガラス基板上に膜厚4μmの感エネルギー性ネガ型樹脂組成物層を形成した。この感エネルギー性ネガ型樹脂組成物層の上に紫外線照射部と紫外線遮光部のパターニングされたマスクを置かずに、感エネルギー性ネガ型樹脂組成物層の垂直上方より1.5×103J/m2の紫外線を全面照射した後、120℃で30分間加熱した。感光性樹脂組成物層の表面に表面凹凸段差が観測されなかった。
実施例では,反射特性に極めて優れた表面凹凸段差が形成されるが,パターニングされたマスクを介して露光する工程のない比較例3では,表面凹凸段差が生じなかった。
【0061】
【発明の効果】
本発明の感光性樹脂組成物と感光性エレメントにより、簡便にかつ安価な方法で表面凹凸形状を有する有機物層を形成できる。また、高温処理時の形状安定性を高めることができ、金属膜の蒸着や熱処理時に表面凹凸形状が保たれ再現性の良好な凹凸形状を得ることができ、作業性が向上する。
Claims (3)
- (I)基板上に、感光性樹脂組成物層を形成する工程、(II)感光性樹脂組成物層に活性光線を像的に照射する工程、(III)加熱する工程、により像的に対応した表面凹凸形状を形成する感光性樹脂組成物であり、80℃における粘度が1×102〜1×107Pa・secであることを特徴とする感光性樹脂組成物。
- (a)バインダポリマー、(b)少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する光重合性不飽和化合物、(c)活光性線により遊離ラジカルを生成する光重合開始剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
- 請求項1または請求項2に記載の感光性樹脂組成物の層を支持体上に積層してなる感光性エレメント。
Priority Applications (3)
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-
2002
- 2002-12-20 JP JP2002370629A patent/JP2004198995A/ja active Pending
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