JP2004198727A - 立体映像表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、簡易な構造で鮮明な立体映像を表示することができ、平面映像をも切り替えて表示することができる立体映像表示装置を提供する。
【解決手段】光透過型液晶表示素子2の前面に、それぞれ液晶駆動用ベタ電極を有し、リタデーションが2000(nm)以上で異なる値を有するSTN液晶表示素子を2枚重ね合わせ、該2枚のSTN液晶表示素子が2枚の偏光板32a、32bにより挟み込まれて形成されたシャッター素子が配置されている。上記光透過型液晶表示素子2に右目用映像と左目用映像とを周期的に切り替えて表示させるとともに、上記光透過型液晶表示素子2の映像切替周期に同期させて、上記シャッター素子3を構成する2枚のSTN液晶表示素子31a、31bのリタデーションの差を変化させることにより、上記右目用映像を右目に知覚させるとともに、左目用映像を左目に知覚させて、上記光透過型液晶表示素子2の映像を立体映像として見せることができる。
【選択図】 図1
【解決手段】光透過型液晶表示素子2の前面に、それぞれ液晶駆動用ベタ電極を有し、リタデーションが2000(nm)以上で異なる値を有するSTN液晶表示素子を2枚重ね合わせ、該2枚のSTN液晶表示素子が2枚の偏光板32a、32bにより挟み込まれて形成されたシャッター素子が配置されている。上記光透過型液晶表示素子2に右目用映像と左目用映像とを周期的に切り替えて表示させるとともに、上記光透過型液晶表示素子2の映像切替周期に同期させて、上記シャッター素子3を構成する2枚のSTN液晶表示素子31a、31bのリタデーションの差を変化させることにより、上記右目用映像を右目に知覚させるとともに、左目用映像を左目に知覚させて、上記光透過型液晶表示素子2の映像を立体映像として見せることができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、立体映像表示表示装置及びその立体映像表示装置に使用されるシャッター素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から立体映像を表示する技術は、種々研究されている。その中で代表的なものは、特殊な眼鏡を使用する方式のものと、眼鏡を使用しない方式のものに大別される。
【0003】
眼鏡を使用する方式には、赤、青眼鏡を使用するアナグリフ方式や、偏光眼鏡を使用する方式がある。これら両方式は、視差のある映像を観察者の左右の目にそれぞれ入力し、立体映像として認識させるものである。しかし、これら方式では眼鏡を着用する必要があり、煩わしいという問題があった。
【0004】
また、眼鏡無し方式の代表的なものとして、パララックスバリア方式やレンチキュラ方式がある。
【0005】
パララックスバリア方式の原理を図5に示す。液晶表示素子100には、右目用の映像101と左目用の映像102とが交互に表示されている。液晶表示素子100の前面には、該液晶表示素子100の画素ピッチと対応するスリット103を備えたバリア104が配されている。鑑賞者が該バリア104を通して液晶表示素子100を見たとき、鑑賞者の右目には右目用の映像101が見え、左目には左目用102の映像が見える。これにより、左右の目の視差作用を生じ、液晶表示素子100の映像を立体映像として見ることができる。
【0006】
レンチキュラ方式の原理を図6に示す。上記パララックスバリア方式と同様に、液晶表示素子200には、右目用の映像201と左目用の映像202とが交互に表示されている。該液晶表示素子200の前面には、レンチキュラレンズ203が配置されている。鑑賞者は、レンチキュラレンズ203を通して液晶表示素子200を見ることにより、右目で右目用の映像201を、左目で左目用の映像202を見ることができる。これにより、左右の目の視差作用を生じ、液晶表示素子200の映像を立体映像として見ることができる。
【0007】
しかし、これらの方式は、バリア又はレンズと液晶表示素子の画素ピッチとの合致に高い位置決め精度が要求され、製造上の難しさがあるうえ、コストがかかるなどの問題があった。また、これらの方式は、立体映像専用であり、通常の二次元表示をすることができない、といった問題もあった。
【0008】
そこで、これらの問題を解決するために、種々の研究開発が行われてきた。
【0009】
例えば、図7に示すように、90度位相の異なる帯状の偏光面が順番に配列している偏光フィルタ300、301、302を、横方向へ少しずつずらして3層で構成した偏光フィルタパネル304を配置した液晶表示装置が開示されている。該液晶表示装置は、周期的に映像表示ディスプレイに表示される左目用映像と右目用映像に同期して、偏光フィルタ300、301、302に電気的信号を与え、周期的に光の透過角度を変えることで左目用映像と右目用映像を振り分け、立体映像として表示させている(例えば、特許文献1参照。)。
【0010】
また、図8に示すように、液晶表示素子400の背面に2つのバックライト401a、401bとフレネルレンズ402を備え、該液晶表示素子400の映像を周期的に右目用映像と左目用映像とに切り替えて表示させるとともに、液晶表示の切替周期に同期させて前記2つのバックライト401a、401bを交互に点滅させる。これにより、鑑賞者は、右目用映像と左目用映像を交互に切り替えて認識することにより、液晶表示素子の映像を立体映像として見ることができるものである。(例えば、特許文献2参照。)。
【0011】
【特許文献1】
特開平6−105341号公報
【特許文献2】
特開平8−262370号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平6−105341公報に開示されている3層構造の偏光フィルタを用いる方法では、偏光フィルタを作製する際に、映像表示用の液晶表示素子の画素ピッチと合致させたピッチで、90°位相の異なる偏光面を配列させた偏光フィルタを3枚作成しなければならず、また、それら3枚のフィルタを所定の光学配置で貼り合わせるためには、高精度な位置決め技術が必要となる。
従って、本従来技術に係る立体映像表示装置は、製造上、技術的な困難を伴うという問題があった。
【0013】
更に、特開平8−262370公報では、立体映像表示装置の製造は比較的容易であるが、2つのバックライトを使用しているとこから、光源から液晶表示素子までの距離が必要となり、小型化には適さない。その上、製品コスト及び消費電力面でのランニングコストも大きいという問題があった。
【0014】
そこで、本発明は、上記課題を解決するために、2枚のSTN液晶表示素子を使用することで、簡易な構造で立体映像表示を可能とし、切替により通常の二次元表示をも可能とする立体映像表示装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明では、映像を表示させる光透過型液晶表示素子と、比較的単純な構造を有する2枚のSTN液晶表示素子を貼り合わせ、その2枚のSTN液晶表示素子を挟むように2枚の偏光板を配置させたシャッター素子を用いる。そして、光透過型液晶表示素子に右目用映像と左目用映像とを周期的に切り替えて表示させるとともに、映像切替周期の同期させて上記シャッター素子を駆動させる。
【0016】
本発明において、上記シャッター素子は、上記光透過型液晶表示素子の映像切替周期に同期させて、2枚のSTN(Super Twisted Nematic)液晶表示素子のリタデーションの差を変化させるように駆動させる。これにより、鑑賞者の右目には右目用映像を、左目には左目用映像を知覚させ、鑑賞者の両眼視差作用により、上記光透過型液晶表示素子の映像を立体映像として見ることができるようにしたものである。
【0017】
具体的に、請求項1に係る発明は、光透過型液晶表示素子の前面に、それぞれ液晶駆動用ベタ電極を有し、リタデーションが2000(nm)以上で異なる値を有するSTN液晶表示素子を2枚重ね合わせ、該2枚のSTN液晶表示素子が2枚の偏光板により挟み込まれて形成されたシャッター素子が配置された立体映像表示装置であって、上記光透過型液晶表示素子に右目用映像と左目用映像とを周期的に切り替えて表示させるとともに、上記光透過型液晶表示素子の映像切替周期に同期させて、上記シャッター素子を構成する2枚のSTN液晶表示素子のリタデーションの差を変化させることにより、上記右目用映像を右目に知覚させるとともに、左目用映像を左目に知覚させて、上記光透過型液晶表示素子の映像を立体映像として見せることができるようにしたことを特徴とする。
【0018】
本発明において、光透過型液晶表示素子は、右目用映像と左目用映像とを周期的に切り替えて表示する。これら右目用映像は右目のみに知覚され、左目用映像は左目のみに知覚されるようにシャッター素子を用いる。
【0019】
本発明に係るシャッター素子は、2枚のSTN液晶表示素子を重ね合わせ、それら2枚のSTN液晶表示素子を挟み込むように2枚の偏光板を形成して構成されている。
【0020】
STN液晶表示素子は、リタデーションが大きいという特長を有するため、2枚のSTN液晶表示素子を駆動させ、それら2枚のSTN表示素子のリタデーションの差を変化させることにより、透過する光の進行方向を明確に2方向に規制して切り替えることができる。
【0021】
即ち、光透過型液晶表示素子が右目用映像を表示している状態において、上記シャッター素子は、右目の視角方向にのみ光を透過し、一方、光透過型液晶表示素子が左目用映像を表示している状態において、上記シャッター素子は、左目の視角方向のみに光を透過する。これにより、鑑賞者は、両眼視差のある右目の映像と左目の映像をそれぞれ認識することにより、光透過型液晶表示素子の映像を立体映像として見ることができる。
【0022】
なお、発明において、各STN液晶表示装置のリタデーションが2000nm未満であると、光透過型液晶表示素子に表示される右目用映像と左目用映像とを明確に分離することが困難となる。
【0023】
請求項2に係る発明は、光透過型液晶表示素子の前面に、それぞれ液晶駆動用ベタ電極を有し、リタデーションが2000(nm)以上で異なる値を有するSTN液晶表示素子を2枚重ね合わせ、該2枚のSTN液晶表示素子が2枚の偏光板により挟み込まれて形成されたシャッター素子が配置された立体映像表示装置であって、上記光透過型液晶表示素子は、立体映像用表示と平面映像用表示が可能である。
【0024】
本発明に係る立体映像表示装置において、立体映像を表示させる場合、上記光透過型液晶表示素子は右目用映像と左目用映像とを周期的に切り替える表示を行うとともに、上記光透過型液晶表示素子の映像切替周期に同期させて、上記シャッター素子を構成する2枚のSTN液晶表示素子のリタデーションの差を変化させることにより、上記右目用映像を右目に知覚させるとともに、左目用映像を左目に知覚させて、上記光透過型液晶表示素子の映像を立体映像として見せることができる。
【0025】
本発明に係る立体映像表示装置において、平面映像を表示させる場合、上記光透過型液晶表示素子は平面映像用表示を行うとともに、上記シャッター素子を構成する2枚のSTN液晶表示素子のリタデーションをともに10(nm)以下とすることにより、上記光透過型液晶表示素子の映像を平面映像として見せることができることを特徴とする。
【0026】
本発明に係る立体映像表示装置は、立体映像を表示する場合、上記発明と同様に光透過型液晶表示素子に右目用映像と左目用映像を交互に表示する立体映像用表示を行う。上記シャッター素子は、上記光透過型液晶表示素子の映像切替周期に同期させて、2枚のSTN液晶表示素子のリタデーションの差を変化させることにより、上記右目用映像を右目に知覚させるとともに、左目用映像を左目に知覚させて、上記光透過型液晶表示素子の映像を立体映像として見せる。
【0027】
なお、本発明において、各STN液晶表示装置のリタデーションが2000nm未満であると、光透過型液晶表示素子に表示される右目用映像と左目用映像とを明確に分離することが困難となる。
【0028】
一方、本発明に係る立体映像表示装置は、平面映像を表示する場合、上記光透過型液晶表示素子に平面映像用表示を行わせる。平面映像用表示とは、通常の映像表示であって、右目用映像、左目用映像に切り替わる映像ではなく、一定の視角により認識される映像が継続して表示されるものをいう。
【0029】
この場合、上記シャッター素子を構成する2枚のSTN液晶表示素子のリタデーションをともに10(nm)以下となるように駆動させ、右目及び左目に同じ平面映像用表示を同時に知覚させることにより、鑑賞者に通常の平面映像を見せることができる。このように、本発明に係る立体映像表示装置は、立体映像のみならず平面映像をも表示することができる。
【0030】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載された立体映像表示装置であって、上記シャッター素子を構成する2枚のSTN液晶表示素子のうち、いずれか一方のSTN液晶表示素子のリタデーションをA(nm)とし、他方のSTN液晶表示素子のリタデーションをB(nm)とした場合、上記2枚のSTN液晶表示素子は、ともに電荷が印加されていない状態で、右目の視角に対しA−B=0(nm)、且つ、左目の視角に対しA−B=200(nm)となるように光学配置されており、2枚のSTN液晶表示素子に印加する電圧を調整することで、右目の視角に対しA−B=200(nm)、且つ、左目の視角に対しA−B=0(nm)とリタデーションの差を反転させることにより、上記光透過型液晶表示素子の映像を立体映像として見せることができるようにしたことを特徴とする。
【0031】
本発明に係る立体映像表示装置は、2枚のSTN液晶表示素子の右目の視角と左目の視角に対するリタデーションの差を、200(nm)と0(nm)と交互に切り替えることにより、右目用映像と左目用映像を明確に分離して鑑賞者に知覚させる。
【0032】
即ち、上記シャッター素子の挙動について、2枚のSTN液晶表示素子に電荷が印加されていない状態において、シャッター素子は、右目の視角に対し右目用映像を白表示(A−B=0nm)とし、このとき、左目の視角に対してはリタデーションの差が反転し、左目用映像を黒表示(A−B=200nm)とする。一方、両STN液晶表示素子に電圧が印加された状態において、シャッター素子は、右目の視角に対し右目用映像を黒表示(A−B=200nm)とし、このとき、左目の視角に対してはリタデーションの差が反転し、左目用映像を白表示(A−B=0nm)とする。
【0033】
ここで、2枚のSTN液晶表示素子のリタデーションの差を0nmと200nmに設定するのは、この組み合わせが最も白黒表示のコントラストが良くなるからである。
【0034】
また、本発明において、上記2枚のSTN液晶表示素子のリタデータションの関係が、A−200nm≧Bとなる様に電圧を印加することにより、右目用映像と左目用映像を明確に分離することができる。
【0035】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載された立体映像表示装置であって、上記シャッター素子を構成する2枚のSTN液晶表示素子に用いられている液晶材料のツイスト角が、240°以上、270°以下であることを特徴とする。
【0036】
上記2枚のSTN液晶表示素子において、ツイスト角が240°以上、270°以下である液晶材料を使用することにより、各STN液晶表示素子のリタデーションを大きくすることができる。そのため、光透過型液晶表示素子に表示される右目用映像と左目用映像とを明確に分離することができる。ツイスト角度が240°未満であると、視角を狭くするための光学配置が設定しずらくなり、鮮明な立体映像の表示が困難になる。
【0037】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載された立体映像表示装置であって、右目若しくは左目の視角方向から見て、上記2枚の偏光板の各偏光軸をともにツイストしている液晶分子の中央の長軸方向に対して平行に配置するか、あるいは、1本の偏光軸は上記液晶分子の長軸方向に平行であって、且つ、他の1本の偏光軸は上記液晶分子の長軸方向に直交するように配置されていることを特徴とする。
【0038】
このように上記偏光板の偏光軸を配置することで、2枚の偏光板は平行ニコル、あるいは、クロスニコルに配置されることとなり、STN液晶表示素子に対する右目若しくは左目の視角の広がりを押さえることができる。そのため、左目と右目に別々に送られる映像情報は、交錯することなく明確に分離されて鑑賞者に認識される。その結果、鑑賞者は明快な立体映像を得ることができる。
【0039】
請求項6に係る発明は、それぞれ液晶駆動用ベタ電極を有し、リタデーションが2000(nm)以上で異なる値を有するSTN液晶表示素子を2枚重ね合わせ、該2枚のSTN液晶表示素子が2枚の偏光板により挟み込まれて形成されたシャッター素子である。上記2枚のSTN液晶表示素子のうち、いずれか一方のSTN液晶表示素子のリタデーションをA(nm)とし、他方のSTN液晶表示素子のリタデーションをB(nm)とした場合、上記2枚のSTN液晶表示素子は、ともに電荷が印加されていない状態で、異なる2方向のうち、1方向の視角に対しA−B=0(nm)、且つ、他の1方向の視角に対してA−B=200(nm)となるように光学配置されており、2枚のSTN液晶表示素子に印加する電圧を調整することで、上記1方向の視角に対しA−B=200(nm)、且つ、上記他の1方向の視角に対しA−B=0(nm)とリタデーションの差を反転させることを特徴とする。
【0040】
本発明は、右目用映像と左目用映像を周期的に切り替えて表示する表示素子を備えた立体映像表示装置に使用されるシャッター素子である。
【0041】
本発明に係るシャッター素子に使用されるSTN液晶表示素子は、リタデーションが大きいという特長を有する。そのため、2枚のSTN液晶表示素子を駆動させ、それら2枚のSTN表示素子のリタデーションの差を変化させることにより、透過する光の進行方向を明確に2方向に規制して切り替えることができる。
【0042】
従って、本発明に係るシャッター素子は、表示素子の右目用映像を右目のみに知覚させ、左目用映像を左目のみに知覚させることができる。
【0043】
即ち、表示素子が右目用映像を表示している状態において、上記シャッター素子は、右目の視角方向にのみ光を透過し、一方、表示素子が左目用映像を表示している状態において、上記シャッター素子は、左目の視角方向のみに光を透過する。これにより、本発明に係るシャッター素子を、右目用映像と左目用映像とを切り替えて表示する表示装置と組み合わして使用した場合、鑑賞者は、両眼視差のある右目の映像と左目の映像をそれぞれ認識することにより、表示素子の映像を立体映像として見ることができる。
【0044】
なお、発明において、各STN液晶表示装置のリタデーションが2000nm未満であると、光透過型液晶表示素子に表示される右目用映像と左目用映像とを明確に分離することが困難となる。
【0045】
請求項7に係る発明は、それぞれ液晶駆動用ベタ電極を有し、リタデーションが2000(nm)以上で異なる値を有するSTN液晶表示素子を2枚重ね合わせ、該2枚のSTN液晶表示素子が2枚の偏光板により挟み込まれて形成されたシャッター素子である。上記2枚のSTN液晶表示素子のうち、いずれか一方のSTN液晶表示素子のリタデーションをA(nm)とし、他方のSTN液晶表示素子のリタデーションをB(nm)とした場合、上記2枚のSTN液晶表示素子は、ともに電荷が印加されていない状態で、異なる2方向のうち、1方向の視角に対しA−B=0(nm)、且つ、他の1方向の視角に対してA−B=200(nm)となるように光学配置されており、2枚のSTN液晶表示素子に印加する電圧を調整することで、上記1方向の視角に対しA−B=200(nm)、且つ、上記他の1方向の視角に対しA−B=0(nm)とリタデーションの差を反転させることが可能である。また、上記2枚のSTN液晶表示素子に印加する電圧を調整することで、2枚のSTN液晶表示素子のリタデーションをともに10(nm)以下とすることが可能であることを特徴とする。
【0046】
本発明に係るシャッター素子は、立体映像と平面映像とを切り替えて表示することが可能な立体映像表示装置に使用される。
【0047】
即ち、本発明に係るシャッター素子は、光透過型液晶表示素子の右目用映像と左目用映像の映像切替周期に同期させて、2枚のSTN液晶表示素子のリタデーションの差を変化させることにより、上記右目用映像を右目に知覚させるとともに、左目用映像を左目に知覚させて、上記光透過型液晶表示素子の映像を立体映像として見せる。
【0048】
一方、本発明に係るシャッター素子は、平面表示を行う場合、2枚のSTN液晶表示素子のリタデーションがともに10(nm)以下となるように駆動することで、右目及び左目に同じ平面映像用表示を同時に知覚させ、鑑賞者に通常の平面映像を見せることができる。
【0049】
ここで、平面映像用表示とは、通常の映像表示であって、右目用映像、左目用映像に切り替わる映像ではなく、一定の視角により認識される映像が継続して表示されるものをいう。
【0050】
請求項8に係る発明は、請求項7に記載されたシャッター素子であって、上記2枚のSTN液晶表示素子に用いられている液晶材料のツイスト角が、240°以上、270°以下であることを特徴とする。
【0051】
上記2枚のSTN液晶表示素子において、ツイスト角が240°以上、270°以下である液晶材料を使用することにより、各STN液晶表示素子のリタデーションを大きくすることができる。そのため、表示素子に表示される右目用映像と左目用映像とを明確に分離することができる。ツイスト角度が240°未満であると、視角を狭くするための光学配置が設定しずらくなり、鮮明な立体映像の表示が困難となる。
【0052】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0053】
図1に示すように、本実施形態に係る立体映像表示装置1は、映像を表示する光透過型液晶表示素子2と、シャッター素子2と、バックライト4とを備える。
【0054】
本実施形態に係る光透過型液晶表示素子2は、TFT(Thin Film Transistor)素子や画素電極を備えたアクティブマトリクス基板と、ITO(Indium Tin Oxide)からなる対向電極やカラーフィルタ層を備えた対向基板とを対向させて配置し、両基板間に液晶材料が封入された構造を有する。
【0055】
上記光透過型液晶表示素子2は、ITO等透明導電体で形成された画素電極を備え、光透過型液晶表示素子2の背面側に配置されたバックライト4から照射された光をシャッター素子3側に透過することができる。
【0056】
また、上記光透過型液晶表示素子2は、ドライバ回路から供給される信号に基づき、立体映像用表示と平面映像用表示を切り替えて表示することができる。
【0057】
本実施形態において、立体映像を表示する場合、光透過型液晶表示素子2は、右目用映像と左目用映像とを周期的に切り替えて表示する。右目用映像と左目用映像とは、実際に人間の両目が物体を視覚で認識する際に生じる両眼視差を考慮して作成された映像である。右目用映像を右目で知覚し、左目用映像を左目で知覚できるようにして、例えば、数十ヘルツという短い周期で両映像を切り替えて表示することにより、鑑賞者の網膜に生じる残像が脳内で合成されて立体映像として認識される。
【0058】
一方、本実施形態に係る立体映像表示装置2は、平面映像を表示する場合、上記光透過型液晶表示素子2に平面映像用表示を行う。平面映像用表示とは、通常の映像表示であって、右目用映像、左目用映像に切り替わる映像ではなく、一定の視角により認識される映像が継続して表示されるものをいう。
【0059】
本実施形態に係るシャッター素子3は、2枚のSTN液晶表示素子31a、31bを重ね合わせ、該2枚のSTN液晶表示素子31a、31bを2枚の偏光板32a、32bが挟み込むように形成されてている。
【0060】
各STN液晶表示素子31a、31bには、2枚のガラス基板上にそれぞれITOからなる液晶駆動用ベタ電極が形成されており、該ベタ電極の上面の略全面には、ポリイミド製配向膜が所定の厚みで印刷されている。
【0061】
該配向膜の表面には、上記光透過型液晶表示素子2に対向するSTN表示素子31aの一方の基板に対して、180°、240°で液晶分子がツイストするようにラビング処理が施される。上記ガラス基板の内縁に沿って貼り合せ用シール材がスクリーン印刷により形成される。該シール材の内側領域であって配向膜面上に上下基板のセル厚制御用スペーサを散布する。この状態で、上下2枚のガラス基板を重ね合わせ、加熱処理を施すことにより上記ガラス基板を貼り合わせる。
【0062】
このように貼り合わされた2枚のガラス基板間のセルギャップにSTNモードの液晶材料を注入し、注入口を感光性樹脂で封止する。本実施形態において使用される液晶材料は、上記シャッター素子の黒表示と白表示のコントラストを向上させるため、そのツイスト角が240°以上、270°以下のものが好適である。
【0063】
本実施形態に係るSTN液晶表示素子31a、31bは、それぞれ液晶駆動用ベタ電極を備えているため、全面黒表示(遮蔽状態)あるいは全面白表示(透過状態)を切り替えて表示することができる。
【0064】
上記シャッター素子3を構成するSTN液晶表示素子31a、31bは、それぞれリタデーションが2000(nm)以上であって、異なる値を有する。本実施形態において、2枚のSTN液晶表示素子31a、31bのうち、上記光透過型液晶表示素子2に近接するSTN液晶表示素子31aに注入する液晶の屈折率とセルギャップの積をリタデーションRe=A(nm)とし、一方、他のSTN液晶表示素子31bに注入する液晶の屈折率を下げ、その屈折率とセルギャップの積をリタデーションRe=B(nm)とする。
【0065】
本実施形態に係る各STN液晶表示素子31a、31bのリタデーションA、Bは、電圧が印加されていない状態で、A>B≧2000(nm)との関係が成り立つように構成する。
【0066】
ここで、2枚のSTN液晶表示素子31a、31bに形成された配向膜のラビング方向について説明する。上述の通り、図2に示すように、2枚のSTN液晶表示素子31a、31bは、それぞれのガラス基板に形成された配向膜のラビング方向が一致するように重ねて配置されている。
【0067】
上記2枚の偏光板32a、32bは、右目若しくは左目の視角方向から見て、各偏光板の偏光軸をともにツイストしている液晶分子の中央の長軸方向に対して平行に配置するか、あるいは、1本の偏光軸は上記液晶分子の長軸方向に平行であって、且つ、他の1本の偏光軸は上記液晶分子の長軸方向に直交するように配置する。
【0068】
図2に示すように、上記2枚の偏光板32a、32bの配置軸は、該STN液晶表示素子31a、31bの視角方向に対して、直角(I)、あるいは平行(II)に配置されている。従って、各偏光板の偏光軸が、ツイストしている中央の液晶分子の配向方向に対し、直交又は平行するように配置されることとなる。
【0069】
本実施形態において、2枚のSTN液晶表示素子31a、31bのうち、リタデーションの大きい方のSTN液晶表示素子31a、即ち、リタデーションRe=A(nm)の偏光板を光透過型液晶表示素子2に対向するように配置した。
【0070】
このように構成されたシャッター素子3は、各STN表示素子に印加される電圧を調整することで、2枚のSTN液晶表示素子31a、31bのリタデーションの差を変化させることことができる。
【0071】
即ち、本実施形態において、上記2枚のSTN液晶表示素子31a、31bは、ともに電荷が印加されていない状態で、右目の視角に対しA−B=0(nm)、且つ、左目の視角に対しA−B=200(nm)となるように光学配置されている。また、2枚のSTN液晶表示素子31a、31bに印加する電圧を調整することで、右目の視角に対しA−B=200(nm)、且つ、左目の視角に対しA−B=0(nm)となるようリタデーションの差を反転させることができる。
【0072】
これにより、上記各STN液晶表示素子31a、31bの無印加状態において、右目には上記光透過型液晶表示素子2の表示された右目用映像のみが知覚され、左目にはシャッター素子3の黒表示が知覚される。一方、上記各STN液晶表示素子31a、31bに所定の電圧が印加された状態において、右目にはシャッター素子3の黒表示が知覚され、左目には上記光透過型液晶表示素子2に切り替わって表示された左目用映像が知覚される。
【0073】
本実施形態に係る立体映像表示装置1は、上記光透過型液晶表示素子2の右目用映像と左目用映像との切替周期に同期させて、シャッター素子3を構成する各STN液晶表示素子31a、31bのリタデーションの差を切り替えて変化させる。
【0074】
本実施形態において、上記画像の切替周期は、60(Hz)程度が好適である。
【0075】
この結果、鑑賞者の右目の網膜には右目用映像の残像が生じ、左目の網膜には左目用映像の残像が生じる。これらの残像が鑑賞者の脳内で合成されることにより、鑑賞者は光透過型液晶表示素子2に表示される映像を立体映像として認識することができる。
【0076】
本実施形態に係る立体映像表示装置1は、平面映像を表示させることも可能である。
【0077】
平面映像を表示させる場合、上記光透過型液晶表示素子2に平面映像用表示を行わせるとともに、上記シャッター素子3を構成する2枚のSTN液晶表示素子のリタデーションを、ともに10(nm)以下となるように印加電圧を調整する。
【0078】
このように調整することにより、上記シャッター素子3は、右目の視角と左目の視角に対し、同等に光を透過するすることができる。その結果、本実施形態に係る立体映像表示装置は、感謝者の右目及び左目に同じ平面映像用表示を同時に知覚させることにより、通常の平面映像を見せることができる。
【0079】
このように、本実施形態に係る立体映像表示装置1は、立体映像のみならず平面映像をも表示することができる。
【0080】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0081】
【実施例1】
実施例1に係る立体映像表示装置1は、光透過型液晶表示素子2と、シャッター素子3及びバックライト4を備える。
【0082】
本実施例に係る光透過型液晶表示素子2は、右目用映像と左目用映像とを60(Hz)の周波数で切り替えて表示することができる。
【0083】
本実施例に係るシャッター素子3には、2枚のSTN液晶表示素子31a、31bが重ね合わされて配置され、これら2枚のSTN液晶表示素子31a、31bを挟み込むように2枚の配向板32a、32bが形成されている。
【0084】
上記各STN液晶表示素子31a、31bには、それぞれ240°でツイストする液晶材料が封入されている。上記2枚の偏光板32a、32bの配置軸は、上記STN液晶表示素子31a、31bの視角方向に対して垂直に配置されている。従って、各偏光板の偏光軸は、ツイストしている中央の液晶分子の配向方向に対して直交するように配置されることとなる。
【0085】
本実施例において、ともに電圧が印加されていない状態で、2枚のSTN液晶表示素子31a、31bのうち、光透過型液晶表示素子2に近い方のSTN液晶表示素子31aのリタデーションは、Re=2200(nm)となり、光透過型液晶表示素子2から遠い方のSTN液晶表示素子31bのリタデーションは、Re=2000(nm)となるよう設定されている。リタデーションRe=2200(nm)のSTN液晶表示素子31aを光透過型液晶表示素子2に対向するように配置した。
【0086】
図3に示すように、上記各STN液晶表示素子31a、31bのリタデーションの差は、ともに電荷が印加されていない状態で、右目の視角に対しA−B=0(nm)となり、左目の視角に対しA−B=200(nm)となるように光学配置されている。また、図4に示すように、各STN液晶表示素子31a、31bに所定の電圧が印加された状態では、右目の視角に対しA−B=200(nm)となり、左目の視角に対しA−B=0(nm)となるようリタデーションの差を反転させる。
【0087】
バックライト4を点灯し、上記光透過型液晶表示素子2が右目用映像のみを表示させた状態で、各STN液晶表示素子31a、31bに電圧を印可せずに画面を見ると、右目Rには、光透過型液晶表示素子2の右目用映像が知覚され、左目Lには、シャッター素子3の黒表示が知覚されるのが確認できた。
【0088】
次に、上記光透過型液晶表示素子2が左目用映像のみを表示させた状態で、各STN液晶表示素子31a、31bに所定の電圧を印可して画面を見ると、右目Rには、シャッター素子3の黒表示が知覚され、左目Lには、光透過型液晶表示素子2の左目用映像が知覚されるのが確認できた。
【0089】
そこで、上記光透過型液晶表示素子2に右目用映像と左目用映像とを60(Hz)の周波数で切り替えて表示させるとともに、上記シャッター素子3のSTN液晶表示素子31a、31bに該周波数に同期させて、断続的に所定電圧を印加すると、両目を通して画面に鮮明な立体映像を知覚することができた。
【0090】
【実施例2】
実施例2に係る立体映像表示装置1は、実施例1に係る立体映像表示装置と同様、光透過型液晶表示素子2と、シャッター素子3及びバックライト4を備える。
【0091】
本実施例において、上記2枚の偏光板32a、32bの配置軸は、上記STN液晶表示素子31a、31bの視角方向に対して平行に配置されている。従って、各偏光板の偏光軸は、ツイストしている中央の液晶分子の配向方向に対して平行に配置されることとなる。
【0092】
本実施例に係る立体映像表示装置のその他の構成は、上記実施例1と同じである。
【0093】
バックライト4を点灯し、上記光透過型液晶表示素子2が右目用映像のみを表示させた状態で、各STN液晶表示素子31a、31bに電圧を印可せずに画面を見ると、右目Rには、光透過型液晶表示素子2の右目用映像が知覚され、左目Lには、シャッター素子3の黒表示が知覚されるのが確認できた。
【0094】
次に、上記光透過型液晶表示素子2が左目用映像のみを表示させた状態で、各STN液晶表示素子31a、31bに所定の電圧を印可して画面を見ると、右目Rには、シャッター素子3の黒表示が知覚され、左目Lには、光透過型液晶表示素子2の左目用映像が知覚されるのが確認できた。
【0095】
そこで、上記光透過型液晶表示素子2に右目用映像と左目用映像とを60(Hz)の周波数で切り替えて表示させるとともに、上記シャッター素子3のSTN液晶表示素子31a、31bに該周波数に同期させて、断続的に所定電圧を印加すると、両目を通して画面に鮮明な立体映像を知覚することができた。
【0096】
【実施例3】
実施例3に係る立体映像表示装置1は、実施例1に係る立体映像表示装置と同様、光透過型液晶表示素子2と、シャッター素子3及びバックライト4を備える。
【0097】
本実施例において、上記2枚のSTN液晶表示素子31a、31bのうち、光透過型液晶表示素子2に近い方のSTN液晶表示素子31aのリタデーションは、電圧が印加されていない状態でRe=2400(nm)であり、光透過型液晶表示素子2から遠い方のSTN液晶表示素子31bのリタデーションは、Re=2200(nm)と設定されている。リタデーションRe=2400(nm)のSTN液晶表示素子31aを光透過型液晶表示素子2に対向するように配置した。
【0098】
図3に示すように、上記各STN液晶表示素子31a、31bのリタデーションの差は、ともに電荷が印加されていない状態で、右目の視角に対しA−B=0(nm)となり、左目の視角に対しA−B=200(nm)となるように光学配置されている。また、図4に示すように、各STN液晶表示素子31a、31bに所定の電圧が印加された状態では、右目の視角に対しA−B=200(nm)となり、左目の視角に対しA−B=0(nm)となるようリタデーションの差を反転させる。
【0099】
本実施例に係る立体映像表示装置のその他の構成は、上記実施例1と同じである。
【0100】
バックライト4を点灯し、上記光透過型液晶表示素子2が右目用映像のみを表示させた状態で、各STN液晶表示素子31a、31bに電圧を印可せずに画面を見ると、右目Rには、光透過型液晶表示素子2の右目用映像が知覚され、左目Lには、シャッター素子3の黒表示が知覚されるのが確認できた。
【0101】
次に、上記光透過型液晶表示素子2が左目用映像のみを表示させた状態で、各STN液晶表示素子31a、31bに所定の電圧を印可して画面を見ると、右目Rには、シャッター素子3の黒表示が知覚され、左目Lには、光透過型液晶表示素子2の左目用映像が知覚されるのが確認できた。
【0102】
そこで、上記光透過型液晶表示素子2に右目用映像と左目用映像とを60(Hz)の周波数で切り替えて表示させるとともに、上記シャッター素子3のSTN液晶表示素子31a、31bに該周波数に同期させて、断続的に所定電圧を印加すると、両目を通して画面に鮮明な立体映像を知覚することができた。
【0103】
【比較例1】
比較例1に係る立体映像表示装置1は、実施例1に係る立体映像表示装置と同様、光透過型液晶表示素子2と、シャッター素子3及びバックライト4を備える。
【0104】
本実施例において、上記2枚のSTN液晶表示素子31a、31bのうち、光透過型液晶表示素子2に近い方のSTN液晶表示素子31aのリタデーションは、電圧が印加されていない状態でRe=2000(nm)であり、光透過型液晶表示素子2から遠い方のSTN液晶表示素子31bのリタデーションは、Re=1800(nm)に設定されている。リタデーションRe=2000(nm)のSTN液晶表示素子31aを光透過型液晶表示素子2に対向するように配置した。
【0105】
図3に示すように、上記各STN液晶表示素子31a、31bのリタデーションの差は、ともに電荷が印加されていない状態で、右目の視角に対しA−B=0(nm)となり、左目の視角に対しA−B=200(nm)となるように光学配置されている。また、図4に示すように、各STN液晶表示素子31a、31bに所定の電圧が印加された状態では、右目の視角に対しA−B=200(nm)となり、左目の視角に対しA−B=0(nm)となるようリタデーションの差を反転させる。
【0106】
本実施例に係る立体映像表示装置のその他の構成は、上記実施例1と同じである。
【0107】
バックライト4を点灯し、上記光透過型液晶表示素子2が右目用映像のみを表示させた状態で、各STN液晶表示素子31a、31bに電圧を印可せずに画面を見ると、右目Rに光透過型液晶表示素子2の右目用映像が知覚された。
【0108】
しかし、左目Lには、シャッター素子3の完全な黒表示が知覚されず、右目用映像をも知覚してしまうことが確認された。これは、2枚のSTN液晶表示素子31a、31bのリタデーションがともに小さいため、STN液晶表示素子31a、31bの視角が広がった結果、右目用映像が左目にも知覚されたものである。
【0109】
従って、本比較例に係る立体映像表示装置では、鮮明な立体映像が得られなかった。
【0110】
【比較例2】
比較例2に係る立体映像表示装置1は、実施例1に係る立体映像表示装置と同様、光透過型液晶表示素子2と、シャッター素子3及びバックライト4を備える。
【0111】
本比較例において、上記各STN液晶表示素子31a、31bには、それぞれ180°でツイストする液晶材料が封入されている。上記2枚の偏光板32a、32bの配置軸は、上記STN液晶表示素子31a、31bの視角方向に対して、垂直に配置されている。従って、各偏光板の偏光軸は、ツイストしている中央の液晶分子の配向方向に対し、直交するように配置されることとなる。
【0112】
本実施例において、2枚のSTN液晶表示素子31a、31bのうち、光透過型液晶表示素子2に近い方のSTN液晶表示素子31aのリタデーションは、電圧が印加されていない状態でRe=2200(nm)であり、光透過型液晶表示素子2から遠い方のSTN液晶表示素子31bのリタデーションは、Re=2000(nm)と設定されている。リタデーションRe=2200(nm)のSTN液晶表示素子31aを光透過型液晶表示素子2に対向するように配置した。
【0113】
図3に示すように、上記各STN液晶表示素子31a、31bのリタデーションの差は、ともに電荷が印加されていない状態で、右目の視角に対しA−B=0(nm)となり、左目の視角に対しA−B=200(nm)となるように光学配置されている。また、図4に示すように、各STN液晶表示素子31a、31bに所定の電圧が印加された状態では、右目の視角に対しA−B=200(nm)となり、左目の視角に対しA−B=0(nm)となるようリタデーションの差を反転させる。
【0114】
本実施例に係る立体映像表示装置のその他の構成は、上記実施例1と同じである。
【0115】
バックライト4を点灯し、上記光透過型液晶表示素子2が右目用映像のみを表示させた状態で、各STN液晶表示素子31a、31bに電圧を印可せずに画面を見ると、右目Rに光透過型液晶表示素子2の右目用映像が知覚された。
【0116】
しかし、この状態で、左目Lがシャッター素子3を通して不鮮明な右目用映像をも知覚してしまうことが確認された。これは、2枚のSTN液晶表示素子31a、31bに封入された液晶分子のツイスト角が180°と小さいため、STN液晶表示素子31a、31bの黒表示が不十分であった結果、右目用映像がシャッター素子3を通して左目にも知覚されたものである。
【0117】
従って、本比較例に係る立体映像表示装置では、鮮明な立体映像が得られなかった。
【0118】
上記各実施例及び比較例から、上記シャッター素子3を構成する2枚のSTN液晶表示素子31a、31bは、そのリタデーションがそれぞれ少なくとも2000(nm)であることが好ましいといえる。また、上記各STN液晶表示素子31a、31bに封入される液晶分子のツイスト角は、少なくとも240°以上であることが好ましいといえる。
【0119】
【発明の効果】
本発明に係る立体映像表示装置は、液晶駆動用ベタ電極を有するSTN液晶表示素子を用いてシャッター素子が構成されているため、比較的簡易な構造で光透過型液晶表示素子2における表示される映像を右目用映像と左目用映像とに明確に分離することができる。これにより、本発明に係る立体映像表示装置は、極めて鮮明な立体表示を実現することができる。
【0120】
また、本発明に係る立体映像表示装置は、上記従来技術が必要とした高度な位置決め技術を必要としないため、製造コストを低減することができる。また、本発明に係る立体映像表示装置は、消費電力が比較的小さくて済むため、ランニングコストも低減することができる。
【0121】
更に、本発明に係る立体映像表示装置は、従来のパララックスバリア方式やレンチキュラ方式を採用する立体映像表示装置では不可能であった立体映像表示と平面映像表示の併用を簡単に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態に係る立体映像表示装置の要部断面図である。
【図2】実施の形態に係るシャッター素子の構造を示す概略図である。
【図3】実施の形態に係る立体映像表示装置の原理図である。
【図4】実施の形態に係る立体映像表示装置の原理図である。
【図5】従来の立体映像表示装置の原理図である。
【図6】従来の立体映像表示装置の原理図である。
【図7】従来の立体映像表示装置の原理図である。
【図8】従来の立体映像表示装置の原理図である。
【符号の説明】
1 立体映像表示装置
2 光透過型液晶表示素子
3 シャッター素子
4 バックライト
31a STN液晶表示素子
31b STN液晶表示素子
32a 偏光板
32b 偏光板
【発明の属する技術分野】
本発明は、立体映像表示表示装置及びその立体映像表示装置に使用されるシャッター素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から立体映像を表示する技術は、種々研究されている。その中で代表的なものは、特殊な眼鏡を使用する方式のものと、眼鏡を使用しない方式のものに大別される。
【0003】
眼鏡を使用する方式には、赤、青眼鏡を使用するアナグリフ方式や、偏光眼鏡を使用する方式がある。これら両方式は、視差のある映像を観察者の左右の目にそれぞれ入力し、立体映像として認識させるものである。しかし、これら方式では眼鏡を着用する必要があり、煩わしいという問題があった。
【0004】
また、眼鏡無し方式の代表的なものとして、パララックスバリア方式やレンチキュラ方式がある。
【0005】
パララックスバリア方式の原理を図5に示す。液晶表示素子100には、右目用の映像101と左目用の映像102とが交互に表示されている。液晶表示素子100の前面には、該液晶表示素子100の画素ピッチと対応するスリット103を備えたバリア104が配されている。鑑賞者が該バリア104を通して液晶表示素子100を見たとき、鑑賞者の右目には右目用の映像101が見え、左目には左目用102の映像が見える。これにより、左右の目の視差作用を生じ、液晶表示素子100の映像を立体映像として見ることができる。
【0006】
レンチキュラ方式の原理を図6に示す。上記パララックスバリア方式と同様に、液晶表示素子200には、右目用の映像201と左目用の映像202とが交互に表示されている。該液晶表示素子200の前面には、レンチキュラレンズ203が配置されている。鑑賞者は、レンチキュラレンズ203を通して液晶表示素子200を見ることにより、右目で右目用の映像201を、左目で左目用の映像202を見ることができる。これにより、左右の目の視差作用を生じ、液晶表示素子200の映像を立体映像として見ることができる。
【0007】
しかし、これらの方式は、バリア又はレンズと液晶表示素子の画素ピッチとの合致に高い位置決め精度が要求され、製造上の難しさがあるうえ、コストがかかるなどの問題があった。また、これらの方式は、立体映像専用であり、通常の二次元表示をすることができない、といった問題もあった。
【0008】
そこで、これらの問題を解決するために、種々の研究開発が行われてきた。
【0009】
例えば、図7に示すように、90度位相の異なる帯状の偏光面が順番に配列している偏光フィルタ300、301、302を、横方向へ少しずつずらして3層で構成した偏光フィルタパネル304を配置した液晶表示装置が開示されている。該液晶表示装置は、周期的に映像表示ディスプレイに表示される左目用映像と右目用映像に同期して、偏光フィルタ300、301、302に電気的信号を与え、周期的に光の透過角度を変えることで左目用映像と右目用映像を振り分け、立体映像として表示させている(例えば、特許文献1参照。)。
【0010】
また、図8に示すように、液晶表示素子400の背面に2つのバックライト401a、401bとフレネルレンズ402を備え、該液晶表示素子400の映像を周期的に右目用映像と左目用映像とに切り替えて表示させるとともに、液晶表示の切替周期に同期させて前記2つのバックライト401a、401bを交互に点滅させる。これにより、鑑賞者は、右目用映像と左目用映像を交互に切り替えて認識することにより、液晶表示素子の映像を立体映像として見ることができるものである。(例えば、特許文献2参照。)。
【0011】
【特許文献1】
特開平6−105341号公報
【特許文献2】
特開平8−262370号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平6−105341公報に開示されている3層構造の偏光フィルタを用いる方法では、偏光フィルタを作製する際に、映像表示用の液晶表示素子の画素ピッチと合致させたピッチで、90°位相の異なる偏光面を配列させた偏光フィルタを3枚作成しなければならず、また、それら3枚のフィルタを所定の光学配置で貼り合わせるためには、高精度な位置決め技術が必要となる。
従って、本従来技術に係る立体映像表示装置は、製造上、技術的な困難を伴うという問題があった。
【0013】
更に、特開平8−262370公報では、立体映像表示装置の製造は比較的容易であるが、2つのバックライトを使用しているとこから、光源から液晶表示素子までの距離が必要となり、小型化には適さない。その上、製品コスト及び消費電力面でのランニングコストも大きいという問題があった。
【0014】
そこで、本発明は、上記課題を解決するために、2枚のSTN液晶表示素子を使用することで、簡易な構造で立体映像表示を可能とし、切替により通常の二次元表示をも可能とする立体映像表示装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明では、映像を表示させる光透過型液晶表示素子と、比較的単純な構造を有する2枚のSTN液晶表示素子を貼り合わせ、その2枚のSTN液晶表示素子を挟むように2枚の偏光板を配置させたシャッター素子を用いる。そして、光透過型液晶表示素子に右目用映像と左目用映像とを周期的に切り替えて表示させるとともに、映像切替周期の同期させて上記シャッター素子を駆動させる。
【0016】
本発明において、上記シャッター素子は、上記光透過型液晶表示素子の映像切替周期に同期させて、2枚のSTN(Super Twisted Nematic)液晶表示素子のリタデーションの差を変化させるように駆動させる。これにより、鑑賞者の右目には右目用映像を、左目には左目用映像を知覚させ、鑑賞者の両眼視差作用により、上記光透過型液晶表示素子の映像を立体映像として見ることができるようにしたものである。
【0017】
具体的に、請求項1に係る発明は、光透過型液晶表示素子の前面に、それぞれ液晶駆動用ベタ電極を有し、リタデーションが2000(nm)以上で異なる値を有するSTN液晶表示素子を2枚重ね合わせ、該2枚のSTN液晶表示素子が2枚の偏光板により挟み込まれて形成されたシャッター素子が配置された立体映像表示装置であって、上記光透過型液晶表示素子に右目用映像と左目用映像とを周期的に切り替えて表示させるとともに、上記光透過型液晶表示素子の映像切替周期に同期させて、上記シャッター素子を構成する2枚のSTN液晶表示素子のリタデーションの差を変化させることにより、上記右目用映像を右目に知覚させるとともに、左目用映像を左目に知覚させて、上記光透過型液晶表示素子の映像を立体映像として見せることができるようにしたことを特徴とする。
【0018】
本発明において、光透過型液晶表示素子は、右目用映像と左目用映像とを周期的に切り替えて表示する。これら右目用映像は右目のみに知覚され、左目用映像は左目のみに知覚されるようにシャッター素子を用いる。
【0019】
本発明に係るシャッター素子は、2枚のSTN液晶表示素子を重ね合わせ、それら2枚のSTN液晶表示素子を挟み込むように2枚の偏光板を形成して構成されている。
【0020】
STN液晶表示素子は、リタデーションが大きいという特長を有するため、2枚のSTN液晶表示素子を駆動させ、それら2枚のSTN表示素子のリタデーションの差を変化させることにより、透過する光の進行方向を明確に2方向に規制して切り替えることができる。
【0021】
即ち、光透過型液晶表示素子が右目用映像を表示している状態において、上記シャッター素子は、右目の視角方向にのみ光を透過し、一方、光透過型液晶表示素子が左目用映像を表示している状態において、上記シャッター素子は、左目の視角方向のみに光を透過する。これにより、鑑賞者は、両眼視差のある右目の映像と左目の映像をそれぞれ認識することにより、光透過型液晶表示素子の映像を立体映像として見ることができる。
【0022】
なお、発明において、各STN液晶表示装置のリタデーションが2000nm未満であると、光透過型液晶表示素子に表示される右目用映像と左目用映像とを明確に分離することが困難となる。
【0023】
請求項2に係る発明は、光透過型液晶表示素子の前面に、それぞれ液晶駆動用ベタ電極を有し、リタデーションが2000(nm)以上で異なる値を有するSTN液晶表示素子を2枚重ね合わせ、該2枚のSTN液晶表示素子が2枚の偏光板により挟み込まれて形成されたシャッター素子が配置された立体映像表示装置であって、上記光透過型液晶表示素子は、立体映像用表示と平面映像用表示が可能である。
【0024】
本発明に係る立体映像表示装置において、立体映像を表示させる場合、上記光透過型液晶表示素子は右目用映像と左目用映像とを周期的に切り替える表示を行うとともに、上記光透過型液晶表示素子の映像切替周期に同期させて、上記シャッター素子を構成する2枚のSTN液晶表示素子のリタデーションの差を変化させることにより、上記右目用映像を右目に知覚させるとともに、左目用映像を左目に知覚させて、上記光透過型液晶表示素子の映像を立体映像として見せることができる。
【0025】
本発明に係る立体映像表示装置において、平面映像を表示させる場合、上記光透過型液晶表示素子は平面映像用表示を行うとともに、上記シャッター素子を構成する2枚のSTN液晶表示素子のリタデーションをともに10(nm)以下とすることにより、上記光透過型液晶表示素子の映像を平面映像として見せることができることを特徴とする。
【0026】
本発明に係る立体映像表示装置は、立体映像を表示する場合、上記発明と同様に光透過型液晶表示素子に右目用映像と左目用映像を交互に表示する立体映像用表示を行う。上記シャッター素子は、上記光透過型液晶表示素子の映像切替周期に同期させて、2枚のSTN液晶表示素子のリタデーションの差を変化させることにより、上記右目用映像を右目に知覚させるとともに、左目用映像を左目に知覚させて、上記光透過型液晶表示素子の映像を立体映像として見せる。
【0027】
なお、本発明において、各STN液晶表示装置のリタデーションが2000nm未満であると、光透過型液晶表示素子に表示される右目用映像と左目用映像とを明確に分離することが困難となる。
【0028】
一方、本発明に係る立体映像表示装置は、平面映像を表示する場合、上記光透過型液晶表示素子に平面映像用表示を行わせる。平面映像用表示とは、通常の映像表示であって、右目用映像、左目用映像に切り替わる映像ではなく、一定の視角により認識される映像が継続して表示されるものをいう。
【0029】
この場合、上記シャッター素子を構成する2枚のSTN液晶表示素子のリタデーションをともに10(nm)以下となるように駆動させ、右目及び左目に同じ平面映像用表示を同時に知覚させることにより、鑑賞者に通常の平面映像を見せることができる。このように、本発明に係る立体映像表示装置は、立体映像のみならず平面映像をも表示することができる。
【0030】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載された立体映像表示装置であって、上記シャッター素子を構成する2枚のSTN液晶表示素子のうち、いずれか一方のSTN液晶表示素子のリタデーションをA(nm)とし、他方のSTN液晶表示素子のリタデーションをB(nm)とした場合、上記2枚のSTN液晶表示素子は、ともに電荷が印加されていない状態で、右目の視角に対しA−B=0(nm)、且つ、左目の視角に対しA−B=200(nm)となるように光学配置されており、2枚のSTN液晶表示素子に印加する電圧を調整することで、右目の視角に対しA−B=200(nm)、且つ、左目の視角に対しA−B=0(nm)とリタデーションの差を反転させることにより、上記光透過型液晶表示素子の映像を立体映像として見せることができるようにしたことを特徴とする。
【0031】
本発明に係る立体映像表示装置は、2枚のSTN液晶表示素子の右目の視角と左目の視角に対するリタデーションの差を、200(nm)と0(nm)と交互に切り替えることにより、右目用映像と左目用映像を明確に分離して鑑賞者に知覚させる。
【0032】
即ち、上記シャッター素子の挙動について、2枚のSTN液晶表示素子に電荷が印加されていない状態において、シャッター素子は、右目の視角に対し右目用映像を白表示(A−B=0nm)とし、このとき、左目の視角に対してはリタデーションの差が反転し、左目用映像を黒表示(A−B=200nm)とする。一方、両STN液晶表示素子に電圧が印加された状態において、シャッター素子は、右目の視角に対し右目用映像を黒表示(A−B=200nm)とし、このとき、左目の視角に対してはリタデーションの差が反転し、左目用映像を白表示(A−B=0nm)とする。
【0033】
ここで、2枚のSTN液晶表示素子のリタデーションの差を0nmと200nmに設定するのは、この組み合わせが最も白黒表示のコントラストが良くなるからである。
【0034】
また、本発明において、上記2枚のSTN液晶表示素子のリタデータションの関係が、A−200nm≧Bとなる様に電圧を印加することにより、右目用映像と左目用映像を明確に分離することができる。
【0035】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載された立体映像表示装置であって、上記シャッター素子を構成する2枚のSTN液晶表示素子に用いられている液晶材料のツイスト角が、240°以上、270°以下であることを特徴とする。
【0036】
上記2枚のSTN液晶表示素子において、ツイスト角が240°以上、270°以下である液晶材料を使用することにより、各STN液晶表示素子のリタデーションを大きくすることができる。そのため、光透過型液晶表示素子に表示される右目用映像と左目用映像とを明確に分離することができる。ツイスト角度が240°未満であると、視角を狭くするための光学配置が設定しずらくなり、鮮明な立体映像の表示が困難になる。
【0037】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載された立体映像表示装置であって、右目若しくは左目の視角方向から見て、上記2枚の偏光板の各偏光軸をともにツイストしている液晶分子の中央の長軸方向に対して平行に配置するか、あるいは、1本の偏光軸は上記液晶分子の長軸方向に平行であって、且つ、他の1本の偏光軸は上記液晶分子の長軸方向に直交するように配置されていることを特徴とする。
【0038】
このように上記偏光板の偏光軸を配置することで、2枚の偏光板は平行ニコル、あるいは、クロスニコルに配置されることとなり、STN液晶表示素子に対する右目若しくは左目の視角の広がりを押さえることができる。そのため、左目と右目に別々に送られる映像情報は、交錯することなく明確に分離されて鑑賞者に認識される。その結果、鑑賞者は明快な立体映像を得ることができる。
【0039】
請求項6に係る発明は、それぞれ液晶駆動用ベタ電極を有し、リタデーションが2000(nm)以上で異なる値を有するSTN液晶表示素子を2枚重ね合わせ、該2枚のSTN液晶表示素子が2枚の偏光板により挟み込まれて形成されたシャッター素子である。上記2枚のSTN液晶表示素子のうち、いずれか一方のSTN液晶表示素子のリタデーションをA(nm)とし、他方のSTN液晶表示素子のリタデーションをB(nm)とした場合、上記2枚のSTN液晶表示素子は、ともに電荷が印加されていない状態で、異なる2方向のうち、1方向の視角に対しA−B=0(nm)、且つ、他の1方向の視角に対してA−B=200(nm)となるように光学配置されており、2枚のSTN液晶表示素子に印加する電圧を調整することで、上記1方向の視角に対しA−B=200(nm)、且つ、上記他の1方向の視角に対しA−B=0(nm)とリタデーションの差を反転させることを特徴とする。
【0040】
本発明は、右目用映像と左目用映像を周期的に切り替えて表示する表示素子を備えた立体映像表示装置に使用されるシャッター素子である。
【0041】
本発明に係るシャッター素子に使用されるSTN液晶表示素子は、リタデーションが大きいという特長を有する。そのため、2枚のSTN液晶表示素子を駆動させ、それら2枚のSTN表示素子のリタデーションの差を変化させることにより、透過する光の進行方向を明確に2方向に規制して切り替えることができる。
【0042】
従って、本発明に係るシャッター素子は、表示素子の右目用映像を右目のみに知覚させ、左目用映像を左目のみに知覚させることができる。
【0043】
即ち、表示素子が右目用映像を表示している状態において、上記シャッター素子は、右目の視角方向にのみ光を透過し、一方、表示素子が左目用映像を表示している状態において、上記シャッター素子は、左目の視角方向のみに光を透過する。これにより、本発明に係るシャッター素子を、右目用映像と左目用映像とを切り替えて表示する表示装置と組み合わして使用した場合、鑑賞者は、両眼視差のある右目の映像と左目の映像をそれぞれ認識することにより、表示素子の映像を立体映像として見ることができる。
【0044】
なお、発明において、各STN液晶表示装置のリタデーションが2000nm未満であると、光透過型液晶表示素子に表示される右目用映像と左目用映像とを明確に分離することが困難となる。
【0045】
請求項7に係る発明は、それぞれ液晶駆動用ベタ電極を有し、リタデーションが2000(nm)以上で異なる値を有するSTN液晶表示素子を2枚重ね合わせ、該2枚のSTN液晶表示素子が2枚の偏光板により挟み込まれて形成されたシャッター素子である。上記2枚のSTN液晶表示素子のうち、いずれか一方のSTN液晶表示素子のリタデーションをA(nm)とし、他方のSTN液晶表示素子のリタデーションをB(nm)とした場合、上記2枚のSTN液晶表示素子は、ともに電荷が印加されていない状態で、異なる2方向のうち、1方向の視角に対しA−B=0(nm)、且つ、他の1方向の視角に対してA−B=200(nm)となるように光学配置されており、2枚のSTN液晶表示素子に印加する電圧を調整することで、上記1方向の視角に対しA−B=200(nm)、且つ、上記他の1方向の視角に対しA−B=0(nm)とリタデーションの差を反転させることが可能である。また、上記2枚のSTN液晶表示素子に印加する電圧を調整することで、2枚のSTN液晶表示素子のリタデーションをともに10(nm)以下とすることが可能であることを特徴とする。
【0046】
本発明に係るシャッター素子は、立体映像と平面映像とを切り替えて表示することが可能な立体映像表示装置に使用される。
【0047】
即ち、本発明に係るシャッター素子は、光透過型液晶表示素子の右目用映像と左目用映像の映像切替周期に同期させて、2枚のSTN液晶表示素子のリタデーションの差を変化させることにより、上記右目用映像を右目に知覚させるとともに、左目用映像を左目に知覚させて、上記光透過型液晶表示素子の映像を立体映像として見せる。
【0048】
一方、本発明に係るシャッター素子は、平面表示を行う場合、2枚のSTN液晶表示素子のリタデーションがともに10(nm)以下となるように駆動することで、右目及び左目に同じ平面映像用表示を同時に知覚させ、鑑賞者に通常の平面映像を見せることができる。
【0049】
ここで、平面映像用表示とは、通常の映像表示であって、右目用映像、左目用映像に切り替わる映像ではなく、一定の視角により認識される映像が継続して表示されるものをいう。
【0050】
請求項8に係る発明は、請求項7に記載されたシャッター素子であって、上記2枚のSTN液晶表示素子に用いられている液晶材料のツイスト角が、240°以上、270°以下であることを特徴とする。
【0051】
上記2枚のSTN液晶表示素子において、ツイスト角が240°以上、270°以下である液晶材料を使用することにより、各STN液晶表示素子のリタデーションを大きくすることができる。そのため、表示素子に表示される右目用映像と左目用映像とを明確に分離することができる。ツイスト角度が240°未満であると、視角を狭くするための光学配置が設定しずらくなり、鮮明な立体映像の表示が困難となる。
【0052】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0053】
図1に示すように、本実施形態に係る立体映像表示装置1は、映像を表示する光透過型液晶表示素子2と、シャッター素子2と、バックライト4とを備える。
【0054】
本実施形態に係る光透過型液晶表示素子2は、TFT(Thin Film Transistor)素子や画素電極を備えたアクティブマトリクス基板と、ITO(Indium Tin Oxide)からなる対向電極やカラーフィルタ層を備えた対向基板とを対向させて配置し、両基板間に液晶材料が封入された構造を有する。
【0055】
上記光透過型液晶表示素子2は、ITO等透明導電体で形成された画素電極を備え、光透過型液晶表示素子2の背面側に配置されたバックライト4から照射された光をシャッター素子3側に透過することができる。
【0056】
また、上記光透過型液晶表示素子2は、ドライバ回路から供給される信号に基づき、立体映像用表示と平面映像用表示を切り替えて表示することができる。
【0057】
本実施形態において、立体映像を表示する場合、光透過型液晶表示素子2は、右目用映像と左目用映像とを周期的に切り替えて表示する。右目用映像と左目用映像とは、実際に人間の両目が物体を視覚で認識する際に生じる両眼視差を考慮して作成された映像である。右目用映像を右目で知覚し、左目用映像を左目で知覚できるようにして、例えば、数十ヘルツという短い周期で両映像を切り替えて表示することにより、鑑賞者の網膜に生じる残像が脳内で合成されて立体映像として認識される。
【0058】
一方、本実施形態に係る立体映像表示装置2は、平面映像を表示する場合、上記光透過型液晶表示素子2に平面映像用表示を行う。平面映像用表示とは、通常の映像表示であって、右目用映像、左目用映像に切り替わる映像ではなく、一定の視角により認識される映像が継続して表示されるものをいう。
【0059】
本実施形態に係るシャッター素子3は、2枚のSTN液晶表示素子31a、31bを重ね合わせ、該2枚のSTN液晶表示素子31a、31bを2枚の偏光板32a、32bが挟み込むように形成されてている。
【0060】
各STN液晶表示素子31a、31bには、2枚のガラス基板上にそれぞれITOからなる液晶駆動用ベタ電極が形成されており、該ベタ電極の上面の略全面には、ポリイミド製配向膜が所定の厚みで印刷されている。
【0061】
該配向膜の表面には、上記光透過型液晶表示素子2に対向するSTN表示素子31aの一方の基板に対して、180°、240°で液晶分子がツイストするようにラビング処理が施される。上記ガラス基板の内縁に沿って貼り合せ用シール材がスクリーン印刷により形成される。該シール材の内側領域であって配向膜面上に上下基板のセル厚制御用スペーサを散布する。この状態で、上下2枚のガラス基板を重ね合わせ、加熱処理を施すことにより上記ガラス基板を貼り合わせる。
【0062】
このように貼り合わされた2枚のガラス基板間のセルギャップにSTNモードの液晶材料を注入し、注入口を感光性樹脂で封止する。本実施形態において使用される液晶材料は、上記シャッター素子の黒表示と白表示のコントラストを向上させるため、そのツイスト角が240°以上、270°以下のものが好適である。
【0063】
本実施形態に係るSTN液晶表示素子31a、31bは、それぞれ液晶駆動用ベタ電極を備えているため、全面黒表示(遮蔽状態)あるいは全面白表示(透過状態)を切り替えて表示することができる。
【0064】
上記シャッター素子3を構成するSTN液晶表示素子31a、31bは、それぞれリタデーションが2000(nm)以上であって、異なる値を有する。本実施形態において、2枚のSTN液晶表示素子31a、31bのうち、上記光透過型液晶表示素子2に近接するSTN液晶表示素子31aに注入する液晶の屈折率とセルギャップの積をリタデーションRe=A(nm)とし、一方、他のSTN液晶表示素子31bに注入する液晶の屈折率を下げ、その屈折率とセルギャップの積をリタデーションRe=B(nm)とする。
【0065】
本実施形態に係る各STN液晶表示素子31a、31bのリタデーションA、Bは、電圧が印加されていない状態で、A>B≧2000(nm)との関係が成り立つように構成する。
【0066】
ここで、2枚のSTN液晶表示素子31a、31bに形成された配向膜のラビング方向について説明する。上述の通り、図2に示すように、2枚のSTN液晶表示素子31a、31bは、それぞれのガラス基板に形成された配向膜のラビング方向が一致するように重ねて配置されている。
【0067】
上記2枚の偏光板32a、32bは、右目若しくは左目の視角方向から見て、各偏光板の偏光軸をともにツイストしている液晶分子の中央の長軸方向に対して平行に配置するか、あるいは、1本の偏光軸は上記液晶分子の長軸方向に平行であって、且つ、他の1本の偏光軸は上記液晶分子の長軸方向に直交するように配置する。
【0068】
図2に示すように、上記2枚の偏光板32a、32bの配置軸は、該STN液晶表示素子31a、31bの視角方向に対して、直角(I)、あるいは平行(II)に配置されている。従って、各偏光板の偏光軸が、ツイストしている中央の液晶分子の配向方向に対し、直交又は平行するように配置されることとなる。
【0069】
本実施形態において、2枚のSTN液晶表示素子31a、31bのうち、リタデーションの大きい方のSTN液晶表示素子31a、即ち、リタデーションRe=A(nm)の偏光板を光透過型液晶表示素子2に対向するように配置した。
【0070】
このように構成されたシャッター素子3は、各STN表示素子に印加される電圧を調整することで、2枚のSTN液晶表示素子31a、31bのリタデーションの差を変化させることことができる。
【0071】
即ち、本実施形態において、上記2枚のSTN液晶表示素子31a、31bは、ともに電荷が印加されていない状態で、右目の視角に対しA−B=0(nm)、且つ、左目の視角に対しA−B=200(nm)となるように光学配置されている。また、2枚のSTN液晶表示素子31a、31bに印加する電圧を調整することで、右目の視角に対しA−B=200(nm)、且つ、左目の視角に対しA−B=0(nm)となるようリタデーションの差を反転させることができる。
【0072】
これにより、上記各STN液晶表示素子31a、31bの無印加状態において、右目には上記光透過型液晶表示素子2の表示された右目用映像のみが知覚され、左目にはシャッター素子3の黒表示が知覚される。一方、上記各STN液晶表示素子31a、31bに所定の電圧が印加された状態において、右目にはシャッター素子3の黒表示が知覚され、左目には上記光透過型液晶表示素子2に切り替わって表示された左目用映像が知覚される。
【0073】
本実施形態に係る立体映像表示装置1は、上記光透過型液晶表示素子2の右目用映像と左目用映像との切替周期に同期させて、シャッター素子3を構成する各STN液晶表示素子31a、31bのリタデーションの差を切り替えて変化させる。
【0074】
本実施形態において、上記画像の切替周期は、60(Hz)程度が好適である。
【0075】
この結果、鑑賞者の右目の網膜には右目用映像の残像が生じ、左目の網膜には左目用映像の残像が生じる。これらの残像が鑑賞者の脳内で合成されることにより、鑑賞者は光透過型液晶表示素子2に表示される映像を立体映像として認識することができる。
【0076】
本実施形態に係る立体映像表示装置1は、平面映像を表示させることも可能である。
【0077】
平面映像を表示させる場合、上記光透過型液晶表示素子2に平面映像用表示を行わせるとともに、上記シャッター素子3を構成する2枚のSTN液晶表示素子のリタデーションを、ともに10(nm)以下となるように印加電圧を調整する。
【0078】
このように調整することにより、上記シャッター素子3は、右目の視角と左目の視角に対し、同等に光を透過するすることができる。その結果、本実施形態に係る立体映像表示装置は、感謝者の右目及び左目に同じ平面映像用表示を同時に知覚させることにより、通常の平面映像を見せることができる。
【0079】
このように、本実施形態に係る立体映像表示装置1は、立体映像のみならず平面映像をも表示することができる。
【0080】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0081】
【実施例1】
実施例1に係る立体映像表示装置1は、光透過型液晶表示素子2と、シャッター素子3及びバックライト4を備える。
【0082】
本実施例に係る光透過型液晶表示素子2は、右目用映像と左目用映像とを60(Hz)の周波数で切り替えて表示することができる。
【0083】
本実施例に係るシャッター素子3には、2枚のSTN液晶表示素子31a、31bが重ね合わされて配置され、これら2枚のSTN液晶表示素子31a、31bを挟み込むように2枚の配向板32a、32bが形成されている。
【0084】
上記各STN液晶表示素子31a、31bには、それぞれ240°でツイストする液晶材料が封入されている。上記2枚の偏光板32a、32bの配置軸は、上記STN液晶表示素子31a、31bの視角方向に対して垂直に配置されている。従って、各偏光板の偏光軸は、ツイストしている中央の液晶分子の配向方向に対して直交するように配置されることとなる。
【0085】
本実施例において、ともに電圧が印加されていない状態で、2枚のSTN液晶表示素子31a、31bのうち、光透過型液晶表示素子2に近い方のSTN液晶表示素子31aのリタデーションは、Re=2200(nm)となり、光透過型液晶表示素子2から遠い方のSTN液晶表示素子31bのリタデーションは、Re=2000(nm)となるよう設定されている。リタデーションRe=2200(nm)のSTN液晶表示素子31aを光透過型液晶表示素子2に対向するように配置した。
【0086】
図3に示すように、上記各STN液晶表示素子31a、31bのリタデーションの差は、ともに電荷が印加されていない状態で、右目の視角に対しA−B=0(nm)となり、左目の視角に対しA−B=200(nm)となるように光学配置されている。また、図4に示すように、各STN液晶表示素子31a、31bに所定の電圧が印加された状態では、右目の視角に対しA−B=200(nm)となり、左目の視角に対しA−B=0(nm)となるようリタデーションの差を反転させる。
【0087】
バックライト4を点灯し、上記光透過型液晶表示素子2が右目用映像のみを表示させた状態で、各STN液晶表示素子31a、31bに電圧を印可せずに画面を見ると、右目Rには、光透過型液晶表示素子2の右目用映像が知覚され、左目Lには、シャッター素子3の黒表示が知覚されるのが確認できた。
【0088】
次に、上記光透過型液晶表示素子2が左目用映像のみを表示させた状態で、各STN液晶表示素子31a、31bに所定の電圧を印可して画面を見ると、右目Rには、シャッター素子3の黒表示が知覚され、左目Lには、光透過型液晶表示素子2の左目用映像が知覚されるのが確認できた。
【0089】
そこで、上記光透過型液晶表示素子2に右目用映像と左目用映像とを60(Hz)の周波数で切り替えて表示させるとともに、上記シャッター素子3のSTN液晶表示素子31a、31bに該周波数に同期させて、断続的に所定電圧を印加すると、両目を通して画面に鮮明な立体映像を知覚することができた。
【0090】
【実施例2】
実施例2に係る立体映像表示装置1は、実施例1に係る立体映像表示装置と同様、光透過型液晶表示素子2と、シャッター素子3及びバックライト4を備える。
【0091】
本実施例において、上記2枚の偏光板32a、32bの配置軸は、上記STN液晶表示素子31a、31bの視角方向に対して平行に配置されている。従って、各偏光板の偏光軸は、ツイストしている中央の液晶分子の配向方向に対して平行に配置されることとなる。
【0092】
本実施例に係る立体映像表示装置のその他の構成は、上記実施例1と同じである。
【0093】
バックライト4を点灯し、上記光透過型液晶表示素子2が右目用映像のみを表示させた状態で、各STN液晶表示素子31a、31bに電圧を印可せずに画面を見ると、右目Rには、光透過型液晶表示素子2の右目用映像が知覚され、左目Lには、シャッター素子3の黒表示が知覚されるのが確認できた。
【0094】
次に、上記光透過型液晶表示素子2が左目用映像のみを表示させた状態で、各STN液晶表示素子31a、31bに所定の電圧を印可して画面を見ると、右目Rには、シャッター素子3の黒表示が知覚され、左目Lには、光透過型液晶表示素子2の左目用映像が知覚されるのが確認できた。
【0095】
そこで、上記光透過型液晶表示素子2に右目用映像と左目用映像とを60(Hz)の周波数で切り替えて表示させるとともに、上記シャッター素子3のSTN液晶表示素子31a、31bに該周波数に同期させて、断続的に所定電圧を印加すると、両目を通して画面に鮮明な立体映像を知覚することができた。
【0096】
【実施例3】
実施例3に係る立体映像表示装置1は、実施例1に係る立体映像表示装置と同様、光透過型液晶表示素子2と、シャッター素子3及びバックライト4を備える。
【0097】
本実施例において、上記2枚のSTN液晶表示素子31a、31bのうち、光透過型液晶表示素子2に近い方のSTN液晶表示素子31aのリタデーションは、電圧が印加されていない状態でRe=2400(nm)であり、光透過型液晶表示素子2から遠い方のSTN液晶表示素子31bのリタデーションは、Re=2200(nm)と設定されている。リタデーションRe=2400(nm)のSTN液晶表示素子31aを光透過型液晶表示素子2に対向するように配置した。
【0098】
図3に示すように、上記各STN液晶表示素子31a、31bのリタデーションの差は、ともに電荷が印加されていない状態で、右目の視角に対しA−B=0(nm)となり、左目の視角に対しA−B=200(nm)となるように光学配置されている。また、図4に示すように、各STN液晶表示素子31a、31bに所定の電圧が印加された状態では、右目の視角に対しA−B=200(nm)となり、左目の視角に対しA−B=0(nm)となるようリタデーションの差を反転させる。
【0099】
本実施例に係る立体映像表示装置のその他の構成は、上記実施例1と同じである。
【0100】
バックライト4を点灯し、上記光透過型液晶表示素子2が右目用映像のみを表示させた状態で、各STN液晶表示素子31a、31bに電圧を印可せずに画面を見ると、右目Rには、光透過型液晶表示素子2の右目用映像が知覚され、左目Lには、シャッター素子3の黒表示が知覚されるのが確認できた。
【0101】
次に、上記光透過型液晶表示素子2が左目用映像のみを表示させた状態で、各STN液晶表示素子31a、31bに所定の電圧を印可して画面を見ると、右目Rには、シャッター素子3の黒表示が知覚され、左目Lには、光透過型液晶表示素子2の左目用映像が知覚されるのが確認できた。
【0102】
そこで、上記光透過型液晶表示素子2に右目用映像と左目用映像とを60(Hz)の周波数で切り替えて表示させるとともに、上記シャッター素子3のSTN液晶表示素子31a、31bに該周波数に同期させて、断続的に所定電圧を印加すると、両目を通して画面に鮮明な立体映像を知覚することができた。
【0103】
【比較例1】
比較例1に係る立体映像表示装置1は、実施例1に係る立体映像表示装置と同様、光透過型液晶表示素子2と、シャッター素子3及びバックライト4を備える。
【0104】
本実施例において、上記2枚のSTN液晶表示素子31a、31bのうち、光透過型液晶表示素子2に近い方のSTN液晶表示素子31aのリタデーションは、電圧が印加されていない状態でRe=2000(nm)であり、光透過型液晶表示素子2から遠い方のSTN液晶表示素子31bのリタデーションは、Re=1800(nm)に設定されている。リタデーションRe=2000(nm)のSTN液晶表示素子31aを光透過型液晶表示素子2に対向するように配置した。
【0105】
図3に示すように、上記各STN液晶表示素子31a、31bのリタデーションの差は、ともに電荷が印加されていない状態で、右目の視角に対しA−B=0(nm)となり、左目の視角に対しA−B=200(nm)となるように光学配置されている。また、図4に示すように、各STN液晶表示素子31a、31bに所定の電圧が印加された状態では、右目の視角に対しA−B=200(nm)となり、左目の視角に対しA−B=0(nm)となるようリタデーションの差を反転させる。
【0106】
本実施例に係る立体映像表示装置のその他の構成は、上記実施例1と同じである。
【0107】
バックライト4を点灯し、上記光透過型液晶表示素子2が右目用映像のみを表示させた状態で、各STN液晶表示素子31a、31bに電圧を印可せずに画面を見ると、右目Rに光透過型液晶表示素子2の右目用映像が知覚された。
【0108】
しかし、左目Lには、シャッター素子3の完全な黒表示が知覚されず、右目用映像をも知覚してしまうことが確認された。これは、2枚のSTN液晶表示素子31a、31bのリタデーションがともに小さいため、STN液晶表示素子31a、31bの視角が広がった結果、右目用映像が左目にも知覚されたものである。
【0109】
従って、本比較例に係る立体映像表示装置では、鮮明な立体映像が得られなかった。
【0110】
【比較例2】
比較例2に係る立体映像表示装置1は、実施例1に係る立体映像表示装置と同様、光透過型液晶表示素子2と、シャッター素子3及びバックライト4を備える。
【0111】
本比較例において、上記各STN液晶表示素子31a、31bには、それぞれ180°でツイストする液晶材料が封入されている。上記2枚の偏光板32a、32bの配置軸は、上記STN液晶表示素子31a、31bの視角方向に対して、垂直に配置されている。従って、各偏光板の偏光軸は、ツイストしている中央の液晶分子の配向方向に対し、直交するように配置されることとなる。
【0112】
本実施例において、2枚のSTN液晶表示素子31a、31bのうち、光透過型液晶表示素子2に近い方のSTN液晶表示素子31aのリタデーションは、電圧が印加されていない状態でRe=2200(nm)であり、光透過型液晶表示素子2から遠い方のSTN液晶表示素子31bのリタデーションは、Re=2000(nm)と設定されている。リタデーションRe=2200(nm)のSTN液晶表示素子31aを光透過型液晶表示素子2に対向するように配置した。
【0113】
図3に示すように、上記各STN液晶表示素子31a、31bのリタデーションの差は、ともに電荷が印加されていない状態で、右目の視角に対しA−B=0(nm)となり、左目の視角に対しA−B=200(nm)となるように光学配置されている。また、図4に示すように、各STN液晶表示素子31a、31bに所定の電圧が印加された状態では、右目の視角に対しA−B=200(nm)となり、左目の視角に対しA−B=0(nm)となるようリタデーションの差を反転させる。
【0114】
本実施例に係る立体映像表示装置のその他の構成は、上記実施例1と同じである。
【0115】
バックライト4を点灯し、上記光透過型液晶表示素子2が右目用映像のみを表示させた状態で、各STN液晶表示素子31a、31bに電圧を印可せずに画面を見ると、右目Rに光透過型液晶表示素子2の右目用映像が知覚された。
【0116】
しかし、この状態で、左目Lがシャッター素子3を通して不鮮明な右目用映像をも知覚してしまうことが確認された。これは、2枚のSTN液晶表示素子31a、31bに封入された液晶分子のツイスト角が180°と小さいため、STN液晶表示素子31a、31bの黒表示が不十分であった結果、右目用映像がシャッター素子3を通して左目にも知覚されたものである。
【0117】
従って、本比較例に係る立体映像表示装置では、鮮明な立体映像が得られなかった。
【0118】
上記各実施例及び比較例から、上記シャッター素子3を構成する2枚のSTN液晶表示素子31a、31bは、そのリタデーションがそれぞれ少なくとも2000(nm)であることが好ましいといえる。また、上記各STN液晶表示素子31a、31bに封入される液晶分子のツイスト角は、少なくとも240°以上であることが好ましいといえる。
【0119】
【発明の効果】
本発明に係る立体映像表示装置は、液晶駆動用ベタ電極を有するSTN液晶表示素子を用いてシャッター素子が構成されているため、比較的簡易な構造で光透過型液晶表示素子2における表示される映像を右目用映像と左目用映像とに明確に分離することができる。これにより、本発明に係る立体映像表示装置は、極めて鮮明な立体表示を実現することができる。
【0120】
また、本発明に係る立体映像表示装置は、上記従来技術が必要とした高度な位置決め技術を必要としないため、製造コストを低減することができる。また、本発明に係る立体映像表示装置は、消費電力が比較的小さくて済むため、ランニングコストも低減することができる。
【0121】
更に、本発明に係る立体映像表示装置は、従来のパララックスバリア方式やレンチキュラ方式を採用する立体映像表示装置では不可能であった立体映像表示と平面映像表示の併用を簡単に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態に係る立体映像表示装置の要部断面図である。
【図2】実施の形態に係るシャッター素子の構造を示す概略図である。
【図3】実施の形態に係る立体映像表示装置の原理図である。
【図4】実施の形態に係る立体映像表示装置の原理図である。
【図5】従来の立体映像表示装置の原理図である。
【図6】従来の立体映像表示装置の原理図である。
【図7】従来の立体映像表示装置の原理図である。
【図8】従来の立体映像表示装置の原理図である。
【符号の説明】
1 立体映像表示装置
2 光透過型液晶表示素子
3 シャッター素子
4 バックライト
31a STN液晶表示素子
31b STN液晶表示素子
32a 偏光板
32b 偏光板
Claims (8)
- 光透過型液晶表示素子の前面に、
それぞれ液晶駆動用ベタ電極を有し、リタデーションが2000(nm)以上で異なる値を有するSTN液晶表示素子を2枚重ね合わせ、該2枚のSTN液晶表示素子が2枚の偏光板により挟み込まれて形成されたシャッター素子が配置された立体映像表示装置であって、
上記光透過型液晶表示素子に右目用映像と左目用映像とを周期的に切り替えて表示させるとともに、
上記光透過型液晶表示素子の映像切替周期に同期させて、上記シャッター素子を構成する2枚のSTN液晶表示素子のリタデーションの差を変化させることにより、上記右目用映像を右目に知覚させるとともに、左目用映像を左目に知覚させて、
上記光透過型液晶表示素子の映像を立体映像として見せることを特徴とする立体映像表示装置。 - 光透過型液晶表示素子の前面に、
それぞれ液晶駆動用ベタ電極を有し、リタデーションが2000(nm)以上で異なる値を有するSTN液晶表示素子を2枚重ね合わせ、該2枚のSTN液晶表示素子が2枚の偏光板により挟み込まれて形成されたシャッター素子が配置された立体映像表示装置であって、
上記光透過型液晶表示素子は、立体映像用表示と平面映像用表示が可能であり、
立体映像を表示させる場合に、上記光透過型液晶表示素子は右目用映像と左目用映像とを周期的に切り替える表示を行うとともに、
上記光透過型液晶表示素子の映像切替周期に同期させて、上記シャッター素子を構成する2枚のSTN液晶表示素子のリタデーションの差を変化させることにより、上記右目用映像を右目に知覚させるとともに、左目用映像を左目に知覚させて、
上記光透過型液晶表示素子の映像を立体映像として見せ、
平面映像を表示させる場合に、上記光透過型液晶表示素子は平面映像用表示を行うとともに、
上記シャッター素子を構成する2枚のSTN液晶表示素子のリタデーションを、ともに10(nm)以下とすることにより、上記光透過型液晶表示素子の映像を平面映像として見せることを特徴とする立体映像表示装置。 - 請求項1又は2に記載された立体映像表示装置であって、
上記シャッター素子を構成する2枚のSTN液晶表示素子のうち、いずれか一方のSTN液晶表示素子のリタデーションをA(nm)とし、他方のSTN液晶表示素子のリタデーションをB(nm)とした場合、
上記2枚のSTN液晶表示素子は、
ともに電荷が印加されていない状態で、
右目の視角に対しA−B=0(nm)、且つ、左目の視角に対しA−B=200(nm)となるように光学配置されており、
2枚のSTN液晶表示素子に印加する電圧を調整することで、
右目の視角に対しA−B=200(nm)、且つ、左目の視角に対しA−B=0(nm)とリタデーションの差を反転させることにより、上記光透過型液晶表示素子の映像を立体映像として見せることを特徴とする立体映像表示装置。 - 請求項1乃至3のいずれか1項に記載された立体映像表示装置であって、
上記シャッター素子を構成する2枚のSTN液晶表示素子に用いられている液晶材料のツイスト角が、240°以上、270°以下であることを特徴とする立体映像表示装置。 - 請求項1乃至4のいずれか1項に記載された立体映像表示装置であって、
右目若しくは左目の視角方向から見て、上記2枚の偏光板の各偏光軸をともにツイストしている液晶分子の中央の長軸方向に対して平行に配置するか、あるいは、1本の偏光軸は上記液晶分子の長軸方向に平行であって、且つ、他の1本の偏光軸は上記液晶分子の長軸方向に直交するように配置されていることを特徴とする立体映像表示装置。 - それぞれ液晶駆動用ベタ電極を有し、リタデーションが2000(nm)以上で異なる値を有するSTN液晶表示素子を2枚重ね合わせ、該2枚のSTN液晶表示素子が2枚の偏光板により挟み込まれて形成されたシャッター素子であって、
上記2枚のSTN液晶表示素子のうち、いずれか一方のSTN液晶表示素子のリタデーションをA(nm)とし、他方のSTN液晶表示素子のリタデーションをB(nm)とした場合、
上記2枚のSTN液晶表示素子は、
ともに電荷が印加されていない状態で、
異なる2方向のうち、1方向の視角に対しA−B=0(nm)、且つ、他の1方向の視角に対してA−B=200(nm)となるように光学配置されており、
2枚のSTN液晶表示素子に印加する電圧を調整することで、
上記1方向の視角に対しA−B=200(nm)、且つ、上記他の1方向の視角に対しA−B=0(nm)とリタデーションの差を反転させることが可能であることを特徴とするシャッター素子。 - それぞれ液晶駆動用ベタ電極を有し、リタデーションが2000(nm)以上で異なる値を有するSTN液晶表示素子を2枚重ね合わせ、該2枚のSTN液晶表示素子が2枚の偏光板により挟み込まれて形成されたシャッター素子であって、
上記2枚のSTN液晶表示素子のうち、いずれか一方のSTN液晶表示素子のリタデーションをA(nm)とし、他方のSTN液晶表示素子のリタデーションをB(nm)とした場合、
上記2枚のSTN液晶表示素子は、
ともに電荷が印加されていない状態で、
異なる2方向のうち、1方向の視角に対しA−B=0(nm)、且つ、他の1方向の視角に対してA−B=200(nm)となるように光学配置されており、
2枚のSTN液晶表示素子に印加する電圧を調整することで、
上記1方向の視角に対しA−B=200(nm)、且つ、上記他の1方向の視角に対しA−B=0(nm)とリタデーションの差を反転させることが可能であるとともに、
2枚のSTN液晶表示素子に印加する電圧を調整することで、
2枚のSTN液晶表示素子のリタデーションをともに10(nm)以下とすることが可能であることを特徴とするシャッター素子。 - 請求項6又は7に記載されたシャッター素子であって、
上記2枚のSTN液晶表示素子に用いられている液晶材料のツイスト角が、240°以上、270°以下であることを特徴とするシャッター素子。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002367034A JP2004198727A (ja) | 2002-12-18 | 2002-12-18 | 立体映像表示装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2002367034A JP2004198727A (ja) | 2002-12-18 | 2002-12-18 | 立体映像表示装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004198727A true JP2004198727A (ja) | 2004-07-15 |
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ID=32764060
Family Applications (1)
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JP2002367034A Pending JP2004198727A (ja) | 2002-12-18 | 2002-12-18 | 立体映像表示装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2004198727A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP1622394A1 (en) * | 2004-07-27 | 2006-02-01 | Pavonine Inc. | Liquid crystal display device having thin polarizing film and thin phase retardation film |
WO2011155111A1 (ja) * | 2010-06-11 | 2011-12-15 | シャープ株式会社 | 立体映像表示装置 |
US8085294B2 (en) | 2008-03-26 | 2011-12-27 | Kabushiki Kaisha Toshiba | Stereoscopic image display apparatus |
-
2002
- 2002-12-18 JP JP2002367034A patent/JP2004198727A/ja active Pending
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EP1622394A1 (en) * | 2004-07-27 | 2006-02-01 | Pavonine Inc. | Liquid crystal display device having thin polarizing film and thin phase retardation film |
US8085294B2 (en) | 2008-03-26 | 2011-12-27 | Kabushiki Kaisha Toshiba | Stereoscopic image display apparatus |
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