JP2004198375A - 異常診断装置 - Google Patents

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孝範 宮坂
Hirotoshi Aramaki
宏敏 荒牧
Yasuyuki Muto
泰之 武藤
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Abstract

【課題】手間のかかる分解・組み立て作業の頻度を減少させて保守・管理コストを低減させることができる異常診断装置を提供すること。
【解決手段】鉄道車両の車軸用軸受装置の異常の有無を診断する鉄道車両の車軸用軸受装置の異常診断装置は、前記軸受装置に組み込まれ、前記軸受装置から発生する信号を電気信号として出力するセンサを有するセンサ付き軸受と、前記センサの出力を基に前記機械設備の異常の有無を判定するマイクロコンピュータと、前記マイクロコンピュータによる判定結果を出力する結果出力部と、を備えている。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道車両の車軸用軸受装置の異常診断方法および装置に係り、より詳しくは台車のトランスミッションの軸受やギアボックス内の軸受或いは車軸を支持する軸受装置を分解することなく、軸受の欠陥を検出可能とする方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、鉄道車両の車軸を回転自在に支持する軸受装置では、摺動部材である軸受構成部品の摩耗や破損による不都合の発生を防止するために、定期的に分解目視検査を実施するようにしている。
この分解目視検査は、車両の一定期間の使用後に、軸受を車両から取り外して分解し、熟練した専門の検査担当者が、目視により分解した各構成部品の摩耗の度合いや傷の有無を確認する。この確認により、新品の部品にはない凹凸や摩耗などの異常が検出されれば、新品に交換し、再度組み立てを実施する。
【0003】
しかしながら、この分解検査は、車両から軸受を取り外す分解作業や、検査済みの軸受構成部品を再度組み立て直す組み込み作業に多大な労力がかかり、車両の保守・管理コストの大幅な増大を招くという問題があった。
【0004】
また、例えば、組み立て直す際に検査前には無かった打痕を軸受構成部品につけてしまうなど、検査自体が軸受の欠陥を生む原因となる虞もある。
また、限られた時間内で多数の軸受を目視で検査するため、欠陥を見落とす可能性が残るという欠点もあった。
更に、目視検査では、欠陥の程度の判断に個人差が生じ、実質的には欠陥がなくても欠陥有りと見なされて部品交換が行われてしまう場合があり、無駄にコストがかかることにもなる。
【0005】
そこで、このような分解検査や目視検査による不都合を解消するべく、軸受の回転時に発生する音や振動を検出するセンサと、このセンサの検出信号を分析して異常の有無の判定を行う情報処理装置とを備え、前記情報処理装置としてパーソナルコンピュータを使用する監視システムが提案されている。このような監視システムは、以下の先行技術文献に開示されている。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−71519号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前述した従来の監視システムにおいて情報処理装置として使用するパーソナルコンピュータは、通常、汎用筐体内に、マザーボードや、前記センサの出力を受けるインタフェースを装着した構成であり、情報処理装置が比較的に大きな設置スペースを必要とすると共に、振動等に弱い傾向がある。
そのため、軸受装置等の振動が影響しないように、軸受装置等からある程度の距離を隔てた位置に、パーソナルコンピュータを設置するスペースを確保することになる。さらにこの監視システムは、サイズが大型化してしまうため、大きな設置スペース等の確保が難しい機械設備の場合には、実用性に乏しいという問題がある。
【0008】
また、センサによる検出信号のSN比の低下を防止するために、センサはできるだけ軸受装置内に配置するのが好ましい。しかし、外部の振動等に弱く且つ大型のパーソナルコンピュータは、振動発生源となる軸受装置等からできるだけ離さなければならない。その結果、センサとパーソナルコンピュータとが所定以上離れることになり、センサとパーソナルコンピュータとの間の情報伝送路に対する外部ノイズの影響による検出精度の低下等の問題が発生する虞もある。
【0009】
また、車両上の軸受装置内にセンサを設置する方法では、一般にセンサの取り付け位置の自由が利かない場合や軸受までの距離が遠いことによるSN比の悪化などの問題や車両全体の価格がアップするという問題がある。
【0010】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、手間のかかる分解・組み立て作業の頻度を減少させて保守・管理コストを低減させることができる異常診断装置を提供することを目的とする。さらに、装置がコンパクトであるため摺動部材を含む機械設備に装備し易く、また、センサと情報処理装置との接近によって外部ノイズの影響を回避して、異常の有無の診断の信頼性を向上させることができる異常診断装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の異常診断装置は、鉄道車両の車軸用軸受装置の異常の有無を診断する鉄道車両の車軸用軸受装置の異常診断装置であって、
前記軸受装置に組み込まれ、前記軸受装置から発生する信号を電気信号として出力するセンサを有するセンサ付き軸受と、
前記センサの出力を基に前記機械設備の異常の有無を判定するマイクロコンピュータと、
前記マイクロコンピュータによる判定結果を出力する結果出力部と、
を備えている。
【0012】
ここで、軸受装置から発生する物理量とは、軸受装置の回転又は直線移動等の摺動状態に応じて変化する物理量で、例えば、摺動部材から発生する音や振動、更には、回転数や温度、摺動部材構成部品上に生じる歪み等が考えられる。
分析結果と比較する基準データとは、前記摺動部材の正常時において前記センサから検出される物理量である。
【0013】
このように構成された異常診断装置を用いることにより、軸受装置自体を分解することなく通常の使用状態のままで判定することができる。従って、手間のかかる分解・組み立て作業の頻度を減少させて保守・管理コストを低減させることができる。
【0014】
また、規定の演算処理による分析や比較で機械的に判定を行うため、従来の目視検査と比較すると、検査担当者の熟練度や個人差によって判定がばらつく虞がなく、異常の有無の診断の信頼性を向上させることができる。
【0015】
また、マイクロコンピュータが用いられており、マイクロコンピュータ自体は、1チップ又は1ボードの小さな専用ユニットとすることができるため、情報処理装置として汎用のパーソナルコンピュータを使用する従来の監視システムと比較すると、システム全体を大幅にコンパクト化でき、装備に必要な占有スペースが少なくて済むため、摺動部材を含む機械設備への装備が容易になる。
【0016】
また、軸受装置に組み込まれたセンサ付き軸受が、軸受装置から発生する物理量を検出するため、音や振動の周波数成分のピークが、センサの検出する信号のSN比に悪影響を及ぼす危険が低減し、センサユニットの出力信号のSN比の改善によって、分析・判定の精度の向上を図ることができる。
【0017】
更に、マイクロコンピュータを用いることにより情報処理装置が、コンパクト化でき、且つ汎用の大きな筐体等を使用せずに済むため、情報処理装置としての耐震性を向上させることが容易にでき、その結果、センサと共に摺動部材に接近して装備することができ、センサと情報処理装置との接近によって外部ノイズの影響を回避して、異常の有無の診断の信頼性を向上させることもできる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づいて本発明に係る機械設備の異常診断装置の実施形態を詳細に説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本発明に係る鉄道車両用の異常診断装置の第1実施形態を示したものである。異常診断装置1は、センサ付き軸受21から構成される検出処理部20と、演算処理部であるマイクロコンピュータ30と、制御処理部40とを備えている。
【0020】
第1実施形態の異常診断装置1は、鉄道車両の車軸を支承する軸受装置内の転がり軸受の摩耗や破損による異常の発生を検出するものである。検出処理部20は、検出用のセンサ22を備えたセンサ付き軸受21で構成されている。センサ付き軸受21は、軸受装置内部に組み込まれており、車軸を支承している。センサ付き軸受21は、車体側に内嵌する外輪23と車軸に外嵌する内輪24と、外輪23の内周面側に形成された外輪軌道と内輪24の外周面側に形成された内輪軌道との間に図示せぬ保持器により保持され、両軌道間に転動自在に配置された玉、ころ等の転動体25と、外輪21に取り付けられたセンサ22とを備えている。
【0021】
センサ22は、軸受21の回転状態に応じて変化する物理量として、音J1、振動J2、軸受の回転数J3、軸受温度J4、軸受外輪上に生じる歪みJ5等の情報を検出する複数の検出素子を有する検出器である。各検出素子は、検出した各物理量を電気信号としてマイクロコンピュータ30に出力する。各検出素子は、それぞれ独立に別の場所に配置されていてもよいし、複数の検出素子を独立に配置する代わりに、複数の検出素子をその筐体の内部に収納し、複数種類の信号を同時に検出する複合センサユニットをセンサ22として用いるように構成してもよい。本実施形態においては、図2(a)に示すように、センサ22は、センサケース22a内に各種センサ22b、22c及び22dを収納した構成としている。以下、センサ22は、センサケース22a内部に軸受21の温度を検出する温度検出素子22bと、軸受21の内輪(車軸)の回転速度を検出する回転検出素子22cと、軸受21に発生する振動を検出する振動検出素子22dとを有しているとして説明を行う。
【0022】
各検出素子22b〜22cは、検出した振動、温度、回転数に対応する電気信号を増幅器50を介して増幅し、マイクロコンピュータ30に出力する。増幅器50は、図2(b)に示すように、センサケース22a内部にそれぞれ設けてもよいし、図1に示すとおり、センサ22とマイクロコンピュータ30との間にそれぞれ設けてもよいし、マイクロコンピュータ30内部に設けるように構成してもよい。好ましくは、センサケース22a内に検出素子22b、22c及び22d毎にそれぞれ増幅器22e、22f及び22gを取り付けることが好ましい。センサ22から出力された信号がケーブルを介してマイクロコンピュータ30に伝達される間に、ノイズが入り込み、測定の信頼性が低下する恐れがあるが、予め増幅器を介して信号レベルを大きくしておくことにより、ノイズの影響を受けにくくなり、信頼性が向上する。
【0023】
センサ22とマイクロコンピュータ30との間は、有線(ケーブル)により信号が伝達される。有線(ケーブル)は、ノイズの減少等測定精度を向上させるために、防水、防油、防塵、防錆、防湿、耐熱、耐電磁ノイズ性を有しているのが好ましい。同様に、センサ22の各検出素子22b〜22dは、ノイズの減少等測定精度を向上させるために、防水、防油、防塵、防錆、防湿、耐熱、耐電磁ノイズ性を有しているのが好ましい。例えばセンサユニット内にすべての検出素子を収納し、センサ22の筐体22aに防水、防油、防塵、防錆、防湿、耐熱、耐電磁ノイズ性を持たせることによって、実施することが可能である。
【0024】
マイクロコンピュータ30は、本実施形態のシステム用に開発された1チップマイクロコンピュータ、又は1ボードマイクロコンピュータであり、ICチップ、メモリ等から構成される。図3は、マイクロコンピュータ30での内部処理を示すブロック図である。
【0025】
データ蓄積分配部31は、各検出素子から送られた信号を受け取り一時的に蓄積すると共に、信号の種類に応じて各分析部32,33,34の何れかに信号を振り分ける収集および分配機能を有している。各種信号は、データ蓄積分配部31に送られる以前に、増幅器により増幅され、そしてA/Dコンバータによりデジタル信号に変換された後にデータ蓄積分配部31に送られる。増幅とA/D変換は、順序が逆であっても構わない。
【0026】
図4は、第1のデータ蓄積部であるデータ蓄積分配部31を示す図である。データ蓄積分配部31は、データ蓄積部31aと、サンプリング部31bと、サンプリング基準設定部31cとを有している。データ蓄積部31aは、各検出素子22b〜22dからの出力信号を各信号毎に保存するデータ保存媒体であり、各種メモリ等で構成することが可能である。
【0027】
データ蓄積部31aは、各検出素子22b〜22dから送られた信号を受け取り一時的に蓄積すると共に、信号の種類に応じて各分析部32,33,34の何れかに信号を振り分ける。各種信号は、データ蓄積分配部31に送られる前段にて、図示せぬA/Dコンバータによりデジタル信号に変換されている。
【0028】
サンプリング基準設定部31bは、後段の分析部に出力する信号のサンプリングを行うかどうかの基準値を保存している。この基準値は、振動検出素子22dが出力した信号の分析可能な信号レベルの最大値を規定するものである。この基準値は、マイクロコンピュータの設計時点で任意の値に設定することができ、使用途中であっても、ユーザーの要望により自由に値の変更が可能なものである。
【0029】
サンプリング部31cは、時間データである振動、温度、回転数データを所定長さに切り出して、後段の分析部に信号を出力するための信号のサンプリング行う。このサンプリング部31cは、振動検出素子22dからの出力信号がサンプリング基準設定部31bに保存された基準値より大きなノイズを含んでいる場合に、そのノイズが入っている時間帯について信号のサンプリングを行わず、後段のフィルタ処理部34に信号が出力されないようにする。具体的には、信号レベルがある一定値以上となっているある2点AおよびBを検出し、AからBの時間の間は、データをフィルタ処理部34及び振動分析部35の方に出力しないよう制御する。これにより、大きなノイズデータを含む時間領域の周波数成分を行わないようにすることが可能となり、誤った異常診断を行う可能性を小さくすることが可能である。なお、サンプリング基準設定部31b及びサンプリング部31cは、必ずしも設ける必要はなく、また同様の効果を奏することが可能であれば、例えばデータ蓄積部31aの前段等、別の場所に配置するように構成してもよい。
【0030】
温度分析部32は、温度検出素子22bからの出力信号を基に軸受の温度を算出し、算出した温度を比較判定部36に送出する。分析部32は、例えば検出素子の特性に応じた温度換算テーブルを有しており、検出信号のレベルを基に、温度データを算出する。
【0031】
回転分析部33は、回転検出素子22cからの出力信号を基に、内輪24、つまりは車軸の回転速度を算出し、算出した回転速度を比較判定部36に送出する。例えば、回転検出素子22cが、内輪24に取り付けられたエンコーダと外輪23に取り付けられた磁石および磁気検出素子で構成されている場合には、回転検出素子22cが出力する信号は、エンコーダの形状と回転速度に応じたパルス信号となる。回転分析部33は、エンコーダの形状に応じた所定の変換関数又は変換テーブルを有しており、関数またはテーブルに従って、パルス信号から内輪24および車軸の回転数を算出する。
【0032】
振動分析部35は、振動検出素子22dからの出力信号を基に、軸受21に発生している振動の周波数分析を行う。具体的には、振動分析部35は、振動信号の周波数スペクトルを算出するFFT計算部であり、FFTのアルゴリズムに基づいて、振動の周波数スペクトルを算出する。算出された周波数スペクトルは、比較判定部36に送られる。また、振動分析部35は、FFTを行う前処理として、振動信号の包絡線を求めるエンベロープ処理を行い、ノイズの低減を図るように構成してもよい。振動分析部35は、必要に応じて、エンベロープ処理後のエンベロープデータもあわせて比較判定部36に出力する。
【0033】
一般に、軸受の回転に起因して生じる振動の異常周波数帯は、軸受の大きさ、転動体の数等に依存して決まっている。軸受の各部材の欠陥と、各部材で発生する異常振動周波数の関係は、図5に示すとおりである。周波数分析においては、サンプリング時間に応じて、フーリエ変換可能な最大の周波数(ナイキスト周波数)が決まるため、ナイキスト周波数以上の周波数は、振動信号中に含まれていないことが好ましい。そのため、本実施形態では、データ蓄積分配部31と振動分析部35の間にフィルタ処理部34を設け、フィルタ処理部34にて所定の周波数帯を切り出し、切り出された周波数帯のみを含む振動信号を振動分析部35に送出するように構成している。鉄道車両において、低速で車軸が回転している場合には、例えば、1kHz以下の周波数成分のみを抽出するように構成すればよい。
【0034】
また、フィルタ処理部34は、最初はフィルタ処理を行わず、振動分析部35にてまず周波数スペクトルを求め、ピークが観測される周波数帯を予め見積もり、その後に周波数帯域に対応したフィルタ処理を行った後に、改めて周波数分析を行うように構成してもよい。このように構成することによっても、不要なノイズを効果的に排除し、精度の高い周波数分析を行うことが可能となる。
【0035】
センサ22,特に振動検出素子22dを負荷がかかっている部位(負荷圏)に取り付けると、感度良く信号を検出できるため、より精度の高い測定が行える。ここで、負荷圏とは、図6に示すように、転動体に対する荷重が負荷される領域を指す。また、負荷圏にセンサを取り付けるスペースがない時やノイズを発生する高電圧ケーブルが配設されている時など止むを得ず非負荷圏に取り付ける場合は、フィルタ処理などで信号の検出感度を上げるようにすることで測定が可能となる。
【0036】
比較判定部36は、振動分析部35が求めた振動の周波数スペクトルと、内部データ保存部37に保存されている基準値または周波数スペクトル中から算出される基準値とを比較し、異常振動が発生しているかどうかを判定する。ここで、基準値は、軸受の特定部位の摩耗や破損に起因した周波数成分のデータ、または周波数スペクトル毎に求められるスペクトルに含まれた所定の値である。比較判定部36は、周波数成分の比較による判定と同時に、温度分析部32および回転分析部33から得られた温度および回転速度の分析結果と、内部データ保存部37に蓄積されている軸受の各種データ等の仕様諸元データを参照し、判定の正確性を期す。
【0037】
具体的には、比較判定部36は、振動の周波数スペクトルを基に異常有りと判定された場合、軸受の温度を確認し、温度が所定値を超えていれば重大な異常が発生していると判断する。また、何れかのみが異常を示している場合には、何らかの異常が生じていると判断する。そしてどちらの結果も正常であれば、異常なしと判断する。何れか一方のみが異常を示している場合には、複数回判定を行っても結果が変わらない場合に異常有りと判断するように構成してもよい。比較判定部36は、異常診断の結果を制御処理部40に出力する。
【0038】
比較判定部36が行う振動情報を基にした異常診断の具体的な処理としては、以下のような方法が挙げられる。
【0039】
(1)エンベロープデータの実効値を基準値として用いる方法
本方法では、図5の式を基に、異常時に発生する周波数成分を求める。そしてエンベロープデータの実効値を算出し、この実効値から比較用の基準値を求める。そして、基準値以上の周波数を算出し、異常時に発生する周波数成分との比較を行う。以下、図7を参照しながら説明を行う。
【0040】
まず、センサユニット22aに収納された振動検出素子22dを介して軸受の振動を検出する(ステップS101)。検出された信号は、所定の増幅率で増幅され、A/D変換器によりデジタル信号に変換される(ステップS102)。デジタル信号に変換された振動信号は、所定のフォーマットにて、データ蓄積分配部31に保存される(ステップS103)。
【0041】
次に、デジタル信号の周波数スペクトルを求め(ステップ104)、求められた周波数スペクトルを基に、フィルタ処理部34が、デジタル信号に適用されるフィルタ帯域を選定する(ステップS105)。フィルタ処理部34は、選定したフィルタ帯域以外の周波数成分を除去するフィルタ処理を行い(ステップS106)、フィルタ処理後のデジタル信号を振動分析部35に出力する。そして、振動分析部35は、フィルタ処理後のデジタル信号にエンベロープ処理を施し(ステップS107)、エンベロープ処理後のデジタル信号の周波数スペクトルを求める(ステップS108)。
【0042】
同時に、エンベロープ処理後のデジタル信号の実効値を計算し(ステップS109)、実効値を基にして、異常診断に用いられる基準値を算出する(ステップS112)。ここで、実効値は、エンベロープ処理後のデジタル信号の振幅の絶対値の平均値として求められたものである。基準値は、実効値を基に、以下の式(1)または(2)に基づき算出される。
(基準値)=(実効値)+α ・・・(1)
(基準値)=(実効値)×β ・・・(2)
α,β:データの種類によって可変な所定の値
【0043】
次に、図5に示す表に基づき、軸受の異常に起因して発生する周波数を求め(ステップS110)、求めた周波数に対応する各部材の異常周波数成分のレベル、すなわち、内輪傷成分Si(Zfi)、外輪傷成分So(Zfc)、転動体成分Sb(2fb)及び保持器成分Sc(fc)を抽出し(ステップS111)、ステップ112で計算された基準値との比較を行う(ステップS113)。そして、すべての成分の値が、基準値より小さい場合には、軸受に異常は発生していないと判断し(ステップS114)、いずれかの成分が基準値以上である場合には、該当個所に異常が発生していると判断する(ステップS115)。
【0044】
図8は、異常が発生していない場合の周波数スペクトルを、そして図9は、外輪に異常が発生している場合の周波数スペクトルをそれぞれ例示するグラフである。図8の例においては、エンベロープデータより、基準値が−29.3dBとして得られた。図8中のグラフ中に基準値のラインを引き、内輪傷成分Si(Zfi)、外輪傷成分So(Zfc)、転動体成分Sb(2fb)及び保持器成分Sc(fc)と比較を行うと、何れの成分のレベルも、基準値より小さかった。従って、この軸受は、正常であると判断できる。一方、図9の場合には、外輪傷成分So(Zfc)が基準値よりも大きく突出しており、軸受の外輪に異常が発生していると判断することができる。
【0045】
また、図10は、保持器に傷がある場合の周波数スペクトルと基準値の関係を示すグラフである。図10においては、保持器傷に対応する周波数fcにおいて、基準値よりも大きなピークが観測されている。このように、発生周波数のピークの有無は、軸受に起因する周波数におけるレベルと基準値との比較によって判断されるため、図10に示すような小さなピークであっても、適切に診断を行うことが可能である。
【0046】
(2)スペクトルのピークを求め、ピーク周波数と異常周波数を比較する方法
本方法では、図5の式を基に、異常時に発生する周波数成分を求める。そして、振動分析部36が求めた周波数スペクトルの中で所定数または基準値以上のピークについて、異常が発生する周波数成分に該当するかどうかを照合する。以下、図11に示すフローチャートを基に詳細を説明する。
【0047】
ステップS108までの流れは、(1)の方法に記載したものと同様であるため省略する。本方法では、まず得られた周波数スペクトルのピークを計算する(ステップS109)。ここで、周波数のピークを求めるためには、第一に、各周波数成分のデータ点のレベルとその一つ前の周波数成分のデータ点のレベルの差を示す差データを求める。そして、差データの符号が正から負に代わる変曲点を探しだし、その正負の基になった差データに関与している周波数値でピークとなっていると判断する。ただし、診断に必要なピーク値は、山(傾斜)が急な鋭いピークとなっているもののみを対象とするため、傾きが所定の基準値(例えば、1又は−1)より大きい又は小さい場合にのみ、ピークとなっていると判断するようにする。
【0048】
図12は、周波数スペクトルを示す図である。図12において、連続する3点A(X0、Y0)、B(X1、Y1)及びC(X2、Y2)については、点Bがピークとなっている。この場合、AとBとの差データδ1=Y1-Y0>0となっており、BとCとの差データδ2=Y2-Y1<0となっているため、差データが正から負に変化している。そして、ここで傾き(Y1-Y0)/(X1−X0)>1または(Y2-Y1)/(X2−X1)<−1を満たしている場合、点Bがピークであると判断する。
【0049】
そして、軸受の諸元から図5に基づき、異常周波数を算出し(ステップS202)、求めた周波数に対応する各部材の異常周波数成分のレベル、すなわち、内輪傷成分Si(Zfi)、外輪傷成分So(Zfc)、転動体成分Sb(2fb)及び保持器成分Sc(fc)を抽出する(ステップS203)。そして、ピーク周波数と異常時に発生する周波数を比較し、ピーク周波数と算出した異常周波数が一致しているかどうか判断する(ステップS204)。そして、あるピークが異常周波数と一致している場合には、該当する異常周波数に対応する部材に異常が発生していると判断する(ステップS206)。どの周波数とも一致していない場合には、異常無しと判断する(ステップS205)。
【0050】
(3)基本周波数と特定の高調波を用いる方法
本方法は、異常周波数成分の基本周波数である1次の値、基本周波数の倍の周波数を持つ2次の値、そして基本周波数の4倍の周波数を持つ4次の値についてピークの周波数と異常時に発生する周波数が一致しているかどうかを比較し、少なくとも2つの周波数において異常有りと判断された場合には、最終的に異常有りと判断し、異常有りと判断された周波数が一つ以下である場合には、異常なしと判断する。以下、図13を参照しながら、詳細に説明する。
【0051】
周波数スペクトルを算出し、異常に起因して発生する周波数の算出までのプロセスは、方法(1)のフローと同様である。本方法では、比較において、まず図13に示すように、異常時に発生する基本成分(1次成分)の周波数において、スペクトルの値が基準値以上であるかどうかを判断する(ステップS301)。スペクトルの値が、基準値以上である場合には、1次成分が一致したと判断し、ステップS302へ進む。一方、一致しなかった場合には、ステップS311へ進む。
【0052】
ステップS302では、異常時に発生する基本成分の2倍の周波数をもつ2次成分の周波数において、スペクトルの値が基準値以上であるかどうかを判断する。スペクトルの値が、基準値以上である場合には、2次成分が一致したと判断し、ステップS321で該当個所に異常が発生していると最終判断する。一方、一致しなかった場合には、ステップS312へ進む。
【0053】
ステップS311でも、異常時に発生する基本成分の2倍の周波数をもつ2次成分の周波数において、スペクトルの値が基準値以上であるかどうかを判断する。スペクトルの値が、基準値以上である場合には、2次成分が一致したと判断し、ステップS312へ進む。一方、一致しなかった場合には、ステップS321へ進み、該当個所に異常は発生していないと最終判断する。
【0054】
ステップS312では、異常時に発生する基本成分の4倍の周波数をもつ4次成分の周波数において、スペクトルの値が基準値以上であるかどうかを判断する。スペクトルの値が、基準値以上である場合には、4次成分が一致したと判断し、ステップS321で該当個所に異常が発生していると最終判断する。一方、一致しなかった場合には、該当個所に異常は、発生していないと最終判断する。
【0055】
図14は、外輪に傷がある場合の、周波数スペクトルを示す図である。基本周波数であるZfcの自然数倍の高調波が観測されていることがわかる。この場合の基準値が−10dBである場合には、1次、2次及び4次の成分すべてについて、スペクトルの値が基準値以上となっていることがわかる。従って、本方法の処理により、外輪に異常が発生していると判断される。
【0056】
一般に、異常に対応する周波数に偶然ノイズ等の影響により大きなピークが観測されるような場合が考えられるが、本方法によれば、1次、2次及び4次の成分の内、少なくとも2つの周波数において、ピークの値が基準値以上でなければ異常と判断しないため、誤判断を行う可能性を減少することが可能となる。
【0057】
なお、図13のフローチャートでは、1次、2次、4次の順に比較を行ったが、ピークレベルが大きい方から順に比較を行うように構成してもよい。この場合には、最もピークが大きな周波数のピークが基準値以下であれば、その時点で、異常なしと判断することが可能であり、演算時間を短縮することが可能である。また、組み合わせる周波数成分としては、1次の値、2次の値および3次の値の組み合わせや2次の値、4次の値および6次の値の組み合わせであってもよい。
【0058】
(4)異常診断と共に損傷の大きさを推定する方法
方法(1)〜(3)において、異常の有無を診断したが、以下のようにして、損傷の大きさを推定することも可能である。図15は、エンベロープ処理後の周波数スペクトルを示す図である。図において、周波数Zfcに大きなピークが観測されており、外輪に損傷が発生していることがわかる。このZfcにおけるピークの値Lnと周波数スペクトル全体の平均値である基準レベルL0を比較すると、異常を起こしている外輪における損傷の大きさを推定することができる。
【0059】
図16は、転がり軸受において、軌道輪の損傷である剥離が生じた場合に、剥離の大きさと、実測周波数スペクトルデータd1上に現れるピークと基準レベルとの間のレベル差の関係を示したものである。このように、一般的に、レベル差は、損傷の大きさに比例して増大するため、逆に、実測周波数スペクトルデータd1上のピークにおけるレベル差を求めることで、損傷の大きさを推定することが可能である。なお、実測周波数スペクトルデータd1上でのピークレベルの増大は、周波数成分の1次値に対応するピークで一番顕著となる。従って、異常が検出された場合に、周波数成分の1次の値Lnと基準レベルL0とのレベル差lを計算することにより、損傷の度合いを推定し、損傷の度合いに応じて、損傷部品の交換時期を決定することができる。これにより、過剰な部品交換やメンテナンスの実施するのではなく、適切な時期に交換を行うようにし、維持コストを削減することが可能となる。
【0060】
(5)基本周波数の自然数倍の高調波成分とのレベル差を基準値とする方法
本方法は、異常周波数成分の基本周波数である1次のレベルに対して、基本周波数の2、3、4、・・・n倍の周波数を持つ2、3、4,・・・n次のレベルが基準値以上となっている個数をカウントし、所定個数以上基準値を超えている場合に、異常が発生していると判断するものである。具体的には、1次のレベルに対し、n次の値が{(1次のレベル)−(n−1)・a}(dB)以上である場合に、カウントを行う。ここで、aは任意の値である。以下、図17に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0061】
図17は、本方法における処理フローを示すフローチャートである。本方法における周波数スペクトル算出までの処理は、図7のフローチャートのステップS101〜ステップS108に至るまでの処理と同一である。図17には、ステップS108以降の処理を示す。
【0062】
まず、図5に示す式を参照して、軸受の異常に起因する異常周波数を軸受の各部位(外輪、内輪、転動体、及び保持器)毎に算出し(ステップS401)、異常周波数に対応する周波数スペクトルのレベルを抽出する(ステップS402)。そして、異常周波数の自然数倍(2,3,・・・n倍)の周波数に対応する周波数スペクトルのレベルをそれぞれ算出する(ステップS403)。ここでは、基本となる異常周波数の2,3,4,5倍の周波数を持つ2次、3次、4次及び5次成分を抽出するものとする。
【0063】
次に、基本となる1次の値を基準として、各2,3,4,5次成分のレベルの確認を行う(ステップS404)。ここでは、各成分のレベルが{(1次のレベル)−3(n−1)}(dB)以上である場合に、異常有りのカウントを行う。具体的には、以下の場合に、各成分に関し異常有りのカウントが行われる。
(2次成分のレベル)>(1次成分のレベル)−3
(3次成分のレベル)>(1次成分のレベル)−6
(4次成分のレベル)>(1次成分のレベル)−9
(5次成分のレベル)>(1次成分のレベル)−12
【0064】
そして、異常有りのカウントの個数が所定個数以上であるかどうかを確認することによって、最終的な異常判断を行う(ステップS405)。ここでは、2個以上異常有りのカウントがあれば、最終的に異常有りと判断し、1個以下であれば、異常なしと判断する。
【0065】
図18は、円筒ころ軸受(外径215mm、内径100mm、幅47mm、ころ数14)を約300min-1で内輪を回転させたときの周波数スペクトルのレベルと基準線との関係を示す図である。図中の直線は、上述の基準値を線で結んだ判定基準線である。軸受にきずがある場合には、2次以上の成分の値は、判定基準線以上となっているが、正常状態でも発生するころ落ち音に対応するピークのレベルは、2次及び4次成分にて、この判定基準線を下回っている。一般に、ころ落ち音(転動体落ち音)は、外輪に欠陥がある場合と比較して高次成分が低いため、図18で示すように、殆どの値が判定基準線を下回る。これにより、ころ落ち音等、外輪に欠陥がある場合と同じ周波数にピークが現れるような場合であっても、高次成分のレベルを比較することにより、異常か正常かをより精度よく判断することが可能である。
【0066】
(6) 周波数帯域毎の実効値を用いる方法
本方法では、異常に起因する周波数のピークレベルそのものの値ではなく、異常に起因する周波数を含む周波数帯の実効値を用いて、異常診断を行う。具体的に、異常に起因する周波数を含む周波数帯の実効値とは、周波数帯のレベルの自乗平均またはパーシャルオーバオールである。ここで、自乗平均Vi及びパーシャルオーバオールSiは、以下の式で与えられる。ここで、VRMSおよびSOAは、全周波数帯における自乗平均及びオーバオールである。オーバオールは、特定の指定区間の総和を意味する。
【0067】
【数1】
Figure 2004198375
【0068】
図19は、本方法の処理フローを示すフローチャートである。本方法における周波数スペクトル算出までの処理は、図7のフローチャートのステップS101〜ステップS108に至るまでの処理と同一である。図19には、ステップS108以降の処理を示す。
【0069】
まず、図5に示す式を参照して、軸受の異常に起因する異常周波数を軸受の各部位(外輪、内輪、転動体、及び保持器)毎に算出し(ステップS501)、その後、算出された周波数を含む周波数帯域について、自乗平均(Vi)又はパーシャルオーバオール(Si)、及び、周波数スペクトルの帯域全体の自乗平均(VRMS)又はオーバーオール(SOA)である正規化値を算出する(ステップS502)。そして、前述の一つの次数成分帯域の自乗平均(Vi)又はパーシャルオーバオール(Si)を前記正規化値(VRMS又はSOA)で除した値又は差分の値を算出する(ステップS503)。
【0070】
次に、除した値又は差分の値を保存されている参照データと比較照合し、除した値又は差分の値が正常な範囲であるかどうか、具体的には所定の基準値以上かどうかを判断する(ステップS504)。除した値又は差分の値が所定の基準値以上または以下であれば、異常有りと判断し、周波数帯に基づき、異常発生箇所を特定する(ステップS505)。ここで、基準値以上であるか以下である場合に異常有りとするかは、実際の測定によって定めればよい。それ以外の場合は、異常なしと判断する(ステップS506)。
【0071】
以上の方法を、実際の測定結果を引用して説明する。図20は、外輪に異常がある場合の周波数スペクトルを、図21は、外輪に異常が無い場合のスペクトルを示すグラフである。図20の左端近傍(10〜20Hzあたり)には、異常ピーク周波数帯が存在する。このスペクトル全体の自乗平均値Vaは、0.016である。一方、図21の対応するスペクトル全体の自乗平均値Vnは、0.008である。ここで、外輪きずに起因する異常周波数帯(基本周波数)に対して抽出する周波数帯域幅を2Hzとすると、その帯域における自乗平均値をVで正規化した値は、図20の場合90.78であり、図21の場合38.47となる。異常を有する場合は、正常時に比べて約2.4倍正規化した値が大きいことがわかる。従って、90.78と38.47の間又は正常時と異常時の比に所定のしきい値を設け、しきい値より大きい場合には、外輪に異常が発生していると判断することができる。
【0072】
一方、図22及び図23は、複数の帯域を用いる場合の例を示す。図22は、外輪に損傷を有するころ軸受及び正常な歯車(歯数;31)を有する機械設備のエンベロープ周波数スペクトルを示すグラフである。この図では、5つの周波数ピークが観測されており、基本周波数から、その整数倍毎に2次成分から5次成分までが観測されている。一方、図23は、図22に対応する正常時の観測データであり、特異周波数は見あたらない。
【0073】
以下、図22及び図23のデータに関し、上記手法を適用してみる。外輪きずに起因する基本周波数およびその5次までの成分の各帯域における自乗平均値の和をスペクトル全体の自乗平均値で正規化した値は、図22の場合は11.64であり、図23の場合は5.19となる。ここで、5次の高調波とは、基本周波数から数えて5番目のピークを意味する。異常を有する場合は、正常時に比べて約2.2倍正規化した値が大きいことがわかる。従って、11.64と5.19の間又は正常時と異常時の比に所定のしきい値を設け、しきい値より大きい場合には、外輪に異常が発生していると判断することができる。
【0074】
以上が、比較判定部36により異常の有無の判断を行う場合の具体的な処理パターンである。比較判定部36は、これらの方法のうち複数の判断方法を用いて異常診断を行うように構成してもよい。複数の判断方法により、異常と判断することは、異常診断の正確さが向上するため好ましい。
【0075】
制御処理部40は、演算処理部30の分析結果や判定結果を所定の表示形態で表示する表示手段としての結果出力部42と、軸受21が組み込まれている車両の駆動機構の動作を制御する制御系に前記比較判定部36の判定結果に応じた制御信号をフィードバックする制御器41とを備えている。
【0076】
結果出力部42は、具体的には、モニターや画像表示やプリンタへ印刷出力によって、演算処理部30の分析結果や判定結果を通知する他、演算処理部30の判定結果が異常有りの場合には、警告灯の点滅や警報機の作動による通知を行う。
【0077】
制御器41は、例えば、演算処理部30の判定結果が異常有りの場合に、異常の程度に応じて、車両の走行停止や、速度の減速等を示す制御信号を車両の走行制御器に送る。本実施形態では、複数のセンサ22は、軸受装置の軸受の状態を連続で測定し、演算処理部30は、測定されたデータに基づき順次異常診断するようにしている。従って、制御処理部40は、異常が発生したら即座に異常を通知し、車両の制御を行う。即ち、検出、分析、判定及び結果出力の流れがリアルタイムに行われている。
【0078】
なお、センサ22は、常に測定を行うように構成してもよいし、または所定時間毎に測定を行うように構成しても構わない。また、リアルタイムに異常診断を行う代わりに、車両運行時には測定及び測定データの蓄積のみを行い、後に別の場所で解析を行うように構成してもよい。例えば、日中は測定のみを行い、夜間にまとめて分析、判定及び結果出力を行うように構成しても構わない。
【0079】
以上、説明した本実施形態の車軸用軸受装置の異常診断装置1は、軸受装置に組み込まれ、軸受装置から発生する信号を電気信号として出力するセンサ22を有するセンサ付き軸受21と、センサ21の出力を基に機械設備20の異常の有無を判定する演算処理を行うマイクロコンピュータ30と、マイクロコンピュータ30による判定結果を出力する結果出力部40と、を備えている。
この異常診断装置1は、センサ付き軸受21の構成部品の摩耗や破損に起因した異常の有無を判定するため、センサ付き軸受21自体や軸受21を含む鉄道車両自体を分解をせずに通常の使用状態のままで異常の有無を判定することができる。
【0080】
従って、手間のかかる分解・組み立て作業の頻度を減少させて保守・管理コストを低減させることができる。また、規定の演算処理による分析や比較で機械的に判定を行うため、従来の目視検査と比較すると、検査担当者の熟練度や個人差によって判定がばらつく虞がなく、異常の有無の診断の信頼性を向上させることができる。
【0081】
また、情報処理装置として、マイクロコンピュータ30を使用する構成で、マイクロコンピュータ30自体は、1チップ又は1ボードの小さな専用ユニットとすることができるため、情報処理装置として汎用のパーソナルコンピュータを使用する従来の監視システムと比較すると、システム全体を大幅にコンパクト化でき、装備に必要な占有スペースが少なくて済むため、摺動部材を含む機械設備(即ち、鉄道車両等)への装備が容易になる。
【0082】
また、転がり軸受21を構成する機構部品である外輪等に直にセンサ22が組み込まれて、センサ22が高感度で転がり軸受21の発生する物理量を検出するため、転がり軸受21の周囲の他の器物が発生する音や振動の周波数成分のピークが、センサ22の検出する信号のSN比に悪影響を及ぼす危険が低減し、センサユニット5の出力信号のSN比の改善によって、分析・判定の精度の向上を図ることができる。
【0083】
更に、情報処理装置としてのマイクロコンピュータが小型であるため、情報処理装置が、コンパクト化でき、且つ汎用の大きな筐体等を使用せずに済む。従って、情報処理装置としての耐震性を向上させることが容易にでき、その結果、センサ22と共に転がり軸受21に接近して装備することができ、転がり軸受21とマイクロコンピュータ30との接近によって外部ノイズの影響を回避して、異常の有無の診断の信頼性を向上させることもできる。
【0084】
また、本実施形態では、センサ22自体に、その出力信号を増幅して出力する増幅器が内蔵されているが、センサ出力を増幅する出力増幅手段は、センサ22とマイクロコンピュータ30との間に接続したり、マイクロコンピュータ30側に内蔵する構成としても良い。
但し、増幅器をセンサ22に内蔵させた構成の場合は、センサ22の出力信号が強いため、センサ22とマイクロコンピュータ30との間の信号伝達経路等で加わるノイズの影響を抑えることができ、ノイズによる処理精度の低下を防止して、異常の有無の診断の信頼性を向上させることができる。
【0085】
(第2実施形態)
図24は、本発明に係る異常診断装置の第2の実施形態を示したものである。
【0086】
この第2の実施形態の異常診断装置2は、マイクロコンピュータ30と前記センサ22とを単一のデバイス基板に搭載して、単一の処理ユニット60として、転がり軸受21の構成部品に組み付けたものである。転がり軸受21、マイクロコンピュータ30から判定結果が送られる制御処理部40は、前述の各実施形態の場合と同様の構成で良いので、説明を省略する。このように構成した監視システム(異常診断装置)2では、取り付けがセンサ付き軸受21の取り付けで済み、取り付け作業性を向上させることができる。
【0087】
また、本実施形態では、制御処理部40は、鉄道車両ではなく、地上に配置し、処理ユニット60に設けられた送受信機70と制御処理部40との間の通信を、無線を介して行うように構成してもよい。例えば、図25に示すように、地上側の信号送受信装置80を線路際、駅、踏切等に設置し、鉄道車両が通過するときに、信号送受信装置80との間で信号の送受信を行い、電話回線等を用いた有線またはワイヤレスを用いた無線等、既存の通信インフラを利用して信号送受信装置80と制御処理部40間で送受信するように構成してもよい。この場合、制御処理部40は、地上に設置された情報処理センタに配置されることとなる。
【0088】
なお、ネットワークを利用することにより各機能は連結されるため、制御処理部40は、1カ所にのみ配置されるのではなく、複数の情報処理センタに配置するように構成してもよい。これにより、複数の情報処理センタで、各鉄道車両の軸受の状態を監視することが可能となる。
【0089】
なお、本実施形態の異常診断装置は、軸受装置の軸受の異常の有無及び異常発生箇所を診断するとしたが、これに限らず、センサで検出される信号について対応可能であるので、車輪のフラット部や軸受装置の歯車の異常の有無及び異常発生箇所を診断するように構成してもよい。
【0090】
【発明の効果】
以上、本発明の異常診断装置は、鉄道車両の軸受装置に組み込まれているセンサ付き軸受のセンサの出力を情報処理装置としてのマイクロコンピュータによって分析すると共に、その分析結果を予め用意しておいた基準データと比較することで、摺動部材の構成部品の摩耗や破損に起因した異常の有無を判定するため、鉄道車両およびその軸受装置を分解をせずに通常の使用状態のままで異常判定することができる。
従って、手間のかかる分解・組み立て作業の頻度を減少させて保守・管理コストを低減させることができる。
また、規定の演算処理による分析や比較で機械的に判定を行うため、従来の目視検査と比較すると、検査担当者の熟練度や個人差によって判定がばらつく虞がなく、異常の有無の診断の信頼性を向上させることができる。
【0091】
また、情報処理装置として、マイクロコンピュータを使用する構成で、マイクロコンピュータ自体は、1チップ又は1ボードの小さな専用ユニットとすることができるため、情報処理装置として汎用のパーソナルコンピュータを使用する従来の異常診断装置と比較すると、システム全体を大幅にコンパクト化でき、装備に必要な占有スペースが少なくて済むため、鉄道車両の軸受装置への装備が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る鉄道車両用の異常診断装置の実施形態を示す図である。
【図2】センサの内部構造を示すブロック図である。
【図3】マイクロコンピュータの内部構造を示すブロック図である。
【図4】データ蓄積分配部を示す図である。
【図5】軸受の各部材の欠陥と各部材で発生する異常振動周波数の関係を示す関係式である。
【図6】軸受における負荷圏と非負荷圏の関係を示す図である。
【図7】第1の方法における処理のフローを示すフローチャートである。
【図8】異常が発生していない場合の周波数スペクトルを示すグラフである。
【図9】外輪に異常が発生している場合の周波数スペクトルを示すグラフである。
【図10】保持器に傷がある場合の周波数スペクトルと基準値の関係を示すグラフである。
【図11】第2の方法における処理のフローを示すフローチャートである。
【図12】周波数スペクトルを示す図である。
【図13】第3の方法における処理のフローを示すフローチャートである。
【図14】外輪に傷がある場合の周波数スペクトルを示す図である。
【図15】エンベロープ処理後の周波数スペクトルを示す図である。
【図16】剥離の大きさと、実測周波数スペクトルデータに現れるピークと基準レベルとの間のレベル差の関係を示したものである。
【図17】第5の方法における処理のフローを示すフローチャートである。
【図18】周波数スペクトルのレベルと基準線との関係を示す図である。
【図19】第6の方法における処理のフローを示すフローチャートである。
【図20】外輪に異常がある場合の周波数スペクトルを示すグラフである。
【図21】外輪に異常が無い場合の周波数スペクトルを示すグラフである。
【図22】外輪に異常がある場合の周波数スペクトルを示すグラフである。
【図23】外輪に異常が無い場合の周波数スペクトルを示すグラフである。
【図24】本発明に係る鉄道車両用の異常診断装置の第2実施形態を示す図である。
【図25】本発明に係る異常診断装置を鉄道車両に適用した一例を示す図である。
【符号の説明】
1,2 異常診断装置
20 検出処理部
21 転がり軸受
22 センサ
23 外輪
24 内輪
25 転動体
30 マイクロコンピュータ(演算処理部)
31 データ蓄積分配部
32 温度分析部
33 回転分析部
34 フィルタ処理部
35 振動分析部
36 比較判定部
37 内部データ保存部
40 制御処理部
41 制御器
42 結果出力部
50 増幅器
60 処理ユニット
70 送受信機
80 信号送受信機
100 入力部

Claims (3)

  1. 鉄道車両の車軸用軸受装置の異常の有無を診断する鉄道車両の車軸用軸受装置の異常診断装置であって、
    前記軸受装置に組み込まれ、前記軸受装置から発生する信号を電気信号として出力するセンサを有するセンサ付き軸受と、
    前記センサの出力を基に前記機械設備の異常の有無を判定するマイクロコンピュータと、
    前記マイクロコンピュータによる判定結果を出力する結果出力部と、
    を備えたことを特徴とする異常診断装置。
  2. 前記センサ付き軸受は、前記マイクロコンピュータを内蔵したことを特徴とする請求項1記載の異常診断装置。
  3. 前記センサ付き軸受は、無線を介して前記判定結果を前記結果出力部に出力することを特徴とする請求項2記載の異常診断装置。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2019105457A (ja) * 2017-12-08 2019-06-27 株式会社日立ビルシステム 軸受検査装置
CN111024219A (zh) * 2019-12-31 2020-04-17 神州高铁技术股份有限公司 信号的获取方法、系统及存储介质、诊断方法、检测系统

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