JP2004196021A - 車両の重心移動構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料タンク周辺のスペースを圧迫することなく、車両旋回時におけるトラクション性能を高めることができる車両の重心移動構造を提供する。
【解決手段】車体に搭載された燃料タンク1の内部における左右両側に、燃料と隔離したエアバッグ3を設け、車両の旋回時に、反旋回側のエアバッグ3を膨張させて、燃料2の旋回側へ移動して、重心Gを旋回側へ移動させることにより、トラクション性能を向上させることができる構造を提供する。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両旋回時のトラクション性能を高めことができる車両の重心移動構造を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車の走行性能を高めるために、燃料タンク内の燃料を移動させて、車体の重心を変化させる技術が知られている。例えば、車両の登坂性能を高めるために、本来の燃料タンクの前方に副タンクを設置し、車両の登坂時に、燃料の一部を燃料タンクから連通管を介して前方の副タンクに移動させる。すると、燃料全体の重心が前方へ移動し、登坂に有効な接地長さが長くなるため、車輪又はクローラの空転が防止されて、登坂性能が向上する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特許第3199643号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、燃料タンクとは別に副タンクを燃料タンクの周辺に設置する必要があるため、その分、燃料タンク周辺のスペースを圧迫し、他の機器のレイアウトに影響を与える。
【0005】
また、前後方向での登坂性能でなく、左右方向での旋回性能、即ち、車両旋回時において、重心移動でトラクション性能を高めようとするには、燃料タンクの左右両側にそれぞれ副タンクを設置する必要があり、前後方向での登坂性能の場合よりも、更に燃料タンク周辺のスペースが圧迫されることになる。
【0006】
この発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、燃料タンク周辺のスペースを圧迫することなく、車両旋回時におけるトラクション性能を高めることができる車両の重心移動構造を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、車体に搭載された燃料タンクの内部における左右両側に、燃料と隔壁とを介して仕切られた膨張自在な気密室をそれぞれ形成し、車両の旋回時に、反旋回側の気密室を膨張させて、燃料の重心を旋回側へ移動させることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、燃料タンクの内部における左右両側に、気密室を形成し且つ燃料と接する隔壁を有する膨張自在なエアバッグを、それぞれ設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、燃料タンク内に左右方向で伸縮自在な袋体を設置すると共に該袋体内に燃料を充満させ、燃料タンクの内部における袋体の左右両側に袋体の一部である隔壁を介して仕切られた気密室が形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、旋回側の気密室をエンジン吸気で減圧して、反旋回側の気密室を大気圧にすることにより、反旋回側の気密室を膨張させることを特徴とする。
【0011】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、燃料タンクの内部に形成された気密室の膨張を行うだけで、燃料の重心を移動させて、トラクション性能の向上を図ることができるため、燃料タンクの外部に別のタンクを設ける必要がなく、燃料タンク周辺のスペースが圧迫されることはない。また、エアバッグを膨張させることで、燃料の液面が上昇するため、旋回時の横Gにより燃料の液面が斜めになっても、燃料の吸い出しの際に空気を一緒に吸い出すおそれがなく、エンジンへの確実な燃料供給ができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、燃料タンクの左右両側にエアバッグを設けるだけの簡単な構造で、燃料の重心を移動させることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、燃料を袋体の内部に充満させたため、袋体の内部に空気層が存在しない。従って、燃料の吸い出しの際に空気を一緒に吸い出すおそれがなく、エンジンへの確実な燃料供給ができると共に、燃料の液面が揺れるチャプチャプという音も発生しない。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、前項の効果に加え、エンジン吸気と大気圧を利用して、気密室の膨張制御を行うことができるため、空気ポンプ等の別機器が不要となる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1〜図3は、この発明の第1実施形態を示す図である。図1は、車体に搭載された燃料タンク1の横断面を車体後方から見た図である。燃料タンク1の内部には、燃料2が入れられており、底面近くに配置された図示せぬフィルター装置から、燃料2をエンジンに供給することができる。
【0017】
燃料タンク1の左右両側には、エアバッグ3がそれぞれ設けられている。エアバッグ3は、燃料2を通過させない伸縮可能な材料で袋状に形成され、燃料タンク1の左右の内面に接着した状態で取付けられている。
【0018】
エアバッグ3の下方には、燃料タンク1外部へ突出した空気口4が設けられ、ここからポンプ等の空気供給装置により空気を送り、エアバッグ3を膨張させることができる。
【0019】
エアバッグ3は、燃料タンク1の内面に接着されている部分以外が隔壁3aとして燃料2に接し、エアバッグ3の内部に気密室5をつくる。
【0020】
左右のエアバッグ3の膨張は、ハンドル舵角センサーや旋回横G(加速度)センサーにて制御され、図2に示すように、旋回する側とは反対のエアバッグ3が膨張するようになっている。
【0021】
以下、エアバッグ3を膨張させる場合の作用を図3のフローチャートに基づいて説明する。
【0022】
ステップS1は、車両が直進している状態で、エアバッグ3は空気が抜かれてしぼんだ状態になっている。
【0023】
その状態からステップS2でハンドルが操舵されると、次にステップS3でセンサーにより操舵方向と旋回横Gを検出する。
【0024】
そして、ステップS4で旋回横Gが0.3以上であるかどうか判断して、以上だとステップS5に進み、未満だとステップS3に戻る。
【0025】
ステップS5では、操舵方向の左右を判断して、左操舵の場合は反対側の右側エアバッグ3を膨張させ(ステップS6)、逆に右操舵の場合は左側エアバッグ3を膨張させる(ステップS7)。
【0026】
エアバッグ3の膨張は、ステップS8での判断により、旋回横Gが0.3未満になるまで続けられ、0.3未満になると、ステップS9でエアバッグ3の空気を抜いて終了する。
【0027】
このように、操舵方向(旋回側)とは逆側のエアバッグ3を膨張させることにより、例えば、図2に示すような右旋回の場合は、エアバッグ3の膨張容積分の燃料2が右側へ移動するため、燃料2全体の重心Gも右側へシフトする。そのため、空転しやすい旋回側の内輪6の輪荷重Fが反対側の外輪7の輪荷重fより増加し、旋回時のトラクション性能が向上する。
【0028】
また、エアバッグ3を膨張させることで、燃料2の液面が上昇するため、横Gにより燃料2の液面が斜めになっても、燃料2の吸い出しの際に空気を一緒に吸い出すおそれがなく、エンジンへの確実な燃料供給ができる。
【0029】
尚、上記のような燃料2の重心Gの移動によるトラクション性能の改善は、燃料2がある程度燃料タンク1に残っている状態ではじめて機能するものである。従って、燃料タンク1内の燃料2が残り少なくなった状態では、両方のエアバッグ3を膨張させ、燃料2の液面上昇による空気の吸い出し防止効果だけを得るようにする。
【0030】
図4〜図6は、この発明の第2実施形態を示す図である。この第2実施形態では、燃料タンク8が内部に袋体9を設けた二重構造とされている。袋体9は、燃料タンク8の内高に相当する上下寸法を有し、その上面部及び下面部をジャバラ構造にすることにより、袋体9全体が左右方向へ伸縮自在になっている。
【0031】
袋体9の左右中央部には、燃料タンク8の内面に対する帯状のシール部10が全周にわたって施されている。従って、燃料タンク8内における袋体9の外側の空間は、このシール部10により左右に仕切られ、左右それぞれに独立した気密室11が形成される。
【0032】
左右の気密室11には、それぞれ空気口12が形成され、空気口12は、ソレノイド13と接続されている。ソレノイド13は、常時大気解放による大気口で気密室11と連結されており、ソレノイド13を電磁機構により持ち上げた場合のみエンジン吸気による減圧口と連結された状態になる。
【0033】
そして、袋体9の上部には、給油管14が接続され、給油管14から袋体9内に燃料2を注入することができる。給油管14の途中には、逆流防止弁15が設けられている。燃料2は、袋体9内に空気を残すことなく、充満状態で注入される。この袋体9は、燃料タンク8に相応する上下寸法を有しているため、燃料2を袋体9の内部に注入した状態で、袋体9の左右側面部が実質的な隔壁9aとなって、燃料2と気密室11とを仕切った状態になる。
【0034】
袋体9内の燃料2は、袋体9内に配置された図示せぬフィルター装置から吸入されてエンジンへ供給されるが、燃料2の量に応じて袋体9が伸縮するため、燃料2が減ってきても、燃料2により袋体9の内部が隙間なく満たされた状態は維持される。従って、エンジンへ供給される燃料2に空気が混入するおそれはなく、また、袋体9の内部には液面が存在しないため、チャプチャプとした音が発生することもない。
【0035】
以下、気密室11を膨張させる場合の作用を図6のフローチャートに基づいて説明する。尚、ステップS1〜ステップS5までは、第1実施形態と同様に付き、説明を省略する。
【0036】
ステップS5で、操舵方向の左右を判断して、左操舵の場合は左側のソレノイド13だけを持ち上げて、エンジン吸気による減圧口に切り換える(ステップS10)。逆に右操舵の場合は右側のソレノイド13だけを持ち上げて、エンジン吸気による減圧口に切り換える(ステップS11)。
【0037】
ソレノイド13の減圧口への切り換えは、ステップS12での判断により、旋回横Gが0.3未満になるまで続けられ、0.3未満になると、ステップS13で元の大気口に戻る。
【0038】
このように、操舵方向(旋回側)と同じ側のソレノイド13だけをエンジン吸気による減圧口に切り換えると、反対側のソレノイド13は大気口に連結されたままなので、両者の相対的圧力差により、反旋回側の気密室11が膨張することになる。
【0039】
例えば、図5に示すような右旋回の場合は、左側の気密室11が膨張して、気密室11の膨張容積分の燃料2が右側へ移動するため、第1実施形態同様に、燃料2全体の重心Gも右側へシフトし、旋回時のトラクション性能が向上する。尚、一方を減圧して、他方を大気で加圧するため、袋体9内の燃料2には変則的な圧力が加わるが、給油管14内には逆流防止弁15が設けられているため、燃料2が給油管14から漏れ出すことはない。
【0040】
更に、この第2実施形態では、エンジン吸気と大気圧を利用して、気密室11の膨張制御を行うことができるため、空気ポンプ等の別機器が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1実施形態に係る燃料タンクの内部構造を示す断面図。
【図2】反旋回側の気密室を膨張させた状態を示す図1相当の断面図。
【図3】この発明の第1実施形態の作用を示すフローチャート。
【図4】この発明の第2実施形態に係る燃料タンクの内部構造を示す断面図。
【図5】反旋回側の気密室を膨張させた状態を示す図4相当の断面図。
【図6】この発明の第2実施形態に係る燃料タンクの内部構造を示す断面図。
【符号の説明】
1、8 燃料タンク
2 燃料
3 エアバッグ
3a 隔壁
5、11 気密室
9 袋体
9a 隔壁
G 重心

Claims (4)

  1. 車体に搭載された燃料タンクの内部における左右両側に、燃料と隔壁とを介して仕切られた膨張自在な気密室をそれぞれ形成し、
    車両の旋回時に、反旋回側の気密室を膨張させて、燃料の重心を旋回側へ移動させることを特徴とする車両の重心移動構造。
  2. 請求項1に記載の車両の重心移動構造であって、
    燃料タンクの内部における左右両側に、気密室を形成し且つ燃料と接する隔壁を有する膨張自在なエアバッグを、それぞれ設けたことを特徴とする車両の重心移動構造。
  3. 請求項1に記載の車両の重心移動構造であって、
    燃料タンク内に左右方向で伸縮自在な袋体を設置すると共に該袋体内に燃料を充満させ、燃料タンクの内部における袋体の左右両側に袋体の一部である隔壁を介して仕切られた気密室が形成されていることを特徴とする車両の重心移動構造。
  4. 請求項3に記載の車両の重心移動構造であって、
    旋回側の気密室をエンジン吸気で減圧して、反旋回側の気密室を大気圧にすることにより、反旋回側の気密室を膨張させることを特徴とする車両の重心移動構造。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2009184471A (ja) * 2008-02-05 2009-08-20 Toyota Motor Corp 車両制御装置
JP2016107683A (ja) * 2014-12-02 2016-06-20 トヨタ自動車株式会社 車両構造
CN107881974A (zh) * 2017-11-24 2018-04-06 广西柳工机械股份有限公司 矿用洒水车水箱储水系统
JP2021516185A (ja) * 2018-02-28 2021-07-01 カウテックス テクストロン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト 体積要素を有するモータ車両タンク

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