JP2004195740A - 印刷機診断装置、印刷機診断方法、印刷色調監視装置、および印刷機 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、印刷機40によって印刷された印刷物Fの特性に基づいて印刷機40の状態を診断する印刷機診断装置11であって、印刷物Fの特性を特徴付ける色管理データCを予め蓄積している色管理データベース14と、印刷機40の状態を診断するための診断条件の入力を受け付ける診断条件入力部20と、印刷物Fの所定期間経過後における色管理データCの変化量を、診断条件入力部40に入力された診断条件と比較し、比較結果に基づいて印刷機40の状態を診断する比較演算部16とを備えている。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷機から所望の品質の印刷物が印刷されるように、印刷物の特性を特徴付ける色管理データに基づいて、印刷物の印刷色調の監視および調整を行う印刷機診断装置、印刷機診断方法、印刷色調監視装置および印刷機に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、例えばオフセット印刷やグラビア印刷のような印刷では、品質の良い印刷物を得るためにインキ量を適切に調整する必要がある。
【0003】
インキ量が不足すると印刷濃度が低くなり、ボリューム感不足、あるいは光沢感不足となってしまう。逆にインキ量が過剰となると、インキ濃度が高くなり、中間調の網点がつぶれるなどして、いわゆるドットゲインが大きくなり、所望の品質の階調再現が得られなくなる。
【0004】
そこで、各々の印刷方法では、独自の色調調整方法が採用されている。
【0005】
たとえばオフセット印刷の場合は、実際の印刷現場において、印刷開始前に絵柄面積率情報に基づいたインキプリセットによってあらかじめインキキーの開度をある程度決めておき、印刷開始後には、オペレータが、実際の印刷物を見ながらインキ量と湿し水量の微調整を行うことによって、所望の色調に調整し、OKシートを得るということが一般的に行われている。なお、OKシートとは、所望のインキ量への調整、ならびに見当合わせ、折あわせなどの調整が完了し、十分な品質を有しているものとオペレータによって判断された印刷物のことである。
【0006】
一方、グラビア印刷の場合は、インキ量はグラビア版のセル形状によって決まるので、印刷開始直後、ドクターのあたり具合などの調整を行ってもなお色調の調整が必要な場合には、インキ主成分である顔料、樹脂、および溶剤の混合比率を調整し、インキ固形分の含有量を調節している。このようにして乾燥後の被印刷物上のインキ量を調整し、所望の色調を得ることなどにより、OKシートを得ている。
【0007】
【特許文献1】
特許第3265902号公報
【0008】
【特許文献2】
特許第3218910号公報
【0009】
【特許文献3】
特許第3149723号公報
【0010】
【特許文献4】
特開2001−325092号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、OKシートが得られるまで微調整を行う方法では、オペレータが目視で実際の印刷物の仕上がり具合をチェックしながら、最適なインキ量に調整するので、表現が豊かで品質的にも良好な印刷物が得られる。しかしながら、印刷機、材料、あるいは印刷現場の環境に伴う様々な変動要因のために、たとえ一旦OKシートが得られた後であっても、印刷終了までオペレータが印刷品質をチェックし、適宜インキ量の微調整を続けなければならない。
【0012】
このため、色調のわずかな変化を確実に把握し微調整を行うためには、高度な技術を持った熟練オペレータが必要である。
【0013】
このような不便を解決するために、例えば上記特許文献1乃至4で開示されたような発明がなされ、実用化されている。
【0014】
例えば、オフラインの装置としては、上記特許文献1で開示されているような色評価装置、上記特許文献2で開示されているような印刷物評価装置、および上記特許文献3で開示されているような絵柄位置検出装置がある。これらの装置では、印刷物を測色し、基準とする印刷物から得られた測色データと比較することによって、色調のわずかな変化を確実にとらえることができる。
【0015】
また、インラインの装置としては、印刷物中にレイアウトしたカラーバーを測色し、これを基準印刷物より得られた測色データと比較することによって色調の変化を捉える装置が市販されている。このような装置の中には、色調の変化分をインキ量に変換し、オフセット印刷であればインキキー開度に、グラビア印刷であればインキ調整装置にフィードバックする事によって、自動的に所望のインキ量に調整するようなインライン色調制御装置もある。
【0016】
しかしながら、この市販のインライン色調制御装置は、印刷中の印刷物の濃度値、ないしは測色値を用いて色調調整のためのインキ量を調整する目的で開発されたものであり、日々の印刷機の状態、並びにブランケット、ローラなどの消耗品の状態を加味して印刷の仕上がり具合を適切に調整することはできない。
【0017】
たとえば、目標濃度などを決めておき、上記のような市販のインライン色調制御装置を用いて印刷を行うと、印刷機の状態、並びにブランケット、ローラなどの消耗品の状態が良好である場合は、いつも同じような印刷色調に素早く調節することができるので大変有効である。
【0018】
しかしながら、印刷機の状態や、ブランケット、ローラなどの消耗品の状態が良好ではない場合には、同じような濃度で印刷しても、ライトからシャドーにおける階調再現がそれらの状態によって変化してしまい、いつもと同じような良好な印刷物を再現することができなくなる。
【0019】
このようなことを解決するために、例えば上記特許文献4で開示されているような技術が用いられている。
【0020】
すなわち、上記特許文献4で開示されている技術は、インターネットを利用して各印刷拠点の印刷機の異常や印刷品質の診断を効果的に行うことのできる印刷機遠隔診断システムである。これは、多数の現地印刷拠点と多数の現地印刷拠点を地域毎にグルーピング化したサービス拠点と、各印刷機の技術情報とともに、異常復旧用のサービス情報を管理する統括管理拠点とからなる。そして、サービス拠点および統括管理拠点間が、WWWサーバによりネット網に接続されている。また、サービス拠点は、サンプル印刷物より印刷品質を検出してこれを定量化する印刷品質検出装置を備えており、この定量化された印刷品質データをネット網を介して統括拠点に転送する。そして、統括拠点では、所定の診断が行われ、その結果がサービス拠点もしくはサービスマンに返信されることによって、印刷機に異常が生じた場合には、印刷機を効率的に修理することができる。
【0021】
しかしながら、印刷機の状態、並びにブランケットやローラなどの消耗品の状態は日々変化している。したがって、印刷色調に与える影響が大きい場合であっても、印刷を中止するほどの異常でもなく、印刷機の修理ないしは消耗品の交換を要するほどでもなく、若干の調整のみで対処できる場合が多い。
【0022】
上記特許文献4で開示されている技術は、印刷を中止するほどの異常が発生し、印刷機の製造メーカに修理を依頼するような場合には効率的なサービスを受けることができ、大変有効であるが、逆に、若干の調整のみで対処できるような場合を含めた臨機応変な対応策までの考慮はなされていない。
【0023】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、印刷物の特性を特徴付ける色管理データに基づくインキ量の調整と、印刷機自体や、ブランケットおよびローラ等の消耗品の状態の常時診断とに基づいて印刷物の仕上具合を調節し、もって、印刷物の色調再現の安定化を図るとともに、印刷機自体や、ブランケットおよびローラ等の消耗品の状態の長期にわたる安定化を保つことによって、無駄な用紙の削減、および生産効率の向上を図ることが可能な印刷機診断装置、印刷機診断方法、印刷色調監視装置、および印刷機を提供することを目的とする。
【0024】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明では、以下のような手段を講じる。
【0025】
すなわち、請求項1の発明は、印刷機によって印刷された印刷物の特性に基づいて印刷機の状態を診断する印刷機診断装置であって、印刷物の特性を特徴付ける色管理データを予め蓄積している色管理データベースと、印刷機の状態を診断するための診断条件の入力を受け付ける診断条件入力手段と、印刷物の所定期間経過後における色管理データの変化量を、診断条件入力手段に入力された診断条件と比較し、比較結果に基づいて印刷機の状態を診断する診断手段とを備えている。
【0026】
従って、請求項1の発明の印刷機診断装置においては、以上のような手段を講じることにより、過去に蓄積された色管理データと、印刷機から実際に印刷された印刷物の所定期間経過後における色管理データの変化量を、設定した診断条件と比較することによって、印刷機の状態を診断することができる。これによって、従来技術と比較して、印刷機の状態や、ブランケットやローラなどの消耗品の状態に依存することなく、より安定した品質のよい印刷物を得ることができる。
【0027】
請求項2の発明は、請求項1の発明の印刷機診断装置において、色管理データは、印刷物の濃度値及び/又は測色値とを含んでいる。
【0028】
したがって、請求項2の発明の印刷機診断装置では、色管理データを、印刷物の濃度値と測色値とを用いて定量的に定義することができる。
【0029】
請求項3の発明は、請求項2の発明の印刷機診断装置において、色管理データは、少なくとも、印刷用紙の種類と、印刷物に用いられるインキの種類と、印刷物の印刷品目と、絵柄面積率とのうちの何れかを含んでおり、この色管理データに含まれている少なくとも印刷用紙の種類、インキの種類、絵柄面積率、および印刷品目のうちの何れかに関する濃度値に基づいて演算される少なくとも網点面積、ドットゲイン、インキトラッピング、およびコントラストのうちの何れかの印刷特性の所定期間経過後の変化量に基づいて、印刷機の状態を診断する。
【0030】
したがって、請求項3の発明の印刷機診断装置においては、以上のような手段を講じることにより、新規または以前に印刷したものと同一品質のものを印刷する再版等に関係なく、どのような印刷ジョブであっても、精度の高い色管理データの目標値を設定することができる。また、印刷用紙の種類、インキの種類、印刷品目に関する濃度値の所定期間経過後の変化量に基づいて印刷機の状態を診断することができるので、ブランケットやローラ等の消耗品の状態も診断することが可能となる。
【0031】
請求項4の発明は、請求項3の発明の印刷機診断装置において、変化量を、予め設定した許容値と比較することによって、印刷機の状態を診断する。
【0032】
すなわち、請求項4の発明の印刷機診断装置では、色管理データを少なくとも印刷用紙の種類、インキの種類、印刷品目に関する所定期間後の変化量を、判断レベルに応じた許容値と比較することによって、印刷機の状態、つまり、ブランケットやローラーなどの消耗品の状態を診断することができる。その結果、必要に応じて色管理データの目標値を適切に変更することができ、診断結果に応じた適切な対処法を選択することが可能となる。
【0033】
請求項5の発明は、請求項1乃至4のうち何れか1項の発明の印刷機診断装置を備えた印刷機である。
【0034】
このように、請求項1乃至4のうち何れか1項の発明の印刷機診断装置を備えた印刷機は、目標値とする色管理データを高い精度で設定することができる。その結果、目標値として設定した色管理データの印刷物を、短時間で得ることが可能となる。
【0035】
請求項6の発明は、請求項1乃至4のうち何れか1項の発明の印刷機診断装置と、印刷機によって印刷された印刷物の色管理データを測定する色管理データ測定手段と、色管理データ測定手段によって測定された色管理データと予め定められた目標値とする色管理データとを一致させるように印刷機を操作する操作量を演算する操作量演算手段とを備えてなる。
【0036】
したがって、請求項6の発明の印刷色調監視装置においては、以上のような手段を講じることにより、実際の印刷物を測定しながら実際の印刷物が所望の色管理データになるようインキ量を制御し、印刷開始直後から仕上がり品質の良好な印刷物を得ることができる。その結果、OKシートを作成することが非常に容易になる。
【0037】
請求項7の発明は、請求項6の発明の印刷色調監視装置において、色管理データのうち、少なくとも印刷用紙の種類、印刷物に用いられるインキの種類、印刷物の網点面積、および印刷物の印刷品目について、印刷機が該印刷物を印刷するときの目標濃度値を決定する目標濃度値決定手段と、印刷機診断手段による診断結果に基づいて、目標濃度値決定手段によって決定された目標濃度値を補正する目標濃度値補正手段とを備えている。
【0038】
したがって、請求項7の発明の印刷色調監視装置においては、以上のような手段を講じることにより、OKシート作成後は、その印刷物の色管理データを用い、刷了まで印刷物を測定しながらインキ量を制御することができる。その結果、仕上がりの良い印刷物を、容易にかつ安定して得ることが可能となる。
【0039】
請求項8の発明は、請求項6または請求項7の発明の印刷色調監視装置において、色管理データ測定手段によって測定された色管理データと、目標値とする色管理データとを画面表示する画面表示手段を付加している。
【0040】
したがって、請求項8の発明の印刷色調監視装置では、実際に印刷された印刷物の色管理データと、目標値としている色管理データとを表示することができるので、オペレータは、実際に印刷された印刷物の色管理データと、目標としている色管理データとの相違を容易に把握することが可能となる。
【0041】
請求項9の発明は、請求項6乃至8のうち何れか1項の発明の印刷色調監視装置において、印刷機診断装置による診断結果と、色管理データとを、通信ネットワークを介して遠隔に備えられた端末へと送信する送信手段を備えている。
【0042】
したがって、請求項9の発明の印刷色調監視装置では、この送信手段を用いることによって、インターネットのような通信ネットワークを介して遠隔端末とのデータ送信を行うことにより、以下のようなことが可能となる。
【0043】
たとえば、印刷色調監視装置をWWWサーバを介して他のシステムと接続することによって、台割れなどのように同一品目の異なる折り(印刷ジョブ)を、複数台の印刷機を用いて一度に印刷する場合などにおいても、印刷機の診断結果に基づき、必要に応じて各々の印刷機に応じたCTP(Computer to Plate)の出力カーブに変更することによって、版の網点面積率を予め適切な値に変更し、印刷物の色調を、他の印刷機で印刷した印刷物の色調に、容易に一致させることができる。
【0044】
請求項10の発明は、請求項6乃至9のうち何れか1項の発明の印刷色調監視装置を備えてなる印刷機である。
【0045】
このように、請求項6乃至9のうち何れか1項の発明の印刷色調監視装置を備えた印刷機は、目標値とする色管理データを高い精度で設定することができる。その結果、目標値として設定した色管理データの印刷物を、短時間で得ることが可能となる。
【0046】
請求項11の発明は、印刷機によって印刷された印刷物の特性に基づいて印刷機の状態を診断する印刷機診断方法であって、印刷物の特性を特徴付ける色管理データを予め色管理データベースに蓄積しておき、印刷機の状態を診断するための診断条件の入力を受け付け、印刷物の所定期間経過後における色管理データの変化量を、入力された診断条件と比較し、比較結果に基づいて印刷機の状態を診断する。
【0047】
従って、請求項11の発明の印刷機診断方法においては、以上のような手段を講じることにより、過去に蓄積された色管理データと、印刷機から実際に印刷された印刷物の所定期間経過後における色管理データの変化量を、設定した診断条件と比較することによって、印刷機の状態を診断することができる。これによって、従来技術と比較して、印刷機の状態や、ブランケットやローラなどの消耗品の状態に依存することなく、より安定した品質のよい印刷物を得ることができる。
【0048】
請求項12の発明は、請求項11に記載の印刷機診断方法において、色管理データは、印刷物の濃度値及び/又は測色値とを含んでいる。
【0049】
したがって、請求項12の発明の印刷機診断方法では、色管理データを、印刷物の濃度値と測色値とを用いて定量的に定義することができる。
【0050】
請求項13の発明は、請求項12に記載の印刷機診断方法において、色管理データは、少なくとも、印刷用紙の種類と、印刷物に用いられるインキの種類と、印刷物の印刷品目と、絵柄面積率とのうちの何れかを含んでおり、この色管理データに含まれている少なくとも印刷用紙の種類、インキの種類、絵柄面積率、および印刷品目のうちの何れかに関する濃度値に基づいて演算される少なくとも網点面積、ドットゲイン、インキトラッピング、およびコントラストのうちの何れかの印刷特性の所定期間経過後の変化量に基づいて、印刷機の状態を診断する。
【0051】
したがって、請求項13の発明の印刷機診断方法においては、以上のような手段を講じることにより、新規または以前に印刷したものと同一品質のものを印刷する再版等に関係なく、どのような印刷ジョブであっても、精度の高い色管理データの目標値を設定することができる。また、印刷用紙の種類、インキの種類、印刷品目に関する濃度値の所定期間経過後の変化量に基づいて印刷機の状態を診断することができるので、ブランケットやローラ等の消耗品の状態も診断することが可能となる。
【0052】
請求項14の発明は、請求項13に記載の印刷機診断方法において、変化量を、予め設定した許容値と比較することによって、印刷機の状態を診断する。
【0053】
すなわち、請求項14の発明の印刷機診断方法では、色管理データを少なくとも印刷用紙の種類、インキの種類、印刷品目に関する所定期間後の変化量を、判断レベルに応じた許容値と比較することによって、印刷機の状態、つまり、ブランケットやローラーなどの消耗品の状態を診断することができる。その結果、必要に応じて色管理データの目標値を適切に変更することができ、診断結果に応じた適切な対処法を選択することが可能となる。
【0054】
請求項15の発明は、請求項11乃至14のうち何れか1項に記載の印刷機診断方法を適用して診断されるようにした印刷機である。
【0055】
このように、請求項11乃至14のうち何れか1項の発明の印刷機診断方法を適用した印刷機は、目標値とする色管理データを高い精度で設定することができる。その結果、目標値として設定した色管理データの印刷物を、短時間で得ることが可能となる。
【0056】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0057】
本発明の実施の形態を図1から図5を用いて説明する。
【0058】
図1は、本発明の実施の形態に係る印刷色調監視装置を印刷機に適用した適用例を示す機能構成図である。
【0059】
すなわち、本発明の実施の形態に係る印刷色調監視装置10は、印刷物の特性を特徴付ける色管理データに基づいて、印刷物の印刷色調を監視する装置であって、印刷機診断装置11と、色管理制御装置12と、印刷条件データ入力部18と、表示画面22と、通信機器24と、測定ヘッド26とを備えている。また、印刷機診断装置11は更に、色管理データベース14と、比較演算部16と、診断条件入力部20とを備えている。
【0060】
色管理制御装置12は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー用の各印刷ユニット42(#1〜#4)を通過することによって印刷機40によって印刷された印刷物Fの色管理データCを測定する一対の測定ヘッド26によって測定された色管理データCを受信する。そして、受信した色管理データCを色管理データベース14へと転送し、ここに蓄積させる。また、操作量Hの演算や、濃度値等から印刷特性を求める演算も行う。 色管理データベース14は、例えば図2にそのデータ構成例を示すような色管理データCを格納している。この色管理データCは、75%、50%、25%などの平網濃度別に、印刷条件毎に測定された濃度値及び/又は測色値である。図2の例に示すように、印刷条件としては、印刷物Fの用紙種類(例えば、上質紙、マット紙、コート紙、アート紙)、インキの種類(例えば、X社製α色、X社製β色、・・、Y社製α色、Y社製β色、・・、Z社製α色、Z社製β色、・・・等)、印刷物Fにおける絵柄面積率、および印刷物Fの印刷品目(例えば、A雑誌、B雑誌といった商品名)がある。また、濃度値に基づいて演算される印刷物の網点面積、ドットゲイン、インキトラッピング、およびコントラストといった印刷特性の値を格納しても良いし、印刷機診断の度に演算させても良い。
【0061】
なお、ドットゲイン、インキトラッピング、およびコントラストを、濃度値から求める場合には、以下に示すような式に基づいて算出する。
【0062】
1)ドットゲイン(%Dot Gain)
%Dot Gain = %Printed Dot − %Film Dot
ここで、%Printed Dot は、以下に示すマレーデービスの式より求める。
%Printed Dot= ((1−10−Dt)/(1−10−Ds))×100
なお、Dtは平網の濃度、Dsはベタ濃度である。更に、%Film Dotとしては50%を用いる。
【0063】
2)インキトラッピング(%Ink Trap)
%Ink Trap = ((D3−D1)/D2)×100
ここで、D1は1色目濃度、D2は2色目濃度、D3はオーバプリント濃度であり、濃度は全て2色目のフィルタで測定する。
【0064】
3)コントラスト(PC)
PC = ((Dt−D75)/Dt)×100
ここで、Dtは平網の濃度、D75は75%濃度である。 濃度値としては、ベタ濃度、および75%、50%、25%などの平網濃度を、また測色値としてはCIELABを用いる。
【0065】
なお、本発明は、濃度値および測色値として上記に限定されるものではない。
【0066】
比較演算部16は、診断条件入力部20から入力された診断条件に基づいて、印刷機40のインキローラ44や、ブランケット胴48といった消耗品の状態を診断する。この診断条件では、所定期間、印刷特性、および許容値などを設定している。所定期間としては例えば一日毎でも、1週間毎でも、1月毎でもよいが、ここでは、1週間を設定した。許容値としては、ある一定範囲のベタ濃度内でのドットゲインの許容値を診断レベル1、診断レベル2、診断レベル3に分け、それぞれの許容値を±4%、±6%、±8%とした。印刷特性としてはドットゲイン、インキトラッピング、コントラストなど様々考えられる。
【0067】
この診断は、色管理データCに含まれている印刷用紙の種類、インキの種類、絵柄面積率、および印刷品目などの濃度値に基づいて得られる印刷特性値の所定期間経過後(たとえば、一日経過後、あるいは一月経過後)の変化量を、診断条件入力部20から入力することによって設定した許容値と比較することによって行う。更に、このように診断した診断結果に基づいて、以下に示すようにして目標濃度値の設定および補正を行う。
【0068】
また、色管理制御装置12は、色管理データベース14に蓄積された色管理データCのうちの、少なくとも印刷用紙の種類、印刷物Fに用いられるインキの種類、印刷物Fの絵柄面積率、および印刷物Fの印刷品目について、印刷機40が印刷物Fを印刷する場合における目標濃度値を決定する。更にこのようにして決定した目標濃度値を、診断結果に基づいて補正する場合もある。
【0069】
比較演算部16は、診断結果を通信機器24および色管理制御装置12へと出力する。色管理制御装置12は出力された診断結果に基づいて、目標濃度値を演算するとともに印刷機40を操作する操作量Hをも求め、更に表示画面22と印刷機制御装置28へと出力されるようにしている。
【0070】
印刷条件データ入力部18は、オペレータが印刷機40から印刷させる印刷物Fの特性である印刷条件データを入力する部位である。そして、オペレータによって入力された印刷条件データに基づく色管理データCを色管理データベース14から取得し、比較演算部16へと出力する。なお、印刷情報をコンピュータ管理していれば、そこからデータを取得するようにしても良い。
【0071】
診断条件入力部20は、印刷機40のインキローラ44や、ブランケット胴48といった消耗品の状態を診断するための診断条件の入力をオペレータから受け付ける。そして、オペレータによって入力された診断条件を、比較演算部16へと出力する。なお、診断条件をコンピュータ管理し、印刷物が決定しだい、自動的に取得するようにしても良い。
【0072】
表示画面22は、測定ヘッド26によって測定された色管理データCと、比較演算部16によって決定された目標濃度値とがそれぞれ、色管理制御装置12を介して入力されるようにしている。そして、このようにして取得した色管理データCと目標濃度値とを、図3に示すように比較しながらグラフィカルに表示する。
【0073】
通信機器24は、LANやインターネットなどの通信ネットワーク50を介して、遠隔に備えられた他のシステム等に備えられた通信機器52(#1〜#n)と接続している。このような通信機器24は、比較演算部16から出力された診断結果を取得し、取得した診断結果を通信ネットワーク50を介して他システムの通信機器52(#1〜#n)へと送信する。これによって、遠隔に備えられた通信機器52からであっても、印刷機40の診断結果を把握することができるようにしている。
【0074】
印刷色調監視装置10をWWWサーバを介して他のシステムと接続することによって、台割れなどのように同一品目の異なる折り(印刷ジョブ)を、複数台の印刷機40を用いて一度に印刷する場合などにおいても、印刷機40の診断結果に基づき、必要に応じて各々の印刷機40に応じたCTP(Computer to Plate)の出力カーブに変更することによって、版の網点面積率を予め適切な値に変更し、印刷物Fの色調を、他の印刷機40で印刷した印刷物Fの色調に、容易に一致させることができる。 印刷機制御装置28は、比較演算部16によって決定された操作量Hに基づいて、インキ量をブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)毎に決定し、決定したインキ量を印刷機40のブラック用の印刷ユニット42(#1)、シアン用の印刷ユニット42(#2)、マゼンタ用の印刷ユニット42(#2)、イエロー用の印刷ユニット42(#4)にそれぞれ出力し、各印刷ユニット42に備えられているインキキーの開度を調整する。
【0075】
次に、以上のように構成した本発明の実施の形態に係る印刷色調監視装置の動作を、図4および図5に示すフローチャートを用いて説明する。
【0076】
本発明の実施の形態に係る印刷色調監視装置10を用いて印刷機40を制御するためには、OKシートに基づき測定された色管理データCを色管理データベース14に蓄積しておく必要がある。
【0077】
このため、まず、従来から一般的に行われているインキ量調整方法によって、様々な印刷ジョブを実行し、OKシートを得、測定ヘッド26によってこのOKシートの色管理データCを測定し、色管理データベース14に蓄積した。この作業は、印刷機40として、三菱重工製B縦オフセット輪転機を用い、インキ量調整方法として、絵柄面積率に基づき、インキプリセットとオペレータの微調整とを行う方法を採用し、1ヶ月間にわたって様々な印刷ジョブを実行することによって行った。色管理データCとしては、濃度値または測色値が用いることができるが、ここでは、濃度値としてベタ濃度、および75%、50%、25%などの平網濃度を、また測色値としてはCIELABを用いた。
【0078】
このように色管理データCを色管理データベース14に蓄積した後、図4のフローチャートに示すように、診断条件入力部20から比較演算部16に対して、印刷機40を診断するための条件入力の設定がなされる(S1)。
【0079】
ステップS1でなされる診断条件入力の設定においては、データ解析を行うための所定期間、印刷特性、および許容値などが設定される。所定期間としては例えば一日毎でも、1週間毎でも、1月毎でもよいが、ここでは、1週間を設定した。
【0080】
許容値としては、ある一定範囲のベタ濃度内でのドットゲインの許容値を診断レベル1、診断レベル2、診断レベル3に分け、それぞれの許容値を±4%、±6%、±8%とした。
【0081】
印刷特性としてはドットゲイン、インキトラッピング、コントラストなど様々考えられるが、ここでは、最も一般的に普及し、また中間調のばらつき具合を容易に推測できるドットゲインを選択した。印刷特性としてドットゲインを設定した場合における印刷機診断方法について以下に説明する。なお、状況に応じて複数の印刷適性を診断レベルに応じてそれぞれ入力し、その結果を用いてさらに詳細な診断を行うことも可能である。また、診断レベルについても適宜レベル数を変更することが可能である。
【0082】
印刷特性としてドットゲインを設定した場合は、同一の印刷品目(例えば、雑誌A)を印刷する場合、印刷機40に対しては、常に最高品質の印刷物を同じように印刷することが求められる。このため、発売号が違ってもそのベタ濃度、ドットゲインはほぼ同じとなることが望ましい。しかしながら、実際には発売号によって絵柄が変わり、その絵柄それぞれに印刷物の判断基準が異なる。例えば、清涼感を求められる絵柄や、逆に暖かみを求められる絵柄など様々あるために、異なる発売号に対して全く同一のベタ濃度、ドットゲインで印刷をする訳ではなく、ある程度の許容値を持っている。
【0083】
米国のオフ輪印刷用基準であるSWOP(Specification Web Offset Publica-tions)では、目標ベタ濃度、目標ドットゲインの他に、生産中の許容値もまた設けられている。その許容値は、ベタ濃度で±0.14D、ドットゲインで±5%である。一方、日本においては、米国と印刷線数等が違う(米国は主に130線であるのに対し、日本は175線)ために、ドットゲインの許容値は±4%が望ましいとされている。
【0084】
一方で、ベタ濃度、すなわちインキ量変動以外のドットゲインの変動要因は大きく2つある。
【0085】
一つは、印刷濃度とオフセット印刷であればインキ/水バランスである。ただし、水なし印刷の場合はこの限りではない。
【0086】
もう一つは、印刷条件、すなわち、印圧や印刷スピードである。同一品目の場合、原則的に上記要因は同一設定で印刷するので、ベタ濃度並びにドットゲインもある範囲内に収まる。しかし、実際は印刷条件が常に同じであるとは限らない。主にブランケット胴48や、インキローラ44などの消耗品の状態は、常に変化している。したがって、如何に注意を払って同じように印刷したつもりであっても、ドットゲインが変化し、結果として印刷物の見栄えが変化してしまう。
【0087】
そこで、本発明の実施の形態では、上記の特性を利用して印刷機40の診断を行っている。具体的には、色管理データベース14に格納された色管理データの中から、設定した所定期間である例えば1週間の色管理データと、それ以前の色管理データとについて、同一品目に関するデータを比較する。そして、そのドットゲインに相違が見られれば、印刷機40の状態が変化したものと診断するものとした。その相違の程度は先に設定したドットゲインの許容値である。
【0088】
なお、ドットゲインなどの印刷特性は、インキ/水バランスの影響でも変動するが、色管理データベースの色管理データは、OKシートのデータであるため、インキ/水バランスは適性になっているものと考えられ、印刷機40の診断が可能となる。 このようにして印刷機40の診断条件の入力が終了すると、次に、実際に印刷機40の診断が開始される(S2)。そして、ステップS1で入力された診断条件に基づいて、測定ヘッド26によって測定された色管理データCが解析され(S3)、診断レベル毎にそれぞれ設けた条件の許容値内であるかどうかが判定される(S4,S7,S10)。
【0089】
各診断レベルに基づく対処方法は、あらかじめ決めておき、それに応じた対処を実施するものとする。以下に示すステップS5、ステップS8、ステップS11の対処方法は、その一例である。これら対処方法としては、ノウハウを含めて様々なものが考えられ、また、その対処方法も必ずしも一つでなくともよく、複数設定しておき、その中から最も適切なものを随時選択して実施するようにしてもよい。
【0090】
まず、ステップS3における色管理データCの解析の結果、診断レベル1であると判定された場合(S4:Yes)には、診断結果が良好であるものとされ(S5)、印刷機40の診断を終了する(S6)。
【0091】
診断レベル1ではなく(S4:No)、診断レベル2であると判定された場合(S7:Yes)には、診断レベル2に基づく対処(S8)として、色管理データCの目標値が、ドットゲインの増減に応じて適切に補正される(S9)。
【0092】
診断レベル2でもなく(S7:No)、診断レベル3であると判定された場合(S10:Yes)には、診断レベル3に基づく対処(S11)として、ドットゲインの増減に応じてCTPカーブが補正され、版の網点%をあらかじめ変えておくことによって、所望の品質の印刷物が再現されるようにした(S12)。
【0093】
また、ドットゲインの増減が診断レベル3以上になった場合(S10:No)には、印刷が中止され、印刷機40の整備や修理など適切な処置がなされる(S13)。
【0094】
なお、ステップS4、ステップS7、およびステップS10でなされた診断の診断結果は、色管理制御装置12、通信機器24、および色管理データベース14へと出力される。色管理制御装置12へ出力された診断結果は、更に表示画面22へと転送され、そこから画面表示される。また、通信機器24へ出力された診断結果は、更にそこから通信ネットワーク50を介して遠隔に設けられた他システムの通信機器52(#1〜#n)へと送信される。色管理データベース14へと出力された診断結果は、そこに蓄積される。
【0095】
次に、本発明の実施の形態に係る印刷色調監視装置10によってなされる印刷機40の色管理時の動作について図5に示すフローチャートを用いて説明する。
【0096】
すなわち、まず、本発明の実施の形態に係る印刷色調監視装置10によって印刷機40の色管理を開始する場合(S21)には、前準備(P1)として、オペレータが印刷条件データ入力部18から選択入力をすることによって、色管理データベース14に蓄積された色管理データCの中から、該印刷ジョブに対応する色管理データCが選択される(S22)。ここでは、再販ものの印刷ジョブを行う例として、特定の印刷品目に応じた色管理データを選定した場合を例に説明する。なお、色管理データCの選択は、このように印刷条件データ入力部18から選択入力をすることによってなされる代わりに、例えばCIP3ないしはCIP4などに規定されているPPFやJDFなどの図示しない上位データを利用して自動的に選択するようにしても良い。
【0097】
このように、色管理データが選択されると、比較演算部16によって、色管理データのうちの印刷品目について目標濃度値が決定される。本来この印刷ジョブの目標濃度値は、ベタ濃度でブラック(K):1.60、シアン(C)1.50、マゼンタ(M)1.50、イエロー(Y)1.20であったが、比較演算部16によって印刷機40の状態が自動的に診断され、その診断結果によると、シアン(C)のドットゲインが増大傾向で、診断レベル2であった。そのため、比較演算部16によって、目標濃度値が補正され、ベタ濃度でブラック(K):1.60、シアン(C)1.40、マゼンタ(M)1.50、イエロー(Y)1.20が新たな目標濃度値とされた(S23)。
【0098】
ステップS23によって目標濃度値が設定された後に、実際の印刷を開始する刷りだしが行われる(P2)。
【0099】
刷りだしが開始されると、測定ヘッド26による印刷物Fの濃度値のオンライン測定が直ちに開始され(S24)、測定された濃度値が色管理制御装置12を介して比較演算部16へと入力される。比較演算部16では、測定された濃度値が、ステップS23で設定された目標濃度値の許容値(たとえば、±0.07D)内にあるか否かがチェックされる(S25)。
【0100】
そして、測定された濃度値が、目標濃度値の許容値内にない場合(S25:No)には、比較演算部16によってなされたチェック結果が、測定ヘッド26による測定結果とともに色管理制御装置12へと出力される。そして、色管理制御装置12では、測定結果が許容値内に収まるように印刷機40を操作する操作量Hが演算され、演算した操作量Hに基づいて、印刷機制御装置28がインキ量をブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)毎に決定する。そして、決定したインキ量が、印刷機40のブラック用の印刷ユニット42(#1)、シアン用の印刷ユニット42(#2)、マゼンタ用の印刷ユニット42(#2)、イエロー用の印刷ユニット42(#4)にそれぞれ出力され、各印刷ユニット42に備えられているインキキー開度を調整し、ステップS24に移行する(S26)。
【0101】
ステップS24からステップS26が繰り返されることによって、印刷物Fの濃度値が、目標濃度値の許容値内に収まるようになり、所望する色の印刷物Fが印刷機40から印刷されるようになる。
【0102】
このようにして印刷物Fの濃度値が、目標濃度値の許容値内に収まるようになる(S25:Yes)と、オペレータ操作によって、印刷色調監視装置10による制御が一旦解除され(S27)、オペレータが色見本を見ることによってOKシートが作成される(P3)。なお、このとき、ステップS25が「Yes」であって、色味も適切でありOKシートが得られていれば、ステップS27の処理を省略することも可能である。 このようにして印刷された印刷物Fは、仮に本来のベタ濃度(ブラック(K):1.60、シアン(C)1.50、マゼンタ(M)1.50、イエロー(Y)1.20)にて刷り出しを実施していれば色調が青みがかってしまっていたはずであったが、ステップS23によって、事前に印刷機40の状態を診断し、その結果に基づいて目標濃度値が、現在の印刷機40の状態に最も合うように補正されたので、ステップP2における刷り出し直後から、色バランスがよい印刷物Fが得られた。このため、オペレータはほとんどインキ量の微調整を実施することなく、OKシートを得ることができた。なお、OKシートを得るまでに要した印刷枚数は印刷開始から約2,000枚であった。
【0103】
このようにしてOKシートが作成された後に、再びインキ量の制御が開始され(S28)、測定ヘッド26による印刷物Fの濃度値のオンライン測定が行われ(S29)、測定された濃度値が、自動的に新たな目標濃度値として設定されると共に、色管理データベース14にOKシートの色管理データとして登録される。
【0104】
次の測定からは、測定ヘッド26によって測定された濃度値が、新たに設定された目標濃度値の許容値(たとえば、±0.07D)内にあるか否かがチェックされる(S30)。そして、測定された濃度値が、目標濃度値の許容値からズレた場合(S30:No)には、ステップS26と同様にして印刷機40の各印刷ユニット42に備えられているインキキー開度が制御され、ステップS29に移行する(S31)。
【0105】
ステップS29からステップS31が繰り返されることによって、一旦OKシートが得られた状態から、印刷物Fの濃度値が、目標濃度値の許容値からズレた場合であっても、インキ量が制御され、目標濃度値の許容値内に収まるようになる。これが刷了(P4)まで繰り返された後に、印刷物Fの印刷を終了し、色管理を終了する(S32)。
【0106】
刷了後、印刷物Fを目視評価した結果、色調のばらつきがなく、非常に良好であった。すなわち、OKシートが得られた後に、ステップS28において印刷を開始し、ステップP4において刷了するまでに、オペレータが必要以上に印刷物Fをチェックする必要が無くなった。これによって、オペレータは、従来方法よりも、印刷物Fをチェックしなくてもよくなり、その分の時間を、次の印刷ジョブの準備に振り分けることができるようになり、現印刷ジョブが終了してから、早くも10分後には、次の印刷ジョブを開始することができるようになった。また、現印刷ジョブ中に無作為で印刷物Fを抜き取り、測定ヘッド26によって測色し、色のばらつきを測定したところ、OKシートに対して色差が2.2以内であり、色調の安定化が図られていることが確認された。
【0107】
さらに1ヶ月後、同一の印刷ジョブで印刷を実施した。この印刷時にもまた、上記の場合と同様に、オペレータがこの印刷ジョブに応じた色管理データを選択することによって行った。
【0108】
印刷を開始する前に、図4のフローチャートに示すような印刷機診断を行ったところ、ステップS3における色管理データ解析において印刷機40の診断結果が診断レベル3を越えてしまっていた。このため、印刷をいったん中止し、印刷機40の整備を行った。
【0109】
ステップS3でなされた診断結果によると、シアン(C)のドットゲインが極端に大きくなっていたので、シアンの印刷ユニット42(#2)を整備した。整備には1時間ほど要したが、その後の印刷では刷りだし直後から良好な印刷物を得ることができ、オペレータによる微調整はほとんど必要がなく、OKシートを得るまでに要した印刷枚数は約1,800枚であった。OKシート後の色差変動も2.1以内と大変安定していた。さらに、その後の1ヶ月間、特に問題となるようなことは発生せず、良好な印刷を継続することができた。
【0110】
(比較例)
比較例として、市販のインライン印刷色調監視装置を用い、上記したように本発明の実施の形態に係る印刷色調監視装置10を用いて行った印刷ジョブと同日に印刷を実施した。この印刷は、本発明の実施の形態に係る印刷色調監視装置10を用いて行った印刷ジョブで使用した印刷機40に並設された印刷機40と同仕様の印刷機を用いて、同一の印刷ジョブを対象として行った。目標濃度値は、この印刷ジョブの本来の目標値であるベタ濃度であるブラック(K):1.60、シアン(C)1.50、マゼンタ(M)1.50、イエロー(Y)1.20)を選択した。
【0111】
上述したような印刷条件において、市販のインライン印刷色調監視装置を用いた刷りだしでも、刷り出し直後からある程度の品質の印刷物を得ることができた。しかしながら、このようにして印刷された印刷物は、色調が若干赤みがかっており、OKシートを得るまでにはオペレータの熟練したインキ量の微調整が必要であった。なお、OKシートを得るまでに要した印刷枚数は印刷開始から約6,000枚であり、本発明の実施の形態に係る印刷色調監視装置10を用いて行った印刷ジョブの場合の3倍であった。OKシート後の印刷色調のばらつきは、本発明の実施の形態に係る印刷色調監視装置10を用いて行った印刷ジョブで得られた印刷物Fのものと同程度であり、OKシートに対する色差が2.3以内であった。
【0112】
この比較例においてもまた、1ヶ月後に、1ヶ月前と同一の印刷ジョブで印刷を実施した。この印刷時にもまた同様に、目標濃度値としてベタ濃度でブラック(K):1.60、シアン(C)1.50、マゼンタ(M)1.50、イエロー(Y)1.20)を選択した。
【0113】
このような印刷条件において刷り出した場合、得られた印刷物は、色調がかなり赤みがかっており、オペレータがインキ量の微調整をしたが、10,000枚程度印刷をしてもOKシートを得るまでには至らなかった。そこで一旦印刷機を停止し、マゼンタ(M)の印刷ユニット42(#3)を点検、整備した。整備には1時間30分ほどの時間がかかった。
【0114】
整備終了後、印刷を再開すると印刷開始直後から色調は良好となった。そこで、オペレータが微調整を行ったところ、印刷開始後約2,500枚でOKシートを得ることができた。しかしながら、マゼンタ(M)の印刷ユニット42(#3)の整備前に既に用紙を約10,000枚無駄にしてしまったので、用紙ロールをもう1本余分に手配する必要に迫られ、時間的にもコスト的にも多大な損失がでてしまった。
【0115】
なお、一旦OKシートが得られると、その後の印刷物の品質は比較的安定しており、OKシートに対する色差も2.2程度と、品質的には全く問題はなかった。
【0116】
上述したように、本発明の実施の形態に係る印刷色調監視装置10は、印刷物Fの特性を特徴付ける色管理データCに基づくインキ量の調整と、印刷機40自体や、ブランケット胴48およびインキローラ44等の消耗品の状態の常時診断とに基づいて印刷物Fの仕上具合を調節することができる。
【0117】
また、目標濃度値が、印刷機40の状態に最も合うように補正されるので、刷りだし直後から色バランスの良い印刷物Fが得られ、オペレータによるインキ量の微調整をほとんど要することなく、極めて容易に、かつ迅速にOKシートを得ることができる。したがって、OKシートを得るまでに要する印刷枚数も低減され、印刷用紙の浪費を減らすことが可能である。これは、一旦印刷機40を停止し、再起動した場合であっても可能である。
【0118】
更に、一旦OKシートが得られると、印刷機40自体や、ブランケット胴48およびインキローラ44等の消耗品の状態にも基づいて印刷機40が調整されるので、印刷物Fの色調を長期にわたって安定して再現することができる。したがって、同一品質の印刷物Fを短時間で得られるようになり、生産性の向上を図ることが可能となった。また、印刷中においても、従来必要としていたオペレータによる微調整がほとんど必要なくなり、オペレータのスキルに依存することなくほぼ等価な品質の印刷物が得られるようになったのみならず、従来オペレータが微調整に要していた時間を、次の印刷ジョブの準備に振り分けることができるようになり、次のジョブを迅速に開始することも可能となった。
【0119】
更にまた、本発明の実施の形態の印刷色調監視装置では、比較演算部16によってなされた診断結果を通信機器24によって通信ネットワーク50を介して遠隔した通信機器52へと送信することができる。したがって、印刷機40あるいは印刷色調監視装置10から遠隔した場所からであっても、印刷機40の状態を把握することができるようになる。
【0120】
したがって、このような印刷色調監視装置10を適用した印刷機40は、一旦OKシートを得ると、長期間にわたって品質の安定した印刷物Fを継続して印刷することが可能となる。また、遠隔からであっても状態が把握されるので、異常等があっても迅速に対応を講じることが可能となる。
【0121】
また、印刷色調監視装置10あるいは印刷機診断装置11をWWWサーバを介して他のシステムと接続することによって、台割れなどのように同一品目の異なる折り(印刷ジョブ)を、複数台の印刷機40を用いて一度に印刷する場合などにおいても、印刷機40の診断結果に基づき、必要に応じて各々の印刷機40に応じたCTP(Computer to Plate)の出力カーブに変更することによって、版の網点面積率を予め適切な値に変更し、印刷物Fの色調を、他の印刷機40で印刷した印刷物Fの色調に、容易に一致させることができる。
【0122】
以上、本発明の好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明はかかる構成に限定されない。特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0123】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、印刷物の特性を特徴付ける色管理データに基づくインキ量の調整と、印刷機自体や、ブランケットおよびローラ等の消耗品の状態の常時診断とに基づいて印刷物の仕上具合を調節することができる。
【0124】
以上により、印刷物の色調再現の安定化を図るとともに、印刷機自体や、ブランケットおよびローラ等の消耗品の状態の長期にわたる安定化を保つことが可能となり、もって、無駄な用紙の削減、および生産効率の向上を図ることが可能な印刷機診断装置、印刷機診断方法、印刷色調監視装置、および印刷機を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る印刷色調監視装置を印刷機に適用した適用例を示す機能構成図
【図2】色管理データの一例を示すデータ構成図
【図3】画面表示部においてなされるグラフィック表示の一例を示す模式図
【図4】本発明の実施の形態に係る印刷色調監視装置が行う印刷機の診断時の動作を示すフローチャート
【図5】本発明の実施の形態に係る印刷色調監視装置の全体動作を示すフローチャート
【符号の説明】
F…印刷物、C…色管理データ、H…操作量、10…印刷色調監視装置、11…印刷機診断装置、12…色管理制御装置、14…色管理データベース、16…比較演算部、18…印刷条件データ入力部、20…診断条件入力部、22…表示画面、24…通信機器、26…測定ヘッド、28…印刷機制御装置、40…印刷機、42…印刷ユニット、44…インキローラ、46…版胴、48…ブランケット胴、50…通信ネットワーク、52…通信機器
Claims (15)
- 印刷機によって印刷された印刷物の特性に基づいて前記印刷機の状態を診断する印刷機診断装置であって、
前記印刷物の特性を特徴付ける色管理データを予め蓄積している色管理データベースと、
前記印刷機の状態を診断するための診断条件の入力を受け付ける診断条件入力手段と、
前記印刷物の所定期間経過後における前記色管理データの変化量を、前記診断条件入力手段に入力された診断条件と比較し、比較結果に基づいて前記印刷機の状態を診断する診断手段と
を備えた印刷機診断装置。 - 請求項1に記載の印刷機診断装置において、
前記色管理データは、前記印刷物の濃度値及び/又は測色値とが定義されてなる印刷機診断装置。 - 請求項2に記載の印刷機診断装置において、
前記色管理データは、少なくとも、印刷用紙の種類と、前記印刷物に用いられるインキの種類と、前記印刷物の印刷品目と、絵柄面積率とのうちの何れかを含んでおり、この色管理データに含まれている少なくとも印刷用紙の種類、前記インキの種類、絵柄面積率、および前記印刷品目のうちの何れかに関する前記濃度値に基づいて演算される少なくとも網点面積、ドットゲイン、インキトラッピング、およびコントラストのうちの何れかの印刷特性の所定期間経過後の変化量に基づいて、前記印刷機の状態を診断するようにした印刷機診断装置。 - 請求項3に記載の印刷機診断装置において、
前記変化量を、予め設定した許容値と比較することによって、前記印刷機の状態を診断するようにした印刷機診断装置。 - 請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の印刷機診断装置を備えてなる印刷機。
- 請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の印刷機診断装置と、
前記印刷機によって印刷された印刷物の前記色管理データを測定する色管理データ測定手段と、
前記色管理データ測定手段によって測定された色管理データと、予め定められた目標値とする色管理データとを一致させるように前記印刷機を操作する操作量を演算する操作量演算手段と
を備えた印刷色調監視装置。 - 請求項6に記載の印刷色調監視装置において、
前記色管理データのうち、少なくとも印刷用紙の種類、前記印刷物に用いられるインキの種類、前記印刷物の網点面積、および前記印刷物の印刷品目について、前記印刷機が該印刷物を印刷するときの目標濃度値を決定する目標濃度値決定手段と、
前記印刷機診断手段による診断結果に基づいて、前記目標濃度値決定手段によって決定された目標濃度値を補正する目標濃度値補正手段と
を備えた印刷色調監視装置。 - 請求項6または請求項7に記載の印刷色調監視装置において、
前記色管理データ測定手段によって測定された色管理データと、前記目標値とする色管理データとを画面表示する画面表示手段を備えた印刷色調監視装置。 - 請求項6乃至8のうち何れか1項に記載の印刷色調監視装置において、
前記印刷機診断装置による診断結果と、前記色管理データとを、通信ネットワークを介して遠隔に備えられた端末へと送信する送信手段を備えた印刷色調監視装置。 - 請求項6乃至9のうち何れか1項に記載の印刷色調監視装置を備えてなる印刷機。
- 印刷機によって印刷された印刷物の特性に基づいて前記印刷機の状態を診断する印刷機診断方法であって、
前記印刷物の特性を特徴付ける色管理データを予め色管理データベースに蓄積しておき、
前記印刷機の状態を診断するための診断条件の入力を受け付け、
前記印刷物の所定期間経過後における前記色管理データの変化量を、前記入力された診断条件と比較し、比較結果に基づいて前記印刷機の状態を診断するようにした印刷機診断方法。 - 請求項11に記載の印刷機診断方法において、
前記色管理データは、前記印刷物の濃度値及び/又は測色値とを含んでいる印刷機診断方法。 - 請求項12に記載の印刷機診断方法において、
前記色管理データは、少なくとも、印刷用紙の種類と、前記印刷物に用いられるインキの種類と、前記印刷物の印刷品目と、絵柄面積率とのうちの何れかを含んでおり、この色管理データに含まれている少なくとも印刷用紙の種類、前記インキの種類、絵柄面積率、および前記印刷品目のうちの何れかに関する前記濃度値に基づいて演算される少なくとも網点面積、ドットゲイン、インキトラッピング、およびコントラストのうちの何れかの印刷特性の所定期間経過後の変化量に基づいて、前記印刷機の状態を診断するようにした印刷機診断方法。 - 請求項13に記載の印刷機診断方法において、
前記変化量を、予め設定した許容値と比較することによって、前記印刷機の状態を診断するようにした印刷機診断方法。 - 請求項11乃至14のうち何れか1項に記載の印刷機診断方法を適用して診断されるようにした印刷機。
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