JP2004191520A - 定着装置 - Google Patents

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Takahiro Yoshikawa
隆博 吉川
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Abstract

【課題】定着ローラと加圧ローラの間のニップ部に、ワックスを含むトナーにより形成されたトナー像を担持した記録媒体を通過させ、熱と圧力によってそのトナー像を記録媒体上に定着してカラー画像を得る定着装置であって、定着ローラの表面に分離爪を当接させ、ニップ部を出た記録媒体が定着ローラの周面に巻き付くことを防止した定着装置において、定着ローラの表面に当接した分離爪によって、その表面が摩耗することを防止する。
【解決手段】定着ローラ1の表面に、オイル含浸塗布ローラ17によって微量のシリコーンオイルを塗布する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワックスを含む複数色のトナーにより形成されたトナー像を担持した記録媒体を、回転する第1及び第2の定着部材の間に通過させ、その通過時に、前記トナー像のトナーに熱と圧力を加えて該トナー像を記録媒体に定着する定着装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
複写機、プリンタ、ファクシミリ或いはこれらの少なくとも2つの機能を備えた複合機などとして構成される画像形成装置に上記形式の定着装置を採用することは従来より周知である。第1及び第2の定着部材としては、例えばローラや無端ベルトが用いられる。かかる定着部材には、例えばシリコーンゴムより成る弾性体層が設けられており、これによって、両定着部材の間を通過する記録媒体上のトナーに過度に大きな圧力が加えられることはなく、トナーの押しつぶしによるトナー像の乱れを防止することができる。また、定着部材の表層が、例えばフッ素樹脂より成る離型層により構成されており、これにより定着部材の表面にトナーが少量ずつ付着して、該トナーが定着部材の表面に固着する不具合を効果的に抑制することができる。定着部材表面にトナーが固着し、これが成長すると、当該トナーが記録媒体上に付着したり、逆に記録媒体上の溶融したトナーが、定着部材上のトナーに付着して、定着部材側に持ち去られるおそれがあるが、かかる不具合の発生を防止することができるのである。
【0003】
ところで、この形式の定着装置においては、ワックスを含むトナーにより形成されたトナー像を定着するので、第1及び第2の定着部材のニップ部を出た記録媒体が定着部材に巻き付くことを防止するために、定着部材にシリコーンオイルなどの離型性を高めるオイルを多量に塗布する必要はないが、かかるオイルレス化を実際に実現するには、ワックス入りのトナーを用いるだけでは不十分である。そこで、従来のこの種の定着装置においては、定着部材の表面に近接して分離板を設け、この分離板によって、定着部材への記録媒体の巻き付きを防止している。ところが、分離板による記録媒体の巻き付き防止効果を高めるには、その分離板と定着部材の表面との間のギャップを極めて狭くする必要があり、このような狭いギャップを常に維持できるように構成することは容易ではなく、定着装置のコストが上昇する。
【0004】
そこで、定着部材の表面に接触する分離爪を設けると、簡単な構成で、しかも低コストで、定着部材への記録媒体の巻き付きを防止することができる。ところが、かかる分離爪を設けると、その分離爪が接触した定着部材表面の部分が経時的に摩耗したり、傷が付けられるなどして劣化する。かかる劣化が発生しても、記録媒体上に担持された単色のトナー像を定着する定着装置の場合には大きな問題は発生しないが、記録媒体上に担持された複数色のトナーより成るトナー像を定着する定着装置においては、その定着後のカラー画像の光沢度が高いため、その画像上にすじが発生し、その画質が低下する。
【0005】
そこで、分離爪自体へオイルを塗布する構成が提案され(特許文献1参照)、また分離爪の先端を定着部材表面から浮かせる構成が提案されているが、前者は、その構成が複雑となり、後者は定着部材に対する分離爪の接触圧が大きく定着部材の耐久性が低下する欠点を免れない。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−10911号公報(段落〔0008〕、図2)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来の欠点を除去することのできる定着装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するため、ワックスを含む複数色のトナーにより形成されたトナー像を担持した記録媒体を、回転する第1及び第2の定着部材の間に通過させ、その通過時に、前記トナー像のトナーに熱と圧力を加えて該トナー像を記録媒体に定着する定着装置であって、前記第1及び第2の定着部材は、基材と、該基材上に設けられた弾性体層と、該弾性体層上に設けられた離型層より成る表層とを有し、該第1及び第2の定着部材の少なくとも一方の表面には、記録媒体分離用の分離爪が接触している定着装置において、前記第1及び第2の定着部材の少なくとも一方の表面に、微量のオイルを塗布するオイル含浸塗布部材を設けたことを特徴とする定着装置を提案する(請求項1)。
【0009】
また、上記請求項1に記載の定着装置において、定着部材表面に接触する分離爪の部分を分離爪接触部としたとき、該分離爪接触部の定着部材表面に対する接触圧が、該表面の移動方向最上流側の分離爪接触部の部位よりも、該表面の移動方向下流側の分離爪接触部の部位において最大となるように、該分離爪を形成すると有利である(請求項2)。
【0010】
さらに、上記請求項1又は2に記載の定着装置において、定着部材表面に接触する分離爪の部分を分離爪接触部としたとき、定着部材表面に対する分離爪接触部の幅方向1mm当りの接触圧を20mN以下に設定すると有利である(請求項3)。
【0011】
また、上記請求項1乃至3のいずれかに記載の定着装置において、定着すべきトナー像を担持した記録媒体の画像面に接触する定着部材領域の表面温度を検知する温度検知素子が、該定着部材表面から離間して配置されていると有利である(請求項4)。
【0012】
さらに、上記請求項1乃至4のいずれかに記載の定着装置において、第1及び第2の定着部材の少なくとも一方の表面に接触して該表面の温度を検知する温度検知素子の幅方向1mm当りの定着部材表面に対する接触圧を44mN以下に設定すると有利である(請求項5)。
【0013】
また、上記請求項1乃至5のいずれかに記載の定着装置において、定着すべきトナー像を担持した記録媒体の画像面に接触する定着部材の表面に当接する回転体にクリーニング部材を接触させ、前記回転体の表面のトナーに対する離型性を、前記クリーニング部材の表面のトナーに対する離型性よりも高く設定すると有利である(請求項6)。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態例を図面に従って詳細に説明する。
【0015】
図1は定着装置の一例を示す断面図であり、ここに示した定着装置は、定着ローラ1として構成された第1の定着部材と、この定着ローラ1に圧接する加圧ローラ2として構成された第2の定着部材とを有し、定着ローラ1の内部にはヒータ3が配置され、このヒータ3に通電することにより該ヒータ3を発熱させ、これによって定着ローラ1を加熱する。加圧ローラ2の内部にもヒータを設け、該ヒータにより加圧ローラ2を加熱するように構成することもできる。
【0016】
定着ローラ1には、これと同心状に配置された図示していないギアが固定され、同じく図示していない駆動モータの回転がこのギアに伝えられ、これによって定着ローラ1が図における時計方向に回転駆動される。加圧ローラ2は定着ローラ1の回転に従動して連れ回りするか、又はこの加圧ローラ2にも、上述したギアに噛み合う図示していないギアを設け、定着ローラ1の側のギアの回転を加圧ローラ2の側のギアに伝えて該加圧ローラ2を図1における反時計方向に回転駆動する。定着ローラ1の周面には、例えばサーミスタより成る温度検知素子4が板ばね5によって圧接されている。この温度検知素子4により定着ローラ1の表面の温度が検知され、その検知結果に基づいてヒータ3への通電が制御され、定着ローラ1の表面の温度がトナー像の定着に適した値に保たれる。加圧ローラ2の表面にも、図示していない温度検知素子を対向配置し、これによって加圧ローラ2の表面温度を検知し、その検知結果に基づいて、加圧ローラ2内に設けられたヒータへの通電を制御し、加圧ローラ2をトナー像の定着に適した温度に保つこともできる。
【0017】
上述した定着装置は、図示していない画像形成装置本体内に配置され、同じく画像形成装置本体内に配置された図示していない作像装置によって、紙又は樹脂シートなどから成る記録媒体上にトナー像が形成される。その際、本例の画像形成装置においては、記録媒体上にワックスを含む複数色のトナーにより、記録媒体上にトナー像が形成される。例えば、4本の感光体上にイエロートナー像、マゼンタトナー像、シアントナー像及びブラックトナー像がそれぞれ形成され、その各色のトナー像が記録媒体上に重ねて転写され、これによって複数色のトナーにより形成されたトナー像が記録媒体上に静電的に担持される。
【0018】
上述のようにして、ワックスを含む複数色のトナーにより形成されたトナー像Tを担持した記録媒体Pは、図1に矢印Aで示すように搬送され、それぞれ前述の方向に回転する定着ローラ1と加圧ローラ2の間のニップ部を通過する。この通過時に、記録媒体P上のトナー像Tのトナーに熱と圧力が加えられ、そのトナーが溶融して当該トナー像が記録媒体上に定着される。このようにして、記録媒体上に定着されたカラー画像が得られる。定着すべきトナー像Tを担持した記録媒体Pの面を画像面Sと称することにすると、図示した定着装置においては、その画像面Sが定着ローラ1の表面に接触しながら、記録媒体Pが定着ローラ1と加圧ローラ2の間を通過する。記録媒体Pの両面に定着すべきトナー像を担持させ、その記録媒体を定着ローラ1と加圧ローラ2の間に通過させてこれらのトナー像を同時に定着するように構成することもできる。この場合には、前述のように加圧ローラ2の内部にもヒータが設けられる。
【0019】
定着ローラ1と加圧ローラ2より成る第1及び第2の定着部材は、共に例えば鉄やアルミニウムなどの金属より成る円筒状の基材6,106と、その基材6,106上に設けられた弾性体層7,107と、その弾性体層7,107上に設けられた離型層8,108より成る表層とを有している。弾性体層7,107は、例えばシリコーンゴムにより構成され、離型層8,108は、例えばPFAやPTFEなどのフッ素樹脂により構成されている。
【0020】
また、定着ローラ1と加圧ローラ2とのニップ部を通過した記録媒体Pが定着ローラ1の表面に巻き付くことを防止するため、定着ローラ1の表面には、図2にも示すように複数の分離爪9が接触している。これらの分離爪9は、図1に示すように支軸10のまわりに揺動自在に支持され、かつ引張りばね11によって回動付勢され、該分離爪9の先端部が定着ローラ1の表面に接触している。これにより、定着ローラ1の表面に多量の離型性のオイルを塗布しなくとも、ニップ部を出た記録媒体が定着ローラ1の周面に巻き付くことを防止することができる。第2の定着部材である加圧ローラ2の表面にも、図示していない分離爪を接触させ、ニップ部を出た記録媒体が加圧ローラ2の周面に巻き付くことを防止できるように構成することもできる。このように、第1及び第2の定着部材の少なくとも一方の表面に、記録媒体分離用の分離爪を接触させて、定着部材への記録媒体の巻き付きを防止するのである。
【0021】
また、定着ローラ1と加圧ローラ2は、共に弾性体層7,107を有しているので、これらのローラのニップ部を通過する記録媒体上のトナーに過度に大きな単位面性当りの力が作用することはない。これによりトナー像の乱れを防止することができる。
【0022】
定着ローラ1の表面には、クリーニングローラ12が当接し、このクリーニングローラ12は矢印方向に回転しながら、定着ローラ1の表面に付着したトナーを除去してその表面を清掃する用をなす。
【0023】
図3に示した定着装置においては、第1の定着部材が、支持ローラ14と加熱ローラ15とに張架された無端状の定着ベルト1Aにより構成され、第2の定着部材は、図1に示した加圧ローラ2と同じく構成された加圧ローラ2Aにより構成され、この加圧ローラ2Aは支持ローラ14に巻き掛けられた定着ベルト部分に圧接している。図示していない駆動モータの回転は、支持ローラ14に設けられたギア(図示せず)に伝えられ、これによって支持ローラ14が図3における時計方向に回転駆動され、これに伴って定着ベルト1Aが矢印方向に回転駆動されると共に、加熱ローラ15が時計方向に回転する。加圧ローラ2Aは、定着ベルト1Aの回転に従動して連れ回りするか、又はこの加圧ローラ2Aに設けられたギアに、支持ローラ14の側のギアから回転が伝えられて図3における反時計方向に回転駆動される。
【0024】
加熱ローラ15の内部にはヒータ3Aが設けられていると共に、定着ベルト1Aの表面には板ばね5によって温度検知素子4が圧接している。この温度検知素子4の検知結果に基づいて、ヒータ3Aへの通電が制御され、定着ベルト1Aの温度がトナー像の定着に適した温度に保たれる。支持ローラ14と加圧ローラ2Aの内部にヒータを設けることもでき、また加圧ローラ2Aの表面に温度検知素子を対向配置し、その検知結果に基づいて加圧ローラ2Aの内部に設けられたヒータの通電を制御して加圧ローラ2Aの温度をトナー像の定着に適した温度に保つように構成することもできる。このように、温度検知素子は、第1及び第2の定着部材の少なくとも一方の表面に対向配置されるものである。
【0025】
図3に示した定着装置の場合も、ワックスを含む複数色のトナーにより形成されたトナー像Tを担持した記録媒体Pが、前述の方向に回転する定着ベルト1Aと加圧ローラ2Aとの間に矢印Aで示すように送り込まれてこれらの間を通過し、この通過時に、トナー像Tのトナーに熱と圧力が加えられ、該トナー像が記録媒体P上に定着される。
【0026】
また、図3に示した定着ベルト1Aより成る第1の定着部材も、NiやSUSなどの金属又はPIなどの樹脂から成る薄いシート状に形成された基材6Aと、その基材6A上に設けられた例えばシリコーンゴムより成る弾性体層7Aと、その弾性体層7A上に設けられた離型層8Aより成る表層とを有し、その離型層8Aは例えばフッ素樹脂により構成される。また、加圧ローラ2Aも、図1に示した加圧ローラ2と全く同じく、円筒状の基材106Aと、その基材106A上に設けられた弾性体層107Aと、該弾性体層107A上に設けられた離型層108Aより成る表層とを有している。しかも、定着ベルト1Aと加圧ローラ2Aより成る第1及び第2の定着部材の少なくとも一方の表面、図3に示した例では定着ベルト1Aの表面に、記録媒体分離用の複数の分離爪9(図2も参照)が接触している。この分離爪9も支軸10まわりに揺動自在に支持され、かつ引張りばね11によって分離爪9の先端部が定着ベルト1Aの表面に当接している。これらの構成により、図1に示した定着装置と同様の作用効果を奏することができる。なお、図3においては、定着ベルト1Aの厚さを誇張して大きく示してある。
【0027】
また図3に示した定着装置の支持ローラ14も、金属より成る円筒状の基材6Bと、その上に設けられた弾性体層7Bとを有している。加熱ローラ15は、例えば鉄又はアルミニウムなどの熱伝導率の高い硬質材料により構成されている。また定着ベルト1Aの表面には、テンションローラ16が圧接し、このテンションローラ16は図3に矢印で示す方向に回転しながら定着ベルト1Aにテンションを付与する用をなす。
【0028】
以上のように、図1及び図3に示した定着装置においては、ワックスを含むトナーからなるトナー像を定着するように構成され、しかも定着ローラ1又は定着ベルト1Aから成る第1の定着部材の表面に分離爪9が当接しているので、シリコーンオイルなどの離型性を高めるためのオイルをその第1の定着部材に多量に塗布しなくとも、ニップ部を通過した記録媒体が当該定着部材に巻き付くことを防止できる。ところが、先にも説明したように、この構成だけであると、分離爪9が接触した定着ローラ1又は定着ベルト1Aの表面部分が経時的に摩耗するなどして劣化し、これによって定着後のカラー画像にすじ状のむらが発生するおそれがある。
【0029】
そこで、図1及び図3に示した定着装置においては、その定着ローラ1と定着ベルト1Aの表面に、オイル含浸塗布ローラ17より成るオイル含浸塗布部材が当接し、これによって定着ローラ1及び定着ベルト1Aの表面に離型性を高めるオイル、例えばシリコーンオイルを微量に塗布するように構成されている。ここに示したオイル含浸とフローラ17は、芯軸18と、その芯軸18のまわりに固設された多孔質材19により構成され、その多孔質材19にオイルが含浸されている。かかるオイル含浸塗布ローラ17が定着ローラ1及び定着ベルト1Aの表面にそれぞれ当接しながら図1及び図3に矢印で示す方向に回転し、その表面に微量のオイルを供給して、当該表面にオイルを塗布する。
【0030】
また、図3に示すように、第2の定着部材である加圧ローラ2Aの表面にオイル含浸塗布ローラ17Aを当接させ、このローラ17Aを回転させながら、加圧ローラ2Aの表面に微量のシリコーンオイルを塗布し、そのオイルを第1の定着部材である定着ベルト1Aの表面に移行させることもできる。このように、第1及び第2の定着部材の少なくとも一方の表面に、微量のオイルを塗布するオイル含浸塗布部材を設けるのである。
【0031】
オイル含浸塗布ローラ17,17Aによって定着ローラ1と定着ベルト1Aの表面に塗布されたオイルは、図4に符号Bを付して示したように分離爪9を通過して定着ローラ1又は定着ベルト1Aの表面に溜まっている。定着ローラ1と定着ベルト1Aの表面にそれぞれ塗布されるオイルの量は、例えば、A4サイズの記録媒体当り、0.01mg乃至0.1mgの極く微量であるため、そのオイルが、記録媒体の分離性を向上させたり、定着後のカラー画像の光沢度を上げるなどの際立った働きをなすことはないが、シリコーンオイルは高い潤滑性があるため、分離爪9が定着ローラ1と定着ベルト1Aの表面に当接しても、その表面が摩耗することを効果的に抑えることができる。このため、定着後のカラー画像にすじ状のむらが発生することを長期に亘って防止することができ、その画質を高めることができる。
【0032】
ここで、定着ローラ1又は定着ベルト1Aより成る定着部材の表面に接触する分離爪9の部分を分離爪接触部と称することにすると、図5に示すように、その分離爪接触部20の定着部材(定着ローラ1、定着ベルト1A)の表面に対する接触圧が、その表面の移動方向最上流側の分離爪接触部20の部位20Aよりも、該表面の移動方向下流側の分離爪接触部20の部位20Bにおいて最大となるように、その分離爪9を形成すると有利である。図5に示した例では、分離爪接触部20の部位20Bが部位20Aよりも定着部材の表面へ向けて大きく突出し、これによりその部位20Bが部位20Aよりも定着部材の表面に強く当たっている。かかる構成により、定着部材上のオイルが分離爪接触部20に流れ込みやすくなるので、簡単な構成によって、その分離爪接触部と定着部材表面との摩擦係数を下げ、該表面に傷が付けられたり、その表面の摩耗が促進される不具合をより効果的に抑制することができる。これにより、定着後のカラー画像に画像すじができる不具合をより確実に防止することができる。
【0033】
ここで、図2に示すように、記録媒体の搬送方向Aに対して直交する分離爪9の方向、ないしはその分離爪接触部20(図5)の方向を、その幅方向とし、分離爪接触部20の幅方向の大きさを幅Wで示すものとすると、定着部材表面に対する分離爪接触部20の幅方向1mm当りの接触圧を20mN以下に設定することが好ましい。実験によると、定着ローラ1の表面に当接する分離爪接触部20の幅Wを2mmとし、定着ローラ1の表面に対する分離爪接触部20の幅方向1mm当りの接触圧を98mNに設定したとき、記録媒体を200K枚通紙したときに、定着後のカラー画像にすじが発生したが、分離爪接触部20の幅Wを6mmとし、定着ローラ1の表面に対する分離爪接触部20の幅方向1mm当りの接触圧が20mNとなるように、引張りばね11のばね力を調整したときは、記録媒体を600K枚通紙したとき、初めて定着後のカラー画像にすじが発生した。この結果からも判るように、定着ローラ1に対する分離爪9の幅方向1mm当りの当接圧を、20mN以下に設定すれば、定着後のカラー画像にすじを発生させ難くすることができる。これは、分離爪9が当接する定着部材が定着ローラ1以外のものであるときも同様である。
【0034】
ところで、図1及び図3に示した定着装置においては、温度検知素子4が定着ローラ1又は定着ベルト1Aの表面に当接している。ところが、このように温度検知素子4が定着部材の表面に接触していると、極く少量ずつ定着部材の表面に移行したトナーが、その温度検知素子4と定着部材の間に溜まり、これが定着部材の表面に接触することによって、定着部材表面を摩耗させ、これによって定着後のカラー画像にすじ状のむらを発生するおそれがある。
【0035】
そこで、定着すべきトナー像を担持した記録媒体の画像面に接触する定着部材領域の表面温度を検知する温度検知素子を、その定着部材の表面から離間させて配置することが好ましい。図6はその具体例を示す説明図である。ここに示した定着ローラ1の表面のうち、符号Xを付した領域が、記録媒体Pの画像面に接触する領域である。この当接領域Xの温度を検知する温度検知素子4を、定着ローラ1の表面から離間して配置する。かかる温度検知素子4としては、非接触タイプのサーミスタやサーモパイルなどの検知素子を用いることができる。かかる非接触タイプの温度検知素子4を用いることにより、定着ローラ1の表面の当接領域Xが摩耗する不具合を防止できるので、定着後のカラー画像に画像すじが発生する不具合を防止できる。
【0036】
この場合、定着ローラ1の当接領域X以外の領域Yに他の温度検知素子4Aを当接させ、この温度検知素子4Aによっても定着ローラ1の表面温度を検知し、非接触タイプの温度検知素子4のトラブル発生時にも、定着ローラ1の表面温度を検知できるように構成することもできる。定着ローラ1の当接領域X以外の領域Yに当接した温度検知素子4Aの個所にトナーが溜まり、これによって定着ローラ1の表面の摩耗が促進されても、この領域Yは、記録媒体の画像面に接触することはないので、画像すじが発生するおそれはない。
【0037】
上述の如く非接触タイプの温度検知素子を用いる構成は、他の定着部材の温度を検知する温度検知素子にも適用できるが、図1及び図3に示した定着装置の場合には、加圧ローラ2,2Aは、その全長に亘って記録媒体の画像面Sに接触することはなく、しかもその加圧ローラの表面に付着するトナーの量は極めて少量であるので、その加圧ローラ2,2Aの長手方向におけるいずれの部位に温度検知素子を接触させて設けても、定着後のカラー画像にすじが発生することはない。
【0038】
ところで、図1及び図3に示したように、温度検知素子が定着部材の表面に当接していると、その温度検知素子によって定着部材の表面が摩耗し、これによって定着後のカラー画像にすじが発生するおそれがある。そこで、記録媒体Pの搬送方向に直交する温度検知素子の方向を、その幅方向としたとき、第1及び第2の定着部材の少なくとも一方の表面に接触して該表面の温度を検知する温度検知素子の幅方向1mm当りの定着部材表面に対する接触圧を44mN以下に設定することが望ましい。実験によると、図1に示すように定着ローラ1の表面の当接領域X(図5)に接触する温度検知素子4の幅を12mmとし、その幅方向1mm当りの定着ローラ1に対する当接圧を87mNとしたとき、記録媒体を200K枚通紙したときに、定着後のカラー画像にすじが発生した。これに対し、定着ローラ1の当接領域Xに接触する温度検知素子4の幅をそれぞれ9mmとし、その温度検知素子4の幅方向1mm当りの定着ローラ表面に対する接触圧をそれぞれ44mN,23mNとしたときには、それぞれ500K枚、600K枚の記録媒体を通紙したときに初めてすじ画像が現れた。この結果からも、定着部材表面に当接する温度検知素子の幅方向1mm当りの定着部材表面に対する接触圧を44mN以下に設定すると、長期に亘って、すじ画像の発生を抑えることができることを理解できる。
【0039】
ところで、定着すべきトナー像を担持した記録媒体Pの画像面Sに接触する定着部材の表面には、1又は複数の回転体が当接している。図1に示した定着装置においては、記録媒体Pの画像面Sに接触する定着部材は定着ローラ1であり、この定着ローラ1には、オイル含浸塗布ローラ17、クリーニングローラ12及び加圧ローラ2の各回転体が当接している。ここで、定着ローラ1の表面には少量のトナーが付着することは避けられないが、そのトナーが上記各回転体に移行して固着した場合、その回転体と定着部材とがスリップしたような場合、その固着トナーによって定着ローラ1の表面に傷が付けられ、これによって定着後のカラー画像にすじが発生するおそれがある。そこで、図1に示した定着装置においては、上記各回転体に接触して、その各回転体の表面を清掃するクリーニングローラ21,22,23よりなるクリーニング部材が設けられている。各クリーニングローラは、定着ローラ1には接触していない。これらのクリーニングローラ21,22,23が図1に矢印で示した方向に回転して、各回転体の表面を清掃するのであるが、その際、上述の各回転体の表面のトナーに対する離型性を、その各回転体に当接するクリーニングローラ21,22,23より成るクリーニング部材の表面のトナーに対する離型性よりも高く設定する。また、各回転体の表面のトナーに対する離型性よりも、定着ローラ1の表面のトナーに対する離型性よりも高く設定することが望ましい。かかる構成により、定着ローラ1の表面に付着したトナーは、各回転体の表面に容易に移行し、かつその各回転体上に移行したトナーは、さらに各クリーニングローラ21,22,23に容易に移行し、定着ローラ1と各回転体上にトナーが付着したまま当該トナーが、ここに留まることを防止することができる。定着ローラ1の表面に付着したトナーを各クリーニングローラ21,22,23の表面に移行させて、ここに溜めておくことができるのである。かかる構成によって、定着ローラ1の表面と、その表面に当接する各回転体の表面にトナーが溜められてこれが固着し、その固着トナーによって定着ローラ1の表面に傷が付けられることを防止し、定着後のカラー画像に画像すじが発生する不具合を阻止することが可能となる。
【0040】
図3に示した定着装置の場合には、記録媒体Pの画像面Sに接触する定着部材は定着ベルト1Aであり、この定着ベルト1Aにも、オイル含浸塗布ローラ17、テンションローラ16、及び加圧ローラ2Aの各回転体が当接しているが、これらの各回転体に、クリーニングローラ21A,22A,23Aより成る各クリーニング部材が当接し、その各回転体の表面に対する離型性が、クリーニングローラ21A,22A,23Aより成るクリーニング部材の表面のトナーに対する離型性よりも高く設定されている。これにより、各回転体上にトナーが溜まって固着することを防止でき、定着後のカラー画像にすじが現われる不具合を阻止できる。図3に示した例では、加圧ローラ2Aより成る回転体には、オイル含浸塗布ローラ17Aを介して、クリーニングローラ23Aが当接し、これらのローラ2A,17A,23Aの表面のトナーに対する離型性が、加圧ローラ2A、オイル含浸ローラ17A、クリーニングローラ23Aの順に高くなっていて、加圧ローラ2Aの表面に付着したトナーがクリーニングローラ23Aの表面に移行するように構成されている。これによりオイル含浸塗布ローラ17Aの表面にトナーが溜まって固着することを防止できるので、加圧ローラ2Aの表面に均一にオイルを塗布することができる。
【0041】
上述のように、定着すべきトナー像を担持した記録媒体の画像面に接触する定着部材の表面に当接する回転体にクリーニング部材を接触させ、回転体の表面のトナーに対する離型性を、クリーニング部材の表面のトナーに対する離型性よりも高く設定することにより、回転体にトナーが固着することを防止できる。その際、クリーニング部材は、記録媒体の画像面に接触する定着部材に直に接触することはなく、しかも前述のように、記録媒体の画像面に当接する定着部材の表面のトナーの対する離型性を、その定着部材の表面に接触する回転体の表面のトナーに対する離型性を高く設定することが望ましい。
【0042】
トナーに対する離型性を低くするには、その表面を粗くしたり、そのローラ表面をトナーとの親和性の高い材質としたり、トナーと逆極性に摩擦帯電する材料により、当該ローラの表面を構成するなどの方法を採用することができる。各回転体の表面に、定着ローラ1や定着ベルト1Aの表面よりも離型性に劣るフッ素樹脂を被覆することもできる。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、簡単な構成によって、定着後のカラー画像にすじが発生する不具合を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】定着装置の一例を示す断面図である。
【図2】定着ローラと分離爪との位置関係を示す説明図である。
【図3】定着装置の他の例を示す断面図である。
【図4】定着ローラ又は定着ベルトの表面と分離爪との位置関係を示す拡大図である。
【図5】定着ローラ又は定着ベルトの表面と分離爪との位置関係の他の例を示す拡大図である。
【図6】定着ローラと温度検知素子との位置関係を示す説明図である。
【符号の説明】
4 温度検知素子
6,106,6A 基材
7,107,7A 弾性体層
8,108,8A 離型層
20 分離爪接触部
20A,20B 部位
P 記録媒体
S 画像面
T トナー像
X 領域

Claims (6)

  1. ワックスを含む複数色のトナーにより形成されたトナー像を担持した記録媒体を、回転する第1及び第2の定着部材の間に通過させ、その通過時に、前記トナー像のトナーに熱と圧力を加えて該トナー像を記録媒体に定着する定着装置であって、前記第1及び第2の定着部材は、基材と、該基材上に設けられた弾性体層と、該弾性体層上に設けられた離型層より成る表層とを有し、該第1及び第2の定着部材の少なくとも一方の表面には、記録媒体分離用の分離爪が接触している定着装置において、前記第1及び第2の定着部材の少なくとも一方の表面に、微量のオイルを塗布するオイル含浸塗布部材を設けたことを特徴とする定着装置。
  2. 定着部材表面に接触する分離爪の部分を分離爪接触部としたとき、該分離爪接触部の定着部材表面に対する接触圧が、該表面の移動方向最上流側の分離爪接触部の部位よりも、該表面の移動方向下流側の分離爪接触部の部位において最大となるように、該分離爪を形成した請求項1に記載の定着装置。
  3. 定着部材表面に接触する分離爪の部分を分離爪接触部としたとき、定着部材表面に対する分離爪接触部の幅方向1mm当りの接触圧を20mN以下に設定した請求項1又は2に記載の定着装置。
  4. 定着すべきトナー像を担持した記録媒体の画像面に接触する定着部材領域の表面温度を検知する温度検知素子が、該定着部材表面から離間して配置されている請求項1乃至3のいずれかに記載の定着装置。
  5. 第1及び第2の定着部材の少なくとも一方の表面に接触して該表面の温度を検知する温度検知素子の幅方向1mm当りの定着部材表面に対する接触圧を44mN以下に設定した請求項1乃至4のいずれかに記載の定着装置。
  6. 定着すべきトナー像を担持した記録媒体の画像面に接触する定着部材の表面に当接する回転体にクリーニング部材を接触させ、前記回転体の表面のトナーに対する離型性を、前記クリーニング部材の表面のトナーに対する離型性よりも高く設定した請求項1乃至5のいずれかに記載の定着装置。
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