JP2004191249A - ガラスの温度測定装置 - Google Patents

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由典 ▲逵▼
Yoshinori Ki
Masahiko Sugaya
雅彦 菅谷
Yuichi Kajino
祐一 梶野
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Abstract

【課題】曇り検出センサを用いてフロントガラスの曇りを除去する技術では、ガラスの曇りが発生した後でしかガラス加熱を行えない。また、外気温度センサ、車室内温度センサ、日射センサの測定結果からガラス温度を推定する技術では、ガラス温度を正確に推定することは困難であり、その誤差を見越してガラス加熱運転を行うため、動力消費が大きくなってしまう。
【解決手段】フロントガラス1に密着する透明導電膜2の抵抗値からフロントガラス1の温度を検出するため、フロントガラス1の平均温度を高精度で測定できる。このため、無駄なフロントガラス1の加熱運転を抑えることができ、省動力化を図ることができる。また、透明導電膜2が配置された範囲内の平均温度を検出するため、局部検出に比較して測定誤差が小さい。さらに、フロントガラス1を加熱する手段によってフロントガラス1の温度を測定できるため、センサに要するコストを抑えることができる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラスの温度を測定するガラスの温度測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両に搭載された空調装置をデフロスタ吹出モードで作動させて、ガラスに被着した氷を溶かす解氷運転、ガラスに結露水が付着して発生する曇りを除去する曇除去運転、およびガラスに曇りが発生する前に曇りを予防する曇予防運転を行う技術が知られている。
また、デフロスタ吹出モードの作動音を防ぐために、ガラスに設けた透明導電膜を通電して、透明導電膜によってガラスを加熱し、ガラスに被着した氷を溶かす解氷運転、ガラスに結露水が付着して発生する曇りを除去する曇除去運転、およびガラスに曇りが発生する前に曇りを予防する曇予防運転を行う技術が知られている。
【0003】
上記のような装置において、自動的に曇りの除去を行うために、ガラスの曇り検出センサを用い、ガラスの曇りを検出した際に上記の装置を作動させてガラスの曇りを除去する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、曇り検出センサを用いる技術では、ガラスの曇りが発生した後にガラスの曇りを解消するものであるから、ガラスの曇りを予防することができないという問題がある。
【0004】
そこで、ガラスの温度を測定してガラスの曇りを予防することが考えられる。ガラスの温度を測定する技術として、外気温度センサ、車室内温度センサ、日射センサからの測定結果を基に、ガラスの温度を推定する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開昭64−90847号公報
【特許文献2】
特開平5−345515号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記に示したガラスの温度を推定する技術では、降水時や降雪時など、ガラスが雨や雪等によって強く冷却される場合があり、このような場合にガラスの温度を正確に推定することは困難である。そこで、従来では、このような誤差を見越してガラスの温度を低く見るように設定されるため、不要な曇予防運転の運転範囲が広くなる。
即ち、ガラスを加熱するガラス加熱手段(デフロスタ吹出モードによるガラスの加熱運転、透明導電膜の通電によるガラスの加熱運転)の運転割合が大きくなり、動力消費が大きくなってしまう。
【0007】
【発明の目的】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガラスの温度を正確に測定できるガラスの温度測定装置の提供にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
〔請求項1の手段〕
従来であれば、外気温度センサ、車室内温度センサ、日射センサからガラスの温度を推定して求めるものであったために、測定されるガラス温度の誤差が大きかったが、請求項1の手段を採用するガラスの温度測定装置は、ガラスに密着する透明導電膜の抵抗値からガラスの温度を求めるため、測定対象のガラス温度を正確に測定することができる。
また、透明導電膜の配置された測定対象範囲内の平均ガラス温度を検出できるため、局部検出に比較して測定誤差を小さくできる。
さらに、従来であれば、外気温度センサ、車室内温度センサ、日射センサからガラスの温度を推定するものであったが、請求項1の手段を採用するガラスの温度測定装置は、ガラスに密着して設けられた透明導電膜のみでガラスの温度を測定できるため、ガラスの温度を測定するセンサに要するコストを下げることができる。
【0009】
〔請求項2の手段〕
請求項2の手段を採用するガラスの温度測定装置においてガラスの温度を測定する透明導電膜は、ガラスに被着した氷を溶かす解氷運転、ガラスに結露水が付着して発生する曇りを除去する曇除去運転、および曇りが発生する前に曇りを予防する曇予防運転を実行可能なガラス加熱手段としても用いられるものである。このように、透明導電膜自身を、ガラス加熱手段として用いることができるため、コストを抑えることができる。
【0010】
〔請求項3の手段〕
請求項3の手段を採用するガラスの温度測定装置においてガラスの温度を測定する透明導電膜は、ガラスに被着した氷を溶かす解氷運転、ガラスに結露水が付着して発生する曇りを除去する曇除去運転、および曇りが発生する前に曇りを予防する曇予防運転を実行可能なガラス加熱手段(例えば、空調装置のデフロスタ吹出モード等によるガラス加熱)とは別に設けられるものである。
即ち、請求項3の手段の透明導電膜は、通電による発熱を利用しないものであっても良い。
【0011】
〔請求項4の手段〕
請求項4の手段を採用するガラスの温度測定装置においてガラス加熱手段の作動を制御する制御装置は、ガラスの露点温度を算出する露点算出手段を有し、透明導電膜によって測定されるガラスの温度が、露点算出手段で算出された露点温度より所定温度以上高くなるようにガラス加熱手段を制御するものである。
ガラスの温度を正確に測定してガラス加熱手段を制御するため、従来技術のような不要なガラスの曇予防運転を防ぐことができる。即ち、ガラス加熱手段(デフロスタ吹出モードによるガラス加熱運転、透明導電膜によるガラス加熱運転等)の運転の無駄を無くすことができ、動力消費を抑えることができる。
【0012】
〔請求項5の手段〕
請求項5の手段を採用するガラスの温度測定装置の透明導電膜は、ガラスの複数の領域毎に独立して複数設けられて、ガラスの複数の領域毎のガラスの温度を測定可能に設けられるとともに、ガラス加熱手段は、ガラスの複数の領域毎を独立して加熱可能に設けられるものであり、さらにガラス加熱手段の作動を制御する制御装置は、複数の透明導電膜のそれぞれの抵抗値から測定された複数の領域毎のガラスの温度に基づいてガラス加熱手段を制御するものである。
このように設けられることにより、加熱の必要のない無駄な領域の加熱を無くすことができ、結果的に動力消費を抑えることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、複数の実施例と変形例を用いて説明する。なお、以下の実施例では、本発明のガラスの温度測定装置をフロントガラスの加熱装置に適用した例を用いて説明する。
【0014】
[第1実施例]
第1実施例を図1〜図3を参照して説明する。まず、フロントガラスの電熱加熱装置の構成を図1を参照して説明する。
第1実施例におけるフロントガラス1の電熱加熱装置は、車両のフロントガラス1のほぼ全域に設けた透明導電膜2を通電して、フロントガラス1を加熱することで、フロントガラス1に発生した氷結を解氷する解氷運転、フロントガラス1に生じた曇りを除去する曇除去運転、およびフロントガラス1の曇りを予防する曇予防運転を行うものである。
【0015】
また、この透明導電膜2は、フロントガラス1のほぼ全域を加熱するガラス加熱手段として用いられる他、フロントガラス1のほぼ全域のガラス温度を検出するガラスの温度測定装置のガラス温度センサとしても用いられるものである。つまり、この実施例の透明導電膜2は、フロントガラス1のほぼ全域を測定対象範囲としたガラス温度センサとしても用いられる。
【0016】
この透明導電膜2は、その透明導電膜2に密着した範囲のガラス温度を検出するものであり、図2に示すように、温度変化に応じて抵抗値が変化するものである。透明導電膜2の温度に対する抵抗値の変化特性は、温度依存性が明らかであればどのような特性のものを用いても良いが、温度依存性が高い方が正確な検出を容易に行うことができるため、温度依存性の高い物質によって透明導電膜2を構成することが望ましい。
【0017】
透明導電膜2の上下辺には、透明導電膜2を通電するための一対の透明電極(パスバー)3、4が設けられている。そして、透明導電膜2と一対の透明電極3、4は、フロントガラス1を構成する合わせガラスの間に挟まれて形成され、透明導電膜2はフロントガラス1のほぼ全域に密着配置されるものである。
【0018】
透明導電膜2は、通電手段(図示しない)によって通電制御される。この通電手段は、例えば、車両用空調装置(図示しない)を制御する制御装置であり、車両用空調装置がONされている時に作動するように構成されている。なお、透明導電膜2の通電手段を車両用空調装置の制御装置と独立して設け、この車両用空調装置とは連動せずにフロントガラス1の加熱制御を実施するように設けても良い。
また、この実施例の通電手段は、透明導電膜2の抵抗値からフロントガラス1の温度を算出するようになっている。具体的には、透明導電膜2の抵抗値の変化によって透明導電膜2の通電電圧値が変化するため、フロントガラス1の温度を検出する際は、透明導電膜2を通電し、その電圧値からガラス温度を算出するようになっている。
【0019】
次に、通電手段による透明導電膜2の通電制御を図3のフローチャートを参照して説明する。
透明導電膜2の通電制御ルーチンに侵入したら(スタート)、透明導電膜2の抵抗値からフロントガラス1の温度(フロントガラス1のほぼ全域の平均温度)を検出する(ステップS1 )。
次に、ステップS1 で検出したフロントガラス1の温度が、ガラスの氷結温度以下であるか否かの判断を行う(ステップS2 )。
このステップS2 の判断結果が、フロントガラス1の温度≦氷結温度の場合は、氷結有りと判断し、透明導電膜2を通電してフロントガラス1を加熱する(ステップS3 )。
【0020】
ステップS2 の判断結果が、フロントガラス1の温度>氷結温度の場合は、氷結無しと判断して、室内に設置した湿度センサ(図示しない)によって室内湿度を検出する(ステップS4 )。
続いて、ステップS1 で検出したフロントガラス1の温度と、ステップS4 で検出した車室内湿度とを基に、フロントガラス1の露点温度(フロントガラス1に結露水による曇りが発生する温度)を算出する(ステップS5 )。
【0021】
次に、ステップS1 で検出したフロントガラス1の温度からステップS5 で算出した露点温度を減算して、その差が予め設定した設定値α以下であるか否かの判断を行う(ステップS6 )。
このステップS6 の判断結果が、(フロントガラス1の温度−露点温度)≦αの場合は、フロントガラス1に曇りが発生する可能性があるため、透明導電膜2を通電してフロントガラス1を加熱する(ステップS7 )。
また、ステップS6 の判断結果が、(フロントガラス1の温度−露点温度)>αの場合は、フロントガラス1に曇りが発生する可能性が無いため、透明導電膜2を通電することなく、リターンする。
【0022】
(第1実施例の効果)
従来技術では、フロントガラス1の温度は、外気温度センサ、車室内温度センサ、日射センサ等から推定して求めるものであったために、測定されるガラス温度の誤差が大きかった。
その従来技術に対し、本実施例では、フロントガラス1に密着する透明導電膜2の抵抗値からフロントガラス1の温度を検出するものであるため、フロントガラス1の温度を正確に測定することができる。このため、無駄なフロントガラス1の加熱運転を抑えることができ、省動力化を図ることができる。
【0023】
また、透明導電膜2の配置された測定対象範囲内の平均ガラス温度を検出できるため、局部検出に比較して測定誤差を小さくできる。即ち、この実施例では、フロントガラス1のほぼ全域を測定対象範囲として、フロントガラス1のほぼ全域に透明導電膜2を配置したものであり、フロントガラス1のほぼ全域の平均ガラス温度を測定できる。このため、フロントガラス1の局部検出に比較して測定誤差を小さくできる。
【0024】
さらに、従来技術では、フロントガラス1の温度は、外気温度センサ、車室内温度センサ、日射センサ等から推定して求めるものであったために、ガラス温度を測定するために複数のセンサが必要となり、コストが高くなってしまう。
その従来技術に対し、本実施例では、フロントガラス1に設けた透明導電膜2のみでフロントガラス1の温度を測定できるため、フロントガラス1の温度を測定するセンサに要するコストを低く抑えることができる。
【0025】
[第2実施例]
上記の第1実施例では、フロントガラス1に設けた透明導電膜2を、フロントガラス1のほぼ全域を加熱するガラス加熱手段と、フロントガラス1のほぼ全域のガラス温度を検出するガラス温度センサの両方を兼ねるように用いる例を示した。
これに対し、この第2実施例では、フロントガラス1に設けた透明導電膜2を、フロントガラス1のほぼ全域のガラス温度を検出するガラス温度センサ専用として用いるものである。そして、フロントガラス1を加熱してフロントガラス1に被着した氷を溶かす解氷運転、フロントガラス1に結露水が付着して発生する曇りを除去する曇除去運転、および曇りが発生する前に曇りを予防する曇予防運転を実行するガラス加熱手段として、例えば車両用空調装置のデフロスタ吹出モードを利用するものである。
このため、フロントガラス1に設けられる透明導電膜2は、通電による発熱量が大きく無くても良い。
【0026】
この第2実施例では、第1実施例の図3におけるステップS3 、S7 において透明導電膜2を通電する制御を、車両用空調装置のデフロスタ吹出モードに設定する制御に置き換えることで運転制御できる。
なお、この実施例では、車両用空調装置の作動時で、且つ吹出モードがオートモード時に、自動的にデフロスタ吹出モードに変更するものであるが、透明導電膜2によって検出されるフロントガラス1の温度に応じてフロントガラス1へ吹き出される風量を増加させたり、吹出温度を上げるように制御しても良い。また、車両用空調装置がOFF されている状態でも、透明導電膜2によって検出されるフロントガラス1の温度に応じて車両用空調装置を起動してデフロスタ吹出モードでフロントガラス1を加熱するように設けても良い。
【0027】
[第3実施例]
第3実施例を図4〜図6を参照して説明する。
上記の第1、第2実施例では、フロントガラス1のほぼ全域のガラス温度を検出し、そのガラス温度に応じてフロントガラス1のほぼ全域をガラス加熱手段(第1実施例では透明導電膜2、第2実施例では車両用空調装置によるデフロスタ吹出モード)で加熱する例を示した。
これに対し、この第3実施例は、図4に示すように、フロントガラス1における車両進行方向左側領域(以下、Dr側領域:測定対象範囲に相当する)と、車両進行方向右側領域(以下、Pa側領域:測定対象範囲に相当する)とに、それぞれ独立した透明導電膜(後述するDr側導電膜2LおよびPa側導電膜2R)を設けて、Dr側領域およびPa側領域のガラス温度を独立測定するとともに、Dr側領域およびPa側領域のガラス温度に応じてDr側領域およびPa側領域をガラス加熱手段によって独立加熱するものである。
【0028】
Dr側領域の温度を測定するために、フロントガラス1のDr側領域には、左側透明導電膜(以下、Dr側導電膜)2Lが設けられており、Pa側領域の温度を測定するために、フロントガラス1のPa側領域には、右側透明導電膜(以下、Pa側導電膜)2Rが設けられている。
Dr側導電膜2Lの上下辺には、このDr側導電膜2Lを通電するための一対の透明電極(以下、Dr側電極対)3L、4Lが設けられている。また、Pa側導電膜2Rの上下辺にも、このPa側導電膜2Rを通電するための一対の透明電極(以下、Pa側電極対)3R、4Rが設けられる。
なお、Dr側導電膜2LとDr側電極対3L、4L、およびPa側導電膜2RとPa側電極対3R、4Rは、ともにフロントガラス1を構成する合わせガラスの間に挟まれて設けられるものである。
【0029】
また、この実施例は、複数の領域(Dr側領域およびPa側領域)を独立して加熱するガラス加熱手段として、複数の透明導電膜(Dr側導電膜2L、Pa側導電膜2R)を用いるものである。
【0030】
Dr側導電膜2LおよびPa側導電膜2Rは、通電手段(例えば、車両空調用の制御装置:図示しない)によって通電制御される。
この通電手段は、Dr側領域およびPa側領域の状態を独立して検出し、その検出結果に基づいてDr側導電膜2LおよびPa側導電膜2Rの通電パターン(Dr側領域とPa側領域の加熱パターン)を決定するように設けられている。
なお、Dr側領域とPa側領域の状態を検出する手段は、Dr側領域のガラス温度を検出するDr側導電膜2L、Pa側領域のガラス温度を検出するPa側導電膜2Rの他に、車室内の湿度を検出する湿度センサ(図示しない)等を備える。
【0031】
通電手段は、Dr側領域とPa側領域の状態に応じて、Dr側導電膜2LとPa側導電膜2Rの通電パターンを変更するものであり、この実施例の通電パターンを図5および下記表1を参照して説明する。
この実施例の通電手段は、Dr側領域とPa側領域の状態に応じて、通電停止パターン、並列通電パターン▲1▼、Pa側独立通電パターン▲2▼、Dr側独立通電パターン▲3▼、直列通電パターン▲4▼の5パターンのいずれか1つを選択する。
なお、通電パターンの切り替えは、Dr側導電膜2LおよびPa側導電膜2Rの通電回路に配置された分配器5(通電手段により切り替え制御される通電切替スイッチ)等によって成される。
【0032】
【表1】
Figure 2004191249
【0033】
通電停止パターンは、フロントガラス1に曇りが発生する可能性が無いと判断した時に設定されるものであり、Dr側導電膜2LとPa側導電膜2Rの両方の通電を停止するパターンである。
並列通電パターン▲1▼は、Dr側領域およびPa側領域の両領域に曇りが発生する条件が成立する、あるいは氷結発生の条件が成立すると判断した時に設定されるもので、大きな加熱量でフロントガラス1の全域を急速加熱するべく、Dr側導電膜2LとPa側導電膜2Rを並列通電するパターンである。
【0034】
Pa側独立通電パターン▲2▼は、Pa側領域のみに曇りが発生する条件が成立すると判断した時に設定されるもので、フロントガラス1のPa側領域のみを加熱するべく、Pa側導電膜2Rのみを通電するパターンである。
Dr側独立通電パターン▲3▼は、Dr側領域のみに曇りが発生する条件が成立すると判断した時に設定されるもので、フロントガラス1のDr側領域のみを加熱するべく、Dr側導電膜2Lのみを通電するパターンである。
【0035】
直列通電パターン▲4▼は、フロントガラス1に曇りが発生しやすい状態(曇ってはいないが、曇る可能性がある状態)と判断した時に設定されるもので、小さな加熱量でフロントガラス1の全域を加熱するべく、Dr側導電膜2LとPa側導電膜2Rを直列通電するパターンである。
なお、直列通電パターン▲4▼の設定時は、図5に示されるように、Dr側電極対3L、4Lの一方に電力供給される場合は、Dr側電極対3L、4Lの他方はアース接地(マイナス接地)されるように分配器5等によって切り替えられるものである。
【0036】
次に、通電手段によるDr側導電膜2LとPa側導電膜2Rの通電パターンの切替制御を図6のフローチャートを参照して説明する。
Dr側導電膜2LとPa側導電膜2Rの通電パターンの切替制御のルーチンに進入すると(スタート)、ステップS11〜S14においてフロントガラス1の状態を読み取る。
具体的には、Dr側温度センサおよびPa側温度センサによってフロントガラス1の平均温度を検出し(ステップS11)、湿度センサによって車室内の湿度を検出する(ステップS12)。続いて、フロントガラス1の温度と車室内湿度との関係から露点温度を算出する(ステップS13)。続いて、Dr側温度センサおよびPa側温度センサによって、Dr側領域のガラス温度とPa側領域のガラス温度を独立検出する(ステップS14)。
【0037】
次に、Dr側領域およびPa側領域のガラス温度が露点温度以下(即ち、曇りが発生する状態)であるか否かを判断する(ステップS15)。
このステップS15の判断結果がYES の場合は、Dr側領域が曇りを発生する状態であるか否かを判断する(ステップS16)。このステップS16の判断結果がNOの場合は、Pa側領域だけ曇りが発生する状態であると判断し、通電パターン▲2▼を選択し、Pa側導電膜2Rのみ通電し、Pa側領域の曇りを防ぐ(Pa側領域の曇防止運転:ステップS17)。
【0038】
ステップS16の判断結果がYES の場合は、Pa側領域が曇りを発生する状態であるか否かを判断する(ステップS18)。このステップS18の判断結果がNOの場合は、Dr側領域だけ曇りが発生する状態であると判断し、通電パターン▲3▼を選択し、Dr側導電膜2Lのみ通電し、Dr側領域の曇りを防ぐ(Dr側領域の曇防止運転:ステップS19)。
また、ステップS18の判断結果がYES の場合は、Dr側領域とPa側領域の両方に曇りを発生する状態であると判断し、通電パターン▲1▼を選択し、Dr側導電膜2LとPa側導電膜2Rの両方を並列通電し、Dr側領域およびPa側領域の曇りを防ぐ、あるいはフロントガラス1に付着した氷を溶かす(フロントガラス1全体の曇防止運転あるいは解氷運転:ステップS20)。
【0039】
一方、ステップS15の判断結果がNOの場合(現状では曇りが発生しない状態)は、フロントガラス1の温度(Dr側領域およびPa側領域の平均ガラス温度)と、露点温度との差が一定温度Tth以内(水蒸気の結露によってガラスに曇りが発生し易い状態)であるか否かを判断する(ステップS21)。
このステップS21の判断結果がYES の場合(曇りが発生し易い状態)は、通電パターン▲4▼を選択し、Dr側導電膜2LとPa側導電膜2Rの両方を直列通電し、フロントガラス1に曇りが発生するのを予防する(フロントガラス1全体の曇予防運転:ステップS22)。
【0040】
また、ステップS21の判断結果がNOの場合(曇りが発生する可能性の無い状態)は、通電を停止する通電停止パターンを選択する。
なお、通電手段は、上記のフローチャートに示す制御を一定時間ごとに繰り返して行い、常にフロントガラス1の状態を監視して通電パターンを切り替えるものである。
【0041】
(第3実施例の効果)
この第3実施例では、フロントガラス1のDr側領域とPa側領域のガラス温度を独立して測定でき、またDr側領域とPa側領域を独立して加熱できるため、Dr側領域のみに曇りが発生する場合はPa側領域のPa側導電膜2Rの通電を停止でき、Pa側領域のみに曇りが発生する場合はDr側領域のDr側導電膜2Lの通電を停止できる。
即ち、上記の表1に示したように、Dr側導電膜2LとPa側導電膜2Rの両方を並列通電する場合の消費電力を1とした場合、Dr側導電膜2Lのみを通電してDr側領域のみを加熱する場合の消費電力を半分の0.5に抑えることができるとともに、Pa側導電膜2Rのみを通電してPa側領域のみを加熱する場合の消費電力も半分の0.5に抑えることができる。
このように、加熱の必要の無い領域の加熱を停止できるため、無駄な電力消費を抑えることができる。この結果、バッテリの負担が軽減するとともに、発電量を減らすことができ、エンジンの省動力化を図ることが可能になる。
【0042】
また、この実施例では、通電手段が曇りを発生し易い状態であると判断した場合に、通電パターン▲4▼を選択し、Dr側導電膜2LとPa側導電膜2Rを直列通電してフロントガラス1 の曇りを予防した。
ここで、第1実施例の場合だと、曇り予防のためにフロントガラス1のほぼ全域を加熱して大きな消費電力(表1の消費電力=1)が必要となるが、この実施例ではDr側導電膜2LとPa側導電膜2Rを直列通電したため、通電抵抗が大きくなり、消費電力を1/4の0.25に抑えることができる。即ち、この実施例では省電力でフロントガラス1の曇りを予防できる。
【0043】
さらに、この実施例では、通電手段によってフロントガラス1の状態を検出し、その検出結果に基づいて複数の通電パターンを切り替えた。このように、通電手段が通電パターンを自動的に切り替えるため、利便性に優れるとともに、人為的な操作であれば、無駄な通電(消し忘れ、通電の必要の無い領域への通電等)が発生するが、自動切り替えによって無駄な通電を抑えることができる。
【0044】
[第4実施例]
上記の第3実施例では、Dr側導電膜2LとPa側導電膜2Rによって、フロントガラス1のDr側領域とPa側領域を独立加熱する例を示した。
これに対し、本第4実施例は、フロントガラス1に設けたDr側導電膜2LとPa側導電膜2Rを、Dr側領域およびPa側領域のガラス温度を独立して検出するガラス温度センサ専用として用いるものであり、Dr側領域およびPa側領域を独立して加熱するガラス加熱手段として、例えば車両用空調装置のデフロスタ吹出モードを利用するものである。
【0045】
このため、フロントガラス1に設けられる透明導電膜は、通電による発熱量が大きく無いものであっても良い。
また、車両用空調装置のデフロスタ吹出モードは、Dr側領域およびPa側領域の両方へ空調風を吹き出すモードの他に、Dr側領域のみの吹出モードと、Pa側領域のみの吹出モードとが切替可能に設けられる。
【0046】
このように設けられることによって、加熱を行う必要のない領域を加熱する無駄を防ぐことができる。
なお、この実施例では、車両用空調装置の作動時で、且つ吹出モードがオートモード時に、Dr側領域およびPa側領域の温度等の状態に応じて吹出モードを自動的にデフロスタ吹出モードに変更して、上記の制御(左右独立デフロスタ吹出モード)を実施するものであるが、Dr側領域およびPa側領域の温度等の状態に応じて風量を増加させたり、吹出温度を上げるように制御しても良い。また、車両用空調装置がOFF されている状態でも、Dr側領域およびPa側領域の温度等の状態に応じて車両用空調装置を起動して、上記の制御を実施するように設けても良い。
【0047】
[変形例]
上記の実施例では、車両のフロントガラス1の温度を測定する例を示したが、車両のサイドガラス(前部、後部を含む)や、リヤガラスの温度を測定するように設けても良い。
また、車両のガラスに限定されるものではなく、ビル等の建築物の窓ガラス、実験機器類のガラス、飼育装置のガラスなど、広くガラス温度を測定できる。
さらに、上記の実施例では、透明導電膜を合わせガラスの間に挟む例を示したが、ガラス表面に透明導電膜を蒸着等によって被着させ、ガラス表面に設けられた透明導電膜の抵抗値変化を用いてガラス温度を測定しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】透明導電膜が設けられたフロントガラスの概略図である(第1実施例)。
【図2】透明導電膜の抵抗値変化を示すグラフである(第1実施例)。
【図3】透明導電膜の通電制御を行うフローチャートである(第1実施例)。
【図4】独立した透明導電膜が設けられたフロントガラスの概略図である(第3実施例)。
【図5】独立した透明導電膜の通電パターンを示す説明図である(第3実施例)。
【図6】通電パターンの切替制御を行うフローチャートである(第3実施例)。
【符号の説明】
1 フロントガラスガラス
2 透明導電膜(フロントガラスのほぼ全域を測定対象範囲とする透明導電膜)
2L Dr側導電膜(Dr側領域を測定対象範囲とした透明導電膜)
2R Pa側導電膜(Pa側領域を測定対象範囲とした透明導電膜)

Claims (5)

  1. ガラスにおける測定対象範囲に密着して設けられ、温度変化に応じて抵抗値が変化する透明導電膜を備え、
    この透明導電膜の抵抗値から前記ガラスの温度を求めることを特徴とするガラスの温度測定装置。
  2. 請求項1に記載のガラスの温度測定装置において、
    前記透明導電膜は、前記ガラスに被着した氷を溶かす解氷運転、前記ガラスに結露水が付着して発生する曇りを除去する曇除去運転、および曇りが発生する前に曇りを予防する曇予防運転を実行可能なガラス加熱手段としても用いられることを特徴とするガラスの温度測定装置。
  3. 請求項1に記載のガラスの温度測定装置において、
    前記透明導電膜は、前記ガラスに被着した氷を溶かす解氷運転、前記ガラスに結露水が付着して発生する曇りを除去する曇除去運転、および曇りが発生する前に曇りを予防する曇予防運転を実行可能なガラス加熱手段とは別に設けられることを特徴とするガラスの温度測定装置。
  4. 請求項2または請求項3に記載のガラスの温度測定装置において、
    前記ガラス加熱手段の作動を制御する制御装置は、
    前記ガラスの露点温度を算出する露点算出手段を有し、
    前記透明導電膜によって測定される前記ガラスの温度が、前記露点算出手段で算出された露点温度より所定温度以上高くなるように前記ガラス加熱手段を制御することを特徴とするガラスの温度測定装置。
  5. 請求項2〜請求項4のいずれかに記載のガラスの温度測定装置において、
    前記透明導電膜は、前記ガラスの複数の領域毎に独立して複数設けられて、前記ガラスの複数の領域毎の前記ガラスの温度を測定可能に設けられ、
    前記ガラス加熱手段は、前記ガラスの複数の領域毎を独立して加熱可能に設けられ、
    前記ガラス加熱手段の作動を制御する制御装置は、
    複数の前記透明導電膜のそれぞれの抵抗値から測定された複数の領域毎の前記ガラスの温度に基づいて前記ガラス加熱手段を制御することを特徴とするガラスの温度測定装置。
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