JP2004191134A - 放射線計測装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】放射線検知素材の変色を視覚によって把握する定性的計測と、放射線計測装置による吸光度の変化を計測する定量的計測とを可能とし、また情報蓄積をオフラインで行なえ、放射線検知素材の測定ポイントへの配置を簡便に行なえるようにする。
【解決手段】放射線の吸収線量に応じて吸光度が変化する放射線感応物質を適用した放射線検知素材21を着脱可能に装着する装着治具24と、この装着治具に装着した放射線検知素材に光を透過させる光路25と、この光路以外からの外乱光の入射を遮蔽する外乱光遮蔽壁27とを有する情報読み出し手段22を備える。また、放射線検知素材にその吸光度が変化する波長帯のレーザ光を光路に沿って照射するレーザ照射装置28と、放射線検知素材を透過したレーザ光を光検出器により受光して電気信号に変換するレーザ受光装置29と、このレーザ受光装置からの出力信号に基づいて放射線検知素材が受けた吸収線量を算出する演算装置30とを有する信号処理手段23を備える。
【選択図】 図1
【解決手段】放射線の吸収線量に応じて吸光度が変化する放射線感応物質を適用した放射線検知素材21を着脱可能に装着する装着治具24と、この装着治具に装着した放射線検知素材に光を透過させる光路25と、この光路以外からの外乱光の入射を遮蔽する外乱光遮蔽壁27とを有する情報読み出し手段22を備える。また、放射線検知素材にその吸光度が変化する波長帯のレーザ光を光路に沿って照射するレーザ照射装置28と、放射線検知素材を透過したレーザ光を光検出器により受光して電気信号に変換するレーザ受光装置29と、このレーザ受光装置からの出力信号に基づいて放射線検知素材が受けた吸収線量を算出する演算装置30とを有する信号処理手段23を備える。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、放射線の吸収線量に応じて吸光度が変化する放射線感応物質を放射線検知素材として適用した放射線測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、放射線の強度や照射量等の情報を光学的に蓄積する物質として輝尽性発光体が良く知られている。輝尽性発光体は例えば薄膜のシート状等に加工されており、使用時には測定対象の表面に密着させておき、その後取外して読み出し装置により放射線の強度分布を読み出す。輝尽性発光体は微弱な量の放射能を検出したり、X線撮影フィルムの代替として医療分野を中心に普及してきたものである。
【0003】
原子力関連分野においては、この輝尽性発光体を放射線の検出に積極的に利用しようとする活動が活発に行われており、さまざまな開発が行なわれている。
【0004】
図9は、輝尽性発光体を放射線検知素材とした一例を掲げたものであり、センサシステムとしてオンラインによってデータを読み出すことを目的とした放射線計測装置が報告されている(出典:JAERI−Conf 98−011,北口博司、出海滋)。
【0005】
この図9に示した放射線計測装置は、輝尽性発光体1と、この輝尽性発光体1を照射するための励起光源2と、輝尽性発光体1から放出された微弱光を検出する輝尽発光検出部3とを備えている。輝尽性発光体1と励起光源2とは光ファイバ4によって接続され、励起光源2からの励起光が光ファイバ4を介して輝尽性発光体1に照射されるようになっている。また、光ファイバ4の途中にはガルバノミラー等からなるスキャナ5が設けられ、このスキャナ5の部位から光分岐器等を介して別の光ファイバ6が分岐し、この分岐した光ファイバ6が輝尽発光検出部3に接続されている。これにより、輝尽性発光体1から放出された微弱光は光ファイバ4、スキャナ5および分岐した光ファイバ6を経て輝尽発光検出部3に伝送されるようになっている。
【0006】
なお、図9には輝尽性発光体1が代表的に1系統だけ示してあるが、これは複数系統接続されるものであり、複数系統の輝尽性発光体1と光ファイバ4,6との組み合わせからなるセンサヘッドをスキャナ5によって切り替える構成となっている。
【0007】
このように構成された光学蓄積型放射線計測装置において、複数系統の輝尽性発光体1が所定の放射線測定領域に配置される。放射線測定領域においては、放射線が輝尽性発光体1に入射して一時的な励起現象が発生する。このとき、即発発光は生じない。励起光源2の光をスキャナ5と光ファイバ4を介して照射すると、輝尽性発光体1の一時的な励起現象が緩和され、元の状態に戻る過程に伴って光が放出される。この光は光ファイバ4、スキャナ5および分岐した光ファイバ6を介して輝尽性発光検出部3に伝送され、検出される。読み出しのための励起光照射と消去とは同時に行なわれ、次の読み出しを行うものである。
【0008】
なお、輝尽性発光体1を放射線の検知素材とした放射線計測装置では放出される光自身が微弱光であるためS/N自体の問題があり、読み取り精度を確保するのが難しい。
【0009】
ところで、放射線の強度や照射量等の情報を光学的に蓄積する物質として輝尽性発光体の他に、機能性色素と呼ばれる放射線感応物質、例えば放射線感受性ジアリールエテン等の開発も進められている(時田、他「インドリルフタリド誘電体の放射線検出材料への応用」日本化学会2001春季年会1PB090。中澄、他「放射線モニターとしての放射線感応物質に関する研究−その2」日本原子力学会2000年春の大会M16。入江、他「放射線感受性ジアリールエテン(2)」日本化学会1999春季年会2G203)。
【0010】
このような機能性色素と呼ばれる放射線感応物質は、放射線に感応して吸光度が変化する物質で、吸光度の変化は放射線の吸収線量に応じて比例的に変化するものであり、本発明者においては既に、この放射線感応物質を放射線検知素材とした放射線計測装置についての提案を行なっている(例えば特開2001−318150号公報等)。
【0011】
図10は、機能性色素と呼ばれる放射線感応物質を放射線検知素材とした放射線計測装置の一例を掲げたものである。この図10に示した放射線計測装置では、外乱光の入射を遮蔽する外乱光遮蔽壁7で放射線感応物質8を覆った構成の放射線感応部9が備えられ、この放射線感応部9に光照射部10から放出された光が光伝送媒体11を介して照射されるようになっている。放射線感応物質8の光伝送媒体11と反対側の面には、照射された光を反射するための反射体12が設けられている。光伝送媒体11には、図9に示したものと同様に分岐合流器13および分岐光伝送媒体14を介して光測定部15が接続されている。
【0012】
この放射線計測装置では、光伝送媒体11を介して放射線感応物質8に照射された光が反射体12により反射され、光伝送媒体11から出ていき、その反射光は光伝送媒体11から光分岐合流器13を通り、光測定部15で検出および測定される。この光測定部15で測定した光のパワー等が測定され、予め取得しておいた校正情報から放射線の線量(率)が取得される。このような機能性色素と呼ばれる放射線感応物質8を放射線の検知素材とした放射線計測装置では、輝尽性発光体の自発発光ではなくプローブ光を用いることでS/Nを高めることができる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、前者の輝尽性発光体を放射線の検知素材とした放射線計測装置では放出される光自身が微弱光であるためS/N自体の問題があり、読み取り精度を確保するのが難しかった。
【0014】
これに対し、後者の機能性色素と呼ばれる放射線感応物質を放射線の検知素材とした放射線計測装置では、輝尽性発光体の自発発光ではなくプローブ光を用いることでS/Nを高めることができる。更に、光ファイバを用いることでオンライン計測による遠隔測定が可能となる。
【0015】
しかしながら、機能性色素を用いた後者の放射線計測装置では、運用方法として放射線感応物質を常時、計測装置内に配置したオンライン計測手法を採っているため、測定ポイントが多数の場合には、各測定ポイントと光照射部および光測定部とを光ファイバなどの光伝送媒体で全て接続する必要があり、構成が極めて複雑となる。また、従来では、吸光度の変化に基づく定量的な計測に限られ、簡便なオフライン計測等は行なわれていない。
【0016】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、オフライン計測が可能で、多数の測定ポイントと光照射部および光測定部とを光ファイバなどの光伝送媒体で全て接続する必要なく簡便な構成により放射線計測を行なうことができ、しかも定量的計測に加えて計測者の目視による定性的な計測も可能で放射線吸収線量の判断が容易に行なえる放射線計測装置を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため、請求項1に係る発明では、放射線の吸収線量に応じて吸光度が変化する放射線感応物質を適用した放射線検知素材と、放射線を吸収した前記放射線検知素材を着脱可能に装着する装着治具、この装着治具に装着した前記放射線検知素材に光を透過させる光路、およびこの光路以外からの外乱光の入射を遮蔽する外乱光遮蔽壁を有する情報読み出し手段と、前記放射線検知素材にその吸光度が変化する波長帯のレーザ光を前記光路に沿って照射するレーザ照射装置、前記放射線検知素材を透過したレーザ光を光検出器により受光して電気信号に変換するレーザ受光装置、およびこのレーザ受光装置からの出力信号に基づいて前記放射線検知素材が受けた吸収線量を算出する演算装置とを有する信号処理手段と、を備えたことを特徴とする放射線計測装置を提供する。
【0018】
請求項2に係る発明では、前記放射線検知素子は、複数の放射線感応物質を光学的に密着して積層した放射線感応物質積層体として構成した請求項1記載の放射線計測装置を提供する。
【0019】
請求項3に係る発明では、前記放射線検知素子は、放射線感応物質と、放射線に感応して光を生じる発光体とを含む請求項1記載の放射線計測装置を提供する。
【0020】
請求項4に係る発明では、前記放射線検知素子は、放射線感応物質の外周の全てまたは一部に、放射線に感応して光を生じる発光体を光学的に密着して備えている請求項1記載の放射線計測装置を提供する。
【0021】
請求項5に係る発明では、前記情報読み出し手段の装着治具は、前記放射線検知素子をレーザ光の光路位置に位置決めする溝を有する請求項1記載の放射線計測装置を提供する。
【0022】
請求項6に係る発明では、前記装着治具は、前記放射性検知素子を挟持し得るバインダとして構成されている請求項1記載の放射線計測装置を提供する。
【0023】
請求項7に係る発明では、開閉可能で、かつ閉状態にて外乱光の入射を遮蔽する機能を有する収容体に、前記放射線検知素子を着脱可能に収容して前記情報読み出し手段と異なる場所に設置し得る情報蓄積手段を備えた請求項1記載の放射線計測装置を提供する。
【0024】
請求項8に係る発明では、前記情報蓄積手段の収容体の内部に、放射線に感応して光を生じる発光体が設けられている請求項7記載の放射線計測装置を提供する。
【0025】
請求項9に係る発明では、前記信号処理手段の演算装置は、前記放射線検知素子の情報読み出し手段への設置の有無を、前記レーザ受光装置の光検出器からの出力信号レベルに基づいて判別するとともに、前記放射線検知素子が前記情報読み出し手段に設置されていると判別された場合に前記放射線感応物質が受けた吸収線量の算出を開始し、設置されていないと判別された場合に前記放射線感応物質が受けた吸収線量の算出を停止する機能を有する請求項1記載の放射線計測装置を提供する。
【0026】
【発明の実施形態】
以下、本発明に係る放射線計測装置の実施形態について、図1〜図8を参照して説明する。
【0027】
第1実施形態(図1〜図4)
図1は、本発明の第1実施形態による放射線計測装置の一構成例を示す説明図である。
【0028】
この図1に示すように、本実施形態の放射線計測装置は大別して、放射線の吸収線量に応じて吸光度が変化する放射線感応物質を適用した放射線検知素材21と、放射線を吸収した放射線検知素材21を着脱可能に装着して情報の読み出しを行なうための情報読み出し手段22と、この情報読み出し手段22から読み出した情報を信号処理するための信号処理手段23とを備えている。
【0029】
放射線検知素材21としては、例えば放射線感応物質であるジアリールエテン等が適用されている。このジアリールエテン等の放射線感応物質は、放射線に応じて比例的に吸光度が変化するものであり、放射線感応物質の吸光度が大きい場合には、光の透過率が小さくなる。この光の透過率の変化により、放射線感応物質を適用した放射線検知素材21は、吸光度の変化により例えば無色から有色、有色から無色、色調の変化などの変色を示す。この変色は、計測者等の目視によって容易に確認することができるものである。
【0030】
情報読み出し手段22は、放射線を吸収した放射線検知素材21を着脱可能に装着する装着治具24と、この装着治具24に装着した放射線検知素材21に光を透過させる光路25と、放射線検知素材21を透過した光を反射させるための反射体26と、光路25以外からの外乱光の入射を遮蔽する外乱光遮蔽壁27とを有する。
【0031】
装着治具24としては、放射線検知素材21を所定位置に位置決めして搭載できる台、または挟み付けて保持する挟持具等が適用される。光路25は、情報読み出し手段22側から供給されるレーザ光等の光伝送用媒体である光ファイバ20の先端部により構成される。反射体26は例えば光路25に直交する配置とされており、放射線検知素材21を透過した光を反射して光ファイバ20に反射させる。外乱光遮蔽壁27は装着治具24および反射体26を覆う構成とされており、光ファイバ20以外からの放射線検知素材21に入射する外乱光は遮蔽される。なお、外乱光遮蔽壁27には、図示しないが放射線検知素材21を着脱するための開閉口等が設けられている。
【0032】
信号処理手段23は、放射線検知素材21にその吸光度が変化する波長帯のレーザ光を光路25に沿って照射するレーザ照射装置28と、放射線検知素材21を透過したレーザ光を光検出器により受光して電気信号に変換するレーザ受光装置29と、このレーザ受光装置29からの出力信号に基づいて放射線検知素材が受けた吸収線量を算出する演算装置30とを有する。
【0033】
光ファイバ20は、レーザ照射装置28から放射線検知素材21にレーザ光を伝送する往路部分20aと、この往路部分20aから分岐し、反射体26により反射されて放射線検知素材21を透過したレーザ光をレーザ受光装置29に戻す復路部分20bとからなり、分岐点には反射光を分岐させるための光分岐器19が設けられている。光分岐器19には光カプラ等を使用することができる。なお、光伝送媒体には必ずしも光ファイバ20等の特別な構成のものに限らず、空気中等の空間伝送により光を入出射させる構成のものを適用してもよい。
【0034】
このような構成において、放射線検出を行なう場合には、まず所定の放射線計測領域に配置して放射線を吸収した放射線検知素材21を、情報読み出し手段22の装着治具24に装着する。この状態で、レーザ照射装置28から放出したレーザ光を、光ファイバ20(往路20a)を介して情報読み出し手段22の放射線検知素材21に照射する。情報読み出し手段22内の放射線検知素材21は周囲を外乱光遮蔽壁27によって遮光されているため、放射線検知素材21に照射されるのはレーザ照射装置28から放出されたレーザ光のみである。情報読み出し手段22に伝送されたレーザ光は光路25に沿って放射線検知素材21を透過する。この透過の際、放射線検知素材21に適用された放射線感応物質の吸光度に対応して光エネルギが減少する等の変化が生じる。そして、放射線検知素材21を透過したレーザ光は反射体26により反射され、反射光は、放射線検知素材21を再度透過して光ファイバ20から出ていく。
【0035】
反射光は、光ファイバ20から光分岐器19を介してレーザ受光装置29の光検出器で検出され、受光した光パワーは電気信号に変換して出力される。この電気信号が演算装置30に伝送され、この信号と予め取得しておいた校正情報とに基づいて、放射線検知素材21が受けた放射線の線量(率)が算出される。
【0036】
次に、図2によって放射線計測装置の他の構成について説明する。図2は、この放射線計測装置の他の構成例を示す説明図である。
【0037】
この放射線計測装置は、放射線検知素材21への照射光を反射させるものではなく、放射線検知素材21を透過したレーザ光を別ルートで信号処理手段に伝送して測定するものである。すなわち、信号処理手段23のレーザ照射装置28と情報読み出し手段22とは、送信用光ファイバ20aによって互いに接続されているが、この送信用光ファイバ20aには光分光器が設けられていない。送信用光ファイバ20aは情報読み出し手段22内の外乱光遮蔽壁27によって囲まれた装着治具24に装着された放射線検知素材21にレーザ光を照射する構成であるが、外乱光遮蔽壁27内にはレーザ光の反射体は設けられていない。
【0038】
そして反射体に代り、放射線検知素材21を透過したレーザ光を伝送するための受信用光ファイバ20cが送信用光ファイバ20aと同軸上に配置されており、この受信用光ファイバ20cは情報読み出し手段22の外部に導出された後、送信用光ファイバ20aと別ルートでレーザ受光装置29に接続されている。レーザ受光装置29には演算装置30が接続され、これらレーザ受光装置29および演算装置30は、図1に示した構成と同一機能を有し、前記同様の作用を行う。
【0039】
このように、レーザ光の伝送経路が送信用と受信用とに分けられたことにより、図1の構成と比較して反射体26と光分岐器19とが不要となり、構成の簡素化が図られる。ただし、情報読み出し手段22とレーザ受光装置29とを接続する光ファイバ20としては、送信用光ファイバ20aと受信用光ファイバ20cとの独立した2系統の光ファイバが必要となる。なお、図2の構成においても、光伝送媒体には必ずしも光ファイバ等の特別な構成のものに限らず、空気中等の空間伝送により光を入出射させる構成のものを適用してもよい。
【0040】
以上の図1および図2に示した放射線計測装置の適用により、図1の構成例では例えば光ファイバ20を、また図2の構成例では例えば送信用光ファイバ20aおよび受信用光ファイバ20cを選択することにより、各種接続形態で情報読み出し手段22と信号処理手段23との接続が自由に行なえ、これら情報読み出し手段22と信号処理手段23との配置がフレキシブルな計測装置が構築できる。
【0041】
そして、上述したように、機能性色素である放射線感応物質は、放射線量に応じて比例的に吸光度が変化するものであり、この変化は無色から有色へ、有色から無色へ、色調の変化などに応じて変色するため、放射線検知素材21を装着治具24から取外して目視観察した場合には、放射線感応物の色の変化を容易に確認することができる。すなわち、放射線感応物質は放射線量によって吸光度が変化し、その吸光度の増減と逆傾向で吸光度が増減することにより、例えば放射線検知素材21が呈する色の種類あるいは濃淡等を目視的に観察することにより、その放射線検知素材が受けた放射線の強弱等についての定性的な判断が簡易に行なえる。
【0042】
一方、信号処理手段23としてのレーザ受光装置29で検出され、受光された光パワーは、電気信号に変換されて演算装置30に伝送され、この信号と予め取得された校正情報とに基づいて、放射線検知素材21が受けた放射線の線量(率)が算出されるので、放射線の定量的計測が可能となる。
【0043】
したがって、本実施形態によれば、放射線検知素材21を保持する装着治具24に放射線検知素材21を着脱できる機能を持たせ、情報読み出し手段22から取り外せるようにすることで、放射線検知素材21の変色を視覚によって把握する定性的計測と、信号処理手段23による吸光度の変化を計測する定量的計測との両測定が可能となる。
【0044】
なお、図1および図2には情報読み出し手段22が代表的に1系統だけ示してあるが、情報読み出し手段22は複数系統設置することができ、その場合には、複数系統の情報読み出し手段22と光ファイバ20との組み合わせを図示しない切替手段によって切り替える構成となっている。
【0045】
図3(a),(b),(c)は、それぞれ上述した放射線検知素材21の構成を具体的に示す説明図である。
【0046】
放射線検知素材21には、固体、液体、ゲルなどさまざまな放射線感応物質を単体で、または各種複合して使用することが可能である。図3(a),(b),(c)には、固体の放射線感応物質を適用した構成を示している。
【0047】
図3(a)に示した放射線検知素材21は、光学的に密着した複数の放射線感応物質21aを積層した放射線感応物質積層体として構成されている。この放射線感応物質積層体を構成する各放射線感応物質21aの接合は、オプティカルグリースなどの光学結合材を介して行なわれ、これにより各放射線感応物質21aの境界での反射が抑制されている。この積層化により、放射線検知素材21の厚さが増加する分、目視確認時の視認性の向上、放射線測定装置による定量測定の感度向上が可能となる。
【0048】
図3(b)に示した放射線検知素材21は、放射線感応物質21aに、放射線に感応して発光する発光体、例えば放射線に感応して蛍光を生じるシンチレータ31を組み合わせたものである。この図3(b)の例では、放射線感応物質21aの内部にシンチレータ31を分散させた状態で混合配置したものである。
【0049】
このような図3(b)の構成によると、放射線感応物質21aが光によっても吸光度が変化する特性を有効に利用して、吸光度の変化を大きくすることができる。すなわち、放射線測定領域等に図3(b)に示した構成の放射線検知素材21を配置した場合、シンチレータ31が放射線に感応して蛍光を生じるため、放射線検知素材21は放射線による吸光度の変化に加えて、シンチレータ31から発する蛍光によっても吸光度の変化を受ける。したがって、このようなシンチレータ31を放射線感応物質21aに組み合わせることにより、放射線感応物質21aがシンチレータ31の放射線による発光を受け、放射線感応物質のみの場合に比べて吸光度の変化が大きくなり、放射線に対する感度を高めることができる。
【0050】
図3(c)は、放射線感応物質の周りにシンチレータ31を配置した構成の放射線検知素材21を示している。この放射線検知素材21は、放射線感応物質21aの外周の全てまたは一部に、シンチレータ31が光学的に密着して備えられている。
【0051】
このような構成によっても、図3(b)の例と同様に、放射線に対する感度を高めることができる。
【0052】
したがって、図3(a),(b),(c)に示した本実施形態の放射線検知素材21によると、放射線感応物質を積層化すること、またはシンチレータ31と組み合わせることにより、放射線検知素材21の吸光度の変化を増加することができ、放射線に対する感度を高めることが可能となり、放射線検出時間の短縮、検出精度の向上、判断の容易化等が図れる。
【0053】
図4(a),(b)は、それぞれ情報読み出し手段22に配置される放射線検知素材21の装着治具24の異なる構成例を具体的に示す説明図である。
【0054】
図4(a)に示した装着治具24は、放射線検知素材21が例えば円柱状その他これに類する軸心が定められている棒状の固体である場合における、その放射線検知素材21と装着治具24とを示している。この図4(a)の例では、装着治具24がVブロックの如く、上面に断面V字形の直線状の溝32を有する台として構成されている。この装着治具24の溝32を図1または図2に示したレーザ光の光路25に沿う配置とし、その溝32内に沿って円柱状等の放射線検知素材21の軸心を合せた状態で挿入配置することにより、放射線検知素材21をレーザ光の光路位置に位置決めして搭載し得る構成となっている。
【0055】
このような構成によると、放射線検知素材21を装着治具24の溝32に挿入する簡便な操作を行なうだけで、放射線検知素材21を情報読み出し手段22のレーザ光路上に確実に配置することができる。
【0056】
図4(b)は放射線検知素材21が例えばフィルムの如く、膜状である場合における、その放射線検知素材21と装着治具24とを示している。この図4(b)の例では、装着治具24が、放射線検知素材21を挟持し得るバインダとして構成されている。このバインダとしての装着治具24は、開閉可能な2つ折り構造のシート材33に、折畳み時に重合する配置で窓孔34を形成したものであり、この窓孔34部分に放射線検知素材21を挟み込むことができるようになっている。そして、この装着治具24は図4(b)に示したように、台座35上に立て掛けることができ、この状態で放射線検知素材21を情報読み出し手段22の外乱光遮蔽体27内に配置することにより、放射線検知素材21を図1または図2に示したレーザ光の光路25に沿って配置することができる。
【0057】
以上のように、本実施形態においては、放射線検知素材21が棒状であれば図4(a)のように台状の装着治具24の溝32に放射線検知素材21を配置し、また放射線検知素材21がフィルム状であれば図4(b)のように放射線検知素材21をバインダ式に挟み込み込むことにより、放射線検知素材21を情報読み出し手段22のレーザ光路上に確実に配置することができる。
【0058】
次に、図5(a),(b)により情報蓄積手段36について説明する。
【0059】
この情報蓄積手段36は、情報読み出し手段22と異なる放射線検出場所に放射線検知素材21を配置して放射線を吸収させるため、放射線検知素材21を内部収容する収容手段としての機能を有するものである。この情報蓄積手段36は、放射線量を検出すべき各種設備の例えば複数箇所に任意に配置して、所定時間の線量検出に適用される。そして、放射線吸収量に応じて吸光度が変化した放射線感応物質21を目視により定性的に観察したり、上述した放射線読取手段22の装着治具24に装着して定量的に観察するものである。
【0060】
図5(a)は、情報蓄積手段36の一構成例を示している。この情報蓄積手段36は、開閉可能で、かつ閉状態にて外乱光の入射を遮蔽する機能を有する収容体37に、放射線検知素子21を着脱可能に収容する構成とされている。すなわち、収容体37は圧着シール式開口部38を有する袋体等として構成とされ、その内部に放射線検知素材21を着脱可能に収容し、例えば原子力プラントの放射線測定部等に任意に設置することができる。収容体37に収容する放射線検知素材21としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などで樹脂化したシート状、棒状、ブロック状等の各種形状の固体が適用できるほか、固体以外であっても、溶媒に溶かした液体やゲル状物質を光学的に透明な円筒等のセルの中に封入した構造として適用することができる。
【0061】
図5(b)は、情報蓄積手段36の他の構成例を示している。この情報蓄積手段36は、図5(a)に示したものと同様の収容体37の内部に、放射線に感応して光を生じる発光体、例えば蛍光を発するシンチレータ39を配置した構成とされている。これにより、放射線に対する感度を高めることができるようになっている。
【0062】
このような構成の情報蓄積手段36は、放射線検知素材21を収容体37内に収容して開口部38を閉じた状態で、情報読み出し手段22と異なる放射線測定部に配置することにより、放射線検知素材21への外乱光の入射を遮蔽した状態で放射線情報の蓄積を行うことができる。そして、この情報蓄積手段36により放射能情報を蓄積した放射線検知素材21を、所定期間経過後に収容体37から取出すことにより、目視観察することが可能となる。また、情報読み出し手段22の装着治具24に着脱可能に装着することも可能である。
【0063】
したがって、情報蓄積手段36を開封して放射線検知素材21を目視確認すれば、その場で定性的な放射線量を把握することができ、放射線感応物1を情報読み出し手段22に移し替えて計測すれば、定量的な放射線量を得ることも可能となり、光伝送媒体を不要とした測定が可能となる。これにより、情報蓄積をオフラインで行うことで、必ずしも全ての放射線検出部位に光ファイバ等の光伝送媒体を設置する必要がなく、従来のオンラインによる放射線検出装置と異なり、放射線検知素材の測定ポイントへの配置を簡便に行うことができる。
【0064】
第2実施形態(図6)
本実施形態では、前述した信号処理手段23により放射線検知素材21の定量的計測を行なう場合に、情報読み出し手段22に実際に放射線検知素材21が装着されているか否かを容易に確認して、確実に計測開始および停止を行なう機能について説明する。
【0065】
信号処理手段23は例えばオペレーションフロアに設置され、情報読み出し手段22は放射線検出位置近傍等、オペレーションフロアから離間した位置に設置される。そのため、実際に情報読み出し手段22に放射線検知素材21が装着されているか否かを何らかの手段によって確認した後、計測を開始し、放射線検知素材21が装着されていない場合には計測を停止する必要がある。この場合、装着治具に放射線検知素材21が装着されたか否かを判別する特別の装置を設けることは装置構成を複雑化し、好ましくない。
【0066】
そこで、本実施形態では、信号処理手段23の演算装置30により、レーザ受光装置29の光検出器からの出力信号レベルに基づいて放射線検知素子21の有無を判断するとともに、放射線検知素子21が情報読み出し手段23に設置されていると判別された場合に吸収線量の算出を開始し、設置されていないと判別された場合には、放射線感応物質21が受けた吸収線量の算出を停止する機能が備えられ、特別の装置を設ける必要をなくしている。
【0067】
図6(a),(b),(c)は、このような放射線検知素材21の有無を確認する機能を説明するための図である。
【0068】
図6(a)は第1実施形態と同様の放射線測定装置の全体構成を示している。この図では、情報読み出し手段23の装着治具24に、放射線検知素子21が装着されていない(この状態を(i)とする)。
【0069】
図6(b)も同様に、放射線測定装置の全体構成を示している。この図では、情報読み出し手段23の装着治具24に、放射線検知素子21が装着されている(この状態を(ii)とする)。
【0070】
図6(c)は、情報読み出し手段23に放射線検出素子21が無い状態(i)と、放射線検出素子21が有る状態(ii)とを判別する信号状態を示すグラフであり、縦軸に出力信号を表し、横軸に時間を示している。この図6(c)に示したように、放射線検出素子21が無い状態(i)で、レーザ照射装置28から出射されたレーザ光が途中で全く吸光されないため、レーザ光は反射体26で100%反射され、レーザ受光装置29に受信される。この結果、図6(c)に状態(i)として示したように、受光レベルが高い。これに対し、放射線検出素子21が有る状態(ii)では、レーザ照射装置28から出射されたレーザ光が図6(b)に示した放射線検知素材21を透過する際に吸光されるため、反射体26から反射されたレーザ光の強度は変化し、受光レベルが低下した状態となってレーザ受光装置29に受信される。
【0071】
本実施形態では、このような受光強度の差が演算装置30にとり込まれ、レーザ光強度の減少が無く最大出力レベルの状態(i)の場合には情報読み出し手段22に放射線検知素材21が無いと判断され、出力レベルが変化した状態(ii)の場合には情報読み出し手段22に放射線検知素材21が有ると判断される。
【0072】
また、演算装置30では、図6(c)に示す出力レベル(i),(ii)に応じて、放射線検知素子21が情報読み出し手段23に装着されていると判別された場合には、放射線感応物質21が受けた吸収線量の算出を開始し、設置されていないと判別された場合には、放射線感応物質21が受けた吸収線量の算出を停止する機能が備えられている。これらの機能による判断は、モニタによって観察することができ、作業者は開始吸光度算出の開始時刻又は停止時刻を把握することができる。
【0073】
本実施形態によれば、情報読み出し手段22への放射線検知素材21の有無を特別な装置、手法等を用いる必要なく、得られる信号レベルから容易に識別することが可能となり、吸光度の算出の開始又は停止を容易に把握することができる。
【0074】
第3実施形態(図7)
本実施形態では、複数の情報読み出し手段22に放射線検知素材21をそれぞれ装着し、それらの放射線検知素材21を順次に定量的測定する場合に、測定対象となる情報読み出し手段22ひいては各放射線検知素材21を確実に識別する方法について説明する。
【0075】
例えば、複数の異なる箇所に情報読み出し手段22が設置され、各情報読み出し手段22に装着された放射線検知素材21を1ヶ所の信号処理手段23で順次に信号処理する場合には、順次に送られる各情報読み出し手段22からの情報について、各情報読み出し手段22の設置場所や、それに装着された各放射線検知素材21を確実に把握する必要がある。
【0076】
そこで本実施形態では、放射線検知素材21である放射線感応物質とは異なる既知の吸光度を持つ識別用物質をそれぞれ各情報読み出し手段22毎に用意し、各識別用物質の吸光度データを保存しておき、定量的計測に際して当該各識別用物質を各情報読み出し手段22に先行して配置し、その識別用物質の吸光度を測定してデータ照合することで各情報読み出し手段22を特定し、それにより測定対象となる放射線検知素材21を識別した後に、放射線検知素材21の測定を行なうものである。
【0077】
以下、一例として2種類の放射線検知素材21a,21bを識別する方法について説明する。図7(a)は放射線測定装置の構成図である。図7(b)は作用を説明するための線図であり、縦軸に信号レベルを表し、横軸に時間を表している。
【0078】
図7(a)に示すように、この放射線計測装置では、1つの信号処理手段23に光ファイバ20を介して2ヶ所の情報読み出し手段22a,22bが接続されている。光ファイバ20は、情報読み出し手段22a,22bに対応して、切替手段40により分岐されている。各情報読み出し手段22a,22bには、それぞれ装着すべき放射線検知素材21a,21bが定められている。さらに、各情報読み出し手段22a,22bには、各放射線検知素材21a,21bと異なる吸光度X1,X2を持つ既知の識別用物質41a,41bが、それぞれ装着できるようになっており、これらの吸光度X1,X2は各識別用物質41a,41bとの対応関係のデータとして信号処理手段23に保存されている。
【0079】
放射線の定量的計測を行なう場合には、まず一方の放射線検知素材21aの装着に先立ち、予めこの放射線検知素材21aに対応する吸収線量X1の識別用物質41aを一方の情報読み出し手段22aに装着し、この識別用物質41aの吸収線量を測定する。
【0080】
この識別用物質41aの吸収線量を測定した場合には、図7(b)に示すように、この識別用物質41aの既知の吸収線量X1に基づくレベルの信号S1が検出される。この信号S1のデータは予め知られているので、この段階で得られた信号が一方の情報読み出し手段22aに対応する識別用物質41aであることが判別する。したがって、この後に一方の放射線検知素材21aを装着して計測された図7(b)の第2段の信号S2は、一方の放射線検知素材21aの吸光度を示すことが判別する。
【0081】
次に、他方の放射線検知素材21bの装着に先立ち、予めこの放射線検知素材21bに対応する吸収線量X2の識別用物質41bを他方の情報読み出し手段22bに装着し、この識別用物質41bの吸収線量を測定する。
【0082】
この識別用物質41bの吸収線量を測定した場合には、図7(b)に示すように、この識別用物質41bの既知の吸収線量X2に基づくレベルの信号S3が検出される。この信号S3のデータも予め知られているので、この第3段で得られた信号が他方の情報読み出し手段22bに対応する識別用物質41bであることが判別する。したがって、この後に他方の放射線検知素材21bを装着して計測された図7(b)の第4段の信号S4は、他方の放射線検知素材21bの吸光度を示すことが判別する。
【0083】
このように、本実施形態においては、各放射線検知素材21a,21bとは異なる吸光度X1,X2を持つ既知の識別用物質41a,41bを情報読み出し手段に配置して、予めその識別用物質41a,41bの吸収線量をそれぞれ測定することにより、続いて各情報読み出し手段22a,22bに配置される放射線検知素材21a,21bを確実に識別して定量的計測を行なうことができる。
【0084】
なお、本実施形態では一例として情報読み出し手段が2ヶ所に設置されている場合を説明したが、情報読み出し手段が3ヶ所以上に設置されている場合についても3以上の識別用物質を用いて適宜実施できることは勿論である。
【0085】
第4実施形態(図8)
本実施形態では、放射線計測装置における光軸ずれや、光検出器の性能劣化等に対する健全性を検証する方法について説明する。
【0086】
上述した放射線計測装置は使用により、また時間経過等により、放射線光軸のずれや光検出器の性能劣化を生じる可能性がある。このような光軸ずれや光検出器の性能劣化を生じた場合には、計測時の出力信号レベルの信頼性に問題が生じる。
【0087】
そこで、本実施形態では、検証用部材を情報読み出し手段22に配置することで光軸ずれや光検出器の性能劣化を検証するものである。
【0088】
図8(a)は放射線測定装置の構成図であり、図8(b1,b2),(c1,c2),(d1,d2)は3種の異なる検証用部材をそれぞれ直交する2方向断面にて示す説明図である。図8(e)は作用を説明するための線図であり、縦軸に相対出力を表し、横軸に時間を表している。
【0089】
図8(a)に示すように、放射線測定装置は情報読み出し手段22および信号処理手段23等を備え、これらの構成は第1実施形態で示したものと略同様である。情報読み出し手段22の装着治具24には、例えば四角柱状をなす中実構造の放射線検知素材21を一定位置に位置決めして着脱可能に装着できるようになっている。
【0090】
次に、図8(b1,b2),(c1,c2),(d1,d2)にそれぞれ示すように、各検証用部材42,43,44は、放射線検知素材21と同一外形の四角柱状とされ、情報読み出し手段22の装着治具24に、放射線検知素材21と同様に位置決めして着脱可能に装着できるようになっている。そして、これら各検証用部材42,43,44には、中心部に異なる径の貫通孔42a,43a,44aがそれぞれ穿設され、これらの貫通孔42a,43a,44aを光が透過できる中空構造とされている。
【0091】
図8(b1,b2)に示した第1の検証用部材42の貫通孔42aは、例えば光路25から照射されるレーザ光を80%通過し得る絞り機能を有するものとされている。また、図8(c1,c2)に示した第2の検証用部材43の貫通孔43aは同レーザ光を60%通過し得る絞り機能を有し、図8(d1,d2)に示した第3の検証用部材44の貫通孔44aは同レーザ光を40%通過し得る絞り機能を有するものとされている。
【0092】
本実施形態では、このような検証用部材42,43,44を装着治具24に装着し、放射線検知素材21の定量的計測時と略同様にレーザ光を照射して、透過する光量の計測を行ない、各検証用部材42,43,44に設定した絞り機能に対応する出力が計測されるか否かにより健全性判断を行なう。
【0093】
すなわち、図8(e)は、検証用部材42,43,44を放射線読み出し部22の装着治具24に順次に装着してレーザ光を照射した場合の相対出力と時間との関係を示している。この場合、放射線計測装置に光軸ずれや光検出器の性能劣化等の健全性に関する問題が無いときには、図8(e)に示したように、照射したレーザ光の出力を100とした場合、第1の検証用部材42では相対出力80%の光量が検出される。また、第2の検証用部材43では相対出力60%の光量が検出され、第3の検証用部材44では相対出力40%の光量が検出される。
【0094】
これに対し、放射線計測装置に光軸ずれや光検出器の性能劣化等の健全性に関する問題がある場合には、図8(e)に示したような設定値通りの光量が検出されずに減衰する等の現象が生じる。
【0095】
このように、本実施形態によれば、放射線読み出し部22の装着治具24に、レーザ光の光軸に沿う光量の絞り機能を有する検証用部材42,43,44を装着し、この検証用部材42,43,44にレーザ光を照射することにより、各検証用部材の絞り量に基づくレーザ光量が検出されるか否かを判断し、光軸ずれまたは光検出性能劣化等の放射線計測装置の健全性を検証することができる。
【0096】
なお、上述した検証用部材42,43,44に設定した光の絞り量は一例であって、適宜の値に設定することができるのは勿論である。
【0097】
また、本実施形態では絞り量が異なる値に固定された複数の検証用部材42,43,44を適用したが、図示しないが例えば可変絞り機構を備えた1個の検証用部材を適用する等の種々の変更も可能である。
【0098】
【発明の効果】
以上で説明したように、本発明に係る放射線計測装置によれば、オフライン計測が可能で、多数の測定ポイントと光照射部および光測定部とを光ファイバなどの光伝送媒体で全て接続する必要なく簡便な構成により放射線計測を行なうことができ、しかも定量的計測に加えて計測者の目視による定性的な計測も可能で放射線吸収線量の判断が容易に行なえる等の効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態による放射線計測装置を示す構成図。
【図2】本発明の第1実施形態による放射線計測装置を示す構成図。
【図3】(a),(b),(c)は本発明の第1実施形態による放射線計測装置の放射線検知素子を示す構成図。
【図4】(a),(b)は本発明の第1実施形態による放射線計測装置の装着治具を示す構成図。
【図5】(a),(b)は本発明の第1実施形態による放射線計測装置の情報蓄積手段を示す構成図。
【図6】(a),(b),(c)は本発明の第2実施形態による放射線計測装置の放射線検知素材の有無確認方法を示す説明図。
【図7】(a),(b)は本発明の第3実施形態による放射線計測装置の放射線検知素材の識別方法を示す説明図。
【図8】(a),(b1),(b2),(c1),(c2),(d1),(d2),(e)は本発明の第4実施形態による放射線計測装置の検証方法を示す説明図。
【図9】従来の輝尽性発光体を用いた放射線計測装置を示す構成図。
【図10】従来の放射線計測装置を示す構成図。
【符号の説明】
19…光分岐器、20…光ファイバ、21…放射線検知素材、22…情報読み出し手段、23…信号処理手段、24…装着治具、25…光路、26…反射体、27…外乱光遮蔽壁、28…レーザ照射装置、29…レーザ受光装置、30…演算装置、32…溝、33…シート材、34…窓孔、35…台座、36…情報蓄積手段、37…収容体、38…開口部、39…シンチレータ、40…切替換手段、41a,41b…識別用物質、42,43,44…各検証用部材。
【発明の属する技術分野】
本発明は、放射線の吸収線量に応じて吸光度が変化する放射線感応物質を放射線検知素材として適用した放射線測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、放射線の強度や照射量等の情報を光学的に蓄積する物質として輝尽性発光体が良く知られている。輝尽性発光体は例えば薄膜のシート状等に加工されており、使用時には測定対象の表面に密着させておき、その後取外して読み出し装置により放射線の強度分布を読み出す。輝尽性発光体は微弱な量の放射能を検出したり、X線撮影フィルムの代替として医療分野を中心に普及してきたものである。
【0003】
原子力関連分野においては、この輝尽性発光体を放射線の検出に積極的に利用しようとする活動が活発に行われており、さまざまな開発が行なわれている。
【0004】
図9は、輝尽性発光体を放射線検知素材とした一例を掲げたものであり、センサシステムとしてオンラインによってデータを読み出すことを目的とした放射線計測装置が報告されている(出典:JAERI−Conf 98−011,北口博司、出海滋)。
【0005】
この図9に示した放射線計測装置は、輝尽性発光体1と、この輝尽性発光体1を照射するための励起光源2と、輝尽性発光体1から放出された微弱光を検出する輝尽発光検出部3とを備えている。輝尽性発光体1と励起光源2とは光ファイバ4によって接続され、励起光源2からの励起光が光ファイバ4を介して輝尽性発光体1に照射されるようになっている。また、光ファイバ4の途中にはガルバノミラー等からなるスキャナ5が設けられ、このスキャナ5の部位から光分岐器等を介して別の光ファイバ6が分岐し、この分岐した光ファイバ6が輝尽発光検出部3に接続されている。これにより、輝尽性発光体1から放出された微弱光は光ファイバ4、スキャナ5および分岐した光ファイバ6を経て輝尽発光検出部3に伝送されるようになっている。
【0006】
なお、図9には輝尽性発光体1が代表的に1系統だけ示してあるが、これは複数系統接続されるものであり、複数系統の輝尽性発光体1と光ファイバ4,6との組み合わせからなるセンサヘッドをスキャナ5によって切り替える構成となっている。
【0007】
このように構成された光学蓄積型放射線計測装置において、複数系統の輝尽性発光体1が所定の放射線測定領域に配置される。放射線測定領域においては、放射線が輝尽性発光体1に入射して一時的な励起現象が発生する。このとき、即発発光は生じない。励起光源2の光をスキャナ5と光ファイバ4を介して照射すると、輝尽性発光体1の一時的な励起現象が緩和され、元の状態に戻る過程に伴って光が放出される。この光は光ファイバ4、スキャナ5および分岐した光ファイバ6を介して輝尽性発光検出部3に伝送され、検出される。読み出しのための励起光照射と消去とは同時に行なわれ、次の読み出しを行うものである。
【0008】
なお、輝尽性発光体1を放射線の検知素材とした放射線計測装置では放出される光自身が微弱光であるためS/N自体の問題があり、読み取り精度を確保するのが難しい。
【0009】
ところで、放射線の強度や照射量等の情報を光学的に蓄積する物質として輝尽性発光体の他に、機能性色素と呼ばれる放射線感応物質、例えば放射線感受性ジアリールエテン等の開発も進められている(時田、他「インドリルフタリド誘電体の放射線検出材料への応用」日本化学会2001春季年会1PB090。中澄、他「放射線モニターとしての放射線感応物質に関する研究−その2」日本原子力学会2000年春の大会M16。入江、他「放射線感受性ジアリールエテン(2)」日本化学会1999春季年会2G203)。
【0010】
このような機能性色素と呼ばれる放射線感応物質は、放射線に感応して吸光度が変化する物質で、吸光度の変化は放射線の吸収線量に応じて比例的に変化するものであり、本発明者においては既に、この放射線感応物質を放射線検知素材とした放射線計測装置についての提案を行なっている(例えば特開2001−318150号公報等)。
【0011】
図10は、機能性色素と呼ばれる放射線感応物質を放射線検知素材とした放射線計測装置の一例を掲げたものである。この図10に示した放射線計測装置では、外乱光の入射を遮蔽する外乱光遮蔽壁7で放射線感応物質8を覆った構成の放射線感応部9が備えられ、この放射線感応部9に光照射部10から放出された光が光伝送媒体11を介して照射されるようになっている。放射線感応物質8の光伝送媒体11と反対側の面には、照射された光を反射するための反射体12が設けられている。光伝送媒体11には、図9に示したものと同様に分岐合流器13および分岐光伝送媒体14を介して光測定部15が接続されている。
【0012】
この放射線計測装置では、光伝送媒体11を介して放射線感応物質8に照射された光が反射体12により反射され、光伝送媒体11から出ていき、その反射光は光伝送媒体11から光分岐合流器13を通り、光測定部15で検出および測定される。この光測定部15で測定した光のパワー等が測定され、予め取得しておいた校正情報から放射線の線量(率)が取得される。このような機能性色素と呼ばれる放射線感応物質8を放射線の検知素材とした放射線計測装置では、輝尽性発光体の自発発光ではなくプローブ光を用いることでS/Nを高めることができる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、前者の輝尽性発光体を放射線の検知素材とした放射線計測装置では放出される光自身が微弱光であるためS/N自体の問題があり、読み取り精度を確保するのが難しかった。
【0014】
これに対し、後者の機能性色素と呼ばれる放射線感応物質を放射線の検知素材とした放射線計測装置では、輝尽性発光体の自発発光ではなくプローブ光を用いることでS/Nを高めることができる。更に、光ファイバを用いることでオンライン計測による遠隔測定が可能となる。
【0015】
しかしながら、機能性色素を用いた後者の放射線計測装置では、運用方法として放射線感応物質を常時、計測装置内に配置したオンライン計測手法を採っているため、測定ポイントが多数の場合には、各測定ポイントと光照射部および光測定部とを光ファイバなどの光伝送媒体で全て接続する必要があり、構成が極めて複雑となる。また、従来では、吸光度の変化に基づく定量的な計測に限られ、簡便なオフライン計測等は行なわれていない。
【0016】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、オフライン計測が可能で、多数の測定ポイントと光照射部および光測定部とを光ファイバなどの光伝送媒体で全て接続する必要なく簡便な構成により放射線計測を行なうことができ、しかも定量的計測に加えて計測者の目視による定性的な計測も可能で放射線吸収線量の判断が容易に行なえる放射線計測装置を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため、請求項1に係る発明では、放射線の吸収線量に応じて吸光度が変化する放射線感応物質を適用した放射線検知素材と、放射線を吸収した前記放射線検知素材を着脱可能に装着する装着治具、この装着治具に装着した前記放射線検知素材に光を透過させる光路、およびこの光路以外からの外乱光の入射を遮蔽する外乱光遮蔽壁を有する情報読み出し手段と、前記放射線検知素材にその吸光度が変化する波長帯のレーザ光を前記光路に沿って照射するレーザ照射装置、前記放射線検知素材を透過したレーザ光を光検出器により受光して電気信号に変換するレーザ受光装置、およびこのレーザ受光装置からの出力信号に基づいて前記放射線検知素材が受けた吸収線量を算出する演算装置とを有する信号処理手段と、を備えたことを特徴とする放射線計測装置を提供する。
【0018】
請求項2に係る発明では、前記放射線検知素子は、複数の放射線感応物質を光学的に密着して積層した放射線感応物質積層体として構成した請求項1記載の放射線計測装置を提供する。
【0019】
請求項3に係る発明では、前記放射線検知素子は、放射線感応物質と、放射線に感応して光を生じる発光体とを含む請求項1記載の放射線計測装置を提供する。
【0020】
請求項4に係る発明では、前記放射線検知素子は、放射線感応物質の外周の全てまたは一部に、放射線に感応して光を生じる発光体を光学的に密着して備えている請求項1記載の放射線計測装置を提供する。
【0021】
請求項5に係る発明では、前記情報読み出し手段の装着治具は、前記放射線検知素子をレーザ光の光路位置に位置決めする溝を有する請求項1記載の放射線計測装置を提供する。
【0022】
請求項6に係る発明では、前記装着治具は、前記放射性検知素子を挟持し得るバインダとして構成されている請求項1記載の放射線計測装置を提供する。
【0023】
請求項7に係る発明では、開閉可能で、かつ閉状態にて外乱光の入射を遮蔽する機能を有する収容体に、前記放射線検知素子を着脱可能に収容して前記情報読み出し手段と異なる場所に設置し得る情報蓄積手段を備えた請求項1記載の放射線計測装置を提供する。
【0024】
請求項8に係る発明では、前記情報蓄積手段の収容体の内部に、放射線に感応して光を生じる発光体が設けられている請求項7記載の放射線計測装置を提供する。
【0025】
請求項9に係る発明では、前記信号処理手段の演算装置は、前記放射線検知素子の情報読み出し手段への設置の有無を、前記レーザ受光装置の光検出器からの出力信号レベルに基づいて判別するとともに、前記放射線検知素子が前記情報読み出し手段に設置されていると判別された場合に前記放射線感応物質が受けた吸収線量の算出を開始し、設置されていないと判別された場合に前記放射線感応物質が受けた吸収線量の算出を停止する機能を有する請求項1記載の放射線計測装置を提供する。
【0026】
【発明の実施形態】
以下、本発明に係る放射線計測装置の実施形態について、図1〜図8を参照して説明する。
【0027】
第1実施形態(図1〜図4)
図1は、本発明の第1実施形態による放射線計測装置の一構成例を示す説明図である。
【0028】
この図1に示すように、本実施形態の放射線計測装置は大別して、放射線の吸収線量に応じて吸光度が変化する放射線感応物質を適用した放射線検知素材21と、放射線を吸収した放射線検知素材21を着脱可能に装着して情報の読み出しを行なうための情報読み出し手段22と、この情報読み出し手段22から読み出した情報を信号処理するための信号処理手段23とを備えている。
【0029】
放射線検知素材21としては、例えば放射線感応物質であるジアリールエテン等が適用されている。このジアリールエテン等の放射線感応物質は、放射線に応じて比例的に吸光度が変化するものであり、放射線感応物質の吸光度が大きい場合には、光の透過率が小さくなる。この光の透過率の変化により、放射線感応物質を適用した放射線検知素材21は、吸光度の変化により例えば無色から有色、有色から無色、色調の変化などの変色を示す。この変色は、計測者等の目視によって容易に確認することができるものである。
【0030】
情報読み出し手段22は、放射線を吸収した放射線検知素材21を着脱可能に装着する装着治具24と、この装着治具24に装着した放射線検知素材21に光を透過させる光路25と、放射線検知素材21を透過した光を反射させるための反射体26と、光路25以外からの外乱光の入射を遮蔽する外乱光遮蔽壁27とを有する。
【0031】
装着治具24としては、放射線検知素材21を所定位置に位置決めして搭載できる台、または挟み付けて保持する挟持具等が適用される。光路25は、情報読み出し手段22側から供給されるレーザ光等の光伝送用媒体である光ファイバ20の先端部により構成される。反射体26は例えば光路25に直交する配置とされており、放射線検知素材21を透過した光を反射して光ファイバ20に反射させる。外乱光遮蔽壁27は装着治具24および反射体26を覆う構成とされており、光ファイバ20以外からの放射線検知素材21に入射する外乱光は遮蔽される。なお、外乱光遮蔽壁27には、図示しないが放射線検知素材21を着脱するための開閉口等が設けられている。
【0032】
信号処理手段23は、放射線検知素材21にその吸光度が変化する波長帯のレーザ光を光路25に沿って照射するレーザ照射装置28と、放射線検知素材21を透過したレーザ光を光検出器により受光して電気信号に変換するレーザ受光装置29と、このレーザ受光装置29からの出力信号に基づいて放射線検知素材が受けた吸収線量を算出する演算装置30とを有する。
【0033】
光ファイバ20は、レーザ照射装置28から放射線検知素材21にレーザ光を伝送する往路部分20aと、この往路部分20aから分岐し、反射体26により反射されて放射線検知素材21を透過したレーザ光をレーザ受光装置29に戻す復路部分20bとからなり、分岐点には反射光を分岐させるための光分岐器19が設けられている。光分岐器19には光カプラ等を使用することができる。なお、光伝送媒体には必ずしも光ファイバ20等の特別な構成のものに限らず、空気中等の空間伝送により光を入出射させる構成のものを適用してもよい。
【0034】
このような構成において、放射線検出を行なう場合には、まず所定の放射線計測領域に配置して放射線を吸収した放射線検知素材21を、情報読み出し手段22の装着治具24に装着する。この状態で、レーザ照射装置28から放出したレーザ光を、光ファイバ20(往路20a)を介して情報読み出し手段22の放射線検知素材21に照射する。情報読み出し手段22内の放射線検知素材21は周囲を外乱光遮蔽壁27によって遮光されているため、放射線検知素材21に照射されるのはレーザ照射装置28から放出されたレーザ光のみである。情報読み出し手段22に伝送されたレーザ光は光路25に沿って放射線検知素材21を透過する。この透過の際、放射線検知素材21に適用された放射線感応物質の吸光度に対応して光エネルギが減少する等の変化が生じる。そして、放射線検知素材21を透過したレーザ光は反射体26により反射され、反射光は、放射線検知素材21を再度透過して光ファイバ20から出ていく。
【0035】
反射光は、光ファイバ20から光分岐器19を介してレーザ受光装置29の光検出器で検出され、受光した光パワーは電気信号に変換して出力される。この電気信号が演算装置30に伝送され、この信号と予め取得しておいた校正情報とに基づいて、放射線検知素材21が受けた放射線の線量(率)が算出される。
【0036】
次に、図2によって放射線計測装置の他の構成について説明する。図2は、この放射線計測装置の他の構成例を示す説明図である。
【0037】
この放射線計測装置は、放射線検知素材21への照射光を反射させるものではなく、放射線検知素材21を透過したレーザ光を別ルートで信号処理手段に伝送して測定するものである。すなわち、信号処理手段23のレーザ照射装置28と情報読み出し手段22とは、送信用光ファイバ20aによって互いに接続されているが、この送信用光ファイバ20aには光分光器が設けられていない。送信用光ファイバ20aは情報読み出し手段22内の外乱光遮蔽壁27によって囲まれた装着治具24に装着された放射線検知素材21にレーザ光を照射する構成であるが、外乱光遮蔽壁27内にはレーザ光の反射体は設けられていない。
【0038】
そして反射体に代り、放射線検知素材21を透過したレーザ光を伝送するための受信用光ファイバ20cが送信用光ファイバ20aと同軸上に配置されており、この受信用光ファイバ20cは情報読み出し手段22の外部に導出された後、送信用光ファイバ20aと別ルートでレーザ受光装置29に接続されている。レーザ受光装置29には演算装置30が接続され、これらレーザ受光装置29および演算装置30は、図1に示した構成と同一機能を有し、前記同様の作用を行う。
【0039】
このように、レーザ光の伝送経路が送信用と受信用とに分けられたことにより、図1の構成と比較して反射体26と光分岐器19とが不要となり、構成の簡素化が図られる。ただし、情報読み出し手段22とレーザ受光装置29とを接続する光ファイバ20としては、送信用光ファイバ20aと受信用光ファイバ20cとの独立した2系統の光ファイバが必要となる。なお、図2の構成においても、光伝送媒体には必ずしも光ファイバ等の特別な構成のものに限らず、空気中等の空間伝送により光を入出射させる構成のものを適用してもよい。
【0040】
以上の図1および図2に示した放射線計測装置の適用により、図1の構成例では例えば光ファイバ20を、また図2の構成例では例えば送信用光ファイバ20aおよび受信用光ファイバ20cを選択することにより、各種接続形態で情報読み出し手段22と信号処理手段23との接続が自由に行なえ、これら情報読み出し手段22と信号処理手段23との配置がフレキシブルな計測装置が構築できる。
【0041】
そして、上述したように、機能性色素である放射線感応物質は、放射線量に応じて比例的に吸光度が変化するものであり、この変化は無色から有色へ、有色から無色へ、色調の変化などに応じて変色するため、放射線検知素材21を装着治具24から取外して目視観察した場合には、放射線感応物の色の変化を容易に確認することができる。すなわち、放射線感応物質は放射線量によって吸光度が変化し、その吸光度の増減と逆傾向で吸光度が増減することにより、例えば放射線検知素材21が呈する色の種類あるいは濃淡等を目視的に観察することにより、その放射線検知素材が受けた放射線の強弱等についての定性的な判断が簡易に行なえる。
【0042】
一方、信号処理手段23としてのレーザ受光装置29で検出され、受光された光パワーは、電気信号に変換されて演算装置30に伝送され、この信号と予め取得された校正情報とに基づいて、放射線検知素材21が受けた放射線の線量(率)が算出されるので、放射線の定量的計測が可能となる。
【0043】
したがって、本実施形態によれば、放射線検知素材21を保持する装着治具24に放射線検知素材21を着脱できる機能を持たせ、情報読み出し手段22から取り外せるようにすることで、放射線検知素材21の変色を視覚によって把握する定性的計測と、信号処理手段23による吸光度の変化を計測する定量的計測との両測定が可能となる。
【0044】
なお、図1および図2には情報読み出し手段22が代表的に1系統だけ示してあるが、情報読み出し手段22は複数系統設置することができ、その場合には、複数系統の情報読み出し手段22と光ファイバ20との組み合わせを図示しない切替手段によって切り替える構成となっている。
【0045】
図3(a),(b),(c)は、それぞれ上述した放射線検知素材21の構成を具体的に示す説明図である。
【0046】
放射線検知素材21には、固体、液体、ゲルなどさまざまな放射線感応物質を単体で、または各種複合して使用することが可能である。図3(a),(b),(c)には、固体の放射線感応物質を適用した構成を示している。
【0047】
図3(a)に示した放射線検知素材21は、光学的に密着した複数の放射線感応物質21aを積層した放射線感応物質積層体として構成されている。この放射線感応物質積層体を構成する各放射線感応物質21aの接合は、オプティカルグリースなどの光学結合材を介して行なわれ、これにより各放射線感応物質21aの境界での反射が抑制されている。この積層化により、放射線検知素材21の厚さが増加する分、目視確認時の視認性の向上、放射線測定装置による定量測定の感度向上が可能となる。
【0048】
図3(b)に示した放射線検知素材21は、放射線感応物質21aに、放射線に感応して発光する発光体、例えば放射線に感応して蛍光を生じるシンチレータ31を組み合わせたものである。この図3(b)の例では、放射線感応物質21aの内部にシンチレータ31を分散させた状態で混合配置したものである。
【0049】
このような図3(b)の構成によると、放射線感応物質21aが光によっても吸光度が変化する特性を有効に利用して、吸光度の変化を大きくすることができる。すなわち、放射線測定領域等に図3(b)に示した構成の放射線検知素材21を配置した場合、シンチレータ31が放射線に感応して蛍光を生じるため、放射線検知素材21は放射線による吸光度の変化に加えて、シンチレータ31から発する蛍光によっても吸光度の変化を受ける。したがって、このようなシンチレータ31を放射線感応物質21aに組み合わせることにより、放射線感応物質21aがシンチレータ31の放射線による発光を受け、放射線感応物質のみの場合に比べて吸光度の変化が大きくなり、放射線に対する感度を高めることができる。
【0050】
図3(c)は、放射線感応物質の周りにシンチレータ31を配置した構成の放射線検知素材21を示している。この放射線検知素材21は、放射線感応物質21aの外周の全てまたは一部に、シンチレータ31が光学的に密着して備えられている。
【0051】
このような構成によっても、図3(b)の例と同様に、放射線に対する感度を高めることができる。
【0052】
したがって、図3(a),(b),(c)に示した本実施形態の放射線検知素材21によると、放射線感応物質を積層化すること、またはシンチレータ31と組み合わせることにより、放射線検知素材21の吸光度の変化を増加することができ、放射線に対する感度を高めることが可能となり、放射線検出時間の短縮、検出精度の向上、判断の容易化等が図れる。
【0053】
図4(a),(b)は、それぞれ情報読み出し手段22に配置される放射線検知素材21の装着治具24の異なる構成例を具体的に示す説明図である。
【0054】
図4(a)に示した装着治具24は、放射線検知素材21が例えば円柱状その他これに類する軸心が定められている棒状の固体である場合における、その放射線検知素材21と装着治具24とを示している。この図4(a)の例では、装着治具24がVブロックの如く、上面に断面V字形の直線状の溝32を有する台として構成されている。この装着治具24の溝32を図1または図2に示したレーザ光の光路25に沿う配置とし、その溝32内に沿って円柱状等の放射線検知素材21の軸心を合せた状態で挿入配置することにより、放射線検知素材21をレーザ光の光路位置に位置決めして搭載し得る構成となっている。
【0055】
このような構成によると、放射線検知素材21を装着治具24の溝32に挿入する簡便な操作を行なうだけで、放射線検知素材21を情報読み出し手段22のレーザ光路上に確実に配置することができる。
【0056】
図4(b)は放射線検知素材21が例えばフィルムの如く、膜状である場合における、その放射線検知素材21と装着治具24とを示している。この図4(b)の例では、装着治具24が、放射線検知素材21を挟持し得るバインダとして構成されている。このバインダとしての装着治具24は、開閉可能な2つ折り構造のシート材33に、折畳み時に重合する配置で窓孔34を形成したものであり、この窓孔34部分に放射線検知素材21を挟み込むことができるようになっている。そして、この装着治具24は図4(b)に示したように、台座35上に立て掛けることができ、この状態で放射線検知素材21を情報読み出し手段22の外乱光遮蔽体27内に配置することにより、放射線検知素材21を図1または図2に示したレーザ光の光路25に沿って配置することができる。
【0057】
以上のように、本実施形態においては、放射線検知素材21が棒状であれば図4(a)のように台状の装着治具24の溝32に放射線検知素材21を配置し、また放射線検知素材21がフィルム状であれば図4(b)のように放射線検知素材21をバインダ式に挟み込み込むことにより、放射線検知素材21を情報読み出し手段22のレーザ光路上に確実に配置することができる。
【0058】
次に、図5(a),(b)により情報蓄積手段36について説明する。
【0059】
この情報蓄積手段36は、情報読み出し手段22と異なる放射線検出場所に放射線検知素材21を配置して放射線を吸収させるため、放射線検知素材21を内部収容する収容手段としての機能を有するものである。この情報蓄積手段36は、放射線量を検出すべき各種設備の例えば複数箇所に任意に配置して、所定時間の線量検出に適用される。そして、放射線吸収量に応じて吸光度が変化した放射線感応物質21を目視により定性的に観察したり、上述した放射線読取手段22の装着治具24に装着して定量的に観察するものである。
【0060】
図5(a)は、情報蓄積手段36の一構成例を示している。この情報蓄積手段36は、開閉可能で、かつ閉状態にて外乱光の入射を遮蔽する機能を有する収容体37に、放射線検知素子21を着脱可能に収容する構成とされている。すなわち、収容体37は圧着シール式開口部38を有する袋体等として構成とされ、その内部に放射線検知素材21を着脱可能に収容し、例えば原子力プラントの放射線測定部等に任意に設置することができる。収容体37に収容する放射線検知素材21としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などで樹脂化したシート状、棒状、ブロック状等の各種形状の固体が適用できるほか、固体以外であっても、溶媒に溶かした液体やゲル状物質を光学的に透明な円筒等のセルの中に封入した構造として適用することができる。
【0061】
図5(b)は、情報蓄積手段36の他の構成例を示している。この情報蓄積手段36は、図5(a)に示したものと同様の収容体37の内部に、放射線に感応して光を生じる発光体、例えば蛍光を発するシンチレータ39を配置した構成とされている。これにより、放射線に対する感度を高めることができるようになっている。
【0062】
このような構成の情報蓄積手段36は、放射線検知素材21を収容体37内に収容して開口部38を閉じた状態で、情報読み出し手段22と異なる放射線測定部に配置することにより、放射線検知素材21への外乱光の入射を遮蔽した状態で放射線情報の蓄積を行うことができる。そして、この情報蓄積手段36により放射能情報を蓄積した放射線検知素材21を、所定期間経過後に収容体37から取出すことにより、目視観察することが可能となる。また、情報読み出し手段22の装着治具24に着脱可能に装着することも可能である。
【0063】
したがって、情報蓄積手段36を開封して放射線検知素材21を目視確認すれば、その場で定性的な放射線量を把握することができ、放射線感応物1を情報読み出し手段22に移し替えて計測すれば、定量的な放射線量を得ることも可能となり、光伝送媒体を不要とした測定が可能となる。これにより、情報蓄積をオフラインで行うことで、必ずしも全ての放射線検出部位に光ファイバ等の光伝送媒体を設置する必要がなく、従来のオンラインによる放射線検出装置と異なり、放射線検知素材の測定ポイントへの配置を簡便に行うことができる。
【0064】
第2実施形態(図6)
本実施形態では、前述した信号処理手段23により放射線検知素材21の定量的計測を行なう場合に、情報読み出し手段22に実際に放射線検知素材21が装着されているか否かを容易に確認して、確実に計測開始および停止を行なう機能について説明する。
【0065】
信号処理手段23は例えばオペレーションフロアに設置され、情報読み出し手段22は放射線検出位置近傍等、オペレーションフロアから離間した位置に設置される。そのため、実際に情報読み出し手段22に放射線検知素材21が装着されているか否かを何らかの手段によって確認した後、計測を開始し、放射線検知素材21が装着されていない場合には計測を停止する必要がある。この場合、装着治具に放射線検知素材21が装着されたか否かを判別する特別の装置を設けることは装置構成を複雑化し、好ましくない。
【0066】
そこで、本実施形態では、信号処理手段23の演算装置30により、レーザ受光装置29の光検出器からの出力信号レベルに基づいて放射線検知素子21の有無を判断するとともに、放射線検知素子21が情報読み出し手段23に設置されていると判別された場合に吸収線量の算出を開始し、設置されていないと判別された場合には、放射線感応物質21が受けた吸収線量の算出を停止する機能が備えられ、特別の装置を設ける必要をなくしている。
【0067】
図6(a),(b),(c)は、このような放射線検知素材21の有無を確認する機能を説明するための図である。
【0068】
図6(a)は第1実施形態と同様の放射線測定装置の全体構成を示している。この図では、情報読み出し手段23の装着治具24に、放射線検知素子21が装着されていない(この状態を(i)とする)。
【0069】
図6(b)も同様に、放射線測定装置の全体構成を示している。この図では、情報読み出し手段23の装着治具24に、放射線検知素子21が装着されている(この状態を(ii)とする)。
【0070】
図6(c)は、情報読み出し手段23に放射線検出素子21が無い状態(i)と、放射線検出素子21が有る状態(ii)とを判別する信号状態を示すグラフであり、縦軸に出力信号を表し、横軸に時間を示している。この図6(c)に示したように、放射線検出素子21が無い状態(i)で、レーザ照射装置28から出射されたレーザ光が途中で全く吸光されないため、レーザ光は反射体26で100%反射され、レーザ受光装置29に受信される。この結果、図6(c)に状態(i)として示したように、受光レベルが高い。これに対し、放射線検出素子21が有る状態(ii)では、レーザ照射装置28から出射されたレーザ光が図6(b)に示した放射線検知素材21を透過する際に吸光されるため、反射体26から反射されたレーザ光の強度は変化し、受光レベルが低下した状態となってレーザ受光装置29に受信される。
【0071】
本実施形態では、このような受光強度の差が演算装置30にとり込まれ、レーザ光強度の減少が無く最大出力レベルの状態(i)の場合には情報読み出し手段22に放射線検知素材21が無いと判断され、出力レベルが変化した状態(ii)の場合には情報読み出し手段22に放射線検知素材21が有ると判断される。
【0072】
また、演算装置30では、図6(c)に示す出力レベル(i),(ii)に応じて、放射線検知素子21が情報読み出し手段23に装着されていると判別された場合には、放射線感応物質21が受けた吸収線量の算出を開始し、設置されていないと判別された場合には、放射線感応物質21が受けた吸収線量の算出を停止する機能が備えられている。これらの機能による判断は、モニタによって観察することができ、作業者は開始吸光度算出の開始時刻又は停止時刻を把握することができる。
【0073】
本実施形態によれば、情報読み出し手段22への放射線検知素材21の有無を特別な装置、手法等を用いる必要なく、得られる信号レベルから容易に識別することが可能となり、吸光度の算出の開始又は停止を容易に把握することができる。
【0074】
第3実施形態(図7)
本実施形態では、複数の情報読み出し手段22に放射線検知素材21をそれぞれ装着し、それらの放射線検知素材21を順次に定量的測定する場合に、測定対象となる情報読み出し手段22ひいては各放射線検知素材21を確実に識別する方法について説明する。
【0075】
例えば、複数の異なる箇所に情報読み出し手段22が設置され、各情報読み出し手段22に装着された放射線検知素材21を1ヶ所の信号処理手段23で順次に信号処理する場合には、順次に送られる各情報読み出し手段22からの情報について、各情報読み出し手段22の設置場所や、それに装着された各放射線検知素材21を確実に把握する必要がある。
【0076】
そこで本実施形態では、放射線検知素材21である放射線感応物質とは異なる既知の吸光度を持つ識別用物質をそれぞれ各情報読み出し手段22毎に用意し、各識別用物質の吸光度データを保存しておき、定量的計測に際して当該各識別用物質を各情報読み出し手段22に先行して配置し、その識別用物質の吸光度を測定してデータ照合することで各情報読み出し手段22を特定し、それにより測定対象となる放射線検知素材21を識別した後に、放射線検知素材21の測定を行なうものである。
【0077】
以下、一例として2種類の放射線検知素材21a,21bを識別する方法について説明する。図7(a)は放射線測定装置の構成図である。図7(b)は作用を説明するための線図であり、縦軸に信号レベルを表し、横軸に時間を表している。
【0078】
図7(a)に示すように、この放射線計測装置では、1つの信号処理手段23に光ファイバ20を介して2ヶ所の情報読み出し手段22a,22bが接続されている。光ファイバ20は、情報読み出し手段22a,22bに対応して、切替手段40により分岐されている。各情報読み出し手段22a,22bには、それぞれ装着すべき放射線検知素材21a,21bが定められている。さらに、各情報読み出し手段22a,22bには、各放射線検知素材21a,21bと異なる吸光度X1,X2を持つ既知の識別用物質41a,41bが、それぞれ装着できるようになっており、これらの吸光度X1,X2は各識別用物質41a,41bとの対応関係のデータとして信号処理手段23に保存されている。
【0079】
放射線の定量的計測を行なう場合には、まず一方の放射線検知素材21aの装着に先立ち、予めこの放射線検知素材21aに対応する吸収線量X1の識別用物質41aを一方の情報読み出し手段22aに装着し、この識別用物質41aの吸収線量を測定する。
【0080】
この識別用物質41aの吸収線量を測定した場合には、図7(b)に示すように、この識別用物質41aの既知の吸収線量X1に基づくレベルの信号S1が検出される。この信号S1のデータは予め知られているので、この段階で得られた信号が一方の情報読み出し手段22aに対応する識別用物質41aであることが判別する。したがって、この後に一方の放射線検知素材21aを装着して計測された図7(b)の第2段の信号S2は、一方の放射線検知素材21aの吸光度を示すことが判別する。
【0081】
次に、他方の放射線検知素材21bの装着に先立ち、予めこの放射線検知素材21bに対応する吸収線量X2の識別用物質41bを他方の情報読み出し手段22bに装着し、この識別用物質41bの吸収線量を測定する。
【0082】
この識別用物質41bの吸収線量を測定した場合には、図7(b)に示すように、この識別用物質41bの既知の吸収線量X2に基づくレベルの信号S3が検出される。この信号S3のデータも予め知られているので、この第3段で得られた信号が他方の情報読み出し手段22bに対応する識別用物質41bであることが判別する。したがって、この後に他方の放射線検知素材21bを装着して計測された図7(b)の第4段の信号S4は、他方の放射線検知素材21bの吸光度を示すことが判別する。
【0083】
このように、本実施形態においては、各放射線検知素材21a,21bとは異なる吸光度X1,X2を持つ既知の識別用物質41a,41bを情報読み出し手段に配置して、予めその識別用物質41a,41bの吸収線量をそれぞれ測定することにより、続いて各情報読み出し手段22a,22bに配置される放射線検知素材21a,21bを確実に識別して定量的計測を行なうことができる。
【0084】
なお、本実施形態では一例として情報読み出し手段が2ヶ所に設置されている場合を説明したが、情報読み出し手段が3ヶ所以上に設置されている場合についても3以上の識別用物質を用いて適宜実施できることは勿論である。
【0085】
第4実施形態(図8)
本実施形態では、放射線計測装置における光軸ずれや、光検出器の性能劣化等に対する健全性を検証する方法について説明する。
【0086】
上述した放射線計測装置は使用により、また時間経過等により、放射線光軸のずれや光検出器の性能劣化を生じる可能性がある。このような光軸ずれや光検出器の性能劣化を生じた場合には、計測時の出力信号レベルの信頼性に問題が生じる。
【0087】
そこで、本実施形態では、検証用部材を情報読み出し手段22に配置することで光軸ずれや光検出器の性能劣化を検証するものである。
【0088】
図8(a)は放射線測定装置の構成図であり、図8(b1,b2),(c1,c2),(d1,d2)は3種の異なる検証用部材をそれぞれ直交する2方向断面にて示す説明図である。図8(e)は作用を説明するための線図であり、縦軸に相対出力を表し、横軸に時間を表している。
【0089】
図8(a)に示すように、放射線測定装置は情報読み出し手段22および信号処理手段23等を備え、これらの構成は第1実施形態で示したものと略同様である。情報読み出し手段22の装着治具24には、例えば四角柱状をなす中実構造の放射線検知素材21を一定位置に位置決めして着脱可能に装着できるようになっている。
【0090】
次に、図8(b1,b2),(c1,c2),(d1,d2)にそれぞれ示すように、各検証用部材42,43,44は、放射線検知素材21と同一外形の四角柱状とされ、情報読み出し手段22の装着治具24に、放射線検知素材21と同様に位置決めして着脱可能に装着できるようになっている。そして、これら各検証用部材42,43,44には、中心部に異なる径の貫通孔42a,43a,44aがそれぞれ穿設され、これらの貫通孔42a,43a,44aを光が透過できる中空構造とされている。
【0091】
図8(b1,b2)に示した第1の検証用部材42の貫通孔42aは、例えば光路25から照射されるレーザ光を80%通過し得る絞り機能を有するものとされている。また、図8(c1,c2)に示した第2の検証用部材43の貫通孔43aは同レーザ光を60%通過し得る絞り機能を有し、図8(d1,d2)に示した第3の検証用部材44の貫通孔44aは同レーザ光を40%通過し得る絞り機能を有するものとされている。
【0092】
本実施形態では、このような検証用部材42,43,44を装着治具24に装着し、放射線検知素材21の定量的計測時と略同様にレーザ光を照射して、透過する光量の計測を行ない、各検証用部材42,43,44に設定した絞り機能に対応する出力が計測されるか否かにより健全性判断を行なう。
【0093】
すなわち、図8(e)は、検証用部材42,43,44を放射線読み出し部22の装着治具24に順次に装着してレーザ光を照射した場合の相対出力と時間との関係を示している。この場合、放射線計測装置に光軸ずれや光検出器の性能劣化等の健全性に関する問題が無いときには、図8(e)に示したように、照射したレーザ光の出力を100とした場合、第1の検証用部材42では相対出力80%の光量が検出される。また、第2の検証用部材43では相対出力60%の光量が検出され、第3の検証用部材44では相対出力40%の光量が検出される。
【0094】
これに対し、放射線計測装置に光軸ずれや光検出器の性能劣化等の健全性に関する問題がある場合には、図8(e)に示したような設定値通りの光量が検出されずに減衰する等の現象が生じる。
【0095】
このように、本実施形態によれば、放射線読み出し部22の装着治具24に、レーザ光の光軸に沿う光量の絞り機能を有する検証用部材42,43,44を装着し、この検証用部材42,43,44にレーザ光を照射することにより、各検証用部材の絞り量に基づくレーザ光量が検出されるか否かを判断し、光軸ずれまたは光検出性能劣化等の放射線計測装置の健全性を検証することができる。
【0096】
なお、上述した検証用部材42,43,44に設定した光の絞り量は一例であって、適宜の値に設定することができるのは勿論である。
【0097】
また、本実施形態では絞り量が異なる値に固定された複数の検証用部材42,43,44を適用したが、図示しないが例えば可変絞り機構を備えた1個の検証用部材を適用する等の種々の変更も可能である。
【0098】
【発明の効果】
以上で説明したように、本発明に係る放射線計測装置によれば、オフライン計測が可能で、多数の測定ポイントと光照射部および光測定部とを光ファイバなどの光伝送媒体で全て接続する必要なく簡便な構成により放射線計測を行なうことができ、しかも定量的計測に加えて計測者の目視による定性的な計測も可能で放射線吸収線量の判断が容易に行なえる等の効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態による放射線計測装置を示す構成図。
【図2】本発明の第1実施形態による放射線計測装置を示す構成図。
【図3】(a),(b),(c)は本発明の第1実施形態による放射線計測装置の放射線検知素子を示す構成図。
【図4】(a),(b)は本発明の第1実施形態による放射線計測装置の装着治具を示す構成図。
【図5】(a),(b)は本発明の第1実施形態による放射線計測装置の情報蓄積手段を示す構成図。
【図6】(a),(b),(c)は本発明の第2実施形態による放射線計測装置の放射線検知素材の有無確認方法を示す説明図。
【図7】(a),(b)は本発明の第3実施形態による放射線計測装置の放射線検知素材の識別方法を示す説明図。
【図8】(a),(b1),(b2),(c1),(c2),(d1),(d2),(e)は本発明の第4実施形態による放射線計測装置の検証方法を示す説明図。
【図9】従来の輝尽性発光体を用いた放射線計測装置を示す構成図。
【図10】従来の放射線計測装置を示す構成図。
【符号の説明】
19…光分岐器、20…光ファイバ、21…放射線検知素材、22…情報読み出し手段、23…信号処理手段、24…装着治具、25…光路、26…反射体、27…外乱光遮蔽壁、28…レーザ照射装置、29…レーザ受光装置、30…演算装置、32…溝、33…シート材、34…窓孔、35…台座、36…情報蓄積手段、37…収容体、38…開口部、39…シンチレータ、40…切替換手段、41a,41b…識別用物質、42,43,44…各検証用部材。
Claims (9)
- 放射線の吸収線量に応じて吸光度が変化する放射線感応物質を適用した放射線検知素材と、
放射線を吸収した前記放射線検知素材を着脱可能に装着する装着治具、この装着治具に装着した前記放射線検知素材に光を透過させる光路、およびこの光路以外からの外乱光の入射を遮蔽する外乱光遮蔽壁を有する情報読み出し手段と、
前記放射線検知素材にその吸光度が変化する波長帯のレーザ光を前記光路に沿って照射するレーザ照射装置、前記放射線検知素材を透過したレーザ光を光検出器により受光して電気信号に変換するレーザ受光装置、およびこのレーザ受光装置からの出力信号に基づいて前記放射線検知素材が受けた吸収線量を算出する演算装置とを有する信号処理手段と、
を備えたことを特徴とする放射線計測装置。 - 前記放射線検知素子は、複数の放射線感応物質を光学的に密着して積層した放射線感応物質積層体として構成したことを特徴とする請求項1記載の放射線計測装置。
- 前記放射線検知素子は、放射線感応物質と、放射線に感応して光を生じる発光体とを含むことを特徴とする請求項1記載の放射線計測装置。
- 前記放射線検知素子は、放射線感応物質の外周の全てまたは一部に、放射線に感応して光を生じる発光体を光学的に密着して備えていることを特徴とする請求項1記載の放射線計測装置。
- 前記情報読み出し手段の装着治具は、前記放射線検知素子をレーザ光の光路位置に位置決めする溝を有することを特徴とする請求項1記載の放射線計測装置。
- 前記装着治具は、前記放射性検知素子を挟持し得るバインダとして構成されていることを特徴とする請求項1記載の放射線計測装置。
- 開閉可能で、かつ閉状態にて外乱光の入射を遮蔽する機能を有する収容体に、前記放射線検知素子を着脱可能に収容して前記情報読み出し手段と異なる場所に設置し得る情報蓄積手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の放射線計測装置。
- 前記情報蓄積手段の収容体の内部に、放射線に感応して光を生じる発光体が設けられていることを特徴とする請求項7記載の放射線計測装置。
- 前記信号処理手段の演算装置は、前記放射線検知素子の情報読み出し手段への設置の有無を、前記レーザ受光装置の光検出器からの出力信号レベルに基づいて判別するとともに、前記放射線検知素子が前記情報読み出し手段に設置されていると判別された場合に前記放射線感応物質が受けた吸収線量の算出を開始し、設置されていないと判別された場合に前記放射線感応物質が受けた吸収線量の算出を停止する機能を有することを特徴とする請求項1記載の放射線計測装置。
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-
2002
- 2002-12-10 JP JP2002358231A patent/JP2004191134A/ja active Pending
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