JP2004191100A - レーダ受信装置及び信号検出方法 - Google Patents

レーダ受信装置及び信号検出方法 Download PDF

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Abstract

【課題】パルス諸元を高感度で検出することができるレーダ受信装置及び信号検出方法を提供する。
【解決手段】受信信号の帯域を制限するフィルタ3と、フィルタの出力信号をデジタル信号に変換するA/D変換器4と、デジタル信号を所定の蓄積周期で蓄積する信号蓄積器5と、蓄積された信号データについてFFTを行うFFT処理器6と、FFT処理器からの出力データに基づいてキャリア周波数を検出する信号検出器7と、キャリア周波数に基づいてデジタル検波を行うデジタルフィルタ8及びデジタル検波器9と、所定のパルス諸元を検出する到来時刻検出器10及びパルス諸元検出器11により構成される。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーダ受信装置及び信号検出方法に係り、さらに詳しくは、パルス信号を受信、検波して、パルス諸元を検出するレーダ受信装置及び信号検出方法の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、レーダ受信装置は、アンテナで受信した受信信号を増幅器により増幅している。この増幅信号は、その後、検波器で検波され、ビデオ信号に変換される。このビデオ信号の振幅を所定のスレッショルドレベルと比較して、パルス諸元(キャリア周波数、パルス到来時刻、パルス振幅及びパルス幅)の検出が行われる。
【0003】
ところが、受信信号の増幅過程において熱雑音が増幅信号に加わる。その後、増幅信号は、フィルタにより帯域が制限されているが、通過帯域内の熱雑音はフィルタを通過してしまう。このため、熱雑音を含んだ状態での検波となり、ビデオ信号がノイズに埋もれてしまってパルス諸元の検出が困難な場合があった。
【0004】
従来のレーダ受信装置としては、例えば、特許文献1又は2に記載のものがある。特許文献1に記載の目標探知装置は、送信源からの直接波、目標の反射波を受信アンテナを介して受信器により受信し、ローカル発振器及び復調器を用いて上記各々の信号を復調し、相関処理器により相関を行い、FFT処理器により周波数成分を分析した後、目標判定器にて別に定めるスレッショルドレベルを越える信号を目標として判定し、表示器により表示するように構成される。
【0005】
また、特許文献2に記載の雑音除去システムは、次のように構成される。2つの受信器で入力信号を受信し、その受信信号を相互相関係数測定手段へ送る。測定手段では、2つの受信器の受信間隔をパラメータとした雑音の相互相関係数を測定する。相関長算出手段は、相互相関係数から雑音の空間に関する相関長を求める。受信間隔設定手段は、相関長を用い、分析周波数帯域及び雑音レベルの減衰率に応じた受信間隔を設定し、受信器間隔制御手段によって2つの受信器の間隔を調整させる。この受信器の受信信号間のクロススペクトルをクロススペクトル算出手段で算出する。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−232213号公報
【特許文献2】
特開平5−252064号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述したような従来のレーダ受信装置では、ビデオ信号がスレッショルドレベルを超えるか否かによってビデオ信号とノイズを判別している。一般的に受信装置の受信感度は、4つのパラメータ、Nf(ノイズ指数)、KT(K:ボルツマン定数、T:絶対温度)、Bw(バンド幅)、SN(信号雑音比)の積に反比例するので、フィルタのバンド幅が広くなると、検出の感度が低下するという問題があった。
【0008】
このため、誤検出を防止しようとすれば、検出の感度を上げなければならないが、そのためにはバンド幅を狭くしなければならず、広い周波数帯域において高感度でパルス信号を検出できるレーダ受信装置を実現することができなかった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、パルス諸元を高感度で検出することができるレーダ受信装置及び信号検出方法を提供することを目的としている。また、広い周波数帯域においてパルス信号を検出することができるレーダ受信装置及び信号検出方法を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明によるレーダ受信装置は、受信信号の帯域を制限するフィルタと、フィルタの出力信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、デジタル信号を所定の蓄積周期で蓄積する信号蓄積器と、蓄積された信号データについてFFTを行うFFT処理器と、FFT処理器からの出力データに基づいてキャリア周波数を検出する周波数検出器と、キャリア周波数に基づいてデジタル検波を行い、所定のパルス諸元を検出するパルス検出器により構成される。
【0011】
この様な構成によれば、蓄積された信号データについてFFTを行って、FFTによるスペクトルの平準化を図ることができる。これにより、時間軸上で信号成分の積み上げ効果を得ることができ、相関性のない雑音成分の圧縮を行うことができる。
【0012】
本発明による信号検出方法は、受信信号の帯域を制限するフィルタの出力信号を所定の蓄積周期で蓄積する信号蓄積ステップと、蓄積された信号データについてFFTを行うFFT処理ステップと、FFTの処理結果に基づいてキャリア周波数を検出する周波数検出ステップと、キャリア周波数に基づいてデジタル検波を行い、所定のパルス諸元を検出するパルス検出ステップからなる。
【0013】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1によるレーダ受信装置の一構成例を示したブロック図である。本実施の形態のレーダ受信装置100は、受信したパルス信号を所定の蓄積周期で蓄積し、蓄積した信号データについてFFTを行うことによりレーダ信号の検出精度を向上させている。
【0014】
レーダ受信装置100は、受信アンテナ1、増幅器2、フィルタ3、A/D変換器4、信号蓄積器5、FFT処理器6、信号検出器7、デジタルフィルタ8、デジタル検波器9、到来時刻検出器10、パルス諸元検出器11により構成される。
【0015】
受信アンテナ1は、パルス信号の受信を行う電波受信手段であり、受信信号は増幅器2へ出力される。増幅器2は、受信アンテナ1からの受信信号を増幅する回路であり、増幅信号はフィルタ3へ出力される。ここで、増幅信号は、RF信号であっても良いし、必要に応じて中間周波数帯の信号に変換されたものであっても良い。
【0016】
フィルタ3は、増幅器2からの増幅信号について周波数帯域を制限する回路である。フィルタ3は所定の通過帯域を有し、この通過帯域内にある信号成分のみを通過させる。帯域制限された信号はA/D変換器4へ出力される。
【0017】
A/D変換器4は、フィルタ3からの信号をデジタル信号に変換する回路である。この変換は所定のサンプリング速度で行われ、デジタル信号は信号蓄積器5へ出力される。例えば、サンプリング速度はフィルタ3のバンド幅の2倍程度に設定される。
【0018】
信号蓄積器5は、A/D変換器4からのデジタル信号を所定の蓄積周期Aで蓄積する記憶手段である。蓄積された信号データは蓄積周期AごとにFFT処理器6へ出力される。また、信号蓄積器5は、蓄積した信号データをデジタルフィルタ8へ出力する。
【0019】
FFT処理器6は、信号蓄積器5からの信号データについてFFT(高速フーリエ変換)を行う演算回路である。FFTにより信号に含まれる周波数成分ごとのパワースペクトルが得られる。蓄積周期Aにおいて蓄積された信号データについてFFTを行うことにより、パワースペクトルが平準化される。すなわち、時間軸上で信号成分が積み上げられる一方、相関性のない雑音成分は相対的に圧縮される。この様な処理結果が信号検出器7へ出力される。
【0020】
信号検出器7は、FFT処理器6からの出力データに基づいて、パルス信号のキャリア周波数を検出する演算回路である。このキャリア周波数の検出は、信号パワーを所定のスレッショルドレベルと比較することにより行われる。スレッショルドレベルを超える信号が検出されれば、パルス信号が到来したものとし、信号の周波数成分がキャリア周波数として判別される。
【0021】
信号検出器7により検出されたキャリア周波数データはデジタルフィルタ8及びパルス諸元検出器11へ出力される。また、信号検出器7は、パルス信号の検出時刻を信号データの蓄積開始の時刻とする検出時刻データを到来時刻検出器10へ出力する。
【0022】
デジタルフィルタ8は、信号蓄積器5からの信号データについて、キャリア周波数データに基づいて帯域制限する回路である。デジタルフィルタ8は所定の通過帯域を有し、通過帯域の中心周波数が変更自在になっている。ここで、通過帯域の中心周波数が信号検出器7により検出されたキャリア周波数に等しくなるように、通過帯域が自動的に調整される。この通過帯域の自動調整による帯域制限によって、ノイズが効果的に除去される。帯域制限された信号データはデジタル検波器9へ出力される。
【0023】
デジタル検波器9は、デジタルフィルタ8からの信号データについてデジタル検波を行う回路である。このデジタル検波は、パルス信号の立ち上がり及び立ち下がりを検出することにより行われ、デジタル検波によってパルス信号の包絡線が判別される。デジタル検波された信号データは到来時刻検出器10へ出力される。
【0024】
到来時刻検出器10は、デジタル検波器9からの信号データと、パルス信号の検出時刻データに基づいて、パルス信号の到来時刻の検出を行っている。この到来時刻の検出は、デジタル検波器9により検出されたパルス信号の包絡線から蓄積周期Aにおけるパルス信号の立ち上がりまでの時間を判別することにより行われる。また、蓄積周期Aにおけるパルス信号の立ち下がりまでの時間の判別についても、立ち上がり時間の判別と同様に行われる。
【0025】
到来時刻検出器10により検出された立ち上がり時間と、信号検出器7により検出されたパルス信号の検出時刻に基づいて、パルス信号の到来時刻が判別される。信号データ及び検出された到来時刻データはパルス諸元検出器11へ出力される。
【0026】
パルス諸元検出器11は、到来時刻検出器10からの信号データ及び到来時刻データと、信号検出器7からのキャリア周波数データに基づいて、所定のパルス諸元の検出を行う演算回路である。このパルス諸元の検出は、信号データにおけるパルス信号の包絡線からパルス信号の最大振幅及びパルス幅を判別することにより行われる。
【0027】
パルス諸元検出器11により検出されたパルス最大振幅及びパルス幅と、到来時刻検出器10により検出されたパルス到来時刻と、信号検出器7により検出されたキャリア周波数が、パルス諸元として検出される。
【0028】
図2は、図1のレーダ受信装置において得られた周波数成分についてのパワースペクトルの一例を示した説明図である。FFT処理器6により得られたパワースペクトルは、時間軸上で信号成分が積み上げられる。この積み上げ効果により、パルス信号のキャリア周波数が一定の場合、キャリア周波数の検出が容易になる。このため、キャリア周波数を高感度で検出することができる。
【0029】
信号検出器7において信号パワーがスレッショルドレベルと比較され、スレッショルドレベルを超えるピークパワーPを示す周波数成分Fがキャリア周波数として検出される。
【0030】
図3は、図1のレーダ受信装置において受信された受信信号の一例を示した説明図である。受信信号が入力されると、信号蓄積器5において信号は蓄積周期Aごとに蓄積される。この蓄積された信号データについてパルス諸元の検出が行われる。
【0031】
例えば、図3に示す受信信号の場合、時刻tから時刻tまでの蓄積周期Aごとの信号データと、時刻tから時刻tまでの蓄積周期Aごとの信号データについては、FFTによるパワースペクトルにおいてピークパワーがスレッショルドレベルを超えないので、パルス信号は検出されない。時刻tから時刻tまでの間の信号データについては、ピークパワーがスレッショルドレベルを超えるので、パルス信号が検出される。
【0032】
図4は、図1のレーダ受信装置においてデジタル検波された信号データの一例を示した説明図であり、図4(a)には、パルス信号の立ち上がりを含む蓄積周期が示され、図4(b)には、パルス信号の立ち下がりを含む蓄積周期が示されている。デジタル検波によりパルス信号の立ち上がり及び立ち下がりが検出され、検出結果に基づいてパルス到来時刻及びパルス幅が判別される。
【0033】
例えば、図4(a)に示すパルス信号の立ち上がりから立ち上がり時間Bが判別され、図4(b)に示すパルス信号の立ち下がりから立ち下がり時間Cが判別される。
【0034】
信号検出器7により検出されたパルス信号の検出時刻は時刻tであるから、t+Bがパルス信号の到来時刻として到来時刻検出器10によって検出される。また、(A−B)+3A+Cがパルス幅としてパルス諸元検出器11によって検出される。
【0035】
図5のステップS101〜S108は、図1のレーダ受信装置における受信処理の一例を示したフローチャートである。受信アンテナ1からの受信信号は、増幅器2において増幅される(ステップS101)。主にこのとき、増幅信号に熱雑音が加わる。増幅信号は、その後、フィルタ3によって帯域制限される(ステップS102)。
【0036】
帯域制限された信号は、A/D変換器4によってデジタル信号に変換され、信号蓄積器5に蓄積される(ステップS103)。蓄積周期Aの間に蓄積された信号データはFFT処理器6に出力され、FFTが行われる(ステップS104)。このとき、蓄積された信号データについてFFTが行われるので、時間的に相関性のない雑音成分は圧縮される。
【0037】
そして、信号検出器7においてパルス信号の検出が行われる(ステップS105)。このパルス信号の検出は、スレッショルドレベルを超える信号が判別されるまで蓄積周期Aごとに繰り返して行われ、パルス信号が検出されると、ピークパワーからキャリア周波数が検出される(ステップS106)。このとき、信号データの蓄積開始時刻がパルス信号の検出時刻となる。
【0038】
信号蓄積器5に蓄積された信号データは、デジタルフィルタ8に出力され、検出されたキャリア周波数に基づいて帯域制限された後、デジタル検波器9によってデジタル検波される(ステップS107)。このとき、キャリア周波数を中心周波数とする帯域に制限することができるので、ノイズを効果的に除去することができる。
【0039】
デジタル検波された信号データは、その後、到来時刻検出器10及びパルス諸元検出器11に出力され、出力データと、信号検出器7によって検出されたキャリア周波数及びパルス信号の検出時刻に基づいて、パルス諸元が検出される(ステップS108)。
【0040】
本実施の形態によれば、受信信号を信号蓄積器5に蓄積し、蓄積された信号データについてFFTを行っているので、スペクトルが平準化され、ノイズを除去することができる。このため、ノイズに埋もれたパルス信号であっても高感度で検出することができる。
【0041】
実施の形態2.
図6は、本発明の実施の形態2によるレーダ受信装置の構成例を示したブロック図である。本実施の形態では、蓄積周期ごとのFFTによる出力データについて自己相関処理を行うことにより、さらに受信感度を向上させている。
【0042】
図1のレーダ受信装置100(実施の形態1)と比較すれば、本実施の形態のレーダ受信装置200は、自己相関処理器21を備えている点が異なる。この自己相関処理器21は、蓄積周期AごとのFFT処理器6からの出力データについて、自己相関処理を行う演算回路である。
【0043】
自己相関処理器21は、蓄積周期AごとにFFT処理器6から出力されるフーリエ変換データをバッファに順次に蓄積し、蓄積したフーリエ変換データ間において自己相関処理を行う。この自己相関処理は、現在のフーリエ変換データと過去のフーリエ変換データを比較し、周波数成分ごとのパワースペクトルにおけるピークパワーの周波数成分が同一か否かを判別することにより行われる。
【0044】
ピークパワーの周波数成分が同一であると判別されると、処理データが信号検出器7へ出力される。信号検出器7では、自己相関処理器21による処理データに基づいて、キャリア周波数の検出が行われる。
【0045】
本実施の形態によれば、フーリエ変換データ間における自己相関処理により、ノイズに妨げられることなく、パルス信号を高感度で検出することができる。
【0046】
実施の形態3.
図7は、本発明の実施の形態3によるレーダ受信装置の構成例を示したブロック図である。本実施の形態では、複数の増幅器2と、各増幅器に対応する複数の受信処理部30とを備えたレーダ受信装置を使用し、各受信処理部30からの出力データについてクロススペクトル処理を行うことにより、高感度受信を可能にしている。
【0047】
本実施の形態のレーダ受信装置300は、2以上の増幅器2と、2系統以上の受信処理部30を備えている。各受信処理部30は、フィルタ3、A/D変換器4、信号蓄積器5及びFFT処理器6により構成され、増幅器2に対応して設けられている。また、レーダ受信装置300は、各受信処理部30のFFT処理器6からの出力データについて、クロススペクトル処理を行う複数のクロススペクトル処理器31を備えている。その他の構成は、図1のレーダ受信装置100と同様である。
【0048】
すべての増幅器2には、同一の受信アンテナ1からの受信信号が入力される。各受信処理部30のフィルタ3は、共通の通過帯域を有している。また、クロススペクトル処理器31は、蓄積周期Aにおいて各FFT処理器6から出力されるフーリエ変換データ間でクロススペクトル処理を行う演算回路である。
【0049】
クロススペクトル処理器31は、2つの受信処理部30ごとに1つずつ設けられており、2つの各受信処理部30におけるFFT処理器6からの出力データが、対応するクロススペクトル処理器31に入力される。また、各クロススペクトル処理器31からの出力データは、出力データについてさらにクロススペクトル処理を行うクロススペクトル処理器31に入力される。
【0050】
クロススペクトル処理は、各FFT処理器6から出力されるフーリエ変換データ間のクロススペクトルを算出することにより行われ、周波数ごとのパワースペクトルにおいて雑音成分が低減される。
【0051】
クロススペクトル処理器31による処理結果は、信号検出器7へ出力され、処理結果に基づいてキャリア周波数の検出が行われる。また、各受信処理部30における信号蓄積器5の中の1つから蓄積された信号データがデジタルフィルタ8に出力される。
【0052】
受信信号に加わる雑音成分は受信処理部30ごとに異なり、受信処理部30間において相関性がない。一方、パルス信号成分については受信処理部30間で相関性がある。このため、本実施の形態によれば、受信処理部30間のクロススペクトル処理によってノイズのみを効果的に除去することができる。
【0053】
実施の形態4.
図8は、本発明の実施の形態4によるレーダ受信装置の構成例を示したブロック図である。図7のレーダ受信装置300(実施の形態3)と比較すれば、本実施の形態のレーダ受信装置400は、増幅器2ごとに受信アンテナ1が設けられ、方位検出を行う方位検出器41が設けられている点で異なる。
【0054】
レーダ受信装置400は、各増幅器2に対応させて2以上の受信アンテナ1が設けられ、各受信アンテナ1で受信された受信信号が、対応する増幅器2にそれぞれ入力される。従って、各受信処理部30では、異なる受信アンテナ1で受信された受信信号についてFFTが行われ、各クロススペクトル処理器31では、異なる受信アンテナ1で受信された受信信号についてクロススペクトルが求められる。
【0055】
受信信号中に含まれるノイズには、増幅処理に伴う熱雑音のように受信後に混入したノイズだけでなく、受信アンテナ1に到来するまでの伝播空間において混入したノイズもある。伝搬空間で混入するノイズは、伝搬経路ごとに異なるため、同一のパルス信号を受信した場合であっても、異なる受信アンテナ1で受信すれば、伝搬経路の相違により受信信号に含まれるノイズは相違する。
【0056】
このため、2以上の受信アンテナ1を使用し、各受信アンテナ1での受信信号についてクロススペクトル処理を行えば、受信前に混入したノイズであっても、受信アンテナ1間で相関性がないものについてはクロススペクトル処理によって抑圧することができる。従って、信号検出器7は、各クロススペクトル処理器31の出力データに基づいてキャリア周波数を検出することにより、高感度で検出を行うことができる。
【0057】
また、方位検出器41は、各クロススペクトル処理器31で求められたクロススペクトルに基づいて、パルス信号の到来方位を検出している。同じレーダ信号を2以上の受信アンテナ1で受信した場合、各受信信号には、受信アンテナ1の設置位置に応じて位相差が生じる。方位検出器41は、この位相差に基づいてパルス信号の到来方位を算出している。
【0058】
本実施の形態によれば、2以上の受信アンテナ1を用い、各受信アンテナ1での受信信号についてクロススペクトル処理を行うことにより、伝播空間を経て各受信アンテナ1に到来するまでに加わるノイズを抑圧することができる。従って、より高感度の受信装置を得ることができる。また、2以上の受信アンテナ1を用いることにより方位検出を行うことができる。
【0059】
実施の形態5.
図9は、本発明の実施の形態5によるレーダ受信装置の構成例を示したブロック図である。本実施の形態のレーダ受信装置500は、蓄積周期Aごとの信号データについてFFTを行う2以上のFFT処理器6と、各FFT処理器6からの出力データについてクロススペクトル処理を行うクロススペクトル処理器31を備え、信号蓄積器51がA/D変換器4からのデジタル信号を蓄積周期Aごとに蓄積する2以上のメモリ52を備えている点が、図1のレーダ受信装置100と異なる。
【0060】
A/D変換器4からのデジタル信号は、信号蓄積器51のメモリ52に順次に蓄積される。各メモリ52に蓄積された信号データは、対応するFFT処理器6へ出力される。各FFT処理器6による出力データは、すべてクロススペクトル処理器31に入力され、各メモリ52の信号データ間のクロススペクトルが算出される。
【0061】
本実施の形態によれば、実施の形態3と同様に、クロススペクトル処理によってノイズを効果的に除去することができることに加えて、増幅器2及び受信処理部30が1系統であるので、受信装置を簡素化することができる。
【0062】
実施の形態6.
図10は、本発明の実施の形態6によるレーダ受信装置の構成例を示したブロック図である。この受信レーダ装置600は、図7のレーダ受信装置300と比較すれば、複数のクロススペクトル処理器31が、2つの受信処理部30ごとに出力データについてクロススペクトル処理を行って、求められたクロススペクトルが信号検出器7に入力されている点で異なる。
【0063】
各フィルタ61〜6nは、通過帯域が互いに異なるとともに、受信信号が少なくとも2つのフィルタを通過するように各通過帯域の一部が重複している。ここでは、各フィルタ61〜6nの通過帯域幅Bwとし、その中心周波数をBw/2ずつ異ならせて、2つのフィルタ間で順次に帯域幅の1/2が重複しているものとする。すなわち、各フィルタ61〜6nにおける通過帯域の中心周波数f〜fは、f,f=f+Bw/2,…,f=f+(n−1)Bw/2と表される。
【0064】
各クロススペクトル処理器31は、2つの受信処理部30の出力データについて、クロススペクトル処理を行っている。フィルタ61〜6nの通過帯域が重複する2つの受信処理部30の出力データが、1つのクロススペクトル処理器31に入力され、各クロススペクトル処理器31で求められたクロススペクトルは、信号検出器7に対して出力される。
【0065】
あるパルス信号を受信した場合、当該パルス信号のキャリア周波数がレーダ受信装置600の受信帯域であれば、いずれか2つのフィルタ61〜6nを通過することができる。従って、これらの2つのフィルタ61〜6nを有する受信処理部30からの出力データが入力されているクロススペクトル処理器31において、ノイズ成分を低減された受信信号が出力される。
【0066】
信号検出部7には、各クロススペクトル処理器31の出力データが入力され、いずれかの出力データからキャリア周波数を検出する。デジタルフィルタ8には、各受信処理部30の信号蓄積器5に蓄積された信号データが入力されており、信号検出器7において、キャリア周波数が検出された受信処理部30からの信号データに対し帯域制限を行って、デジタル検波器9へ出力する。
【0067】
この様にして、フィルタ61〜6nの通過帯域を、その一部を重複させて異ならせることによって、各フィルタ61〜6nの帯域幅を狭くするとともに、受信帯域としては広い周波数範囲をカバーすることができる。受信感度は、帯域幅Bwに比例するため、受信帯域を狭めることなく受信感度を向上させることができる。また、A/D変換器4におけるサンプリング速度は、サンプリング定理を満たすように帯域幅の2倍にする必要がある。このため、各フィルタ61〜6nの帯域幅を狭くすることによって、A/D変換器4におけるサンプリング速度を低減することができる。
【0068】
本実施の形態によれば、フィルタ61〜6nの通過帯域を一部を重複させて異ならせることにより、実施の形態3と比較して、広い周波数帯域において高感度でパルス信号を検出することができる。また、同じ周波数帯域において検出を行う場合には、フィルタ61〜6nごとのバンド幅を狭くすることができ、受信感度を向上させることができる。また、フィルタ61〜6nごとのバンド幅を狭くすることができるので、A/D変換器4におけるサンプリング速度を低く設定することが可能となる。これにより、受信装置の簡素化を図ることができる。
【0069】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明によるレーダ受信装置及び信号検出方法によれば、パルス諸元を高感度で検出することができる。また、広い周波数帯域において高感度でパルス信号を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1によるレーダ受信装置の一構成例を示したブロック図である。
【図2】図1のレーダ受信装置において得られた周波数成分についてのパワースペクトルの一例を示した説明図である。
【図3】図1のレーダ受信装置において受信された受信信号の一例を示した説明図である。
【図4】図1のレーダ受信装置においてデジタル検波された信号データの一例を示した説明図である。
【図5】図1のレーダ受信装置における受信処理の一例を示したフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態2によるレーダ受信装置の構成例を示したブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態3によるレーダ受信装置の構成例を示したブロック図である。
【図8】本発明の実施の形態4によるレーダ受信装置の構成例を示したブロック図である。
【図9】本発明の実施の形態5によるレーダ受信装置の構成例を示したブロック図である。
【図10】本発明の実施の形態6によるレーダ受信装置の構成例を示したブロック図である。
【符号の説明】
1 受信アンテナ、2 増幅器、3,61〜6n フィルタ、
4 A/D変換器、5,51 信号蓄積器、6 FFT処理器、
7 信号検出器、8 デジタルフィルタ、9 デジタル検波器、
10 到来時刻検出器、11 パルス諸元検出器、21 自己相関処理器、
30 受信処理部、31 クロススペクトル処理器、41 方位検出器、
52 メモリ

Claims (14)

  1. 受信信号の帯域を制限するフィルタと、フィルタの出力信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、デジタル信号を所定の蓄積周期で蓄積する信号蓄積器と、蓄積された信号データについてFFTを行うFFT処理器と、FFT処理器からの出力データに基づいてキャリア周波数を検出する周波数検出器と、キャリア周波数に基づいてデジタル検波を行い、所定のパルス諸元を検出するパルス検出器を備えたことを特徴とするレーダ受信装置。
  2. 上記パルス検出器は、信号蓄積器に蓄積された信号データからパルスの立ち上がり及び立ち下がりを検出することによりデジタル検波を行うことを特徴とする請求項1に記載のレーダ受信装置。
  3. 蓄積周期ごとにFFT処理器から出力される出力データについて自己相関処理を行う自己相関処理器を備え、上記周波数検出器は、自己相関処理器による処理結果に基づいてキャリア周波数を検出することを特徴とする請求項1に記載のレーダ受信装置。
  4. 受信信号の増幅を行う2以上の増幅器と、
    上記フィルタ、A/D変換器、信号蓄積器及びFFT処理器からなり、各増幅器に対応する2系統以上の受信処理部と、
    各FFT処理器からの出力データについてクロススペクトル処理を行うクロススペクトル処理器を備えたことを特徴とする請求項1に記載のレーダ受信装置。
  5. 各受信処理部のフィルタは、共通の通過帯域を有することを特徴とする請求項4に記載のレーダ受信装置。
  6. 上記増幅器には、同一の受信アンテナからの受信信号が入力されることを特徴とする請求項4又は5に記載のレーダ受信装置。
  7. 各受信処理部のフィルタは、互いに通過帯域が1/2ずつ重複していることを特徴とする請求項4又は6に記載のレーダ受信装置。
  8. 上記増幅器に対応する2以上の受信アンテナを備え、各受信アンテナからの受信信号が増幅器に入力されることを特徴とする請求項4又は5に記載のレーダ受信装置。
  9. 上記クロススペクトル処理器による処理結果に基づいて方位検出を行う方位検出器を備えたことを特徴とする請求項8に記載のレーダ受信装置。
  10. 蓄積周期ごとのデジタル信号についてFFTを行う2以上のFFT処理器と、各FFT処理器からの出力データについてクロススペクトル処理を行うクロススペクトル処理器を備えたことを特徴とする請求項1に記載のレーダ受信装置。
  11. 受信信号の帯域を制限するフィルタの出力信号を所定の蓄積周期で蓄積する信号蓄積ステップと、蓄積された信号データについてFFTを行うFFT処理ステップと、FFTの処理結果に基づいてキャリア周波数を検出する周波数検出ステップと、キャリア周波数に基づいてデジタル検波を行い、所定のパルス諸元を検出するパルス検出ステップからなることを特徴とする信号検出方法。
  12. 蓄積周期ごとのFFTの処理結果について自己相関処理を行う自己相関処理ステップを備え、上記周波数検出ステップにおいて自己相関処理の処理結果に基づいてキャリア周波数が検出されることを特徴とする請求項11に記載の信号検出方法。
  13. 上記信号蓄積ステップにおいて、受信信号の増幅を行う2以上の増幅器ごとに増幅信号を蓄積し、
    上記FFT処理ステップにおいて各増幅信号ごとにFFTを行い、
    各増幅信号に関するFFTの処理結果についてクロススペクトル処理を行うクロススペクトル処理ステップを備えたことを特徴とする請求項11に記載の信号検出方法。
  14. 蓄積周期ごとのデジタル信号を順次に記憶する2以上のメモリに対応するFFTの処理結果についてクロススペクトル処理を行うクロススペクトル処理ステップを備えたことを特徴とする請求項11に記載の信号検出方法。
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