JP2004190978A - 熱輸送装置及び電子デバイス - Google Patents
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Abstract
【解決手段】熱輸送装置1において、蒸発部2と凝縮部3が、液相路4及び気相路5で繋がっている。凝縮部3の放熱部又は該凝縮部に設けられた放熱手段6に対して、空気を送風して冷却する送風手段7を設け、強制送風によって放熱能力を高める。そして、作動流体の輸送ポンプを液相路に設けた。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、蒸発部と凝縮部を備えた相変化循環型の熱輸送装置等において、放熱部に対する強制送風を利用した冷却技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
放熱や冷却用として、ヒートパイプ型や、一体式あるいは分離式の相変化循環型の熱輸送デバイス、冷却水循環型の冷却デバイス等、各種の構成形態をもった装置が知られている。
【0003】
また、近時における電子デバイス技術及びマイクロマシン技術の発達により、コンパクトなデバイスを作成することが可能となり、半導体製造プロセス等を利用した、所謂MEMS(Micro‐Electro‐Mechanical Systems)技術が着目されている。そして、このMEMS技術を熱輸送装置に用いる研究が行われている。この背景には、小型化で高性能な電子機器に適した熱源の冷却システムが求められていること及び処理速度等の性能向上が著しいCPU(中央処理装置)等のデバイスで発生する熱を効率良く放熱する必要性等が挙げられる。
【0004】
キャピラリポンプループ(CPL:Capillary pumped loops)を用いた構成では、例えば、蒸発部において冷媒を気化させることにより対象物の熱を奪うとともに、気化した冷媒を凝縮部で液体に戻すといったサイクルが繰り返される(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
【非特許文献1】
Jeffrey Kirshberg,Dorian Liepmann,Kirk L.Yerkes,「Micro-Cooler for Chip-Level Temperature Control」,Aerospace Power Systems Conference Proceedings,(米国),Society of Automotive Engineers,Inc.,1999年4月,P-341,p.233-238
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の装置にあっては、放熱効率や冷却に必要な電力に関して、下記に示すような問題がある。
【0007】
・放熱部の冷却に、空気の自然対流を利用しているために、放熱能力を充分に大きくすることが困難であること。
【0008】
・液冷式の循環型冷却デバイスでは、作動液が熱源からの熱による温度上昇と、冷却による温度下降とが繰り返される熱輸送形態をとるので、気体−液体間の相変化を利用した熱輸送デバイスに比べて、大型化したり、電力を多く必要とすること(例えば、作動液の輸送ポンプのサイズが大きくなり、より大きな電力が必要になる。)。
【0009】
そこで、本発明は、放熱効率を高めるとともに、小型化及び薄型化に適した熱輸送装置及び電子デバイスの提供を課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、蒸発部及び凝縮部を備えた熱輸送装置や電子デバイスにおいて、凝縮部の放熱部又は該凝縮部に設けられた放熱手段に対して、空気を送風して冷却する送風手段を設けるとともに、作動流体の輸送ポンプを液相路に設けたものである。
【0011】
従って、本発明によれば、放熱部又は放熱手段に対する送風によって放熱能力を高めることができ、輸送ポンプにより輸送能力を増加させることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、相変化循環型熱輸送を利用した放熱、冷却システムへの適用に好適である。例えば、コンピュータ等の情報処理装置や携帯型機器等への適用においては、熱源となる様々なデバイス(例えば、CPUや撮像素子、発光素子、小型ハードディスクドライブや光学式メディアのドライブ等に使用される駆動モータ、あるいは熱的に厳しい条件が課せられるアクチュエータ等)の放熱や冷却に用いることで、小型化、薄型化、高効率化を実現することが可能である。
【0013】
図1及び図2は、本発明に係る熱輸送装置の基本構成例を示す図であり、その要部だけを示している。尚、ここで「熱輸送装置」には、発熱体から出る熱を作動流体等で伝熱するための装置が含まれるが、広義には、発熱体や冷却手段あるいは放熱手段、温度制御装置等を含めた装置システム全体を意味するものとする。
【0014】
熱輸送装置1は、液相の作動流体が蒸発する蒸発部2(エバポレータ部)と、気相の作動流体が凝縮する凝縮部3(コンデンサ部)を備えている。即ち、大きな熱輸送量を得るには、作動液の蒸発によって点線で示す発熱部(熱源)「H」から熱を奪うことで熱吸収する蒸発部2と、蒸発後に気体として存在する、気相の作動流体を液体に相変化させるための凝縮部3を備えた構造が好ましい。
【0015】
尚、蒸発部2や凝縮部3は、作動流体を還流させるために毛細管力を発生する構造(所謂ウィック)を有している(グルーブ、メッシュ、焼結金属等が用いられる。)。本例では、ウィックとしてグルーブ状の形態が用いられている。また、図には説明の便宜上、蒸発部2と凝縮部3をそれぞれ1つずつ示しているが、本発明の適用において、両者の数が1対1に限定される訳ではないので、ある凝縮部に対して複数の蒸発部を設けたり、ある蒸発部に対して複数の凝縮部を設けるといった、各種形態での実施が可能である。
【0016】
熱輸送装置1は、蒸発部2と凝縮部3とを繋ぐ流路として、液相の作動流体が流れる液相路4と、気相の作動流体が流れる気相路5を備えている。液相路4や気相路5としては、チューブやパイプ、グルーブ、チャンネル等が挙げられ、例えば、気体輸送管及び液体輸送管を用いて蒸発部2と凝縮部3とが接続される。尚、図には、最も簡単な構成として液相、気相の各流路を1つずつ設けているが、勿論複数の流路を用いても構わない。
【0017】
凝縮部3に係る放熱に関しては、例えば、下記に示す構成形態が挙げられる。
【0018】
(1)凝縮部の放熱手段を用いる形態(図1参照)
(2)凝縮部の放熱部による形態(図2参照)。
【0019】
先ず、形態(1)では、凝縮部3に設けられた放熱手段6に対して、送風によって冷却する。放熱手段6としては、放熱効果を大きくするために、大面積の放熱板や、放熱フィンを設けて放熱面積の増加させた放熱部材等が挙げられ、これらは凝縮部3に固定して使用される。
【0020】
凝縮部3から放熱手段6に伝わった熱は、送風手段7によって空気冷却される。該送風手段7は放熱手段6に空気をあてて冷やすための強制送風手段であり、例えば、電磁モータ式ファンや、MEMS技術による小型の空気発生器やファン等が使用される。
【0021】
また、形態(2)では、図2に示すように、送風手段7による風を、凝縮部3の放熱部3aに直接あてることで空気冷却される。例えば、凝縮部3のうち、送風手段7に対向する側の面全体が放熱面とされることで、凝縮部自体を放熱手段とみなすことができる。本形態では放熱手段を積極的に設ける必要がないので、部品点数を減らすことができる。
【0022】
いずれの形態でも、凝縮部の放熱部又放熱手段に対して風冷式の構成とされ、送風手段を用いた空気冷却により冷却能力を高めることができる。
【0023】
例えば、コンピュータ等の情報処理装置におけるCPU(中央処理装置)やその他、熱源となる発熱部を有する電子デバイスに係る冷却システムへの適用において、蒸発部2を、第一の筐体部内の発熱部に設置するとともに、凝縮器3や放熱手段6、送風手段7を第二の筐体部(例えば、表示デバイス等を備えた表示部等)内に設置する形態が挙げられる。凝縮部3内の作動液は、液相路4を通って蒸発部2に到達し、ここで発熱部からの熱を受けて気化する。そして、気相となった作動流体が、気相路5を通って凝縮部3に移動して、ここで送風手段7によって冷やされて液体に戻るというサイクルが繰り返される。
【0024】
作動流体としては、例えば、水、エタノール、メタノール、プロパノール(異性体を含む。)、エチルエーテル、エチレングリコール、フロリナート、アンモニア等が使用され、これらの中から、沸点、抗菌性等の特性を考慮して選択される。
【0025】
上記したように、蒸発部2にはウィック部が設けられており、液相路の輸送力は該ウィック部の毛細管力として得られるが、作動流体の輸送ポンプを液相路に設けることによって、輸送力を増大させることが可能である。例えば、凝縮部が冷媒(作動流体)に係る移動空間の50%以上の体積を占める場合に、条件の如何によっては、ウィック部の毛細管力のみでは作動流体の循環に支障を来たし、輸送力が不足する事態が発生し得るが、輸送ポンプを用いることでそのような不具合を解消することができる。
【0026】
図3は、液相路(液相管等)の途中に輸送ポンプ8を設けた例を示している。
【0027】
輸送ポンプ8には、例えば、後述する圧電型ポンプの場合、制御手段9からの駆動信号を受けて電気的に駆動される。また、気泡駆動型ポンプを用いる場合には、熱源からの熱を利用してポンピング作用が得られる。
【0028】
また、図4に示す例では、液相路の途中にバイパス経路を設け、該経路上にポンプを設けた構成を示している。
【0029】
液相路4を構成する第一の流路4Aに対する迂回路として第二の流路4Bが付設されており、該流路4Bに輸送ポンプ8が設けられている。つまり、輸送ポンプ8の動作が停止した場合でも凝縮部3と蒸発部2とを繋ぐ液相の流路4Aが確保される。
【0030】
輸送ポンプ(圧電型ポンプ等)8は、制御手段9によりその作動の有無又は輸送能力が熱輸送量に応じて制御される。即ち、制御手段9は、熱源の温度等を検出し、熱源の発生熱量が小さい場合には、ポンプを作動させないか又はその輸送能力を充分に低くし、また、熱源の発生熱量が大きい場合にはポンプを作動させ又はその輸送能力を高める。このように、熱輸送量に応じてポンプ動作の有無や能力を制御することで、省電力化を実現でき、必要以上の冷却等を防止できる。また、熱輸送装置の起動時にポンプをスタータとして動かすことによって、ドライアウト(蒸発部が乾いてしまう現象)後等における始動時間を短縮することができ、また、始動後に動作が安定した時点でポンプを停止させるといった形態が可能である。
【0031】
液相路に対して輸送ポンプを設ける場合において、例えば、下記に示す構成形態が挙げられる。
【0032】
(I)輸送ポンプを液相路に一体化させて付設する構成形態
(II)輸送ポンプを後付けにより液相路に付設する構成形態。
【0033】
図5乃至図7は上記形態(I)に係る輸送ポンプの一例を示す説明図であり、図5は輸送ポンプが設けられた液相路の要部を概略的に示す平面図、図6は輸送ポンプの構造を示す概略断面図、図7はポンプ駆動部分の要部を示す概略図である。
【0034】
輸送ポンプ8を構成する複数の駆動素子10としては、例えば、圧電素子やVCM(ボイスコイルモータ)、磁歪素子等が挙げられるが、本例では、図示のように複数の圧電素子11_i及び12_i(i=1〜4)を用いている(後述する信号の位相や周波数の制御が容易であるため。)。各素子を独立に駆動して、液相路中に圧力変化を与えることにより、液相の作動流体を一方向に移動させる構成を有している。
【0035】
図中に示す液相路(液相管)13、13は、上記した液相路4又は4Bを構成するものであり、これらが圧力付与部14を介して繋がれている。
【0036】
各液相路13については、それらの流路のうち作動流体の入力側又は出力側となる端部が、シール部材15、15を介してそれぞれ弾性体16、16に連結されている。
【0037】
2つの弾性体16、16は圧力付与部14を構成しており、微小な隙間17(図7の大円に拡大して示す範囲を参照。)を有する。この隙間17を通って作動液が一方の液相路13から他方の液相路13へと送られる。尚、各弾性体16の側面部はシール材を用いてシールされ、作動流体の漏洩を防いでいる。
【0038】
圧電素子11_1〜4及び12_1〜4は、弾性体16、16の外面及び固定部18、18に固定されている。図5や図6に示すように、圧電素子11_1〜4が一方の弾性体16の外面において、流路の方向に沿って所定の間隔をもって配置されており、各圧電素子の片面が弾性体16に固定され、他面側の部分が固定部18に固定されている。同様にして、圧電素子12_1〜4が他方の弾性体16の外面において、流路の方向に沿って所定の間隔をもって配置されており、各圧電素子の片面が弾性体16に固定され、他面側の部分が固定部18に固定されている。
【0039】
図8及び図9は上記圧電素子群の動作について説明するためのものであり、図8は各素子に関して流路に直交する軸(図6の上下方向に延びる軸であり、以下これを「y軸」とする。)における変位量の時間的変化を余弦波や正弦波として示したグラフ図、図9は弾性体の変形及び流体の移動の様子を概念的に示した説明図である。
【0040】
本例では、圧電素子11_1〜4及び12_1〜4のうち、弾性体16、16を挟んで互いに反対側に位置する圧電素子11_i及び12_i(i=1〜4)を組にして、各組の素子を、互いに異なる位相をもって駆動するとともに、その周波数制御により輸送量を制御する。つまり、本例では4組の圧電素子対について、90゜の位相差をもってそれぞれに駆動される(4相駆動方式)。
【0041】
図8において、y軸の上向きを正方向にとり、圧電素子11_i(i=1〜4)の変位量を「y11_i」と記すとき、これらは、振幅を「a」、角周波数を「ω」(=2π・f。「f」は周波数を示す。)、時間軸を「t」として下記のように表される。
【0042】
y11_1= a・cos(ωt)
y11_2= a・sin(ωt)
y11_3=−a・cos(ωt)
y11_4=−a・sin(ωt)
また、圧電素子12_i(i=1〜4)の変位量を「y12_i」と記すとき、これらは上記した記号を用いて下記のように表される。
【0043】
y12_1=−a・cos(ωt)
y12_2=−a・sin(ωt)
y12_3= a・cos(ωt)
y12_4= a・sin(ωt)
尚、図には、同じ添え字をもったy11_i及びy12_iを併せて示しており、y11_iを実線で示し、y12_iを波線で区別して示している。
【0044】
図から分かるように、y11_i及びy12_iの変化については、互いに逆相関係とされる。例えば、y11_iが正方向に最大振幅を示したときに、y12_iが負方向に最大振幅を示し、この状態では弾性体16、16のうち圧電素子11_i及び12_iに挟まれた場所の隙間17が最大となる。また、y11_iが負方向に最大振幅を示し、y12_iが正方向に最大振幅を示す状態では、弾性体16、16のうち圧電素子11_i及び12_iに挟まれた場所の隙間17が最小又はゼロとなる。
【0045】
このような隙間の変化は、各圧電素子が付設された場所に応じて制御され、図9に示すように、チューブを絞り出す如き運動によって流路内の作動流体が一方向に移動される。
【0046】
図9では、液相の作動流体が左方から右方に移動する様子を示しており、φ1乃至φ4に示す時間経過に従って、隙間17の狭部δが図の右方に移動していく。つまり、φ1に示す状態では、圧電素子11_1及び12_1により、これらに対応した弾性体の内壁部分同士が最も近づいて狭部δが形成される。その後、φ2に示す状態では、圧電素子11_2及び12_2により、これらに対応した弾性体の内壁部分同士が最も近づいて狭部δが形成される。以下、同様にして、このような状態がφ3、φ4において実現された後、再びφ1に戻ることで、周期的な運動が行われる結果、ポンピング作用が得られることになる。
【0047】
このように、複数の駆動素子(本例では、圧電素子)について、互いに異なる位相をもって駆動するとともに、その周波数制御により輸送量を制御することができる(上記した制御手段9によって行われる。)。尚、本例では、4対の駆動素子を用いているので、90゜の位相差をもった4相駆動制御を行っているが、一般には、N(≧3)の駆動素子又は素子群を用いて、360゜/Nの位相差をもって駆動制御を行うことができる。
【0048】
また、図5、図6では、液相路13、13が一直線上に配置された構成例を示したが、これに限らず、例えば、図10に示すように、弾性体16A、16Aからなる圧力付与部14Aが湾曲された構成形態が挙げられる。つまり、この例では、液相路13と13とが互いに平行な位置関係をもって配置されているため、半円弧状に湾曲された弾性体16A、16Aを用いて液相路同士を接続している。そして、弾性体16A、16Aのうち、内側に位置する弾性体の外面及び固定部19(図の円形部)に圧電素子12_1〜4が固定され、外側に位置する弾性体の外面及び図示しない固定部に圧電素子11_1〜4が固定されている。これによって、各圧電素子を円周上において所定の角度間隔で配置させることができる。
【0049】
弾性体を用いて繋がれた液相路同士の間になす角度に応じた曲率の経路に沿って圧電素子を配置させることで、流路の曲げに対する自由度が生まれ、配管や設計等の面で柔軟性が得られる。
【0050】
上記の例では、ポンプ部を構成する弾性体、圧電素子、固定部等を一体構造とした例を示したが、上記の形態(II)では、液相路及び弾性体を含む流路系統に対して、輸送ポンプの部分を分離し得る構成を有する。例えば、輸送ポンプを液相路の外周部に付設し、圧電素子等の駆動素子を用いて外周部に圧力を加えることによって作動流体を輸送することができる。
【0051】
図11及び図12に示すように、弾性体16B、16Bは、シール材15、15をそれぞれ介して液相路13、13に接続されており、流路(弾性体間に形成される隙間)を構成している。そして、圧電素子11_1〜4、12_1〜4は、ベース部材20、20にそれぞれ固定されていて、これらのベース部材を付勢手段21、21(図にはバネの記号で簡略化して示す。)で弾性体16B、16Bに外側から押し当てることで接触される。このように流路途中に設けられた弾性体と、駆動素子を含むポンプ部(駆動部)とを分離することができる。よって、流路への作動液の注入工程が減圧環境下で行われる場合に、ポンプ部を流路系から分離した装置本体部だけを減圧状態の雰囲気中に置くことができ、作業性の改善及びポンプ部の構造材料から出るアウトガスの問題を解決することができる。
【0052】
次に、輸送ポンプの能力について、試算例を示す。尚、以下の説明において、使用する記号は、図7に示す通りであり、それらの意味を下記に示す。
【0053】
・「L」=流路方向における弾性体の有効長さ(12mm)
・「D」=流路方向に対して直交する方向における弾性体の有効長さ(3mm)
・「b」=流路方向における圧電素子の長さ(2mm)
・「p」=流路方向における圧電素子の配置間隔(2mm)
・「g」=弾性体16、16の間隙長(0.005mm)。
【0054】
上記したように、圧電素子群に係る一周期における作動液の吐出量を「v」と記すと、これは弾性体の隙間の断面積(D・g)に長さLを掛けた体積に相当し、下記のように求まる。
【0055】
v=3×12×0.005=0.18(mm3)
作動液として水を用いる場合、300K(27゜C)における水の蒸発熱が2460KJ/Kgであるから、例えば、100W(J/s)の熱輸送量を行う場合には、100/2460=0.0406(g/s)=40.6(mm3/s)の流量が必要となる。よって、40.6/0.18=225(Hz)の周波数をもった信号で圧電素子を駆動すれば良いことが分かる。
【0056】
熱輸送量を大きくするには、間隙長gや吐出量v等を増すか又は周波数fを大きくすれば良いので、例えば、周波数を225Hzよりさらに大きくすることにより、100Wを超える熱輸送量が得られる。また、熱輸送量を一定とした場合に、間隙長g(上記の振幅aに相当する。)を小さくして周波数fを大きくし、f値を可聴帯域から離すことで静音効果が得られる。
【0057】
しかして、上記した構成によれば、下記に示す利点が得られる。
【0058】
・分離型構造の相変化循環型熱輸送デバイスにおいて、放熱面積の拡大を図ることにより大きな放熱能力を得ることができる。
【0059】
・ 放熱部に対して、MEMSデバイスを用いたファン等を用いて空気冷却を行うことで冷却能力を高めることができる。小型でかつ大きな放熱能力が得られるので、例えば、ノート型パーソナルコンピュータ等への適用(CPUの冷却等)において、ディスプレイ背面等に放熱部及びファンを収納することができる。
【0060】
・液相経路において、圧電素子を用いたポンプを設置し、作動液体の輸送能力を高めることで、より大きな熱輸送量を得ることができる。
【0061】
・液相経路におけるバイパス経路中にポンプを設置し、熱輸送量に応じてポンプの動作又は不動作、あるいは吐出量v等を制御することで、省電力化を図ることができる。
【0062】
・ ポンプの駆動部を液体輸送流路と分離することで、相変化循環型熱輸送デバイス本体の交換においてポンプごと交換する必要が無くなり、コストダウンを図ることができる。
【0063】
・ポンプの駆動部を流路と分離させ、流路の外周部から圧力を与えて流体を輸送することができる。例えば、相変化循環型熱輸送デバイスの作動液注入過程は、減圧環境下で通常行われるが、ポンプの駆動部を液体輸送流路と分離することができる構成形態では、その際に、流路系を含む本体部のみ(ポンプなしの状態)を減圧環境下に置けば良いので、作業性が改善され、ポンプ駆動部の構造材料から出るアウトガスの発生を防止することができる。
【0064】
・ポンプの輸送能力については、圧電素子群を異なる位相差をもって駆動するとともに、圧電素子に加える駆動信号の周波数、振幅を変化させることで輸送量をより精密に制御することができる(例えば、前記した例においては、1Hzの周波数変化についての吐出量変化が、0.18mm3である。)。
【0065】
・圧電素子等を曲路(円周経路等)上に並べた構造を有するポンプを用いることによって、配管経路の確保等に余裕ができ、また自由度が高まる。
【0066】
【発明の効果】
以上に記載したところから明らかなように、請求項1や請求項8に係る発明によれば、凝縮部の放熱部又は放熱手段に対する送風によって放熱能力を高めることができ、小型化及び薄型化に適した熱輸送装置を実現できる。そして、輸送ポンプを用いることで液相の作動流体に係る輸送能力を大きくし、熱輸送量を増加させることができ、また、輸送ポンプを起動手段(スタータ)として用いることができる。
【0067】
請求項2に係る発明によれば、放熱面積を大きくすることができ、また、凝縮部に放熱手段を付設する必要がない。
【0068】
請求項3に係る発明によれば、省電力化や熱輸送の適正化に好適であり、また輸送量の一定化や安定化を図ることができる。
【0069】
請求項4に係る発明によれば、液相流路中に圧力変動を与えることによって、一方向性の流れを容易に作り出すことができる。
【0070】
請求項5に係る発明によれば、周波数制御により輸送量を精密に制御することができる。
【0071】
請求項6に係る発明によれば、流路とポンプ部とを分離し得る構造にすることで、作動液の注入工程において作業性を改善でき、また、ポンプ部から出るアウトガス等を低減することができる。
【0072】
請求項7に係る発明によれば、駆動素子として圧電素子を用いることにより、その駆動信号の周波数や振幅を容易に可変制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る基本構成例を示す図である。
【図2】本発明に係る基本構成の別例を示す図である。
【図3】液相路の途中に輸送ポンプを設けた例を示す図である。
【図4】液相路の途中にバイパス経路を設けて該経路にポンプを設けた構成例を示す図である。
【図5】図6及び図7とともに輸送ポンプの一例を示すものであり、本図は要部を示す概略的な平面図である。
【図6】構造例を示す概略断面図である。
【図7】駆動部分の要部を示す概略図である。
【図8】図9とともに、圧電素子群の動作について説明するための図であり、概略的なグラフ図である。
【図9】弾性体の変形及び流体の移動の様子を概念的に示した説明図である。
【図10】圧力付与部が湾曲された構成形態の一例を示す図である。
【図11】図12とともに、液相路及び弾性体を含む流路系統に対して、輸送ポンプを分離可能な構成を示すものであり、本図は輸送ポンプを弾性体に取り付ける前の状態を示す図である。
【図12】輸送ポンプを弾性体に取り付けた状態を示す図である。
【符号の説明】
1…熱輸送装置、2…蒸発部、3…凝縮部、4…液相路、4A…第一の流路、4B…第二の流路、5…気相路、6…放熱手段、7…送風手段、8…輸送ポンプ、9…制御手段、10…駆動素子、11_1〜4、12_1〜4…圧電素子
Claims (8)
- 液相の作動流体が蒸発する蒸発部と、気相の作動流体が凝縮する凝縮部と、蒸発部と凝縮部を繋ぐ流路として液相の作動流体が流れる液相路及び気相の作動流体が流れる気相路を備えた熱輸送装置において、
前記凝縮部の放熱部又は該凝縮部に設けられた放熱手段に対して、送風により冷却する送風手段と、
前記液相路に設けられた作動流体の輸送ポンプを備えている
ことを特徴とする熱輸送装置。 - 前記凝縮部のうち、前記送風手段に対向する側の面全体が放熱面とされている
ことを特徴とする請求項1記載の熱輸送装置。 - 前記液相路を構成する第一の流路に対する迂回路として付設された第二の流路に前記輸送ポンプが設けられており、その作動の有無又は輸送能力が熱輸送量に応じて制御される
ことを特徴とする請求項1記載の熱輸送装置。 - 前記輸送ポンプを構成する複数の駆動素子によって液相路中に圧力変化を与えることにより、液相の作動流体を一方向に移動させる構成を有する
ことを特徴とする請求項1記載の熱輸送装置。 - 前記複数の駆動素子を、互いに異なる位相の信号をもって駆動するとともに、その周波数制御により輸送量を制御するための制御手段を備えている
ことを特徴とする請求項4記載の熱輸送装置。 - 前記輸送ポンプを液相路の外周部に付設して、該外周部に圧力を加えて作動流体を輸送する
ことを特徴とする請求項1記載の熱輸送装置。 - 前記複数の駆動素子として圧電素子を用いた
ことを特徴とする請求項4記載の熱輸送装置。 - 発熱部が熱的に接続されて液相の作動流体が蒸発する蒸発部と、気相の作動流体が凝縮する凝縮部と、蒸発部と凝縮部を繋ぐ流路として液相の作動流体が流れる液相路及び気相の作動流体が流れる気相路を有する熱輸送機構を備えた電子デバイスにおいて、
前記凝縮部の放熱部又は該凝縮部に設けられた放熱手段に対して、送風により冷却する送風手段と、
前記液相路に設けられた作動流体の輸送ポンプを備えている
ことを特徴とする電子デバイス。
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