JP2004190545A - 内燃機関の燃料噴射制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】デリバリパイプ内の燃料温度の差違による燃料噴射量のばらつきを好適に抑制することのできる内燃機関の燃料噴射制御装置を提供する。
【解決手段】内燃機関1の各気筒に対応した燃料噴射弁#1〜#6が接続されたデリバリパイプ6には気体燃料が供給される。このデリバリパイプ6には、各燃料噴射弁#1〜#6の接続位置にそれぞれ温度センサ20a〜20fが配設されている。制御装置30は、各温度センサ20a〜20fによって検出されるデリバリパイプ6内での気体燃料の温度分布に基づいて各気筒に対応した燃料噴射弁#1〜#6の燃料噴射量をそれぞれ個別に補正する。
【選択図】 図1
【解決手段】内燃機関1の各気筒に対応した燃料噴射弁#1〜#6が接続されたデリバリパイプ6には気体燃料が供給される。このデリバリパイプ6には、各燃料噴射弁#1〜#6の接続位置にそれぞれ温度センサ20a〜20fが配設されている。制御装置30は、各温度センサ20a〜20fによって検出されるデリバリパイプ6内での気体燃料の温度分布に基づいて各気筒に対応した燃料噴射弁#1〜#6の燃料噴射量をそれぞれ個別に補正する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、デリバリパイプ内の燃料温度に応じて燃料噴射弁の燃料噴射時間を補正する内燃機関の燃料噴射制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
多気筒内燃機関の多くでは、燃料タンクから送られた燃料は、デリバリパイプ内に一旦蓄圧され、そのデリバリパイプから各気筒の燃料噴射弁に分配供給されるようになっている。一般に、燃料噴射弁から噴射される燃料の質量の制御は、その燃料噴射弁から噴射される燃料の噴射時間を調整することで行われている。
【0003】
一方、燃料の単位体積当たりの質量、すなわち密度は、燃料の温度により変化し、例えば燃料が高温になるとその密度は低下する。このように燃料の密度が変化すると、単位時間当たりに燃料噴射弁から噴射される燃料の質量、すなわち燃料噴射量も変化してしまう。ちなみに温度による密度の変化率は、液体に比して気体の方が著しく大きいため、圧縮天然ガス機関や液化天然ガス機関の一部のように、デリバリパイプ内に気体状態の燃料が蓄えられる内燃機関では、デリバリパイプ内の燃料温度による噴射燃料の質量の変化は著しく大きいものとなる。
【0004】
そこで従来、デリバリパイプ内の燃料の温度に応じて燃料噴射弁の燃料噴射時間を補正することがなされている(特許文献1など)。例えばデリバリパイプ内の燃料温度が高く、その密度が低下しているときには、燃料噴射時間を増大補正して、噴射時間をより長くすることで、必要な量(質量)の燃料を確保するようにしている。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−107808号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このような補正により、燃料密度の温度変化による燃料噴射量のばらつき、すなわち噴射される燃料の質量のばらつきをある程度に抑えることはできるものの、以下のような理由により依然として改良の余地を残すものとなっている。
【0007】
図16は、デリバリパイプ内の燃料の温度分布の一例を示している。この図16に示されるように、デリバリパイプ内の燃料の温度は、デリバリパイプの燃料供給口からの距離が長くなるにつれて高くなる。これは、燃料供給口からの距離が長くなるにつれ、デリバリパイプ内での燃料の移動時間が長くなり、より多くの熱を受けるためである。したがって、デリバリパイプから燃料噴射弁に供される燃料の密度は、必ずしも一律ではなく、燃料噴射弁毎に異なるようになる。特に上記のようなデリバリパイプ内に気体状態の燃料が蓄えられる内燃機関では、わずかな燃料温度差が燃料密度の大きな差を生み出すため、精密な燃料噴射量の制御が要求される場合には、デリバリパイプ内の位置による燃料温度の差違の影響も無視し難いものとなる。
【0008】
その点、上記従来の燃料噴射制御装置では、デリバリパイプ内の特定の位置の燃料温度のみを検出し、それをデリバリパイプ内すべての燃料温度の代表値として全燃料噴射弁の燃料噴射時間に対して一律に補正を行っているため、その燃料噴射量の制御精度の向上効果は自ずと限定されたものとなっていた。
【0009】
この発明はこうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、デリバリパイプ内の燃料温度の差違による燃料噴射量のばらつきを好適に抑制することのできる内燃機関の燃料噴射制御装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための手段及びその作用効果について以下に記載する。
請求項1に記載の発明は、内燃機関の燃料噴射制御装置であって、複数の燃料噴射弁の接続されたデリバリパイプ内の燃料の温度分布を検出ないしは推定し、その温度分布に基づいて前記複数の燃料噴射弁の燃料噴射時間をそれぞれ個別に補正することをその要旨とする。
【0011】
同構成では、デリバリパイプ内の燃料の温度分布を検出ないし推定するようにしている。従って、各燃料噴射弁の接続位置における燃料の温度をそれぞれ知ることができる。そして、この温度分布に基づいて複数の燃料噴射弁の燃料噴射時間をそれぞれ個別に補正するようにしている。従って、燃料の温度に対応して各燃料噴射弁毎に燃料噴射時間を補正することができるようになり、その結果、デリバリパイプ内の燃料温度の差違による燃料噴射量のばらつきを好適に抑制することができるようになる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記デリバリパイプ内の燃料の温度分布は、前記複数の燃料噴射弁の各接続位置における前記デリバリパイプ内の燃料温度を各々検出する複数の温度センサにより検出されることをその要旨とする。
【0013】
同構成によれば、燃料噴射弁の接続位置における燃料の温度が各燃料噴射弁毎に検出されるようになるため、デリバリパイプ内の温度分布を精度よく検出することができるようになる。そのため、各燃料噴射弁の燃料噴射時間に対する温度補正もより正確に行うことができるようになる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記デリバリパイプ内の燃料の温度分布は、該デリバリパイプ内の所定位置における燃料温度と該デリバリパイプ内の燃料流量とに基づき推定されることをその要旨とする。
【0015】
一般に、デリバリパイプ内の燃料流量が増大すると、燃料の流速も速くなる。このように燃料の流速が速くなると、燃料がデリバリパイプの燃料供給口から各燃料噴射弁に到達するまでの時間も短くなり、受熱時間も短くなる。そのため、各燃料噴射弁毎の燃料の温度差も小さくなる。このように、燃料流量が増大すると、デリバリパイプ内の燃料の温度分布における温度差は小さくなる傾向にあり、この傾向は予めの実験等により知ることができる。従って、デリバリパイプ内のある部分の温度を検出するとともに、燃料流量から推定できる温度分布の傾向を考慮することで、デリバリパイプ内の燃料の温度分布を推定することができる。従って、上記請求項3に記載の構成によれば、前記請求項2に記載の構成と比較して、温度センサの数を少なくしてもデリバリパイプ内の温度分布を知ることができるようになり、温度センサの設置に必要なコストの低減を図ることができるようになる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記デリバリパイプ内の燃料の温度分布は、該デリバリパイプ内の所定位置における燃料温度と該デリバリパイプ内の温度分布との対応関係が予め記憶されたマップに基づき推定されることをその要旨とする。
【0017】
燃料噴射弁毎に異なる燃料の温度差は、デリバリパイプの燃料供給口から各燃料噴射弁までの距離が大きく影響する。ここで、デリバリパイプの燃料供給口から各燃料噴射弁までの距離は予め設定されている固定値であって変化することはない。従って、デリバリパイプ内での燃料の温度分布は、上記距離からある程度推定することができる。また、この燃料の温度分布の推定に際しては、同デリバリパイプ内の所定位置における燃料温度を考慮することで、その推定精度を向上させることができる。そこで、上記請求項4に記載の構成では、デリバリパイプ内の所定位置における燃料温度と該デリバリパイプ内の温度分布との対応関係が予め記憶されたマップから前記温度分布を推定するようにしている。従って、上記請求項4に記載の構成によれば、前記請求項2に記載の構成と比較して、温度センサの数を少なくしてもデリバリパイプ内の温度分布を知ることができるようになり、温度センサの設置に必要なコストの低減を図ることができるようになる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記燃料噴射弁毎の燃料噴射時間の補正は、燃料温度が高いほど燃料噴射時間を増大するように行われることをその要旨とする。
【0019】
同構成によれば、燃料温度の高い部分、すなわち燃料密度の低い部分に対応した燃料噴射弁ほど燃料噴射時間が増大される。従って、燃料の温度分布に対応させて、各燃料噴射弁の燃料噴射量のばらつきを確実に抑制することができるようになる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記燃料噴射弁毎の燃料噴射時間の補正は、前記温度分布より求められる前記デリバリパイプ内の各燃料噴射弁の接続位置の燃料温度にそれぞれ基づき行われることをその要旨とする。
【0021】
同構成によれば、燃料噴射弁の接続位置の燃料温度に基づいて、その燃料温度が求められた位置にある燃料噴射弁の燃料噴射時間が補正される。従って、各燃料噴射弁の燃料噴射時間に対して、燃料温度に対応した補正を確実に行うことができるようになる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記燃料噴射弁毎の燃料噴射時間の補正は、前記求められる前記各燃料噴射弁の接続位置の燃料温度が高いほど当該燃料噴射弁の燃料噴射時間を増大するように行われることをその要旨とする。
【0023】
同構成によれば、燃料温度の高い部分、すなわち燃料密度の低い部分に接続された燃料噴射弁ほど燃料噴射時間が増大される。従って、燃料の温度分布に対応させて、各燃料噴射弁の燃料噴射量のばらつきを確実に抑制することができるようになる。
【0024】
請求項8に記載の発明は、デリバリパイプに接続された複数の燃料噴射弁の燃料噴射時間を補正する内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記各燃料噴射弁のデリバリパイプの接続位置に応じて、その接続位置が該デリバリパイプの燃料供給口からより離れた燃料噴射弁の燃料噴射時間が、同燃料供給口により近い燃料噴射弁の燃料噴射時間に比して、より増大されるように補正を行うことをその要旨とする。
【0025】
一般に、デリバリパイプ内の燃料温度は、同デリバリパイプの燃料供給口から離れるにつれて高くなる。そこで、上記請求項8に記載の構成では、デリバリパイプの燃料供給口からより離れた位置に接続された燃料噴射弁、すなわち燃料温度が高い位置に接続された燃料噴射弁ほど、その燃料噴射時間が増大されるようにしている。従って、請求項8に記載の構成によれば、デリバリパイプ内の燃料温度を検出する温度センサを設けることなく、デリバリパイプ内の燃料温度の差違による燃料噴射量のばらつきを好適に抑制することができるようになる。
【0026】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記燃料噴射時間の補正は、機関運転状態に対応して設定されたマップであって、前記各燃料噴射弁からの燃料噴射時間の補正量が予め記憶されたマップに基づき行われることをその要旨とする。
【0027】
デリバリパイプ内の燃料温度は、同デリバリパイプの燃料供給口から離れるにつれて高くなる傾向にあり、その度合いは機関運転状態に対応して変化する。そこで、上記請求項9に記載の構成では、機関運転状態に対応して設定されたマップに基づき、デリバリパイプの燃料供給口からより離れた位置に接続された燃料噴射弁ほど、その燃料噴射時間が増大されるようにしている。従って、機関運転状態に対応させて、デリバリパイプ内の燃料温度の差違による燃料噴射量のばらつきを抑制することができるようになる。
【0028】
請求項10に記載の発明は、複数の燃料噴射弁の接続されたデリバリパイプ内の燃料温度に応じて、前記複数の燃料噴射弁の燃料噴射時間を補正する内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記各燃料噴射弁のデリバリパイプの接続位置に応じて、その接続位置が該デリバリパイプの燃料供給口からより離れた燃料噴射弁の燃料噴射時間が、同燃料供給口により近い燃料噴射弁の燃料噴射時間に比して、より増大されるように前記燃料温度に応じた補正を行うことをその要旨とする。
【0029】
また、請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記燃料温度に応じた補正は、前記デリバリパイプ内の所定位置における燃料温度と前記各燃料噴射弁からの燃料噴射時間の補正量との対応関係が予め記憶されたマップに基づき行われることをその要旨とする。
【0030】
上述したようにデリバリパイプ内の燃料温度は、同デリバリパイプの燃料供給口から離れるにつれて高くなる。またこの温度分布傾向はデリバリパイプ内の燃料温度に応じて変化する。そこで、上記請求項10に記載の構成では、デリバリパイプの燃料供給口からより離れた位置に接続された燃料噴射弁、すなわち燃料温度が高い位置に接続された燃料噴射弁ほど、その燃料噴射時間が増大されるようにデリバリパイプ内の燃料温度に応じた補正を行うようにしている。また、上記請求項11に記載の構成では、デリバリパイプ内の所定位置における燃料温度と各燃料噴射弁からの燃料噴射時間の補正量との対応関係が予め記憶されたマップに基づき、燃料温度に応じた燃料噴射時間の補正を行うようにしている。従って、上記請求項10または11に記載の構成によれば、前記請求項2に記載の構成と比較して、温度センサの数を少なくしてもデリバリパイプ6内の温度分布に応じた燃料噴射時間の補正ができるようになる。また、請求項8または9に記載の構成と比較して、さらに精度よくデリバリパイプ内の燃料温度の差違による燃料噴射量のばらつきを抑制することができるようになる。
【0031】
請求項12に記載の発明は、請求項1〜11のいずれかに記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記デリバリパイプ内には、気体状態の燃料が導入されることをその要旨とする。
【0032】
上述したように、温度に起因する燃料密度の変化率は、液体に比して気体の方が著しく大きい。そのため、デリバリパイプ内に気体状態の燃料が導入される場合には、デリバリパイプ内に液体状態の燃料が導入される場合と比較して、燃料温度に起因する燃料噴射量のばらつきも大きくなる。この点、上記請求項12に記載の構成によれば、デリバリパイプ内に気体状態の燃料が導入される場合であっても、燃料温度の差違による燃料噴射量のばらつきを好適に抑制することができるようになる。
【0033】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
以下、この発明にかかる内燃機関の燃料噴射制御装置を具体化した第1の実施形態について図1〜図5に基づき、詳細に説明する。
【0034】
図1は、この燃料噴射制御装置が適用される圧縮天然ガスを燃料とする内燃機関1とともに、その燃料供給系を示す概略構成図である。
この内燃機関1では、吸気通路から吸入される空気及び燃料噴射弁#1〜#6から噴射される燃料からなる混合気がシリンダ及びピストンによって区画形成される燃焼室に吸入される。そして、この混合気は燃焼室に備えられる点火プラグにより点火されて燃焼され、燃焼後は排気ガスとして前記燃焼室から排気通路へ排出される。
【0035】
この内燃機関1の燃料供給系は、基本的に、燃料タンク2、高圧燃料配管3、低圧燃料配管4、減圧弁5、デリバリパイプ6、並びに燃料噴射弁#1〜#6等から構成されている。
【0036】
燃料タンク2には、圧縮された気体燃料(例えばメタンガス等)が気相状態で貯蔵されている。この燃料タンク内と減圧弁5との間には、高圧燃料配管3が接続されている。
【0037】
減圧弁5は、燃料タンク2内の気体燃料を減圧して燃料噴射弁#1〜#6に供給するための弁であり、この減圧弁5とデリバリパイプ6の燃料供給口6aとの間には、低圧燃料配管4が接続されている。
【0038】
デリバリパイプ6は、低圧燃料配管4から供給された気体燃料を各燃料噴射弁#1〜#6に供給するための燃料分配管となっており、内燃機関1の上部(例えばシリンダヘッド上部)に気筒配列と並行する態様で取り付けられている。このデリバリパイプ6には、内燃機関1の各気筒に対応してそれぞれ設けられた燃料噴射弁#1〜#6が接続されている。なお、説明の便宜上、デリバリパイプ6の燃料供給口6aから最も離れた位置に接続された燃料噴射弁を燃料噴射弁#1とし、以下、燃料供給口6aに近づく方向に向けて配設された燃料噴射弁を順次、燃料噴射弁#2、燃料噴射弁#3、燃料噴射弁#4、燃料噴射弁#5、燃料噴射弁#6とする。
【0039】
また、デリバリパイプ6には、温度センサ20a〜20fが各燃料噴射弁#1〜#6の接続位置にそれぞれ配設されている。この温度センサ20aによって、燃料噴射弁#1の接続位置における気体燃料の温度が検出される。また、温度センサ20bによって、燃料噴射弁#2の接続位置における気体燃料の温度が検出される。また、温度センサ20cによって、燃料噴射弁#3の接続位置における気体燃料の温度が検出される。また、温度センサ20dによって、燃料噴射弁#4の接続位置における気体燃料の温度が検出される。また、温度センサ20eによって、燃料噴射弁#5の接続位置における気体燃料の温度が検出される。そして温度センサ20fによって、燃料噴射弁#6の接続位置における気体燃料の温度が検出される。これら温度センサ20a〜20fによってデリバリパイプ6内の気体燃料の燃料温度THFが検出される。さらに、デリバリパイプ6の燃料供給口6a近傍には、同デリバリパイプ6内の燃料圧力FPを検出する燃圧センサ21が配設されている。
【0040】
他方、前記内燃機関1には、上記温度センサ20a〜20f及び燃圧センサ21の他にも、機関運転状態を検出するための各種センサが備えられている。例えば、内燃機関1の出力軸であるクランクシャフトに近接して設けられるクランク角センサ23は、クランクシャフトの回転に基づいて内燃機関1の回転速度に応じた頻度のパルス信号を出力する。そして、この出力信号(パルス信号)に基づいて同内燃機関1(クランクシャフト)の機関回転速度NEが検出される。また、内燃機関1の吸気バルブを駆動するカムシャフトに近接して設けられるカム角センサ22は、カムシャフトが1回転するごとに気筒判別信号を出力する。そして、この気筒判別信号と前記クランク角センサ23の出力信号とに基づいて、特定気筒の圧縮上死点が検出される。すなわち、気筒判別が行われる。また、吸気通路内に設けられる吸入空気量センサ24によって、吸入空気量GAが検出される。
【0041】
上記内燃機関1の燃料噴射制御等の各種制御は、制御装置30によって行われる。この制御装置30は中央処理制御装置(CPU)を備えるマイクロコンピュータを中心として構成されている。例えば制御装置30には、各種プログラムやマップ等を予め記憶した読出専用メモリ(ROM)、CPUの演算結果等を一時記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)が設けられている。また制御装置30には、演算結果や予め記憶されたデータ等を機関停止後も保存するためのバックアップRAM、入力インターフェース、出力インターフェース等も設けられている。そして、温度センサ20a〜20f、燃圧センサ21、カム角センサ22、クランク角センサ23,吸入空気量センサ24等からの出力信号は前記入力インターフェースに入力される。これら各センサ等により、内燃機関1の運転状態が検出される。
【0042】
一方、出力インターフェースは、内燃機関1の各燃料噴射弁#1〜#6を駆動する駆動回路等に接続されている。そして、制御装置30は上記各センサ等からの信号に基づき、ROM内に格納された制御プログラム及び初期データに従って、各燃料噴射弁#1〜#6の開弁時間、すなわち燃料噴射時間等を制御する。
【0043】
さて、このように構成された内燃機関1では、機関運転状態に応じた燃料噴射量が制御装置30によって算出され、この算出された燃料噴射量に基づいて燃料噴射弁の開弁時間、すなわち燃料噴射時間が決定される。ここで、前述したように、気体燃料は液体燃料と比較して、単位体積当たりの質量、すなわち密度が温度によって変化しやすい。そのため、その温度に応じて燃料噴射時間を補正する必要がある。一方、デリバリパイプ6は内燃機関1の発熱によって加熱されるが、上記燃料供給口6aから各燃料噴射弁#1〜#6までの距離はそれぞれ異なっているため、気体燃料がデリバリパイプ6に供給されてから各燃料噴射弁#1〜#6に到達するまでの時間も各燃料噴射弁#1〜#6毎に異なるものとなる。従って、各燃料噴射弁#1〜#6に供給される気体燃料の温度も、上記到達時間の違い、すなわち受熱時間の違いに起因して異なるようになる。
【0044】
そこで、本実施形態にかかる燃料噴射制御装置では、各燃料噴射弁#1〜#6が接続された位置の気体燃料の温度をそれぞれ検出し、その検出結果に基づいて各燃料噴射弁#1〜#6の燃料噴射時間をそれぞれ補正するようにしている。そしてこれにより、燃料温度の差異によらず、各気筒間での燃料噴射量のばらつき、すなわち各燃料噴射弁#1〜#6から噴射される燃料の質量のばらつきを抑える気筒間補正が実施されるようにしている。
【0045】
以下、本実施形態にかかる内燃機関の燃料噴射制御装置による燃料噴射時間の気筒間温度補正処理を、図2〜図5を併せ参照して詳細に説明する。
まず、燃料噴射時間の算出処理手順を図2に示す。なお本実施形態において、この噴射時間算出処理は、所定クランク角毎の割り込み処理として制御装置30により繰り返し実行される。
【0046】
この処理が開始されると、まず、燃料圧力FP、吸入空気量GA、及び機関回転速度NEに基づき、上記ROM内に記憶された燃料噴射量マップから機関負荷に応じた燃料噴射量Qが算出される(ステップS110)。
【0047】
次に、算出された燃料噴射量Qを確保しうる燃料噴射時間TAUが、上記ROM内に記憶された噴射時間算出マップから算出される(ステップS120)。
次に、気体燃料の温度差に起因する燃料噴射量のばらつきを補正するための温度補正係数Kが算出される(ステップS130)。なお、この算出処理の詳細は、後述する。
【0048】
次に、前記算出された燃料噴射時間TAUに上記温度補正係数Kが乗算され、最終燃料噴射時間TAUFが算出されて(ステップS140)、本処理を一旦終了する。そして、この算出された最終燃料噴射時間TAUFで燃料噴射弁が開弁されて、気筒内に燃料が噴射される。
【0049】
さて、上記温度補正係数Kの算出処理手順を図3に示す。なお本実施形態において、この補正係数算出処理は、先の噴射時間算出処理が実行される所定クランク角よりも少し前のクランク角における割り込み処理として制御装置30により繰り返し実行される。
【0050】
この処理が開始されると、まず、次回燃料噴射が行われる燃料噴射弁#nの読み込みが行われる(ステップS210)。この検出は、前回燃料噴射が行われた燃料噴射弁#n−1に割り当てられた番号を前記RAMに一時記憶しておくことで、次回燃料噴射が行われる燃料噴射弁#nを検出することができる。
【0051】
次に、燃料噴射弁#nの接続位置に設けられた温度センサ20(例えば、次回噴射が行われる燃料噴射弁が燃料噴射弁#1の場合には、温度センサ20a)によって検出された燃料温度THFが読み込まれる(ステップS220)。
【0052】
次に、検出された燃料温度THFに基づき、図4に示す温度補正係数マップから温度補正係数Kが算出される(ステップS230)。この温度補正係数マップは、図4に示されるように、燃料温度THFが高くなるほど温度補正係数Kも大きくなるように設定されている。これは、気体燃料の温度が高くなるにつれて気体燃料の密度が低下するため、必要な燃料を確保するためには燃料噴射時間TAUを長くする必要があるためである。そして、この燃料噴射弁#nの接続位置における燃料温度THFに対応した温度補正係数Kが、先の図2で説明したステップS140における燃料噴射時間TAUの補正に用いられる。その結果、気体燃料の温度に起因する燃料の密度変化分が補償された最終燃料噴射時間TAUFが算出される。
【0053】
さて、この温度補正係数Kは各気筒に対応した各燃料噴射弁#1〜#6毎に個別に算出される。また、先の図16に示したデリバリパイプ6内の温度分布は各温度センサ20a〜20fで実際に検出される。従って、上記の補正係数算出処理が実行されることで、各気筒に対応した各燃料噴射弁#1〜#6の燃料噴射時間TAUに対する温度補正係数は、図5に示すように、デリバリパイプ6内の温度分布が高い位置にある燃料噴射弁ほど、温度補正係数Kは大きな値とされる。すなわち、デリバリパイプ6内の温度分布が高い位置にある燃料噴射弁ほど、燃料噴射時間が長くされる。その結果、燃料密度の低い気体燃料を噴射する燃料噴射弁ほど燃料噴射時間が長くなり、気筒間における燃料噴射量のばらつきが抑制されるようになる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態にかかる内燃機関の燃料噴射制御装置によれば、次のような効果が得られるようになる。
(1)デリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布を検出するようにしている。従って、各燃料噴射弁#1〜#6の接続位置における気体燃料の温度をそれぞれ知ることができる。そして、この温度分布に基づき、各気筒に対応した燃料噴射弁の燃料噴射時間TAUをそれぞれ個別に補正するようにしている。従って、気体燃料の温度に対応して各燃料噴射弁#1〜#6毎に燃料噴射時間を補正することができるようになり、その結果、デリバリパイプ6内の燃料温度の差違による燃料噴射量のばらつきを好適に抑制することができるようになる。
【0055】
(2)デリバリパイプ6内での燃料の温度分布を、各燃料噴射弁#1〜#6の接続位置にそれぞれ設けられた温度センサ20a〜20fによって検出するようにしている。そのため、各燃料噴射弁#1〜#6の接続位置における気体燃料の実際の温度を検出することができ、デリバリパイプ6内の温度分布を精度よく検出することができるようになる。その結果、各燃料噴射弁#1〜#6の燃料噴射時間に対する温度補正もより正確に行うことができるようになる。
【0056】
(3)気体燃料の温度が高いほど温度補正係数Kの値が大きくなるように、すなわち燃料噴射時間TAUが長くなるようにしている。従って、気体燃料の温度の高い部分、すなわち気体密度の低い部分に対応した燃料噴射弁ほど燃料噴射時間が長くされる。その結果、気体燃料の温度分布に対応させて、各燃料噴射弁#1〜#6の燃料噴射量のばらつきを確実に抑制することができるようになる。
【0057】
(4)各燃料噴射弁#1〜#6毎の燃料噴射時間の補正を、温度分布より求められるデリバリパイプ6内の各燃料噴射弁#1〜#6の接続位置の燃料温度にそれぞれ基づいて行うようにしている。例えば、燃料噴射弁#1の接続位置に設けられた温度センサ20aの検出結果に基づいて同燃料噴射弁#1の燃料噴射時間を補正するようにしている。従って、各燃料噴射弁の燃料噴射時間に対して、燃料温度に対応した補正を確実に行うことができるようになる。
【0058】
(5)上述したように、温度に起因する燃料密度の変化率は、液体に比して気体の方が著しく大きい。そのため、デリバリパイプ6内に気体状態の燃料が導入される場合には、デリバリパイプ6内に液体状態の燃料が導入される場合と比較して、燃料温度に起因する燃料噴射量のばらつきも大きくなる。この点、上記実施形態によれば、デリバリパイプ6内に気体状態の燃料が導入される場合であっても、燃料温度の差違による燃料噴射量のばらつきを好適に抑制することができるようになる。
【0059】
(第2の実施形態)
次に、本発明にかかる内燃機関の燃料噴射制御装置の第2の実施形態について説明する。
【0060】
前記第1の実施形態では、デリバリパイプ6にあって各燃料噴射弁#1〜#6の接続位置に温度センサ20a〜20fをそれぞれ配設することにより、デリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布を実際に検出するようにした。
【0061】
これに対し、本実施形態では、デリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布を推定するようにしている。すなわち、一般に、デリバリパイプ6内の燃料流量が増大すると、燃料の流速も速くなる。このように燃料の流速が速くなると、気体燃料がデリバリパイプ6の燃料供給口6aから各燃料噴射弁#1〜#6に到達するまでの時間も短くなり、気体燃料の受熱時間も短くなる。そのため、図6に例示するように、燃料流量が増大するにつれて各燃料噴射弁#1〜#6に対応する気筒間における気体燃料の温度差も小さくなる。すなわち、燃料流量が増大すると、デリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布における温度差は小さくなる傾向にあり、この傾向は予めの実験等によって知ることができる。従って、デリバリパイプ6内の所定位置における燃料温度を検出するとともに、燃料流量から推定できる温度分布の傾向を考慮することで、デリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布を推定することができる。このように、温度分布を推定することによって温度センサの数を少なくしてもデリバリパイプ6内の温度分布を知ることができるようになり、温度センサの設置に必要なコストの低減を図ることができるようになる。
【0062】
以下、こうした第2の実施形態について図7〜図9を併せ参照し、第1の実施形態との違いを中心に説明する。
図7は、本実施形態にかかる燃料噴射制御装置が適用される圧縮天然ガスを燃料とする内燃機関1とともに、その燃料供給系を示す概略構成図である。本実施形態と前記第1の実施形態とは、デリバリパイプ6の燃料供給口6aから最も離れた位置、すなわち燃料噴射弁#1近傍に温度センサ20が1つだけ配設されている点が構成上異なっている。そのため、先の図1に示した部材と同一の部材には、同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0063】
さて、本実施形態では上述したように、デリバリパイプ6内の所定位置における燃料温度、すなわち燃料噴射弁#1近傍に配設された温度センサ20によって検出される代表点燃料温度THFMと燃料流量Gfとに基づいてデリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布を推定している。そして、この推定される温度分布に対応して各燃料噴射弁#1〜#6の燃料噴射量、すなわち燃料噴射時間を補正するようにしている。ここで、本実施形態における燃料噴射時間の算出処理手順は、前記第1の実施形態で説明した処理手順(図2)と同一であり、温度補正係数Kを求める補正係数算出処理が異なっている。そこで、以下では、本実施形態における補正係数算出処理を、図8、図9を併せ参照して詳細に説明する。
【0064】
図8は、本実施形態における温度補正係数Kの算出処理手順を示している。なお本実施形態においても、この補正係数算出処理は、先の噴射時間算出処理が実行される所定クランク角よりも少し前のクランク角における割り込み処理として制御装置30により繰り返し実行される。
【0065】
この処理が開始されると、まず、次回燃料噴射が行われる燃料噴射弁#nの読み込みが行われる(ステップS310)。この検出は、前回燃料噴射が行われた燃料噴射弁#n−1に割り当てられた番号を前記RAMに一時記憶しておくことで、次回燃料噴射が行われる燃料噴射弁#nを検出することができる。
【0066】
次に、温度センサ20によって検出された代表点燃料温度THFMとデリバリパイプ6内の燃料流量Gfが読み込まれる(ステップS320)。ここで、燃料流量Gfは、燃料噴射時間が長くなるほど多くなるといった傾向がある。そこで本実施の形態では、この補正係数算出処理が行われる直前に設定された最終燃料噴射時間TAUFに基づいて現在の燃料流量Gfを推定している。なお、この燃料流量Gfを流量センサ等で直接検出してもよい。また、燃料流量Gfと機関負荷とは相関関係にあるため、燃料流量Gfに代えて、機関負荷を示すパラメータを用いるようにしてもよい。
【0067】
次に、図9に例示する各燃料噴射弁#1〜#6に対応してそれぞれ用意された温度補正係数マップのうち、前記読み込まれた燃料噴射弁#nに対応した温度補正係数マップが選択される(ステップS330)。
【0068】
ここで、これら各温度補正係数マップについて説明する。
まず、これら各温度補正係数マップは、前記ROM内に記憶されている。また、前述したように、燃料噴射弁#1から燃料噴射弁#6に向かうほどデリバリパイプ6内の気体燃料の温度は低くなる傾向にある。従って、本実施形態では、燃料噴射弁#1用の温度補正係数マップから燃料噴射弁#6用の温度補正係数マップに向かうにつれて、それら各マップに設定された温度補正係数Kの値は小さくなるように設定されている。すなわち、燃料噴射弁#1から燃料噴射弁#6に向かうほど燃料噴射時間TAUが短くなるように温度補正係数Kは設定されている。
【0069】
また、燃料流量Gfが増大するほど、デリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布、換言すれば温度勾配の傾きが小さくなる傾向にある。従って、燃料流量Gfの増大に伴って、代表点燃料温度THFMと各燃料噴射弁#1〜#6の接続位置における気体燃料との温度差はそれぞれ小さくなると推定できる。この点を考慮して、各温度補正係数マップは、燃料流量Gfの増大に伴って各燃料噴射弁#1〜#6毎の燃料噴射時間の差が小さくなるように温度補正係数Kは設定されている。また、代表点燃料温度THFMが高くなるほどデリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布が高温側にシフトすると推定できる。そのため、代表点燃料温度THFMが高くなるほど燃料噴射時間が長くなるように温度補正係数Kは設定されている。このように、上記温度補正係数マップは、代表点燃料温度THFMと燃料流量Gfとに基づいて推定されるデリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布に対応した温度補正係数Kが設定されている。
【0070】
次に、代表点燃料温度THFMと燃料流量Gfとに基づき、上記選択された温度補正係数マップを参照して、次回燃料噴射が行われる燃料噴射弁#nに対応した温度補正係数Kが求められる(ステップS340)。こうして算出された温度補正係数Kが、先の図2で説明したステップS140における燃料噴射時間TAUの補正に用いられる。その結果、気体燃料の温度に起因する燃料の密度変化分が補償された最終燃料噴射時間TAUFが各燃料噴射弁#1〜#6毎に個別に算出される。
【0071】
以上説明したように、本実施形態にかかる内燃機関の燃料噴射制御装置によれば、次のような効果が得られるようになる。
(1)デリバリパイプ6にあって、燃料噴射弁#1の近傍に設けられた温度センサ20によって検出される代表点燃料温度THFMと、デリバリパイプ6内の燃料流量Gfに基づいて同デリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布を推定するようにしている。従って、前記第1の実施形態と比較して、温度センサの数を少なくしてもデリバリパイプ6内の温度分布を知ることができるようになり、温度センサの設置に必要なコストの低減を図ることができるようになる。
【0072】
(第3の実施形態)
次に、本発明にかかる内燃機関の燃料噴射制御装置の第3の実施形態について説明する。
【0073】
本実施形態では、デリバリパイプ6内の気体燃料の温度を検出する温度センサ20を設けることなく、燃料温度の変化による燃料噴射量のばらつきを抑制するようにしている。
【0074】
すなわち、先の図16に示したように、デリバリパイプ6内の燃料温度は、一般に、同デリバリパイプ6の燃料供給口6aから離れるにつれて高くなる。そこで本実施形態では、デリバリパイプ6内の燃料温度を検出することなく、このような燃料温度の分布傾向を考慮して燃料噴射時間の補正が行われるようにしている。具体的には、デリバリパイプ6の燃料供給口6aからより離れた位置に接続された燃料噴射弁、すなわち燃料温度が高い位置に接続された燃料噴射弁ほど、その燃料噴射時間を増大させるようにしている。
【0075】
以下、こうした第3の実施形態について図10〜図12を併せ参照し、第1の実施形態との違いを中心に説明する。
図10は、本実施形態にかかる燃料噴射制御装置が適用される圧縮天然ガスを燃料とする内燃機関1とともに、その燃料供給系を示す概略構成図である。本実施形態と前記第1の実施形態とは、デリバリパイプ6内の気体燃料の温度を検出ための温度センサ20が設けられていない点が構成上異なっている。そのため、先の図1に示した部材と同一の部材には、同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0076】
さて、本実施形態における燃料噴射時間の算出処理手順は、前記第1の実施形態で説明した処理手順(図2)と同一であり、温度補正係数Kを求める補正係数算出処理が異なっている。そこで、以下では、本実施形態における補正係数算出処理を、図11を併せ参照して詳細に説明する。
【0077】
図11は、本実施形態における温度補正係数Kの算出処理手順を示している。なお本実施形態においても、この補正係数算出処理は、先の噴射時間算出処理が実行される所定クランク角よりも少し前のクランク角における割り込み処理として制御装置30により繰り返し実行される。
【0078】
この処理が開始されると、まず、次回燃料噴射が行われる燃料噴射弁#nの読み込みが行われる(ステップS410)。この検出は、前回燃料噴射が行われた燃料噴射弁#n−1に割り当てられた番号を前記RAMに一時記憶しておくことで、次回燃料噴射が行われる燃料噴射弁#nを検出することができる。
【0079】
次に、読み込まれた燃料噴射弁#nに対応した温度補正係数Kが、図12に例示する温度補正係数マップから求められる(ステップS420)。この温度補正係数マップは、次のように設定されている。
【0080】
まず、本実施形態における燃料供給系では、燃料噴射弁#6から燃料噴射弁#1へ向かうほど、デリバリパイプ6の燃料供給口6aからの距離が長くなっている。ここで、この距離は固定値であって変化することはない。また、気体燃料の平均温度や燃料流量の変化に伴って、デリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布が高温側へシフトしたり、温度勾配の傾きが変化することはあっても、基本的に燃料噴射弁#1へ向かうほどデリバリパイプ6内の気体燃料の温度は高くなっているといった傾向が大きく変化することはない。さらに、機関運転状態が同一であれば、デリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布も大きく変化することはない。そこで、燃料噴射量のばらつきが顕著に出力トルクの変動に現れやすい機関運転状態であるアイドル状態でのデリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布を、予め実験等により求めておく。そしてこのような実験等を通じて知り得た温度分布状態において、各燃料噴射弁#1〜#6毎に、気筒間における燃料噴射量のばらつきを抑制することのできる温度補正係数Kが前記温度補正係数マップには設定されている。すなわち、図12に示されるように、デリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布を考慮して、燃料噴射弁#6から燃料噴射弁#1に向かうほど、換言すれば燃料供給口6aからより離れた位置に接続された燃料噴射弁ほど、燃料噴射時間TAUが長くなるように温度補正係数マップは設定されている。また、上述した理由により、種々変化する機関運転状態のうち、アイドル運転状態に対応させて温度補正係数マップは設定されている。
【0081】
こうして算出された温度補正係数Kが、先の図2で説明したステップS140における燃料噴射時間TAUの補正に用いられる。その結果、気体燃料の温度に起因する燃料の密度変化分が補償された最終燃料噴射時間TAUFが各燃料噴射弁#1〜#6毎に個別に算出される。
【0082】
以上説明したように、本実施形態にかかる内燃機関の燃料噴射制御装置によれば、次のような効果が得られるようになる。
(1)デリバリパイプ6の燃料供給口6aからより離れた位置に接続された燃料噴射弁、すなわち燃料温度が高い位置に接続された燃料噴射弁ほど、その燃料噴射時間が増大されるようにしている。従って、デリバリパイプ6内の燃料温度を実際に検出するための温度センサを設けることなく、デリバリパイプ6内の燃料温度の差違による燃料噴射量のばらつきを抑制することができるようになる。
【0083】
(2)アイドル状態でのデリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布を予め実験等により求めておき、この実験結果に基づいて前記温度補正係数Kを設定するようにしている。すなわち、アイドル状態に対応させて上記温度補正係数マップを設定するようにしている。従って、アイドル状態において、デリバリパイプ6内の燃料温度の差違による燃料噴射量のばらつきを抑えることができ、気筒間の燃料噴射量のばらつきが顕著に出力トルクの変動に現れやすいアイドル状態での出力トルク変動を抑制することができるようになる。
【0084】
なお、上記各実施形態は以下のように変更して実施することもできる。
・上記第2の実施形態では、デリバリパイプ6に温度センサ20を1つ設けるようにしたが、この配設個数は適宜変更してもよい。例えば、図13に例示するように、燃料噴射弁#1の接続位置に温度センサ40aを配設し、燃料噴射弁#3と燃料噴射弁#4との間に温度センサ40bを配設し、燃料噴射弁#6の接続位置に温度センサ40cを配設する。そして、これら3つの温度センサ40a〜40cによって検出されるデリバリパイプ6内の気体燃料の温度と、デリバリパイプ6内の燃料流量とに基づいて、デリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布を推定するようにしてもよい。この場合には温度分布の推定精度をさらに高めることができるようになる。
【0085】
・上記第3の実施形態では、アイドル状態におけるデリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布を実験等により求めるようにした。この他にも、デリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布を運転状態毎に求め、その平均分布を算出して、同平均分布に対応した温度補正係数Kを温度補正係数マップに設定するようにしてもよい。
【0086】
・上記第3の実施形態では、アイドル状態におけるデリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布を実験等により求めるようにした。この他にも、デリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布を機関運転状態毎、例えばアイドル状態、中負荷状態、高負荷状態毎に実験等を通じて求める。そして、図14に示すような各機関運転状態に対応した温度補正係数Kが設定された温度補正係数マップを用意する。そして、先の図11で説明した補正係数算出処理において、ステップS410の次に実行されるステップとして、図15に示すようなステップS510の処理手順、すなわち、機関運転状態に基づいて温度補正係数マップを選択する手順を追加するようにしてもよい。この場合には、各機関運転状態に応じた温度補正係数Kが設定されるため、上記第3の実施形態と比較して、幅広い機関運転状態において気体燃料の温度差に起因する燃料噴射量のばらつきを抑制することができるようになる。
【0087】
・燃料噴射弁毎に異なる燃料の温度差は、デリバリパイプ6の燃料供給口6aから各燃料噴射弁#1〜#6までの距離が大きく影響する。ここで、デリバリパイプ6の燃料供給口6aから各燃料噴射弁#1〜#6までの距離は予め設定されている固定値であって変化することはない。従って、デリバリパイプ6内での燃料の温度分布は、上記距離からある程度推定することができる。また、この燃料の温度分布の推定に際しては、デリバリパイプ6内の所定位置における燃料温度を考慮することで、その推定精度を向上させることができる。そこで、デリバリパイプ6内の所定位置における燃料温度と同デリバリパイプ6内の温度分布との対応関係が予め記憶されたマップを用意する。そして、デリバリパイプ6内の所定位置における燃料温度を温度センサで検出し、この検出結果に基づき前記マップからデリバリパイプ6内の温度分布を推定するようにしてもよい。この場合には、第1の実施形態と比較して、温度センサの数を少なくしてもデリバリパイプ6内の温度分布を知ることができるようになり、温度センサの設置に必要なコストの低減を図ることができるようになる。
【0088】
・上述したようにデリバリパイプ6内の燃料温度は、同デリバリパイプ6の燃料供給口6aから離れるにつれて高くなる。またこの温度分布傾向はデリバリパイプ6内の燃料温度に応じて変化する。そこで、デリバリパイプ6の燃料供給口6aからより離れた位置に接続された燃料噴射弁、すなわち燃料温度が高い位置に接続された燃料噴射弁ほど、その燃料噴射時間が増大されるようにデリバリパイプ6内の燃料温度に応じた補正を行うようにしてもよい。例えば、デリバリパイプ6の所定位置に温度センサを設ける。また、上記燃料供給口6aからより離れた位置に接続された燃料噴射弁ほどその燃料噴射時間が増大されるように温度補正係数Kが設定されたマップであって、デリバリパイプ6内の所定位置における燃料温度と各燃料噴射弁#1〜#6の温度補正係数Kとの対応関係が予め記憶されたマップを用意する。そして、このマップと温度センサによって検出される燃料温度とに基づいて、各燃料噴射弁#1〜#6の燃料噴射時間を補正するようにしてもよい。この場合には、第1の実施形態と比較して、温度センサの数を少なくしてもデリバリパイプ6内の温度分布に応じた燃料噴射時間の補正ができるようになる。また、第3の実施形態と比較して、さらに精度よくデリバリパイプ6内の燃料温度の差違による燃料噴射量のばらつきを抑制することができるようになる。
【0089】
・上記各実施形態およびその変形例では、温度補正係数Kをマップに基づいて求めるようにしたが、温度補正係数Kに関与するパラメータを用いる関係式等に基づいて同温度補正係数Kを求めるようにしてもよい。
【0090】
・上記各実施形態では、デリバリパイプ6内に気体燃料が供給される内燃機関に本発明にかかる燃料噴射制御装置を適用する場合について例示した。この他にも、デリバリパイプ6内に液体燃料が供給される内燃機関にも本発明は同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる内燃機関の燃料噴射制御装置の第1の実施形態について、その概略構成を示す図。
【図2】同実施形態による燃料噴射時間の算出にかかる処理手順を示すフローチャート。
【図3】同実施形態による気筒間の温度補正係数の算出にかかる処理手順を示すフローチャート。
【図4】同実施形態における温度補正係数マップを例示するグラフ。
【図5】同実施形態における噴射制御装置によって各燃料噴射弁毎に算出される温度補正係数Kについてその傾向を示すグラフ、及びデリバリパイプ内の気体燃料の温度分布を例示するグラフ。
【図6】第2の実施形態において、燃料流量とデリバリパイプ内の温度差との関係を例示するグラフ。
【図7】本発明にかかる内燃機関の燃料噴射制御装置の第2の実施形態について、その概略構成を示す図。
【図8】同実施形態による気筒間の温度補正係数の算出にかかる処理手順を示すフローチャート。
【図9】同実施形態における温度補正係数マップを例示するグラフ。
【図10】本発明にかかる内燃機関の燃料噴射制御装置の第3の実施形態について、その概略構成を示す図。
【図11】同実施形態による気筒間の温度補正係数の算出にかかる処理手順を示すフローチャート。
【図12】同実施形態における温度補正係数マップを例示するグラフ、及び各燃料噴射弁の接続位置における気体燃料の温度を例示するグラフ。
【図13】上記第2の実施形態の変形例を示す図。
【図14】上記第3の実施形態の変形例における温度補正係数マップを例示するグラフ。
【図15】同変形例におけるフローチャート。
【図16】デリバリパイプ内の気体燃料の温度分布を例示するグラフ。
【符号の説明】
1…内燃機関、2…燃料タンク、3…高圧燃料配管、4…低圧配管、5…減圧弁、6…デリバリパイプ、6a…燃料供給口、20…温度センサ、20a〜20f…温度センサ、21…燃圧センサ、22…カム角センサ、23…クランク角センサ、24…吸入空気量センサ、30…制御装置、40a〜40c…温度センサ、#1〜#6…燃料噴射弁。
【発明の属する技術分野】
この発明は、デリバリパイプ内の燃料温度に応じて燃料噴射弁の燃料噴射時間を補正する内燃機関の燃料噴射制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
多気筒内燃機関の多くでは、燃料タンクから送られた燃料は、デリバリパイプ内に一旦蓄圧され、そのデリバリパイプから各気筒の燃料噴射弁に分配供給されるようになっている。一般に、燃料噴射弁から噴射される燃料の質量の制御は、その燃料噴射弁から噴射される燃料の噴射時間を調整することで行われている。
【0003】
一方、燃料の単位体積当たりの質量、すなわち密度は、燃料の温度により変化し、例えば燃料が高温になるとその密度は低下する。このように燃料の密度が変化すると、単位時間当たりに燃料噴射弁から噴射される燃料の質量、すなわち燃料噴射量も変化してしまう。ちなみに温度による密度の変化率は、液体に比して気体の方が著しく大きいため、圧縮天然ガス機関や液化天然ガス機関の一部のように、デリバリパイプ内に気体状態の燃料が蓄えられる内燃機関では、デリバリパイプ内の燃料温度による噴射燃料の質量の変化は著しく大きいものとなる。
【0004】
そこで従来、デリバリパイプ内の燃料の温度に応じて燃料噴射弁の燃料噴射時間を補正することがなされている(特許文献1など)。例えばデリバリパイプ内の燃料温度が高く、その密度が低下しているときには、燃料噴射時間を増大補正して、噴射時間をより長くすることで、必要な量(質量)の燃料を確保するようにしている。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−107808号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このような補正により、燃料密度の温度変化による燃料噴射量のばらつき、すなわち噴射される燃料の質量のばらつきをある程度に抑えることはできるものの、以下のような理由により依然として改良の余地を残すものとなっている。
【0007】
図16は、デリバリパイプ内の燃料の温度分布の一例を示している。この図16に示されるように、デリバリパイプ内の燃料の温度は、デリバリパイプの燃料供給口からの距離が長くなるにつれて高くなる。これは、燃料供給口からの距離が長くなるにつれ、デリバリパイプ内での燃料の移動時間が長くなり、より多くの熱を受けるためである。したがって、デリバリパイプから燃料噴射弁に供される燃料の密度は、必ずしも一律ではなく、燃料噴射弁毎に異なるようになる。特に上記のようなデリバリパイプ内に気体状態の燃料が蓄えられる内燃機関では、わずかな燃料温度差が燃料密度の大きな差を生み出すため、精密な燃料噴射量の制御が要求される場合には、デリバリパイプ内の位置による燃料温度の差違の影響も無視し難いものとなる。
【0008】
その点、上記従来の燃料噴射制御装置では、デリバリパイプ内の特定の位置の燃料温度のみを検出し、それをデリバリパイプ内すべての燃料温度の代表値として全燃料噴射弁の燃料噴射時間に対して一律に補正を行っているため、その燃料噴射量の制御精度の向上効果は自ずと限定されたものとなっていた。
【0009】
この発明はこうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、デリバリパイプ内の燃料温度の差違による燃料噴射量のばらつきを好適に抑制することのできる内燃機関の燃料噴射制御装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための手段及びその作用効果について以下に記載する。
請求項1に記載の発明は、内燃機関の燃料噴射制御装置であって、複数の燃料噴射弁の接続されたデリバリパイプ内の燃料の温度分布を検出ないしは推定し、その温度分布に基づいて前記複数の燃料噴射弁の燃料噴射時間をそれぞれ個別に補正することをその要旨とする。
【0011】
同構成では、デリバリパイプ内の燃料の温度分布を検出ないし推定するようにしている。従って、各燃料噴射弁の接続位置における燃料の温度をそれぞれ知ることができる。そして、この温度分布に基づいて複数の燃料噴射弁の燃料噴射時間をそれぞれ個別に補正するようにしている。従って、燃料の温度に対応して各燃料噴射弁毎に燃料噴射時間を補正することができるようになり、その結果、デリバリパイプ内の燃料温度の差違による燃料噴射量のばらつきを好適に抑制することができるようになる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記デリバリパイプ内の燃料の温度分布は、前記複数の燃料噴射弁の各接続位置における前記デリバリパイプ内の燃料温度を各々検出する複数の温度センサにより検出されることをその要旨とする。
【0013】
同構成によれば、燃料噴射弁の接続位置における燃料の温度が各燃料噴射弁毎に検出されるようになるため、デリバリパイプ内の温度分布を精度よく検出することができるようになる。そのため、各燃料噴射弁の燃料噴射時間に対する温度補正もより正確に行うことができるようになる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記デリバリパイプ内の燃料の温度分布は、該デリバリパイプ内の所定位置における燃料温度と該デリバリパイプ内の燃料流量とに基づき推定されることをその要旨とする。
【0015】
一般に、デリバリパイプ内の燃料流量が増大すると、燃料の流速も速くなる。このように燃料の流速が速くなると、燃料がデリバリパイプの燃料供給口から各燃料噴射弁に到達するまでの時間も短くなり、受熱時間も短くなる。そのため、各燃料噴射弁毎の燃料の温度差も小さくなる。このように、燃料流量が増大すると、デリバリパイプ内の燃料の温度分布における温度差は小さくなる傾向にあり、この傾向は予めの実験等により知ることができる。従って、デリバリパイプ内のある部分の温度を検出するとともに、燃料流量から推定できる温度分布の傾向を考慮することで、デリバリパイプ内の燃料の温度分布を推定することができる。従って、上記請求項3に記載の構成によれば、前記請求項2に記載の構成と比較して、温度センサの数を少なくしてもデリバリパイプ内の温度分布を知ることができるようになり、温度センサの設置に必要なコストの低減を図ることができるようになる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記デリバリパイプ内の燃料の温度分布は、該デリバリパイプ内の所定位置における燃料温度と該デリバリパイプ内の温度分布との対応関係が予め記憶されたマップに基づき推定されることをその要旨とする。
【0017】
燃料噴射弁毎に異なる燃料の温度差は、デリバリパイプの燃料供給口から各燃料噴射弁までの距離が大きく影響する。ここで、デリバリパイプの燃料供給口から各燃料噴射弁までの距離は予め設定されている固定値であって変化することはない。従って、デリバリパイプ内での燃料の温度分布は、上記距離からある程度推定することができる。また、この燃料の温度分布の推定に際しては、同デリバリパイプ内の所定位置における燃料温度を考慮することで、その推定精度を向上させることができる。そこで、上記請求項4に記載の構成では、デリバリパイプ内の所定位置における燃料温度と該デリバリパイプ内の温度分布との対応関係が予め記憶されたマップから前記温度分布を推定するようにしている。従って、上記請求項4に記載の構成によれば、前記請求項2に記載の構成と比較して、温度センサの数を少なくしてもデリバリパイプ内の温度分布を知ることができるようになり、温度センサの設置に必要なコストの低減を図ることができるようになる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記燃料噴射弁毎の燃料噴射時間の補正は、燃料温度が高いほど燃料噴射時間を増大するように行われることをその要旨とする。
【0019】
同構成によれば、燃料温度の高い部分、すなわち燃料密度の低い部分に対応した燃料噴射弁ほど燃料噴射時間が増大される。従って、燃料の温度分布に対応させて、各燃料噴射弁の燃料噴射量のばらつきを確実に抑制することができるようになる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記燃料噴射弁毎の燃料噴射時間の補正は、前記温度分布より求められる前記デリバリパイプ内の各燃料噴射弁の接続位置の燃料温度にそれぞれ基づき行われることをその要旨とする。
【0021】
同構成によれば、燃料噴射弁の接続位置の燃料温度に基づいて、その燃料温度が求められた位置にある燃料噴射弁の燃料噴射時間が補正される。従って、各燃料噴射弁の燃料噴射時間に対して、燃料温度に対応した補正を確実に行うことができるようになる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記燃料噴射弁毎の燃料噴射時間の補正は、前記求められる前記各燃料噴射弁の接続位置の燃料温度が高いほど当該燃料噴射弁の燃料噴射時間を増大するように行われることをその要旨とする。
【0023】
同構成によれば、燃料温度の高い部分、すなわち燃料密度の低い部分に接続された燃料噴射弁ほど燃料噴射時間が増大される。従って、燃料の温度分布に対応させて、各燃料噴射弁の燃料噴射量のばらつきを確実に抑制することができるようになる。
【0024】
請求項8に記載の発明は、デリバリパイプに接続された複数の燃料噴射弁の燃料噴射時間を補正する内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記各燃料噴射弁のデリバリパイプの接続位置に応じて、その接続位置が該デリバリパイプの燃料供給口からより離れた燃料噴射弁の燃料噴射時間が、同燃料供給口により近い燃料噴射弁の燃料噴射時間に比して、より増大されるように補正を行うことをその要旨とする。
【0025】
一般に、デリバリパイプ内の燃料温度は、同デリバリパイプの燃料供給口から離れるにつれて高くなる。そこで、上記請求項8に記載の構成では、デリバリパイプの燃料供給口からより離れた位置に接続された燃料噴射弁、すなわち燃料温度が高い位置に接続された燃料噴射弁ほど、その燃料噴射時間が増大されるようにしている。従って、請求項8に記載の構成によれば、デリバリパイプ内の燃料温度を検出する温度センサを設けることなく、デリバリパイプ内の燃料温度の差違による燃料噴射量のばらつきを好適に抑制することができるようになる。
【0026】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記燃料噴射時間の補正は、機関運転状態に対応して設定されたマップであって、前記各燃料噴射弁からの燃料噴射時間の補正量が予め記憶されたマップに基づき行われることをその要旨とする。
【0027】
デリバリパイプ内の燃料温度は、同デリバリパイプの燃料供給口から離れるにつれて高くなる傾向にあり、その度合いは機関運転状態に対応して変化する。そこで、上記請求項9に記載の構成では、機関運転状態に対応して設定されたマップに基づき、デリバリパイプの燃料供給口からより離れた位置に接続された燃料噴射弁ほど、その燃料噴射時間が増大されるようにしている。従って、機関運転状態に対応させて、デリバリパイプ内の燃料温度の差違による燃料噴射量のばらつきを抑制することができるようになる。
【0028】
請求項10に記載の発明は、複数の燃料噴射弁の接続されたデリバリパイプ内の燃料温度に応じて、前記複数の燃料噴射弁の燃料噴射時間を補正する内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記各燃料噴射弁のデリバリパイプの接続位置に応じて、その接続位置が該デリバリパイプの燃料供給口からより離れた燃料噴射弁の燃料噴射時間が、同燃料供給口により近い燃料噴射弁の燃料噴射時間に比して、より増大されるように前記燃料温度に応じた補正を行うことをその要旨とする。
【0029】
また、請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記燃料温度に応じた補正は、前記デリバリパイプ内の所定位置における燃料温度と前記各燃料噴射弁からの燃料噴射時間の補正量との対応関係が予め記憶されたマップに基づき行われることをその要旨とする。
【0030】
上述したようにデリバリパイプ内の燃料温度は、同デリバリパイプの燃料供給口から離れるにつれて高くなる。またこの温度分布傾向はデリバリパイプ内の燃料温度に応じて変化する。そこで、上記請求項10に記載の構成では、デリバリパイプの燃料供給口からより離れた位置に接続された燃料噴射弁、すなわち燃料温度が高い位置に接続された燃料噴射弁ほど、その燃料噴射時間が増大されるようにデリバリパイプ内の燃料温度に応じた補正を行うようにしている。また、上記請求項11に記載の構成では、デリバリパイプ内の所定位置における燃料温度と各燃料噴射弁からの燃料噴射時間の補正量との対応関係が予め記憶されたマップに基づき、燃料温度に応じた燃料噴射時間の補正を行うようにしている。従って、上記請求項10または11に記載の構成によれば、前記請求項2に記載の構成と比較して、温度センサの数を少なくしてもデリバリパイプ6内の温度分布に応じた燃料噴射時間の補正ができるようになる。また、請求項8または9に記載の構成と比較して、さらに精度よくデリバリパイプ内の燃料温度の差違による燃料噴射量のばらつきを抑制することができるようになる。
【0031】
請求項12に記載の発明は、請求項1〜11のいずれかに記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記デリバリパイプ内には、気体状態の燃料が導入されることをその要旨とする。
【0032】
上述したように、温度に起因する燃料密度の変化率は、液体に比して気体の方が著しく大きい。そのため、デリバリパイプ内に気体状態の燃料が導入される場合には、デリバリパイプ内に液体状態の燃料が導入される場合と比較して、燃料温度に起因する燃料噴射量のばらつきも大きくなる。この点、上記請求項12に記載の構成によれば、デリバリパイプ内に気体状態の燃料が導入される場合であっても、燃料温度の差違による燃料噴射量のばらつきを好適に抑制することができるようになる。
【0033】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
以下、この発明にかかる内燃機関の燃料噴射制御装置を具体化した第1の実施形態について図1〜図5に基づき、詳細に説明する。
【0034】
図1は、この燃料噴射制御装置が適用される圧縮天然ガスを燃料とする内燃機関1とともに、その燃料供給系を示す概略構成図である。
この内燃機関1では、吸気通路から吸入される空気及び燃料噴射弁#1〜#6から噴射される燃料からなる混合気がシリンダ及びピストンによって区画形成される燃焼室に吸入される。そして、この混合気は燃焼室に備えられる点火プラグにより点火されて燃焼され、燃焼後は排気ガスとして前記燃焼室から排気通路へ排出される。
【0035】
この内燃機関1の燃料供給系は、基本的に、燃料タンク2、高圧燃料配管3、低圧燃料配管4、減圧弁5、デリバリパイプ6、並びに燃料噴射弁#1〜#6等から構成されている。
【0036】
燃料タンク2には、圧縮された気体燃料(例えばメタンガス等)が気相状態で貯蔵されている。この燃料タンク内と減圧弁5との間には、高圧燃料配管3が接続されている。
【0037】
減圧弁5は、燃料タンク2内の気体燃料を減圧して燃料噴射弁#1〜#6に供給するための弁であり、この減圧弁5とデリバリパイプ6の燃料供給口6aとの間には、低圧燃料配管4が接続されている。
【0038】
デリバリパイプ6は、低圧燃料配管4から供給された気体燃料を各燃料噴射弁#1〜#6に供給するための燃料分配管となっており、内燃機関1の上部(例えばシリンダヘッド上部)に気筒配列と並行する態様で取り付けられている。このデリバリパイプ6には、内燃機関1の各気筒に対応してそれぞれ設けられた燃料噴射弁#1〜#6が接続されている。なお、説明の便宜上、デリバリパイプ6の燃料供給口6aから最も離れた位置に接続された燃料噴射弁を燃料噴射弁#1とし、以下、燃料供給口6aに近づく方向に向けて配設された燃料噴射弁を順次、燃料噴射弁#2、燃料噴射弁#3、燃料噴射弁#4、燃料噴射弁#5、燃料噴射弁#6とする。
【0039】
また、デリバリパイプ6には、温度センサ20a〜20fが各燃料噴射弁#1〜#6の接続位置にそれぞれ配設されている。この温度センサ20aによって、燃料噴射弁#1の接続位置における気体燃料の温度が検出される。また、温度センサ20bによって、燃料噴射弁#2の接続位置における気体燃料の温度が検出される。また、温度センサ20cによって、燃料噴射弁#3の接続位置における気体燃料の温度が検出される。また、温度センサ20dによって、燃料噴射弁#4の接続位置における気体燃料の温度が検出される。また、温度センサ20eによって、燃料噴射弁#5の接続位置における気体燃料の温度が検出される。そして温度センサ20fによって、燃料噴射弁#6の接続位置における気体燃料の温度が検出される。これら温度センサ20a〜20fによってデリバリパイプ6内の気体燃料の燃料温度THFが検出される。さらに、デリバリパイプ6の燃料供給口6a近傍には、同デリバリパイプ6内の燃料圧力FPを検出する燃圧センサ21が配設されている。
【0040】
他方、前記内燃機関1には、上記温度センサ20a〜20f及び燃圧センサ21の他にも、機関運転状態を検出するための各種センサが備えられている。例えば、内燃機関1の出力軸であるクランクシャフトに近接して設けられるクランク角センサ23は、クランクシャフトの回転に基づいて内燃機関1の回転速度に応じた頻度のパルス信号を出力する。そして、この出力信号(パルス信号)に基づいて同内燃機関1(クランクシャフト)の機関回転速度NEが検出される。また、内燃機関1の吸気バルブを駆動するカムシャフトに近接して設けられるカム角センサ22は、カムシャフトが1回転するごとに気筒判別信号を出力する。そして、この気筒判別信号と前記クランク角センサ23の出力信号とに基づいて、特定気筒の圧縮上死点が検出される。すなわち、気筒判別が行われる。また、吸気通路内に設けられる吸入空気量センサ24によって、吸入空気量GAが検出される。
【0041】
上記内燃機関1の燃料噴射制御等の各種制御は、制御装置30によって行われる。この制御装置30は中央処理制御装置(CPU)を備えるマイクロコンピュータを中心として構成されている。例えば制御装置30には、各種プログラムやマップ等を予め記憶した読出専用メモリ(ROM)、CPUの演算結果等を一時記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)が設けられている。また制御装置30には、演算結果や予め記憶されたデータ等を機関停止後も保存するためのバックアップRAM、入力インターフェース、出力インターフェース等も設けられている。そして、温度センサ20a〜20f、燃圧センサ21、カム角センサ22、クランク角センサ23,吸入空気量センサ24等からの出力信号は前記入力インターフェースに入力される。これら各センサ等により、内燃機関1の運転状態が検出される。
【0042】
一方、出力インターフェースは、内燃機関1の各燃料噴射弁#1〜#6を駆動する駆動回路等に接続されている。そして、制御装置30は上記各センサ等からの信号に基づき、ROM内に格納された制御プログラム及び初期データに従って、各燃料噴射弁#1〜#6の開弁時間、すなわち燃料噴射時間等を制御する。
【0043】
さて、このように構成された内燃機関1では、機関運転状態に応じた燃料噴射量が制御装置30によって算出され、この算出された燃料噴射量に基づいて燃料噴射弁の開弁時間、すなわち燃料噴射時間が決定される。ここで、前述したように、気体燃料は液体燃料と比較して、単位体積当たりの質量、すなわち密度が温度によって変化しやすい。そのため、その温度に応じて燃料噴射時間を補正する必要がある。一方、デリバリパイプ6は内燃機関1の発熱によって加熱されるが、上記燃料供給口6aから各燃料噴射弁#1〜#6までの距離はそれぞれ異なっているため、気体燃料がデリバリパイプ6に供給されてから各燃料噴射弁#1〜#6に到達するまでの時間も各燃料噴射弁#1〜#6毎に異なるものとなる。従って、各燃料噴射弁#1〜#6に供給される気体燃料の温度も、上記到達時間の違い、すなわち受熱時間の違いに起因して異なるようになる。
【0044】
そこで、本実施形態にかかる燃料噴射制御装置では、各燃料噴射弁#1〜#6が接続された位置の気体燃料の温度をそれぞれ検出し、その検出結果に基づいて各燃料噴射弁#1〜#6の燃料噴射時間をそれぞれ補正するようにしている。そしてこれにより、燃料温度の差異によらず、各気筒間での燃料噴射量のばらつき、すなわち各燃料噴射弁#1〜#6から噴射される燃料の質量のばらつきを抑える気筒間補正が実施されるようにしている。
【0045】
以下、本実施形態にかかる内燃機関の燃料噴射制御装置による燃料噴射時間の気筒間温度補正処理を、図2〜図5を併せ参照して詳細に説明する。
まず、燃料噴射時間の算出処理手順を図2に示す。なお本実施形態において、この噴射時間算出処理は、所定クランク角毎の割り込み処理として制御装置30により繰り返し実行される。
【0046】
この処理が開始されると、まず、燃料圧力FP、吸入空気量GA、及び機関回転速度NEに基づき、上記ROM内に記憶された燃料噴射量マップから機関負荷に応じた燃料噴射量Qが算出される(ステップS110)。
【0047】
次に、算出された燃料噴射量Qを確保しうる燃料噴射時間TAUが、上記ROM内に記憶された噴射時間算出マップから算出される(ステップS120)。
次に、気体燃料の温度差に起因する燃料噴射量のばらつきを補正するための温度補正係数Kが算出される(ステップS130)。なお、この算出処理の詳細は、後述する。
【0048】
次に、前記算出された燃料噴射時間TAUに上記温度補正係数Kが乗算され、最終燃料噴射時間TAUFが算出されて(ステップS140)、本処理を一旦終了する。そして、この算出された最終燃料噴射時間TAUFで燃料噴射弁が開弁されて、気筒内に燃料が噴射される。
【0049】
さて、上記温度補正係数Kの算出処理手順を図3に示す。なお本実施形態において、この補正係数算出処理は、先の噴射時間算出処理が実行される所定クランク角よりも少し前のクランク角における割り込み処理として制御装置30により繰り返し実行される。
【0050】
この処理が開始されると、まず、次回燃料噴射が行われる燃料噴射弁#nの読み込みが行われる(ステップS210)。この検出は、前回燃料噴射が行われた燃料噴射弁#n−1に割り当てられた番号を前記RAMに一時記憶しておくことで、次回燃料噴射が行われる燃料噴射弁#nを検出することができる。
【0051】
次に、燃料噴射弁#nの接続位置に設けられた温度センサ20(例えば、次回噴射が行われる燃料噴射弁が燃料噴射弁#1の場合には、温度センサ20a)によって検出された燃料温度THFが読み込まれる(ステップS220)。
【0052】
次に、検出された燃料温度THFに基づき、図4に示す温度補正係数マップから温度補正係数Kが算出される(ステップS230)。この温度補正係数マップは、図4に示されるように、燃料温度THFが高くなるほど温度補正係数Kも大きくなるように設定されている。これは、気体燃料の温度が高くなるにつれて気体燃料の密度が低下するため、必要な燃料を確保するためには燃料噴射時間TAUを長くする必要があるためである。そして、この燃料噴射弁#nの接続位置における燃料温度THFに対応した温度補正係数Kが、先の図2で説明したステップS140における燃料噴射時間TAUの補正に用いられる。その結果、気体燃料の温度に起因する燃料の密度変化分が補償された最終燃料噴射時間TAUFが算出される。
【0053】
さて、この温度補正係数Kは各気筒に対応した各燃料噴射弁#1〜#6毎に個別に算出される。また、先の図16に示したデリバリパイプ6内の温度分布は各温度センサ20a〜20fで実際に検出される。従って、上記の補正係数算出処理が実行されることで、各気筒に対応した各燃料噴射弁#1〜#6の燃料噴射時間TAUに対する温度補正係数は、図5に示すように、デリバリパイプ6内の温度分布が高い位置にある燃料噴射弁ほど、温度補正係数Kは大きな値とされる。すなわち、デリバリパイプ6内の温度分布が高い位置にある燃料噴射弁ほど、燃料噴射時間が長くされる。その結果、燃料密度の低い気体燃料を噴射する燃料噴射弁ほど燃料噴射時間が長くなり、気筒間における燃料噴射量のばらつきが抑制されるようになる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態にかかる内燃機関の燃料噴射制御装置によれば、次のような効果が得られるようになる。
(1)デリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布を検出するようにしている。従って、各燃料噴射弁#1〜#6の接続位置における気体燃料の温度をそれぞれ知ることができる。そして、この温度分布に基づき、各気筒に対応した燃料噴射弁の燃料噴射時間TAUをそれぞれ個別に補正するようにしている。従って、気体燃料の温度に対応して各燃料噴射弁#1〜#6毎に燃料噴射時間を補正することができるようになり、その結果、デリバリパイプ6内の燃料温度の差違による燃料噴射量のばらつきを好適に抑制することができるようになる。
【0055】
(2)デリバリパイプ6内での燃料の温度分布を、各燃料噴射弁#1〜#6の接続位置にそれぞれ設けられた温度センサ20a〜20fによって検出するようにしている。そのため、各燃料噴射弁#1〜#6の接続位置における気体燃料の実際の温度を検出することができ、デリバリパイプ6内の温度分布を精度よく検出することができるようになる。その結果、各燃料噴射弁#1〜#6の燃料噴射時間に対する温度補正もより正確に行うことができるようになる。
【0056】
(3)気体燃料の温度が高いほど温度補正係数Kの値が大きくなるように、すなわち燃料噴射時間TAUが長くなるようにしている。従って、気体燃料の温度の高い部分、すなわち気体密度の低い部分に対応した燃料噴射弁ほど燃料噴射時間が長くされる。その結果、気体燃料の温度分布に対応させて、各燃料噴射弁#1〜#6の燃料噴射量のばらつきを確実に抑制することができるようになる。
【0057】
(4)各燃料噴射弁#1〜#6毎の燃料噴射時間の補正を、温度分布より求められるデリバリパイプ6内の各燃料噴射弁#1〜#6の接続位置の燃料温度にそれぞれ基づいて行うようにしている。例えば、燃料噴射弁#1の接続位置に設けられた温度センサ20aの検出結果に基づいて同燃料噴射弁#1の燃料噴射時間を補正するようにしている。従って、各燃料噴射弁の燃料噴射時間に対して、燃料温度に対応した補正を確実に行うことができるようになる。
【0058】
(5)上述したように、温度に起因する燃料密度の変化率は、液体に比して気体の方が著しく大きい。そのため、デリバリパイプ6内に気体状態の燃料が導入される場合には、デリバリパイプ6内に液体状態の燃料が導入される場合と比較して、燃料温度に起因する燃料噴射量のばらつきも大きくなる。この点、上記実施形態によれば、デリバリパイプ6内に気体状態の燃料が導入される場合であっても、燃料温度の差違による燃料噴射量のばらつきを好適に抑制することができるようになる。
【0059】
(第2の実施形態)
次に、本発明にかかる内燃機関の燃料噴射制御装置の第2の実施形態について説明する。
【0060】
前記第1の実施形態では、デリバリパイプ6にあって各燃料噴射弁#1〜#6の接続位置に温度センサ20a〜20fをそれぞれ配設することにより、デリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布を実際に検出するようにした。
【0061】
これに対し、本実施形態では、デリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布を推定するようにしている。すなわち、一般に、デリバリパイプ6内の燃料流量が増大すると、燃料の流速も速くなる。このように燃料の流速が速くなると、気体燃料がデリバリパイプ6の燃料供給口6aから各燃料噴射弁#1〜#6に到達するまでの時間も短くなり、気体燃料の受熱時間も短くなる。そのため、図6に例示するように、燃料流量が増大するにつれて各燃料噴射弁#1〜#6に対応する気筒間における気体燃料の温度差も小さくなる。すなわち、燃料流量が増大すると、デリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布における温度差は小さくなる傾向にあり、この傾向は予めの実験等によって知ることができる。従って、デリバリパイプ6内の所定位置における燃料温度を検出するとともに、燃料流量から推定できる温度分布の傾向を考慮することで、デリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布を推定することができる。このように、温度分布を推定することによって温度センサの数を少なくしてもデリバリパイプ6内の温度分布を知ることができるようになり、温度センサの設置に必要なコストの低減を図ることができるようになる。
【0062】
以下、こうした第2の実施形態について図7〜図9を併せ参照し、第1の実施形態との違いを中心に説明する。
図7は、本実施形態にかかる燃料噴射制御装置が適用される圧縮天然ガスを燃料とする内燃機関1とともに、その燃料供給系を示す概略構成図である。本実施形態と前記第1の実施形態とは、デリバリパイプ6の燃料供給口6aから最も離れた位置、すなわち燃料噴射弁#1近傍に温度センサ20が1つだけ配設されている点が構成上異なっている。そのため、先の図1に示した部材と同一の部材には、同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0063】
さて、本実施形態では上述したように、デリバリパイプ6内の所定位置における燃料温度、すなわち燃料噴射弁#1近傍に配設された温度センサ20によって検出される代表点燃料温度THFMと燃料流量Gfとに基づいてデリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布を推定している。そして、この推定される温度分布に対応して各燃料噴射弁#1〜#6の燃料噴射量、すなわち燃料噴射時間を補正するようにしている。ここで、本実施形態における燃料噴射時間の算出処理手順は、前記第1の実施形態で説明した処理手順(図2)と同一であり、温度補正係数Kを求める補正係数算出処理が異なっている。そこで、以下では、本実施形態における補正係数算出処理を、図8、図9を併せ参照して詳細に説明する。
【0064】
図8は、本実施形態における温度補正係数Kの算出処理手順を示している。なお本実施形態においても、この補正係数算出処理は、先の噴射時間算出処理が実行される所定クランク角よりも少し前のクランク角における割り込み処理として制御装置30により繰り返し実行される。
【0065】
この処理が開始されると、まず、次回燃料噴射が行われる燃料噴射弁#nの読み込みが行われる(ステップS310)。この検出は、前回燃料噴射が行われた燃料噴射弁#n−1に割り当てられた番号を前記RAMに一時記憶しておくことで、次回燃料噴射が行われる燃料噴射弁#nを検出することができる。
【0066】
次に、温度センサ20によって検出された代表点燃料温度THFMとデリバリパイプ6内の燃料流量Gfが読み込まれる(ステップS320)。ここで、燃料流量Gfは、燃料噴射時間が長くなるほど多くなるといった傾向がある。そこで本実施の形態では、この補正係数算出処理が行われる直前に設定された最終燃料噴射時間TAUFに基づいて現在の燃料流量Gfを推定している。なお、この燃料流量Gfを流量センサ等で直接検出してもよい。また、燃料流量Gfと機関負荷とは相関関係にあるため、燃料流量Gfに代えて、機関負荷を示すパラメータを用いるようにしてもよい。
【0067】
次に、図9に例示する各燃料噴射弁#1〜#6に対応してそれぞれ用意された温度補正係数マップのうち、前記読み込まれた燃料噴射弁#nに対応した温度補正係数マップが選択される(ステップS330)。
【0068】
ここで、これら各温度補正係数マップについて説明する。
まず、これら各温度補正係数マップは、前記ROM内に記憶されている。また、前述したように、燃料噴射弁#1から燃料噴射弁#6に向かうほどデリバリパイプ6内の気体燃料の温度は低くなる傾向にある。従って、本実施形態では、燃料噴射弁#1用の温度補正係数マップから燃料噴射弁#6用の温度補正係数マップに向かうにつれて、それら各マップに設定された温度補正係数Kの値は小さくなるように設定されている。すなわち、燃料噴射弁#1から燃料噴射弁#6に向かうほど燃料噴射時間TAUが短くなるように温度補正係数Kは設定されている。
【0069】
また、燃料流量Gfが増大するほど、デリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布、換言すれば温度勾配の傾きが小さくなる傾向にある。従って、燃料流量Gfの増大に伴って、代表点燃料温度THFMと各燃料噴射弁#1〜#6の接続位置における気体燃料との温度差はそれぞれ小さくなると推定できる。この点を考慮して、各温度補正係数マップは、燃料流量Gfの増大に伴って各燃料噴射弁#1〜#6毎の燃料噴射時間の差が小さくなるように温度補正係数Kは設定されている。また、代表点燃料温度THFMが高くなるほどデリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布が高温側にシフトすると推定できる。そのため、代表点燃料温度THFMが高くなるほど燃料噴射時間が長くなるように温度補正係数Kは設定されている。このように、上記温度補正係数マップは、代表点燃料温度THFMと燃料流量Gfとに基づいて推定されるデリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布に対応した温度補正係数Kが設定されている。
【0070】
次に、代表点燃料温度THFMと燃料流量Gfとに基づき、上記選択された温度補正係数マップを参照して、次回燃料噴射が行われる燃料噴射弁#nに対応した温度補正係数Kが求められる(ステップS340)。こうして算出された温度補正係数Kが、先の図2で説明したステップS140における燃料噴射時間TAUの補正に用いられる。その結果、気体燃料の温度に起因する燃料の密度変化分が補償された最終燃料噴射時間TAUFが各燃料噴射弁#1〜#6毎に個別に算出される。
【0071】
以上説明したように、本実施形態にかかる内燃機関の燃料噴射制御装置によれば、次のような効果が得られるようになる。
(1)デリバリパイプ6にあって、燃料噴射弁#1の近傍に設けられた温度センサ20によって検出される代表点燃料温度THFMと、デリバリパイプ6内の燃料流量Gfに基づいて同デリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布を推定するようにしている。従って、前記第1の実施形態と比較して、温度センサの数を少なくしてもデリバリパイプ6内の温度分布を知ることができるようになり、温度センサの設置に必要なコストの低減を図ることができるようになる。
【0072】
(第3の実施形態)
次に、本発明にかかる内燃機関の燃料噴射制御装置の第3の実施形態について説明する。
【0073】
本実施形態では、デリバリパイプ6内の気体燃料の温度を検出する温度センサ20を設けることなく、燃料温度の変化による燃料噴射量のばらつきを抑制するようにしている。
【0074】
すなわち、先の図16に示したように、デリバリパイプ6内の燃料温度は、一般に、同デリバリパイプ6の燃料供給口6aから離れるにつれて高くなる。そこで本実施形態では、デリバリパイプ6内の燃料温度を検出することなく、このような燃料温度の分布傾向を考慮して燃料噴射時間の補正が行われるようにしている。具体的には、デリバリパイプ6の燃料供給口6aからより離れた位置に接続された燃料噴射弁、すなわち燃料温度が高い位置に接続された燃料噴射弁ほど、その燃料噴射時間を増大させるようにしている。
【0075】
以下、こうした第3の実施形態について図10〜図12を併せ参照し、第1の実施形態との違いを中心に説明する。
図10は、本実施形態にかかる燃料噴射制御装置が適用される圧縮天然ガスを燃料とする内燃機関1とともに、その燃料供給系を示す概略構成図である。本実施形態と前記第1の実施形態とは、デリバリパイプ6内の気体燃料の温度を検出ための温度センサ20が設けられていない点が構成上異なっている。そのため、先の図1に示した部材と同一の部材には、同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0076】
さて、本実施形態における燃料噴射時間の算出処理手順は、前記第1の実施形態で説明した処理手順(図2)と同一であり、温度補正係数Kを求める補正係数算出処理が異なっている。そこで、以下では、本実施形態における補正係数算出処理を、図11を併せ参照して詳細に説明する。
【0077】
図11は、本実施形態における温度補正係数Kの算出処理手順を示している。なお本実施形態においても、この補正係数算出処理は、先の噴射時間算出処理が実行される所定クランク角よりも少し前のクランク角における割り込み処理として制御装置30により繰り返し実行される。
【0078】
この処理が開始されると、まず、次回燃料噴射が行われる燃料噴射弁#nの読み込みが行われる(ステップS410)。この検出は、前回燃料噴射が行われた燃料噴射弁#n−1に割り当てられた番号を前記RAMに一時記憶しておくことで、次回燃料噴射が行われる燃料噴射弁#nを検出することができる。
【0079】
次に、読み込まれた燃料噴射弁#nに対応した温度補正係数Kが、図12に例示する温度補正係数マップから求められる(ステップS420)。この温度補正係数マップは、次のように設定されている。
【0080】
まず、本実施形態における燃料供給系では、燃料噴射弁#6から燃料噴射弁#1へ向かうほど、デリバリパイプ6の燃料供給口6aからの距離が長くなっている。ここで、この距離は固定値であって変化することはない。また、気体燃料の平均温度や燃料流量の変化に伴って、デリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布が高温側へシフトしたり、温度勾配の傾きが変化することはあっても、基本的に燃料噴射弁#1へ向かうほどデリバリパイプ6内の気体燃料の温度は高くなっているといった傾向が大きく変化することはない。さらに、機関運転状態が同一であれば、デリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布も大きく変化することはない。そこで、燃料噴射量のばらつきが顕著に出力トルクの変動に現れやすい機関運転状態であるアイドル状態でのデリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布を、予め実験等により求めておく。そしてこのような実験等を通じて知り得た温度分布状態において、各燃料噴射弁#1〜#6毎に、気筒間における燃料噴射量のばらつきを抑制することのできる温度補正係数Kが前記温度補正係数マップには設定されている。すなわち、図12に示されるように、デリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布を考慮して、燃料噴射弁#6から燃料噴射弁#1に向かうほど、換言すれば燃料供給口6aからより離れた位置に接続された燃料噴射弁ほど、燃料噴射時間TAUが長くなるように温度補正係数マップは設定されている。また、上述した理由により、種々変化する機関運転状態のうち、アイドル運転状態に対応させて温度補正係数マップは設定されている。
【0081】
こうして算出された温度補正係数Kが、先の図2で説明したステップS140における燃料噴射時間TAUの補正に用いられる。その結果、気体燃料の温度に起因する燃料の密度変化分が補償された最終燃料噴射時間TAUFが各燃料噴射弁#1〜#6毎に個別に算出される。
【0082】
以上説明したように、本実施形態にかかる内燃機関の燃料噴射制御装置によれば、次のような効果が得られるようになる。
(1)デリバリパイプ6の燃料供給口6aからより離れた位置に接続された燃料噴射弁、すなわち燃料温度が高い位置に接続された燃料噴射弁ほど、その燃料噴射時間が増大されるようにしている。従って、デリバリパイプ6内の燃料温度を実際に検出するための温度センサを設けることなく、デリバリパイプ6内の燃料温度の差違による燃料噴射量のばらつきを抑制することができるようになる。
【0083】
(2)アイドル状態でのデリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布を予め実験等により求めておき、この実験結果に基づいて前記温度補正係数Kを設定するようにしている。すなわち、アイドル状態に対応させて上記温度補正係数マップを設定するようにしている。従って、アイドル状態において、デリバリパイプ6内の燃料温度の差違による燃料噴射量のばらつきを抑えることができ、気筒間の燃料噴射量のばらつきが顕著に出力トルクの変動に現れやすいアイドル状態での出力トルク変動を抑制することができるようになる。
【0084】
なお、上記各実施形態は以下のように変更して実施することもできる。
・上記第2の実施形態では、デリバリパイプ6に温度センサ20を1つ設けるようにしたが、この配設個数は適宜変更してもよい。例えば、図13に例示するように、燃料噴射弁#1の接続位置に温度センサ40aを配設し、燃料噴射弁#3と燃料噴射弁#4との間に温度センサ40bを配設し、燃料噴射弁#6の接続位置に温度センサ40cを配設する。そして、これら3つの温度センサ40a〜40cによって検出されるデリバリパイプ6内の気体燃料の温度と、デリバリパイプ6内の燃料流量とに基づいて、デリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布を推定するようにしてもよい。この場合には温度分布の推定精度をさらに高めることができるようになる。
【0085】
・上記第3の実施形態では、アイドル状態におけるデリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布を実験等により求めるようにした。この他にも、デリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布を運転状態毎に求め、その平均分布を算出して、同平均分布に対応した温度補正係数Kを温度補正係数マップに設定するようにしてもよい。
【0086】
・上記第3の実施形態では、アイドル状態におけるデリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布を実験等により求めるようにした。この他にも、デリバリパイプ6内の気体燃料の温度分布を機関運転状態毎、例えばアイドル状態、中負荷状態、高負荷状態毎に実験等を通じて求める。そして、図14に示すような各機関運転状態に対応した温度補正係数Kが設定された温度補正係数マップを用意する。そして、先の図11で説明した補正係数算出処理において、ステップS410の次に実行されるステップとして、図15に示すようなステップS510の処理手順、すなわち、機関運転状態に基づいて温度補正係数マップを選択する手順を追加するようにしてもよい。この場合には、各機関運転状態に応じた温度補正係数Kが設定されるため、上記第3の実施形態と比較して、幅広い機関運転状態において気体燃料の温度差に起因する燃料噴射量のばらつきを抑制することができるようになる。
【0087】
・燃料噴射弁毎に異なる燃料の温度差は、デリバリパイプ6の燃料供給口6aから各燃料噴射弁#1〜#6までの距離が大きく影響する。ここで、デリバリパイプ6の燃料供給口6aから各燃料噴射弁#1〜#6までの距離は予め設定されている固定値であって変化することはない。従って、デリバリパイプ6内での燃料の温度分布は、上記距離からある程度推定することができる。また、この燃料の温度分布の推定に際しては、デリバリパイプ6内の所定位置における燃料温度を考慮することで、その推定精度を向上させることができる。そこで、デリバリパイプ6内の所定位置における燃料温度と同デリバリパイプ6内の温度分布との対応関係が予め記憶されたマップを用意する。そして、デリバリパイプ6内の所定位置における燃料温度を温度センサで検出し、この検出結果に基づき前記マップからデリバリパイプ6内の温度分布を推定するようにしてもよい。この場合には、第1の実施形態と比較して、温度センサの数を少なくしてもデリバリパイプ6内の温度分布を知ることができるようになり、温度センサの設置に必要なコストの低減を図ることができるようになる。
【0088】
・上述したようにデリバリパイプ6内の燃料温度は、同デリバリパイプ6の燃料供給口6aから離れるにつれて高くなる。またこの温度分布傾向はデリバリパイプ6内の燃料温度に応じて変化する。そこで、デリバリパイプ6の燃料供給口6aからより離れた位置に接続された燃料噴射弁、すなわち燃料温度が高い位置に接続された燃料噴射弁ほど、その燃料噴射時間が増大されるようにデリバリパイプ6内の燃料温度に応じた補正を行うようにしてもよい。例えば、デリバリパイプ6の所定位置に温度センサを設ける。また、上記燃料供給口6aからより離れた位置に接続された燃料噴射弁ほどその燃料噴射時間が増大されるように温度補正係数Kが設定されたマップであって、デリバリパイプ6内の所定位置における燃料温度と各燃料噴射弁#1〜#6の温度補正係数Kとの対応関係が予め記憶されたマップを用意する。そして、このマップと温度センサによって検出される燃料温度とに基づいて、各燃料噴射弁#1〜#6の燃料噴射時間を補正するようにしてもよい。この場合には、第1の実施形態と比較して、温度センサの数を少なくしてもデリバリパイプ6内の温度分布に応じた燃料噴射時間の補正ができるようになる。また、第3の実施形態と比較して、さらに精度よくデリバリパイプ6内の燃料温度の差違による燃料噴射量のばらつきを抑制することができるようになる。
【0089】
・上記各実施形態およびその変形例では、温度補正係数Kをマップに基づいて求めるようにしたが、温度補正係数Kに関与するパラメータを用いる関係式等に基づいて同温度補正係数Kを求めるようにしてもよい。
【0090】
・上記各実施形態では、デリバリパイプ6内に気体燃料が供給される内燃機関に本発明にかかる燃料噴射制御装置を適用する場合について例示した。この他にも、デリバリパイプ6内に液体燃料が供給される内燃機関にも本発明は同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる内燃機関の燃料噴射制御装置の第1の実施形態について、その概略構成を示す図。
【図2】同実施形態による燃料噴射時間の算出にかかる処理手順を示すフローチャート。
【図3】同実施形態による気筒間の温度補正係数の算出にかかる処理手順を示すフローチャート。
【図4】同実施形態における温度補正係数マップを例示するグラフ。
【図5】同実施形態における噴射制御装置によって各燃料噴射弁毎に算出される温度補正係数Kについてその傾向を示すグラフ、及びデリバリパイプ内の気体燃料の温度分布を例示するグラフ。
【図6】第2の実施形態において、燃料流量とデリバリパイプ内の温度差との関係を例示するグラフ。
【図7】本発明にかかる内燃機関の燃料噴射制御装置の第2の実施形態について、その概略構成を示す図。
【図8】同実施形態による気筒間の温度補正係数の算出にかかる処理手順を示すフローチャート。
【図9】同実施形態における温度補正係数マップを例示するグラフ。
【図10】本発明にかかる内燃機関の燃料噴射制御装置の第3の実施形態について、その概略構成を示す図。
【図11】同実施形態による気筒間の温度補正係数の算出にかかる処理手順を示すフローチャート。
【図12】同実施形態における温度補正係数マップを例示するグラフ、及び各燃料噴射弁の接続位置における気体燃料の温度を例示するグラフ。
【図13】上記第2の実施形態の変形例を示す図。
【図14】上記第3の実施形態の変形例における温度補正係数マップを例示するグラフ。
【図15】同変形例におけるフローチャート。
【図16】デリバリパイプ内の気体燃料の温度分布を例示するグラフ。
【符号の説明】
1…内燃機関、2…燃料タンク、3…高圧燃料配管、4…低圧配管、5…減圧弁、6…デリバリパイプ、6a…燃料供給口、20…温度センサ、20a〜20f…温度センサ、21…燃圧センサ、22…カム角センサ、23…クランク角センサ、24…吸入空気量センサ、30…制御装置、40a〜40c…温度センサ、#1〜#6…燃料噴射弁。
Claims (12)
- 複数の燃料噴射弁の接続されたデリバリパイプ内の燃料の温度分布を検出ないしは推定し、その温度分布に基づいて前記複数の燃料噴射弁の燃料噴射時間をそれぞれ個別に補正する
ことを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 前記デリバリパイプ内の燃料の温度分布は、前記複数の燃料噴射弁の各接続位置における前記デリバリパイプ内の燃料温度を各々検出する複数の温度センサにより検出される
請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 前記デリバリパイプ内の燃料の温度分布は、該デリバリパイプ内の所定位置における燃料温度と該デリバリパイプ内の燃料流量とに基づき推定される
請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 前記デリバリパイプ内の燃料の温度分布は、該デリバリパイプ内の所定位置における燃料温度と該デリバリパイプ内の温度分布との対応関係が予め記憶されたマップに基づき推定される
請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 前記燃料噴射弁毎の燃料噴射時間の補正は、燃料温度が高いほど燃料噴射時間を増大するように行われる
請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 前記燃料噴射弁毎の燃料噴射時間の補正は、前記温度分布より求められる前記デリバリパイプ内の各燃料噴射弁の接続位置の燃料温度にそれぞれ基づき行われる
請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 前記燃料噴射弁毎の燃料噴射時間の補正は、前記求められる前記各燃料噴射弁の接続位置の燃料温度が高いほど当該燃料噴射弁の燃料噴射時間を増大するように行われる
請求項6に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。 - デリバリパイプに接続された複数の燃料噴射弁の燃料噴射時間を補正する内燃機関の燃料噴射制御装置において、
前記各燃料噴射弁のデリバリパイプの接続位置に応じて、その接続位置が該デリバリパイプの燃料供給口からより離れた燃料噴射弁の燃料噴射時間が、同燃料供給口により近い燃料噴射弁の燃料噴射時間に比して、より増大されるように補正を行う
ことを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 前記燃料噴射時間の補正は、機関運転状態に対応して設定されたマップであって、前記各燃料噴射弁からの燃料噴射時間の補正量が予め記憶されたマップに基づき行われる
請求項8に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 複数の燃料噴射弁の接続されたデリバリパイプ内の燃料温度に応じて、前記複数の燃料噴射弁の燃料噴射時間を補正する内燃機関の燃料噴射制御装置において、
前記各燃料噴射弁のデリバリパイプの接続位置に応じて、その接続位置が該デリバリパイプの燃料供給口からより離れた燃料噴射弁の燃料噴射時間が、同燃料供給口により近い燃料噴射弁の燃料噴射時間に比して、より増大されるように前記燃料温度に応じた補正を行う
ことを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 前記燃料温度に応じた補正は、前記デリバリパイプ内の所定位置における燃料温度と前記各燃料噴射弁からの燃料噴射時間の補正量との対応関係が予め記憶されたマップに基づき行われる
請求項10に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 前記デリバリパイプ内には、気体状態の燃料が導入される請求項1〜11のいずれかに記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
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DE102006036666A1 (de) * | 2006-08-03 | 2008-02-07 | Fev Motorentechnik Gmbh | Ermittlung des Kraftstoffverbrauchs einer Brennkraftmaschine |
CN105953853A (zh) * | 2016-06-29 | 2016-09-21 | 佛山市派能机电有限公司 | 电推船发动机油耗监测系统及其运行方法 |
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2002
- 2002-12-10 JP JP2002357856A patent/JP2004190545A/ja active Pending
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