JP2004188839A - 傾斜機能型絶縁フィルムの製造方法、傾斜機能型絶縁フィルム、回転電機固定子、及び密閉型圧縮機 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも2種類以上の熱可塑性樹脂を溶融混合した溶融液をTダイやスリットなどを通してフィルム状に押出し展開した後あるいは展開すると同時に熱可塑性樹脂のうち最も高い融点あるいは軟化点を有する樹脂の融点あるいは軟化点に対して0℃〜100℃低い温度で一定時間保持する工程と続いて展開したフィルムを冷却固化する工程による傾斜機能型絶縁フィルムの製造。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、傾斜機能型絶縁フィルムの製造方法、そのフィルムを用いた回転電機固定子、及び密閉型圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、機械的特性などある特性は好ましい性質を有しているフィルムでも、電気的特性や耐熱特性などの他の特性面では不十分であり、そのフィルムをそのまま適用することが困難な場合はよくある。その場合、コーティングなどによる表面改質を行ったり、異種フィルムを張り合わせたりして、フィルムの特性を改善することは一般的に行われる。しかし、このような方法では、元のフィルムと処理面との間に界面が存在するため、機械的衝撃や熱衝撃によって、その界面での接合強度の低下などが起きることがある。
【0003】
そこで、このような明確な界面が存在しない材料として傾斜機能材料が提案されている。傾斜機能材料とは、性質の異なる2種の材料の各々の単独層の中間に両成分の比が連続的にまたは階段状に変化する層を有する材料である。このような傾斜機能材料は、スペースシャトルなど機体内部と外部で非常に大きな温度差が生じる外装材の開発に生まれた発想である。
【0004】
代表的な傾斜機能材料の製造方法として、蒸着法、粒子法、溶射法、燃焼合成法などが挙げられる。蒸着法は、基材に化学蒸着を行う際に、2種の原料ガスの流量比を時間的に連続的に変化させることで基材上に傾斜構造面を形成する方法である。粒子法は、粒径の異なる粒子混合物の組成比を変化させながら容器に詰めていき、焼結させる方法や、粒径の異なる粒子の組成比を変えた粒子混合物と有機バインダーの薄膜を作成し、それらを積層して焼結させる方法である。溶射法は、基材面に2種の溶射剤を組成比を変えながらプラズマ溶射する方法である。燃焼合成法は、自己発熱反応法により、原料粉末の混合物の組成比を変えながら積層して、その圧粉体を静水圧下で着火合成する方法である。
【0005】
また、特許第2869895号公報(特許文献1)、特開平8−257738号公報(特許文献2)などには、遠心力を利用した傾斜機能材料の製造方法が、特開平7−17772号公報(特許文献3)にはスクリーン印刷を利用した傾斜機能材料の製造方法が提案されている。
【0006】
一方、空調、冷凍、冷蔵などの用途に用いられる冷媒システムでは、冷媒としてフロンが用いられてきたが、オゾン層破壊の地球環境問題の観点から塩素元素を含まない代替冷媒への変更が進められてきた。代替冷媒としては炭素、水素、フッ素からなるHFC系の代替フロンが用いられている。最近、さらに地球温暖化の観点から温暖化係数のより小さな冷媒として、二酸化炭素、アンモニアなどの自然冷媒や、イソブタン、プロパンなどの炭化水素系冷媒も検討され、徐々に実用化されてきている。
【0007】
回転機の場合、鉄心と界磁コイルとのスロット絶縁部のスロット絶縁、スロットスペーサ、くさびなどや、回転機の外装を覆うフィルム被覆絶縁部などに電気絶縁用部材としてプラスチックフィルムが用いられている。このフィルムとして従来、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルフィルムが、絶縁性能、機械的特性、耐熱性、加工成形性、コストなどの観点から広く用いられてきた。
【0008】
しかし、上記のような冷媒の変更に伴って、システムに使用される電気絶縁用フィルムの特性への要望も変化してきている。冷媒や冷凍機油に対する安定性はもちろん、運転温度の上昇に伴う耐熱性向上、耐加水分解性向上なども求められている。冷媒によって抽出される成分、例えばオリゴマーなどもキャピラリー詰まりの一因となるため、できるだけ少ない方がよい。
【0009】
加工性がよくコストも安価なことから、従来広く使用されてきたポリエチレンテレフタレートフィルムは耐熱性がE種、連続使用許容温度120℃であり、加水分解性も大きいため、システム系内の水分管理が重要である。また、オリゴマーの生成も見られるため、その影響も十分検討して使用する必要がある。
【0010】
そこで、ポリエチレンテレフタレートよりも耐熱性の高いフィルムとして、特公昭53−35280号公報(特許文献4)、特公昭54−1920号公報(特許文献5)、特開昭48−43198号公報(特許文献6)、特開昭62−115609号公報(特許文献7)などに、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムが提案されている。ポリエチレンナフタレートは、ポリエチレンテレフタレートに比べて高いガラス転移温度(Tg)を有していて、連続使用許容温度が155℃である。実際にポリエチレンテレフタレートフィルムよりも高い耐熱性が要求されるシステムで使用されている。
【0011】
しかし、ポリエチレンナフタレートフィルムは回転機などに適用する場合、スロットやウエッジにカッティング・成形して回転機に挿入したり、コイル成形する際に割れや層剥離が発生しやすく、加工不良が増加して生産性が低下するということが問題となっている。そのため、加工性の改善が求められている。特許第2886033号公報(特許文献8)にポリエチレンナフタレートフィルムの加工方法として加工時の温度を25℃〜80℃にすることや、ウエッジ成形時のポンチ先端曲率半径やポンチ壁面とダイとのクリアランスを調整することで、加工時の割れや層剥離を防止する方法が提案されている。
【0012】
しかし、この場合には加熱装置を必要とするため、装置コスト及び加工コストの上昇につながる。また、ポンチ曲率半径やクリアランスに制限があるため、フィルム寸法自体や精度が制限され、小型化・精密化する回転電機固定子の様々な要求に十分こたえることができない。
【0013】
また、特開昭59−4002号公報(特許文献9)にはポリエステルシートと四弗化エチレンシートとを張り合わせたもの、特開昭59−4003号公報(特許文献10)にはポリエステルシートとポリプロピレンシートとを張り合わせたもの、特開昭59−63944号公報(特許文献11)にはポリエステルシートにアラミド樹脂を塗布、焼付けしたもの、特開平5−115142号公報(特許文献12)にポリエステルフィルムと芳香族ポリアミド紙とを張り合わせたもの、特開平10−304614号公報(特許文献13)にはポリエチレンテレフタレートフィルムにポリエチレンナフタレートフィルムを張り合わせたものなどが提案されている。これらは、各々のフィルムの特徴があるが、耐熱性やコストの面などどれも一長一短がある。
【0014】
【特許文献1】
特許第2869895号公報
【特許文献2】
特開平8−257738号公報
【特許文献3】
特開平7−17772号公報
【特許文献4】
特公昭53−35280号公報
【特許文献5】
特公昭54−1920号公報
【特許文献6】
特開昭48−43198号公報
【特許文献7】
特開昭62−115609号公報
【特許文献8】
特許第2886033号公報
【特許文献9】
特開昭59−4002号公報
【特許文献10】
特開昭59−4003号公報
【特許文献11】
特開昭59−63944号公報
【特許文献12】
特開平5−115142号公報
【特許文献13】
特開平10−304614号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
従来の傾斜機能材料の製造方法では、基本的に基板上に傾斜機能材料を形成しているため、大型の材料を形成したり、連続的に生産したりすることが困難である。また、装置的にも専用設備が必要であり、製造時間も長く、コストも高くなるという課題がある。
【0016】
また、上述したような回転電機固定子のスロット絶縁には、成形、挿入時などの割れや層剥離、あるいは自動挿入時の腰折れなど、固有の問題点があった。
【0017】
本発明の目的は、かかる問題点を解消できる傾斜機能型絶縁フィルムを提供し、回転電機固定子に適用していくことにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため鋭意検討した結果、少なくとも2種類以上の熱可塑性樹脂を溶融混合した溶融液を、Tダイやスリットなどを通してフィルム状に押出し展開した後、あるいは展開すると同時に、前記熱可塑性樹脂のうち最も高い融点あるいは軟化点を有する樹脂の融点あるいは軟化点に対して0〜100℃低い温度で一定時間保持する工程と、続いて前記展開したフィルムを冷却固化する工程を含むことを特徴とする製造方法により、容易に、また連続的に傾斜機能型絶縁フィルムを形成できることが判った。
【0019】
また、冷却固化する工程の前あるいは後に延伸工程を行ったり、その延伸工程後に、用いた熱可塑性樹脂のうち最も低い融点あるいは軟化点を有する樹脂の融点あるいは軟化点以下の温度で熱固定することなどにより、フィルムの機械的特性などを改良することができる。
【0020】
また、密閉型圧縮機の回転電機固定子のスロット絶縁用などには、熱可塑性樹脂の1種がポリエチレンテレフタレートであり、他の少なくとも1種は、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルフォン、芳香族ポリアミド、及びこれらの2種以上からなる共重合体から選ばれる傾斜機能型絶縁フィルムが好適である。
【0021】
また、傾斜機能型絶縁フィルムが、少なくとも一部に空隙部を内含していることにより、誘電率を低下させ絶縁性を向上させることができる。
【0022】
適度な熱可塑性樹脂を選択することにより、カッティングや成形、スロット挿入時などに、加温などの特別な条件下におくこと無しに割れや層剥離などが起きず、また、機械による自動挿入時でも腰折れなどの発生がなく、良好な加工性により生産性の低下を引き起こさないフィルムが得られる回転電機固定子を提供できる。
【0023】
また、HFC、HCFC、二酸化炭素、アンモニア、イソブタン、プロパンから選ばれる少なくとも1種の冷媒を使用している密閉型圧縮機において、各冷媒によって最適な傾斜機能型絶縁フィルムを形成することができる。
【0024】
傾斜機能型絶縁フィルムでは、張り合わせフィルムのように接着剤を使用しないため、冷媒や冷凍機油による接着剤の溶出や分解物の生成などが起きず、キャピラリー詰まりなどの心配も無くなる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例により、更に詳しく説明する。ただし、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0026】
本発明の傾斜機能型絶縁フィルムの製造方法は、少なくとも2種類以上の熱可塑性樹脂を溶融混合した溶融液を、Tダイやスリットなどを通してフィルム状に押出し展開した後、あるいは展開すると同時に、前記熱可塑性樹脂のうち最も高い融点あるいは軟化点を有する樹脂の融点あるいは軟化点に対して0℃〜100℃低い温度で一定時間保持する工程と、続いて前記展開したフィルムを冷却固化する工程を含む方法であり、従来の一般的なフィルム成形方法に、特定温度下で一定時間保持する工程を付加した方法である。一定時間保持する工程の温度は、熱可塑性樹脂のうち最も高い融点あるいは軟化点を有する樹脂の融点あるいは軟化点に対して0℃〜100℃低い温度が好ましいが、さらに好ましくは5℃〜70℃低い温度であり、10℃〜50℃低い温度が好適である。ただし、この温度の最適値は、使用する2種類以上の樹脂の融点あるいは軟化点の差によって大きく変化する上、フィルム厚みによっても変化する。また、保持時間も同様に影響を受け、最適値が変化する。
【0027】
樹脂の傾斜が起きる原理はまだ明確ではないが、以下のようなことが考えられる。
【0028】
樹脂を溶融させた状態では高温であるが、溶融液を展開して特定温度下で一定時間保持する工程ではフィルム内部はまだ高温であるが、フィルム表面はより低い温度に晒されることになる。そのため、フィルム内部とフィルム表面の間に温度差ができ、高融点あるいは高軟化点を有する熱可塑性樹脂の拡散がフィルム表面では小さくなり、この樹脂はフィルム表面に集中しやすくなる。逆にフィルム内部には低融点あるいは低軟化点を有する樹脂が集中しやすくなり、フィルム表面と内部で熱可塑性樹脂の傾斜が起きると考えられる。
【0029】
この工程の温度を低くしすぎたり時間が短いと、十分な傾斜ができる前に全体が冷却され、傾斜材料とはならない。
【0030】
少なくとも2種類以上の熱可塑性樹脂を溶融混合した溶融液を、Tダイやスリットなどを通してフィルム状に押出し展開する工程は、一般的に樹脂フィルムを製造する装置を用いることができる。
【0031】
また、上記特定温度下で一定時間保持する工程後に、延伸工程や熱固定する工程を行う場合も、一般的な一軸延伸あるいは二軸延伸フィルムなどを成形する装置、条件で行うことができる。
【0032】
本発明の傾斜機能型絶縁フィルムの厚みは特に限定はしないが、スロット絶縁など回転電機固定子の絶縁などのために使用する場合は50μm〜400μmが好ましい。さらに好ましくは100μm〜300μmである。フィルム厚みが薄くなると電気絶縁性不足や腰折れの問題があり、また特定温度下で一定時間保持する工程でフィルム表面と内部の温度差がすぐに無くなるため十分な傾斜構造ができない。一方、フィルム厚みが厚くなると、フィルムの割れや層剥離、占積率の低下の問題が出てくる。
【0033】
本発明の傾斜機能型絶縁フィルムには必要に応じて、無機粒子や有機滑剤等の添加物を添加してもよい。無機粒子としては酸化珪素、炭酸カルシウム、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、マイカ、クレー、タルクなどが挙げられる。また、有機滑剤としてはステアリン酸アミドやオレイン酸アミドなどのアミド化合物が挙げられる。その他に酸化防止剤や難燃剤、耐候剤なども添加してもかまわない。また、本発明の傾斜機能型絶縁フィルムは、一軸あるいは二軸方向に延伸してあるもの、あるいは未延伸のものでもかまわない。
【0034】
その延伸工程後に、用いた熱可塑性樹脂のうち最も低い融点あるいは軟化点を有する樹脂の融点あるいは軟化点以下の温度で熱固定してもかまわない。もちろん熱固定温度は熱可塑性樹脂の種類により決定される。
【0035】
また、密閉型圧縮機の回転電機固定子のスロット絶縁用などには、ポリエチレンテレフタレートが広く用いられているため、熱可塑性樹脂の1種がポリエチレンテレフタレートであり、他の少なくとも1種は、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルフォン、芳香族ポリアミド、及びこれらの2種以上からなる共重合体から選ばれる傾斜機能型絶縁フィルムが好適である。これによりポリエチレンテレフタレート単体では劣っていた耐加水分解性や耐熱性などを向上させることができる。
【0036】
また、傾斜機能型絶縁フィルムが少なくとも一部に空隙部を内含していることにより、誘電率を低下させ絶縁性を向上させることができる。
【0037】
また、HFC、HCFC、二酸化炭素、アンモニア、イソブタン、プロパンから選ばれる少なくとも1種の冷媒を使用している密閉型圧縮機において、各冷媒や冷凍機油に耐性で熱や圧力、水分などにも強く、かつ加工性も良好な傾斜機能型絶縁フィルムを提供することができる。
【0038】
(傾斜機能型絶縁フィルムの作成方法)
本発明の傾斜機能型絶縁フィルム作成方法の一実施例を以下に示す。
【0039】
チップ状ポリエチレンテレフタレートとポリフェニレンサルファイド樹脂を8:2の重量比で混合した材料を単軸押出機に投入して、320℃で溶融・混練して、245℃に保たれているキャスティングドラム上にダイスリットから押出した。押出されたフィルムはそのまま245℃に保たれている恒温槽内を30分間かけて通過するように設定した。次に、長手方向に150℃で延伸、さらに155℃で幅方向に延伸して、230℃に制御された温度ゾーンで熱処理を施して、二軸延伸傾斜機能型絶縁フィルムAを作成した。
【0040】
また、比較のため、キャスティングドラムの温度を20℃にして、245℃に保たれている恒温槽を通す工程を行わず、他の条件は同様の条件で成形したフィルムBを作成した。
【0041】
さらに、材料をポリエチレンテレフタレートのみにして溶融・混練温度を300℃、キャスティングドラム温度を20℃、恒温槽を通す工程を行わず、長手方向に130℃で延伸、さらに145℃で幅方向に延伸して、220℃に制御された温度ゾーンで熱処理を施して、二軸延伸絶縁フィルムCを作成した。
【0042】
また、材料をポリフェニレンサルファイドのみにして溶融・混練温度を330℃、キャスティングドラム温度を20℃、恒温槽を通す工程を行わず、長手方向に150℃で延伸、さらに165℃で幅方向に延伸して、250℃に制御された温度ゾーンで熱処理を施して、二軸延伸絶縁フィルムDを作成した。
【0043】
さらに、フィルムAと同様の組成比の混合樹脂にポリメチルペンテン微粒子を添加して単軸押出機で同様に押出し、延伸することで、空隙を内含した二軸延伸フィルムEも作成した。
【0044】
なお、フィルム厚みはどの場合も250μmとした。
【0045】
また、210μm厚みのポリエチレンテレフタレートフィルムの上下面に16μm厚みのポリフェニレンサルファイドフィルムを、エポキシ系接着剤にて張り合わせて、最終的な厚みを256μmにしたフィルムFも比較のために評価した。
【0046】
(フィルムの赤外分光分析)
フィルムA、B、Eについて、フィルム表層部及び中央部の樹脂を削り取り、KBrと混合して赤外分光分析を行った。その結果、フィルムA及びEの表層部では、ポリフェニレンサルファイド固有のピークでポリエチレンテレフタレートには見られない吸収ピークが1900cm-1に現れ、逆にポリエチレンテレフタレート固有のピークでポリフェニレンサルファイドには見られない>C=O伸縮振動によるピーク(1720cm-1)はほとんど現れなかった。さらに、フィルムA及びEの中央部では、1900cm-1のピークは見られず、1720cm-1のピークのみが見られた。このことから、フィルムA及びEでは、フィルム表層部にポリフェニレンサルファイドが集中し、中央部にポリエチレンテレフタレートが集中して存在し、2種類の樹脂が傾斜して存在している傾斜機能型絶縁フィルムになっていると考えられる。
【0047】
一方、フィルムBでは、表層部、中央部ともに同様のピークが見られ、どちらも1900cm-1のピーク及び、1720cm-1のピークの両方が見られた。この結果、フィルムBでは、単純に2種類の樹脂が均一にブレンドされたフィルムとなっていることが判る。
【0048】
(フィルムの機械的特性、電気的特性)
得られたフィルムの長手方向の破断強度、破断伸度、及び誘電率を測定した。破断伸度、引張弾性率の測定は、JIS−K−7127に準じた。フィルムをJIS4号ダンベル片に打ち抜き、引張試験機により引張速度50mm/min、室温(25℃)の条件で引張試験を行った。
【0049】
その結果をまとめて(表1)に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
(フィルムの耐熱性及び耐加水分解性評価)
得られたフィルムを、様々な温度でエージングして破断伸度が初期値の50%になるまでの時間と温度の関係をアレニウスプロットし、長期耐熱性を評価した。150℃における破断伸度の半減時間を(表2)に示す。
また、各フィルムを155℃の飽和水蒸気中に5時間放置した後の破断伸度の保持率を測定して、耐加水分解性の評価を行った。その結果も(表2)に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
(加工特性評価)
得られたフィルムを長手方向に40mm、幅方向に20mmに切り出し、幅方向に平行に両端部を5mmずつ折り返してモータ挿入用サンプルを作成した。このサンプルを回転電機固定子スロットに自動挿入して、エナメル線を巻き込んだ。次にエナメル線部分をプレス・成形した。エナメル線部分成形時の割れ発生の評価を行った。
【0054】
なお、各フィルムで120枚ずつ評価を行った。
【0055】
(表3)に各フィルムの割れ発生数を示す。
【0056】
【表3】
【0057】
以上の結果より、次のことが言える。
【0058】
ポリエチレンテレフタレート単体であるフィルムCでは、機械的特性はスロット絶縁用フィルムとしては良好で割れの発生もないが、耐熱性は小さく、加水分解性が大きい。そのため、密閉型圧縮機に使用する場合には、高温での使用や水分を含む場合にはその使用が制限される。
【0059】
一方、ポリフェニレンサルファイド単体であるフィルムDでは、耐熱性や耐加水分解性が大きく、高温や含水状態での使用にも耐えられる。しかし、破断伸度が小さく硬いフィルムであるため、回転電機固定子スロットの絶縁フィルムとして使用する場合、割れの発生が多くなり、不良発生率が高くなり生産効率は低下する。
【0060】
また、ポリエチレンテレフタレートとポリフェニレンサルファイド樹脂を8:2の重量比で混合したが、傾斜材料になっていないブレンドフィルムであるフィルムBでは、ブレンド割合の大きなポリエチレンテレフタレートに近い特性となり、耐熱性や耐加水分解性が小さい。
【0061】
また、ポリエチレンテレフタレートフィルムの上下面にポリフェニレンサルファイドフィルムを貼り付けたフィルムFは、接着しているため、破断強度や破断伸度が小さく、回転電機固定子スロットの絶縁フィルムとして使用する場合、割れの発生が多くなる。また、耐熱性や耐加水分解性もポリエチレンテレフタレートフィルムと同等であった。
【0062】
一方、ポリエチレンテレフタレートとポリフェニレンサルファイド樹脂を8:2の重量比で混合して傾斜機能型絶縁フィルムとした本発明のフィルムAは、耐熱性や耐加水分解性が大きく、しかも機械的物性はブレンド割合の大きなポリエチレンテレフタレートに近いため、回転電機固定子スロットの絶縁フィルムとして使用する場合にも割れの発生はほとんど見られなかった。
【0063】
また、このフィルムAに空隙を内含させたフィルムEでは、破断強度が小さくなるものの、他の特性はフィルムAとほぼ等しく、誘電率は小さくすることができるため、電気的特性では有効なフィルムとなる。
【0064】
そのため、ポリエチレンテレフタレートよりも高い耐熱性を必要とする密閉式圧縮機、例えば、冷媒として二酸化炭素を使用するような高い吐出温度になる圧縮機には、上述した本実施例の傾斜機能型絶縁フィルムを用いた回転電機固定子を適用することで、従来のポリエチレンテレフタレートと同様の加工性を有する密閉式圧縮機を提供できる。
【0065】
なお、本実施例では、ポリエチレンナフタレートとポリフェニレンサルファイドを用いたが、他の樹脂でも勿論かまわない。
【0066】
また、本実施例のように空隙を内含させたり、無機物の充填剤を内含しても勿論かまわない。
【0067】
【発明の効果】
以上のように、本発明の傾斜機能型絶縁フィルムは、単一樹脂フィルムの短所を補うことができ、様々な用途に最適な絶縁フィルムを提供することができる。単一樹脂フィルム同士を張り合わせた場合に懸念される接着剤の影響や、各フィルムの熱収縮率の差による影響などもなく、また、フィルム製造工程も張り合わせ工程のような追加工程が不要である。本発明の製造方法は非常に簡便であり、従来のフィルム製造プロセスに容易に組み込むことができ、装置コスト、ランニングコストも小さく、生産性も落とさないため、産業上有効である。
Claims (8)
- 少なくとも2種類以上の熱可塑性樹脂を溶融混合した溶融液を、Tダイやスリットなどを通してフィルム状に押出し展開した後、あるいは展開すると同時に、前記熱可塑性樹脂のうち最も高い融点あるいは軟化点を有する樹脂の融点あるいは軟化点に対して0℃〜100℃低い温度で一定時間保持する工程と、続いて前記展開したフィルムを冷却固化する工程を含むことを特徴とする傾斜機能型絶縁フィルムの製造方法。
- 請求項1記載の傾斜機能型絶縁フィルムの製造方法において、前記冷却固化する工程の前あるいは後に延伸工程を行うことを特徴とする傾斜機能型絶縁フィルムの製造方法。
- 請求項2記載の傾斜機能型絶縁フィルムの製造方法において、前記延伸工程後に前記熱可塑性樹脂のうち最も低い融点あるいは軟化点を有する樹脂の融点あるいは軟化点以下の温度で熱固定することを特徴とする傾斜機能型絶縁フィルムの製造方法。
- 前記熱可塑性樹脂の1種はポリエチレンテレフタレートであり、他の少なくとも1種は、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルフォン、芳香族ポリアミド、及びこれらの2種以上からなる共重合体から選ばれることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の傾斜機能型絶縁フィルムの製造方法。
- 請求項1から請求項4のいずれかに記載の傾斜機能型絶縁フィルムの製造方法において、少なくとも一部に空隙部を内含していることを特徴とする傾斜機能型絶縁フィルムの製造方法。
- 請求項1から請求項4のいずれかに記載の傾斜機能型絶縁フィルムの製造方法において、無機物の充填剤を内含していることを特徴とする傾斜機能型絶縁フィルムの製造方法。
- 請求項1から請求項6のいずれかに記載の傾斜機能型絶縁フィルムの製造方法により製造される傾斜機能型絶縁フィルムを、回転電機固定子のスロット絶縁に用いたことを特徴とする回転電機固定子。
- 請求項7記載の回転電機固定子を、HFC、HCFC、二酸化炭素、アンモニア、イソブタン、プロパンから選ばれる少なくとも1種の冷媒を使用している密閉型圧縮機の回転電機固定子に用いたことを特徴とする密閉型圧縮機。
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JP2006109556A (ja) * | 2004-10-01 | 2006-04-20 | Matsushita Electric Ind Co Ltd | 絶縁フィルムの製造方法および当該フィルムを用いた回転電機固定子と密閉型圧縮機 |
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JP2006109556A (ja) * | 2004-10-01 | 2006-04-20 | Matsushita Electric Ind Co Ltd | 絶縁フィルムの製造方法および当該フィルムを用いた回転電機固定子と密閉型圧縮機 |
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