JP2004184238A - 加熱試験装置および加熱試験方法 - Google Patents
加熱試験装置および加熱試験方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004184238A JP2004184238A JP2002351764A JP2002351764A JP2004184238A JP 2004184238 A JP2004184238 A JP 2004184238A JP 2002351764 A JP2002351764 A JP 2002351764A JP 2002351764 A JP2002351764 A JP 2002351764A JP 2004184238 A JP2004184238 A JP 2004184238A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- specimen
- heating
- cooling medium
- test apparatus
- heating test
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Investigating Strength Of Materials By Application Of Mechanical Stress (AREA)
Abstract
【課題】機械的な歪と熱的な歪を同時に付与することのできる試験装置を提供する。
【解決手段】本発明の加熱試験装置1は、レーザ・トーチ7により供試体11にレーザ光を任意の間隔で断続的に照射することができるため、供試体11に熱的な歪を付与することができる。そして、加熱試験装置1は、供試体11にレーザ光を照射することにより熱的な歪を供試体11に与えつつ油圧シリンダ6を作動することにより機械的な歪を同時に付与することができる。しかも加熱試験装置1は、供試体11に冷却媒体を供給する貫通孔を備えているため、実機が冷却機構を備える場合に、実機の使用環境を反映した試験を行うことができる。
【選択図】 図2
【解決手段】本発明の加熱試験装置1は、レーザ・トーチ7により供試体11にレーザ光を任意の間隔で断続的に照射することができるため、供試体11に熱的な歪を付与することができる。そして、加熱試験装置1は、供試体11にレーザ光を照射することにより熱的な歪を供試体11に与えつつ油圧シリンダ6を作動することにより機械的な歪を同時に付与することができる。しかも加熱試験装置1は、供試体11に冷却媒体を供給する貫通孔を備えているため、実機が冷却機構を備える場合に、実機の使用環境を反映した試験を行うことができる。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は高温環境において腐食および酸化性の雰囲気中で使用されるガスタービン、ジェットエンジンなどの翼、燃焼器等の耐熱合金製高温部品に形成された遮熱コーティングについての簡易で迅速な品質評価法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高温環境において腐食および酸化性の雰囲気中で使用される耐熱合金製高温部品の材料としてはNi基耐熱合金が好ましく、Co、Cr、Mo、W、Alなどを固溶元素として多量含有し、溶体化処理での固溶強化を主な強化機構とする固溶強化型Ni基耐熱合金と、γ’相{Ni3(Al,Ti)}の析出強化およびMo、W等による固溶強化を兼ね備える析出強化型Ni基耐熱合金が用いられている。ガスタービン翼としては動翼と静翼があるが、高温強度、高温耐酸化性および高温耐食性に優れた特性が要求されるガスタービン動翼の材料としては、IN−738LC(商品名)などの析出強化型Ni基耐熱合金が適している。
【0003】
高温環境において腐食と酸化性雰囲気中で使用される耐熱合金製高温部品には図8に断面図を示すように、基体100の表面に遮熱コーティング101が施されている。遮熱コーティング101(TBC:Thermal Barrier Coating)は、合金膜101aとセラミックス膜101bとから構成される。合金膜101aは、基体100を構成する材料よりも高温耐食耐酸化性に優れた特性を有するM−Cr−Al−Y(M:Co、Ni、Fe等)合金から構成される。合金膜101a上に形成されるセラミックス膜101bは、低熱伝導性で線膨張係数が大きく、かつ高温での安定性に優れたジルコニア(ZrO2)を主成分とするセラミックスから構成される。
セラミックス膜101bとしては、Y2O3、Dy2O3、Yb2O3などを添加した部分安定化ZrO2が用いられている。遮熱コーティング101は溶射法や電子ビーム物理蒸着法で形成されるが、電子ビーム物理蒸着法は処理時間が長いので、大型のガスタービン翼などではプラズマ溶射などの溶射法が主に用いられている。
【0004】
耐熱合金製高温部品に遮熱コーティングを施工する際の溶射条件などのばらつきにより、施工されたガスタービン翼などの高温部品実機において、遮熱コーティングの密着が不十分な場合がある。そのまま実機に使用されると短時間の使用で遮熱コーティングに亀裂の発生、剥離が生じ、これによってガスタービン翼の基体に亀裂や欠けが生じる場合がある。また、健全な遮熱コーティングを有するガスタービン翼などの高温部品においても、実機として使用されている間に遮熱コーティングに亀裂が生じてくる。この亀裂の進展によるガスタービン翼の破損という重大問題が発生する前に遮熱コーティングの再コーティング処理をして使用寿命を延ばすことが必要であり、また、遮熱コーティングの品質状態を把握して、ガスタービン翼の破損に至る前に、新翼と交換することも必要である。
【0005】
したがって、これらに対応をするためには、実機として使用開始する前に遮熱コーティングの品質状態を確認したり、実機として使用途中の遮熱コーティングの品質状態を確認したりすることが必要となっている。
遮熱コーティングの品質を評価する手法として、遮熱コーティングの顕微鏡ミクロ組織観察によって判別しようとするやり方があるが、顕微鏡ミクロ組織観察では差異が確認できなかったにもかかわらず、遮熱コーティングの剥離寿命に差異が生じる場合があり有効な品質評価法ではない。
【0006】
遮熱コーティングの剥離寿命を示す耐久性の評価法の1つとして、本出願人が開発した図9に概略模式図を示すレーザ加熱式熱サイクル試験装置110がある。このレーザ加熱式熱サイクル試験装置110は、ガスタービン翼などの実機と同様に板厚方向に温度勾配を付与した状態で1000サイクル以上の加熱、冷却を行うことにより熱的な歪を付与することができる装置である。円板状の供試体111の遮熱コーティング表面をCO2レーザ112により加熱するとともに、冷却エアーノズル113を介して供給される圧縮冷却エア114により供試体111裏面を冷却し、供試体111内部に温度勾配を設けた状態で供試体111に熱サイクルを付与することができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ガスタービンの動翼などの高温部品には、実際の使用環境下では応力が付与された状態で熱サイクルが生じる。したがって、上述したレーザ加熱式熱サイクル試験装置110による遮熱コーティングの評価のみでは、実機使用の環境を反映した評価結果を得ることはできない。
例えば、実機使用温度よりもレーザ照射による加熱温度を高くする加速試験を行うことも考えられる。しかし、加熱温度を高くすると遮熱コーティングの物性が変わってしまうという問題がある。つまり、遮熱コーティングを構成する部分安定化ZrO2は、1050℃を超えると相変態が生じてしまう。さらに、溶射等の方法で形成された遮熱コーティングはその内部に空孔を多数残存させることにより遮熱効果を発揮するが、1050℃を超える温度になると焼結が進行して空孔が減少あるいは消滅してしまう。したがって、加熱温度を高くする加速試験は、実機使用を反映したものとはならない。
加熱下で機械的な歪を付与する試験方法としては、例えば電気炉内で所定温度に加熱した試験片に三点曲げを施す方法があるが、電気炉は昇温速度(または降温速度)が極めて遅いため、熱的な歪を与えることは困難である。
【0008】
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、機械的な歪と熱的な歪を同時に付与することのできる試験装置または試験方法を提供することを目的とする。加えて本発明は、簡易な構成により任意の機械的な歪を付与することのできる試験装置または試験方法を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
かかる目的のもと、本発明の加熱試験装置は、加熱試験の対象となる供試体を保持する供試体保持手段と、供試体保持手段を介して供試体に対して圧縮方向または引張方向の荷重を付与する荷重付与手段と、供試体保持手段に保持された供試体にレーザ光を照射して加熱する第1の加熱手段と、供試体保持手段に保持された供試体に冷却媒体を供給する冷却媒体供給手段とを備える。
本発明の加熱試験装置は、第1の加熱手段により、供試体にレーザ光を任意の間隔で断続的に照射することができるため、供試体に熱的な歪を付与することができる。そして、本発明の加熱試験装置は、荷重付与手段をさらに備えているため、第1の加熱手段により供試体にレーザ光を照射することにより熱的な歪を供試体に与えつつ荷重付与手段によって機械的な歪を同時に付与することができる。しかも本発明の加熱試験装置は、供試体に冷却媒体を供給する冷却媒体供給手段を備えているため、実機が冷却機構を備える場合に、実機の使用環境を反映した試験を行うことができる。例えば、ガスタービンの動翼はその内部に冷却媒体として圧縮エアが供給されるが、このような使用環境を反映した試験を行うことができる。
【0010】
本発明の加熱試験装置は、供試体保持手段を介して供試体に対して圧縮方向または引張方向の荷重を付与する荷重付与手段を備えている。したがって、圧縮荷重による歪または引張荷重による歪を付与することができることはもちろん、圧縮方向または引張方向の荷重によって曲げ方向の歪を供試体に付与することもできる。具体的には、供試体保持手段が複数の供試体の保持位置を有し、いずれかの保持位置と荷重付与手段による圧縮方向または引張方向の荷重が供試体保持手段に作用する位置とを偏心させることにより、供試体に曲げ歪を付与することができる。このように、本発明の試験装置は、供試体保持手段が複数の保持位置を備えるという簡易な構造を有するのみで、供試体に圧縮、引張のほかに曲げ歪を付与することができる。なお、保持位置と荷重付与手段による圧縮方向または引張方向の荷重が供試体保持手段に作用する位置とが一致する場合に圧縮歪または引張歪を付与することができる。
本発明による加熱試験装置は、供試体保持手段に保持された供試体の歪を測定する歪測定手段を備えており、熱的な歪および機械的な歪が供試体に発生している状態で供試体に発生した歪を測定することができる。
【0011】
本発明の加熱試験装置において、供試体をその外部から冷却することもできるが、冷却媒体が流通する冷却媒体通路を供試体に貫通して設け、冷却媒体供給手段から供給される冷却媒体を供試体保持手段を介して冷却媒体通路に供給する構成とすれば、供試体内部からの冷却を可能とする。前述したガスタービンの動翼は内部に冷却媒体を流通させるが、このような冷却状態を反映した試験が可能となる。
【0012】
本発明の加熱試験装置は、第1の加熱手段がレーザ光を照射して供試体を加熱する。この加熱は比較的に小面積な領域の加熱に留まる。したがって、本発明の加熱試験装置において、レーザ光が照射される部分を含み、あるいは含まない比較的広い領域を加熱することのできる第2の加熱手段を設けることにより、実機を反映した加熱条件を容易に創り出すことができる。この第2の加熱手段としては、高周波加熱、ヒータ等の公知の加熱手段を採用することができる。
【0013】
また本発明は、以上の加熱試験装置を用いることにより、以下の加熱試験方法を実現することができる。すなわち本発明は、母材の表面にコーティング層が形成された供試体に機械的な歪を付与し、機械的な歪が付与された状態で、コーティング層が形成された表面とは異なる面に冷却媒体を供給しながら、コーティング層に対してレーザ光を照射することにより、コーティング層から冷却媒体を供給する面との間に熱勾配を形成する加熱試験方法を実現することができる。この加熱試験方法によれば、コーティング層から冷却媒体を供給する面との間に熱勾配を形成し、レーザ光を照射するとともに機械的な歪を付与するから、例えば前述したガスタービンの動翼の実機使用を反映した試験を行うことができる。もちろん、ガスタービン動翼以外の部材の実機使用を想定できることは言うまでもない。なお、熱的な歪を付与するためにはコーティング層へのレーザ光の照射を断続的に行うべきである。
【0014】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における加熱試験装置1の構成を説明するための図である。
図1に示すように、加熱試験装置1は、図4に示す円筒状の供試体11の両端部を保持する上下一対の保持具3を備えている。
ここで、供試体11は図4に示すように、両端部にねじ山が形成された円筒状の本体12と、本体12の中央部外周面に形成された遮熱コーティング13を備えている。遮熱コーティング13は、例えば前述したM−Cr−Al−Y(M:Co、Ni、Fe等)合金膜と、ZrO2を主成分とするセラミックス膜とを積層したものとすることができる。また、供試体11には、加熱試験時に冷却媒体としてのエアが通過する貫通孔が形成されている。
【0015】
一対の保持具3は、各々冷却媒体としてのエアが通過する冷却媒体通過路31が形成されている。また、保持具3には、供試体11の両端に形成されたねじ山と螺合するねじ孔32が形成されている。ねじ孔32が形成された部分において、ねじ孔32の中心軸と冷却媒体通過路31の中心軸は一致している。保持具3には、その中空部が冷却媒体通過路31と連通する管路33が接続されている。一方(図1では下方)の管路33には圧縮機(P)10が接続されている。
【0016】
保持具3は、図1および図3に示すように、例えばボルトおよびナットからなる締結具4により略コ字状の断面を有する固定具2に固定されている。
固定具2はロッド5に接続されている。図1に示した例では、下側に位置するロッド5は位置が固定されているが、上側に位置するロッド5は油圧シリンダ6によって昇降可能とされている。上側のロッド5の昇降に伴って保持具3もまた昇降する。
図1に示すように、ロッド5の中心軸に対して保持具3に形成されたねじ孔32の中心軸は距離Lだけ偏心している。
加熱試験装置1は、図1に示すように供試体11に対してレーザ光を照射するレーザ・トーチ7を備えている。レーザ・トーチ7は、制御回路9によって発振が制御されるレーザ発振器8の動作によってレーザ光を出射する。レーザ・トーチ7からのレーザ光は連続的または断続的に出射することができる。
【0017】
図2は、供試体11を加熱試験装置1に取り付けて加熱試験を実施している状態を示している。
図2に示すように、供試体11の両端に形成されたねじ山と保持具3に形成されたねじ孔32を螺合することにより、供試体11を保持具3で保持する。供試体11が保持具3で保持された状態で供試体11に形成された貫通孔と保持具3に形成された冷却媒体通過路31とが連通する。
供試体11が保持具3に保持された状態で圧縮機10からエアを管路33(図2では下側の管路33)に供給する。そうすると、エアは下側の管路33、下側の固定具2、供試体11、上側の固定具2、上側の管路33を通過して外部に排出される。エアは供試体11を通過する過程で供試体11の冷却媒体として機能する。このとき、冷却媒体としてのエアは供試体11を内部から冷却するから、内部から冷却される形態の高温部品の加熱・冷却状態を模擬することができる。
【0018】
供試体11が保持具3に保持された状態で、供試体11には変位計20を接触される。変位計20は図示しない歪ゲージを用いた公知の機器である。変位計20の所定箇所に埋め込まれた歪ゲージが出力する電圧値によって、供試体11の歪(変位)量を計測器21が検知することができる。検知した歪量に基づいて、供試体11に所望する歪量が付与されるように油圧シリンダ6を操作する。
【0019】
加熱試験装置1は、供試体11が保持具3で保持された状態で油圧シリンダ6を駆動することにより、供試体11に圧縮方向または引張方向の荷重を付与することができる。ただし、加熱試験装置1は、締結具4の中心軸とねじ孔32の中心軸とが距離Lだけ偏心しているため、供試体11には曲げ応力Mが作用することになる。もちろん、図5(a)に示すように偏心量をゼロとすれば供試体11に単純な圧縮応力または引張応力を作用させることができるし、図5(b)に示すように偏心量を大きくすることにより曲げの程度を大きくすることができる。このように、加熱試験装置1は、偏心量の異なる複数の保持具3を用意するのみで、任意の機械的な歪を供試体11に付与させることができる。
【0020】
供試体11内部に冷却媒体としてのエアを供給し、かつ油圧シリンダ6を動作させることにより供試体11に機械的な歪を付与した状態で、レーザ・トーチ7からレーザ光を供試体11に対して照射する。レーザ光の照射は断続的に、つまりレーザ光の照射、照射停止というサイクルを所定回数だけ繰り返す。この過程で、遮熱コーティングの剥離を観察することができる。
【0021】
以上説明したように、加熱試験装置1は、油圧シリンダ6を駆動することにより、保持具3で保持した供試体11に対して機械的な歪を付与しながらレーザ・トーチ7からレーザ光を断続的に出射することにより熱的な歪を付与することができる。ここで、機械的な歪は、油圧シリンダ6の駆動条件、保持具3による偏心量Lを変動することにより調整することができる。また、熱的な歪も、レーザ・トーチ7から出射されるレーザ光の強度、出射間隔を変動させることにより調整することができる。つまり、加熱試験装置1によれば、実機に対応する種々の試験条件を容易に実現することができる。さらに、加熱試験装置1は、供試体11に貫通孔を設けてその内部を冷却媒体であるエアを供給する構成となっているため、ガスタービンの動翼を反映した加熱試験を実施することができる。このとき、供試体11は、その表面部から貫通孔にかけて熱勾配が形成される。
【0022】
(第2の実施の形態)
次に本発明による第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態は、遮熱コーティングが表面に施されたガスタービンの動翼40を用いて加熱試験を実施する形態について説明する。
図6に示すように翼部41と基部42とからなる動翼40の翼部41を加工して切り込み43を形成する。翼部41のうちで、切り込み43を除く部分を立ち上がり部44と呼ぶことにする。
切り込み43を形成した動翼40は、図7に示すように翼部41を保持具3aで保持するとともに基部42を保持具3bで保持する。保持具3bは位置が固定されているが、保持具3aは図示しない油圧シリンダ等のアクチュエータによって昇降可能である。したがって、保持具3aを所定位置より上昇させることにより動翼40の立ち上がり部44には引張方向の応力が付与され、一方保持具3bを所定位置より下降させることにより動翼40に圧縮方向の応力が付与される。このとき、動翼40の立ち上がり部44には曲げ応力による歪が発生する。
【0023】
第2の実施の形態も第1の実施の形態と同様に、制御回路9によって発振が制御されるレーザ発振器8の動作によってレーザ光を出射するレーザ・トーチ7を備えている。レーザ・トーチ7から出射されるレーザ光は、動翼40の立ち上がり部44の所定位置に照射される。このレーザ光の照射により、立ち上がり部44は加熱される。レーザ光の出射は、第1の実施の形態と同様に連続的または断続的に行うことができる。
【0024】
第2の実施の形態では、加熱手段としてレーザ・トーチ7の他に高周波加熱装置50を備えている。高周波加熱装置50は、高周波コイル51と制御回路52とを備えている。高周波コイル51は、動翼40の立ち上がり部44の周囲に巻き回されている。制御回路52により高周波コイル51に通電することにより、立ち上がり部44を高周波加熱する。
【0025】
第2の実施の形態では、固定具3aを所定位置から上昇または降下させることにより、動翼40の立ち上がり部44に曲げ応力に基づく機械的な歪を付与する。同時に、高周波加熱装置50を用いて立ち上がり部44を所定の温度まで加熱する。さらに、レーザ・トーチ7から立ち上がり部44にレーザ光を断続的に照射することにより、立ち上がり部44に熱的な歪を付与する。図7からわかるように、高周波加熱装置50はレーザ・トーチ7によって加熱される領域を含みかつそれよりも広い領域を加熱することができる。動翼40は実機においてその全体が加熱されることから、高周波加熱装置50を設けることにより、実機により近い試験環境を創り出すことができる。レーザ光の照射を行いながら、立ち上がり部44の表面に形成された遮熱コーティングの剥離状況を観察することができる。
【0026】
以上説明したように、第2の実施の形態においても、動翼40に対して機械的な歪を付与しながら熱的な歪を付与することができる。しかも第2の実施の形態では、加工された動翼40を供試体として用い、かつ高周波加熱装置50を設けたので、実機の使用条件に近い条件での試験が可能となる。さらに、保持具3aの昇降の程度、高周波コイル51への通電条件およびレーザ光の照射条件を組み合わせることにより、広範な試験条件を実現することができる。そのため、種々の実機使用条件に対応する加熱試験を行うことができる。
【0027】
なお、上記実施の形態ではガスタービンの動翼に関して説明したが、本発明の加熱試験装置、加熱試験方法は他の装置、部材について適用できることは言うまでもない。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択し、あるいは他の構成に適宜変更することが可能である。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、機械的な歪と熱的な歪を同時に付与することのできる試験装置または試験方法を提供する。加えて本発明は、簡易な構成により任意の機械的な歪を付与することのできる試験装置または試験方法を提供する。さらに本発明によれば、2つの異なる加熱手段を設けることにより、実機使用条件をより反映させた加熱条件を実現する加熱試験装置または加熱試験方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態における加熱試験装置を説明するための構成図である。
【図2】第1の実施の形態における加熱試験装置に供試体を取り付けて加熱試験を実施している状態を示す図である。
【図3】第1の実施の形態における加熱試験装置の部分図である。
【図4】第1の実施の形態における加熱試験装置に用いる供試体を示す図である。
【図5】第1の実施の形態における保持具を示す図である。
【図6】第2の実施の形態に用いる供試体を示す図である。
【図7】第2の実施の形態による加熱試験状況を示す図である。
【図8】遮熱コーティング層の構成を示す図である。
【図9】従来のレーザ加熱式熱サイクル試験装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
1…加熱試験装置、2…固定具、3,3a,3b…保持具、4…締結具、5…ロッド、6…油圧シリンダ、7…レーザ・トーチ、8…レーザ発振器、9…制御回路、10…圧縮機、11…供試体、12…本体、13…遮熱コーティング、20…変位計、21…計測器、31…冷却媒体通過路、32…ねじ孔、40…動翼、50…高周波加熱装置、51…高周波コイル、52…制御回路
【発明の属する技術分野】
本発明は高温環境において腐食および酸化性の雰囲気中で使用されるガスタービン、ジェットエンジンなどの翼、燃焼器等の耐熱合金製高温部品に形成された遮熱コーティングについての簡易で迅速な品質評価法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高温環境において腐食および酸化性の雰囲気中で使用される耐熱合金製高温部品の材料としてはNi基耐熱合金が好ましく、Co、Cr、Mo、W、Alなどを固溶元素として多量含有し、溶体化処理での固溶強化を主な強化機構とする固溶強化型Ni基耐熱合金と、γ’相{Ni3(Al,Ti)}の析出強化およびMo、W等による固溶強化を兼ね備える析出強化型Ni基耐熱合金が用いられている。ガスタービン翼としては動翼と静翼があるが、高温強度、高温耐酸化性および高温耐食性に優れた特性が要求されるガスタービン動翼の材料としては、IN−738LC(商品名)などの析出強化型Ni基耐熱合金が適している。
【0003】
高温環境において腐食と酸化性雰囲気中で使用される耐熱合金製高温部品には図8に断面図を示すように、基体100の表面に遮熱コーティング101が施されている。遮熱コーティング101(TBC:Thermal Barrier Coating)は、合金膜101aとセラミックス膜101bとから構成される。合金膜101aは、基体100を構成する材料よりも高温耐食耐酸化性に優れた特性を有するM−Cr−Al−Y(M:Co、Ni、Fe等)合金から構成される。合金膜101a上に形成されるセラミックス膜101bは、低熱伝導性で線膨張係数が大きく、かつ高温での安定性に優れたジルコニア(ZrO2)を主成分とするセラミックスから構成される。
セラミックス膜101bとしては、Y2O3、Dy2O3、Yb2O3などを添加した部分安定化ZrO2が用いられている。遮熱コーティング101は溶射法や電子ビーム物理蒸着法で形成されるが、電子ビーム物理蒸着法は処理時間が長いので、大型のガスタービン翼などではプラズマ溶射などの溶射法が主に用いられている。
【0004】
耐熱合金製高温部品に遮熱コーティングを施工する際の溶射条件などのばらつきにより、施工されたガスタービン翼などの高温部品実機において、遮熱コーティングの密着が不十分な場合がある。そのまま実機に使用されると短時間の使用で遮熱コーティングに亀裂の発生、剥離が生じ、これによってガスタービン翼の基体に亀裂や欠けが生じる場合がある。また、健全な遮熱コーティングを有するガスタービン翼などの高温部品においても、実機として使用されている間に遮熱コーティングに亀裂が生じてくる。この亀裂の進展によるガスタービン翼の破損という重大問題が発生する前に遮熱コーティングの再コーティング処理をして使用寿命を延ばすことが必要であり、また、遮熱コーティングの品質状態を把握して、ガスタービン翼の破損に至る前に、新翼と交換することも必要である。
【0005】
したがって、これらに対応をするためには、実機として使用開始する前に遮熱コーティングの品質状態を確認したり、実機として使用途中の遮熱コーティングの品質状態を確認したりすることが必要となっている。
遮熱コーティングの品質を評価する手法として、遮熱コーティングの顕微鏡ミクロ組織観察によって判別しようとするやり方があるが、顕微鏡ミクロ組織観察では差異が確認できなかったにもかかわらず、遮熱コーティングの剥離寿命に差異が生じる場合があり有効な品質評価法ではない。
【0006】
遮熱コーティングの剥離寿命を示す耐久性の評価法の1つとして、本出願人が開発した図9に概略模式図を示すレーザ加熱式熱サイクル試験装置110がある。このレーザ加熱式熱サイクル試験装置110は、ガスタービン翼などの実機と同様に板厚方向に温度勾配を付与した状態で1000サイクル以上の加熱、冷却を行うことにより熱的な歪を付与することができる装置である。円板状の供試体111の遮熱コーティング表面をCO2レーザ112により加熱するとともに、冷却エアーノズル113を介して供給される圧縮冷却エア114により供試体111裏面を冷却し、供試体111内部に温度勾配を設けた状態で供試体111に熱サイクルを付与することができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ガスタービンの動翼などの高温部品には、実際の使用環境下では応力が付与された状態で熱サイクルが生じる。したがって、上述したレーザ加熱式熱サイクル試験装置110による遮熱コーティングの評価のみでは、実機使用の環境を反映した評価結果を得ることはできない。
例えば、実機使用温度よりもレーザ照射による加熱温度を高くする加速試験を行うことも考えられる。しかし、加熱温度を高くすると遮熱コーティングの物性が変わってしまうという問題がある。つまり、遮熱コーティングを構成する部分安定化ZrO2は、1050℃を超えると相変態が生じてしまう。さらに、溶射等の方法で形成された遮熱コーティングはその内部に空孔を多数残存させることにより遮熱効果を発揮するが、1050℃を超える温度になると焼結が進行して空孔が減少あるいは消滅してしまう。したがって、加熱温度を高くする加速試験は、実機使用を反映したものとはならない。
加熱下で機械的な歪を付与する試験方法としては、例えば電気炉内で所定温度に加熱した試験片に三点曲げを施す方法があるが、電気炉は昇温速度(または降温速度)が極めて遅いため、熱的な歪を与えることは困難である。
【0008】
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、機械的な歪と熱的な歪を同時に付与することのできる試験装置または試験方法を提供することを目的とする。加えて本発明は、簡易な構成により任意の機械的な歪を付与することのできる試験装置または試験方法を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
かかる目的のもと、本発明の加熱試験装置は、加熱試験の対象となる供試体を保持する供試体保持手段と、供試体保持手段を介して供試体に対して圧縮方向または引張方向の荷重を付与する荷重付与手段と、供試体保持手段に保持された供試体にレーザ光を照射して加熱する第1の加熱手段と、供試体保持手段に保持された供試体に冷却媒体を供給する冷却媒体供給手段とを備える。
本発明の加熱試験装置は、第1の加熱手段により、供試体にレーザ光を任意の間隔で断続的に照射することができるため、供試体に熱的な歪を付与することができる。そして、本発明の加熱試験装置は、荷重付与手段をさらに備えているため、第1の加熱手段により供試体にレーザ光を照射することにより熱的な歪を供試体に与えつつ荷重付与手段によって機械的な歪を同時に付与することができる。しかも本発明の加熱試験装置は、供試体に冷却媒体を供給する冷却媒体供給手段を備えているため、実機が冷却機構を備える場合に、実機の使用環境を反映した試験を行うことができる。例えば、ガスタービンの動翼はその内部に冷却媒体として圧縮エアが供給されるが、このような使用環境を反映した試験を行うことができる。
【0010】
本発明の加熱試験装置は、供試体保持手段を介して供試体に対して圧縮方向または引張方向の荷重を付与する荷重付与手段を備えている。したがって、圧縮荷重による歪または引張荷重による歪を付与することができることはもちろん、圧縮方向または引張方向の荷重によって曲げ方向の歪を供試体に付与することもできる。具体的には、供試体保持手段が複数の供試体の保持位置を有し、いずれかの保持位置と荷重付与手段による圧縮方向または引張方向の荷重が供試体保持手段に作用する位置とを偏心させることにより、供試体に曲げ歪を付与することができる。このように、本発明の試験装置は、供試体保持手段が複数の保持位置を備えるという簡易な構造を有するのみで、供試体に圧縮、引張のほかに曲げ歪を付与することができる。なお、保持位置と荷重付与手段による圧縮方向または引張方向の荷重が供試体保持手段に作用する位置とが一致する場合に圧縮歪または引張歪を付与することができる。
本発明による加熱試験装置は、供試体保持手段に保持された供試体の歪を測定する歪測定手段を備えており、熱的な歪および機械的な歪が供試体に発生している状態で供試体に発生した歪を測定することができる。
【0011】
本発明の加熱試験装置において、供試体をその外部から冷却することもできるが、冷却媒体が流通する冷却媒体通路を供試体に貫通して設け、冷却媒体供給手段から供給される冷却媒体を供試体保持手段を介して冷却媒体通路に供給する構成とすれば、供試体内部からの冷却を可能とする。前述したガスタービンの動翼は内部に冷却媒体を流通させるが、このような冷却状態を反映した試験が可能となる。
【0012】
本発明の加熱試験装置は、第1の加熱手段がレーザ光を照射して供試体を加熱する。この加熱は比較的に小面積な領域の加熱に留まる。したがって、本発明の加熱試験装置において、レーザ光が照射される部分を含み、あるいは含まない比較的広い領域を加熱することのできる第2の加熱手段を設けることにより、実機を反映した加熱条件を容易に創り出すことができる。この第2の加熱手段としては、高周波加熱、ヒータ等の公知の加熱手段を採用することができる。
【0013】
また本発明は、以上の加熱試験装置を用いることにより、以下の加熱試験方法を実現することができる。すなわち本発明は、母材の表面にコーティング層が形成された供試体に機械的な歪を付与し、機械的な歪が付与された状態で、コーティング層が形成された表面とは異なる面に冷却媒体を供給しながら、コーティング層に対してレーザ光を照射することにより、コーティング層から冷却媒体を供給する面との間に熱勾配を形成する加熱試験方法を実現することができる。この加熱試験方法によれば、コーティング層から冷却媒体を供給する面との間に熱勾配を形成し、レーザ光を照射するとともに機械的な歪を付与するから、例えば前述したガスタービンの動翼の実機使用を反映した試験を行うことができる。もちろん、ガスタービン動翼以外の部材の実機使用を想定できることは言うまでもない。なお、熱的な歪を付与するためにはコーティング層へのレーザ光の照射を断続的に行うべきである。
【0014】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における加熱試験装置1の構成を説明するための図である。
図1に示すように、加熱試験装置1は、図4に示す円筒状の供試体11の両端部を保持する上下一対の保持具3を備えている。
ここで、供試体11は図4に示すように、両端部にねじ山が形成された円筒状の本体12と、本体12の中央部外周面に形成された遮熱コーティング13を備えている。遮熱コーティング13は、例えば前述したM−Cr−Al−Y(M:Co、Ni、Fe等)合金膜と、ZrO2を主成分とするセラミックス膜とを積層したものとすることができる。また、供試体11には、加熱試験時に冷却媒体としてのエアが通過する貫通孔が形成されている。
【0015】
一対の保持具3は、各々冷却媒体としてのエアが通過する冷却媒体通過路31が形成されている。また、保持具3には、供試体11の両端に形成されたねじ山と螺合するねじ孔32が形成されている。ねじ孔32が形成された部分において、ねじ孔32の中心軸と冷却媒体通過路31の中心軸は一致している。保持具3には、その中空部が冷却媒体通過路31と連通する管路33が接続されている。一方(図1では下方)の管路33には圧縮機(P)10が接続されている。
【0016】
保持具3は、図1および図3に示すように、例えばボルトおよびナットからなる締結具4により略コ字状の断面を有する固定具2に固定されている。
固定具2はロッド5に接続されている。図1に示した例では、下側に位置するロッド5は位置が固定されているが、上側に位置するロッド5は油圧シリンダ6によって昇降可能とされている。上側のロッド5の昇降に伴って保持具3もまた昇降する。
図1に示すように、ロッド5の中心軸に対して保持具3に形成されたねじ孔32の中心軸は距離Lだけ偏心している。
加熱試験装置1は、図1に示すように供試体11に対してレーザ光を照射するレーザ・トーチ7を備えている。レーザ・トーチ7は、制御回路9によって発振が制御されるレーザ発振器8の動作によってレーザ光を出射する。レーザ・トーチ7からのレーザ光は連続的または断続的に出射することができる。
【0017】
図2は、供試体11を加熱試験装置1に取り付けて加熱試験を実施している状態を示している。
図2に示すように、供試体11の両端に形成されたねじ山と保持具3に形成されたねじ孔32を螺合することにより、供試体11を保持具3で保持する。供試体11が保持具3で保持された状態で供試体11に形成された貫通孔と保持具3に形成された冷却媒体通過路31とが連通する。
供試体11が保持具3に保持された状態で圧縮機10からエアを管路33(図2では下側の管路33)に供給する。そうすると、エアは下側の管路33、下側の固定具2、供試体11、上側の固定具2、上側の管路33を通過して外部に排出される。エアは供試体11を通過する過程で供試体11の冷却媒体として機能する。このとき、冷却媒体としてのエアは供試体11を内部から冷却するから、内部から冷却される形態の高温部品の加熱・冷却状態を模擬することができる。
【0018】
供試体11が保持具3に保持された状態で、供試体11には変位計20を接触される。変位計20は図示しない歪ゲージを用いた公知の機器である。変位計20の所定箇所に埋め込まれた歪ゲージが出力する電圧値によって、供試体11の歪(変位)量を計測器21が検知することができる。検知した歪量に基づいて、供試体11に所望する歪量が付与されるように油圧シリンダ6を操作する。
【0019】
加熱試験装置1は、供試体11が保持具3で保持された状態で油圧シリンダ6を駆動することにより、供試体11に圧縮方向または引張方向の荷重を付与することができる。ただし、加熱試験装置1は、締結具4の中心軸とねじ孔32の中心軸とが距離Lだけ偏心しているため、供試体11には曲げ応力Mが作用することになる。もちろん、図5(a)に示すように偏心量をゼロとすれば供試体11に単純な圧縮応力または引張応力を作用させることができるし、図5(b)に示すように偏心量を大きくすることにより曲げの程度を大きくすることができる。このように、加熱試験装置1は、偏心量の異なる複数の保持具3を用意するのみで、任意の機械的な歪を供試体11に付与させることができる。
【0020】
供試体11内部に冷却媒体としてのエアを供給し、かつ油圧シリンダ6を動作させることにより供試体11に機械的な歪を付与した状態で、レーザ・トーチ7からレーザ光を供試体11に対して照射する。レーザ光の照射は断続的に、つまりレーザ光の照射、照射停止というサイクルを所定回数だけ繰り返す。この過程で、遮熱コーティングの剥離を観察することができる。
【0021】
以上説明したように、加熱試験装置1は、油圧シリンダ6を駆動することにより、保持具3で保持した供試体11に対して機械的な歪を付与しながらレーザ・トーチ7からレーザ光を断続的に出射することにより熱的な歪を付与することができる。ここで、機械的な歪は、油圧シリンダ6の駆動条件、保持具3による偏心量Lを変動することにより調整することができる。また、熱的な歪も、レーザ・トーチ7から出射されるレーザ光の強度、出射間隔を変動させることにより調整することができる。つまり、加熱試験装置1によれば、実機に対応する種々の試験条件を容易に実現することができる。さらに、加熱試験装置1は、供試体11に貫通孔を設けてその内部を冷却媒体であるエアを供給する構成となっているため、ガスタービンの動翼を反映した加熱試験を実施することができる。このとき、供試体11は、その表面部から貫通孔にかけて熱勾配が形成される。
【0022】
(第2の実施の形態)
次に本発明による第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態は、遮熱コーティングが表面に施されたガスタービンの動翼40を用いて加熱試験を実施する形態について説明する。
図6に示すように翼部41と基部42とからなる動翼40の翼部41を加工して切り込み43を形成する。翼部41のうちで、切り込み43を除く部分を立ち上がり部44と呼ぶことにする。
切り込み43を形成した動翼40は、図7に示すように翼部41を保持具3aで保持するとともに基部42を保持具3bで保持する。保持具3bは位置が固定されているが、保持具3aは図示しない油圧シリンダ等のアクチュエータによって昇降可能である。したがって、保持具3aを所定位置より上昇させることにより動翼40の立ち上がり部44には引張方向の応力が付与され、一方保持具3bを所定位置より下降させることにより動翼40に圧縮方向の応力が付与される。このとき、動翼40の立ち上がり部44には曲げ応力による歪が発生する。
【0023】
第2の実施の形態も第1の実施の形態と同様に、制御回路9によって発振が制御されるレーザ発振器8の動作によってレーザ光を出射するレーザ・トーチ7を備えている。レーザ・トーチ7から出射されるレーザ光は、動翼40の立ち上がり部44の所定位置に照射される。このレーザ光の照射により、立ち上がり部44は加熱される。レーザ光の出射は、第1の実施の形態と同様に連続的または断続的に行うことができる。
【0024】
第2の実施の形態では、加熱手段としてレーザ・トーチ7の他に高周波加熱装置50を備えている。高周波加熱装置50は、高周波コイル51と制御回路52とを備えている。高周波コイル51は、動翼40の立ち上がり部44の周囲に巻き回されている。制御回路52により高周波コイル51に通電することにより、立ち上がり部44を高周波加熱する。
【0025】
第2の実施の形態では、固定具3aを所定位置から上昇または降下させることにより、動翼40の立ち上がり部44に曲げ応力に基づく機械的な歪を付与する。同時に、高周波加熱装置50を用いて立ち上がり部44を所定の温度まで加熱する。さらに、レーザ・トーチ7から立ち上がり部44にレーザ光を断続的に照射することにより、立ち上がり部44に熱的な歪を付与する。図7からわかるように、高周波加熱装置50はレーザ・トーチ7によって加熱される領域を含みかつそれよりも広い領域を加熱することができる。動翼40は実機においてその全体が加熱されることから、高周波加熱装置50を設けることにより、実機により近い試験環境を創り出すことができる。レーザ光の照射を行いながら、立ち上がり部44の表面に形成された遮熱コーティングの剥離状況を観察することができる。
【0026】
以上説明したように、第2の実施の形態においても、動翼40に対して機械的な歪を付与しながら熱的な歪を付与することができる。しかも第2の実施の形態では、加工された動翼40を供試体として用い、かつ高周波加熱装置50を設けたので、実機の使用条件に近い条件での試験が可能となる。さらに、保持具3aの昇降の程度、高周波コイル51への通電条件およびレーザ光の照射条件を組み合わせることにより、広範な試験条件を実現することができる。そのため、種々の実機使用条件に対応する加熱試験を行うことができる。
【0027】
なお、上記実施の形態ではガスタービンの動翼に関して説明したが、本発明の加熱試験装置、加熱試験方法は他の装置、部材について適用できることは言うまでもない。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択し、あるいは他の構成に適宜変更することが可能である。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、機械的な歪と熱的な歪を同時に付与することのできる試験装置または試験方法を提供する。加えて本発明は、簡易な構成により任意の機械的な歪を付与することのできる試験装置または試験方法を提供する。さらに本発明によれば、2つの異なる加熱手段を設けることにより、実機使用条件をより反映させた加熱条件を実現する加熱試験装置または加熱試験方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態における加熱試験装置を説明するための構成図である。
【図2】第1の実施の形態における加熱試験装置に供試体を取り付けて加熱試験を実施している状態を示す図である。
【図3】第1の実施の形態における加熱試験装置の部分図である。
【図4】第1の実施の形態における加熱試験装置に用いる供試体を示す図である。
【図5】第1の実施の形態における保持具を示す図である。
【図6】第2の実施の形態に用いる供試体を示す図である。
【図7】第2の実施の形態による加熱試験状況を示す図である。
【図8】遮熱コーティング層の構成を示す図である。
【図9】従来のレーザ加熱式熱サイクル試験装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
1…加熱試験装置、2…固定具、3,3a,3b…保持具、4…締結具、5…ロッド、6…油圧シリンダ、7…レーザ・トーチ、8…レーザ発振器、9…制御回路、10…圧縮機、11…供試体、12…本体、13…遮熱コーティング、20…変位計、21…計測器、31…冷却媒体通過路、32…ねじ孔、40…動翼、50…高周波加熱装置、51…高周波コイル、52…制御回路
Claims (7)
- 加熱試験の対象となる供試体を保持する供試体保持手段と、
前記供試体保持手段を介して前記供試体に対して圧縮方向または引張方向の荷重を付与する荷重付与手段と、
前記供試体保持手段に保持された前記供試体にレーザ光を照射して加熱する第1の加熱手段と、
前記供試体保持手段に保持された前記供試体に冷却媒体を供給する冷却媒体供給手段と、
を備えることを特徴とする加熱試験装置。 - 前記供試体保持手段は前記供試体の保持位置を複数有し、前記荷重付与手段による前記圧縮方向または前記引張方向の荷重が前記供試体保持手段に作用する位置とがいずれかの前記保持位置と偏心していることを特徴とする請求項1に記載の加熱試験装置。
- 前記供試体保持手段に保持された前記供試体の機械的な歪を測定する歪測定手段を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の加熱試験装置。
- 前記供試体には前記冷却媒体が流通する冷却媒体通路が貫通して設けてあり、前記冷却媒体供給手段から供給される前記冷却媒体が前記供試体保持手段を介して前記冷却媒体通路に供給されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の加熱試験装置。
- 前記供試体保持手段に保持された前記供試体を加熱する第2の加熱手段を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の加熱試験装置。
- 母材の表面にコーティング層が形成された供試体に機械的な歪を付与し、
前記機械的な歪が付与された状態で、前記コーティング層が形成された表面とは異なる面に冷却媒体を供給しながら、前記コーティング層に対してレーザ光を照射することにより、前記コーティング層から前記冷却媒体を供給する面との間に熱勾配を形成することを特徴とする加熱試験方法。 - 前記コーティング層へのレーザ光の照射を断続的に行うことを特徴とする請求項6に記載の加熱試験方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002351764A JP2004184238A (ja) | 2002-12-03 | 2002-12-03 | 加熱試験装置および加熱試験方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002351764A JP2004184238A (ja) | 2002-12-03 | 2002-12-03 | 加熱試験装置および加熱試験方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004184238A true JP2004184238A (ja) | 2004-07-02 |
Family
ID=32753585
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002351764A Pending JP2004184238A (ja) | 2002-12-03 | 2002-12-03 | 加熱試験装置および加熱試験方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004184238A (ja) |
Cited By (10)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN102183416A (zh) * | 2011-02-18 | 2011-09-14 | 浙江华电器材检测研究所 | 用于高温承载试验的拉力传感器液冷装置 |
KR101209909B1 (ko) * | 2010-07-30 | 2012-12-10 | 한국전력공사 | 가스터빈 고온부품 내구성 평가방법 |
KR101362048B1 (ko) | 2012-07-12 | 2014-02-13 | 한국전력공사 | 가스 터빈을 모사한 시험장치 |
JP2016035455A (ja) * | 2014-07-31 | 2016-03-17 | ショット アクチエンゲゼルシャフトSchott AG | 脆性材料製のプレート状部品の端部強度を測定するための方法および装置 |
JP2016133448A (ja) * | 2015-01-21 | 2016-07-25 | 三菱日立パワーシステムズ株式会社 | 熱荷重試験装置及び熱荷重試験方法 |
US9784655B2 (en) | 2014-07-31 | 2017-10-10 | Schott Ag | Method and apparatus for determining the fracture strength of the margins of thin sheets of brittle-fracture material |
WO2018124086A1 (ja) * | 2016-12-26 | 2018-07-05 | 三菱重工業株式会社 | 遮熱コーティングの試験方法及び試験片 |
CN110333052A (zh) * | 2019-04-10 | 2019-10-15 | 武汉理工大学 | 高温旋转部件测试平台 |
CN111257351A (zh) * | 2020-02-11 | 2020-06-09 | 大连理工大学 | 辐照水冷样品台 |
CN117092154A (zh) * | 2023-10-16 | 2023-11-21 | 西安交通大学 | 一种高温叶片热障涂层寿命考核的热环境实验装置及方法 |
Citations (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2002340765A (ja) * | 2001-05-14 | 2002-11-27 | Hitachi Ltd | 熱疲労寿命評価試験装置 |
JP2003315253A (ja) * | 2002-04-26 | 2003-11-06 | Toshiba Corp | コーティング部材の耐久性試験方法および試験装置 |
-
2002
- 2002-12-03 JP JP2002351764A patent/JP2004184238A/ja active Pending
Patent Citations (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2002340765A (ja) * | 2001-05-14 | 2002-11-27 | Hitachi Ltd | 熱疲労寿命評価試験装置 |
JP2003315253A (ja) * | 2002-04-26 | 2003-11-06 | Toshiba Corp | コーティング部材の耐久性試験方法および試験装置 |
Cited By (18)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR101209909B1 (ko) * | 2010-07-30 | 2012-12-10 | 한국전력공사 | 가스터빈 고온부품 내구성 평가방법 |
CN102183416A (zh) * | 2011-02-18 | 2011-09-14 | 浙江华电器材检测研究所 | 用于高温承载试验的拉力传感器液冷装置 |
KR101362048B1 (ko) | 2012-07-12 | 2014-02-13 | 한국전력공사 | 가스 터빈을 모사한 시험장치 |
JP2016035455A (ja) * | 2014-07-31 | 2016-03-17 | ショット アクチエンゲゼルシャフトSchott AG | 脆性材料製のプレート状部品の端部強度を測定するための方法および装置 |
US9664603B2 (en) | 2014-07-31 | 2017-05-30 | Schott Ag | Method and apparatus for determining the edge strength of plate-shaped elements made of brittle-fracture material |
US9784655B2 (en) | 2014-07-31 | 2017-10-10 | Schott Ag | Method and apparatus for determining the fracture strength of the margins of thin sheets of brittle-fracture material |
US10416055B2 (en) | 2014-07-31 | 2019-09-17 | Schott Ag | Method and apparatus for determining the edge strength of plate-shaped elements made of brittle-fracture material |
JP2016133448A (ja) * | 2015-01-21 | 2016-07-25 | 三菱日立パワーシステムズ株式会社 | 熱荷重試験装置及び熱荷重試験方法 |
CN110100163A (zh) * | 2016-12-26 | 2019-08-06 | 三菱重工业株式会社 | 隔热涂覆的试验方法以及试验片 |
WO2018124086A1 (ja) * | 2016-12-26 | 2018-07-05 | 三菱重工業株式会社 | 遮熱コーティングの試験方法及び試験片 |
CN110100163B (zh) * | 2016-12-26 | 2022-06-21 | 三菱重工业株式会社 | 隔热涂覆的试验方法以及试验片 |
US11493413B2 (en) | 2016-12-26 | 2022-11-08 | Mitsubishi Heavy Industries, Ltd. | Testing method and test piece of thermal barrier coating |
CN110333052A (zh) * | 2019-04-10 | 2019-10-15 | 武汉理工大学 | 高温旋转部件测试平台 |
CN110333052B (zh) * | 2019-04-10 | 2021-10-08 | 武汉理工大学 | 高温旋转部件测试平台 |
CN111257351A (zh) * | 2020-02-11 | 2020-06-09 | 大连理工大学 | 辐照水冷样品台 |
CN111257351B (zh) * | 2020-02-11 | 2021-12-03 | 大连理工大学 | 辐照水冷样品台 |
CN117092154A (zh) * | 2023-10-16 | 2023-11-21 | 西安交通大学 | 一种高温叶片热障涂层寿命考核的热环境实验装置及方法 |
CN117092154B (zh) * | 2023-10-16 | 2024-03-29 | 西安交通大学 | 一种高温叶片热障涂层寿命考核的热环境实验装置及方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP4572412B2 (ja) | 経時プラズマ光スペクトル解析を用いたレーザー衝撃ピーニングの監視及び制御方法 | |
Cervellon et al. | VHCF life evolution after microstructure degradation of a Ni-based single crystal superalloy | |
Vaßen et al. | Testing and evaluation of thermal-barrier coatings | |
US11680323B2 (en) | Method for forming a temperature sensing layer within a thermal barrier coating | |
JP2004184238A (ja) | 加熱試験装置および加熱試験方法 | |
Deng et al. | Small fatigue crack initiation and growth mechanisms of nickel-based superalloy GH4169 at 650 C in air | |
Baufeld et al. | Thermal-mechanical fatigue of MAR-M 509 with a thermal barrier coating | |
Feist et al. | Off-line temperature profiling utilizing phosphorescent thermal history paints and coatings | |
JPH0387379A (ja) | 環境遮断用耐熱壁を備えた地上機器 | |
JP2003315253A (ja) | コーティング部材の耐久性試験方法および試験装置 | |
Steinbrech et al. | Testing method to assess lifetime of EB-PVD thermal barrier coatings on tubular specimens in static and cyclic oxidation tests | |
JP5205608B2 (ja) | 経年劣化した熱遮へいコーティングの非接触非破壊検査手法 | |
Zhao et al. | Development of in situ fatigue performance testing apparatus for materials under coupling conditions of high-temperature and combined mechanical loads | |
Fouliard et al. | Doped 8% yttria stabilized zirconia for temperature measurements on thermal barrier coatings using phosphor thermometry | |
JP2004012390A (ja) | 高温部品の遮熱コーティング材の品質評価法 | |
US11718917B2 (en) | Phosphor thermometry device for synchronized acquisition of luminescence lifetime decay and intensity on thermal barrier coatings | |
WO2021133454A2 (en) | Rare-earth doped thermal barrier coating bond coat for thermally grown oxide luminescence sensing, and including temperature monitoring and measuring a temperature gradient | |
TW200925600A (en) | Method for determining the thermal shock robustness and material strength of brittle failure materials | |
JP2004125575A (ja) | 熱サイクル試験方法および熱サイクル試験用治具 | |
Dalby et al. | Crack growth in a new nickel-based superalloy at elevated temperature: Part I Effects of loading waveform and frequency on crack growth | |
Giese et al. | Microtensile creep testing of freestanding MCrAlY bond coats | |
Luo et al. | An in situ micro-indentation apparatus for investigating mechanical parameters of thermal barrier coatings under temperature gradient | |
Egly et al. | Influence of phase shift and strain path on the thermomechanical fatigue behavior of CMSX-4 specimens | |
Aublet et al. | Mechanical fatigue testing under thermal gradient and manufacturing variabilities in nickel-based superalloy parts with air-cooling holes | |
UA119316U (uk) | Спосіб обробки поверхонь сталевих деталей |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20051128 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20061121 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20071010 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20080220 |