JP2004183940A - 冷凍サイクル内に装着される断熱チューブ及び冷凍サイクル - Google Patents
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Abstract
【課題】冷凍サイクルを構成する圧縮機の体積効率向上と脈動低減とを同時に達成し得る断熱チューブ及び該断熱チューブを冷媒ガス通路内に装着した冷凍サイクルを提供する。
【解決手段】シリコンオイルとシリコンゴムとの両方を少なくとも混合し、気泡を含ませることにより多孔質とした材料からなる断熱チューブを、冷凍サイクルの通路内の内壁の少なくとも一部に装着することにより、圧縮機の体積効率向上と脈動低減とを同時に達成することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】シリコンオイルとシリコンゴムとの両方を少なくとも混合し、気泡を含ませることにより多孔質とした材料からなる断熱チューブを、冷凍サイクルの通路内の内壁の少なくとも一部に装着することにより、圧縮機の体積効率向上と脈動低減とを同時に達成することができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばカーエアコンの冷凍サイクル内の通路内に装着される断熱チューブ及び該断熱チューブを装着した冷凍サイクルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の断熱チューブとしては、例えば特開平5−99141号公報に示すような構成のものが知られている。
【0003】
即ち、冷凍サイクルより戻ってきた低温低圧の冷媒ガスが吸入管、吸入マフラー101、吸入室102、吸入孔103を通り、吸入リード104を開いてシリンダ105へ導かれて圧縮され高温高圧となり、吐出孔106を通り吐出室107へ吐出され、吐出ライン、吐出管を通り、冷凍サイクルへ導かれる構造となっている密閉電動型圧縮機において、吸入室102の内壁との間に断熱層108となるすき間をもつように熱伝導率の小さいポリブチレンテレフタレイトの断熱チューブ109を装着させる。断熱チューブ109は断熱層108を形成するために外周面にリブ110を備え、更に断熱チューブ109の吸入孔103に対向した面に吹き返し孔111となる小孔を設けたものである。
【0004】
吸入室102へと導かれた冷媒ガスは、断熱チューブ109により加熱されることが防止されるとともに、すき間は冷媒ガスが充満し断熱層108となり、シリンダヘッド112の熱が断熱チューブ109へ伝わりにくくなっている。これにより、冷媒ガスの加熱を低減し圧縮機の体積効率を上げている。
【0005】
また、吹き返した冷媒ガスが断熱チューブ109に設けた吹き返し孔111を通り、断熱層108へと導かれることにより、吹き返しによる脈動を減衰させ、冷凍サイクルの蒸発器の振動、騒音を低減する圧縮機を提供している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記従来技術のように吸入室102の内壁との間に断熱層108となるすき間をもつように、熱伝導率の小さいポリブチレンテレフタレイトの断熱チューブ109を装着するという構成では、シリンダヘッド112からの加熱、特に吐出室107側のシリンダヘッド112からの加熱による吸入冷媒ガスの温度上昇を防止し圧縮機の体積効率を上げることに対しては効果があるが、吸入脈動の低減に対しては効果がない。
【0007】
そのため前記従来技術では吸入脈動の低減を目的として、断熱チューブ109の吸入孔103に対向した面に吹き返し孔111を設けている。吹き返し孔111を設けることにより、吹き返した冷媒ガスは断熱層108へ導かれる。該断熱層108は吹き返した冷媒ガス、及び吸入した冷媒ガスに対し共鳴形消音器の役割を果たし脈動を減衰させるが、吸入マフラー101を取り除ける程の吸入脈動低減効果はない。
【0008】
又、マフラーは冷媒ガスの流路断面積の急拡大・急縮小を伴うため圧力損失が大きく、圧縮機の体積効率の低下を招く。このため、マフラーを取り除ける程の脈動低減効果がありマフラーを取り除ければ、より圧縮機の体積効率向上を達成することができる。
【0009】
本発明の目的は、圧縮機の体積効率を向上させると同時にマフラーを取り除ける程の脈動低減効果を達成することのできる断熱チューブ及び該断熱チューブをサイクル内の通路内又は圧縮機内に装着した冷凍サイクルを提供することにある。
【0010】
【発明を解決するための手段】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、冷凍サイクル内の冷媒ガス通路内に装着される断熱チューブにおいて、該断熱チューブは、シリコンオイルとシリコンゴムとの両方を少なくとも混合した材料からなり多孔質であることを特徴としている。これにより、断熱チューブの内壁面が冷凍サイクル内を伝播する脈動を吸収し、脈動を低減させることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は請求項1において、前記断熱チューブはシリコンオイルとシリコンゴムとの両方を少なくとも混合し、泡立てて気泡を含ませることにより多孔質とした材料からなることを特徴としている。これにより請求項1に記載の効果に加え、多孔質の断熱チューブを容易に製造することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は請求項1又は2において、前記断熱チューブは、ヤング率が0.1MPaから3.0MPaの範囲となることを特徴とする。この範囲において、該断熱チューブは乱流層内のバースト現象を抑制して流体の圧力損失を低減し、圧縮機の体積効率を向上させる効果を有する。
【0013】
請求項4に記載の発明は請求項1から3のいずれかにおいて、前記断熱チューブの外周面には、複数のリブが形成されていることを特徴としている。これにより、前記断熱チューブの装着された通路内壁もしくは圧縮機内壁と、該断熱チューブの外周面とにより形成される空隙部を、冷凍サイクル内の流体が通過することにより、該空隙部が断熱層の役割を果たし、圧縮機の体積効率の向上を達成できる。
【0014】
請求項5に記載の発明は請求項1から4のいずれかにおいて、前記断熱チューブの内部には、空隙部が形成されていることを特徴としている。該空隙部にガスを充満させるか又は該空隙部を真空にすることにより、該空隙部は断熱層の役割を果たし、圧縮機の体積効率の向上を達成できる。
【0015】
請求項6に記載の発明は請求項1から5のいずれかにおいて、前記断熱チューブは該断熱チューブ内の軸線方向に貫通孔を有していることを特徴としている。該貫通孔を冷凍サイクル内の流体が通過することにより、該貫通孔が断熱層の役割を果たし、圧縮機の体積効率の向上を達成できる。
【0016】
請求項7に記載の発明は請求項1から6のいずれかにおいて、前記断熱チューブの外周面には、軸線方向に溝が形成されていることを特徴としている。これにより、前記断熱チューブの装着された通路内壁もしくは圧縮機内壁と、該断熱チューブの外周面とにより形成される空隙部を、冷凍サイクル内の流体が通過することにより、該空隙部が断熱層の役割を果たし、圧縮機の体積効率の向上を達成できる。
【0017】
請求項8に記載の発明は、ハウジング内に吸入室、吸入通路、吐出室、吐出通路とが形成されている圧縮機と、該圧縮機により圧縮された冷媒ガスを凝縮するコンデンサと、凝縮した冷媒ガスを減圧する膨張弁と、減圧した冷媒ガスを吸熱蒸発させるエバポレータとを備えてなる冷凍サイクルにおいて、該冷凍サイクルの通路内の内壁の少なくとも一部に、請求項1から請求項7に記載の断熱チューブが装着されていることを特徴としている。
【0018】
これにより、前記断熱チューブを装着した範囲において流体(冷媒ガス)の乱流境界層中のバースト現象を抑制し流体の圧力損失を低減させることができるため、圧縮機の体積効率を向上させることができる。
【0019】
請求項9に記載の発明は、ハウジング内に吸入室、吸入通路、吐出室、吐出通路とが形成されている圧縮機と、該圧縮機により圧縮された冷媒ガスを凝縮するコンデンサと、凝縮した冷媒ガスを減圧する膨張弁と、減圧した冷媒ガスを吸熱蒸発させるエバポレータとを備えてなる冷凍サイクルにおいて、
前記圧縮機の吸入通路の内壁と前記吸入室の内壁との少なくとも一方に、請求項1から請求項7に記載の断熱チューブが装着されていることを特徴としている。
【0020】
これにより、前記断熱チューブが断熱材の役割を果たし冷媒ガスの加熱を防止し圧縮機の体積効率を向上させるとともに、乱流層内のバースト現象を抑制し流体の圧力損失を低減することで圧縮機の体積効率を向上させることができる。又、吸入脈動低減も同時に達成することにより冷凍サイクル中に設けられるマフラーを取り除くことができるため、コストの低減と更なる圧縮機の体積効率向上も達成できる。
【0021】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)以下、本発明を具体化した第1実施形態を図1から図3に基づいて具体的に説明する。
【0022】
(構成・作用) 図1に示すように本実施形態において、圧縮機はピストン式容量可変型圧縮機(以下、単に圧縮機10とする)であり、該圧縮機10の外部にはコンデンサ11、膨張弁12、及びエバポレータ13が配設されている。圧縮機10とコンデンサ11とは吐出配管14により連結されており、又圧縮機10とエバポレータ13とは吸入配管15により連結されている。コンデンサ11とエバポレータ13は膨張弁12を介して膨張弁前配管16、膨張弁後配管17により連結されており、これらにより冷凍サイクルが形成されている。
前記圧縮機10は図1に示すようにシリンダブロック18のフロント側端面にガスケット19を介してフロントハウジング20が接合され、その内側に制御室としてのクランク室21が区画形成されている。又、シリンダブロック18のリヤ側端面にはバルブプレート22を介してリヤハウジング23が接合され、その内部には吐出室24と吐出通路25及び吸入通路26が形成されている。吐出通路25は吐出配管14と連結されており、吸入通路26は吸入配管15と連結されている。
【0023】
前記シリンダブロック18とフロントハウジング20の中心部に形成された軸孔には駆動軸27がラジアルベアリング28a、28bを介して回転可能に支持されている。駆動軸27のフロント端部側には軸封装置29が設けられている。前記クランク室21において駆動軸27には、カムプレートとしての斜板30の回転支持体としてのラグプレート31が一体回転可能に固定されている。
【0024】
前記斜板30は、該斜板30に形成された貫通孔32に駆動軸27が挿通された状態でクランク室21に配設されている。ヒンジ機構33は、ラグプレート30と斜板31との間に介在されている。そして、斜板31は、ヒンジ機構33を介したラグプレート31との間でのヒンジ連結及び駆動軸27の支持により、該ラグプレート31及び駆動軸27と同期回転可能で、かつ駆動軸27の軸線方向へのスライド移動を伴いながら駆動軸27に対し傾動可能となっている。
【0025】
前記シリンダブロック18の内部に形成された複数のシリンダボア34には各々ピストン35が往復動可能に収容されている。各ピストン35とバルブプレート22との間には、ピストン35の往復動に応じて容積変化する圧縮室36が区画形成されている。前記ピストン35は、シュー37を介して斜板30の周縁部に係留されている。従って、駆動軸27の回転に伴う、ラグプレート31及びヒンジ機構33を介した斜板30の回転運動が、シュー37を介してピストン35の往復運動に変換される。これら斜板30、ラグプレート31、ヒンジ機構33及びシュー37が、駆動軸27の回転運動を圧縮室36内の冷媒ガスを圧縮するための圧縮運動に変換するクランク機構を構成している。
【0026】
該圧縮室36は、吐出口38を介して前記吐出室24と連通されている。前記バルブプレート22とリヤハウジング23との間には吐出弁を一体に形成した吐出弁形成板39と、リテーナ40を形成するリテーナ形成板41とが介在されている。なお、リテーナ形成板41はガスケットを兼用し、シリンダブロック18とバルブプレート22との間にはガスケット42が介在されている。
【0027】
前記駆動軸27が回転駆動することにより、冷媒ガスが吸入通路26を通って吸入室43に吸入され、吸入された冷媒ガスは圧縮室36で圧縮され、吐出口38、吐出室24、吐出通路25を通って圧縮機外に吐出される。
冷凍サイクル内の冷媒ガス通路内とは、コンデンサ11、膨張弁12、エバポレータ13の各装置内部、吐出配管14、吸入配管15、膨張弁前配管16、膨張弁後配管17の各配管内部、圧縮機内の吐出室24、吐出通路25、吸入通路26、吸入室43の各内部を指しており、本実施形態においては吸入室43の内壁に断熱チューブ44が装着されている。
該断熱チューブ44はシリコンオイルとシリコンゴムとを泡立てて混合させることで気泡を含んでいる材料からなる。なお、多孔質である断熱チューブを製造する方法としては、例えばシリコンオイルとシリコンゴムと微粉体とを混合し該微粉体を焼却して多孔質とする方法や、シリコンオイルとシリコンゴムとを混合し更にガスを注入し多孔質とする方法等を用いることもできるが、本実施形態のようにシリコンオイルとシリコンゴムとを泡立てて混合させ気泡を含ませることにより多孔質とする方法が、最も簡便に多孔質である断熱チューブを製造できる。
【0028】
エンジンの動力により圧縮機10の駆動軸27が回転すると、ラグプレート31及びヒンジ機構33を介して斜板30が回転される。このため、シュー37を介してピストン35がシリンダボア34内で往復運動され、吸入配管15から吸入通路26、吸入室43を経て圧縮室36に冷媒ガスが吸入される。更に、ピストン35が圧縮行程に移行されると、圧縮室10内の冷媒ガスは吐出口38から吐出弁を押しのけて吐出室24に吐出される。
【0029】
吐出室24に吐出された冷媒ガスは吐出通路25、吐出配管14、コンデンサ11、膨張弁前配管16、膨張弁12、膨張弁後配管17、エバポレータ13、吸入配管15を経て再び圧縮機10内の吸入通路26に吸入される。
(効果)
本実施形態によれば、冷媒ガスが吸入室43を通って圧縮室36に吸入される際、吸入室43内壁に装着された断熱チューブ44の内周壁面付近での流体(冷媒ガス)のバースト現象が抑制され、流体摩擦抵抗が減少される。
【0030】
ここでバースト現象とは、滑面平板上での乱流境界層中において、まず壁近傍の縦渦が速度の遅い流れに伴う小さな運動量をもって立ち上がり、周囲流体と干渉し大きな流れをつくった後、運動量の高い流体が流れ込み遅い流れを一掃する一連の過程のことである。バースト現象は一度発生すると、その後は連続して同じ過程を繰り返してゆくため、バースト現象の発生を抑制することができれば、流体の抵抗を大きく減少させる、つまり流体の圧力損失を低減することができると考えられる。
【0031】
シリコンオイルとシリコンゴムを混合した材料からなる断熱チューブ44は、図2に示すようにそのヤング率が0.1MPaから3.0MPaの範囲において、バースト現象を抑制し流体の圧力損失を低減させる効果があり、ヤング率が0.2MPaから1.2MPaの範囲において最も好適に流体の圧力損失を低減させる効果があり、圧縮機10の体積効率を向上させることができる。
【0032】
又、本実施例における断熱チューブ44は、図3に示すように圧縮機10内部で発生する脈動を吸収する効果もある。これは、シリコンオイルとシリコンゴムとを泡立てて混合させることにより気泡を含んだ材料からなる断熱チューブ44の内周壁が、吸音壁の役割を果たすことによるものであり、圧縮機10内部で発生する脈動を吸収し、脈動がエバポレータ13に伝播することにより発生する異音を抑制することができる。本実施例では、断熱チューブ44を装着しない場合と比較して、断熱チューブ44装着時は最大約3dBの脈動低減を達成している。これは、マフラーによる脈動低減効果と略同等であるためマフラーを取り除くことが可能となり、マフラーによる圧力損失低減を無くし、圧縮機10の体積効率を更に向上させることができるとともに、コストの低減にもなる。
【0033】
更に、断熱チューブ44は断熱材としての役割も果たす。通常圧縮機の吸入冷媒ガスは低温低圧であり、吐出冷媒ガスは高温高圧となるため、吐出冷媒ガスの熱が吸入冷媒ガスに伝達され吸入室43内の冷媒ガスは膨張し、圧縮室36へ流入する前の冷媒ガスの密度が低下する。密度低下した冷媒ガスの圧縮では圧縮室36における実質的な圧縮容量の低下、つまり体積効率の低下を招く。特にハウジングをアルミニウム製としたときには、アルミニウムの熱伝導率の高さのため、より圧縮機の体積効率の低下を招くことになる。そのため断熱チューブ44が断熱効果を有することにより、吸入室43内に吸入された冷媒ガスは吐出側からの熱伝達による密度低下の影響が小さくなり、もって圧縮機10の体積効率の向上を図ることができる。
【0034】
(第2実施形態) 次に、第2実施形態を図4から図6に従って説明する。なお、第2実施形態においては第1実施形態との相違点についてのみ説明し、同一部材又は相当部材には同じ番号を付して説明を省略する。
【0035】
(構成・作用) 図4において、断熱チューブ50は圧縮機10内の吸入通路26の内壁に装着されている。該断熱チューブ50はシリコンオイルとシリコンゴムとを泡立てて混合させることで気泡を含んでいる材料からなり、図5に示すように外周面に複数のリブ51(本実施形態では12個)を有しており、各々のリブ51間と前記吸入通路26の内壁とにより空隙部52が形成されている。
【0036】
冷媒ガスが吸入配管15から吸入通路26に吸入される際、冷媒ガスは断熱チューブ50の内周面側流路53を通過する冷媒ガスと、前記空隙部52を通過する冷媒ガスとに分けられる。
【0037】
(効果) 第1実施形態の効果に加え、前記空隙部52を通過する冷媒ガスが断熱層の役割を果たすことにより、吐出側から断熱チューブ50の内周面流路53を通過する冷媒ガスへの熱伝達を防止することができる。
【0038】
図6は吸入配管15における冷媒ガス温度に対する、吸入通路26通過後の冷媒ガス温度である。図5によると、アルミニウム製のハウジングに断熱チューブ50を装着していない場合、吸入配管15における冷媒ガスの温度10度に対し、吸入通路26通過後の冷媒ガス温度は25度となり、およそ15度上昇している。これに対し、断熱チューブ50を吸入通路26の内壁に装着した場合、吸入通路26通過後の冷媒ガス温度は20度となりおよそ10度上昇するにとどまる。つまり吸入冷媒ガスの加熱をおよそ5度防止できることになり、これによって略1.5%〜2%程度の体積効率向上を達成している。
【0039】
(第1、第2実施形態の別例)
第1、第2実施形態の断熱チューブ44、50に対して以下に挙げるような構造の断熱チューブであっても構わない。
【0040】
(1)図7のように断熱チューブ61の内部に空隙部62が設けられていてもよい。該空隙部62を真空にするか又はガスを充満させることにより、該空隙部62が断熱層の役割を果たし、第2実施形態と同様の効果を得られる。
【0041】
(2)図8及び図9のように断熱チューブ71の内部には、断熱チューブ71の軸線方向に貫通孔72が設けられていても良い。該貫通孔72に冷媒ガスが充満することにより、該貫通穴72が断熱層の役割を果たし、第2実施形態と同様の効果を得られる。
【0042】
(3)図10のように断熱チューブ81の外周面には、断熱チューブ81の軸線方向に溝82が設けられていても良い。該溝82と通路の内周面とにより形成される空隙部83に冷媒ガスが充満することにより、該空隙部83が断熱層の役割を果たし、第2実施形態と同様の効果を得られる。
【0043】
(4)断熱チューブ44、50と上記別例(1)から(3)に挙げた断熱チューブ61、71、81の構造を、複数組み合わせた断熱チューブでもよい。この場合でも第2実施形態と同様の効果を得られる。
【0044】
第1、第2実施形態では吸入室43、吸入通路26の通路内の内壁に断熱チューブを装着させているが、以下に挙げる冷凍サイクル内の通路内の内壁に断熱チューブを装着させてもよい。なお、以下で装着される断熱チューブは第1、第2実施形態の断熱チューブ44、50に限らず、上記別例で挙げた断熱チューブであっても構わない。
【0045】
(5)断熱チューブを吸入配管15、吐出配管14の通路内の内壁に装着してもよい。この場合、配管全体の内壁に断熱チューブを装着させるのが望ましいが、圧縮機内の吸入通路程度の長さの断熱チューブであってもバースト現象の抑制に伴う流体圧力損失低減による圧縮機の体積効率向上と、吸入脈動もしくは吐出脈動の低減に対して効果がある。
【0046】
(6)断熱チューブを吐出室24、吐出通路25の通路内の内壁の少なくとも一部に装着してもよい。この場合、バースト現象の抑制に伴う流体圧力損失低減による圧縮機の体積効率向上と、吐出脈動低減に効果がある。又、断熱チューブ自体が断熱材としての役割を果たし吐出側から吸入側への熱伝達による吸入冷媒ガスの加熱を防止し、圧縮機の体積効率を向上させる効果もある。
【0047】
(7)又、実施形態では圧縮機として片頭ピストン式容量可変型圧縮機を例示しているが、片頭ピストン式に限らず両頭ピストン式であってもよいし、容量固定型、スクロール式、ロータリーバルブ式、ベーン式等の圧縮機においても本発明を採用することができる。
【0048】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、圧縮機の体積効率向上と脈動低減を同時に達成し得る断熱チューブを提供し、又、該断熱チューブを冷凍サイクル内の通路内に装着して圧縮機の体積効率向上と脈動低減を達成し得る冷凍サイクルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態における冷凍サイクルの回路図及び圧縮機の断面図
【図2】断熱チューブのヤング率と圧縮機の体積効率との関係を表すグラフ
【図3】実施形態における各次数成分の脈動を表すグラフ
【図4】第2実施形態における冷凍サイクルの回路図及び圧縮機の断面図
【図5】図4のA−A線における断面図
【図6】第2実施形態における吸入配管内部の冷媒ガス温度と吸入通路通過後の冷媒ガス温度とを表すグラフ
【図7】別例(1)の要部拡大図
【図8】別例(2)の要部拡大図
【図9】別例(2)のA−A線における断面図
【図10】別例(3)のA−A線における断面図
【図11】従来技術における圧縮機の断面図
【図12】図11のB−B線における断面図
【符号の説明】
11…コンデンサ、12…膨張弁、13…エバポレータ、14…吐出配管、15…吸入配管、16…膨張弁前配管、17…膨張弁後配管、24…吐出室、25…吐出通路、26…吸入通路、43…吸入室、44,50,61,71,81…チューブ、51…リブ、52,62,83…空隙部、53…内周面側通路、72…貫通孔、82…溝
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばカーエアコンの冷凍サイクル内の通路内に装着される断熱チューブ及び該断熱チューブを装着した冷凍サイクルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の断熱チューブとしては、例えば特開平5−99141号公報に示すような構成のものが知られている。
【0003】
即ち、冷凍サイクルより戻ってきた低温低圧の冷媒ガスが吸入管、吸入マフラー101、吸入室102、吸入孔103を通り、吸入リード104を開いてシリンダ105へ導かれて圧縮され高温高圧となり、吐出孔106を通り吐出室107へ吐出され、吐出ライン、吐出管を通り、冷凍サイクルへ導かれる構造となっている密閉電動型圧縮機において、吸入室102の内壁との間に断熱層108となるすき間をもつように熱伝導率の小さいポリブチレンテレフタレイトの断熱チューブ109を装着させる。断熱チューブ109は断熱層108を形成するために外周面にリブ110を備え、更に断熱チューブ109の吸入孔103に対向した面に吹き返し孔111となる小孔を設けたものである。
【0004】
吸入室102へと導かれた冷媒ガスは、断熱チューブ109により加熱されることが防止されるとともに、すき間は冷媒ガスが充満し断熱層108となり、シリンダヘッド112の熱が断熱チューブ109へ伝わりにくくなっている。これにより、冷媒ガスの加熱を低減し圧縮機の体積効率を上げている。
【0005】
また、吹き返した冷媒ガスが断熱チューブ109に設けた吹き返し孔111を通り、断熱層108へと導かれることにより、吹き返しによる脈動を減衰させ、冷凍サイクルの蒸発器の振動、騒音を低減する圧縮機を提供している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記従来技術のように吸入室102の内壁との間に断熱層108となるすき間をもつように、熱伝導率の小さいポリブチレンテレフタレイトの断熱チューブ109を装着するという構成では、シリンダヘッド112からの加熱、特に吐出室107側のシリンダヘッド112からの加熱による吸入冷媒ガスの温度上昇を防止し圧縮機の体積効率を上げることに対しては効果があるが、吸入脈動の低減に対しては効果がない。
【0007】
そのため前記従来技術では吸入脈動の低減を目的として、断熱チューブ109の吸入孔103に対向した面に吹き返し孔111を設けている。吹き返し孔111を設けることにより、吹き返した冷媒ガスは断熱層108へ導かれる。該断熱層108は吹き返した冷媒ガス、及び吸入した冷媒ガスに対し共鳴形消音器の役割を果たし脈動を減衰させるが、吸入マフラー101を取り除ける程の吸入脈動低減効果はない。
【0008】
又、マフラーは冷媒ガスの流路断面積の急拡大・急縮小を伴うため圧力損失が大きく、圧縮機の体積効率の低下を招く。このため、マフラーを取り除ける程の脈動低減効果がありマフラーを取り除ければ、より圧縮機の体積効率向上を達成することができる。
【0009】
本発明の目的は、圧縮機の体積効率を向上させると同時にマフラーを取り除ける程の脈動低減効果を達成することのできる断熱チューブ及び該断熱チューブをサイクル内の通路内又は圧縮機内に装着した冷凍サイクルを提供することにある。
【0010】
【発明を解決するための手段】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、冷凍サイクル内の冷媒ガス通路内に装着される断熱チューブにおいて、該断熱チューブは、シリコンオイルとシリコンゴムとの両方を少なくとも混合した材料からなり多孔質であることを特徴としている。これにより、断熱チューブの内壁面が冷凍サイクル内を伝播する脈動を吸収し、脈動を低減させることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は請求項1において、前記断熱チューブはシリコンオイルとシリコンゴムとの両方を少なくとも混合し、泡立てて気泡を含ませることにより多孔質とした材料からなることを特徴としている。これにより請求項1に記載の効果に加え、多孔質の断熱チューブを容易に製造することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は請求項1又は2において、前記断熱チューブは、ヤング率が0.1MPaから3.0MPaの範囲となることを特徴とする。この範囲において、該断熱チューブは乱流層内のバースト現象を抑制して流体の圧力損失を低減し、圧縮機の体積効率を向上させる効果を有する。
【0013】
請求項4に記載の発明は請求項1から3のいずれかにおいて、前記断熱チューブの外周面には、複数のリブが形成されていることを特徴としている。これにより、前記断熱チューブの装着された通路内壁もしくは圧縮機内壁と、該断熱チューブの外周面とにより形成される空隙部を、冷凍サイクル内の流体が通過することにより、該空隙部が断熱層の役割を果たし、圧縮機の体積効率の向上を達成できる。
【0014】
請求項5に記載の発明は請求項1から4のいずれかにおいて、前記断熱チューブの内部には、空隙部が形成されていることを特徴としている。該空隙部にガスを充満させるか又は該空隙部を真空にすることにより、該空隙部は断熱層の役割を果たし、圧縮機の体積効率の向上を達成できる。
【0015】
請求項6に記載の発明は請求項1から5のいずれかにおいて、前記断熱チューブは該断熱チューブ内の軸線方向に貫通孔を有していることを特徴としている。該貫通孔を冷凍サイクル内の流体が通過することにより、該貫通孔が断熱層の役割を果たし、圧縮機の体積効率の向上を達成できる。
【0016】
請求項7に記載の発明は請求項1から6のいずれかにおいて、前記断熱チューブの外周面には、軸線方向に溝が形成されていることを特徴としている。これにより、前記断熱チューブの装着された通路内壁もしくは圧縮機内壁と、該断熱チューブの外周面とにより形成される空隙部を、冷凍サイクル内の流体が通過することにより、該空隙部が断熱層の役割を果たし、圧縮機の体積効率の向上を達成できる。
【0017】
請求項8に記載の発明は、ハウジング内に吸入室、吸入通路、吐出室、吐出通路とが形成されている圧縮機と、該圧縮機により圧縮された冷媒ガスを凝縮するコンデンサと、凝縮した冷媒ガスを減圧する膨張弁と、減圧した冷媒ガスを吸熱蒸発させるエバポレータとを備えてなる冷凍サイクルにおいて、該冷凍サイクルの通路内の内壁の少なくとも一部に、請求項1から請求項7に記載の断熱チューブが装着されていることを特徴としている。
【0018】
これにより、前記断熱チューブを装着した範囲において流体(冷媒ガス)の乱流境界層中のバースト現象を抑制し流体の圧力損失を低減させることができるため、圧縮機の体積効率を向上させることができる。
【0019】
請求項9に記載の発明は、ハウジング内に吸入室、吸入通路、吐出室、吐出通路とが形成されている圧縮機と、該圧縮機により圧縮された冷媒ガスを凝縮するコンデンサと、凝縮した冷媒ガスを減圧する膨張弁と、減圧した冷媒ガスを吸熱蒸発させるエバポレータとを備えてなる冷凍サイクルにおいて、
前記圧縮機の吸入通路の内壁と前記吸入室の内壁との少なくとも一方に、請求項1から請求項7に記載の断熱チューブが装着されていることを特徴としている。
【0020】
これにより、前記断熱チューブが断熱材の役割を果たし冷媒ガスの加熱を防止し圧縮機の体積効率を向上させるとともに、乱流層内のバースト現象を抑制し流体の圧力損失を低減することで圧縮機の体積効率を向上させることができる。又、吸入脈動低減も同時に達成することにより冷凍サイクル中に設けられるマフラーを取り除くことができるため、コストの低減と更なる圧縮機の体積効率向上も達成できる。
【0021】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)以下、本発明を具体化した第1実施形態を図1から図3に基づいて具体的に説明する。
【0022】
(構成・作用) 図1に示すように本実施形態において、圧縮機はピストン式容量可変型圧縮機(以下、単に圧縮機10とする)であり、該圧縮機10の外部にはコンデンサ11、膨張弁12、及びエバポレータ13が配設されている。圧縮機10とコンデンサ11とは吐出配管14により連結されており、又圧縮機10とエバポレータ13とは吸入配管15により連結されている。コンデンサ11とエバポレータ13は膨張弁12を介して膨張弁前配管16、膨張弁後配管17により連結されており、これらにより冷凍サイクルが形成されている。
前記圧縮機10は図1に示すようにシリンダブロック18のフロント側端面にガスケット19を介してフロントハウジング20が接合され、その内側に制御室としてのクランク室21が区画形成されている。又、シリンダブロック18のリヤ側端面にはバルブプレート22を介してリヤハウジング23が接合され、その内部には吐出室24と吐出通路25及び吸入通路26が形成されている。吐出通路25は吐出配管14と連結されており、吸入通路26は吸入配管15と連結されている。
【0023】
前記シリンダブロック18とフロントハウジング20の中心部に形成された軸孔には駆動軸27がラジアルベアリング28a、28bを介して回転可能に支持されている。駆動軸27のフロント端部側には軸封装置29が設けられている。前記クランク室21において駆動軸27には、カムプレートとしての斜板30の回転支持体としてのラグプレート31が一体回転可能に固定されている。
【0024】
前記斜板30は、該斜板30に形成された貫通孔32に駆動軸27が挿通された状態でクランク室21に配設されている。ヒンジ機構33は、ラグプレート30と斜板31との間に介在されている。そして、斜板31は、ヒンジ機構33を介したラグプレート31との間でのヒンジ連結及び駆動軸27の支持により、該ラグプレート31及び駆動軸27と同期回転可能で、かつ駆動軸27の軸線方向へのスライド移動を伴いながら駆動軸27に対し傾動可能となっている。
【0025】
前記シリンダブロック18の内部に形成された複数のシリンダボア34には各々ピストン35が往復動可能に収容されている。各ピストン35とバルブプレート22との間には、ピストン35の往復動に応じて容積変化する圧縮室36が区画形成されている。前記ピストン35は、シュー37を介して斜板30の周縁部に係留されている。従って、駆動軸27の回転に伴う、ラグプレート31及びヒンジ機構33を介した斜板30の回転運動が、シュー37を介してピストン35の往復運動に変換される。これら斜板30、ラグプレート31、ヒンジ機構33及びシュー37が、駆動軸27の回転運動を圧縮室36内の冷媒ガスを圧縮するための圧縮運動に変換するクランク機構を構成している。
【0026】
該圧縮室36は、吐出口38を介して前記吐出室24と連通されている。前記バルブプレート22とリヤハウジング23との間には吐出弁を一体に形成した吐出弁形成板39と、リテーナ40を形成するリテーナ形成板41とが介在されている。なお、リテーナ形成板41はガスケットを兼用し、シリンダブロック18とバルブプレート22との間にはガスケット42が介在されている。
【0027】
前記駆動軸27が回転駆動することにより、冷媒ガスが吸入通路26を通って吸入室43に吸入され、吸入された冷媒ガスは圧縮室36で圧縮され、吐出口38、吐出室24、吐出通路25を通って圧縮機外に吐出される。
冷凍サイクル内の冷媒ガス通路内とは、コンデンサ11、膨張弁12、エバポレータ13の各装置内部、吐出配管14、吸入配管15、膨張弁前配管16、膨張弁後配管17の各配管内部、圧縮機内の吐出室24、吐出通路25、吸入通路26、吸入室43の各内部を指しており、本実施形態においては吸入室43の内壁に断熱チューブ44が装着されている。
該断熱チューブ44はシリコンオイルとシリコンゴムとを泡立てて混合させることで気泡を含んでいる材料からなる。なお、多孔質である断熱チューブを製造する方法としては、例えばシリコンオイルとシリコンゴムと微粉体とを混合し該微粉体を焼却して多孔質とする方法や、シリコンオイルとシリコンゴムとを混合し更にガスを注入し多孔質とする方法等を用いることもできるが、本実施形態のようにシリコンオイルとシリコンゴムとを泡立てて混合させ気泡を含ませることにより多孔質とする方法が、最も簡便に多孔質である断熱チューブを製造できる。
【0028】
エンジンの動力により圧縮機10の駆動軸27が回転すると、ラグプレート31及びヒンジ機構33を介して斜板30が回転される。このため、シュー37を介してピストン35がシリンダボア34内で往復運動され、吸入配管15から吸入通路26、吸入室43を経て圧縮室36に冷媒ガスが吸入される。更に、ピストン35が圧縮行程に移行されると、圧縮室10内の冷媒ガスは吐出口38から吐出弁を押しのけて吐出室24に吐出される。
【0029】
吐出室24に吐出された冷媒ガスは吐出通路25、吐出配管14、コンデンサ11、膨張弁前配管16、膨張弁12、膨張弁後配管17、エバポレータ13、吸入配管15を経て再び圧縮機10内の吸入通路26に吸入される。
(効果)
本実施形態によれば、冷媒ガスが吸入室43を通って圧縮室36に吸入される際、吸入室43内壁に装着された断熱チューブ44の内周壁面付近での流体(冷媒ガス)のバースト現象が抑制され、流体摩擦抵抗が減少される。
【0030】
ここでバースト現象とは、滑面平板上での乱流境界層中において、まず壁近傍の縦渦が速度の遅い流れに伴う小さな運動量をもって立ち上がり、周囲流体と干渉し大きな流れをつくった後、運動量の高い流体が流れ込み遅い流れを一掃する一連の過程のことである。バースト現象は一度発生すると、その後は連続して同じ過程を繰り返してゆくため、バースト現象の発生を抑制することができれば、流体の抵抗を大きく減少させる、つまり流体の圧力損失を低減することができると考えられる。
【0031】
シリコンオイルとシリコンゴムを混合した材料からなる断熱チューブ44は、図2に示すようにそのヤング率が0.1MPaから3.0MPaの範囲において、バースト現象を抑制し流体の圧力損失を低減させる効果があり、ヤング率が0.2MPaから1.2MPaの範囲において最も好適に流体の圧力損失を低減させる効果があり、圧縮機10の体積効率を向上させることができる。
【0032】
又、本実施例における断熱チューブ44は、図3に示すように圧縮機10内部で発生する脈動を吸収する効果もある。これは、シリコンオイルとシリコンゴムとを泡立てて混合させることにより気泡を含んだ材料からなる断熱チューブ44の内周壁が、吸音壁の役割を果たすことによるものであり、圧縮機10内部で発生する脈動を吸収し、脈動がエバポレータ13に伝播することにより発生する異音を抑制することができる。本実施例では、断熱チューブ44を装着しない場合と比較して、断熱チューブ44装着時は最大約3dBの脈動低減を達成している。これは、マフラーによる脈動低減効果と略同等であるためマフラーを取り除くことが可能となり、マフラーによる圧力損失低減を無くし、圧縮機10の体積効率を更に向上させることができるとともに、コストの低減にもなる。
【0033】
更に、断熱チューブ44は断熱材としての役割も果たす。通常圧縮機の吸入冷媒ガスは低温低圧であり、吐出冷媒ガスは高温高圧となるため、吐出冷媒ガスの熱が吸入冷媒ガスに伝達され吸入室43内の冷媒ガスは膨張し、圧縮室36へ流入する前の冷媒ガスの密度が低下する。密度低下した冷媒ガスの圧縮では圧縮室36における実質的な圧縮容量の低下、つまり体積効率の低下を招く。特にハウジングをアルミニウム製としたときには、アルミニウムの熱伝導率の高さのため、より圧縮機の体積効率の低下を招くことになる。そのため断熱チューブ44が断熱効果を有することにより、吸入室43内に吸入された冷媒ガスは吐出側からの熱伝達による密度低下の影響が小さくなり、もって圧縮機10の体積効率の向上を図ることができる。
【0034】
(第2実施形態) 次に、第2実施形態を図4から図6に従って説明する。なお、第2実施形態においては第1実施形態との相違点についてのみ説明し、同一部材又は相当部材には同じ番号を付して説明を省略する。
【0035】
(構成・作用) 図4において、断熱チューブ50は圧縮機10内の吸入通路26の内壁に装着されている。該断熱チューブ50はシリコンオイルとシリコンゴムとを泡立てて混合させることで気泡を含んでいる材料からなり、図5に示すように外周面に複数のリブ51(本実施形態では12個)を有しており、各々のリブ51間と前記吸入通路26の内壁とにより空隙部52が形成されている。
【0036】
冷媒ガスが吸入配管15から吸入通路26に吸入される際、冷媒ガスは断熱チューブ50の内周面側流路53を通過する冷媒ガスと、前記空隙部52を通過する冷媒ガスとに分けられる。
【0037】
(効果) 第1実施形態の効果に加え、前記空隙部52を通過する冷媒ガスが断熱層の役割を果たすことにより、吐出側から断熱チューブ50の内周面流路53を通過する冷媒ガスへの熱伝達を防止することができる。
【0038】
図6は吸入配管15における冷媒ガス温度に対する、吸入通路26通過後の冷媒ガス温度である。図5によると、アルミニウム製のハウジングに断熱チューブ50を装着していない場合、吸入配管15における冷媒ガスの温度10度に対し、吸入通路26通過後の冷媒ガス温度は25度となり、およそ15度上昇している。これに対し、断熱チューブ50を吸入通路26の内壁に装着した場合、吸入通路26通過後の冷媒ガス温度は20度となりおよそ10度上昇するにとどまる。つまり吸入冷媒ガスの加熱をおよそ5度防止できることになり、これによって略1.5%〜2%程度の体積効率向上を達成している。
【0039】
(第1、第2実施形態の別例)
第1、第2実施形態の断熱チューブ44、50に対して以下に挙げるような構造の断熱チューブであっても構わない。
【0040】
(1)図7のように断熱チューブ61の内部に空隙部62が設けられていてもよい。該空隙部62を真空にするか又はガスを充満させることにより、該空隙部62が断熱層の役割を果たし、第2実施形態と同様の効果を得られる。
【0041】
(2)図8及び図9のように断熱チューブ71の内部には、断熱チューブ71の軸線方向に貫通孔72が設けられていても良い。該貫通孔72に冷媒ガスが充満することにより、該貫通穴72が断熱層の役割を果たし、第2実施形態と同様の効果を得られる。
【0042】
(3)図10のように断熱チューブ81の外周面には、断熱チューブ81の軸線方向に溝82が設けられていても良い。該溝82と通路の内周面とにより形成される空隙部83に冷媒ガスが充満することにより、該空隙部83が断熱層の役割を果たし、第2実施形態と同様の効果を得られる。
【0043】
(4)断熱チューブ44、50と上記別例(1)から(3)に挙げた断熱チューブ61、71、81の構造を、複数組み合わせた断熱チューブでもよい。この場合でも第2実施形態と同様の効果を得られる。
【0044】
第1、第2実施形態では吸入室43、吸入通路26の通路内の内壁に断熱チューブを装着させているが、以下に挙げる冷凍サイクル内の通路内の内壁に断熱チューブを装着させてもよい。なお、以下で装着される断熱チューブは第1、第2実施形態の断熱チューブ44、50に限らず、上記別例で挙げた断熱チューブであっても構わない。
【0045】
(5)断熱チューブを吸入配管15、吐出配管14の通路内の内壁に装着してもよい。この場合、配管全体の内壁に断熱チューブを装着させるのが望ましいが、圧縮機内の吸入通路程度の長さの断熱チューブであってもバースト現象の抑制に伴う流体圧力損失低減による圧縮機の体積効率向上と、吸入脈動もしくは吐出脈動の低減に対して効果がある。
【0046】
(6)断熱チューブを吐出室24、吐出通路25の通路内の内壁の少なくとも一部に装着してもよい。この場合、バースト現象の抑制に伴う流体圧力損失低減による圧縮機の体積効率向上と、吐出脈動低減に効果がある。又、断熱チューブ自体が断熱材としての役割を果たし吐出側から吸入側への熱伝達による吸入冷媒ガスの加熱を防止し、圧縮機の体積効率を向上させる効果もある。
【0047】
(7)又、実施形態では圧縮機として片頭ピストン式容量可変型圧縮機を例示しているが、片頭ピストン式に限らず両頭ピストン式であってもよいし、容量固定型、スクロール式、ロータリーバルブ式、ベーン式等の圧縮機においても本発明を採用することができる。
【0048】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、圧縮機の体積効率向上と脈動低減を同時に達成し得る断熱チューブを提供し、又、該断熱チューブを冷凍サイクル内の通路内に装着して圧縮機の体積効率向上と脈動低減を達成し得る冷凍サイクルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態における冷凍サイクルの回路図及び圧縮機の断面図
【図2】断熱チューブのヤング率と圧縮機の体積効率との関係を表すグラフ
【図3】実施形態における各次数成分の脈動を表すグラフ
【図4】第2実施形態における冷凍サイクルの回路図及び圧縮機の断面図
【図5】図4のA−A線における断面図
【図6】第2実施形態における吸入配管内部の冷媒ガス温度と吸入通路通過後の冷媒ガス温度とを表すグラフ
【図7】別例(1)の要部拡大図
【図8】別例(2)の要部拡大図
【図9】別例(2)のA−A線における断面図
【図10】別例(3)のA−A線における断面図
【図11】従来技術における圧縮機の断面図
【図12】図11のB−B線における断面図
【符号の説明】
11…コンデンサ、12…膨張弁、13…エバポレータ、14…吐出配管、15…吸入配管、16…膨張弁前配管、17…膨張弁後配管、24…吐出室、25…吐出通路、26…吸入通路、43…吸入室、44,50,61,71,81…チューブ、51…リブ、52,62,83…空隙部、53…内周面側通路、72…貫通孔、82…溝
Claims (9)
- 冷凍サイクル内の冷媒ガス通路内に装着される断熱チューブにおいて、
該断熱チューブは、シリコンオイルとシリコンゴムとの両方を少なくとも混合した材料からなり多孔質であることを特徴とする断熱チューブ。 - 前記断熱チューブは、シリコンオイルとシリコンゴムとの両方を少なくとも混合し、泡立てて気泡を含ませることにより多孔質とした材料からなることを特徴とする請求項1に記載の断熱チューブ。
- 前記断熱チューブは、ヤング率が0.1MPaから3.0MPaの範囲となることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の断熱チューブ。
- 前記断熱チューブの外周面には、複数のリブが形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3に記載の断熱チューブ。
- 前記断熱チューブの内部には、空隙部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3に記載の断熱チューブ。
- 前記断熱チューブの内部には、該断熱チューブの軸線方向に貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3に記載の断熱チューブ。
- 前記断熱チューブの外周面には、該断熱チューブの軸線方向に溝が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3に記載の断熱チューブ。
- ハウジング内に吸入室、吸入通路、吐出室、吐出通路とが形成されている圧縮機と、該圧縮機により圧縮された冷媒ガスを凝縮するコンデンサと、凝縮した冷媒ガスを減圧する膨張弁と、減圧した冷媒ガスを吸熱蒸発させるエバポレータとを備えてなる冷凍サイクルにおいて、
該冷凍サイクルの通路内の内壁の少なくとも一部に、請求項1から請求項7に記載の断熱チューブが装着されていることを特徴とする冷凍サイクル。 - ハウジング内に吸入室、吸入通路、吐出室、吐出通路とが形成されている圧縮機と、該圧縮機により圧縮された冷媒ガスを凝縮するコンデンサと、凝縮した冷媒ガスを減圧する膨張弁と、減圧した冷媒ガスを吸熱蒸発させるエバポレータとを備えてなる冷凍サイクルにおいて、
前記圧縮機の吸入通路の内壁と前記吸入室の内壁との少なくとも一方に、請求項1から請求項7に記載の断熱チューブが装着されていることを特徴とする冷凍サイクル。
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Cited By (1)
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CN103742463A (zh) * | 2013-12-20 | 2014-04-23 | 广西南宁百兰斯科技开发有限公司 | 一种储热型储油杯 |
-
2002
- 2002-12-02 JP JP2002349624A patent/JP2004183940A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN103742463A (zh) * | 2013-12-20 | 2014-04-23 | 广西南宁百兰斯科技开发有限公司 | 一种储热型储油杯 |
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