JP2004183233A - ポストテンション方式pc構造物のケーブルシース内への真空引き工程を含むグラウトの注入工法 - Google Patents
ポストテンション方式pc構造物のケーブルシース内への真空引き工程を含むグラウトの注入工法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】ポストテンション方式PC構造物のケーブルへの真空引き工程を含むグラウトの注入工法において、シース内にグラウトの不充填箇所を残存させることなくシース内にグラウトを完全に充填させたケーブルを提供する。
【解決手段】ケーブルシース内にグラウトを注入する際、グラウト注入側に圧送ポンプ10を、排出側に真空ポンプ20を接続し、前記真空ポンプによりシース内の気圧を減圧させた後に前記圧送ポンプを運転して前記シース内にグラウトを充填する真空引き工程を含むグラウトの注入工法において、現場での施工に先立って、施工現場外に、打設コンクリート部を有しない以外は施工現場と同じ3次元配置のグラウト注入試験装置をシースが透明材でなるケーブルを使用して組み立て、該グラウト注入試験装置を用いて複数の試験条件下でグラウト注入試験を行い、目視によって選出した最良の結果が得られるグラウト注入条件を現場に適用して施工する。
【選択図】 図2
【解決手段】ケーブルシース内にグラウトを注入する際、グラウト注入側に圧送ポンプ10を、排出側に真空ポンプ20を接続し、前記真空ポンプによりシース内の気圧を減圧させた後に前記圧送ポンプを運転して前記シース内にグラウトを充填する真空引き工程を含むグラウトの注入工法において、現場での施工に先立って、施工現場外に、打設コンクリート部を有しない以外は施工現場と同じ3次元配置のグラウト注入試験装置をシースが透明材でなるケーブルを使用して組み立て、該グラウト注入試験装置を用いて複数の試験条件下でグラウト注入試験を行い、目視によって選出した最良の結果が得られるグラウト注入条件を現場に適用して施工する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポストテンション方式PC構造物のケーブルシースのグラウト排出側に接続した真空ポンプにより前記シース内の気圧を減圧した後に、前記シースのグラウト注入側に接続した圧送ポンプにより前記シース内にグラウトを注入・充填する真空引き工程を含むグラウトの注入工法に関し、特にケーブルシース内に不充填箇所を残存させることなく、シース内に完全にグラウトが充填されたPC構造物を確実・容易に提供できる真空引き工程を含むグラウトの注入工法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとしている課題】近年、橋梁、高架橋、建築物等のPC構造物、特に内ケーブル方式のPC構造物において、ケーブルシース内へのグラウトの充填不良に起因する緊張材の腐食・破断事故が散見されるようになった。
その原因として次のようなことが考えられる。
ポストテンション方式PC構造物において、PC鋼材を緊張・定着後にケーブルシースの内壁とPC鋼材の間に注入・充填されるグラウトは、セメントと水と混和剤との混合物であり、注入・充填が効果的に行われるためには、流動性がよく、かつ注入から硬化するまでの間にそれぞれの材料が分離しないという性質を持つグラウトが求められる。しかし、セメントと水との間に存在する比重差によって、シース内でグラウトが硬化する間に、セメントが下側に沈降分離して上側に水分が残り(ブリージング水)、その水が蒸発して空隙部(空気溜まり)を生じることがあり、この空隙部に長い年月の間に外部水が侵入して、PC鋼材を腐食させ、その結果PC鋼材が断線する危険が生じる。
【0003】
そこで、流動性が良好でブリージングの少ないグラウト材が開発されたが、グラウトの注入が圧送ポンプによる圧送で行われることから、グラウト材料の混練時と圧送時に空気が巻き込まれたり、圧力によってブリージングが生じるという問題は残る。またケーブル材により線のPC鋼材を用いる例がほとんどであるため、撚り線を構成する複数の素線間にふるい作用又は毛細管現象が生じて、セメントと水の分離作用を引き起こすこともある。
【0004】
また、特許第2757134号、特開2002−309777では、グラウト排出側に真空ポンプを接続してシース内の気圧を減じ、グラウト注入側に接続したグラウト圧送ポンプの注入・充填効率を高めようという発明がなされている。特に特開2002−309777の発明では、ケーブルシース内グラウトの充填が不完全になりやすいケーブルの曲がり部分や高位置部分に、先端の閉じた透明な素材で構成された真空パイプをその先端がコンクリート構造物の外部に突出するよう装着し、真空ポンプの運転により低下した該真空パイプ内の気圧に対応して上昇してくるグラウトを目視することでその部分でのグラウトの充填が確認できる構造をとっている。
【0005】
しかし、PC構造物のケーブルは、その全体がコンクリート内部に埋め込まれているため、上記いずれの場合もシース内のグラウトの充填状況や、その後のケーブルの状況を完全に点検・確認するのは困難である。
現状ではX線検査・超音波検査・衝撃反射波検査等の非破壊検査方法によりグラウト充填状況の確認作業が行われてはいるが、完全に内部の状況を把握できるまでには至っておらず、PC鋼材の腐食・破断の恐れが皆無とはなっていない。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、ポストテンション方式PC構造物のケーブルへグラウト注入側に圧送ポンプを、排出側に真空ポンプを接続して前記真空ポンプでシース内の気圧を減圧した後、前記圧送ポンプを運転してグラウトを注入する真空引き工程を含むグラウトの注入工法において、シース内にグラウトの不充填箇所を残存させることなくシース内にグラウトを完全に充填させるケーブルを提供する工法であり、下記手段によるものである。
(1)ポストテンション方式PC構造物のケーブルシース内にグラウトを注入する際、グラウト注入側に圧送ポンプを、排出側に真空ポンプを接続し、前記真空ポンプによりシース内の気圧を減圧させた後に前記圧送ポンプを運転して前記シース内にグラウトを充填する真空引き工程を含むグラウトの注入工法において、現場での施工に先立って、施工現場外に、打設コンクリート部を有しない以外は施工現場と同じ3次元配置構造をしたグラウト注入試験装置をシースが透明材で構成されたケーブルを使用して組み立て、該グラウト注入試験装置を用いて複数の試験条件の下でグラウト注入試験を行い、前記透明なシース内のグラウト注入状態を目視によって観察して最良の結果が得られるグラウト注入条件を選出し、その選出された最良のグラウト注入条件を現場に適用して施工することを特徴とするポストテンション方式PC構造物のケーブルシース内への真空引き工程を含むグラウトの注入工法。
【0007】
(2)ポストテンション方式PC構造物のケーブルシース内にグラウトを注入する際、グラウト注入側に圧送ポンプを、排出側に真空ポンプを接続し、前記真空ポンプによりシース内の気圧を減圧させた後に前記圧送ポンプを運転して前記シース内にグラウトを充填する真空引き工程を含むグラウトの注入工法において、現場での施工に先立って、施工現場外に、打設コンクリート部を有しない以外は施工現場と同じ3次元配置構造をした、グラウトの充填が不完全になりやすい部分からなるグラウト注入試験装置をシースが透明材で構成されたケーブルを使用して組み立て、該グラウト注入試験装置を用いて複数の試験条件の下でグラウト注入試験を行い、前記透明なシース内のグラウト注入状態を目視によって観察して最良の結果が得られるグラウト注入条件を選出し、その選出された最良のグラウト注入条件を現場に適用して施工することを特徴とするポストテンション方式PC構造物のケーブルシース内への真空引き工程を含むグラウトの注入工法。
【0008】
(3)シースを透明材で構成したケーブルの3次元配置を支保工材を用いて行うことを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のポストテンション方式PC構造物のケーブルシース内への真空引き工程を含むグラウトの注入工法。
(4)グラウト注入試験装置の3次元配置ケーブルが、曲がり部付近又は/及び高位置部付近のみに透明材からなるシースを配設してなることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載のポストテンション方式PC構造物のケーブルシース内への真空引き工程を含むグラウトの注入工法。
【0009】
(5)シースを透明材で構成したケーブルを使用したグラウト注入試験装置により、グラウト注入中のシース内の状況確認、シース内のグラウト不充填箇所の発見等を目視で行って、圧送ポンプ及び真空ポンプの最適運転条件をより確実・容易に選定し得るようにするものであることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のポストテンション方式PC構造物のケーブルシース内への真空引き工程を含むグラウトの注入工法。
(6)グラウト注入試験の試験条件が、〔1〕グラウトの配合成分及び各成分の混合比、〔2〕グラウトの粘性・温度特性・ブリージング特性等のグラウトの物性、〔3〕グラウトの注入圧、グラウトの注入速度、グラウトの注入量等のグラウト圧送ポンプの注入運転操作手段、及び〔4〕シース内の気圧減圧速度、グラウト注入開始時のシース内の気圧等の真空ポンプの運転操作手段、の〔1〕〜〔4〕から選択される1又は2以上であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載のポストテンション方式PC構造物のケーブルシース内への真空引き工程を含むグラウトの注入工法。
(7)透明材からなるシースが、エチレン系アイオノマ樹脂製のものであることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載のポストテンション方式PC構造物のケーブルシース内への真空引き工程を含むグラウトの注入工法。
(8)ポストテンション方式PC構造物のケーブルが、内ケーブルであることを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載のポストテンション方式PC構造物のケーブルシース内への真空引き工程を含むグラウトの注入工法。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明においては、まず施工現場におけるポストテンション方式PC構造物のケーブルシース内へのグラウト注入・充填に先立って、施工現場近くの場所又は工場内等施工現場外において、図1に示すように、支保工材(足場組み立て用のパイプ材)5と、透明シース3を有するケーブル2とを用いて、施工現場と同じ3次元配置(すなわち、立体的配置)の先行試験用のグラウト注入試験装置1を組み立てる。
該試験装置1は、現場での打設コンクリート部を有しないほかは施工現場と同じ3次元配置構造とし、その全長にわたって配置したケーブル2の一端に配設したグラウト注入パイプ6にグラウト注入用開閉弁6vを介して圧送ポンプ10が、他端のグラウト排出パイプ8にはグラウト排出用開閉弁8vを介して真空ポンプ20が接続される(図2参照)。
【0011】
次いで透明シース3を有する先行試験用ケーブル2の透明シース3内へのグラウト注入試験、及び試験結果の施工現場への適用の手順について説明する。
図2に示すように、グラウト注入試験装置1のグラウト注入パイプ6にはグラウト注入用開閉弁6vを介して圧送ポンプ10が、グラウト排出パイプ8にはグラウト排出用開閉弁8vを介して真空ポンプ20が接続されている。グラウト注入試験は、まずグラウト注入用開閉弁6vを閉じ、グラウト排出用開閉弁8vを開いた状態で排出パイプ8に接続された真空ポンプ20を稼働し、ケーブル2の透明シース3内の空気を吸引して真空状態とした後、グラウト排出用開閉弁8vを閉じ真空ポンプ20を停止させ、グラウト注入用開閉弁6vを開くと同時に圧送ポンプ10を稼働させてグラウト注入パイプ6からグラウトGを透明シース3内に注入する。
この際、試験条件、例えば真空ポンプ20の運転時間、圧送ポンプ10の始動時の透明シース3内の気圧、圧送ポンプ10の注入圧力・注入速度・注入時間等を特定な値に選択・設定して、ケーブル2の透明シース3内にグラウトGを注入し、その条件でグラウトGが完全に注入・充填されるか否かを目視により観察し、完全に注入・充填できる試験条件の真空ポンプの運転時間、圧送ポンプ始動時のシース内の気圧、圧送ポンプの注入圧力・注入速度・注入時間等の各数値を記録する。
また、グラウトの種類、グラウトの練り上がり温度等を変えて複数の注入試験を行い、最適なグラウトの選定、最適なグラウトの練り上がり温度等を記録する。
上記のようなグラウト注入試験の結果から最良のグラウト注入条件を選出し、その選出された最良のグラウト注入条件を現場に適用して、実際のグラウト注入施工を行う。
【0012】
一般にポストテンション方式のPC構造物のケーブルへのグラウト注入時において充填が不十分となる要因として、(1)グラウトの性質、(2)圧送ポンプ、真空ポンプ等グラウトの充填に使用される機器の動作、(3)ケーブルの形状、(4)定着具の形状と注入パイプ、排出パイプの取り付け箇所、(5)施工現場の温度条件等が挙げられる。
前記要因について詳述すれば、(1)グラウトの性質では、その流動性、粘性、材料不分離性がグラウトが完全充填の成否に係わる。したがって、グラウトの材料である水とセメントの混合比、セメントの粒度、混和剤の性質、また気温や構成材料の温度から定まるグラウトの練り上がり温度などがグラウト充填の成否を担う要因となる。
中でも水セメント比は、グラウトの流動性やブリージング発生に大きく影響する。土木学会の「プレストレストコンクリート工法設計施工共通指針」によれば、「水セメント比は45%以下を基準とする」とある。また、その解説において水セメント比は、所要のコンシステンシーが得られる範囲内で、できるだけ小さくすることが必要である」としている。しかしながら、本発明では、グラウトの注入を圧送ポンプ10の圧送と、シース内3の減圧による吸引とによって行うので、より水セメント比の小さい、粘性の大きいグラウトが使用でき、ブリージング発生を抑制できる利点を持つ。
【0013】
したがって、グラウト注入試験の試験項目(条件)としては、▲1▼グラウトの配合成分及び各成分の混合比、▲2▼グラウトの粘性・温度特性・ブリージング特性等のグラウトの物性、▲3▼グラウトの注入圧、グラウトの注入速度、グラウトの注入量等のグラウト圧送ポンプの注入運転操作手段、及び▲4▼シース内の気圧減圧速度、グラウト注入開始時のシース内の気圧等の真空ポンプの運転操作手段等が挙げられる。
なお、注入試験は上記▲1▼〜▲4▼の試験項目から選択される1又は2以上で行い、好ましくは▲1▼〜▲4▼のすべてを実験項目とするのがよい。
【0014】
図3はグラウト注入試験装置の他の実施例、すなわちケーブルの部分試験体を用いる例の説明図であり、図3(a)は施工現場と同じ3次元配置構造の先行試験用ケーブルの全長模式図、図3(b)は図3(a)の一点差線で囲まれたグラウトの充填が不完全になりやすい長さ部分のケーブルの部分試験体の拡大説明図を示している。
本実施例においては、図3(b)に示すように、グラウトの充填が不完全になりやすい長さ部分についての部分試験体を施工現場と同じ3次元構造として製作・配置し、そのグラウト注入側に設けた注入パイプ6にグラウト注入用開閉弁6vを介して圧送ポンプ10を、グラウト排出側に設けたグラウト排出パイプ8にグラウト排出用開閉弁8vを介して真空ポンプ20を接続し、前記グラウト注入用開閉弁6vを閉じグラウト排出用開閉弁6vを開いた状態で真空ポンプ20を駆動して透明シース3内を減圧した後、前記グラウト排出用開閉弁8vを閉じ、グラウト注入用開閉弁6vを開いて圧送ポンプ10を運転してケーブル2の透明シース3内にグラウトを各種試験条件の下で注入し、目視によってグラウトの充填状況を確認、記録する。なお、グラウト注入にあたっては、注入開始時の透明シース3内の気圧が、真空ポンプ20によってケーブル2の全長にわたって排気した際に生じる気圧に等しく、グラウトの注入圧力、注入速度が、施工現場における当該部分にグラウトが注入される時に想定される注入圧力、注入速度になるよう調整されることが望ましい。
【0015】
なお、グラウト注入試験装置1の透明シース3を有するケーブル2としては、その全長を透明シース3としたものばかりでなく、グラウトの充填が不完全になりやすいケーブルの曲がり部付近や高位置部付近のみの適宜な長さだけを透明シース3とし、その他の部分は現場で用いる黒色ポリエチレン製等のシースとしたものを用いてもよい。
【0016】
また、グラウト注入試験装置1で透明シース3内に注入するグラウトGは、現場施工に用いられるものと同じものであることが必要であるが、これにクロム酸化物、鉄酸化物、銅酸化物マンガン酸化物等無機質着色料、あるいは有機着色料を少量添加混合して着色グラウトとしたものを使用することもできる。着色されたグラウトを使用することによって透明なシース3内の充填状況がより明確に把握できる。その際、着色度合はあまり濃くなく、不充填箇所の確認が容易になる程度の着色度に調整することが望ましい。
【0017】
さらに、透明シース3の材質としては、ポリエチレン樹脂、塩化ビニール樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネイト樹脂、及びテフロン樹脂などが挙げられ、特にポリエチレン系のアイオノマ樹脂を主体とするもので、アイオノマ樹脂が、α−オレフィンとα、β−不飽和カルボン酸との重合体のカルボキシ基が金属イオンで中和された樹脂であるものが好ましい。
また、アイオノマ樹脂がα−オレフィンとα、β−不飽和カルボン酸との二元共重合体で、α、β不飽和カルボン酸を5〜20重量%の割合で含み、金属イオンによる中和度が酸基の10〜90モル%の共重合体であるものも好ましい。
そして、透明のシースは、上記材質から選択されるいずれか1種あるいは2種以上を複合させたもので形成され、シース3の形状は施工現場で実際に使用されるシースと同一に形成されることが望ましい。
【0018】
なお、本発明においていう「透明なシース」の「透明」とは、例えばシースの外側から該シースの内側に充填されるグラウトの充填状況を目視できることを意味するものであってよく、こうした機能を果たすものであればいかなる性状を有するものであってもよい。該「透明」とは、例えば透光性であることを意味してよく、その際の光とは、可視光を意味してよい。該「シース」は、中空の、代表的には筒状の部材であり、その中空部にPC鋼材を通すことのできるものを指し、該中空部を貫通しているPC鋼材を鞘のように覆う機能を果たしている。
本発明の適用は、特にポストテンション方式PC構造物においてケーブルがコンクリート中に埋まってしまい、透明シースを用いてもシース内のグラウト充填状態が目視できない場合の、内ケーブルを採用する際に有効であるが、箱桁構造のPC構造体の外ケーブルを採用する際、すなわち黒色ポリエチレン製のシースを用いる場合にも有効である。
また、上記注入工法での具体的説明は、先行試験装置のケーブルシース内の空気を吸引して真空状態とした後、グラウト排出用開閉弁を閉じ真空ポンプを停止させ、次いでグラウト注入用開閉弁を開くと同時に圧送ポンプを稼働させてグラウト注入パイプからグラウトを透明シース内に注入する一工程単位毎に行う真空引き方式を含むグラウト注入工法の場合について説明したが、本発明は先行試験装置のケーブルシース一端の排気側の真空ポンプを停止させることなく継続稼働し、同時に他端のグラウト注入側の圧送ポンプを継続的に稼働させてグラウト注入パイプからグラウトを連続的に注入する連続式の真空引き方式を含むグラウト注入工法に適用することもできる。
【0019】
【発明の効果】従来、影響因子を様々に考慮し、最善を尽くしたとしても、実際はコンクリート内部にケーブルが配設されてシースが隠れているため、シース内にグラウトが完全に充填されたか否かが確認できず、グラウトが完全に充填されたケーブルが完成したのか、あるいはグラウトの充填が不十分でPC鋼材の腐食や断線の危険を有するケーブルとなったのかが判断できず、PC構造物の完成後にも一抹の不安と危険とが存在した。
しかし、本発明によれば、施工現場外で、ケーブルの全長、もしくは充填が不完全になりやすい長さ部分に透明なシースを用いた先行試験用ケーブルを施工現場と同じ3次元配置にし先行試験装置によってグラウト注入試験を行い、充填中の状況のみならず、充填完了からグラウトが硬化するまでの経緯、及び硬化後の充填状況を確認した後、その最適条件を選択して現場施工が行えるので、グラウトの不完全充填という失敗は生じなく、優れたポストテンション方式のPC構造物を提供することができる。
また、本発明によるグラウト注入試験装置による事前試験によって、シース内でグラウトの充填が不完全になりやすい箇所が確認できるので、前述の従来技術における真空パイプの設置必要箇所が的確に判断でき、施工現場においてグラウトが完全に充填されたことを確証できることにもつながる。
【図面の簡単な説明】
【図1】グラウト注入試験装置の概略図。
【図2】グラウト注入試験装置の機能構成及び操作の説明図。
【図3】グラウト注入試験装置の他の実施例。
【符号の説明】
1:グラウト注入試験装置 2:ケーブル
3:透明シース 4:定着部
5:支保工材(足場組み立て用のパイプ材) 6:グラウト注入パイプ
6v:グラウト注入用開閉弁 8:グラウト排出パイプ
8v:グラウト排出用開閉弁 10:圧送ポンプ
20:真空ポンプ
【発明の属する技術分野】本発明は、ポストテンション方式PC構造物のケーブルシースのグラウト排出側に接続した真空ポンプにより前記シース内の気圧を減圧した後に、前記シースのグラウト注入側に接続した圧送ポンプにより前記シース内にグラウトを注入・充填する真空引き工程を含むグラウトの注入工法に関し、特にケーブルシース内に不充填箇所を残存させることなく、シース内に完全にグラウトが充填されたPC構造物を確実・容易に提供できる真空引き工程を含むグラウトの注入工法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとしている課題】近年、橋梁、高架橋、建築物等のPC構造物、特に内ケーブル方式のPC構造物において、ケーブルシース内へのグラウトの充填不良に起因する緊張材の腐食・破断事故が散見されるようになった。
その原因として次のようなことが考えられる。
ポストテンション方式PC構造物において、PC鋼材を緊張・定着後にケーブルシースの内壁とPC鋼材の間に注入・充填されるグラウトは、セメントと水と混和剤との混合物であり、注入・充填が効果的に行われるためには、流動性がよく、かつ注入から硬化するまでの間にそれぞれの材料が分離しないという性質を持つグラウトが求められる。しかし、セメントと水との間に存在する比重差によって、シース内でグラウトが硬化する間に、セメントが下側に沈降分離して上側に水分が残り(ブリージング水)、その水が蒸発して空隙部(空気溜まり)を生じることがあり、この空隙部に長い年月の間に外部水が侵入して、PC鋼材を腐食させ、その結果PC鋼材が断線する危険が生じる。
【0003】
そこで、流動性が良好でブリージングの少ないグラウト材が開発されたが、グラウトの注入が圧送ポンプによる圧送で行われることから、グラウト材料の混練時と圧送時に空気が巻き込まれたり、圧力によってブリージングが生じるという問題は残る。またケーブル材により線のPC鋼材を用いる例がほとんどであるため、撚り線を構成する複数の素線間にふるい作用又は毛細管現象が生じて、セメントと水の分離作用を引き起こすこともある。
【0004】
また、特許第2757134号、特開2002−309777では、グラウト排出側に真空ポンプを接続してシース内の気圧を減じ、グラウト注入側に接続したグラウト圧送ポンプの注入・充填効率を高めようという発明がなされている。特に特開2002−309777の発明では、ケーブルシース内グラウトの充填が不完全になりやすいケーブルの曲がり部分や高位置部分に、先端の閉じた透明な素材で構成された真空パイプをその先端がコンクリート構造物の外部に突出するよう装着し、真空ポンプの運転により低下した該真空パイプ内の気圧に対応して上昇してくるグラウトを目視することでその部分でのグラウトの充填が確認できる構造をとっている。
【0005】
しかし、PC構造物のケーブルは、その全体がコンクリート内部に埋め込まれているため、上記いずれの場合もシース内のグラウトの充填状況や、その後のケーブルの状況を完全に点検・確認するのは困難である。
現状ではX線検査・超音波検査・衝撃反射波検査等の非破壊検査方法によりグラウト充填状況の確認作業が行われてはいるが、完全に内部の状況を把握できるまでには至っておらず、PC鋼材の腐食・破断の恐れが皆無とはなっていない。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、ポストテンション方式PC構造物のケーブルへグラウト注入側に圧送ポンプを、排出側に真空ポンプを接続して前記真空ポンプでシース内の気圧を減圧した後、前記圧送ポンプを運転してグラウトを注入する真空引き工程を含むグラウトの注入工法において、シース内にグラウトの不充填箇所を残存させることなくシース内にグラウトを完全に充填させるケーブルを提供する工法であり、下記手段によるものである。
(1)ポストテンション方式PC構造物のケーブルシース内にグラウトを注入する際、グラウト注入側に圧送ポンプを、排出側に真空ポンプを接続し、前記真空ポンプによりシース内の気圧を減圧させた後に前記圧送ポンプを運転して前記シース内にグラウトを充填する真空引き工程を含むグラウトの注入工法において、現場での施工に先立って、施工現場外に、打設コンクリート部を有しない以外は施工現場と同じ3次元配置構造をしたグラウト注入試験装置をシースが透明材で構成されたケーブルを使用して組み立て、該グラウト注入試験装置を用いて複数の試験条件の下でグラウト注入試験を行い、前記透明なシース内のグラウト注入状態を目視によって観察して最良の結果が得られるグラウト注入条件を選出し、その選出された最良のグラウト注入条件を現場に適用して施工することを特徴とするポストテンション方式PC構造物のケーブルシース内への真空引き工程を含むグラウトの注入工法。
【0007】
(2)ポストテンション方式PC構造物のケーブルシース内にグラウトを注入する際、グラウト注入側に圧送ポンプを、排出側に真空ポンプを接続し、前記真空ポンプによりシース内の気圧を減圧させた後に前記圧送ポンプを運転して前記シース内にグラウトを充填する真空引き工程を含むグラウトの注入工法において、現場での施工に先立って、施工現場外に、打設コンクリート部を有しない以外は施工現場と同じ3次元配置構造をした、グラウトの充填が不完全になりやすい部分からなるグラウト注入試験装置をシースが透明材で構成されたケーブルを使用して組み立て、該グラウト注入試験装置を用いて複数の試験条件の下でグラウト注入試験を行い、前記透明なシース内のグラウト注入状態を目視によって観察して最良の結果が得られるグラウト注入条件を選出し、その選出された最良のグラウト注入条件を現場に適用して施工することを特徴とするポストテンション方式PC構造物のケーブルシース内への真空引き工程を含むグラウトの注入工法。
【0008】
(3)シースを透明材で構成したケーブルの3次元配置を支保工材を用いて行うことを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のポストテンション方式PC構造物のケーブルシース内への真空引き工程を含むグラウトの注入工法。
(4)グラウト注入試験装置の3次元配置ケーブルが、曲がり部付近又は/及び高位置部付近のみに透明材からなるシースを配設してなることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載のポストテンション方式PC構造物のケーブルシース内への真空引き工程を含むグラウトの注入工法。
【0009】
(5)シースを透明材で構成したケーブルを使用したグラウト注入試験装置により、グラウト注入中のシース内の状況確認、シース内のグラウト不充填箇所の発見等を目視で行って、圧送ポンプ及び真空ポンプの最適運転条件をより確実・容易に選定し得るようにするものであることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のポストテンション方式PC構造物のケーブルシース内への真空引き工程を含むグラウトの注入工法。
(6)グラウト注入試験の試験条件が、〔1〕グラウトの配合成分及び各成分の混合比、〔2〕グラウトの粘性・温度特性・ブリージング特性等のグラウトの物性、〔3〕グラウトの注入圧、グラウトの注入速度、グラウトの注入量等のグラウト圧送ポンプの注入運転操作手段、及び〔4〕シース内の気圧減圧速度、グラウト注入開始時のシース内の気圧等の真空ポンプの運転操作手段、の〔1〕〜〔4〕から選択される1又は2以上であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載のポストテンション方式PC構造物のケーブルシース内への真空引き工程を含むグラウトの注入工法。
(7)透明材からなるシースが、エチレン系アイオノマ樹脂製のものであることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載のポストテンション方式PC構造物のケーブルシース内への真空引き工程を含むグラウトの注入工法。
(8)ポストテンション方式PC構造物のケーブルが、内ケーブルであることを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載のポストテンション方式PC構造物のケーブルシース内への真空引き工程を含むグラウトの注入工法。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明においては、まず施工現場におけるポストテンション方式PC構造物のケーブルシース内へのグラウト注入・充填に先立って、施工現場近くの場所又は工場内等施工現場外において、図1に示すように、支保工材(足場組み立て用のパイプ材)5と、透明シース3を有するケーブル2とを用いて、施工現場と同じ3次元配置(すなわち、立体的配置)の先行試験用のグラウト注入試験装置1を組み立てる。
該試験装置1は、現場での打設コンクリート部を有しないほかは施工現場と同じ3次元配置構造とし、その全長にわたって配置したケーブル2の一端に配設したグラウト注入パイプ6にグラウト注入用開閉弁6vを介して圧送ポンプ10が、他端のグラウト排出パイプ8にはグラウト排出用開閉弁8vを介して真空ポンプ20が接続される(図2参照)。
【0011】
次いで透明シース3を有する先行試験用ケーブル2の透明シース3内へのグラウト注入試験、及び試験結果の施工現場への適用の手順について説明する。
図2に示すように、グラウト注入試験装置1のグラウト注入パイプ6にはグラウト注入用開閉弁6vを介して圧送ポンプ10が、グラウト排出パイプ8にはグラウト排出用開閉弁8vを介して真空ポンプ20が接続されている。グラウト注入試験は、まずグラウト注入用開閉弁6vを閉じ、グラウト排出用開閉弁8vを開いた状態で排出パイプ8に接続された真空ポンプ20を稼働し、ケーブル2の透明シース3内の空気を吸引して真空状態とした後、グラウト排出用開閉弁8vを閉じ真空ポンプ20を停止させ、グラウト注入用開閉弁6vを開くと同時に圧送ポンプ10を稼働させてグラウト注入パイプ6からグラウトGを透明シース3内に注入する。
この際、試験条件、例えば真空ポンプ20の運転時間、圧送ポンプ10の始動時の透明シース3内の気圧、圧送ポンプ10の注入圧力・注入速度・注入時間等を特定な値に選択・設定して、ケーブル2の透明シース3内にグラウトGを注入し、その条件でグラウトGが完全に注入・充填されるか否かを目視により観察し、完全に注入・充填できる試験条件の真空ポンプの運転時間、圧送ポンプ始動時のシース内の気圧、圧送ポンプの注入圧力・注入速度・注入時間等の各数値を記録する。
また、グラウトの種類、グラウトの練り上がり温度等を変えて複数の注入試験を行い、最適なグラウトの選定、最適なグラウトの練り上がり温度等を記録する。
上記のようなグラウト注入試験の結果から最良のグラウト注入条件を選出し、その選出された最良のグラウト注入条件を現場に適用して、実際のグラウト注入施工を行う。
【0012】
一般にポストテンション方式のPC構造物のケーブルへのグラウト注入時において充填が不十分となる要因として、(1)グラウトの性質、(2)圧送ポンプ、真空ポンプ等グラウトの充填に使用される機器の動作、(3)ケーブルの形状、(4)定着具の形状と注入パイプ、排出パイプの取り付け箇所、(5)施工現場の温度条件等が挙げられる。
前記要因について詳述すれば、(1)グラウトの性質では、その流動性、粘性、材料不分離性がグラウトが完全充填の成否に係わる。したがって、グラウトの材料である水とセメントの混合比、セメントの粒度、混和剤の性質、また気温や構成材料の温度から定まるグラウトの練り上がり温度などがグラウト充填の成否を担う要因となる。
中でも水セメント比は、グラウトの流動性やブリージング発生に大きく影響する。土木学会の「プレストレストコンクリート工法設計施工共通指針」によれば、「水セメント比は45%以下を基準とする」とある。また、その解説において水セメント比は、所要のコンシステンシーが得られる範囲内で、できるだけ小さくすることが必要である」としている。しかしながら、本発明では、グラウトの注入を圧送ポンプ10の圧送と、シース内3の減圧による吸引とによって行うので、より水セメント比の小さい、粘性の大きいグラウトが使用でき、ブリージング発生を抑制できる利点を持つ。
【0013】
したがって、グラウト注入試験の試験項目(条件)としては、▲1▼グラウトの配合成分及び各成分の混合比、▲2▼グラウトの粘性・温度特性・ブリージング特性等のグラウトの物性、▲3▼グラウトの注入圧、グラウトの注入速度、グラウトの注入量等のグラウト圧送ポンプの注入運転操作手段、及び▲4▼シース内の気圧減圧速度、グラウト注入開始時のシース内の気圧等の真空ポンプの運転操作手段等が挙げられる。
なお、注入試験は上記▲1▼〜▲4▼の試験項目から選択される1又は2以上で行い、好ましくは▲1▼〜▲4▼のすべてを実験項目とするのがよい。
【0014】
図3はグラウト注入試験装置の他の実施例、すなわちケーブルの部分試験体を用いる例の説明図であり、図3(a)は施工現場と同じ3次元配置構造の先行試験用ケーブルの全長模式図、図3(b)は図3(a)の一点差線で囲まれたグラウトの充填が不完全になりやすい長さ部分のケーブルの部分試験体の拡大説明図を示している。
本実施例においては、図3(b)に示すように、グラウトの充填が不完全になりやすい長さ部分についての部分試験体を施工現場と同じ3次元構造として製作・配置し、そのグラウト注入側に設けた注入パイプ6にグラウト注入用開閉弁6vを介して圧送ポンプ10を、グラウト排出側に設けたグラウト排出パイプ8にグラウト排出用開閉弁8vを介して真空ポンプ20を接続し、前記グラウト注入用開閉弁6vを閉じグラウト排出用開閉弁6vを開いた状態で真空ポンプ20を駆動して透明シース3内を減圧した後、前記グラウト排出用開閉弁8vを閉じ、グラウト注入用開閉弁6vを開いて圧送ポンプ10を運転してケーブル2の透明シース3内にグラウトを各種試験条件の下で注入し、目視によってグラウトの充填状況を確認、記録する。なお、グラウト注入にあたっては、注入開始時の透明シース3内の気圧が、真空ポンプ20によってケーブル2の全長にわたって排気した際に生じる気圧に等しく、グラウトの注入圧力、注入速度が、施工現場における当該部分にグラウトが注入される時に想定される注入圧力、注入速度になるよう調整されることが望ましい。
【0015】
なお、グラウト注入試験装置1の透明シース3を有するケーブル2としては、その全長を透明シース3としたものばかりでなく、グラウトの充填が不完全になりやすいケーブルの曲がり部付近や高位置部付近のみの適宜な長さだけを透明シース3とし、その他の部分は現場で用いる黒色ポリエチレン製等のシースとしたものを用いてもよい。
【0016】
また、グラウト注入試験装置1で透明シース3内に注入するグラウトGは、現場施工に用いられるものと同じものであることが必要であるが、これにクロム酸化物、鉄酸化物、銅酸化物マンガン酸化物等無機質着色料、あるいは有機着色料を少量添加混合して着色グラウトとしたものを使用することもできる。着色されたグラウトを使用することによって透明なシース3内の充填状況がより明確に把握できる。その際、着色度合はあまり濃くなく、不充填箇所の確認が容易になる程度の着色度に調整することが望ましい。
【0017】
さらに、透明シース3の材質としては、ポリエチレン樹脂、塩化ビニール樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネイト樹脂、及びテフロン樹脂などが挙げられ、特にポリエチレン系のアイオノマ樹脂を主体とするもので、アイオノマ樹脂が、α−オレフィンとα、β−不飽和カルボン酸との重合体のカルボキシ基が金属イオンで中和された樹脂であるものが好ましい。
また、アイオノマ樹脂がα−オレフィンとα、β−不飽和カルボン酸との二元共重合体で、α、β不飽和カルボン酸を5〜20重量%の割合で含み、金属イオンによる中和度が酸基の10〜90モル%の共重合体であるものも好ましい。
そして、透明のシースは、上記材質から選択されるいずれか1種あるいは2種以上を複合させたもので形成され、シース3の形状は施工現場で実際に使用されるシースと同一に形成されることが望ましい。
【0018】
なお、本発明においていう「透明なシース」の「透明」とは、例えばシースの外側から該シースの内側に充填されるグラウトの充填状況を目視できることを意味するものであってよく、こうした機能を果たすものであればいかなる性状を有するものであってもよい。該「透明」とは、例えば透光性であることを意味してよく、その際の光とは、可視光を意味してよい。該「シース」は、中空の、代表的には筒状の部材であり、その中空部にPC鋼材を通すことのできるものを指し、該中空部を貫通しているPC鋼材を鞘のように覆う機能を果たしている。
本発明の適用は、特にポストテンション方式PC構造物においてケーブルがコンクリート中に埋まってしまい、透明シースを用いてもシース内のグラウト充填状態が目視できない場合の、内ケーブルを採用する際に有効であるが、箱桁構造のPC構造体の外ケーブルを採用する際、すなわち黒色ポリエチレン製のシースを用いる場合にも有効である。
また、上記注入工法での具体的説明は、先行試験装置のケーブルシース内の空気を吸引して真空状態とした後、グラウト排出用開閉弁を閉じ真空ポンプを停止させ、次いでグラウト注入用開閉弁を開くと同時に圧送ポンプを稼働させてグラウト注入パイプからグラウトを透明シース内に注入する一工程単位毎に行う真空引き方式を含むグラウト注入工法の場合について説明したが、本発明は先行試験装置のケーブルシース一端の排気側の真空ポンプを停止させることなく継続稼働し、同時に他端のグラウト注入側の圧送ポンプを継続的に稼働させてグラウト注入パイプからグラウトを連続的に注入する連続式の真空引き方式を含むグラウト注入工法に適用することもできる。
【0019】
【発明の効果】従来、影響因子を様々に考慮し、最善を尽くしたとしても、実際はコンクリート内部にケーブルが配設されてシースが隠れているため、シース内にグラウトが完全に充填されたか否かが確認できず、グラウトが完全に充填されたケーブルが完成したのか、あるいはグラウトの充填が不十分でPC鋼材の腐食や断線の危険を有するケーブルとなったのかが判断できず、PC構造物の完成後にも一抹の不安と危険とが存在した。
しかし、本発明によれば、施工現場外で、ケーブルの全長、もしくは充填が不完全になりやすい長さ部分に透明なシースを用いた先行試験用ケーブルを施工現場と同じ3次元配置にし先行試験装置によってグラウト注入試験を行い、充填中の状況のみならず、充填完了からグラウトが硬化するまでの経緯、及び硬化後の充填状況を確認した後、その最適条件を選択して現場施工が行えるので、グラウトの不完全充填という失敗は生じなく、優れたポストテンション方式のPC構造物を提供することができる。
また、本発明によるグラウト注入試験装置による事前試験によって、シース内でグラウトの充填が不完全になりやすい箇所が確認できるので、前述の従来技術における真空パイプの設置必要箇所が的確に判断でき、施工現場においてグラウトが完全に充填されたことを確証できることにもつながる。
【図面の簡単な説明】
【図1】グラウト注入試験装置の概略図。
【図2】グラウト注入試験装置の機能構成及び操作の説明図。
【図3】グラウト注入試験装置の他の実施例。
【符号の説明】
1:グラウト注入試験装置 2:ケーブル
3:透明シース 4:定着部
5:支保工材(足場組み立て用のパイプ材) 6:グラウト注入パイプ
6v:グラウト注入用開閉弁 8:グラウト排出パイプ
8v:グラウト排出用開閉弁 10:圧送ポンプ
20:真空ポンプ
Claims (8)
- ポストテンション方式PC構造物のケーブルシース内にグラウトを注入する際、グラウト注入側に圧送ポンプを、排出側に真空ポンプを接続し、前記真空ポンプによりシース内の気圧を減圧させた後に前記圧送ポンプを運転して前記シース内にグラウトを充填する真空引き工程を含むグラウトの注入工法において、現場での施工に先立って、施工現場外に、打設コンクリート部を有しない以外は施工現場と同じ3次元配置構造をしたグラウト注入試験装置をシースが透明材で構成されたケーブルを使用して組み立て、該グラウト注入試験装置を用いて複数の試験条件の下でグラウト注入試験を行い、前記透明なシース内のグラウト注入状態を目視によって観察して最良の結果が得られるグラウト注入条件を選出し、その選出された最良のグラウト注入条件を現場に適用して施工することを特徴とするポストテンション方式PC構造物のケーブルシース内への真空引き工程を含むグラウトの注入工法。
- ポストテンション方式PC構造物のケーブルシース内にグラウトを注入する際、グラウト注入側に圧送ポンプを、排出側に真空ポンプを接続し、前記真空ポンプによりシース内の気圧を減圧させた後に前記圧送ポンプを運転して前記シース内にグラウトを充填する真空引き工程を含むグラウトの注入工法において、現場での施工に先立って、施工現場外に、打設コンクリート部を有しない以外は施工現場と同じ3次元配置構造をした、グラウトの充填が不完全になりやすい部分からなるグラウト注入試験装置をシースが透明材で構成されたケーブルを使用して組み立て、該グラウト注入試験装置を用いて複数の試験条件の下でグラウト注入試験を行い、前記透明なシース内のグラウト注入状態を目視によって観察して最良の結果が得られるグラウト注入条件を選出し、その選出された最良のグラウト注入条件を現場に適用して施工することを特徴とするポストテンション方式PC構造物のケーブルシース内への真空引き工程を含むグラウトの注入工法。
- シースを透明材で構成したケーブルの3次元配置を支保工材を用いて行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のポストテンション方式PC構造物のケーブルシース内への真空引き工程を含むグラウトの注入工法。
- グラウト注入試験装置の3次元配置ケーブルが、曲がり部付近又は/及び高位置部付近のみに透明材からなるシースを配設してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポストテンション方式PC構造物のケーブルシース内への真空引き工程を含むグラウトの注入工法。
- シースを透明材で構成したケーブルを使用したグラウト注入試験装置により、グラウト注入中のシース内の状況確認、シース内のグラウト不充填箇所の発見等を目視で行って、圧送ポンプ及び真空ポンプの最適運転条件をより確実・容易に選定し得るようにするものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポストテンション方式PC構造物のケーブルシース内への真空引き工程を含むグラウトの注入工法。
- グラウト注入試験の試験条件が、(1)グラウトの配合成分、及び各成分の混合比、(2)グラウトの粘性・温度特性・ブリージング特性等のグラウトの物性、(3)グラウトの注入圧、グラウトの注入速度、グラウトの注入量等のグラウト圧送ポンプの注入運転操作手段、及び(4)シース内の気圧減圧速度、グラウト注入開始時のシース内の気圧等の真空ポンプの運転操作手段、の(1)〜(4)から選択される1又は2以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポストテンション方式PC構造物のケーブルシース内への真空引き工程を含むグラウトの注入工法。
- 透明材からなるシースが、エチレン系アイオノマ樹脂製のものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のポストテンション方式PC構造物のケーブルシース内への真空引き工程を含むグラウトの注入工法。
- ポストテンション方式PC構造物のケーブルが、内ケーブルであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のポストテンション方式PC構造物のケーブルシース内への真空引き工程を含むグラウトの注入工法。
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JP2022166493A (ja) * | 2021-04-21 | 2022-11-02 | 飛島建設株式会社 | Pc鋼材抜気減圧防錆方法及びそれを用いたpc構造物の施工方法 |
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2002
- 2002-11-29 JP JP2002348258A patent/JP2004183233A/ja active Pending
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