JP2004176479A - 可搬型鋼管電食装置およびこれを用いた地中鋼管の電食撤去工法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鋼管20内径より所定長小径で所定長の高さを有する柱状電極1と、該柱状電極1の上下端に嵌挿された弾性部材からなる閉塞板2a、2bと、送液管3と、電解質溶液及び電食により発生する水酸化物を排出する排液管4と、ガスを排気するガス抜き管5と、該排液管4に取り付けられた排液手段6と、地上の直流電源50と柱状電極1を接続するための電源端子7と、鋼管20内に吊り下ろし吊り上げする際の吊り下げ金具8と、柱状電極1の外周に設けられた絶縁材からなる土砂崩壊防止メッシュ10とから構成される可搬型鋼管電食装置100を電食させたい深さまで吊り降ろし、電解質溶液を循環させながら、前記鋼管に直流電源の陽極を接続し、前記可搬型鋼管電食装置の電源端子に直流電源の陰極を接続して電圧を印加して鋼管を電食する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、地中に埋設された円柱鋼管または矩形柱鋼管を電食により劣化・撤去するための電食装置並びにその電食装置を用いた地中鋼管の電食撤去工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、鋼管杭による土留め壁に、地下水流保全のための開口部を形成したり、シールド機の発進到達立坑の鋼管土留め壁については、予め鋼管内部に電解質溶液充填部と電極を設けておき電食により劣化・撤去する方法が知られている。(特許文献1、特許文献2)
【0003】
しかし、予め、電食部分の構造材内部に電食用の電極構造と、電解質溶液の充填部を備えることが必要であったため、シールド掘削路線上にある地中に存置された鋼管や、不要になった構造物の鋼管支持杭など一般工事で埋設された地中障害物では適用できない。
【0004】
また、予め電食対象深度に電極構造を備えた特殊資材を準備し、正確に建て込むことが要求され、コストがかかる問題があった。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−90473号公報(第3〜6頁、第図1)
【特許文献2】
特願2002−234177号(第2〜3頁、第図1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前述の問題に鑑みてなされたものであり、円柱鋼管または矩形鋼管の内部に吊り下げ可能な可搬型鋼管電食装置および可搬型鋼管電食装置を用いた地中鋼管の電食撤去工法を提供することにより、施工時に特殊資材を用いることなく、一般工事で埋設された鋼管杭も含めた地中障害物を劣化・撤去することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明の可搬型鋼管電食装置は、地中に埋設された円柱鋼管または矩形柱鋼管を電食により劣化・撤去するための電食装置であって、前記鋼管の中空部の形状に形成されて鋼管内径より所定長小径で所定長の高さを有する柱状電極と、鋼管内径と略同径に形成され該柱状電極の上下端に嵌挿された弾性部材からなる閉塞板と、上部の閉塞板を貫通して設けられ、地上から電解質溶液の供給を受ける送液管と、電解質溶液及び電食により発生する水酸化物を排出する排液管と、電食により発生するガスを排気するガス抜き管と、該排液管に取り付けられた排液手段と、地上の直流電源と柱状電極を接続するための電源端子と、鋼管内に吊り下ろし吊り上げする際の吊り下げ金具とを備えることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、任意の時期に、電食により劣化・撤去したい鋼管(対象鋼管)に吊り下ろして挿入可能な可搬型の電食装置を得ることができる。また、対象鋼管の形状にあわせた柱状電極とされているため、大径の円柱鋼管から小径のアンカー杭や、口径の大きな矩形鋼管からH形鋼の側面に鋼板を溶接して形成された小径の矩形鋼管のいずれであっても所定の箇所に柱状電極を吊り下ろして電食を行うことができる可搬性を有する。
【0009】
また、前記排液手段は、柱状電極の底部に設けられた水中ポンプ/または排液管の延伸途中に接続され圧縮空気を吹き込むエアーリフト配管のいずれかであることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、電解質溶液を循環させると共に、電食により発生した水酸化物を地上に回収することができる。また、水中ポンプを設置できない小径の場合は、圧縮空気の上昇流によるエアーリフト方式で排液流を起こさせることができるため、小径の鋼管に対しても適用する事ができる。
【0011】
また、前記送液管は、地上に設けられた電解質溶液槽と自動バルブを介して接続され、該自動バルブは、鋼管内の電解質の水位を監視する水位計を備えた水位自動調節指示装置からの信号により開閉し電解質溶液を充填して、電食される鋼管の埋設地点の地下水位と鋼管内の電解質の水位を略同じ水位に保つことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、鋼管内の電解質溶液の圧力を周辺地下水位による圧力と平衡状態とすることにより、電食進行による地山の崩壊を防止する事ができる。
【0013】
また、前記柱状電極の外周に絶縁材からなる土砂崩壊防止メッシュを備え、電食により鋼管が劣化、撤去されたとき地山が崩壊することを防止することを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、鋼管外側の地山の崩壊性が強い場合であっても、土砂崩壊防止メッシュに遮られて崩壊を防止する事ができる。
【0015】
本発明の可搬型鋼管電食装置を用いた地中鋼管の電食撤去工法は、地中鋼管の電食撤去工法であって、地上に電解質溶液槽と直流電源と自動水位調整指示装置とを設置する地上設備工程と、地中に埋設された円柱鋼管または矩形柱鋼管の内部を電食したい深さまで中空にし、鋼管埋設現場の地下水位と鋼管内の電解質の水位が略同じ水位になるように電解質溶液を充填する電解質溶液充填工程と、前記可搬型鋼管電食装置の電源端子に直流電源の陰極に接続する電線と、電解質溶液槽に接続される送液管と、排液管を取り付け、可搬型鋼管電食装置を地中に埋設された円柱鋼管または矩形柱鋼管内部の電食させたい深さまで吊り降ろす電食装置吊り下ろし工程と、電解質溶液を前記排液手段により排出すると共に前記自動バルブにより補充制御して電解質溶液を循環させながら、前記鋼管に直流電源の陽極を接続し、前記可搬型鋼管電食装置の電源端子に直流電源の陰極を接続して電圧を印加する電食工程と、電食により所定箇所の鋼管を劣化・撤去させた後に可搬型鋼管電食装置を吊り上げて地上に回収する電食装置回収工程と、鋼管内の電解質溶液を回収し、鋼管劣化・撤去後の施工目的に合わせた充填材を鋼管内部に充填する充填工程と、地上設備を撤去する設備撤去工程とからなることを特徴とする。
【0016】
この発明の工法によれば、予め、電食部分の構造材内部に電食用の電極構造と、電解質溶液の充填部を備える必要がないため、シールド掘削路線上にある地中に存置された鋼管や、不要になった構造物の鋼管支持杭など一般工事で埋設された地中障害物に対しても電食による劣化・撤去を適用する事ができる。また、可搬型鋼管電食装置を地中に埋設された円柱鋼管または矩形柱鋼管内部の電食させたい深さまで吊り降ろすため、正確に位置決めする事ができる。さらに、鋼管杭の建て込み誤差による影響を受けることがない。
【0017】
また、前記電食工程の後に、鋼管内の前記可搬型鋼管電食装置を吊り上げ或いは吊り下げて、連続した或いは離れた深さ位置に移動させる電食装置移動工程を行い、さらに電食工程を続けることにより、所定長の高さを有する柱状電極の電食範囲を超える範囲の鋼管を劣化・撤去することを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、地中鋼管の一部、または全部を劣化・撤去させることができる。このため、地下水流保全などにおいては、複数の透水層に対応した深度に開口部を形成したり、隣地地中に嵌入して設置されている鋼管タイプのアンカー杭などの隣地部分などの任意の部分を撤去する事ができる。
【0019】
また、前記電食装置回収工程の後に、水中カメラまたは、光ファイバーカメラを鋼管内に吊り下ろし、電食完了状態を目視確認する目視確認工程を備えることを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、電食完了を目視で確認する事ができる。このため、従来電位計測により推定していた電食完了判断作業のための設備、作業を必要としない。
【0021】
また、前記地中鋼管は、少なくとも、地中存置鋼管杭、ディープウエル鋼管、鋼管杭土留め壁、鋼管杭土留め壁のシールド機発進到達立坑、鋼管タイプのアンカー杭・NATMロックボルト、或いは前記可搬型鋼管電食装置を挿入可能な開口を有する鋼材部材のいづれかであることを特徴とする。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の可搬型鋼管電食装置の一実施の形態の断面図である。
【0024】
可搬型鋼管電食装置100は、地中に埋設された円柱鋼管または矩形鋼管を電食により劣化・撤去するための装置で、劣化・撤去させる鋼管の中空部の形状(円形、矩形、その他)に合わせて形成される。この実施の形態は円柱鋼管の例で説明する。
【0025】
可搬型鋼管電食装置100は、円柱状に形成され、鋼管20(図2参照)内径より所定長小径で所定長の高さを有する柱状電極1と、鋼管内径と略同径に形成され該柱状電極の上下端に嵌挿された弾性部材からなる閉塞板2a、2bと、上部の閉塞板2aを貫通して設けられ、地上から電解質溶液の供給を受ける送液管3と、電解質溶液及び電食により発生する水酸化物を排出する排液管4と、電食により発生するガスを排気するガス抜き管5と、該排液管4に取り付けられた排液手段6と、地上の直流電源50(図2参照)と柱状電極1を接続するための電源端子7と、鋼管20内に吊り下ろし吊り上げする際の吊り下げ金具8と、柱状電極1の外周に設けられた絶縁材からなる土砂崩壊防止メッシュ10とから構成される。
【0026】
前記柱状電極1の外径は、電食対象の鋼管20の内径に対して、所定長小径に形成されるが、鋼管内壁との間隔が短いほうが電食効率を高めることができる。望ましくは、30ミリ以内とする事がよい。また、柱状電極1の高さは、鋼管20の電食対象範囲の長さに合わせることが望ましい。さらに、柱状電極1には、電解質溶液が流動可能となるように複数の通水孔1aが穿孔されている。
【0027】
前記排液手段6は、柱状電極1の底部に設けられた水中ポンプ6a/または排液管4の延伸途中に接続され圧縮空気を吹き込むエアーリフト配管6bのいづれかを用いることができる。この実施の形態では水中ポンプ6aを用いて電解質溶液を循環させると共に、電食により発生した水酸化物を地上に回収するようにされている。エアーリフト配管6bについては後述する(図6参照)。
【0028】
また、地上から供給される電解質溶液の送液管3は、柱状電極1の上部に開口しており、電食により発生した水酸化物を地上に回収する排液管4は、柱状電極1の内部に設けられた排液管ガイド4aに保持されて柱状電極1の下端方向に挿入されて、下端の閉塞板2b上の底板9cに載置された水中ポンプ6aに連結されている。水中ポンプの電源線(図示省略)は排液管4内を通して地上の電源に接続されるようになっている。この水中ポンプ6aを稼動させることにより電解質溶液と共に、電食により発生する水酸化物を地上に回収する。
【0029】
この実施の形態では、柱状電極1の外周に設けられた絶縁材からなる土砂崩壊防止メッシュ10を設けたが、鋼管20周辺の地山が安定している場合や、小径の鋼管、矩形管の場合は設けなくてもよい。
【0030】
電源端子7は、柱状電極1の上端に溶接された導電材からなる吊下板8aに閉塞板2aを貫通して立設された吊り下げ金具8に固定されている。この電源端子7と地上の直流電源装置50(図2参照)の陰極が電線で接続される。
【0031】
柱状電極1の上下端の閉塞板2a、2bは、所定の厚みを有する弾性部材(ゴムまたはスポンジ)で形成された円盤状であって、鋼管20内径に接する大きさにされており、柱状電極1を鋼管と同芯面に絶縁状態で保持すると共に、対面する電食範囲の鋼管内壁と、その上下の鋼管内壁を区画する。
【0032】
吊り下げ金具8は、絶縁性ワイヤー31と連結してクレーン30(図2参照)に吊り下げる際に用いるものである。図1において9aは絶縁板で閉塞板2aを挟んで吊下板8aと絶縁ボルト11で固定されている。又、9bは絶縁板、9cは底板であり、閉塞板2aを挟んでボルト11bで固定されている。
【0033】
次に、図2および図3を参照して、本発明の可搬型鋼管電食装置100を用いた地中鋼管の電食撤去方法を説明する。図2(a)は電食装置吊り下ろし工程を示す模式図、(b)は電食工程を示す模式図である。図3(a)は、充填工程を示す模式図、(b)は、電食により撤去された鋼管部部分をシールド機により掘削させた状態を示す模式図である。
【0034】
図2(a)および(b)を参照して、本発明の電食工程までの工法の手順を説明する。まず、電解質溶液槽40と直流電源装置50と自動水位調整指示装置42とを地上に設置して可搬型鋼管電食装置を運搬して準備する。(地上設備工程)
【0035】
次に、地中に埋設された円柱鋼管または矩形柱鋼管の内部を電食したい深さまで中空にし、鋼管埋設現場の地下水位と鋼管内の電解質の水位102が略同じ水位になるように電解質溶液を充填する。(電解質溶液充填工程)
【0036】
ここで、電解質溶液の水位を一定に保つため、送液管3と電解質溶液槽40の間に自動バルブ41を設け、水位計44と接続された水位自動調整指示装置42で水位を監視し、コンプレッサー43を電気的に制御して自動バルブ41の電空弁を動作させている。
【0037】
次に、前記可搬型鋼管電食装置100の電源端子7に直流電源装置50の陰極51に接続する電線51aと、電解質溶液槽40に接続される送液管3と、排液管4を取り付け、可搬型鋼管電食装置100を地中に埋設された円柱鋼管20(または矩形柱鋼管)内部の電食させたい深さまで吊り降ろす。(電食装置吊り下ろし工程)
【0038】
次に、電解質溶液を前記排液手段6により排出すると共に前記自動バルブ41により充填して電解質溶液を循環させながら、前記鋼管20に直流電源装置50の陽極52を接続し、前記可搬型鋼管電食装置100の電源端子に直流電源の陰極51を接続して電圧を印加する。(電食工程)
【0039】
電食により所定箇所101の鋼管20を劣化・撤去させた後に可搬型鋼管電食装置100を吊り上げて地上に回収する。(電食装置回収工程)
ここで、鋼管内に水中カメラまたは光ファイバーカメラを挿入することにより目視で電食状態を確認する事ができる。(目視確認工程)
【0040】
さらに必要があれば、前記電食工程の後に、鋼管内の前記可搬型鋼管電食装置を吊り上げ或いは吊り下げて、連続した或いは離れた深さ位置に移動させ、再度、電食工程を続けることにより、所定長の高さを有する柱状電極の電食範囲を超える範囲の鋼管を劣化・撤去する。(電食装置移動工程)
【0041】
次に、図3(a)に示すように鋼管20内の電解質溶液を回収し、鋼管劣化・撤去後の施工目的に合わせた充填材25を鋼管20内部に充填する。(充填工程)
続いて地上設備を撤去する設備撤去工程とからなる。
【0042】
図3(b)は、シールド機の掘進路に存置された鋼管20が撤去され、撤去され充填材25が充填された鋼管部部分をシールド機により掘削させた状態を示す模式図である。
【0043】
図4は、本発明の可搬型鋼管電食装置の形状と、対象鋼管の対応を示す図であり、(a)は鋼管柱列土留工法の平面図、(b)は、矩形管杭芯材の土留工法の平面図、(c)は、中空加工されたH形鋼杭芯材の土留工法の平面図、(d)は、シールド機の発進到達立坑の土留壁の杭芯材正面図を示す。
【0044】
図4(a)は、円形の鋼管21であり、実施の形態で説明したように、円柱状の可搬型鋼管電食装置100とする。(b)は、矩形の鋼管22であり、矩形柱状の可搬型鋼管電食装置100とする。(c)は一般的に使用されるH形鋼23の開口側面を鉄板を溶接して塞ぎ、両側を矩形管状に形成した加工H形鋼23aであり、この場合は、幅の薄い矩形柱、または、コの字形柱、或いは、短冊状の可搬型鋼管電食装置100とする。ここに示す以外に多角形状や、楕円形状などの鋼管であっても、その開口形状に合わせた柱状電極とした可搬型鋼管電食装置100を用いることができる。
【0045】
図4(d)は、H形鋼23を杭芯材としたシールド機70の発進到達立坑の土留壁正面図を示す。シールド機の切削範囲については、前記図4(c)で説明した加工H形鋼23aを地上から建て込んである。床付け205以深の部分は加工H形鋼23aに一般のH形鋼23が連結されている。
【0046】
図5は、本発明の可搬型鋼管電食装置100を用いた地中鋼管の電食撤去工法を適用したシールド機70の発進立坑の断面図である。なお、同一の符号は説明を省略する。
【0047】
発進立坑200の土留壁は、図4(d)で説明したように床付け205の上部に加工H形鋼23aが配置されており、地上から可搬型鋼管電食装置100が撤去箇所101に吊り下ろされている。一方、発進立坑200内部にはエントランス201が設けられエントランスパッキン202を介してシールド機70が撤去箇所101に対面して設置されている。この状態で、鋼管内に電解質溶液を充填し地下水位と均衡させ、電解質溶液を循環させながら加工H形鋼23aの撤去箇所101を電食して撤去する。
【0048】
この実施の形態では、可搬型鋼管電食装置100内には排液手段6を設けず、排液管4を発進立坑200内に設けられたポンプ6aに連結して廃液を回収するようにしてある。
【0049】
図6は、排液手段にエアーリフトを用いた実施の形態を示し、(a)は断面図、(b)は(a)のA部拡大断面図を示す。
【0050】
この実施の形態では、可搬型鋼管電食装置100内には、排液管4を柱状電極1の下端方向に挿通し排液管ガイド4aに保持されて開口しており、水中ポンプ6aは連結されていない。替わって、排液パイプ4の地上に向かう途中に、エアーリフト配管6bが連結され、地上に設けたコンプレッサー43からの圧縮空気を排液管4内に吹き込み、排液管4内に上昇流を起こすことにより排液を循環させるものである。
【0051】
図6(b)は、エアーリフト配管6bと排液管4との結合部Aの拡大断面図である。エアーリフト配管6bは、連結管6dに貫入されたノズル管6cと接続され、連結管6dの前後に連結された排液管4と連結されて、排液管4内に上昇流を起こす構造とされている。
【0052】
前記柱状電極1の材質は、導電性を有するものであればいずれでもよい。このため、鋼管に通水孔を穿孔して使用すれば、コストを抑えることができる。また、杭芯材として加工H形鋼23aを利用する際に、開口部を覆う鉄板を内側に湾曲したものとすれば、コの字形状に形成した柱状電極1としてさらにコストを抑えることができる。
【0053】
この実施の形態では、地上開口部から撤去範囲まで同径の鋼管または、継ぎ手部分が干渉する程度の実施例を説明したが、柱状電極1内部に伸縮機構を設け、細い開口部から挿入可能な形態とすることも、公知の伸縮機構を備えることで容易に実現できる。
【0054】
【発明の効果】
本発明の可搬型鋼管電食装置は、可搬性を有することから、任意の時期に、任意の場所の鋼管内に吊り下ろして挿入して電食させることができる。また、対象鋼管の形状にあわせた柱状電極とされているため、大径から小径までの地中鋼管に適用する事ができる。さらに、単純な構成であり、且つ電食完了後回収して再利用する事ができるため、施工コストを低く抑えることができる。
【0055】
また、本発明の可搬型鋼管電食装置を用いた地中鋼管の電食工法によれば、予め、電食部分の構造材内部に電食用の電極構造と、電解質溶液の充填部を備える必要がないため、一般工事で埋設された地中障害物に対しても電食による劣化・撤去を適用する事ができる。また、鋼管杭の建て込み誤差による影響を受けることがなく正確に位置決めする事ができる。さらに、電食完了状態を目視で確認する事ができるため、確実な撤去を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の可搬型鋼管電食装置の一実施の形態の断面図である。
【図2】本発明の可搬型鋼管電食装置100を用いた地中鋼管の電食撤去方法を説明する図であって、(a)は電食装置吊り下ろし工程を示す模式図、(b)は電食工程を示す模式図である。
【図3】本発明の可搬型鋼管電食装置100を用いた地中鋼管の電食撤去方法を説明するする図であって、(a)は、充填工程を示す模式図、(b)は、電食により撤去された鋼管部部分をシールド機により掘削させた状態を示す模式図である。
【図4】本発明の可搬型鋼管電食装置の形状と、対象鋼管の対応を示す図であり、(a)は鋼管柱列土留工法の平面図、(b)は、矩形管杭心材の土留工法の平面図、(c)は、中空加工されたH形鋼杭心材の土留工法の平面図、(d)は、シールド機の発進到達立坑の土留壁の杭芯材正面図である。
【図5】本発明の可搬型鋼管電食装置を用いた地中鋼管の電食撤去工法を適用したシールド機の発進立坑の断面図である。
【図6】、排液手段にエアーリフトを用いた実施の形態を示し、(a)は断面図、(b)は(a)のA部拡大断面図である。
【符号の説明】
1 柱状電極
1a 通水孔
2、2a、2b 閉塞板
3 送液管
4 排液管
4a 排液管ガイド
5 ガス抜き管
6 排液手段
6a 水中ポンプ
6b エアーリフト配管
6c ノズル管
6d 連結管
7 電源端子
8 吊り下げ金具
8a 吊下板
9a、9b 絶縁板
9c 底板
10 土砂崩壊防止メッシュ
11a、11b ボルト
20 鋼管
21 円形鋼管
22 矩形鋼管
23 H形鋼
23a 加工H形鋼
25 充填材
30 クレーン
31 ワイヤー
40 電解質溶液槽
41 自動バルブ
42 水位調節指示装置
43 コンプレッサー
44 水位計
50 直流電源装置
51 陰極
51a 電線
52 陽極
70 シールド機
71 セグメント
100 可搬型鋼管電食装置
101 撤去範囲
102 地下水位、電解質液面
200 発進立坑
201 エントランス
202 エントランスパッキン
205 床付け
Claims (8)
- 地中に埋設された円柱鋼管または矩形柱鋼管を電食により劣化・撤去するための電食装置であって、前記鋼管の中空部の形状に形成されて鋼管内径より所定長小径で所定長の高さを有する柱状電極と、鋼管内径と略同径に形成され該柱状電極の上下端に嵌挿された弾性部材からなる閉塞板と、上部の閉塞板を貫通して設けられ、地上から電解質溶液の供給を受ける送液管と、電解質溶液及び電食により発生する水酸化物を排出する排液管と、電食により発生するガスを排気するガス抜き管と、該排液管に取り付けられた排液手段と、地上の直流電源と柱状電極を接続するための電源端子と、鋼管内に吊り降ろし吊り上げする際の吊り下げ金具とを備えることを特徴とする可搬型鋼管電食装置。
- 前記排液手段は、柱状電極の底部に設けられた水中ポンプ/または排液管の延伸途中に接続され圧縮空気を吹き込むエアーリフト配管のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の可搬型鋼管電食装置。
- 前記送液管は、地上に設けられた電解質溶液槽と自動バルブを介して接続され、該自動バルブは、鋼管内の電解質の水位を監視する水位計を備えた水位自動調節指示装置からの信号により開閉し電解質溶液を補充制御して、電食される鋼管の埋設地点の地下水位と鋼管内の電解質の水位を略同じ水位に保つことを特徴とする請求項1または2に記載の可搬型鋼管電食装置。
- 前記柱状電極の外周に絶縁材からなる土砂崩壊防止メッシュを備え、電食により鋼管が劣化、撤去されたとき地山が崩壊することを防止することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の可搬型鋼管電食装置。
- 地中鋼管の電食撤去工法であって、地上に電解質溶液槽と直流電源と自動水位調整指示装置とを設置する地上設備工程と、地中に埋設された円柱鋼管または矩形柱鋼管の内部を電食したい深さまで中空にし、鋼管埋設現場の地下水位と鋼管内の電解質の水位が略同じ水位になるように電解質溶液を充填する電解質溶液充填工程と、前記可搬型鋼管電食装置の電源端子に直流電源の陰極に接続する電線と、電解質溶液槽に接続される送液管と、排液管を取り付け、可搬型鋼管電食装置を地中に埋設された円柱鋼管または矩形柱鋼管内部の電食させたい深さまで吊り降ろす電食装置吊り下ろし工程と、電解質溶液を前記排液手段により排出すると共に前記自動バルブにより補充制御して電解質溶液を循環させながら、前記鋼管に直流電源の陽極を接続し、前記可搬型鋼管電食装置の電源端子に直流電源の陰極を接続して電圧を印加する電食工程と、電食により所定箇所の鋼管を劣化・撤去させた後に可搬型鋼管電食装置を吊り上げて地上に回収する電食装置回収工程と、鋼管内の電解質溶液を回収し、鋼管劣化・撤去後の施工目的に合わせた充填材を鋼管内部に充填する充填工程と、地上設備を撤去する設備撤去工程とからなることを特徴とする可搬型鋼管電食装置を用いた地中鋼管の電食撤去工法。
- 前記電食工程の後に、鋼管内の前記可搬型鋼管電食装置を吊り上げ或いは吊り下げて、連続した或いは離れた深さ位置に移動させる電食装置移動工程を行い、さらに電食工程を続けることにより、所定長の高さを有する柱状電極の電食範囲を超える範囲の鋼管を劣化・撤去することを特徴とする請求項5記載の可搬型鋼管電食装置を用いた地中鋼管の電食撤去工法。
- 前記電食装置回収工程の後に、水中カメラまたは、光ファイバーカメラを鋼管内に吊り下ろし、電食完了状態を目視確認する目視確認工程を備えることを特徴とする請求項5または6記載の可搬型鋼管電食装置を用いた地中鋼管の電食撤去工法。
- 前記地中鋼管は、少なくとも、地中存置鋼管杭、ディープウエル鋼管、鋼管杭土留め壁、鋼管杭土留め壁のシールド機発進到達立坑、鋼管タイプのアンカー杭・NATMロックボルト、或いは前記可搬型鋼管電食装置を挿入可能な開口を有する鋼材部材のいづれかであることを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1項に記載の可搬型鋼管電食装置を用いた地中鋼管の電食撤去工法。
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