JP2004172269A - シリコン光起電力素子の製造装置、シリコン光起電力素子及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】低温での製膜を可能にし、結晶質i層へのリンの混入を抑制して光電変換効率を向上させることができるシリコン光起電力素子の製造装置および製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のシリコン光起電力素子の製造装置は、放電用電極14を有し、放電用電極14に対向して配置された基板1上に結晶質シリコン層を製膜するシリコン光起電力素子の製造装置において、基板1と放電用電極14との間に、通気性を有する加熱体を具備する製膜表面ヒーター16が設けられている。また、シリコン光起電力素子の製造方法では、上述したシリコン光起電力素子の製造装置を用いる。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明のシリコン光起電力素子の製造装置は、放電用電極14を有し、放電用電極14に対向して配置された基板1上に結晶質シリコン層を製膜するシリコン光起電力素子の製造装置において、基板1と放電用電極14との間に、通気性を有する加熱体を具備する製膜表面ヒーター16が設けられている。また、シリコン光起電力素子の製造方法では、上述したシリコン光起電力素子の製造装置を用いる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマCVD法により結晶質シリコン層を製膜するシリコン光起電力素子の製造装置に関する。さらには、太陽電池あるいはセンサ等に適用されるシリコン光起電力素子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球環境問題の観点から、クリーンな発電システムである太陽電池が注目されている。太陽電池は、バルク型と薄膜型に大別され、薄膜型にはシリコン系薄膜を光電変換層として用いた光起電力素子があり、光起電力素子としては、非晶質シリコンからなるものを用いることがある。その非晶質シリコンは、通常、原料ガスとしてシランあるいはジシラン等の水素化珪素ガスを用いるプラズマCVD法によって製造され、その際、プラズマの発生には、通常、周波数13.56MHzの高周波電源が最も一般的に用いられる。このような非晶質シリコンは、200℃以下の低温でガラス、金属あるいはプラスチック等の安価な基板上に製膜することができ、かつ、大面積製膜が可能であることを最大の特徴としており、この特徴が活かされて、非晶質シリコン系太陽電池は、量産時の低コスト化の可能性を有している。そのようなことから、単結晶シリコンあるいは多結晶シリコンからなるバルクシリコン型太陽電池を凌駕するものとして期待され、開発が進められている。
【0003】
しかし、非晶質シリコン系太陽電池に光を照射すると光電変換層であるi層内に欠陥が発生し、光キャリアがトラップされるため、光電変換効率が初期状態と比較して、1割から3割程度低下する光劣化現象(いわゆるステブラーロンスキー効果)が生じ、実用化上の大きな問題となっている。光劣化現象のメカニズムについては種々の研究が精力的に行われているにもかかわらず、完全には解明されていないため、その抜本的な解決策が確立されていないのが実情である。
【0004】
これに対し、近年、光電変換層として非晶質シリコンの代わりに微結晶シリコンを用いる試みが報告されている(J. Meier et a1., Mat. Res. Soc. Symp. Proc. Vol.420. P3(1996))。この文献によると、周波数110MHzのVHF帯の電源を用いた高周波プラズマCVD法により形成された微結晶シリコンからなるpin型の光電変換素子は、非晶質シリコンのような光劣化現象を伴わないとされている。
なお、ここで、微結晶シリコンとは、非晶質シリコン以外のシリコンを意味するものであり、多結晶シリコンや非晶質を含んだ結晶質シリコンも含まれる。
【0005】
図3に、特許文献1に記載された、微結晶シリコンを有するシングル型シリコン光起電力素子の層構造を示す。このシングル型シリコン光起電力素子10は、透光性基板1上に、金属酸化物からなる透明電極層2、結晶質p型半導体層3、実質的に真性な結晶質光電変換層4、結晶質n型半導体層5及び裏面電極層6が順に接するpin型のものである。そして、この光起電力素子10において、結晶質p型半導体層3、実質的に真性な結晶質光電変換層4、結晶質n型半導体層5は微結晶シリコンからなる結晶質シリコン層である。また、光は透光性基板1の側から入射するようにされている。
【0006】
微結晶シリコンを用いるシリコン光起電力素子では、その素子構造から、光透過性を有しないもの(例えば、ステンレス等)を基板として構成され、基板と反対側から光が入射するサブストレート型素子と、ガラスに代表される光透過性を有するものを基板として構成され、基板側から光を入射するスーパーストレート型素子とに大別できるが、図1の光起電力素子は、スーパーストレート型である。スーパーストレート型は、非晶質シリコンと同様の集積型モジュールを構成できる特徴を有する。
【0007】
また、光電変換層として微結晶シリコンを用いたシリコン光起電力素子は、非晶質シリコンを用いた光起電力素子と比較して、分光感度スペクトルのピークが長波長側に存在するため、非晶質シリコンをトップセル、微結晶シリコンをボトムセルの光電変換層とする積層型のシリコン光起電力素子、いわゆるタンデム化によって光電変換効率を高めることも可能である。
【0008】
なお、本明細書においては、透光性基板を基板、結晶質p型半導体層を結晶質p層、実質的に真性な結晶質光電変換層を結晶質i層、結晶質n型半導体層を結晶質n層、シリコン光起電力素子を光起電力素子ということがある。また、実質的に真性な結晶質光電変換層における「実質的」とは、結晶質光電変換層は極微量に不純物を含んでいるため、僅かにn型あるいはp型の性質を示す場合があることを意味している。
【0009】
上記微結晶シリコンを有する光起電力素子において、p層及びn層には、その価電子制御のために、ドーピング元素が添加されている。すなわち、p層には、III族元素、例えば、ボロン、アルミニウム等が添加されており、n層には、V族元素、例えば、リンが添加されている。そして、これらのドーピング元素がシリコンの原子位置に置換して含まれる場合には、ドーピング元素として価電子制御の機能を発揮する。
【0010】
このような微結晶シリコン光起電力素子は、基板1上に、透明電極層2、結晶質p層3、結晶質i層4、結晶質n層5、裏面電極層6の順に製膜して製造される。その際、高周波プラズマCVD法が採用されるが、その方法は、基本的には、非晶質シリコンの製膜に採用されていた方法を採用できる。したがって、微結晶シリコンを用いた光起電力素子は、既存のプラズマCVD装置を流用して製造できる上に、光劣化現象を伴わないという長所を有している。
【0011】
従来、上述した微結晶シリコン光起電力素子を製造する際には、図7に示すようなシリコン光起電力素子の製造装置(プラズマCVD装置)が用いられていた。このシリコン光起電力素子の製造装置は、ステンレス製の真空容器11と、ガス混合箱12と、基板加熱用ヒーター13と、放電用電極14と、真空ポンプ15とを具備して概略構成されるものである。
また、基板加熱用ヒーター13は、製膜面が下側となるように基板1を密着保持する基板ホルダー17を備えている。また、基板加熱用ヒーター13には、図示しない温度センサが取り付けられており、基板1の基板温度を間接又は直接的に検出するようになっている。温度センサは図示しない制御器の入力部に接続されており、温度検出信号が制御器に入力されると、これに基づいて制御器が基板加熱用ヒーター13への給電量を制御するようになっている。
また、放電用電極14は基板加熱用ヒーター13と対向するように配置されている。放電用電極14は同軸ケーブル18を介してインピーダンス整合器19及び高周波電源20に接続されている。
【0012】
上述したように、結晶質n層5には、その電気的特性を制御するため、ドーピング元素として、通常、リンが添加されており、結晶質n層5を製膜する際には、添加したリンを活性化させて正常に機能させるために基板温度を高くする必要があった。具体的には、結晶質n層5の製膜時の基板温度を150℃以上にしていた。しかし、基板温度が高温であると、使用できる基板が制限される上に、このような高温で結晶質n層5を製膜した場合には、製膜中にリンが結晶質n層5から結晶質i層4に拡散混入することがあった。
そこで、低温で製膜することによって、隣接する層からの不純物原子の拡散混入を抑制した光電変換素子が提案されている。例えば、特許文献2では、p型半導体層あるいはn型半導体層のドーピング元素含有量および厚さが特定された微結晶シリコン系導電型薄膜を含む光電変換装置(光電変換素子)が記載されている。
【0013】
【特許文献1】
特開2000−252488号公報(特許請求の範囲、実施例1)
【特許文献2】
特開平11−145498号公報(特許請求の範囲)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献2に記載の光電変換装置においても、十分に低い基板温度で製膜されていないため、隣接する層からの不純物原子の拡散混入が十分に抑制されていなかった。そして、結晶質i層に結晶質n層のドーピング元素が混入した場合は、結晶質i層がn型化することになるが、結晶質i層がn型化した場合には、本来、基本的に真性であることで発揮される光電変換機能が十分に発揮されなくなる。これは、結晶質i層がn型化することで、キャリア拡散長が著しく低下するためである。
【0015】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、低温での製膜を可能にし、結晶質i層へのリンの混入を抑制して光電変換効率を向上させることができるシリコン光起電力素子の製造装置および製造方法を提供することにある。また、結晶質i層中へのリンの混入が抑制されたシリコン光起電力素子を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明のシリコン光起電力素子の製造装置は、放電用電極を有し、該放電用電極に対向して配置された基板上に結晶質シリコン層を製膜するシリコン光起電力素子の製造装置において、前記基板と前記放電用電極との間に、通気性を有する加熱体を具備する製膜表面ヒーターが設けられたことを特徴としている。
このようなシリコン光起電力素子の製造装置によれば、製膜時に製膜表面を加熱することができ、基板加熱用ヒーターによる加熱を抑えて基板温度を低くすることができる。したがって、結晶質光電変換層へのリンの混入を防止することができ、光電変換効率を高めることができる。
【0017】
本発明のシリコン光起電力素子の製造装置においては、前記通気性を有する加熱体が金属メッシュであってもよい。通気性を有する加熱体が金属メッシュであれば、原料ガスが十分に通り抜けることができ、製膜性を高めることができる。また、前記製膜表面ヒーターは、前記通気性を有する加熱体を緊張させる張力調整手段を具備することが好ましい。製膜表面ヒーターが張力調整手段を具備していれば、加熱体の弛みを防止できるから、製膜表面と加熱体との距離を均一にでき、その結果、基板表面温度の均一性を高めることができる。
【0018】
本発明のシリコン光起電力素子の製造方法は、結晶質p型半導体層上に形成された実質的に真性である結晶質光電変換層の上に、結晶質n型半導体層を製膜するシリコン光起電力素子の製造方法において、上述したシリコン光起電力素子の製造装置を用いて、結晶質n型半導体層の製膜表面を加熱することを特徴としている。この製造方法によれば、結晶質光電変換層への結晶質n型半導体層中のリンの混入を防止することができ、光電変換効率の高いシリコン光起電力素子を製造することができる。
【0019】
本発明のシリコン光起電力素子は、上述したシリコン光起電力素子の製造方法によって製造されたことを特徴としている。
また、本発明のシリコン光起電力素子は、非晶質p型半導体層、実質的に真性である非晶質光電変換層、非晶質n型半導体層が順に接する非晶質シリコン層を有することができる。
これらのシリコン光起電力素子は、上述した光起電力素子の製造方法で製造されたものであるから、光電変換効率が高い。
【0020】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態例)
以下、添付の図面を参照して本発明に係る第1の実施形態例について説明する。
はじめに、シリコン光起電力素子の製造装置について説明する。
図1に、プラズマCVD法によって結晶質i層上に結晶質n層を製膜する光起電力素子の製造装置の概略模式図を示す。図1に示す光起電力素子の製造装置は、ステンレス製の真空容器11と、ガス混合箱12と、基板加熱用ヒーター13と、放電用電極14と、真空ポンプ15と、製膜表面ヒーター16とを具備して概略構成される。ここで、放電用電極14は基板1に対向して配置されており、製膜表面ヒーター16は、基板1と放電用電極14との間に設けられている。また、製膜表面ヒーター16は、製膜表面ヒーター用電源23に接続されている。製膜時には、製膜表面のみを加熱すればよいが、上記製膜表面ヒーター16によって製膜表面を集中して加熱することで基板加熱用ヒーター13による加熱を抑えて基板温度を低くすることができる。
なお、この光起電力素子の製造装置は、図7に示した従来の光起電力素子の製造装置と共通する構成要素を有しており、その共通する構成要素についての説明は省略する。
【0021】
図2に、製膜表面ヒーター16の上面図を示す。
この製膜表面ヒーター16は、発熱体である金属メッシュ31と、金属メッシュ31を固定する金属メッシュ固定治具32と、金属メッシュ31を緊張させる張力調整手段33と、張力調整手段33を支持する外枠34とを具備して構成される。ここで、金属メッシュ31は、ステンレス線やニクロム線などの金属線が隙間を有して格子状に組まれたものであり、通電することにより発熱するものである。また、張力調整手段33は、電気絶縁するための碍子35を介して外枠34に取り付けられている。また、金属メッシュ固定治具32には、製膜表面ヒーター用電源23と接続するための端子36が設けられている。
このような製膜表面ヒーター16では、発熱体が金属メッシュ31であることから金属線間の隙間から原料ガスを通過させて製膜表面に供給できる。また、張力調整手段33によって、金属メッシュ31が緊張されて弛みがないから、製膜表面と金属メッシュ31との距離を均一にでき、その結果、基板表面温度の均一性を高めることができる。
【0022】
以下に、本実施形態例の光起電力素子およびその製造方法について説明する。この光起電力素子の製造方法で製造される光起電力素子は、従来の技術の欄で記載した図3の光起電力素子と同様の層構造を有したものである。すなわち、本実施形態例の光起電力素子10は、基板1上に、透明電極層2、結晶質p層3、結晶質i層4、結晶質n層5及び裏面電極層6が順に接して構成され、結晶質p層3、結晶質i層4、結晶質n層5は微結晶シリコンからなる結晶質シリコン層である。
【0023】
この製造方法では、まず、脱脂洗浄後乾燥させたガラスからなる基板1上に透明電極層2をCVD法またはスパッタ法等のPVD法により形成する。次いで、透明電極層2上に、結晶質p層3、結晶質i層4、結晶質n層5を順に製膜する。次いで、結晶質n層5上に、Al、Ag、Ti、Ni、Cr、Cuあるいはそれらの合金からなる裏面電極層6を、真空蒸着法またはスパッタ法等の物理蒸着法によって形成して光起電力素子を得る。
以下、各工程をより詳細に説明する。
【0024】
上述した光起電力素子の製造方法において、透明電極層2としては、ITO、フッ素(F)をドープした酸化スズ(SnO2 )あるいはアルミニウム(Al)またはガリウム(Ga)をドープした酸化亜鉛(ZnO)等の金属酸化物が使用される。
【0025】
結晶質p層3および結晶質i層4の製膜では、まず、脱脂洗浄及び乾燥した基板1を、図1に示す真空容器11に導入し、基板加熱用ヒーター13に密着させる。次いで、真空ポンプ15により、排気管21を介して真空容器11内を1.33×10−4Pa(1×10−6Torr)以下に排気する。次いで、原料ガス導入管22を介して、原料ガスを所定流量、ガス混合箱12に導入する。その際、原料ガスの流量は、図示しないマスフローコントローラによって制御される。
次いで、図示しない圧力調整弁により真空容器11内を所定の圧力に調整するとともに、基板加熱用ヒーター13に通電加熱して、基板1を所定温度に加熱する。
そして、基板温度及び圧力が安定した後に、高周波電源20から所定周波数の高周波電力を放電用電極14に供給し、プラズマを発生させて、基板1の表面に結晶質p層3および結晶質i層4を製膜する。その際、反射電力が最小となるようにインピーダンス整合器19を調整する。所定時間製膜した後、原料ガスを排気するとともに、基板1を冷却する。
なお、結晶質p層3および結晶質i層4の製膜においては、図7に示す光起電力素子の製造装置を用いることもできる。
【0026】
結晶質i層4を製膜する際の原料ガスとしては、少なくともシリコンを含むガス、具体的にはシラン、ジシラン等の水素化珪素ガス、弗化珪素ガスあるいはジクロロシラン、トリクロロシラン等のハロシランガス及び水素を用いる。
結晶質p層3を製膜する際の原料ガスは、上記結晶質i層4製膜時の原料ガスに、ドーピング元素としてIII族元素を含むガス、例えばB2H6、BF3 等のボロンを含むガスを添加して製膜する。
【0027】
原料ガスにおいて、シリコンを含むガスの流量に対する水素の流量比は、5倍以上100倍以下が望ましい。水素の流量比が5倍未満の場合、水素ラジカルの発生量が少ないため、成長中の膜表面のダングリングボンドの終端が不十分になることがある。その結果、製膜に関与するシリコン系ラジカルの表面拡散が不十分となり、良好な結晶性を有する微結晶シリコンが十分に成長しないことがある。一方、水素の流量比が100倍を超える場合、微結晶シリコンは成長するものの、製膜に関与するシリコン系ラジカルが少ないため、その製膜速度が極めて小さくなる。したがって、非晶質シリコンよりも厚い光電変換層を必要とする微結晶シリコン系光起電力素子では、産業利用上、生産性が著しく低下する。
【0028】
原料ガスを導入しているときの真空容器11内の圧力は、13.3Pa以上665Pa以下が望ましい。圧力が13.3Pa未満の場合、製膜に関与するシリコン系ラジカルが少ないため、製膜速度が極めて小さくなり、産業利用上、生産性が著しく低下する。一方、圧力が665Paを超える場合、製膜中に気相反応が顕著になり、高次シランからなる粉が生じ易くなる。製膜中に発生した粉は、膜中に取り込まれて微結晶シリコンの膜質を極端に低下させる他、真空容器11の開放保守の頻度を高める等の悪影響を及ぼす。
【0029】
製膜の際の基板温度は、ガラス等の安価な材質が使用可能になることから500℃以下であることが望ましい。また、基板温度の下限値を100℃とすることが好ましい。基板温度を100℃未満に設定すると基板表面に吸着した製膜に関与するシリコン系ラジカルの表面拡散が不十分となるため、結晶性が良好な微結晶シリコンが十分に成長しないことがある。
【0030】
高周波電源20の周波数は10MHz以上300MHz以下が望ましい。周波数が10MHz未満の場合、プラズマ密度が低く、プラズマ中で励起される水素ラジカルが少ないため、成長中の膜表面のダングリングボンドの終端が不十分になることがある。その結果、製膜に関与するシリコン系ラジカルの表面拡散が不十分になり、微結晶シリコンの結晶化が促進されないことがある。一方、周波数が300MHzを超える場合、放電用電極14内での電圧分布が大きくなり、プラズマが不均一になる結果、均一な放電が困難となり、膜厚の分布が大きくなるおそれがある。
【0031】
このようにして製膜された結晶質p層3は、膜厚が5nm以上100nm以下であることが望ましい。結晶質p層3の膜厚が5nm未満であると、部分的に結晶質p層が形成されず、透明電極層2が露出した状態、いわゆる島状成長となるおそれがある。この場合、結晶質p層3が形成されていない部分は、正常な半導体pn接合が形成されないため、光起電力素子としての特性が著しく低下する。一方、結晶質p層3の膜厚が100nm超であると、光入射側の層である結晶質p層3での光吸収が大きくなり、光電変換層である結晶質i層4へ到達する光量が減少するため、光起電力素子としての短絡電流が低下することがある。
【0032】
また、結晶質i層4は、膜厚が、透明電極層2、結晶質p層3及び結晶質i層4の表面形状に依存する光閉じ込め状態にもよって異なるが、1000nm以上10000nm以下(1μm〜10μm)であることが望ましい。結晶質i層4の膜厚を1000nm(1μm)未満であると、入射光を十分に吸収できなくなるため、光起電力素子としての短絡電流が小さくなることがある。一方、結晶質i層4の膜厚が10000nm(10μm)超であると、結晶質i層4に生じる内部電界が弱くなり、光起電力素子としての開放電圧が低下することがある上に、製膜時間が長くなる。このように品質および生産性が低くなると、実用性が低下する。
【0033】
結晶質n層5の製膜では、図1に示すような、製膜表面ヒーター16を具備する光起電力素子の製造装置が用いられ、基本的な製膜方法は、結晶質p層3および結晶質i層4の製膜と同様である。ただし、結晶質n層5の製膜では、原料ガスとして、ドーピング元素としてV族元素を含むガス、例えばPH3 等のリンを含むガスを使用する。また、基板加熱用ヒーター13の他に製膜表面ヒーター16に通電して所定温度に加熱する。このように、膜が成長している表面側から加熱することにより、基板加熱用ヒーター温度を高くしなくても、製膜に関与するラジカルの表面拡散を促進して結晶化を促進できることができる。したがって、結晶質i層4中へのリンの拡散混入を抑制できる。
【0034】
結晶質n層5は、膜厚が5nm以上100nm以下であることが望ましい。結晶質n層5の膜厚が5nm未満であると、部分的に結晶質n層が形成されず、結晶質i層4が露出した状態、いわゆる島状成長となる。この場合、結晶質n層5が製膜されていない部分は、正常な半導体pn接合が形成されないため、光起電力素子としての特性が著しく低下するおそれがある。一方、結晶質n層5の膜厚を100nm超であると、結晶質n層5での光吸収量が大きくなるため、裏面電極層6で反射した光を有効に利用できず、光起電力素子としての短絡電流が低下することがある。
裏面電極層6は、結晶質i層4を透過した光を充分に反射できるようにするために、膜厚を200nm以上であることが望ましい。
【0035】
上述した光起電力素子は、pin構造を1つ有するいわゆるシングル型光起電力素子であったが、本発明はこれに限定されず、非晶質pin構造の層の上に微結晶pin構造の層をさらに設けることもできる。以下に、非晶質pin構造の層の上に微結晶pin構造の層をさらに設けた第2の実施形態例について説明する。
【0036】
(第2の実施形態例)
第2の実施形態例の光起電力素子は、非晶質シリコン系セルをトップセル、微結晶シリコン系セルをボトムセルとするタンデム型光起電力素子である。
図4に、第2の実施形態例の光起電力素子の構造を示す。この光起電力素子は、基板1上に、透明電極層2、非晶質p型半導体層7(以下、非晶質p層7という)、実質的に真性な非晶質光電変換層8(以下、非晶質i層8という)、非晶質n型半導体層9(以下、非晶質n層9という)、結晶質p層3、結晶質i層4、結晶質n層5及び裏面電極層6が順に接して構成される。この光起電力素子は、光は基板1の側から入射するようにされている。
この光起電力素子において、非晶質p層7、非晶質i層8、非晶質n層9は、非晶質シリコンからなる非晶質シリコン層である。なお、第1の実施形態例の光起電力素子と共通する構成要素である透明電極層2、結晶質p層3、結晶質i層4、結晶質n層5及び裏面電極層6については説明を省略する。
【0037】
次に、本実施形態例の光起電力素子の製造方法について説明する。
まず、ガラスからなる基板1上に透明電極層2をCVD法またはスパッタ法等のPVD法により形成する。次いで、透明電極層2上に、非晶質p層7、非晶質i層8、非晶質n層9を順に製膜する。そして、非晶質n層9の上に、第1の実施形態例で示したのと同様の製膜方法で、結晶質p層3、結晶質i層4、結晶質n層5を順に製膜する。次いで、結晶質n層5上に、Al、Ag、Ti、Ni、Cr、Cuあるいはそれらの合金からなる裏面電極層6を、真空蒸着法またはスパッタ法等の物理蒸着法によって形成して光起電力素子を得る。
【0038】
上述した製造方法において、非晶質p層7、非晶質i層8、非晶質n層9を製膜する際には、プラズマCVD法が採用され、結晶質p層3、結晶質i層4、結晶質n層5を製膜する図1に示した光起電力素子の製造装置を用いることができるし、図7に示した光起電力素子の製造装置を用いることもできる。
【0039】
上述した製造方法で製膜された非晶質p層7は、膜厚が5nm以上50nm以下であることが望ましい。非晶質p層7の膜厚が5nm未満であると、部分的に非晶質p層7が形成されず、透明電極層2が露出した状態、いわゆる島状成長となる。この場合、非晶質p層7が製膜されていない部分は、正常な半導体pn接合が形成されないため、光起電力素子としての特性が著しく低下する。一方、非晶質p層7の膜厚が50nm超であると、光入射層である非晶質p層7での光吸収が大きくなり、光電変換層である非晶質i層8及び結晶質i層4への入射光量が減少して光起電力素子としての短絡電流が低下することがある。
【0040】
非晶質i層8は、膜厚が100nm以上500nm以下であることが望ましい。非晶質i層8の膜厚が100nm未満であると、入射する光を充分に吸収できないため、光起電力素子としての短絡電流が低下することがある。一方、非晶質i層8の膜厚を500nm超であると、吸収した光によって非晶質i層8の欠陥が増加する、いわゆるステブラーロンスキー効果により、光劣化が大きくなることがある。
【0041】
非晶質n層9は、膜厚が5nm以上50nm以下であることが望ましい。非晶質n層9の膜厚が5nm未満であると、部分的に非晶質i層8が露出した状態、いわゆる島状成長となる。この場合、非晶質n層9が製膜されていない部分は、正常な半導体pn接合が形成されないため、光起電力素子としての特性が著しく低下する。一方、非晶質n層9の膜厚が50nm超であると、非晶質n層9での光吸収が大きくなり、ボトムセルへの入射光量が減少して、光起電力素子としての短絡電流が低下することがある。
【0042】
結晶質p層3の膜厚は5nm以上100nm以下にすることが望ましい。結晶質p層3の膜厚を5nm未満にすると、部分的に非晶質n層9が露出した状態、いわゆる島状成長となるおそれがある。この場合、結晶質p層3が製膜されていない部分は、正常な半導体pn接合が形成されないため、光起電力素子としての特性が著しく低下する。一方、結晶質p層3の膜厚を100nm超にすると、光入射側の層である結晶質p層3での光吸収が大きくなり、光電変換層である結晶質i層4へ到達する光量が減少するため、光起電力素子としての短絡電流が低下することがある。
【0043】
以上説明した第1および第2の実施形態例では、製膜表面ヒーター16を用いて製膜表面を加熱しながら結晶質n層5を製膜することで、基板温度を低くできるので、結晶質i層4に拡散混入するリンの量を抑制できる。その結果、光起電力素子の光電変換特性を向上させることができる。
【0044】
なお、本発明は上述した実施形態例に限定されない。例えば、製膜表面ヒーターは、通気性を有する加熱体を具備していれば特に限定されず、金属メッシュ以外にも、例えば、図5に示すような、金属ワイヤー37が間隔を有して平行に引き揃えられて形成された発熱体を固定治具で固定されたものが挙げられる。この製膜表面ヒーター38では、図2に示した製膜表面ヒーター16と同様にして、張力調整手段33によって金属ワイヤー37を緊張させている。他の構成も図2の製膜表面ヒーター16と同様である。
また、他の製膜表面ヒーターとしては、金属線がハニカム状にされたもの、金属板に多数の孔が開けられたパンチングメタルなどを用いることもできる。
【0045】
【実施例】
(実施例1、比較例1)
次のようにして、図3に示すようなシングル型光起電力素子を得た。まず、ガラスからなる基板1上に透明電極層2として、アルミニウムをドープした酸化亜鉛ZnOをスパッタ法により700nm形成した。次いで、その上に、図7の光起電力の製造装置を用いたプラズマCVD法により、結晶質p層3、結晶質i層4を順に形成した。次いで、図1に示すような光起電力素子の製造装置を用い、製膜表面ヒーター16に150Wの電力を通電し、基板加熱用ヒーター13を120℃に設定して結晶質n層5を製膜した。そして、最後に、真空蒸着法により膜厚500nmのアルミニウムからなる裏面電極層6を形成して光起電力素子を得た。
一方、比較例1では、結晶質n層5を製膜する際に、図7に示すような、製膜表面ヒーターを有していない光起電力素子の製造装置を用い、基板加熱用ヒーター13を200℃に設定した。
【0046】
これらの光起電力素子に、基板1側から模擬太陽光(AM(通過空気量)1.5、100mW/cm2 )を照射して、その光電変換効率を計測した。その結果、比較例1の光起電力素子の光電変換効率を1.00とした場合、実施例1の光起電力素子の光電変換効率は1.12であった。実施例1の光電変換効率の向上には、形状因子の改善効果が大きかった。
【0047】
次に、図6を参照しながら、製膜表面温度と光電変換効率との関係について説明する。図6は、図3に示す光起電力素子の結晶質n層5を製膜する際の製膜表面ヒーター16に通電する電力を調整し、製膜表面温度を変化させて作製したときの光起電力素子の変換効率を示すグラフである。なお、図6中の光電変換効率(図中では「変換効率」と略す)は、比較例1の光起電力素子の光電変換効率を1.00としたときの相対値である。
製膜表面温度が100〜200℃の範囲では、変換効率の向上が認められ、特に製膜表面温度125〜175℃の範囲で光電変換効率が高かった。一方、製膜表面温度が100℃以下の場合、製膜表面でラジカルを表面拡散させる効果が小さいので変換効率が低く、200℃を超える場合には、基板温度が高くなってしまい、結果的に、基板加熱用ヒーター13で高温に加熱した状態と同じになっていた。
【0048】
(実施例2及び比較例2)
次のようにして、図4に示すようなタンデム型光起電力素子を得た。まず、ガラスからなる基板1上に透明電極層2として、アルミニウムをドープした酸化亜鉛ZnOをスパッタ法により700nm形成した。次いで、その上に、図7の光起電力素子の製造装置を用いたプラズマCVD法により、非晶質p層7、非晶質i層8、非晶質n層9、結晶質p層3、結晶質i層4を順に形成した。次いで、図1に示すような光起電力素子の製造装置を用い、製膜表面ヒーター16に150Wの電力を通電し、基板加熱用ヒーター13を120℃に設定して結晶質n層5を製膜した。そして、最後に、真空蒸着法により膜厚500nmのアルミニウムからなる裏面電極層6を形成して光起電力素子を得た。
一方、比較例2では、結晶質n層5を製膜する際にも、図7に示すような、製膜表面ヒーターを有していない光起電力素子の製造装置を用い、基板加熱用ヒーター13を200℃に設定した。
【0049】
これらの光起電力素子に、基板1側から模擬太陽光(AM(通過空気量)1.5、100mW/cm2 )を照射して、その光電変換効率を計測した。その結果、比較例2の光起電力素子の光電変換効率を1.00とした場合、実施例2の光起電力素子の光電変換効率は1.12であった。実施例2の光電変換効率の向上には、形状因子の改善効果が大きかった。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、製膜表面ヒーターを用いて製膜表面を加熱しながら結晶質n層を製膜することにより、基板加熱ヒーター温度を低くできるので、結晶質i層に拡散混入するリンの量を抑制できる。その結果、結晶質i層の光電変換特性の低下が防止されているので、光起電力素子の光電変換特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシリコン光起電力素子の製造装置の実施形態例を示す模式図である。
【図2】図1のシリコン光起電力素子の製造装置における製膜表面ヒーターの上面図である。
【図3】シングル型シリコン光起電力素子の一例を示す断面図である。
【図4】タンデム型シリコン光起電力素子の一例を示す断面図である。
【図5】製膜表面ヒーターの他の例を示す上面図である。
【図6】結晶質n型半導体層製膜時の製膜表面温度と光電変換効率との関係を示すグラフである。
【図7】従来のシリコン光起電力素子の製造装置を示す模式図である。
【符号の説明】
1 透光性基板(基板)
3 結晶質p型半導体層(結晶質p層)
4 結晶質i型半導体層(結晶質i層)
5 結晶質n型半導体層(結晶質n層)
7 非晶質p型半導体層(非晶質p層)
8 非晶質i型半導体層(非晶質i層)
9 非晶質n型半導体層(非晶質n層)
10 シリコン光起電力素子(光起電力素子)
14 放電用電極
16,38 製膜表面ヒーター
31 金属メッシュ
33 張力調整手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマCVD法により結晶質シリコン層を製膜するシリコン光起電力素子の製造装置に関する。さらには、太陽電池あるいはセンサ等に適用されるシリコン光起電力素子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球環境問題の観点から、クリーンな発電システムである太陽電池が注目されている。太陽電池は、バルク型と薄膜型に大別され、薄膜型にはシリコン系薄膜を光電変換層として用いた光起電力素子があり、光起電力素子としては、非晶質シリコンからなるものを用いることがある。その非晶質シリコンは、通常、原料ガスとしてシランあるいはジシラン等の水素化珪素ガスを用いるプラズマCVD法によって製造され、その際、プラズマの発生には、通常、周波数13.56MHzの高周波電源が最も一般的に用いられる。このような非晶質シリコンは、200℃以下の低温でガラス、金属あるいはプラスチック等の安価な基板上に製膜することができ、かつ、大面積製膜が可能であることを最大の特徴としており、この特徴が活かされて、非晶質シリコン系太陽電池は、量産時の低コスト化の可能性を有している。そのようなことから、単結晶シリコンあるいは多結晶シリコンからなるバルクシリコン型太陽電池を凌駕するものとして期待され、開発が進められている。
【0003】
しかし、非晶質シリコン系太陽電池に光を照射すると光電変換層であるi層内に欠陥が発生し、光キャリアがトラップされるため、光電変換効率が初期状態と比較して、1割から3割程度低下する光劣化現象(いわゆるステブラーロンスキー効果)が生じ、実用化上の大きな問題となっている。光劣化現象のメカニズムについては種々の研究が精力的に行われているにもかかわらず、完全には解明されていないため、その抜本的な解決策が確立されていないのが実情である。
【0004】
これに対し、近年、光電変換層として非晶質シリコンの代わりに微結晶シリコンを用いる試みが報告されている(J. Meier et a1., Mat. Res. Soc. Symp. Proc. Vol.420. P3(1996))。この文献によると、周波数110MHzのVHF帯の電源を用いた高周波プラズマCVD法により形成された微結晶シリコンからなるpin型の光電変換素子は、非晶質シリコンのような光劣化現象を伴わないとされている。
なお、ここで、微結晶シリコンとは、非晶質シリコン以外のシリコンを意味するものであり、多結晶シリコンや非晶質を含んだ結晶質シリコンも含まれる。
【0005】
図3に、特許文献1に記載された、微結晶シリコンを有するシングル型シリコン光起電力素子の層構造を示す。このシングル型シリコン光起電力素子10は、透光性基板1上に、金属酸化物からなる透明電極層2、結晶質p型半導体層3、実質的に真性な結晶質光電変換層4、結晶質n型半導体層5及び裏面電極層6が順に接するpin型のものである。そして、この光起電力素子10において、結晶質p型半導体層3、実質的に真性な結晶質光電変換層4、結晶質n型半導体層5は微結晶シリコンからなる結晶質シリコン層である。また、光は透光性基板1の側から入射するようにされている。
【0006】
微結晶シリコンを用いるシリコン光起電力素子では、その素子構造から、光透過性を有しないもの(例えば、ステンレス等)を基板として構成され、基板と反対側から光が入射するサブストレート型素子と、ガラスに代表される光透過性を有するものを基板として構成され、基板側から光を入射するスーパーストレート型素子とに大別できるが、図1の光起電力素子は、スーパーストレート型である。スーパーストレート型は、非晶質シリコンと同様の集積型モジュールを構成できる特徴を有する。
【0007】
また、光電変換層として微結晶シリコンを用いたシリコン光起電力素子は、非晶質シリコンを用いた光起電力素子と比較して、分光感度スペクトルのピークが長波長側に存在するため、非晶質シリコンをトップセル、微結晶シリコンをボトムセルの光電変換層とする積層型のシリコン光起電力素子、いわゆるタンデム化によって光電変換効率を高めることも可能である。
【0008】
なお、本明細書においては、透光性基板を基板、結晶質p型半導体層を結晶質p層、実質的に真性な結晶質光電変換層を結晶質i層、結晶質n型半導体層を結晶質n層、シリコン光起電力素子を光起電力素子ということがある。また、実質的に真性な結晶質光電変換層における「実質的」とは、結晶質光電変換層は極微量に不純物を含んでいるため、僅かにn型あるいはp型の性質を示す場合があることを意味している。
【0009】
上記微結晶シリコンを有する光起電力素子において、p層及びn層には、その価電子制御のために、ドーピング元素が添加されている。すなわち、p層には、III族元素、例えば、ボロン、アルミニウム等が添加されており、n層には、V族元素、例えば、リンが添加されている。そして、これらのドーピング元素がシリコンの原子位置に置換して含まれる場合には、ドーピング元素として価電子制御の機能を発揮する。
【0010】
このような微結晶シリコン光起電力素子は、基板1上に、透明電極層2、結晶質p層3、結晶質i層4、結晶質n層5、裏面電極層6の順に製膜して製造される。その際、高周波プラズマCVD法が採用されるが、その方法は、基本的には、非晶質シリコンの製膜に採用されていた方法を採用できる。したがって、微結晶シリコンを用いた光起電力素子は、既存のプラズマCVD装置を流用して製造できる上に、光劣化現象を伴わないという長所を有している。
【0011】
従来、上述した微結晶シリコン光起電力素子を製造する際には、図7に示すようなシリコン光起電力素子の製造装置(プラズマCVD装置)が用いられていた。このシリコン光起電力素子の製造装置は、ステンレス製の真空容器11と、ガス混合箱12と、基板加熱用ヒーター13と、放電用電極14と、真空ポンプ15とを具備して概略構成されるものである。
また、基板加熱用ヒーター13は、製膜面が下側となるように基板1を密着保持する基板ホルダー17を備えている。また、基板加熱用ヒーター13には、図示しない温度センサが取り付けられており、基板1の基板温度を間接又は直接的に検出するようになっている。温度センサは図示しない制御器の入力部に接続されており、温度検出信号が制御器に入力されると、これに基づいて制御器が基板加熱用ヒーター13への給電量を制御するようになっている。
また、放電用電極14は基板加熱用ヒーター13と対向するように配置されている。放電用電極14は同軸ケーブル18を介してインピーダンス整合器19及び高周波電源20に接続されている。
【0012】
上述したように、結晶質n層5には、その電気的特性を制御するため、ドーピング元素として、通常、リンが添加されており、結晶質n層5を製膜する際には、添加したリンを活性化させて正常に機能させるために基板温度を高くする必要があった。具体的には、結晶質n層5の製膜時の基板温度を150℃以上にしていた。しかし、基板温度が高温であると、使用できる基板が制限される上に、このような高温で結晶質n層5を製膜した場合には、製膜中にリンが結晶質n層5から結晶質i層4に拡散混入することがあった。
そこで、低温で製膜することによって、隣接する層からの不純物原子の拡散混入を抑制した光電変換素子が提案されている。例えば、特許文献2では、p型半導体層あるいはn型半導体層のドーピング元素含有量および厚さが特定された微結晶シリコン系導電型薄膜を含む光電変換装置(光電変換素子)が記載されている。
【0013】
【特許文献1】
特開2000−252488号公報(特許請求の範囲、実施例1)
【特許文献2】
特開平11−145498号公報(特許請求の範囲)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献2に記載の光電変換装置においても、十分に低い基板温度で製膜されていないため、隣接する層からの不純物原子の拡散混入が十分に抑制されていなかった。そして、結晶質i層に結晶質n層のドーピング元素が混入した場合は、結晶質i層がn型化することになるが、結晶質i層がn型化した場合には、本来、基本的に真性であることで発揮される光電変換機能が十分に発揮されなくなる。これは、結晶質i層がn型化することで、キャリア拡散長が著しく低下するためである。
【0015】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、低温での製膜を可能にし、結晶質i層へのリンの混入を抑制して光電変換効率を向上させることができるシリコン光起電力素子の製造装置および製造方法を提供することにある。また、結晶質i層中へのリンの混入が抑制されたシリコン光起電力素子を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明のシリコン光起電力素子の製造装置は、放電用電極を有し、該放電用電極に対向して配置された基板上に結晶質シリコン層を製膜するシリコン光起電力素子の製造装置において、前記基板と前記放電用電極との間に、通気性を有する加熱体を具備する製膜表面ヒーターが設けられたことを特徴としている。
このようなシリコン光起電力素子の製造装置によれば、製膜時に製膜表面を加熱することができ、基板加熱用ヒーターによる加熱を抑えて基板温度を低くすることができる。したがって、結晶質光電変換層へのリンの混入を防止することができ、光電変換効率を高めることができる。
【0017】
本発明のシリコン光起電力素子の製造装置においては、前記通気性を有する加熱体が金属メッシュであってもよい。通気性を有する加熱体が金属メッシュであれば、原料ガスが十分に通り抜けることができ、製膜性を高めることができる。また、前記製膜表面ヒーターは、前記通気性を有する加熱体を緊張させる張力調整手段を具備することが好ましい。製膜表面ヒーターが張力調整手段を具備していれば、加熱体の弛みを防止できるから、製膜表面と加熱体との距離を均一にでき、その結果、基板表面温度の均一性を高めることができる。
【0018】
本発明のシリコン光起電力素子の製造方法は、結晶質p型半導体層上に形成された実質的に真性である結晶質光電変換層の上に、結晶質n型半導体層を製膜するシリコン光起電力素子の製造方法において、上述したシリコン光起電力素子の製造装置を用いて、結晶質n型半導体層の製膜表面を加熱することを特徴としている。この製造方法によれば、結晶質光電変換層への結晶質n型半導体層中のリンの混入を防止することができ、光電変換効率の高いシリコン光起電力素子を製造することができる。
【0019】
本発明のシリコン光起電力素子は、上述したシリコン光起電力素子の製造方法によって製造されたことを特徴としている。
また、本発明のシリコン光起電力素子は、非晶質p型半導体層、実質的に真性である非晶質光電変換層、非晶質n型半導体層が順に接する非晶質シリコン層を有することができる。
これらのシリコン光起電力素子は、上述した光起電力素子の製造方法で製造されたものであるから、光電変換効率が高い。
【0020】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態例)
以下、添付の図面を参照して本発明に係る第1の実施形態例について説明する。
はじめに、シリコン光起電力素子の製造装置について説明する。
図1に、プラズマCVD法によって結晶質i層上に結晶質n層を製膜する光起電力素子の製造装置の概略模式図を示す。図1に示す光起電力素子の製造装置は、ステンレス製の真空容器11と、ガス混合箱12と、基板加熱用ヒーター13と、放電用電極14と、真空ポンプ15と、製膜表面ヒーター16とを具備して概略構成される。ここで、放電用電極14は基板1に対向して配置されており、製膜表面ヒーター16は、基板1と放電用電極14との間に設けられている。また、製膜表面ヒーター16は、製膜表面ヒーター用電源23に接続されている。製膜時には、製膜表面のみを加熱すればよいが、上記製膜表面ヒーター16によって製膜表面を集中して加熱することで基板加熱用ヒーター13による加熱を抑えて基板温度を低くすることができる。
なお、この光起電力素子の製造装置は、図7に示した従来の光起電力素子の製造装置と共通する構成要素を有しており、その共通する構成要素についての説明は省略する。
【0021】
図2に、製膜表面ヒーター16の上面図を示す。
この製膜表面ヒーター16は、発熱体である金属メッシュ31と、金属メッシュ31を固定する金属メッシュ固定治具32と、金属メッシュ31を緊張させる張力調整手段33と、張力調整手段33を支持する外枠34とを具備して構成される。ここで、金属メッシュ31は、ステンレス線やニクロム線などの金属線が隙間を有して格子状に組まれたものであり、通電することにより発熱するものである。また、張力調整手段33は、電気絶縁するための碍子35を介して外枠34に取り付けられている。また、金属メッシュ固定治具32には、製膜表面ヒーター用電源23と接続するための端子36が設けられている。
このような製膜表面ヒーター16では、発熱体が金属メッシュ31であることから金属線間の隙間から原料ガスを通過させて製膜表面に供給できる。また、張力調整手段33によって、金属メッシュ31が緊張されて弛みがないから、製膜表面と金属メッシュ31との距離を均一にでき、その結果、基板表面温度の均一性を高めることができる。
【0022】
以下に、本実施形態例の光起電力素子およびその製造方法について説明する。この光起電力素子の製造方法で製造される光起電力素子は、従来の技術の欄で記載した図3の光起電力素子と同様の層構造を有したものである。すなわち、本実施形態例の光起電力素子10は、基板1上に、透明電極層2、結晶質p層3、結晶質i層4、結晶質n層5及び裏面電極層6が順に接して構成され、結晶質p層3、結晶質i層4、結晶質n層5は微結晶シリコンからなる結晶質シリコン層である。
【0023】
この製造方法では、まず、脱脂洗浄後乾燥させたガラスからなる基板1上に透明電極層2をCVD法またはスパッタ法等のPVD法により形成する。次いで、透明電極層2上に、結晶質p層3、結晶質i層4、結晶質n層5を順に製膜する。次いで、結晶質n層5上に、Al、Ag、Ti、Ni、Cr、Cuあるいはそれらの合金からなる裏面電極層6を、真空蒸着法またはスパッタ法等の物理蒸着法によって形成して光起電力素子を得る。
以下、各工程をより詳細に説明する。
【0024】
上述した光起電力素子の製造方法において、透明電極層2としては、ITO、フッ素(F)をドープした酸化スズ(SnO2 )あるいはアルミニウム(Al)またはガリウム(Ga)をドープした酸化亜鉛(ZnO)等の金属酸化物が使用される。
【0025】
結晶質p層3および結晶質i層4の製膜では、まず、脱脂洗浄及び乾燥した基板1を、図1に示す真空容器11に導入し、基板加熱用ヒーター13に密着させる。次いで、真空ポンプ15により、排気管21を介して真空容器11内を1.33×10−4Pa(1×10−6Torr)以下に排気する。次いで、原料ガス導入管22を介して、原料ガスを所定流量、ガス混合箱12に導入する。その際、原料ガスの流量は、図示しないマスフローコントローラによって制御される。
次いで、図示しない圧力調整弁により真空容器11内を所定の圧力に調整するとともに、基板加熱用ヒーター13に通電加熱して、基板1を所定温度に加熱する。
そして、基板温度及び圧力が安定した後に、高周波電源20から所定周波数の高周波電力を放電用電極14に供給し、プラズマを発生させて、基板1の表面に結晶質p層3および結晶質i層4を製膜する。その際、反射電力が最小となるようにインピーダンス整合器19を調整する。所定時間製膜した後、原料ガスを排気するとともに、基板1を冷却する。
なお、結晶質p層3および結晶質i層4の製膜においては、図7に示す光起電力素子の製造装置を用いることもできる。
【0026】
結晶質i層4を製膜する際の原料ガスとしては、少なくともシリコンを含むガス、具体的にはシラン、ジシラン等の水素化珪素ガス、弗化珪素ガスあるいはジクロロシラン、トリクロロシラン等のハロシランガス及び水素を用いる。
結晶質p層3を製膜する際の原料ガスは、上記結晶質i層4製膜時の原料ガスに、ドーピング元素としてIII族元素を含むガス、例えばB2H6、BF3 等のボロンを含むガスを添加して製膜する。
【0027】
原料ガスにおいて、シリコンを含むガスの流量に対する水素の流量比は、5倍以上100倍以下が望ましい。水素の流量比が5倍未満の場合、水素ラジカルの発生量が少ないため、成長中の膜表面のダングリングボンドの終端が不十分になることがある。その結果、製膜に関与するシリコン系ラジカルの表面拡散が不十分となり、良好な結晶性を有する微結晶シリコンが十分に成長しないことがある。一方、水素の流量比が100倍を超える場合、微結晶シリコンは成長するものの、製膜に関与するシリコン系ラジカルが少ないため、その製膜速度が極めて小さくなる。したがって、非晶質シリコンよりも厚い光電変換層を必要とする微結晶シリコン系光起電力素子では、産業利用上、生産性が著しく低下する。
【0028】
原料ガスを導入しているときの真空容器11内の圧力は、13.3Pa以上665Pa以下が望ましい。圧力が13.3Pa未満の場合、製膜に関与するシリコン系ラジカルが少ないため、製膜速度が極めて小さくなり、産業利用上、生産性が著しく低下する。一方、圧力が665Paを超える場合、製膜中に気相反応が顕著になり、高次シランからなる粉が生じ易くなる。製膜中に発生した粉は、膜中に取り込まれて微結晶シリコンの膜質を極端に低下させる他、真空容器11の開放保守の頻度を高める等の悪影響を及ぼす。
【0029】
製膜の際の基板温度は、ガラス等の安価な材質が使用可能になることから500℃以下であることが望ましい。また、基板温度の下限値を100℃とすることが好ましい。基板温度を100℃未満に設定すると基板表面に吸着した製膜に関与するシリコン系ラジカルの表面拡散が不十分となるため、結晶性が良好な微結晶シリコンが十分に成長しないことがある。
【0030】
高周波電源20の周波数は10MHz以上300MHz以下が望ましい。周波数が10MHz未満の場合、プラズマ密度が低く、プラズマ中で励起される水素ラジカルが少ないため、成長中の膜表面のダングリングボンドの終端が不十分になることがある。その結果、製膜に関与するシリコン系ラジカルの表面拡散が不十分になり、微結晶シリコンの結晶化が促進されないことがある。一方、周波数が300MHzを超える場合、放電用電極14内での電圧分布が大きくなり、プラズマが不均一になる結果、均一な放電が困難となり、膜厚の分布が大きくなるおそれがある。
【0031】
このようにして製膜された結晶質p層3は、膜厚が5nm以上100nm以下であることが望ましい。結晶質p層3の膜厚が5nm未満であると、部分的に結晶質p層が形成されず、透明電極層2が露出した状態、いわゆる島状成長となるおそれがある。この場合、結晶質p層3が形成されていない部分は、正常な半導体pn接合が形成されないため、光起電力素子としての特性が著しく低下する。一方、結晶質p層3の膜厚が100nm超であると、光入射側の層である結晶質p層3での光吸収が大きくなり、光電変換層である結晶質i層4へ到達する光量が減少するため、光起電力素子としての短絡電流が低下することがある。
【0032】
また、結晶質i層4は、膜厚が、透明電極層2、結晶質p層3及び結晶質i層4の表面形状に依存する光閉じ込め状態にもよって異なるが、1000nm以上10000nm以下(1μm〜10μm)であることが望ましい。結晶質i層4の膜厚を1000nm(1μm)未満であると、入射光を十分に吸収できなくなるため、光起電力素子としての短絡電流が小さくなることがある。一方、結晶質i層4の膜厚が10000nm(10μm)超であると、結晶質i層4に生じる内部電界が弱くなり、光起電力素子としての開放電圧が低下することがある上に、製膜時間が長くなる。このように品質および生産性が低くなると、実用性が低下する。
【0033】
結晶質n層5の製膜では、図1に示すような、製膜表面ヒーター16を具備する光起電力素子の製造装置が用いられ、基本的な製膜方法は、結晶質p層3および結晶質i層4の製膜と同様である。ただし、結晶質n層5の製膜では、原料ガスとして、ドーピング元素としてV族元素を含むガス、例えばPH3 等のリンを含むガスを使用する。また、基板加熱用ヒーター13の他に製膜表面ヒーター16に通電して所定温度に加熱する。このように、膜が成長している表面側から加熱することにより、基板加熱用ヒーター温度を高くしなくても、製膜に関与するラジカルの表面拡散を促進して結晶化を促進できることができる。したがって、結晶質i層4中へのリンの拡散混入を抑制できる。
【0034】
結晶質n層5は、膜厚が5nm以上100nm以下であることが望ましい。結晶質n層5の膜厚が5nm未満であると、部分的に結晶質n層が形成されず、結晶質i層4が露出した状態、いわゆる島状成長となる。この場合、結晶質n層5が製膜されていない部分は、正常な半導体pn接合が形成されないため、光起電力素子としての特性が著しく低下するおそれがある。一方、結晶質n層5の膜厚を100nm超であると、結晶質n層5での光吸収量が大きくなるため、裏面電極層6で反射した光を有効に利用できず、光起電力素子としての短絡電流が低下することがある。
裏面電極層6は、結晶質i層4を透過した光を充分に反射できるようにするために、膜厚を200nm以上であることが望ましい。
【0035】
上述した光起電力素子は、pin構造を1つ有するいわゆるシングル型光起電力素子であったが、本発明はこれに限定されず、非晶質pin構造の層の上に微結晶pin構造の層をさらに設けることもできる。以下に、非晶質pin構造の層の上に微結晶pin構造の層をさらに設けた第2の実施形態例について説明する。
【0036】
(第2の実施形態例)
第2の実施形態例の光起電力素子は、非晶質シリコン系セルをトップセル、微結晶シリコン系セルをボトムセルとするタンデム型光起電力素子である。
図4に、第2の実施形態例の光起電力素子の構造を示す。この光起電力素子は、基板1上に、透明電極層2、非晶質p型半導体層7(以下、非晶質p層7という)、実質的に真性な非晶質光電変換層8(以下、非晶質i層8という)、非晶質n型半導体層9(以下、非晶質n層9という)、結晶質p層3、結晶質i層4、結晶質n層5及び裏面電極層6が順に接して構成される。この光起電力素子は、光は基板1の側から入射するようにされている。
この光起電力素子において、非晶質p層7、非晶質i層8、非晶質n層9は、非晶質シリコンからなる非晶質シリコン層である。なお、第1の実施形態例の光起電力素子と共通する構成要素である透明電極層2、結晶質p層3、結晶質i層4、結晶質n層5及び裏面電極層6については説明を省略する。
【0037】
次に、本実施形態例の光起電力素子の製造方法について説明する。
まず、ガラスからなる基板1上に透明電極層2をCVD法またはスパッタ法等のPVD法により形成する。次いで、透明電極層2上に、非晶質p層7、非晶質i層8、非晶質n層9を順に製膜する。そして、非晶質n層9の上に、第1の実施形態例で示したのと同様の製膜方法で、結晶質p層3、結晶質i層4、結晶質n層5を順に製膜する。次いで、結晶質n層5上に、Al、Ag、Ti、Ni、Cr、Cuあるいはそれらの合金からなる裏面電極層6を、真空蒸着法またはスパッタ法等の物理蒸着法によって形成して光起電力素子を得る。
【0038】
上述した製造方法において、非晶質p層7、非晶質i層8、非晶質n層9を製膜する際には、プラズマCVD法が採用され、結晶質p層3、結晶質i層4、結晶質n層5を製膜する図1に示した光起電力素子の製造装置を用いることができるし、図7に示した光起電力素子の製造装置を用いることもできる。
【0039】
上述した製造方法で製膜された非晶質p層7は、膜厚が5nm以上50nm以下であることが望ましい。非晶質p層7の膜厚が5nm未満であると、部分的に非晶質p層7が形成されず、透明電極層2が露出した状態、いわゆる島状成長となる。この場合、非晶質p層7が製膜されていない部分は、正常な半導体pn接合が形成されないため、光起電力素子としての特性が著しく低下する。一方、非晶質p層7の膜厚が50nm超であると、光入射層である非晶質p層7での光吸収が大きくなり、光電変換層である非晶質i層8及び結晶質i層4への入射光量が減少して光起電力素子としての短絡電流が低下することがある。
【0040】
非晶質i層8は、膜厚が100nm以上500nm以下であることが望ましい。非晶質i層8の膜厚が100nm未満であると、入射する光を充分に吸収できないため、光起電力素子としての短絡電流が低下することがある。一方、非晶質i層8の膜厚を500nm超であると、吸収した光によって非晶質i層8の欠陥が増加する、いわゆるステブラーロンスキー効果により、光劣化が大きくなることがある。
【0041】
非晶質n層9は、膜厚が5nm以上50nm以下であることが望ましい。非晶質n層9の膜厚が5nm未満であると、部分的に非晶質i層8が露出した状態、いわゆる島状成長となる。この場合、非晶質n層9が製膜されていない部分は、正常な半導体pn接合が形成されないため、光起電力素子としての特性が著しく低下する。一方、非晶質n層9の膜厚が50nm超であると、非晶質n層9での光吸収が大きくなり、ボトムセルへの入射光量が減少して、光起電力素子としての短絡電流が低下することがある。
【0042】
結晶質p層3の膜厚は5nm以上100nm以下にすることが望ましい。結晶質p層3の膜厚を5nm未満にすると、部分的に非晶質n層9が露出した状態、いわゆる島状成長となるおそれがある。この場合、結晶質p層3が製膜されていない部分は、正常な半導体pn接合が形成されないため、光起電力素子としての特性が著しく低下する。一方、結晶質p層3の膜厚を100nm超にすると、光入射側の層である結晶質p層3での光吸収が大きくなり、光電変換層である結晶質i層4へ到達する光量が減少するため、光起電力素子としての短絡電流が低下することがある。
【0043】
以上説明した第1および第2の実施形態例では、製膜表面ヒーター16を用いて製膜表面を加熱しながら結晶質n層5を製膜することで、基板温度を低くできるので、結晶質i層4に拡散混入するリンの量を抑制できる。その結果、光起電力素子の光電変換特性を向上させることができる。
【0044】
なお、本発明は上述した実施形態例に限定されない。例えば、製膜表面ヒーターは、通気性を有する加熱体を具備していれば特に限定されず、金属メッシュ以外にも、例えば、図5に示すような、金属ワイヤー37が間隔を有して平行に引き揃えられて形成された発熱体を固定治具で固定されたものが挙げられる。この製膜表面ヒーター38では、図2に示した製膜表面ヒーター16と同様にして、張力調整手段33によって金属ワイヤー37を緊張させている。他の構成も図2の製膜表面ヒーター16と同様である。
また、他の製膜表面ヒーターとしては、金属線がハニカム状にされたもの、金属板に多数の孔が開けられたパンチングメタルなどを用いることもできる。
【0045】
【実施例】
(実施例1、比較例1)
次のようにして、図3に示すようなシングル型光起電力素子を得た。まず、ガラスからなる基板1上に透明電極層2として、アルミニウムをドープした酸化亜鉛ZnOをスパッタ法により700nm形成した。次いで、その上に、図7の光起電力の製造装置を用いたプラズマCVD法により、結晶質p層3、結晶質i層4を順に形成した。次いで、図1に示すような光起電力素子の製造装置を用い、製膜表面ヒーター16に150Wの電力を通電し、基板加熱用ヒーター13を120℃に設定して結晶質n層5を製膜した。そして、最後に、真空蒸着法により膜厚500nmのアルミニウムからなる裏面電極層6を形成して光起電力素子を得た。
一方、比較例1では、結晶質n層5を製膜する際に、図7に示すような、製膜表面ヒーターを有していない光起電力素子の製造装置を用い、基板加熱用ヒーター13を200℃に設定した。
【0046】
これらの光起電力素子に、基板1側から模擬太陽光(AM(通過空気量)1.5、100mW/cm2 )を照射して、その光電変換効率を計測した。その結果、比較例1の光起電力素子の光電変換効率を1.00とした場合、実施例1の光起電力素子の光電変換効率は1.12であった。実施例1の光電変換効率の向上には、形状因子の改善効果が大きかった。
【0047】
次に、図6を参照しながら、製膜表面温度と光電変換効率との関係について説明する。図6は、図3に示す光起電力素子の結晶質n層5を製膜する際の製膜表面ヒーター16に通電する電力を調整し、製膜表面温度を変化させて作製したときの光起電力素子の変換効率を示すグラフである。なお、図6中の光電変換効率(図中では「変換効率」と略す)は、比較例1の光起電力素子の光電変換効率を1.00としたときの相対値である。
製膜表面温度が100〜200℃の範囲では、変換効率の向上が認められ、特に製膜表面温度125〜175℃の範囲で光電変換効率が高かった。一方、製膜表面温度が100℃以下の場合、製膜表面でラジカルを表面拡散させる効果が小さいので変換効率が低く、200℃を超える場合には、基板温度が高くなってしまい、結果的に、基板加熱用ヒーター13で高温に加熱した状態と同じになっていた。
【0048】
(実施例2及び比較例2)
次のようにして、図4に示すようなタンデム型光起電力素子を得た。まず、ガラスからなる基板1上に透明電極層2として、アルミニウムをドープした酸化亜鉛ZnOをスパッタ法により700nm形成した。次いで、その上に、図7の光起電力素子の製造装置を用いたプラズマCVD法により、非晶質p層7、非晶質i層8、非晶質n層9、結晶質p層3、結晶質i層4を順に形成した。次いで、図1に示すような光起電力素子の製造装置を用い、製膜表面ヒーター16に150Wの電力を通電し、基板加熱用ヒーター13を120℃に設定して結晶質n層5を製膜した。そして、最後に、真空蒸着法により膜厚500nmのアルミニウムからなる裏面電極層6を形成して光起電力素子を得た。
一方、比較例2では、結晶質n層5を製膜する際にも、図7に示すような、製膜表面ヒーターを有していない光起電力素子の製造装置を用い、基板加熱用ヒーター13を200℃に設定した。
【0049】
これらの光起電力素子に、基板1側から模擬太陽光(AM(通過空気量)1.5、100mW/cm2 )を照射して、その光電変換効率を計測した。その結果、比較例2の光起電力素子の光電変換効率を1.00とした場合、実施例2の光起電力素子の光電変換効率は1.12であった。実施例2の光電変換効率の向上には、形状因子の改善効果が大きかった。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、製膜表面ヒーターを用いて製膜表面を加熱しながら結晶質n層を製膜することにより、基板加熱ヒーター温度を低くできるので、結晶質i層に拡散混入するリンの量を抑制できる。その結果、結晶質i層の光電変換特性の低下が防止されているので、光起電力素子の光電変換特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシリコン光起電力素子の製造装置の実施形態例を示す模式図である。
【図2】図1のシリコン光起電力素子の製造装置における製膜表面ヒーターの上面図である。
【図3】シングル型シリコン光起電力素子の一例を示す断面図である。
【図4】タンデム型シリコン光起電力素子の一例を示す断面図である。
【図5】製膜表面ヒーターの他の例を示す上面図である。
【図6】結晶質n型半導体層製膜時の製膜表面温度と光電変換効率との関係を示すグラフである。
【図7】従来のシリコン光起電力素子の製造装置を示す模式図である。
【符号の説明】
1 透光性基板(基板)
3 結晶質p型半導体層(結晶質p層)
4 結晶質i型半導体層(結晶質i層)
5 結晶質n型半導体層(結晶質n層)
7 非晶質p型半導体層(非晶質p層)
8 非晶質i型半導体層(非晶質i層)
9 非晶質n型半導体層(非晶質n層)
10 シリコン光起電力素子(光起電力素子)
14 放電用電極
16,38 製膜表面ヒーター
31 金属メッシュ
33 張力調整手段
Claims (6)
- 放電用電極を有し、該放電用電極に対向して配置された基板上に結晶質シリコン層を製膜するシリコン光起電力素子の製造装置において、
前記基板と前記放電用電極との間に、通気性を有する加熱体を具備する製膜表面ヒーターが設けられたことを特徴とするシリコン光起電力素子の製造装置。 - 前記通気性を有する加熱体が金属メッシュであることを特徴とする請求項1に記載のシリコン光起電力素子の製造装置。
- 前記製膜表面ヒーターは、前記通気性を有する加熱体を緊張させる張力調整手段を具備することを特徴とする請求項1または2に記載のシリコン光起電力素子の製造装置。
- 結晶質p型半導体層上に形成された実質的に真性である結晶質光電変換層の上に、結晶質n型半導体層を製膜するシリコン光起電力素子の製造方法において、
請求項1〜3のいずれかに記載のシリコン光起電力素子の製造装置を用いて、結晶質n型半導体層の製膜表面を加熱することを特徴とするシリコン光起電力素子の製造方法。 - 請求項4に記載のシリコン光起電力素子の製造方法によって製造されたことを特徴とするシリコン光起電力素子。
- 非晶質p型半導体層、実質的に真性である非晶質光電変換層、非晶質n型半導体層が順に接する非晶質シリコン層を有することを特徴とする請求項5に記載のシリコン光起電力素子。
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JP2017508237A (ja) * | 2013-12-16 | 2017-03-23 | デ ルーカ オーブン テクノロジーズ、 エルエルシー | ワイヤメッシュ加熱素子及び織り角度ワイヤメッシュの連続更新装置 |
-
2002
- 2002-11-19 JP JP2002334890A patent/JP2004172269A/ja active Pending
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JP2017508237A (ja) * | 2013-12-16 | 2017-03-23 | デ ルーカ オーブン テクノロジーズ、 エルエルシー | ワイヤメッシュ加熱素子及び織り角度ワイヤメッシュの連続更新装置 |
US10912306B2 (en) | 2013-12-16 | 2021-02-09 | De Luca Oven Technologies, Llc | Continuous renewal system for a wire mesh heating element and a woven angled wire mesh |
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