JP2004170353A - 電子線照射装置とその照射方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】照射する電子ビームの均一性の向上と、電子透過窓での電子ビームの通過効率を向上させた、電子線照射装置と照射方法を提供すること。
【解決手段】電磁レンズの入光側に設けられた上極ポールピースの円形孔と出光側に設けられた下極ポールピースの長方形の矩形孔により電子透過窓の照射窓に線状電子ビームを結像し、この照射窓を通過しこの照射窓からの距離に応じて広がりを有する線状電子ビームを被加工物に照射する。
【選択図】 図1
【解決手段】電磁レンズの入光側に設けられた上極ポールピースの円形孔と出光側に設けられた下極ポールピースの長方形の矩形孔により電子透過窓の照射窓に線状電子ビームを結像し、この照射窓を通過しこの照射窓からの距離に応じて広がりを有する線状電子ビームを被加工物に照射する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被処理物の表面処理や表面改質のための電子線の照射効率を向上させた電子線照射装置とその照射方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子線照射の技術は、被処理物の表面処理や表面改質の効果が得られることから、大気中に置かれた被処理物に電子線を照射し、電子線のエネルギーを利用して高分子化合物に架橋や重合などの反応を起こさせ、フィルムの改質、インキの乾燥あるいはオーバコート樹脂の硬化への応用等の製造工程に用いられている。
【0003】
また、医療用に使用されている容器の滅菌の際、特に容器の外面だけでなく内面をも滅菌する場合にも用いられている。
【0004】
また、世界的に問題となっている大気汚染による地球の温暖化や酸性雨等の対策にも用いられている。それらは、例えば、火力発電所等から排出される燃焼排ガス中に存在する、SOx、NOx等の成分に起因していると考えられており、それらのSOx、NOx等の有害成分を除去する方法として、燃焼排ガスに電子線を照射することによって、脱硫・脱硝(SOx、NOx等の有害成分の除去)を行うこともおこなわれている。
【0005】
電子線照射装置は、一般に、図11および図12に示すような電子線を発生する電子線発生部(例えば、特許文献1参照)と、図13に示すような被処理物を移動するコンベアやXYステージなどで構成されている。
【0006】
図11は電子線照射装置に用いられる、電子線発生部としての従来の照射管を示す模式図である。この装置は、円筒状をなすガラスまたはセラミック製の真空容器51と、その真空容器51の内部に設けられ、陰極から放出された電子を電子線として取り出してこれを加速する電子線発生部52と、真空容器51の端部に設けられ、電子線を射出する電子線射出部53と、図示しない給電部より給電するためのピン部54とを有する。電子線射出部53には薄膜状の電子透過窓55が設けられている。電子線射出部53の電子透過窓55は、ガスは透過させずに電子線を透過する機能を有しており、図12に示すように、偏平状に形成されている。そして、照射室内に配置された被照射物に電子透過窓55から射出された電子線が照射される。
【0007】
また、図13は別の従来の電子線照射装置の概略断面図である。この電子線照射装置は、電子線発生部60と、照射窓(電子透過窓に設けられた)部70と、照射室80とで構成されている。
【0008】
電子線発生部60は、電子線を発生するターミナル62と、ターミナル62で発生した電子線を真空空間(加速空間)で加速する加速管64とを有する。電子線発生部60の内部は、電子が気体分子と衝突してエネルギーを失うことを防ぐため、図示しない拡散ポンプ等により真空に保たれている。また、ターミナル62は、熱電子を放出する線状陰極としてのフィラメント62aと、フィラメント62aを支持するガン構造体62bと、フィラメント62aで発生した熱電子をコントロールするグリッド62cとを有している。
【0009】
照射窓部70は、金属箔(たとえば、チタン箔)からなる窓箔72と、窓枠構造体74とを有する。窓箔72は、電子線発生部60内の真空雰囲気と照射室80内の照射雰囲気とを仕切るものであり、また窓箔72を介して照射室80内に電子線を取り出すものである。照射室80は、被処理物に電子線を照射する照射空間82を含むものである。被処理物は、照射室80内を、図示しない搬送機構により、左側から右側にローラ等により搬送される(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
上述のような各電子線照射装置では、真空中で高速に加速した大電流の電子線をなるべく広範囲に走査しつつ大気中に放出する必要がある。このため、電子線の照射窓からの取出しには、高速電子に対して高い透過効率を有するベリリウムやチタン等の薄膜からなる照射窓(ターゲット)が一般に使用されている。
【0011】
【特許文献1】
特開平10−197700号公報
【特許文献2】
特開平9−68600号公報 (段落番号0004〜0005、図3)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような電子線照射装置では、電子線を金属製のターゲット(照射窓)を介して照射する被加工物によっては、電子ビームの均一性が要求される。また、ターゲットは電子ビームの通過効率を向上するには、なるべく薄くすることが要望される一方、この照射窓は真空隔壁膜としても機能する必要がある。このため照射窓の面積をなるべく小さくし、かつ、大気圧に耐えられる厚みを所有した構造の隔壁膜にする必要がある。
【0013】
また、照射窓では相当量の電子線が照射されるためジュール熱が発生するので、例えば、電子線の照射を略矩形状に走査することを行った場合、その走査した電子線の照射密度が高い部分が生じ、その部分での照射窓の発熱が大きくなるという問題がある。そのため、電子透過窓の内部に冷却液を流通する金属管を多数配列して、照射窓を外部から冷却するなどの対策が必要である。
【0014】
また、電子線照射装置では、照射窓に対して幅の広いブロードな電子ビームを照射して使用しており、線状ビームとして使用するために、照射窓を通過した電子線を矩形のアパーチャでビームカットする方法が取られている。この場合は、電子銃から発生した電子ビームのほとんどは活用されておらず、電子ビームの利用効率が極めて低くなってしまいエネルギー効率の点で好ましくない。
【0015】
本発明はこれらの事情に基づいてなされたもので、照射する電子ビームの均一性の向上と、電子透過窓での電子ビームの通過効率等のエネルギー効率を向上させた、電子線照射装置と照射方法を提供することを目的としている。
【0016】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明による手段によれば、電子線の出射部が真空容器内に設けられた電子銃と、前記真空容器の内部であって前記電子銃から出射された電子ビームを加速する加速手段と、この加速手段により加速された電子ビームを縮小する電磁レンズとを具え、かつ、前記真空容器の一部を構成しており、前記電磁レンズにより縮小された電子ビームが透過する電子透過窓とを有する電子線照射装置であって、
前記電子銃と前記電子透過窓とは、前記真空容器に着脱自在な気密構造によって交換可能に固定されていることを特徴とする電子線照射装置である。
【0017】
また請求項2の発明による手段によれば、電子線の出射部が真空容器内に設けられた電子銃と、前記真空容器の内部であって前記電子銃から出射された電子ビームを加速する加速手段と、この加速手段により加速された電子ビームを縮小する電磁レンズとを具え、かつ、前記真空容器の一部を形成しており、前記電磁レンズにより縮小された電子ビームが透過する電子透過窓とを有する電子線照射装置であって、
前記電磁レンズは、入光側に設けられた上極ポールピースには円形孔が形成され、出光側に設けられている下極ポールピースには長方形の矩形孔が形成されていることを特徴とする電子線照射装置である。
【0018】
また請求項3の発明による手段によれば、前記電子透過窓は、窓枠と、薄膜による照射窓とを備え、前記窓枠の前記真空容器内部を向いた表面にはWの被膜が形成されていることを特徴とする電子線照射装置である。
【0019】
また請求項4の発明による手段によれば、前記電磁レンズは、前記電子ビームが前記照射窓表面において線状に、かつ、前記電磁レンズの光軸方向から見たときに前記下極ポールピースの矩形孔の長辺方向に対して所定角度をなして結像するように構成されており、
前記照射窓は、矩形状の金属薄膜であって、その長辺方向が、前記電磁レンズの光軸方向から見たときに前記下極ポールピースの矩形孔の長辺方向に対して前記所定角度をなしていることを特徴とする電子線照射装置である。
【0020】
また請求項5の発明による手段によれば、真空容器内に設けられた電子銃から出射した電子ビームを、加速手段によりビーム断面内において均一の運動エネルギーとなるように加速し、この加速された電子ビームを電磁レンズで縮小して電子透過窓を介して被処理体に電子線を照射する電子線照射方法であって、
前記電磁レンズの入光側に設けられた上極ポールピースの円形孔と出光側に設けられた下極ポールピースの長方形の矩形孔により電子透過窓の照射窓に線状電子ビームを結像し、この照射窓を通過し該照射窓からの距離に応じて広がりを有する線状電子ビームを被加工物に照射することを特徴とした電子線照射方法である。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0022】
図1(a)は本発明の電子線照射装置の概略構成を示す模式図である。電子線照射装置は、真空容器である電子光学系コラム1の内部に各部が収納されている。電子銃2は少なくとも出射側2aが電子光学系コラム1の内部に収納されている。電子銃2の出射側2aの前方には出射した電子ビームBを、均一に所定エネルギまで加速して整える加速手段であるアライメントコイルブロック3と、加速されて均一に整えられた電子ビームBを縮小する電磁レンズ4が配置され、電子光学系コラム1の出射端側には電子透過窓5(ターゲット部)が設けられている。この電子透過窓5の斜め上方には電子線検出器6(例えば、反射電子検出器)が設けられている。
【0023】
また、電子透過窓5の前方には被加工物Wを載置するテーブル7が設けられている。また、電子銃2は高圧電源8に接続されており、電子光学系コラム1には配管を介して真空ポンプ9が接続されている。
【0024】
図1(b)に示すように、電子光学系コラム1に対しての電子銃2と電子透過窓5のマウントは、気密機器の締結部では一般に用いられているように、いずれも、それらの支持部材2a、5aがOリング等のシーリング材10aを介してねじ10bにより気密に、かつ、着脱自在に締結された装着構造である。したがって、電子線照射装置で通常の処理を行う場合は、電子銃2と電子透過窓5を電子光学系コラム1に固定した状態で気密状態で真空ポンプ9を動作させ、電子光学系コラム1の内部を所定の真空度に調整して使用する。一方、必要に応じて電子源である電子銃2や電子透過窓5を交換する場合は、真空ポンプ9を停止して、電子銃2や電子透過窓5を外して大気開放し、新規の電子銃2や電子透過窓5を電子光学系コラム1装着することができる。
【0025】
高圧電源8に接続されている電子銃2は、制御手段(不図示)により電子銃2の加速電圧を変えることができる。
【0026】
電磁レンズ4は、図2(a)に模式図を示すように内蔵したコイル11に電流を流すことで電磁レンズとして機能する。この電磁レンズ4は、入光側に上極ポールピース12が設けられ、出光側に下極ポールピース13が設けられている。この上極ポールピース12と下極ポールピース13とでは断面形状が異なる。相互の断面形状は非対称形状で、図2(b)に示すように、上極ポールピース12は通常の電子照射装置で用いられている丸形孔14が設けられ、一方、図2(c)に示すように、下極ポールピース13は長方形の矩形孔15が設けられている。
【0027】
図3に平面図を示すように、電子透過窓5は、窓枠16に長孔を開けて薄膜を気密接合して照射窓17が形成されている。窓枠16は電子光学系コラム1(真空容器)内部を向いた表面にW膜の処理が施されている。窓枠16に接合された照射窓17の薄膜は、電子ビームBを通過させるために非常に薄い金属又は合金箔が用いられる。好ましくは、膜厚が8μm〜10μmのベリリウム箔、膜厚が2μm〜3μmのチタン箔等を窓枠16に接合して使用している。これらの金属箔は、例えば、素材を圧延して製造されている。また、照射窓17の薄膜の窓枠16ヘの気密接合方法としては、電子光学系コラム1を高真空封止切りで使用するため、高気密でかつガス放出の少ない方式が要求される。好ましくは、シート状の銀ロウまたは、蒸着された金等の中間物質を間に入れて真空加熱することにより、サンドイッチ状に接合させる。
【0028】
なお、電子透過窓5は、窓枠16に長孔を明けて薄膜の照射窓17を接合したものだが、接合した薄膜を支持するために、実質的に連続的な長孔の途中に、数mmから数十mmごとに1mm以下の中間支持部(不図示)を残しても良い。この中間支持部は十分に細いため、薄膜が連続した1枚であれば、実質的には連続した照射窓17とみなすことができる。
【0029】
また、図4に示したように、電磁レンズ4を通過する電子ビームBは、電磁レンズ4の磁場により回転力が作用して所定角度だけ回転変位する。そのため、薄膜で形成されている照射窓17は、結像電子ビームB形状より大きな面積を有する長方形の金属膜で構成し、あらかじめ求めた値である電磁レンズ4によって線状電子ビームBが回転する量φに応じて、長方形の照射窓17の位相を合わせて制御して配置し、線状電子ビームBに対して最小な照射窓17の面積による金属の薄膜で形成されている。
【0030】
つまり、電磁レンズ4は、電子ビームBが照射窓17の表面において線状に、かつ、電磁レンズ4の光軸方向から見たときに下極ポールピース13の矩形孔15の長辺方向に対して所定角度をなして結像するように構成されており、照射窓17は、矩形状の金属薄膜であって、その長辺方向が、電磁レンズ4の光軸方向から見たときに下極ポールピース13の矩形孔15の長辺方向に対して所定角度をなしている。
【0031】
それにより、薄膜の照射窓17の面積を小さくし、これによって照射窓17の薄膜の厚さを薄くすることが出来る。その結果、照射窓17を通過する電子ビームBの効率を高めることができる。
【0032】
これらの構成により、電子銃2から出射された電子ビームBは、アライメントコイルブロック3により均一な電子ビームBにアライメントされた後に、電磁レンズ4で縮小される。電磁レンズ4は図2に示したように、上極ポールピース12と4−3の下極ポールピース13との断面形状が異なり、上極ポールピース12は通常の丸型の形状の孔が設けられ、下極ポールピース13は長方形の矩形孔15を設けているので、電子ビームBが長方形の矩形孔15を通過後の電子ビームBの軌道は、図5(a)および(b)に示したように矩形孔15の長辺方向をX成分とし、短辺方向をY成分とすると、電子ビームBはX方向から見た場合とY方向から見た場合とで異なった軌道を取り、図5(a)に示したようにY成分電子ビームBは短くなり、一方、図5(b)に示したようにX成分電子ビームBは長くなって、電子ビームB全体としては、図6に示したように、電子透過窓5の照射窓17の表面に線状の電子ビームBとし、かつ、透過窓表面において電磁レンズ4の光軸方向から見たときに電子ビームBの長辺方向が所定角度θをなして結像する。
【0033】
なお、下極ポールピース13については、長方形矩形孔15の長辺と短辺との長さ寸法比率を変えることにより、被加工物7が必要とする電子線照射の線状電子ビームBのXとYとの長さについての最適化おこなうことができる。
【0034】
また、図7に示したように、照射窓17の周辺の窓枠16は表面にW膜処理が施されているので、フォーカス電子ビームBが照射窓17のエリアからはずれた場合は、窓枠16で電子ビームBが反射する。この反射光は電子線検出器6で電子ビームBが検出される。したがって、電子線検出器6の出力がゼロになるよう、アライメントコイルブロック3あるいは電磁レンズ4のコイル11の電流値等を調整することで、照射窓17のエリア内に収めることができる。
【0035】
次に上述の実施の形態の変形例について説明する。
【0036】
上述の実施の形態では、薄膜で形成されている照射窓17は形状を、電磁レンズ4の磁場等によって矩形状の照射窓17の長軸又は短軸を被加工物表面(または結像位置)における矩形状の照射領域の長軸または短軸に対して、ビームの進行方向(または電磁レンズの光軸方向)からみたときに傾斜させている。
【0037】
この実施例では図8(a)および(b)に模式図を示したように、薄膜の照射窓17を丸型17aまたは正方形型17bで構成している。また、図8(c)に示したように、電磁レンズ4の結像位置を21の結像面からずらした電子ビームBトレースが選択できるようにしてある。つまり、正規に21で結像する条件に設定した場合は、22の軌道をとり24のように結像するが、結像位置を上流側にずらした23の条件に設定し、かつ、17aおよび17bのエリア内に収まる大きさを選択することで、25の様に線状電子ビームBの形状を調整することが可能となる。それにより、被加工物7の用途に応じて電子ビームBの形状を選択することが可能になる。
【0038】
また、図9は線状電子ビームBのシフトおよびスキャニング方法を示した説明図である。この場合は、電磁レンズ4の中に第1の偏向器27と、その上流側に第2の偏向器28の2段の偏向器構成としている。2つの偏向器27、28の偏向電圧の連動比を制御することで、照射窓17を通過する位置は変化せずに被加工体Wの位置で電子ビームBをシフトさせた制御が可能となる。これにより、電子ビームの長さは片側でL2となり、偏向器27が1つだけの場合の片側の電子ビームの長さL1に比べて見かけ上、線状の電子ビームBサイズを長くすることが可能となる。それにより、被加工物7への照射範囲を拡大することができる。
【0039】
また、図10は被加工物7に対して照射する電子線の到達深度を示すグラフである。縦軸が電子ビームBの照射線量であり、横軸が電子線到達深度である。このグラフで示しているように、電子線到達深度は電子ビームBの照射線量が多くなると小さくなる。したがって、電子線到達深度は電子ビームBの照射線量を制御することで制御することができる。電子ビームBの照射線量は電子銃2の加速電圧を変えることにより変化させることができるので、電子銃2の加速電圧を制御することで、被加工物7への電子ビームBの電子線到達深度を制御することができる。
【0040】
以上説明したように、上述の実施の形態によれば、電子銃から発生する丸型電子ビームを非対称型の電磁レンズによってライン状のフォーカス電子ビームとして電子透過窓の照射窓に結像させることで、照射窓の厚さを薄くし、かつ、電子ビームを全て活用することで電子線の通過効率を高めた電子線照射装置が実現できる。
【0041】
また、また電磁レンズの中に設けた2つの偏向器による2段の連動制御で、線状の電子ビームのサイズを長くした電子線照射装置を実現できる。それにより、被加工物7への応用範囲を拡大した電子線照射装置が可能である。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、照射する電子ビームの均一性の向上と、電子透過窓での電子ビームの通過効率を向上させた電子線照射装置と照射方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)電子線照射装置の概略構成を示す模式図、(b)電子銃と電子透過窓のマウントの説明図。
【図2】(a)は電磁レンズの模式図、(b)は上極ポールピースの平面図、(c)は上極ポールピースの平面図。
【図3】電子透過窓の平面図。
【図4】電磁レンズの磁場により回転力の作用の説明図。
【図5】(a)および(b)は、電子ビームのX成分とY成分の説明図。
【図6】照射窓の表面に結像した線状の電子ビームの説明図。
【図7】照射窓の構成図。
【図8】(a)および(b)は照射窓の変形例、(c)電磁レンズの結像位置の説明図。
【図9】線状電子ビームのシフトおよびスキャニング方法を示した説明図。
【図10】照射する電子線の到達深度を示すグラフ。
【図11】従来の電子線発生部の説明図。
【図12】従来の電子線発生部の説明図。
【図13】従来の電子線照射装置の説明図。
【符号の説明】
1…電子線光学コラム、2…電子銃、3…アライメントコイルブロック(加速手段)、4…電磁レンズ、5…電子透過窓、6…電子線検出器、9…真空ポンプ、11…コイル、12…上極ポールピース、13…下極ポールピース、16…窓枠、17…照射窓
【発明の属する技術分野】
本発明は、被処理物の表面処理や表面改質のための電子線の照射効率を向上させた電子線照射装置とその照射方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子線照射の技術は、被処理物の表面処理や表面改質の効果が得られることから、大気中に置かれた被処理物に電子線を照射し、電子線のエネルギーを利用して高分子化合物に架橋や重合などの反応を起こさせ、フィルムの改質、インキの乾燥あるいはオーバコート樹脂の硬化への応用等の製造工程に用いられている。
【0003】
また、医療用に使用されている容器の滅菌の際、特に容器の外面だけでなく内面をも滅菌する場合にも用いられている。
【0004】
また、世界的に問題となっている大気汚染による地球の温暖化や酸性雨等の対策にも用いられている。それらは、例えば、火力発電所等から排出される燃焼排ガス中に存在する、SOx、NOx等の成分に起因していると考えられており、それらのSOx、NOx等の有害成分を除去する方法として、燃焼排ガスに電子線を照射することによって、脱硫・脱硝(SOx、NOx等の有害成分の除去)を行うこともおこなわれている。
【0005】
電子線照射装置は、一般に、図11および図12に示すような電子線を発生する電子線発生部(例えば、特許文献1参照)と、図13に示すような被処理物を移動するコンベアやXYステージなどで構成されている。
【0006】
図11は電子線照射装置に用いられる、電子線発生部としての従来の照射管を示す模式図である。この装置は、円筒状をなすガラスまたはセラミック製の真空容器51と、その真空容器51の内部に設けられ、陰極から放出された電子を電子線として取り出してこれを加速する電子線発生部52と、真空容器51の端部に設けられ、電子線を射出する電子線射出部53と、図示しない給電部より給電するためのピン部54とを有する。電子線射出部53には薄膜状の電子透過窓55が設けられている。電子線射出部53の電子透過窓55は、ガスは透過させずに電子線を透過する機能を有しており、図12に示すように、偏平状に形成されている。そして、照射室内に配置された被照射物に電子透過窓55から射出された電子線が照射される。
【0007】
また、図13は別の従来の電子線照射装置の概略断面図である。この電子線照射装置は、電子線発生部60と、照射窓(電子透過窓に設けられた)部70と、照射室80とで構成されている。
【0008】
電子線発生部60は、電子線を発生するターミナル62と、ターミナル62で発生した電子線を真空空間(加速空間)で加速する加速管64とを有する。電子線発生部60の内部は、電子が気体分子と衝突してエネルギーを失うことを防ぐため、図示しない拡散ポンプ等により真空に保たれている。また、ターミナル62は、熱電子を放出する線状陰極としてのフィラメント62aと、フィラメント62aを支持するガン構造体62bと、フィラメント62aで発生した熱電子をコントロールするグリッド62cとを有している。
【0009】
照射窓部70は、金属箔(たとえば、チタン箔)からなる窓箔72と、窓枠構造体74とを有する。窓箔72は、電子線発生部60内の真空雰囲気と照射室80内の照射雰囲気とを仕切るものであり、また窓箔72を介して照射室80内に電子線を取り出すものである。照射室80は、被処理物に電子線を照射する照射空間82を含むものである。被処理物は、照射室80内を、図示しない搬送機構により、左側から右側にローラ等により搬送される(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
上述のような各電子線照射装置では、真空中で高速に加速した大電流の電子線をなるべく広範囲に走査しつつ大気中に放出する必要がある。このため、電子線の照射窓からの取出しには、高速電子に対して高い透過効率を有するベリリウムやチタン等の薄膜からなる照射窓(ターゲット)が一般に使用されている。
【0011】
【特許文献1】
特開平10−197700号公報
【特許文献2】
特開平9−68600号公報 (段落番号0004〜0005、図3)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような電子線照射装置では、電子線を金属製のターゲット(照射窓)を介して照射する被加工物によっては、電子ビームの均一性が要求される。また、ターゲットは電子ビームの通過効率を向上するには、なるべく薄くすることが要望される一方、この照射窓は真空隔壁膜としても機能する必要がある。このため照射窓の面積をなるべく小さくし、かつ、大気圧に耐えられる厚みを所有した構造の隔壁膜にする必要がある。
【0013】
また、照射窓では相当量の電子線が照射されるためジュール熱が発生するので、例えば、電子線の照射を略矩形状に走査することを行った場合、その走査した電子線の照射密度が高い部分が生じ、その部分での照射窓の発熱が大きくなるという問題がある。そのため、電子透過窓の内部に冷却液を流通する金属管を多数配列して、照射窓を外部から冷却するなどの対策が必要である。
【0014】
また、電子線照射装置では、照射窓に対して幅の広いブロードな電子ビームを照射して使用しており、線状ビームとして使用するために、照射窓を通過した電子線を矩形のアパーチャでビームカットする方法が取られている。この場合は、電子銃から発生した電子ビームのほとんどは活用されておらず、電子ビームの利用効率が極めて低くなってしまいエネルギー効率の点で好ましくない。
【0015】
本発明はこれらの事情に基づいてなされたもので、照射する電子ビームの均一性の向上と、電子透過窓での電子ビームの通過効率等のエネルギー効率を向上させた、電子線照射装置と照射方法を提供することを目的としている。
【0016】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明による手段によれば、電子線の出射部が真空容器内に設けられた電子銃と、前記真空容器の内部であって前記電子銃から出射された電子ビームを加速する加速手段と、この加速手段により加速された電子ビームを縮小する電磁レンズとを具え、かつ、前記真空容器の一部を構成しており、前記電磁レンズにより縮小された電子ビームが透過する電子透過窓とを有する電子線照射装置であって、
前記電子銃と前記電子透過窓とは、前記真空容器に着脱自在な気密構造によって交換可能に固定されていることを特徴とする電子線照射装置である。
【0017】
また請求項2の発明による手段によれば、電子線の出射部が真空容器内に設けられた電子銃と、前記真空容器の内部であって前記電子銃から出射された電子ビームを加速する加速手段と、この加速手段により加速された電子ビームを縮小する電磁レンズとを具え、かつ、前記真空容器の一部を形成しており、前記電磁レンズにより縮小された電子ビームが透過する電子透過窓とを有する電子線照射装置であって、
前記電磁レンズは、入光側に設けられた上極ポールピースには円形孔が形成され、出光側に設けられている下極ポールピースには長方形の矩形孔が形成されていることを特徴とする電子線照射装置である。
【0018】
また請求項3の発明による手段によれば、前記電子透過窓は、窓枠と、薄膜による照射窓とを備え、前記窓枠の前記真空容器内部を向いた表面にはWの被膜が形成されていることを特徴とする電子線照射装置である。
【0019】
また請求項4の発明による手段によれば、前記電磁レンズは、前記電子ビームが前記照射窓表面において線状に、かつ、前記電磁レンズの光軸方向から見たときに前記下極ポールピースの矩形孔の長辺方向に対して所定角度をなして結像するように構成されており、
前記照射窓は、矩形状の金属薄膜であって、その長辺方向が、前記電磁レンズの光軸方向から見たときに前記下極ポールピースの矩形孔の長辺方向に対して前記所定角度をなしていることを特徴とする電子線照射装置である。
【0020】
また請求項5の発明による手段によれば、真空容器内に設けられた電子銃から出射した電子ビームを、加速手段によりビーム断面内において均一の運動エネルギーとなるように加速し、この加速された電子ビームを電磁レンズで縮小して電子透過窓を介して被処理体に電子線を照射する電子線照射方法であって、
前記電磁レンズの入光側に設けられた上極ポールピースの円形孔と出光側に設けられた下極ポールピースの長方形の矩形孔により電子透過窓の照射窓に線状電子ビームを結像し、この照射窓を通過し該照射窓からの距離に応じて広がりを有する線状電子ビームを被加工物に照射することを特徴とした電子線照射方法である。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0022】
図1(a)は本発明の電子線照射装置の概略構成を示す模式図である。電子線照射装置は、真空容器である電子光学系コラム1の内部に各部が収納されている。電子銃2は少なくとも出射側2aが電子光学系コラム1の内部に収納されている。電子銃2の出射側2aの前方には出射した電子ビームBを、均一に所定エネルギまで加速して整える加速手段であるアライメントコイルブロック3と、加速されて均一に整えられた電子ビームBを縮小する電磁レンズ4が配置され、電子光学系コラム1の出射端側には電子透過窓5(ターゲット部)が設けられている。この電子透過窓5の斜め上方には電子線検出器6(例えば、反射電子検出器)が設けられている。
【0023】
また、電子透過窓5の前方には被加工物Wを載置するテーブル7が設けられている。また、電子銃2は高圧電源8に接続されており、電子光学系コラム1には配管を介して真空ポンプ9が接続されている。
【0024】
図1(b)に示すように、電子光学系コラム1に対しての電子銃2と電子透過窓5のマウントは、気密機器の締結部では一般に用いられているように、いずれも、それらの支持部材2a、5aがOリング等のシーリング材10aを介してねじ10bにより気密に、かつ、着脱自在に締結された装着構造である。したがって、電子線照射装置で通常の処理を行う場合は、電子銃2と電子透過窓5を電子光学系コラム1に固定した状態で気密状態で真空ポンプ9を動作させ、電子光学系コラム1の内部を所定の真空度に調整して使用する。一方、必要に応じて電子源である電子銃2や電子透過窓5を交換する場合は、真空ポンプ9を停止して、電子銃2や電子透過窓5を外して大気開放し、新規の電子銃2や電子透過窓5を電子光学系コラム1装着することができる。
【0025】
高圧電源8に接続されている電子銃2は、制御手段(不図示)により電子銃2の加速電圧を変えることができる。
【0026】
電磁レンズ4は、図2(a)に模式図を示すように内蔵したコイル11に電流を流すことで電磁レンズとして機能する。この電磁レンズ4は、入光側に上極ポールピース12が設けられ、出光側に下極ポールピース13が設けられている。この上極ポールピース12と下極ポールピース13とでは断面形状が異なる。相互の断面形状は非対称形状で、図2(b)に示すように、上極ポールピース12は通常の電子照射装置で用いられている丸形孔14が設けられ、一方、図2(c)に示すように、下極ポールピース13は長方形の矩形孔15が設けられている。
【0027】
図3に平面図を示すように、電子透過窓5は、窓枠16に長孔を開けて薄膜を気密接合して照射窓17が形成されている。窓枠16は電子光学系コラム1(真空容器)内部を向いた表面にW膜の処理が施されている。窓枠16に接合された照射窓17の薄膜は、電子ビームBを通過させるために非常に薄い金属又は合金箔が用いられる。好ましくは、膜厚が8μm〜10μmのベリリウム箔、膜厚が2μm〜3μmのチタン箔等を窓枠16に接合して使用している。これらの金属箔は、例えば、素材を圧延して製造されている。また、照射窓17の薄膜の窓枠16ヘの気密接合方法としては、電子光学系コラム1を高真空封止切りで使用するため、高気密でかつガス放出の少ない方式が要求される。好ましくは、シート状の銀ロウまたは、蒸着された金等の中間物質を間に入れて真空加熱することにより、サンドイッチ状に接合させる。
【0028】
なお、電子透過窓5は、窓枠16に長孔を明けて薄膜の照射窓17を接合したものだが、接合した薄膜を支持するために、実質的に連続的な長孔の途中に、数mmから数十mmごとに1mm以下の中間支持部(不図示)を残しても良い。この中間支持部は十分に細いため、薄膜が連続した1枚であれば、実質的には連続した照射窓17とみなすことができる。
【0029】
また、図4に示したように、電磁レンズ4を通過する電子ビームBは、電磁レンズ4の磁場により回転力が作用して所定角度だけ回転変位する。そのため、薄膜で形成されている照射窓17は、結像電子ビームB形状より大きな面積を有する長方形の金属膜で構成し、あらかじめ求めた値である電磁レンズ4によって線状電子ビームBが回転する量φに応じて、長方形の照射窓17の位相を合わせて制御して配置し、線状電子ビームBに対して最小な照射窓17の面積による金属の薄膜で形成されている。
【0030】
つまり、電磁レンズ4は、電子ビームBが照射窓17の表面において線状に、かつ、電磁レンズ4の光軸方向から見たときに下極ポールピース13の矩形孔15の長辺方向に対して所定角度をなして結像するように構成されており、照射窓17は、矩形状の金属薄膜であって、その長辺方向が、電磁レンズ4の光軸方向から見たときに下極ポールピース13の矩形孔15の長辺方向に対して所定角度をなしている。
【0031】
それにより、薄膜の照射窓17の面積を小さくし、これによって照射窓17の薄膜の厚さを薄くすることが出来る。その結果、照射窓17を通過する電子ビームBの効率を高めることができる。
【0032】
これらの構成により、電子銃2から出射された電子ビームBは、アライメントコイルブロック3により均一な電子ビームBにアライメントされた後に、電磁レンズ4で縮小される。電磁レンズ4は図2に示したように、上極ポールピース12と4−3の下極ポールピース13との断面形状が異なり、上極ポールピース12は通常の丸型の形状の孔が設けられ、下極ポールピース13は長方形の矩形孔15を設けているので、電子ビームBが長方形の矩形孔15を通過後の電子ビームBの軌道は、図5(a)および(b)に示したように矩形孔15の長辺方向をX成分とし、短辺方向をY成分とすると、電子ビームBはX方向から見た場合とY方向から見た場合とで異なった軌道を取り、図5(a)に示したようにY成分電子ビームBは短くなり、一方、図5(b)に示したようにX成分電子ビームBは長くなって、電子ビームB全体としては、図6に示したように、電子透過窓5の照射窓17の表面に線状の電子ビームBとし、かつ、透過窓表面において電磁レンズ4の光軸方向から見たときに電子ビームBの長辺方向が所定角度θをなして結像する。
【0033】
なお、下極ポールピース13については、長方形矩形孔15の長辺と短辺との長さ寸法比率を変えることにより、被加工物7が必要とする電子線照射の線状電子ビームBのXとYとの長さについての最適化おこなうことができる。
【0034】
また、図7に示したように、照射窓17の周辺の窓枠16は表面にW膜処理が施されているので、フォーカス電子ビームBが照射窓17のエリアからはずれた場合は、窓枠16で電子ビームBが反射する。この反射光は電子線検出器6で電子ビームBが検出される。したがって、電子線検出器6の出力がゼロになるよう、アライメントコイルブロック3あるいは電磁レンズ4のコイル11の電流値等を調整することで、照射窓17のエリア内に収めることができる。
【0035】
次に上述の実施の形態の変形例について説明する。
【0036】
上述の実施の形態では、薄膜で形成されている照射窓17は形状を、電磁レンズ4の磁場等によって矩形状の照射窓17の長軸又は短軸を被加工物表面(または結像位置)における矩形状の照射領域の長軸または短軸に対して、ビームの進行方向(または電磁レンズの光軸方向)からみたときに傾斜させている。
【0037】
この実施例では図8(a)および(b)に模式図を示したように、薄膜の照射窓17を丸型17aまたは正方形型17bで構成している。また、図8(c)に示したように、電磁レンズ4の結像位置を21の結像面からずらした電子ビームBトレースが選択できるようにしてある。つまり、正規に21で結像する条件に設定した場合は、22の軌道をとり24のように結像するが、結像位置を上流側にずらした23の条件に設定し、かつ、17aおよび17bのエリア内に収まる大きさを選択することで、25の様に線状電子ビームBの形状を調整することが可能となる。それにより、被加工物7の用途に応じて電子ビームBの形状を選択することが可能になる。
【0038】
また、図9は線状電子ビームBのシフトおよびスキャニング方法を示した説明図である。この場合は、電磁レンズ4の中に第1の偏向器27と、その上流側に第2の偏向器28の2段の偏向器構成としている。2つの偏向器27、28の偏向電圧の連動比を制御することで、照射窓17を通過する位置は変化せずに被加工体Wの位置で電子ビームBをシフトさせた制御が可能となる。これにより、電子ビームの長さは片側でL2となり、偏向器27が1つだけの場合の片側の電子ビームの長さL1に比べて見かけ上、線状の電子ビームBサイズを長くすることが可能となる。それにより、被加工物7への照射範囲を拡大することができる。
【0039】
また、図10は被加工物7に対して照射する電子線の到達深度を示すグラフである。縦軸が電子ビームBの照射線量であり、横軸が電子線到達深度である。このグラフで示しているように、電子線到達深度は電子ビームBの照射線量が多くなると小さくなる。したがって、電子線到達深度は電子ビームBの照射線量を制御することで制御することができる。電子ビームBの照射線量は電子銃2の加速電圧を変えることにより変化させることができるので、電子銃2の加速電圧を制御することで、被加工物7への電子ビームBの電子線到達深度を制御することができる。
【0040】
以上説明したように、上述の実施の形態によれば、電子銃から発生する丸型電子ビームを非対称型の電磁レンズによってライン状のフォーカス電子ビームとして電子透過窓の照射窓に結像させることで、照射窓の厚さを薄くし、かつ、電子ビームを全て活用することで電子線の通過効率を高めた電子線照射装置が実現できる。
【0041】
また、また電磁レンズの中に設けた2つの偏向器による2段の連動制御で、線状の電子ビームのサイズを長くした電子線照射装置を実現できる。それにより、被加工物7への応用範囲を拡大した電子線照射装置が可能である。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、照射する電子ビームの均一性の向上と、電子透過窓での電子ビームの通過効率を向上させた電子線照射装置と照射方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)電子線照射装置の概略構成を示す模式図、(b)電子銃と電子透過窓のマウントの説明図。
【図2】(a)は電磁レンズの模式図、(b)は上極ポールピースの平面図、(c)は上極ポールピースの平面図。
【図3】電子透過窓の平面図。
【図4】電磁レンズの磁場により回転力の作用の説明図。
【図5】(a)および(b)は、電子ビームのX成分とY成分の説明図。
【図6】照射窓の表面に結像した線状の電子ビームの説明図。
【図7】照射窓の構成図。
【図8】(a)および(b)は照射窓の変形例、(c)電磁レンズの結像位置の説明図。
【図9】線状電子ビームのシフトおよびスキャニング方法を示した説明図。
【図10】照射する電子線の到達深度を示すグラフ。
【図11】従来の電子線発生部の説明図。
【図12】従来の電子線発生部の説明図。
【図13】従来の電子線照射装置の説明図。
【符号の説明】
1…電子線光学コラム、2…電子銃、3…アライメントコイルブロック(加速手段)、4…電磁レンズ、5…電子透過窓、6…電子線検出器、9…真空ポンプ、11…コイル、12…上極ポールピース、13…下極ポールピース、16…窓枠、17…照射窓
Claims (5)
- 電子線の出射部が真空容器内に設けられた電子銃と、前記真空容器の内部であって前記電子銃から出射された電子ビームを加速する加速手段と、この加速手段により加速された電子ビームを縮小する電磁レンズとを具え、かつ、前記真空容器の一部を構成しており、前記電磁レンズにより縮小された電子ビームが透過する電子透過窓とを有する電子線照射装置であって、
前記電子銃と前記電子透過窓とは、前記真空容器に着脱自在な気密構造によって交換可能に固定されていることを特徴とする電子線照射装置。 - 電子線の出射部が真空容器内に設けられた電子銃と、前記真空容器の内部であって前記電子銃から出射された電子ビームを加速する加速手段と、この加速手段により加速された電子ビームを縮小する電磁レンズとを具え、かつ、前記真空容器の一部を形成しており、前記電磁レンズにより縮小された電子ビームが透過する電子透過窓とを有する電子線照射装置であって、
前記電磁レンズは、入光側に設けられた上極ポールピースには円形孔が形成され、出光側に設けられている下極ポールピースには長方形の矩形孔が形成されていることを特徴とする電子線照射装置。 - 前記電子透過窓は、窓枠と、薄膜による照射窓とを備え、前記窓枠の前記真空容器内部を向いた表面にはWの被膜が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の電子線照射装置。
- 前記電磁レンズは、前記電子ビームが前記照射窓表面において線状に、かつ、前記電磁レンズの光軸方向から見たときに前記下極ポールピースの矩形孔の長辺方向に対して所定角度をなして結像するように構成されており、前記照射窓は、矩形状の金属薄膜であって、その長辺方向が、前記電磁レンズの光軸方向から見たときに前記下極ポールピースの矩形孔の長辺方向に対して前記所定角度をなしていることを特徴とする請求項3記載の電子線照射装置。
- 真空容器内に設けられた電子銃から出射した電子ビームを、加速手段によりビーム断面内において均一の運動エネルギーとなるように加速し、この加速された電子ビームを電磁レンズで縮小して電子透過窓を介して被処理体に電子線を照射する電子線照射方法であって、
前記電磁レンズの入光側に設けられた上極ポールピースの円形孔と出光側に設けられた下極ポールピースの長方形の矩形孔により電子透過窓の照射窓に線状電子ビームを結像し、この照射窓を通過し該照射窓からの距離に応じて広がりを有する線状電子ビームを被加工物に照射することを特徴とした電子線照射方法。
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