JP2004170332A - 高流動コンクリートのフレッシュ性状評価方法 - Google Patents

高流動コンクリートのフレッシュ性状評価方法 Download PDF

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浩和 西田
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Abstract

【課題】高流動コンクリートのフレッシュ時の性状を定量的に総合評価できるようにする。
【解決手段】スランプフロー試験、バリアフロー試験に基づく通過率の有効範囲、分離度の有効範囲、50cmフロー時間差の有効範囲を、予め、複数のポイント区画に分け、有効度が大きいポイント区画程、設定ポイント数が大きくなるようにポイント設定を行う。評価対象の高流動コンクリートのフレッシュ時における通過率、分離度、50cmフロー時間差を、前記通過率の有効範囲、前記分離度の有効範囲、前記50cmフロー時間差の有効範囲にそれぞれ照らして対応ポイントを求め、対応ポイントの各々を累加して得られる獲得ポイントで、高流動コンクリートのフレッシュ性状を定量的に評価する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高流動コンクリートのフレッシュ時における性状を、総合的に評価し得る定量的評価方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高流動コンクリートのワーカビリティーを測定する方法としては、例えば、最もよく用いられている方法として、スランプフロー試験がある。我が国では、コンクリートのスランプフロー試験方法は、JIS A 1150(2001)で規格化されている。
【0003】
かかるスランプフロー試験方法では、高さ30cmのスランプコーンにコンクリートを詰め、上面をスランプコーンの上端に合わせてならし、その後、直ちにスランプコーンを鉛直方向に連続して引き上げる。
【0004】
スランプコーンを引き上げると、スランプコーンの内側形状に合わせて成形されていた高流動コンクリートが後に残され、残された高流動コンクリートがスランプコーンの引き上げに併せて周囲に広がるように崩れる。このようにして崩れたコンクリートの動きが止まった時点で、広がりが最大と思われる直径と、その直交する位置の直径を測り、両直径の平均値をスランプフローとして流動性の目安に用いている。
【0005】
かかる試験は、装置や方法が極めて簡便であり、かつ日常的に必要な精度を有しているため、試験室および現場のいずれでも日常的に実施されている。
【0006】
また、コンクリートの材料分離や流動性を評価する試験としては、回転粘度計、あるいは球引上げ粘度計、あるいは傾斜管などを用いた試験方法、あるいはツーポイントワーカビリチー試験等も知られている。
【0007】
しかし、フレッシュ時におけるコンクリートの材料分離抵抗性や流動性を同時に、かつ簡便に測定できる試験方法は確立されていなかった。
【0008】
そこで、本発明者は、通常のスランプフロー試験と、バリアと称する障害を設けた場合のスランプフロー試験(以下、バリアフロー試験と言う)とを併用することにより、高流動コンクリートのフレッシュ時の材料分離抵抗性、流動性に関するコンシステンシーを定量的に評価する方法を提案した(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
【特許文献1】
特開平9−250980号公報(段落0008、0009、図1、8)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
このようにして、高流動コンクリートは、スランプフロー試験、バリアフロー試験の両試験を併用することにより求められた通過率、分離度(内外粗骨材比)、50cmフロー時間差の三つの指標を、各々の基準に照らして評価することができるようになった。
【0011】
かかる評価方法では、高流動コンクリートのフレッシュ時の性状を、上記三つの面から、すなわち通過率、分離度、50cmフロー時間差の三つのスケールで評価することとなる。各々の指標において、良否の分かれ目となる下限を示す基準を設定し、高流動コンクリートがこれらの基準を越えている否かを判定することとなる。三つの指標の全てが、これら設定基準を越えている場合には、良好との判断を行っていた。
【0012】
しかし、三つの指標の各々に対して基準を越えていればフレッシュ時のコンシステンシーが良好とは必ずしも言い切れない場合がある。高流動コンクリートは、複数の成分を混合、混練してなる組成物であり、その性状は、同一組成であってもその製造方法等により微妙に異なり、的確な性状が把握しにくいものである。
【0013】
高流動コンクリートの性状判断に際しては、便宜的に三つの指標を別々に取り出し、個々に判断する手法を従来は採用しているが、本来的には、組成物としての高流動コンクリートの性状には、これら三つの指標の相互影響を踏まえた上で一つの指標で判断できるのが望ましい。三つの性状を個々に断片的に判断する手法では、三つの指標の互いの影響が高流動コンクリートの性状に及ぼす判断要素を欠く虞もある。
【0014】
本発明者の多数の実験からは、三つの指標の各々の要素が性状に大きく関係していることは勿論であるが、これら三つの指標の組合せも、良否の判断を左右しているのではないかと推測される場合がある。しかし、どの組合せが良好と判定できるかについては、定量的、総合的な判定基準は、未だ提起されていない。
【0015】
建築・土木の分野では、施工コストの削減が強く叫ばれ、作業効率の向上が必須課題として取り上げられている。大量に高流動コンクリートを使用する現場等における性状判断においても当然にその効率化が求められる。多数の試料の試験結果に基づく良否判断を、的確、迅速に行うことが必要である。
【0016】
本発明は、高流動コンクリートのフレッシュ時の性状を定量的に総合評価できるようにすることにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、高流動コンクリートのフレッシュ時の性状評価方法であって、前記高流動コンクリートのスランプフロー試験およびバリアフロー試験に基づき求められた通過率、分離度、50cmフロー時間差の各々の評価項目に対してポイントを設定し、各々の前記評価項目のポイントを累加した累加結果に基づき、前記高流動コンクリートのコンシステンシーの良好性を定量的に評価することを特徴とする。
【0018】
上記構成において、前記通過率の有効範囲、前記分離度の有効範囲、前記50cmフロー時間差の有効範囲の少なくともいずれかは、複数のポイント区画に分けられ、有効度が大きいポイント区画程、設定ポイント数が大きくなるようにポイント設定が行われ、評価対象の高流動コンクリートのフレッシュ時における通過率、分離度、50cmフロー時間差を、前記通過率の有効範囲、前記分離度の有効範囲、前記50cmフロー時間差の有効範囲のそれぞれに対照して、対応ポイントを求め、求めた前記対応ポイントを累加して、累加して得られた獲得ポイントが大きい程、前記評価対象の高流動コンクリートのフレッシュ時のコンシステンシーが良好と評価することを特徴とする。
【0019】
上記いずれかの構成において、前記評価対象の高流動コンクリートは、スランプフローが50〜70cmであることを特徴とする。
【0020】
上記構成において、前記通過率の有効範囲は70%以上に、前記分離度の有効範囲は0以上、1.3以下に、前記50cmフロー時間差の有効範囲は0秒以上、15秒以下に、それぞれ設定されていることを特徴とする。
【0021】
上記構成において、前記通過率のポイント区画を、90%以上、90%未満80%以上、80%未満70%以上、70%未満の4区画に分け、前記通過率の大きい順に25、20、15、10のポイントを設定し、前記分離度のポイント区画を、0以上1.1以下、1.1より大1.2以下、1.2より大1.3以下、1.3より大の4区画に分け、前記分離度の小さい順に50、40、30、20のポイントを設定し、前記50cmフロー時間差の有効範囲を0秒以上5秒以下、5秒より大10秒以下、10秒より大15秒以下、15秒より大の4区画に分け、前記50cmフロー時間差が小さい順に25、20、15、10のポイントを設定し、前記通過率、前記分離度、前記50cmフロー時間差の各々に対応するポイントの累加結果が80ポイントより大の場合を、高流動コンクリートのフレッシュ時のコンシステンシーが良好と評価することを特徴とする。
【0022】
上記構成において、累加結果が80ポイント以下、70ポイント以上の場合には、前記高流動コンクリートのフレッシュ時のコンシステンシーの評価に際して目視観察結果を評価要素に加え、累加結果が70ポイント未満の場合には、前記高流動コンクリートのフレッシュ時のコンシステンシーは不良と評価することを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
本発明は、高流動コンクリートの流動性、材料分離抵抗性の両性状において予め有効範囲を設定しておき、かかる有効範囲に対応してポイント設定を行い、スランプフロー試験、バリアフロー試験の両試験を通じて求められた評価対象の高流動コンクリートのフレッシュ性状をポイント化し、かかるポイントに基づき総合判断が行えるようにした評価方法である。
【0025】
従って、本発明の評価方法を採用すれば、個々の指標に基づき判断を行っていた従来とは異なり、性状の良否を一連のポイント化された指標に照らして、的確に、且つ迅速に、定量的な総合評価をすることができる。
【0026】
先ず、本発明において適用されるスランプフロー試験、バリアフロー試験に基づく通過率、分離度、50cmフロー時間差の求め方について説明する。
【0027】
スランプフロー試験は、JIS A 1150(2001)の規格に基づいて行う。図1(A)に示すように、所定角の台板11上に、所定寸法のスランプコーン12を載置する。使用するスランプコーン12は、上端直径が10cm、下端開口部の直径が20cm、高さが30cmである。
【0028】
かかるスランプコーン12内に、上端開口部13から高流動コンクリートを充填する。充填に際しては、所定圧で複数回押し締めながら上端開口部13まで充填する。
【0029】
この状態で、スランプコーン12を上方に引き上げる。スランプコーン12が引き上げられることにより、それまでスランプコーン12内で円錐台形状に成形されていた高流動コンクリートは、図1(B)に示すように崩れて、周囲に高流動コンクリートが広がったスランプフローが形成される。
【0030】
スランプフローの広がりは、全方位に向けて広がってはいるが、一般的に広がりスピード等が方向によって異なるため、広がりは真円から外れ、広がりが大きくなる部分と小さくなる部分とが混在した広がり方を示す。
【0031】
スランプコーン12の引き上げにより発生した高流動コンクリートの流れが止んだ時点で、差し渡しが最大となる直径と、かかる差し渡し方向に直交する方向の直径とを平均した値を、高流動コンクリートの流動性の目安であるスランプフローFLとする。流動性が良好な程、FLの値は大きくなる。
【0032】
また、上記高流動コンクリートのスランプフロー試験において、載置しておいたスランプコーン12の中心から50cm離れた箇所まで高流動コンクリートが流れるに要した時間を、スランプコーン12の引き上げ時を計時スタートとして秒単位で測定する。測定した時間を50cmフロー時間FT(秒)で示す。流動性が良好な程、FTは小さくなる。
【0033】
次にバリアフロー試験の方法について述べる。バリアフロー試験については、JISに基づく規格はなく、上記スランプフロー試験のJIS規格に準拠して行う。
【0034】
図2(A)、(B)に示すように、図1に示すスランプコーン12の外側に、同心円上にバリア14を設置して、上記スランプフロー試験と同様の計測を行う。バリア14を越えて流れ、静止した時点でのスランプフローを、バリアフローBLとする。一方、50cmフロー時間も、前記と同様にして測定しBTで示す。因みに、バリア14の直径は30cmのものを使用した。
【0035】
このようにしてスランプフロー試験、バリアフロー試験の両試験により得られた測定値に基づき、以下のように通過率、50cmフロー時間差を定義する。
通過率(%)={(BL−30)/(FL−30)}×100(%)
50cmフロー時間差=FT−BT(秒)
分離度は、バリア14を境としてその内側域と、外側域とでそれぞれ採取した高流動コンクリート試料から、水洗、乾燥、篩分けにより粗骨材を選別して、採取試料当たりの粗骨材の重量比をそれぞれ求める。バリア14の内側域、外側域における高流動コンクリート試料の粗骨材重量比を、それぞれバリア内側粗骨材重量比Gi、バリア外側粗骨材重量比Goとすると、分離度(内外粗骨材比)=Gi/Goとなる。
【0036】
分離度に関しては、分離が全く発生しない場合には、バリア14の内外域での単位高流動コンクリート当たりの粗骨材重量比は等しく、Gi=Goとなり、分離度の値は1となる。
【0037】
かかるスランプフロー試験、バリアフロー試験を適用して求められる通過率、分離度、50cmフロー時間差に対して、スランプフローが50〜70cmの高流動コンクリートにおける有効範囲を、実際のワーカビリティー、分離状況等の実観察とその場合の計測値とを対照しながら、通過率で70(%)以上に、分離度で0〜1.3に、50cmフロー時間差を0〜15(秒)にそれぞれ設定した。
【0038】
尚、通過率に関しては、理論上は100%が上限となる筈であるが、実際には、全く同一の試料で、全く同一の条件で、スランプフロー試験、バリアフロー試験の両試験を行うことは物理的に不可能であり、かかる微妙な実験条件の差異等が影響して、通過率が100%を越える場合が見られる。
【0039】
そこで、通過率が100%を越えるこれまでの経験を踏まえて、上限を105%以下、70%以上と設定しても構わない。通過率が105%を越える場合には、異常データとして、スランプフロー試験とバリアフロー試験との両試験をやり直すように処理すればよい。
【0040】
高流動コンクリートのフレッシュ性状における材料分離抵抗性は上記分離度で、流動性は上記通過率および50cmフロー時間差でそれぞれ示される。
【0041】
本発明では、かかる材料分離抵抗性、流動性を示す分離度、通過率、50cmフロー時間差の有効範囲にそれぞれポイント設定を行い、評価対象の高流動コンクリートのフレッシュ性状をかかるポイントにより定量的に評価できるようにした。
【0042】
尚、本実施の形態では、高流動コンクリートのフレッシュ性状においては、材料分離抵抗性と流動性の寄与度をほぼ同等と想定して、ポイント設定に際しては、材料分離抵抗性と、流動性との双方に、同数のポイント割り振りを行っている。
【0043】
必要に応じて、例えば、材料分離抵抗性を流動性よりも重要視する場合には、設定ポイントの配分を同等とすることなく、例えば、材料分離抵抗性のポイント設定を、流動性に対する設定ポイントの2倍にする等の重み付けをするようにしても構わない。
【0044】
また、流動性に関しても、本実施の形態では、流動性に寄与する通過率、50cmフロー時間差の双方の寄与度をほぼ同等と想定して、流動性に対して割り振られたポイントを通過率、50cmフロー時間差とに等分に配分した。しかし、場合によっては、上記の如く各々の寄与度に応じた重み付けを行ってポイント配分を行っても構わない。
【0045】
分離度、通過率、50cmフロー時間差の有効範囲に対するポイント設定に際しては、有効範囲を便宜的に複数に区分したポイント区画を設定し、各々のポイント区画に対して、有効度が大きいポイント区画程、高ポイントを設定するようにした。
【0046】
本実施の形態では、表1に示すように、分離度、通過率、50cmフロー時間差の有効範囲を各々四つのポイント区画に設定し、各々のポイント区画にポイントを設定した。設定ポイントは、前記の如く、分離度:通過率:50cmフロー時間差で、1:1/2:1/2となるようにポイント割り振りがなされている。さらに、便宜的に、最高得点が100ポイントとなるようにしてある。
【0047】
表1に示す場合には、四つのポイント区画の各々には、1〜4までの4クラスの有効性ランクを対応させた。かかる有効性ランクには、例えば、有効性ランク1は「極めて良好」、有効性ランク2は「良好」、有効性ランク3は「要注意」、有効性ランク4は「不良」と、評価を対応させても構わない。
【0048】
【表1】
Figure 2004170332
【0049】
表1に示すように、流動性、材料分離抵抗性について、すなわち、通過率(%)、50cmフロー時間差については、それぞれ5ポイント刻みで25〜10ポイントまで、分離度については10ポイント刻みで50〜20ポイントまで、それぞれポイント設定を行った。
【0050】
次に、複数の高流動コンクリートの試料を作成し、その各々に対してスランプフロー試験、バリアフロー試験をそれぞれ適用して、通過率、50cmフロー時間差、分離度をそれぞれ算出した。さらに、かかる算出値を上記表1に照らして、通過率、50cmフロー時間差、分離度に対応するポイントを求め、求めたポイントを累加して総合評価を示す獲得ポイントとした。
【0051】
かかる獲得ポイントを、実際の試料におけるワーカビリティー、分離状況等の観察状況と対照して、獲得ポイントに対応した総合評価を定めた。
【0052】
すなわち、獲得ポイントが80ポイントより大の場合には、「良好」と判定する。獲得ポイントが80ポイント以下、70ポイント以上の場合には、「要注意」として、実状を判定要素に含ませ、施工現場との兼ね合いで実施状況に支障が無いと判断される場合にのみ良好と判定する。獲得ポイントが70未満では、「不良」と判定する。
【0053】
このように獲得ポイントによる定量的な総合評価基準を設けておけば、評価対象の高流動コンクリートのスランプフロー試験、バリアフロー試験の結果を、表1に示す流動性を示す通過率、50cmフロー時間差、および材料分離抵抗性を示す分離度に対照させて、各々の評価項目に対応したポイントを累加して獲得ポイントを求めることにより、忙しい現場でも、簡便に、且つ迅速に、フレッシュ時の性状を「良好」、「要注意」、「不良」と一義的に判定することができる。
【0054】
かかる総合評価で、流動性、材料分離抵抗性の各々のポイントの累加結果、すなちわ、通過率(%)、50cmフロー時間差(秒)および分離度のポイントの累加の結果、獲得ポイントが80ポイントより大であれば、フレッシュ時の流動性、材料分離抵抗性の双方が良好と見做せる高流動コンクリートであると判断することができる。再調合等を考慮することなく、このままの状態で施工現場でコンクリート打設を行うことができる。
【0055】
一方、定量的な総合評価で、流動性、材料分離抵抗性の各々のポイントの累加結果、すなちわ、通過率(%)、50cmフロー時間差(秒)および分離度のポイントの累加の結果、獲得ポイントが80ポイント以下、70ポイント以上であれば、「要注意」と判断でき、速やかに目視観察の結果に基づく判断を行う。目視観察は、改めて行う必要はなく、スランプフロー試験時に併せて観察を行っておけばよい。
【0056】
かかる「要注意」判定となった場合には、評価対象となった高流動コンクリートの実試料にあたって、目視観察に基づく、分離性等の実状況を最終的な判断要素とする。高流動コンクリートのフレッシュ性状を観察して、評価対象となる高流動コンクリートの施工現場に対してそのまま打設できるか否か、使用可能性の良否を判定する。
【0057】
例えば、目視により分離傾向が見られて使用不可能と判断された場合には、調合の再検討、あるいは、ワーカビリティーの設定を変更する等の対処が必要となる。一方、使用可能と判断される場合には、想定した施工現場についてのみ評価対象となった高流動コンクリートを使用すればよい。
【0058】
一方、定量的な総合評価において、獲得ポイントが70ポイント未満の場合には、一律に不良と判定する。かかる場合には、上記同様、調合の再検討、あるいは、ワーカビリティーの設定を大きくしたり、または小さくしたり等のワーカビリティーの変更対処が必要となる。
【0059】
本発明では、このように、「良好」と「不良」との間に、「要注意」の判定項目を設け、現場状況との兼ね合いで目視による観察を判断要素に加味して、一律に機械的に定量判断する際に伴いがちな問題を回避することができるようにした。
【0060】
目視観察としては、スランプフロー試験で、中央に骨材が小丘状に残っていないか、あるいは、広がり外周側で、骨材と水が分離して水のみが広がっている状況は見られないか等の観察を行えばよい。
【0061】
すなわち、獲得ポイント80〜70の範囲で、このように目視観察をその判断要素に加えることにより、かかるポイント範囲で、一律に良好と判断する場合における不良混在の危険を回避することができる。また、逆に、一律に不良と判断する場合における混在良品の再調合に係る無駄を回避することもできる。
【0062】
このように、目視による判定要素を考慮することにより、敢えて、一律に数値判定することを避けて、不良品が混在しないようにより判定精度を向上させるとともに、使用可能なものに対してまでも一律に再調合等を行わせる無駄な処置を廃して、施工現場に適した効率的判断が行える。
【0063】
【実施例】
本実施例では、上記説明の本発明に係る評価方法が実際に適用し得るか否か、スランプフローが50〜70cmの3種の高流動コンクリート試料を用いて、実際的な検証を行った。3種の高流動コンクリート試料は、各々No.1、No.2、No.3として、図3に示す配合一覧に沿って各々調製した。
【0064】
【表2】
Figure 2004170332
【0065】
3種の高流動コンクリート試料No.1、No.2、No.3の各々には、表2に示すように、スランプフロー試験、バリアフロー試験の結果と、試験にかける前の試料中の空気量、およびコンクリート温度を示した。
【0066】
【表3】
Figure 2004170332
【0067】
表3に示す流動性、材料分離抵抗性は、表2に示す試験結果に基づき算出されたものである。
【0068】
流動性の通過率については、上記の如くスランプフロー試験と、バリアフロー試験との両方の結果に基づき算出されるもので、両者の値が近似していれば、良好な流動性を示していると言える。例えば、90%以上の通過率を示していれば、表1に示すように、有効性ランク1で、極めて良好な高流動コンクリートと言える。
【0069】
流動性を評価する50cmフロー時間差は、スランプフロー試験とバリアフロー試験とにおける50cmフロー到達時間の差であり、この差が少ない程、ネバネバ感の少ないサラッとした高流動コンクリートであると言える。表1に示すように、5秒以下の場合を、最高評価とした。
【0070】
また、材料分離抵抗性の唯一の指標である分離度(内外粗骨材比)は、前述の如く、バリアフロー試験におけるバリアの内部と外部との単位粗骨材重量比であり、その差が少ない程、材料分離抵抗性に優れた高流動コンクリートと言える。表1に示すように、分離度が1.10以下を最高評価とした。
【0071】
No.1、No.2、No.3については、表2に示す結果に基づいて算出した通過率、50cmフロー時間差、分離度から、表1に照らして、No.1、No.2、No.3の各々の試料の高流動コンクリートのフレッシュ性状を表3に示すようにポイント化した。
【0072】
No.1は獲得ポイント75ポイント、No.2は獲得ポイント100ポイント、No.3は獲得ポイント90ポイントであった。
【0073】
表3の結果から、獲得ポイントが75ポイントのNo.1では、分離度1.22で有効性ランク3に対応する。その他の通過率、50cmフロー時間差は、有効性ランクが1、2で高流動コンクリートの性状としては十分である。
【0074】
かかるNo.1のケースは、総合評価として「要注意」の判定となる。実際の試料にあたって、分離性状を観察して、想定される施工現場に対してその分離性が許容されるか否かを判断する。その結果、十分に使用できると判定されれば、そのまま使用すればよい。使用不可能と判断された場合には、分離度をもう少し小さく抑えるように再調合を行う。
【0075】
すなわち、目視判定を加味することにより、分離度が不十分な場合には、再調合を行う等の対策をとり、目視確認で想定される施工現場で許容される分離度が確保されていれば再調合することなく使用可能であるとの評価を行えばよい。
【0076】
No.2は獲得ポイント100ポイント、No.3は獲得ポイント90ポイントであり、コンクリート性状は良好と一律に判定する。
【0077】
尚、表中に示さなかったが、獲得ポイントが70ポイント未満の場合には、全ての場合について、再調合が必要であり、「不良」との判定が当てはまる性状であった。
【0078】
このように、上記実施例を通して、本発明の評価方法が高流動コンクリートのフレッシュ性状の評価に有効に使用し得ることが確認される。
【0079】
また、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で必要に応じて変更してもよい。
【0080】
例えば、上記説明では、評価項目の有効性範囲を4ランクにクラス分けしたが、3ランク以下、あるいは、5ランク以上に設定しても構わない。
【0081】
また、上記説明では、3つの指標の各々が同数のポイント区画に設定されている場合を示しているが、指標毎にポイント区画の区画数を違えても構わない。
【0082】
上記説明では、各評価項目の設定ポイントの総和が最高で100ポイントとなるようにポイント設定を行ったが、かかる設定ポイントをいくつにするかは、適宜自由に設定することができる。最高ポイントが100ポイントとなるように設定したのは、分かりやすさという便宜状の要請から採用したもので、その他の設定であっても一向に構わない。
【0083】
この場合、総合評価の80ポイントより大、80ポイント以下70ポイント以上、70ポイント未満の評価基準は、最大獲得ポイントの8割りより大、8割り以下7割り以上、7割り未満と読み代えて獲得ポイントに関する評価基準を設定すればよい。
【0084】
前記説明では、有効性が大きい区画程、ポイント設定を大きくして、ポイントの累加結果の大きい程、評価対象の高流動コンクリートの評価を高くできるようにしているが、かかるポイント設定以外の方法でポイントを設定しても構わない。要は、予め設定した評価項目に対応する設定ポイントの累加結果でコンシステンシーの良否の判別が行えればよく、良否の判別評価が行える程度に累加結果に差異がでるようなポイント設定であれば、どのようなポイント設定を行って構わない。
【0085】
上記説明では、スランプフローが50〜70cmの高流動コンクリートに対して示した評価基準であるが、これ以外のスランプフローの高流動コンクリートに対しても、総合評価のポイント設定を実状に合わせて適宜変更すれば、有効に適用することができる。
【0086】
【発明の効果】
本発明によれば、高流動コンクリートのフレッシュ性状を、ポイントに関連づけることにより、簡単に、且つ定量的に総合評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)、(B)は、スランプフロー試験の手順を示す説明図である。
【図2】(A)は、バリアフロー試験に使用するスランプコーンとバリアを示す側面図であり、(B)は(A)の上面から見た様子を示す平面図である。
【図3】実施例で使用する高流動コンクリート試料の配合一覧を示す図である。
【符号の説明】
11 台板
12 スランプコーン
13 上端開口部
14 バリア
d 直径
D 直径
FL スランプフロー

Claims (6)

  1. 高流動コンクリートのフレッシュ時の性状評価方法であって、
    前記高流動コンクリートのスランプフロー試験およびバリアフロー試験に基づき求められた通過率、分離度、50cmフロー時間差の各々の評価項目に対してポイントを設定し、
    各々の前記評価項目のポイントを累加した累加結果に基づき、前記高流動コンクリートのコンシステンシーの良好性を定量的に評価することを特徴とする高流動コンクリートのフレッシュ性状評価方法。
  2. 請求項1記載の高流動コンクリートのフレッシュ性状評価方法において、
    前記通過率の有効範囲、前記分離度の有効範囲、前記50cmフロー時間差の有効範囲の少なくともいずれかは、複数のポイント区画に分けられ、
    有効度が大きいポイント区画程、設定ポイント数が大きくなるようにポイント設定が行われ、
    評価対象の高流動コンクリートのフレッシュ時における通過率、分離度、50cmフロー時間差を、前記通過率の有効範囲、前記分離度の有効範囲、前記50cmフロー時間差の有効範囲のそれぞれに対照して、対応ポイントを求め、
    求めた前記対応ポイントを累加して、累加して得られた獲得ポイントが大きい程、前記評価対象の高流動コンクリートのフレッシュ時のコンシステンシーが良好と評価することを特徴とする高流動コンクリートのフレッシュ性状評価方法。
  3. 請求項1または2記載の高流動コンクリートのフレッシュ性状評価方法において、
    前記評価対象の高流動コンクリートは、スランプフローが50〜70cmであることを特徴とする高流動コンクリートのフレッシュ性状評価方法。
  4. 請求項3記載の高流動コンクリートのフレッシュ性状評価方法において、
    前記通過率の有効範囲は70%以上に、
    前記分離度の有効範囲は0以上、1.3以下に、
    前記50cmフロー時間差の有効範囲は0秒以上、15秒以下に、
    それぞれ設定されていることを特徴とする高流動コンクリートのフレッシュ性状評価方法。
  5. 請求項4記載の高流動コンクリートのフレッシュ性状評価方法において、
    前記通過率のポイント区画を、90%以上、90%未満80%以上、80%未満70%以上、70%未満の4区画に分け、前記通過率の大きい順に25、20、15、10のポイントを設定し、
    前記分離度のポイント区画を、0以上1.1以下、1.1より大1.2以下、1.2より大1.3以下、1.3より大の4区画に分け、前記分離度の小さい順に50、40、30、20のポイントを設定し、
    前記50cmフロー時間差の有効範囲を0秒以上5秒以下、5秒より大10秒以下、10秒より大15秒以下、15秒より大の4区画に分け、前記50cmフロー時間差が小さい順に25、20、15、10のポイントを設定し、
    前記通過率、前記分離度、前記50cmフロー時間差の各々に対応するポイントの累加結果が80ポイントより大の場合を、高流動コンクリートのフレッシュ時のコンシステンシーが良好と評価することを特徴とする高流動コンクリートのフレッシュ性状評価方法。
  6. 請求項5記載の高流動コンクリートのフレッシュ性状評価方法において、
    累加結果が80ポイント以下、70ポイント以上の場合には、前記高流動コンクリートのフレッシュ時のコンシステンシーの評価に際して目視観察結果を評価要素に加え、
    累加結果が70ポイント未満の場合には、前記高流動コンクリートのフレッシュ時のコンシステンシーは不良と評価することを特徴とする高流動コンクリートのフレッシュ性状評価方法。
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