JP2004170309A - 酸素センサの異常判定装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】酸素センサが有する検出素子の素子割れ異常の有無の判定を、より好適に行うことのできる酸素センサの異常判定装置を提供する。
【解決手段】内燃機関12の排気通路13の途中に設けられる排気浄化触媒18の上流側に、第1のフロント酸素センサ19aと第2のフロント酸素センサ19bとを配設する。電子制御装置22は、第1のフロント酸素センサ19a及び第2のフロント酸素センサ19bの出力を比較し、互いの出力に有意な差があると認められたときに、第1のフロント酸素センサ19a及び第2のフロント酸素センサ19bのいずれかに素子割れ異常が有ると判定する。
【選択図】 図1
【解決手段】内燃機関12の排気通路13の途中に設けられる排気浄化触媒18の上流側に、第1のフロント酸素センサ19aと第2のフロント酸素センサ19bとを配設する。電子制御装置22は、第1のフロント酸素センサ19a及び第2のフロント酸素センサ19bの出力を比較し、互いの出力に有意な差があると認められたときに、第1のフロント酸素センサ19a及び第2のフロント酸素センサ19bのいずれかに素子割れ異常が有ると判定する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、酸素センサの検出素子の素子割れによる異常の有無を判定する酸素センサの異常判定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
触媒を利用した排気浄化システムを備える内燃機関では、触媒による排気有害成分の浄化を有効に行うための空燃比制御が行われている。この空燃比制御では、排気系に設けられた酸素センサによって排気中の酸素分圧が検出され、その検出結果から求められる空燃比が触媒の排気浄化機能を発揮できる空燃比となるように燃料噴射量がフィードバック制御される。
【0003】
現在、上記酸素センサは様々なものが開発されており、例えば濃淡電池式の酸素センサは次のように構成されている。すなわち、酸素分圧を検出する検出素子は、固体電解質とこの固体電解質を挟む一対の白金電極等から構成されており、一方の電極は大気が導入される大気室に面している。また、他方の電極は排気側に面している。このような濃淡電池式の酸素センサでは、大気中の酸素分圧と排気中の酸素分圧との間に差が生じると、各電極間に起電力が発生するようになっている。この起電力は酸素分圧比の対数に比例するが、燃料の濃いリッチな混合気で燃焼したときの排気中のHCやCOは、排気側の電極表面において白金の触媒作用により、酸素と化学平衡に達するまで反応する。この結果、理論空燃比を境に酸素分圧が急激に低下して起電力が大きく変化し、出力電圧の大小により空燃比がリッチかリーンかを判定できるようになる。また、排気中の酸素分圧に応じたリニアな値を出力する酸素センサの一種である、いわゆる空燃比センサも知られているが、この空燃比センサによる酸素分圧の検出も、基本的には上記酸素センサと同様に、大気と排気との酸素分圧差に基づいている。
【0004】
ここで、被水等に起因して検出素子に素子割れが発生することがあり、この場合には正常な検出信号が得られなくなる。
そこで従来、例えばセンサ出力の反転周期や出力分布などの検出素子の出力パターンが、予め想定された正常な検出素子の出力パターンとは異なるパターンとなるときに素子割れ異常有りと判定することで、そうした素子割れ異常の発生を検出するようにしている(特許文献1など)。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−21282号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、素子割れの生じた検出素子は、正常な検出信号を出力することができなくなるが、状況によって正常な検出素子に類似した出力パターンを示すことがある。例えば、一般に、酸素センサには検出素子の活性化を促すためのヒータ線が埋設されているが、検出素子にこのヒータ線が断線しない程度の素子割れが発生した場合には、検出素子のインピーダンスは大きく変化しない。そのため、このような場合には、たとえ素子割れの生じた検出素子であっても、正常な検出素子に類似した出力パターンを示すことがある。そのような状況では、上記のような検出素子の出力パターンに有意な差が認められず、正確な異常判定を行うことができなくなる。従って、上記従来のような異常判定では、素子割れ異常の検出精度に自ずと限界があった。
【0007】
この発明はこうした事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、酸素センサが有する検出素子の素子割れ異常の有無の判定を、より好適に行うことのできる酸素センサの異常判定装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための手段及びその作用効果について以下に記載する。
請求項1に記載の発明は、排気中の酸素分圧に応じた信号を出力する検出素子を有する酸素センサの前記検出素子の素子割れ異常の有無を判定する装置であって、機関排気系の略同位置に前記検出素子を2つ配設し、それら2つの検出素子の出力の比較に基づいて前記異常の有無の判定を行うことをその要旨とする。
【0009】
上記構成では、略同位置に2つの検出素子が配設されている。すなわち、排気成分がほぼ同一となるような位置に、2つの検出素子が配設されている。これら2つの検出素子は、双方共に正常に機能していれば、ほぼ同様の出力パターンを示すようになる。
【0010】
一方、2つの検出素子のいずれかに素子割れ異常が発生すれば、その検出素子は、正常な検出素子とは異なる出力パターンを示すようになる。このとき、素子割れ異常を起こした検出素子が、たとえ出力反転を周期的に繰り返す正常な検出素子に類似した出力パターンを示したとしても、出力反転のタイミング等のような細部まで正常な検出素子の出力パターンに一致することはない。そのため、いずれかの検出素子に素子割れ異常が発生していれば、上記2つの検出素子の出力の比較により、それを的確に検出することができる。従って、上記構成によれば、素子割れ異常の生じた検出素子が正常な検出素子に類似した出力パターンを示すような場合にも、その異常の有無の判定を好適に行うことができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、排気中の酸素分圧に応じた信号を出力する検出素子を有する酸素センサの前記検出素子の素子割れ異常の有無を判定する装置であって、機関排気系の排気浄化触媒の上流側に前記検出素子を2つ配設し、それら2つの検出素子の出力の比較に基づいて前記異常の有無の判定を行うことをその要旨とする。
【0012】
機関排気系の排気浄化触媒の上流側では排気成分がほぼ一様であり、そうした排気浄化触媒の上流側に共に配設された2つの検出素子の出力を比較すれば、上記の如く検出素子の素子割れ異常の発生の有無を的確に判定することができる。従って、上記構成によれば、素子割れ異常の生じた検出素子が正常な検出素子に類似した出力パターンを示すような場合にも、その異常の有無の判定を好適に行うことができる。
【0013】
請求項3に記載に発明は、排気中の酸素分圧に応じた信号を出力する検出素子を有する酸素センサの前記検出素子の素子割れ異常の有無を判定する装置であって、機関排気系の排気浄化触媒の下流側に前記検出素子を2つ配設し、それら2つの検出素子の出力の比較に基づいて前記異常の有無の判定を行うことをその要旨とする。
【0014】
機関排気系の排気浄化触媒の下流側では排気成分がほぼ一様であり、そうした排気浄化触媒の下流側に共に配設された2つの検出素子の出力を比較すれば、上記の如く検出素子の素子割れ異常の発生の有無を的確に判定することができる。従って、上記構成によれば、素子割れ異常の生じた検出素子が正常な検出素子に類似した出力パターンを示すような場合にも、その異常の有無の判定を好適に行うことができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の酸素センサの異常判定装置において、前記比較によって前記2つの検出素子の出力に有意な差があると認められたときに、該2つの検出素子のいずれかに素子割れ異常有りと判定することをその要旨とする。
【0016】
同構成によれば、同じような出力の得られる位置に2つの検出素子が配設されているにもかかわらず、互いの出力に有意な差が認められるときには、2つの検出素子のいずれかに素子割れが生じていると判定される。従って、素子割れ異常の有無の判定を確実に行うことができるようになる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の酸素センサの異常判定装置において、前記2つの検出素子が単一のセンサケースに収容されてなることをその要旨とする。
【0018】
同構成によれば、2つの検出素子の配設位置を近接させることができるため、2つの検出素子の出力比較における取付位置の影響を極力抑えることができるようになる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の酸素センサの異常判定装置において、前記2つの検出素子に、それぞれ個別の保護カバーを設けたことをその要旨とする。
【0020】
上述したように、検出素子の素子割れは同検出素子の被水等に起因して発生する。この検出素子に付着する水分は、検出素子を保護するカバーに設けられた穴から同カバーの内部に侵入して検出素子に付着することが多い。この点、上記請求項6に記載の構成では、2つの検出素子にそれぞれ個別の保護カバーを設けるようにしている。そのため、2つの検出素子を1つの保護カバーで覆う場合と比較して、2つの検出素子が同時に被水する機会を少なくすることができ、もって、2つの検出素子に同時に素子割れが発生することを抑えることができるようになる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の酸素センサの異常判定装置において、前記2つの検出素子を単一の基板上に形成したことをその要旨とする。
同構成によれば、2つの検出素子が単一の基板上に形成されるため、2つの検出素子を個別の基板上に形成する場合と比較して、製造コストの低減を図ることができるようになる。
【0022】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の酸素センサの異常判定装置において、前記2つの検出素子を前記基板の同一面に形成したことをその要旨とする。同構成では、2つの検出素子が基板の同一面に形成されているため、両検出素子に対する排気の当たり方がほぼ同じとなる。これにより、検出素子への排気の当たり方の違いによる2つの検出素子の出力のばらつき、すなわち素子の指向性に起因する両検出素子の出力のばらつきを好適に抑制し、より的確な異常判定を行うことができるようになる。
【0023】
請求項9に記載の発明は、請求項7に記載の酸素センサの異常判定装置において、前記2つの検出素子を前記基板の表裏面にそれぞれ形成したことをその要旨とする。
【0024】
上記構成では、2つの検出素子が同一基板の表裏面にそれぞれ形成されるため、素子1つ分の基板面積で2つの検出素子を形成することができる。従って、2つの検出素子を備えながらも、基板面積の拡大を回避して酸素センサの大型化を抑制することができる。
【0025】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれかに記載の酸素センサの異常判定装置において、前記出力の比較は、前記2つの検出素子の出力波形の軌跡長を用いて行われることをその要旨とする。
【0026】
同構成によれば、各検出素子の出力値の変化態様を好適に数値化でき、もって2つの検出素子の出力比較を精度よく行うことができるようになる。
請求項11に記載の発明は、請求項1〜9のいずれかに記載の酸素センサの異常判定装置において、前記出力の比較は、前記2つの検出素子の出力値の積分値を用いて行われることをその要旨とする。
【0027】
同構成によれば、各検出素子の出力値の相違が明確になり、もって2つの検出素子の出力比較をより容易に行うことができるようになる。
請求項12に記載の発明は、請求項1〜9のいずれかに記載の酸素センサの異常判定装置において、前記出力の比較は、前記2つの検出素子の出力値を用いて行われることをその要旨とする。
【0028】
同構成では、前記2つの検出素子の出力値を用いて2つの検出素子の出力比較が行われる。すなわち、2つの検出素子の出力値の大きさを直接比較して、検出素子の素子割れ異常の有無の判定が行われる。そのため、上記請求項11に記載の構成と比較して、2つの検出素子の出力比較をさらに容易に行うことができるようになる。
【0029】
なお、上記請求項10〜12に記載の構成の他にも、2つの検出素子の出力反転時期の比較、または2つの検出素子の振幅の比較等によっても上記異常の判定を行うことができる。さらに、所定時間内における2つの検出素子の出力反転に要する時間差の積分値からも、同様に上記異常の判定を行うことができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態について、図1、図2を参照して詳細に説明する。
【0031】
図1は、本発明にかかる酸素センサの異常判定装置が適用された車載用内燃機関と、その周辺構成の概略構成を示している。
同図1に示すように、内燃機関10の吸気通路11には、その通路面積を可変とするスロットルバルブ15が設けられ、その開度制御によりエアクリーナ14を通じて吸入される空気の量が調整されている。ここで吸入された空気の量(吸入空気量)は、エアフローメータ16により検出されている。そして吸気通路11に吸入された空気は、スロットルバルブ15下流に設けられたインジェクタ17より噴射された燃料と混合された後、燃焼室12に送られて、そこで燃焼される。
【0032】
一方、燃焼室12での燃焼により生じた排気が送られる排気通路13には、排気中の有害成分を浄化する排気浄化触媒18が設けられている。
そして、同排気浄化触媒18の上流側には第1のフロント酸素センサ19aと第2のフロント酸素センサ19bとが設けられている。また、排気浄化触媒18の下流側には第1のリア酸素センサ20aと第2のリア酸素センサ20bとが設けられている。このように、第1のフロント酸素センサ19aと第2のフロント酸素センサ19bとは略同位置、すなわち機関排気系にあって排気成分がほぼ同一となる位置に設けられている。同様に、第1のリア酸素センサ20aと第2のリア酸素センサ20bも、略同位置、すなわち機関排気系にあって排気成分がほぼ同一となる位置に設けられている。
【0033】
なお、以下では説明の便宜上、排気浄化触媒18の上流側に配設される酸素センサをフロント酸素センサ群19(第1のフロント酸素センサ19aと第2のフロント酸素センサ19bとを指す)という。また、排気浄化触媒18の下流側に配設される酸素センサをリア酸素センサ群20(第1のリア酸素センサ20aと第2のリア酸素センサ20bとを指す)という。
【0034】
上記排気浄化触媒18は、燃焼される混合気の空燃比が理論空燃比近傍の狭い範囲(ウインドウ)でのみ、排気中の主要有害成分(HC、CO、NOx)のすべてを酸化還元反応により効率的に浄化する。そうした排気浄化触媒18を有効に機能させるには、混合気の空燃比を上記ウインドウの中心に合わせこむ、厳密な空燃比制御が必要となる。
【0035】
そうした空燃比の制御は、電子制御装置22により行われる。電子制御装置22には、上記エアフローメータ16や上記フロント酸素センサ群19、リア酸素センサ群20、あるいはアクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルセンサ21、機関回転速度を検出する回転速度センサを始めとする各種センサ類の検出信号が入力されている。そしてそれらセンサ類の検出信号より把握される内燃機関10や車両の運転状況に応じて、上記スロットルバルブ15やインジェクタ17等を駆動制御して、上記のような空燃比の制御を行っている。そうした電子制御装置22による空燃比制御の概要は次の通りである。
【0036】
まず電子制御装置22は、上記アクセルペダルの踏み込み量や機関回転速度の検出結果に応じて把握される吸入空気量の要求量を求め、それに応じた吸入空気量が得られるようにスロットルバルブ15の開度を調整する。その一方、エアフローメータ16により検出される吸入空気量の実測値に対して、理論空燃比が得られるだけの燃料量を求め、それによりインジェクタ17からの燃料噴射量を調整する。これにより、燃焼室12で燃焼される混合気の空燃比を、ある程度に理論空燃比に近づけることはできる。ただし、それだけでは上記要求される高精度の空燃比制御には不十分である。
【0037】
そこで電子制御装置22は、上記フロント酸素センサ群19を構成する酸素センサのうちの少なくともいずれかの検出結果より空燃比の実測値を把握し、この実測値に基づいて算出される補正量に基づいて、インジェクタ17の燃料噴射量をフィードバック補正している。この空燃比フィードバック制御により、要求される空燃比制御の精度が確保される。
【0038】
また、電子制御装置22は、上記リア酸素センサ群20を構成する酸素センサのうちの少なくともいずれかの検出結果より、排気浄化触媒18の酸素消費状態、あるいは酸素放出状態を推定し、この推定に基づいて上記補正量に対する修正を行う。このサブフィードバック制御により、排気浄化触媒18の上記浄化作用が有効に活用される。こうした空燃比制御に用いられる上記フロント酸素センサ群19、及びリア酸素センサ群20を構成する各酸素センサは、いずれも濃淡電池式のセンサが用いられており、排気中の酸素分圧に応じた信号を出力する検出素子23を各備えて構成されている。
【0039】
ここで、酸素センサの検出素子に素子割れ異常が生じると、その出力信号は実際の空燃比を反映しなくなり、上記空燃比制御を正確に行うことができなくなる。そこで、本実施の形態では、上記フロント酸素センサ群19、及びリア酸素センサ群20で、それぞれ個別に素子割れ異常の有無を判定するようにしている。なお、フロント酸素センサ群19、及びリア酸素センサ群20の異常判定の態様は、ほぼ同一の態様で行われている。そこで以下では、そうした異常判定の詳細をフロント酸素センサ群19での異常判定を例にして説明する。
【0040】
上記のように本実施形態では、排気通路13の排気浄化触媒18の排気上流側に配置されるフロント酸素センサとして2つの酸素センサを、すなわち第1のフロント酸素センサ19a及び第2のフロント酸素センサ19bを配置するようにしている。こうした排気通路13の排気浄化触媒18の上流側では、排気成分がほぼ一様となっており、第1のフロント酸素センサ19a及び第2のフロント酸素センサ19bがそれぞれ備える各検出素子23は、ほぼ同様の出力パターンを示す。
【0041】
ここで、第1のフロント酸素センサ19a及び第2のフロント酸素センサ19bのいずれかの検出素子23に素子割れ異常が生じると、その異常の発生した検出素子23は、正常時とは異なる出力を示すこととなる。このとき、そうした異常の発生した検出素子23は、出力反転を周期的に繰り返す正常時に類似した出力パターンを示すことがあり、そうした場合には、単独の検出素子23の出力パターンを見ただけでは、その素子割れ異常の有無の判定が困難なことがある。
【0042】
その点、本実施形態では、排気浄化触媒18の上流側に2つの酸素センサ、すなわち第1のフロント酸素センサ19a及び第2のフロント酸素センサ19bが配設されており、それらのいずれかの検出素子23に素子割れ異常が生じても、もう一方の酸素センサの検出素子23は正常な出力パターンを示す。このとき、素子割れ異常を生じた検出素子23がたとえ正常時に類似した出力パターンを示したとしても、その出力パターンが正常な検出素子23のものと一致することはまず有り得ない。よって、2つの酸素センサの各検出素子23の出力を比較し、それらの出力に有意な差違が認められれば、たとえ異常の生じた検出素子23が正常時に類似した出力パターンを示しているとしても、いずれかの検出素子23に素子割れ異常が発生していると判断することができる。
【0043】
そこで本実施形態では、第1のフロント酸素センサ19a及び第2のフロント酸素センサ19bの各検出素子23の出力を比較することで、素子割れ異常の有無の判定を行うようにしている。以下、こうした本実施形態における異常判定処理の詳細を、図2を併せ参照して説明する。
【0044】
図2は、そうした異常判定処理における電子制御装置22の処理手順を示したものである。
この処理が開始されると、まずカウンタcntの値に初期値T0が設定され(S110)、これとともに第1センサ出力値軌跡長intLa、及び第2センサ出力値軌跡長intLbの値が、共に「0」に設定される(S120)。これら第1センサ出力値軌跡長intLa、及び第2センサ出力値軌跡長intLbについては後述する。
【0045】
次に、この異常判定処理を行う前提条件が成立しているか否かが判定される(S130)。ここでは、下記条件(c1)〜(c5)が全て満たされているときに前提条件が成立していると判定される。
(c1)車速が所定速度以上である。
(c2)上述したサブフィードバック制御の実行中であり、かつサブフィードバック制御の実行時間が所定時間以上である。
(c3)アイドル運転中でない。
(c4)吸入空気量が所定値以上である。
(c5)燃料カット中でなく、かつ燃料カット復帰後の経過時間が所定時間以上である。
【0046】
こうした前提条件(c1)〜(c4)の設定により、ある程度に燃焼される混合気量が多く、混合気の空燃比が、排気の酸素分圧に十分反映されて第1のフロント酸素センサ19a及び第2のフロント酸素センサ19bに検出可能な状態において、異常判定が実施されるようになる。また、前提条件(c5)の設定により、燃料カット復帰直後において排気浄化触媒18から放出される酸素による、異常判定処理への影響を抑制することができるようになる。
【0047】
前提条件が成立していないときには(S130でNO)、この前提条件が成立するまで、以降の処理の実施を一時保留する。一方、前提条件が成立しているときには(S130でYES)、カウンタcntの値がインクリメントされるとともに(S140)、以下の各処理が実施される。
【0048】
まず、次式(1)及び式(2)に基づき、第1センサ出力値軌跡長intLaと第2センサ出力値軌跡長intLbとが算出される(S150)。
intLa=intLa+|Va―V0a| … (1)
intLb=intLb+|Vb―V0b| … (2)
ここで、「Va」は、今回サンプリングされた第1のフロント酸素センサ19aの検出素子23の出力値を、「V0a」は、前回、本S150の処理が実施されたときにサンプリングされた同検出素子23の出力値、すなわち前回出力値をそれぞれ示している。また同様に、「Vb」は、第2のフロント酸素センサ19bの検出素子23についての今回の出力値、「V0b」は、前回出力値をそれぞれ示している。
【0049】
次に、カウンタcntの値が所定値Tを越えているか否かが判定される(S160)。そして、カウンタcntの値が所定値T以下である場合には(S160でNO)、前記S130からS160までの処理が繰り返し実行される。すなわち、カウンタcntの値が所定値Tを越えるまでの期間、上記第1センサ出力値軌跡長intLa、及び第2センサ出力値軌跡長intLbの算出が継続される。これらの処理が繰り返し行われることにより、第1のフロント酸素センサ19a及び第2のフロント酸素センサ19bが備える各検出素子23のそれぞれについて、カウンタcntの値が所定値Tに達するまでの期間における出力波形の軌跡長が各算出される。そして、上記フロント酸素センサ群19を構成する2つの検出素子23の出力値の変化態様が数値化される。なお、上記所定値Tは、いずれかの検出素子23に素子割れ異常が発生したときに、それら検出素子23の上記出力値軌跡長の間に有意な差が生じるだけの十分なサンプリング期間が得られるように設定されている。
【0050】
ここで、カウンタcntの値が所定値Tを越えた場合には(S160でYES)、すなわち十分な出力値軌跡長のサンプリングが完了した場合には、次式(3)に基づき、上記算出された第1センサ出力値軌跡長intLaと第2センサ出力値軌跡長intLbとの軌跡長差ΔLが算出される(S170)。
【0051】
ΔL=|intLa−intLb| … (3)
次に、この軌跡長差ΔLが異常判定値DLTLNGを越えている否かが判定される(S180)。そして、軌跡長差ΔLが異常判定値DLTLNGを越えている場合には(S180でYES)、第1のフロント酸素センサ19a、及び第2のフロント酸素センサ19bのいずれかの検出素子23に素子割れ異常が有ると判定される(S190)。なお、異常判定値DLTLNGは、検出素子23の出力特性の固体差等による誤判定を回避可能な適切な値が、実験等の結果に基づいて予め設定されている。
【0052】
一方、軌跡長差ΔLが異常判定値DLTLNG以下である場合には(S180でNO)、軌跡長差ΔLが正常判定値DLTLOK未満であるか否かが判定される(S200)。そして、軌跡長差ΔLが正常判定値DLTLOK未満である場合には(S200でYES)、以下のように判定される。すなわち、第1のフロント酸素センサ19a及び第2のフロント酸素センサ19bの間での検出素子23の有意な出力差が認められず、各検出素子23のいずれも素子割れ異常が無いと、すなわち2つの検出素子は正常であると判定される(S210)。なお、上記正常判定値DLTLOKは、上述した異常判定値DLTLNGよりも小さい値であって、2つの検出素子に素子割れが無いことを確実に判定することのできる値となっている。
【0053】
他方、軌跡長差ΔLが正常判定値DLTLOK以上である場合には(S200でNO)、前記S110以下の処理が再び行われる。すなわち、S200で否定判定されるときには、今回の処理で算出された軌跡長差ΔLでは、素子割れ異常の有無を明確に判定し難いと判断される。そこで、新たに軌跡長差ΔLを算出し直し、再度、異常判定値DLTLNGや正常判定値DLTLOKとの比較判定が行われる。
【0054】
なお、前述したようにこうした態様での異常判定は、排気浄化触媒18の下流側に設けられた第1及び第2のリア酸素センサ20a、20bの検出素子23を対象としても行われている。
【0055】
このように、第1の実施形態における酸素センサの異常判定装置によれば、次のような効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、機関排気系の排気浄化触媒18の上流側に、すなわち機関排気系にあって排気成分がほぼ同一となる略同位置に、酸素分圧を検出する検出素子23を2つ配設し、互いの出力を比較するようにしている。従って、上流側の上記フロント酸素センサ群19において、たとえ素子割れの生じた検出素子が正常な検出素子に類似した出力パターンを示す場合であっても、好適に素子割れ異常の有無の判定を行うことができるようになる。
【0056】
また、機関排気系の排気浄化触媒18の下流側にも同様に、酸素分圧を検出する検出素子23を2つ配設し、互いの出力を比較するようにしている。従って、下流側の上記リア酸素センサ群20においても同様に、たとえ素子割れの生じた検出素子が正常な検出素子に類似した出力パターンを示す場合であっても、好適に素子割れ異常の有無の判定を行うことができるようになる。
【0057】
(2)本実施の形態では、2つの検出素子23の出力の比較を、それらの出力波形の軌跡長に基づいて行うようにしている。従って、素子割れ異常の発生による両検出素子23の出力パターンの差違の発生を的確に検出することができ、高精度の異常判定を行うことができる。
【0058】
(第2の実施形態)
以下、本発明を具体化した第2の実施形態を、上記実施形態と異なる点を中心に説明する。なお、本実施形態以降の各実施形態では、第1の実施形態のものと機能の共通する構成については同一の符合を付してその詳細な説明は省略する。
【0059】
本実施形態では、排気系の略同位置に配設された2つの検出素子23の出力差の時間積分値に基づいて素子割れ異常の有無の判定を行うことで、より簡易な処理で比較的高精度の異常判定を行うことができるようにしている。
【0060】
図3は、こうした本実施形態における異常判定処理の処理手順を示している。なお、ここではフロント酸素センサ群19を構成する2つの酸素センサの検出素子の素子割れ異常の有無の判定を例として説明するが、これと同様の判定はリア酸素センサ群20にも適用されている。
【0061】
この処理が開始されると、まずカウンタcntの値に初期値T0が設定されるとともに(S310)、センサ出力差積算値intVの値が「0」に設定される(S320)。このセンサ出力差積算値intVについては後述する。
【0062】
次に、この異常判定処理を行う前提条件が成立しているか否かが判定される(S330)。ここでの前提条件は、第1の実施形態のものと同一の条件が設定されている。
【0063】
前提条件が成立していないときには(S330でNO)、この前提条件が成立するまで、以降の処理の実施を一時保留する。一方、前提条件が成立しているときには(S330でYES)、カウンタcntの値がインクリメントされるとともに(S340)、以下の処理が実施される。
【0064】
まず第1のフロント酸素センサ19aの出力値Vaと、第2のフロント酸素センサ19bの出力値Vbと、現在のセンサ出力差積算値intVとに基づき次式(4)から今回のセンサ出力差積算値intVが算出される(S350)。
【0065】
intV=intV+|Va―Vb| … (4)
次に、カウンタcntの値が所定値Tを越えているか否かが判定される(S360)。そして、カウンタcntの値が所定値T以下である場合には(S360でNO)、前記S330からS360までの処理が繰り返し実行される。これにより、カウンタcntの値が所定値Tに達するまでの期間における第1のフロント酸素センサ19a及び第2のフロント酸素センサ19bの各出力値の差の時間積分値が算出される。上記所定値Tは、第1のフロント酸素センサ19a及び第2のフロント酸素センサ19bのいずれかの検出素子23に素子割れ異常が発生したときに明確な上記センサ出力差積算値intVの増大が生じるような十分な出力値の積分期間が確保されるように適切な値が設定されている。
【0066】
そして、カウンタcntが所定値Tを越えた場合には(S360でYES)、上記算出されたセンサ出力差積算値intVが異常判定値INTVNGを越えているか否かが判定される(S370)。そして、センサ出力差積算値intVが異常判定値INTVNGを越えている場合には(S370でYES)、第1のフロント酸素センサ19a及び第2のフロント酸素センサ19bのいずれかの検出素子23に素子割れ異常が有ると判定される(S380)。なお、上記異常判定値INTVNGは、検出素子23の出力特性の固体差等による誤判定を回避可能なように、実験の結果等により求められた適切な値が設定されている。
【0067】
一方、センサ出力差積算値intVが異常判定値INTVNG以下である場合には(S370でNO)、センサ出力差積算値intVが正常判定値INTVOK未満であるか否かが判定される(S390)。そして、センサ出力差積算値intVが正常判定値INTVOK未満である場合には(S390でYES)、第1のフロント酸素センサ19a及び第2のフロント酸素センサ19bが備える各検出素子23の間に有意な出力差が認められず、両検出素子23は共に正常であると判定される(S400)。なお、上記正常判定値INTVOKは、上述した異常判定値INTVNGよりも小さい値であって、2つの検出素子に素子割れが無いことを確実に判定することのできる値が設定されている。
【0068】
他方、センサ出力差積算値intVが正常判定値INTVOK以上である場合には(S390でNO)、今回算出されたセンサ出力差積算値intVでは、素子割れ異常の有無を明確に判定し難いと判断される。そこで、新たにセンサ出力差積算値intVを算出し直し、再度、異常判定値INTVNGや正常判定値INTVOKとの比較判定が行われる。
【0069】
こうした第2の実施形態における酸素センサの異常判定装置によれば、上記(1)に記載の効果に加え、更に次の効果が得られるようになる。
(3)本実施の形態では、機関排気系の略同位置に配設された2つの検出素子23の出力の比較を、それらの出力値差の時間積分値を用いて行うようにしている。これにより、素子割れ異常の発生に伴う両検出素子23の出力差の発生を明確に検出することができ、より簡易な判定処理にて比較的高精度の異常判定を行うことができる。
【0070】
(第3の実施形態)
以下、本発明を具体化した第3の実施形態を、上記実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0071】
本実施形態では、2つの検出素子23の出力の瞬時値、換言すれば出力値の大きさを直接比較することで、素子割れ異常の有無の判定を行っており、異常判定処理の大幅な簡易化が図られている。このような簡易な判定態様によっても、個体差による応答性の差違やノイズの影響による出力誤差が十分に小さく、正常な検出素子23の出力値が常にほぼ一律となることが保証されていれば、素子割れ異常の有無の判定を的確に行うことは十分可能である。
【0072】
図4はこうした本実施形態における異常判定処理の処理手順が示されている。なお、ここではフロント酸素センサ群19を構成する2つの酸素センサの検出素子の素子割れ異常の有無の判定を例として説明するが、これと同様の判定はリア酸素センサ群20についても適用されている。
【0073】
この処理が開始されるとまず、異常判定処理を行う前提条件が成立しているか否かが判定される(S510)。ここでの前提条件は、第1の実施形態のものと同一の条件が設定されている。
【0074】
ここで前提条件が成立していないと判定されたときには(S510でNO)、この前提条件が成立するまで、以降の処理の実施を一時保留する。一方、前提条件が成立しているときには(S510でYES)、次式(5)に従い、第1のフロント酸素センサ19aの出力値Vaと第2のフロント酸素センサ19bの出力値Vbとのセンサ出力差ΔVが算出される(S520)。
【0075】
ΔV=|Va―Vb| … (5)
次に、上記算出されたセンサ出力差ΔVが異常判定値DLTVNGを越えているか否かが判定される(S530)。そして、センサ出力差ΔVが異常判定値DLTVNGを越えている場合には(S530でYES)、第1のフロント酸素センサ19a及び第2のフロント酸素センサ19bのいずれかの検出素子23に素子割れ異常が有ると判定される(S540)。なお、上記異常判定値DLTVNGは、検出素子23の出力特性の固体差等による誤判定を回避可能なように、実験結果等から予め求められた適切な値が設定されている。
【0076】
一方、センサ出力差ΔVが異常判定値DLTVNG以下である場合には(S530でNO)、センサ出力差ΔVが正常判定値DLTVOK未満であるか否かが判定される(S550)。そして、センサ出力差ΔVが正常判定値DLTVOK未満である場合には(S550でYES)、両検出素子23の間に有意な出力差は認められず、検出素子23は共に正常であると判定される(S560)。なお、上記正常判定値DLTVOKは、上述した異常判定値INTVNGよりも小さな値であって、2つの検出素子23に素子割れが無いことを確実に判定することのできる値が設定されている。
【0077】
他方、センサ出力差ΔVが正常判定値DLTVOK以上である場合には(S550でNO)、前記S510以下の処理が再び行われる。すなわち、S550で否定判定されるときには、今回算出されたセンサ出力差ΔVの値では、異常の有無を明確に判別し難いと判断され、新たにセンサ出力差ΔVを算出し直して、再度、異常判定値DLTVNGや正常判定値DLTVOKとの比較判定が行われる。
【0078】
こうした第3の実施形態における酸素センサの異常判定装置によれば、上記(1)に記載の効果に加え、更に次の効果が得られるようになる。
(4)本実施の形態では、2つの検出素子23の出力値の大きさを直接比較することで、素子割れ異常の有無の判定を行っている。従って、短期間で、しかも非常に簡易な処理で異常判定を行うことができるようになる。
【0079】
(第4の実施形態)
上記各実施形態では、検出素子23の出力比較による素子割れ異常の判定を行うべく、機関排気系の略同位置に2つの酸素センサを配置するようにしているが、図5に示すような検出素子を2つ備える酸素センサ29を用いれば、単一の酸素センサのみで同様の異常判定を行うことができるようになる。
【0080】
図5の[a]は、こうした本実施形態の酸素センサ29の斜視図を、同図[b]は、同酸素センサ29の検出部近傍の断面構造をそれぞれ示している。酸素センサ29は、センサケース30の上端部に装着されたカバー30c内に、排気中の酸素分圧を検出する検出素子が2つ、すなわち第1の検出素子30aと第2の検出素子30bとが設けられている。これら第1の検出素子30a及び第2の検出素子30bは互いに独立した検出素子であり、個別に排気中の酸素分圧を検出することができるようになっている。また、これら第1の検出素子30a及び第2の検出素子30bは、板状の基板に固体電解質、電極、及びヒータ等が層状に設けられた、いわゆる積層型の検出素子としてそれぞれ構成されている。そしてこれら第1の検出素子30a及び第2の検出素子30bの出力は、各々個別に電子制御装置22に入力されるようになっている。
【0081】
こうした酸素センサ29を、上記各実施形態のフロント酸素センサ群19やリア酸素センサ群20を構成する2つの酸素センサに代えて、機関排気系の排気浄化触媒18の上流側や下流側に配設する。そして、同酸素センサ29の第1の検出素子30a及び第2の検出素子30bの出力を用いることにより、上記各実施形態と同様の異常判定を行うことができる。しかも、こうした酸素センサ29によれば、2つの検出素子、すなわち第1の検出素子30a及び第2の検出素子30bを極近い位置に配設することができるため、出力を比較する2つの検出素子の取付位置による排気成分の濃度差が異常判定に及ぼす影響を極力抑えることができる。更に、第1の検出素子30a及び第2の検出素子30bが単一のセンサケース30内に収容されているため、上記各実施形態のように機関排気系の略同位置に2つの酸素センサを設置する場合に比して、酸素センサの取付空間を小さくすることができる。また排気通路13内に突出して配設される酸素センサが、その排気通路13内での排気の流れに与える影響を抑えることができるようにもなっている。
【0082】
以上説明した酸素センサ29を採用することで、上記各実施形態の効果に加え、更に次の効果を得ることができる。
(5)第1の検出素子30a及び第2の検出素子30bを極近傍に配置することができるため、排気通路13内の排気成分濃度の分布のばらつきが異常判定精度に与える影響を好適に抑制することができる。
【0083】
(6)機関排気系の略同位置に2つの酸素センサを設置する場合に比して、酸素センサの取付空間を低減でき、機関排気系に関連する設計の自由度を向上させることができるようになる。
【0084】
(7)機関排気系の略同位置に2つの酸素センサを設置する場合に比して、排気通路13内に突出して配置される酸素センサが同排気通路13内の排気の流れに与える影響を抑えることができる。
【0085】
(第5の実施形態)
第4の実施形態では、単一のセンサケース30にそれぞれ独立した2つの検出素子(第1の検出素子30a及び第2の検出素子30b)を収容するようにしていたが、2つの検出素子を単一の基板上に形成するようにしても良い。
【0086】
図6はそうした単一の基板上に2つ検出素子の形成された酸素センサの検出部60の断面構造を示している。この図6に示される検出部60は、図5における第1の検出素子30a及び第2の検出素子30bの代わりに、センサケース30のカバー30c内に収容されるようになっている。同図6に示すように、この酸素センサの検出部60は、アルミナ等の絶縁材料からなる板状の基板61を備えている。そして、その基板61の同一面上に、2つの検出素子、すなわち第1の検出素子60a及び第2の検出素子60bを形成するようにしている。なお、以下の説明において、第1の検出素子60a及び第2の検出素子60bに共通する構成要素については、部材番号として同一の数字を付すとともに、第1の検出素子60aの構成要素にはその部材番号の末尾に「a」を、第2の検出素子60bの構成要素にはその部材番号の末尾に「b」を付して区別する。
【0087】
詳しくは、第1の検出素子60a及び第2の検出素子60bは、大気室63a、63b、固体電解質層64a、64b、拡散抵抗層66a、66b、遮蔽層67a、67b、排気側電極68a、68b、大気側電極69a、69bをそれぞれ備えて構成された積層型の検出素子となっている。
【0088】
第1の検出素子60a及び第2の検出素子60bの固体電解質層64a、64bは、ジルコニア等の固体電解質によって構成されており、基板61の同一面上にそれぞれ並設されている。基板61と各固体電解質層64a、64bの間には、排気中の酸素濃度の検出に際して基準気体として用いられる大気が導入される大気室63a、63bがそれぞれ形成されている。
【0089】
各固体電解質層64a、64bの大気室63a、63bに面した側の表面には、大気側電極69a、69bが形成されている。また、各固体電解質層64a、64bの大気室63a、63bに面した側の表面の裏面には、固体電解質層64a、64bを挟んで大気側電極69a、69bと対向するように排気側電極68a、68bが形成されている。これら大気側電極69a、69b、及び排気側電極68a、68bはいずれも、白金等の触媒貴金属からなる多孔質材によって形成されており、リード線がそれぞれ接続されている。そしてそれらのリード線を通じて、各検出素子(第1の検出素子60a及び第2の検出素子60b)の大気側電極69a、69bと排気側電極68a、68bの間に生じた起電力がセンサ外部に取り出されるようになっている。
【0090】
各排気側電極68a、68bの上部には、略台形の断面形状を有する拡散抵抗層66a、66bが形成されている。これら拡散抵抗層66a、66bは、アルミナとマグネシアの混合体であるスピネルや多孔質アルミナ等によって形成され、排気中の被毒物質や熱から排気側の電極を保護するとともに、排気を保持してセンサ特性を安定化させている。
【0091】
更に拡散抵抗層66a、66bの排気側上面には、緻密なアルミナ等によって形成されて、排気の通過を阻止する遮蔽層67a、67bが形成されている。また、基板61内には、ヒータ線62が埋設されており、そのヒータ線62への通電による発熱により、第1の検出素子60a及び第2の検出素子60bが加熱され、その活性化が促されるようになっている。
【0092】
このように2つの検出素子(第1の検出素子60a及び第2の検出素子60b)を単一の基板61上に形成することで、2つの検出素子を個別の基板上に形成する場合と比較して、製造コストの低減を図ることができる。また、カバー30c内での検出素子の取付空間を低減し、酸素センサの小型化を図ることが可能にもなる。
【0093】
更に上記のように2つの検出素子を基板61の同一面に形成することで、両検出素子に対する排気の当たり方がほぼ同じとなる。そのため、検出素子の指向性に起因する両検出素子の出力のばらつきを好適に抑制し、より的確な異常判定を行うことができるようになる。
【0094】
(第6の実施形態)
更に図7に示されるような態様によっても、単一の基板上に2つの検出素子を形成することができる。同図7に示される酸素センサの検出部70は、アルミナ等の絶縁体により板状に形成された基板71の表面及び裏面に、第1の検出素子70a及び第2の検出素子70bがそれぞれ形成されている。この検出部70は、図5における第1の検出素子30a及び第2の検出素子30bの代わりに、センサケース30のカバー30c内に収容されるようになっている。
【0095】
各検出素子(第1の検出素子70a及び第2の検出素子70b)は、第5の実施形態のものと同様に、大気室73a、73b、固体電解質層74a、74b、拡散抵抗層76a、76b、遮蔽層77a、77b、排気側電極78a、78b、大気側電極79a、79bをそれぞれ備えた積層型の素子となっている。ちなみに、基板71内には、第1の検出素子70a及び第2の検出素子70bに挟まれるようにヒータ線72が埋設されており、そのヒータ線72への通電による発熱により、第1の検出素子70a及び第2の検出素子70bが加熱され、その活性化が促されるようになっている。
【0096】
このように酸素センサの検出部70を構成しても、2つの検出素子(第1の検出素子70a及び第2の検出素子70b)が単一の基板71上に形成されるため、2つの検出素子を個別の基板上に形成する場合と比較して、製造コストの低減を図ることができる。またカバー30c内での検出素子の取付空間を低減し、酸素センサの小型化を図ることが可能にもなる。
【0097】
更に上記のように2つの検出素子を基板71の異なる面に形成することで、両検出素子の形成に必要な基板71の面積を低減することができる。すなわち、検出素子1つ分の表面面積しか有していない基板71上に、2つの検出素子を形成することが可能となる。これにより、基板面積の拡大を回避して酸素センサの更なる小型化が許容されるようになる。また、こうしてヒータ線72の埋設された基板71の表裏面に第1の検出素子70a及び第2の検出素子70bを形成することで基板71の放熱面積が低減されるため、第1の検出素子70a及び第2の検出素子70bをより効率的に加熱することも可能となる。
【0098】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施の形態は以下のように変更して実施することもできる。
・前述したように、検出素子の素子割れは同検出素子の被水等に起因して発生するが、この検出素子に付着する水分は、検出素子を保護するカバーに設けられた穴から同カバーの内部に侵入して検出素子に付着することが多い。そこで、第4の実施形態では、1つのカバー30cの内部に2つの検出素子を設けるようにしたが、第1の検出素子30a及び第2の検出素子30bに対してそれぞれ個別のカバーを設けるようにしてもよい。図8の[a]〜[c]は、第1の検出素子30a及び第2の検出素子30bに個別のカバーが設けられた酸素センサの例をそれぞれ示している。図8の[a]に示される変形例では、横断面が略半月形状に形成されたカバー50cによって、第1の検出素子30a及び第2の検出素子30bがそれぞれ覆われる構成となっている。また図8の[b]に示される変形例では、円柱状に形成されたカバー51cによって、第1の検出素子30a及び第2の検出素子30bがそれぞれ覆われる構成となっている。更に図8の[c]に示される変形例では、角柱状に形成されたカバー52cによって、第1の検出素子30a及び第2の検出素子30bがそれぞれ覆われる構成となっている。このように2つの検出素子(第1の検出素子30a及び第2の検出素子30b)にそれぞれ個別のカバー50c、51c、52cを設けるようにすると、2つの検出素子を1つのカバー30cで覆う場合と比較して、2つの検出素子が同時に被水する機会を少なくすることができる。その結果、2つの検出素子に同時に素子割れが発生することを抑えることができるようになる。
【0099】
・2つの検出素子の出力の比較として、上記第1〜第3の実施形態で説明した出力比較の他にも、例えば、2つの検出素子の出力反転時期の比較、または2つの検出素子の振幅の比較等によっても上述した異常判定を行うことができる。さらに、所定時間内における2つの検出素子の出力反転に要する時間差の積分値からも、同様に上記の異常判定を行うことができる。
【0100】
・一般に、検出素子には出力特性の個体差があり、上記各実施形態の異常判定において出力が比較される2つの検出素子の出力特性、あるいはそれら2つの検出素子の出力特性差は、機関運転中の各検出素子の出力をモニタすることで学習することができる。そして、その学習の結果を異常判定に反映するようにすれば、素子割れ異常の有無の判定精度を更に向上させることができるようになる。そうした学習結果の反映は、例えば異常判定にかかる各判定値(異常判定値、正常判定値など)を、その学習の結果に応じて補正することで行うことができる。
【0101】
・酸素センサの検出素子は、経時劣化等により酸素分圧の変化に対する応答性が低下してしまうようになる。ここで、上記のような機関排気系の略同位置に配設された2つの検出素子のいずれかに、そうした経時劣化等による応答性の低下が生じた場合には、それら両検出素子の出力態様に差違が生じるようになる。よって、それら2つの検出素子の出力の比較により、検出素子の応答性の低下の有無を判定してこれを検出するようにすることもできる。例えば応答性の低下が生じた検出素子は、単位時間当たりの出力値の変化量が小さくなるため、機関排気系の略同位置に配設された2つの検出素子の出力値の変化量に有意な差が認められることを条件に応答性低下有りと判定して、検出素子の応答性低下の有無を判定することができる。
【0102】
・上記各実施の形態では、積層型の検出素子を備える酸素センサへの本発明の適用例を説明したが、積層型以外のタイプの検出素子を備える酸素センサについても本発明を同様に適用することができる。また、上記各実施形態での異常判定の態様、あるいはセンサ構成等は、排気中の酸素分圧に応じた信号を出力する検出素子を有する酸素センサであれば、同様に適用することができる。もちろん、上記各実施形態で説明した酸素センサのみならず、空燃比に応じたリニアな値を出力する空燃比センサにも本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を具体化した第1の実施形態について異常判定装置の全体構成を示す模式図。
【図2】同実施形態における異常判定処理のフローチャート。
【図3】第2の実施形態における異常判定処理のフローチャート。
【図4】第3の実施形態における異常判定処理のフローチャート。
【図5】第4の実施形態における酸素センサの斜視構造及び部分断面構造を併せ示す図。
【図6】第5の実施形態における酸素センサの検出部の断面構造を示す断面図。
【図7】第6の実施形態における酸素センサの検出部の断面構造を示す断面図。
【図8】第4の実施形態における酸素センサの変形例を示す断面図。
【符号の説明】
10…内燃機関、11…吸気通路、12…燃焼室、13…排気通路、14…エアクリーナ、15…スロットルバルブ、16…エアフロメータ、17…インジェクタ、18…排気浄化触媒、19…フロント酸素センサ群、19a…第1のフロント酸素センサ、19b…第2のフロント酸素センサ、20…リア酸素センサ群、20a…第1のリア酸素センサ、20b…第2のリア酸素センサ、21…アクセルセンサ、22…電子制御装置、23…検出素子、29…酸素センサ、30…センサケース、30a…第1の検出素子、30b…第2の検出素子、30c、50c、51c、52c…カバー、60、70…検出部、60a、70a…第1の検出素子、60b、70b…第2の検出素子、61、71…基板、62、72…ヒータ線、63a、63b、73a、73b…大気室、64a、64b、74a、74b…固体電解質層、66a、66b、76a、76b…拡散抵抗層、67a、67b、77a、77b…遮蔽層、68a、68b、78a、78b…排気側電極、69a、69b、79a、79b…大気側電極。
【発明の属する技術分野】
この発明は、酸素センサの検出素子の素子割れによる異常の有無を判定する酸素センサの異常判定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
触媒を利用した排気浄化システムを備える内燃機関では、触媒による排気有害成分の浄化を有効に行うための空燃比制御が行われている。この空燃比制御では、排気系に設けられた酸素センサによって排気中の酸素分圧が検出され、その検出結果から求められる空燃比が触媒の排気浄化機能を発揮できる空燃比となるように燃料噴射量がフィードバック制御される。
【0003】
現在、上記酸素センサは様々なものが開発されており、例えば濃淡電池式の酸素センサは次のように構成されている。すなわち、酸素分圧を検出する検出素子は、固体電解質とこの固体電解質を挟む一対の白金電極等から構成されており、一方の電極は大気が導入される大気室に面している。また、他方の電極は排気側に面している。このような濃淡電池式の酸素センサでは、大気中の酸素分圧と排気中の酸素分圧との間に差が生じると、各電極間に起電力が発生するようになっている。この起電力は酸素分圧比の対数に比例するが、燃料の濃いリッチな混合気で燃焼したときの排気中のHCやCOは、排気側の電極表面において白金の触媒作用により、酸素と化学平衡に達するまで反応する。この結果、理論空燃比を境に酸素分圧が急激に低下して起電力が大きく変化し、出力電圧の大小により空燃比がリッチかリーンかを判定できるようになる。また、排気中の酸素分圧に応じたリニアな値を出力する酸素センサの一種である、いわゆる空燃比センサも知られているが、この空燃比センサによる酸素分圧の検出も、基本的には上記酸素センサと同様に、大気と排気との酸素分圧差に基づいている。
【0004】
ここで、被水等に起因して検出素子に素子割れが発生することがあり、この場合には正常な検出信号が得られなくなる。
そこで従来、例えばセンサ出力の反転周期や出力分布などの検出素子の出力パターンが、予め想定された正常な検出素子の出力パターンとは異なるパターンとなるときに素子割れ異常有りと判定することで、そうした素子割れ異常の発生を検出するようにしている(特許文献1など)。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−21282号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、素子割れの生じた検出素子は、正常な検出信号を出力することができなくなるが、状況によって正常な検出素子に類似した出力パターンを示すことがある。例えば、一般に、酸素センサには検出素子の活性化を促すためのヒータ線が埋設されているが、検出素子にこのヒータ線が断線しない程度の素子割れが発生した場合には、検出素子のインピーダンスは大きく変化しない。そのため、このような場合には、たとえ素子割れの生じた検出素子であっても、正常な検出素子に類似した出力パターンを示すことがある。そのような状況では、上記のような検出素子の出力パターンに有意な差が認められず、正確な異常判定を行うことができなくなる。従って、上記従来のような異常判定では、素子割れ異常の検出精度に自ずと限界があった。
【0007】
この発明はこうした事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、酸素センサが有する検出素子の素子割れ異常の有無の判定を、より好適に行うことのできる酸素センサの異常判定装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための手段及びその作用効果について以下に記載する。
請求項1に記載の発明は、排気中の酸素分圧に応じた信号を出力する検出素子を有する酸素センサの前記検出素子の素子割れ異常の有無を判定する装置であって、機関排気系の略同位置に前記検出素子を2つ配設し、それら2つの検出素子の出力の比較に基づいて前記異常の有無の判定を行うことをその要旨とする。
【0009】
上記構成では、略同位置に2つの検出素子が配設されている。すなわち、排気成分がほぼ同一となるような位置に、2つの検出素子が配設されている。これら2つの検出素子は、双方共に正常に機能していれば、ほぼ同様の出力パターンを示すようになる。
【0010】
一方、2つの検出素子のいずれかに素子割れ異常が発生すれば、その検出素子は、正常な検出素子とは異なる出力パターンを示すようになる。このとき、素子割れ異常を起こした検出素子が、たとえ出力反転を周期的に繰り返す正常な検出素子に類似した出力パターンを示したとしても、出力反転のタイミング等のような細部まで正常な検出素子の出力パターンに一致することはない。そのため、いずれかの検出素子に素子割れ異常が発生していれば、上記2つの検出素子の出力の比較により、それを的確に検出することができる。従って、上記構成によれば、素子割れ異常の生じた検出素子が正常な検出素子に類似した出力パターンを示すような場合にも、その異常の有無の判定を好適に行うことができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、排気中の酸素分圧に応じた信号を出力する検出素子を有する酸素センサの前記検出素子の素子割れ異常の有無を判定する装置であって、機関排気系の排気浄化触媒の上流側に前記検出素子を2つ配設し、それら2つの検出素子の出力の比較に基づいて前記異常の有無の判定を行うことをその要旨とする。
【0012】
機関排気系の排気浄化触媒の上流側では排気成分がほぼ一様であり、そうした排気浄化触媒の上流側に共に配設された2つの検出素子の出力を比較すれば、上記の如く検出素子の素子割れ異常の発生の有無を的確に判定することができる。従って、上記構成によれば、素子割れ異常の生じた検出素子が正常な検出素子に類似した出力パターンを示すような場合にも、その異常の有無の判定を好適に行うことができる。
【0013】
請求項3に記載に発明は、排気中の酸素分圧に応じた信号を出力する検出素子を有する酸素センサの前記検出素子の素子割れ異常の有無を判定する装置であって、機関排気系の排気浄化触媒の下流側に前記検出素子を2つ配設し、それら2つの検出素子の出力の比較に基づいて前記異常の有無の判定を行うことをその要旨とする。
【0014】
機関排気系の排気浄化触媒の下流側では排気成分がほぼ一様であり、そうした排気浄化触媒の下流側に共に配設された2つの検出素子の出力を比較すれば、上記の如く検出素子の素子割れ異常の発生の有無を的確に判定することができる。従って、上記構成によれば、素子割れ異常の生じた検出素子が正常な検出素子に類似した出力パターンを示すような場合にも、その異常の有無の判定を好適に行うことができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の酸素センサの異常判定装置において、前記比較によって前記2つの検出素子の出力に有意な差があると認められたときに、該2つの検出素子のいずれかに素子割れ異常有りと判定することをその要旨とする。
【0016】
同構成によれば、同じような出力の得られる位置に2つの検出素子が配設されているにもかかわらず、互いの出力に有意な差が認められるときには、2つの検出素子のいずれかに素子割れが生じていると判定される。従って、素子割れ異常の有無の判定を確実に行うことができるようになる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の酸素センサの異常判定装置において、前記2つの検出素子が単一のセンサケースに収容されてなることをその要旨とする。
【0018】
同構成によれば、2つの検出素子の配設位置を近接させることができるため、2つの検出素子の出力比較における取付位置の影響を極力抑えることができるようになる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の酸素センサの異常判定装置において、前記2つの検出素子に、それぞれ個別の保護カバーを設けたことをその要旨とする。
【0020】
上述したように、検出素子の素子割れは同検出素子の被水等に起因して発生する。この検出素子に付着する水分は、検出素子を保護するカバーに設けられた穴から同カバーの内部に侵入して検出素子に付着することが多い。この点、上記請求項6に記載の構成では、2つの検出素子にそれぞれ個別の保護カバーを設けるようにしている。そのため、2つの検出素子を1つの保護カバーで覆う場合と比較して、2つの検出素子が同時に被水する機会を少なくすることができ、もって、2つの検出素子に同時に素子割れが発生することを抑えることができるようになる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の酸素センサの異常判定装置において、前記2つの検出素子を単一の基板上に形成したことをその要旨とする。
同構成によれば、2つの検出素子が単一の基板上に形成されるため、2つの検出素子を個別の基板上に形成する場合と比較して、製造コストの低減を図ることができるようになる。
【0022】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の酸素センサの異常判定装置において、前記2つの検出素子を前記基板の同一面に形成したことをその要旨とする。同構成では、2つの検出素子が基板の同一面に形成されているため、両検出素子に対する排気の当たり方がほぼ同じとなる。これにより、検出素子への排気の当たり方の違いによる2つの検出素子の出力のばらつき、すなわち素子の指向性に起因する両検出素子の出力のばらつきを好適に抑制し、より的確な異常判定を行うことができるようになる。
【0023】
請求項9に記載の発明は、請求項7に記載の酸素センサの異常判定装置において、前記2つの検出素子を前記基板の表裏面にそれぞれ形成したことをその要旨とする。
【0024】
上記構成では、2つの検出素子が同一基板の表裏面にそれぞれ形成されるため、素子1つ分の基板面積で2つの検出素子を形成することができる。従って、2つの検出素子を備えながらも、基板面積の拡大を回避して酸素センサの大型化を抑制することができる。
【0025】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれかに記載の酸素センサの異常判定装置において、前記出力の比較は、前記2つの検出素子の出力波形の軌跡長を用いて行われることをその要旨とする。
【0026】
同構成によれば、各検出素子の出力値の変化態様を好適に数値化でき、もって2つの検出素子の出力比較を精度よく行うことができるようになる。
請求項11に記載の発明は、請求項1〜9のいずれかに記載の酸素センサの異常判定装置において、前記出力の比較は、前記2つの検出素子の出力値の積分値を用いて行われることをその要旨とする。
【0027】
同構成によれば、各検出素子の出力値の相違が明確になり、もって2つの検出素子の出力比較をより容易に行うことができるようになる。
請求項12に記載の発明は、請求項1〜9のいずれかに記載の酸素センサの異常判定装置において、前記出力の比較は、前記2つの検出素子の出力値を用いて行われることをその要旨とする。
【0028】
同構成では、前記2つの検出素子の出力値を用いて2つの検出素子の出力比較が行われる。すなわち、2つの検出素子の出力値の大きさを直接比較して、検出素子の素子割れ異常の有無の判定が行われる。そのため、上記請求項11に記載の構成と比較して、2つの検出素子の出力比較をさらに容易に行うことができるようになる。
【0029】
なお、上記請求項10〜12に記載の構成の他にも、2つの検出素子の出力反転時期の比較、または2つの検出素子の振幅の比較等によっても上記異常の判定を行うことができる。さらに、所定時間内における2つの検出素子の出力反転に要する時間差の積分値からも、同様に上記異常の判定を行うことができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態について、図1、図2を参照して詳細に説明する。
【0031】
図1は、本発明にかかる酸素センサの異常判定装置が適用された車載用内燃機関と、その周辺構成の概略構成を示している。
同図1に示すように、内燃機関10の吸気通路11には、その通路面積を可変とするスロットルバルブ15が設けられ、その開度制御によりエアクリーナ14を通じて吸入される空気の量が調整されている。ここで吸入された空気の量(吸入空気量)は、エアフローメータ16により検出されている。そして吸気通路11に吸入された空気は、スロットルバルブ15下流に設けられたインジェクタ17より噴射された燃料と混合された後、燃焼室12に送られて、そこで燃焼される。
【0032】
一方、燃焼室12での燃焼により生じた排気が送られる排気通路13には、排気中の有害成分を浄化する排気浄化触媒18が設けられている。
そして、同排気浄化触媒18の上流側には第1のフロント酸素センサ19aと第2のフロント酸素センサ19bとが設けられている。また、排気浄化触媒18の下流側には第1のリア酸素センサ20aと第2のリア酸素センサ20bとが設けられている。このように、第1のフロント酸素センサ19aと第2のフロント酸素センサ19bとは略同位置、すなわち機関排気系にあって排気成分がほぼ同一となる位置に設けられている。同様に、第1のリア酸素センサ20aと第2のリア酸素センサ20bも、略同位置、すなわち機関排気系にあって排気成分がほぼ同一となる位置に設けられている。
【0033】
なお、以下では説明の便宜上、排気浄化触媒18の上流側に配設される酸素センサをフロント酸素センサ群19(第1のフロント酸素センサ19aと第2のフロント酸素センサ19bとを指す)という。また、排気浄化触媒18の下流側に配設される酸素センサをリア酸素センサ群20(第1のリア酸素センサ20aと第2のリア酸素センサ20bとを指す)という。
【0034】
上記排気浄化触媒18は、燃焼される混合気の空燃比が理論空燃比近傍の狭い範囲(ウインドウ)でのみ、排気中の主要有害成分(HC、CO、NOx)のすべてを酸化還元反応により効率的に浄化する。そうした排気浄化触媒18を有効に機能させるには、混合気の空燃比を上記ウインドウの中心に合わせこむ、厳密な空燃比制御が必要となる。
【0035】
そうした空燃比の制御は、電子制御装置22により行われる。電子制御装置22には、上記エアフローメータ16や上記フロント酸素センサ群19、リア酸素センサ群20、あるいはアクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルセンサ21、機関回転速度を検出する回転速度センサを始めとする各種センサ類の検出信号が入力されている。そしてそれらセンサ類の検出信号より把握される内燃機関10や車両の運転状況に応じて、上記スロットルバルブ15やインジェクタ17等を駆動制御して、上記のような空燃比の制御を行っている。そうした電子制御装置22による空燃比制御の概要は次の通りである。
【0036】
まず電子制御装置22は、上記アクセルペダルの踏み込み量や機関回転速度の検出結果に応じて把握される吸入空気量の要求量を求め、それに応じた吸入空気量が得られるようにスロットルバルブ15の開度を調整する。その一方、エアフローメータ16により検出される吸入空気量の実測値に対して、理論空燃比が得られるだけの燃料量を求め、それによりインジェクタ17からの燃料噴射量を調整する。これにより、燃焼室12で燃焼される混合気の空燃比を、ある程度に理論空燃比に近づけることはできる。ただし、それだけでは上記要求される高精度の空燃比制御には不十分である。
【0037】
そこで電子制御装置22は、上記フロント酸素センサ群19を構成する酸素センサのうちの少なくともいずれかの検出結果より空燃比の実測値を把握し、この実測値に基づいて算出される補正量に基づいて、インジェクタ17の燃料噴射量をフィードバック補正している。この空燃比フィードバック制御により、要求される空燃比制御の精度が確保される。
【0038】
また、電子制御装置22は、上記リア酸素センサ群20を構成する酸素センサのうちの少なくともいずれかの検出結果より、排気浄化触媒18の酸素消費状態、あるいは酸素放出状態を推定し、この推定に基づいて上記補正量に対する修正を行う。このサブフィードバック制御により、排気浄化触媒18の上記浄化作用が有効に活用される。こうした空燃比制御に用いられる上記フロント酸素センサ群19、及びリア酸素センサ群20を構成する各酸素センサは、いずれも濃淡電池式のセンサが用いられており、排気中の酸素分圧に応じた信号を出力する検出素子23を各備えて構成されている。
【0039】
ここで、酸素センサの検出素子に素子割れ異常が生じると、その出力信号は実際の空燃比を反映しなくなり、上記空燃比制御を正確に行うことができなくなる。そこで、本実施の形態では、上記フロント酸素センサ群19、及びリア酸素センサ群20で、それぞれ個別に素子割れ異常の有無を判定するようにしている。なお、フロント酸素センサ群19、及びリア酸素センサ群20の異常判定の態様は、ほぼ同一の態様で行われている。そこで以下では、そうした異常判定の詳細をフロント酸素センサ群19での異常判定を例にして説明する。
【0040】
上記のように本実施形態では、排気通路13の排気浄化触媒18の排気上流側に配置されるフロント酸素センサとして2つの酸素センサを、すなわち第1のフロント酸素センサ19a及び第2のフロント酸素センサ19bを配置するようにしている。こうした排気通路13の排気浄化触媒18の上流側では、排気成分がほぼ一様となっており、第1のフロント酸素センサ19a及び第2のフロント酸素センサ19bがそれぞれ備える各検出素子23は、ほぼ同様の出力パターンを示す。
【0041】
ここで、第1のフロント酸素センサ19a及び第2のフロント酸素センサ19bのいずれかの検出素子23に素子割れ異常が生じると、その異常の発生した検出素子23は、正常時とは異なる出力を示すこととなる。このとき、そうした異常の発生した検出素子23は、出力反転を周期的に繰り返す正常時に類似した出力パターンを示すことがあり、そうした場合には、単独の検出素子23の出力パターンを見ただけでは、その素子割れ異常の有無の判定が困難なことがある。
【0042】
その点、本実施形態では、排気浄化触媒18の上流側に2つの酸素センサ、すなわち第1のフロント酸素センサ19a及び第2のフロント酸素センサ19bが配設されており、それらのいずれかの検出素子23に素子割れ異常が生じても、もう一方の酸素センサの検出素子23は正常な出力パターンを示す。このとき、素子割れ異常を生じた検出素子23がたとえ正常時に類似した出力パターンを示したとしても、その出力パターンが正常な検出素子23のものと一致することはまず有り得ない。よって、2つの酸素センサの各検出素子23の出力を比較し、それらの出力に有意な差違が認められれば、たとえ異常の生じた検出素子23が正常時に類似した出力パターンを示しているとしても、いずれかの検出素子23に素子割れ異常が発生していると判断することができる。
【0043】
そこで本実施形態では、第1のフロント酸素センサ19a及び第2のフロント酸素センサ19bの各検出素子23の出力を比較することで、素子割れ異常の有無の判定を行うようにしている。以下、こうした本実施形態における異常判定処理の詳細を、図2を併せ参照して説明する。
【0044】
図2は、そうした異常判定処理における電子制御装置22の処理手順を示したものである。
この処理が開始されると、まずカウンタcntの値に初期値T0が設定され(S110)、これとともに第1センサ出力値軌跡長intLa、及び第2センサ出力値軌跡長intLbの値が、共に「0」に設定される(S120)。これら第1センサ出力値軌跡長intLa、及び第2センサ出力値軌跡長intLbについては後述する。
【0045】
次に、この異常判定処理を行う前提条件が成立しているか否かが判定される(S130)。ここでは、下記条件(c1)〜(c5)が全て満たされているときに前提条件が成立していると判定される。
(c1)車速が所定速度以上である。
(c2)上述したサブフィードバック制御の実行中であり、かつサブフィードバック制御の実行時間が所定時間以上である。
(c3)アイドル運転中でない。
(c4)吸入空気量が所定値以上である。
(c5)燃料カット中でなく、かつ燃料カット復帰後の経過時間が所定時間以上である。
【0046】
こうした前提条件(c1)〜(c4)の設定により、ある程度に燃焼される混合気量が多く、混合気の空燃比が、排気の酸素分圧に十分反映されて第1のフロント酸素センサ19a及び第2のフロント酸素センサ19bに検出可能な状態において、異常判定が実施されるようになる。また、前提条件(c5)の設定により、燃料カット復帰直後において排気浄化触媒18から放出される酸素による、異常判定処理への影響を抑制することができるようになる。
【0047】
前提条件が成立していないときには(S130でNO)、この前提条件が成立するまで、以降の処理の実施を一時保留する。一方、前提条件が成立しているときには(S130でYES)、カウンタcntの値がインクリメントされるとともに(S140)、以下の各処理が実施される。
【0048】
まず、次式(1)及び式(2)に基づき、第1センサ出力値軌跡長intLaと第2センサ出力値軌跡長intLbとが算出される(S150)。
intLa=intLa+|Va―V0a| … (1)
intLb=intLb+|Vb―V0b| … (2)
ここで、「Va」は、今回サンプリングされた第1のフロント酸素センサ19aの検出素子23の出力値を、「V0a」は、前回、本S150の処理が実施されたときにサンプリングされた同検出素子23の出力値、すなわち前回出力値をそれぞれ示している。また同様に、「Vb」は、第2のフロント酸素センサ19bの検出素子23についての今回の出力値、「V0b」は、前回出力値をそれぞれ示している。
【0049】
次に、カウンタcntの値が所定値Tを越えているか否かが判定される(S160)。そして、カウンタcntの値が所定値T以下である場合には(S160でNO)、前記S130からS160までの処理が繰り返し実行される。すなわち、カウンタcntの値が所定値Tを越えるまでの期間、上記第1センサ出力値軌跡長intLa、及び第2センサ出力値軌跡長intLbの算出が継続される。これらの処理が繰り返し行われることにより、第1のフロント酸素センサ19a及び第2のフロント酸素センサ19bが備える各検出素子23のそれぞれについて、カウンタcntの値が所定値Tに達するまでの期間における出力波形の軌跡長が各算出される。そして、上記フロント酸素センサ群19を構成する2つの検出素子23の出力値の変化態様が数値化される。なお、上記所定値Tは、いずれかの検出素子23に素子割れ異常が発生したときに、それら検出素子23の上記出力値軌跡長の間に有意な差が生じるだけの十分なサンプリング期間が得られるように設定されている。
【0050】
ここで、カウンタcntの値が所定値Tを越えた場合には(S160でYES)、すなわち十分な出力値軌跡長のサンプリングが完了した場合には、次式(3)に基づき、上記算出された第1センサ出力値軌跡長intLaと第2センサ出力値軌跡長intLbとの軌跡長差ΔLが算出される(S170)。
【0051】
ΔL=|intLa−intLb| … (3)
次に、この軌跡長差ΔLが異常判定値DLTLNGを越えている否かが判定される(S180)。そして、軌跡長差ΔLが異常判定値DLTLNGを越えている場合には(S180でYES)、第1のフロント酸素センサ19a、及び第2のフロント酸素センサ19bのいずれかの検出素子23に素子割れ異常が有ると判定される(S190)。なお、異常判定値DLTLNGは、検出素子23の出力特性の固体差等による誤判定を回避可能な適切な値が、実験等の結果に基づいて予め設定されている。
【0052】
一方、軌跡長差ΔLが異常判定値DLTLNG以下である場合には(S180でNO)、軌跡長差ΔLが正常判定値DLTLOK未満であるか否かが判定される(S200)。そして、軌跡長差ΔLが正常判定値DLTLOK未満である場合には(S200でYES)、以下のように判定される。すなわち、第1のフロント酸素センサ19a及び第2のフロント酸素センサ19bの間での検出素子23の有意な出力差が認められず、各検出素子23のいずれも素子割れ異常が無いと、すなわち2つの検出素子は正常であると判定される(S210)。なお、上記正常判定値DLTLOKは、上述した異常判定値DLTLNGよりも小さい値であって、2つの検出素子に素子割れが無いことを確実に判定することのできる値となっている。
【0053】
他方、軌跡長差ΔLが正常判定値DLTLOK以上である場合には(S200でNO)、前記S110以下の処理が再び行われる。すなわち、S200で否定判定されるときには、今回の処理で算出された軌跡長差ΔLでは、素子割れ異常の有無を明確に判定し難いと判断される。そこで、新たに軌跡長差ΔLを算出し直し、再度、異常判定値DLTLNGや正常判定値DLTLOKとの比較判定が行われる。
【0054】
なお、前述したようにこうした態様での異常判定は、排気浄化触媒18の下流側に設けられた第1及び第2のリア酸素センサ20a、20bの検出素子23を対象としても行われている。
【0055】
このように、第1の実施形態における酸素センサの異常判定装置によれば、次のような効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、機関排気系の排気浄化触媒18の上流側に、すなわち機関排気系にあって排気成分がほぼ同一となる略同位置に、酸素分圧を検出する検出素子23を2つ配設し、互いの出力を比較するようにしている。従って、上流側の上記フロント酸素センサ群19において、たとえ素子割れの生じた検出素子が正常な検出素子に類似した出力パターンを示す場合であっても、好適に素子割れ異常の有無の判定を行うことができるようになる。
【0056】
また、機関排気系の排気浄化触媒18の下流側にも同様に、酸素分圧を検出する検出素子23を2つ配設し、互いの出力を比較するようにしている。従って、下流側の上記リア酸素センサ群20においても同様に、たとえ素子割れの生じた検出素子が正常な検出素子に類似した出力パターンを示す場合であっても、好適に素子割れ異常の有無の判定を行うことができるようになる。
【0057】
(2)本実施の形態では、2つの検出素子23の出力の比較を、それらの出力波形の軌跡長に基づいて行うようにしている。従って、素子割れ異常の発生による両検出素子23の出力パターンの差違の発生を的確に検出することができ、高精度の異常判定を行うことができる。
【0058】
(第2の実施形態)
以下、本発明を具体化した第2の実施形態を、上記実施形態と異なる点を中心に説明する。なお、本実施形態以降の各実施形態では、第1の実施形態のものと機能の共通する構成については同一の符合を付してその詳細な説明は省略する。
【0059】
本実施形態では、排気系の略同位置に配設された2つの検出素子23の出力差の時間積分値に基づいて素子割れ異常の有無の判定を行うことで、より簡易な処理で比較的高精度の異常判定を行うことができるようにしている。
【0060】
図3は、こうした本実施形態における異常判定処理の処理手順を示している。なお、ここではフロント酸素センサ群19を構成する2つの酸素センサの検出素子の素子割れ異常の有無の判定を例として説明するが、これと同様の判定はリア酸素センサ群20にも適用されている。
【0061】
この処理が開始されると、まずカウンタcntの値に初期値T0が設定されるとともに(S310)、センサ出力差積算値intVの値が「0」に設定される(S320)。このセンサ出力差積算値intVについては後述する。
【0062】
次に、この異常判定処理を行う前提条件が成立しているか否かが判定される(S330)。ここでの前提条件は、第1の実施形態のものと同一の条件が設定されている。
【0063】
前提条件が成立していないときには(S330でNO)、この前提条件が成立するまで、以降の処理の実施を一時保留する。一方、前提条件が成立しているときには(S330でYES)、カウンタcntの値がインクリメントされるとともに(S340)、以下の処理が実施される。
【0064】
まず第1のフロント酸素センサ19aの出力値Vaと、第2のフロント酸素センサ19bの出力値Vbと、現在のセンサ出力差積算値intVとに基づき次式(4)から今回のセンサ出力差積算値intVが算出される(S350)。
【0065】
intV=intV+|Va―Vb| … (4)
次に、カウンタcntの値が所定値Tを越えているか否かが判定される(S360)。そして、カウンタcntの値が所定値T以下である場合には(S360でNO)、前記S330からS360までの処理が繰り返し実行される。これにより、カウンタcntの値が所定値Tに達するまでの期間における第1のフロント酸素センサ19a及び第2のフロント酸素センサ19bの各出力値の差の時間積分値が算出される。上記所定値Tは、第1のフロント酸素センサ19a及び第2のフロント酸素センサ19bのいずれかの検出素子23に素子割れ異常が発生したときに明確な上記センサ出力差積算値intVの増大が生じるような十分な出力値の積分期間が確保されるように適切な値が設定されている。
【0066】
そして、カウンタcntが所定値Tを越えた場合には(S360でYES)、上記算出されたセンサ出力差積算値intVが異常判定値INTVNGを越えているか否かが判定される(S370)。そして、センサ出力差積算値intVが異常判定値INTVNGを越えている場合には(S370でYES)、第1のフロント酸素センサ19a及び第2のフロント酸素センサ19bのいずれかの検出素子23に素子割れ異常が有ると判定される(S380)。なお、上記異常判定値INTVNGは、検出素子23の出力特性の固体差等による誤判定を回避可能なように、実験の結果等により求められた適切な値が設定されている。
【0067】
一方、センサ出力差積算値intVが異常判定値INTVNG以下である場合には(S370でNO)、センサ出力差積算値intVが正常判定値INTVOK未満であるか否かが判定される(S390)。そして、センサ出力差積算値intVが正常判定値INTVOK未満である場合には(S390でYES)、第1のフロント酸素センサ19a及び第2のフロント酸素センサ19bが備える各検出素子23の間に有意な出力差が認められず、両検出素子23は共に正常であると判定される(S400)。なお、上記正常判定値INTVOKは、上述した異常判定値INTVNGよりも小さい値であって、2つの検出素子に素子割れが無いことを確実に判定することのできる値が設定されている。
【0068】
他方、センサ出力差積算値intVが正常判定値INTVOK以上である場合には(S390でNO)、今回算出されたセンサ出力差積算値intVでは、素子割れ異常の有無を明確に判定し難いと判断される。そこで、新たにセンサ出力差積算値intVを算出し直し、再度、異常判定値INTVNGや正常判定値INTVOKとの比較判定が行われる。
【0069】
こうした第2の実施形態における酸素センサの異常判定装置によれば、上記(1)に記載の効果に加え、更に次の効果が得られるようになる。
(3)本実施の形態では、機関排気系の略同位置に配設された2つの検出素子23の出力の比較を、それらの出力値差の時間積分値を用いて行うようにしている。これにより、素子割れ異常の発生に伴う両検出素子23の出力差の発生を明確に検出することができ、より簡易な判定処理にて比較的高精度の異常判定を行うことができる。
【0070】
(第3の実施形態)
以下、本発明を具体化した第3の実施形態を、上記実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0071】
本実施形態では、2つの検出素子23の出力の瞬時値、換言すれば出力値の大きさを直接比較することで、素子割れ異常の有無の判定を行っており、異常判定処理の大幅な簡易化が図られている。このような簡易な判定態様によっても、個体差による応答性の差違やノイズの影響による出力誤差が十分に小さく、正常な検出素子23の出力値が常にほぼ一律となることが保証されていれば、素子割れ異常の有無の判定を的確に行うことは十分可能である。
【0072】
図4はこうした本実施形態における異常判定処理の処理手順が示されている。なお、ここではフロント酸素センサ群19を構成する2つの酸素センサの検出素子の素子割れ異常の有無の判定を例として説明するが、これと同様の判定はリア酸素センサ群20についても適用されている。
【0073】
この処理が開始されるとまず、異常判定処理を行う前提条件が成立しているか否かが判定される(S510)。ここでの前提条件は、第1の実施形態のものと同一の条件が設定されている。
【0074】
ここで前提条件が成立していないと判定されたときには(S510でNO)、この前提条件が成立するまで、以降の処理の実施を一時保留する。一方、前提条件が成立しているときには(S510でYES)、次式(5)に従い、第1のフロント酸素センサ19aの出力値Vaと第2のフロント酸素センサ19bの出力値Vbとのセンサ出力差ΔVが算出される(S520)。
【0075】
ΔV=|Va―Vb| … (5)
次に、上記算出されたセンサ出力差ΔVが異常判定値DLTVNGを越えているか否かが判定される(S530)。そして、センサ出力差ΔVが異常判定値DLTVNGを越えている場合には(S530でYES)、第1のフロント酸素センサ19a及び第2のフロント酸素センサ19bのいずれかの検出素子23に素子割れ異常が有ると判定される(S540)。なお、上記異常判定値DLTVNGは、検出素子23の出力特性の固体差等による誤判定を回避可能なように、実験結果等から予め求められた適切な値が設定されている。
【0076】
一方、センサ出力差ΔVが異常判定値DLTVNG以下である場合には(S530でNO)、センサ出力差ΔVが正常判定値DLTVOK未満であるか否かが判定される(S550)。そして、センサ出力差ΔVが正常判定値DLTVOK未満である場合には(S550でYES)、両検出素子23の間に有意な出力差は認められず、検出素子23は共に正常であると判定される(S560)。なお、上記正常判定値DLTVOKは、上述した異常判定値INTVNGよりも小さな値であって、2つの検出素子23に素子割れが無いことを確実に判定することのできる値が設定されている。
【0077】
他方、センサ出力差ΔVが正常判定値DLTVOK以上である場合には(S550でNO)、前記S510以下の処理が再び行われる。すなわち、S550で否定判定されるときには、今回算出されたセンサ出力差ΔVの値では、異常の有無を明確に判別し難いと判断され、新たにセンサ出力差ΔVを算出し直して、再度、異常判定値DLTVNGや正常判定値DLTVOKとの比較判定が行われる。
【0078】
こうした第3の実施形態における酸素センサの異常判定装置によれば、上記(1)に記載の効果に加え、更に次の効果が得られるようになる。
(4)本実施の形態では、2つの検出素子23の出力値の大きさを直接比較することで、素子割れ異常の有無の判定を行っている。従って、短期間で、しかも非常に簡易な処理で異常判定を行うことができるようになる。
【0079】
(第4の実施形態)
上記各実施形態では、検出素子23の出力比較による素子割れ異常の判定を行うべく、機関排気系の略同位置に2つの酸素センサを配置するようにしているが、図5に示すような検出素子を2つ備える酸素センサ29を用いれば、単一の酸素センサのみで同様の異常判定を行うことができるようになる。
【0080】
図5の[a]は、こうした本実施形態の酸素センサ29の斜視図を、同図[b]は、同酸素センサ29の検出部近傍の断面構造をそれぞれ示している。酸素センサ29は、センサケース30の上端部に装着されたカバー30c内に、排気中の酸素分圧を検出する検出素子が2つ、すなわち第1の検出素子30aと第2の検出素子30bとが設けられている。これら第1の検出素子30a及び第2の検出素子30bは互いに独立した検出素子であり、個別に排気中の酸素分圧を検出することができるようになっている。また、これら第1の検出素子30a及び第2の検出素子30bは、板状の基板に固体電解質、電極、及びヒータ等が層状に設けられた、いわゆる積層型の検出素子としてそれぞれ構成されている。そしてこれら第1の検出素子30a及び第2の検出素子30bの出力は、各々個別に電子制御装置22に入力されるようになっている。
【0081】
こうした酸素センサ29を、上記各実施形態のフロント酸素センサ群19やリア酸素センサ群20を構成する2つの酸素センサに代えて、機関排気系の排気浄化触媒18の上流側や下流側に配設する。そして、同酸素センサ29の第1の検出素子30a及び第2の検出素子30bの出力を用いることにより、上記各実施形態と同様の異常判定を行うことができる。しかも、こうした酸素センサ29によれば、2つの検出素子、すなわち第1の検出素子30a及び第2の検出素子30bを極近い位置に配設することができるため、出力を比較する2つの検出素子の取付位置による排気成分の濃度差が異常判定に及ぼす影響を極力抑えることができる。更に、第1の検出素子30a及び第2の検出素子30bが単一のセンサケース30内に収容されているため、上記各実施形態のように機関排気系の略同位置に2つの酸素センサを設置する場合に比して、酸素センサの取付空間を小さくすることができる。また排気通路13内に突出して配設される酸素センサが、その排気通路13内での排気の流れに与える影響を抑えることができるようにもなっている。
【0082】
以上説明した酸素センサ29を採用することで、上記各実施形態の効果に加え、更に次の効果を得ることができる。
(5)第1の検出素子30a及び第2の検出素子30bを極近傍に配置することができるため、排気通路13内の排気成分濃度の分布のばらつきが異常判定精度に与える影響を好適に抑制することができる。
【0083】
(6)機関排気系の略同位置に2つの酸素センサを設置する場合に比して、酸素センサの取付空間を低減でき、機関排気系に関連する設計の自由度を向上させることができるようになる。
【0084】
(7)機関排気系の略同位置に2つの酸素センサを設置する場合に比して、排気通路13内に突出して配置される酸素センサが同排気通路13内の排気の流れに与える影響を抑えることができる。
【0085】
(第5の実施形態)
第4の実施形態では、単一のセンサケース30にそれぞれ独立した2つの検出素子(第1の検出素子30a及び第2の検出素子30b)を収容するようにしていたが、2つの検出素子を単一の基板上に形成するようにしても良い。
【0086】
図6はそうした単一の基板上に2つ検出素子の形成された酸素センサの検出部60の断面構造を示している。この図6に示される検出部60は、図5における第1の検出素子30a及び第2の検出素子30bの代わりに、センサケース30のカバー30c内に収容されるようになっている。同図6に示すように、この酸素センサの検出部60は、アルミナ等の絶縁材料からなる板状の基板61を備えている。そして、その基板61の同一面上に、2つの検出素子、すなわち第1の検出素子60a及び第2の検出素子60bを形成するようにしている。なお、以下の説明において、第1の検出素子60a及び第2の検出素子60bに共通する構成要素については、部材番号として同一の数字を付すとともに、第1の検出素子60aの構成要素にはその部材番号の末尾に「a」を、第2の検出素子60bの構成要素にはその部材番号の末尾に「b」を付して区別する。
【0087】
詳しくは、第1の検出素子60a及び第2の検出素子60bは、大気室63a、63b、固体電解質層64a、64b、拡散抵抗層66a、66b、遮蔽層67a、67b、排気側電極68a、68b、大気側電極69a、69bをそれぞれ備えて構成された積層型の検出素子となっている。
【0088】
第1の検出素子60a及び第2の検出素子60bの固体電解質層64a、64bは、ジルコニア等の固体電解質によって構成されており、基板61の同一面上にそれぞれ並設されている。基板61と各固体電解質層64a、64bの間には、排気中の酸素濃度の検出に際して基準気体として用いられる大気が導入される大気室63a、63bがそれぞれ形成されている。
【0089】
各固体電解質層64a、64bの大気室63a、63bに面した側の表面には、大気側電極69a、69bが形成されている。また、各固体電解質層64a、64bの大気室63a、63bに面した側の表面の裏面には、固体電解質層64a、64bを挟んで大気側電極69a、69bと対向するように排気側電極68a、68bが形成されている。これら大気側電極69a、69b、及び排気側電極68a、68bはいずれも、白金等の触媒貴金属からなる多孔質材によって形成されており、リード線がそれぞれ接続されている。そしてそれらのリード線を通じて、各検出素子(第1の検出素子60a及び第2の検出素子60b)の大気側電極69a、69bと排気側電極68a、68bの間に生じた起電力がセンサ外部に取り出されるようになっている。
【0090】
各排気側電極68a、68bの上部には、略台形の断面形状を有する拡散抵抗層66a、66bが形成されている。これら拡散抵抗層66a、66bは、アルミナとマグネシアの混合体であるスピネルや多孔質アルミナ等によって形成され、排気中の被毒物質や熱から排気側の電極を保護するとともに、排気を保持してセンサ特性を安定化させている。
【0091】
更に拡散抵抗層66a、66bの排気側上面には、緻密なアルミナ等によって形成されて、排気の通過を阻止する遮蔽層67a、67bが形成されている。また、基板61内には、ヒータ線62が埋設されており、そのヒータ線62への通電による発熱により、第1の検出素子60a及び第2の検出素子60bが加熱され、その活性化が促されるようになっている。
【0092】
このように2つの検出素子(第1の検出素子60a及び第2の検出素子60b)を単一の基板61上に形成することで、2つの検出素子を個別の基板上に形成する場合と比較して、製造コストの低減を図ることができる。また、カバー30c内での検出素子の取付空間を低減し、酸素センサの小型化を図ることが可能にもなる。
【0093】
更に上記のように2つの検出素子を基板61の同一面に形成することで、両検出素子に対する排気の当たり方がほぼ同じとなる。そのため、検出素子の指向性に起因する両検出素子の出力のばらつきを好適に抑制し、より的確な異常判定を行うことができるようになる。
【0094】
(第6の実施形態)
更に図7に示されるような態様によっても、単一の基板上に2つの検出素子を形成することができる。同図7に示される酸素センサの検出部70は、アルミナ等の絶縁体により板状に形成された基板71の表面及び裏面に、第1の検出素子70a及び第2の検出素子70bがそれぞれ形成されている。この検出部70は、図5における第1の検出素子30a及び第2の検出素子30bの代わりに、センサケース30のカバー30c内に収容されるようになっている。
【0095】
各検出素子(第1の検出素子70a及び第2の検出素子70b)は、第5の実施形態のものと同様に、大気室73a、73b、固体電解質層74a、74b、拡散抵抗層76a、76b、遮蔽層77a、77b、排気側電極78a、78b、大気側電極79a、79bをそれぞれ備えた積層型の素子となっている。ちなみに、基板71内には、第1の検出素子70a及び第2の検出素子70bに挟まれるようにヒータ線72が埋設されており、そのヒータ線72への通電による発熱により、第1の検出素子70a及び第2の検出素子70bが加熱され、その活性化が促されるようになっている。
【0096】
このように酸素センサの検出部70を構成しても、2つの検出素子(第1の検出素子70a及び第2の検出素子70b)が単一の基板71上に形成されるため、2つの検出素子を個別の基板上に形成する場合と比較して、製造コストの低減を図ることができる。またカバー30c内での検出素子の取付空間を低減し、酸素センサの小型化を図ることが可能にもなる。
【0097】
更に上記のように2つの検出素子を基板71の異なる面に形成することで、両検出素子の形成に必要な基板71の面積を低減することができる。すなわち、検出素子1つ分の表面面積しか有していない基板71上に、2つの検出素子を形成することが可能となる。これにより、基板面積の拡大を回避して酸素センサの更なる小型化が許容されるようになる。また、こうしてヒータ線72の埋設された基板71の表裏面に第1の検出素子70a及び第2の検出素子70bを形成することで基板71の放熱面積が低減されるため、第1の検出素子70a及び第2の検出素子70bをより効率的に加熱することも可能となる。
【0098】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施の形態は以下のように変更して実施することもできる。
・前述したように、検出素子の素子割れは同検出素子の被水等に起因して発生するが、この検出素子に付着する水分は、検出素子を保護するカバーに設けられた穴から同カバーの内部に侵入して検出素子に付着することが多い。そこで、第4の実施形態では、1つのカバー30cの内部に2つの検出素子を設けるようにしたが、第1の検出素子30a及び第2の検出素子30bに対してそれぞれ個別のカバーを設けるようにしてもよい。図8の[a]〜[c]は、第1の検出素子30a及び第2の検出素子30bに個別のカバーが設けられた酸素センサの例をそれぞれ示している。図8の[a]に示される変形例では、横断面が略半月形状に形成されたカバー50cによって、第1の検出素子30a及び第2の検出素子30bがそれぞれ覆われる構成となっている。また図8の[b]に示される変形例では、円柱状に形成されたカバー51cによって、第1の検出素子30a及び第2の検出素子30bがそれぞれ覆われる構成となっている。更に図8の[c]に示される変形例では、角柱状に形成されたカバー52cによって、第1の検出素子30a及び第2の検出素子30bがそれぞれ覆われる構成となっている。このように2つの検出素子(第1の検出素子30a及び第2の検出素子30b)にそれぞれ個別のカバー50c、51c、52cを設けるようにすると、2つの検出素子を1つのカバー30cで覆う場合と比較して、2つの検出素子が同時に被水する機会を少なくすることができる。その結果、2つの検出素子に同時に素子割れが発生することを抑えることができるようになる。
【0099】
・2つの検出素子の出力の比較として、上記第1〜第3の実施形態で説明した出力比較の他にも、例えば、2つの検出素子の出力反転時期の比較、または2つの検出素子の振幅の比較等によっても上述した異常判定を行うことができる。さらに、所定時間内における2つの検出素子の出力反転に要する時間差の積分値からも、同様に上記の異常判定を行うことができる。
【0100】
・一般に、検出素子には出力特性の個体差があり、上記各実施形態の異常判定において出力が比較される2つの検出素子の出力特性、あるいはそれら2つの検出素子の出力特性差は、機関運転中の各検出素子の出力をモニタすることで学習することができる。そして、その学習の結果を異常判定に反映するようにすれば、素子割れ異常の有無の判定精度を更に向上させることができるようになる。そうした学習結果の反映は、例えば異常判定にかかる各判定値(異常判定値、正常判定値など)を、その学習の結果に応じて補正することで行うことができる。
【0101】
・酸素センサの検出素子は、経時劣化等により酸素分圧の変化に対する応答性が低下してしまうようになる。ここで、上記のような機関排気系の略同位置に配設された2つの検出素子のいずれかに、そうした経時劣化等による応答性の低下が生じた場合には、それら両検出素子の出力態様に差違が生じるようになる。よって、それら2つの検出素子の出力の比較により、検出素子の応答性の低下の有無を判定してこれを検出するようにすることもできる。例えば応答性の低下が生じた検出素子は、単位時間当たりの出力値の変化量が小さくなるため、機関排気系の略同位置に配設された2つの検出素子の出力値の変化量に有意な差が認められることを条件に応答性低下有りと判定して、検出素子の応答性低下の有無を判定することができる。
【0102】
・上記各実施の形態では、積層型の検出素子を備える酸素センサへの本発明の適用例を説明したが、積層型以外のタイプの検出素子を備える酸素センサについても本発明を同様に適用することができる。また、上記各実施形態での異常判定の態様、あるいはセンサ構成等は、排気中の酸素分圧に応じた信号を出力する検出素子を有する酸素センサであれば、同様に適用することができる。もちろん、上記各実施形態で説明した酸素センサのみならず、空燃比に応じたリニアな値を出力する空燃比センサにも本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を具体化した第1の実施形態について異常判定装置の全体構成を示す模式図。
【図2】同実施形態における異常判定処理のフローチャート。
【図3】第2の実施形態における異常判定処理のフローチャート。
【図4】第3の実施形態における異常判定処理のフローチャート。
【図5】第4の実施形態における酸素センサの斜視構造及び部分断面構造を併せ示す図。
【図6】第5の実施形態における酸素センサの検出部の断面構造を示す断面図。
【図7】第6の実施形態における酸素センサの検出部の断面構造を示す断面図。
【図8】第4の実施形態における酸素センサの変形例を示す断面図。
【符号の説明】
10…内燃機関、11…吸気通路、12…燃焼室、13…排気通路、14…エアクリーナ、15…スロットルバルブ、16…エアフロメータ、17…インジェクタ、18…排気浄化触媒、19…フロント酸素センサ群、19a…第1のフロント酸素センサ、19b…第2のフロント酸素センサ、20…リア酸素センサ群、20a…第1のリア酸素センサ、20b…第2のリア酸素センサ、21…アクセルセンサ、22…電子制御装置、23…検出素子、29…酸素センサ、30…センサケース、30a…第1の検出素子、30b…第2の検出素子、30c、50c、51c、52c…カバー、60、70…検出部、60a、70a…第1の検出素子、60b、70b…第2の検出素子、61、71…基板、62、72…ヒータ線、63a、63b、73a、73b…大気室、64a、64b、74a、74b…固体電解質層、66a、66b、76a、76b…拡散抵抗層、67a、67b、77a、77b…遮蔽層、68a、68b、78a、78b…排気側電極、69a、69b、79a、79b…大気側電極。
Claims (12)
- 排気中の酸素分圧に応じた信号を出力する検出素子を有する酸素センサの前記検出素子の素子割れ異常の有無を判定する装置であって、
機関排気系の略同位置に前記検出素子を2つ配設し、それら2つの検出素子の出力の比較に基づいて前記異常の有無の判定を行う
ことを特徴とする酸素センサの異常判定装置。 - 排気中の酸素分圧に応じた信号を出力する検出素子を有する酸素センサの前記検出素子の素子割れ異常の有無を判定する装置であって、
機関排気系の排気浄化触媒の上流側に前記検出素子を2つ配設し、それら2つの検出素子の出力の比較に基づいて前記異常の有無の判定を行う
ことを特徴とする酸素センサの異常判定装置。 - 排気中の酸素分圧に応じた信号を出力する検出素子を有する酸素センサの前記検出素子の素子割れ異常の有無を判定する装置であって、
機関排気系の排気浄化触媒の下流側に前記検出素子を2つ配設し、それら2つの検出素子の出力の比較に基づいて前記異常の有無の判定を行う
ことを特徴とする酸素センサの異常判定装置。 - 前記比較によって前記2つの検出素子の出力に有意な差があると認められたときに、該2つの検出素子のいずれかに素子割れ異常有りと判定する
請求項1〜3のいずれかに記載の酸素センサの異常判定装置。 - 前記2つの検出素子が単一のセンサケースに収容されてなる
請求項1〜4のいずれかに記載の酸素センサの異常判定装置。 - 前記2つの検出素子に、それぞれ個別の保護カバーを設けた
請求項5に記載の酸素センサの異常判定装置。 - 前記2つの検出素子を単一の基板上に形成した
請求項5に記載の酸素センサの異常判定装置。 - 前記2つの検出素子を前記基板の同一面に形成した
請求項7に記載の酸素センサの異常判定装置。 - 前記2つの検出素子を前記基板の表裏面にそれぞれ形成した
請求項7に記載の酸素センサの異常判定装置。 - 前記出力の比較は、前記2つの検出素子の出力波形の軌跡長を用いて行われる
請求項1〜9のいずれかに記載の酸素センサの異常判定装置。 - 前記出力の比較は、前記2つの検出素子の出力値の積分値を用いて行われる
請求項1〜9のいずれかに記載の酸素センサの異常判定装置。 - 前記出力の比較は、前記2つの検出素子の出力値を用いて行われる
請求項1〜9のいずれかに記載の酸素センサの異常判定装置。
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