JP2004168575A - セラミックスの焼結方法 - Google Patents

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正喜 安岡
Koji Watari
渡利  広司
Takaaki Nagaoka
孝明 長岡
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Abstract

【課題】緻密な構造のセラミックス焼結体を効率よく得ることができるセラミックスの焼結方法を提供する。
【解決手段】セラミックスの成形体をマイクロ波加熱により焼結する方法であって、無機セラミックス粉末からなる成形体を、周波数300MHz〜30GHzのマイクロ波領域で焼結する際に、加熱補助としてSiC板を用いて焼結するセラミックスの焼結方法、電気抵抗値が10 cm・Ω〜10 cm・ΩのSiC板を用いる前記の焼結方法、試料を上下方向に挟むように、又は試料を取り囲むようにSiC板を配置する前記の焼結方法。
【効果】本発明は、緻密なセラミックス焼結体の作製方法として、例えば、酸化亜鉛、チタン酸バリウム等の焼結体の作製に有用である。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックスの焼結方法に関するものであり、更に詳しくは、緻密な構造のセラミックス焼結体を効率よく作製することができるセラミックス成形体のマイクロ波加熱による焼結方法に関するものである。
本発明は、通常の電気炉の焼結時間の1/3程度の短時間で、かつ通常の電気炉より100℃以下の低温で、緻密なセラミックス焼結体を作製することを可能とする方法として、好適には、例えば、酸化亜鉛、アルミナ等の酸化物セラミックス、窒化ケイ素等の非酸化物セラミックス等の焼結体の作製方法として有用である。
【0002】
【従来の技術】
従来から、セラミックスの成形体の焼結は、電気炉による放射熱を利用して行われている。放射熱も一種の電磁波であるが、その波長は、赤外領域が中心である。この放射熱によりセラミックスの成形体は、表面から加熱され、熱伝導により内部までゆっくり温度が上がっていくプロセスを経て、焼結されるが、従来、この焼結を完了するのに数時間から数十時間かかっていた。
【0003】
これに対して、近年、マイクロ波帯やミリ波帯の電磁波を利用し、該電磁波を試料に照射してセラミックスを焼結する方法が行われている。この焼結方法では、物質内部まで直接マイクロ波が浸透し、材料の誘電損失によりエネルギーが吸収されて熱に変換されるため、この方法により、通常の電気炉等の外部加熱型に比べて、均一加熱、及び急速加熱が可能となった。更に、マイクロ波焼結では、幾つかのセラミックスで緻密化速度の促進効果が観察されている。その結果として、従来の抵抗加熱炉よりマイクロ波加熱炉の方が低温でセラミックスを焼結し得ることから、この方法は、セラミックス焼結体の機械的、及び電気的特性の改善に有益であると考えられている。
【0004】
すなわち、マイクロ波やミリ波でセラミックスを焼結すると、通常の電気炉での焼成に比べて、短時間、かつ低温で処理でき、結晶粒の粗大化もあまり起こらず、緻密な焼結体が得られる。その原因については、色々な理由が考えられるが、それらを列挙すると、例えば、1)内部加熱、2)選択加熱、3)拡散促進、4)表面活性化、5)粘性低下、及び、6)温度測定誤差、等があげられる。これらのうち、上記3)及び6)を除けば、いずれも電磁波がセラミックスなどの絶縁体(誘電体)に与える効果として奏されるものである。しかし、セラミックスの種類によっても、得られる結果が異なる場合が多々あり、大きな原因として確定されたものは未だない。
【0005】
セラミックスが電磁波により加熱されるとき、単位体積当たりに吸収される電磁波のパワーは、その電界強度の2乗ならびに周波数に比例する。すなわち、例えば、周波数2.45GHzのセンチ波に比べて、周波数28GHz(波長1cm)や60GHz(波長5mm)のミリ波になると、同じ電界強度でも、セラミックスに吸収される電磁波の度合いは一桁以上良いことになる。更に、電磁波を収束するときには、波長が短いほど有利であり、それにより、電界強度も桁違いに大きくなり、エネルギー密度を高くすることができる。
【0006】
一方、電界分布が一様なときには、任意形状のセラミックスを内部から加熱できるが、金属容器の加熱炉内部の電界強度分布を一様にするのに必要な容器寸法は、電磁波の波長の100倍程度といわれている。したがって、前述の周波数60GHzの場合は、50cm程度の寸法であるのに対し、2.45GHzでは10m以上の大きさが必要となる(非特許文献1参照)。
【0007】
また、材料の方から考えると、セラミックスに吸収されるパワーは、セラミックスの誘電損失ε tanδ(=ε” )に比例する。ここでε はセラミックスの比誘電率、tanδは誘電損失角である。ε ならびにtanδは、セラミックスの温度や電磁波の周波数により変化するが、特に、電磁波の周波数が小さいほどtanδの温度依存性は大きくなる。逆に、波長が短いミリ波になると、高温になっても誘電損失ε” が大きく変化しない。これにより、加熱途上にしばしば起こるいわゆるランナウェイ(急速な局部加熱)を避けることができる。
【0008】
これらのことから、センチ波よりミリ波の方が加熱の制御ならびに加熱効率の点で有利である。そのため、近年、ジャイラトロンという名称のミリ波発振管を利用した研究が積極的に行われるようになっている。しかも、最近、安価で、安全で、取り扱いが容易で、高効率のジャイラトロンが開発され、その研究が盛んになっている。
【0009】
【特許文献1】
特公平9−510950号公報
【非特許文献1】
セラミックスの高速焼結技術、(株)ティー・アイ・シー、13頁、1998年10月発行
【0010】
しかしながら、前記したミリ波発振管のジャイラトロンは、その装置が大規模であるという問題があった。そこで、装置の大きさを小規模にした300MHz〜30GHzのマイクロ波帯を用いて焼結を行うことが切望されていた。ところが、これらの周波数では、セラミックスの誘電損率が低く、加熱効率が低く、また、波長が長いために、アプリケーター内でのマイクロ波の分布を均一にすることが困難であるという問題があった。
【0011】
セラミックスをマイクロ波焼結するときに用いる加熱方法としては、電子レンジのように、多数の電磁界モードが存在するマルチモード共振器と、電磁界を一箇所に集中させたシングルモード共振器の2つのタイプがある。後者を用いた場合は、小さな電力で、高効率に加熱できるが、前者を用いた場合は、安定した加熱を得ることが困難であるという問題もあった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、セラミックスからなる成形体を焼結するに際し、この成形体がマイクロ波を吸収するような工夫をすれば、前述の諸問題を抜本的に解決することができるものと考え、鋭意検討及び研究を積み重ねた結果、マイクロ波焼成時に、ある一定の温度まで成形体の補助加熱と焼成を同時的に行なう焼結方法を採用することにより所期の目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、緻密なセラミックス焼結体を効率よく作製することを可能とするセラミックス成形体の新規焼結方法を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)セラミックスの成形体をマイクロ波加熱により焼結する方法であって、セラミックス粉末を成形してなる成形体を、周波数300MHz〜30GHzのマイクロ波領域で焼結する際に、加熱補助材料としてSiC板を用いて焼結することを特徴とするセラミックスの焼結方法。
(2)電気抵抗値が10 cm・Ω〜10 cm・ΩのSiC板を用いる、前記(1)に記載の焼結方法。
(3)成形体を上下方向に挟むように、又は成形体を取り囲むようにSiC板を配置する、前記(1)に記載の焼結方法。
(4)成形体とSiC板の間に、該成形体及びSiCとの反応性が乏しい材料からなるセッターを入れて焼結を行う、前記(1)に記載の焼結方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、セラミックスの成形体をマイクロ波加熱により焼結する方法であって、無機セラミックス粉末からなる成形体を、周波数300MHz〜30GHzのマイクロ波領域で焼結する際に、加熱補助として、SiC板を用いて焼結することを特徴とするものである。本発明は、セラミックスの緻密化プロセスに大きく貢献するものである。本発明で焼結の対象とするセラミックスとしては、例えば、酸化物、窒化物、炭化物が例示され、具体的には、例えば、酸化亜鉛、アルミナ等の酸化物セラミックス、窒化ケイ素等の非酸化物セラミックスが例示されるが、これらに制限されるものではなく、適宜のセラミックスを対象とすることができる。本発明の方法は、セラミックスの種類を問わず全てのセラミックスの成形体の焼結に適用することができる。
【0015】
本発明では、対象とするセラミックスを、例えば、型ダイスに任意の形状を付与し、CIP成形した成形体をSiC板で挟みマイクロ波を照射して焼結することにより、緻密な焼結体が得られる。この場合、成形手段及び方法は、特に制限されない。このように、本発明は、SiC板により補助的に加熱することでマイクロ波を吸収しやすくし、短時間で、緻密な焼結体を得ることを可能とする方法であり、試料の種類、大きさ、及び厚さ等に何ら制約を受けないものである。
【0016】
本発明で用いるマイクロ波は、周波数300MHz〜30GHzである。これらの周波数のマイクロ波加熱装置としては、好適には、例えば、家庭用電子レンジに代表される、安価で小規模な装置が例示されるが、これらに制限されるものではなく、任意のマイクロ波加熱装置を使用することができる。したがって、本発明は、これらの装置を利用して容易にマイクロ波焼結が行えるという利点を有する。本発明では、セラミックスの成形体を上記マイクロ波領域で焼結する際に、加熱補助手段としてSiC板を用いるが、このSiC板としては、好適には、例えば、相対密度が90〜100%、電気抵抗値が10cm・Ω〜10 cm・ΩのSiC板があげられるが、これらに制限されるものではなく、SiCを構成要素として含む、上記と同効のものであれば同様に使用することができる。このSiCは、他のセラミックス材料と比較して、低温からマイクロ波を吸収するとともに、発熱体としても作用する。また、このSiCは、少なくとも相対密度が90%以上あれば補助加熱材料としての機能を果たし、その相対密度が高くなるほど補助加熱材料として好適である。
【0017】
本発明において、上記SiC板は、いわゆる狭義の板状体に限らず、適宜の形状を採ることが可能であり、その形状は特に制限されない。また、上記SiC板の配置方法としては、被焼結試料を覆う形が望ましく、試料が板状の場合、SiC板は、上下方向から試料を挟む形でも十分機能を果たす。この場合、SiC板の配置方法としては、図1のA〜Cに示すように、例えば、試料を上下に挟む方法(図1のA)、試料の側面を挟む方法(図1のB)、試料を取り囲むように配置する方法(図1のC)などが例示され、好ましくは、試料を上下方向から挟む方法、試料を取り囲むように配置する方法が用いられる。また、本発明では、焼結の過程で、試料とSiC板が反応しないように、試料とSiC板の間に、試料及びSiCとの反応性が乏しい材料からなるセッターを入れることが好ましい。例えば、試料が酸化亜鉛のような酸化物の場合、アルミナのような、試料との反応性が乏しい酸化物セラミックスの薄板をセッターとして挟み込むことが望ましい。これにより、加熱されたSiCと反応しやすいセラミックス材料でも十分に焼結可能となる。セッターの形態及び配置方法は特に制限されない。
【0018】
上述のように、本発明は、加熱炉の中に、セラミックスからなる成形体とマイクロ波吸収率の大きい材料であるSiC板を同時に挿入し、SiC板に効率よくマイクロ波を集めてこれを発熱体として使用することによって補助加熱を行うと同時に、セラミックスの誘電率の変化を誘起して、目的のセラミックスの焼結を同時に行なうことを特徴とするセラミックスの成形体の焼結方法である。また、本発明では、上記焼結の際に使用するSiC板は、電気抵抗値の高いものを使用すること、成形体を取り囲むようにSiC板を配置することが重要である。それにより、短時間、かつ低温(電気炉を用いる場合と比べて100℃程度の低温)で、緻密な焼結体を作製することが可能となる。
【0019】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例1
微粒子の酸化亜鉛粉末(平均粒子径:0.02μm)をペレット状に成形し、それをマイクロ波焼結用の試料とした。また、SiC板として、密度が98.2%、電気抵抗値が10Mcm・Ω、B Cを添加して焼結したグレードのものを用いた。上記試料をこのSi板で図1のAのように挟み、これにマイクロ波(2.45GHz、160W10minの後、320W20min)を照射して焼結した。得られた焼結体の密度をアルキメデス法で測定したところ、見かけ密度は5.49g/cm であった。理論密度が5.67g/cm であることを考慮すると、相対密度(見かけ密度/ 理論密度)は96.8%であった。
【0020】
比較例として、SiC板で試料を挟まないで上記と同様の条件で試料を処理したところ、試料は全く焼結されておらず、ペレットの大きさと重量から求めた密度は2.50g/cm であり、相対密度は44.1%であった。
これらの結果から、SiCで試料を挟むことによって、試料がマイクロ波を吸収しやすくなり、マイクロ波の特徴である短時間、かつ低温の条件で、緻密な焼結体を作製できることが確認された。
【0021】
実施例2
上記実施例1と同様に、微粒子の酸化亜鉛粉末をペレット状に成形した成形体と、実施例1で用いたSiC板と同じSiC板を使用し、このSiC板を、図1のAのような上下方向、図1のBのような側面方向、図1のCのような試料を取り囲む方法により夫々配置し、試料にマイクロ波を照射し、その密度の変化を調べた。マイクロ波は2.45GHz、160W10minの後、320W40min照射した。その結果、見かけ密度は、SiC板の配置が上下方向では5.48g/cm 、側面方向では5.45g/cm 、取り囲む方法では5.46g/cm であった。理論密度が5.67g/cm であることを考慮すると、夫々の相対密度(見かけ密度/理論密度)は、上下方向では96.7%、側面方向では96.0%、取り囲む方法では96.2%であった。
これらの結果から、SiC板の配置方法は、図1のAのような上下方向の配置が好ましいことがわかった。
【0022】
実施例3
上記実施例1と同様に、微粒子の酸化亜鉛粉末をペレット状に成形した成形体を、2種類のSiC板(電気抵抗値10 cm・Ω、密度98.2%、及び電気抵抗値200cm・Ω、密度90.6%)で、図1のAのように挟んで、マイクロ波(2.45GHz、160W10minの後、320W40min)で焼結し、得られた焼結体の密度をアルキメデス法で測定した。その結果、SiCの電気抵抗値が高い場合には、見かけ密度は5.49g/cm 、SiCの電気抵抗値が低い場合には、見かけ密度は5.38g/cm であり、夫々の相対密度は96.8%と94.9%であり、SiCの電気抵抗値が高い方が好ましいことがわかった。
【0023】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、セラミックスの成形体をマイクロ波領域で焼結する際に、加熱補助としてSiC板を用いて焼結する方法に係るものであり、本発明により、1)周波数300MHz〜30GHzのマイクロ波でセラミックスを焼結する際に、SiC板で試料を挟むことにより、緻密なセラミックスの焼結体を得ることができる、2)電気抵抗値の高いSiC板を用いること、及び試料を取り囲むようにSiC板を配置することで、より緻密な焼結体を作製することが可能となる、3)SiC板で挟むことによって、焼結に時間がかかっていた焼結体の焼結を短時間で行うこと可能となる、という格別の効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】坩堝内の試料の配置の例を示す(A:上下方向の配置、B:側面方向の配置、C:試料を取り囲む配置)。

Claims (4)

  1. セラミックスの成形体をマイクロ波加熱により焼結する方法であって、セラミックス粉末を成形してなる成形体を、周波数300MHz〜30GHzのマイクロ波領域で焼結する際に、加熱補助材料としてSiC板を用いて焼結することを特徴とするセラミックスの焼結方法。
  2. 電気抵抗値が10 cm・Ω〜10 cm・ΩのSiC板を用いる、請求項1に記載の焼結方法。
  3. 成形体を上下方向に挟むように、又は成形体を取り囲むようにSiC板を配置する、請求項1に記載の焼結方法。
  4. 成形体とSiC板の間に、該成形体及びSiCとの反応性が乏しい材料からなるセッターを入れて焼結を行う、請求項1に記載の焼結方法。
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