【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶解ダスト由来の金属成分を含有するリン酸イオン除去用ハイドロタルサイト様化合物(層状複水酸化物)と、その製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境保全や資源の有効利用の観点から、従来は廃棄処分されていた各種副生物の再資源化や再利用が図られている。鋳物産業の分野でも、鋳造過程で発生するダスト等を他用途に転用する技術が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)
【0003】
【特許文献1】
特公昭52−22357号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、鋳鉄用溶解炉から蒸気と共に廃出される金属類を回収して得た溶解ダストが、鉄や亜鉛等の有用金属を多量に含有することに着目し、その有効利用の一端として、溶解ダストからのハイドロタルサイト様化合物の製造を試みたものである。そして、鋭意研究を重ねた結果、この製造により得られたハイドロタルサイト様化合物がリン酸イオンを選択的に除去できるということを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明の目的は、溶解ダスト由来の金属成分を含有するリン酸イオン除去用ハイドロタルサイト様化合物(層状複水酸化物)と、そのようなリン酸イオン除去用ハイドロタルサイト様化合物の製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の内容に言及する前に、ハイドロタルサイト様化合物の一般的な化学構造と、その特性及び有用性について簡単に説明する。
【0006】
ハイドロタルサイト様化合物とは、層状複水酸化物(LDH)とも呼ばれ、組成式が[M2+ 1−xM3+ x(OH)2] [An− x/n・nH2O]で表される化合物の総称である(M2+:2価金属、M3+:3価金属、An−:n価のアニオン)。ハイドロタルサイト様化合物は、水酸化物層からなるホスト層と、陰イオン及び層間水からなるゲスト層とが交互に積層する構造を持つ。ホスト層では2価の金属イオンを3価の金属イオンが置換することにより、ホスト層全体として正電荷を帯びており、この正電荷をゲスト層の負電荷(陰イオン)が補償する。3価金属イオンによる2価金属イオンの置換範囲は、ほぼ0.20≦x≦0.33(M2+:M3+=4:1〜2:1)とされている。
【0007】
ハイドロタルサイト様化合物は、層間の陰イオンをインターカレーションによって交換できることから、陰イオン交換体として知られている。つまり、この性質を利用すれば、ハイドロタルサイト様化合物を各種陰イオンの交換機能又は補足機能を有する機能性物質として種々の用途に利用できる。ちなみに「インターカレーション」とは、層状化合物において層間の弱い化学結合を破って、様々な原子、分子あるいはイオンが層間に挿入される反応をいう。ハイドロタルサイト様化合物におけるインターカレーション反応の大きな特徴は、反応前後で結晶の基本構造が保持されることにある。即ち、インターカレーションによりゲスト化合物が交換又は新たに挿入されても、ホスト層自身は全く変化せず、全体として同じ層状構造を保ち続ける。これは、ホスト物質の性質を維持したままゲスト物質により様々な機能を付与できることを意味し、材料設計の自由度を広げるという点で注目に値する。
【0008】
ハイドロタルサイト様化合物でのインターカレーションの方法としては、「イオン交換法」と「再生法」とが知られている。ハイドロタルサイト様化合物の多くはイオン性の結晶であり、本来的に外部の陰イオンが層間にインターカレーションし易い。このような性質を利用して当初の陰イオンを別の陰イオンに交換する方法が「イオン交換法」である。一般に、イオンの電荷密度(具体的にはイオンの価数及びイオン半径の大小によって決まる)が高いものほど、層間へインターカレーションし易いと言われているが、ホスト層のイオン環境によってイオン交換の傾向性は変わり得る。
【0009】
他方、ハイドロタルサイト様化合物を熱処理すると、層間の陰イオン及び層間水が脱離して層状複水酸化物から複酸化物に変化する。この複酸化物化した物質を水溶液中に戻すと、水溶液中の水及び陰イオンを取り込んでハイドロタルサイト様化合物として再生する。このような性質を利用して別の陰イオンをインターカレーションする方法が「再生法」である。イオン交換法では、交換可能なイオンの選択性が問題になるが、再生法によれば、イオン交換の選択性に影響されることなく陰イオンのインターカレーションを行えるという利点がある。
【0010】
さて、本発明のリン酸イオン除去用ハイドロタルサイト様化合物は、ホスト層としての水酸化物層を構成する金属の一部又は全部が、鋳鉄用溶解炉から廃出された溶解ダストに由来する金属であることを特徴とするものである(請求項1)。また、ホスト層としての水酸化物層を構成する金属の一部又は全部が、鋳鉄用溶解炉から廃出された溶解ダストに由来する金属とマグネシウムとであり、前記水酸化物層間のゲスト層を構成する陰イオンが、OH−、CO3 2−及びCl−のうちの少なくとも一種を含むことを特徴とするものである(請求項2)。より好ましくは、鋳鉄用溶解炉から廃出された溶解ダストに由来する前記金属は、少なくとも鉄及び亜鉛を含むことを特徴とするものである(請求項3)。更に好ましくは、請求項1〜請求項3において、ホスト層としての水酸化物層を構成する金属の一部として、2価金属であるマグネシウムを含むことを特徴とするリン酸イオン除去用ハイドロタルサイト様化合物である。
【0011】
本発明のハイドロタルサイト様化合物では、水中のリン酸イオンをインターカレーションによって多量に取り込むことができることが実験により確認されている。また、本発明のハイドロタルサイト様化合物は、水中からリン酸イオンを選択的に(優先的に)除去するということも実験により確認されている。本件化合物におけるリン酸イオンとのイオン交換能力は、本発明のリン酸イオン除去用ハイドロタルサイト様化合物が廃棄物である溶解ダストを原料とするものであるにもかかわらず、標準的な試薬から合成されたハイドロタルサイト様化合物のイオン交換能力よりも優れたものである。即ち、本発明のハイドロタルサイト様化合物は、優れたリン酸イオン除去性能を有し、例えば海水や湖水の富栄養化で問題となっているリン酸イオンの除去に役立てることができる。
【0012】
次に、本発明に係る溶解ダスト由来の金属成分を含有するリン酸イオン除去用ハイドロタルサイト様化合物の製造方法について説明する。
【0013】
本発明のリン酸イオン除去用ハイドロタルサイト様化合物の製造方法は、鋳鉄用溶解炉から廃出された溶解ダストを酸処理して酸可溶の金属成分を抽出する抽出工程と、前記酸可溶の金属成分を含む溶液のpHを調整して生成物を沈殿させる沈殿生成工程とを備えることを特徴とするものである(請求項4)。
【0014】
この方法によれば、溶解ダストを酸処理して得られた酸可溶の金属成分を含む溶液のpHを調整することで、層状複水酸化物としてのリン酸イオン除去用ハイドロタルサイト様化合物を沈殿生成することができる。なお、酸処理に用いる酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸が挙げられる。また、溶液のpHを調整するものとして、水酸化ナトリウム(NaOH)や炭酸ナトリウム(Na2CO3)等のアルカリを例示できる。
【0015】
また、本発明のリン酸イオン除去用ハイドロタルサイト様化合物の製造方法は、鋳鉄用溶解炉から廃出された溶解ダストを酸処理して酸可溶の金属成分を抽出する抽出工程と、前記酸可溶の金属成分を含む溶液に2価金属塩を配合すると共にその溶液のpHを調整して生成物を沈殿させる沈殿生成工程とを備えることを特徴とするものである(請求項5)。
【0016】
この方法によれば、溶解ダストを酸処理して得られた酸可溶の金属成分と、事後的に配合される2価金属塩とによって金属水酸化物を構成し、溶液のpHを調整することで層状複水酸化物としてのリン酸イオン除去用ハイドロタルサイト様化合物を沈殿生成することができる。なお、酸処理に用いる酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸が挙げられる。また、前記酸可溶の金属成分を含む溶液に配合する2価金属塩としては、マグネシウム含有塩が好ましく、マグネシウム含有塩としては、塩化マグネシウム六水和物[MgCl2・6H2O〕やドロマイト[CaMg(CO3) 2]を例示することができる。溶液のpHを調整するものとして、水酸化ナトリウム(NaOH)や炭酸ナトリウム(Na2CO3)等のアルカリを例示できる。
【0017】
上記製造方法において、前記酸可溶の金属成分の一部又は全部を酸化する酸化処理工程を更に備えることは好ましい。溶解ダストを酸処理したときの酸可溶の金属成分には、例えば鉄のように同種金属でも2価金属イオン(Fe2+)と3価金属イオン(Fe3+)とが共存するものがある。このうちの2価金属イオンを酸化して3価金属イオンを得ることが酸化処理の目的である。この酸化処理は、酸化剤を用いた化学処理によることが好ましい。使用可能な酸化剤としては、過酸化水素、過マンガン酸カリウム、クロム酸、重クロム酸類等が挙げられる。
【0018】
上記製造方法に使用される最も好ましい溶解ダストは、少なくとも鉄分及びコークスを溶解炉に装填して1600〜1900℃の温度で溶解し、その溶解炉から鋳鉄と分離して廃出されたダストを収集したものである(請求項6)。
【0019】
ここで、「鉄分」とは、例えば、鉄鉱石、銑鉄、鋼、鋳鉄(珪素含有高炭素鋼)、鉄系の廃材等を広く指し、鉄の供給源となり得る成分という意味である。コークスは鋳鉄における炭素の供給源であり、又、燃焼のための燃料であると共に溶解時の還元剤でもある。溶解炉としては、キュポラ(立円筒形の炉)、熱風キュポラ等の高温燃焼処理するタイプの炉が挙げられる。鉄分及びコークスは、所定の比率で溶解炉内に交互に層状に装填されることが好ましい。
【0020】
溶解炉での溶解温度は1600〜1900℃の範囲であることが好ましく、更に好ましくは1700〜1800℃の範囲である。少なくともこの温度範囲で溶解処理した場合には、ダスト中の鉄成分の酸化度合いが通常よりも高い酸化鉄を有する溶解ダストが得られる。酸化鉄は、酸処理によって2価鉄及び3価鉄イオンを酸可溶成分として提供する。なお、この溶解ダストの含有成分としては、酸化鉄(FeO,Fe2O3等)、並びに、亜鉛(Zn)、珪素(Si)、マンガン(Mn)、カリウム(K)及び硫黄(S)(これらの多くは酸化物として存在する)が挙げられる。
【0021】
尚、このような溶解過程を経て得られる溶解ダストの物理的性質について言及すると、溶解ダストは、走査型電子顕微鏡(SEM)での観察で直径が0.01〜0.5μmの微粒子及びそれらが集合又は溶結した微粒体(両者をあわせて「みかけ粒子」と呼ぶ)によって構成されている。そして、レーザー式粒径分布測定器を用いた測定の結果、全みかけ粒子の90%以上が0.01〜70μmの粒径範囲に分布し、あるいは、そのレーザー式粒径分布測定のデータを解析した際に粒径分布の累積パーセントが50%となる粒径の範囲が1〜20μmとなっているものである。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体例である実施例1及び実施例2、並びに、比較例である試薬合成例1及び試薬合成例2について説明する。
【0023】
(合成原料となる溶解ダスト)
合成原料となる溶解ダストは、鋼、銑鉄及び戻し鉄材等からなる鉄分を100重量部、コークスを11重量部、石灰石を2.3重量部、Fe−Si合金を0.7重量部、Si−Mn合金を0.3重量部、並びに、SiCを0.8重量部、キュポラに装填して1700〜1800℃の温度で溶解し、その際に発生するダストをキュポラに付属する集塵装置で回収して得たものである。この溶解ダストの金属元素成分をエネルギー分散蛍光X線分析装置(島津製作所製EDX−700)で分析したところ、Zn:51.3重量%,Fe:20.8重量%,Si:14.8重量%,Mn:7.8重量%,Ca:2.4重量%,K:1.6重量%,S:0.5重量%,その他の金属元素:0.8重量%という結果が得られた。また、この溶解ダストをSEMで観察したところ、直径が0.1μm程度の球状微粒子及びそれらが集合した微粒体が観察された。これらの微粒子及び微粒体をレーザー式粒径分布測定器で測定したところ、全みかけ粒子の99%以上が粒径0.01〜70μmの範囲に分布するという粒径分布を示した。
【0024】
このように、蛍光X線分析により溶解ダストの主成分は鉄および亜鉛であることがわかった。また、粉末X線回折装置(XRD)(測定条件:CuKα線,40kV,30mA,Niフィルター使用)により、その主結晶相はスピネル型金属酸化物(ZnFe2O4)およびZnOであり、α−SiO2を含むことが確認された。なお、この溶解ダストを塩酸(HCl水溶液)で処理し、その処理液をICP発光分析装置で分析したところ、鉄、亜鉛およびマンガン等の金属可溶成分が溶液中に抽出されることが確認された。
【0025】
(実施例1:溶解ダスト系)
前記溶解ダストを2Nの塩酸で処理して可溶成分を抽出し、その抽出液を1NのNaOH水溶液でpHを7に調整し、1時間攪拌後、24時間静置した。そして、24時間静置後に得られた沈殿物を濾過、水洗、乾燥して生成物を得た。
【0026】
この実施例1の生成物のXRDパターンを図1に示す。このXRDパターンを、JCPDSカードに掲載された典型的なハイドロタルサイト様化合物のXRDパターンと照合することにより、実施例1の生成物がハイドロタルサイト様化合物と同様の結晶構造を持つことが確認された。
【0027】
また、実施例1の生成物を蛍光X線分析にかけたところ、溶解ダストの主成分である鉄および亜鉛が多量に検出された。鉄および亜鉛がそれぞれ、ハイドロタルサイト様化合物のホスト層を構成する3価金属および2価金属として取り込まれたと考えられる。蛍光X線分析ではこの他に、少量のSi,Na,Mn,Al,Clが検出された。塩素については、塩化物イオン(Cl−)としてゲスト層に存在するものと考えられる。なお、pH調整時にNaOH水溶液を用いていることから、ゲスト層には塩化物イオンに加えて水酸化物イオン(OH−)が存在するものと考えられる。
【0028】
(実施例2:Mg−溶解ダスト系)
前記溶解ダストを2Nの塩酸で処理して可溶成分を抽出し、その抽出液にMgCl2・6H2Oを加えると共に1NのNaOH水溶液でpHを10に調整し、1時間攪拌後、24時間静置した。なお、溶解ダストとMgCl2・6H2Oとが重量比で1:1となるようにした。そして、24時間静置後に得られた沈殿物を濾過、水洗、乾燥して生成物を得た。
【0029】
この実施例2の生成物のXRDパターンを図2に示す。このXRDパターンを、JCPDSカードに掲載された典型的なハイドロタルサイト様化合物のXRDパターンと照合することにより、実施例2の生成物がハイドロタルサイト様化合物と同様の結晶構造を持つことが確認された。
【0030】
また、実施例2の生成物を蛍光X線分析にかけたところ、溶解ダストの主成分である鉄および亜鉛が多量に検出された。鉄および亜鉛がそれぞれ、ハイドロタルサイト様化合物のホスト層を構成する3価金属および2価金属として取り込まれたと考えられる。蛍光X線分析ではこの他に、多量のMg、少量のSi,Na,Mn,Al,Clが検出された。塩素については、塩化物イオン(Cl−)としてゲスト層に存在するものと考えられる。なお、pH調整時にNaOH水溶液を用いていることから、ゲスト層には塩化物イオンに加えて水酸化物イオン(OH−)が存在するものと考えられる。
【0031】
(試薬合成例1:Zn−Fe系)
試薬として市販されているZnCl2とFeCl3とを3:1のモル比で混合した溶液を準備し、その溶液を1NのNaOH水溶液でpHを7に調整し、1時間攪拌後、24時間静置した。そして、静置後に得られた沈殿物を濾過、水洗、乾燥して生成物を得た。この生成物のXRDパターンを図3に示す。この生成物の結晶相をXRDにより評価したところ、ハイドロタルサイト様化合物であることが確認された。
【0032】
(試薬合成例2:Mg−Fe系)
試薬として市販されているMgCl2・6H2OとFeCl3とを3:1のモル比で混合した溶液を準備し、その溶液を1NのNaOH水溶液でpHを10に調整し、1時間攪拌後、24時間静置した。そして、静置後に得られた沈殿物を濾過、水洗、乾燥して生成物を得た。この生成物のXRDパターンを図4に示す。この生成物の結晶相をXRDにより評価したところ、ハイドロタルサイト様化合物であることが確認された。
【0033】
(イオン除去性能の評価)
(1)リン酸イオンの除去実験
まず、実験用の水溶液としてリン酸水素二ナトリウム(Na2HPO4)水溶液を準備すると共に、実施例1及び実施例2のハイドロタルサイト様化合物を準備した。この場合、水溶液中のリン酸イオン(PO4 3−)の陰イオン濃度が100ppmとなるように調整した。そして、この水溶液100mlに対して、実施例1及び実施例2のハイドロタルサイト様化合物0.1gをそれぞれ単独で投入し、12時間攪拌後、イオンクロマトグラフによりリン酸イオンのイオン除去量を測定した。
【0034】
その結果、実施例1のハイドロタルサイト様化合物では、リン酸イオンの除去量が1.7(meq/g)であった。一方、実施例2のハイドロタルサイト様化合物では、リン酸イオンの除去量が1.3(meq/g)であった。この実験結果から、実施例1及び実施例2のハイドロタルサイト様化合物は、水溶液中からのリン酸イオンの除去が可能であることがわかる。また、実施例1と実施例2のハイドロタルサイト様化合物の比較により、実施例1のハイドロタルサイト様化合物はリン酸イオンの除去性能に優れていることもわかる。
【0035】
(2)硫酸イオンの除去実験
まず、実験用の水溶液として硫酸ナトリウム(Na2SO4)水溶液を準備すると共に、実施例1及び実施例2のハイドロタルサイト様化合物を準備した。この場合、水溶液中の硫酸イオン(SO4 2−)の陰イオン濃度が100ppmとなるように調整した。そして、この水溶液100mlに対して、実施例1及び実施例2のハイドロタルサイト様化合物0.1gをそれぞれ単独で投入し、12時間攪拌後、イオンクロマトグラフにより硫酸イオンのイオン除去量を測定した。
【0036】
その結果、実施例1のハイドロタルサイト様化合物では、硫酸イオンの除去量が0.06(meq/g)であった。一方、実施例2のハイドロタルサイト様化合物では、硫酸イオンの除去量が0.20(meq/g)であった。この実験結果から、実施例1及び実施例2のハイドロタルサイト様化合物は、微少ではあるが、水溶液中から硫酸イオンの除去が可能であることがわかる。また、実施例1と実施例2のハイドロタルサイト様化合物の比較により、実施例2のハイドロタルサイト様化合物は硫酸イオンの除去性能に優れていることもわかる。
【0037】
(3)リン酸イオン及び硫酸イオンを含有する水溶液中での陰イオン除去実験
まず、実験用の水溶液としてリン酸イオン(PO4 3−)及び硫酸イオン(SO4 2−)を含有するものを準備すると共に、実施例1及び試薬合成例1のハイドロタルサイト様化合物を準備した。この場合、リン酸水素二ナトリウム(Na2HPO4)及び硫酸ナトリウム(Na2SO4)を水に添加して、リン酸イオン及び硫酸イオンの陰イオン濃度がそれぞれ100ppmとなるように調整した。そして、この水溶液100mlに対して、実施例1及び試薬合成例1のハイドロタルサイト様化合物0.1gをそれぞれ単独で投入し、12時間攪拌後、イオンクロマトグラフによりリン酸イオン及び硫酸イオンのイオン除去量を測定した。その結果を図5(実施例1)及び図6(試薬合成例1)に示す。
【0038】
図5に示すように、実施例1のハイドロタルサイト様化合物では、リン酸イオンを1.7(meq/g)除去しており、硫酸イオンを少しも除去していないことがわかる。図6に示すように、試薬合成例1のハイドロタルサイト様化合物では、リン酸イオンを1.4(meq/g)除去しており、硫酸イオンを少しも除去していないことがわかる。図5と図6の比較から、溶解ダストから得られた実施例1のハイドロタルサイト様化合物が示したリン酸イオン除去量は、実施例1に対応するよう試薬から得られた試薬合成例1のハイドロタルサイト様化合物よりも0.3(meq/g)高いことがわかる。また、(1),(2)の実験結果を鑑みると、実施例1及び試薬合成例1のハイドロタルサイト様化合物は、リン酸イオンを選択的に除去するということもわかる。すなわち、これらのハイドロタルサイト様化合物は、水溶液中から硫酸イオンよりもリン酸イオンを優先的に除去できると言える。
【0039】
(4)リン酸イオン、硝酸イオン及び硫酸イオンを含有する水溶液中での陰イオン除去実験
まず、実験用の水溶液としてリン酸イオン(PO4 3−)、硝酸イオン(NO3 −)及び硫酸イオン(SO4 2−)を含有するものを準備すると共に、実施例2及び試薬合成例2のハイドロタルサイト様化合物を準備した。この場合、リン酸水素二ナトリウム(Na2HPO4)、硝酸ナトリウム(NaNO3)及び硫酸ナトリウム(Na2SO4)を水に添加して、リン酸イオン、硝酸イオン及び硫酸イオンの陰イオン濃度がそれぞれ100ppmとなるように調整した。そして、この水溶液100mlに対して、実施例2及び試薬合成例2のハイドロタルサイト様化合物0.1gをそれぞれ単独で投入し、12時間攪拌後、イオンクロマトグラフによりリン酸イオン、硝酸イオン及び硫酸イオンのイオン除去量を測定した。その結果を図7(実施例2)及び図8(試薬合成例2)に示す。
【0040】
図7に示すように、実施例2のハイドロタルサイト様化合物では、リン酸イオンを1.5(meq/g)除去しており、硝酸イオン及び硫酸イオンを少しも除去していないことがわかる。一方、図8に示すように、試薬合成例2のハイドロタルサイト様化合物では、リン酸イオンを1.1(meq/g)、硝酸イオンを0.1(meq)除去しており、硫酸イオンを少しも除去していないことがわかる。
【0041】
図7と図8の比較から、Mg+溶解ダストから得られた実施例2のハイドロタルサイト様化合物が示したリン酸イオン除去量は、実施例2に対応するよう試薬から得られた試薬合成例2のハイドロタルサイト様化合物よりも0.4(meq/g)高いことがわかる。特に、図7と図8の比較では、試薬合成例2のハイドロタルサイト様化合物が硝酸イオンを除去しているのに対し、実施例2のハイドロタルサイト様化合物が全く硝酸イオンを除去していないということが両者の大きな相違点と言えよう。この相違点と(1),(2)の実験結果とは、実施例2のハイドロタルサイト様化合物がリン酸イオンを選択的に除去するということを裏付けるものである。すなわち、実施例2のハイドロタルサイト様化合物は、水溶液中から硝酸イオン及び硫酸イオンよりもリン酸イオンを優先的に除去できると言える。
【0042】
以上の(1)〜(4)実験から、実施例1及び実施例2のハイドロタルサイト様化合物のリン酸イオン除去性能は、試薬から合成した試薬合成例1及び試薬合成例2のハイドロタルサイト様化合物のリン酸イオン除去性能に比べて高く、実施例1のハイドロタルサイト様化合物はトップレベルのリン酸イオン除去性能を示した。このように優れたリン酸イオン除去特性を持つ理由はやはり、ホスト層を構成する金属の一部が鉄及び亜鉛であること、更には溶解ダストに由来するその他の不純物元素が混入していることにあるものと推測される。
【0043】
なお、前記実施例を次のように変更して実施することも可能である。
【0044】
・前記実施例では、pH調整時に水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を用いたが、これに代えて炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液を用いるようにしてもよい。これにより、ゲスト層に炭酸イオン(CO3 2−)を良好な状態で存在させることができるようになる。また、pH調整時にNaOH水溶液とNa2CO3水溶液とを併用するようにしてもよい。
【0045】
・前記実施例の沈殿物に対し、NaOH水溶液やNa2CO3水溶液を加えて、例えば130℃で48時間水熱処理するという工程(水熱合成法)を加えてもよい。
【0046】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、鋳鉄用溶解炉から廃出される溶解ダストを有効利用してリン酸イオン除去用ハイドロタルサイト様化合物を効率的且つ安価に生産することができる。特に、本発明のハイドロタルサイト様化合物は、リン酸イオンを選択的に除去することができる。また、試薬から製造したハイドロタルサイト様化合物と比較して、本発明のハイドロタルサイト様化合物は優れたリン酸イオン除去性能も発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の化合物のXRDパターンを示すX線回折図である。
【図2】実施例2の化合物のXRDパターンを示すX線回折図である。
【図3】試薬合成例1の化合物のXRDパターンを示すX線回折図である。
【図4】試薬合成例2の化合物のXRDパターンを示すX線回折図である。
【図5】実施例1の化合物のイオン除去量を示すグラフである。
【図6】試薬合成例1の化合物のイオン除去量を示すグラフである。
【図7】実施例2の化合物のイオン除去量を示すグラフである。
【図8】試薬合成例2の化合物のイオン除去量を示すグラフである。[0001]
TECHNICAL FIELD OF THE INVENTION
TECHNICAL FIELD The present invention relates to a hydrotalcite-like compound (lamellar double hydroxide) for removing phosphate ions containing a metal component derived from dissolved dust, and a method for producing the same.
[0002]
[Prior art]
In recent years, from the viewpoint of environmental protection and effective use of resources, various by-products that have been conventionally disposed of have been recycled and reused. In the field of the casting industry, various techniques for diverting dust and the like generated in the casting process to other uses have been proposed (for example, see Patent Document 1).
[0003]
[Patent Document 1]
Japanese Patent Publication No. 52-22357
[0004]
[Problems to be solved by the invention]
The present invention focuses on the fact that molten dust obtained by recovering metals discharged together with steam from a melting furnace for cast iron contains a large amount of useful metals such as iron and zinc. An attempt was made to produce a hydrotalcite-like compound from dissolved dust. As a result of intensive studies, they have found that the hydrotalcite-like compound obtained by this production can selectively remove phosphate ions, and have completed the present invention. That is, an object of the present invention is to provide a hydrotalcite-like compound for removing phosphate ions containing a metal component derived from dissolved dust (layered double hydroxide), and a hydrotalcite-like compound for removing such phosphate ions. It is to provide a manufacturing method.
[0005]
[Means for Solving the Problems]
Before referring to the subject matter of the present invention, a brief description of the general chemical structure of a hydrotalcite-like compound and its properties and usefulness is provided.
[0006]
The hydrotalcite-like compound is also called a layered double hydroxide (LDH) and has a composition formula [M2+ 1-xM3+ x(OH)2] [An- x / n・ NH2O] (M2+: Divalent metal, M3+: Trivalent metal, An-: N-valent anion). The hydrotalcite-like compound has a structure in which a host layer composed of a hydroxide layer and a guest layer composed of anions and interlayer water are alternately laminated. In the host layer, the trivalent metal ion replaces the divalent metal ion, so that the host layer has a positive charge as a whole, and the positive charge is compensated by the negative charge (anion) of the guest layer. The replacement range of the divalent metal ion by the trivalent metal ion is approximately 0.20 ≦ x ≦ 0.33 (M2+: M3+= 4: 1 to 2: 1).
[0007]
Hydrotalcite-like compounds are known as anion exchangers because they can exchange anions between layers by intercalation. That is, by utilizing this property, the hydrotalcite-like compound can be used for various uses as a functional substance having a function of exchanging or supplementing various anions. Incidentally, "intercalation" refers to a reaction in a layered compound in which various atoms, molecules or ions are inserted between layers by breaking a weak chemical bond between the layers. A major feature of the intercalation reaction of the hydrotalcite-like compound is that the basic structure of the crystal is maintained before and after the reaction. That is, even if the guest compound is exchanged or newly inserted by the intercalation, the host layer itself does not change at all and keeps the same layered structure as a whole. This means that various functions can be imparted to the guest material while maintaining the properties of the host material, and is notable in that it increases the degree of freedom in material design.
[0008]
As an intercalation method using a hydrotalcite-like compound, an “ion exchange method” and a “regeneration method” are known. Many of the hydrotalcite-like compounds are ionic crystals, and external anions inherently easily intercalate between layers. A method of exchanging an initial anion for another anion utilizing such a property is an “ion exchange method”. Generally, it is said that the higher the charge density of an ion (specifically, determined by the valence of the ion and the magnitude of the ion radius), the easier the intercalation between the layers. However, the ion exchange depends on the ion environment of the host layer. The tendency can vary.
[0009]
On the other hand, when the hydrotalcite-like compound is heat-treated, anions and interlayer water between layers are eliminated, and the layered double hydroxide is changed to a double oxide. When this double-oxidized substance is returned to the aqueous solution, water and anions in the aqueous solution are taken in and regenerated as a hydrotalcite-like compound. A method of intercalating another anion utilizing such a property is a “regeneration method”. In the ion exchange method, the selectivity of exchangeable ions becomes a problem. However, the regeneration method has an advantage that anion intercalation can be performed without being affected by the ion exchange selectivity.
[0010]
Now, the phosphate compound-removing hydrotalcite-like compound of the present invention is such that a part or all of the metal constituting the hydroxide layer as the host layer is derived from the dissolved dust discharged from the melting furnace for cast iron. It is a metal (claim 1). Further, a part or all of the metal constituting the hydroxide layer as the host layer is a metal and magnesium derived from molten dust discharged from the melting furnace for cast iron, and a guest layer between the hydroxide layers. Is an OH−, CO3 2-And Cl−(Claim 2). More preferably, the metal derived from the molten dust discharged from the melting furnace for cast iron includes at least iron and zinc (claim 3). More preferably, the hydrotal for removing phosphate ions according to any one of claims 1 to 3, wherein magnesium as a divalent metal is contained as a part of the metal constituting the hydroxide layer as the host layer. Site-like compound.
[0011]
Experiments have confirmed that the hydrotalcite-like compound of the present invention can take up a large amount of phosphate ions in water by intercalation. Experiments have also confirmed that the hydrotalcite-like compound of the present invention selectively (preferentially) removes phosphate ions from water. The ion exchange capacity of the compound of the present invention with phosphate ions is higher than that of standard reagents, despite the fact that the hydrotalcite-like compound for removing phosphate ions of the present invention is derived from dissolved dust as waste. It is superior to the ion exchange capacity of the synthesized hydrotalcite-like compound. That is, the hydrotalcite-like compound of the present invention has excellent phosphate ion removing performance, and can be used for removing phosphate ions which are a problem in eutrophication of seawater and lake water, for example.
[0012]
Next, a method for producing a hydrotalcite-like compound for removing phosphate ions containing a metal component derived from dissolved dust according to the present invention will be described.
[0013]
The method for producing a hydrotalcite-like compound for removing phosphate ions according to the present invention includes a step of acid-treating dissolved dust discharged from a melting furnace for cast iron to extract an acid-soluble metal component; A precipitation generation step of adjusting the pH of the solution containing the dissolved metal component to precipitate the product (claim 4).
[0014]
According to this method, by adjusting the pH of a solution containing an acid-soluble metal component obtained by treating the dissolved dust with an acid, a hydrotalcite-like compound for removing phosphate ions as a layered double hydroxide Can be precipitated. The acid used for the acid treatment includes, for example, inorganic acids such as hydrochloric acid, sulfuric acid, and nitric acid. In order to adjust the pH of the solution, sodium hydroxide (NaOH) or sodium carbonate (Na2CO3And the like.
[0015]
Further, the method for producing a phosphate ion-removing hydrotalcite-like compound of the present invention includes an extraction step of acid-treating dissolved dust discharged from a melting furnace for cast iron to extract an acid-soluble metal component, A precipitation-forming step of blending a divalent metal salt with the solution containing the acid-soluble metal component and adjusting the pH of the solution to precipitate the product (claim 5). .
[0016]
According to this method, a metal hydroxide is constituted by an acid-soluble metal component obtained by treating the dissolved dust with an acid and a divalent metal salt to be subsequently added, and the pH of the solution is adjusted. As a result, a hydrotalcite-like compound for removing phosphate ions as a layered double hydroxide can be precipitated. The acid used for the acid treatment includes, for example, inorganic acids such as hydrochloric acid, sulfuric acid, and nitric acid. As the divalent metal salt to be added to the solution containing the acid-soluble metal component, a magnesium-containing salt is preferable, and as the magnesium-containing salt, magnesium chloride hexahydrate [MgCl2・ 6H2O] and dolomite [CaMg (CO3)2] Can be exemplified. To adjust the pH of the solution, sodium hydroxide (NaOH) or sodium carbonate (Na2CO3And the like.
[0017]
It is preferable that the production method further includes an oxidation treatment step of oxidizing a part or all of the acid-soluble metal component. The acid-soluble metal component when the dissolved dust is subjected to the acid treatment includes, for example, a divalent metal ion (Fe2+) And trivalent metal ions (Fe3+) Coexist. The purpose of the oxidation treatment is to oxidize divalent metal ions to obtain trivalent metal ions. This oxidation treatment is preferably performed by a chemical treatment using an oxidizing agent. Examples of usable oxidizing agents include hydrogen peroxide, potassium permanganate, chromic acid, and dichromic acids.
[0018]
The most preferable molten dust used in the above-mentioned production method is to load at least iron and coke into a melting furnace and melt at a temperature of 1600 to 1900 ° C., separate from cast iron from the melting furnace and collect waste dust. (Claim 6).
[0019]
Here, “iron” broadly refers to, for example, iron ore, pig iron, steel, cast iron (silicon-containing high carbon steel), iron-based waste material, and the like, and means a component that can be a source of iron. Coke is a source of carbon in cast iron, a fuel for combustion and a reducing agent during melting. Examples of melting furnaces include cupolas (standing cylindrical furnaces), hot-air cupolas, and other types of furnaces that perform high-temperature combustion processing. The iron and coke are preferably loaded alternately in a predetermined ratio into the melting furnace in a layered manner.
[0020]
The melting temperature in the melting furnace is preferably in the range of 1600 to 1900 ° C, more preferably in the range of 1700 to 1800 ° C. When the dissolution treatment is performed at least in this temperature range, a dissolved dust having iron oxide in which the degree of oxidation of the iron component in the dust is higher than usual can be obtained. Iron oxide provides ferrous and ferric ions as acid-soluble components by acid treatment. The components contained in the dissolved dust include iron oxide (FeO, FeO).2O3And zinc (Zn), silicon (Si), manganese (Mn), potassium (K) and sulfur (S), many of which exist as oxides.
[0021]
Incidentally, referring to the physical properties of the dissolved dust obtained through such a dissolving process, the dissolved dust is a fine particle having a diameter of 0.01 to 0.5 μm and a fine particle having a diameter of 0.01 to 0.5 μm as observed by a scanning electron microscope (SEM). It is composed of aggregated or welded fine particles (both are called "apparent particles"). As a result of measurement using a laser type particle size distribution analyzer, 90% or more of all apparent particles are distributed in a particle size range of 0.01 to 70 μm, or data of the laser type particle size distribution measurement is analyzed. In this case, the range of the particle size at which the cumulative percentage of the particle size distribution becomes 50% is 1 to 20 μm.
[0022]
BEST MODE FOR CARRYING OUT THE INVENTION
Hereinafter, Examples 1 and 2 which are specific examples of the present invention, and Reagent Synthesis Examples 1 and 2 which are Comparative Examples will be described.
[0023]
(Dissolved dust used as raw material for synthesis)
Dissolved dust as a synthetic raw material is composed of 100 parts by weight of iron, such as steel, pig iron, and return iron, 11 parts by weight of coke, 2.3 parts by weight of limestone, 0.7 parts by weight of Fe-Si alloy, and Si- 0.3 parts by weight of Mn alloy and 0.8 parts by weight of SiC are charged into a cupola and melted at a temperature of 1700-1800 ° C, and the dust generated at that time is collected by a dust collector attached to the cupola It was obtained. When the metal element component of this dissolved dust was analyzed by an energy dispersive X-ray fluorescence analyzer (EDX-700 manufactured by Shimadzu Corporation), Zn: 51.3% by weight, Fe: 20.8% by weight, Si: 14.8% by weight. %, Mn: 7.8% by weight, Ca: 2.4% by weight, K: 1.6% by weight, S: 0.5% by weight, and other metal elements: 0.8% by weight. . When the dissolved dust was observed by SEM, spherical fine particles having a diameter of about 0.1 μm and fine particles in which the fine particles were aggregated were observed. When these fine particles and fine particles were measured by a laser particle size distribution analyzer, 99% or more of all apparent particles showed a particle size distribution in which the particle size was distributed in a range of 0.01 to 70 μm.
[0024]
Thus, X-ray fluorescence analysis revealed that the main components of the dissolved dust were iron and zinc. The main crystal phase was determined by a powder X-ray diffractometer (XRD) (measurement conditions: CuKα ray, 40 kV, 30 mA, using a Ni filter) so that the spinel-type metal oxide (ZnFe2O4) And ZnO, α-SiO2Was confirmed to be included. The dissolved dust was treated with hydrochloric acid (aqueous HCl solution), and the treated solution was analyzed with an ICP emission spectrometer. As a result, it was confirmed that metal-soluble components such as iron, zinc, and manganese were extracted into the solution. Was.
[0025]
(Example 1: dissolved dust system)
The dissolved dust was treated with 2N hydrochloric acid to extract soluble components, and the extract was adjusted to pH 7 with a 1N aqueous NaOH solution, stirred for 1 hour, and allowed to stand for 24 hours. Then, the precipitate obtained after standing for 24 hours was filtered, washed with water, and dried to obtain a product.
[0026]
The XRD pattern of the product of Example 1 is shown in FIG. By comparing this XRD pattern with the XRD pattern of a typical hydrotalcite-like compound posted on a JCPDS card, it was confirmed that the product of Example 1 had the same crystal structure as the hydrotalcite-like compound. Was done.
[0027]
Further, when the product of Example 1 was subjected to X-ray fluorescence analysis, a large amount of iron and zinc, which were the main components of the dissolved dust, were detected. It is considered that iron and zinc were incorporated as trivalent and divalent metals constituting the host layer of the hydrotalcite-like compound, respectively. In addition, small amounts of Si, Na, Mn, Al, and Cl were detected in the fluorescent X-ray analysis. For chlorine, chloride ion (Cl−) Is considered to exist in the guest layer. Since an aqueous NaOH solution was used at the time of pH adjustment, hydroxide ions (OH−) Is considered to exist.
[0028]
(Example 2: Mg-dissolved dust system)
The dissolved dust is treated with 2N hydrochloric acid to extract soluble components.2・ 6H2O was added and the pH was adjusted to 10 with a 1N aqueous solution of NaOH. After stirring for 1 hour, the mixture was allowed to stand for 24 hours. In addition, dissolved dust and MgCl2・ 6H2O was adjusted to be 1: 1 by weight. Then, the precipitate obtained after standing for 24 hours was filtered, washed with water, and dried to obtain a product.
[0029]
The XRD pattern of the product of Example 2 is shown in FIG. By comparing this XRD pattern with the XRD pattern of a typical hydrotalcite-like compound posted on a JCPDS card, it was confirmed that the product of Example 2 had the same crystal structure as the hydrotalcite-like compound Was done.
[0030]
Further, when the product of Example 2 was subjected to X-ray fluorescence analysis, a large amount of iron and zinc, which were the main components of the dissolved dust, were detected. It is considered that iron and zinc were incorporated as trivalent and divalent metals constituting the host layer of the hydrotalcite-like compound, respectively. In addition, a large amount of Mg and small amounts of Si, Na, Mn, Al, and Cl were detected in the fluorescent X-ray analysis. For chlorine, chloride ion (Cl−) Is considered to exist in the guest layer. Since an aqueous NaOH solution was used at the time of pH adjustment, hydroxide ions (OH−) Is considered to exist.
[0031]
(Reagent synthesis example 1: Zn-Fe system)
ZnCl commercially available as a reagent2And FeCl3Was prepared at a molar ratio of 3: 1, and the solution was adjusted to pH 7 with a 1N aqueous solution of NaOH, stirred for 1 hour, and allowed to stand for 24 hours. Then, the precipitate obtained after standing was filtered, washed with water, and dried to obtain a product. The XRD pattern of this product is shown in FIG. When the crystal phase of this product was evaluated by XRD, it was confirmed that the product was a hydrotalcite-like compound.
[0032]
(Reagent synthesis example 2: Mg-Fe system)
MgCl commercially available as a reagent2・ 6H2O and FeCl3Was prepared at a molar ratio of 3: 1, and the solution was adjusted to pH 10 with a 1N aqueous solution of NaOH, stirred for 1 hour, and allowed to stand for 24 hours. Then, the precipitate obtained after standing was filtered, washed with water, and dried to obtain a product. The XRD pattern of this product is shown in FIG. When the crystal phase of this product was evaluated by XRD, it was confirmed that the product was a hydrotalcite-like compound.
[0033]
(Evaluation of ion removal performance)
(1) Phosphate ion removal experiment
First, disodium hydrogen phosphate (Na) was used as an aqueous solution for experiments.2HPO4A) An aqueous solution was prepared, and the hydrotalcite-like compounds of Examples 1 and 2 were prepared. In this case, the phosphate ion (PO4 3-) Was adjusted so that the anion concentration became 100 ppm. Then, 0.1 g of each of the hydrotalcite-like compounds of Examples 1 and 2 was independently added to 100 ml of this aqueous solution, and after stirring for 12 hours, the amount of phosphate ion removed was measured by ion chromatography. did.
[0034]
As a result, in the hydrotalcite-like compound of Example 1, the removal amount of phosphate ions was 1.7 (meq / g). On the other hand, in the hydrotalcite-like compound of Example 2, the removal amount of phosphate ions was 1.3 (meq / g). These experimental results show that the hydrotalcite-like compounds of Examples 1 and 2 can remove phosphate ions from an aqueous solution. In addition, comparison of the hydrotalcite-like compounds of Example 1 and Example 2 shows that the hydrotalcite-like compound of Example 1 has excellent phosphate ion removal performance.
[0035]
(2) Sulfate ion removal experiment
First, sodium sulfate (Na) was used as an aqueous solution for experiments.2SO4A) An aqueous solution was prepared, and the hydrotalcite-like compounds of Examples 1 and 2 were prepared. In this case, the sulfate ion (SO4 2-) Was adjusted so that the anion concentration became 100 ppm. Then, 0.1 g of each of the hydrotalcite-like compounds of Examples 1 and 2 was independently added to 100 ml of the aqueous solution, and after stirring for 12 hours, the amount of sulfate ion removed was measured by ion chromatography. .
[0036]
As a result, in the hydrotalcite-like compound of Example 1, the removal amount of sulfate ion was 0.06 (meq / g). On the other hand, in the hydrotalcite-like compound of Example 2, the removal amount of sulfate ion was 0.20 (meq / g). From the experimental results, it can be seen that the hydrotalcite-like compounds of Examples 1 and 2 are capable of removing sulfate ions from the aqueous solution, albeit minutely. In addition, a comparison of the hydrotalcite-like compounds of Example 1 and Example 2 shows that the hydrotalcite-like compound of Example 2 has excellent sulfate ion removal performance.
[0037]
(3) Anion removal experiment in aqueous solution containing phosphate and sulfate ions
First, phosphate ions (PO4 3-) And sulfate ions (SO4 2-) Was prepared, and the hydrotalcite-like compounds of Example 1 and Reagent Synthesis Example 1 were prepared. In this case, disodium hydrogen phosphate (Na2HPO4) And sodium sulfate (Na2SO4) Was added to water to adjust the concentration of phosphate ions and sulfate ions to be 100 ppm, respectively. Then, 0.1 g of the hydrotalcite-like compound of Example 1 and Reagent Synthesis Example 1 was independently added to 100 ml of this aqueous solution, and the mixture was stirred for 12 hours, and then ionized with phosphate ion and sulfate ion by ion chromatography. The removal amount was measured. The results are shown in FIG. 5 (Example 1) and FIG. 6 (Reagent synthesis example 1).
[0038]
As shown in FIG. 5, in the hydrotalcite-like compound of Example 1, phosphate ions were removed by 1.7 (meq / g), and it was found that sulfate ions were not removed at all. As shown in FIG. 6, in the hydrotalcite-like compound of Reagent Synthesis Example 1, phosphate ions were removed by 1.4 (meq / g), and no sulfate ions were removed. From the comparison between FIG. 5 and FIG. 6, the amount of phosphate ions removed by the hydrotalcite-like compound of Example 1 obtained from the dissolved dust was the same as that of Example 1 obtained from the reagent. It can be seen that this is 0.3 (meq / g) higher than that of the hydrotalcite-like compound. Also, in view of the experimental results of (1) and (2), it can be seen that the hydrotalcite-like compounds of Example 1 and Reagent Synthesis Example 1 selectively remove phosphate ions. That is, it can be said that these hydrotalcite-like compounds can remove phosphate ions from aqueous solution preferentially over sulfate ions.
[0039]
(4) Anion removal experiment in aqueous solution containing phosphate, nitrate and sulfate ions
First, phosphate ions (PO4 3-), Nitrate ion (NO3 −) And sulfate ions (SO4 2-) Was prepared, and the hydrotalcite-like compounds of Example 2 and Reagent Synthesis Example 2 were prepared. In this case, disodium hydrogen phosphate (Na2HPO4), Sodium nitrate (NaNO3) And sodium sulfate (Na2SO4) Was added to water to adjust the concentrations of the anions of the phosphate ion, the nitrate ion and the sulfate ion to 100 ppm, respectively. Then, 0.1 g of the hydrotalcite-like compound of Example 2 and Reagent Synthesis Example 2 was independently added to 100 ml of the aqueous solution, and after stirring for 12 hours, phosphate ion, nitrate ion and sulfuric acid were added by ion chromatography. The amount of removed ions was measured. The results are shown in FIG. 7 (Example 2) and FIG. 8 (Reagent synthesis example 2).
[0040]
As shown in FIG. 7, in the hydrotalcite-like compound of Example 2, phosphate ions were removed by 1.5 (meq / g), and it was found that nitrate ions and sulfate ions were not removed at all. . On the other hand, as shown in FIG. 8, in the hydrotalcite-like compound of Reagent Synthesis Example 2, phosphate ions were removed by 1.1 (meq / g) and nitrate ions were removed by 0.1 (meq). Is not removed at all.
[0041]
From the comparison between FIG. 7 and FIG. 8, the amount of phosphate ions removed by the hydrotalcite-like compound of Example 2 obtained from Mg + dissolved dust was the same as that of Example 2 in the synthesis of the reagent obtained from the reagent. It turns out that it is 0.4 (meq / g) higher than the hydrotalcite-like compound of No. 2. In particular, in the comparison between FIGS. 7 and 8, the hydrotalcite-like compound of Reagent Synthesis Example 2 removed nitrate ions, whereas the hydrotalcite-like compound of Example 2 completely removed nitrate ions. The absence of these is a major difference between the two. This difference and the experimental results of (1) and (2) support that the hydrotalcite-like compound of Example 2 selectively removes phosphate ions. That is, it can be said that the hydrotalcite-like compound of Example 2 can remove phosphate ions from aqueous solution preferentially over nitrate ions and sulfate ions.
[0042]
From the above experiments (1) to (4), the phosphate removal performance of the hydrotalcite-like compounds of Examples 1 and 2 was determined by the hydrotalcite of Reagent Synthesis Examples 1 and 2 synthesized from the reagents. The hydrotalcite-like compound of Example 1 exhibited a top-level phosphate ion-removing performance as compared with the phosphate ion-removing performance of the like-like compound. The reason for having such excellent phosphate ion removal characteristics is that part of the metal constituting the host layer is iron and zinc, and that other impurity elements derived from dissolved dust are mixed. It is presumed that there is.
[0043]
It is to be noted that the above-described embodiment can be modified and implemented as follows.
[0044]
In the above embodiment, an aqueous solution of sodium hydroxide (NaOH) was used at the time of pH adjustment.2CO3) An aqueous solution may be used. As a result, carbonate ions (CO3 2-) Can be present in a good condition. In addition, NaOH aqueous solution and Na2CO3An aqueous solution may be used in combination.
[0045]
NaOH aqueous solution and Na2CO3A step (hydrothermal synthesis method) of adding an aqueous solution and performing a hydrothermal treatment at 130 ° C. for 48 hours, for example, may be added.
[0046]
【The invention's effect】
As described above in detail, according to the present invention, a hydrotalcite-like compound for removing phosphate ions can be efficiently and inexpensively produced by effectively using molten dust discharged from a melting furnace for cast iron. In particular, the hydrotalcite-like compound of the present invention can selectively remove phosphate ions. Further, as compared with the hydrotalcite-like compound produced from the reagent, the hydrotalcite-like compound of the present invention also exhibits excellent phosphate ion removal performance.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is an X-ray diffraction pattern showing the XRD pattern of the compound of Example 1.
FIG. 2 is an X-ray diffraction pattern showing the XRD pattern of the compound of Example 2.
FIG. 3 is an X-ray diffraction diagram showing an XRD pattern of the compound of Reagent Synthesis Example 1.
FIG. 4 is an X-ray diffraction diagram showing an XRD pattern of the compound of Reagent Synthesis Example 2.
FIG. 5 is a graph showing the ion removal amount of the compound of Example 1.
FIG. 6 is a graph showing the ion removal amount of the compound of Reagent Synthesis Example 1.
FIG. 7 is a graph showing the ion removal amount of the compound of Example 2.
FIG. 8 is a graph showing the ion removal amount of the compound of Reagent Synthesis Example 2.