JP2004166478A - 駆動機構およびこれを備えた装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】駆動力の低下を防止して被駆動体の移動速度を変更できる駆動機構およびこれを備えた装置を提供すること。
【解決手段】圧電素子22を備えた振動体2を、被駆動体100に対して近接離間方向にスライド可能な支持部材31に固定する。支持部材31にばね32の一端を固定し、その他端を偏心ピン33の側面に当接させる。偏心ピン33を回動させると、ばね32のばね力が変化して凸部23の被駆動体100に対する当接力が変化し、被駆動体100の移動速度が変更される。振動体2を連続的に駆動しながら当接力を調整するので、振動体2の停止、振動開始に伴う不安定な振動状態がなく、被駆動体100の駆動力の低下を防止できる。
【選択図】図1
【解決手段】圧電素子22を備えた振動体2を、被駆動体100に対して近接離間方向にスライド可能な支持部材31に固定する。支持部材31にばね32の一端を固定し、その他端を偏心ピン33の側面に当接させる。偏心ピン33を回動させると、ばね32のばね力が変化して凸部23の被駆動体100に対する当接力が変化し、被駆動体100の移動速度が変更される。振動体2を連続的に駆動しながら当接力を調整するので、振動体2の停止、振動開始に伴う不安定な振動状態がなく、被駆動体100の駆動力の低下を防止できる。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、駆動機構およびこれを備えた装置に関する。より詳しくは、圧電素子を備えた振動体を被駆動体に当接して、振動体の振動によって被駆動体を駆動する駆動機構およびこの駆動機構を備えた、例えば液体吐出装置などの装置に関する。
【0002】
【背景技術】
近年、圧電素子を備えた振動体を振動させることによって被駆動体を駆動する駆動機構が開発されている。このような駆動機構において、被駆動体の移動速度を調整する方法として、振動体の圧電素子にパルス電圧を連続的あるいは断続的に印加することによって調整する方法がある(例えば特許文献1)。この方法では、被駆動体を高速で移動させる場合には振動体にパルス電圧を連続的に印加して振動させる。また、被駆動体を低速で移動させる場合には振動体にパルス電圧を連続的に印加した後所定時間供給を停止する。このように、振動体にパルス電圧を断続的に印加することによって被駆動体を断続的に駆動し、全体として被駆動体の平均移動速度を所望の速度にする。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−356071号公報 (第6−8頁)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このように振動体にパルス電圧を断続的に印加すると、振動体が停止している状態から振動を開始する初期には振動状態が不安定となり、被駆動体に良好に動力伝達できず、駆動力の低下を招いてしまう。特に、被駆動体が回転体の場合では、被駆動体は慣性によって回転し続けようとするので、振動体が停止している時に被駆動体との接触部分に摩擦力がかかり、回転トルクを低下させてしまう。また、この時両者の接触部分で摩耗が発生し、耐久性の向上が望めない。
【0005】
本発明の目的は、駆動力の低下を防止して被駆動体の移動速度を変更できる駆動機構およびこれを備えた装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の駆動機構は、圧電素子を備えた振動体を被駆動体に当接して、振動体の振動によって被駆動体を駆動する駆動機構において、振動体の被駆動体に対する当接力を調整する当接力調整手段を備えていることを特徴とする。
この発明によれば、当接力調整手段によって振動体の被駆動体に対する当接力が調整されることにより、振動体の被駆動体に対する駆動力が変更され、被駆動体の移動速度が変更される。振動体の被駆動体に対する当接力を調整することで駆動力を変更するので、振動体を断続的に振動させる必要がなく、振動体の振動状態が安定し、駆動力の低下が防止される。
【0007】
本発明では、振動体は、その先端が略楕円軌道を描くとともに、この略楕円軌道の一部において被駆動体に当接され、振動体および被駆動体の摩擦力によって被駆動体を駆動することが望ましい。
この発明によれば、振動体が略楕円軌道の一部で被駆動体と接触して、振動体の軌道の方向に被駆動体を移動させる。振動体が略楕円軌道を描くので、振動体の先端が被駆動体の移動方向と反対方向に移動する際には被駆動体との接触力が小さくなり、駆動力の低下がより一層防止される。またこれにより、振動体の先端および被駆動体の摩耗が軽減され駆動機構の耐久性が向上する。特に、被駆動体が回転体の場合では、被駆動体の慣性力を妨げる方向の力が軽減されるので有用である。
【0008】
本発明では、当接力調整手段は、当接力が手動で調整可能に設けられていることが望ましい。
この発明によれば、当接力が手動で調整されるので、当接力調整手段の構成が簡単になる。よって、駆動機構のメンテナンスが容易になり、製造コストが安価になる。
【0009】
本発明では、当接力調整手段は、当接力が自動で調整可能に設けられていることが望ましい。
この発明によれば、当接力の調整が自動で行われるので、被駆動体の移動中にも振動体の被駆動体に対する当接力が動的に調整可能となり、移動速度の柔軟な調整が可能となる。
【0010】
本発明では、被駆動体は回転体であり、振動体は被駆動体の内周側から当接されていることが望ましい。
この発明では、被駆動体が回転体なので、移動時、つまり回転時には被駆動体は慣性力によって回転を維持しようとする。この時にも振動体は連続で振動するので、従来とは異なり振動体が停止状態で被駆動体に接触して、被駆動体の回転トルクを減少させることがない。また、振動体が回転体の被駆動体の内周側から当接されるので、振動体が被駆動体の回転半径内に収納され、駆動機構の小型化が促進される。
【0011】
本発明では、被駆動体は回転体であり、振動体は被駆動体の外周側から当接されていることが望ましい。
この発明では、被駆動体が回転体なので、移動時、つまり回転時には被駆動体は慣性力によって回転を維持しようとする。この時にも振動体は連続で振動するので、従来とは異なり振動体が停止状態で被駆動体に接触して、被駆動体の回転トルクを減少させることがない。また、振動体が被駆動体の外周側から当接されるので、被駆動体および振動体を平面的に配置することが可能となり、駆動機構の薄型化が促進される。
【0012】
本発明では、当接力調整手段は、振動体の被駆動体に対する当接力を無段階に調整可能に設けられていることが望ましい。
この発明によれば、当接力が無段階に調整可能に構成されているので、被駆動体の移動速度が無段階に設定可能となり、移動速度の微調整も簡単になる。
【0013】
本発明では、当接力調整手段は、振動体を支持する支持部材と、この支持部材を被駆動体に対して近接離間可能に支持する固定体と、一端が支持部材に固定されて支持部材を付勢するばねと、固定体に設けらればねの付勢力を調整する偏心ピンとを備えていることが望ましい。
この発明によれば、偏心ピンを回動させるとばねの長さが変更される。すると、ばね力が変更され、ばねの一端に固定された支持部材が被駆動体側に近接離間方向に移動することで振動体が被駆動体側に近接あるいは離間する。これにより、振動体の被駆動体に対する当接力が調整される。偏心ピンを回動させるだけで当接力が調整されるので、操作が簡単となる。また、偏心ピンの回動角度が振動体の被駆動体に対する当接力に対応するので、当接力の管理、調整が簡単となる。
【0014】
本発明では、当接力調整手段は、振動体を支持する支持部材と、この支持部材を被駆動体に対して近接離間可能に支持する固定体と、磁力によって互いに吸引反発する磁石およびコイルとを備え、磁石およびコイルのいずれか一方が支持部材に固定されるとともに、磁石およびコイルのいずれか他方は固定体に固定されていることが望ましい。
この発明によれば、コイルに電流を流すとコイル内に磁場が発生し、電流の向きによって磁石が吸引されるあるいは反発する。この時、磁石およびコイルのいずれか一方が支持部材に固定され、他方が固定体に固定されているので、支持部材が振動体とともに被駆動体に対して近接離間方向に移動する。これによって振動体の被駆動体に対する当接力が調整される。コイルに電流を流すだけで当接力が調整可能なので、当接力調整手段が簡単な構造となる。また、当接力が電流値によって調整されるので、当接力の管理、調整が簡単となる。
【0015】
本発明では、圧電素子は、略矩形に形成され、圧電素子の長辺を1とすると、短辺は0.274以上に形成され、振動体の短辺には、被駆動体に当接して当該被駆動体を駆動する突起が設けられ、圧電素子の長手方向に伸縮する縦振動と、圧電素子の平面中心に対して点対称に、縦振動に直交する方向に屈曲する屈曲振動とにおいて、縦振動の共振周波数に対する屈曲振動の共振周波数の比が、1.00より大きく、1.03以下となるように設定されていることが望ましい。
この発明では、縦振動および屈曲振動の共振周波数が互いに近接しているので、これらの共振周波数近傍で圧電素子を振動させると、縦振動および屈曲振動が同時に現れ、振動体の突起は楕円軌道を描いて振動する。この楕円軌道によって突起は被駆動体を押圧して駆動することが可能となる。この時、圧電素子は、縦振動および屈曲振動のそれぞれの共振点付近で励振されるので、それぞれの振動振幅が大きくなる。従って、突起の楕円軌道の振幅も大きくなり、被駆動体を高効率で駆動することが可能となる。
【0016】
ここで、突起が設けられた振動体の短辺が0.274よりも小さい場合には、縦振動の共振周波数が屈曲振動の共振周波数よりも大きくなり、良好な楕円軌道を描くことができない。この時、縦振動の共振周波数に対する屈曲振動の共振周波数の比は1.00以下である。また、縦振動の共振周波数に対する屈曲振動の共振周波数の比が1.03より大きい場合には、縦振動の共振点と屈曲振動の共振点とが離れてしまい、両振動の振幅を同時に良好にすることができない。
【0017】
本発明では、当接力調整手段は振動体に対して複数設けられていることが望ましい。
この発明では、複数の当接力調整手段で振動体の当接力を調整するので、一つの当接力調整手段にかかる負荷が軽減される。これにより、当接力調整手段の耐久性が向上する。また、一つの当接力調整手段の当接力の変化割合を小さく設定することが可能となるので、当接力の微調整が容易となる。
【0018】
本発明では、振動体は被駆動体に対して複数設けられていることが望ましい。
この発明によれば、被駆動体に対して振動体が複数設けられているので、一つの振動体が要する駆動力が小さくなる。よって、振動体の被駆動体に対する接触部分の摩耗が軽減され、駆動機構の耐久性が向上する。
【0019】
本発明では、振動体は当接力調整手段に対して複数設けられていることが望ましい。
この発明によれば、一つの当接力調整手段で複数の振動体が調整可能となるので、部品点数が減少し、駆動機構の製造コストが安価になる。また、複数の振動体間での被駆動体に対する当接力が均一となり、被駆動体への動力伝達効率が良好となる。
【0020】
本発明の装置は、前述の駆動機構を備えていることを特徴とする。
この発明によれば、前述の駆動機構を用いて種々の装置を構成しているので、前述のような効果が得られ、被駆動体の駆動力の低下が防止され、被駆動体の移動速度が簡単に調整される。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、後述する第二実施形態以降では、以下に説明する第一実施形態での構成部品と同じ部品および同様な機能を有する部品には同一符号を付し、説明を簡単にあるいは省略する。
【0022】
〔第一実施形態〕
図1には、第一実施形態にかかる駆動機構1の平面図が示されている。この図1において駆動機構1は、圧電素子22を備えた振動体2と、振動体2の被駆動体100に対する当接力を調整する当接力調整手段3とを備えている。振動体2および当接力調整手段3は円盤状の固定体4に固定されており、この固定体4の外周には環状の被駆動体100が、周方向に等間隔で配置された複数のボール41を介して回転可能に設けられている。
図2には、駆動機構1の振動体2の斜視図が示されている。この図2にも示されるように、振動体2は、略矩形平板状に形成された補強板21と、この補強板21の表裏両面に設けられた平板状の圧電素子22とを備えている。
補強板21は、ステンレス鋼、その他の材料から構成され、短辺の一端には幅方向略中央に凸部(突起)23が一体的に形成されている。補強板21は、凸部23の先端が被駆動体100の内周に当接され、内周の接線方向にほぼ直角に(つまり被駆動体100の径方向に沿うように)配置されている。また、補強板21の長手方向略中央には、幅方向両側に腕部24が一体的に形成されている。腕部24は、補強板21からほぼ直角に突出しており、これらの端部にはそれぞれ孔241が穿設されている。
圧電素子22は、補強板21の両面の略矩形状部分に接着されている。圧電素子22の材料は、特に限定されず、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT(登録商標))、水晶、ニオブ酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、メタニオブ酸鉛、ポリフッ化ビニリデン、亜鉛ニオブ酸鉛、スカンジウムニオブ酸鉛等の各種のものを用いることができる。
【0023】
また、圧電素子22の両面には、ニッケルおよび金などによる電極が、めっき、スパッタ、蒸着等の方法で形成されている。これらの電極のうち補強板21に対向する面の電極は、圧電素子22全面にわたって形成され、補強板21に接着されることで補強板21と導通している。また、圧電素子22表面には、溝が形成されることによって互いに電気的に絶縁された複数の電極が、長手方向に沿った中心線を軸として線対称に形成されている。つまり、圧電素子22を幅方向にほぼ三等分するように二本の溝25Aが形成され、これらの溝25Aで分割された三つの電極のうち両側の電極ではさらに長手方向をほぼ二等分するように溝25Bが形成されている。これらの溝25A,25Bにより、圧電素子22の表面には五つの電極22A,22B,22C,22D,22Eが形成される。これらの電極22A,22B,22C,22D,22Eのうち、対向線上両端に位置する電極22Aおよび電極22Eをつなぐリード線(図示せず)と、電極22Bおよび電極22Dをつなぐリード線(図示せず)と、電極22Cに接続されたリード線(図示せず)とは、固定体4に形成された孔(図示せず)を通って固定体4の反対側において、電極22A,22B,22C,22D,22Eに所定周波数の電圧を印加する印加装置(図示せず)に接続されている。なお、これらの電極は、補強板21を挟んで設けられた表裏両方の圧電素子22に同様に設けられており、例えば電極22Aの裏面側には電極22Aが形成されている。また、補強板21もリード線などにより印加装置に接続されている。
【0024】
圧電素子22の寸法や、厚さ、電極の分割形態などは、圧電素子22に繰り返し電圧が印加された時に、圧電素子22が長手方向に伸縮する、いわゆる縦振動と、圧電素子22の平面中心に対して点対称に、縦振動に直交する方向に屈曲する、いわゆる屈曲振動とが同時に現れるように適宜設定される。この時、縦振動の共振周波数と、屈曲振動の共振周波数とは互いに近接するように設定されていることが望ましく、縦振動の共振周波数に対する屈曲振動の共振周波数の比は、1.00より大きく、1.03以下であることが望ましい。また、圧電素子22の長辺と短辺との長さ比は、長辺を1とすると短辺が0.274以上であることが望ましい。
なお、振動体2に印加される電圧の周波数は、縦振動の共振周波数と屈曲振動の共振周波数との間、より好ましくは反共振周波数と屈曲振動の共振周波数との間で両方の振動が良好に現れる周波数を適宜選択する。なお、振動体2に印加される電圧の波形は特に限定されず、例えばサイン波、矩形波、台形波などが採用できる。
【0025】
当接力調整手段3は、振動体2を支持する支持部材31と、この支持部材31に一端が固定されたばね32と、ばね32の付勢力を調整する偏心ピン33とを備えている。
支持部材31は、硬質プラスチック、その他の材料で構成され、振動体2が固定される一対の固定部311と、これらの固定部311の間に一体的に形成され、固定体4にスライド可能に支持されるスライド部312とを備えている。固定部311には、腕部24の孔241に対応する位置にねじ部314が形成されている。このねじ部314に孔241を貫通してねじ26が螺合されることにより振動体2が固定部311に固定されている。
図3には、図1のIII−III断面図が示されている。この図3にも示されるように、スライド部312は、固定体4に凹状に形成されたスライド溝42に配置されており、幅方向略中央には、支持部材31が被駆動体100に対して近接離間する方向に平行となるように長孔313が複数箇所(本実施形態では二箇所)形成されている。この長孔313には、ねじが421が貫通しており、このねじ421は、固定体4に形成されたねじ孔43に螺合されている。これにより、支持部材31は長孔313の長手方向、つまり被駆動体100に対して近接離間方向にスライド可能となっている。
また、固定部311とスライド部312とは段差を有して形成されている。つまり固定部311およびスライド部312によって中央に凹状部分が形成されている。これにより、振動体2が固定部311に取り付けられた時に振動体2とスライド部312との間には隙間が形成されるので、振動体2が振動してもスライド部312やねじ421に干渉しないようになっている。
【0026】
図4には、図1のIV−IV断面図が示されている。この図4にも示されるように、支持部材31両側の固定部311において、振動体2の凸部23から遠い側の端部側面には、円柱状に突出したばね取付部315がそれぞれ形成されている。このばね取付部315にはばね32の一端が挿入されている。ばね32は、その伸縮方向が振動体2の近接離間反方向に平行となるように配置され、他端には円柱状の当接ピン321が挿入されている。この当接ピン321は、固定体4に設けられた円筒状のガイド部322を貫通してばね32の伸縮方向に摺動可能に支持されている。
偏心ピン33は、その回動軸331に対して円柱状部材のつば部332が偏心しており、回動軸331の周囲に形成されたねじが固定体4のねじ部44に螺合されることで固定体4に回動可能に支持されている。つば部332の側面には、ばね32の当接ピン321の先端が当接されている。また、つば部332の天面にはドライバなどが係合可能な凹状の操作溝333が形成されている。
このように、ばね32の一端が支持部材31に当接され、ばね32の他端の当接ピン321がつば部332の側面に当接されることにより、ばね32は支持部材31を被駆動体100に近接する方向に付勢している。したがって、振動体2の凸部23は適当な当接力で被駆動体100に押し付けられている。
【0027】
被駆動体100には、内周部分に断面円弧状の凹部101が形成され、この凹部101に振動体2の凸部23が当接されている。この凹部101の表面は、凸部23との摩耗を低減できるように滑らかに仕上げられている。この凹部101により、振動体2が振動して凸部23が被駆動体100の回転軸方向にずれた時に被駆動体100との係合が外れるのを防止している。また、被駆動体100内周に沿って等間隔に配置された複数のボール41は、被駆動体100の内周に形成された溝102と、固定体4の外周に形成された傾斜部分と、固定体4に固定された環状の押さえ板411の傾斜部分とで挟まれることによって溝102に収まっている。また、固定体4と押さえ板411との間には環状のボール保持部412が介装されている。このボール保持部412は、外周にボール41と同数の略半円形の切欠部分が形成され、この切欠部分にボール41がそれぞれ配置されることで、固定体4の外周で所定間隔を保っている。
【0028】
このような駆動機構1は、次のように動作する。
図5には振動体2の動作を示す模式図が示されており、図5(A)には、振動体2の縦振動が、図5(B)には屈曲振動が、図5(C)には凸部23の振動軌跡が示されている。
まず、凸部23を被駆動体100に当接した状態で、図示しない印加装置により振動体2の圧電素子22表面の電極と補強板21との間に電圧を繰り返し印加して振動体2を振動させる。この時、電極22Cおよび電極22B,22Dのみに選択的に電圧を印加する。すると、圧電素子22は図5(A)に示されるように、主に電極22Cによって長手方向に伸縮する縦振動を励振する。また、電極22Cの両側では電極22B,22Dによって圧電素子22が長手方向の中心線に対して非対称に伸縮するため、振動体2は図5(B)に示されるように、縦振動に直交する方向に、圧電素子22の平面中心に対して点対称に屈曲する屈曲振動も励振する。
【0029】
これらの縦振動および屈曲振動が同時に現れることにより、振動体2の凸部23は図5(C)に示されるように、縦振動と屈曲振動とが組み合わさった略楕円軌道を描いて振動する。凸部23は、略楕円軌道の一部で被駆動体100の凹部101に押し付けられて、被駆動体100との摩擦力によって被駆動体100を円周方向に間欠回転させる。これを所定の周波数で繰り返し行うことにより、被駆動体100は一方向に所定の回転速度で回転する。
【0030】
図6には、振動体2の振動特性が示されている。この図6において、線図は、駆動周波数に対する圧電素子22のインピーダンスを示している。この図6に示されるように、本実施形態の振動体2では、圧電素子22に印加する電圧の周波数に対して、インピーダンスが極小となる点が二点現れる。これらのうち周波数の低い方の一点は、縦振動の振動振幅が最大となる共振点で、この共振点における周波数が縦振動の共振周波数f1となる。一方、周波数の高い方の一点は、屈曲振動の振動振幅が最大となる共振点で、この共振点における周波数が屈曲振動の共振周波数f3となる。また、共振周波数f1,f3の間には、反共振周波数f2が現れる。
この図6からもわかるように、圧電素子22を縦振動の共振周波数f1と屈曲振動の共振周波数f3との間の周波数で駆動すると、縦振動および屈曲振動の両方の振幅を大きく得られ、被駆動体100を高効率で駆動できる。
【0031】
ここで、圧電素子22の寸法を、長辺の長さを1とした時に短辺の長さを0.274より小さくすると、縦振動の共振周波数f1が屈曲振動の共振周波数f3より大きくなり、凸部23において良好な楕円軌道を得ることができない。この時、縦振動の共振周波数f1に対する屈曲振動の共振周波数f3の比は、1.00以下である。また、両振動の共振周波数f1,f3の比が1.03よりも大きいと、縦振動の共振点と屈曲振動の共振点とが離れてしまい、両振動の振幅が同時に大きくなる振動周波数を設定することができない。
【0032】
被駆動体100の回転速度を変更する場合には、当接力調整手段3を操作する。例えば被駆動体100の回転速度を遅くする場合は、偏心ピン33の操作溝333にドライバなどを係合させて偏心ピン33をばね32が長くなる方向へ回動させる。つまり、回動軸331からつば部332の側面までの距離が短くなるように偏心ピン33を回動させると、当接ピン321がこの側面に追従することでばね32が伸びる。これによって、ばね32の支持部材31への付勢力が緩和される。この付勢力が支持部材31を介して振動体2に伝達され、振動体2の凸部23における被駆動体100への当接力が弱くなる。したがって、凸部23が楕円軌道上で被駆動体100と接触して摩擦力で被駆動体100を駆動できる範囲が狭くなり、伝達される回転トルクが弱くなるので、その結果被駆動体100の回転速度が遅くなる。
反対に、被駆動体100の回転速度を速くする場合には、偏心ピン33を回動させてばね32を縮める方向に調整する。すると、凸部23の被駆動体100に対する当接力が強くなり、伝達される回転トルクが強くなるので、被駆動体100の回転速度が速くなる。
また、被駆動体100を反対方向に回転させる場合には、圧電素子22に印加する電圧の電極を長手方向に沿った中心線を軸として線対称に切り替える。つまり、圧電素子22の電極22A,22Eおよび電極22Cに所定周波数の電圧を印加すれば、凸部23は反対方向の略楕円軌道を描いて振動する。これにより、被駆動体100を反対方向に駆動する。
【0033】
したがって、このような第一実施形態によれば、次のような効果が得られる。
(1) 駆動機構1に当接力調整手段3が設けられているので、振動体2の被駆動体100に対する当接力を調整することで被駆動体100の移動速度を簡単に調整することができる。この時、振動体2が所定周波数で被駆動体100に連続的に当接されるので、振動体2の振動、停止に伴う不安定な振動状態を除去できる。したがって、振動体2は常に安定して被駆動体100に接触でき、回転トルク(駆動力)の低下を防止できる。
【0034】
(2) 振動体2の凸部23が略楕円軌道を描き、その略楕円軌道の一部において被駆動体100を回転させるので、被駆動体100に常に一方向のみの駆動力を与えることができる。つまり、凸部23の楕円軌道において被駆動体100の回転方向とは反対向きの軌道上では凸部23が被駆動体100に押し付けられないので、被駆動体100の回転が阻止されるのを防止できる。特に本実施形態では被駆動体100が回転体なので、慣性力が働く方向と反対方向に凸部23の駆動力が伝達されにくく、被駆動体100の回転トルクの低下を防止できる。また、凸部23が被駆動体100の回転方向と反対向きの軌道上では被駆動体100への当接力が低下するので、凸部23および被駆動体100の摩耗を防止でき、駆動機構1の耐久性をより一層向上させることができる。
【0035】
(3) 当接力調整手段3がばね32と偏心ピン33とを備えて構成されているので、操作溝333を操作して偏心ピン33を回動させるだけで、簡単に当接力が調整できる。また、つば部332が円柱状に形成されているので、偏心ピン33の回動角度によって当接力を無段階で調整できる。よって、例えば固定体4の偏心ピン33の周囲に目盛をふるなどすれば、常に所望の当接力を得られる。また、つば部332の側面の形状、つまり本実施形態では円柱状の半径を適宜決定すれば、偏心ピン33の回動角度に対する当接力の変化の割合を設定できる。これにより当接力の微調整も簡単に実現できる。
さらに、偏心ピン33を手動で回動させることにより当接力を手動で調整できるので、当接力調整手段3の構成を簡単にできる。よって、駆動機構1のメンテナンスが簡単に行え、安価に製造できる。
【0036】
(4) 振動体2が被駆動体100の内周から当接されているので、振動体2を被駆動体100の内周に収納することができる。これにより、駆動機構1の小型化を促進できる。
【0037】
(5) 一つの振動体2に対してばね32および偏心ピン33(つまり当接力調整手段3)が二つずつ設けられているので、一つのばね32および偏心ピン33にかかる負担を軽減でき、これらの部材の耐久性を向上させることができる。また、これにより一つのばね32に必要なばね力の範囲が小さくなるので、ばね力の変化割合が小さいものを選択することができ、当接力を簡単に微調整できる。
【0038】
(6) 圧電素子22が適切な寸法に、つまり長辺の長さを1とした時短辺の長さが0.274以上で、かつ縦振動の共振周波数に対する屈曲振動の共振周波数の比が1.00より大きく1.03以下になるように設定されているので、縦振動および屈曲振動を同時に得ることができ、凸部23が良好な楕円軌道を描いて被駆動体100を回転駆動できる。この時、縦振動および屈曲振動の共振点が互いに近接しているので、両振動の振幅が共振点近傍の大きな振幅となり、被駆動体100を高効率で駆動できる。
【0039】
ここで、第一実施形態の具体的な実施例を挙げる。
圧電素子22の材料をPZTとし、寸法を短辺1.98mm、長辺7.00mm、厚み0.15mmとする。補強板21の材料はステンレス鋼(SUS301)で、厚みが0.1mmとなっている。凸部23は、平面形状が幅0.5mm、突出長さが0.45mmの略半円形状で、質量が約0.16mgである。また、腕部24は、略矩形状の補強板21から突出した略矩形状部分が、幅0.4mmで長さが0.5mmである。
このような振動体2では、凸部23を被駆動体100に当接せずに被駆動体100から反力を受けない状態で圧電素子22に電圧を印加した時、縦振動の共振周波数f1が約279kHz、屈曲振動の共振周波数f3が約285kHz、反共振周波数f2が約283kHzであった。従って、縦振動の共振周波数f1に対する屈曲振動の共振周波数f3の比は、約1.015となる。この振動体2に共振周波数f1と共振周波数f3との間の周波数で、またより望ましくは反共振周波数f2と共振周波数f3との間の周波数で電圧を印加すると、縦振動および屈曲振動がそれぞれ共振点付近で励振されて大きな振動振幅が得られ、凸部23が良好な楕円軌道を描くことがわかる。
【0040】
〔第二実施形態〕
次に、本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態は、第一実施形態における当接力調整手段の構成が異なるものである。
図7には、第二実施形態にかかる駆動機構1の平面図が、また、図8にはその側断面図が示されている。これらの図7および図8において、固定体4には、支持部材31にほぼ沿って凹部45が形成されている。ばね32の他端はこの凹部45から突出して設けられたばね取付部451に固定されている。ばね32は、予め設定されたばね力で支持部材31を被駆動体100に近接する方向に付勢している。
当接力調整手段3は、支持部材31に固定された磁石34と、固定体4に固定されたコイル35とを備えている。支持部材31において、振動体2の凸部23に遠い側の端部には固定体4から所定間隔を有し、かつ固定体4に平行な面を有する磁石取付部316が一体的に形成され、この磁石取付部316の固定体4に対向する面には磁石34がはめ込まれている。
【0041】
コイル35は導線が円筒状に巻かれることで構成され、その中心軸が磁石取付部316の面方向と直交するように、かつ磁石34にほぼ対向する位置に固定されている。この時、磁石34およびコイル35は、振動体2が被駆動体100に対して近接離間する方向に沿って配置され、かつ磁石34がコイル35よりも凸部23に近い位置に配置されている。コイル35の導線の両端部分は、固定体4に穿設された孔452を通って反対側においてコイル35に電流を流す電流発生装置(図示せず)に接続している。
このような駆動機構1において、第一実施形態と同様に電極を適宜選択して圧電素子22に繰り返し電圧を印加すると振動体2が振動して被駆動体100を回転させる。この時、振動体2の凸部23はばね32の付勢力に対応する当接力で被駆動体100に押し付けられており、凸部23の被駆動体100に対する当接力を調整する場合には、電流発生装置をONにしてコイル35に電流を流す。すると、コイル35内に磁場が発生し、磁石34が吸引されることにより、支持部材31がばね32のばね力に抗して被駆動体100から離間する方向に移動する。よって凸部23の被駆動体100に対する当接力が弱くなり、被駆動体100の回転速度が遅くなる。
【0042】
このような駆動機構1によれば、第一実施形態の(1)、(2)、(4)および(6)の効果と同様の効果が得られる他、次のような効果が得られる。
(7) 当接力調整手段3が磁石34およびコイル35を備えて構成されているので、コイル35に電流を流すことで簡単に当接力を調整できる。被駆動体100の回転中にも自動で当接力を調整することで、被駆動体100の回転速度を回転中に変更することができる。これにより、駆動機構1の回転速度を柔軟に調整でき、駆動機構1の汎用性を向上させることができる。
さらに、当接力調整手段3が磁石34およびコイル35とを備えて構成されているので、当接力を調整する際に互いが摺動することがない。よって、摩耗部品を減少でき、駆動機構1の耐久性を向上させることができる。
【0043】
〔第三実施形態〕
次に、本発明の第三実施形態について説明する。第三実施形態は、第一実施形態における被駆動体100および振動体2の支持機構が異なる。
図9には、第三実施形態にかかる駆動機構1の平面図が、また図10にはその側断面図が示されている。これらの図9および図10において、被駆動体100の外周には、歯形状の凸部103が形成されており、この外周の略半周にわたって、ベルト110が接続している。ベルト110の内周には、歯形状の凸部111が形成されており、この凸部111が被駆動体100の凸部103に噛合することでベルト110と被駆動体100とが互いに係合されている。なお、ベルト110および被駆動体100の係合は、歯付きベルトと歯付きプーリの他、平ベルトと平プーリ、VベルトとVプーリ、などの種々の組み合わせが採用できる。被駆動体100は、被駆動体100を挟んで固定体4と反対側に配置された円盤状のカバー5と固定体4との間に配置されている。固定体4およびカバー5には、それぞれ被駆動体100に対向する面に外周に沿って凸状の挟持部40,50が形成され、これらの挟持部40,50によって被駆動体100が挟持されている。固定体4には、三箇所に柱状の連結部47が設けられ、先端側に突起471が形成されている。この突起471が、カバー5に突起471と同数設けられた孔51に嵌合することによって、カバー5が固定体4に固定されている。また、固定体4には、被駆動体100の内周面104に接するガイド部46が複数個(本実施形態では二つ)設けられている。被駆動体100は、これらのガイド部46に内周面104で摺動することによって固定体4に回転可能に支持されている。
【0044】
振動体2は、表裏両面の圧電素子22に第一実施形態と同様の五つの電極が形成されている。腕部24の一方は、固定体4にねじ26で固定されており、他方には、ばね32の一端が固定されている。ばね32の他端には当接ピン321が固定され、この当接ピン321がつば部332の側面に当接されている。偏心ピン33の回動軸331は、一端が固定体4に回転可能に支持され、他端はカバー5に設けられた孔52を貫通して端部がカバー5の外部に露出している。回動軸331の端部には凹状の操作溝333が形成され、カバー5外部から操作可能となっている。ここで、孔52と回動軸331との嵌合は、偏心ピン33がばね32のばね力や駆動機構1の振動などによって回動しないような十分な摩擦力が確保されるように設定されている。あるいは、孔52および回動軸331にねじを形成して、これらを螺合によって係合していてもよい。
このような駆動機構1においては、振動体2に繰り返し電圧を印加すると被駆動体100がガイド部46に接触して摺動しながら回転する。被駆動体100の回転に伴ってベルト110の凸部111が凸部103に噛合して、ベルト110が移動する。被駆動体100の回転速度、つまりベルト110の移動速度を変更する時は、カバー5の外部から操作溝333にドライバなどを係合させて偏心ピン33を回動させる。するとばね32の付勢力が変化し、振動体2はねじ26を中心に回動することで被駆動体100に近接あるいは離間する方向に移動する。これにより振動体2の被駆動体100に対する当接力が変化して、被駆動体100の回転速度が変化する。
【0045】
このような駆動機構1によれば、第一実施形態の(1)、(2)、(3)、(4)および(6)の効果と同様の効果が得られる他、次のような効果が得られる。
(8) 振動体2が直接固定体4に固定され、第一実施形態のような支持部材31が不要なので、当接力調整手段3をより簡単な構造で構成できる。またこれにより、当接力調整手段3の部品点数を減少でき、駆動機構1を安価に製造できる。
【0046】
〔第四実施形態〕
次に、本発明の第四実施形態について説明する。第四実施形態は、本発明の駆動機構を装置としての車の玩具に適用したものである。
図11には、第四実施形態にかかる車11の全体図が示されている。この図11において、車11は、車体12に前輪11A,11Bと、後輪11C,11Dとが設けられている。前輪11A,11Bは、それぞれ第二実施形態の駆動機構1A,1Bを備えて構成され、固定体4A,4Bの中心に形成された軸48A,48Bによって車体12に固定されている。被駆動体100A,100Bの外周に形成された溝には環状のゴム112A,112Bが嵌めこまれ、これによって、接地面との摩擦力を高めてタイヤの役割を果たす。一方、後輪11C,11Dは、円盤状部材の外周にゴム112C,112Dが嵌めこまれ、車体12に回転可能に支持されている。
図12には、車11の概略構成ブロック図が示されている。この図12にも示されるように、前輪11A,11Bそれぞれの振動体2の電極に接続されたリード線は、軸48A,48B(図11)の中心に形成された孔(図示せず)を貫通して、車体12に取り付けられた共通の印加装置27に接続されている。また、コイル35A,35B(図7参照)は、軸48A,48Bを貫通して、車体12の電流発生装置39A,39Bにそれぞれ接続している。これらの印加装置27および電流発生装置39A,39Bには、車11の動作を制御する制御手段7が電気的に接続されている。
【0047】
このような車11では、 制御手段7からの走行信号によって印加装置27が振動体2A,2Bに同時に電圧を印加する。振動体2A,2Bは車11の前進方向に被駆動体100A,100Bを同じ回転速度で駆動し、これにより車11は前進する。制御手段7から低速走行の信号が送信されると、電流発生装置39A,39Bがこの信号を受信してONになり、それぞれのコイル35A,35Bに電流を流す。これにより、振動体2A,2Bの被駆動体100A,100Bに対する当接力が調整され、走行速度が遅くなる。
制御手段7から右折の信号が送信されると、電流発生装置39AはOFF、電流発生装置39BはONとなる。すなわち、前輪11Bの当接力のみが調整され、右の前輪11Bの回転速度が左の前輪11Aの回転速度よりも遅くなる。よって、車11は右に旋回する。逆に、左折する場合には、電流発生装置39AがON、電流発生装置39BがOFFされることによって、左の前輪11Aの回転速度が遅くなり、車11が左に旋回する。
また、制御手段7からの後進信号によって、印加装置27は電圧を印加する振動体2A,2Bの電極を変更し、振動体2A,2Bを逆方向に振動させる。これにより、被駆動体100A,100Bは逆回転し、車11が後進する。後進する場合にも、制御手段7からの信号によって、低速後進、右折および左折が調整できる。
【0048】
このような第四実施形態によれば、第二実施形態と同様に、駆動機構1が圧電素子を備えた振動体2を備えて構成されているので、第二実施形態と同様の効果を奏することができ、駆動機構1全体を薄く構成でき、車11の車輪などの小さい部分にも取り付けることができる。また、車体12に、印加装置27や電流発生装置39の動作を制御する制御手段7を設けて振動体2に電圧を印加するタイミング、コイル35に流す電流値などを制御しているので、車11の走行が自動でできる。あるいは、リモートコントローラなどによって制御手段に無線で指令を送信すれば、遠隔操作をすることも可能となる。
【0049】
なお、本発明は前述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、第一実施形態では操作溝333にドライバなどを係合させて偏心ピン33を手動で回動させていたが、これに限らず自動で調整されるように構成してもよい。この場合には、例えば図13に示されるように、当接力調整手段3を駆動する駆動手段6を組み込めばよい。
図13には、駆動手段6が組み込まれた駆動機構1の全体図が示されており、図13(A)には駆動機構1の平面図、図13(B)にはそのB−B断面図が示されている。この図13において、駆動手段6は、二つの偏心ピン33の回動軸331に固定体4を挟んで反対側においてそれぞれ固定される歯車61と、この歯車61に噛合する歯車62と、歯車62の回転軸に固定されるステッピングモータなどのモータ63とを備えている。モータ63を所定角度回転させると、回転軸に固定された歯車62がともに回転し、この回転力が歯車61に伝達され、偏心ピン33を所定角度回動させる。これにより、凸部23の被駆動体100に対する当接力を自動で調整できる。このような駆動手段6を備えた駆動機構1では、二つの偏心ピン33を一つのモータ63で同時に同角度回動させることができるので、支持部材31の両側におけるばね32の付勢力を同じにすることができ、左右の当接力のバランスを常に良好に保てる。
このように、各実施形態において当接力調整手段3は手動で調整できるものあるいは自動で調整できるもののどちらでもよい。
【0050】
振動体2は、各実施形態において環状の被駆動体100に対して内側から当接されていたが、これに限らず例えば外側から被駆動体100を駆動してもよい。
図14には、本発明の駆動機構1が適用された装置としての液体吐出装置13の平面図が示されている。この図14に示されるように、振動体2は被駆動体であるロータ105に外側から当接されていてもよい。図14において、液体吐出装置13は、内部に液体が流通するチューブ131と、チューブ131の上を転動して内部の液体を順次送液するボール132と、ボール132をチューブ131側に押圧しながら転動させるロータ105とを備えている。ロータ105の外周側面には振動体2の凸部23が当接されている。凸部23は、振動体2の対角線上両端に圧電素子22の短辺から突出するように形成されている。また、圧電素子22表面には、全面に電極が形成されて印加装置に接続されている。振動体2は長さ方向略中央を腕部24によって片側から支持されている。腕部24はねじ26によって基部(固定体)49に固定されている。腕部24には略U字形の弾性部36が一体的に形成されており、この弾性部36の端部にはねじ37の先端が側面から略直角に当接されている。ねじ37は基部49に螺合され、先端が弾性部36側に進退可能に支持されている。
【0051】
振動体2の圧電素子22に電圧を印加すると、圧電素子22は長手方向に伸縮する。この時、凸部23が対角線上両端に設けられているので、振動体2の形状が長手方向の中心線に対して非対称となる。従って圧電素子22には重量のアンバランスが生じ、圧電素子22は縦振動と同時に屈曲振動を励振する。これにより、凸部23は略楕円軌道を描いて振動し、ロータ105を回転させる。ロータ105の押圧力によってボール132がチューブ131を押しつぶしながら転動すると、二つのボール132の間に挟まれたチューブ131内部の液体は順次送液されてチューブ131の開口端から吐出される。凸部23のロータ105に対する当接力の調整は、ねじ37を回転させて先端を進退させることによって弾性部36の付勢力を変更する。これによって振動体2がねじ26を中心に回動してロータ105への当接力が変更される。
このようにロータ105を外側から駆動すると、ロータ105と振動体2とを平面的に配置することができ、液体吐出装置13の薄型化が促進できる。また、ロータ105を外側から駆動しても各実施形態と同様に駆動力を低下させることなく回転速度を変更できるので、振動体2と被駆動体100,104との位置関係は任意に設定できる。
【0052】
振動体2は、各実施形態では一つの被駆動体100に対して一つ設けられていたが、これに限らず例えば図15に示されるように複数設けられていてもよい。図15には、本発明の駆動機構1の変形例を示す平面図が示されており、この図15おいて、振動体2は三つ設けられて固定体4にそれぞれ固定され、それぞれの凸部23が被駆動体100に対して所定の角度を有して当接されている。腕部24は、振動体2を長さ方向略中央で片側から支持し、ねじ26によって固定体4に回転可能に固定されている。腕部24には、円弧状の弾性部36が一体的に形成され、その一端が略三角形状の偏心ピン38の側面に当接されている。偏心ピン38は、その回転軸が固定体4に螺合などによって回動可能に支持されている。
このような駆動機構1においては、三つの振動体2に同時に電圧が印加されて被駆動体100を駆動する。凸部23の被駆動体100に対する当接力を調整する場合には、偏心ピン38を回動させて、弾性部36の付勢力を変更する。これにより、振動体2はねじ26を中心に回動し、被駆動体100に対する当接力が変更される。このような構成の駆動機構1では、一つの被駆動体100に対し複数の振動体2が設けられているので、各振動体2の駆動力を軽減でき、振動体2の耐久性を向上させることができる。
また、各実施形態では一つの当接力調整手段3に対して一つの振動体2が設けられていたが、これに限らず前述の構成のように一つの当接力調整手段3で複数の振動体2の当接力を同時に調整してもよい。この場合には、複数の振動体2の当接力を簡単に調整でき、また各振動体2の当接力が均一になるので、良好な動力伝達効率で被駆動体100を駆動することができる。
【0053】
偏心ピン33の形状は、各実施形態においては円形であったが、これに限らず前述のような略三角形状や変形形状など、用途や当接力調整範囲などを勘案して任意の形状を採用してよい。
また、コイル35の断面形状は、第二実施形態では円形であったが、これに限らずコイル35の断面形状や巻き数、断面積などは支持部材31および振動体2の重量や、振動体2の被駆動体100に対する当接力調整範囲などを勘案して適宜決定されている。また、コイル35に鉄心などを挿入してもよい。
ばね32は、各実施形態では支持部材31において、凸部23が配置されている側とは反対側の端部に固定されていたが、このような構成に限らない。例えば、ばね32は支持部材31において凸部23が配置されている側の端部に取り付けられ、ばね32の引っ張り力によって凸部23を被駆動体100に押し付けるように構成されていてもよい。また、第一実施形態のばね32は、支持部材31の両側に二つ設けられていたが、これに限らず略中央に一つ設けられて、支持部材31を被駆動体100側へ付勢するものであってもよい。
磁石34およびコイル35を用いた当接力調整手段3においては、コイル35が磁石34よりも凸部23に近い位置に配置されていてもよい。この場合には、コイル35に電流を流して磁石34を引きつけ、これによって凸部23を被駆動体100に押し付けて調整する。また、磁石34は支持部材31に固定され、コイル35は固定体4に固定されていたが、これに限らず支持部材31にコイル35が取り付けられ、固定体4に磁石34が取り付けられていてもよい。さらに、磁石34およびコイル35は、複数個設けられていてもよい。
【0054】
当接力調整手段3の構成は、第一実施形態および第三実施形態ではばね32および偏心ピン33によるものであり、また第二実施形態および第四実施形態では磁石34およびコイル35によるものであったが、これらに限らない。例えば、第一実施形態の支持部材31の位置を、ばね32を介さずに直接調整するように構成されていてもよい。要するに、振動体2の被駆動体100に対する当接力を調整できる構造であれば任意である。
また、当接力調整手段3は第一実施形態および第三実施形態においては無段階に調整可能であったが、これに限らない。例えば第一実施形態のばね32の当接ピン321を固定体4に形成した係止部分に当接させ、当接ピン321と係止部分との間に所定厚さのブロックを介装してばね32を伸縮させてばね力を調整してもよい。この構成によれば、ブロックの厚さや、枚数を調整することによってばね32のばね力、つまり凸部23の被駆動体100に対する当接力を多段階に調整できる。
あるいは反対に、第二実施形態および第四実施形態においては電流発生装置をON,OFFさせることによって、二段階で当接力を調整していたが、これに限らない。つまり、例えばコイル35に流す電流値を無段階に調整することによって、凸部23の被駆動体100に対する当接力を任意に調整してよい。
【0055】
振動体2の振動は、各実施形態では縦振動および屈曲振動を組み合わせた楕円軌道であったが、これに限らず、例えば縦振動のみあるいは屈曲振動のみでもよく、被駆動体100を駆動できる振動形態であれば任意である。
被駆動体100は、各実施形態では回転運動するものであったが、これに限らず例えば直線運動するものでもよい。つまり、例えば棒状部材の側面に直接振動体の凸部を当接して、振動体を振動させることによって棒状部材を長さ方向に移動させる構造であってもよい。この場合でも、各実施形態と同様に駆動力を低下させることなく速度を変更できる。要するに、被駆動体の形状は限定されない。
また、被駆動体の駆動方法は、各実施形態では振動体を楕円軌道に沿って振動させ、その軌道の一部において被駆動体と接触することで、摩擦力によって被駆動体を移動させていたが、これに限らない。例えば振動体と被駆動体とを常に接触させ、振動体に印加する電圧を調整して、振動体が伸びる時には速く、そして戻る時にはゆっくりと変形させる。振動体が伸びる時には被駆動体を振動体に対して滑らせ、その後振動体が戻るときに摩擦力で被駆動体を振動体に追従させて間欠移動させてもよい。要するに被駆動体の駆動方法は、振動体の振動によって被駆動体が駆動されるものであれば、任意である。
【0056】
本発明の駆動機構は第四実施形態では玩具の車11に適用されていたが、これに限らず例えば前述の液体吐出装置13等の様々な装置に組み込むことができる。このような場合でも、前述の各実施形態における効果と同様の効果が得られ、駆動力を低下させることなく被駆動体の速度を変更することができる。
【0057】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
したがって、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【発明の効果】
このような本発明によれば、圧電素子を備えた振動体に被駆動体に対しての当接力を調整する当接力調整手段を設けたので、振動体を連続的に振動させながら被駆動体の速度を変更でき、駆動力の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる駆動機構を示す平面図。
【図2】本発明の第一実施形態にかかる支持部材を示す斜視図。
【図3】図1のIII-III断面図。
【図4】図1のIV-IV断面図。
【図5】本発明の第一実施形態にかかる振動体の動作を示す模式図。
【図6】本発明の第一実施形態にかかる振動体の振動特性を示す図。
【図7】本発明の第二実施形態にかかる駆動機構を示す平面図。
【図8】本発明の第二実施形態にかかる駆動機構を示す側断面図。
【図9】本発明の第三実施形態にかかる駆動機構を示す平面図。
【図10】本発明の第三実施形態にかかる駆動機構を示す側断面図。
【図11】本発明の第四実施形態にかかる車を示す平面図。
【図12】本発明の第四実施形態にかかる制御手段を示すブロック図。
【図13】本発明の駆動機構の変形例を示す図。
【図14】本発明の駆動機構の適用例を示す図。
【図15】本発明の駆動機構の別の変形例を示す図。
【符号の説明】
1…駆動機構
2…振動体
3…当接力調整手段
4…固定体
7…制御手段
11…車(装置)
13…液体吐出装置(装置)
22…圧電素子
23…凸部(突起)
27…印加装置
31…支持部材
32…ばね
33…偏心ピン
34…磁石
35…コイル
39…電流発生装置
46…ガイド部
100…被駆動体
105…ロータ(被駆動体)
110…ベルト
【発明の属する技術分野】
本発明は、駆動機構およびこれを備えた装置に関する。より詳しくは、圧電素子を備えた振動体を被駆動体に当接して、振動体の振動によって被駆動体を駆動する駆動機構およびこの駆動機構を備えた、例えば液体吐出装置などの装置に関する。
【0002】
【背景技術】
近年、圧電素子を備えた振動体を振動させることによって被駆動体を駆動する駆動機構が開発されている。このような駆動機構において、被駆動体の移動速度を調整する方法として、振動体の圧電素子にパルス電圧を連続的あるいは断続的に印加することによって調整する方法がある(例えば特許文献1)。この方法では、被駆動体を高速で移動させる場合には振動体にパルス電圧を連続的に印加して振動させる。また、被駆動体を低速で移動させる場合には振動体にパルス電圧を連続的に印加した後所定時間供給を停止する。このように、振動体にパルス電圧を断続的に印加することによって被駆動体を断続的に駆動し、全体として被駆動体の平均移動速度を所望の速度にする。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−356071号公報 (第6−8頁)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このように振動体にパルス電圧を断続的に印加すると、振動体が停止している状態から振動を開始する初期には振動状態が不安定となり、被駆動体に良好に動力伝達できず、駆動力の低下を招いてしまう。特に、被駆動体が回転体の場合では、被駆動体は慣性によって回転し続けようとするので、振動体が停止している時に被駆動体との接触部分に摩擦力がかかり、回転トルクを低下させてしまう。また、この時両者の接触部分で摩耗が発生し、耐久性の向上が望めない。
【0005】
本発明の目的は、駆動力の低下を防止して被駆動体の移動速度を変更できる駆動機構およびこれを備えた装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の駆動機構は、圧電素子を備えた振動体を被駆動体に当接して、振動体の振動によって被駆動体を駆動する駆動機構において、振動体の被駆動体に対する当接力を調整する当接力調整手段を備えていることを特徴とする。
この発明によれば、当接力調整手段によって振動体の被駆動体に対する当接力が調整されることにより、振動体の被駆動体に対する駆動力が変更され、被駆動体の移動速度が変更される。振動体の被駆動体に対する当接力を調整することで駆動力を変更するので、振動体を断続的に振動させる必要がなく、振動体の振動状態が安定し、駆動力の低下が防止される。
【0007】
本発明では、振動体は、その先端が略楕円軌道を描くとともに、この略楕円軌道の一部において被駆動体に当接され、振動体および被駆動体の摩擦力によって被駆動体を駆動することが望ましい。
この発明によれば、振動体が略楕円軌道の一部で被駆動体と接触して、振動体の軌道の方向に被駆動体を移動させる。振動体が略楕円軌道を描くので、振動体の先端が被駆動体の移動方向と反対方向に移動する際には被駆動体との接触力が小さくなり、駆動力の低下がより一層防止される。またこれにより、振動体の先端および被駆動体の摩耗が軽減され駆動機構の耐久性が向上する。特に、被駆動体が回転体の場合では、被駆動体の慣性力を妨げる方向の力が軽減されるので有用である。
【0008】
本発明では、当接力調整手段は、当接力が手動で調整可能に設けられていることが望ましい。
この発明によれば、当接力が手動で調整されるので、当接力調整手段の構成が簡単になる。よって、駆動機構のメンテナンスが容易になり、製造コストが安価になる。
【0009】
本発明では、当接力調整手段は、当接力が自動で調整可能に設けられていることが望ましい。
この発明によれば、当接力の調整が自動で行われるので、被駆動体の移動中にも振動体の被駆動体に対する当接力が動的に調整可能となり、移動速度の柔軟な調整が可能となる。
【0010】
本発明では、被駆動体は回転体であり、振動体は被駆動体の内周側から当接されていることが望ましい。
この発明では、被駆動体が回転体なので、移動時、つまり回転時には被駆動体は慣性力によって回転を維持しようとする。この時にも振動体は連続で振動するので、従来とは異なり振動体が停止状態で被駆動体に接触して、被駆動体の回転トルクを減少させることがない。また、振動体が回転体の被駆動体の内周側から当接されるので、振動体が被駆動体の回転半径内に収納され、駆動機構の小型化が促進される。
【0011】
本発明では、被駆動体は回転体であり、振動体は被駆動体の外周側から当接されていることが望ましい。
この発明では、被駆動体が回転体なので、移動時、つまり回転時には被駆動体は慣性力によって回転を維持しようとする。この時にも振動体は連続で振動するので、従来とは異なり振動体が停止状態で被駆動体に接触して、被駆動体の回転トルクを減少させることがない。また、振動体が被駆動体の外周側から当接されるので、被駆動体および振動体を平面的に配置することが可能となり、駆動機構の薄型化が促進される。
【0012】
本発明では、当接力調整手段は、振動体の被駆動体に対する当接力を無段階に調整可能に設けられていることが望ましい。
この発明によれば、当接力が無段階に調整可能に構成されているので、被駆動体の移動速度が無段階に設定可能となり、移動速度の微調整も簡単になる。
【0013】
本発明では、当接力調整手段は、振動体を支持する支持部材と、この支持部材を被駆動体に対して近接離間可能に支持する固定体と、一端が支持部材に固定されて支持部材を付勢するばねと、固定体に設けらればねの付勢力を調整する偏心ピンとを備えていることが望ましい。
この発明によれば、偏心ピンを回動させるとばねの長さが変更される。すると、ばね力が変更され、ばねの一端に固定された支持部材が被駆動体側に近接離間方向に移動することで振動体が被駆動体側に近接あるいは離間する。これにより、振動体の被駆動体に対する当接力が調整される。偏心ピンを回動させるだけで当接力が調整されるので、操作が簡単となる。また、偏心ピンの回動角度が振動体の被駆動体に対する当接力に対応するので、当接力の管理、調整が簡単となる。
【0014】
本発明では、当接力調整手段は、振動体を支持する支持部材と、この支持部材を被駆動体に対して近接離間可能に支持する固定体と、磁力によって互いに吸引反発する磁石およびコイルとを備え、磁石およびコイルのいずれか一方が支持部材に固定されるとともに、磁石およびコイルのいずれか他方は固定体に固定されていることが望ましい。
この発明によれば、コイルに電流を流すとコイル内に磁場が発生し、電流の向きによって磁石が吸引されるあるいは反発する。この時、磁石およびコイルのいずれか一方が支持部材に固定され、他方が固定体に固定されているので、支持部材が振動体とともに被駆動体に対して近接離間方向に移動する。これによって振動体の被駆動体に対する当接力が調整される。コイルに電流を流すだけで当接力が調整可能なので、当接力調整手段が簡単な構造となる。また、当接力が電流値によって調整されるので、当接力の管理、調整が簡単となる。
【0015】
本発明では、圧電素子は、略矩形に形成され、圧電素子の長辺を1とすると、短辺は0.274以上に形成され、振動体の短辺には、被駆動体に当接して当該被駆動体を駆動する突起が設けられ、圧電素子の長手方向に伸縮する縦振動と、圧電素子の平面中心に対して点対称に、縦振動に直交する方向に屈曲する屈曲振動とにおいて、縦振動の共振周波数に対する屈曲振動の共振周波数の比が、1.00より大きく、1.03以下となるように設定されていることが望ましい。
この発明では、縦振動および屈曲振動の共振周波数が互いに近接しているので、これらの共振周波数近傍で圧電素子を振動させると、縦振動および屈曲振動が同時に現れ、振動体の突起は楕円軌道を描いて振動する。この楕円軌道によって突起は被駆動体を押圧して駆動することが可能となる。この時、圧電素子は、縦振動および屈曲振動のそれぞれの共振点付近で励振されるので、それぞれの振動振幅が大きくなる。従って、突起の楕円軌道の振幅も大きくなり、被駆動体を高効率で駆動することが可能となる。
【0016】
ここで、突起が設けられた振動体の短辺が0.274よりも小さい場合には、縦振動の共振周波数が屈曲振動の共振周波数よりも大きくなり、良好な楕円軌道を描くことができない。この時、縦振動の共振周波数に対する屈曲振動の共振周波数の比は1.00以下である。また、縦振動の共振周波数に対する屈曲振動の共振周波数の比が1.03より大きい場合には、縦振動の共振点と屈曲振動の共振点とが離れてしまい、両振動の振幅を同時に良好にすることができない。
【0017】
本発明では、当接力調整手段は振動体に対して複数設けられていることが望ましい。
この発明では、複数の当接力調整手段で振動体の当接力を調整するので、一つの当接力調整手段にかかる負荷が軽減される。これにより、当接力調整手段の耐久性が向上する。また、一つの当接力調整手段の当接力の変化割合を小さく設定することが可能となるので、当接力の微調整が容易となる。
【0018】
本発明では、振動体は被駆動体に対して複数設けられていることが望ましい。
この発明によれば、被駆動体に対して振動体が複数設けられているので、一つの振動体が要する駆動力が小さくなる。よって、振動体の被駆動体に対する接触部分の摩耗が軽減され、駆動機構の耐久性が向上する。
【0019】
本発明では、振動体は当接力調整手段に対して複数設けられていることが望ましい。
この発明によれば、一つの当接力調整手段で複数の振動体が調整可能となるので、部品点数が減少し、駆動機構の製造コストが安価になる。また、複数の振動体間での被駆動体に対する当接力が均一となり、被駆動体への動力伝達効率が良好となる。
【0020】
本発明の装置は、前述の駆動機構を備えていることを特徴とする。
この発明によれば、前述の駆動機構を用いて種々の装置を構成しているので、前述のような効果が得られ、被駆動体の駆動力の低下が防止され、被駆動体の移動速度が簡単に調整される。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、後述する第二実施形態以降では、以下に説明する第一実施形態での構成部品と同じ部品および同様な機能を有する部品には同一符号を付し、説明を簡単にあるいは省略する。
【0022】
〔第一実施形態〕
図1には、第一実施形態にかかる駆動機構1の平面図が示されている。この図1において駆動機構1は、圧電素子22を備えた振動体2と、振動体2の被駆動体100に対する当接力を調整する当接力調整手段3とを備えている。振動体2および当接力調整手段3は円盤状の固定体4に固定されており、この固定体4の外周には環状の被駆動体100が、周方向に等間隔で配置された複数のボール41を介して回転可能に設けられている。
図2には、駆動機構1の振動体2の斜視図が示されている。この図2にも示されるように、振動体2は、略矩形平板状に形成された補強板21と、この補強板21の表裏両面に設けられた平板状の圧電素子22とを備えている。
補強板21は、ステンレス鋼、その他の材料から構成され、短辺の一端には幅方向略中央に凸部(突起)23が一体的に形成されている。補強板21は、凸部23の先端が被駆動体100の内周に当接され、内周の接線方向にほぼ直角に(つまり被駆動体100の径方向に沿うように)配置されている。また、補強板21の長手方向略中央には、幅方向両側に腕部24が一体的に形成されている。腕部24は、補強板21からほぼ直角に突出しており、これらの端部にはそれぞれ孔241が穿設されている。
圧電素子22は、補強板21の両面の略矩形状部分に接着されている。圧電素子22の材料は、特に限定されず、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT(登録商標))、水晶、ニオブ酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、メタニオブ酸鉛、ポリフッ化ビニリデン、亜鉛ニオブ酸鉛、スカンジウムニオブ酸鉛等の各種のものを用いることができる。
【0023】
また、圧電素子22の両面には、ニッケルおよび金などによる電極が、めっき、スパッタ、蒸着等の方法で形成されている。これらの電極のうち補強板21に対向する面の電極は、圧電素子22全面にわたって形成され、補強板21に接着されることで補強板21と導通している。また、圧電素子22表面には、溝が形成されることによって互いに電気的に絶縁された複数の電極が、長手方向に沿った中心線を軸として線対称に形成されている。つまり、圧電素子22を幅方向にほぼ三等分するように二本の溝25Aが形成され、これらの溝25Aで分割された三つの電極のうち両側の電極ではさらに長手方向をほぼ二等分するように溝25Bが形成されている。これらの溝25A,25Bにより、圧電素子22の表面には五つの電極22A,22B,22C,22D,22Eが形成される。これらの電極22A,22B,22C,22D,22Eのうち、対向線上両端に位置する電極22Aおよび電極22Eをつなぐリード線(図示せず)と、電極22Bおよび電極22Dをつなぐリード線(図示せず)と、電極22Cに接続されたリード線(図示せず)とは、固定体4に形成された孔(図示せず)を通って固定体4の反対側において、電極22A,22B,22C,22D,22Eに所定周波数の電圧を印加する印加装置(図示せず)に接続されている。なお、これらの電極は、補強板21を挟んで設けられた表裏両方の圧電素子22に同様に設けられており、例えば電極22Aの裏面側には電極22Aが形成されている。また、補強板21もリード線などにより印加装置に接続されている。
【0024】
圧電素子22の寸法や、厚さ、電極の分割形態などは、圧電素子22に繰り返し電圧が印加された時に、圧電素子22が長手方向に伸縮する、いわゆる縦振動と、圧電素子22の平面中心に対して点対称に、縦振動に直交する方向に屈曲する、いわゆる屈曲振動とが同時に現れるように適宜設定される。この時、縦振動の共振周波数と、屈曲振動の共振周波数とは互いに近接するように設定されていることが望ましく、縦振動の共振周波数に対する屈曲振動の共振周波数の比は、1.00より大きく、1.03以下であることが望ましい。また、圧電素子22の長辺と短辺との長さ比は、長辺を1とすると短辺が0.274以上であることが望ましい。
なお、振動体2に印加される電圧の周波数は、縦振動の共振周波数と屈曲振動の共振周波数との間、より好ましくは反共振周波数と屈曲振動の共振周波数との間で両方の振動が良好に現れる周波数を適宜選択する。なお、振動体2に印加される電圧の波形は特に限定されず、例えばサイン波、矩形波、台形波などが採用できる。
【0025】
当接力調整手段3は、振動体2を支持する支持部材31と、この支持部材31に一端が固定されたばね32と、ばね32の付勢力を調整する偏心ピン33とを備えている。
支持部材31は、硬質プラスチック、その他の材料で構成され、振動体2が固定される一対の固定部311と、これらの固定部311の間に一体的に形成され、固定体4にスライド可能に支持されるスライド部312とを備えている。固定部311には、腕部24の孔241に対応する位置にねじ部314が形成されている。このねじ部314に孔241を貫通してねじ26が螺合されることにより振動体2が固定部311に固定されている。
図3には、図1のIII−III断面図が示されている。この図3にも示されるように、スライド部312は、固定体4に凹状に形成されたスライド溝42に配置されており、幅方向略中央には、支持部材31が被駆動体100に対して近接離間する方向に平行となるように長孔313が複数箇所(本実施形態では二箇所)形成されている。この長孔313には、ねじが421が貫通しており、このねじ421は、固定体4に形成されたねじ孔43に螺合されている。これにより、支持部材31は長孔313の長手方向、つまり被駆動体100に対して近接離間方向にスライド可能となっている。
また、固定部311とスライド部312とは段差を有して形成されている。つまり固定部311およびスライド部312によって中央に凹状部分が形成されている。これにより、振動体2が固定部311に取り付けられた時に振動体2とスライド部312との間には隙間が形成されるので、振動体2が振動してもスライド部312やねじ421に干渉しないようになっている。
【0026】
図4には、図1のIV−IV断面図が示されている。この図4にも示されるように、支持部材31両側の固定部311において、振動体2の凸部23から遠い側の端部側面には、円柱状に突出したばね取付部315がそれぞれ形成されている。このばね取付部315にはばね32の一端が挿入されている。ばね32は、その伸縮方向が振動体2の近接離間反方向に平行となるように配置され、他端には円柱状の当接ピン321が挿入されている。この当接ピン321は、固定体4に設けられた円筒状のガイド部322を貫通してばね32の伸縮方向に摺動可能に支持されている。
偏心ピン33は、その回動軸331に対して円柱状部材のつば部332が偏心しており、回動軸331の周囲に形成されたねじが固定体4のねじ部44に螺合されることで固定体4に回動可能に支持されている。つば部332の側面には、ばね32の当接ピン321の先端が当接されている。また、つば部332の天面にはドライバなどが係合可能な凹状の操作溝333が形成されている。
このように、ばね32の一端が支持部材31に当接され、ばね32の他端の当接ピン321がつば部332の側面に当接されることにより、ばね32は支持部材31を被駆動体100に近接する方向に付勢している。したがって、振動体2の凸部23は適当な当接力で被駆動体100に押し付けられている。
【0027】
被駆動体100には、内周部分に断面円弧状の凹部101が形成され、この凹部101に振動体2の凸部23が当接されている。この凹部101の表面は、凸部23との摩耗を低減できるように滑らかに仕上げられている。この凹部101により、振動体2が振動して凸部23が被駆動体100の回転軸方向にずれた時に被駆動体100との係合が外れるのを防止している。また、被駆動体100内周に沿って等間隔に配置された複数のボール41は、被駆動体100の内周に形成された溝102と、固定体4の外周に形成された傾斜部分と、固定体4に固定された環状の押さえ板411の傾斜部分とで挟まれることによって溝102に収まっている。また、固定体4と押さえ板411との間には環状のボール保持部412が介装されている。このボール保持部412は、外周にボール41と同数の略半円形の切欠部分が形成され、この切欠部分にボール41がそれぞれ配置されることで、固定体4の外周で所定間隔を保っている。
【0028】
このような駆動機構1は、次のように動作する。
図5には振動体2の動作を示す模式図が示されており、図5(A)には、振動体2の縦振動が、図5(B)には屈曲振動が、図5(C)には凸部23の振動軌跡が示されている。
まず、凸部23を被駆動体100に当接した状態で、図示しない印加装置により振動体2の圧電素子22表面の電極と補強板21との間に電圧を繰り返し印加して振動体2を振動させる。この時、電極22Cおよび電極22B,22Dのみに選択的に電圧を印加する。すると、圧電素子22は図5(A)に示されるように、主に電極22Cによって長手方向に伸縮する縦振動を励振する。また、電極22Cの両側では電極22B,22Dによって圧電素子22が長手方向の中心線に対して非対称に伸縮するため、振動体2は図5(B)に示されるように、縦振動に直交する方向に、圧電素子22の平面中心に対して点対称に屈曲する屈曲振動も励振する。
【0029】
これらの縦振動および屈曲振動が同時に現れることにより、振動体2の凸部23は図5(C)に示されるように、縦振動と屈曲振動とが組み合わさった略楕円軌道を描いて振動する。凸部23は、略楕円軌道の一部で被駆動体100の凹部101に押し付けられて、被駆動体100との摩擦力によって被駆動体100を円周方向に間欠回転させる。これを所定の周波数で繰り返し行うことにより、被駆動体100は一方向に所定の回転速度で回転する。
【0030】
図6には、振動体2の振動特性が示されている。この図6において、線図は、駆動周波数に対する圧電素子22のインピーダンスを示している。この図6に示されるように、本実施形態の振動体2では、圧電素子22に印加する電圧の周波数に対して、インピーダンスが極小となる点が二点現れる。これらのうち周波数の低い方の一点は、縦振動の振動振幅が最大となる共振点で、この共振点における周波数が縦振動の共振周波数f1となる。一方、周波数の高い方の一点は、屈曲振動の振動振幅が最大となる共振点で、この共振点における周波数が屈曲振動の共振周波数f3となる。また、共振周波数f1,f3の間には、反共振周波数f2が現れる。
この図6からもわかるように、圧電素子22を縦振動の共振周波数f1と屈曲振動の共振周波数f3との間の周波数で駆動すると、縦振動および屈曲振動の両方の振幅を大きく得られ、被駆動体100を高効率で駆動できる。
【0031】
ここで、圧電素子22の寸法を、長辺の長さを1とした時に短辺の長さを0.274より小さくすると、縦振動の共振周波数f1が屈曲振動の共振周波数f3より大きくなり、凸部23において良好な楕円軌道を得ることができない。この時、縦振動の共振周波数f1に対する屈曲振動の共振周波数f3の比は、1.00以下である。また、両振動の共振周波数f1,f3の比が1.03よりも大きいと、縦振動の共振点と屈曲振動の共振点とが離れてしまい、両振動の振幅が同時に大きくなる振動周波数を設定することができない。
【0032】
被駆動体100の回転速度を変更する場合には、当接力調整手段3を操作する。例えば被駆動体100の回転速度を遅くする場合は、偏心ピン33の操作溝333にドライバなどを係合させて偏心ピン33をばね32が長くなる方向へ回動させる。つまり、回動軸331からつば部332の側面までの距離が短くなるように偏心ピン33を回動させると、当接ピン321がこの側面に追従することでばね32が伸びる。これによって、ばね32の支持部材31への付勢力が緩和される。この付勢力が支持部材31を介して振動体2に伝達され、振動体2の凸部23における被駆動体100への当接力が弱くなる。したがって、凸部23が楕円軌道上で被駆動体100と接触して摩擦力で被駆動体100を駆動できる範囲が狭くなり、伝達される回転トルクが弱くなるので、その結果被駆動体100の回転速度が遅くなる。
反対に、被駆動体100の回転速度を速くする場合には、偏心ピン33を回動させてばね32を縮める方向に調整する。すると、凸部23の被駆動体100に対する当接力が強くなり、伝達される回転トルクが強くなるので、被駆動体100の回転速度が速くなる。
また、被駆動体100を反対方向に回転させる場合には、圧電素子22に印加する電圧の電極を長手方向に沿った中心線を軸として線対称に切り替える。つまり、圧電素子22の電極22A,22Eおよび電極22Cに所定周波数の電圧を印加すれば、凸部23は反対方向の略楕円軌道を描いて振動する。これにより、被駆動体100を反対方向に駆動する。
【0033】
したがって、このような第一実施形態によれば、次のような効果が得られる。
(1) 駆動機構1に当接力調整手段3が設けられているので、振動体2の被駆動体100に対する当接力を調整することで被駆動体100の移動速度を簡単に調整することができる。この時、振動体2が所定周波数で被駆動体100に連続的に当接されるので、振動体2の振動、停止に伴う不安定な振動状態を除去できる。したがって、振動体2は常に安定して被駆動体100に接触でき、回転トルク(駆動力)の低下を防止できる。
【0034】
(2) 振動体2の凸部23が略楕円軌道を描き、その略楕円軌道の一部において被駆動体100を回転させるので、被駆動体100に常に一方向のみの駆動力を与えることができる。つまり、凸部23の楕円軌道において被駆動体100の回転方向とは反対向きの軌道上では凸部23が被駆動体100に押し付けられないので、被駆動体100の回転が阻止されるのを防止できる。特に本実施形態では被駆動体100が回転体なので、慣性力が働く方向と反対方向に凸部23の駆動力が伝達されにくく、被駆動体100の回転トルクの低下を防止できる。また、凸部23が被駆動体100の回転方向と反対向きの軌道上では被駆動体100への当接力が低下するので、凸部23および被駆動体100の摩耗を防止でき、駆動機構1の耐久性をより一層向上させることができる。
【0035】
(3) 当接力調整手段3がばね32と偏心ピン33とを備えて構成されているので、操作溝333を操作して偏心ピン33を回動させるだけで、簡単に当接力が調整できる。また、つば部332が円柱状に形成されているので、偏心ピン33の回動角度によって当接力を無段階で調整できる。よって、例えば固定体4の偏心ピン33の周囲に目盛をふるなどすれば、常に所望の当接力を得られる。また、つば部332の側面の形状、つまり本実施形態では円柱状の半径を適宜決定すれば、偏心ピン33の回動角度に対する当接力の変化の割合を設定できる。これにより当接力の微調整も簡単に実現できる。
さらに、偏心ピン33を手動で回動させることにより当接力を手動で調整できるので、当接力調整手段3の構成を簡単にできる。よって、駆動機構1のメンテナンスが簡単に行え、安価に製造できる。
【0036】
(4) 振動体2が被駆動体100の内周から当接されているので、振動体2を被駆動体100の内周に収納することができる。これにより、駆動機構1の小型化を促進できる。
【0037】
(5) 一つの振動体2に対してばね32および偏心ピン33(つまり当接力調整手段3)が二つずつ設けられているので、一つのばね32および偏心ピン33にかかる負担を軽減でき、これらの部材の耐久性を向上させることができる。また、これにより一つのばね32に必要なばね力の範囲が小さくなるので、ばね力の変化割合が小さいものを選択することができ、当接力を簡単に微調整できる。
【0038】
(6) 圧電素子22が適切な寸法に、つまり長辺の長さを1とした時短辺の長さが0.274以上で、かつ縦振動の共振周波数に対する屈曲振動の共振周波数の比が1.00より大きく1.03以下になるように設定されているので、縦振動および屈曲振動を同時に得ることができ、凸部23が良好な楕円軌道を描いて被駆動体100を回転駆動できる。この時、縦振動および屈曲振動の共振点が互いに近接しているので、両振動の振幅が共振点近傍の大きな振幅となり、被駆動体100を高効率で駆動できる。
【0039】
ここで、第一実施形態の具体的な実施例を挙げる。
圧電素子22の材料をPZTとし、寸法を短辺1.98mm、長辺7.00mm、厚み0.15mmとする。補強板21の材料はステンレス鋼(SUS301)で、厚みが0.1mmとなっている。凸部23は、平面形状が幅0.5mm、突出長さが0.45mmの略半円形状で、質量が約0.16mgである。また、腕部24は、略矩形状の補強板21から突出した略矩形状部分が、幅0.4mmで長さが0.5mmである。
このような振動体2では、凸部23を被駆動体100に当接せずに被駆動体100から反力を受けない状態で圧電素子22に電圧を印加した時、縦振動の共振周波数f1が約279kHz、屈曲振動の共振周波数f3が約285kHz、反共振周波数f2が約283kHzであった。従って、縦振動の共振周波数f1に対する屈曲振動の共振周波数f3の比は、約1.015となる。この振動体2に共振周波数f1と共振周波数f3との間の周波数で、またより望ましくは反共振周波数f2と共振周波数f3との間の周波数で電圧を印加すると、縦振動および屈曲振動がそれぞれ共振点付近で励振されて大きな振動振幅が得られ、凸部23が良好な楕円軌道を描くことがわかる。
【0040】
〔第二実施形態〕
次に、本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態は、第一実施形態における当接力調整手段の構成が異なるものである。
図7には、第二実施形態にかかる駆動機構1の平面図が、また、図8にはその側断面図が示されている。これらの図7および図8において、固定体4には、支持部材31にほぼ沿って凹部45が形成されている。ばね32の他端はこの凹部45から突出して設けられたばね取付部451に固定されている。ばね32は、予め設定されたばね力で支持部材31を被駆動体100に近接する方向に付勢している。
当接力調整手段3は、支持部材31に固定された磁石34と、固定体4に固定されたコイル35とを備えている。支持部材31において、振動体2の凸部23に遠い側の端部には固定体4から所定間隔を有し、かつ固定体4に平行な面を有する磁石取付部316が一体的に形成され、この磁石取付部316の固定体4に対向する面には磁石34がはめ込まれている。
【0041】
コイル35は導線が円筒状に巻かれることで構成され、その中心軸が磁石取付部316の面方向と直交するように、かつ磁石34にほぼ対向する位置に固定されている。この時、磁石34およびコイル35は、振動体2が被駆動体100に対して近接離間する方向に沿って配置され、かつ磁石34がコイル35よりも凸部23に近い位置に配置されている。コイル35の導線の両端部分は、固定体4に穿設された孔452を通って反対側においてコイル35に電流を流す電流発生装置(図示せず)に接続している。
このような駆動機構1において、第一実施形態と同様に電極を適宜選択して圧電素子22に繰り返し電圧を印加すると振動体2が振動して被駆動体100を回転させる。この時、振動体2の凸部23はばね32の付勢力に対応する当接力で被駆動体100に押し付けられており、凸部23の被駆動体100に対する当接力を調整する場合には、電流発生装置をONにしてコイル35に電流を流す。すると、コイル35内に磁場が発生し、磁石34が吸引されることにより、支持部材31がばね32のばね力に抗して被駆動体100から離間する方向に移動する。よって凸部23の被駆動体100に対する当接力が弱くなり、被駆動体100の回転速度が遅くなる。
【0042】
このような駆動機構1によれば、第一実施形態の(1)、(2)、(4)および(6)の効果と同様の効果が得られる他、次のような効果が得られる。
(7) 当接力調整手段3が磁石34およびコイル35を備えて構成されているので、コイル35に電流を流すことで簡単に当接力を調整できる。被駆動体100の回転中にも自動で当接力を調整することで、被駆動体100の回転速度を回転中に変更することができる。これにより、駆動機構1の回転速度を柔軟に調整でき、駆動機構1の汎用性を向上させることができる。
さらに、当接力調整手段3が磁石34およびコイル35とを備えて構成されているので、当接力を調整する際に互いが摺動することがない。よって、摩耗部品を減少でき、駆動機構1の耐久性を向上させることができる。
【0043】
〔第三実施形態〕
次に、本発明の第三実施形態について説明する。第三実施形態は、第一実施形態における被駆動体100および振動体2の支持機構が異なる。
図9には、第三実施形態にかかる駆動機構1の平面図が、また図10にはその側断面図が示されている。これらの図9および図10において、被駆動体100の外周には、歯形状の凸部103が形成されており、この外周の略半周にわたって、ベルト110が接続している。ベルト110の内周には、歯形状の凸部111が形成されており、この凸部111が被駆動体100の凸部103に噛合することでベルト110と被駆動体100とが互いに係合されている。なお、ベルト110および被駆動体100の係合は、歯付きベルトと歯付きプーリの他、平ベルトと平プーリ、VベルトとVプーリ、などの種々の組み合わせが採用できる。被駆動体100は、被駆動体100を挟んで固定体4と反対側に配置された円盤状のカバー5と固定体4との間に配置されている。固定体4およびカバー5には、それぞれ被駆動体100に対向する面に外周に沿って凸状の挟持部40,50が形成され、これらの挟持部40,50によって被駆動体100が挟持されている。固定体4には、三箇所に柱状の連結部47が設けられ、先端側に突起471が形成されている。この突起471が、カバー5に突起471と同数設けられた孔51に嵌合することによって、カバー5が固定体4に固定されている。また、固定体4には、被駆動体100の内周面104に接するガイド部46が複数個(本実施形態では二つ)設けられている。被駆動体100は、これらのガイド部46に内周面104で摺動することによって固定体4に回転可能に支持されている。
【0044】
振動体2は、表裏両面の圧電素子22に第一実施形態と同様の五つの電極が形成されている。腕部24の一方は、固定体4にねじ26で固定されており、他方には、ばね32の一端が固定されている。ばね32の他端には当接ピン321が固定され、この当接ピン321がつば部332の側面に当接されている。偏心ピン33の回動軸331は、一端が固定体4に回転可能に支持され、他端はカバー5に設けられた孔52を貫通して端部がカバー5の外部に露出している。回動軸331の端部には凹状の操作溝333が形成され、カバー5外部から操作可能となっている。ここで、孔52と回動軸331との嵌合は、偏心ピン33がばね32のばね力や駆動機構1の振動などによって回動しないような十分な摩擦力が確保されるように設定されている。あるいは、孔52および回動軸331にねじを形成して、これらを螺合によって係合していてもよい。
このような駆動機構1においては、振動体2に繰り返し電圧を印加すると被駆動体100がガイド部46に接触して摺動しながら回転する。被駆動体100の回転に伴ってベルト110の凸部111が凸部103に噛合して、ベルト110が移動する。被駆動体100の回転速度、つまりベルト110の移動速度を変更する時は、カバー5の外部から操作溝333にドライバなどを係合させて偏心ピン33を回動させる。するとばね32の付勢力が変化し、振動体2はねじ26を中心に回動することで被駆動体100に近接あるいは離間する方向に移動する。これにより振動体2の被駆動体100に対する当接力が変化して、被駆動体100の回転速度が変化する。
【0045】
このような駆動機構1によれば、第一実施形態の(1)、(2)、(3)、(4)および(6)の効果と同様の効果が得られる他、次のような効果が得られる。
(8) 振動体2が直接固定体4に固定され、第一実施形態のような支持部材31が不要なので、当接力調整手段3をより簡単な構造で構成できる。またこれにより、当接力調整手段3の部品点数を減少でき、駆動機構1を安価に製造できる。
【0046】
〔第四実施形態〕
次に、本発明の第四実施形態について説明する。第四実施形態は、本発明の駆動機構を装置としての車の玩具に適用したものである。
図11には、第四実施形態にかかる車11の全体図が示されている。この図11において、車11は、車体12に前輪11A,11Bと、後輪11C,11Dとが設けられている。前輪11A,11Bは、それぞれ第二実施形態の駆動機構1A,1Bを備えて構成され、固定体4A,4Bの中心に形成された軸48A,48Bによって車体12に固定されている。被駆動体100A,100Bの外周に形成された溝には環状のゴム112A,112Bが嵌めこまれ、これによって、接地面との摩擦力を高めてタイヤの役割を果たす。一方、後輪11C,11Dは、円盤状部材の外周にゴム112C,112Dが嵌めこまれ、車体12に回転可能に支持されている。
図12には、車11の概略構成ブロック図が示されている。この図12にも示されるように、前輪11A,11Bそれぞれの振動体2の電極に接続されたリード線は、軸48A,48B(図11)の中心に形成された孔(図示せず)を貫通して、車体12に取り付けられた共通の印加装置27に接続されている。また、コイル35A,35B(図7参照)は、軸48A,48Bを貫通して、車体12の電流発生装置39A,39Bにそれぞれ接続している。これらの印加装置27および電流発生装置39A,39Bには、車11の動作を制御する制御手段7が電気的に接続されている。
【0047】
このような車11では、 制御手段7からの走行信号によって印加装置27が振動体2A,2Bに同時に電圧を印加する。振動体2A,2Bは車11の前進方向に被駆動体100A,100Bを同じ回転速度で駆動し、これにより車11は前進する。制御手段7から低速走行の信号が送信されると、電流発生装置39A,39Bがこの信号を受信してONになり、それぞれのコイル35A,35Bに電流を流す。これにより、振動体2A,2Bの被駆動体100A,100Bに対する当接力が調整され、走行速度が遅くなる。
制御手段7から右折の信号が送信されると、電流発生装置39AはOFF、電流発生装置39BはONとなる。すなわち、前輪11Bの当接力のみが調整され、右の前輪11Bの回転速度が左の前輪11Aの回転速度よりも遅くなる。よって、車11は右に旋回する。逆に、左折する場合には、電流発生装置39AがON、電流発生装置39BがOFFされることによって、左の前輪11Aの回転速度が遅くなり、車11が左に旋回する。
また、制御手段7からの後進信号によって、印加装置27は電圧を印加する振動体2A,2Bの電極を変更し、振動体2A,2Bを逆方向に振動させる。これにより、被駆動体100A,100Bは逆回転し、車11が後進する。後進する場合にも、制御手段7からの信号によって、低速後進、右折および左折が調整できる。
【0048】
このような第四実施形態によれば、第二実施形態と同様に、駆動機構1が圧電素子を備えた振動体2を備えて構成されているので、第二実施形態と同様の効果を奏することができ、駆動機構1全体を薄く構成でき、車11の車輪などの小さい部分にも取り付けることができる。また、車体12に、印加装置27や電流発生装置39の動作を制御する制御手段7を設けて振動体2に電圧を印加するタイミング、コイル35に流す電流値などを制御しているので、車11の走行が自動でできる。あるいは、リモートコントローラなどによって制御手段に無線で指令を送信すれば、遠隔操作をすることも可能となる。
【0049】
なお、本発明は前述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、第一実施形態では操作溝333にドライバなどを係合させて偏心ピン33を手動で回動させていたが、これに限らず自動で調整されるように構成してもよい。この場合には、例えば図13に示されるように、当接力調整手段3を駆動する駆動手段6を組み込めばよい。
図13には、駆動手段6が組み込まれた駆動機構1の全体図が示されており、図13(A)には駆動機構1の平面図、図13(B)にはそのB−B断面図が示されている。この図13において、駆動手段6は、二つの偏心ピン33の回動軸331に固定体4を挟んで反対側においてそれぞれ固定される歯車61と、この歯車61に噛合する歯車62と、歯車62の回転軸に固定されるステッピングモータなどのモータ63とを備えている。モータ63を所定角度回転させると、回転軸に固定された歯車62がともに回転し、この回転力が歯車61に伝達され、偏心ピン33を所定角度回動させる。これにより、凸部23の被駆動体100に対する当接力を自動で調整できる。このような駆動手段6を備えた駆動機構1では、二つの偏心ピン33を一つのモータ63で同時に同角度回動させることができるので、支持部材31の両側におけるばね32の付勢力を同じにすることができ、左右の当接力のバランスを常に良好に保てる。
このように、各実施形態において当接力調整手段3は手動で調整できるものあるいは自動で調整できるもののどちらでもよい。
【0050】
振動体2は、各実施形態において環状の被駆動体100に対して内側から当接されていたが、これに限らず例えば外側から被駆動体100を駆動してもよい。
図14には、本発明の駆動機構1が適用された装置としての液体吐出装置13の平面図が示されている。この図14に示されるように、振動体2は被駆動体であるロータ105に外側から当接されていてもよい。図14において、液体吐出装置13は、内部に液体が流通するチューブ131と、チューブ131の上を転動して内部の液体を順次送液するボール132と、ボール132をチューブ131側に押圧しながら転動させるロータ105とを備えている。ロータ105の外周側面には振動体2の凸部23が当接されている。凸部23は、振動体2の対角線上両端に圧電素子22の短辺から突出するように形成されている。また、圧電素子22表面には、全面に電極が形成されて印加装置に接続されている。振動体2は長さ方向略中央を腕部24によって片側から支持されている。腕部24はねじ26によって基部(固定体)49に固定されている。腕部24には略U字形の弾性部36が一体的に形成されており、この弾性部36の端部にはねじ37の先端が側面から略直角に当接されている。ねじ37は基部49に螺合され、先端が弾性部36側に進退可能に支持されている。
【0051】
振動体2の圧電素子22に電圧を印加すると、圧電素子22は長手方向に伸縮する。この時、凸部23が対角線上両端に設けられているので、振動体2の形状が長手方向の中心線に対して非対称となる。従って圧電素子22には重量のアンバランスが生じ、圧電素子22は縦振動と同時に屈曲振動を励振する。これにより、凸部23は略楕円軌道を描いて振動し、ロータ105を回転させる。ロータ105の押圧力によってボール132がチューブ131を押しつぶしながら転動すると、二つのボール132の間に挟まれたチューブ131内部の液体は順次送液されてチューブ131の開口端から吐出される。凸部23のロータ105に対する当接力の調整は、ねじ37を回転させて先端を進退させることによって弾性部36の付勢力を変更する。これによって振動体2がねじ26を中心に回動してロータ105への当接力が変更される。
このようにロータ105を外側から駆動すると、ロータ105と振動体2とを平面的に配置することができ、液体吐出装置13の薄型化が促進できる。また、ロータ105を外側から駆動しても各実施形態と同様に駆動力を低下させることなく回転速度を変更できるので、振動体2と被駆動体100,104との位置関係は任意に設定できる。
【0052】
振動体2は、各実施形態では一つの被駆動体100に対して一つ設けられていたが、これに限らず例えば図15に示されるように複数設けられていてもよい。図15には、本発明の駆動機構1の変形例を示す平面図が示されており、この図15おいて、振動体2は三つ設けられて固定体4にそれぞれ固定され、それぞれの凸部23が被駆動体100に対して所定の角度を有して当接されている。腕部24は、振動体2を長さ方向略中央で片側から支持し、ねじ26によって固定体4に回転可能に固定されている。腕部24には、円弧状の弾性部36が一体的に形成され、その一端が略三角形状の偏心ピン38の側面に当接されている。偏心ピン38は、その回転軸が固定体4に螺合などによって回動可能に支持されている。
このような駆動機構1においては、三つの振動体2に同時に電圧が印加されて被駆動体100を駆動する。凸部23の被駆動体100に対する当接力を調整する場合には、偏心ピン38を回動させて、弾性部36の付勢力を変更する。これにより、振動体2はねじ26を中心に回動し、被駆動体100に対する当接力が変更される。このような構成の駆動機構1では、一つの被駆動体100に対し複数の振動体2が設けられているので、各振動体2の駆動力を軽減でき、振動体2の耐久性を向上させることができる。
また、各実施形態では一つの当接力調整手段3に対して一つの振動体2が設けられていたが、これに限らず前述の構成のように一つの当接力調整手段3で複数の振動体2の当接力を同時に調整してもよい。この場合には、複数の振動体2の当接力を簡単に調整でき、また各振動体2の当接力が均一になるので、良好な動力伝達効率で被駆動体100を駆動することができる。
【0053】
偏心ピン33の形状は、各実施形態においては円形であったが、これに限らず前述のような略三角形状や変形形状など、用途や当接力調整範囲などを勘案して任意の形状を採用してよい。
また、コイル35の断面形状は、第二実施形態では円形であったが、これに限らずコイル35の断面形状や巻き数、断面積などは支持部材31および振動体2の重量や、振動体2の被駆動体100に対する当接力調整範囲などを勘案して適宜決定されている。また、コイル35に鉄心などを挿入してもよい。
ばね32は、各実施形態では支持部材31において、凸部23が配置されている側とは反対側の端部に固定されていたが、このような構成に限らない。例えば、ばね32は支持部材31において凸部23が配置されている側の端部に取り付けられ、ばね32の引っ張り力によって凸部23を被駆動体100に押し付けるように構成されていてもよい。また、第一実施形態のばね32は、支持部材31の両側に二つ設けられていたが、これに限らず略中央に一つ設けられて、支持部材31を被駆動体100側へ付勢するものであってもよい。
磁石34およびコイル35を用いた当接力調整手段3においては、コイル35が磁石34よりも凸部23に近い位置に配置されていてもよい。この場合には、コイル35に電流を流して磁石34を引きつけ、これによって凸部23を被駆動体100に押し付けて調整する。また、磁石34は支持部材31に固定され、コイル35は固定体4に固定されていたが、これに限らず支持部材31にコイル35が取り付けられ、固定体4に磁石34が取り付けられていてもよい。さらに、磁石34およびコイル35は、複数個設けられていてもよい。
【0054】
当接力調整手段3の構成は、第一実施形態および第三実施形態ではばね32および偏心ピン33によるものであり、また第二実施形態および第四実施形態では磁石34およびコイル35によるものであったが、これらに限らない。例えば、第一実施形態の支持部材31の位置を、ばね32を介さずに直接調整するように構成されていてもよい。要するに、振動体2の被駆動体100に対する当接力を調整できる構造であれば任意である。
また、当接力調整手段3は第一実施形態および第三実施形態においては無段階に調整可能であったが、これに限らない。例えば第一実施形態のばね32の当接ピン321を固定体4に形成した係止部分に当接させ、当接ピン321と係止部分との間に所定厚さのブロックを介装してばね32を伸縮させてばね力を調整してもよい。この構成によれば、ブロックの厚さや、枚数を調整することによってばね32のばね力、つまり凸部23の被駆動体100に対する当接力を多段階に調整できる。
あるいは反対に、第二実施形態および第四実施形態においては電流発生装置をON,OFFさせることによって、二段階で当接力を調整していたが、これに限らない。つまり、例えばコイル35に流す電流値を無段階に調整することによって、凸部23の被駆動体100に対する当接力を任意に調整してよい。
【0055】
振動体2の振動は、各実施形態では縦振動および屈曲振動を組み合わせた楕円軌道であったが、これに限らず、例えば縦振動のみあるいは屈曲振動のみでもよく、被駆動体100を駆動できる振動形態であれば任意である。
被駆動体100は、各実施形態では回転運動するものであったが、これに限らず例えば直線運動するものでもよい。つまり、例えば棒状部材の側面に直接振動体の凸部を当接して、振動体を振動させることによって棒状部材を長さ方向に移動させる構造であってもよい。この場合でも、各実施形態と同様に駆動力を低下させることなく速度を変更できる。要するに、被駆動体の形状は限定されない。
また、被駆動体の駆動方法は、各実施形態では振動体を楕円軌道に沿って振動させ、その軌道の一部において被駆動体と接触することで、摩擦力によって被駆動体を移動させていたが、これに限らない。例えば振動体と被駆動体とを常に接触させ、振動体に印加する電圧を調整して、振動体が伸びる時には速く、そして戻る時にはゆっくりと変形させる。振動体が伸びる時には被駆動体を振動体に対して滑らせ、その後振動体が戻るときに摩擦力で被駆動体を振動体に追従させて間欠移動させてもよい。要するに被駆動体の駆動方法は、振動体の振動によって被駆動体が駆動されるものであれば、任意である。
【0056】
本発明の駆動機構は第四実施形態では玩具の車11に適用されていたが、これに限らず例えば前述の液体吐出装置13等の様々な装置に組み込むことができる。このような場合でも、前述の各実施形態における効果と同様の効果が得られ、駆動力を低下させることなく被駆動体の速度を変更することができる。
【0057】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
したがって、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【発明の効果】
このような本発明によれば、圧電素子を備えた振動体に被駆動体に対しての当接力を調整する当接力調整手段を設けたので、振動体を連続的に振動させながら被駆動体の速度を変更でき、駆動力の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる駆動機構を示す平面図。
【図2】本発明の第一実施形態にかかる支持部材を示す斜視図。
【図3】図1のIII-III断面図。
【図4】図1のIV-IV断面図。
【図5】本発明の第一実施形態にかかる振動体の動作を示す模式図。
【図6】本発明の第一実施形態にかかる振動体の振動特性を示す図。
【図7】本発明の第二実施形態にかかる駆動機構を示す平面図。
【図8】本発明の第二実施形態にかかる駆動機構を示す側断面図。
【図9】本発明の第三実施形態にかかる駆動機構を示す平面図。
【図10】本発明の第三実施形態にかかる駆動機構を示す側断面図。
【図11】本発明の第四実施形態にかかる車を示す平面図。
【図12】本発明の第四実施形態にかかる制御手段を示すブロック図。
【図13】本発明の駆動機構の変形例を示す図。
【図14】本発明の駆動機構の適用例を示す図。
【図15】本発明の駆動機構の別の変形例を示す図。
【符号の説明】
1…駆動機構
2…振動体
3…当接力調整手段
4…固定体
7…制御手段
11…車(装置)
13…液体吐出装置(装置)
22…圧電素子
23…凸部(突起)
27…印加装置
31…支持部材
32…ばね
33…偏心ピン
34…磁石
35…コイル
39…電流発生装置
46…ガイド部
100…被駆動体
105…ロータ(被駆動体)
110…ベルト
Claims (14)
- 圧電素子を備えた振動体を被駆動体に当接して、前記振動体の振動によって被駆動体を駆動する駆動機構において、前記振動体の前記被駆動体に対する当接力を調整する当接力調整手段を備えていることを特徴とする駆動機構。
- 請求項1に記載の駆動機構において、前記振動体は、その先端が略楕円軌道を描くとともに、この略楕円軌道の一部において前記被駆動体に当接され、前記振動体および前記被駆動体の摩擦力によって前記被駆動体を駆動することを特徴とする駆動機構。
- 請求項1または請求項2に記載の駆動機構において、前記当接力調整手段は、前記当接力が手動で調整可能に設けられていることを特徴とする駆動機構。
- 請求項1または請求項2に記載の駆動機構において、前記当接力調整手段は、前記当接力が自動で調整可能に設けられていることを特徴とする駆動機構。
- 請求項1から請求項4のいずれかに記載の駆動機構において、前記被駆動体は回転体であり、前記振動体は前記被駆動体の内周側から当接されていることを特徴とする駆動機構。
- 請求項1から請求項4のいずれかに記載の駆動機構において、前記被駆動体は回転体であり、前記振動体は前記被駆動体の外周側から当接されていることを特徴とする駆動機構。
- 請求項1から請求項6のいずれかに記載の駆動機構において、前記当接力調整手段は、前記振動体の前記被駆動体に対する当接力を無段階に調整可能に設けられていることを特徴とする駆動機構。
- 請求項1から請求項7のいずれかに記載の駆動機構において、前記当接力調整手段は、前記振動体を支持する支持部材と、この支持部材を前記被駆動体に対して近接離間可能に支持する固定体と、一端が前記支持部材に固定されて前記支持部材を付勢するばねと、前記固定体に設けられ前記ばねの付勢力を調整する偏心ピンとを備えていることを特徴とする駆動機構。
- 請求項1から請求項7のいずれかに記載の駆動機構において、前記当接力調整手段は、前記振動体を支持する支持部材と、この支持部材を前記被駆動体に対して近接離間可能に支持する固定体と、磁力によって互いに吸引反発する磁石およびコイルとを備え、前記磁石および前記コイルのいずれか一方が前記支持部材に固定されるとともに、前記磁石および前記コイルのいずれか他方は前記固定体に固定されていることを特徴とする駆動機構。
- 請求項1から請求項9のいずれかに記載の駆動機構において、前記圧電素子は、略矩形に形成され、前記圧電素子の長辺を1とすると、短辺は0.274以上に形成され、前記振動体の短辺には、被駆動体に当接して当該被駆動体を駆動する突起が設けられ、前記圧電素子の長手方向に伸縮する縦振動と、前記圧電素子の平面中心に対して点対称に、前記縦振動に直交する方向に屈曲する屈曲振動とにおいて、縦振動の共振周波数に対する屈曲振動の共振周波数の比が、1.00より大きく、1.03以下となるように設定されていることを特徴とする駆動機構。
- 請求項1から請求項10のいずれかに記載の駆動機構において、前記当接力調整手段は、前記振動体に対して複数設けられていることを特徴とする駆動機構。
- 請求項1から請求項11のいずれかに記載の駆動機構において、前記振動体は、前記被駆動体に対して複数設けられていることを特徴とする駆動機構。
- 請求項1から請求項12のいずれかに記載の駆動機構において、前記振動体は、前記当接力調整手段に対して複数設けられていることを特徴とする駆動機構。
- 請求項1から請求項13のいずれかに記載の駆動機構を備えた装置。
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---|---|---|---|
JP2003063364A JP2004166478A (ja) | 2002-09-24 | 2003-03-10 | 駆動機構およびこれを備えた装置 |
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2003
- 2003-03-10 JP JP2003063364A patent/JP2004166478A/ja not_active Withdrawn
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