JP2004163572A - 画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】特定の画像の記録媒体の複写物に、その複写物の情報を追跡する視認し難い色のパターンをその記録媒体の画像の画質を損なわないように形成しつつ、パターンの定着強度を向上できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置による画像形成の際、この画像形成装置に用いられる複数色のトナーのうち、視認し難い色のイエロートナーを用いて、複写物の情報を追跡するためのパターンが形成される。このイエロートナーは、軟化点以上の温度領域において、その貯蔵弾性率(G′)が他色のトナー(マゼンタトナー等)の貯蔵弾性率(G′)よりも小さくなるように設定されている。これにより、記録媒体の画像の画質を損なわないように形成しつつ、パターンの定着強度を向上できる。
【選択図】 図7
【解決手段】画像形成装置による画像形成の際、この画像形成装置に用いられる複数色のトナーのうち、視認し難い色のイエロートナーを用いて、複写物の情報を追跡するためのパターンが形成される。このイエロートナーは、軟化点以上の温度領域において、その貯蔵弾性率(G′)が他色のトナー(マゼンタトナー等)の貯蔵弾性率(G′)よりも小さくなるように設定されている。これにより、記録媒体の画像の画質を損なわないように形成しつつ、パターンの定着強度を向上できる。
【選択図】 図7
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真、静電記録、静電印刷などにおけるカラー画像を加熱定着により記録媒体に形成可能な画像形成装置の技術分野に属し、特に、少なくとも視認し難い色のトナーを含む複数色の可視のトナーを用いてカラー画像を記録媒体に形成可能な画像形成装置の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法として、光導電性物質からなる感光体上に静電荷像を形成し、次いで該静電荷像を現像ローラ上に担持したトナーを用いて現像し、感光体上に現像されたトナー画像を、直接、または中間転写体を介して紙等の記録媒体上に転写し、更に、記録媒体上のトナー画像を加熱ローラー等の定着ローラにより紙等の記録媒体に圧着加熱して定着することで、カラー画像を形成する画像形成装置が、例えばカラー複写機、カラープリンタ等により知られている。
【0003】
近年、このようなカラー複写機、カラープリンタ等の、カラー画像を形成することができる画像形成装置は、高画質なカラー画像を形成することができるようになっている。このため、この画像形成装置を利用して本来複写されるべきでない特定画像(例えば有価証券、紙幣)を不正に作成されるおそれが増大しつつある。
【0004】
そこで、装置に入力されたカラー画像データが示すカラー画像を複数色の可視の色材を用いて可視出力する際に、このカラー画像における前記複数色の可視の色材の内の人間の目に識別し難い色の色材であるイエロートナーを用いて装置固有の識別情報を表す特定パターンを付加させることで、この特定パターンを基に、このカラー画像を形成した画像形成装置を確実に特定できるようにするとともに、この特定パターンの付加によって、形成された画像が本来の画像から視覚的に変化することを抑制した画像処理装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
一方、このような画像形成装置に使用されるトナーとしては加熱ローラに溶融トナーが付着する、いわゆる低温または高温オフセット現象を生じないこと、また、記録媒体上に定着されたトナー画像の定着強度に大きいこと等の優れた定着性が要求される。
加熱ローラを使用した定着にあっては、トナーの定着性、耐オフセット性を制御する要因として、トナーにおける動的粘弾性である貯蔵弾性率と損失弾性率が影響することは良く知られている。貯蔵弾性率と損失弾性率は、一般的な粘弾性を有する物質の振動実験において定義される粘弾性特性であり、複素弾性率の実数部分を貯蔵弾性率(G′)、虚数部分を損失弾性率(G″)といい、具体的には貯蔵弾性率はトナーの弾性の度合を示す指標とされ、また、損失弾性率は粘性の度合を示す指標とされている。
【0006】
また、一般に、ポリマーからなる結着樹脂を含有するトナーは、一定歪みを与えた場合、発生する応力が指数的に減衰する応力緩和挙動を示す。そこで、定着ローラへのトナーのオフセットや紙等の記録媒体上のトナーの定着強度等のトナー画像の定着性の改良や着色剤の分散性の改良を目的として、従来、これらのトナーの特性を定量的に確認するために、前述の動的粘弾性測定から求められるトナーの緩和弾性率および緩和時間が用いられている。
【0007】
応力緩和挙動は、結着樹脂の粘弾性や樹脂内に分散された離型剤等の構造、大きさ、量等の影響を大きく受けるため、トナーの溶融状態を応力緩和挙動、つまり緩和弾性率Gおよび緩和時間を用いて表すことができる。そこで、トナー定着時のトナーの溶融状態を粘弾性特性である緩和弾性率および緩和時間を用いて表すことで、トナー画像の定着性および離型剤等の分散性をそれぞれ改良することが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【特許文献1】
特許第2614369号公報(請求項1、段落番号[0002]、[0004]、[0062])
【特許文献2】
特開2000−81721号公報(段落番号[0016]〜[0018])
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、画像形成装置による紙幣等の有価証券類の本来複写されるべきでない画像が形成された記録媒体の偽造防止の観点から、画像形成装置は本来複写されるべきでない画像の複写画像に、記録媒体に形成されたカラー画像の情報を追跡するためのパターン(以下、追跡パターンともいう;特許文献1における特定パターンに相当)を付加形成するが、複写されてもよい通常一般の画像の複写画像にも追跡パターンを付加形成するようになる。このため、本来複写されてもよい画像の複写画像が本来の画像から視覚的に変化することを抑制する、つまり、画質を損なわないようにする必要がある。このような画質を損なわないという制約上、追跡パターンは画像が形成されない余白の部分に形成されることが望ましい。
【0009】
ところが、前述のような紙幣等の有価証券類では、一般に高度な印刷技術を用いることにより偽造の防止を図っており、いきおい、記録媒体である紙は印刷部分が多くなって余白が少なりがちである。したがって、追跡パターン画像は本来の画像の複写部分に形成されるようになり、この追跡パターン画像を形成する視認し難い色のトナーが紙から剥離し易くなる。このため、追跡パターンの判定が難しくなるという問題がある。
【0010】
しかしながら、前述の特許文献1に開示の画像処理装置では、単に視認し難い色のトナーで特定のパターンを形成するだけであり、この特定パターンを形成するトナーの紙からの剥離については考慮されていない。このため、複写物に特定パターンを付加しても、その特定パターンが紙から容易に剥離して特定パターンの判定が難しくなるという問題が潜在する。
一方、前述の特許文献2には、トナー定着時のトナーの溶融状態を粘弾性特性である緩和弾性率および緩和時間を用いて表すことで、トナー画像の定着性を改良することが単に開示されているだけであり、前述のような、視認し難い色のトナーの紙からの剥離による追跡パターンの判定の困難さの問題については何ら開示されていない。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、特定の画像の記録媒体の複写物に、その複写物の情報を追跡する視認し難い色のパターンをその記録媒体の画像の画質を損なわないように形成しつつ、パターンの定着強度を向上できる画像形成装置を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するために、本発明の画像形成装置は、少なくとも視認し難い色のトナーを含む複数色の可視のトナーを用いてカラー画像を記録媒体に形成可能な画像形成装置において、前記視認し難い色のトナーが少なくとも結着樹脂および着色剤を含有し、この視認し難い色のトナーが、軟化点以上の温度領域において、その貯蔵弾性率(G′)が他色のトナーの貯蔵弾性率(G′)よりも小さくなるように設定されていることを特徴としている。
また、本発明は、前記カラー画像を記録媒体の両面に形成可能であることを特徴としている。
【0013】
更に、本発明は、前記視認し難い色のトナーがイエロートナーであることを特徴としている。
更に、本発明は、前記視認し難い色のトナーがイエロートナーであり、他の複数色のトナーが、少なくともマゼンタトナーおよびシアントナーであることを特徴としている。
【0014】
更に、本発明は、前記複数色のトナーが、いずれも、イソシアネート基を2個以上含有する化合物と、活性水素をもつ官能基を2個以上含有する化合物(活性水素含有成分)との重合によって得られる、ウレタン結合あるいはウレア結合を主鎖に有するポリマーを結着樹脂として含有していることを特徴としている。
【0015】
【発明の作用および効果】
本発明の画像形成装置においては、紙等の記録媒体の両面に形成可能な画像形成装置に用いられる、少なくとも視認し難い色のトナーを含む複数色の可視のトナーのうち、少なくとも視認し難い色のトナーが少なくとも結着樹脂および着色剤を含有し、この視認し難い色のトナーは、軟化点以上の温度領域において、その貯蔵弾性率(G′)が他色のトナーの貯蔵弾性率(G′)よりも小さくなるように設定されたトナーである。
【0016】
このような視認し難い色のトナーは、紙等の記録媒体にトナー画像が形成されて軟化点以上の温度領域で加熱定着されるが、このとき、その貯蔵弾性率(G′)が他色の貯蔵弾性率(G′)より小さくなる。これにより、視認し難い色のトナーが加熱定着により紙等の記録媒体へ浸透し、その結果、視認し難い色のトナーが紙等の記録媒体から剥離し難くなる。
【0017】
したがって、記録媒体に形成された視認し難い色のトナー画像の定着強度を向上させることができる。これにより、記録媒体に形成されたカラー画像の情報を追跡するためのパターンを確実に付加形成することができる。また、複写されてもよい通常一般のカラー画像の複写像にもこの追跡パターンが付加形成されるようになるが、この場合には、視認し難い色のトナーが用いられることで、通常一般のカラー画像の複写像に追跡パターンが付加形成されても、この追跡パターンは人間の目には見えず、通常一般のカラー画像の画質を損なわない。
【0018】
特に、紙等の記録媒体の両面に画像を形成する場合、最初に記録媒体の第1面にトナー画像が形成されて加熱定着された後、記録媒体の第2面にトナー画像が形成されて加熱定着されるため、記録媒体が定着器を2回通過するようになるが、第2面の定着時に、第1面に形成された視認し難い色のトナーが再加熱定着時に紙等の記録媒体へ更に浸透し、その結果、視認し難い色のトナーが紙等の記録媒体からより一層剥離し難くなる。したがって、記録媒体の両面に画像を形成する場合、最初の第1面に形成された視認し難い色のトナー画像の定着強度を効果的に向上させることができる。
【0019】
これにより、例えば、余白がほとんどない両面印刷物であり、本来複写されるべきでない特定画像が形成される印刷物である紙幣等の有価証券類等が複写されようとする際に、偽造防止のための追跡パターンが有価証券類等に印刷された画像の画質を損なわないように視認し難い色のトナーでその複写物に形成されるが、加熱定着後の視認し難い色のトナー画像の定着強度が高いことから、視認し難い色のトナーによる追跡パターンがより確実に形成されるようになる。したがって、有価証券類等の偽造を効果的に防止できる。
【0020】
また、本発明のトナーによれば、視認し難い色のトナーとしてイエロートナーを用いることで、視認し難い色のトナー画像の定着強度を効果的に向上させつつ、視認し難い色のトナーによる追跡パターンをより確実に形成できる。
更に、本発明のトナーによれば、イソシアネート基を2個以上含有する化合物と、活性水素をもつ官能基を2個以上含有する化合物(活性水素含有成分)との重合によって得られる、ウレタン結合あるいはウレア結合を主鎖に有するポリマーを結着樹脂として含有することにより、貯蔵弾性率G′が極小値を有し、高温オフセットを効果的に防止でき、記録媒体に形成された視認し難い色の追跡パターン画像をより確実に作成することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる画像形成装置の実施の形態について説明する。
(画像形成装置)
本発明の画像形成装置は、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、およびブラックトナーの4色のトナーを用いて、紙等の記録媒体の両面にフルカラー画像を形成することができる画像形成装置である。
【0022】
なお、本発明の画像形成装置はこれらの4色のトナーを用いることに限定されるものではなく、少なくとも視認し難い色のイエロートナーと他の1色以上のトナーとの複数色のトナーを用いてカラー画像を形成する画像形成装置にも適用することができる。しかし、以下の説明では、この例の画像形成装置が前述の4色のトナーを用いて、紙等の記録媒体の両面にフルカラー画像を形成する画像形成装置であるとして説明する。
【0023】
次に、本発明の画像形成装置について、詳細に説明する。
図1は、本発明の画像形成装置の一例を示す全体構成の模式的断面図である。図中、10は画像形成装置、10aはハウジング、10bは扉体、11は紙搬送ユニット、15はクリーニング手段、17は像担持体、18は画像転写搬送手段、20は現像手段、21はスキャナ手段、30は給紙ユニット、40は定着装置、Wは露光ユニット、Dは画像形成ユニットである。
【0024】
図1に示すように、画像形成装置10は、ハウジング10aと、ハウジング10aの上部に形成された排紙トレイ10cと、ハウジング10aの前面に開閉自在に装着された扉体10bを有し、ハウジング10a内には、露光ユニット(露光手段)W、画像形成ユニットD、画像転写搬送手段18を有する転写ベルトユニット29、給紙ユニット30が配設され、扉体10b内には紙搬送ユニット11が配設されている。各ユニットは、本体に対して着脱可能な構成であり、メンテナンス時等には一体的に取り外して修理または交換を行うことが可能な構成になっている。
【0025】
画像形成ユニットDは、複数(図示例では4つ)の異なる色の画像を形成する画像形成ステーションY(イエロー用),M(マゼンタ用),C(シアン用),K(ブラック用)を備えている。そして、各画像形成ステーションY,M,C,Kには、それぞれ、感光ドラムからなる像担持体17と、像担持体17の周囲に配設された、コロナ帯電手段からなる帯電手段19および現像手段20を有する。これら各画像形成ステーションY,M,C,Kは、転写ベルトユニット29の下側に斜めアーチ状のラインに沿って像担持体17が上向きになるように並列配置されている。なお、各画像形成ステーションY,M,C,Kの配置順序は任意である。
【0026】
転写ベルトユニット29は、ハウジング10aの下側に配設され図示しない駆動源により回転駆動される駆動ロール12と、駆動ロール12の斜め上方に配設される従動ロール13と、テンションロール14と、これら3本のロール間に張架されて図1において矢印で示す反時計方向へ循環駆動される中間転写ベルトからなる画像転写搬送手段18と、画像転写搬送手段18の表面に当接するクリーニング手段15とを備えている。従動ロール13、テンションロール14および画像転写搬送手段18は、駆動ロール12に対して図で左上方に傾斜するように配設されるとともに、画像転写搬送手段18が反時計方向へ回転することより、画像転写搬送手段18の駆動時のベルト搬送方向が下向きになるベルト面18aが下方に位置し、搬送方向が上向きになるベルト面18bが上方に位置するようにされている。
【0027】
したがって、各画像形成ステーションY,M,C,Kも駆動ロール12に対して図1で左上方に傾斜する方向に配設されることになる。そして、像担持体17は、アーチ状のラインに沿って画像転写搬送手段18の搬送方向下向きのベルト面18aに接触され、図1に矢印で示すように時計方向に、つまり画像転写搬送手段18と接触する部分が画像転写搬送手段18の搬送方向と同方向に回転駆動される。可撓性を有する無端スリーブ状の画像転写搬送手段18は、像担持体17に対して上側から被せるように略同一の巻き付け角度で接触させるため、像担持体17と画像転写搬送手段18との間の接触圧やニップ幅は、テンションロール14により画像転写搬送手段18に付与される張力、像担持体17の配置間隔、巻き付け角度(アーチの曲率)などを制御することにより調整することができる。
【0028】
駆動ロール12は、2次転写ロール39のバックアップロールを兼ねている。駆動ロール12の周面には、例えば厚さ3mm程度、体積抵抗率が105 Ω・cm以下のゴム層が形成されており、金属製の軸を介して接地することにより、2次転写ロール39を介して供給される2次転写バイアスの導電経路としている。このように駆動ロール12に高摩擦かつ衝撃吸収性を有するゴム層を設けることにより、2次転写部へシート材が進入する際の衝撃が画像転写搬送手段18に伝達し難く、画質の劣化を防止することができる。また、駆動ロール12は、その径を従動ロール13、バックアップロール14の径より小さくすることにより、2次転写後のシート材がシート材自身の弾性力で剥離し易くすることができる。また、従動ロール13を後述するクリーニング手段15のバックアップロールとして兼用させている。
なお、画像転写搬送手段18を駆動ロール12に対して図1で右上方に傾斜するように配設し、これに対応して各画像形成ステーションY,M,C,Kも駆動ロール12に対して図1で右上方に傾斜するように斜めアーチ状に沿って配設してもよい。
【0029】
クリーニング手段15は、搬送方向下向きのベルト面18a側に設けられ、二次転写後に画像転写搬送手段18の表面に残留しているトナーを除去するクリーニングブレード15aと、回収したトナーを搬送するトナー搬送部材15bを備えている。クリーニングブレード15aは、従動ロール13への画像転写搬送手段18の巻きかけ部において画像転写搬送手段18に当接されている。また、画像転写搬送手段18の裏面には、後述する各画像形成ステーションY,M,C,Kの像担持体17に対向して1次転写部材16が当接され、1次転写部材16には転写バイアスが印加されている。
【0030】
露光手段Wは、斜め方向に配設された画像形成ユニットDの斜め下方に形成された空間に配設されている。また、露光手段Wの下部でハウジング10aの底部には給紙ユニット30が配設されている。露光手段Wは、全体がケースに収納され、ケースは、搬送方向下向きのベルト面の斜め下方に形成される空間に配設されている。ケースの底部には、ポリゴンミラーモータ21a、ポリゴンミラー(回転多面鏡)21bからなる単一のスキャナ手段21を水平に配設されるとともに、各色の画像信号により変調される複数のレーザ光源23からのレーザビームをポリゴンミラー21bで反射させ各像担持体上に偏向走査する光学系Bには、単一のf−θレンズ22および各色の走査光路が像担持体17にそれぞれ非平行になって折り返すように複数の反射ミラー24が配設されている。
【0031】
上記構成からなる露光手段Wにおいては、ポリゴンミラー21bから各色に対応した画像信号が、共通のデータクロック周波数に基づいて変調形成されたレーザビームで射出され、f−θレンズ22、反射ミラー24を経て、各画像形成ステーションY,M,C,Kの像担持体17に照射され、潜像が形成される。反射ミラー24を設けることにより走査光路を屈曲させ、ケースの高さを低くすることが可能となり光学系のコンパクト化が可能となる。しかも、各画像形成ステーションY,M,C,Kの像担持体17への走査光路長は同一の長さになるように反射ミラー24が配置されている。このように各画像形成ユニットDに対する露光手段Wのポリゴンミラー21bから像担持体17までの光路の長さ(光路長)が略同一の長さになるように構成することにより、各光路で走査された光ビームの走査幅も略同一になり、画像信号の形成にも特別な構成を必要としない。したがって、レーザ光源は、それぞれ異なる画像信号によってそれぞれ異なった色の画像に対応して変調されるにも関わらず、共通のデータクロック周波数に基づいて変調形成可能であり、共通の反射面を用いるため副走査方向の相対差から生じる色ずれを防止し、構造が簡単で安価なカラー画像形成装置を構成できる。
【0032】
また、この例の画像形成装置10では、その装置内の下方に走査光学系を配置することにより、画像形成装置10の駆動系が装置を支持するフレームへ与える振動による走査光学系の振動を最小限にすることができ、画質の劣化を防止することができる。とくに、スキャナ手段21をケースの底部に配置することにより、ポリゴンモータ21a自身がケース全体に与える振動を最小限にすることができ、画質の劣化を防止することができる。また、振動源であるポリゴンモータ21aの数を一つにすることによりケース全体に与える振動を最小限にすることができる。
【0033】
給紙ユニット30は、シート材が積層保持されている給紙カセット35と、給紙カセット35からシート材を一枚ずつ給送するピックアップロール36を備えている。紙搬送ユニット11は、二次転写部へのシート材の給紙タイミングを規定するゲートロール対37(一方のロールはハウジング10a側に設けられている)と、駆動ロール12および画像転写搬送手段18に圧接される二次転写手段としての二次転写ロール39と、主記録媒体搬送路38と、定着装置40と、排紙ロール対41と、両面プリント用搬送路42を備えている。
【0034】
(画像形成装置における定着装置)
図2ないし図6は、図1に示す画像形成装置における定着装置の詳細構造を示し、図2(a)は断面図、図2(b)は図2(a)のY−Y線に沿って矢印方向に見た断面図(装置の右半分は省略)、図3は図2(a)のX−X線に沿って矢印方向に見た断面図、図4は図2(a)で耐熱ベルトを除去した一部拡大断面図、図5は図4で耐熱ベルト3を装着した図、図6は図5でシート材の通過時の状態を示す図である。図中、1は熱定着ロール、1aはハロゲンランプ、1bはロール基材、1cは弾性体、2は加圧ロール、2aは回転軸、2bはロール基材、2cは弾性体、3は耐熱ベルト、4はベルト張架部材、4aは突壁、5はシート材、5aは未定着トナー像、6はクリーニング部材、7はフレーム、9はスプリング、Lは押圧部接線である。
【0035】
図2(a)に示すように、定着装置40は、熱定着ロール(以下、加熱ロールともいう)1、加圧ロール2、耐熱ベルト3、ベルト張架部材4、およびクリーニング部材6を備えている。
熱定着ロール1は、外径25mm程度、肉厚0.7mm程度のパイプ材をロール基材1bとして、その外周に厚み0.4mm程度の弾性体1cを被覆して形成され、ロール基材1bの内部に、加熱源として1,050W、2本の柱状ハロゲンランプ1aが内蔵されており、図2(a)に矢印で示す反時計方向に回転可能になっている。また、加圧ロール2は、外径25mm程度、肉厚0.7mm程度のパイプ材をロール基材2bとして、その外周に厚み0.2mm程度の弾性体2cを被覆して形成し、熱定着ロール1と加圧ロール2の圧接力を10kg以下、ニップ長を10mm程度で構成し、熱定着ロール1に対向して配置し、図2(a)に矢印で示す時計方向に回転可能になっている。
【0036】
このように、熱定着ロール1および加圧ロール2の外径が25mm程度の小径に構成されているため、定着後のシート材5が熱定着ロール1または耐熱ベルト3に巻き付くことがなく、シート材を強制的に剥がすための手段が不要となっている。また、熱定着ロール1の弾性体1cの表層には約30μmのPFA層を設けることで、その分剛性が向上する。これにより、各弾性体1c,2cの厚みは異なるが、両弾性体1c,2cは略均一な弾性変形をして、いわゆる水平ニップが形成され、また、熱定着ロール1の周速に対して耐熱ベルト3またはシート材5の搬送速度に差異が生じることもないので、極めて安定した画像定着が可能となる。
【0037】
また、熱定着ロール1の内部に、加熱源を構成する2本のハロゲンランプ1a,1aが内蔵されており、これらのハロゲンランプ1a,1aの発熱エレメントはそれぞれ異なった位置に配置されている。そして、各ハロゲンランプ1a,1aが選択的に点灯されることにより、後述する耐熱ベルト3が熱定着ロール1に巻き付いた定着ニップ部位とベルト張架部材4が熱定着ロール1に摺接する部位との異なる条件や、幅の広いシート材と幅の狭いシート材との異なる条件下での温度コントロールが容易に行われるようになっている。
【0038】
耐熱ベルト3は、加圧ロール2とベルト張架部材4の外周に張架されて移動可能とされ、熱定着ロール1と加圧ロール2との間に挟圧されるエンドレスの環状のベルトである。この耐熱ベルト3は0.03mm以上の厚みを有し、その表面(シート材5が接触する側の面)をPFAで形成し、また、裏面(加圧ロール2およびベルト張架部材4と接触する側の面)をポリイミドで形成した2層構成のシームレスチューブで形成されている。耐熱ベルト3は、これに限定されず、ステンレス管やニッケル電鋳管等の金属管、シリコン等の耐熱樹脂管等の他の材料で形成することもできる。
そして、この耐熱ベルト3の表面にはシリコーンオイル等の離型剤が塗布されず、本発明のこの例の定着装置40はオイルレス定着器として構成されている。
【0039】
ベルト張架部材4は、熱定着ロール1と加圧ロール2との定着ニップ部よりもシート材5搬送方向上流側に配設されるとともに、加圧ロール2の回転軸2aを中心として矢印P方向に揺動可能に配設されている。ベルト張架部材4は、シート材5が定着ニップ部を通過しない状態において、耐熱ベルト3を熱定着ロール1の接線方向に張架するように構成されている。シート材5が定着ニップ部に進入する初期位置で定着圧力が大きいと進入がスムーズに行われなくて、シート材3の先端が折れた状態で定着される場合があるが、このように耐熱ベルト3を熱定着ロール1の接線方向に張架する構成にすることで、シート材5の進入がスムーズに行われるシート材5の導入口部が形成でき、安定したシート材5の定着ニップ部への進入が可能となる。
【0040】
ベルト張架部材4は、耐熱ベルト3の内周に嵌挿されて加圧ロール2と協働して耐熱ベルト3に張力fを付与する略半月状のベルト摺動部材(耐熱ベルト3はベルト張架部材4上を摺動する)である。このベルト張架部材4は、耐熱ベルト3が熱定着ロール1と加圧ロール2との押圧部接線Lより熱定着ロール1側に巻き付けてニップを形成する位置に配置される。突壁4がはベルト張架部材4の軸方向一端または両端に突設されており、この突壁4は、耐熱ベルト3が軸方向端の一方に寄った場合に、この耐熱ベルト3がこの突壁4aに当接することで耐熱ベルト3の端への寄りを規制するものである。突壁4aの熱定着ロール1と反対側の端部とフレームとの間にスプリング9が縮設されていて、ベルト張架部材4の突壁4aが熱定着ロール1に軽く押圧され、ベルト張架部材4が熱定着ロール1に摺接して位置決めされる。
【0041】
耐熱ベルト3を加圧ロール2とベルト張架部材4とにより張架して加圧ロール2で安定して駆動するには、加圧ロール2と耐熱ベルト3との摩擦係数をベルト張架部材4と耐熱ベルト3との摩擦係数より大きく設定するとよい。しかし、摩擦係数は、耐熱ベルト3と加圧ロール2との間あるいは耐熱ベルト3とベルト張架部材4との間への異物の侵入や、耐熱ベルト3と加圧ロール2およびベルト張架部材4との接触部の摩耗などによって不安定になる場合がある。
【0042】
そこで、加圧ロール2と耐熱ベルト3の巻き付け角よりベルト張架部材4と耐熱ベルト3の巻き付け角が小さくなるように、また、加圧ロール2の径よりベルト張架部材4の径が小さくなるように設定する。これにより、耐熱ベルト3がベルト張架部材4を摺動する長さが短くなり、経時変化や外乱などに対する不安定要因から回避でき、耐熱ベルト3を加圧ロール2で安定して駆動することができるようになる。
【0043】
更に、クリーニング部材6が加圧ロール2とベルト張架部材4との間に配置されており、このクリーニング部材6は耐熱ベルト3の内周面に摺接して耐熱ベルト3の内周面の異物や摩耗粉等をクリーニングするものである。このように異物や摩耗粉等をクリーニングすることで、耐熱ベルト3をリフレッシュし、前述の摩擦係数の不安定要因を除去している。また、ベルト張架部材4に凹部4fが設けられており、この凹部4fは、耐熱ベルト3がら除去した異物や摩耗粉等の収納に好適である。
【0044】
ベルト張架部材4が熱定着ロール1に軽く押圧される位置がニップ初期位置とされ、また、熱定着ロール1に加圧ロール2が押圧する位置がニップ終了位置とされる。そして、シート材5はニップ初期位置から定着ニップ部に進入して耐熱ベルト3と熱定着ロール1との間を通過し、ニップ終了位置から抜け出ることで、シート材5上に形成された未定着トナー像5aが定着され、その後、熱定着ロール1への加圧ロール2の押圧部の接線方向Lに排出される。
【0045】
次に、加圧ロール2とベルト張架部材4の支持構造について説明する。
図2(b)に示すように、加圧ロール2の両端の回転軸2aは、左右のフレーム7に軸受7aを介して回転自在に支持されている。加圧ロール2の回転軸2aの両側には、揺動アーム4bが回転自在に嵌合され、この揺動アーム4bのベルト張架部材4側にはガイド溝4cが形成されている。一方、ベルト張架部材4の両端には、加圧ロール2側に延設されたガイド部4dが形成されており、このガイド部4dがスプリング4eを介して前記揺動アーム4bのガイド溝4c内に嵌挿されている。そして、ベルト張架部材4がスプリング4eにより加圧ロール2から離れる方向に付勢されることで、耐熱ベルト3に張力fが付与されるようになっている。
【0046】
ベルト張架部材4は耐熱ベルト3を摺動させる非回転部材として構成されている。これにより、ベルト張架部材4は回転部材ではないので、その支持構造が簡単になる。また、ベルト張架部材4が略半月状に形成されることから、その半月状の欠けた部分を加圧ロール2側に向けて配置することで、ベルト張架部材4を加圧ロール2に可及的に接近して配置できるようになる。これにより、耐熱ベルト3の周長を短縮して構成することが可能になる。したがって、熱ロール型定着装置を簡単な構造にして小型で安価にすることができる。
【0047】
また、ベルト張架部材4を加圧ロール2に可及的に接近して配置可能となることから、耐熱ベルト3が必要最小限の経路で移動するようになる。したがって、回転可能な熱定着ロール1とのニップ部においてこの熱定着ロール1に内蔵された加熱源で加熱された耐熱ベルト3は、所定の経路で移動する時に奪われる熱エネルギーを最小限に抑えることができるとともに、耐熱ベルト3の周長が短いので、自然放熱による温度低下が少なく、耐熱ベルト3が電源オン時から定着可能になる所望の温度に到達するまでのウォーミングアップ時間が短縮可能となる。更に、耐熱ベルト3が加圧ロール2とベルト張架部材4との協働によって張力を付与されることで熱定着ロール1に巻き付けられてニップを形成しているので、容易にニップ長を長く構成することができ、構造が簡単になり小型で安価にすることができる。
【0048】
更に、シート材5の上に形成した未定着トナー像5aを安定して定着するには、未定着トナー像5aを十分に溶融して定着することが必須であり、所望の温度と溶融時間を必要とするが、本発明による構成では、ニップ長を長く構成するために熱定着ロール1の表面に被覆した弾性体1cを大きく歪ませてニップ長を長くするような手段は必要ないので、弾性体1cの厚みは薄く構成可能である。しかも、弾性体1cを歪ませるために加圧ロール2の圧接圧力を大きく設定する必要もなく、未定着トナー像5aを担持したシート材5が熱定着ロール1と耐熱ベルト3の間を通過するときに通過するシート材5へのストレスが小さいので、未定着トナー像5aの定着後に排出されるシート材5に皺が発生するなどのシート材5の変形が抑制される。
【0049】
したがって、熱ロール型定着装置40の機械的剛性のアップは不要であるとともに、熱定着ロール1の薄肉化が可能であり、加熱源から耐熱ベルト3を加熱する加熱速度が向上する。また、加圧ロール2も同様に薄肉化が可能であり、熱容量を小さく構成できるので、耐熱ベルト3からの熱エネルギー吸収が小さく、電源オン時から定着可能になる所望の温度に到達するまでウォーミングアップ時間の短縮が可能である。
【0050】
図3および図4に示すように、ベルト張架部材4の突壁4aは熱定着ロール1に摺接面4gで摺接し位置決めされている。ベルト張架部材4の摺接面4gと耐熱ベルト3を押圧してシート材5を熱定着ロール1に押圧する押圧面4hとの間に、耐熱ベルト3の厚みより大きなギャップ(段差)Gを設け、押圧面4hは熱定着ロール1と同心円状に形成されている。具体的には、ギャップは110μm程度の段差で形成し、耐熱ベルト3は80μm程度の厚みで形成し、これにより30μm程度の空隙を確保し、60μm程度の厚みを有するシート材5でも安定した定着を可能にしている。
【0051】
図5に示すように、耐熱ベルト3が装着された状態では、耐熱ベルト3はその移動方向上流側でベルト張架部材4に巻き付けられてニップ初期位置で耐熱ベルト3を熱定着ロール1に押圧され、その後熱定着ロール1と加圧ロール2との間のニップ部に圧接される。
【0052】
定着工程の前工程でシート材上に未定着トナー像5aを形成するプロセス工程の速度と定着工程の速度とを完全に一致させることは、量産上の種々の部品寸法のバラツキを考慮すると現実的ではない。そこで、このバラツキを考慮してシート材5上に未定着トナー像5aを形成するプロセス工程の速度に比較して定着工程の速度を早くするか遅くするかのいずれか一方側に設定して前後工程の速度バランスを構築する。シート材5を定着装置40を通過させる場合、定着ニップにシート材5が進入する初期位置でシート材5を確実にグリップしてシート材5の進入速度を明確にする必要があるが、このように速度バランスを構築すると、この要求に応えることができる。
【0053】
また、熱定着ロール1の弾性体1cの表面と耐熱ベルト3の表面は同一の周速度で移動してシート材5上に形成した未定着トナー像5aを定着するものであるが、耐熱ベルト3の表面がウエーブ状になっていたり、シート材5の先端部がウエーブ状になっていたりすると、定着開始状態が不安定になる場合がある。そこで、ニップ初期位置で耐熱ベルト3を熱定着ロール1に押圧する構成にすると、双方の合流状態が安定するので、極めて安定した未定着トナー像5aの定着が可能になる。
【0054】
そして、シート材5が定着ニップを通過しない状態では、耐熱ベルト3とベルト張架部材4との間にギャップGが形成されている。したがって、ウオーミングアップ時には、ギャップGの空隙が断熱層となって熱定着ロール1から耐熱ベルト3を介して奪い取られる熱量が小さくなるので、熱のロスが減少し、ウオーミングアップ時間の短縮を図ることができる。
【0055】
一方、シート材5が定着ニップを通過するときは、図6に示すように、ベルト張架部材4の突壁4aは熱定着ロール1から離間され、耐熱ベルト3とベルト張架部材4との間のギャップGがなくなり、シート材5は定着ニップ部において耐熱ベルト3により熱定着ロール1に押圧される。そして、この押圧力をスプリング9のばね力で所望の圧力に調節すれば、適正な定着を達成することができる。
【0056】
また、シート材5が定着ニップに進入したときに、シート材5の未定着トナー像5a形成面とは反対側の面が熱容量の小さな耐熱ベルト3を冷却し、また、ギャップGが存在することから、ベルト張架部材4が熱定着ロール1から加熱されて蓄熱する熱量が少ないので、ベルト張架部材4側から耐熱ベルト3を加熱する熱量も少ない。
そのため、シート材5上の第1面に形成した未定着トナー像5aを定着した後に再び反対側の第2面に未定着トナー像を定着する両面画像定着の場合には、第2面を定着するときに先に定着した第1面の定着画像を必要以上に加熱してこの定着画像を乱すことがない。
【0057】
図2(a)に示すように、揺動付勢手段としてアシストするスプリング9をベルト張架部材4の揺動支点から離れた熱定着ロール1と加圧ロール2との押圧部より耐熱ベルト3の移動方向上流側に配置している。熱定着ロール1または加圧ロール2の一方を駆動すると耐熱ベルト3が駆動され、この駆動力と耐熱ベルト3とベルト張架部材4の摺動摩擦力によってベルト張架部材4は熱定着ロール1方向に揺動するが、この揺動移動力のみではシート材5上に形成した未定着トナー像5aを定着する定着圧力が不足する場合がある。そこで、この揺動移動力をアシストして所望の定着圧力に設定すると、極めて安定した未定着トナー像5aの定着が可能となる。
シート材5に2次転写された2次画像(未定着トナー像5a)は、定着装置40の形成するニップ部で所定の温度で定着される。
【0058】
この例の画像形成装置10においては、画像転写搬送手段18を駆動ロール12に対して傾斜する方向に配設しているため、図1で右上方に広い空間が形成される。換言すると、転写ベルトの搬送方向上向きのベルト面18bの斜め右上方に空間が形成される。つまり、この空間は画像転写搬送手段18の転写ベルトに対して画像形成ステーションY,M,C,Kと反対側に形成される。
【0059】
そして、この空間に定着装置40を配設することにより、画像形成装置10のコンパクト化を実現することができ、また、定着装置40で発生する熱が、左側に位置する露光ユニットW、画像転写搬送手段18および各画像形成ステーションY,M,C,Kへ伝達されるのを防止することができるので、各色の色ずれ補正動作を行う頻度を少なくすることができる。特に、露光手段Wは、定着装置40から最も離れた位置にあり、走査光学系部品の熱による変位を最小限にすることができ、色ズレを防ぐことができる。
また、画像形成ユニットDの左側下部の空間に露光ユニットWを配置することができるため、画像形成手段の駆動系がハウジング10aへ与える振動による、露光ユニットWの走査光学系の振動を最小限に抑えることができ、画質の劣化を防止することができる。
【0060】
更に、像担持体17のクリーニング手段を設けないことから、帯電手段としては非接触帯電手段であるコロナ帯電手段19を採用している。帯電手段がロールで構成される場合は、微量ではあるが像担持体17上に存在する一次転写残りトナーが帯電手段であるロール上に堆積して帯電不良が発生するが、コロナ帯電手段19は非接触帯電手段であることから、トナーが付着し難く、帯電不良の発生を防ぐことができる。
【0061】
更に、この例の画像形成装置10では、中間転写ベルトを画像転写搬送手段18として像担持体17に接触させる構成としたが、表面にシート材5を吸着して搬送移動し、該シート材5の表面に像担持体17のトナー像を各色につき順次重ねて転写してカラートナー像を形成するシート材搬送ベルトを画像転写搬送手段18として像担持体17に接触させる構成としてもよい。この場合、画像転写搬送手段18であるシート材搬送ベルトのベルト搬送方向が像担持体17に接触する下面で逆方向の上向きになる。
【0062】
(画像形成装置に使用されるトナー)
この例の画像形成装置10で使用される4色のトナーはいずれも可視のトナーであるが、これら4色の可視のトナーのうち、イエロートナーは、人間の目に識別し難い色、つまり視認し難い色のトナーである。
また、前述の4色のトナーは、いずれも結着樹脂から形成され、動的粘弾性特性を有している。その場合、視認し難い色のトナーであるイエロートナーは、少なくとも軟化点以上の温度領域において、その貯蔵弾性率(G′)が、他色のマゼンタ、シアンおよびブラックの各貯蔵弾性率(G′)よりも小さく設定されている。
また、本発明の4色のトナーは、いずれも、イソシアネート基を2個以上含有する化合物と、活性水素をもつ官能基を2個以上含有する化合物(活性水素含有成分)との重合によって得られる、ウレタン結合あるいはウレア結合を主鎖に有するポリマーを結着樹脂として含有している。
【0063】
このような視認し難いイエロートナーが、紙等のシート材5にトナー画像が形成されて軟化点以上の温度領域で加熱定着されると、このイエロトナーの貯蔵弾性率(G′)は他色の貯蔵弾性率(G′)よりも小さくなる。これにより、イエロートナーが加熱定着により紙等のシート材5へ浸透し、その結果、イエロートナーがシート材5から剥離し難くなる。したがって、シート材5に形成されたイエロートナー画像の定着強度を向上させることができる。これにより、シート材5に形成されたカラー画像の情報を追跡するための追跡パターンを、確実に付加形成することができる。
【0064】
また、複写されてもよい通常一般のカラー画像の複写像にもこの追跡パターンが付加形成されるようになるが、この場合には、視認し難い色のトナーが用いられることで、通常一般のカラー画像の複写像に追跡パターンが付加形成されても、この追跡パターンは人間の目には見えず、通常一般のカラー画像の画質を損なわない。
【0065】
特に、紙等のシート材5の両面に画像を形成する場合、最初にシート材5の第1面にトナー画像が形成されて加熱定着された後、シート材の第2面にトナー画像が形成されて再び加熱定着されるため、シート材5が加熱定着装置40の定着ニップ部を2回通過するようになるが、第2面の加熱定着時に、第1面に形成されたイエロートナーが再加熱定着時にシート材5へ更に浸透し、その結果、イエロートナーがシート材5からより一層剥離し難くなる。したがって、シート材5の両面に画像を形成する場合、最初の第1面に形成されたイエロートナー画像の定着強度を効果的に向上させることができる。
【0066】
これにより、例えば、余白がほとんどない両面印刷物であり、本来複写されるべきでない特定画像が形成される印刷物である紙幣等の有価証券類等が複写されようとする際に、偽造防止のための追跡パターンが有価証券類等に印刷された画像の画質を損なわないように視認し難い色のイエロートナーでその複写物に形成されるが、加熱定着後のイエロートナー画像の定着強度が高いことから、イエロートナーによる追跡パターンがより確実に形成されるようになる。したがって、有価証券類等の偽造を効果的に防止できる。
【0067】
また、視認し難い色のトナーとしてイエロートナーを用いることで、視認し難い色のトナー画像の定着強度を効果的に向上させつつ、視認し難い色のトナーによる追跡パターンをより確実に形成できる。
更に、イソシアネート基を2個以上含有する化合物と、活性水素をもつ官能基を2個以上含有する化合物(活性水素含有成分)との重合によって得られる、ウレタン結合あるいはウレア結合を主鎖に有するポリマーを結着樹脂として含有することにより、貯蔵弾性率G′が極小値を有し、高温オフセットを効果的に防止でき、シート材5に形成されたイエロートナーの追跡パターン像をより確実に作成することができる。
【0068】
なお、バインダー樹脂(結着樹脂)を、結晶構造とそれを取り巻くように存在する非晶構造の両方を有する構造とする方法としては、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂をブレンドしたり、結晶性部分と非晶性部分をブロック重合したポリエステル樹脂を使用する等の方法がある。
また、前述の結晶構造および非晶構造を更に高度に制御するためには、トナーの製造条件(例えば樹脂の混練条件)を調製したり、樹脂原料となるモノマーとして直鎖脂肪族有機化合物をポリオールやイソシアネートとして使用することで結晶性を高めたり、側鎖にCOOH基等のバルキーな官能基を導入し結晶性を低下させたり、適切なモノマーを選択する等の方法がある。
【0069】
本発明のトナーについて、特にウレタン結合あるいはウレア結合を主鎖に有するポリマーを結着樹脂として含有するトナーを例に更に詳述する。
一般に、高分子ポリマーは結晶領域と非晶質領域を有するが、この性状とトナーの溶融状態における粘弾性特性との関係に関して、本発明は、高結晶化ポリマにおいて、その分子鎖中に結晶化を乱す成分を導入することにより、例えば、図7に示すごときトナーの溶融状態における粘弾性特性が得られることを見いだしたことに基づく。図7は、後述する本発明に係るトナーの実施例1のイエロートナー(A)およびマゼンタトナー(C)について、加熱ロール1の表面温度領域として120℃〜200℃(定着器ロールを構成する素材の耐熱性の観点から200℃までとした)における粘弾性特性を測定したものである。
【0070】
このような貯蔵弾性率(G′)を有するような動的粘弾性を有するトナーは、定着器内(ニップ内)に進入した直後には、ロール表面による加熱により貯蔵弾性率(G′)が徐々に低下し、紙の繊維間の空隙への浸透が促進される。このように記録媒体である紙の繊維間空隙に浸透し、固定されることにより、定着強度に優れるトナー画像にできるものである。
【0071】
以下、このような粘弾性特性を示すトナーにおける結着樹脂として、ウレタン結合やウレア結合を有する樹脂を用いた結着樹脂を例として説明する。
トナーの結着樹脂として、従来ウレタン結合やウレア結合を有する結着樹脂が知られ、樹脂中に着色剤や荷電制御剤とを混練・微粉砕してトナー粒子とされている。そして、この結着樹脂は着色剤粒子等をトナー粒子中に保持し、定着に際しては定着ロールでの熱と圧力で軟化し、紙等の転写材にトナー粒子を付着させる機能を有するが、低温定着を目的として、結着樹脂の分子量を低くし軟化温度を下げると、ガラス転移温度の低下や強度低下が生じ、着色剤の保持性や耐オフセット性、定着像強度、さらには保存性等が低下する。
【0072】
ウレタン結合やウレア結合を有する樹脂は、水酸基とイソシアネート基が反応した結果生じるウレタン結合(−A−NHCOO−B−、式中Aはポリイソシアネート残基、Bは多活性水素化合物残基)、またはアミノ基とイソシアネート基とが反応した結果生じるウレア結合(−NHCONH−)を結合要素として含有し、その分子間凝集エネルギーは8.74kcal/molであり、メチン結合(−CH2 −)の0.68kcal/mol、エーテル結合(−O−)の1.0kcal/mol、ベンゼン結合の3.9kcal/mol、エステル結合における2.9kcal/molに比して格段に大きく、高結晶性のためそのガラス転移点が高い。しかしながら、ポリスチレンを基準としたときの数平均分子量(Mn)が1,500〜20,000の平均分子量のものは、そのフロー軟化点は140℃以下とすることができ、低分子量化に伴う低温定着性に優れるものとできること、また、その軟化点の低下にもかかわらず、ガラス転移温度は55℃以上とでき、ガラス転移温度の低下や強度低下の程度が小さく、トナーにおける結着樹脂として着色剤の保持性、耐熱性、保存性等に優れる結着樹脂とできるが、高温での耐オフセット性、定着像強度に、より優れることが求められている。
【0073】
ウレタン結合やウレア結合を有する樹脂は、ポリイソシアネート類と多活性水素化合物とのバルク重合により得られる。ポリイソシアネート類としては、脂肪族ジイソシアネート類であるエタンジイソシアネート、プロパンジイソシアネート、ブテンジイソシアネート、ブタンジイソシアネート、チオジエチルジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、βーメチルブタンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、ω,ω′−ジプロピルエーテルジイソシアネート、チオジプロピルジイソシアネート、ヘプタンジイソシアネート、2,2−ジメチルペンタンジイソシアネート、3−メトキシヘキサンジイソシアネート、オクタンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルペンタンジイソシアネート、ノナンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、3−ブトキシヘキサンジイソシアネート、1,4−ブチレングリコール−ジプロピルエーテル−ω,ω′−ジイソシアネート、ウンデカンジイソシアネート、ドデカンジイソシアネート、チオジヘキシルジイソシアネート等が挙げられる。
【0074】
また、環状基を有する脂肪族ジイソシアネートとしてはω,ω′−1,3−ジメチルベンゼンジイソシアネート、ω,ω′−1,2−ジメチルベンゼンジイソシアネート、ω,ω′−1,2−ジメチルシクロヘキサンジイソシアネート、ω,ω′−1,4−ジメチルシクロヘキサンジイソシアネート、ω,ω′−1,4−ジエチルベンゼンジイソシアネート、ω,ω′−1,4−ジメチルナフタリンジイソシアネート、ω,ω′−1,5−ジメチルナフタリンジイソシアネート、3,5−ジメルシクロヘキサン−1−メチルイソシアネート−2−プロピルイソシアネート、ω,ω′−n−プロピル−ビフェニルジイソシアネート等が挙げられる。
【0075】
芳香族ジイソシアネート類としては1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1−メチルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、1−メチルベンゼン−2,5−ジイソシアネート、1−メチルベンゼン−3,5−ジイソシアネート、1,3−ジメチルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、1,3−ジメチルベンゼン−4,6−ジイソシアネート、1,4−ジメチルベンゼン−2,5−ジイソシアネート、1−エチルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、1−イソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、ジエチルベンゼンジイソシアネート、ジイソプロピルベンゼンジイソシアネート等が挙げられる。
【0076】
ナフタリンジイソシアネート類としてはナフタリン−1,4−ジイソシアネート、ナフタリン−1,5−ジイソシアネート、ナフタリン−2,6−ジイソシアネート、ナフタリン−2,7−ジイソシアネート、1,1′−ジナフチル−2,2′−ジイソシアネート等が挙げられる。
ビフェニルジイソシアネート類としてはビフェニル−2,4′−ジイソシアネート、ビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2−ニトロビフェニル−4,4′−ジイソシアネート等が挙げられる。
【0077】
ジ−あるいはトリフェニルメタンジイソシアネート、およびジ−あるいはトリフェニルエタンジイソシアネートとしては、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ジフェニルジメチルメタン−4,4′−ジイソシアネート、2,5,2′,5′−テトラメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−ジメトキシフェニル−3,3′−ジイソシアネート、4,4′−ジエトキシフェニルメタン−3,3′−ジイソシアネート、2,2′−ジメチル−5,5′−ジメトキシジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、3,3−ジクロロジフェニルジメチルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ベンゾフェノン−3,3′−ジイソシアネート、α,β−ジフェニルエタン−2,4−ジイソシアネート、3−ニトロトリフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、4−ニトロトリフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート等、またはその誘導体が挙げられる。
【0078】
トリイソシアネート類としては1−メチルベンゼン−2,4,6−トリイソシアネート、1,3,5−トリメチルベンゼン−2,4,6−トリイソシアネート、ナフタリン−1,3,7−トリイソシアネート、ビフェニル−1,3,7−トリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4,4′−トリイソシアネート、3−メチルジフェニルメタン−4,6,4′−トリイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4′,4″−トリイソシアネート、ジフェニル−4,4′−ジイソシアナトカルバミン酸クロリド等、およびその誘導体等が例示される。
また、ポリイソシアネートとして下記式
【0079】
【化1】
【0080】
(式中、R1 はメチレン基、エチレン基、−C(CH3 )2 −基から選ばれるアルキレン基を示し、R2 及びR3 は炭素数4以下のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲンから選ばれる基を示す。)で示されるジイソシアネート類を使用すると、粉砕性に優れるポリマーとでき、トナーとする際の粉砕工程における生産性を向上できる。上記式で示されるジイソシアネート類としては、具体的には、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、2,2′,5,5′−テトラメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジメチル−5,5′−ジメトキシジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジクロロジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、α,β−ジフェニルエタン−4,4′−ジイソシアネート等、またはその誘導体が挙げられ、また、これらのポリイソシアネート類の混合物を使用するのが好ましい。
【0081】
上記式で示されるポリイソシアネート類は、その基本骨格として2つの芳香族環がアルキレン基を介して結合した構造を有しており、本成分をハードセグメントとして使用することで、バインダーポリマーにおける分子鎖のフレキシビィリティを小さくでき、リジッドな構造となるため、粉砕性に優れるものと考えられる。また、基本骨格として2つの芳香族環がアルキレン基を介して結合した構造を有することにより分子間凝集力を高めることができるものと考えられ、高温オフセット性を抑えることが可能である。
【0082】
また、ポリイソシアネートとして脂環式ジイソシアネート化合物を使用すると、トナーとする際に、耐光性に優れ、画像の長期保存に際して退色のないものとできる。脂環式ジイソシアネート化合物は環状脂肪族炭化水素構造を有するため、光や熱による劣化が抑えられるものと考えられる。また、得られるバインダーポリマーはリジッドな構造で粉砕性に優れるものであり、トナーとする際の粉砕、分級工程における生産性を向上できる。
【0083】
脂環式ジイソシアネート化合物は、環式脂肪族炭化水素、または多環式脂肪族炭化水素に2個のイソシアネート基が直接またはアルキレン基を介して結合した構造を有し、例えば構造式
【0084】
【化2】
【0085】
で示されるイソホロンジイソシアネート、また、ω,ω′−1,2−ジメチルシクロヘキサンジイソシアネート、ω,ω′−1,4−ジメチルシクロヘキサンジイソシアネート、3,5−ジメルシクロヘキサン−1−メチルイソシアネート−2−プロピルイソシアネートが例示される。
また、下記式
【0086】
【化3】
【0087】
(式中、R1 は単結合、メチレン基、エチレン基、−C(CH3 )2 −基から選ばれ、lおよびmは1〜5の整数、nは0〜2の整数を示す。)
で示される多環式脂肪族ジイソシアネートも好ましく、例えば下記構造式
【0088】
【化4】
【0089】
で示されるノルボルナンジイソシアネートが例示される。
本発明にあっては、特に、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート(水素化MDI)、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート(XDI)、p−フェニレンジイソシアネート、p−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(水素化XDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)等の脂環式炭化水素や芳香族炭化水素を有するジイソシアネート類が好ましく、更にこれらのポリイソシアネート類の混合物を使用するのが好ましい。
【0090】
一般に、ポリウレタン合成や後述するポリエステル合成は、逐次反応のため、分子量分布の狭いポリマーが得られるが、多活性水素化合物とのウレタン反応において、例えばイソホロンジイソシアネートの場合には分子量分布をさらに狭くすることができるので、加熱時の溶融が非常に短時間で起こり、そのためシャープメルト性を実現でき、バインダーポリマーの樹脂設計に際して自由度を増すことができる。その詳細な理由は不明であるが、イソホロンジイソシアネートは第1級のイソシアネート基と第2級のイソシアネート基をもち、それぞれのイソシアネート基の反応性が異なることにより、反応に際して選択性を生じることによるものと考えられる。
【0091】
脂環式ジイソシアネート化合物は、他のポリイソシアネート類を併用できる。他のポリイソシアネートとしては、上述した脂肪族ジイソシアネート類、環状基を有する脂肪族ジイソシアネート類、芳香族ジイソシアネート類、ナフタリンジイソシアネート類、ビフェニルジイソシアネート類、ジ−あるいはトリフェニルメタンジイソシアネート、およびジ−あるいはトリフェニルエタンジイソシアネート、トリイソシアネート類が例示され、その配合割合は、全イソシアネート成分中60重量%以下とするとよい。他のポリイソシアネートが多すぎると耐光性、シャープメルト性等の効果が低下する。
【0092】
次に、ポリイソシアネート類と反応させるポリオール類やポリアミン類について説明する。本発明のトナーにおいては、その定着温度領域において所期の粘弾性とするには、上述したポリイソシアネート類としてウレタン結合やウレア結合を有する樹脂においてその結晶性を乱す、自由度が少ないバルキーな成分とすると共に、多活性水素化合物として同様にその結晶性を乱す、自由度が少ないバルキーな成分として、下記(1)〜(3)の化合物を多活性水素化合物とするとよい。
【0093】
(1) ジオキシカルボン酸、ジアミノカルボン酸、ジオキシスルホン酸、ジアミノスルホン酸、またはそれらの塩、例えば、下記構造式(A)で示される2,2−ジメチロールプロピオン酸、(B)で示される2,2−ジメチロールブタン酸、(C)で示される2,2−ジメチロール吉草酸、(D)で示される2,4−ジアミノ安息香酸、(E)で示される3,4−ジアミノ安息香酸、(F)で示される3,6−ジアミノ−2−トルエンスルホン酸、(G)で示される2,4−ジアミノベンゼンスルホン酸、(H)で示される2,5−ジアミノベンゼンスルホン酸、(I)で示される4,4′−ジアミノスチルベン−2,2′−ジスルホン酸、(J)で示される3,4−ジアミノブタンスルホン酸、(K)で示されるN−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルスルホン酸等が例示される。
【0094】
【化5】
【0095】
これらの化合物は、その分子中に少なくとも2個の水酸基またはアミノ基と、カルボキシル基またはスルホン酸基を有するが、ウレタン反応やウレア反応に際してはイソシアネート基と水酸基またはアミノ基との反応が先行し、カルボキシル基やスルホン酸基との反応は殆ど生じない。また、これらの化合物を使用すると酸性基をウレタン樹脂やウレア樹脂における側鎖に存在させることができるので、トナーの定着に際して、紙等の記録媒体への濡れ性・結合性に優れ、定着強度に優れるものとできる。
【0096】
(2) 脂肪族環状ポリオール、例えば1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、脂肪族環状ポリアミン、例えば1,4−シクロヘキサンジメチルアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等が例示される。
(3) 分枝構造を有する脂肪族ポリオール、例えば2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等が例示され、また、分枝構造を有する脂肪族ポリアミン、例えば2−エチル−1,3−ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、1,3−ブタンジアミン、2,3−ブタンジアミン、1,2−プロパンジアミン、2−メチル−2,4−ペンタンジアミン等が例示される。
【0097】
また、(1)〜(3)の多活性水素化合物は、トナーとして適した溶融特性を付与することを目的として、例えば、下記式で示されるポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル化合物を併用するのが好ましい。なお、併用されるにあたっては、(1)〜(3)の多活性水素化合物の分子量としては、下記式で示されるポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテルの分子量より小さくするとよく、分子量が90〜400、好ましくは120〜380のものとするとよい。
ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテルとしては、
【0098】
【化6】
【0099】
(式中、Rはエチレン基またはプロピレン基であり、同一でも相違していてもよく、x、yはそれぞれ1以上の整数であり、かつx+yの平均値は2〜12である。)
【0100】
で示され、例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド2〜12モル付加物(以下、EO付加物)、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2〜12モル付加物(以下、PO付加物)が例示され、これらを単独で、もしくは両者を混合して使用できる。さらには、EO基あるいはPO基の繰り返し単位数が異なる化合物を2種以上混合して用いてもよい。両者を混合して用いる場合、その混合比率(モル比)は、EO付加物/PO付加物=8:2〜1:9、好ましくは8:2〜2:8、更に好ましくは7:3〜4:6である。また、Rは同一でも、相違してもよく、一方がエチレン基で他方がプロピレン基でもよい。また、EO基、PO基はその繰り返し単位数により、バインダーポリマーとした際に物性が変化する。x+yの平均値は2〜12、好ましくは2〜4であり、繰り返し単位数がこれより大きいと、ガラス転移温度の低下や粉砕性の悪化を招くので好ましくなく、小さすぎると強度低下を来たし、折れ剥がれ強度が低下する。また、EO成分の組成比を高めると定着強度(折れ剥がれ強度)を向上させることができるが、ガラス転移温度の低下や粉砕性の悪化を招き、反対に、PO成分の組成比を高めると粉砕性は向上するが、定着強度(折れ剥がれ強度)は低下する。また、ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル化合物における水酸基価は、100〜350KOHmg/g、好ましくは200〜290KOHmg/gである。ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル化合物は、ビスフェノールAを基本骨格とすることで、ポリイソシアネートとの反応物であるバインダーポリマーとした際に、分子鎖のフレキシビィリティが小さく、リジッドな構造となるものと考えられる。
【0101】
(1)〜(3)の多活性水素化合物は、上記式で示されるポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル100モルに対して1モル〜900モル、好ましくは5モル〜100モル、さらに好ましくは10モル〜60モルとするとよく、これにより、トナーの製造時における粉砕性や低温定着性、高温での耐オフセット性、定着強度に優れ、また、要求される軟化点(Tm)やガラス転移温度(Tg)等の調整が容易になる。
【0102】
また、上述した多活性水素化合物によるトナーとしての性状を損なわない範囲で、多活性水素化合物として、他のポリオール類、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(カプロラクトンポリオール)、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート等を添加してもよい。
【0103】
ポリイソシアネート類と多活性水素化合物の反応割合は、ポリイソシアネートにおけるイソシアネート基数に対する多活性水素化合物における活性水素基数の割合{NCO/活性水素(当量比)}が0.5〜1.0、好ましくは0.7〜1.0の範囲で反応させるとよい。反応にあたっては、まず、多活性水素化合物中に後述する着色剤を均一分散した後、ポリイソシアネート類を、温度30℃〜180℃、好ましくは30℃〜140℃で、大気圧下、無溶剤下で、数分から数時間、バルク重合させるとよい。
【0104】
着色剤としては、以下に示すような、有機ないし無機の各種、各色の顔料、染料が使用可能である。黒色顔料としては、カーボンブラック、酸化銅、四三酸化鉄、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭などがある。黄色顔料としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスエロー、ナフトールエローS、バンザーイエローG、バンザーイエロー10G、ベンジジンエローG、ベンジジンエローGR、キノリンエローレーキ、パーマネントエローNCG、タートラジンレーキなどがある。橙色顔料としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGKMなどがある。赤色系顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピロゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bなどがある。紫色顔料としては、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどがある。青色顔料としては、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBCなどがある。緑色顔料としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGなどがある。白色顔料としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛などがある。体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイトなどがある。また、塩基性、酸性、分散、直接染料などの各種染料としては、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルーなどがある。
【0105】
また、透光性カラートナーとして用いる場合は、着色剤としては、以下に示すような、各種、各色の顔料、染料が使用可能である。黄色顔料としては、C.I.10316(ナフトールイエローS)、C.I.11710(ハンザエロー10G)、C.I.11660(ハンザエロー5G)、C.I.11670(ハンザエロー3G)、C.I.11680(ハンザエローG)、C.I.11730(ハンザエローGR)、C.I.11735(ハンザエローA)、C.I.11740(ハンザエローNR)、C.I.12710(ハンザエローR)、C.I.12720(ピグメントイエローL)、C.I.21090(ベンジジンエロー)、C.I.21095(ベンジジンエローG)、C.I.21100(ベンジジンエローGR)、C.I.20040(パーマネントエローNCG)、C.I.21220(バルカンファストエロー5)、C.I.21135(バルカンファストエローR)などがある。赤色顔料としては、C.I.12055(スターリンI)、C.I.12075(パーマネントオレンジ)、C.I.12175(リソールファストオレンジ3GL)、C.I.12305(パーマネントオレンジGTR)、C.I.11725(ハンザエロー3R)、C.I.21165(バルカンファストオレンジGG)、C.I.21110(ベンジジンオレンジG)、C.I.12120(パーマネントレッド4R)、C.I.1270(パラレッド)、C.I.12085(ファイヤーレッド)、C.I.12315(ブリリアントファストスカーレット)、C.I.12310(パーマネントレッドF2R)、C.I.12335(パーマネントレッドF4R)、C.I.12440(パーマネントレッドFRL)、C.I.12460(パーマネントレッドFRLL)、C.I.12420(パーマネントレッドF4RH)、C.I.12450(ライトファストレッドトーナーB)、C.I.12490(パーマネントカーミンFB)、C.I.15850(ブリリアントカーミン6B)などがある。また、青色顔料としては、C.I.74100(無金属フタロシアニンブルー)、C.I.74160(フタロシアニンブルー)、C.I.74180(ファーストスカイブルー)などがある。
【0106】
これらの着色剤は、単独であるいは複数組合せて用いることができるが、結着樹脂100重量部に対して、1〜20重量部、好ましくは2〜10重量部使用することが望ましい。20重量部より多いとトナーの定着性および透明性が低下し、一方、1重量部より少ないと所望の画像濃度が得られない虞れがある。
【0107】
本発明のトナーの製造に際しては、着色剤を多活性水素化合物中に分散させてからポリイソシアネート類と反応させるとよい。これにより、着色剤の分散による粘弾性特性に対する影響を抑えることができる。また、ポリイソシアネート類が顔料中の水分により失活することを防止できる。触媒としては、例えばジブチルスズジクロライド、ジメチルスズジクロライド、オクチル酸スズ、トリフェニルアンモニウムジクロライド、トリエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエチレンジアミン、ジメチルアミノエタノール、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジネオデカノエート、ジブチルスズビス(メルカプト酸エステル)等が例示される。
ポリイソシアネート類と多活性水素化合物との反応は無溶剤下で行うことができ、溶液重合のごとく溶剤を必要としなく、また、重縮合反応のごとく副生物を生じないので効率のよい連続生産が可能である。
【0108】
本発明の結着樹脂およびトナーは、ポリスチレンを基準としたゲルパーミエーション(GPC)測定での数平均分子量(Mn)が1,500〜20,000、好ましくは2,000〜10,000、更に好ましくは3,000〜8,000のものである。数平均分子量(Mn)が1,500より小さいと、低温定着性に優れるものの、着色剤の保持性や耐フィルミング性、耐オフセット性、定着像強度、保存性に劣るものであり、また、20,000より大きいと低温定着性に劣るものとなり、結着樹脂として単独では使用できないものとなる。また、重量平均分子量(Mw)は3,000〜300,000、好ましくは5,000〜50,000、更に好ましくは8,000〜20,000であり、Mw/Mnが1.5〜20、好ましくは1.8〜10、更に好ましくは1.8〜8、最も好ましくは1.8〜5である。
【0109】
結着樹脂における分子量を制御するには、ポリイソシアネートにおけるイソシアネート基数に対する多活性水素化合物における活性水素基数の割合(NCO/活性水素)を小さくすれば低分子量化でき、また、等量に近づけると高分子量化できるので、適宜、ポリイソシアネートの反応モル数を制御することにより容易に制御できる。なお、本発明の結着樹脂の物性に影響を与えない範囲で鎖伸長剤を適宜使用してもよい。鎖伸長剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ビス−(β−ヒドロキシ)ベンゼン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0110】
耐オフセット性と溶融特性を両立させるために、通常は樹脂のMw/Mnを大きくする、つまりブロードな分子量分布を有するように設計するか、または、低分子量体と高分子量体とを別途作製しブレンドする手法がとられているが、Mw/Mnを大きくしたり、ブレンド物とすると、シャープに溶融しないため透明性が低下し、特にカラー画像の画質が低下するという問題がある。これに対して、本発明における結着樹脂は、分子量分布を狭いものとすることによりシャープな溶融特性を示し、透明性に優れ、高画質のカラー画像を得ることができるものである。また、そのウレタン結合やウレア結合の分子間凝集エネルギーが適度に抑制されると共に、その定着時における粘弾性特性を特定のものとすることにより、低温定着性に優れると共に、高温での耐オフセット性に優れ、また、定着強度に優れるトナー画像を与える。
【0111】
本発明のトナーは、フロー軟化点(Tm)が70℃〜150℃、好ましくは80℃〜140℃、さらに好ましくは90℃〜130℃の範囲にある。フロー軟化点(Tm)が70℃より低いと耐フィルミング性に劣るものとなり、また、150℃より高いと低温定着性に劣るものとなる。
また、ガラス転移温度(Tg)は50℃〜90℃、好ましくは55℃〜80℃、さらに好ましくは60℃〜70℃の範囲にある。ガラス転移温度(Tg)が50℃より低いと保存性に劣るものとなり、また、90℃より高いとそれにともなってTmが上昇し、低温定着性に劣るものとなる。
【0112】
本発明における結着樹脂は、分子間結合力が大きく、高結晶性ポリマーであるため、分子量を低下させTmを下げる分子設計をした時のTgの低下幅を小さくすることができ、低Tmと高Tgを両立させることができ、また、50%流出点における溶融粘度が、2×102 〜2×104 Pa・sとでき、オイルレス定着用トナーとして適したものとできる。
【0113】
本発明のトナーにおける結着樹脂としては、ウレタン結合やウレア結合を有する樹脂を主成分とし、結着樹脂中50重量%未満の範囲で、かつ、主成分の性状を損なわない範囲で他の結着樹脂を含有してもよい。他の結着樹脂としては、結着樹脂を製造する際に共存させてもよいが、製造後に混練してもよい。
【0114】
本発明の結着樹脂を製造する際に共存させる場合には、ポリイソシアネート類との反応性基を含有しない樹脂が好ましい。他の結着樹脂としては、例えばポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン樹脂でスチレン又はスチレン置換体を含む単重合体又は共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン変成エポキシ樹脂、シリコーン変成エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変成マレイン酸樹脂、フェニール樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂等を単独又は混合して使用できる。
【0115】
本発明のトナーは、荷電制御剤、必要に応じて離型剤、分散剤、磁性粒子等を含有してもよく、着色剤同様に原料であるポリオール類に分散してもよく、また、樹脂を形成した後適宜混練により配合してもよい。
荷電制御剤としては、摩擦帯電により正または負の荷電を与え得るものであれば、特に限定されず有機あるいは無機の各種のものを用いることができる。
【0116】
正荷電制御剤としては、例えば、ニグロシンベースEX{オリエント化学工業(株)製}、第4級アンモニウム塩P−51{オリエント化学工業(株)製}、ニグロシン ボントロンN−01{オリエント化学工業(株)製}、スーダンチーフシュバルツBB(ソルベントブラック3: Color Index 26150)、フェットシュバルツHBN(C.I. NO.26150)、ブリリアントスピリッツシュバルツTN(ファルベン・ファブリッケン・バイヤ社製)、ザボンシュバルツX(ファルベルケ・ヘキスト社製)、さらにアルコキシ化アミン、アルキルアミド、モリブデン酸キレート顔料などが挙げられる。中でも第4級アンモニウム塩P−51が好ましい。
【0117】
また、負荷電制御剤としては、例えば、オイルブラック(Color Index 26150)、オイルブラックBY{オリエント化学工業(株)製}、ボントロンS−22{オリエント化学工業(株)製}、サリチル酸金属錯体E−81{オリエント化学工業(株)製}、チオインジゴ系顔料、銅フタロシアニンのスルホニルアミン誘導体、スピロンブラックTRH{保土谷化学工業(株)製}、ボントロンS−34{オリエント化学工業(株)製}、ニグロシンSO[オリエント化学工業(株)製]、セレスシュバルツ(R)G(ファルベン・ファブリケン・バイヤ社製)、クロモーゲンシュバルツET00(C.I.NO.14645)、アゾオイルブラック(R)(ナショナル・アニリン社製)などが挙げられる。中でも、サリチル酸金属錯体E−81が好ましい。
これらの荷電制御剤は、単独であるいは複数種組合せて使用することができるが、結着樹脂に添加する荷電制御剤の添加量は、結着樹脂100重量部に対して0.001〜5重量部であり、好ましくは0.001〜3重量部である。
【0118】
また、本発明のトナーに用いられるウレタン結合やウレア結合を有する樹脂はその分子量範囲により熱溶融特性に優れ、また、定着温度領域での粘弾性特性により離型剤を不要とするが、添加する場合には、結着樹脂100重量部に対して4重量部(4重量%)以下であり、好ましくは0〜3重量部程度である。
【0119】
離型剤としては、具体的にはパラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、芳香族基を有する変性ワックス、脂環基を有する炭化水素化合物、天然ワックス、炭素数12以上の長鎖炭化水素鎖〔CH3(CH2)11またはCH3(CH2)12以上の脂肪族炭素鎖〕を有する長鎖カルボン酸、そのエステル脂肪酸金属塩、脂肪酸アシド、脂肪酸ビスアシド等を例示し得る。異なる低軟化点化合物を混合して用いても良い。具体的には、パラフィンワックス(日本石油社製)、パラフィンワックス(日本精蝋社製)、マイクロワックス(日本石油社製)、マイクロクリスタリンワックス(日本精蝋社製)、硬質パラフィンワックス(日本精蝋社製)、PE−130(ヘキスト社製)、三井ハイワックス110P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス220P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス660P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス210P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス320P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス410P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス420P(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−1141(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−2130(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−4020(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−1142(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−5020(三井石油化学社製)、密ロウ、カルナバワックス、モンタンワックス等を挙げることができる。脂肪酸金属塩として、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、オレイン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸マグネシウム等がある。
【0120】
ポリオレフィン系ワックスとしては、例えば低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、あるいは酸化型のポリプロピレン、酸化型のポリエチレン等が挙げられる。ポリオレフィン系ワックスの具体例としては、例えば、Hoechst wax PE520、Hoechst wax PE130、Hoechstwax PE190(ヘキスト社製)、三井ハイワックス200、三井ハイワックス210、三井ハイワックス210M、三井ハイワックス220、三井ハイワックス220M(三井石油化学工業社製)、サンワックス131−P、サンワックス151−P、サンワックス161−P(三洋化成工業社製)などのような非酸化型ポリエチレンワックス、Hoechst wax PED121、Hoechst wax PED153、Hoechst wax PED521、Hoechst wax PED522、同Ceridust 3620、同Ceridust VP130、同Ceridust VP5905、同Ceridust VP9615A、同Ceridust TM9610F、同Ceridust 3715(ヘキスト社製)、三井ハイワックス420M(三井石油化学工業社製)、サンワックスE−300、サンワックスE−250P(三洋化成工業社製)などのような酸化型ポリエチレンワックス、Hoechst Wachs PP230(ヘキスト社製)、ビスコール330−P、ビスコール550−P、ビスコール660P(三洋化成工業社製)などのような非酸化型ポリプロピレンワックス、ビスコールTS−200(三洋化成工業社製)などのような酸化型ポリプロピレンワックスなどが例示される。これらの離型剤は、単独であるいは複数種組合せて使用することができる。必要に応じて添加される離型剤としては、セイコーインストルメント(株)製「DSC120」で測定されるDSC吸熱曲線における吸熱メインピーク値である軟化点(融点)が40〜130℃、好ましくは50〜120℃のものを使用するとよい。
【0121】
本発明におけるトナー母粒子は、上記で得た組成物を、混練・溶融した後、微粉砕手段により粉砕・分級して得られるが、その流動性を向上させる為に、流動性向上剤を外添してもよい。
流動性向上剤としては、有機系微粉末または無機系微粉末を用いることができる。例えばフツ素系樹脂粉末、すなわちフツ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末、アクリル樹脂系微粉末など;又は脂肪酸金属塩、すなわちステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸鉛など;又は金属酸化物、すなわち酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛など;又は微粉末シリカ、すなわち湿式製法シリカ、乾式製法シリカ、それらシリカにシランカツプリング剤、チタンカツプリング剤、シリコンオイルなどにより表面処理をほどこした処理シリカなどがあり、これらは1種或いは2種以上の混合物で用いられる。
【0122】
好ましい流動性向上剤としては、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化法により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒユームドシリカと称されるもので、従来公知の技術によって製造されるものである。例えば四塩化ケイ素ガスの酸水素焔中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次の様なものである。
SiCl4 + 2H2 + O2 → SiO2 + 4HCl
【0123】
また、この製造工程において、例えば塩化アルミニウム又は塩化チタンなど他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いる事によってシリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得る事も可能であり、それらも包含する。その粒径は平均の一次粒径として、0.001〜2μmの範囲内である事が望ましく、特に好ましくは、0.002〜0.2μmの範囲内のシリカ微粉体を使用するのが良い。本発明に用いられるケイ素ハロゲン化合物の気相酸化法により生成された市販のシリカ微粉体としては、例えば以下の様な商品名で市販されているものがある。日本アエロジル社製の「AEROSIL 130」、以下、同 200、同300、同 380、TT600、MOX170、MOX80、COK84等が挙げられ、また、CABOT Co.社製の「Ca−O−SiL M−5」、以下、同 MS−7、同 MS−75、同 HS−5、同 EH−5等が挙げられ、また、WACKER−CHEMIE GMBH社製の「Wacker HDK N 20V15」、以下、同 N20E、同 T30、同 T40、ダウコーニングCo.社の「D−C Fine Silica」、Fransill社の「Fransol」等が挙げられる。
【0124】
更には、該ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体に疎水化処理した処理シリカ微粉体を用いることがより好ましい。該処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が30〜80の範囲の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。疎水化方法としてはシリカ微粉体と反応、あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物などで化学的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の上記気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する。
【0125】
その様な有機ケイ素化合物の例は、ヘキサメチレンジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフエニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフエニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフエニルテトラメチルジシロキサンおよび1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位にそれぞれ1個宛のSiに結合した水酸基を有するジメチルポリシロキサン等がある。これらは1種あるいは2種以上の混合物で用いられる。
【0126】
その処理シリカ微粉体の粒径としては0.003〜0.1μm、0.005〜0.05μmの範囲のものを使用することが好ましい。市販品としては、タラノツクス−500(タルコ社)、AEROSIL R−972(日本アエロジル社)などがある。
流動性向上剤の添加量としては、該樹脂粒子100重量部に対して0.01〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部である。0.01重量部未満では流動性向上に効果はなく、5重量部を超えるとカブリや文字のにじみ、機内飛散を助長する。
【0127】
本発明のトナーの製造方法は、バインダーポリマー(結着樹脂)の製造に際して上述したが、基本的には次の各工程よりなる。
(1)原料の均一混合工程
着色剤を分散した結着樹脂、荷電制御剤等の添加剤を所定量ヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株))に投入し、均一混合する。
(2)結着樹脂中への各添加剤の分散固定化工程
均一に混合した後、二軸混練押出機{池貝化成(株)製PCM−30}を使用して溶融混練し、結着樹脂中に各添加剤を分散固定化する。溶融混練手段としては、他に「TEM−37」{東芝機械(株)}、「KRCニーダー」{(株)栗本鉄工所}等の連続式混練機や加熱・加圧ニーダーのようなバッチ式混練機等が挙げられる。
【0128】
(3)粉砕工程
混練物を粗粉砕して粒度調整をした後、ジェット粉砕機「200AFG」{ホソカワミクロン(株)}または「IDS−2」(日本ニューマチック工業(株))を使用し、ジェットエアーによる衝突粉砕により、微粉砕し、平均粒子径1〜8μmのものとする。粉砕手段としては他に、機械式粉砕機ターボミル{川崎重工(株)}、スーパーローター{日清エンジニアリング(株)}等が挙げられる。
(4)分級工程
微粉を除去し、粒径分布のシャープ化を目的として、風力又はローター回転による粒度調整を風力分級装置「100ATP」{ホソカワミクロン(株)}又は「DSX−2」{日本ニューマチック工業(株)}又は「エルボージェット」{日鉄鉱業(株)}等を使用して行なう。
(5)外添処理工程
得られた着色樹脂粒子と流動化剤を、所定量ヘンシェルミキサー20B{三井鉱山(株)}に投入し均一混合し、トナーとする。
【0129】
このようにして得られるトナーとして、平均粒径は、3〜10μm、好ましくは5〜8μmとするとよく、これにより高精細化を可能とする。また、例えば熱風処理等により円形度を、0.93〜0.99、好ましくは0.94〜0.98のものとするとよく、これにより、流動性、クリーニング性に優れるものとできる。
【0130】
以上、結着樹脂としてウレタン結合やウレア結合を有する樹脂を例とするトナーについて説明したが、上述したように、結着樹脂が結晶領域と非晶質領域の双方を有するものであれば、ウレタン結合やウレア結合を有する樹脂に限定されるものではない。例えば、結晶ポリエステル樹脂と非晶質ポリエステル樹脂をブレンドしたり、また、結晶性部分と非晶質部分とをブロック重合したポリエステル樹脂等においても同様に定着領域における粘弾性特性を制御できる。また、予め結着樹脂の重合を制御すると共に定着時に所定以上の熱エネルギーが加えられた際に機能発現する重合開始剤や架橋開始剤を配合しておくことにより、定着温度領域での熱エネルギーの付与によりトナー中の結着樹脂がさらに重合し、結着樹脂が架橋したり分子量が増大するように設計した組成物においても同様に定着領域における粘弾性特性を制御できる。
【0131】
次に、本発明の画像形成装置に用いられるトナーの物性値の測定および評価について説明する。
【0132】
(1)軟化点(Tm;融点)[℃]の測定
(株)島津製作所製「定荷重押出型細管式レオメータ フローテスタ CFD−500D」を用いて、下記条件にて測定する。
測定試料の調製 : 測定試料としてトナー約1gを圧縮成型し、フローテスタのシリンダの内径に合わせた円柱状試料とする。
測定条件 : 荷重 20kgf、ダイ穴 1mm、ダイ長さ 1mm
測定方法 : 1/2法
【0133】
(2)ガラス転移点(Tg)[℃]の測定
トナー10mgをアルミニウム製セルにパッキングし、セイコーインスツルメント(株)製「DSC120」を用いて下記の条件で測定する。
測定温度 : 20℃(測定開始温度)〜200 ℃(測定終了温度))
昇温速度 : 10 ℃/min
Tg : ガラス転移点に相当する吸熱が生じた位置(吸熱カーブのショルダー位置)の温度とする。
【0134】
(3)分子量分布の測定
5mgのトナーを5gのテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、東ソー(株)製 高速GPCシステム HLCー8220を用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によりポリスチレン換算分子量を測定する。
【0135】
(4)粒径の測定
本明細書では、粒径という場合「平均粒子径(50%径)」を意味する。
平均粒子径(50%径)は、コールターマルチサイザーIII 型(コールター社製)を用い、100μmのアパチャーチューブで粒径別相対重量分布を測定することにより求める。また、シリカ粒子等の外添剤の粒径は、電子顕微鏡法による。
【0136】
(5)動的粘弾性の貯蔵弾性率G′[dyn/cm2]の測定
粘弾性測定装置: 粘弾性測定装置は、図8(a)に示すアレス粘弾性測定システム(ARES粘弾性測定装置;レオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イー社製)。
使用治具 : 上下2枚のパラレルプレート(φ25mm)。
測定試料の調製: 測定試料は、圧縮成型したトナー約1gをパラレルプレートの下プレートに載せ、ヒーターにより測定開始温度に加熱し少し柔らかくなってきたところで、このトナーをトランスデューサを作動してパラレルプレートの上プレートで挟んで加圧する。図8(b)に示すようにパラレルプレートからはみ出したトナーはトリミングして取り除き、同図(a)に示すようにパラレルプレートの外周形状(つまり、パラレルプレートの直径)に合わせ、かつ試料の高さ(上下プレート間のギャップ)を1.0〜2.0mmに調製して円柱状試料とする。なお、図8(c)に示すように上下プレート全面にトナーが密着していない場合は不良(NG)として、測定試料とはしない。
測定温度 : 定着設定温度(加熱ロールの表面温度の制御中心値)。
測定歪み : パラレルプレートの上プレートは回転させずに、パラレルプレートの下プレートのみを回転して歪を与える。このとき、測定温度を一定にし、歪み依存性(Strain Sweep)モードで、測定試料に徐々に大きな歪み{周波数1[rad/se c](1rad/sec=(1/6.28)Hz、歪み0.1〜200%}を与える。そして、与えた歪みに対し動的粘弾性の貯蔵弾性率G′および損失弾性率G″が線形領域における最大歪みを緩和弾性率測定時の測定歪みとする。
測定モード : 温度依存性(Temp Ramp)モードで測定を行った。その場合、設定した測定歪みが測定温度域で常時維持されるように、システムの Auto Strain、Auto Tension を作動状態に設定した状態で測定を行う。また、測定は測定開始温度から5℃/minの速度で昇温させながら行う。
【0137】
(6)定着性の測定
前述の画像形成装置を使用して画像の形成、定着を行う。定着装置は、耐熱ベルトの周長、ベルト張架部材の形状を適宜変更することにより、定着ニップ通過時間を調整できるようにする。また、耐熱ベルトの表面の温度は100℃から200℃まで制御できるようにする。
更に、定着装置のロール表面からシリコーンオイルを除去した定着器を用いて、定着性評価用画像を、加熱ロール側が未定着トナー付着面となるように定着器を通過させてニップ幅10mm、ニップ通過時間100msecの条件にて定着する。
【0138】
定着性評価用画像は、以下のように作成する。まず、富士ゼロックスオフィスサプライ社製 J紙(坪量82g/m2)を評価用紙とし、この用紙上にトナーを均一に付着させたいわゆるベタ画像を形成し、そのベタ画像におけるトナー付着量が0.4mg/cm2となるように画像形成条件を調整する。次に、紙の先端から10mmの位置に20mm四方の領域に、解像度600dpiの孤立ドットによる30%ハーフトーン画像を形成し、このハーフトーン画像を定着性評価用画像とした。
【0139】
(6ー1)非オフセット域の測定
定着ロールの表面温度を段階的に変化させながら、未定着の定着性評価用画像をこの定着ロールに通過させ、画像の少なくとも一部が定着ロール通過時に定着ロールに転移した後、再度紙に移行しているか否かを目視で判定する。画像の少なくとも一部の紙への移行があるものをオフセット有り、画像の少なくとも一部の紙への移行がないものをオフセットなしとする。
【0140】
(6ー2)定着強度良好域の測定
【0141】
前述の非オフセット域を確認した後、定着性評価用画像を消しゴム{コクヨ(株) PLASTIC ERASER ケシ−1 鉛筆用}を用い、1kg荷重にて1回擦り、画像濃度の残存率を測定する。画像濃度残存率85%(ハーフトーン用評価基準)以上の温度領域を定着強度良好域とする。
【0142】
以下に、本発明のトナーの実施例および比較例について説明する。なお、以下の実施例および比較例の各物性値の測定および評価は特に断らない限り前述の方法で行った。
(実施例1)
(マゼンタトナーの作成)
実施例1におけるマゼンタトナーは、顔料を分散させたポリオール成分とイソシアネート成分とを重合して顔料分散ウレタン樹脂を作製し、この顔料分散ウレタン樹脂を粉砕、分級することにより製造した。具体的には、まず、ポリオール(PO1)としてのポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル{日本油脂(株)製ユニオールDA−400:OH基価273KOHmg/g}と、顔料としてのDIC KET RED 309{大日本インキ化学工業製}とを、ポリオール(PO1)と顔料との混合比がポリオール(PO1)/顔料=64/10(重量比)となるように配合し、これらを混合装置(プラネタリ式攪拌ミキサー;KENMIXmajor社製ケンミックスアイコープロKM23)により混合し、顔料混合液を調製した。
【0143】
次に、この顔料混合液をさらに分散装置(ビーズミル;ドライスヴェルケ社製Advatis V15)により、分散条件がビーズ径0.3mmφ、循環運転(流量20Kg/h)、負荷動力3.5kW一定、単位積算投入動力8kWh/kg)として分散処理し、ポリオール中に顔料を分散させた顔料分散液を調製した。このようにして調製した顔料分散液における顔料粒子の平均粒子径(50%径)は、日機装(株)製 マイクロトラック UPA150 Model No. 9340により測定したところ、0.16μmであった。
【0144】
次いで、顔料分散液を前述のポリオール(PO1)であるポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル{日本油脂(株)製ユニオールDA−400:OH基価273KOHmg/g}で適宜希釈し、後述するポリオール成分とポリイソシアネート成分との重合により得られるウレタン樹脂100重量部に対して顔料5重量部となるように顔料濃度を調整した。
【0145】
このように顔料濃度が調整された顔料分散液を、温度を90℃、かつ、到達真空度が5mmHgに設定した恒温槽中にて3時間脱気乾燥を行った。その後速やかに、脱気乾燥した顔料分散液に、別のポリオール(PO2)としてジメチロールブタン酸を120℃にて加温溶解させ、ポリオール(PO1)とポリオール(PO2)との配合比{(PO1)/(PO2)}が(PO1)/(PO2)=90/10(モル比)となるようにして、ポリオール原料であるポリオール(PO3)を調製した。
【0146】
このポリオール(PO3)とイソシアネート成分であるジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネートとを、配合比がイソシアネート成分/(PO3)=1/1.1{イソシアネート基数/イソシアネートと反応可能な活性水素を持つ官能基数;これを重量比に換算すると、イソシアネート成分35.4重量部に対してポリオール(PO3)64.6重量部}となるように配合し、この配合物の100重量部に、触媒としてジオクチル錫ジラウレートの0.02重量部を添加して120℃の加温下で混合溶解し、速やかに200mm×300mmのトレーに流し込み、これを大気炉に投入し、120℃で1時間保持した後、さらに130℃で5時間保持して反応を完結させ、顔料分散ポリウレタン樹脂を得た。
【0147】
この顔料分散ポリウレタン樹脂をジェットミルで粉砕し、さらに気流式分級機により分級し、分級後の体積平均粒径が8.1μmのトナー母粒子を作製した。このトナー母粒子100重量部に対して、疎水性シリカ(日本アエロジル社製 RX200、粒径12nm)を0.5重量部添加し、ヘンシェルミキサーにて攪拌混合し、マゼンタトナー(C)を得た。
【0148】
得られたマゼンタトナー(C)について、110℃から180℃の温度域で、30%ハーフトーン画像による定着性を評価したところ、140℃以上の温度域においてはオフセットのない画像が得られた。また、150℃以上の温度域において、定着強度が85%以上の定着画像が得られた。
【0149】
(シアントナーの作成)
実施例1におけるシアントナー(E)は、顔料をクラリアント製 Toner Cyan BG に変更した以外は、前述のマゼンタトナー(C)と同様にして作成した。
(ブラックトナーの作成)
実施例1におけるブラックシアントナー(F)は、顔料をデグサ製 NIpex 60 に変更した以外は、前述のマゼンタトナー(C)と同様にして作成した。
【0150】
(イエロートナーの作成)
実施例1におけるイエロートナーは、前述のマゼンタトナー(C)の作成において脱気乾燥した顔料分散液に、別のポリオール(PO2)としてジメチロールブタン酸を120℃にて加温溶解させて、ポリオール(PO3)を調製する際に、更に、昭和高分子(株)製 フェノール樹脂 ショウノール BRG−556(軟化点 79℃)の3重量%を顔料分散ポリウレタン樹脂中に配合して調整し、かつ顔料としてクラリアント社製 Toner Yellow HG TRAN VP 2376 を用いた以外は、前述のマゼンタトナー(C)の作成と同様にして、イエロートナー(A)を作成した。このように、低軟化点の樹脂(この例では、フェノール樹脂)を少量配合し、この低軟化点樹脂を可塑剤として機能させることにより、貯蔵弾性率G′を調整することができる。
【0151】
得られたイエロートナー(A)について、110℃から180℃の温度域で、30%ハーフトーン画像による定着性を評価したところ、140℃以上の温度域においてオフセットのない画像が得られた。また、150℃以上の温度域において定着強度85%以上の定着画像が得られた。すなわち、この実施例1のイエロートナー(A)は、140℃以上の温度域が非オフセット域であり、また、150℃以上の温度域が定着強度良好域である。
【0152】
そして、マゼンタトナー(C)およびイエロートナー(A)の各貯蔵弾性率G′を前述の方法で測定した。このとき、貯蔵弾性率G′の測定時の歪みは、0.7%に設定した。その測定結果を図7に示す。
図7から明らかなように、イエロートナー(A)の貯蔵弾性率G′の方がマゼンタトナー(C)の貯蔵弾性率G′より小さい。なお、図示しないが、シアントナー(E)およびブラックトナー(F)の各貯蔵弾性率G′は、マゼンタトナー(C)の貯蔵弾性率G′と同じである。したがって、イエロートナー(A)の貯蔵弾性率G′はシアントナー(E)およびブラックトナー(F)の各貯蔵弾性率G′よりも小さい。
【0153】
(フルカラー画像の形成)
前述のイエロートナー(A)、マゼンタトナー(C)、シアントナー(E)、およびブラックトナー(F)を用いて、本発明の画像形成装置を用いて、両面印刷機能を使用せずに、富士ゼロックスオフィスサプライ社製J紙の片面にフルカラー画像を形成する。また、その際に、このフルカラー画像の画像データが存在しない白地の部分には、イエロートナー(A)により600dpiの孤立ドットをランダムに形成し、これを擬似的な追跡パターンとする。
なお、白地の部分に形成したイエロートナー(A)の孤立ドットの数は、20dot個/5mm角となるようにした。また、定着設定温度を180℃、定着ニップ通過時間を100msecとする。
【0154】
この画像の白地部分を、消しゴム{コクヨ(株) PLASTIC ERASER ケシ−1 鉛筆用}を用い、1kg荷重にて5回擦り、摺擦後のイエロートナーの孤立ドット残存数を光学顕微鏡にて計数したところ、18〜20dot個/5mm角以下であり、ほとんどのドットの欠落が生じず、追跡パターンの可読性が非常に良好である。
【0155】
(比較例1)
(イエロートナーの作成)
比較例1におけるイエロートナー(G)は、実施例1のイエロートナー(A)における昭和高分子(株)製 フェノール樹脂 ショウノール BRG−556(軟化点 79℃)を含まないこと以外は、この実施例1のイエロートナー(A)と同様にして作成した。
【0156】
そして、マゼンタトナー(C)およびイエロートナー(G)の各貯蔵弾性率G′を前述の方法で測定した。このとき、貯蔵弾性率G′の測定時の歪みは、0.7%に設定した。その測定結果を図9に示す。
図9から明らかなように、このイエロートナー(G)の貯蔵弾性率G′は、マゼンタトナー(C)の貯蔵弾性率G′とほぼ同じである。また、前述のように、シアントナー(E)およびブラックトナー(F)の各貯蔵弾性率G′がマゼンタトナー(C)の貯蔵弾性率G′と同じであるから、イエロートナー(A)の貯蔵弾性率G′はシアントナー(E)およびブラックトナー(F)の各貯蔵弾性率G′ともほぼ同じである。
【0157】
(フルカラー画像の形成)
前述のイエロートナー(G)を使用する以外は、実施例1と同様に、マゼンタトナー(C)、シアントナー(E)、およびブラックトナー(F)を用いて、実施例1と同様に、富士ゼロックスオフィスサプライ社製J紙の片面にフルカラー画像を形成する。また、その際に、このフルカラー画像の画像データが存在しない白地の部分には、イエロートナー(G)により600dpiの孤立ドットをランダムに形成し、これを擬似的な追跡パターンとする。
なお、白地の部分に形成したイエロートナー(G)の孤立ドットの数は、20dot個/5mm角となるようにした。また、定着設定温度を180℃、定着ニップ通過時間を100msecとする。
【0158】
この画像の白地部分を、消しゴム{コクヨ(株) PLASTIC ERASER ケシ−1 鉛筆用}を用い、1kg荷重にて5回擦り、摺擦後のイエロートナーの孤立ドット残存数を光学顕微鏡にて計数したところ、定着装置1回しか通過しない裏面では15dot個/5mm角以下であり、ドットの欠落が生じ、ドットの欠落が生じ、追跡パターンの可読性が不良である。
なお、この画像の摺擦前の白地部分のイエロートナーの孤立ドットを光学顕微鏡で観察したところ、通常の孤立ドットが部分的に欠落していた形状となっているドットが多数観察され、実用上支障がないレベルではあるが、オフセットが生じていた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成装置の一例を示す全体構成の模式的断面図である。
【図2】図1に示す画像形成装置における定着装置の詳細構造を示し、(a)は断面図、(b)は(a)のY−Y線に沿って矢印方向に見た断面図(装置の右半分は省略)である。
【図3】図2(a)のX−X線に沿って矢印方向に見た断面図である。
【図4】図2(a)で耐熱ベルトを除去した一部拡大断面図である。
【図5】図4で耐熱ベルト3を装着した図である。
【図6】図5でシート材の通過時の状態を示す図である。
【図7】本発明に係るトナーの実施例1のイエロートナー(A)およびマゼンタトナー(C)における粘弾性特性の貯蔵弾性率G′の挙動(温度依存性を示す図である。
【図8】トナーの粘弾性測定装置を模式的に示す図である。
【図9】比較例1のイエロートナー(G)およびマゼンタトナー(C)における各貯蔵弾性率G′の挙動(温度依存性)を示す図である。
【符号の説明】
1…熱定着ロール、1a……ロゲンランプ、1b…ロール基材、1c…弾性体、2…加圧ロール、2a…回転軸、2b…ロール基材、2c…弾性体、3…耐熱ベルト、4…ベルト張架部材、4a…突壁、5…シート材、5a…未定着トナー像、6…クリーニング部材、7…フレーム、9…スプリング、10…画像形成装置、10a…ハウジング、10b…扉体、11…紙搬送ユニット、15…クリーニング手段、17…像担持体、18…画像転写搬送手段、20…現像手段、21…スキャナ手段、30…給紙ユニット、40…定着装置、W…露光ユニット、D…画像形成ユニット、L…押圧部接線、G′…貯蔵弾性率
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真、静電記録、静電印刷などにおけるカラー画像を加熱定着により記録媒体に形成可能な画像形成装置の技術分野に属し、特に、少なくとも視認し難い色のトナーを含む複数色の可視のトナーを用いてカラー画像を記録媒体に形成可能な画像形成装置の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法として、光導電性物質からなる感光体上に静電荷像を形成し、次いで該静電荷像を現像ローラ上に担持したトナーを用いて現像し、感光体上に現像されたトナー画像を、直接、または中間転写体を介して紙等の記録媒体上に転写し、更に、記録媒体上のトナー画像を加熱ローラー等の定着ローラにより紙等の記録媒体に圧着加熱して定着することで、カラー画像を形成する画像形成装置が、例えばカラー複写機、カラープリンタ等により知られている。
【0003】
近年、このようなカラー複写機、カラープリンタ等の、カラー画像を形成することができる画像形成装置は、高画質なカラー画像を形成することができるようになっている。このため、この画像形成装置を利用して本来複写されるべきでない特定画像(例えば有価証券、紙幣)を不正に作成されるおそれが増大しつつある。
【0004】
そこで、装置に入力されたカラー画像データが示すカラー画像を複数色の可視の色材を用いて可視出力する際に、このカラー画像における前記複数色の可視の色材の内の人間の目に識別し難い色の色材であるイエロートナーを用いて装置固有の識別情報を表す特定パターンを付加させることで、この特定パターンを基に、このカラー画像を形成した画像形成装置を確実に特定できるようにするとともに、この特定パターンの付加によって、形成された画像が本来の画像から視覚的に変化することを抑制した画像処理装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
一方、このような画像形成装置に使用されるトナーとしては加熱ローラに溶融トナーが付着する、いわゆる低温または高温オフセット現象を生じないこと、また、記録媒体上に定着されたトナー画像の定着強度に大きいこと等の優れた定着性が要求される。
加熱ローラを使用した定着にあっては、トナーの定着性、耐オフセット性を制御する要因として、トナーにおける動的粘弾性である貯蔵弾性率と損失弾性率が影響することは良く知られている。貯蔵弾性率と損失弾性率は、一般的な粘弾性を有する物質の振動実験において定義される粘弾性特性であり、複素弾性率の実数部分を貯蔵弾性率(G′)、虚数部分を損失弾性率(G″)といい、具体的には貯蔵弾性率はトナーの弾性の度合を示す指標とされ、また、損失弾性率は粘性の度合を示す指標とされている。
【0006】
また、一般に、ポリマーからなる結着樹脂を含有するトナーは、一定歪みを与えた場合、発生する応力が指数的に減衰する応力緩和挙動を示す。そこで、定着ローラへのトナーのオフセットや紙等の記録媒体上のトナーの定着強度等のトナー画像の定着性の改良や着色剤の分散性の改良を目的として、従来、これらのトナーの特性を定量的に確認するために、前述の動的粘弾性測定から求められるトナーの緩和弾性率および緩和時間が用いられている。
【0007】
応力緩和挙動は、結着樹脂の粘弾性や樹脂内に分散された離型剤等の構造、大きさ、量等の影響を大きく受けるため、トナーの溶融状態を応力緩和挙動、つまり緩和弾性率Gおよび緩和時間を用いて表すことができる。そこで、トナー定着時のトナーの溶融状態を粘弾性特性である緩和弾性率および緩和時間を用いて表すことで、トナー画像の定着性および離型剤等の分散性をそれぞれ改良することが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【特許文献1】
特許第2614369号公報(請求項1、段落番号[0002]、[0004]、[0062])
【特許文献2】
特開2000−81721号公報(段落番号[0016]〜[0018])
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、画像形成装置による紙幣等の有価証券類の本来複写されるべきでない画像が形成された記録媒体の偽造防止の観点から、画像形成装置は本来複写されるべきでない画像の複写画像に、記録媒体に形成されたカラー画像の情報を追跡するためのパターン(以下、追跡パターンともいう;特許文献1における特定パターンに相当)を付加形成するが、複写されてもよい通常一般の画像の複写画像にも追跡パターンを付加形成するようになる。このため、本来複写されてもよい画像の複写画像が本来の画像から視覚的に変化することを抑制する、つまり、画質を損なわないようにする必要がある。このような画質を損なわないという制約上、追跡パターンは画像が形成されない余白の部分に形成されることが望ましい。
【0009】
ところが、前述のような紙幣等の有価証券類では、一般に高度な印刷技術を用いることにより偽造の防止を図っており、いきおい、記録媒体である紙は印刷部分が多くなって余白が少なりがちである。したがって、追跡パターン画像は本来の画像の複写部分に形成されるようになり、この追跡パターン画像を形成する視認し難い色のトナーが紙から剥離し易くなる。このため、追跡パターンの判定が難しくなるという問題がある。
【0010】
しかしながら、前述の特許文献1に開示の画像処理装置では、単に視認し難い色のトナーで特定のパターンを形成するだけであり、この特定パターンを形成するトナーの紙からの剥離については考慮されていない。このため、複写物に特定パターンを付加しても、その特定パターンが紙から容易に剥離して特定パターンの判定が難しくなるという問題が潜在する。
一方、前述の特許文献2には、トナー定着時のトナーの溶融状態を粘弾性特性である緩和弾性率および緩和時間を用いて表すことで、トナー画像の定着性を改良することが単に開示されているだけであり、前述のような、視認し難い色のトナーの紙からの剥離による追跡パターンの判定の困難さの問題については何ら開示されていない。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、特定の画像の記録媒体の複写物に、その複写物の情報を追跡する視認し難い色のパターンをその記録媒体の画像の画質を損なわないように形成しつつ、パターンの定着強度を向上できる画像形成装置を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するために、本発明の画像形成装置は、少なくとも視認し難い色のトナーを含む複数色の可視のトナーを用いてカラー画像を記録媒体に形成可能な画像形成装置において、前記視認し難い色のトナーが少なくとも結着樹脂および着色剤を含有し、この視認し難い色のトナーが、軟化点以上の温度領域において、その貯蔵弾性率(G′)が他色のトナーの貯蔵弾性率(G′)よりも小さくなるように設定されていることを特徴としている。
また、本発明は、前記カラー画像を記録媒体の両面に形成可能であることを特徴としている。
【0013】
更に、本発明は、前記視認し難い色のトナーがイエロートナーであることを特徴としている。
更に、本発明は、前記視認し難い色のトナーがイエロートナーであり、他の複数色のトナーが、少なくともマゼンタトナーおよびシアントナーであることを特徴としている。
【0014】
更に、本発明は、前記複数色のトナーが、いずれも、イソシアネート基を2個以上含有する化合物と、活性水素をもつ官能基を2個以上含有する化合物(活性水素含有成分)との重合によって得られる、ウレタン結合あるいはウレア結合を主鎖に有するポリマーを結着樹脂として含有していることを特徴としている。
【0015】
【発明の作用および効果】
本発明の画像形成装置においては、紙等の記録媒体の両面に形成可能な画像形成装置に用いられる、少なくとも視認し難い色のトナーを含む複数色の可視のトナーのうち、少なくとも視認し難い色のトナーが少なくとも結着樹脂および着色剤を含有し、この視認し難い色のトナーは、軟化点以上の温度領域において、その貯蔵弾性率(G′)が他色のトナーの貯蔵弾性率(G′)よりも小さくなるように設定されたトナーである。
【0016】
このような視認し難い色のトナーは、紙等の記録媒体にトナー画像が形成されて軟化点以上の温度領域で加熱定着されるが、このとき、その貯蔵弾性率(G′)が他色の貯蔵弾性率(G′)より小さくなる。これにより、視認し難い色のトナーが加熱定着により紙等の記録媒体へ浸透し、その結果、視認し難い色のトナーが紙等の記録媒体から剥離し難くなる。
【0017】
したがって、記録媒体に形成された視認し難い色のトナー画像の定着強度を向上させることができる。これにより、記録媒体に形成されたカラー画像の情報を追跡するためのパターンを確実に付加形成することができる。また、複写されてもよい通常一般のカラー画像の複写像にもこの追跡パターンが付加形成されるようになるが、この場合には、視認し難い色のトナーが用いられることで、通常一般のカラー画像の複写像に追跡パターンが付加形成されても、この追跡パターンは人間の目には見えず、通常一般のカラー画像の画質を損なわない。
【0018】
特に、紙等の記録媒体の両面に画像を形成する場合、最初に記録媒体の第1面にトナー画像が形成されて加熱定着された後、記録媒体の第2面にトナー画像が形成されて加熱定着されるため、記録媒体が定着器を2回通過するようになるが、第2面の定着時に、第1面に形成された視認し難い色のトナーが再加熱定着時に紙等の記録媒体へ更に浸透し、その結果、視認し難い色のトナーが紙等の記録媒体からより一層剥離し難くなる。したがって、記録媒体の両面に画像を形成する場合、最初の第1面に形成された視認し難い色のトナー画像の定着強度を効果的に向上させることができる。
【0019】
これにより、例えば、余白がほとんどない両面印刷物であり、本来複写されるべきでない特定画像が形成される印刷物である紙幣等の有価証券類等が複写されようとする際に、偽造防止のための追跡パターンが有価証券類等に印刷された画像の画質を損なわないように視認し難い色のトナーでその複写物に形成されるが、加熱定着後の視認し難い色のトナー画像の定着強度が高いことから、視認し難い色のトナーによる追跡パターンがより確実に形成されるようになる。したがって、有価証券類等の偽造を効果的に防止できる。
【0020】
また、本発明のトナーによれば、視認し難い色のトナーとしてイエロートナーを用いることで、視認し難い色のトナー画像の定着強度を効果的に向上させつつ、視認し難い色のトナーによる追跡パターンをより確実に形成できる。
更に、本発明のトナーによれば、イソシアネート基を2個以上含有する化合物と、活性水素をもつ官能基を2個以上含有する化合物(活性水素含有成分)との重合によって得られる、ウレタン結合あるいはウレア結合を主鎖に有するポリマーを結着樹脂として含有することにより、貯蔵弾性率G′が極小値を有し、高温オフセットを効果的に防止でき、記録媒体に形成された視認し難い色の追跡パターン画像をより確実に作成することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる画像形成装置の実施の形態について説明する。
(画像形成装置)
本発明の画像形成装置は、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、およびブラックトナーの4色のトナーを用いて、紙等の記録媒体の両面にフルカラー画像を形成することができる画像形成装置である。
【0022】
なお、本発明の画像形成装置はこれらの4色のトナーを用いることに限定されるものではなく、少なくとも視認し難い色のイエロートナーと他の1色以上のトナーとの複数色のトナーを用いてカラー画像を形成する画像形成装置にも適用することができる。しかし、以下の説明では、この例の画像形成装置が前述の4色のトナーを用いて、紙等の記録媒体の両面にフルカラー画像を形成する画像形成装置であるとして説明する。
【0023】
次に、本発明の画像形成装置について、詳細に説明する。
図1は、本発明の画像形成装置の一例を示す全体構成の模式的断面図である。図中、10は画像形成装置、10aはハウジング、10bは扉体、11は紙搬送ユニット、15はクリーニング手段、17は像担持体、18は画像転写搬送手段、20は現像手段、21はスキャナ手段、30は給紙ユニット、40は定着装置、Wは露光ユニット、Dは画像形成ユニットである。
【0024】
図1に示すように、画像形成装置10は、ハウジング10aと、ハウジング10aの上部に形成された排紙トレイ10cと、ハウジング10aの前面に開閉自在に装着された扉体10bを有し、ハウジング10a内には、露光ユニット(露光手段)W、画像形成ユニットD、画像転写搬送手段18を有する転写ベルトユニット29、給紙ユニット30が配設され、扉体10b内には紙搬送ユニット11が配設されている。各ユニットは、本体に対して着脱可能な構成であり、メンテナンス時等には一体的に取り外して修理または交換を行うことが可能な構成になっている。
【0025】
画像形成ユニットDは、複数(図示例では4つ)の異なる色の画像を形成する画像形成ステーションY(イエロー用),M(マゼンタ用),C(シアン用),K(ブラック用)を備えている。そして、各画像形成ステーションY,M,C,Kには、それぞれ、感光ドラムからなる像担持体17と、像担持体17の周囲に配設された、コロナ帯電手段からなる帯電手段19および現像手段20を有する。これら各画像形成ステーションY,M,C,Kは、転写ベルトユニット29の下側に斜めアーチ状のラインに沿って像担持体17が上向きになるように並列配置されている。なお、各画像形成ステーションY,M,C,Kの配置順序は任意である。
【0026】
転写ベルトユニット29は、ハウジング10aの下側に配設され図示しない駆動源により回転駆動される駆動ロール12と、駆動ロール12の斜め上方に配設される従動ロール13と、テンションロール14と、これら3本のロール間に張架されて図1において矢印で示す反時計方向へ循環駆動される中間転写ベルトからなる画像転写搬送手段18と、画像転写搬送手段18の表面に当接するクリーニング手段15とを備えている。従動ロール13、テンションロール14および画像転写搬送手段18は、駆動ロール12に対して図で左上方に傾斜するように配設されるとともに、画像転写搬送手段18が反時計方向へ回転することより、画像転写搬送手段18の駆動時のベルト搬送方向が下向きになるベルト面18aが下方に位置し、搬送方向が上向きになるベルト面18bが上方に位置するようにされている。
【0027】
したがって、各画像形成ステーションY,M,C,Kも駆動ロール12に対して図1で左上方に傾斜する方向に配設されることになる。そして、像担持体17は、アーチ状のラインに沿って画像転写搬送手段18の搬送方向下向きのベルト面18aに接触され、図1に矢印で示すように時計方向に、つまり画像転写搬送手段18と接触する部分が画像転写搬送手段18の搬送方向と同方向に回転駆動される。可撓性を有する無端スリーブ状の画像転写搬送手段18は、像担持体17に対して上側から被せるように略同一の巻き付け角度で接触させるため、像担持体17と画像転写搬送手段18との間の接触圧やニップ幅は、テンションロール14により画像転写搬送手段18に付与される張力、像担持体17の配置間隔、巻き付け角度(アーチの曲率)などを制御することにより調整することができる。
【0028】
駆動ロール12は、2次転写ロール39のバックアップロールを兼ねている。駆動ロール12の周面には、例えば厚さ3mm程度、体積抵抗率が105 Ω・cm以下のゴム層が形成されており、金属製の軸を介して接地することにより、2次転写ロール39を介して供給される2次転写バイアスの導電経路としている。このように駆動ロール12に高摩擦かつ衝撃吸収性を有するゴム層を設けることにより、2次転写部へシート材が進入する際の衝撃が画像転写搬送手段18に伝達し難く、画質の劣化を防止することができる。また、駆動ロール12は、その径を従動ロール13、バックアップロール14の径より小さくすることにより、2次転写後のシート材がシート材自身の弾性力で剥離し易くすることができる。また、従動ロール13を後述するクリーニング手段15のバックアップロールとして兼用させている。
なお、画像転写搬送手段18を駆動ロール12に対して図1で右上方に傾斜するように配設し、これに対応して各画像形成ステーションY,M,C,Kも駆動ロール12に対して図1で右上方に傾斜するように斜めアーチ状に沿って配設してもよい。
【0029】
クリーニング手段15は、搬送方向下向きのベルト面18a側に設けられ、二次転写後に画像転写搬送手段18の表面に残留しているトナーを除去するクリーニングブレード15aと、回収したトナーを搬送するトナー搬送部材15bを備えている。クリーニングブレード15aは、従動ロール13への画像転写搬送手段18の巻きかけ部において画像転写搬送手段18に当接されている。また、画像転写搬送手段18の裏面には、後述する各画像形成ステーションY,M,C,Kの像担持体17に対向して1次転写部材16が当接され、1次転写部材16には転写バイアスが印加されている。
【0030】
露光手段Wは、斜め方向に配設された画像形成ユニットDの斜め下方に形成された空間に配設されている。また、露光手段Wの下部でハウジング10aの底部には給紙ユニット30が配設されている。露光手段Wは、全体がケースに収納され、ケースは、搬送方向下向きのベルト面の斜め下方に形成される空間に配設されている。ケースの底部には、ポリゴンミラーモータ21a、ポリゴンミラー(回転多面鏡)21bからなる単一のスキャナ手段21を水平に配設されるとともに、各色の画像信号により変調される複数のレーザ光源23からのレーザビームをポリゴンミラー21bで反射させ各像担持体上に偏向走査する光学系Bには、単一のf−θレンズ22および各色の走査光路が像担持体17にそれぞれ非平行になって折り返すように複数の反射ミラー24が配設されている。
【0031】
上記構成からなる露光手段Wにおいては、ポリゴンミラー21bから各色に対応した画像信号が、共通のデータクロック周波数に基づいて変調形成されたレーザビームで射出され、f−θレンズ22、反射ミラー24を経て、各画像形成ステーションY,M,C,Kの像担持体17に照射され、潜像が形成される。反射ミラー24を設けることにより走査光路を屈曲させ、ケースの高さを低くすることが可能となり光学系のコンパクト化が可能となる。しかも、各画像形成ステーションY,M,C,Kの像担持体17への走査光路長は同一の長さになるように反射ミラー24が配置されている。このように各画像形成ユニットDに対する露光手段Wのポリゴンミラー21bから像担持体17までの光路の長さ(光路長)が略同一の長さになるように構成することにより、各光路で走査された光ビームの走査幅も略同一になり、画像信号の形成にも特別な構成を必要としない。したがって、レーザ光源は、それぞれ異なる画像信号によってそれぞれ異なった色の画像に対応して変調されるにも関わらず、共通のデータクロック周波数に基づいて変調形成可能であり、共通の反射面を用いるため副走査方向の相対差から生じる色ずれを防止し、構造が簡単で安価なカラー画像形成装置を構成できる。
【0032】
また、この例の画像形成装置10では、その装置内の下方に走査光学系を配置することにより、画像形成装置10の駆動系が装置を支持するフレームへ与える振動による走査光学系の振動を最小限にすることができ、画質の劣化を防止することができる。とくに、スキャナ手段21をケースの底部に配置することにより、ポリゴンモータ21a自身がケース全体に与える振動を最小限にすることができ、画質の劣化を防止することができる。また、振動源であるポリゴンモータ21aの数を一つにすることによりケース全体に与える振動を最小限にすることができる。
【0033】
給紙ユニット30は、シート材が積層保持されている給紙カセット35と、給紙カセット35からシート材を一枚ずつ給送するピックアップロール36を備えている。紙搬送ユニット11は、二次転写部へのシート材の給紙タイミングを規定するゲートロール対37(一方のロールはハウジング10a側に設けられている)と、駆動ロール12および画像転写搬送手段18に圧接される二次転写手段としての二次転写ロール39と、主記録媒体搬送路38と、定着装置40と、排紙ロール対41と、両面プリント用搬送路42を備えている。
【0034】
(画像形成装置における定着装置)
図2ないし図6は、図1に示す画像形成装置における定着装置の詳細構造を示し、図2(a)は断面図、図2(b)は図2(a)のY−Y線に沿って矢印方向に見た断面図(装置の右半分は省略)、図3は図2(a)のX−X線に沿って矢印方向に見た断面図、図4は図2(a)で耐熱ベルトを除去した一部拡大断面図、図5は図4で耐熱ベルト3を装着した図、図6は図5でシート材の通過時の状態を示す図である。図中、1は熱定着ロール、1aはハロゲンランプ、1bはロール基材、1cは弾性体、2は加圧ロール、2aは回転軸、2bはロール基材、2cは弾性体、3は耐熱ベルト、4はベルト張架部材、4aは突壁、5はシート材、5aは未定着トナー像、6はクリーニング部材、7はフレーム、9はスプリング、Lは押圧部接線である。
【0035】
図2(a)に示すように、定着装置40は、熱定着ロール(以下、加熱ロールともいう)1、加圧ロール2、耐熱ベルト3、ベルト張架部材4、およびクリーニング部材6を備えている。
熱定着ロール1は、外径25mm程度、肉厚0.7mm程度のパイプ材をロール基材1bとして、その外周に厚み0.4mm程度の弾性体1cを被覆して形成され、ロール基材1bの内部に、加熱源として1,050W、2本の柱状ハロゲンランプ1aが内蔵されており、図2(a)に矢印で示す反時計方向に回転可能になっている。また、加圧ロール2は、外径25mm程度、肉厚0.7mm程度のパイプ材をロール基材2bとして、その外周に厚み0.2mm程度の弾性体2cを被覆して形成し、熱定着ロール1と加圧ロール2の圧接力を10kg以下、ニップ長を10mm程度で構成し、熱定着ロール1に対向して配置し、図2(a)に矢印で示す時計方向に回転可能になっている。
【0036】
このように、熱定着ロール1および加圧ロール2の外径が25mm程度の小径に構成されているため、定着後のシート材5が熱定着ロール1または耐熱ベルト3に巻き付くことがなく、シート材を強制的に剥がすための手段が不要となっている。また、熱定着ロール1の弾性体1cの表層には約30μmのPFA層を設けることで、その分剛性が向上する。これにより、各弾性体1c,2cの厚みは異なるが、両弾性体1c,2cは略均一な弾性変形をして、いわゆる水平ニップが形成され、また、熱定着ロール1の周速に対して耐熱ベルト3またはシート材5の搬送速度に差異が生じることもないので、極めて安定した画像定着が可能となる。
【0037】
また、熱定着ロール1の内部に、加熱源を構成する2本のハロゲンランプ1a,1aが内蔵されており、これらのハロゲンランプ1a,1aの発熱エレメントはそれぞれ異なった位置に配置されている。そして、各ハロゲンランプ1a,1aが選択的に点灯されることにより、後述する耐熱ベルト3が熱定着ロール1に巻き付いた定着ニップ部位とベルト張架部材4が熱定着ロール1に摺接する部位との異なる条件や、幅の広いシート材と幅の狭いシート材との異なる条件下での温度コントロールが容易に行われるようになっている。
【0038】
耐熱ベルト3は、加圧ロール2とベルト張架部材4の外周に張架されて移動可能とされ、熱定着ロール1と加圧ロール2との間に挟圧されるエンドレスの環状のベルトである。この耐熱ベルト3は0.03mm以上の厚みを有し、その表面(シート材5が接触する側の面)をPFAで形成し、また、裏面(加圧ロール2およびベルト張架部材4と接触する側の面)をポリイミドで形成した2層構成のシームレスチューブで形成されている。耐熱ベルト3は、これに限定されず、ステンレス管やニッケル電鋳管等の金属管、シリコン等の耐熱樹脂管等の他の材料で形成することもできる。
そして、この耐熱ベルト3の表面にはシリコーンオイル等の離型剤が塗布されず、本発明のこの例の定着装置40はオイルレス定着器として構成されている。
【0039】
ベルト張架部材4は、熱定着ロール1と加圧ロール2との定着ニップ部よりもシート材5搬送方向上流側に配設されるとともに、加圧ロール2の回転軸2aを中心として矢印P方向に揺動可能に配設されている。ベルト張架部材4は、シート材5が定着ニップ部を通過しない状態において、耐熱ベルト3を熱定着ロール1の接線方向に張架するように構成されている。シート材5が定着ニップ部に進入する初期位置で定着圧力が大きいと進入がスムーズに行われなくて、シート材3の先端が折れた状態で定着される場合があるが、このように耐熱ベルト3を熱定着ロール1の接線方向に張架する構成にすることで、シート材5の進入がスムーズに行われるシート材5の導入口部が形成でき、安定したシート材5の定着ニップ部への進入が可能となる。
【0040】
ベルト張架部材4は、耐熱ベルト3の内周に嵌挿されて加圧ロール2と協働して耐熱ベルト3に張力fを付与する略半月状のベルト摺動部材(耐熱ベルト3はベルト張架部材4上を摺動する)である。このベルト張架部材4は、耐熱ベルト3が熱定着ロール1と加圧ロール2との押圧部接線Lより熱定着ロール1側に巻き付けてニップを形成する位置に配置される。突壁4がはベルト張架部材4の軸方向一端または両端に突設されており、この突壁4は、耐熱ベルト3が軸方向端の一方に寄った場合に、この耐熱ベルト3がこの突壁4aに当接することで耐熱ベルト3の端への寄りを規制するものである。突壁4aの熱定着ロール1と反対側の端部とフレームとの間にスプリング9が縮設されていて、ベルト張架部材4の突壁4aが熱定着ロール1に軽く押圧され、ベルト張架部材4が熱定着ロール1に摺接して位置決めされる。
【0041】
耐熱ベルト3を加圧ロール2とベルト張架部材4とにより張架して加圧ロール2で安定して駆動するには、加圧ロール2と耐熱ベルト3との摩擦係数をベルト張架部材4と耐熱ベルト3との摩擦係数より大きく設定するとよい。しかし、摩擦係数は、耐熱ベルト3と加圧ロール2との間あるいは耐熱ベルト3とベルト張架部材4との間への異物の侵入や、耐熱ベルト3と加圧ロール2およびベルト張架部材4との接触部の摩耗などによって不安定になる場合がある。
【0042】
そこで、加圧ロール2と耐熱ベルト3の巻き付け角よりベルト張架部材4と耐熱ベルト3の巻き付け角が小さくなるように、また、加圧ロール2の径よりベルト張架部材4の径が小さくなるように設定する。これにより、耐熱ベルト3がベルト張架部材4を摺動する長さが短くなり、経時変化や外乱などに対する不安定要因から回避でき、耐熱ベルト3を加圧ロール2で安定して駆動することができるようになる。
【0043】
更に、クリーニング部材6が加圧ロール2とベルト張架部材4との間に配置されており、このクリーニング部材6は耐熱ベルト3の内周面に摺接して耐熱ベルト3の内周面の異物や摩耗粉等をクリーニングするものである。このように異物や摩耗粉等をクリーニングすることで、耐熱ベルト3をリフレッシュし、前述の摩擦係数の不安定要因を除去している。また、ベルト張架部材4に凹部4fが設けられており、この凹部4fは、耐熱ベルト3がら除去した異物や摩耗粉等の収納に好適である。
【0044】
ベルト張架部材4が熱定着ロール1に軽く押圧される位置がニップ初期位置とされ、また、熱定着ロール1に加圧ロール2が押圧する位置がニップ終了位置とされる。そして、シート材5はニップ初期位置から定着ニップ部に進入して耐熱ベルト3と熱定着ロール1との間を通過し、ニップ終了位置から抜け出ることで、シート材5上に形成された未定着トナー像5aが定着され、その後、熱定着ロール1への加圧ロール2の押圧部の接線方向Lに排出される。
【0045】
次に、加圧ロール2とベルト張架部材4の支持構造について説明する。
図2(b)に示すように、加圧ロール2の両端の回転軸2aは、左右のフレーム7に軸受7aを介して回転自在に支持されている。加圧ロール2の回転軸2aの両側には、揺動アーム4bが回転自在に嵌合され、この揺動アーム4bのベルト張架部材4側にはガイド溝4cが形成されている。一方、ベルト張架部材4の両端には、加圧ロール2側に延設されたガイド部4dが形成されており、このガイド部4dがスプリング4eを介して前記揺動アーム4bのガイド溝4c内に嵌挿されている。そして、ベルト張架部材4がスプリング4eにより加圧ロール2から離れる方向に付勢されることで、耐熱ベルト3に張力fが付与されるようになっている。
【0046】
ベルト張架部材4は耐熱ベルト3を摺動させる非回転部材として構成されている。これにより、ベルト張架部材4は回転部材ではないので、その支持構造が簡単になる。また、ベルト張架部材4が略半月状に形成されることから、その半月状の欠けた部分を加圧ロール2側に向けて配置することで、ベルト張架部材4を加圧ロール2に可及的に接近して配置できるようになる。これにより、耐熱ベルト3の周長を短縮して構成することが可能になる。したがって、熱ロール型定着装置を簡単な構造にして小型で安価にすることができる。
【0047】
また、ベルト張架部材4を加圧ロール2に可及的に接近して配置可能となることから、耐熱ベルト3が必要最小限の経路で移動するようになる。したがって、回転可能な熱定着ロール1とのニップ部においてこの熱定着ロール1に内蔵された加熱源で加熱された耐熱ベルト3は、所定の経路で移動する時に奪われる熱エネルギーを最小限に抑えることができるとともに、耐熱ベルト3の周長が短いので、自然放熱による温度低下が少なく、耐熱ベルト3が電源オン時から定着可能になる所望の温度に到達するまでのウォーミングアップ時間が短縮可能となる。更に、耐熱ベルト3が加圧ロール2とベルト張架部材4との協働によって張力を付与されることで熱定着ロール1に巻き付けられてニップを形成しているので、容易にニップ長を長く構成することができ、構造が簡単になり小型で安価にすることができる。
【0048】
更に、シート材5の上に形成した未定着トナー像5aを安定して定着するには、未定着トナー像5aを十分に溶融して定着することが必須であり、所望の温度と溶融時間を必要とするが、本発明による構成では、ニップ長を長く構成するために熱定着ロール1の表面に被覆した弾性体1cを大きく歪ませてニップ長を長くするような手段は必要ないので、弾性体1cの厚みは薄く構成可能である。しかも、弾性体1cを歪ませるために加圧ロール2の圧接圧力を大きく設定する必要もなく、未定着トナー像5aを担持したシート材5が熱定着ロール1と耐熱ベルト3の間を通過するときに通過するシート材5へのストレスが小さいので、未定着トナー像5aの定着後に排出されるシート材5に皺が発生するなどのシート材5の変形が抑制される。
【0049】
したがって、熱ロール型定着装置40の機械的剛性のアップは不要であるとともに、熱定着ロール1の薄肉化が可能であり、加熱源から耐熱ベルト3を加熱する加熱速度が向上する。また、加圧ロール2も同様に薄肉化が可能であり、熱容量を小さく構成できるので、耐熱ベルト3からの熱エネルギー吸収が小さく、電源オン時から定着可能になる所望の温度に到達するまでウォーミングアップ時間の短縮が可能である。
【0050】
図3および図4に示すように、ベルト張架部材4の突壁4aは熱定着ロール1に摺接面4gで摺接し位置決めされている。ベルト張架部材4の摺接面4gと耐熱ベルト3を押圧してシート材5を熱定着ロール1に押圧する押圧面4hとの間に、耐熱ベルト3の厚みより大きなギャップ(段差)Gを設け、押圧面4hは熱定着ロール1と同心円状に形成されている。具体的には、ギャップは110μm程度の段差で形成し、耐熱ベルト3は80μm程度の厚みで形成し、これにより30μm程度の空隙を確保し、60μm程度の厚みを有するシート材5でも安定した定着を可能にしている。
【0051】
図5に示すように、耐熱ベルト3が装着された状態では、耐熱ベルト3はその移動方向上流側でベルト張架部材4に巻き付けられてニップ初期位置で耐熱ベルト3を熱定着ロール1に押圧され、その後熱定着ロール1と加圧ロール2との間のニップ部に圧接される。
【0052】
定着工程の前工程でシート材上に未定着トナー像5aを形成するプロセス工程の速度と定着工程の速度とを完全に一致させることは、量産上の種々の部品寸法のバラツキを考慮すると現実的ではない。そこで、このバラツキを考慮してシート材5上に未定着トナー像5aを形成するプロセス工程の速度に比較して定着工程の速度を早くするか遅くするかのいずれか一方側に設定して前後工程の速度バランスを構築する。シート材5を定着装置40を通過させる場合、定着ニップにシート材5が進入する初期位置でシート材5を確実にグリップしてシート材5の進入速度を明確にする必要があるが、このように速度バランスを構築すると、この要求に応えることができる。
【0053】
また、熱定着ロール1の弾性体1cの表面と耐熱ベルト3の表面は同一の周速度で移動してシート材5上に形成した未定着トナー像5aを定着するものであるが、耐熱ベルト3の表面がウエーブ状になっていたり、シート材5の先端部がウエーブ状になっていたりすると、定着開始状態が不安定になる場合がある。そこで、ニップ初期位置で耐熱ベルト3を熱定着ロール1に押圧する構成にすると、双方の合流状態が安定するので、極めて安定した未定着トナー像5aの定着が可能になる。
【0054】
そして、シート材5が定着ニップを通過しない状態では、耐熱ベルト3とベルト張架部材4との間にギャップGが形成されている。したがって、ウオーミングアップ時には、ギャップGの空隙が断熱層となって熱定着ロール1から耐熱ベルト3を介して奪い取られる熱量が小さくなるので、熱のロスが減少し、ウオーミングアップ時間の短縮を図ることができる。
【0055】
一方、シート材5が定着ニップを通過するときは、図6に示すように、ベルト張架部材4の突壁4aは熱定着ロール1から離間され、耐熱ベルト3とベルト張架部材4との間のギャップGがなくなり、シート材5は定着ニップ部において耐熱ベルト3により熱定着ロール1に押圧される。そして、この押圧力をスプリング9のばね力で所望の圧力に調節すれば、適正な定着を達成することができる。
【0056】
また、シート材5が定着ニップに進入したときに、シート材5の未定着トナー像5a形成面とは反対側の面が熱容量の小さな耐熱ベルト3を冷却し、また、ギャップGが存在することから、ベルト張架部材4が熱定着ロール1から加熱されて蓄熱する熱量が少ないので、ベルト張架部材4側から耐熱ベルト3を加熱する熱量も少ない。
そのため、シート材5上の第1面に形成した未定着トナー像5aを定着した後に再び反対側の第2面に未定着トナー像を定着する両面画像定着の場合には、第2面を定着するときに先に定着した第1面の定着画像を必要以上に加熱してこの定着画像を乱すことがない。
【0057】
図2(a)に示すように、揺動付勢手段としてアシストするスプリング9をベルト張架部材4の揺動支点から離れた熱定着ロール1と加圧ロール2との押圧部より耐熱ベルト3の移動方向上流側に配置している。熱定着ロール1または加圧ロール2の一方を駆動すると耐熱ベルト3が駆動され、この駆動力と耐熱ベルト3とベルト張架部材4の摺動摩擦力によってベルト張架部材4は熱定着ロール1方向に揺動するが、この揺動移動力のみではシート材5上に形成した未定着トナー像5aを定着する定着圧力が不足する場合がある。そこで、この揺動移動力をアシストして所望の定着圧力に設定すると、極めて安定した未定着トナー像5aの定着が可能となる。
シート材5に2次転写された2次画像(未定着トナー像5a)は、定着装置40の形成するニップ部で所定の温度で定着される。
【0058】
この例の画像形成装置10においては、画像転写搬送手段18を駆動ロール12に対して傾斜する方向に配設しているため、図1で右上方に広い空間が形成される。換言すると、転写ベルトの搬送方向上向きのベルト面18bの斜め右上方に空間が形成される。つまり、この空間は画像転写搬送手段18の転写ベルトに対して画像形成ステーションY,M,C,Kと反対側に形成される。
【0059】
そして、この空間に定着装置40を配設することにより、画像形成装置10のコンパクト化を実現することができ、また、定着装置40で発生する熱が、左側に位置する露光ユニットW、画像転写搬送手段18および各画像形成ステーションY,M,C,Kへ伝達されるのを防止することができるので、各色の色ずれ補正動作を行う頻度を少なくすることができる。特に、露光手段Wは、定着装置40から最も離れた位置にあり、走査光学系部品の熱による変位を最小限にすることができ、色ズレを防ぐことができる。
また、画像形成ユニットDの左側下部の空間に露光ユニットWを配置することができるため、画像形成手段の駆動系がハウジング10aへ与える振動による、露光ユニットWの走査光学系の振動を最小限に抑えることができ、画質の劣化を防止することができる。
【0060】
更に、像担持体17のクリーニング手段を設けないことから、帯電手段としては非接触帯電手段であるコロナ帯電手段19を採用している。帯電手段がロールで構成される場合は、微量ではあるが像担持体17上に存在する一次転写残りトナーが帯電手段であるロール上に堆積して帯電不良が発生するが、コロナ帯電手段19は非接触帯電手段であることから、トナーが付着し難く、帯電不良の発生を防ぐことができる。
【0061】
更に、この例の画像形成装置10では、中間転写ベルトを画像転写搬送手段18として像担持体17に接触させる構成としたが、表面にシート材5を吸着して搬送移動し、該シート材5の表面に像担持体17のトナー像を各色につき順次重ねて転写してカラートナー像を形成するシート材搬送ベルトを画像転写搬送手段18として像担持体17に接触させる構成としてもよい。この場合、画像転写搬送手段18であるシート材搬送ベルトのベルト搬送方向が像担持体17に接触する下面で逆方向の上向きになる。
【0062】
(画像形成装置に使用されるトナー)
この例の画像形成装置10で使用される4色のトナーはいずれも可視のトナーであるが、これら4色の可視のトナーのうち、イエロートナーは、人間の目に識別し難い色、つまり視認し難い色のトナーである。
また、前述の4色のトナーは、いずれも結着樹脂から形成され、動的粘弾性特性を有している。その場合、視認し難い色のトナーであるイエロートナーは、少なくとも軟化点以上の温度領域において、その貯蔵弾性率(G′)が、他色のマゼンタ、シアンおよびブラックの各貯蔵弾性率(G′)よりも小さく設定されている。
また、本発明の4色のトナーは、いずれも、イソシアネート基を2個以上含有する化合物と、活性水素をもつ官能基を2個以上含有する化合物(活性水素含有成分)との重合によって得られる、ウレタン結合あるいはウレア結合を主鎖に有するポリマーを結着樹脂として含有している。
【0063】
このような視認し難いイエロートナーが、紙等のシート材5にトナー画像が形成されて軟化点以上の温度領域で加熱定着されると、このイエロトナーの貯蔵弾性率(G′)は他色の貯蔵弾性率(G′)よりも小さくなる。これにより、イエロートナーが加熱定着により紙等のシート材5へ浸透し、その結果、イエロートナーがシート材5から剥離し難くなる。したがって、シート材5に形成されたイエロートナー画像の定着強度を向上させることができる。これにより、シート材5に形成されたカラー画像の情報を追跡するための追跡パターンを、確実に付加形成することができる。
【0064】
また、複写されてもよい通常一般のカラー画像の複写像にもこの追跡パターンが付加形成されるようになるが、この場合には、視認し難い色のトナーが用いられることで、通常一般のカラー画像の複写像に追跡パターンが付加形成されても、この追跡パターンは人間の目には見えず、通常一般のカラー画像の画質を損なわない。
【0065】
特に、紙等のシート材5の両面に画像を形成する場合、最初にシート材5の第1面にトナー画像が形成されて加熱定着された後、シート材の第2面にトナー画像が形成されて再び加熱定着されるため、シート材5が加熱定着装置40の定着ニップ部を2回通過するようになるが、第2面の加熱定着時に、第1面に形成されたイエロートナーが再加熱定着時にシート材5へ更に浸透し、その結果、イエロートナーがシート材5からより一層剥離し難くなる。したがって、シート材5の両面に画像を形成する場合、最初の第1面に形成されたイエロートナー画像の定着強度を効果的に向上させることができる。
【0066】
これにより、例えば、余白がほとんどない両面印刷物であり、本来複写されるべきでない特定画像が形成される印刷物である紙幣等の有価証券類等が複写されようとする際に、偽造防止のための追跡パターンが有価証券類等に印刷された画像の画質を損なわないように視認し難い色のイエロートナーでその複写物に形成されるが、加熱定着後のイエロートナー画像の定着強度が高いことから、イエロートナーによる追跡パターンがより確実に形成されるようになる。したがって、有価証券類等の偽造を効果的に防止できる。
【0067】
また、視認し難い色のトナーとしてイエロートナーを用いることで、視認し難い色のトナー画像の定着強度を効果的に向上させつつ、視認し難い色のトナーによる追跡パターンをより確実に形成できる。
更に、イソシアネート基を2個以上含有する化合物と、活性水素をもつ官能基を2個以上含有する化合物(活性水素含有成分)との重合によって得られる、ウレタン結合あるいはウレア結合を主鎖に有するポリマーを結着樹脂として含有することにより、貯蔵弾性率G′が極小値を有し、高温オフセットを効果的に防止でき、シート材5に形成されたイエロートナーの追跡パターン像をより確実に作成することができる。
【0068】
なお、バインダー樹脂(結着樹脂)を、結晶構造とそれを取り巻くように存在する非晶構造の両方を有する構造とする方法としては、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂をブレンドしたり、結晶性部分と非晶性部分をブロック重合したポリエステル樹脂を使用する等の方法がある。
また、前述の結晶構造および非晶構造を更に高度に制御するためには、トナーの製造条件(例えば樹脂の混練条件)を調製したり、樹脂原料となるモノマーとして直鎖脂肪族有機化合物をポリオールやイソシアネートとして使用することで結晶性を高めたり、側鎖にCOOH基等のバルキーな官能基を導入し結晶性を低下させたり、適切なモノマーを選択する等の方法がある。
【0069】
本発明のトナーについて、特にウレタン結合あるいはウレア結合を主鎖に有するポリマーを結着樹脂として含有するトナーを例に更に詳述する。
一般に、高分子ポリマーは結晶領域と非晶質領域を有するが、この性状とトナーの溶融状態における粘弾性特性との関係に関して、本発明は、高結晶化ポリマにおいて、その分子鎖中に結晶化を乱す成分を導入することにより、例えば、図7に示すごときトナーの溶融状態における粘弾性特性が得られることを見いだしたことに基づく。図7は、後述する本発明に係るトナーの実施例1のイエロートナー(A)およびマゼンタトナー(C)について、加熱ロール1の表面温度領域として120℃〜200℃(定着器ロールを構成する素材の耐熱性の観点から200℃までとした)における粘弾性特性を測定したものである。
【0070】
このような貯蔵弾性率(G′)を有するような動的粘弾性を有するトナーは、定着器内(ニップ内)に進入した直後には、ロール表面による加熱により貯蔵弾性率(G′)が徐々に低下し、紙の繊維間の空隙への浸透が促進される。このように記録媒体である紙の繊維間空隙に浸透し、固定されることにより、定着強度に優れるトナー画像にできるものである。
【0071】
以下、このような粘弾性特性を示すトナーにおける結着樹脂として、ウレタン結合やウレア結合を有する樹脂を用いた結着樹脂を例として説明する。
トナーの結着樹脂として、従来ウレタン結合やウレア結合を有する結着樹脂が知られ、樹脂中に着色剤や荷電制御剤とを混練・微粉砕してトナー粒子とされている。そして、この結着樹脂は着色剤粒子等をトナー粒子中に保持し、定着に際しては定着ロールでの熱と圧力で軟化し、紙等の転写材にトナー粒子を付着させる機能を有するが、低温定着を目的として、結着樹脂の分子量を低くし軟化温度を下げると、ガラス転移温度の低下や強度低下が生じ、着色剤の保持性や耐オフセット性、定着像強度、さらには保存性等が低下する。
【0072】
ウレタン結合やウレア結合を有する樹脂は、水酸基とイソシアネート基が反応した結果生じるウレタン結合(−A−NHCOO−B−、式中Aはポリイソシアネート残基、Bは多活性水素化合物残基)、またはアミノ基とイソシアネート基とが反応した結果生じるウレア結合(−NHCONH−)を結合要素として含有し、その分子間凝集エネルギーは8.74kcal/molであり、メチン結合(−CH2 −)の0.68kcal/mol、エーテル結合(−O−)の1.0kcal/mol、ベンゼン結合の3.9kcal/mol、エステル結合における2.9kcal/molに比して格段に大きく、高結晶性のためそのガラス転移点が高い。しかしながら、ポリスチレンを基準としたときの数平均分子量(Mn)が1,500〜20,000の平均分子量のものは、そのフロー軟化点は140℃以下とすることができ、低分子量化に伴う低温定着性に優れるものとできること、また、その軟化点の低下にもかかわらず、ガラス転移温度は55℃以上とでき、ガラス転移温度の低下や強度低下の程度が小さく、トナーにおける結着樹脂として着色剤の保持性、耐熱性、保存性等に優れる結着樹脂とできるが、高温での耐オフセット性、定着像強度に、より優れることが求められている。
【0073】
ウレタン結合やウレア結合を有する樹脂は、ポリイソシアネート類と多活性水素化合物とのバルク重合により得られる。ポリイソシアネート類としては、脂肪族ジイソシアネート類であるエタンジイソシアネート、プロパンジイソシアネート、ブテンジイソシアネート、ブタンジイソシアネート、チオジエチルジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、βーメチルブタンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、ω,ω′−ジプロピルエーテルジイソシアネート、チオジプロピルジイソシアネート、ヘプタンジイソシアネート、2,2−ジメチルペンタンジイソシアネート、3−メトキシヘキサンジイソシアネート、オクタンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルペンタンジイソシアネート、ノナンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、3−ブトキシヘキサンジイソシアネート、1,4−ブチレングリコール−ジプロピルエーテル−ω,ω′−ジイソシアネート、ウンデカンジイソシアネート、ドデカンジイソシアネート、チオジヘキシルジイソシアネート等が挙げられる。
【0074】
また、環状基を有する脂肪族ジイソシアネートとしてはω,ω′−1,3−ジメチルベンゼンジイソシアネート、ω,ω′−1,2−ジメチルベンゼンジイソシアネート、ω,ω′−1,2−ジメチルシクロヘキサンジイソシアネート、ω,ω′−1,4−ジメチルシクロヘキサンジイソシアネート、ω,ω′−1,4−ジエチルベンゼンジイソシアネート、ω,ω′−1,4−ジメチルナフタリンジイソシアネート、ω,ω′−1,5−ジメチルナフタリンジイソシアネート、3,5−ジメルシクロヘキサン−1−メチルイソシアネート−2−プロピルイソシアネート、ω,ω′−n−プロピル−ビフェニルジイソシアネート等が挙げられる。
【0075】
芳香族ジイソシアネート類としては1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1−メチルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、1−メチルベンゼン−2,5−ジイソシアネート、1−メチルベンゼン−3,5−ジイソシアネート、1,3−ジメチルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、1,3−ジメチルベンゼン−4,6−ジイソシアネート、1,4−ジメチルベンゼン−2,5−ジイソシアネート、1−エチルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、1−イソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、ジエチルベンゼンジイソシアネート、ジイソプロピルベンゼンジイソシアネート等が挙げられる。
【0076】
ナフタリンジイソシアネート類としてはナフタリン−1,4−ジイソシアネート、ナフタリン−1,5−ジイソシアネート、ナフタリン−2,6−ジイソシアネート、ナフタリン−2,7−ジイソシアネート、1,1′−ジナフチル−2,2′−ジイソシアネート等が挙げられる。
ビフェニルジイソシアネート類としてはビフェニル−2,4′−ジイソシアネート、ビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2−ニトロビフェニル−4,4′−ジイソシアネート等が挙げられる。
【0077】
ジ−あるいはトリフェニルメタンジイソシアネート、およびジ−あるいはトリフェニルエタンジイソシアネートとしては、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ジフェニルジメチルメタン−4,4′−ジイソシアネート、2,5,2′,5′−テトラメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−ジメトキシフェニル−3,3′−ジイソシアネート、4,4′−ジエトキシフェニルメタン−3,3′−ジイソシアネート、2,2′−ジメチル−5,5′−ジメトキシジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、3,3−ジクロロジフェニルジメチルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ベンゾフェノン−3,3′−ジイソシアネート、α,β−ジフェニルエタン−2,4−ジイソシアネート、3−ニトロトリフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、4−ニトロトリフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート等、またはその誘導体が挙げられる。
【0078】
トリイソシアネート類としては1−メチルベンゼン−2,4,6−トリイソシアネート、1,3,5−トリメチルベンゼン−2,4,6−トリイソシアネート、ナフタリン−1,3,7−トリイソシアネート、ビフェニル−1,3,7−トリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4,4′−トリイソシアネート、3−メチルジフェニルメタン−4,6,4′−トリイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4′,4″−トリイソシアネート、ジフェニル−4,4′−ジイソシアナトカルバミン酸クロリド等、およびその誘導体等が例示される。
また、ポリイソシアネートとして下記式
【0079】
【化1】
【0080】
(式中、R1 はメチレン基、エチレン基、−C(CH3 )2 −基から選ばれるアルキレン基を示し、R2 及びR3 は炭素数4以下のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲンから選ばれる基を示す。)で示されるジイソシアネート類を使用すると、粉砕性に優れるポリマーとでき、トナーとする際の粉砕工程における生産性を向上できる。上記式で示されるジイソシアネート類としては、具体的には、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、2,2′,5,5′−テトラメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジメチル−5,5′−ジメトキシジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジクロロジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、α,β−ジフェニルエタン−4,4′−ジイソシアネート等、またはその誘導体が挙げられ、また、これらのポリイソシアネート類の混合物を使用するのが好ましい。
【0081】
上記式で示されるポリイソシアネート類は、その基本骨格として2つの芳香族環がアルキレン基を介して結合した構造を有しており、本成分をハードセグメントとして使用することで、バインダーポリマーにおける分子鎖のフレキシビィリティを小さくでき、リジッドな構造となるため、粉砕性に優れるものと考えられる。また、基本骨格として2つの芳香族環がアルキレン基を介して結合した構造を有することにより分子間凝集力を高めることができるものと考えられ、高温オフセット性を抑えることが可能である。
【0082】
また、ポリイソシアネートとして脂環式ジイソシアネート化合物を使用すると、トナーとする際に、耐光性に優れ、画像の長期保存に際して退色のないものとできる。脂環式ジイソシアネート化合物は環状脂肪族炭化水素構造を有するため、光や熱による劣化が抑えられるものと考えられる。また、得られるバインダーポリマーはリジッドな構造で粉砕性に優れるものであり、トナーとする際の粉砕、分級工程における生産性を向上できる。
【0083】
脂環式ジイソシアネート化合物は、環式脂肪族炭化水素、または多環式脂肪族炭化水素に2個のイソシアネート基が直接またはアルキレン基を介して結合した構造を有し、例えば構造式
【0084】
【化2】
【0085】
で示されるイソホロンジイソシアネート、また、ω,ω′−1,2−ジメチルシクロヘキサンジイソシアネート、ω,ω′−1,4−ジメチルシクロヘキサンジイソシアネート、3,5−ジメルシクロヘキサン−1−メチルイソシアネート−2−プロピルイソシアネートが例示される。
また、下記式
【0086】
【化3】
【0087】
(式中、R1 は単結合、メチレン基、エチレン基、−C(CH3 )2 −基から選ばれ、lおよびmは1〜5の整数、nは0〜2の整数を示す。)
で示される多環式脂肪族ジイソシアネートも好ましく、例えば下記構造式
【0088】
【化4】
【0089】
で示されるノルボルナンジイソシアネートが例示される。
本発明にあっては、特に、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート(水素化MDI)、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート(XDI)、p−フェニレンジイソシアネート、p−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(水素化XDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)等の脂環式炭化水素や芳香族炭化水素を有するジイソシアネート類が好ましく、更にこれらのポリイソシアネート類の混合物を使用するのが好ましい。
【0090】
一般に、ポリウレタン合成や後述するポリエステル合成は、逐次反応のため、分子量分布の狭いポリマーが得られるが、多活性水素化合物とのウレタン反応において、例えばイソホロンジイソシアネートの場合には分子量分布をさらに狭くすることができるので、加熱時の溶融が非常に短時間で起こり、そのためシャープメルト性を実現でき、バインダーポリマーの樹脂設計に際して自由度を増すことができる。その詳細な理由は不明であるが、イソホロンジイソシアネートは第1級のイソシアネート基と第2級のイソシアネート基をもち、それぞれのイソシアネート基の反応性が異なることにより、反応に際して選択性を生じることによるものと考えられる。
【0091】
脂環式ジイソシアネート化合物は、他のポリイソシアネート類を併用できる。他のポリイソシアネートとしては、上述した脂肪族ジイソシアネート類、環状基を有する脂肪族ジイソシアネート類、芳香族ジイソシアネート類、ナフタリンジイソシアネート類、ビフェニルジイソシアネート類、ジ−あるいはトリフェニルメタンジイソシアネート、およびジ−あるいはトリフェニルエタンジイソシアネート、トリイソシアネート類が例示され、その配合割合は、全イソシアネート成分中60重量%以下とするとよい。他のポリイソシアネートが多すぎると耐光性、シャープメルト性等の効果が低下する。
【0092】
次に、ポリイソシアネート類と反応させるポリオール類やポリアミン類について説明する。本発明のトナーにおいては、その定着温度領域において所期の粘弾性とするには、上述したポリイソシアネート類としてウレタン結合やウレア結合を有する樹脂においてその結晶性を乱す、自由度が少ないバルキーな成分とすると共に、多活性水素化合物として同様にその結晶性を乱す、自由度が少ないバルキーな成分として、下記(1)〜(3)の化合物を多活性水素化合物とするとよい。
【0093】
(1) ジオキシカルボン酸、ジアミノカルボン酸、ジオキシスルホン酸、ジアミノスルホン酸、またはそれらの塩、例えば、下記構造式(A)で示される2,2−ジメチロールプロピオン酸、(B)で示される2,2−ジメチロールブタン酸、(C)で示される2,2−ジメチロール吉草酸、(D)で示される2,4−ジアミノ安息香酸、(E)で示される3,4−ジアミノ安息香酸、(F)で示される3,6−ジアミノ−2−トルエンスルホン酸、(G)で示される2,4−ジアミノベンゼンスルホン酸、(H)で示される2,5−ジアミノベンゼンスルホン酸、(I)で示される4,4′−ジアミノスチルベン−2,2′−ジスルホン酸、(J)で示される3,4−ジアミノブタンスルホン酸、(K)で示されるN−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルスルホン酸等が例示される。
【0094】
【化5】
【0095】
これらの化合物は、その分子中に少なくとも2個の水酸基またはアミノ基と、カルボキシル基またはスルホン酸基を有するが、ウレタン反応やウレア反応に際してはイソシアネート基と水酸基またはアミノ基との反応が先行し、カルボキシル基やスルホン酸基との反応は殆ど生じない。また、これらの化合物を使用すると酸性基をウレタン樹脂やウレア樹脂における側鎖に存在させることができるので、トナーの定着に際して、紙等の記録媒体への濡れ性・結合性に優れ、定着強度に優れるものとできる。
【0096】
(2) 脂肪族環状ポリオール、例えば1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、脂肪族環状ポリアミン、例えば1,4−シクロヘキサンジメチルアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等が例示される。
(3) 分枝構造を有する脂肪族ポリオール、例えば2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等が例示され、また、分枝構造を有する脂肪族ポリアミン、例えば2−エチル−1,3−ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、1,3−ブタンジアミン、2,3−ブタンジアミン、1,2−プロパンジアミン、2−メチル−2,4−ペンタンジアミン等が例示される。
【0097】
また、(1)〜(3)の多活性水素化合物は、トナーとして適した溶融特性を付与することを目的として、例えば、下記式で示されるポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル化合物を併用するのが好ましい。なお、併用されるにあたっては、(1)〜(3)の多活性水素化合物の分子量としては、下記式で示されるポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテルの分子量より小さくするとよく、分子量が90〜400、好ましくは120〜380のものとするとよい。
ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテルとしては、
【0098】
【化6】
【0099】
(式中、Rはエチレン基またはプロピレン基であり、同一でも相違していてもよく、x、yはそれぞれ1以上の整数であり、かつx+yの平均値は2〜12である。)
【0100】
で示され、例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド2〜12モル付加物(以下、EO付加物)、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2〜12モル付加物(以下、PO付加物)が例示され、これらを単独で、もしくは両者を混合して使用できる。さらには、EO基あるいはPO基の繰り返し単位数が異なる化合物を2種以上混合して用いてもよい。両者を混合して用いる場合、その混合比率(モル比)は、EO付加物/PO付加物=8:2〜1:9、好ましくは8:2〜2:8、更に好ましくは7:3〜4:6である。また、Rは同一でも、相違してもよく、一方がエチレン基で他方がプロピレン基でもよい。また、EO基、PO基はその繰り返し単位数により、バインダーポリマーとした際に物性が変化する。x+yの平均値は2〜12、好ましくは2〜4であり、繰り返し単位数がこれより大きいと、ガラス転移温度の低下や粉砕性の悪化を招くので好ましくなく、小さすぎると強度低下を来たし、折れ剥がれ強度が低下する。また、EO成分の組成比を高めると定着強度(折れ剥がれ強度)を向上させることができるが、ガラス転移温度の低下や粉砕性の悪化を招き、反対に、PO成分の組成比を高めると粉砕性は向上するが、定着強度(折れ剥がれ強度)は低下する。また、ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル化合物における水酸基価は、100〜350KOHmg/g、好ましくは200〜290KOHmg/gである。ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル化合物は、ビスフェノールAを基本骨格とすることで、ポリイソシアネートとの反応物であるバインダーポリマーとした際に、分子鎖のフレキシビィリティが小さく、リジッドな構造となるものと考えられる。
【0101】
(1)〜(3)の多活性水素化合物は、上記式で示されるポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル100モルに対して1モル〜900モル、好ましくは5モル〜100モル、さらに好ましくは10モル〜60モルとするとよく、これにより、トナーの製造時における粉砕性や低温定着性、高温での耐オフセット性、定着強度に優れ、また、要求される軟化点(Tm)やガラス転移温度(Tg)等の調整が容易になる。
【0102】
また、上述した多活性水素化合物によるトナーとしての性状を損なわない範囲で、多活性水素化合物として、他のポリオール類、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(カプロラクトンポリオール)、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート等を添加してもよい。
【0103】
ポリイソシアネート類と多活性水素化合物の反応割合は、ポリイソシアネートにおけるイソシアネート基数に対する多活性水素化合物における活性水素基数の割合{NCO/活性水素(当量比)}が0.5〜1.0、好ましくは0.7〜1.0の範囲で反応させるとよい。反応にあたっては、まず、多活性水素化合物中に後述する着色剤を均一分散した後、ポリイソシアネート類を、温度30℃〜180℃、好ましくは30℃〜140℃で、大気圧下、無溶剤下で、数分から数時間、バルク重合させるとよい。
【0104】
着色剤としては、以下に示すような、有機ないし無機の各種、各色の顔料、染料が使用可能である。黒色顔料としては、カーボンブラック、酸化銅、四三酸化鉄、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭などがある。黄色顔料としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスエロー、ナフトールエローS、バンザーイエローG、バンザーイエロー10G、ベンジジンエローG、ベンジジンエローGR、キノリンエローレーキ、パーマネントエローNCG、タートラジンレーキなどがある。橙色顔料としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGKMなどがある。赤色系顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピロゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bなどがある。紫色顔料としては、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどがある。青色顔料としては、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBCなどがある。緑色顔料としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGなどがある。白色顔料としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛などがある。体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイトなどがある。また、塩基性、酸性、分散、直接染料などの各種染料としては、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルーなどがある。
【0105】
また、透光性カラートナーとして用いる場合は、着色剤としては、以下に示すような、各種、各色の顔料、染料が使用可能である。黄色顔料としては、C.I.10316(ナフトールイエローS)、C.I.11710(ハンザエロー10G)、C.I.11660(ハンザエロー5G)、C.I.11670(ハンザエロー3G)、C.I.11680(ハンザエローG)、C.I.11730(ハンザエローGR)、C.I.11735(ハンザエローA)、C.I.11740(ハンザエローNR)、C.I.12710(ハンザエローR)、C.I.12720(ピグメントイエローL)、C.I.21090(ベンジジンエロー)、C.I.21095(ベンジジンエローG)、C.I.21100(ベンジジンエローGR)、C.I.20040(パーマネントエローNCG)、C.I.21220(バルカンファストエロー5)、C.I.21135(バルカンファストエローR)などがある。赤色顔料としては、C.I.12055(スターリンI)、C.I.12075(パーマネントオレンジ)、C.I.12175(リソールファストオレンジ3GL)、C.I.12305(パーマネントオレンジGTR)、C.I.11725(ハンザエロー3R)、C.I.21165(バルカンファストオレンジGG)、C.I.21110(ベンジジンオレンジG)、C.I.12120(パーマネントレッド4R)、C.I.1270(パラレッド)、C.I.12085(ファイヤーレッド)、C.I.12315(ブリリアントファストスカーレット)、C.I.12310(パーマネントレッドF2R)、C.I.12335(パーマネントレッドF4R)、C.I.12440(パーマネントレッドFRL)、C.I.12460(パーマネントレッドFRLL)、C.I.12420(パーマネントレッドF4RH)、C.I.12450(ライトファストレッドトーナーB)、C.I.12490(パーマネントカーミンFB)、C.I.15850(ブリリアントカーミン6B)などがある。また、青色顔料としては、C.I.74100(無金属フタロシアニンブルー)、C.I.74160(フタロシアニンブルー)、C.I.74180(ファーストスカイブルー)などがある。
【0106】
これらの着色剤は、単独であるいは複数組合せて用いることができるが、結着樹脂100重量部に対して、1〜20重量部、好ましくは2〜10重量部使用することが望ましい。20重量部より多いとトナーの定着性および透明性が低下し、一方、1重量部より少ないと所望の画像濃度が得られない虞れがある。
【0107】
本発明のトナーの製造に際しては、着色剤を多活性水素化合物中に分散させてからポリイソシアネート類と反応させるとよい。これにより、着色剤の分散による粘弾性特性に対する影響を抑えることができる。また、ポリイソシアネート類が顔料中の水分により失活することを防止できる。触媒としては、例えばジブチルスズジクロライド、ジメチルスズジクロライド、オクチル酸スズ、トリフェニルアンモニウムジクロライド、トリエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエチレンジアミン、ジメチルアミノエタノール、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジネオデカノエート、ジブチルスズビス(メルカプト酸エステル)等が例示される。
ポリイソシアネート類と多活性水素化合物との反応は無溶剤下で行うことができ、溶液重合のごとく溶剤を必要としなく、また、重縮合反応のごとく副生物を生じないので効率のよい連続生産が可能である。
【0108】
本発明の結着樹脂およびトナーは、ポリスチレンを基準としたゲルパーミエーション(GPC)測定での数平均分子量(Mn)が1,500〜20,000、好ましくは2,000〜10,000、更に好ましくは3,000〜8,000のものである。数平均分子量(Mn)が1,500より小さいと、低温定着性に優れるものの、着色剤の保持性や耐フィルミング性、耐オフセット性、定着像強度、保存性に劣るものであり、また、20,000より大きいと低温定着性に劣るものとなり、結着樹脂として単独では使用できないものとなる。また、重量平均分子量(Mw)は3,000〜300,000、好ましくは5,000〜50,000、更に好ましくは8,000〜20,000であり、Mw/Mnが1.5〜20、好ましくは1.8〜10、更に好ましくは1.8〜8、最も好ましくは1.8〜5である。
【0109】
結着樹脂における分子量を制御するには、ポリイソシアネートにおけるイソシアネート基数に対する多活性水素化合物における活性水素基数の割合(NCO/活性水素)を小さくすれば低分子量化でき、また、等量に近づけると高分子量化できるので、適宜、ポリイソシアネートの反応モル数を制御することにより容易に制御できる。なお、本発明の結着樹脂の物性に影響を与えない範囲で鎖伸長剤を適宜使用してもよい。鎖伸長剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ビス−(β−ヒドロキシ)ベンゼン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0110】
耐オフセット性と溶融特性を両立させるために、通常は樹脂のMw/Mnを大きくする、つまりブロードな分子量分布を有するように設計するか、または、低分子量体と高分子量体とを別途作製しブレンドする手法がとられているが、Mw/Mnを大きくしたり、ブレンド物とすると、シャープに溶融しないため透明性が低下し、特にカラー画像の画質が低下するという問題がある。これに対して、本発明における結着樹脂は、分子量分布を狭いものとすることによりシャープな溶融特性を示し、透明性に優れ、高画質のカラー画像を得ることができるものである。また、そのウレタン結合やウレア結合の分子間凝集エネルギーが適度に抑制されると共に、その定着時における粘弾性特性を特定のものとすることにより、低温定着性に優れると共に、高温での耐オフセット性に優れ、また、定着強度に優れるトナー画像を与える。
【0111】
本発明のトナーは、フロー軟化点(Tm)が70℃〜150℃、好ましくは80℃〜140℃、さらに好ましくは90℃〜130℃の範囲にある。フロー軟化点(Tm)が70℃より低いと耐フィルミング性に劣るものとなり、また、150℃より高いと低温定着性に劣るものとなる。
また、ガラス転移温度(Tg)は50℃〜90℃、好ましくは55℃〜80℃、さらに好ましくは60℃〜70℃の範囲にある。ガラス転移温度(Tg)が50℃より低いと保存性に劣るものとなり、また、90℃より高いとそれにともなってTmが上昇し、低温定着性に劣るものとなる。
【0112】
本発明における結着樹脂は、分子間結合力が大きく、高結晶性ポリマーであるため、分子量を低下させTmを下げる分子設計をした時のTgの低下幅を小さくすることができ、低Tmと高Tgを両立させることができ、また、50%流出点における溶融粘度が、2×102 〜2×104 Pa・sとでき、オイルレス定着用トナーとして適したものとできる。
【0113】
本発明のトナーにおける結着樹脂としては、ウレタン結合やウレア結合を有する樹脂を主成分とし、結着樹脂中50重量%未満の範囲で、かつ、主成分の性状を損なわない範囲で他の結着樹脂を含有してもよい。他の結着樹脂としては、結着樹脂を製造する際に共存させてもよいが、製造後に混練してもよい。
【0114】
本発明の結着樹脂を製造する際に共存させる場合には、ポリイソシアネート類との反応性基を含有しない樹脂が好ましい。他の結着樹脂としては、例えばポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン樹脂でスチレン又はスチレン置換体を含む単重合体又は共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン変成エポキシ樹脂、シリコーン変成エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変成マレイン酸樹脂、フェニール樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂等を単独又は混合して使用できる。
【0115】
本発明のトナーは、荷電制御剤、必要に応じて離型剤、分散剤、磁性粒子等を含有してもよく、着色剤同様に原料であるポリオール類に分散してもよく、また、樹脂を形成した後適宜混練により配合してもよい。
荷電制御剤としては、摩擦帯電により正または負の荷電を与え得るものであれば、特に限定されず有機あるいは無機の各種のものを用いることができる。
【0116】
正荷電制御剤としては、例えば、ニグロシンベースEX{オリエント化学工業(株)製}、第4級アンモニウム塩P−51{オリエント化学工業(株)製}、ニグロシン ボントロンN−01{オリエント化学工業(株)製}、スーダンチーフシュバルツBB(ソルベントブラック3: Color Index 26150)、フェットシュバルツHBN(C.I. NO.26150)、ブリリアントスピリッツシュバルツTN(ファルベン・ファブリッケン・バイヤ社製)、ザボンシュバルツX(ファルベルケ・ヘキスト社製)、さらにアルコキシ化アミン、アルキルアミド、モリブデン酸キレート顔料などが挙げられる。中でも第4級アンモニウム塩P−51が好ましい。
【0117】
また、負荷電制御剤としては、例えば、オイルブラック(Color Index 26150)、オイルブラックBY{オリエント化学工業(株)製}、ボントロンS−22{オリエント化学工業(株)製}、サリチル酸金属錯体E−81{オリエント化学工業(株)製}、チオインジゴ系顔料、銅フタロシアニンのスルホニルアミン誘導体、スピロンブラックTRH{保土谷化学工業(株)製}、ボントロンS−34{オリエント化学工業(株)製}、ニグロシンSO[オリエント化学工業(株)製]、セレスシュバルツ(R)G(ファルベン・ファブリケン・バイヤ社製)、クロモーゲンシュバルツET00(C.I.NO.14645)、アゾオイルブラック(R)(ナショナル・アニリン社製)などが挙げられる。中でも、サリチル酸金属錯体E−81が好ましい。
これらの荷電制御剤は、単独であるいは複数種組合せて使用することができるが、結着樹脂に添加する荷電制御剤の添加量は、結着樹脂100重量部に対して0.001〜5重量部であり、好ましくは0.001〜3重量部である。
【0118】
また、本発明のトナーに用いられるウレタン結合やウレア結合を有する樹脂はその分子量範囲により熱溶融特性に優れ、また、定着温度領域での粘弾性特性により離型剤を不要とするが、添加する場合には、結着樹脂100重量部に対して4重量部(4重量%)以下であり、好ましくは0〜3重量部程度である。
【0119】
離型剤としては、具体的にはパラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、芳香族基を有する変性ワックス、脂環基を有する炭化水素化合物、天然ワックス、炭素数12以上の長鎖炭化水素鎖〔CH3(CH2)11またはCH3(CH2)12以上の脂肪族炭素鎖〕を有する長鎖カルボン酸、そのエステル脂肪酸金属塩、脂肪酸アシド、脂肪酸ビスアシド等を例示し得る。異なる低軟化点化合物を混合して用いても良い。具体的には、パラフィンワックス(日本石油社製)、パラフィンワックス(日本精蝋社製)、マイクロワックス(日本石油社製)、マイクロクリスタリンワックス(日本精蝋社製)、硬質パラフィンワックス(日本精蝋社製)、PE−130(ヘキスト社製)、三井ハイワックス110P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス220P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス660P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス210P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス320P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス410P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス420P(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−1141(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−2130(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−4020(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−1142(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−5020(三井石油化学社製)、密ロウ、カルナバワックス、モンタンワックス等を挙げることができる。脂肪酸金属塩として、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、オレイン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸マグネシウム等がある。
【0120】
ポリオレフィン系ワックスとしては、例えば低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、あるいは酸化型のポリプロピレン、酸化型のポリエチレン等が挙げられる。ポリオレフィン系ワックスの具体例としては、例えば、Hoechst wax PE520、Hoechst wax PE130、Hoechstwax PE190(ヘキスト社製)、三井ハイワックス200、三井ハイワックス210、三井ハイワックス210M、三井ハイワックス220、三井ハイワックス220M(三井石油化学工業社製)、サンワックス131−P、サンワックス151−P、サンワックス161−P(三洋化成工業社製)などのような非酸化型ポリエチレンワックス、Hoechst wax PED121、Hoechst wax PED153、Hoechst wax PED521、Hoechst wax PED522、同Ceridust 3620、同Ceridust VP130、同Ceridust VP5905、同Ceridust VP9615A、同Ceridust TM9610F、同Ceridust 3715(ヘキスト社製)、三井ハイワックス420M(三井石油化学工業社製)、サンワックスE−300、サンワックスE−250P(三洋化成工業社製)などのような酸化型ポリエチレンワックス、Hoechst Wachs PP230(ヘキスト社製)、ビスコール330−P、ビスコール550−P、ビスコール660P(三洋化成工業社製)などのような非酸化型ポリプロピレンワックス、ビスコールTS−200(三洋化成工業社製)などのような酸化型ポリプロピレンワックスなどが例示される。これらの離型剤は、単独であるいは複数種組合せて使用することができる。必要に応じて添加される離型剤としては、セイコーインストルメント(株)製「DSC120」で測定されるDSC吸熱曲線における吸熱メインピーク値である軟化点(融点)が40〜130℃、好ましくは50〜120℃のものを使用するとよい。
【0121】
本発明におけるトナー母粒子は、上記で得た組成物を、混練・溶融した後、微粉砕手段により粉砕・分級して得られるが、その流動性を向上させる為に、流動性向上剤を外添してもよい。
流動性向上剤としては、有機系微粉末または無機系微粉末を用いることができる。例えばフツ素系樹脂粉末、すなわちフツ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末、アクリル樹脂系微粉末など;又は脂肪酸金属塩、すなわちステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸鉛など;又は金属酸化物、すなわち酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛など;又は微粉末シリカ、すなわち湿式製法シリカ、乾式製法シリカ、それらシリカにシランカツプリング剤、チタンカツプリング剤、シリコンオイルなどにより表面処理をほどこした処理シリカなどがあり、これらは1種或いは2種以上の混合物で用いられる。
【0122】
好ましい流動性向上剤としては、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化法により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒユームドシリカと称されるもので、従来公知の技術によって製造されるものである。例えば四塩化ケイ素ガスの酸水素焔中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次の様なものである。
SiCl4 + 2H2 + O2 → SiO2 + 4HCl
【0123】
また、この製造工程において、例えば塩化アルミニウム又は塩化チタンなど他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いる事によってシリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得る事も可能であり、それらも包含する。その粒径は平均の一次粒径として、0.001〜2μmの範囲内である事が望ましく、特に好ましくは、0.002〜0.2μmの範囲内のシリカ微粉体を使用するのが良い。本発明に用いられるケイ素ハロゲン化合物の気相酸化法により生成された市販のシリカ微粉体としては、例えば以下の様な商品名で市販されているものがある。日本アエロジル社製の「AEROSIL 130」、以下、同 200、同300、同 380、TT600、MOX170、MOX80、COK84等が挙げられ、また、CABOT Co.社製の「Ca−O−SiL M−5」、以下、同 MS−7、同 MS−75、同 HS−5、同 EH−5等が挙げられ、また、WACKER−CHEMIE GMBH社製の「Wacker HDK N 20V15」、以下、同 N20E、同 T30、同 T40、ダウコーニングCo.社の「D−C Fine Silica」、Fransill社の「Fransol」等が挙げられる。
【0124】
更には、該ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体に疎水化処理した処理シリカ微粉体を用いることがより好ましい。該処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が30〜80の範囲の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。疎水化方法としてはシリカ微粉体と反応、あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物などで化学的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の上記気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する。
【0125】
その様な有機ケイ素化合物の例は、ヘキサメチレンジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフエニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフエニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフエニルテトラメチルジシロキサンおよび1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位にそれぞれ1個宛のSiに結合した水酸基を有するジメチルポリシロキサン等がある。これらは1種あるいは2種以上の混合物で用いられる。
【0126】
その処理シリカ微粉体の粒径としては0.003〜0.1μm、0.005〜0.05μmの範囲のものを使用することが好ましい。市販品としては、タラノツクス−500(タルコ社)、AEROSIL R−972(日本アエロジル社)などがある。
流動性向上剤の添加量としては、該樹脂粒子100重量部に対して0.01〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部である。0.01重量部未満では流動性向上に効果はなく、5重量部を超えるとカブリや文字のにじみ、機内飛散を助長する。
【0127】
本発明のトナーの製造方法は、バインダーポリマー(結着樹脂)の製造に際して上述したが、基本的には次の各工程よりなる。
(1)原料の均一混合工程
着色剤を分散した結着樹脂、荷電制御剤等の添加剤を所定量ヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株))に投入し、均一混合する。
(2)結着樹脂中への各添加剤の分散固定化工程
均一に混合した後、二軸混練押出機{池貝化成(株)製PCM−30}を使用して溶融混練し、結着樹脂中に各添加剤を分散固定化する。溶融混練手段としては、他に「TEM−37」{東芝機械(株)}、「KRCニーダー」{(株)栗本鉄工所}等の連続式混練機や加熱・加圧ニーダーのようなバッチ式混練機等が挙げられる。
【0128】
(3)粉砕工程
混練物を粗粉砕して粒度調整をした後、ジェット粉砕機「200AFG」{ホソカワミクロン(株)}または「IDS−2」(日本ニューマチック工業(株))を使用し、ジェットエアーによる衝突粉砕により、微粉砕し、平均粒子径1〜8μmのものとする。粉砕手段としては他に、機械式粉砕機ターボミル{川崎重工(株)}、スーパーローター{日清エンジニアリング(株)}等が挙げられる。
(4)分級工程
微粉を除去し、粒径分布のシャープ化を目的として、風力又はローター回転による粒度調整を風力分級装置「100ATP」{ホソカワミクロン(株)}又は「DSX−2」{日本ニューマチック工業(株)}又は「エルボージェット」{日鉄鉱業(株)}等を使用して行なう。
(5)外添処理工程
得られた着色樹脂粒子と流動化剤を、所定量ヘンシェルミキサー20B{三井鉱山(株)}に投入し均一混合し、トナーとする。
【0129】
このようにして得られるトナーとして、平均粒径は、3〜10μm、好ましくは5〜8μmとするとよく、これにより高精細化を可能とする。また、例えば熱風処理等により円形度を、0.93〜0.99、好ましくは0.94〜0.98のものとするとよく、これにより、流動性、クリーニング性に優れるものとできる。
【0130】
以上、結着樹脂としてウレタン結合やウレア結合を有する樹脂を例とするトナーについて説明したが、上述したように、結着樹脂が結晶領域と非晶質領域の双方を有するものであれば、ウレタン結合やウレア結合を有する樹脂に限定されるものではない。例えば、結晶ポリエステル樹脂と非晶質ポリエステル樹脂をブレンドしたり、また、結晶性部分と非晶質部分とをブロック重合したポリエステル樹脂等においても同様に定着領域における粘弾性特性を制御できる。また、予め結着樹脂の重合を制御すると共に定着時に所定以上の熱エネルギーが加えられた際に機能発現する重合開始剤や架橋開始剤を配合しておくことにより、定着温度領域での熱エネルギーの付与によりトナー中の結着樹脂がさらに重合し、結着樹脂が架橋したり分子量が増大するように設計した組成物においても同様に定着領域における粘弾性特性を制御できる。
【0131】
次に、本発明の画像形成装置に用いられるトナーの物性値の測定および評価について説明する。
【0132】
(1)軟化点(Tm;融点)[℃]の測定
(株)島津製作所製「定荷重押出型細管式レオメータ フローテスタ CFD−500D」を用いて、下記条件にて測定する。
測定試料の調製 : 測定試料としてトナー約1gを圧縮成型し、フローテスタのシリンダの内径に合わせた円柱状試料とする。
測定条件 : 荷重 20kgf、ダイ穴 1mm、ダイ長さ 1mm
測定方法 : 1/2法
【0133】
(2)ガラス転移点(Tg)[℃]の測定
トナー10mgをアルミニウム製セルにパッキングし、セイコーインスツルメント(株)製「DSC120」を用いて下記の条件で測定する。
測定温度 : 20℃(測定開始温度)〜200 ℃(測定終了温度))
昇温速度 : 10 ℃/min
Tg : ガラス転移点に相当する吸熱が生じた位置(吸熱カーブのショルダー位置)の温度とする。
【0134】
(3)分子量分布の測定
5mgのトナーを5gのテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、東ソー(株)製 高速GPCシステム HLCー8220を用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によりポリスチレン換算分子量を測定する。
【0135】
(4)粒径の測定
本明細書では、粒径という場合「平均粒子径(50%径)」を意味する。
平均粒子径(50%径)は、コールターマルチサイザーIII 型(コールター社製)を用い、100μmのアパチャーチューブで粒径別相対重量分布を測定することにより求める。また、シリカ粒子等の外添剤の粒径は、電子顕微鏡法による。
【0136】
(5)動的粘弾性の貯蔵弾性率G′[dyn/cm2]の測定
粘弾性測定装置: 粘弾性測定装置は、図8(a)に示すアレス粘弾性測定システム(ARES粘弾性測定装置;レオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イー社製)。
使用治具 : 上下2枚のパラレルプレート(φ25mm)。
測定試料の調製: 測定試料は、圧縮成型したトナー約1gをパラレルプレートの下プレートに載せ、ヒーターにより測定開始温度に加熱し少し柔らかくなってきたところで、このトナーをトランスデューサを作動してパラレルプレートの上プレートで挟んで加圧する。図8(b)に示すようにパラレルプレートからはみ出したトナーはトリミングして取り除き、同図(a)に示すようにパラレルプレートの外周形状(つまり、パラレルプレートの直径)に合わせ、かつ試料の高さ(上下プレート間のギャップ)を1.0〜2.0mmに調製して円柱状試料とする。なお、図8(c)に示すように上下プレート全面にトナーが密着していない場合は不良(NG)として、測定試料とはしない。
測定温度 : 定着設定温度(加熱ロールの表面温度の制御中心値)。
測定歪み : パラレルプレートの上プレートは回転させずに、パラレルプレートの下プレートのみを回転して歪を与える。このとき、測定温度を一定にし、歪み依存性(Strain Sweep)モードで、測定試料に徐々に大きな歪み{周波数1[rad/se c](1rad/sec=(1/6.28)Hz、歪み0.1〜200%}を与える。そして、与えた歪みに対し動的粘弾性の貯蔵弾性率G′および損失弾性率G″が線形領域における最大歪みを緩和弾性率測定時の測定歪みとする。
測定モード : 温度依存性(Temp Ramp)モードで測定を行った。その場合、設定した測定歪みが測定温度域で常時維持されるように、システムの Auto Strain、Auto Tension を作動状態に設定した状態で測定を行う。また、測定は測定開始温度から5℃/minの速度で昇温させながら行う。
【0137】
(6)定着性の測定
前述の画像形成装置を使用して画像の形成、定着を行う。定着装置は、耐熱ベルトの周長、ベルト張架部材の形状を適宜変更することにより、定着ニップ通過時間を調整できるようにする。また、耐熱ベルトの表面の温度は100℃から200℃まで制御できるようにする。
更に、定着装置のロール表面からシリコーンオイルを除去した定着器を用いて、定着性評価用画像を、加熱ロール側が未定着トナー付着面となるように定着器を通過させてニップ幅10mm、ニップ通過時間100msecの条件にて定着する。
【0138】
定着性評価用画像は、以下のように作成する。まず、富士ゼロックスオフィスサプライ社製 J紙(坪量82g/m2)を評価用紙とし、この用紙上にトナーを均一に付着させたいわゆるベタ画像を形成し、そのベタ画像におけるトナー付着量が0.4mg/cm2となるように画像形成条件を調整する。次に、紙の先端から10mmの位置に20mm四方の領域に、解像度600dpiの孤立ドットによる30%ハーフトーン画像を形成し、このハーフトーン画像を定着性評価用画像とした。
【0139】
(6ー1)非オフセット域の測定
定着ロールの表面温度を段階的に変化させながら、未定着の定着性評価用画像をこの定着ロールに通過させ、画像の少なくとも一部が定着ロール通過時に定着ロールに転移した後、再度紙に移行しているか否かを目視で判定する。画像の少なくとも一部の紙への移行があるものをオフセット有り、画像の少なくとも一部の紙への移行がないものをオフセットなしとする。
【0140】
(6ー2)定着強度良好域の測定
【0141】
前述の非オフセット域を確認した後、定着性評価用画像を消しゴム{コクヨ(株) PLASTIC ERASER ケシ−1 鉛筆用}を用い、1kg荷重にて1回擦り、画像濃度の残存率を測定する。画像濃度残存率85%(ハーフトーン用評価基準)以上の温度領域を定着強度良好域とする。
【0142】
以下に、本発明のトナーの実施例および比較例について説明する。なお、以下の実施例および比較例の各物性値の測定および評価は特に断らない限り前述の方法で行った。
(実施例1)
(マゼンタトナーの作成)
実施例1におけるマゼンタトナーは、顔料を分散させたポリオール成分とイソシアネート成分とを重合して顔料分散ウレタン樹脂を作製し、この顔料分散ウレタン樹脂を粉砕、分級することにより製造した。具体的には、まず、ポリオール(PO1)としてのポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル{日本油脂(株)製ユニオールDA−400:OH基価273KOHmg/g}と、顔料としてのDIC KET RED 309{大日本インキ化学工業製}とを、ポリオール(PO1)と顔料との混合比がポリオール(PO1)/顔料=64/10(重量比)となるように配合し、これらを混合装置(プラネタリ式攪拌ミキサー;KENMIXmajor社製ケンミックスアイコープロKM23)により混合し、顔料混合液を調製した。
【0143】
次に、この顔料混合液をさらに分散装置(ビーズミル;ドライスヴェルケ社製Advatis V15)により、分散条件がビーズ径0.3mmφ、循環運転(流量20Kg/h)、負荷動力3.5kW一定、単位積算投入動力8kWh/kg)として分散処理し、ポリオール中に顔料を分散させた顔料分散液を調製した。このようにして調製した顔料分散液における顔料粒子の平均粒子径(50%径)は、日機装(株)製 マイクロトラック UPA150 Model No. 9340により測定したところ、0.16μmであった。
【0144】
次いで、顔料分散液を前述のポリオール(PO1)であるポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル{日本油脂(株)製ユニオールDA−400:OH基価273KOHmg/g}で適宜希釈し、後述するポリオール成分とポリイソシアネート成分との重合により得られるウレタン樹脂100重量部に対して顔料5重量部となるように顔料濃度を調整した。
【0145】
このように顔料濃度が調整された顔料分散液を、温度を90℃、かつ、到達真空度が5mmHgに設定した恒温槽中にて3時間脱気乾燥を行った。その後速やかに、脱気乾燥した顔料分散液に、別のポリオール(PO2)としてジメチロールブタン酸を120℃にて加温溶解させ、ポリオール(PO1)とポリオール(PO2)との配合比{(PO1)/(PO2)}が(PO1)/(PO2)=90/10(モル比)となるようにして、ポリオール原料であるポリオール(PO3)を調製した。
【0146】
このポリオール(PO3)とイソシアネート成分であるジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネートとを、配合比がイソシアネート成分/(PO3)=1/1.1{イソシアネート基数/イソシアネートと反応可能な活性水素を持つ官能基数;これを重量比に換算すると、イソシアネート成分35.4重量部に対してポリオール(PO3)64.6重量部}となるように配合し、この配合物の100重量部に、触媒としてジオクチル錫ジラウレートの0.02重量部を添加して120℃の加温下で混合溶解し、速やかに200mm×300mmのトレーに流し込み、これを大気炉に投入し、120℃で1時間保持した後、さらに130℃で5時間保持して反応を完結させ、顔料分散ポリウレタン樹脂を得た。
【0147】
この顔料分散ポリウレタン樹脂をジェットミルで粉砕し、さらに気流式分級機により分級し、分級後の体積平均粒径が8.1μmのトナー母粒子を作製した。このトナー母粒子100重量部に対して、疎水性シリカ(日本アエロジル社製 RX200、粒径12nm)を0.5重量部添加し、ヘンシェルミキサーにて攪拌混合し、マゼンタトナー(C)を得た。
【0148】
得られたマゼンタトナー(C)について、110℃から180℃の温度域で、30%ハーフトーン画像による定着性を評価したところ、140℃以上の温度域においてはオフセットのない画像が得られた。また、150℃以上の温度域において、定着強度が85%以上の定着画像が得られた。
【0149】
(シアントナーの作成)
実施例1におけるシアントナー(E)は、顔料をクラリアント製 Toner Cyan BG に変更した以外は、前述のマゼンタトナー(C)と同様にして作成した。
(ブラックトナーの作成)
実施例1におけるブラックシアントナー(F)は、顔料をデグサ製 NIpex 60 に変更した以外は、前述のマゼンタトナー(C)と同様にして作成した。
【0150】
(イエロートナーの作成)
実施例1におけるイエロートナーは、前述のマゼンタトナー(C)の作成において脱気乾燥した顔料分散液に、別のポリオール(PO2)としてジメチロールブタン酸を120℃にて加温溶解させて、ポリオール(PO3)を調製する際に、更に、昭和高分子(株)製 フェノール樹脂 ショウノール BRG−556(軟化点 79℃)の3重量%を顔料分散ポリウレタン樹脂中に配合して調整し、かつ顔料としてクラリアント社製 Toner Yellow HG TRAN VP 2376 を用いた以外は、前述のマゼンタトナー(C)の作成と同様にして、イエロートナー(A)を作成した。このように、低軟化点の樹脂(この例では、フェノール樹脂)を少量配合し、この低軟化点樹脂を可塑剤として機能させることにより、貯蔵弾性率G′を調整することができる。
【0151】
得られたイエロートナー(A)について、110℃から180℃の温度域で、30%ハーフトーン画像による定着性を評価したところ、140℃以上の温度域においてオフセットのない画像が得られた。また、150℃以上の温度域において定着強度85%以上の定着画像が得られた。すなわち、この実施例1のイエロートナー(A)は、140℃以上の温度域が非オフセット域であり、また、150℃以上の温度域が定着強度良好域である。
【0152】
そして、マゼンタトナー(C)およびイエロートナー(A)の各貯蔵弾性率G′を前述の方法で測定した。このとき、貯蔵弾性率G′の測定時の歪みは、0.7%に設定した。その測定結果を図7に示す。
図7から明らかなように、イエロートナー(A)の貯蔵弾性率G′の方がマゼンタトナー(C)の貯蔵弾性率G′より小さい。なお、図示しないが、シアントナー(E)およびブラックトナー(F)の各貯蔵弾性率G′は、マゼンタトナー(C)の貯蔵弾性率G′と同じである。したがって、イエロートナー(A)の貯蔵弾性率G′はシアントナー(E)およびブラックトナー(F)の各貯蔵弾性率G′よりも小さい。
【0153】
(フルカラー画像の形成)
前述のイエロートナー(A)、マゼンタトナー(C)、シアントナー(E)、およびブラックトナー(F)を用いて、本発明の画像形成装置を用いて、両面印刷機能を使用せずに、富士ゼロックスオフィスサプライ社製J紙の片面にフルカラー画像を形成する。また、その際に、このフルカラー画像の画像データが存在しない白地の部分には、イエロートナー(A)により600dpiの孤立ドットをランダムに形成し、これを擬似的な追跡パターンとする。
なお、白地の部分に形成したイエロートナー(A)の孤立ドットの数は、20dot個/5mm角となるようにした。また、定着設定温度を180℃、定着ニップ通過時間を100msecとする。
【0154】
この画像の白地部分を、消しゴム{コクヨ(株) PLASTIC ERASER ケシ−1 鉛筆用}を用い、1kg荷重にて5回擦り、摺擦後のイエロートナーの孤立ドット残存数を光学顕微鏡にて計数したところ、18〜20dot個/5mm角以下であり、ほとんどのドットの欠落が生じず、追跡パターンの可読性が非常に良好である。
【0155】
(比較例1)
(イエロートナーの作成)
比較例1におけるイエロートナー(G)は、実施例1のイエロートナー(A)における昭和高分子(株)製 フェノール樹脂 ショウノール BRG−556(軟化点 79℃)を含まないこと以外は、この実施例1のイエロートナー(A)と同様にして作成した。
【0156】
そして、マゼンタトナー(C)およびイエロートナー(G)の各貯蔵弾性率G′を前述の方法で測定した。このとき、貯蔵弾性率G′の測定時の歪みは、0.7%に設定した。その測定結果を図9に示す。
図9から明らかなように、このイエロートナー(G)の貯蔵弾性率G′は、マゼンタトナー(C)の貯蔵弾性率G′とほぼ同じである。また、前述のように、シアントナー(E)およびブラックトナー(F)の各貯蔵弾性率G′がマゼンタトナー(C)の貯蔵弾性率G′と同じであるから、イエロートナー(A)の貯蔵弾性率G′はシアントナー(E)およびブラックトナー(F)の各貯蔵弾性率G′ともほぼ同じである。
【0157】
(フルカラー画像の形成)
前述のイエロートナー(G)を使用する以外は、実施例1と同様に、マゼンタトナー(C)、シアントナー(E)、およびブラックトナー(F)を用いて、実施例1と同様に、富士ゼロックスオフィスサプライ社製J紙の片面にフルカラー画像を形成する。また、その際に、このフルカラー画像の画像データが存在しない白地の部分には、イエロートナー(G)により600dpiの孤立ドットをランダムに形成し、これを擬似的な追跡パターンとする。
なお、白地の部分に形成したイエロートナー(G)の孤立ドットの数は、20dot個/5mm角となるようにした。また、定着設定温度を180℃、定着ニップ通過時間を100msecとする。
【0158】
この画像の白地部分を、消しゴム{コクヨ(株) PLASTIC ERASER ケシ−1 鉛筆用}を用い、1kg荷重にて5回擦り、摺擦後のイエロートナーの孤立ドット残存数を光学顕微鏡にて計数したところ、定着装置1回しか通過しない裏面では15dot個/5mm角以下であり、ドットの欠落が生じ、ドットの欠落が生じ、追跡パターンの可読性が不良である。
なお、この画像の摺擦前の白地部分のイエロートナーの孤立ドットを光学顕微鏡で観察したところ、通常の孤立ドットが部分的に欠落していた形状となっているドットが多数観察され、実用上支障がないレベルではあるが、オフセットが生じていた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成装置の一例を示す全体構成の模式的断面図である。
【図2】図1に示す画像形成装置における定着装置の詳細構造を示し、(a)は断面図、(b)は(a)のY−Y線に沿って矢印方向に見た断面図(装置の右半分は省略)である。
【図3】図2(a)のX−X線に沿って矢印方向に見た断面図である。
【図4】図2(a)で耐熱ベルトを除去した一部拡大断面図である。
【図5】図4で耐熱ベルト3を装着した図である。
【図6】図5でシート材の通過時の状態を示す図である。
【図7】本発明に係るトナーの実施例1のイエロートナー(A)およびマゼンタトナー(C)における粘弾性特性の貯蔵弾性率G′の挙動(温度依存性を示す図である。
【図8】トナーの粘弾性測定装置を模式的に示す図である。
【図9】比較例1のイエロートナー(G)およびマゼンタトナー(C)における各貯蔵弾性率G′の挙動(温度依存性)を示す図である。
【符号の説明】
1…熱定着ロール、1a……ロゲンランプ、1b…ロール基材、1c…弾性体、2…加圧ロール、2a…回転軸、2b…ロール基材、2c…弾性体、3…耐熱ベルト、4…ベルト張架部材、4a…突壁、5…シート材、5a…未定着トナー像、6…クリーニング部材、7…フレーム、9…スプリング、10…画像形成装置、10a…ハウジング、10b…扉体、11…紙搬送ユニット、15…クリーニング手段、17…像担持体、18…画像転写搬送手段、20…現像手段、21…スキャナ手段、30…給紙ユニット、40…定着装置、W…露光ユニット、D…画像形成ユニット、L…押圧部接線、G′…貯蔵弾性率
Claims (5)
- 少なくとも視認し難い色のトナーを含む複数色の可視のトナーを用いてカラー画像を記録媒体に形成可能な画像形成装置において、
前記視認し難い色のトナーが少なくとも結着樹脂および着色剤を含有し、
この視認し難い色のトナーは、軟化点以上の温度領域において、その貯蔵弾性率(G′)が他色のトナーの貯蔵弾性率(G′)よりも小さくなるように設定されていることを特徴とする画像形成装置。 - 前記カラー画像を記録媒体の両面に形成可能であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
- 前記視認し難い色のトナーはイエロートナーであることを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。
- 前記視認し難い色のトナーはイエロートナーであり、他の複数の色のトナーは、少なくともマゼンタトナーおよびシアントナーであることを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。
- 前記複数色のトナーは、いずれも、イソシアネート基を2個以上含有する化合物と、活性水素をもつ官能基を2個以上含有する化合物(活性水素含有成分)との重合によって得られる、ウレタン結合あるいはウレア結合を主鎖に有するポリマーを結着樹脂として含有していることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1記載の画像形成装置。
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