JP2004162745A - 弾性振動の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】可動体の弾性振動を抑制し、高精度な位置制御系を実現する。
【解決手段】可動体と可動体の剛体位置を制御する駆動手段と、可動体の弾性振動を計測する弾性振動計測手段を有し、駆動手段は弾性振動計測手段の計測値を用いて弾性振動を抑圧する。
【選択図】 図1
【解決手段】可動体と可動体の剛体位置を制御する駆動手段と、可動体の弾性振動を計測する弾性振動計測手段を有し、駆動手段は弾性振動計測手段の計測値を用いて弾性振動を抑圧する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体露光装置、工作機械、OA機器など高速、高精度の位置、速度制御が求められる分野において、可動体の弾性振動が制御精度に影響を与える場合の弾性振動の制御方法に関わる。
【0002】
【従来の技術】
可動体の剛体振動モードと弾性体振動モードを同時に抑圧することを考えた従来の技術として、例えば特開平7−83276公報「鉛直方向空気ばね式除振台の制御装置」(以下、引例1)、特開平11−194066公報「加振台の多モード振動制御法」(以下、引例2)などがある。
【0003】
引例1では図に示すように除振台の4つの駆動点の床からの位置偏差4個と、除振台上の4点の加速度を検出する。これら位置偏差と加速度の各々の信号から運動モード別の位置偏差と加速度を演算する運動モード抽出回路を用意する。求められた運動モード別の位置偏差、加速度からモード別の駆動信号を計算し、運動モード分配回路を用いて、これらを再び各空気ばねへの駆動信号に変換し、空気ばねを駆動する。この制御方式により剛体3自由度と弾性振動1自由度の合わせて4自由度を制御する。
【0004】
また引例2においては、加振台の多数の弾性振動モードを制御することを目的に、加振台を有限個の質点の結合モデルに近似し、各質点の変位、速度等をフィードバックすることで弾性振動を抑制する方法を提案している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
引例1の方式では位置計測器および加速度計測器は、剛体運動と弾性振動が合成された振動を計測する。弾性振動と剛体振動を分離するため、運動モード抽出回路が必要になる。このため、実現にあたり回路構成が複雑になるという問題がある。また、引例に示された除振台は単純な正方形の板を想定しており、これらの変換回路の実現するべき変換マトリクスは単純な形をしている。しかし、実際の除振台は他の付属部品等もあり振動モードも複雑で、引例のように簡単に運動モードを分離することは困難な場合がある。また、引例1では剛体モードの振動と、弾性モードの振動を同一の検出器を用いて検出している。本例の場合、剛体モードの振動は数Hzオーダーであり、弾性振動は数十Hzのオーダーになる。従って、これら両方の振動を検出するためはダイナミック・レンジの広い検出器を用意する必要がある。
【0006】
引例2においても計測値は弾性振動と剛体振動が合成された振動である。本例の手法でも、所望の剛体運動をさせるためには、剛体運動と弾性振動を何らかの方法により分離する必要があるが、本例では、この点に関して何ら明示されていない。すなわち弾性振動を抑制しながら剛体運動を任意に制御するような手法は明示されていない。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本願では、剛体振動の検出器と弾性振動の検出器を別個に用意する。このため運動モード抽出回路ような特別な回路を用いず、弾性振動と剛体振動の分離を容易に実現できる。また、複雑な弾性モード振動があっても、これを直接検出できる。従って、制御系の構成が簡単で、調整も容易である。また、剛体振動と弾性振動の検出器は別個に用意するため、各々の振動に適した検出範囲の検出器を用意できる。などのメリットがある。
【0008】
図1に本願の基本構成を示す(請求項1)。位置指令値生成手段9は可動体1に対する目標位置指令値90を生成する。剛体振動計測手段7は可動体1の剛体振動70を計測する。剛体振動制御手段8は、目標位置指令値90と剛体位置70を用いて、駆動力指令値80を出力する。また、弾性振動計測手段5は可動体1の弾性振動50を計測し、弾性振動制御手段6に出力する。弾性振動制御手段6は弾性振動を抑制する弾性振動駆動力指令値60を求める。駆動手段3は、前記の駆動力指令値80と弾性振動駆動力指令値60に応じて可動体1を駆動する。
【0009】
以上のように、本願では、剛体振動の測定器と弾性振動の測定器を別個に設けて、各々の振動を独立に測定することにより、各振動に適した測定器を用いることを可能にすると同時に、運動モード抽出回路のような特殊な回路を用いずに、剛体振動と弾性振動を有効に抑制することを可能にする。
【0010】
また、図2は本願の第2の構成を示す図である(請求項5)。本例では、図1の構成にさらに弾性振動の駆動手段2を付加する。弾性振動計測手段により計測された弾性振動を、この弾性振動駆動手段2にフィードバックする。これによって図1の系では抑圧できなかった、より高次の弾性振動の抑圧性能を向上させることが可能になる。
【0011】
図1、図2においては、弾性振動測定手段により計測された弾性振動をフィードバックすることにより弾性振動を抑制する例を示した。一方、弾性振動を引き起こす外力が既知である場合には、その情報を用いて、外力が印加されたときに、その外力により発生する内力を打ち消す内力を同時に発生することにより、弾性変形を抑圧することが可能である。図3から図6はこのフィードフォワードを用いた弾性振動の抑制方法を前記のフィードバックと組み合わせることで、弾性振動を効果的に抑制する方法を提案している。
【0012】
図3は請求項6に対応する構成を示す。以下にこの系の動作を説明する。位置指令値生成手段9は可動体1に対する目標位置指令値90を生成する。剛体振動計測手段7は可動体1の剛体位置70を計測する。剛体振動制御手段8は、目標位置指令値90と剛体位置70を用いて、駆動力指令値80を出力する。また、弾性振動計測手段5は可動体1の弾性振動50を計測し、弾性振動制御手段6に出力する。弾性振動制御手段6は弾性振動を抑制する弾性振動駆動力指令値60を求める。また、弾性振動補償器4は駆動力指令値80から可動体1に印加される外力を求め、その外力が可動体1に発生させる内力を決定し、その内力による可動体1の変形を打ち消す力を駆動手段3に発生させる。駆動手段3は、前記の駆動力指令値80と弾性振動駆動力指令値60、および前記弾性振動補償器4の出力する駆動指令値40に応じて可動体1を駆動する。
【0013】
図4は請求項7に対応する構成を示す。この構成は、図3の構成にさらに弾性振動駆動手段2が付加されており、弾性振動をフィードバック系で抑制すると同時に、駆動力指令値80を駆動手段3と弾性振動駆動手段2にフィードフォワードすることにより弾性振動の抑制効果を高めた系である。
【0014】
図5、図6は各々、請求項8,9に対応する構成を示す。これらの系はそれぞれ図3、図4の系と同様の考え方で構成されているが、フィードフォワードに用いる信号を実際の駆動力指令値80の代わりに、目標加速度指令値91から駆動外力を推定し、制御に用いる点が異なっている。駆動力指令値80と目標加速度指令値91に可動体の質量を乗じた値は以下の条件で、ほぼ同じ値とみなすことが可能になる。
▲1▼可動体と可動体に接続する他の部材の結合剛性が十分に低い。
▲2▼可動体を制御する制御系の応答性が十分に高い。
【0015】
図3の系で明らかなように弾性振動補償器4を付加した系では系の一巡伝達関数が図1の系と異なる。弾性振動補償器4の系は応答性が高いため、系全体の高周波領域の特性を大きく変化させ、系の安定性を悪化させる可能性がある。一方、駆動力指令値80の代わりに目標加速度指令値91を用いた図5の系は、図1の系と同じ一巡伝達関数を持ち、系の安定性を変化させない。このように、図3または、図4の系で安定性の問題が生じる場合には、それぞれ図5または図6の系を採用することにより、安定性の優れた系を構成できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
【実施例1】
図7は図1の基本構成をステージに応用した例である。
ステージ1は重力補償のため垂直方向に2つのばね(25a、25b)で支持されているが、Z方向への移動と、Y軸周りの回転の2つの自由度で剛体運動が可能である。また、ステージはX方向に長い梁の構造をしており、図13に示すような弾性振動モードをもつ。梁の弾性振動モードは無限のモードをもつが、ここでは低い方から3個だけ示してある。ステージ1はZ方向に駆動され、そのとき必然的に弾性振動モードも励起される。
【0017】
図7の系ではステージの重心位置のZ方向位置Zと重心のY軸方向まわりの回転角Θyをモード別に制御するものとする。ここでステージ重心はステージの丁度中央にあるものとする。また、ステージにZ方向の駆動力を印加するリニアモータは、ステージ重心位置の真下に中央のリニアモータ(リニアモータ固定子31a、リニアモータ可動子32a)、中央のリニアモータから同じ距離Lだけ離れた左右の位置に他の2つのリニアモータ(31b、32bおよび31c、32c)を配置することにする。
【0018】
ここでは、ステージの剛体振動モードを制御するとき、両側の2つのリニアモータで、Z方向への移動と、Y軸周りの回転の2つの自由度の剛体運動を制御する制御系を構成する。中央のリニアモータは弾性振動を制御する場合に用いるものとする。ここで、33はリニアモータに電力を供給するアンプであり、前記のリニアモータ固定子(31a〜31c)、リニアモータ可動子(32a〜32c)とともに、指令された目標力指令に対応して、目的の力をリニアモータに発生させる。
【0019】
剛体振動計測手段7はここではレーザ干渉計とする。2本のレーザ干渉計でステージ1上のZ方向の2点の位置を計測することにより、ステージを剛体とした場合のステージの重心におけるZ方向とY軸まわりの回転角を計測できる。このモード別に計測された剛体位置70は次のようなベクトルで表記できる。ここで ’ は転置行列を表す。
[Z Θy]’
【0020】
また、位置指令値生成手段9は、ステージ1の重心のZ方向とY軸まわりの回転角に対する目標位置指令値90を生成する。目標位置指令値90は次のベクトルで表記する。
[Zr Θyr]’
【0021】
上記目標位置指令値90と計測位置70の差が剛体振動制御手段8に入力され、ステージ1に対するモード別の剛体駆動力指令値が生成される。モード別剛体駆動力指令値は次のように表記する。FzとTyは、各々モード別剛体駆動力指令値の重心に作用するべき並進力と回転力を表す。
[Fz Ty]’
【0022】
また、剛体振動制御手段8内部の補償要素の伝達関数をGとすると、上記のベクトルの間には次の関係が成り立つ。ここではGとしてPID制御器を表す伝達関数とする。
[Fz Ty]’=G*([Zr Θyr]’−[Z Θy]’)
【0023】
これらの力を左右のリニアモータの2つの並進力で発生させる必要がある。この力が剛体駆動力指令値80であり、次のベクトルで表記する。
[Fb1 Fc1]’
【0024】
ここで、左右のリニアモータの作用点と重心位置のX方向距離をLとすると、リニアモータに対する剛体駆動力指令値80は次のように計算される。
[Fb1 Fc1]’=Mi*[Fz Ty]’ (式1)
【0025】
ここで、Miは次の力マトリクスMの逆行列である。
【0026】
【数1】
【0027】
一方、ステージ1の上面に貼り付けられた圧電素子51はステージ1の弾性変形に比例した電圧を発生する。アンプ52に入力された計測値は弾性振動計測値50として弾性振動制御手段6に入力される。ここでは弾性振動計測値50をSで表記する。弾性振動制御手段6は、この弾性変形に比例した弾性振動計測値50から、例えば以下のような(式2)でステージ1に対する弾性振動駆動力指令値60を求める。ここでは弾性振動駆動力指令値60を(式2)の左辺のベクトルで表す。ここでは、計測された弾性変形(位置情報)の微分値を用いることで、弾性変形の減衰性を高める制御を行うものとする。dS/dtはSの微分を表す。K1は弾性振動を抑制するための調整パラメータである。
【0028】
【数2】
【0029】
前記剛体駆動力指令値80と弾性振動駆動力指令値60の和が、リニアモータの発生すべき力[Fa Fb Fc]’になる。
[Fa Fb Fc]’=[0 Fb1 Fc1]’+[Fa2 Fb2 Fc2]’
以上のように系を構成することにより、ステージ1は弾性振動が抑圧されるため、高精度な剛体位置の制御系を実現できる。
【0030】
【実施例2】
実施例1では弾性振動検出手段5の計測値の速度情報を用いて弾性振動の減衰性を高くすることで、弾性振動を抑制する方法を示した。ここで、弾性振動の位置情報もフィードバックすることにより、弾性体の剛性を高くすることができる。例えば、実施例1では、弾性振動計測値Sを微分したdS/dtのみフィードバックしたが、ここで(式2)を次の(式3)に置き換えて制御系を構成する。ここで、K2は剛性を設定するためのパラメータである。
【数3】
このような構成により、弾性振動の共振周波数を高くでき、また、共振点における減衰性も任意に制御できるため、剛体制御系の制御帯域を高くすることが可能になる。この結果、剛体制御系の制御性能を向上させることが可能になる。
【0031】
【実施例3】
通常、重力の働く状態では、可動体の重量を支えるために、何らかのばねにより可動体を支持することが必要である。実施例1、2でもステージの下部にばねを配置している。このステージを支えるばねの剛性が高いと、弾性振動がこのばね(25a、25b)の影響を受け、弾性振動の補正が困難になる場合がある。従って、この重力を補正するばねの剛性を可能な限り柔らかくすることにより、弾性振動の抑圧性能の高い系を実現することが容易になる。
【0032】
【実施例4】
実施例1、2では梁状の形態のステージを想定した。梁は低次の弾性振動モードが単純であり、弾性振動の制御も比較的容易である。図15はほぼ正方形の形をした平板ステージである。この場合弾性振動モードは図14のようになる。このような場合の1次の弾性振動に対しては、四角形の4隅に力を印加する手段を設けることにより、この弾性振動を抑圧することが可能になる。本実施例では、平板ステージの剛体振動の6自由度を制御するとともに平板の弾性振動も制御することで、高精度な剛体振動制御系を構成する例を示す。なお、以下では基準座標系に対する並進3軸(X,Y,Z)と並進3軸の各軸周りの回転3軸(θx、θy、θz)を合わせて6自由度位置と呼ぶことにする。
【0033】
図15に示すように、駆動手段3として、Z方向(紙面に対して垂直な方向)に力を発生するリニアモータを平板の4隅に配置する(32a〜32d)。また、水平方向の剛体振動モードを制御するために水平方向(X、Y方向)に力を発生するリニアモータも4個配置する(32e〜32h)。平板の剛体振動計測手段7として、ミラー72を平板上に、レーザ干渉計71を基準位置となる定盤48に設置する。レーザ干渉計は平板の6自由度の位置を計測するため、図には示していないが、最低6個のレーザ干渉計が設置されている。レーザ干渉計の計測値より、次の剛体6自由度の位置70が計測される。
[X Y Z Θx Θy Θz]’
【0034】
実施例1において、制御する自由度を[Z Θy]’の2個から、6個に変更して、同様な手順により制御系を構成する。以下に、各要素の入出力値と計算式を記述する。
位置指令値生成手段9の生成する目標位置指令値90は次のベクトルで表記する。
[Xr Yr Zr Θxr Θyr Θzr]’
【0035】
モード別剛体駆動力指令値は次のようになる。
[Fx Fy Fz Tx Ty Tz]’
また、剛体振動制御手段8内部の補償要素の伝達関数をG2とすると、上記のベクトルの間には次の関係が成り立つ。
【数4】
【0036】
このモード別剛体駆動力指令値から各リニアモータの発生すべき剛体駆動力指令値80は、平板の重心位置とリニアモータの配置、および力の作用方向、その他、拘束条件を加味して求められる力マトリクスM2の逆行列Mi2を用いて、次のように計算される。
【数5】
【0037】
一方、平板の弾性振動を制御するため、平板の対角方向の弾性変形を計測する4個の圧電素子51a〜51dを斜めに配置する。圧電素子51a〜51dが計測する4つの弾性変形の計測値50を次のようなベクトルで表記する。
[Sa Sb Sc Sd]’
【0038】
ここでは、弾性変形の速度成分をフィードバックして、弾性振動の減衰性能を向上させることにする。弾性振動の速度成分は変形(位置)成分を微分して、次のように表せる。
【0039】
【数6】
【0040】
また、弾性振動を制御するために4個のリニアモータに与える弾性振動駆動力指令値60を次のように求める。ここで、K3、K4は弾性振動の減衰率を調整するパラメータである。
【数7】
【0041】
最終的にリニアモータが発生すべき力ベクトルは、上記の剛体駆動力指令値80と弾性振動駆動力指令値60の和として求められる。
【数8】
【0042】
【実施例5】
図2は請求項5に対応する構成図である。また、図8は図7のステージに図2の構成を適用した実施例である。図8において、剛体振動制御のループの構成は図7(実施例1)で示したものと同じである。また、弾性振動計測手段5を利用して弾性振動を計測し弾性振動駆動力指令値60を生成する構成もほぼ同じである。実施例1との主な差異は弾性振動駆動手段2を付加し、弾性振動計測手段5の計測値を弾性振動駆動手段2にフィードバックし弾性振動を抑制するループを付加した点である。
【0043】
図8では図7のステージ上面の右左に弾性振動計測手段5としての3個の圧電素子51a、51b、51cと、弾性振動駆動駆動手段2として2個の圧電素子21b、21cを貼り付けた。これらを図8のように接続し、圧電素子51b、51cで計測された弾性振動の速度成分を適当なゲインを掛けて駆動用の圧電素子21b、21cにフィードバックする。このような構成により、図13の弾性振動モードの2次、3次成分に対する振動抑制が可能になり、より高精度なステージの位置制御系が実現できる。
【0044】
前記圧電素子51a〜51cが検出する弾性振動計測値50を次のベクトルで表記する。
[Sa Sb Sc]’
【0045】
この値のうちステージの両側にある圧電素子51b、51cはステージの2次、3次の弾性振動を計測することを目的とする。この計測値を用いて、弾性振動駆動力第2指令値61 を次のように求める。ここでK5は弾性振動のフィードバック系の特性を調整するゲインである。
【数9】
【0046】
上記の弾性振動駆動力第2指令値61が弾性振動駆動手段2である駆動用の圧電素子21b、21cに指令される。
また、弾性振動駆動力指令値60は次のようにして求める。
【0047】
【数10】
【0048】
この値と実施例1と同様にして求めた剛体振動制御のための駆動力指令値80 [Fb1 Fc1]’の和がリニアモータに力指令値として入力される。
[Fa Fb Fc]’ = [0 Fb1 Fc1]’+[Fa3 Fb3 Fc3]’
【0049】
【実施例6】
図3は請求項6に対応する構成図であり、図9は図3を図7のステージ系に適用した場合の構成例である。既に説明したように図3は弾性振動のフィードバック制御系と弾性振動のフィードフォワード系を組み合わせた構成である。
【0050】
図9の構成は図7(実施例1)の系に対して、さらに弾性振動補償手段4を付加し、剛体振動駆動力指令値80を用いて、駆動手段3への駆動力指令値40を出力している部分だけが異なる。駆動力指令値80は実施例1で求めた値で、(式1)で表される。弾性振動補償手段4は次のように、駆動指令値40を求める。
[Fa4 Fb4 Fc4]’ = K7*[−2 1 1]’*[1 1]*[Fb1 Fc1]’(式6)
リニアモータには、実施例1で求めた(式1)、(式2)に上記の駆動指令値40を加えた値が力指令値として入力される。
【数11】
【0051】
実施例1の系にこのループを付加することにより、剛体振動駆動力指令値80による弾性振動の発生を抑制できるため、弾性振動の抑圧性能の高い位置制御系が実現できる。
【0052】
【実施例7】
図4は請求項7に対応する構成図であり、図10は図4を図7のステージ系に適用した場合の構成例である。
【0053】
図10の構成は図8(実施例5)の系に対してさらに弾性振動補償手段4を付加し、剛体振動駆動力指令値80を用いて、駆動力指令値40を駆動手段3へ、および駆動力指令値41を弾性振動駆動手段2に出力している部分だけが異なる。剛体振動駆動力指令値80は実施例1で求めた値で、(式1)で表される。弾性振動補償手段4は次のように、駆動指令値40、および駆動力指令値41を求める。駆動指令値40は実施例6で求めた(式6)であり、駆動力指令値41は例えば次のように求められる。
[Tb2 Tc2]’ = K8*[1 1]*[Fb1 Fc1]’ (式8)
【0054】
実施例5の(式4)の値と上記の(式8)の値の和が弾性振動駆動手段への指令値として与えられる。
実施例5の系にこのループを付加することにより、剛体振動駆動力指令値80による弾性振動の発生を抑制できるため、弾性振動の抑圧性能の高い位置制御系が実現できる。実施例7の系に比べると、実施例7の系では抑圧できなかった高次の弾性振動まで抑制できる点が異なる。
【0055】
【実施例8】
図5は請求項8に対応する構成図であり、図11は図5を図7のステージ系に適用した場合の構成例である。
実施例6(図3、図9)において、弾性振動補償器4は剛体振動駆動手段8の出力する剛体振動駆動力指令値80を用いて、可動体に発生する弾性振動を推定し、その弾性振動を抑圧する駆動力指令値40を求めた。本実施例では、剛体振動駆動力指令値80を用いる代わりに、目標加速度指令値91から駆動外力を推定し、制御に用いる。これは、既に説明したように、剛体振動駆動力指令値80を用いた場合には、系の一巡伝達関数が安定性を損なう方向に働くため、場合によっては系を不安定にするからである。剛体振動駆動力指令値80を用いる代わりに、目標加速度指令値91を用いた場合には、系の一巡伝達関数は変化しないため、安定性を損なうことなく、弾性振動を推定し、その弾性振動を抑圧することが可能になる。
【0056】
実施例6で求めた駆動力40はここでは次の(式9)のようにして求めることができる。ここで [Az Aty]は各々剛体振動のZ方向およびY軸周りの回転方向の目標加速度指令91である。またMiは(式1)で定義した行列であり、mは可動体の質量である。
[Fa4 Fb4 Fc4]’ = K7*[−2 1 1]’*[1 1]*Mi*m*[Az Aty]’(式9)
実施例6において、(式6)の代わりに(式9)を用い、(式7)を計算することで系を構成することができる。
【0057】
【実施例9】
図6は請求項9に対応する構成図であり、図12は図6を図7のステージ系に適用した場合の構成例である。
【0058】
実施例7(図4、図10)において、弾性振動補償器4は剛体振動駆動手段8の出力する剛体振動駆動力指令値80を用いて、可動体に発生する弾性振動を推定し、その弾性振動を抑圧する駆動力指令値40および駆動力指令値41を求めた。本実施例では、実施例8と同様に剛体振動駆動力指令値80を用いる代わりに、目標加速度指令値91から駆動外力を推定し、上記の値を求める。
【0059】
駆動力指令値40は(式9)で求める。また、駆動力指令値41は実施例7の(式8)の代わりに、次のように求める。ここで、K8以外の定数、変数は(式9)と同じである。K8はフィードフォワードの効果を調整するパラメータである。
[Ta2 Tb2]’ = K8*[1 1]*Mi*m*[Az Aty]’ (式10)
他の指令値の計算は実施例7と同じである。
本実施例が実施例8と異なるのは、実施例8の系では抑圧できなかった高次の弾性振動まで抑制できる点が異なる。
【0060】
【実施例10】
ここでは本願の構成図2を半導体露光装置のウエハステージに適用した場合の実施例を示す。図16(a)は本願を適用した半導体露光装置の構成概略図である。また、図16(b)はチルトステージの詳細を示す。本実施例のチルトステージは実施例4で説明した平板ステージと、ほぼ同じ構成である。
【0061】
図16(a)において、55はウエハステージ定盤で、床49からダンパ47aを介して支持されている。43はYステージで、ウエハステージ定盤55に固定された固定ガイド42に沿ってY方向に推力を発生するYリニアモータ34により、ウエハステージ定盤55の基準面上をY方向に移動可能である。ウエハステージ定盤55および固定ガイド42とYステージ43との間は静圧軸受であるエアパッド44a、44bを介してエアで結合されており非接触である。Yステージ43はX方向のガイドを備えており、Yステージに搭載されたXステージ45をX方向に案内する。また、Yステージ43にはX方向に力を発生するXリニアモータ固定子が設けられ、Xステージに設けられたXリニアモータ可動子と共に、Xステージ45をX方向に駆動させる。定盤41及びXガイドとXステージ45との間は静圧軸受であるエアパッド44cを介してエアで結合されており、非接触である。
【0062】
Xステージ45にはチルトステージ12が搭載されている。なお、ここでは、ステージ基板(天板)、レーザ干渉計用のミラー、微動用のリニアモータなどを含めた全体をチルトステージ12と呼ぶ。チルトステージ12にはウエハチャックを備えたステージ基板11があり、被露光体であるウエハ13を保持する。また、ステージ基板上にはステージの鏡筒定盤48を基準とした6軸方向の位置計測に用いる計測ミラー72a、2bが設けられる。鏡筒定盤48は床49から支柱46にダンパ47bを介して支持される。鏡筒定盤48側にはレーザ干渉計71が設けられる。図14(a)では、チルトステージのX方向、Z方向位置を計測するレーザ干渉計71a、71cのみ示しているが、チルトステージの6軸剛体位置を計測するため、最低6個のレーザ干渉計が設けられている。また、図には示さないがXステージ、Yステージの位置計測のためにも別途レーザ干渉計が用意されているものとする。本実施例では、チルトステージは6軸微動ステージである。Xステージ、Yステージは粗動ステージとして動作する。すなわちX、Yは精度は高くないが、大きなストロークと移動することが目的であり、チルトステージは可動ストロークは小さいが、高精度な動作を行うことが可能である。
【0063】
図16(b)はチルトステージの詳細を示す。図16(b)の上段、下段は各々チルトステージの側面と裏面である。32a〜32fはチルトステージを駆動するリニアモータである。32e〜32hは水平方向の力を発生し、32a〜32dは垂直方向の力を発生する。チルトステージ12はこれらのリニアモータ32a〜32fによる推力で水平3軸方向(X,Y,Z)の移動と3軸(θx、θy、θz)方向の回転を行い6軸剛体振動を制御する。また、ステージ基板11を曲げるように力を発生する弾性駆動駆動手段2として圧電素子21e〜21hを接続する。また、その駆動用圧電素子21の隣に、曲げ歪を計測する弾性振動計測手段5として圧電素子51e〜51hを接続する。また、対角方向の弾性振動を制御するための弾性振動計測手段として、圧電素子51a〜51dを配置する。
【0064】
X,Yステージの位置決め、および、チルトステージの6軸方向への位置決めは各軸にサーボ系を構成することにより達成される。X、Yステージは、レーザ干渉計の位置情報をもとにステージのX方向、Y方向のアクチュエータであるX方向のリニアモータとY方向のリニアモータへの駆動指令値を演算し、各々Xステージ、Yステージを駆動する。また、チルトステージは剛体6軸方向の位置を制御するため、別途、位置制御系が構成される。チルトステージの位置制御系の構成は実施例4に示したものとほぼ同じである。実施例4では図1の構成を用いたが、本実施例では図2の構成を用いた。図2の構成は図1の構成に弾性振動の駆動手段を付加し、図1の構成では抑制できない弾性振動も抑制する点にある。本実施例では、平板の対角方向の弾性振動の抑制はリニアモータで行い、平板の辺方向の弾性振動は圧電素子を駆動要素として用いる。
【0065】
ステージの位置指令値生成手段9はチルトステージの6軸の目標位置指令90を生成する。この指令値のX、Y成分は、前記のX、Yステージの指令値としても用いられる。目標位置指令90と、レーザ干渉計71により計測されたチルトステージの6軸計測信号70a〜eから剛体振動制御手段8は、剛体振動駆動手段3であるリニアモータ32a〜fへの指令値80を決定する。また、弾性振動制御手段6は、実施例4で説明したように、弾性振動の速度成分をフィードバックすることで天板の弾性振動の減衰性が高めることができる。弾性振動制御手段6は、実施例4の弾性振動制御手段6と同じ動作をする弾性振動制御手段6aと、平板の辺方向の弾性振動を制御する6e〜6hより構成される。弾性振動制御手段6e〜6hは圧電素子51e〜51hにより弾性変形を検出し、実施例5の(式4)のように計測値を微分して適当なゲインを乗じて、圧電素子21e〜21fに入力される。
【0066】
これらの弾性振動を制御する要素の効果により、チルトステージ駆動時の弾性振動が効果的に抑圧できるため、チルトステージの剛体振動を制御する位置制御系は高いサーボ帯域を実現でき、その結果チルトステージの位置制御精度を向上させることができる。
【発明の効果】
以上のように弾性振動を制御することにより、従来方式に比べ、高速かつ高精
【図面の簡単な説明】
【図1】本願の基本構成を示す図である。
【図2】本願の第2の構成を示す図である。
【図3】本願の第3の構成を示す図である。
【図4】本願の第4の構成を示す図である。
【図5】本願の第5の構成を示す図である。
【図6】本願の第6の構成を示す図である。
【図7】実施例1の構成を示す図である。
【図8】実施例5の構成を示す図である。
【図9】実施例6の構成を示す図である。
【図10】実施例7の構成を示す図である。
【図11】実施例8の構成を示す図である。
【図12】実施例9の構成を示す図である。
【図13】梁の弾性振動モードを示す図である。
【図14】平板の弾性振動モードを示す図である。
【図15】実施例4の構成を示す図である。
【図16】実施例10の構成を示す図である。
【符号の説明】1:可動体、ステージ、2:弾性振動駆動手段、20:内力、21、21a〜21d:駆動用圧電素子、22:圧電素子アンプ、25、:25a、25b重力支持ばね、3:駆動手段、30:外力、31、31a〜31f:リニアモータ固定子、32、32a〜32f:リニアモータ可動子、33:リニアモータ・アンプ、4:弾性振動補償器、40:駆動指令値、41:駆動力指令値、5:弾性振動計測手段、50:弾性振動計測値、51、51a〜51d:弾性振動測定用圧電素子、6、6a〜6d :弾性振動制御手段、60:弾性振動駆動力指令値、61:弾性振動駆動力第2指令値、7:剛体振動計測手段、70、70a〜70f:剛体振動測定値、8:剛体振動制御手段、80:駆動力指令値、9:位置指令値生成手段、90:目標位置指令値、91:目標加速力指令値、11:ステージ基板、12:チルトステージ、13:ウエハ、34:Y軸リニアモータ、55:ウエハステージ定盤、42:Y方向ガイド、43:Yステージ、44:エアパッド、45:Xステージ、46:ダンパ、47:ダンパ、48:鏡筒定盤 、49:床、71:レーザ干渉計、72:ミラー。
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体露光装置、工作機械、OA機器など高速、高精度の位置、速度制御が求められる分野において、可動体の弾性振動が制御精度に影響を与える場合の弾性振動の制御方法に関わる。
【0002】
【従来の技術】
可動体の剛体振動モードと弾性体振動モードを同時に抑圧することを考えた従来の技術として、例えば特開平7−83276公報「鉛直方向空気ばね式除振台の制御装置」(以下、引例1)、特開平11−194066公報「加振台の多モード振動制御法」(以下、引例2)などがある。
【0003】
引例1では図に示すように除振台の4つの駆動点の床からの位置偏差4個と、除振台上の4点の加速度を検出する。これら位置偏差と加速度の各々の信号から運動モード別の位置偏差と加速度を演算する運動モード抽出回路を用意する。求められた運動モード別の位置偏差、加速度からモード別の駆動信号を計算し、運動モード分配回路を用いて、これらを再び各空気ばねへの駆動信号に変換し、空気ばねを駆動する。この制御方式により剛体3自由度と弾性振動1自由度の合わせて4自由度を制御する。
【0004】
また引例2においては、加振台の多数の弾性振動モードを制御することを目的に、加振台を有限個の質点の結合モデルに近似し、各質点の変位、速度等をフィードバックすることで弾性振動を抑制する方法を提案している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
引例1の方式では位置計測器および加速度計測器は、剛体運動と弾性振動が合成された振動を計測する。弾性振動と剛体振動を分離するため、運動モード抽出回路が必要になる。このため、実現にあたり回路構成が複雑になるという問題がある。また、引例に示された除振台は単純な正方形の板を想定しており、これらの変換回路の実現するべき変換マトリクスは単純な形をしている。しかし、実際の除振台は他の付属部品等もあり振動モードも複雑で、引例のように簡単に運動モードを分離することは困難な場合がある。また、引例1では剛体モードの振動と、弾性モードの振動を同一の検出器を用いて検出している。本例の場合、剛体モードの振動は数Hzオーダーであり、弾性振動は数十Hzのオーダーになる。従って、これら両方の振動を検出するためはダイナミック・レンジの広い検出器を用意する必要がある。
【0006】
引例2においても計測値は弾性振動と剛体振動が合成された振動である。本例の手法でも、所望の剛体運動をさせるためには、剛体運動と弾性振動を何らかの方法により分離する必要があるが、本例では、この点に関して何ら明示されていない。すなわち弾性振動を抑制しながら剛体運動を任意に制御するような手法は明示されていない。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本願では、剛体振動の検出器と弾性振動の検出器を別個に用意する。このため運動モード抽出回路ような特別な回路を用いず、弾性振動と剛体振動の分離を容易に実現できる。また、複雑な弾性モード振動があっても、これを直接検出できる。従って、制御系の構成が簡単で、調整も容易である。また、剛体振動と弾性振動の検出器は別個に用意するため、各々の振動に適した検出範囲の検出器を用意できる。などのメリットがある。
【0008】
図1に本願の基本構成を示す(請求項1)。位置指令値生成手段9は可動体1に対する目標位置指令値90を生成する。剛体振動計測手段7は可動体1の剛体振動70を計測する。剛体振動制御手段8は、目標位置指令値90と剛体位置70を用いて、駆動力指令値80を出力する。また、弾性振動計測手段5は可動体1の弾性振動50を計測し、弾性振動制御手段6に出力する。弾性振動制御手段6は弾性振動を抑制する弾性振動駆動力指令値60を求める。駆動手段3は、前記の駆動力指令値80と弾性振動駆動力指令値60に応じて可動体1を駆動する。
【0009】
以上のように、本願では、剛体振動の測定器と弾性振動の測定器を別個に設けて、各々の振動を独立に測定することにより、各振動に適した測定器を用いることを可能にすると同時に、運動モード抽出回路のような特殊な回路を用いずに、剛体振動と弾性振動を有効に抑制することを可能にする。
【0010】
また、図2は本願の第2の構成を示す図である(請求項5)。本例では、図1の構成にさらに弾性振動の駆動手段2を付加する。弾性振動計測手段により計測された弾性振動を、この弾性振動駆動手段2にフィードバックする。これによって図1の系では抑圧できなかった、より高次の弾性振動の抑圧性能を向上させることが可能になる。
【0011】
図1、図2においては、弾性振動測定手段により計測された弾性振動をフィードバックすることにより弾性振動を抑制する例を示した。一方、弾性振動を引き起こす外力が既知である場合には、その情報を用いて、外力が印加されたときに、その外力により発生する内力を打ち消す内力を同時に発生することにより、弾性変形を抑圧することが可能である。図3から図6はこのフィードフォワードを用いた弾性振動の抑制方法を前記のフィードバックと組み合わせることで、弾性振動を効果的に抑制する方法を提案している。
【0012】
図3は請求項6に対応する構成を示す。以下にこの系の動作を説明する。位置指令値生成手段9は可動体1に対する目標位置指令値90を生成する。剛体振動計測手段7は可動体1の剛体位置70を計測する。剛体振動制御手段8は、目標位置指令値90と剛体位置70を用いて、駆動力指令値80を出力する。また、弾性振動計測手段5は可動体1の弾性振動50を計測し、弾性振動制御手段6に出力する。弾性振動制御手段6は弾性振動を抑制する弾性振動駆動力指令値60を求める。また、弾性振動補償器4は駆動力指令値80から可動体1に印加される外力を求め、その外力が可動体1に発生させる内力を決定し、その内力による可動体1の変形を打ち消す力を駆動手段3に発生させる。駆動手段3は、前記の駆動力指令値80と弾性振動駆動力指令値60、および前記弾性振動補償器4の出力する駆動指令値40に応じて可動体1を駆動する。
【0013】
図4は請求項7に対応する構成を示す。この構成は、図3の構成にさらに弾性振動駆動手段2が付加されており、弾性振動をフィードバック系で抑制すると同時に、駆動力指令値80を駆動手段3と弾性振動駆動手段2にフィードフォワードすることにより弾性振動の抑制効果を高めた系である。
【0014】
図5、図6は各々、請求項8,9に対応する構成を示す。これらの系はそれぞれ図3、図4の系と同様の考え方で構成されているが、フィードフォワードに用いる信号を実際の駆動力指令値80の代わりに、目標加速度指令値91から駆動外力を推定し、制御に用いる点が異なっている。駆動力指令値80と目標加速度指令値91に可動体の質量を乗じた値は以下の条件で、ほぼ同じ値とみなすことが可能になる。
▲1▼可動体と可動体に接続する他の部材の結合剛性が十分に低い。
▲2▼可動体を制御する制御系の応答性が十分に高い。
【0015】
図3の系で明らかなように弾性振動補償器4を付加した系では系の一巡伝達関数が図1の系と異なる。弾性振動補償器4の系は応答性が高いため、系全体の高周波領域の特性を大きく変化させ、系の安定性を悪化させる可能性がある。一方、駆動力指令値80の代わりに目標加速度指令値91を用いた図5の系は、図1の系と同じ一巡伝達関数を持ち、系の安定性を変化させない。このように、図3または、図4の系で安定性の問題が生じる場合には、それぞれ図5または図6の系を採用することにより、安定性の優れた系を構成できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
【実施例1】
図7は図1の基本構成をステージに応用した例である。
ステージ1は重力補償のため垂直方向に2つのばね(25a、25b)で支持されているが、Z方向への移動と、Y軸周りの回転の2つの自由度で剛体運動が可能である。また、ステージはX方向に長い梁の構造をしており、図13に示すような弾性振動モードをもつ。梁の弾性振動モードは無限のモードをもつが、ここでは低い方から3個だけ示してある。ステージ1はZ方向に駆動され、そのとき必然的に弾性振動モードも励起される。
【0017】
図7の系ではステージの重心位置のZ方向位置Zと重心のY軸方向まわりの回転角Θyをモード別に制御するものとする。ここでステージ重心はステージの丁度中央にあるものとする。また、ステージにZ方向の駆動力を印加するリニアモータは、ステージ重心位置の真下に中央のリニアモータ(リニアモータ固定子31a、リニアモータ可動子32a)、中央のリニアモータから同じ距離Lだけ離れた左右の位置に他の2つのリニアモータ(31b、32bおよび31c、32c)を配置することにする。
【0018】
ここでは、ステージの剛体振動モードを制御するとき、両側の2つのリニアモータで、Z方向への移動と、Y軸周りの回転の2つの自由度の剛体運動を制御する制御系を構成する。中央のリニアモータは弾性振動を制御する場合に用いるものとする。ここで、33はリニアモータに電力を供給するアンプであり、前記のリニアモータ固定子(31a〜31c)、リニアモータ可動子(32a〜32c)とともに、指令された目標力指令に対応して、目的の力をリニアモータに発生させる。
【0019】
剛体振動計測手段7はここではレーザ干渉計とする。2本のレーザ干渉計でステージ1上のZ方向の2点の位置を計測することにより、ステージを剛体とした場合のステージの重心におけるZ方向とY軸まわりの回転角を計測できる。このモード別に計測された剛体位置70は次のようなベクトルで表記できる。ここで ’ は転置行列を表す。
[Z Θy]’
【0020】
また、位置指令値生成手段9は、ステージ1の重心のZ方向とY軸まわりの回転角に対する目標位置指令値90を生成する。目標位置指令値90は次のベクトルで表記する。
[Zr Θyr]’
【0021】
上記目標位置指令値90と計測位置70の差が剛体振動制御手段8に入力され、ステージ1に対するモード別の剛体駆動力指令値が生成される。モード別剛体駆動力指令値は次のように表記する。FzとTyは、各々モード別剛体駆動力指令値の重心に作用するべき並進力と回転力を表す。
[Fz Ty]’
【0022】
また、剛体振動制御手段8内部の補償要素の伝達関数をGとすると、上記のベクトルの間には次の関係が成り立つ。ここではGとしてPID制御器を表す伝達関数とする。
[Fz Ty]’=G*([Zr Θyr]’−[Z Θy]’)
【0023】
これらの力を左右のリニアモータの2つの並進力で発生させる必要がある。この力が剛体駆動力指令値80であり、次のベクトルで表記する。
[Fb1 Fc1]’
【0024】
ここで、左右のリニアモータの作用点と重心位置のX方向距離をLとすると、リニアモータに対する剛体駆動力指令値80は次のように計算される。
[Fb1 Fc1]’=Mi*[Fz Ty]’ (式1)
【0025】
ここで、Miは次の力マトリクスMの逆行列である。
【0026】
【数1】
【0027】
一方、ステージ1の上面に貼り付けられた圧電素子51はステージ1の弾性変形に比例した電圧を発生する。アンプ52に入力された計測値は弾性振動計測値50として弾性振動制御手段6に入力される。ここでは弾性振動計測値50をSで表記する。弾性振動制御手段6は、この弾性変形に比例した弾性振動計測値50から、例えば以下のような(式2)でステージ1に対する弾性振動駆動力指令値60を求める。ここでは弾性振動駆動力指令値60を(式2)の左辺のベクトルで表す。ここでは、計測された弾性変形(位置情報)の微分値を用いることで、弾性変形の減衰性を高める制御を行うものとする。dS/dtはSの微分を表す。K1は弾性振動を抑制するための調整パラメータである。
【0028】
【数2】
【0029】
前記剛体駆動力指令値80と弾性振動駆動力指令値60の和が、リニアモータの発生すべき力[Fa Fb Fc]’になる。
[Fa Fb Fc]’=[0 Fb1 Fc1]’+[Fa2 Fb2 Fc2]’
以上のように系を構成することにより、ステージ1は弾性振動が抑圧されるため、高精度な剛体位置の制御系を実現できる。
【0030】
【実施例2】
実施例1では弾性振動検出手段5の計測値の速度情報を用いて弾性振動の減衰性を高くすることで、弾性振動を抑制する方法を示した。ここで、弾性振動の位置情報もフィードバックすることにより、弾性体の剛性を高くすることができる。例えば、実施例1では、弾性振動計測値Sを微分したdS/dtのみフィードバックしたが、ここで(式2)を次の(式3)に置き換えて制御系を構成する。ここで、K2は剛性を設定するためのパラメータである。
【数3】
このような構成により、弾性振動の共振周波数を高くでき、また、共振点における減衰性も任意に制御できるため、剛体制御系の制御帯域を高くすることが可能になる。この結果、剛体制御系の制御性能を向上させることが可能になる。
【0031】
【実施例3】
通常、重力の働く状態では、可動体の重量を支えるために、何らかのばねにより可動体を支持することが必要である。実施例1、2でもステージの下部にばねを配置している。このステージを支えるばねの剛性が高いと、弾性振動がこのばね(25a、25b)の影響を受け、弾性振動の補正が困難になる場合がある。従って、この重力を補正するばねの剛性を可能な限り柔らかくすることにより、弾性振動の抑圧性能の高い系を実現することが容易になる。
【0032】
【実施例4】
実施例1、2では梁状の形態のステージを想定した。梁は低次の弾性振動モードが単純であり、弾性振動の制御も比較的容易である。図15はほぼ正方形の形をした平板ステージである。この場合弾性振動モードは図14のようになる。このような場合の1次の弾性振動に対しては、四角形の4隅に力を印加する手段を設けることにより、この弾性振動を抑圧することが可能になる。本実施例では、平板ステージの剛体振動の6自由度を制御するとともに平板の弾性振動も制御することで、高精度な剛体振動制御系を構成する例を示す。なお、以下では基準座標系に対する並進3軸(X,Y,Z)と並進3軸の各軸周りの回転3軸(θx、θy、θz)を合わせて6自由度位置と呼ぶことにする。
【0033】
図15に示すように、駆動手段3として、Z方向(紙面に対して垂直な方向)に力を発生するリニアモータを平板の4隅に配置する(32a〜32d)。また、水平方向の剛体振動モードを制御するために水平方向(X、Y方向)に力を発生するリニアモータも4個配置する(32e〜32h)。平板の剛体振動計測手段7として、ミラー72を平板上に、レーザ干渉計71を基準位置となる定盤48に設置する。レーザ干渉計は平板の6自由度の位置を計測するため、図には示していないが、最低6個のレーザ干渉計が設置されている。レーザ干渉計の計測値より、次の剛体6自由度の位置70が計測される。
[X Y Z Θx Θy Θz]’
【0034】
実施例1において、制御する自由度を[Z Θy]’の2個から、6個に変更して、同様な手順により制御系を構成する。以下に、各要素の入出力値と計算式を記述する。
位置指令値生成手段9の生成する目標位置指令値90は次のベクトルで表記する。
[Xr Yr Zr Θxr Θyr Θzr]’
【0035】
モード別剛体駆動力指令値は次のようになる。
[Fx Fy Fz Tx Ty Tz]’
また、剛体振動制御手段8内部の補償要素の伝達関数をG2とすると、上記のベクトルの間には次の関係が成り立つ。
【数4】
【0036】
このモード別剛体駆動力指令値から各リニアモータの発生すべき剛体駆動力指令値80は、平板の重心位置とリニアモータの配置、および力の作用方向、その他、拘束条件を加味して求められる力マトリクスM2の逆行列Mi2を用いて、次のように計算される。
【数5】
【0037】
一方、平板の弾性振動を制御するため、平板の対角方向の弾性変形を計測する4個の圧電素子51a〜51dを斜めに配置する。圧電素子51a〜51dが計測する4つの弾性変形の計測値50を次のようなベクトルで表記する。
[Sa Sb Sc Sd]’
【0038】
ここでは、弾性変形の速度成分をフィードバックして、弾性振動の減衰性能を向上させることにする。弾性振動の速度成分は変形(位置)成分を微分して、次のように表せる。
【0039】
【数6】
【0040】
また、弾性振動を制御するために4個のリニアモータに与える弾性振動駆動力指令値60を次のように求める。ここで、K3、K4は弾性振動の減衰率を調整するパラメータである。
【数7】
【0041】
最終的にリニアモータが発生すべき力ベクトルは、上記の剛体駆動力指令値80と弾性振動駆動力指令値60の和として求められる。
【数8】
【0042】
【実施例5】
図2は請求項5に対応する構成図である。また、図8は図7のステージに図2の構成を適用した実施例である。図8において、剛体振動制御のループの構成は図7(実施例1)で示したものと同じである。また、弾性振動計測手段5を利用して弾性振動を計測し弾性振動駆動力指令値60を生成する構成もほぼ同じである。実施例1との主な差異は弾性振動駆動手段2を付加し、弾性振動計測手段5の計測値を弾性振動駆動手段2にフィードバックし弾性振動を抑制するループを付加した点である。
【0043】
図8では図7のステージ上面の右左に弾性振動計測手段5としての3個の圧電素子51a、51b、51cと、弾性振動駆動駆動手段2として2個の圧電素子21b、21cを貼り付けた。これらを図8のように接続し、圧電素子51b、51cで計測された弾性振動の速度成分を適当なゲインを掛けて駆動用の圧電素子21b、21cにフィードバックする。このような構成により、図13の弾性振動モードの2次、3次成分に対する振動抑制が可能になり、より高精度なステージの位置制御系が実現できる。
【0044】
前記圧電素子51a〜51cが検出する弾性振動計測値50を次のベクトルで表記する。
[Sa Sb Sc]’
【0045】
この値のうちステージの両側にある圧電素子51b、51cはステージの2次、3次の弾性振動を計測することを目的とする。この計測値を用いて、弾性振動駆動力第2指令値61 を次のように求める。ここでK5は弾性振動のフィードバック系の特性を調整するゲインである。
【数9】
【0046】
上記の弾性振動駆動力第2指令値61が弾性振動駆動手段2である駆動用の圧電素子21b、21cに指令される。
また、弾性振動駆動力指令値60は次のようにして求める。
【0047】
【数10】
【0048】
この値と実施例1と同様にして求めた剛体振動制御のための駆動力指令値80 [Fb1 Fc1]’の和がリニアモータに力指令値として入力される。
[Fa Fb Fc]’ = [0 Fb1 Fc1]’+[Fa3 Fb3 Fc3]’
【0049】
【実施例6】
図3は請求項6に対応する構成図であり、図9は図3を図7のステージ系に適用した場合の構成例である。既に説明したように図3は弾性振動のフィードバック制御系と弾性振動のフィードフォワード系を組み合わせた構成である。
【0050】
図9の構成は図7(実施例1)の系に対して、さらに弾性振動補償手段4を付加し、剛体振動駆動力指令値80を用いて、駆動手段3への駆動力指令値40を出力している部分だけが異なる。駆動力指令値80は実施例1で求めた値で、(式1)で表される。弾性振動補償手段4は次のように、駆動指令値40を求める。
[Fa4 Fb4 Fc4]’ = K7*[−2 1 1]’*[1 1]*[Fb1 Fc1]’(式6)
リニアモータには、実施例1で求めた(式1)、(式2)に上記の駆動指令値40を加えた値が力指令値として入力される。
【数11】
【0051】
実施例1の系にこのループを付加することにより、剛体振動駆動力指令値80による弾性振動の発生を抑制できるため、弾性振動の抑圧性能の高い位置制御系が実現できる。
【0052】
【実施例7】
図4は請求項7に対応する構成図であり、図10は図4を図7のステージ系に適用した場合の構成例である。
【0053】
図10の構成は図8(実施例5)の系に対してさらに弾性振動補償手段4を付加し、剛体振動駆動力指令値80を用いて、駆動力指令値40を駆動手段3へ、および駆動力指令値41を弾性振動駆動手段2に出力している部分だけが異なる。剛体振動駆動力指令値80は実施例1で求めた値で、(式1)で表される。弾性振動補償手段4は次のように、駆動指令値40、および駆動力指令値41を求める。駆動指令値40は実施例6で求めた(式6)であり、駆動力指令値41は例えば次のように求められる。
[Tb2 Tc2]’ = K8*[1 1]*[Fb1 Fc1]’ (式8)
【0054】
実施例5の(式4)の値と上記の(式8)の値の和が弾性振動駆動手段への指令値として与えられる。
実施例5の系にこのループを付加することにより、剛体振動駆動力指令値80による弾性振動の発生を抑制できるため、弾性振動の抑圧性能の高い位置制御系が実現できる。実施例7の系に比べると、実施例7の系では抑圧できなかった高次の弾性振動まで抑制できる点が異なる。
【0055】
【実施例8】
図5は請求項8に対応する構成図であり、図11は図5を図7のステージ系に適用した場合の構成例である。
実施例6(図3、図9)において、弾性振動補償器4は剛体振動駆動手段8の出力する剛体振動駆動力指令値80を用いて、可動体に発生する弾性振動を推定し、その弾性振動を抑圧する駆動力指令値40を求めた。本実施例では、剛体振動駆動力指令値80を用いる代わりに、目標加速度指令値91から駆動外力を推定し、制御に用いる。これは、既に説明したように、剛体振動駆動力指令値80を用いた場合には、系の一巡伝達関数が安定性を損なう方向に働くため、場合によっては系を不安定にするからである。剛体振動駆動力指令値80を用いる代わりに、目標加速度指令値91を用いた場合には、系の一巡伝達関数は変化しないため、安定性を損なうことなく、弾性振動を推定し、その弾性振動を抑圧することが可能になる。
【0056】
実施例6で求めた駆動力40はここでは次の(式9)のようにして求めることができる。ここで [Az Aty]は各々剛体振動のZ方向およびY軸周りの回転方向の目標加速度指令91である。またMiは(式1)で定義した行列であり、mは可動体の質量である。
[Fa4 Fb4 Fc4]’ = K7*[−2 1 1]’*[1 1]*Mi*m*[Az Aty]’(式9)
実施例6において、(式6)の代わりに(式9)を用い、(式7)を計算することで系を構成することができる。
【0057】
【実施例9】
図6は請求項9に対応する構成図であり、図12は図6を図7のステージ系に適用した場合の構成例である。
【0058】
実施例7(図4、図10)において、弾性振動補償器4は剛体振動駆動手段8の出力する剛体振動駆動力指令値80を用いて、可動体に発生する弾性振動を推定し、その弾性振動を抑圧する駆動力指令値40および駆動力指令値41を求めた。本実施例では、実施例8と同様に剛体振動駆動力指令値80を用いる代わりに、目標加速度指令値91から駆動外力を推定し、上記の値を求める。
【0059】
駆動力指令値40は(式9)で求める。また、駆動力指令値41は実施例7の(式8)の代わりに、次のように求める。ここで、K8以外の定数、変数は(式9)と同じである。K8はフィードフォワードの効果を調整するパラメータである。
[Ta2 Tb2]’ = K8*[1 1]*Mi*m*[Az Aty]’ (式10)
他の指令値の計算は実施例7と同じである。
本実施例が実施例8と異なるのは、実施例8の系では抑圧できなかった高次の弾性振動まで抑制できる点が異なる。
【0060】
【実施例10】
ここでは本願の構成図2を半導体露光装置のウエハステージに適用した場合の実施例を示す。図16(a)は本願を適用した半導体露光装置の構成概略図である。また、図16(b)はチルトステージの詳細を示す。本実施例のチルトステージは実施例4で説明した平板ステージと、ほぼ同じ構成である。
【0061】
図16(a)において、55はウエハステージ定盤で、床49からダンパ47aを介して支持されている。43はYステージで、ウエハステージ定盤55に固定された固定ガイド42に沿ってY方向に推力を発生するYリニアモータ34により、ウエハステージ定盤55の基準面上をY方向に移動可能である。ウエハステージ定盤55および固定ガイド42とYステージ43との間は静圧軸受であるエアパッド44a、44bを介してエアで結合されており非接触である。Yステージ43はX方向のガイドを備えており、Yステージに搭載されたXステージ45をX方向に案内する。また、Yステージ43にはX方向に力を発生するXリニアモータ固定子が設けられ、Xステージに設けられたXリニアモータ可動子と共に、Xステージ45をX方向に駆動させる。定盤41及びXガイドとXステージ45との間は静圧軸受であるエアパッド44cを介してエアで結合されており、非接触である。
【0062】
Xステージ45にはチルトステージ12が搭載されている。なお、ここでは、ステージ基板(天板)、レーザ干渉計用のミラー、微動用のリニアモータなどを含めた全体をチルトステージ12と呼ぶ。チルトステージ12にはウエハチャックを備えたステージ基板11があり、被露光体であるウエハ13を保持する。また、ステージ基板上にはステージの鏡筒定盤48を基準とした6軸方向の位置計測に用いる計測ミラー72a、2bが設けられる。鏡筒定盤48は床49から支柱46にダンパ47bを介して支持される。鏡筒定盤48側にはレーザ干渉計71が設けられる。図14(a)では、チルトステージのX方向、Z方向位置を計測するレーザ干渉計71a、71cのみ示しているが、チルトステージの6軸剛体位置を計測するため、最低6個のレーザ干渉計が設けられている。また、図には示さないがXステージ、Yステージの位置計測のためにも別途レーザ干渉計が用意されているものとする。本実施例では、チルトステージは6軸微動ステージである。Xステージ、Yステージは粗動ステージとして動作する。すなわちX、Yは精度は高くないが、大きなストロークと移動することが目的であり、チルトステージは可動ストロークは小さいが、高精度な動作を行うことが可能である。
【0063】
図16(b)はチルトステージの詳細を示す。図16(b)の上段、下段は各々チルトステージの側面と裏面である。32a〜32fはチルトステージを駆動するリニアモータである。32e〜32hは水平方向の力を発生し、32a〜32dは垂直方向の力を発生する。チルトステージ12はこれらのリニアモータ32a〜32fによる推力で水平3軸方向(X,Y,Z)の移動と3軸(θx、θy、θz)方向の回転を行い6軸剛体振動を制御する。また、ステージ基板11を曲げるように力を発生する弾性駆動駆動手段2として圧電素子21e〜21hを接続する。また、その駆動用圧電素子21の隣に、曲げ歪を計測する弾性振動計測手段5として圧電素子51e〜51hを接続する。また、対角方向の弾性振動を制御するための弾性振動計測手段として、圧電素子51a〜51dを配置する。
【0064】
X,Yステージの位置決め、および、チルトステージの6軸方向への位置決めは各軸にサーボ系を構成することにより達成される。X、Yステージは、レーザ干渉計の位置情報をもとにステージのX方向、Y方向のアクチュエータであるX方向のリニアモータとY方向のリニアモータへの駆動指令値を演算し、各々Xステージ、Yステージを駆動する。また、チルトステージは剛体6軸方向の位置を制御するため、別途、位置制御系が構成される。チルトステージの位置制御系の構成は実施例4に示したものとほぼ同じである。実施例4では図1の構成を用いたが、本実施例では図2の構成を用いた。図2の構成は図1の構成に弾性振動の駆動手段を付加し、図1の構成では抑制できない弾性振動も抑制する点にある。本実施例では、平板の対角方向の弾性振動の抑制はリニアモータで行い、平板の辺方向の弾性振動は圧電素子を駆動要素として用いる。
【0065】
ステージの位置指令値生成手段9はチルトステージの6軸の目標位置指令90を生成する。この指令値のX、Y成分は、前記のX、Yステージの指令値としても用いられる。目標位置指令90と、レーザ干渉計71により計測されたチルトステージの6軸計測信号70a〜eから剛体振動制御手段8は、剛体振動駆動手段3であるリニアモータ32a〜fへの指令値80を決定する。また、弾性振動制御手段6は、実施例4で説明したように、弾性振動の速度成分をフィードバックすることで天板の弾性振動の減衰性が高めることができる。弾性振動制御手段6は、実施例4の弾性振動制御手段6と同じ動作をする弾性振動制御手段6aと、平板の辺方向の弾性振動を制御する6e〜6hより構成される。弾性振動制御手段6e〜6hは圧電素子51e〜51hにより弾性変形を検出し、実施例5の(式4)のように計測値を微分して適当なゲインを乗じて、圧電素子21e〜21fに入力される。
【0066】
これらの弾性振動を制御する要素の効果により、チルトステージ駆動時の弾性振動が効果的に抑圧できるため、チルトステージの剛体振動を制御する位置制御系は高いサーボ帯域を実現でき、その結果チルトステージの位置制御精度を向上させることができる。
【発明の効果】
以上のように弾性振動を制御することにより、従来方式に比べ、高速かつ高精
【図面の簡単な説明】
【図1】本願の基本構成を示す図である。
【図2】本願の第2の構成を示す図である。
【図3】本願の第3の構成を示す図である。
【図4】本願の第4の構成を示す図である。
【図5】本願の第5の構成を示す図である。
【図6】本願の第6の構成を示す図である。
【図7】実施例1の構成を示す図である。
【図8】実施例5の構成を示す図である。
【図9】実施例6の構成を示す図である。
【図10】実施例7の構成を示す図である。
【図11】実施例8の構成を示す図である。
【図12】実施例9の構成を示す図である。
【図13】梁の弾性振動モードを示す図である。
【図14】平板の弾性振動モードを示す図である。
【図15】実施例4の構成を示す図である。
【図16】実施例10の構成を示す図である。
【符号の説明】1:可動体、ステージ、2:弾性振動駆動手段、20:内力、21、21a〜21d:駆動用圧電素子、22:圧電素子アンプ、25、:25a、25b重力支持ばね、3:駆動手段、30:外力、31、31a〜31f:リニアモータ固定子、32、32a〜32f:リニアモータ可動子、33:リニアモータ・アンプ、4:弾性振動補償器、40:駆動指令値、41:駆動力指令値、5:弾性振動計測手段、50:弾性振動計測値、51、51a〜51d:弾性振動測定用圧電素子、6、6a〜6d :弾性振動制御手段、60:弾性振動駆動力指令値、61:弾性振動駆動力第2指令値、7:剛体振動計測手段、70、70a〜70f:剛体振動測定値、8:剛体振動制御手段、80:駆動力指令値、9:位置指令値生成手段、90:目標位置指令値、91:目標加速力指令値、11:ステージ基板、12:チルトステージ、13:ウエハ、34:Y軸リニアモータ、55:ウエハステージ定盤、42:Y方向ガイド、43:Yステージ、44:エアパッド、45:Xステージ、46:ダンパ、47:ダンパ、48:鏡筒定盤 、49:床、71:レーザ干渉計、72:ミラー。
Claims (10)
- 可動体1と可動体1に外部から力を印加する駆動手段3と、前記可動体1に対する目標位置指令値90を生成する位置指令値生成手段9と、可動体の剛体位置を計測する剛体振動計測手段7と、前記位置指令値生成手段9の生成する可動体の目標位置指令値90と前記剛体振動計測手段7の計測する剛体振動測定値70とから、前記駆動手段3への駆動力指令値80を決定する剛体振動制御手段8と、可動体の弾性振動を計測する弾性振動計測手段5と、前記弾性振動の計測手段の計測する弾性振動計測値50を用いて、弾性振動駆動力指令値60を決定する弾性振動制御手段6を有する可動体の位置制御装置において、前記駆動手段3は前記剛体振動制御手段8の駆動力指令値80と前記弾性振動制御手段6の出力する弾性振動駆動力指令値60を用いて前記可動体1を駆動することを特徴とする可動体の位置制御装置。
- 請求項1において、前記弾性振動制御手段6は弾性振動計測手段5の計測する弾性振動情報のうち少なくても速度情報を用い、さらに位置情報も用いることを特徴とする可動体の位置制御装置。
- 請求項1、請求項2において、可動体1は柔らかいばねに支持されていることを特徴とする可動体の位置制御装置。
- 請求項1から請求項3において、可動体1はほぼ正方形の板であって、前記駆動手段3は正方形の四隅に板の厚み方向に力を発生するように設置されており、これら4つの駆動手段により正方形の板の1次弾性モードである対角モードを抑制することを特徴とする可動体の位置制御装置。
- 請求項1から請求項4において、さらに可動体1に弾性変形を引き起こす弾性振動駆動手段2を付加し、前記弾性振動制御手段6は前記弾性振動計測値50から、前記駆動手段3への弾性振動駆動力指令値60と前記弾性振動駆動手段2への弾性振動駆動力第2指令値61を決定することを特徴とする可動体の位置制御装置。
- 請求項1から請求項4において、さらに弾性振動補償器4を付加し、前記弾性振動補償器4は前記剛体振動制御手段8の駆動力指令値80を入力として、駆動力指令値80により発生する弾性変形を抑制する駆動力指令値40を駆動手段3に指令することを特徴とする可動体の位置制御装置。
- 請求項1から請求項5において、さらに弾性振動補償器4を付加し、前記弾性振動補償器4は前記剛体振動制御手段8の駆動力指令値80を入力として、駆動力指令値80により発生する弾性変形を抑制する駆動力指令値40を駆動手段3および弾性振動駆動手段2に指令することを特徴とする可動体の位置制御装置。
- 請求項5において、さらに弾性振動補償器4を付加し、前記位置指令値生成手段9は生成する目標位置指令値90に対応する目標加速度指令値91を同時に生成し、前記弾性振動補償器4は前記目標加速度指令値91を入力として、駆動力指令値80により発生する弾性変形を抑制する駆動力指令値40を駆動手段3に指令することを特徴とする可動体の位置制御装置。
- 請求項5において、さらに弾性振動補償器4を付加し、前記位置指令値生成手段9は生成する目標位置指令値90に対応する目標加速度指令値91を同時に生成し、前記弾性振動補償器4は前記目標加速度指令値91を入力として、駆動力指令値80により発生する弾性変形を抑制する駆動力指令値40を駆動手段3および弾性振動駆動手段2に指令することを特徴とする可動体の位置制御装置。
- 請求項1から請求項9において、可動体1は半導体露光装置のステージ天板であって、前記駆動手段3はリニアモータであって、剛体振動計測手段7はステージ天板に接続されたミラーとレーザ干渉計であって、弾性振動駆動手段2と弾性振動計測手段5はステージ天板に接続された圧電素子であることを特徴とする半導体露光装置のステージ装置。
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