JP2004162156A - 金属板の洗浄システム - Google Patents

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Shinsaku Kawachi
真作 河内
Masuki Takasu
益樹 高須
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Abstract

【課題】金属板の種類や異物の性状等に対応した濾過機の濾過精度を変更可能にするのとともに、洗浄油を浄化して再利用を計ることができる洗浄システムを得る。
【解決手段】洗浄油Bを、洗浄室、抜き取口14、洗浄油再生装置、および、洗浄機12のそれぞれを通るようにした循環系内を循環させ、洗浄室内を通過するとき、金属板Aに超音波洗浄を施し、引続いて抜き取口14、洗浄油再生装置、および、洗浄機12の入口までの浄化、再生系統を通過するとき、濾過精度を異物のの種類に対応させて循環回数を変更するようにし、最適な異物除去が連続的、かつ、多段階に浄化、処理を行なわせて清澄な洗浄油を再生できるようにして解決を計った。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼板、アルミ板等の金属板の洗浄システムに関するものである。金属板を金型によりプレス成形加工する場合、金属板表面には鉄粉、砂塵、繊維、ほこり、ごみ、油脂等の異物が付着しているため、成形加工前にその表面に洗浄油を吹き付けてその異物を取り除いている。これは、異物が付着したまま成形加工を行うと、異物が金型と金属板の間に挟まり、成形加工後、金属板表面に凹凸を発生させ、製品の品質低下、あるいは不良品の発生を招くため、このような事態を防ぐことを目的に行われるものであり必要不可欠、かつ重要なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、金属板のプレス成形加工、塗装工程等の前処理の一つとして、自動車の車体や、車体の構成部品の素材表面に洗浄油を噴射して洗浄を行い、その表面に付着している異物を取り除くことが知られている(例えば、特許文献1参照)。そして、異物によって汚濁した洗浄室内の洗浄油は、公害防止、製造コストの観点から実用化されている各種液体濾過装置(例えば、特許文献2参照)によりきれいに浄化され再利用が計られている。
【0003】
【特許文献1】
実公平3−56273号公報(第5頁、第1図)
【特許文献1】
特開平5−28613号公報(第4頁、第1図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記洗浄装置は、素材表面に洗浄油を噴射して洗浄を行い金属板を洗浄するだけであるのみならず、洗浄油を浄化、再利用するものではないから、実用上、汚濁した洗浄油を交換するか、あるいは順次、汚濁してくる洗浄油を交換限界まで汚濁下で使用せざるを得ず、その場合、汚濁した洗浄油中に混在している異物が金属板素材の表面に付着して残ってしまう弱点がある。
【0005】
また、汚濁した洗浄油を浄化処理する場合、周知の液体濾過装置は、濾過精度が一定であるため各種様々な異物を処理することが難しい。なんとなれば、濾過精度を下げると微細な異物は除去できないし、濾過精度を上げると、濾過器エレメントが早期に目詰まりを起こすからである。濾過器は、金属板素材により異なる各種様々な異物、その性状、形状により影響をまともに受けるため、濾過能力をワイドにするよう解決を計らなければならない。目詰まりが起こると濾過エレメントは頻繁に交換するか、または逆洗を行わなければならず、メンテナンスのために洗浄システムの運転を停止せざるを得ず、濾過した後でも洗浄油が充分浄化されていないときは、前述のように製品の品質低下、あるいは不良品の発生が懸念される。このように、ランニングコストが嵩ばり、さらには、前記産業廃液問題、使用済み濾過エレメントの産業廃棄物問題を来たすといった諸問題を有している。
【0006】
この発明は、以上述べたような従来の諸問題のうち、ことに洗浄油の浄化、再利用を有効に達成できるようにし、また、濾過機の濾過精度を該金属板の表面に付着する異物の性状、形状に応じて濾過機の濾過精度を変更するようにして、さらには濾過器エレメントの目詰まりを少なくし、交換頻度を下げ、交換時に迫られる運転の中断を解消し、連続的に洗浄油に取り込まれた異物等を完璧に除去することを解消するために、また低コストで運転でき、品質低下、あるいは不良品発生の懸念をなくす確実な洗浄ができる洗浄油再生装置を備えた金属板の洗浄システムを得るために創案されたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述の課題、目的を達成するために、この発明に係る洗浄油再生装置を備えた金属板の洗浄システムは、金属板の移送手段をもつ洗浄室と、該洗浄室内に設置されて金属板に洗浄油を噴射する洗浄機と、該洗浄室の底部に設けた洗浄油を排出する抜取り口と、および、前記抜取り口と洗浄機との間に配設した洗浄油再生装置とから成り、該洗浄油を抜取り口から洗浄油再生装置を経由して洗浄室内の洗浄機へ循環せしめて常時、洗浄油の浄化、ならびに金属板表面の異物除去が同時進行する循環系を形成し、該循環系における洗浄油の循環回数を異物の性状、形状に応じて適宜選択して濾過機の濾過精度を変更するようにして解決を計ろうとするものである。
【0008】
またこの発明には、前記循環回数を、予め定めた時間要素により設定するようにした態様も含まれる。
【0009】
さらにまたこの発明には、マグネットフィルター、サイクロンもしくはサイクロンと組合わされるフィルター等の多段濾過要素から構成し、高い濾過精度を連続的、かつ長時間維持するようにした態様も含まれる。
【0010】
またこの発明には、前記循環系の異常を、循環系内に配置している圧力計によって検出し、この洗浄システムの運転停止、マグネットフィルター、サイクロンもしくはサイクロンと組合わされるフィルター等の濾過要素の逆洗、交換を施す態様も含んでいる。
【0011】
またさらにこの発明には、前記洗浄機の直前にラインミキサーを付設して洗浄油中に多量の気泡を混合し、金属板を超音波果洗浄する態様も含んでいる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下この発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。この発明に係る金属板の洗浄システムは、金属板Aの移送手段11、例えば周知のチェインコンベアをもつ洗浄室と、該洗浄室内に設置されて金属板に洗浄油Bを噴射する洗浄機12と、該洗浄室の底部に設けた洗浄油を排出する抜取り口Bと、および、前記抜取り口と洗浄機との間に配設した洗浄油再生装置とから構成され、それらは導管、開閉弁、ポンプ等により接続されて、洗浄油を抜取り口14から洗浄油再生装置を経由して洗浄室内の洗浄機12へ循環させている。循環は、洗浄油再生装置における濾過機の濾過精度を異物の性状、形状に応じて変更することでき、洗浄油の浄化、ならびに金属板表面の異物除去を同時進行させるものである。
【0013】
洗浄機12にはノズル13が設けられ、洗浄油Bを金属板表面に対して高圧噴射する。洗浄機近傍にはラインミキサーが設けられ、ここを通過する洗浄油に対して多量の空気を混合させ、超音波洗浄が行えるようにしている。超音波洗浄は洗浄効果を格段に高め、実用面で有益となっている。ラインミキサーは、既述のように洗浄油中に多量の空気を混合させるものであるから、混合した気泡が金属板に到達する前に消滅しないよう洗浄機入口との距離を極力短かくして設置しなければならない。
【0014】
洗浄油再生装置は、洗浄室の抜き取口14と洗浄機12との間に配設され、洗浄油Bを循環させる循環系(ループ)を形成する。洗浄機から洗浄室に入った洗浄油は、導管3を経て当該洗浄油再生装置に入り、そのループ内を循環する。洗浄油はその循環中に、金属板Aの表面に付着している異物を洗い流した後、洗浄油再生装置内に導かれて、ここで清澄な洗浄油に自己浄化する。すなわち、異物除去と洗浄油の浄化が連続的に、併せ実行される。
【0015】
前記洗浄油再生装置は、マグネットセパレーター21、内部が堰23、24によって区切られたタンク25、フィルター、もしくはフィルターと組合わされるサイクロン等の濾過機22の分離要素から構成され、前記各機器、洗浄機および洗浄室はそれぞれ導管、開閉弁、洗浄ポンプ26,濾過ポンプ27、珪藻土ポンプ28等によって接続され、異物を含む汚濁した洗浄油を連続的、かつ多段階に浄化し、清澄な洗浄油を得ている。マグネットセパレーターは予備的な濾過を受持って後続の分離要素の運転時間を延長させる目的があるので、それを達成するものであれば他の分離器に代替可能である。
【0016】
マグネットセパレーター21は、周知の磁力を利用したもので、異物を含む汚濁した洗浄油がマグネットセパレーター入口Iからマグネットセパレーター内に入ってくると、その金属屑、金属等の異物は磁力により分離され、マグネットセパレーター出口Jから外部に排出される。異物の相当量はここで分離、除去され、第二段目の分離工程である濾過機22の濾過分離負荷をかなり軽減させる効果を生む。残余の異物を含む洗浄液は出口Jからタンク25に送られ、そののち濾過ポンプ27から濾過機22で高精度の浄化、処理が行われる。
【0017】
この実施例における濾過機22の構成を図1および図4に示す。これは、数ミクロンオーダーの濾過精度に対応したもので、フィルターD、もしくはフィルターと組合わされるサイクロンHを2段階に用いているものである。この濾過機は、洗浄油再生装置の運転開始に先駆けて珪藻土ポンプ28を駆動して珪藻土をコイルスプリングD表面に付着させ、微細な異物をその珪藻土に捕捉させようとするものである。長時間の運転を経て、目詰まりが起こると、前記コイルスプリングDを機械的に若干開いて異物を珪藻土と共に系外に排出させる。この種の周知濾過機を単段で採用すると、早期に目詰まりを起こすが、本発明では、前述のようにマグネットセパレーター、およびフィルターと一体的なサイクロンと組合わせて多段階に処理するようにしているので、その殆どをマグネットセパレーターなどの予備的濾過要素、および、サイクロンで除去してしまう結果、高精度の浄化、処理を行うフィルターの目詰まりを起こす迄の時間を、従来のものの50〜100分の1前後に軽減される効果がある。27は濾過ポンプ、Eは濾過機入口、Fは濾過機出口、Gはブロー管、29は攪拌機である。
【0018】
濾過精度の変更は、予め調べた結果に基づいて設定する。すなわち、図3に示すように、異物Kを電子顕微鏡で観察すると、その形状はさまざまで一定していない。細長い異物は洗浄油の流れ方向ん沿った姿勢で流れるため、異物の長さが例えば2ミクロン、5ミクロンあるとしても、その幅が、例えば0・5ミクロンとか0・8ミクロンのように小さければフィルターエレメントを通過してしまう。製品の品質低下、不良品の発生を防ぐためには、実験的な一例として、異物Kの大きさが鋼板の場合25ミクロン以上、アルミ板の場合10ミクロン以上である目標値を定め、フィルターエレメントを通過してしまった異物をいかにして捕捉するかを確かめなければならない。本発明では、洗浄油が常時、清浄である状態を維持しながら洗浄油の循環回数を増減させることによりフィルターエレメントを通過してしまった異物を捕捉しようとしている。
【0019】
循環回数は、洗浄油の流量、循環時間、異物除去重量に関わるので、予めサンプリングした観察結果によりそれぞれの値を目標値とする。そして、そのいずれかを目標値として使い、濾過精度の変更を行う。目標値設定の一例を次に示すと、濾過ポンプの流量を200L/分、洗浄ポンプの流量を100L/分に定めたときの循環回数を平均2回とし、この条件下でサンプリングした洗浄油の異物(10ミクロン以上)重量は、洗浄前に6700mg/Lあったものが濾過後には23mg/Lに減少しており99.7%の異物Kが除去されている。この結果から循環回数を、鋼板の場合は2、アルミ板の場合は5、といった目標値が定まる。
このように濾過精度の変更は、金属板の種類によって洗浄油の流量、圧力、循環時間を流量計、圧力計P1,P2、タイマー等で所望値を検出させ、その信号により循環回数を表示させたり指示することにより濾過精度の変更を達成させる。
【0020】
前記洗浄油再生装置の運転は、洗浄ポンプ26を駆動して新しい洗浄油B、もしくは浄化処理済みの洗浄油Bをラインミキサー4、洗浄機12を通じて洗浄室内に噴射させることから始める。そののち洗浄油Bは、洗浄室、浄油再生装置を含み循環し始める。異物除去後の汚れた洗浄油は、導管3を経てマグネットセパレーター21に送られ、そこで洗浄油中の異物が第一段目分離として磁力分離され、タンク25に収容される。この洗浄油には微細な汚れが残っているため、濾過ポンプ27を駆動してタンク25から濾過機22へ送給し、そこで第二段目分離として精度の高い濾過が行われる。濾過機で清澄に浄化され洗浄油は洗浄ポンプ26により導管、開閉弁を通って再び洗浄機12に圧送され、浄化された洗浄油として再利用される。
【0021】
ラインミキサー4は圧縮Cから送給される圧縮空気を洗浄油B中に混合させるもので、その詳細を図4に示す。ラインミキサーは洗浄機の入口に接続される出口管41、洗浄油再生装置から洗浄油を受け入れる入口管42、ならびに混合室に空気を導入する空気管43を備えており、その内部には、多孔隔壁45で劃成される混合室44が設けられている。該混合室内にはステンレス切粉、セラミック粒、活性炭のようなポーラス材46が封入され、ここに導かれた洗浄油がポーラス材と激しく衝突して乱流となり、そこに入ってくる空気と攪拌されながらこの混合室を通過する過程で瞬時に大量の気泡が混合される。この気泡を含んだ洗浄油は、洗浄後の金属板表面を超音波洗浄、すすぎ効果を与える。
【0022】
【発明の効果】
この発明は、次のような効果を奏する。
イ.洗浄油を金属板に噴射して洗浄を行うようにし、また汚濁した該洗浄油を洗浄油再生装置に送給、循環させて清澄な洗浄油に浄化するようにし、かつ、濾過機の濾過精度を異物の性状、形状に応じて変更するようにしたので、金属板の種類に対応した最適な異物除去が連続的にできるのと相俟って、洗浄油の浄化、再利用の要求を満足させることができる。
ロ.また、異物の除去を、洗浄油中に圧縮空気を混合して超音波洗浄を行うようにしたので高い洗浄効果を得ることができる。
ハ.さらにまた、汚濁した該洗浄油を多段階に浄化、処理するようにしたので濾過能力を大きく設定することができ、運転停止時間、濾過エレメントの目詰まりを少なくし、交換頻度を下げ、ランニングコストの低下をもたらし、さらには、交換に際して使用済み濾過器エレメントの産業廃棄物問題を極小とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】洗浄システムの概略側面図。
【図2】(a)は濾過器の縦断面図、(b)は(a)のX−X線に沿う概略端面図。
【図3】異物の顕微鏡写真を表す略図
【図4】ラインミキサー概略断面図。
【符号の説明】
…洗浄室
11…移送手段
12…洗浄機
13…ノズル
14…抜き取口
…洗浄油再生装置
21…マグネットセパレーター
22…濾過機
23…
3…導管
…ラインミキサー
A…金属板
B…洗浄油
C…圧縮機
D…コイルスプリング
E…濾過機入口
F…濾過機出口
G…ブロー管
H…サイクロン
I…マグネットセパレーター入口
J…マグネットセパレーター出口
K…異物

Claims (5)

  1. 金属板の移送手段をもつ洗浄室と、該洗浄室内に設置されて金属板に洗浄油を噴射する洗浄機と、該洗浄室の底部に設けた洗浄油を排出する抜取り口と、および、前記抜取り口と洗浄機との間に配設した洗浄油再生装置とから成り、該洗浄油を抜取り口から洗浄油再生装置を経由して洗浄室内の洗浄機へ循環せしめて常時、洗浄油の浄化、ならびに金属板表面の異物除去が同時進行する循環系を形成し、該循環系における洗浄油の循環回数を異物の性状、形状に応じて適宜選択して濾過機の濾過精度を変更するようにしたことを特長とする金属板の洗浄システム。
  2. 前記循環回数を、予め定めた時間要素により設定することを特長とする請求項1記載の金属板の洗浄システム。
  3. 前記洗浄油再生装置は、マグネットセパレーター、サイクロンもしくはサイクロンと組合わされるフィルター等の多段濾過要素から構成し、高い濾過精度を連続的、かつ長時間維持するようにしたことを特長とする請求項1乃至2いづれか1項記載の金属板の洗浄システム。
  4. 前記循環系の異常を、循環系内に配置している圧力計によって検出するようにした請求項1乃至3いづれか1項記載の金属板の洗浄システム。
  5. 前記洗浄機の直前にラインミキサーを付設して洗浄油中に多量の気泡を混合し、金属板を超音波洗浄するようにした請求項1乃至4いづれか1項記載の金属板の洗浄システム。
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