JP2004162149A - 金属試料電解装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】多量の鋼試料を迅速に電解し、鋼中介在物を安定して抽出できることを目的とするものである。
【解決手段】金属試料6、直流電源の負極に接続された陰極1及び直流電源の正極に接続され、金属試料6と接触する陽極3が容器7内に満たされた電解液10に浸され、金属試料6を電解し、金属中含有物を得る金属試料電解装置において、陰極1は高さ方向の断面が格子状に形成され、四角柱状の金属試料6がある間隙をもって収納される格子の目1aを複数有し、陽極3は平板状に形成され、陰極1の下端部と陽極3との間に絶縁台5が介装され、陽極3と各格子の目1aに収納された金属試料6とは接触するように構成されている。
【選択図】 図1
【解決手段】金属試料6、直流電源の負極に接続された陰極1及び直流電源の正極に接続され、金属試料6と接触する陽極3が容器7内に満たされた電解液10に浸され、金属試料6を電解し、金属中含有物を得る金属試料電解装置において、陰極1は高さ方向の断面が格子状に形成され、四角柱状の金属試料6がある間隙をもって収納される格子の目1aを複数有し、陽極3は平板状に形成され、陰極1の下端部と陽極3との間に絶縁台5が介装され、陽極3と各格子の目1aに収納された金属試料6とは接触するように構成されている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する分野】
本発明は、金属中含有物の金属試料電解装置、詳しくは、多量の金属試料を安定かつ迅速に電解でき、微量の含有物を精度よく抽出できる金属試料電解装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
金属中に存在する含有物(析出物・介在物を含む)は、その存在形態、化学組成、粒径および量により、その金属の物性、特に機械的特性に多大な影響を与える。特に、含有物の中でも析出物・介在物と呼ばれる化合物は、一般市販品となっている鋼において、その最終製品の品質特性に多大な影響を及ぼす。
よって、鋼中の析出物・介在物を精度良く抽出し分析することは非常に重要である。近年の鋼の清浄化に伴い鋼中存在率の低い析出物・介在物も分析対象となったため、大量の鋼試料から析出物・介在物を抽出する必要も出てきた。
これら析出物・介在物を金属中より抽出する方法としては、酸溶解法や電解法が知られているが、最も安定に抽出する場合には一般に電解法が用いられている。この電解法は安定に抽出する方法であるが故に、酸溶解法にくらべて抽出速度が遅い問題点がある。
例えば、従来の電解法で、1リットルで約60gの溶解能力を持つ電解液が開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
しかし、かかる電解法では、電解時間の経過に伴い電解液が揮発減量し溶解能力が低下することから、このような大量の鋼試料を電解する場合には迅速な電解を行わなければならない。一般に電解法の抽出速度(電解速度)は供給する電流値に比例するが、むやみに電流値を増加させると電流密度40mA/cm2以上となり介在物・析出物の分解を招いてしまうことになる。
そこで、一般的には介在物、析出物の分解を防ぐために試料の表面積を増加させ電流密度の上昇を抑制する措置が施される。さらに、試料の表面積を増加させるだけでなく、試料表面を均一に電解させるために、試料と陰極を対峙させることが必要とされる。
【0003】
【特許文献1】
特開平6−118050号公報(第3頁、表1)
【0004】
図21は従来の円筒型の金属試料電解装置の構成の概略を示す斜視図である。
図21において、21は円筒状の白金陰極、22は白金陰極21より口径の小さい円筒状の白金陽極、23は白金陽極2内に収容された永久磁石、24は永久磁石23に磁着され、白金陰極21内の中心部に配置されたブロック状の金属試料、25は白金陰極21と白金陽極22に接続された直流電源である。
そして、これら白金陰極21と白金陽極22と金属試料24とが容器(図示省略)内に満たされた電解液に浸され、電解が行われて析出物・介在物を抽出するようにしている。
かかる従来の円筒型の金属試料電解装置により電解される金属試料24は陰極に対峙した部分の面積が大きくも50cm2 のものであり、小試料である。
【0005】
上述した従来の円筒型の金属試料電解装置では、陰極において電解速度を高めるために、供給電流及び表面積を増加させることは可能であるが、金属試料24と白金陰極21を対峙させることができないため電解が均一にならないという問題点があった。
また、陽極については、内部に永久磁石23を含んだ円筒状の白金陽極22によって金属試料24を電解液中に磁着保持しているため、余り大きな金属試料24を保持することは不可能であるという問題点もあった。
さらに、金属試料24がステンレスのような非磁性材料の場合は、磁着保持できないという問題もあった。
また、白金陰極21は円筒状であり、金属試料24はブロック状であるため、金属試料24と白金陰極21との距離を均等にすることは非常に困難であることから、試料の局所的な電解が否めないという問題点もあった。
【0006】
また、図22は従来の平行平板型の金属試料電解装置の構成の概略を示す斜視図である。これは薄型の金属試料24を白金陽極22内に収容された永久磁石23に磁着して吊り下げ、その薄型の金属試料24に板状の白金陰極21を対峙させて構成されている。
かかる従来の平行平板型の金属試料電解装置は、薄型の金属試料24と板状の白金陰極21を対峙させているので、金属試料24の表面を均一に電解させることができるが、金属試料24しか対象とならず、ブロック状の大きな試料には適用できないという問題があった。また、薄型の金属試料24を薄くすると、特に100μmφの大きな介在物が割れる可能性が高くなるという問題点もあった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる問題点を解決し、多量の鋼試料を迅速に電解し、鋼中含有物を安定に抽出できる金属試料電解装置を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本願の請求項1の発明は、金属試料、直流電源の負極に接続された陰極及び直流電源の正極に接続され、金属試料と接触する陽極が容器内に満たされた電解液に浸され、金属試料を電解して金属中含有物を得る金属試料電解装置において、前記陰極は高さ方向の断面が格子状に形成され、四角柱状の金属試料がある間隙をもって収納される格子目を複数有し、前記陽極は平板状に形成され、前記陰極の下端側に対して対向し且つ前記陰極と絶縁を取るのに十分な間隙をもって配置され、前記各格子の目に収納された金属試料とは接触するようにしたものである。
【0009】
本願の請求項2の発明は、前記陰極の下端部と前記陽極との間に耐薬品性を有する絶縁台が介装されているものである。
【0010】
本願の請求項3の発明は、前記絶縁台は平板をくりぬいて前記陰極が載置可能な格子状に形成され、金属試料の下端部を差し込み固定できる格子の目を複数有しているものである。
【0011】
本願の請求項4の発明は、前記格子状の陰極を構成する板に多数の穴を設けたものである。
【0012】
本願の請求項5の発明は、前記陰極の各格子の目に収納された金属試料の上端側に耐薬品性、絶縁性及び弾性を有するループ状の高分子化合物製パッキンが嵌め付けられているものである。
【0013】
本願の請求項6の発明は、前記陰極の複数の格子の目にそれぞれ収納された金属試料の上端側に格子状に形成された絶縁材の複数の格子の目が差し込まれているものである。
【0014】
本願の請求項7の発明は、前記陰極及び前記陽極は白金で形成されているものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1の金属試料電解装置の要部を示す斜視図、図2は同金属試料電解装置の陰極の構成を示す斜視図、図3は同金属試料電解装置の陽極の構成を示す斜視図、図4は同金属試料電解装置の絶縁台の構成を示す斜視図、図5は同金属試料電解装置の組立状態を示す分解斜視図、図6は同金属試料電解装置の使用状態を示す構成図、図7は同金属試料電解装置の陰極の変形例を用いた斜視図である。
図1及び2において、1は高さ方向の断面が格子状に形成され、白金で作られた陰極である。この陰極1の材質は、試料を溶解するための電解液に対し安定であることと導電体であることを満たす必要があり、通常市販されている白金で十分である。
この格子状の陰極1の各格子の目1a内に電解するための細長い四角柱状の例えば鋼試料である金属試料6が設置される。
このとき、全ての金属試料6が陰極1の格子の目1aの内側に接することの無いよう、格子の目1aの横辺xと縦辺yより小さい断面形状に金属試料5を切り出す。さらに、陰極1の各格子の目1aの内側から金属試料6の表面までの距離rを全面で等しく取るため、金属試料6の断面形状は辺の長さがx−rとy−rの矩形にする。
【0016】
2は格子状の陰極1の外側面に接続された負極用配線である。この負極用配線2は電解液に浸される部分は陰極と同じ理由で白金を使用している。この部分の材質も通常市販されている白金で十分である。負極用配線2の配線部と陰極1との接続は溶接等の電解液による腐食に耐え、かつ電気抵抗率の急激な上昇の無い方法にて行う。また、負極用配線2の電解液に接しない部分は、電気抵抗率のより低い材料として市販品の銅線もしくはリード線を用いる。
【0017】
図1及び3において、3は平らな一枚板の白金にて作られた陽極である。この陽極3の材質は、試料を溶解するための電解液に対し安定であることと導電体であることを満たす必要があり、通常市販されている白金で十分である。陽極3を平らな一枚板としたのは、金属試料6及び後述する絶縁台5を安定して設置するためである。
4は一枚板の陽極3の端面に接続された正極用配線である。この正極用配線4は電解液に浸される部分は陽極3と同じ理由で白金を使用している。この部分の材質も通常市販されている白金で十分である。正極用配線4の配線部と陽極3との接続は溶接等の電解液による腐食に耐え、かつ電気抵抗率の急激な上昇の無い方法にて行う。また、正極用配線4の電解液に接しない部分は、電気抵抗率のより低い材料として市販品の銅線もしくはリード線を用いる。
【0018】
図1及び4において、5は耐薬品性と絶縁性がそれぞれ高い必要があることからフッ素樹脂で作られた絶縁台である。
この絶縁台5は図4に示すように、金属試料6の下端部を差し込み固定できるように所定の厚みの平板をくりぬいて格子状に形成され、陰極1の格子の目1aと同じ数の格子の目5aを有している。
また、絶縁台5の格子の目5aを構成する桟5bは格子状の陰極1が安定して載せられるように格子の目1aを構成する格子の厚みに対して十分な幅を持たせて形成されている。
このような格子の目5aと桟5bを有する絶縁台5は、陰極1と陽極3とを確実に絶縁するだけでなく、金属試料6の側面と陰極1との距離rを維持して金属試料6と陰極1とも確実に絶縁する。
【0019】
さらに、電解が進行した場合の、金属試料6の保持の機能も有する。つまり、金属試料6の底部の絶縁台5に覆われた部位は電解されることがないために、電解の進行に伴う金属試料6の傾倒による金属試料6と陰極1の接触や金属試料6と陽極3の絶縁という問題を防ぐのである。
また、抽出された介在物や析出物の堆積による陰極1と陽極3のショートも防ぐことができる。よって、その絶縁台5の適切な厚みは金属試料5の大きさに依存し、金属試料5の断面形状が小さい場合や金属試料5の高さが高い場合には、厚く調整する。
【0020】
次に、本発明の実施の形態1の金属試料電解装置の要部の組立て方を図5を用いて説明する。
まず、平板状の陽極3の上に絶縁台5を載せ、絶縁台5のくりぬかれた各格子の目5aにそれぞれ金属試料6を差し込み、陽極3に接触させつつ立設固定する。こうして金属試料6を全て固定した後、絶縁台5の桟5bの上に格子状の陰極1を載せて金属試料電解装置の要部が組立られる。このとき、陰極1が金属試料6と陽極3と正極用配線4に接触しないことを確認する。
次に、こうして組み立てられ金属試料電解装置の要部を図6に示すように、透明なガラス製の容器7に載置し、容器7内に金属試料6が完全に浸されるように電解液10を満たす。
しかる後に、容器7に蒸発防止のための蓋8をし、蓋8から突出する負極用配線2に直流電源の負極を接続し、蓋8から突出する正極用配線4に直流電源(図示省略)の正極を接続して電解を行い、析出物・介在物を抽出するようにしている。
【0021】
なお、容器7は耐薬品性が高くかつ絶縁性の物質でできているならば特に問わないが、試料の減少量が目視で観察できるようにガラス製のものを用いた。
また、容器7に蓋8をしたのは、電解液10の種類によっては蒸発し液量が減少するので蒸発防止のためである。
さらに、容器7内への電解液10の供給は格子状の陰極1の上部と金属試料5の上部の隙間から供給するのが効率的である。
また、金属試料5の大きさの関係で、容器7内における電解液10の循環が不十分な場合には、例えば、図7に示すように陰極1の四隅に足11を設け、絶縁台5に陰極1の足11が載置されたときに金属試料6の下端を陰極1の下端が覆わないようにして互いに隣接する金属試料6の下端同士の間に隙間12を設け、陰極1の下部からも電解液10の循環が行われるようにしてもよい。
【0022】
本発明の実施の形態1の金属試料電解装置によれば、直流電源の負極に接続された陰極1は高さ方向の断面が格子状に形成され、四角柱状の金属試料6がある間隙をもって収納される格子の目1aを複数有し、直流電源の正極に接続された陽極3は平板状に形成され、陰極1の下端側に対して対向し且つ陰極1と絶縁を取るのに十分な間隙をもって配置され、各格子の目1aに収納された金属試料6とは接触するようにしているので、格子状の陰極1の各格子の目1aに収納された四角柱状の金属試料6の総重量が従来の円筒状の白金陰極内の中心部に配置されたブロック状の金属試料と同重量とした場合に、金属試料が小分けされているために表面積が大幅に増大し、しかもその四角柱状の金属試料6の各表面は格子状の陰極1と対峙していることにより、迅速に安定して電解でき、介在物、析出物等の金属中含有物を安定に抽出することができる。
【0023】
また、格子状の陰極1の下端部と平板状の陽極3との間に耐薬品性を有する絶縁台5が介装されているので、陰極1と陽極3とを絶縁し、ショートすることを確実に防止する。
さらに、絶縁台5は平板をくりぬいて陰極1が載置可能な格子状に形成され、金属試料6の下端部を差し込み固定できる格子の目1aを複数有しているので、金属試料6の側面と陰極1との距離rを維持して金属試料6と陰極1とを確実に絶縁し、さらに電解が進行した場合にも金属試料6の底部の絶縁台5に覆われた部位は電解されることがないために金属試料6の傾倒による金属試料6と陰極1の接触や金属試料6と陽極3の絶縁という問題を防ぐ。
また、陽極3を平板状とし、金属試料6の底面と接触させることにより、ステンレスのような非磁性材料や重量の重い大型の金属試料6の電解も容易となり、また電解の進行に伴う金属試料6と陽極3との絶縁も発生しない。
【0024】
実施の形態2.
図8は本発明の実施の形態2の金属試料電解装置の陰極の実際の形状1を示す斜視図、図9は同金属試料電解装置の陰極の実際の形状2を示す斜視図、図10は同金属試料電解装置の陰極の実際の形状3を示す斜視図、図11は同金属試料電解装置の陰極を構成する実際の陰極板を示す正面図、図12は同金属試料電解装置の陰極を構成する実際の負極用配線が接続された陰極板を示す正面図、図13は同金属試料電解装置の陰極を構成する実際の別の陰極板を示す正面図、図14は同金属試料電解装置の絶縁板の実際の形状1を示す平面図、図15は同金属試料電解装置の絶縁板の実際の形状2を示す平面図、図15は同金属試料電解装置の絶縁板の実際の形状3を示す平面図、図16は同金属試料電解装置の陽極の実際の形状1を示す斜視図、図17は同金属試料電解装置の陽極の実際の形状1を示す斜視図、図18は同金属試料電解装置の陽極の実際の形状2を示す斜視図である。
【0025】
この実施の形態2は格子状の陰極1を最も簡便に作成できる例を示したものである。
図8に示す格子状の陰極1は、金属試料6が縦3×横3の合計9個を同時に電解できる陰極の例である。
このような形状は、図11に示したスリットSの入った陰極板Pを組み合わせることで実現できる。図11において、陰極板Pの高さh、陰極板Pの幅w1、一番端のスリットSにおける2本の距離w2及び間に入るスリットSの本数は、処理したい試料の大きさによって決定する。この陰極板Pの材質は市販の白金である。
同形状の陰極板Pを何枚も作成し、この陰極板PのスリットSに他の陰極板PのスリットSを差し込むことで、図8に示した立体的な格子状の陰極1が作成できる(この場合、外形4枚と内側4枚)。そのため、スリットSは陰極板Pの中心又は中心より少し長くまで入れておけば、十分用をなす。
なお、図12に示すように負極用配線2として白金線を数本を溶接により接続した陰極板Pを、一枚用意してこれを外形側面に使用すれば、金属試料6に接触することなく負極用配線2を設置できる。また、負極用配線2として白金板を用いてもよい。
【0026】
金属試料6の形状によっては必ずしも全てのスリットSを組み合わせる必要はない。例えば、図11の陰極板Pを6枚(外形4枚と内側2枚)で組めば、図9のような大きさの異なった金属試料6を同時に処理できる陰極1が作成できる。
更に、図13に示したスリットSの数が3本の陰極板Pを6枚(外形4枚と内側2枚)組んだ場合には、図10のように金属試料6が縦2×横2となり、断面形状が同じ試料を4本処理できる。
また、図11〜図13に示すいずれの陰極板Pにも、その全面に直径1mm〜10mm位の穴hを設けてある。このように陰極板Pの全面に直径1mm〜10mm位の穴hを設けておくことにより、電解液の循環を改善することができる。
【0027】
次に、格子状の陰極1の格子の目1aの内側に設置される金属試料6の形状について説明する。
実際の試料形状は、金属試料6の側面と陰極1の距離rが1〜3mmとなるように設定した。というのは、1mm未満だと、金属試料6がゆがんでいた場合、陰極1の上部で容易に接触してしまい、試料調整や設置が必要以上に難しくなってしまうからである。一方、3mm以上だと、金属試料6と陰極1の間隔を短くすることによる利点が得られないからである。更に、試料断面積も必要以上に小さくなり、大きめの介在物(直径100μmオーダーの物を想定している)を壊さない状態で抽出するという目的が果たせなくなるからである。
【0028】
また、金属試料6の表面と陰極1との距離rを1mm程度とすることにより、電解液の液抵抗を低下させ、電解液の温度上昇を防ぐことができる。その電解液には例えばメタノールをベースとした低沸点の有機溶媒が用いられており、電解液の温度上昇を最小限とし、電解液の揮発減量を抑制している。
一方、試料高さであるが、これは特に定めなかった。図6の場合に、陰極1の高さhより金属試料6が低くても高くても、本発明の効果を阻害することはないからである。但し、発明者は、金属試料6を無駄にしないこと、試料調製の容易さ、試料取り扱いの簡便さを考慮して、図6にて陰極1の高さhより±1〜2mの試料高さになるように調整していた。
【0029】
さらに、絶縁台5の形状について説明する。
図14は上から見た絶縁台5で、平板をくりぬいて形成され、金属試料6を保持するた格子の目5aと、陰極1が載置される桟5bとからなる。
絶縁台5の外形寸法をa、内径寸法をb、陰極板Pの幅をW1、一番端のスリット2本の距離をW2とすると、陰極1と陽極3を確実に絶縁するためには、a ≧ w1 > w2 > b とする必要がある。また、図14に示す桟5bの点線部5cに陰極1が設置される。
なお、この陰極1の設置を確実にするために、前述の桟5bの点線部5cに陰極1が嵌る例えば0.5〜1mm程度の浅い溝をつけても良い。
この絶縁台5の厚みは発明者が試したところ、金属試料6の試料高さが145mmで、試料断面が11mm×11mmの場合、その厚みは3mm以上であれば試料保持の目的を達することが分かっている。
図14に示す絶縁台5は図8に示す陰極1と組み合わせて使用され、縦3×横3の合計9個の金属試料6を同時に電解処理できる。
【0030】
図15は上から見た絶縁台5で、金属試料6を保持する格子の目5aと、陰極1が載置される桟5bとからなる。
図15に示す絶縁台5は図9に示す陰極1と組み合わせて使用され、形状の異なった金属試料6が4個同時に電解処理できる。
図16は上から見た絶縁台5で、金属試料6を保持する格子の目5aと、陰極1が載置される桟5bとからなる。
図16に示す絶縁台5は図10に示す陰極1と組み合わせて使用され、縦2×横2個の計4個の断面形状が同じの金属試料6が4個同時に電解処理できる。
なお、図15及び図16に示す絶縁台5の外形寸法a、内径寸法bの条件や厚みの条件、陰極設置用の溝の工夫は全て図14に示す絶縁台5の場合と同様である。
【0031】
また更に、図17に陽極3を最も簡便に作成できる例を示している。
この陽極3は平板ではあるが、形状を矩形ではなく凸型にしたものである。
これは、絶縁台5より陽極3を全体として一回り小さくすることで、陰極1との絶縁をより確実にしたものである。具体的には、図17に示すように、陽極3の矩形部分の一辺をc、出っ張り部を含んだ最も長い辺をd、絶縁台5の外径寸法をaとすると、d > a ≧ c > b としたものである。そして、陽極3の凸型の出っ張り部に板状の正極用配線4を溶接により接続している。
なお、図18に示すように出っ張り部の一部を立ち上げ、その立ち上げた部分に数本の白金線を溶接により接続して正極用配線4としても良い。
【0032】
実施の形態3.
図19は本発明の実施の形態3の金属試料電解装置の要部を示す正面図である。
この実施の形態3は金属試料6の試料保持を強化したものである。
通常、金属試料6の試料保持に関しては、絶縁台5の厚みと格子の目5aのくりぬきの大きさを適切に設定しておけば、特に問題はないが、金属試料6の試料断面面積(x−r)×(y−r)が広くとれない場合や試料高さhが高い場合、或いは陰極1と試料表面の距離rが狭い場合は、金属試料6及び陰極1の上部で金属試料6と陰極1の接触が起こることも考えられる。
そこで、このような問題を解決する一つの例が実施の形態3である。
【0033】
この実施の形態3では、図19に示すように、各金属試料6の上部に金属試料6と陰極1の隙間を埋める大きさのループ状の高分子化合物製パッキンであるシリコーンゴム製パッキン13を嵌めている。このシリコーンゴム製パッキン13耐薬品性に優れ絶縁性が高く、弾性を有するものである。
この実施の形態3によれば、各金属試料6の上部にシリコーンゴム製パッキン13を嵌めておけば、電解が進むにつれ、金属試料6は細くなっていくが、絶縁台5とシリコーンゴム製パッキン13にて保護された部位は絶縁されているがために溶解が進まず、電解前の断面を維持する。そのため、電解が進んでも試料保持の機能は落ちない。
このように金属試料6の下部を絶縁台5で保持し、金属試料6の上部をシリコーンゴム製パッキン13で保持していれば、電解途中で金属試料6が折れない限り金属試料6が陰極1と接触してショートする危険は避けられる。
なお、上述の説明では、金属試料6の上部にシリコーンゴム製パッキン13を嵌めているが、金属試料6の複数個所にシリコーンゴム製パッキン13を嵌めるようにしてもよい。また、ループ状のシリコーンゴム製パッキン13は弾性を有するので、ループの形状は角形、円形どちらでもよい。
【0034】
実施の形態4.
図20は本発明の実施の形態4の金属試料電解装置の要部を示す正面図である。
この実施の形態4は実施の形態3の変形例で、同じく金属試料6の試料保持を強化したものである。
この実施の形態4では、図20に示すように、陰極1の複数の格子の目1aにそれぞれ収納された金属試料6の上端側に格子状に形成された絶縁台14の複数の格子の目14aを差し込むようにしたものである。
このように金属試料6の下部を絶縁台5で、金属試料6の上部を絶縁台14で保持していれば、電解途中で金属試料6が折れない限り金属試料6が陰極1と接触してショートする危険は避けられる。
なお、絶縁台14の複数の格子の目14aを構成する桟14bに陰極固定用の浅い溝を設けたものでは、金属試料6だけでなく陰極1もより確実に固定されることとなる。この場合も、絶縁台14に保持された部位は、絶縁されているがため、電解されず電解前の断面を維持し、試料保持部として機能し続ける。
【0035】
【実施例】
実施例1
本発明の金属試料電解装置と従来例の円筒型の金属試料電解装置において、同一の鋼試料を用い、同一の供給電流(10A又は16A)になるような条件下で、無水マレイン酸400gと塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)を300gをメタノール1l(リットル)に溶かしてなる抽出用非水溶媒系電解液を用いてそれぞれ電解による介在物・析出物抽出を行った結果を下記の表1に示す。
なお、電解方式には、定電位電解と定電流電解とがあるが、実施例1では電解方式として定電流電解を採用した。また、鋼試料は角材に切り出されたものを試料表面サンドペーパーで研磨し、メタノール中で超音波洗浄した後、乾燥して秤量したものである。さらに、電解を実施している間中、不活性ガスであるアルゴンガスを抽出用非水溶媒系電解液に通気することにより、該電解液中の溶存酸素量を低減させて電解液の酸化防止を図っている。また、電解量は、金属試料の電解前後の重量変化により算出した。
表1を見ると、従来例では電流密度が高すぎるために介在物・析出物の分解が発生し、抽出量が低い結果になっていることが分かる。
一方、本発明においては、40 mA/ cm2以下の適切な電流密度で電解されているため、安定した抽出が行われていることが分かる。
【0036】
【表1】
【0037】
実施例2
本発明の金属試料電解装置と従来例の円筒型の金属試料電解装置において、同一の鋼試料を用い、同一の電流密度になるような条件下で、無水マレイン酸400gと塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)を30gをメタノール1l(リットル)に溶かしてなる抽出用非水溶媒系電解液を用いてそれぞれ電解による介在物・析出物抽出を行った結果を下記の表2に示す。
なお、この実施例2も電解方式として定電流電解を採用している。また、鋼試料は角材に切り出されたものを試料表面サンドペーパーで研磨し、メタノール中で超音波洗浄した後、乾燥して秤量したものである。さらに、電解を実施している間中、不活性ガスであるアルゴンガスを抽出用非水溶媒系電解液に通気することにより、該電解液中の溶存酸素量を低減させて電解液の酸化防止を図っている。また、電解量は、試料の電解前後の重量変化により算出した。
表2を見ると、従来例では供給電流を上げることができないために所定重量の電解時間が非常に長い結果となっていることが分かる。また、電解時間が長いため電解液が揮発減量し補充が必要となった。
一方、本発明においては、4時間以下の短い電解時間で電解されているため、電解液の補充が不要であることが分かる。
【0038】
【表2】
【0039】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明の請求項1によれば、直流電源の負極に接続された陰極は高さ方向の断面が格子状に形成され、四角柱状の金属試料がある間隙をもって収納される格子目を複数有し、直流電源の正極に接続された陽極は平板状に形成され、前記陰極の下端側に対して対向し且つ前記陰極と絶縁を取るのに十分な間隙をもって配置され、前記各格子の目に収納された金属試料とは接触するようにしているので、格子状の陰極の各格子の目に収納された四角柱状の金属試料の総重量が従来の円筒状の白金陰極内の中心部に配置されたブロック状の金属試料と同重量とした場合に、金属試料が小分けされているために表面積が大幅に増大し、しかもその四角柱状の金属試料の各表面は格子状の陰極を構成する板と対峙していることにより、迅速に安定して電解でき、介在物、析出物等の金属中含有物を安定に抽出することができるという効果がある。
【0040】
本発明の請求項2によれば、格子状の陰極の下端部と平板状の陽極との間に耐薬品性を有する絶縁台が介装されているので、陰極と陽極とを絶縁し、ショートすることを確実に防止できるという効果がある。
【0041】
本発明の請求項3によれば、絶縁台は平板をくりぬいて陰極が載置可能な格子状に形成され、金属試料の下端部を差し込み固定できる格子の目を複数有しているので、金属試料の側面と陰極との距離を維持して金属試料と陰極とを確実に絶縁し、さらに電解が進行した場合にも金属試料の底部の絶縁台に覆われた部位は電解されることがないために金属試料の傾倒による金属試料と陰極の接触や金属試料と陽極の絶縁という問題を防ぐ効果がある。
【0042】
本発明の請求項4によれば、格子状の陰極を構成する板に多数の穴を設けているので、電解液の循環を改善することができるという効果がある。
【0043】
本発明の請求項5によれば、陰極の各格子の目に収納された金属試料の上端側に耐薬品性、絶縁性及び弾性を有するループ状の高分子化合物製パッキンが嵌め付けられているので、金属試料上部が合成樹脂製パッキンで陰極に対して保持され、電解途中で金属試料が折れない限り金属試料が陰極と接触してショートする危険は避けられるという効果がある。
【0044】
本発明の請求項6によれば、陰極の複数の格子の目にそれぞれ収納された金属試料の上端側に格子状に形成された絶縁材の複数の格子の目が差し込まれているので、金属試料上部が絶縁台で陰極に対して保持され、電解途中で金属試料が折れない限り金属試料が陰極と接触してショートする危険は避けられるという効果がある。
【0045】
本発明の請求項7によれば、陰極及び陽極は白金で形成されているので、ステンレスのような非磁性材料や重量の重い大型の金属試料の電解も容易となり、また電解の進行に伴う金属試料と陽極との絶縁も発生しないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1の金属試料電解装置の要部を示す斜視図である。
【図2】同金属試料電解装置の陰極の構成を示す斜視図である。
【図3】同金属試料電解装置の陽極の構成を示す斜視図である。
【図4】同金属試料電解装置の絶縁台の構成を示す斜視図である。
【図5】同金属試料電解装置の組立状態を示す分解斜視図である。
【図6】同金属試料電解装置の使用状態を示す構成図である。
【図7】同金属試料電解装置の陰極の変形例を用いた斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態2の金属試料電解装置の陰極の実際の形状1を示す斜視図である。
【図9】同金属試料電解装置の陰極の実際の形状2を示す斜視図である。
【図10】同金属試料電解装置の陰極の実際の形状3を示す斜視図である。
【図11】同金属試料電解装置の陰極を構成する実際の陰極板を示す正面図である。
【図12】同金属試料電解装置の陰極を構成する実際の負極用配線が接続された陰極板を示す正面図である。
【図13】同金属試料電解装置の陰極を構成する実際の別の陰極板を示す正面図である。
【図14】同金属試料電解装置の絶縁板の実際の形状1を示す平面図である。
【図15】同金属試料電解装置の絶縁板の実際の形状3を示す平面図である。
【図16】同金属試料電解装置の陽極の実際の形状1を示す斜視図である。
【図17】同金属試料電解装置の陽極の実際の形状1を示す斜視図である。
【図18】同金属試料電解装置の陽極の実際の形状2を示す斜視図である。
【図19】本発明の実施の形態3の金属試料電解装置の要部を示す正面図である。
【図20】本発明の実施の形態4の金属試料電解装置の要部を示す正面図である。
【図21】従来の円筒型の金属試料電解装置の構成の概略を示す斜視図である。
【図22】従来の平行平板型の金属試料電解装置の構成の概略を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 陽極、1a 格子の目、2 負極用配線、3 陽極、4 正極用配線、5絶縁台、5a 格子の目、5b 桟、6 金属試料、7 容器、10 電解液。
【発明の属する分野】
本発明は、金属中含有物の金属試料電解装置、詳しくは、多量の金属試料を安定かつ迅速に電解でき、微量の含有物を精度よく抽出できる金属試料電解装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
金属中に存在する含有物(析出物・介在物を含む)は、その存在形態、化学組成、粒径および量により、その金属の物性、特に機械的特性に多大な影響を与える。特に、含有物の中でも析出物・介在物と呼ばれる化合物は、一般市販品となっている鋼において、その最終製品の品質特性に多大な影響を及ぼす。
よって、鋼中の析出物・介在物を精度良く抽出し分析することは非常に重要である。近年の鋼の清浄化に伴い鋼中存在率の低い析出物・介在物も分析対象となったため、大量の鋼試料から析出物・介在物を抽出する必要も出てきた。
これら析出物・介在物を金属中より抽出する方法としては、酸溶解法や電解法が知られているが、最も安定に抽出する場合には一般に電解法が用いられている。この電解法は安定に抽出する方法であるが故に、酸溶解法にくらべて抽出速度が遅い問題点がある。
例えば、従来の電解法で、1リットルで約60gの溶解能力を持つ電解液が開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
しかし、かかる電解法では、電解時間の経過に伴い電解液が揮発減量し溶解能力が低下することから、このような大量の鋼試料を電解する場合には迅速な電解を行わなければならない。一般に電解法の抽出速度(電解速度)は供給する電流値に比例するが、むやみに電流値を増加させると電流密度40mA/cm2以上となり介在物・析出物の分解を招いてしまうことになる。
そこで、一般的には介在物、析出物の分解を防ぐために試料の表面積を増加させ電流密度の上昇を抑制する措置が施される。さらに、試料の表面積を増加させるだけでなく、試料表面を均一に電解させるために、試料と陰極を対峙させることが必要とされる。
【0003】
【特許文献1】
特開平6−118050号公報(第3頁、表1)
【0004】
図21は従来の円筒型の金属試料電解装置の構成の概略を示す斜視図である。
図21において、21は円筒状の白金陰極、22は白金陰極21より口径の小さい円筒状の白金陽極、23は白金陽極2内に収容された永久磁石、24は永久磁石23に磁着され、白金陰極21内の中心部に配置されたブロック状の金属試料、25は白金陰極21と白金陽極22に接続された直流電源である。
そして、これら白金陰極21と白金陽極22と金属試料24とが容器(図示省略)内に満たされた電解液に浸され、電解が行われて析出物・介在物を抽出するようにしている。
かかる従来の円筒型の金属試料電解装置により電解される金属試料24は陰極に対峙した部分の面積が大きくも50cm2 のものであり、小試料である。
【0005】
上述した従来の円筒型の金属試料電解装置では、陰極において電解速度を高めるために、供給電流及び表面積を増加させることは可能であるが、金属試料24と白金陰極21を対峙させることができないため電解が均一にならないという問題点があった。
また、陽極については、内部に永久磁石23を含んだ円筒状の白金陽極22によって金属試料24を電解液中に磁着保持しているため、余り大きな金属試料24を保持することは不可能であるという問題点もあった。
さらに、金属試料24がステンレスのような非磁性材料の場合は、磁着保持できないという問題もあった。
また、白金陰極21は円筒状であり、金属試料24はブロック状であるため、金属試料24と白金陰極21との距離を均等にすることは非常に困難であることから、試料の局所的な電解が否めないという問題点もあった。
【0006】
また、図22は従来の平行平板型の金属試料電解装置の構成の概略を示す斜視図である。これは薄型の金属試料24を白金陽極22内に収容された永久磁石23に磁着して吊り下げ、その薄型の金属試料24に板状の白金陰極21を対峙させて構成されている。
かかる従来の平行平板型の金属試料電解装置は、薄型の金属試料24と板状の白金陰極21を対峙させているので、金属試料24の表面を均一に電解させることができるが、金属試料24しか対象とならず、ブロック状の大きな試料には適用できないという問題があった。また、薄型の金属試料24を薄くすると、特に100μmφの大きな介在物が割れる可能性が高くなるという問題点もあった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる問題点を解決し、多量の鋼試料を迅速に電解し、鋼中含有物を安定に抽出できる金属試料電解装置を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本願の請求項1の発明は、金属試料、直流電源の負極に接続された陰極及び直流電源の正極に接続され、金属試料と接触する陽極が容器内に満たされた電解液に浸され、金属試料を電解して金属中含有物を得る金属試料電解装置において、前記陰極は高さ方向の断面が格子状に形成され、四角柱状の金属試料がある間隙をもって収納される格子目を複数有し、前記陽極は平板状に形成され、前記陰極の下端側に対して対向し且つ前記陰極と絶縁を取るのに十分な間隙をもって配置され、前記各格子の目に収納された金属試料とは接触するようにしたものである。
【0009】
本願の請求項2の発明は、前記陰極の下端部と前記陽極との間に耐薬品性を有する絶縁台が介装されているものである。
【0010】
本願の請求項3の発明は、前記絶縁台は平板をくりぬいて前記陰極が載置可能な格子状に形成され、金属試料の下端部を差し込み固定できる格子の目を複数有しているものである。
【0011】
本願の請求項4の発明は、前記格子状の陰極を構成する板に多数の穴を設けたものである。
【0012】
本願の請求項5の発明は、前記陰極の各格子の目に収納された金属試料の上端側に耐薬品性、絶縁性及び弾性を有するループ状の高分子化合物製パッキンが嵌め付けられているものである。
【0013】
本願の請求項6の発明は、前記陰極の複数の格子の目にそれぞれ収納された金属試料の上端側に格子状に形成された絶縁材の複数の格子の目が差し込まれているものである。
【0014】
本願の請求項7の発明は、前記陰極及び前記陽極は白金で形成されているものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1の金属試料電解装置の要部を示す斜視図、図2は同金属試料電解装置の陰極の構成を示す斜視図、図3は同金属試料電解装置の陽極の構成を示す斜視図、図4は同金属試料電解装置の絶縁台の構成を示す斜視図、図5は同金属試料電解装置の組立状態を示す分解斜視図、図6は同金属試料電解装置の使用状態を示す構成図、図7は同金属試料電解装置の陰極の変形例を用いた斜視図である。
図1及び2において、1は高さ方向の断面が格子状に形成され、白金で作られた陰極である。この陰極1の材質は、試料を溶解するための電解液に対し安定であることと導電体であることを満たす必要があり、通常市販されている白金で十分である。
この格子状の陰極1の各格子の目1a内に電解するための細長い四角柱状の例えば鋼試料である金属試料6が設置される。
このとき、全ての金属試料6が陰極1の格子の目1aの内側に接することの無いよう、格子の目1aの横辺xと縦辺yより小さい断面形状に金属試料5を切り出す。さらに、陰極1の各格子の目1aの内側から金属試料6の表面までの距離rを全面で等しく取るため、金属試料6の断面形状は辺の長さがx−rとy−rの矩形にする。
【0016】
2は格子状の陰極1の外側面に接続された負極用配線である。この負極用配線2は電解液に浸される部分は陰極と同じ理由で白金を使用している。この部分の材質も通常市販されている白金で十分である。負極用配線2の配線部と陰極1との接続は溶接等の電解液による腐食に耐え、かつ電気抵抗率の急激な上昇の無い方法にて行う。また、負極用配線2の電解液に接しない部分は、電気抵抗率のより低い材料として市販品の銅線もしくはリード線を用いる。
【0017】
図1及び3において、3は平らな一枚板の白金にて作られた陽極である。この陽極3の材質は、試料を溶解するための電解液に対し安定であることと導電体であることを満たす必要があり、通常市販されている白金で十分である。陽極3を平らな一枚板としたのは、金属試料6及び後述する絶縁台5を安定して設置するためである。
4は一枚板の陽極3の端面に接続された正極用配線である。この正極用配線4は電解液に浸される部分は陽極3と同じ理由で白金を使用している。この部分の材質も通常市販されている白金で十分である。正極用配線4の配線部と陽極3との接続は溶接等の電解液による腐食に耐え、かつ電気抵抗率の急激な上昇の無い方法にて行う。また、正極用配線4の電解液に接しない部分は、電気抵抗率のより低い材料として市販品の銅線もしくはリード線を用いる。
【0018】
図1及び4において、5は耐薬品性と絶縁性がそれぞれ高い必要があることからフッ素樹脂で作られた絶縁台である。
この絶縁台5は図4に示すように、金属試料6の下端部を差し込み固定できるように所定の厚みの平板をくりぬいて格子状に形成され、陰極1の格子の目1aと同じ数の格子の目5aを有している。
また、絶縁台5の格子の目5aを構成する桟5bは格子状の陰極1が安定して載せられるように格子の目1aを構成する格子の厚みに対して十分な幅を持たせて形成されている。
このような格子の目5aと桟5bを有する絶縁台5は、陰極1と陽極3とを確実に絶縁するだけでなく、金属試料6の側面と陰極1との距離rを維持して金属試料6と陰極1とも確実に絶縁する。
【0019】
さらに、電解が進行した場合の、金属試料6の保持の機能も有する。つまり、金属試料6の底部の絶縁台5に覆われた部位は電解されることがないために、電解の進行に伴う金属試料6の傾倒による金属試料6と陰極1の接触や金属試料6と陽極3の絶縁という問題を防ぐのである。
また、抽出された介在物や析出物の堆積による陰極1と陽極3のショートも防ぐことができる。よって、その絶縁台5の適切な厚みは金属試料5の大きさに依存し、金属試料5の断面形状が小さい場合や金属試料5の高さが高い場合には、厚く調整する。
【0020】
次に、本発明の実施の形態1の金属試料電解装置の要部の組立て方を図5を用いて説明する。
まず、平板状の陽極3の上に絶縁台5を載せ、絶縁台5のくりぬかれた各格子の目5aにそれぞれ金属試料6を差し込み、陽極3に接触させつつ立設固定する。こうして金属試料6を全て固定した後、絶縁台5の桟5bの上に格子状の陰極1を載せて金属試料電解装置の要部が組立られる。このとき、陰極1が金属試料6と陽極3と正極用配線4に接触しないことを確認する。
次に、こうして組み立てられ金属試料電解装置の要部を図6に示すように、透明なガラス製の容器7に載置し、容器7内に金属試料6が完全に浸されるように電解液10を満たす。
しかる後に、容器7に蒸発防止のための蓋8をし、蓋8から突出する負極用配線2に直流電源の負極を接続し、蓋8から突出する正極用配線4に直流電源(図示省略)の正極を接続して電解を行い、析出物・介在物を抽出するようにしている。
【0021】
なお、容器7は耐薬品性が高くかつ絶縁性の物質でできているならば特に問わないが、試料の減少量が目視で観察できるようにガラス製のものを用いた。
また、容器7に蓋8をしたのは、電解液10の種類によっては蒸発し液量が減少するので蒸発防止のためである。
さらに、容器7内への電解液10の供給は格子状の陰極1の上部と金属試料5の上部の隙間から供給するのが効率的である。
また、金属試料5の大きさの関係で、容器7内における電解液10の循環が不十分な場合には、例えば、図7に示すように陰極1の四隅に足11を設け、絶縁台5に陰極1の足11が載置されたときに金属試料6の下端を陰極1の下端が覆わないようにして互いに隣接する金属試料6の下端同士の間に隙間12を設け、陰極1の下部からも電解液10の循環が行われるようにしてもよい。
【0022】
本発明の実施の形態1の金属試料電解装置によれば、直流電源の負極に接続された陰極1は高さ方向の断面が格子状に形成され、四角柱状の金属試料6がある間隙をもって収納される格子の目1aを複数有し、直流電源の正極に接続された陽極3は平板状に形成され、陰極1の下端側に対して対向し且つ陰極1と絶縁を取るのに十分な間隙をもって配置され、各格子の目1aに収納された金属試料6とは接触するようにしているので、格子状の陰極1の各格子の目1aに収納された四角柱状の金属試料6の総重量が従来の円筒状の白金陰極内の中心部に配置されたブロック状の金属試料と同重量とした場合に、金属試料が小分けされているために表面積が大幅に増大し、しかもその四角柱状の金属試料6の各表面は格子状の陰極1と対峙していることにより、迅速に安定して電解でき、介在物、析出物等の金属中含有物を安定に抽出することができる。
【0023】
また、格子状の陰極1の下端部と平板状の陽極3との間に耐薬品性を有する絶縁台5が介装されているので、陰極1と陽極3とを絶縁し、ショートすることを確実に防止する。
さらに、絶縁台5は平板をくりぬいて陰極1が載置可能な格子状に形成され、金属試料6の下端部を差し込み固定できる格子の目1aを複数有しているので、金属試料6の側面と陰極1との距離rを維持して金属試料6と陰極1とを確実に絶縁し、さらに電解が進行した場合にも金属試料6の底部の絶縁台5に覆われた部位は電解されることがないために金属試料6の傾倒による金属試料6と陰極1の接触や金属試料6と陽極3の絶縁という問題を防ぐ。
また、陽極3を平板状とし、金属試料6の底面と接触させることにより、ステンレスのような非磁性材料や重量の重い大型の金属試料6の電解も容易となり、また電解の進行に伴う金属試料6と陽極3との絶縁も発生しない。
【0024】
実施の形態2.
図8は本発明の実施の形態2の金属試料電解装置の陰極の実際の形状1を示す斜視図、図9は同金属試料電解装置の陰極の実際の形状2を示す斜視図、図10は同金属試料電解装置の陰極の実際の形状3を示す斜視図、図11は同金属試料電解装置の陰極を構成する実際の陰極板を示す正面図、図12は同金属試料電解装置の陰極を構成する実際の負極用配線が接続された陰極板を示す正面図、図13は同金属試料電解装置の陰極を構成する実際の別の陰極板を示す正面図、図14は同金属試料電解装置の絶縁板の実際の形状1を示す平面図、図15は同金属試料電解装置の絶縁板の実際の形状2を示す平面図、図15は同金属試料電解装置の絶縁板の実際の形状3を示す平面図、図16は同金属試料電解装置の陽極の実際の形状1を示す斜視図、図17は同金属試料電解装置の陽極の実際の形状1を示す斜視図、図18は同金属試料電解装置の陽極の実際の形状2を示す斜視図である。
【0025】
この実施の形態2は格子状の陰極1を最も簡便に作成できる例を示したものである。
図8に示す格子状の陰極1は、金属試料6が縦3×横3の合計9個を同時に電解できる陰極の例である。
このような形状は、図11に示したスリットSの入った陰極板Pを組み合わせることで実現できる。図11において、陰極板Pの高さh、陰極板Pの幅w1、一番端のスリットSにおける2本の距離w2及び間に入るスリットSの本数は、処理したい試料の大きさによって決定する。この陰極板Pの材質は市販の白金である。
同形状の陰極板Pを何枚も作成し、この陰極板PのスリットSに他の陰極板PのスリットSを差し込むことで、図8に示した立体的な格子状の陰極1が作成できる(この場合、外形4枚と内側4枚)。そのため、スリットSは陰極板Pの中心又は中心より少し長くまで入れておけば、十分用をなす。
なお、図12に示すように負極用配線2として白金線を数本を溶接により接続した陰極板Pを、一枚用意してこれを外形側面に使用すれば、金属試料6に接触することなく負極用配線2を設置できる。また、負極用配線2として白金板を用いてもよい。
【0026】
金属試料6の形状によっては必ずしも全てのスリットSを組み合わせる必要はない。例えば、図11の陰極板Pを6枚(外形4枚と内側2枚)で組めば、図9のような大きさの異なった金属試料6を同時に処理できる陰極1が作成できる。
更に、図13に示したスリットSの数が3本の陰極板Pを6枚(外形4枚と内側2枚)組んだ場合には、図10のように金属試料6が縦2×横2となり、断面形状が同じ試料を4本処理できる。
また、図11〜図13に示すいずれの陰極板Pにも、その全面に直径1mm〜10mm位の穴hを設けてある。このように陰極板Pの全面に直径1mm〜10mm位の穴hを設けておくことにより、電解液の循環を改善することができる。
【0027】
次に、格子状の陰極1の格子の目1aの内側に設置される金属試料6の形状について説明する。
実際の試料形状は、金属試料6の側面と陰極1の距離rが1〜3mmとなるように設定した。というのは、1mm未満だと、金属試料6がゆがんでいた場合、陰極1の上部で容易に接触してしまい、試料調整や設置が必要以上に難しくなってしまうからである。一方、3mm以上だと、金属試料6と陰極1の間隔を短くすることによる利点が得られないからである。更に、試料断面積も必要以上に小さくなり、大きめの介在物(直径100μmオーダーの物を想定している)を壊さない状態で抽出するという目的が果たせなくなるからである。
【0028】
また、金属試料6の表面と陰極1との距離rを1mm程度とすることにより、電解液の液抵抗を低下させ、電解液の温度上昇を防ぐことができる。その電解液には例えばメタノールをベースとした低沸点の有機溶媒が用いられており、電解液の温度上昇を最小限とし、電解液の揮発減量を抑制している。
一方、試料高さであるが、これは特に定めなかった。図6の場合に、陰極1の高さhより金属試料6が低くても高くても、本発明の効果を阻害することはないからである。但し、発明者は、金属試料6を無駄にしないこと、試料調製の容易さ、試料取り扱いの簡便さを考慮して、図6にて陰極1の高さhより±1〜2mの試料高さになるように調整していた。
【0029】
さらに、絶縁台5の形状について説明する。
図14は上から見た絶縁台5で、平板をくりぬいて形成され、金属試料6を保持するた格子の目5aと、陰極1が載置される桟5bとからなる。
絶縁台5の外形寸法をa、内径寸法をb、陰極板Pの幅をW1、一番端のスリット2本の距離をW2とすると、陰極1と陽極3を確実に絶縁するためには、a ≧ w1 > w2 > b とする必要がある。また、図14に示す桟5bの点線部5cに陰極1が設置される。
なお、この陰極1の設置を確実にするために、前述の桟5bの点線部5cに陰極1が嵌る例えば0.5〜1mm程度の浅い溝をつけても良い。
この絶縁台5の厚みは発明者が試したところ、金属試料6の試料高さが145mmで、試料断面が11mm×11mmの場合、その厚みは3mm以上であれば試料保持の目的を達することが分かっている。
図14に示す絶縁台5は図8に示す陰極1と組み合わせて使用され、縦3×横3の合計9個の金属試料6を同時に電解処理できる。
【0030】
図15は上から見た絶縁台5で、金属試料6を保持する格子の目5aと、陰極1が載置される桟5bとからなる。
図15に示す絶縁台5は図9に示す陰極1と組み合わせて使用され、形状の異なった金属試料6が4個同時に電解処理できる。
図16は上から見た絶縁台5で、金属試料6を保持する格子の目5aと、陰極1が載置される桟5bとからなる。
図16に示す絶縁台5は図10に示す陰極1と組み合わせて使用され、縦2×横2個の計4個の断面形状が同じの金属試料6が4個同時に電解処理できる。
なお、図15及び図16に示す絶縁台5の外形寸法a、内径寸法bの条件や厚みの条件、陰極設置用の溝の工夫は全て図14に示す絶縁台5の場合と同様である。
【0031】
また更に、図17に陽極3を最も簡便に作成できる例を示している。
この陽極3は平板ではあるが、形状を矩形ではなく凸型にしたものである。
これは、絶縁台5より陽極3を全体として一回り小さくすることで、陰極1との絶縁をより確実にしたものである。具体的には、図17に示すように、陽極3の矩形部分の一辺をc、出っ張り部を含んだ最も長い辺をd、絶縁台5の外径寸法をaとすると、d > a ≧ c > b としたものである。そして、陽極3の凸型の出っ張り部に板状の正極用配線4を溶接により接続している。
なお、図18に示すように出っ張り部の一部を立ち上げ、その立ち上げた部分に数本の白金線を溶接により接続して正極用配線4としても良い。
【0032】
実施の形態3.
図19は本発明の実施の形態3の金属試料電解装置の要部を示す正面図である。
この実施の形態3は金属試料6の試料保持を強化したものである。
通常、金属試料6の試料保持に関しては、絶縁台5の厚みと格子の目5aのくりぬきの大きさを適切に設定しておけば、特に問題はないが、金属試料6の試料断面面積(x−r)×(y−r)が広くとれない場合や試料高さhが高い場合、或いは陰極1と試料表面の距離rが狭い場合は、金属試料6及び陰極1の上部で金属試料6と陰極1の接触が起こることも考えられる。
そこで、このような問題を解決する一つの例が実施の形態3である。
【0033】
この実施の形態3では、図19に示すように、各金属試料6の上部に金属試料6と陰極1の隙間を埋める大きさのループ状の高分子化合物製パッキンであるシリコーンゴム製パッキン13を嵌めている。このシリコーンゴム製パッキン13耐薬品性に優れ絶縁性が高く、弾性を有するものである。
この実施の形態3によれば、各金属試料6の上部にシリコーンゴム製パッキン13を嵌めておけば、電解が進むにつれ、金属試料6は細くなっていくが、絶縁台5とシリコーンゴム製パッキン13にて保護された部位は絶縁されているがために溶解が進まず、電解前の断面を維持する。そのため、電解が進んでも試料保持の機能は落ちない。
このように金属試料6の下部を絶縁台5で保持し、金属試料6の上部をシリコーンゴム製パッキン13で保持していれば、電解途中で金属試料6が折れない限り金属試料6が陰極1と接触してショートする危険は避けられる。
なお、上述の説明では、金属試料6の上部にシリコーンゴム製パッキン13を嵌めているが、金属試料6の複数個所にシリコーンゴム製パッキン13を嵌めるようにしてもよい。また、ループ状のシリコーンゴム製パッキン13は弾性を有するので、ループの形状は角形、円形どちらでもよい。
【0034】
実施の形態4.
図20は本発明の実施の形態4の金属試料電解装置の要部を示す正面図である。
この実施の形態4は実施の形態3の変形例で、同じく金属試料6の試料保持を強化したものである。
この実施の形態4では、図20に示すように、陰極1の複数の格子の目1aにそれぞれ収納された金属試料6の上端側に格子状に形成された絶縁台14の複数の格子の目14aを差し込むようにしたものである。
このように金属試料6の下部を絶縁台5で、金属試料6の上部を絶縁台14で保持していれば、電解途中で金属試料6が折れない限り金属試料6が陰極1と接触してショートする危険は避けられる。
なお、絶縁台14の複数の格子の目14aを構成する桟14bに陰極固定用の浅い溝を設けたものでは、金属試料6だけでなく陰極1もより確実に固定されることとなる。この場合も、絶縁台14に保持された部位は、絶縁されているがため、電解されず電解前の断面を維持し、試料保持部として機能し続ける。
【0035】
【実施例】
実施例1
本発明の金属試料電解装置と従来例の円筒型の金属試料電解装置において、同一の鋼試料を用い、同一の供給電流(10A又は16A)になるような条件下で、無水マレイン酸400gと塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)を300gをメタノール1l(リットル)に溶かしてなる抽出用非水溶媒系電解液を用いてそれぞれ電解による介在物・析出物抽出を行った結果を下記の表1に示す。
なお、電解方式には、定電位電解と定電流電解とがあるが、実施例1では電解方式として定電流電解を採用した。また、鋼試料は角材に切り出されたものを試料表面サンドペーパーで研磨し、メタノール中で超音波洗浄した後、乾燥して秤量したものである。さらに、電解を実施している間中、不活性ガスであるアルゴンガスを抽出用非水溶媒系電解液に通気することにより、該電解液中の溶存酸素量を低減させて電解液の酸化防止を図っている。また、電解量は、金属試料の電解前後の重量変化により算出した。
表1を見ると、従来例では電流密度が高すぎるために介在物・析出物の分解が発生し、抽出量が低い結果になっていることが分かる。
一方、本発明においては、40 mA/ cm2以下の適切な電流密度で電解されているため、安定した抽出が行われていることが分かる。
【0036】
【表1】
【0037】
実施例2
本発明の金属試料電解装置と従来例の円筒型の金属試料電解装置において、同一の鋼試料を用い、同一の電流密度になるような条件下で、無水マレイン酸400gと塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)を30gをメタノール1l(リットル)に溶かしてなる抽出用非水溶媒系電解液を用いてそれぞれ電解による介在物・析出物抽出を行った結果を下記の表2に示す。
なお、この実施例2も電解方式として定電流電解を採用している。また、鋼試料は角材に切り出されたものを試料表面サンドペーパーで研磨し、メタノール中で超音波洗浄した後、乾燥して秤量したものである。さらに、電解を実施している間中、不活性ガスであるアルゴンガスを抽出用非水溶媒系電解液に通気することにより、該電解液中の溶存酸素量を低減させて電解液の酸化防止を図っている。また、電解量は、試料の電解前後の重量変化により算出した。
表2を見ると、従来例では供給電流を上げることができないために所定重量の電解時間が非常に長い結果となっていることが分かる。また、電解時間が長いため電解液が揮発減量し補充が必要となった。
一方、本発明においては、4時間以下の短い電解時間で電解されているため、電解液の補充が不要であることが分かる。
【0038】
【表2】
【0039】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明の請求項1によれば、直流電源の負極に接続された陰極は高さ方向の断面が格子状に形成され、四角柱状の金属試料がある間隙をもって収納される格子目を複数有し、直流電源の正極に接続された陽極は平板状に形成され、前記陰極の下端側に対して対向し且つ前記陰極と絶縁を取るのに十分な間隙をもって配置され、前記各格子の目に収納された金属試料とは接触するようにしているので、格子状の陰極の各格子の目に収納された四角柱状の金属試料の総重量が従来の円筒状の白金陰極内の中心部に配置されたブロック状の金属試料と同重量とした場合に、金属試料が小分けされているために表面積が大幅に増大し、しかもその四角柱状の金属試料の各表面は格子状の陰極を構成する板と対峙していることにより、迅速に安定して電解でき、介在物、析出物等の金属中含有物を安定に抽出することができるという効果がある。
【0040】
本発明の請求項2によれば、格子状の陰極の下端部と平板状の陽極との間に耐薬品性を有する絶縁台が介装されているので、陰極と陽極とを絶縁し、ショートすることを確実に防止できるという効果がある。
【0041】
本発明の請求項3によれば、絶縁台は平板をくりぬいて陰極が載置可能な格子状に形成され、金属試料の下端部を差し込み固定できる格子の目を複数有しているので、金属試料の側面と陰極との距離を維持して金属試料と陰極とを確実に絶縁し、さらに電解が進行した場合にも金属試料の底部の絶縁台に覆われた部位は電解されることがないために金属試料の傾倒による金属試料と陰極の接触や金属試料と陽極の絶縁という問題を防ぐ効果がある。
【0042】
本発明の請求項4によれば、格子状の陰極を構成する板に多数の穴を設けているので、電解液の循環を改善することができるという効果がある。
【0043】
本発明の請求項5によれば、陰極の各格子の目に収納された金属試料の上端側に耐薬品性、絶縁性及び弾性を有するループ状の高分子化合物製パッキンが嵌め付けられているので、金属試料上部が合成樹脂製パッキンで陰極に対して保持され、電解途中で金属試料が折れない限り金属試料が陰極と接触してショートする危険は避けられるという効果がある。
【0044】
本発明の請求項6によれば、陰極の複数の格子の目にそれぞれ収納された金属試料の上端側に格子状に形成された絶縁材の複数の格子の目が差し込まれているので、金属試料上部が絶縁台で陰極に対して保持され、電解途中で金属試料が折れない限り金属試料が陰極と接触してショートする危険は避けられるという効果がある。
【0045】
本発明の請求項7によれば、陰極及び陽極は白金で形成されているので、ステンレスのような非磁性材料や重量の重い大型の金属試料の電解も容易となり、また電解の進行に伴う金属試料と陽極との絶縁も発生しないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1の金属試料電解装置の要部を示す斜視図である。
【図2】同金属試料電解装置の陰極の構成を示す斜視図である。
【図3】同金属試料電解装置の陽極の構成を示す斜視図である。
【図4】同金属試料電解装置の絶縁台の構成を示す斜視図である。
【図5】同金属試料電解装置の組立状態を示す分解斜視図である。
【図6】同金属試料電解装置の使用状態を示す構成図である。
【図7】同金属試料電解装置の陰極の変形例を用いた斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態2の金属試料電解装置の陰極の実際の形状1を示す斜視図である。
【図9】同金属試料電解装置の陰極の実際の形状2を示す斜視図である。
【図10】同金属試料電解装置の陰極の実際の形状3を示す斜視図である。
【図11】同金属試料電解装置の陰極を構成する実際の陰極板を示す正面図である。
【図12】同金属試料電解装置の陰極を構成する実際の負極用配線が接続された陰極板を示す正面図である。
【図13】同金属試料電解装置の陰極を構成する実際の別の陰極板を示す正面図である。
【図14】同金属試料電解装置の絶縁板の実際の形状1を示す平面図である。
【図15】同金属試料電解装置の絶縁板の実際の形状3を示す平面図である。
【図16】同金属試料電解装置の陽極の実際の形状1を示す斜視図である。
【図17】同金属試料電解装置の陽極の実際の形状1を示す斜視図である。
【図18】同金属試料電解装置の陽極の実際の形状2を示す斜視図である。
【図19】本発明の実施の形態3の金属試料電解装置の要部を示す正面図である。
【図20】本発明の実施の形態4の金属試料電解装置の要部を示す正面図である。
【図21】従来の円筒型の金属試料電解装置の構成の概略を示す斜視図である。
【図22】従来の平行平板型の金属試料電解装置の構成の概略を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 陽極、1a 格子の目、2 負極用配線、3 陽極、4 正極用配線、5絶縁台、5a 格子の目、5b 桟、6 金属試料、7 容器、10 電解液。
Claims (7)
- 金属試料、直流電源の負極に接続された陰極及び直流電源の正極に接続され、金属試料と接触する陽極が容器内に満たされた電解液に浸され、金属試料を電解して金属中含有物を得る金属試料電解装置において、
前記陰極は高さ方向の断面が格子状に形成され、四角柱状の金属試料がある間隙をもって収納される格子目を複数有し、
前記陽極は平板状に形成され、前記陰極の下端側に対して対向し且つ前記陰極と絶縁を取るのに十分な間隙をもって配置され、前記各格子の目に収納された金属試料とは接触することを特徴とする金属試料電解装置。 - 前記陰極の下端部と前記陽極との間に耐薬品性を有する絶縁台が介装されていることを特徴とする請求項1記載の金属試料電解装置。
- 前記絶縁台は平板をくりぬいて前記陰極が載置可能な格子状に形成され、金属試料の下端部を差し込み固定できる格子の目を複数有していることを特徴とする請求項1記載の金属試料電解装置。
- 前記格子状の陰極を構成する板に多数の穴を設けたことを特徴とする請求項1記載の金属試料電解装置。
- 前記陰極の各格子の目に収納された金属試料の上端側に耐薬品性、絶縁性及び弾性を有するループ状の高分子化合物製パッキンが嵌め付けられていることを特徴とする請求項1記載の金属試料電解装置。
- 前記陰極の複数の格子の目にそれぞれ収納された金属試料の上端側に格子状に形成された絶縁材の複数の格子の目が差し込まれていることを特徴とする請求項1記載の金属試料電解装置。
- 前記陰極及び前記陽極は白金で形成されていることを特徴とする請求項1記載の金属試料電解装置。
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