JP2004161718A - タキキニン拮抗剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】有機合成系のタキキニン受容体拮抗剤の呈する副作用などを発現しない安全性の高いタキキニン拮抗剤を提供する。
【解決手段】ユリ科植物の根茎である山帰来、バッカツ、土茯苓から選ばれる1種若しくは2種以上の植物の抽出物を有効成分とするタキキニン拮抗剤。
【効果】本発明抽出物は、タキキニン拮抗作用を有するため、各種のタキキニン関連疾患に対する治療・予防剤、例えば、抗精神病薬、抗鬱薬、抗不安薬、制吐薬として有用である。また、本発明化合物は食用あるいは生薬的に古くから利用されているユリ科植物を起源とするものであるから、安全性・副作用の面で優れた性質を有することが期待できる。
【解決手段】ユリ科植物の根茎である山帰来、バッカツ、土茯苓から選ばれる1種若しくは2種以上の植物の抽出物を有効成分とするタキキニン拮抗剤。
【効果】本発明抽出物は、タキキニン拮抗作用を有するため、各種のタキキニン関連疾患に対する治療・予防剤、例えば、抗精神病薬、抗鬱薬、抗不安薬、制吐薬として有用である。また、本発明化合物は食用あるいは生薬的に古くから利用されているユリ科植物を起源とするものであるから、安全性・副作用の面で優れた性質を有することが期待できる。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ユリ科植物の抽出物を有効成分として含有する向精神薬、制吐薬等として有用なタキキニン拮抗剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
タキキニンは、類似の構造をもつ一群のペプチドの総称であり、哺乳類ではサブスタンスP(SP)、ニューロキニンA(NKA)及びニューロキニンB(NKB)が代表的なものである。それらは生体に広く分布する神経ペプチドであるが、その生理的機能が最も詳しく研究されているものがサブスタンスPである。サブスタンスPは降圧作用、平滑筋収縮作用、唾液分泌促進作用、ニューロン興奮作用、疼痛反応誘発作用等を示す11個のアミノ酸からなるペプチドである。
【0003】
このサブスタンスPは、消化器系疾患、神経系疾患、呼吸器系疾患など種々の疾患に関係していることが知られており、特に炎症、アレルギー、カルチノイド症候群、慢性疼痛、頭痛、クローン病、鬱病、嘔吐等に深く関与していると考えられている。従って、タキキニンに拮抗剤が対象とし得る適応症は多岐にわたり、抗炎症薬、アレルギー疾患用薬、鎮痛薬、制吐薬、過敏腸症候群用薬、皮膚疾患用薬、血管痙攣性疾患用薬、脳性虚血疾患用薬、抗鬱薬、抗不安薬、自己免疫疾患用薬、筋弛緩薬、鎮痙薬等を挙げることができる。これらタキキニンの関与する疾患の治療薬を開発する目的で種々のタキキニン拮抗剤が開発され、報告されている。例えば、Kramer MSらの文献(非特許文献1)には抗鬱薬、抗不安薬として、また、Gesztesi ZSらの文献(非特許文献2)には制吐薬としての臨床試験例が記載されており、いずれもタキキニン拮抗剤が不安症、鬱病、精神病、精神分裂病、嘔吐等の各疾患に有効であることが示されている。
【0004】
これまで、いくつかのタキキニン受容体拮抗剤が報告されているが、1980年代に報告されたものは大部分が哺乳類の内因性タキキニン類を構成するアミノ酸の一部をD−アミノ酸などで置換する誘導化によって開発されたものである。これらはペプチド類であるため、良好な薬物動態学的性質が得られずインビボにおける活性発現には限界があり、また人に対する抗原性やアゴニスト作用による副作用に問題があった。また開発中の非ペプチド型タキキニン受容体拮抗剤においても、例えばカルシウム拮抗作用やNaチャンネルに対する抑制作用などの副作用が懸念されており、安全性が高く且つ満足な効果を有するものは少なく、医薬品として市販されるに至ったものはない。
【0005】
本発明薬剤の有効成分は、サルトリイバラSmilax china L.や土茯苓Smilax glabra Roxb.等のユリ科植物の根茎からの抽出物であり、古くから生薬として知られている。サルトリイバラの根茎は日本薬局方では「サンキライ(山帰来)」として、慢性皮膚疾患の排膿・解毒あるいは体質改善の目的で配合剤に用いられることが記載されている(非特許文献3)。また、土茯苓抽出物が免疫抑制剤として有用であること(特許文献1)、サルトリイバラ抽出物が呼吸器系疾患治療薬として有用であること(特許文献2)などが先行文献に開示されているが、タキキニン拮抗剤として有用である旨の報告はない。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−154151号公報
【特許文献2】
再公表特許WO98/52588号公報
【非特許文献1】
Kramer MS等著、「Science」 1998年、281巻、1640−1645頁
【非特許文献2】
Gesztesi ZS等著、「Anesthesiology」 2000年10月、93巻4号、931−937頁
【非特許文献3】
「第十四改正 日本薬局方解説書」、廣川書店発行、2001年、D−456乃至D−459頁
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は優れたタキキニン拮抗作用を有し、かつ上述した有機合成系のタキキニン受容体拮抗剤の呈する副作用などを発現しない安全性の高いタキキニン拮抗剤を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはサルトリイバラSmilax china L.や土茯苓Smilax glabra Roxb.等のユリ科植物の根茎の抽出物について鋭意研究を行った結果、これら抽出物がタキキニン拮抗作用を有することを見い出し、本発明を完成させた。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明タキキニン拮抗剤の有効成分であるユリ科植物抽出物は、サルトリイバラSmilax china L.や土茯苓Smilax glabra Roxb.等のユリ科植物の根茎から抽出することによって得ることができる。サルトリイバラの根茎は山帰来(サンキライ)、バッカツ、土茯苓と称され、日本薬局方では「サンキライ」として載っている。また、土茯苓(ドブクリョウ)を原植物とし、その塊根状の根茎を土茯苓なる生薬とする文献もある。これらサルトリイバラや土茯苓の塊茎の1種若しくは2種以上を細切し或いは粉末化し、水や有機溶媒等の適当な抽出溶媒で抽出して得ることができる。抽出溶媒としてはメタノール、エタノール等のアルコール類などの極性溶媒が好ましいが、酢酸エチル等の非極性溶媒を使用することも有効である。また、水で抽出するときには、適宜加熱すると効率よく抽出することができる。
【0010】
以下に本発明の好ましい態様を示す。
(1)ユリ科植物の根茎の抽出物を有効成分とするタキキニン拮抗剤。
(2)ユリ科植物が山帰来、バッカツ、土茯苓から選ばれる1種若しくは2種以上の植物である上記(1)記載のタキキニン拮抗剤。
(3)向精神薬である上記(1)又は(2)記載のタキキニン拮抗剤。
(4)制吐薬である上記(1)又は(2)記載のタキキニン拮抗剤。
(5)向精神薬が抗精神病薬である上記(3)記載のタキキニン拮抗剤。
(6)向精神薬が抗不安薬である上記(3)記載のタキキニン拮抗剤。
(7)向精神薬が抗鬱薬である上記(3)記載のタキキニン拮抗剤。
(8)過剰のタキキニンが関与する生理的障害の治療または予防に使用するた上記(1)乃至(7)のいずれか1つに記載の抽出物を有効成分とする医薬組成物。
(9)不安症、鬱病、精神病、精神分裂病及び嘔吐からなる群から選ばれる疾患の治療薬である上記(8)に記載の医薬組成物。
(10)ユリ科抽出物が水、アルコール又はそれら混合液による抽出物である上記(1)又は(2)記載のタキキニン拮抗剤。
(11)水による抽出物である上記(10)記載のタキキニン拮抗剤。
(12)メタノール又はエタノールによる抽出物である上記(10)記載のタキキニン拮抗剤。
【0011】
本発明ユリ科植物抽出物は、適当な医薬用の担体若しくは希釈剤と組み合わせて医薬とすることができ、通常の如何なる方法によっても製剤化でき、経口又は非経口投与するための固体、半固体、液体又は気体の剤形に処方することができる。処方にあたっては、本発明化合物をその薬学的に許容しうる塩の形で用いてもよく、又、他の医薬活性成分との配合剤としてもよい。
【0012】
経口投与製剤としては、そのまま或いは適当な添加剤、例えば乳糖、マンニット、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン等の慣用の賦形剤と共に、結晶セルロース、セルロース誘導体、アラビアゴム、トウモロコシデンプン、ゼラチン等の結合剤、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、カルボキシメチルセルロースカリウム等の崩壊剤、タルク、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤、その他増量剤、湿潤化剤、緩衝剤、保存剤、香料等を適宜組み合わせて錠剤、散剤、顆粒剤或いはカプセル剤とすることができる。
【0013】
さらに本発明抽出物は、各種基剤、例えばカカオ脂等の油脂性基剤、乳剤性基剤又はマクロゴール等の水溶性基剤、親水性基剤等と混和して坐剤としてもよい。
【0014】
注射剤としては水性溶剤又は非水性溶剤、例えば注射用蒸溜水、生理食塩水、リンゲル液、植物油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸エステル、プロピレングリコール等の溶液若しくは懸濁液とすることができる。
【0015】
吸入剤、エアゾール剤として使用するには、本発明抽出物を溶液、懸濁液又は微小粉体の形で、気体又は液体噴射剤と共に、且つ所望により湿潤剤又は分散剤のような通常の補薬と共にエアゾール容器内に充填する。本発明抽出物は、ネブライザー又はアトマイザーのような非加圧型の剤形にしてもよい。また疾患の種類に応じて、その治療に最適な上記以外の剤形、例えば、点眼剤、軟膏、パップ剤等に製剤化することが可能である。
【0016】
本発明抽出物の望ましい投与量は、投与対象、剤形、投与方法、投与期間等によって変わるが、所望の効果を得るには、一般に成人に対し体重1kg当り0.5mg乃至1500mgを一日1乃至数回に分けて経口投与することができる。
【0017】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0018】
【実施例】
実施例1.バッカツの水抽出物
バッカツ切片10gに100mLの水を加え、90℃で2時間加温した。ろ過後、ろ液を40℃以下で減圧乾固し、バッカツの水抽出物0.67gを得た。
実施例2.バッカツのメタノール抽出物
バッカツ切片10gに50mLのメタノールを加え、1時間灌流した。ろ過後、ろ液を40℃以下で減圧乾固し、バッカツのメタノール抽出物0.19gを得た。
実施例3.土伏苓の水抽出物
土伏苓の粉末10gに100mLの水を加え、90℃で2時間加温した。ろ過後、ろ液を40℃以下で減圧乾固し、土伏苓の水抽出物0.76gを得た。
実施例4.土伏苓のメタノール抽出物
土伏苓の粉末10gに50mLのメタノールを加え、1時間灌流した。ろ過後、ろ液を40℃以下で減圧乾固し、土伏苓のメタノール抽出物0.59gを得た。
実施例5.バッカツの酢酸エチル抽出物
バッカツ切片10gに50mLの酢酸エチルを加え、1時間灌流した。ろ過後、ろ液を40℃以下で減圧乾固し、バッカツの酢酸エチル抽出物21mgを得た。
【0019】
実施例6.タキキニン拮抗作用
上記実施例で得られた本発明抽出物は摘出モルモット回腸アッセイによって試験した。ハートレー系雄性モルモット(300〜500g)を頭部殴打により気絶させ、放血後回腸を摘出し、栄養液を満たした5mLのオルガンバス内に懸垂した。60分間平衡化した後、等張性に収縮を記録した。タキキニン・アゴニストであるサブスタンスP(10nM)を15分間隔で作用させた。サブスタンスPの投与を3、4回繰り返し、それぞれの収縮高が一定となったことを確認後、その反応を対照として、被験物質で10分間前処理した後再びサブスタンスPを投与し、収縮抑制率を求めた。本発明抽出物を被験薬として用い、サブスタンスPに対する拮抗作用を調べた結果の一例を表1に示した。
【0020】
【表1】
【0021】
【発明の効果】
上記の薬理試験の結果から明らかなように、本発明抽出物は、タキキニン拮抗作用を有しているため、過剰のタキキニンが関与する疾患、例えば、精神分裂病、不安症、鬱病、嘔吐などの治療または予防に有用である。また、本発明抽出物はタキキニン拮抗作用が強く、且つ食用あるいは生薬的に古くから利用されているユリ科植物を起源とするものであるから、安全性・副作用の面で優れた性質を有することが期待できるためその有用性は高い。
【0022】
サブスタンスP等のタキキニンは、生体に広く分布する神経ペプチド類であり、消化器系疾患、神経系疾患、呼吸器系疾患などに広く関与していることが知られており、タキキニン拮抗作用を有する本発明抽出物は以下の疾患に対して有用である。
【0023】
例えば、中枢神経系疾患としては、精神病、精神分裂病、認識障害、不安、鬱病などに対する治療に有用であり、タキキニン拮抗剤は向精神薬等として用いることができる。向精神薬は中枢神経に作用して精神機能に影響を及ぼす薬物の総称で、薬効別にみると抗精神病薬、抗不安薬、抗鬱薬などに分類される。
【0024】
また、タキキニン拮抗剤は嘔吐に対しても有用であり、悪心、むかつき、はきけ、急性嘔吐、遅延または後期の嘔吐および予期嘔吐の諸症状に適用しうる。また各種原因によって誘発される嘔吐、例えば、癌化学療法薬、アルキル化剤、オピオイド鎮痛薬、細胞障害性抗生物質、抗代謝物質等の各種薬剤の副作用として誘因される嘔吐、被爆等による放射線病や胸郭・腹部への放射線照射、癌治療における放射線療法に伴う嘔吐、代謝性疾患、感染症、運動性疾病、めまい、メニエール病、手術後の疾病、胃腸の閉塞、胃腸運動性の減少、内臓痛、心筋梗塞、結膜炎、片頭痛、頭蓋間圧の増減、消化不良、食べ過ぎ、胃酸過多等による嘔吐に本剤は有効である。
【0025】
このように、本発明抽出物は、安全性が高く、且つ優れたタキキニン拮抗作用を有するため、上記の如き各種疾患の治療剤として有用性の高いものである。
【産業上の利用分野】
本発明は、ユリ科植物の抽出物を有効成分として含有する向精神薬、制吐薬等として有用なタキキニン拮抗剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
タキキニンは、類似の構造をもつ一群のペプチドの総称であり、哺乳類ではサブスタンスP(SP)、ニューロキニンA(NKA)及びニューロキニンB(NKB)が代表的なものである。それらは生体に広く分布する神経ペプチドであるが、その生理的機能が最も詳しく研究されているものがサブスタンスPである。サブスタンスPは降圧作用、平滑筋収縮作用、唾液分泌促進作用、ニューロン興奮作用、疼痛反応誘発作用等を示す11個のアミノ酸からなるペプチドである。
【0003】
このサブスタンスPは、消化器系疾患、神経系疾患、呼吸器系疾患など種々の疾患に関係していることが知られており、特に炎症、アレルギー、カルチノイド症候群、慢性疼痛、頭痛、クローン病、鬱病、嘔吐等に深く関与していると考えられている。従って、タキキニンに拮抗剤が対象とし得る適応症は多岐にわたり、抗炎症薬、アレルギー疾患用薬、鎮痛薬、制吐薬、過敏腸症候群用薬、皮膚疾患用薬、血管痙攣性疾患用薬、脳性虚血疾患用薬、抗鬱薬、抗不安薬、自己免疫疾患用薬、筋弛緩薬、鎮痙薬等を挙げることができる。これらタキキニンの関与する疾患の治療薬を開発する目的で種々のタキキニン拮抗剤が開発され、報告されている。例えば、Kramer MSらの文献(非特許文献1)には抗鬱薬、抗不安薬として、また、Gesztesi ZSらの文献(非特許文献2)には制吐薬としての臨床試験例が記載されており、いずれもタキキニン拮抗剤が不安症、鬱病、精神病、精神分裂病、嘔吐等の各疾患に有効であることが示されている。
【0004】
これまで、いくつかのタキキニン受容体拮抗剤が報告されているが、1980年代に報告されたものは大部分が哺乳類の内因性タキキニン類を構成するアミノ酸の一部をD−アミノ酸などで置換する誘導化によって開発されたものである。これらはペプチド類であるため、良好な薬物動態学的性質が得られずインビボにおける活性発現には限界があり、また人に対する抗原性やアゴニスト作用による副作用に問題があった。また開発中の非ペプチド型タキキニン受容体拮抗剤においても、例えばカルシウム拮抗作用やNaチャンネルに対する抑制作用などの副作用が懸念されており、安全性が高く且つ満足な効果を有するものは少なく、医薬品として市販されるに至ったものはない。
【0005】
本発明薬剤の有効成分は、サルトリイバラSmilax china L.や土茯苓Smilax glabra Roxb.等のユリ科植物の根茎からの抽出物であり、古くから生薬として知られている。サルトリイバラの根茎は日本薬局方では「サンキライ(山帰来)」として、慢性皮膚疾患の排膿・解毒あるいは体質改善の目的で配合剤に用いられることが記載されている(非特許文献3)。また、土茯苓抽出物が免疫抑制剤として有用であること(特許文献1)、サルトリイバラ抽出物が呼吸器系疾患治療薬として有用であること(特許文献2)などが先行文献に開示されているが、タキキニン拮抗剤として有用である旨の報告はない。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−154151号公報
【特許文献2】
再公表特許WO98/52588号公報
【非特許文献1】
Kramer MS等著、「Science」 1998年、281巻、1640−1645頁
【非特許文献2】
Gesztesi ZS等著、「Anesthesiology」 2000年10月、93巻4号、931−937頁
【非特許文献3】
「第十四改正 日本薬局方解説書」、廣川書店発行、2001年、D−456乃至D−459頁
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は優れたタキキニン拮抗作用を有し、かつ上述した有機合成系のタキキニン受容体拮抗剤の呈する副作用などを発現しない安全性の高いタキキニン拮抗剤を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはサルトリイバラSmilax china L.や土茯苓Smilax glabra Roxb.等のユリ科植物の根茎の抽出物について鋭意研究を行った結果、これら抽出物がタキキニン拮抗作用を有することを見い出し、本発明を完成させた。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明タキキニン拮抗剤の有効成分であるユリ科植物抽出物は、サルトリイバラSmilax china L.や土茯苓Smilax glabra Roxb.等のユリ科植物の根茎から抽出することによって得ることができる。サルトリイバラの根茎は山帰来(サンキライ)、バッカツ、土茯苓と称され、日本薬局方では「サンキライ」として載っている。また、土茯苓(ドブクリョウ)を原植物とし、その塊根状の根茎を土茯苓なる生薬とする文献もある。これらサルトリイバラや土茯苓の塊茎の1種若しくは2種以上を細切し或いは粉末化し、水や有機溶媒等の適当な抽出溶媒で抽出して得ることができる。抽出溶媒としてはメタノール、エタノール等のアルコール類などの極性溶媒が好ましいが、酢酸エチル等の非極性溶媒を使用することも有効である。また、水で抽出するときには、適宜加熱すると効率よく抽出することができる。
【0010】
以下に本発明の好ましい態様を示す。
(1)ユリ科植物の根茎の抽出物を有効成分とするタキキニン拮抗剤。
(2)ユリ科植物が山帰来、バッカツ、土茯苓から選ばれる1種若しくは2種以上の植物である上記(1)記載のタキキニン拮抗剤。
(3)向精神薬である上記(1)又は(2)記載のタキキニン拮抗剤。
(4)制吐薬である上記(1)又は(2)記載のタキキニン拮抗剤。
(5)向精神薬が抗精神病薬である上記(3)記載のタキキニン拮抗剤。
(6)向精神薬が抗不安薬である上記(3)記載のタキキニン拮抗剤。
(7)向精神薬が抗鬱薬である上記(3)記載のタキキニン拮抗剤。
(8)過剰のタキキニンが関与する生理的障害の治療または予防に使用するた上記(1)乃至(7)のいずれか1つに記載の抽出物を有効成分とする医薬組成物。
(9)不安症、鬱病、精神病、精神分裂病及び嘔吐からなる群から選ばれる疾患の治療薬である上記(8)に記載の医薬組成物。
(10)ユリ科抽出物が水、アルコール又はそれら混合液による抽出物である上記(1)又は(2)記載のタキキニン拮抗剤。
(11)水による抽出物である上記(10)記載のタキキニン拮抗剤。
(12)メタノール又はエタノールによる抽出物である上記(10)記載のタキキニン拮抗剤。
【0011】
本発明ユリ科植物抽出物は、適当な医薬用の担体若しくは希釈剤と組み合わせて医薬とすることができ、通常の如何なる方法によっても製剤化でき、経口又は非経口投与するための固体、半固体、液体又は気体の剤形に処方することができる。処方にあたっては、本発明化合物をその薬学的に許容しうる塩の形で用いてもよく、又、他の医薬活性成分との配合剤としてもよい。
【0012】
経口投与製剤としては、そのまま或いは適当な添加剤、例えば乳糖、マンニット、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン等の慣用の賦形剤と共に、結晶セルロース、セルロース誘導体、アラビアゴム、トウモロコシデンプン、ゼラチン等の結合剤、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、カルボキシメチルセルロースカリウム等の崩壊剤、タルク、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤、その他増量剤、湿潤化剤、緩衝剤、保存剤、香料等を適宜組み合わせて錠剤、散剤、顆粒剤或いはカプセル剤とすることができる。
【0013】
さらに本発明抽出物は、各種基剤、例えばカカオ脂等の油脂性基剤、乳剤性基剤又はマクロゴール等の水溶性基剤、親水性基剤等と混和して坐剤としてもよい。
【0014】
注射剤としては水性溶剤又は非水性溶剤、例えば注射用蒸溜水、生理食塩水、リンゲル液、植物油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸エステル、プロピレングリコール等の溶液若しくは懸濁液とすることができる。
【0015】
吸入剤、エアゾール剤として使用するには、本発明抽出物を溶液、懸濁液又は微小粉体の形で、気体又は液体噴射剤と共に、且つ所望により湿潤剤又は分散剤のような通常の補薬と共にエアゾール容器内に充填する。本発明抽出物は、ネブライザー又はアトマイザーのような非加圧型の剤形にしてもよい。また疾患の種類に応じて、その治療に最適な上記以外の剤形、例えば、点眼剤、軟膏、パップ剤等に製剤化することが可能である。
【0016】
本発明抽出物の望ましい投与量は、投与対象、剤形、投与方法、投与期間等によって変わるが、所望の効果を得るには、一般に成人に対し体重1kg当り0.5mg乃至1500mgを一日1乃至数回に分けて経口投与することができる。
【0017】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0018】
【実施例】
実施例1.バッカツの水抽出物
バッカツ切片10gに100mLの水を加え、90℃で2時間加温した。ろ過後、ろ液を40℃以下で減圧乾固し、バッカツの水抽出物0.67gを得た。
実施例2.バッカツのメタノール抽出物
バッカツ切片10gに50mLのメタノールを加え、1時間灌流した。ろ過後、ろ液を40℃以下で減圧乾固し、バッカツのメタノール抽出物0.19gを得た。
実施例3.土伏苓の水抽出物
土伏苓の粉末10gに100mLの水を加え、90℃で2時間加温した。ろ過後、ろ液を40℃以下で減圧乾固し、土伏苓の水抽出物0.76gを得た。
実施例4.土伏苓のメタノール抽出物
土伏苓の粉末10gに50mLのメタノールを加え、1時間灌流した。ろ過後、ろ液を40℃以下で減圧乾固し、土伏苓のメタノール抽出物0.59gを得た。
実施例5.バッカツの酢酸エチル抽出物
バッカツ切片10gに50mLの酢酸エチルを加え、1時間灌流した。ろ過後、ろ液を40℃以下で減圧乾固し、バッカツの酢酸エチル抽出物21mgを得た。
【0019】
実施例6.タキキニン拮抗作用
上記実施例で得られた本発明抽出物は摘出モルモット回腸アッセイによって試験した。ハートレー系雄性モルモット(300〜500g)を頭部殴打により気絶させ、放血後回腸を摘出し、栄養液を満たした5mLのオルガンバス内に懸垂した。60分間平衡化した後、等張性に収縮を記録した。タキキニン・アゴニストであるサブスタンスP(10nM)を15分間隔で作用させた。サブスタンスPの投与を3、4回繰り返し、それぞれの収縮高が一定となったことを確認後、その反応を対照として、被験物質で10分間前処理した後再びサブスタンスPを投与し、収縮抑制率を求めた。本発明抽出物を被験薬として用い、サブスタンスPに対する拮抗作用を調べた結果の一例を表1に示した。
【0020】
【表1】
【0021】
【発明の効果】
上記の薬理試験の結果から明らかなように、本発明抽出物は、タキキニン拮抗作用を有しているため、過剰のタキキニンが関与する疾患、例えば、精神分裂病、不安症、鬱病、嘔吐などの治療または予防に有用である。また、本発明抽出物はタキキニン拮抗作用が強く、且つ食用あるいは生薬的に古くから利用されているユリ科植物を起源とするものであるから、安全性・副作用の面で優れた性質を有することが期待できるためその有用性は高い。
【0022】
サブスタンスP等のタキキニンは、生体に広く分布する神経ペプチド類であり、消化器系疾患、神経系疾患、呼吸器系疾患などに広く関与していることが知られており、タキキニン拮抗作用を有する本発明抽出物は以下の疾患に対して有用である。
【0023】
例えば、中枢神経系疾患としては、精神病、精神分裂病、認識障害、不安、鬱病などに対する治療に有用であり、タキキニン拮抗剤は向精神薬等として用いることができる。向精神薬は中枢神経に作用して精神機能に影響を及ぼす薬物の総称で、薬効別にみると抗精神病薬、抗不安薬、抗鬱薬などに分類される。
【0024】
また、タキキニン拮抗剤は嘔吐に対しても有用であり、悪心、むかつき、はきけ、急性嘔吐、遅延または後期の嘔吐および予期嘔吐の諸症状に適用しうる。また各種原因によって誘発される嘔吐、例えば、癌化学療法薬、アルキル化剤、オピオイド鎮痛薬、細胞障害性抗生物質、抗代謝物質等の各種薬剤の副作用として誘因される嘔吐、被爆等による放射線病や胸郭・腹部への放射線照射、癌治療における放射線療法に伴う嘔吐、代謝性疾患、感染症、運動性疾病、めまい、メニエール病、手術後の疾病、胃腸の閉塞、胃腸運動性の減少、内臓痛、心筋梗塞、結膜炎、片頭痛、頭蓋間圧の増減、消化不良、食べ過ぎ、胃酸過多等による嘔吐に本剤は有効である。
【0025】
このように、本発明抽出物は、安全性が高く、且つ優れたタキキニン拮抗作用を有するため、上記の如き各種疾患の治療剤として有用性の高いものである。
Claims (4)
- ユリ科植物の根茎の抽出物を有効成分とするタキキニン拮抗剤。
- ユリ科植物が山帰来、バッカツ、土茯苓から選ばれる1種若しくは2種以上の植物である請求項1記載のタキキニン拮抗剤。
- 向精神薬である請求項1又は2記載のタキキニン拮抗剤。
- 制吐薬である請求項1又は2記載のタキキニン拮抗剤。
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