JP2004156964A - 液体混合装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】液体混合装置10は、それぞれに液体入口12を有する一対の導入路20と、それら導入路20に連通し、液体出口16を有する混合路14と、導入路20及び混合路14に収容された液体に、液体入口12から液体出口16へ向かう電気浸透流を生起させる単一の電界を形成する電界形成手段18と、液体に接触する混合路14の壁面14aの状態を局所的に変化させて、混合路14を流れる液体の速度場に局部的変動を生じさせる壁面状態変更手段32とを備える。壁面状態変更手段32は、混合路14の壁面14aを形成する互いに異なる一対の壁面材料34、36からなる。それら壁面材料34、36は、予め定めた物性(pH)の液体に接触したときに、互いに異なる表面電位を生じる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気浸透流を用いた液体混合装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
マイクロリアクタやマイクロ化学トータル分析システム(μTAS)等の、微少量の液体を扱うマイクロマシンの分野では、μmオーダの流路寸法を有するマイクロチャネルの内部で液体の移動、反応、分析を円滑に行なうための、種々の液体制御技術が提案されている。特に近年、マイクロチャネル内で微少量の液体を所望方向へ所望流量で移動させる送液方法として、ポンプ、バルブ等を用いた機械構造的手法に代えて、電気浸透流の原理を応用した電圧制御送液法が、実用化に向けて検討されている。
【0003】
ところで、マイクロチャネル内での液体の流れは、粘性支配となって層流状態を維持するので、異種液体同士をマイクロチャネル内で混合させる場合には、それら液体の接触界面を通した分子拡散に依存して混合が進むことが判っている。したがって、上記した電気浸透流による電圧制御送液手段を有するマイクロマシンにおいても、このような分子拡散による異種液体の混合作用を促進するための工夫が必要となる場合がある。
【0004】
電気浸透流を応用したこの種のマイクロマシンにおいて、それぞれに液体入口を有する一対の導入路と、それら導入路に一箇所で連通し、液体出口を有する混合路とを備え、両導入路及び混合路に収容された液体に、個々の液体入口から液体出口へ向かう電気浸透流を生起させるように構成した液体混合装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この液体混合装置は、両導入路のそれぞれの液体入口と混合路の液体出口との間に互いに異なる電界を形成する電界形成手段として、混合路内の液体に電位を与える電源と、両導入路内の液体を接地する接地ラインに個別に設けられる一対のスイッチとを備えている。そして、それらスイッチを個々に適当に開閉することにより、両導入路に供給される異種液体のそれぞれに適当な流量の電気浸透流を生起させて、混合路における異種液体同士の拡散混合を促進できるようになっている。
【特許文献1】
特開平8−261986号公報
【0005】
また、一対の液体入口と、一端でそれら液体入口に連通し、他端に液体出口を有する混合室とを備え、両液体入口から混合室に導入された異種液体のそれぞれに、混合室内の特定領域を循環するように流れる電気浸透流を生起させるように構成した液体混合装置も知られている(例えば特許文献2参照)。この液体混合装置は、異種液体のそれぞれを混合室内で循環流動させるための2つの電界を形成する電界形成手段として、混合室内の異種液体のそれぞれに個別に接触する2組の電極と、各組の電極間に電圧を印加する2個の電源とを備えている。そして、両液体入口から混合室に導入された異種液体は、混合室内でそれぞれの特定領域を循環するように流れることにより、両者間の接触面積が増大し、それにより混合室内での拡散混合が促進されるようになっている。
【特許文献2】
米国特許第6086243号明細書
【0006】
なお、電気浸透流を応用した液体混合装置における異種液体の拡散混合を促進するためには、上記したように、異種液体同士の接触面積を増加させることが有効である。こうした界面拡張策として、特許文献2記載の構成以外にも、マイクロポンプやピエゾダイアフラムを用いて異種液体の界面形態を積極的に乱したり、混合用の流路を蛇行させて異種液体の相互接触時間を実質的に延長したりする方策が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前述した電気浸透送液構造を有する従来の液体混合装置では、マイクロチャネルにおける異種液体の拡散混合を促進する目的で、異種液体のそれぞれに固有の電気浸透流を生起させるための異なる電界を形成する電界形成手段が採用されている。そのような電界形成手段は、特許文献1及び2に記載されるように、個々の電界に関連してスイッチ、電極、電源等の各種構成部品を装備することになるので、液体混合装置の部品点数を増加させ、製造工程を煩雑にする傾向がある。
【0008】
また、異種液体同士の界面拡張策として、マイクロポンプやピエゾダイアフラムを用いる場合は、必然的に可動部分が形成されることになるから、液体混合装置における混合作用の安定性及び信頼性を確保することが困難になる危惧がある。さらに、混合流路を蛇行させるような流路形状の工夫によって界面を拡張する構成では、エッチング等による流路形成工程が複雑化することが懸念される。
【0009】
本発明の目的は、電気浸透流を用いた液体混合装置において、マイクロチャネル内での異種液体の拡散混合を単純な構造で確実に促進でき、安定性及び信頼性に優れた混合作用を実現できる液体混合装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、複数の液体入口と、それら液体入口に連通する混合路と、複数の液体入口から離れて混合路に設けられる液体出口と、混合路に収容された液体に、複数の液体入口から液体出口へ向かう電気浸透流を生起させる電界形成手段とを具備する液体混合装置において、液体に接触する混合路の壁面の状態を局所的に変化させて、混合路を流れる液体の速度場に局部的変動を生じさせる壁面状態変更手段を具備し、電界形成手段は、混合路に収容される液体に作用する単一の電界を、複数の液体入口と液体出口との間に形成すること、を特徴とする液体混合装置を提供する。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の液体混合装置において、壁面状態変更手段は、混合路の壁面を形成する互いに異なる複数の壁面材料を具備する液体混合装置を提供する。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の液体混合装置において、複数の壁面材料は、予め定めた物性の液体に接触したときに互いに異なる表面電位を生じるものである液体混合装置を提供する。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の液体混合装置において、複数の壁面材料は、予め定めた物性の液体に接触したときに正の表面電位を生じるものと負の表面電位を生じるものとを含む液体混合装置を提供する。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4のいずれか1項に記載の液体混合装置において、混合路を形成した基体を具備し、複数の壁面材料は、混合路の壁面の一部分に露出する基体の材料と、基体上で混合路の壁面の他部分を形成する第2材料とを含む液体混合装置を提供する。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の液体混合装置において、壁面状態変更手段は、混合路の壁面の温度を局所的に変化させる温度調整装置を具備する液体混合装置を提供する。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の液体混合装置において、温度調整装置が、混合路の壁面を局所的に加熱するマイクロヒータからなる液体混合装置を提供する。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項1に記載の液体混合装置において、壁面状態変更手段は、混合路の壁面の電子状態を局所的に変化させるレーザ光照射装置を具備する液体混合装置を提供する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図面において、同一又は類似の構成要素には共通の参照符号を付す。
図1は、本発明の第1実施形態による液体混合装置10の模式図、図2及び図3は、液体混合装置10における異種液体の混合作用を説明する図である。液体混合装置10は、微少量の液体を扱うマイクロマシンの一種であり、μmオーダの流路寸法を有するマイクロチャネル内で液体試薬の前処理、反応、分析等を自動的に行なうマイクロリアクタとして、DNA分析や蛋白質合成等の化学ないし生化学処理に応用することができる。
【0019】
液体混合装置10は、2個の液体入口12と、それら液体入口12に連通する混合路14と、両液体入口12から離れて混合路14に設けられる液体出口16と、混合路14に収容された液体に、両液体入口12から液体出口16へ向かう電気浸透流を生起させる電界形成手段18とを備える。2個の液体入口12はそれぞれ、混合路14に連通する一対の導入路20の一端(図で左端)に形成される。液体出口16は、それら導入路20から離れた側で混合路14の一端(図で右端)に形成される。一対の導入路20は、いずれも直線状に延びてそれらの他端で合流し、直線状に延びる混合路14の他端に接続される。それにより、2個の液体入口12と1個の液体出口16とを流路端に有するY字形のマイクロチャネルが形成される。
【0020】
混合路14及び一対の導入路20を含むY形マイクロチャネルは、ガラス等の誘電材料からなるチップ22の表面に凹設される。この場合、混合路14及び導入路20をいずれも直線導管状の形態とするために、図示しないカバーがそれら混合路14及び導入路20を覆うようにしてチップ22に固定される。これらチップ22及びカバー(図示せず)は、混合路14及び導入路20を含むY形マイクロチャネルを所定位置に形成した基体を構成する。そして、液体入口12及び液体出口16は、基体を構成するチップ22及びカバー(図示せず)の少なくとも一方に形成される。なお、チップ22及びカバー(図示せず)は、混合路14における液体反応状況の観察を容易にするために、透明な材料から作製されることが好ましい。液体混合装置10の製造工程については、さらに後述する。
【0021】
電界形成手段18は、液体入口12の近傍で両導入路20の一端に設置される2個の電極24と、液体出口16の近傍で混合路14の一端に設置される1個の電極26と、両電極24と電極26との間に電圧を印加する直流電源28と、両電極24、電極26及び直流電源28を導通接続する導線30とを備える。図示実施形態では、液体入口12側の2個の電極24が正極を構成し、液体出口16側の電極26が負極を構成している。それにより、両導入路20及び混合路14内に、両液体入口12から液体出口16に向かう方向への単一の電界Eが、それら導入路20及び混合路14の内壁面に平行に形成される。この単一電界Eは、後述するように、両導入路20及び混合路14に収容された液体(L1、L2、L3)に作用して、当該液体に電気浸透流Fを生起させる。なお、電界Eの方向は、両導入路20及び混合路14のそれぞれの壁面材料並びにそれらに収容される液体の物性(例えばpH)に応じて、適宜決定される。
【0022】
本発明の特徴的構成として、液体混合装置10は、液体に接触する混合路14の壁面14aの状態を局所的に変化させる壁面状態変更手段32を備える。壁面状態変更手段32によって得られる「混合路14の壁面状態の局所的変化」は、混合路14を流れる液体の速度場に局部的変動を生じさせる結果に至るような変化様態として規定され、後述する種々の壁面状態変更手段32によって実現される。
【0023】
図示実施形態では、壁面状態変更手段32は、混合路14の壁面14aを形成する互いに異なる2つの壁面材料34、36から構成される。それら壁面材料34、36は、チップ22上での混合路14の壁面14aの、予め定めた2つの隣接表面領域34a、36aをそれぞれ形成している。また図示実施形態では、チップ22上に形成された混合路14の壁面14aの主要領域と両導入路20の実質的全壁面20a(図示しないカバーの壁面相当部分を除く)とが、壁面材料34から形成され、混合路14の壁面14aにおける特定の一領域が、壁面材料36から形成されている。この場合、壁面材料34を、チップ22の材料の露出表面部分とし、壁面材料36を、チップ22の材料の所定位置に被着した第2材料(すなわちチップ22及びカバーの材料とは異なる材料)として構成することが、製造工程を簡略化する点で有利である。或いは、壁面材料34、36の双方を、チップ22及びカバーの材料とは異なる材料から構成することもできる。
【0024】
混合路14及び導入路20に液体(電解質溶液)を満たすと、それら流路14、20の壁面14a、20aと液体との間に電気二重層が形成される。それにより、壁面材料34、36の種類と液体の物性(特にpH)とによって決まる正又は負の表面電位が、壁面14a、20aに与えられる。液体混合装置10においては、壁面状態変更手段32として機能する壁面材料34、36は、予め定めた物性(pH)の液体に接触したときに互いに異なる表面電位を生じる素材から構成される。特に、所定の物性(pH)の液体に接触したときに、正の表面電位を生じる素材と負の表面電位を生じる素材とから、それら壁面材料34、36をそれぞれ構成することが、後述する拡散混合促進作用を向上させる観点で有利である。このような観点で、図示実施形態では、壁面材料34にシリカ(SiO2)を使用し、壁面材料36にアルミナ(Al2O3)を使用している。シリカとアルミナとは、それぞれの電荷零点pH0(表面電位が0になるときの媒質中のpH値)が約2と約9とであり、このような電荷零点pH0の差の結果として、所定物性(例えば2<pH<9)の液体に接触したときに互いに逆符号の表面電位を生じる。
【0025】
次に、上記構成を有する液体混合装置10による異種液体の拡散混合促進作用を、図2及び図3を参照して説明する。
単一の壁面材料34からなる壁面20aを各々に有する一対の導入路20に、液体入口12を介して供給された互いに異なる種類(組成)の液体(電解質溶液)L1、L2(いずれも2<pH<9)は、単一の電界Eの下で壁面20aに沿った電気浸透流Fをそれぞれ生起して、混合路14へ向かう方向へ流れる。このとき、各液体(電解質溶液)L1、L2の物性(pH)に応じて、各導入路20の壁面20aは負に帯電しており、壁面20a近傍の液体L1、L2は正に帯電している。なお、導入路20の壁面材料34に用いたシリカ(SiO2)は、電荷零点pH0が約2であり、それを超えるpHの液体に接触したときに負の表面電位を生じる。各液体L1、L2は、それ自体の物性(比誘電率、粘性係数)、電界Eの強度及び壁面材料34の表面電位の関数として得られる所定流速で、層流を維持しつつ流動する。
【0026】
一対の導入路20から混合路14に導入された2種類の液体L1、L2は、引き続き、単一の電界Eの下で壁面14aに沿った電気浸透流Fを生起して、液体出口16へ向かう方向へ流れる。ここで、両液体L1、L2は、それらの合流点付近では、鎖線で示す界面Pを混合路14の略中央に形成して、攪拌されることなく徐々に拡散混合しながら、層流を維持しつつ所定流速で流動する。このとき、各液体L1、L2の物性(pH)に応じて、壁面材料34からなる混合路14の表面領域34aは負に帯電しており、表面領域34a近傍の液体L1、L2は正に帯電している。
【0027】
両導入路20の合流点の下流側で混合路14内に局所的に配置された壁面材料36は、アルミナ(Al2O3)の電荷零点pH0が約9であることから、それ未満のpHの液体に接触したときに正の表面電位を生じる。したがって、両導入路20から導入された液体L1、L2(いずれも2<pH<9)が壁面材料36の位置に到達すると、壁面材料36の表面領域36aは正に帯電し、表面領域36a近傍の液体L1、L2(図では液体L2)は負に帯電する。その結果、表面領域36a近傍の液体L1、L2(図では液体L2)は、単一の電界Eの下で、電気浸透流Fとは逆向きの電気浸透流F´を表面領域36aに沿って生起することになる。この電気浸透流F´は、液体L1、L2(図では液体L2)の物性(比誘電率、粘性係数)、電界Eの強度及び壁面材料36の表面電位の関数として得られる所定流速を有するものとなる。
【0028】
このように、混合路14内で壁面材料34に沿った電気浸透流Fにより一方向(電界Eの方向)に流れていた液体L1、L2(図では液体L2)は、壁面材料36の近傍に到達した段階で電気浸透流F´を生起して逆方向へ流れようとするので、互いに反対方向へ流れる液体L1、L2間の粘性作用により、壁面材料36の近傍に局部的な循環流が発生する(すなわち液体の速度場に局部的変動が生じる)。このような局部的循環流は、異種液体L1、L2の界面形態を積極的に乱して、それら異種液体L1、L2同士の接触面積を増加させるように作用する。その結果、混合路14内での異種液体L1、L2同士の拡散混合が自動的に促進され、壁面材料36の下流側では、液体L1、L2が実質的均質に混合した液体L3が得られることになる。
【0029】
以上の説明から明らかなように、液体混合装置10では、混合路14の壁面14aを互いに異なる2つの壁面材料34、36から形成することにより、壁面14aの状態(表面電位)を局所的に変化させて、混合路14を流れる液体L1、L2の速度場に局部的変動を生じさせるようにしたから、混合路14内の液体L1、L2に電気浸透流F、F´を生起させるための単一の電界Eを用意するだけで、混合路14における異種液体L1、L2の拡散混合を確実に促進することができる。したがって、電界形成手段18の構成が簡素化され、液体混合装置10の部品点数の削減及び製造工程の簡略化が実現される。また、マイクロポンプやピエゾダイアフラムを用いる構成に比べて、可動部分を有しないので、液体混合装置10における拡散混合作用の安定性及び信頼性を確保することができる。
【0030】
さらに、上記構成によれば、混合対象の液体L1、L2の物性(比誘電率、粘性係数)、電界Eの強度及び壁面材料34、36の種類を適宜選定することにより、導入路20及び混合路14内での液体L1、L2の流速を制御できるだけでなく、混合路14内での壁面材料34、36の位置及び面積比を適宜選定することによっても液体L1、L2の流速を制御できる。なお、壁面材料34、36の少なくとも一方を複数個に分断して、混合路14の壁面14aの所望位置に分散配置することもできる。したがって、液体混合装置10によれば、その拡散混合作用を比較的容易かつ自在に調整することができる。
【0031】
上記構成において、混合路14の壁面材料34、36は、所定の物性(pH)の液体に接触したときに、同一符号でも互いに異なる表面電位を生じる素材から構成されていれば、ある程度の拡散混合促進作用が奏される。この場合、壁面材料36の表面領域36aの近傍では、単一の電界Eの下で、液体L2の電気浸透流Fの流速が局部的に変動し、それに伴い、互いに異なる速度で流れる液体L1、L2間の粘性作用によりやはり局部的な循環流が発生する。その結果、混合路14内での異種液体L1、L2同士の拡散混合が自動的に促進される。
【0032】
次に、図4を参照して、上記構成を有する液体混合装置10の製造方法の一例を概説する。
まず、シリカガラスからなる略直方体形状のチップ22を用意し、その一表面22aに、例えば蒸着クロム薄膜をマスクとしたフッ酸緩衝液エッチング等の適当なエッチング工程により、混合路14と一対の導入路20とからなるY形マイクロチャネルを形成する(図4(a))。次いで、混合路14の壁面14aの所定位置に、所望パターンのアルミナ薄膜を蒸着(例えばスパッタ蒸着)し、壁面材料36を形成する(図4(b))。これにより、混合路14の壁面14aが、2種類の壁面材料(シリカ)34及び壁面材料(アルミナ)36から形成されることになる。
【0033】
他方、シリコンゴム(例えばポリジメチルシロキサン(PDMS))等からなるカバー38を用意し、その所定位置に、2個の液体入口12及び1個の液体出口16を貫通形成する。次いで、このカバー38を、各液体入口12及び液体出口16が対応の導入路20及び混合路14にそれぞれ連通するように位置決めして、チップ22の表面22aに、混合路14及び導入路20の全体を覆うように固着する(図4(c))。このようにして、液体混合装置10が完成する。
【0034】
上記製造方法によれば、混合路14の壁面14aに蒸着する壁面材料36の位置、形状、寸法、個数等を比較的容易かつ自在に選定でき、以って、混合路14における拡散混合促進効果を比較的容易かつ自在に調整することができる。なお、上記製造方法で使用したカバー38は、導入路20及び混合路14に収容した液体に生起する電気浸透流に影響を及ぼさない材料(例えば収容液体のpHに略等しい電荷零点pH0を有する材料)からなることが好ましい。或いは、カバー38を、チップ22の材料と同一の材料から形成することもできる。いずれの場合も、カバー38の表面の、混合路14の壁面14aに対向する所定位置に、壁面材料36を蒸着することもできる。
【0035】
図5は、本発明の第2実施形態による液体混合装置のマイクロチャネル部分を概略で示す。この実施形態は、壁面状態変更手段の構成以外は、前述した第1実施形態による液体混合装置10と実質的同一の構成を有するものであり、したがって対応する構成要素には共通の参照符号を付してその説明を省略する。
【0036】
第2実施形態による液体混合装置では、壁面状態変更手段は、混合路14の壁面14aの温度を局所的に変化させる温度調整装置40から構成される。例えば温度調整装置40は、混合路14の壁面14aを局所的に加熱するマイクロヒータ42から構成できる。この場合、マイクロヒータ42は、チップ22(図1)又はカバー38(図4)の所望位置に設置され、隣接する混合路14の特定表面領域42aを、その周囲の壁面14aよりも高温に維持する。
【0037】
上記構成において、一対の導入路20から導入された異種液体L1、L2がマイクロヒータ42の位置に到達すると、表面領域42aの近傍を流れる液体L2の熱物性値が変化(例えば粘性が低下)し、その流速が変動(例えば増加)する。その結果、表面領域42a近傍の液体L2は、単一の電界Eの下で、電気浸透流Fの流速を局部的に変動させ、それに伴い、互いに異なる速度で流れる液体L1、L2間の粘性作用により、表面領域42aの近傍に局部的な循環流が発生する。このような局部的循環流は、異種液体L1、L2の界面形態を積極的に乱して、それら異種液体L1、L2同士の接触面積を増加させるように作用する。その結果、混合路14内での異種液体L1、L2同士の拡散混合が自動的に促進され、マイクロヒータ42の下流側では、液体L1、L2が実質的均質に混合した液体L3が得られることになる。
【0038】
なお、上記構成においては、マイクロヒータ42によって加熱された混合路14の表面領域42aは、その表面電位が周囲の壁面14aの表面電位に比べて変動することも期待される。したがって、第1実施形態における壁面状態変更手段32と同等の、異なる電気浸透流の生起効果が得られる可能性もある。また、マイクロヒータ42に代えて、混合路14の表面領域42aを局所的に冷却する手段を、温度調整装置40に適用することもできる。
【0039】
図6は、本発明の第3実施形態による液体混合装置のマイクロチャネル部分を概略で示す。この実施形態は、壁面状態変更手段の構成以外は、前述した第1実施形態による液体混合装置10と実質的同一の構成を有するものであり、したがって対応する構成要素には共通の参照符号を付してその説明を省略する。
【0040】
第3実施形態による液体混合装置では、壁面状態変更手段は、混合路14の壁面14aの電子状態を局所的に変化させるレーザ光照射装置44から構成される。この場合、レーザ光照射装置44は、チップ22(図1)又はカバー38(図4)の所望位置にレーザ光46を照射して、混合路14の特定表面領域46aの電子状態を、その周囲の壁面14aに比べて変化させる。このような電子状態の変化は、表面領域46aの表面電位又は温度の変動を誘起することが期待される。すなわちレーザ光照射装置44は、第1実施形態における壁面状態変更手段32又は第2実施形態における温度調整装置40と同様の機能を有すると見なすことができる。したがってこの構成によっても、混合路14内での異種液体L1、L2同士の拡散混合を自動的に促進することができる。
【0041】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されることなく、請求項記載の範囲で様々な修正を施すことができる。例えば、混合路に連通する3個以上の液体入口(又は導入路)を有するマイクロチャネル構造にも、本発明に係る壁面状態変更手段を備えた液体混合装置の構成を適用できることは理解されよう。
【0042】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、電気浸透流を用いた液体混合装置において、マイクロチャネル内での異種液体の拡散混合を単純な構造で確実に促進でき、以って、安定性及び信頼性に優れた混合作用を実現できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態による液体混合装置の模式図である。
【図2】図1の液体混合装置における異種液体混合作用を示す部分拡大図である。
【図3】図1の液体混合装置における異種液体混合作用を示す模式図である。
【図4】図1の液体混合装置の製造方法の一例を示す図で、(a)マイクロチャネル形成ステップ、(b)壁面材料形成ステップ及び(c)完成状態をそれぞれ示す。
【図5】本発明の第2実施形態による液体混合装置における異種液体混合作用を示す部分拡大図である。
【図6】本発明の第3実施形態による液体混合装置における異種液体混合作用を示す部分拡大図である。
【符号の説明】
10…液体混合装置
12…液体入口
14…混合路
16…液体出口
18…電界形成手段
20…導入路
22…チップ
32…壁面状態変更手段
34、36…壁面材料
38…カバー
40…温度調整装置
42…マイクロヒータ
44…レーザ光照射装置
Claims (8)
- 複数の液体入口と、それら液体入口に連通する混合路と、該複数の液体入口から離れて該混合路に設けられる液体出口と、該混合路に収容された液体に、該複数の液体入口から該液体出口へ向かう電気浸透流を生起させる電界形成手段とを具備する液体混合装置において、
液体に接触する前記混合路の壁面の状態を局所的に変化させて、該混合路を流れる液体の速度場に局部的変動を生じさせる壁面状態変更手段を具備し、
前記電界形成手段は、前記混合路に収容される液体に作用する単一の電界を、前記複数の液体入口と前記液体出口との間に形成すること、
を特徴とする液体混合装置。 - 前記壁面状態変更手段は、前記混合路の前記壁面を形成する互いに異なる複数の壁面材料を具備する請求項1に記載の液体混合装置。
- 前記複数の壁面材料は、予め定めた物性の液体に接触したときに互いに異なる表面電位を生じるものである請求項2に記載の液体混合装置。
- 前記複数の壁面材料は、予め定めた物性の液体に接触したときに正の表面電位を生じるものと負の表面電位を生じるものとを含む請求項3に記載の液体混合装置。
- 前記混合路を形成した基体を具備し、前記複数の壁面材料は、該混合路の前記壁面の一部分に露出する該基体の材料と、該基体上で該混合路の該壁面の他部分を形成する第2材料とを含む請求項2〜4のいずれか1項に記載の液体混合装置。
- 前記壁面状態変更手段は、前記混合路の前記壁面の温度を局所的に変化させる温度調整装置を具備する請求項1に記載の液体混合装置。
- 前記温度調整装置が、前記混合路の前記壁面を局所的に加熱するマイクロヒータからなる請求項6に記載の液体混合装置。
- 前記壁面状態変更手段は、前記混合路の前記壁面の電子状態を局所的に変化させるレーザ光照射装置を具備する請求項1に記載の液体混合装置。
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