JP2004156098A - 蒸着用マスク治具 - Google Patents
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Abstract
【課題】蒸着用マスク治具において、製品に傷や打痕不良や下地塗装不良が発生しにくく、高精度で大量に製造できて低コストになり、製品の仕様変更にも安価かつ容易に対応できること。
【解決手段】蒸着用マスク治具1は上治具2と下治具3の2部分から成り、耐熱ABS樹脂製で射出成形で製造されているため高精度であり、上治具2には複雑な形状のマスク部4が設けられている。上治具2を裏返して製品保持部6に製品Pの所定の部分を嵌合させ、4箇所の螺子孔10に嵌合するように上治具2の裏側の4本のピンをセットし、上から下治具3を2本の固定爪12が上治具2の2箇所の固定爪係止部8に係止されるように被せて一体化させる。以降の下地塗装、蒸着において蒸着用マスク治具1ごと取り扱うので製品に傷や打痕不良や下地塗装不良が発生しにくく、製品の仕様変更にも蒸着用マスク治具1の射出成形金型を修正するだけで対応できる。
【選択図】 図1
【解決手段】蒸着用マスク治具1は上治具2と下治具3の2部分から成り、耐熱ABS樹脂製で射出成形で製造されているため高精度であり、上治具2には複雑な形状のマスク部4が設けられている。上治具2を裏返して製品保持部6に製品Pの所定の部分を嵌合させ、4箇所の螺子孔10に嵌合するように上治具2の裏側の4本のピンをセットし、上から下治具3を2本の固定爪12が上治具2の2箇所の固定爪係止部8に係止されるように被せて一体化させる。以降の下地塗装、蒸着において蒸着用マスク治具1ごと取り扱うので製品に傷や打痕不良や下地塗装不良が発生しにくく、製品の仕様変更にも蒸着用マスク治具1の射出成形金型を修正するだけで対応できる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、製品の一部に下地塗装を施した後に蒸着を行う際に、蒸着が不要な部分を覆うことによって蒸着膜が付着するのを防止する蒸着用マスク治具に関するものである。
【0002】
なお、本明細書において「製品」とは、必ずしも完成品またはそれに近いもののみを意味せず、半製品・部品等も上工程における製品であるから、一括して「製品」と称する。
【0003】
【従来の技術】
従来の下地塗装及び蒸着の工程について、図5乃至図7を参照して説明する。図5は従来のマスク治具を用いた製品の下地塗装及び蒸着から出荷までの手順を示す工程図である。図6は従来の下地塗装用マスク治具の上治具に製品をセットした状態を裏側から見て示す平面図である。図7は従来の蒸着用マスク治具の上治具の製品をセットした状態と下治具を並べて示す平面図である。
【0004】
図5に示されるように、従来の下地塗装及び蒸着の工程は、ステップS21で製品(ここでは携帯電話の本体の一部)が受入れられると、まず専用の塗装用マスク治具にセットされ(ステップS22)、スプレーガンで蒸着膜の付きを良くするためのアンダー塗装(下地塗装)が行なわれる(ステップS23)。それから塗装用マスク治具が外され(ステップS24)、製品のアンダー塗装の乾燥(ステップS25)が行なわれた後、製品が蒸着装置の近傍まで運搬される(ステップS26)。そして、今度は専用の蒸着用マスク治具にセットされ(ステップS27)、この蒸着用マスク治具が複数個蒸着装置の回転治具にセットされて蒸着用マスク治具を回転させることによって蒸着膜厚が均一になるように真空蒸着が行なわれる(ステップS28)。所定の蒸着膜が付着したら蒸着装置を開けて蒸着用マスク治具を取り出し、蒸着された製品が取り外され(ステップS29)、所定の検査を経て次工程へ出荷される(ステップS30,S31)。
【0005】
ここで、図7に示される塗装用マスク治具の上治具16(この上にほぼ同じ大きさの下治具が被せられる。)、図8に示される蒸着用マスク治具21は、ともにジュラコン樹脂を機械加工して製造されている。そして、1度に大量の製品P1を塗装処理できるように1つの塗装用マスク治具の上治具16に多くの製品P1がセットできるようになっている。同様に1度に大量の下地塗装済み製品P2を蒸着処理できるように、1つの蒸着用マスク治具21の上治具22に多くの製品P2がセットできるようになっている。
【0006】
図8では上治具22の製品セット部24に1つの製品P2しかセットされていないが、全ての製品セット部24に製品P2がセットされると、下治具23が裏返しに上治具22に被せられて相対する固定部22a,23aがそれぞれ密着してクリップで挟んで固定される。これによって、下治具23の製品支持板25によって各製品P2が押さえられ、ずれないように固定される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の工程においては、塗装用マスク治具16と蒸着用マスク治具21を別々にして、それぞれに多くの製品P1,P2をセットできるようにしているので、製品P1,P2のみでの着脱や取り扱いの回数が多くなり、また製品P2を複数個運搬ケースに入れて運搬するので、製品P1,P2に傷や打痕不良が多発する。また、大量の製品P1,P2を一括処理可能かつ高いマスク精度を有するマスク治具16,21が要求され、高価なものになる。さらに、製品の仕様変更があった場合マスク治具16,21を修正するにしても、新規にマスク治具を製造するにしても費用がかさみ、樹脂の機械加工では高精度が出にくいことと塗装用マスク治具16がずれると全ての製品についてずれるので、下地塗装不良が多発する場合があるという問題点があった。
【0008】
そこで、本発明は、製品に傷や打痕不良が発生しにくく、高精度で大量に製造することができて低コストになり、下地塗装不良も発生しにくく、製品の仕様変更があった場合でも安価にかつ容易に対応することができる蒸着用マスク治具の提供を課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明にかかる蒸着用マスク治具は、製品の一部に下地塗装を施した後に蒸着を行う工程において、不要な部分に蒸着膜が付着するのを防止する蒸着用マスク治具であって、前記製品単体ごとに1個の蒸着用マスク治具を使用して、かつ前記下地塗装の際の塗装用マスク治具と兼用したものである。
【0010】
これによって、下地塗装の前に製品単体ごとに1個の蒸着用マスク治具をセットした後は、蒸着が終わって製品を蒸着用マスク治具から外すまでは製品そのものを着脱したり取り扱ったりしないで済むため、製品の傷・打痕不良を大幅に低減できるとともに、高精度の蒸着用マスク治具を塗装用マスク治具と兼用するため、下地塗装不良も大幅に低減できる。無論、各処理は製品1個ごとに行うわけではなく、下地塗装は製品をセットした蒸着用マスク治具を縦横に多数個並べてスプレーガンで1度に多数個に塗装し、乾燥した後、蒸着用マスク治具が多数個受け治具にセットされ、この受け治具が複数個蒸着装置の回転治具にセットされて真空蒸着が行なわれる。
【0011】
このようにして、製品の傷・打痕不良を大幅に低減できるとともに、高精度の蒸着用マスク治具を塗装用マスク治具と兼用するため、下地塗装不良も大幅に低減できる蒸着用マスク治具となる。
【0012】
請求項2の発明にかかる蒸着用マスク治具は、請求項1の構成において、前記蒸着を行う部分を除く前記製品全体を覆うものである。
【0013】
これによって、蒸着部分を除く製品全体が蒸着用マスク治具によって保護されるので、製品の傷・打痕不良を大幅に低減できるとともに、万が一蒸着用マスク治具を落としたりしても、蒸着用マスク治具の外側が傷つくだけで中の製品が傷つけられることはない。
【0014】
このようにして、製品の傷・打痕不良を大幅に低減でき、より扱い易い蒸着用マスク治具となる。
【0015】
請求項3の発明にかかる蒸着用マスク治具は、請求項1または請求項2の構成において、前記蒸着用マスク治具表面に対して前記製品の蒸着を行う部分が内部に凹むように段差を設けたものである。
【0016】
これによって、製品の蒸着を行う部分も周囲に突出した蒸着用マスク治具表面によって保護されるため、製品の蒸着部分の傷・打痕不良を大幅に低減できるとともに、誤って作業台や床に蒸着用マスク治具を蒸着部分を下にして落としたりしても、蒸着部分が凹んでいるため蒸着前なら下地塗装が、蒸着後なら蒸着膜が周囲に突出した蒸着用マスク治具表面によって保護されて、傷つけられることはない。
【0017】
このようにして、製品の蒸着部分についても傷・打痕不良を大幅に低減することができる蒸着用マスク治具となる。
【0018】
請求項4の発明にかかる蒸着用マスク治具は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つの構成において、合成樹脂成形品からなるものである。
【0019】
したがって、工具鋼等の精密加工が可能な金型に蒸着用マスク治具の形状を有するキャビティを彫り込んで、射出成形等の精密な成形法によって製造されるので、高精度の同一の蒸着用マスク治具を多数製造することができ、従来の機械加工によるマスク治具に比べて下地塗装不良等の発生率が格段に低くなり、また低コストとなる。
【0020】
さらに、製品の仕様変更が頻繁に行なわれる場合でも、従来の多数個処理用のマスク治具では機械加工で1箇所ずつ形状変更しなければならないので長時間を要しかつばらつきが出易く、益々下地塗装不良等が多発していたが、本発明の蒸着用マスク治具においては金型のキャビティ形状を修正すれば良いだけなので、仕様変更への対応も高精度で容易かつ低コストでできる。
【0021】
このようにして、高精度かつ低コストで製造することができ、仕様変更にも容易かつ安価に対応できる蒸着用マスク治具となる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図1乃至図4を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態にかかる蒸着用マスク治具とセットされる製品を示す分解斜視図である。図2(a)は本発明の実施の形態にかかる蒸着用マスク治具の上治具を示す平面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は底面図である。図3(a)は本発明の実施の形態にかかる蒸着用マスク治具の下治具を示す平面図、(b)は(a)のB−B断面図、(c)は底面図である。図4は本発明の実施の形態にかかる蒸着用マスク治具を用いた製品の下地塗装及び蒸着から出荷までの手順を示す工程図である。
【0023】
まず、本実施の形態にかかる蒸着用マスク治具の構造の概略と製品のセット方法について図1を参照して説明する。図1に示されるように、本実施の形態の蒸着用マスク治具1は、上治具2と下治具3の2つの部分から成り立っており、耐熱ABS樹脂製で射出成形によって製造されている。したがって、射出成形金型のキャビティ形状に沿って同一形状の高精度の上治具2及び下治具3を多数個製造することができる。上治具2には中央の貫通孔の周囲に複雑な形状のマスク部4が設けられており、また中央の貫通孔に渡されたマスク支持棒5にもマスク部4が設けられている。
【0024】
上治具2と下治具3の間にセットされる製品Pとして、本実施の形態においては携帯電話の本体の一部を例としている。この製品Pはポリカーボネート樹脂製で、やはり射出成形によって製造されており、この携帯電話の本体の一部Pの裏側に静電防止の目的で銅(Cu)と錫(Sn)の金属蒸着膜を着けるものである。想像線で囲まれた部分が(貫通孔9の周囲を除いて)蒸着される部分Eである。また、製品Pには4箇所に螺子孔10が貫通して設けられている。
【0025】
そこで、受け入れられた製品Pを上治具2を裏返しにして、裏面の製品保持部6に製品Pの所定の部分を嵌合させて、また前記4箇所の螺子孔10に嵌合するように上治具2の裏側に図示されない4本のピンを設けてセットし、上から下治具3を2本の固定爪12が上治具2の2箇所の固定爪係止部8に係止されるように被せて、上治具2と下治具3を一体化させる。これによって、製品Pは蒸着されない側において下治具3の2箇所の製品支持部11によって上治具2に押し付けられるので、以下の各工程で蒸着用マスク治具1を様々に動かしても蒸着用マスク治具1の中でガタつくことはなく、最初に上治具2の製品保持部6(及び図示されない4本のピン)にセットした位置から微動だにしない。
【0026】
次に、上治具2の詳細な構造について、図2を参照して説明する。図2(b),(c)に示されるように、上治具2の裏側には図1に示される製品Pに設けられた4箇所の螺子孔10に嵌合して保持する4本のピン6aが立設されている。そして、上治具2の外枠2aと裏側まで伸びているマスク部4の間の溝6が製品保持部となって、4本のピン6aとともに製品Pを上治具2の裏側の所定の位置に保持する。
【0027】
次に、下治具3の詳細な構造について、図3を参照して説明する。図3に示されるように、下治具3は製品Pがセットされた上治具2に対する蓋のような役割をする。即ち、上治具2にセットされた製品Pを上治具2に押え付けて固定する2箇所の製品支持部11、上治具2の固定爪係止部8に嵌めて上治具2と下治具3を一体化させる2本の固定爪12、そして上治具2の外枠2aより一回り小さく立設されている内枠3aを有し、下治具3を上治具2に嵌め込むことによって、蒸着部分Eを除く製品全体が蒸着用マスク治具によって保護されるので、製品の傷・打痕不良を大幅に低減できる。
【0028】
のみならず、製品Pの蒸着を行う部分Eも周囲に突出した蒸着用マスク治具1の上治具2の表面によって保護されるため、製品Pの蒸着部分Eについても傷・打痕不良を大幅に低減できる。
【0029】
次に、本実施の形態にかかる蒸着用マスク治具1を用いた下地塗装及び蒸着から出荷までの手順について、図4を参照して説明する。図4に示されるように、ステップS1で製品Pが受入れられると、上述の如く、蒸着用マスク治具1の1個に付き製品Pが1個ずつセットされ(ステップS2)、多数の蒸着用マスク治具1が塗装台の上に縦横に並べられて、スプレーガンで蒸着膜の付きを良くするためのアンダー塗装(下地塗装)が行なわれる(ステップS3)。続いて、製品Pのアンダー塗装の乾燥(ステップS4)が行なわれた後、製品Pが蒸着用マスク治具1の中にセットされたままの状態で蒸着装置の近傍まで運搬される(ステップS5)。そして、蒸着用マスク治具1ごと蒸着用の縦長の受け治具に複数個がセットされ(ステップS6)、この受け治具が蒸着装置の五角柱の回転治具に1面ごとに1個セットされる。蒸着装置は回転治具を3基備えているので、受け治具は合計15個セットされることになる。
【0030】
そして、3基の回転治具を回転させることによって蒸着膜厚が均一になるようにしながら、まず銅(Cu)が真空蒸着され、続いて錫(Sn)の真空蒸着が行なわれる(ステップS7)。所定の蒸着膜が付着したら蒸着装置を開けて受け治具を取り出し、受け治具から蒸着用マスク治具1を一つ々々取り外して(ステップS8)、さらに蒸着用マスク治具1の下治具3の2本の固定爪12を外して下治具3を上治具2から取り外し、蒸着された製品Pを取り出す(ステップS9)。その後、所定の検査を経て次工程へ出荷される(ステップS10,S11)。
【0031】
このように、ステップS2で蒸着用マスク治具1に製品PがセットされてからステップS9で蒸着された製品Pが取り出されるまでの間は、製品Pは蒸着用マスク治具1に収容された状態で取り扱われ、唯一露出している蒸着部分Eも上治具2の表面からマスク部4によって段差が付けられて内側に凹んでいるので、ステップS2からステップS9までの間は製品Pに傷や打痕等がつく可能性は極めて低くなる。
【0032】
このようにして、本実施の形態の蒸着用マスク治具1においては、製品Pのみでの着脱や取り扱いの回数が極めて少なくなり、製品Pに傷や打痕不良が発生しにくくなる。また、蒸着用マスク治具1は材料として耐熱性ABS樹脂を用いて射出成形により製造しているので、高精度の蒸着用マスク治具1を大量に製造することができ、低コストになる。さらに、製品Pの仕様変更があった場合でも蒸着用マスク治具1成型用の射出成型用金型のキャビティを修正するだけで良いので、仕様変更にも安価にかつ容易に対応することができる。
【0033】
本実施の形態においては、製品Pに銅(Cu)と錫(Sn)を真空蒸着する場合について説明したが、蒸着する材料はその他の金属でも良いし、金属以外のセラミックス等の材料でも構わない。また、下地塗装した後に蒸着する場合についてのみ説明し、名称も蒸着用マスク治具1となっているが、下地塗装した後にスパッタリングやイオン注入を行う場合にも応用することができる。
【0034】
また、本実施の形態においては、製品Pとして携帯電話の本体の一部を例として説明したが、他にも電卓、電子辞書、ポケットコンピュータ等の本体やその一部等を蒸着用マスク治具を用いる製品の例として挙げることができる。
【0035】
蒸着用マスク治具のその他の部分の構成、形状、数量、材質、大きさ、接続関係等についても、本実施の形態に限定されるものではない。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明にかかる蒸着用マスク治具は、製品の一部に下地塗装を施した後に蒸着を行う際に、不要な部分に蒸着膜が付着するのを防止する蒸着用マスク治具であって、前記製品単体ごとに1個の蒸着用マスク治具を使用して、かつ前記下地塗装の際の塗装用マスク治具と兼用したものである。
【0037】
これによって、下地塗装の前に製品単体ごとに1個の蒸着用マスク治具をセットした後は、蒸着が終わって製品を蒸着用マスク治具から外すまでは製品そのものを着脱したり取り扱ったりしないで済むため、製品の傷・打痕不良を大幅に低減できるとともに、高精度の蒸着用マスク治具を塗装用マスク治具と兼用するため、下地塗装不良も大幅に低減できる。無論、各処理は製品1個ごとに行うわけではなく、下地塗装は製品をセットした蒸着用マスク治具を縦横に多数個並べてスプレーガンで1度に多数個に塗装し、乾燥した後、蒸着用マスク治具が多数個受け治具にセットされ、この受け治具が複数個蒸着装置の回転治具にセットされて真空蒸着が行なわれる。
【0038】
このようにして、製品の傷・打痕不良を大幅に低減できるとともに、高精度の蒸着用マスク治具を塗装用マスク治具と兼用するため、下地塗装不良も大幅に低減できる蒸着用マスク治具となる。
【0039】
請求項2の発明にかかる蒸着用マスク治具は、請求項1の構成において、前記蒸着を行う部分を除く前記製品全体を覆うものである。
【0040】
これによって、蒸着部分を除く製品全体が蒸着用マスク治具によって保護されるので、請求項1に記載の効果に加えて、製品の傷・打痕不良を大幅に低減できるとともに、万が一蒸着用マスク治具を落としたりしても、蒸着用マスク治具の外側が傷つくだけで中の製品が傷つけられることはない。
【0041】
このようにして、製品の傷・打痕不良を大幅に低減でき、より扱い易い蒸着用マスク治具となる。
【0042】
請求項3の発明にかかる蒸着用マスク治具は、請求項1または請求項2の構成において、前記蒸着用マスク治具表面に対して前記製品の蒸着を行う部分が内部に凹むように段差を設けたものである。
【0043】
これによって、製品の蒸着を行う部分も周囲に突出した蒸着用マスク治具表面によって保護されるため、製品の蒸着部分の傷・打痕不良を大幅に低減できるとともに、請求項1または請求項2に記載の効果に加えて、誤って作業台や床に蒸着用マスク治具を蒸着部分を下にして落としたりしても、蒸着部分が凹んでいるため蒸着前なら下地塗装が、蒸着後なら蒸着膜が周囲に突出した蒸着用マスク治具表面によって保護されて、傷つけられることはない。
【0044】
このようにして、製品の蒸着部分についても傷・打痕不良を大幅に低減することができる蒸着用マスク治具となる。
【0045】
請求項4の発明にかかる蒸着用マスク治具は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つの構成において、合成樹脂成形品からなるものである。
【0046】
したがって、請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の効果に加えて、工具鋼等の精密加工が可能な金型に蒸着用マスク治具の形状を有するキャビティを彫り込んで、射出成形等の精密な成形法によって製造されるので、高精度の同一の蒸着用マスク治具を多数製造することができ、従来の機械加工によるマスク治具に比べて下地塗装不良等の発生率が格段に低くなり、また低コストとなる。
【0047】
さらに、製品の仕様変更が頻繁に行なわれる場合でも、従来の多数個処理用のマスク治具では機械加工で1箇所ずつ形状変更しなければならないので長時間を要しかつばらつきが出易く、益々下地塗装不良等が多発していたが、本発明の蒸着用マスク治具においては金型のキャビティ形状を修正すれば良いだけなので、仕様変更への対応も高精度で容易かつ低コストでできる。
【0048】
このようにして、高精度かつ低コストで製造することができ、仕様変更にも容易かつ安価に対応できる蒸着用マスク治具となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の実施の形態にかかる蒸着用マスク治具とセットされる製品を示す分解斜視図である。
【図2】図2(a)は本発明の実施の形態にかかる蒸着用マスク治具の上治具を示す平面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は底面図である。
【図3】図3(a)は本発明の実施の形態にかかる蒸着用マスク治具の下治具を示す平面図、(b)は(a)のB−B断面図、(c)は底面図である。
【図4】図4は本発明の実施の形態にかかる蒸着用マスク治具を用いた製品の下地塗装及び蒸着から出荷までの手順を示す工程図である。
【図5】図5は従来のマスク治具を用いた製品の下地塗装及び蒸着から出荷までの手順を示す工程図である。
【図6】図6は従来の下地塗装用マスク治具の上治具に製品をセットした状態を裏側から見て示す平面図である。
【図7】図7は従来の蒸着用マスク治具の上治具の製品をセットした状態と下治具を並べて示す平面図である。
【符号の説明】
1 蒸着用マスク治具
2 上治具
3 下治具
4 マスク部(段差)
P 製品
【発明の属する技術分野】
本発明は、製品の一部に下地塗装を施した後に蒸着を行う際に、蒸着が不要な部分を覆うことによって蒸着膜が付着するのを防止する蒸着用マスク治具に関するものである。
【0002】
なお、本明細書において「製品」とは、必ずしも完成品またはそれに近いもののみを意味せず、半製品・部品等も上工程における製品であるから、一括して「製品」と称する。
【0003】
【従来の技術】
従来の下地塗装及び蒸着の工程について、図5乃至図7を参照して説明する。図5は従来のマスク治具を用いた製品の下地塗装及び蒸着から出荷までの手順を示す工程図である。図6は従来の下地塗装用マスク治具の上治具に製品をセットした状態を裏側から見て示す平面図である。図7は従来の蒸着用マスク治具の上治具の製品をセットした状態と下治具を並べて示す平面図である。
【0004】
図5に示されるように、従来の下地塗装及び蒸着の工程は、ステップS21で製品(ここでは携帯電話の本体の一部)が受入れられると、まず専用の塗装用マスク治具にセットされ(ステップS22)、スプレーガンで蒸着膜の付きを良くするためのアンダー塗装(下地塗装)が行なわれる(ステップS23)。それから塗装用マスク治具が外され(ステップS24)、製品のアンダー塗装の乾燥(ステップS25)が行なわれた後、製品が蒸着装置の近傍まで運搬される(ステップS26)。そして、今度は専用の蒸着用マスク治具にセットされ(ステップS27)、この蒸着用マスク治具が複数個蒸着装置の回転治具にセットされて蒸着用マスク治具を回転させることによって蒸着膜厚が均一になるように真空蒸着が行なわれる(ステップS28)。所定の蒸着膜が付着したら蒸着装置を開けて蒸着用マスク治具を取り出し、蒸着された製品が取り外され(ステップS29)、所定の検査を経て次工程へ出荷される(ステップS30,S31)。
【0005】
ここで、図7に示される塗装用マスク治具の上治具16(この上にほぼ同じ大きさの下治具が被せられる。)、図8に示される蒸着用マスク治具21は、ともにジュラコン樹脂を機械加工して製造されている。そして、1度に大量の製品P1を塗装処理できるように1つの塗装用マスク治具の上治具16に多くの製品P1がセットできるようになっている。同様に1度に大量の下地塗装済み製品P2を蒸着処理できるように、1つの蒸着用マスク治具21の上治具22に多くの製品P2がセットできるようになっている。
【0006】
図8では上治具22の製品セット部24に1つの製品P2しかセットされていないが、全ての製品セット部24に製品P2がセットされると、下治具23が裏返しに上治具22に被せられて相対する固定部22a,23aがそれぞれ密着してクリップで挟んで固定される。これによって、下治具23の製品支持板25によって各製品P2が押さえられ、ずれないように固定される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の工程においては、塗装用マスク治具16と蒸着用マスク治具21を別々にして、それぞれに多くの製品P1,P2をセットできるようにしているので、製品P1,P2のみでの着脱や取り扱いの回数が多くなり、また製品P2を複数個運搬ケースに入れて運搬するので、製品P1,P2に傷や打痕不良が多発する。また、大量の製品P1,P2を一括処理可能かつ高いマスク精度を有するマスク治具16,21が要求され、高価なものになる。さらに、製品の仕様変更があった場合マスク治具16,21を修正するにしても、新規にマスク治具を製造するにしても費用がかさみ、樹脂の機械加工では高精度が出にくいことと塗装用マスク治具16がずれると全ての製品についてずれるので、下地塗装不良が多発する場合があるという問題点があった。
【0008】
そこで、本発明は、製品に傷や打痕不良が発生しにくく、高精度で大量に製造することができて低コストになり、下地塗装不良も発生しにくく、製品の仕様変更があった場合でも安価にかつ容易に対応することができる蒸着用マスク治具の提供を課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明にかかる蒸着用マスク治具は、製品の一部に下地塗装を施した後に蒸着を行う工程において、不要な部分に蒸着膜が付着するのを防止する蒸着用マスク治具であって、前記製品単体ごとに1個の蒸着用マスク治具を使用して、かつ前記下地塗装の際の塗装用マスク治具と兼用したものである。
【0010】
これによって、下地塗装の前に製品単体ごとに1個の蒸着用マスク治具をセットした後は、蒸着が終わって製品を蒸着用マスク治具から外すまでは製品そのものを着脱したり取り扱ったりしないで済むため、製品の傷・打痕不良を大幅に低減できるとともに、高精度の蒸着用マスク治具を塗装用マスク治具と兼用するため、下地塗装不良も大幅に低減できる。無論、各処理は製品1個ごとに行うわけではなく、下地塗装は製品をセットした蒸着用マスク治具を縦横に多数個並べてスプレーガンで1度に多数個に塗装し、乾燥した後、蒸着用マスク治具が多数個受け治具にセットされ、この受け治具が複数個蒸着装置の回転治具にセットされて真空蒸着が行なわれる。
【0011】
このようにして、製品の傷・打痕不良を大幅に低減できるとともに、高精度の蒸着用マスク治具を塗装用マスク治具と兼用するため、下地塗装不良も大幅に低減できる蒸着用マスク治具となる。
【0012】
請求項2の発明にかかる蒸着用マスク治具は、請求項1の構成において、前記蒸着を行う部分を除く前記製品全体を覆うものである。
【0013】
これによって、蒸着部分を除く製品全体が蒸着用マスク治具によって保護されるので、製品の傷・打痕不良を大幅に低減できるとともに、万が一蒸着用マスク治具を落としたりしても、蒸着用マスク治具の外側が傷つくだけで中の製品が傷つけられることはない。
【0014】
このようにして、製品の傷・打痕不良を大幅に低減でき、より扱い易い蒸着用マスク治具となる。
【0015】
請求項3の発明にかかる蒸着用マスク治具は、請求項1または請求項2の構成において、前記蒸着用マスク治具表面に対して前記製品の蒸着を行う部分が内部に凹むように段差を設けたものである。
【0016】
これによって、製品の蒸着を行う部分も周囲に突出した蒸着用マスク治具表面によって保護されるため、製品の蒸着部分の傷・打痕不良を大幅に低減できるとともに、誤って作業台や床に蒸着用マスク治具を蒸着部分を下にして落としたりしても、蒸着部分が凹んでいるため蒸着前なら下地塗装が、蒸着後なら蒸着膜が周囲に突出した蒸着用マスク治具表面によって保護されて、傷つけられることはない。
【0017】
このようにして、製品の蒸着部分についても傷・打痕不良を大幅に低減することができる蒸着用マスク治具となる。
【0018】
請求項4の発明にかかる蒸着用マスク治具は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つの構成において、合成樹脂成形品からなるものである。
【0019】
したがって、工具鋼等の精密加工が可能な金型に蒸着用マスク治具の形状を有するキャビティを彫り込んで、射出成形等の精密な成形法によって製造されるので、高精度の同一の蒸着用マスク治具を多数製造することができ、従来の機械加工によるマスク治具に比べて下地塗装不良等の発生率が格段に低くなり、また低コストとなる。
【0020】
さらに、製品の仕様変更が頻繁に行なわれる場合でも、従来の多数個処理用のマスク治具では機械加工で1箇所ずつ形状変更しなければならないので長時間を要しかつばらつきが出易く、益々下地塗装不良等が多発していたが、本発明の蒸着用マスク治具においては金型のキャビティ形状を修正すれば良いだけなので、仕様変更への対応も高精度で容易かつ低コストでできる。
【0021】
このようにして、高精度かつ低コストで製造することができ、仕様変更にも容易かつ安価に対応できる蒸着用マスク治具となる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図1乃至図4を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態にかかる蒸着用マスク治具とセットされる製品を示す分解斜視図である。図2(a)は本発明の実施の形態にかかる蒸着用マスク治具の上治具を示す平面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は底面図である。図3(a)は本発明の実施の形態にかかる蒸着用マスク治具の下治具を示す平面図、(b)は(a)のB−B断面図、(c)は底面図である。図4は本発明の実施の形態にかかる蒸着用マスク治具を用いた製品の下地塗装及び蒸着から出荷までの手順を示す工程図である。
【0023】
まず、本実施の形態にかかる蒸着用マスク治具の構造の概略と製品のセット方法について図1を参照して説明する。図1に示されるように、本実施の形態の蒸着用マスク治具1は、上治具2と下治具3の2つの部分から成り立っており、耐熱ABS樹脂製で射出成形によって製造されている。したがって、射出成形金型のキャビティ形状に沿って同一形状の高精度の上治具2及び下治具3を多数個製造することができる。上治具2には中央の貫通孔の周囲に複雑な形状のマスク部4が設けられており、また中央の貫通孔に渡されたマスク支持棒5にもマスク部4が設けられている。
【0024】
上治具2と下治具3の間にセットされる製品Pとして、本実施の形態においては携帯電話の本体の一部を例としている。この製品Pはポリカーボネート樹脂製で、やはり射出成形によって製造されており、この携帯電話の本体の一部Pの裏側に静電防止の目的で銅(Cu)と錫(Sn)の金属蒸着膜を着けるものである。想像線で囲まれた部分が(貫通孔9の周囲を除いて)蒸着される部分Eである。また、製品Pには4箇所に螺子孔10が貫通して設けられている。
【0025】
そこで、受け入れられた製品Pを上治具2を裏返しにして、裏面の製品保持部6に製品Pの所定の部分を嵌合させて、また前記4箇所の螺子孔10に嵌合するように上治具2の裏側に図示されない4本のピンを設けてセットし、上から下治具3を2本の固定爪12が上治具2の2箇所の固定爪係止部8に係止されるように被せて、上治具2と下治具3を一体化させる。これによって、製品Pは蒸着されない側において下治具3の2箇所の製品支持部11によって上治具2に押し付けられるので、以下の各工程で蒸着用マスク治具1を様々に動かしても蒸着用マスク治具1の中でガタつくことはなく、最初に上治具2の製品保持部6(及び図示されない4本のピン)にセットした位置から微動だにしない。
【0026】
次に、上治具2の詳細な構造について、図2を参照して説明する。図2(b),(c)に示されるように、上治具2の裏側には図1に示される製品Pに設けられた4箇所の螺子孔10に嵌合して保持する4本のピン6aが立設されている。そして、上治具2の外枠2aと裏側まで伸びているマスク部4の間の溝6が製品保持部となって、4本のピン6aとともに製品Pを上治具2の裏側の所定の位置に保持する。
【0027】
次に、下治具3の詳細な構造について、図3を参照して説明する。図3に示されるように、下治具3は製品Pがセットされた上治具2に対する蓋のような役割をする。即ち、上治具2にセットされた製品Pを上治具2に押え付けて固定する2箇所の製品支持部11、上治具2の固定爪係止部8に嵌めて上治具2と下治具3を一体化させる2本の固定爪12、そして上治具2の外枠2aより一回り小さく立設されている内枠3aを有し、下治具3を上治具2に嵌め込むことによって、蒸着部分Eを除く製品全体が蒸着用マスク治具によって保護されるので、製品の傷・打痕不良を大幅に低減できる。
【0028】
のみならず、製品Pの蒸着を行う部分Eも周囲に突出した蒸着用マスク治具1の上治具2の表面によって保護されるため、製品Pの蒸着部分Eについても傷・打痕不良を大幅に低減できる。
【0029】
次に、本実施の形態にかかる蒸着用マスク治具1を用いた下地塗装及び蒸着から出荷までの手順について、図4を参照して説明する。図4に示されるように、ステップS1で製品Pが受入れられると、上述の如く、蒸着用マスク治具1の1個に付き製品Pが1個ずつセットされ(ステップS2)、多数の蒸着用マスク治具1が塗装台の上に縦横に並べられて、スプレーガンで蒸着膜の付きを良くするためのアンダー塗装(下地塗装)が行なわれる(ステップS3)。続いて、製品Pのアンダー塗装の乾燥(ステップS4)が行なわれた後、製品Pが蒸着用マスク治具1の中にセットされたままの状態で蒸着装置の近傍まで運搬される(ステップS5)。そして、蒸着用マスク治具1ごと蒸着用の縦長の受け治具に複数個がセットされ(ステップS6)、この受け治具が蒸着装置の五角柱の回転治具に1面ごとに1個セットされる。蒸着装置は回転治具を3基備えているので、受け治具は合計15個セットされることになる。
【0030】
そして、3基の回転治具を回転させることによって蒸着膜厚が均一になるようにしながら、まず銅(Cu)が真空蒸着され、続いて錫(Sn)の真空蒸着が行なわれる(ステップS7)。所定の蒸着膜が付着したら蒸着装置を開けて受け治具を取り出し、受け治具から蒸着用マスク治具1を一つ々々取り外して(ステップS8)、さらに蒸着用マスク治具1の下治具3の2本の固定爪12を外して下治具3を上治具2から取り外し、蒸着された製品Pを取り出す(ステップS9)。その後、所定の検査を経て次工程へ出荷される(ステップS10,S11)。
【0031】
このように、ステップS2で蒸着用マスク治具1に製品PがセットされてからステップS9で蒸着された製品Pが取り出されるまでの間は、製品Pは蒸着用マスク治具1に収容された状態で取り扱われ、唯一露出している蒸着部分Eも上治具2の表面からマスク部4によって段差が付けられて内側に凹んでいるので、ステップS2からステップS9までの間は製品Pに傷や打痕等がつく可能性は極めて低くなる。
【0032】
このようにして、本実施の形態の蒸着用マスク治具1においては、製品Pのみでの着脱や取り扱いの回数が極めて少なくなり、製品Pに傷や打痕不良が発生しにくくなる。また、蒸着用マスク治具1は材料として耐熱性ABS樹脂を用いて射出成形により製造しているので、高精度の蒸着用マスク治具1を大量に製造することができ、低コストになる。さらに、製品Pの仕様変更があった場合でも蒸着用マスク治具1成型用の射出成型用金型のキャビティを修正するだけで良いので、仕様変更にも安価にかつ容易に対応することができる。
【0033】
本実施の形態においては、製品Pに銅(Cu)と錫(Sn)を真空蒸着する場合について説明したが、蒸着する材料はその他の金属でも良いし、金属以外のセラミックス等の材料でも構わない。また、下地塗装した後に蒸着する場合についてのみ説明し、名称も蒸着用マスク治具1となっているが、下地塗装した後にスパッタリングやイオン注入を行う場合にも応用することができる。
【0034】
また、本実施の形態においては、製品Pとして携帯電話の本体の一部を例として説明したが、他にも電卓、電子辞書、ポケットコンピュータ等の本体やその一部等を蒸着用マスク治具を用いる製品の例として挙げることができる。
【0035】
蒸着用マスク治具のその他の部分の構成、形状、数量、材質、大きさ、接続関係等についても、本実施の形態に限定されるものではない。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明にかかる蒸着用マスク治具は、製品の一部に下地塗装を施した後に蒸着を行う際に、不要な部分に蒸着膜が付着するのを防止する蒸着用マスク治具であって、前記製品単体ごとに1個の蒸着用マスク治具を使用して、かつ前記下地塗装の際の塗装用マスク治具と兼用したものである。
【0037】
これによって、下地塗装の前に製品単体ごとに1個の蒸着用マスク治具をセットした後は、蒸着が終わって製品を蒸着用マスク治具から外すまでは製品そのものを着脱したり取り扱ったりしないで済むため、製品の傷・打痕不良を大幅に低減できるとともに、高精度の蒸着用マスク治具を塗装用マスク治具と兼用するため、下地塗装不良も大幅に低減できる。無論、各処理は製品1個ごとに行うわけではなく、下地塗装は製品をセットした蒸着用マスク治具を縦横に多数個並べてスプレーガンで1度に多数個に塗装し、乾燥した後、蒸着用マスク治具が多数個受け治具にセットされ、この受け治具が複数個蒸着装置の回転治具にセットされて真空蒸着が行なわれる。
【0038】
このようにして、製品の傷・打痕不良を大幅に低減できるとともに、高精度の蒸着用マスク治具を塗装用マスク治具と兼用するため、下地塗装不良も大幅に低減できる蒸着用マスク治具となる。
【0039】
請求項2の発明にかかる蒸着用マスク治具は、請求項1の構成において、前記蒸着を行う部分を除く前記製品全体を覆うものである。
【0040】
これによって、蒸着部分を除く製品全体が蒸着用マスク治具によって保護されるので、請求項1に記載の効果に加えて、製品の傷・打痕不良を大幅に低減できるとともに、万が一蒸着用マスク治具を落としたりしても、蒸着用マスク治具の外側が傷つくだけで中の製品が傷つけられることはない。
【0041】
このようにして、製品の傷・打痕不良を大幅に低減でき、より扱い易い蒸着用マスク治具となる。
【0042】
請求項3の発明にかかる蒸着用マスク治具は、請求項1または請求項2の構成において、前記蒸着用マスク治具表面に対して前記製品の蒸着を行う部分が内部に凹むように段差を設けたものである。
【0043】
これによって、製品の蒸着を行う部分も周囲に突出した蒸着用マスク治具表面によって保護されるため、製品の蒸着部分の傷・打痕不良を大幅に低減できるとともに、請求項1または請求項2に記載の効果に加えて、誤って作業台や床に蒸着用マスク治具を蒸着部分を下にして落としたりしても、蒸着部分が凹んでいるため蒸着前なら下地塗装が、蒸着後なら蒸着膜が周囲に突出した蒸着用マスク治具表面によって保護されて、傷つけられることはない。
【0044】
このようにして、製品の蒸着部分についても傷・打痕不良を大幅に低減することができる蒸着用マスク治具となる。
【0045】
請求項4の発明にかかる蒸着用マスク治具は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つの構成において、合成樹脂成形品からなるものである。
【0046】
したがって、請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の効果に加えて、工具鋼等の精密加工が可能な金型に蒸着用マスク治具の形状を有するキャビティを彫り込んで、射出成形等の精密な成形法によって製造されるので、高精度の同一の蒸着用マスク治具を多数製造することができ、従来の機械加工によるマスク治具に比べて下地塗装不良等の発生率が格段に低くなり、また低コストとなる。
【0047】
さらに、製品の仕様変更が頻繁に行なわれる場合でも、従来の多数個処理用のマスク治具では機械加工で1箇所ずつ形状変更しなければならないので長時間を要しかつばらつきが出易く、益々下地塗装不良等が多発していたが、本発明の蒸着用マスク治具においては金型のキャビティ形状を修正すれば良いだけなので、仕様変更への対応も高精度で容易かつ低コストでできる。
【0048】
このようにして、高精度かつ低コストで製造することができ、仕様変更にも容易かつ安価に対応できる蒸着用マスク治具となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の実施の形態にかかる蒸着用マスク治具とセットされる製品を示す分解斜視図である。
【図2】図2(a)は本発明の実施の形態にかかる蒸着用マスク治具の上治具を示す平面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は底面図である。
【図3】図3(a)は本発明の実施の形態にかかる蒸着用マスク治具の下治具を示す平面図、(b)は(a)のB−B断面図、(c)は底面図である。
【図4】図4は本発明の実施の形態にかかる蒸着用マスク治具を用いた製品の下地塗装及び蒸着から出荷までの手順を示す工程図である。
【図5】図5は従来のマスク治具を用いた製品の下地塗装及び蒸着から出荷までの手順を示す工程図である。
【図6】図6は従来の下地塗装用マスク治具の上治具に製品をセットした状態を裏側から見て示す平面図である。
【図7】図7は従来の蒸着用マスク治具の上治具の製品をセットした状態と下治具を並べて示す平面図である。
【符号の説明】
1 蒸着用マスク治具
2 上治具
3 下治具
4 マスク部(段差)
P 製品
Claims (4)
- 製品の一部に下地塗装を施した後に蒸着を行う際に、不要な部分に蒸着膜が付着するのを防止する蒸着用マスク治具において、
前記製品単体ごとに1個の蒸着用マスク治具を使用し、かつ、前記下地塗装の際の塗装用マスク治具と兼用したことを特徴とする蒸着用マスク治具。 - 前記蒸着を行う部分以外の前記製品全体を覆うものであることを特徴とする請求項1に記載の蒸着用マスク治具。
- 前記蒸着用マスク治具表面に対して前記製品の蒸着を行う部分が内部に凹むように段差を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蒸着用マスク治具。
- 合成樹脂成形品からなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の蒸着用マスク治具。
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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-
2002
- 2002-11-06 JP JP2002322736A patent/JP2004156098A/ja not_active Withdrawn
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