JP2004154633A - 高温炭酸ガス吸収材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】物質存在量が豊富なカルシウム、シリコン及びナトリウムあるいはカリウムを用い、エーライトに炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウムをカルシウムとナトリウムあるいはカリウムの原子比で1:0〜2添加し、高温でエーライト及び炭酸水素ナトリウムと炭酸ガスとを反応させ、スーパーライト及びナトリウム−カルシウム−シリコン複炭酸塩あるいはカリウム−カルシウム−シリコン複炭酸塩との混合物とし、前記複炭酸塩の溶融状態下で炭酸ガスを吸収及び放出させることにより、高温におけるカルシアの焼結及び蒸発を抑制し、高い炭酸ガス吸収率で炭酸ガスを吸収する高温炭酸ガス吸収材、及び炭酸ガス分離方法。
【選択図】 図7
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高温炭酸ガス吸収材に関するものであり、更に詳しくは、炭酸ガスの排出削減に有用な炭酸ガス吸収材であって、800〜1000℃の高温において高温排ガスから、直接、炭酸ガスのみを分離することが可能な新規高温炭酸ガス吸収材、及び炭酸ガス分離方法に関するものである。本発明は、石炭ガス炉等から排出される800〜1000℃の高温の排ガスから炭酸ガスを捕捉し、分離することが可能な高温炭酸ガス吸収材及び該高温炭酸ガス吸収材を使用して高温排ガス中の炭酸ガスを効率よく分離する方法を提供するものとして有用である。
【0002】
【従来の技術】
石炭ガス化炉におけるガス化温度は、先行技術文献(例えば、特許文献1参照)に記載されているように、2000℃程度まで温度が上昇する。ガス化剤の添加による石炭のガス化に伴う吸熱反応でガス温度は低下し、ガス化炉出口温度におけるガスの温度は1100℃程度となる。一般に、高温における炭酸ガスの分離技術に関しては、先行技術文献(例えば、特許文献2参照)に記載されているように、リチウムシリーケートやリチウムジルコネート等のリチウムを含むいくつかの複合酸化物が知られている。これらの化合物の炭酸ガス吸収及び放出反応の温度は750℃程度である。
【0003】
発電所などから排出される排ガス等の炭酸ガス濃度の高い部位から炭酸ガスを捕捉する技術としては、アミン系溶媒を用いた化学吸着法が広く知られている。アミン系溶媒を用いた炭酸ガス吸収法では、排ガスの温度を200℃まで冷却する必要がある。排ガスの高温利用を考慮すると、できるだけ高い温度で炭酸ガスのみを捕捉する技術がコスト的に有利であるが、物質存在量の問題やあらゆる温度に対応するための材料群が揃っていないため、高温で炭酸ガスを吸収する技術は実用化には至っていない。
【0004】
石炭ガス化炉から出る1000℃程度の高温に熱せられた改質ガスの高温利用を勘案すると、ガス化炉から出てくる1000℃の段階で炭酸ガスを分離することが炭酸ガス分離のためのエネルギー消費量を少なくする観点から要求されるが、1000℃程度の高温で炭酸ガスを高効率に吸収する炭酸ガス吸収材は、現在のところ開発されていない。また、750℃までの高温で炭酸ガスのみを高効率に吸収するリチウム複酸化物系の炭酸ガス吸収材の問題点として、リチウムの地上における物質存在量が少ないという問題があった。リチウム元素の物質存在量を示すクラーク数は、他のアルカリ金属元素のナトリウムやカリウムと比較すると1/400ほどであり、上記リチウム複酸化物系の炭酸ガス吸収材は、発電所などから排出される排ガス中の炭酸ガスを捕捉するような大容量の炭酸ガス吸着が要求される部位での炭酸ガス吸収材としては、物質存在量の観点から問題があった。
【0005】
また、リチウムは物質存在量が少ないため、他のアルカリ金属元素のナトリウムやカリウムあるいは他のアルカリ土類金属元素のマグネシウムやカルシウムと比較するとコストが高いという問題があった。酸化物セラミックスは、一般に、高温で焼結が進む。高温で焼結が進むと表面積が低下するため、炭酸ガス吸収材等の表面反応を利用した機能材料の開発においては、焼結が進まないような機構を付与する必要がある。更に、カルシアやマグネシア系の酸化物あるいは複合酸化物は、1000℃の高温においてカルシアやマグネシアの蒸発により消耗するため、高温における長時間あるいは繰り返し使用を目的とするには問題があった。このように、従来のリチウム系の炭酸ガス吸収材は物質存在量の観点から問題があった。また、1000℃ほどの高温に熱せられた改質ガスの高温利用を勘案すると、より高温の段階で炭酸ガスを分離することが炭酸ガス分離のためのエネルギー消費量を少なくする観点から要求され、1000℃ほどの高温で炭酸ガスを高効率で捕捉する炭酸ガス吸収材は開発されていなかった。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−161284号公報
【特許文献2】
特開2001−269533号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、上記従来技術における諸問題を抜本的に解決することを可能とする新しい炭酸ガス吸収材を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、カルシウムシリケート系の800〜1000℃の高温域における炭酸ガスの吸収及び放出の可逆反応を利用した新しい高温炭酸ガス吸収材を構築することにより所期の目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、物質存在量が豊富なカルシウム、シリコン及びナトリウム又はカリウムを用いた高温炭酸ガス吸収材に係るものであり、ナトリウムあるいはカリウムの添加により高温におけるカルシアの焼結及び蒸発を抑制し、800〜1000℃の温度範囲で炭酸ガスを高効率で吸収及び放出させることにより、石炭ガス化炉等より出てくる1000℃程度の高温改質ガスから、直接、炭酸ガスのみを捕捉することを可能とする高温炭酸ガス吸収材を提供すること、及び該高温炭酸ガス吸収材を使用して高温排ガスから炭酸ガスを選択的に分離することを可能とする炭酸ガス分離方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための、本発明は、(1)カルシウムシリケート系の800〜1000℃の高温域における炭酸ガスの吸収及び放出反応を利用して、高温におけるカルシア系酸化物の焼結による炭酸ガス吸収効率の低下を抑制する炭酸ガス吸収材であって、上記カルシウムシリケート系が、カルシウムとシリコンの比が3:1となるエーライトCa3 SiO5 を構成要素として含むことを特徴とする炭酸ガス吸収材、である。
また、本発明は、(2)炭酸ガス吸収材が、ナトリウム又はカリウムを添加したエーライトから構成されることを特徴とする上記(1)の炭酸ガス吸収材、(3)ナトリウム−カルシウム−シリコンの複炭酸塩及びカリウム−カルシウム−シリコンの複炭酸塩の溶融状態下で炭酸ガスの吸収及び放出を行うことを特徴とする上記(1)の炭酸ガス吸収材、を好ましい実施態様とするものである。
また、本発明は、(4)ナトリウム及びカリウムのエーライトに対する混合割合が、カルシウム原子とナトリウムあるいはカリウムの原子比に換算して1:0〜2モルで示される比率であることを特徴とする上記(2)の炭酸ガス吸収材、を好ましい実施態様とするものである。
また、本発明は、(5)上記(1)の炭酸ガス吸収材の炭酸ガスの吸収及び放出反応を利用して、該炭酸ガス吸収材に、800〜1000℃の温度範囲において高温排ガス中の炭酸ガスを捕捉さて、該高温排ガスから炭酸ガスを分離することを特徴とする炭酸ガス分離方法、である。
更に、本発明は、(6)炭酸ガスの吸収及び放出反応を、ナトリウム−カルシウム−シリコンの複炭酸塩及びカリウム−カルシウム−シリコンの複炭酸塩の溶融状態下で行うことを特徴とする上記(5)の炭酸ガス分離方法、を好ましい実施態様とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、エーライトCa3 SiO5 に炭酸水素ナトリウムNaHCO3 あるいは炭酸水素カリウムKHCO3 をカルシウムとナトリウムあるいはカリウムの原子比で1:0〜2添加し、800〜1000℃の高温でエーライトと炭酸水素ナトリウムあるいは炭酸水素カリウムを炭酸ガスと反応させ、スーパーライトCa5 (SiO4 )2 (CO3 )及びナトリウム−カルシウム−シリコン複炭酸塩あるいはカリウム−カルシウム−シリコン複炭酸塩との混合物とし、上記スーパーライト及び複炭酸塩の溶融状態下で炭酸ガスを吸収及び放出させることにより、炭酸ガス吸収率を増加させるとともに、高温におけるカルシアの焼結及び蒸発を抑制させることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の高温炭酸ガス吸収材は、カルシウムとシリコンの比が3:1となるエーライトを構成要素として含み、好適には、炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウムを添加したエーライトから構成される。この場合、ナトリウム及びカリウムのエーライトに対する混合割合が、カルシウム原子とナトリウムあるいはカリウムの原子比に換算して1:0〜2モルで示される比率であることが好ましい。本発明の高温炭酸ガス吸収材の構成要素である、上記エーライト、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸水素カリウムは、これらの成分を含むものであれば適宜の材料を使用することができ、特に制限されない。
【0011】
本発明では、上記高温炭酸ガス吸収材を使用し、該炭酸ガス吸収材に、800〜1000℃の温度範囲において石炭ガス炉等から排出される高温の排ガスを接触させることにより、上記高温炭酸ガス吸収材に高温排ガス中の炭酸ガスを捕捉させて、該高温排ガスから炭酸ガスを分離することができる。本発明の炭酸ガス分離方法は、石炭ガス炉等から排出される800〜1000℃の高温排ガス中の炭酸ガスの分離に好適に適用されるものであり、上記石炭ガス炉等から排出される高温排ガスと同等の高温排ガスであれば、その種類にかかわらず広く適用することができる。
【0012】
エーライトに炭酸水素ナトリウムあるいは炭酸水素カリウムを添加し、炭酸ガス雰囲気下で加熱すると、200℃程度の低温で炭酸水素ナトリウムあるいは炭酸水素カリウムが分解し、炭酸ナトリウムNa2 CO3 あるいは炭酸カリウムK2 CO3 を生成すると同時にエーライトとも反応し、2種類のナトリウム−カルシウム−シリコン複炭酸塩あるいはカリウム−カルシウム−シリコン複炭酸塩を生成する。
【0013】
上記複炭酸塩のうち、片方の複炭酸塩の融点はナトリウム系及びカリウム系ともに800℃程度であり、カルシアが炭酸ガスを放出する直前に溶融する。したがって、900℃付近から始まるカルシアの炭酸ガス放出及び吸収反応は、この複炭酸塩の溶融状態下で起こる。もう片方の複炭酸塩は、980℃付近に融点があり、カルシアの炭酸ガス放出及び吸収反応が起こる温度域に重なり合うため、カルシアの炭酸ガス放出及び吸収反応が促進され、炭酸ガスの吸収率が増加し、カルシアの焼結及び蒸発を更に抑制する。
【0014】
次に、本発明の高温炭酸ガス吸収材の作用について説明する。
純粋なエーライトでは、炭酸ガス気流中の1000℃までの温度範囲で、結晶粒表面部が下記(1)式のようにビーライトCa2 SiO4 に分解しつつ、生じる過剰のカルシアが炭酸ガスを吸収し、炭酸カルシウムを生成する。また、同時に、下記(2)式のようにビーライトの一部はスーパーライトCa5 (SiO4 )2 (CO3 )も生成する。
Ca3SiO5 (s)+CO2 (g)→ Ca2SiO4(s)+CaCO3 (s) (1)
5Ca2SiO4 (s)+ CO2(g)→ 2Ca5(SiO4)2(CO3) (s,l) (2)
【0015】
上記(1)式の炭酸カルシウムは、900℃以上の温度で下記(3)式のように炭酸ガスを放出し、カルシアCaOとなる。炭酸ガス雰囲気下では下記(3)式は、可逆的な反応となる。
CaCO3 (s) → CaO (s) + CO2 (g) (3)
【0016】
通常、900℃以上の高温で炭酸ガスを放出したカルシアは、1000℃ほどの高温下では蒸発し損耗するが、エーライトから出発した系では、カルシアが炭酸ガスを放出すると同時にスーパーライトが溶融を始め、カルシアの炭酸ガスの放出及び吸収反応はスーパーライトの融液を介して行われ、カルシアは融液に取り込まれているため、カルシアの高温における焼結及び蒸発を抑制することができる。
【0017】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例
(1)炭酸ガス吸収材の調製
カルシウムとシリコンの比が3:1となるエーライトを炭酸ガス吸収材の基本構成成分として用いた。
エーライトに炭酸水素ナトリウムを、カルシウムとナトリウムの原子比で1:0〜2の範囲で添加し、炭酸ガス吸収材を調製した。
また、エーライトに炭酸水素カリウムを、カルシウムとカリウムの原子比で1:0〜2の範囲で添加し、炭酸ガス吸収材を調製した。
【0018】
(2)炭酸ガスの吸収及び放出試験
試験は5ml/minの炭酸ガス気流中で炉の昇温及び降温速度を10℃/minとして、室温から1100℃の温度範囲で3回繰り返し、実施した。
炭酸ガス吸収材の昇温及び降温過程における熱流(heat flow)を示差熱分析装置で測定した。また、同過程における重量減少率を熱重量分析装置で測定した。
また、上記炭酸ガス吸収材について、カルシウムに対するナトリウム又はカリウムの添加量と炭酸ガス吸収率及び重量減少率との関係を調べた。
【0019】
(3)結果
図1に、純粋なエーライトからなる炭酸ガス吸収材の2回目の昇温及び降温における熱流(heat flow)を示差熱分析した結果を示す。昇温過程では、約900℃の温度から炭酸ガスの放出を示す吸熱反応が現れ、炭酸ガスの放出反応が始まった直後にスーパーライト系複炭酸塩の溶融を示す吸熱反応が出現した。炭酸ガス放出反応と溶融反応は、ほぼ重なり合った温度で生じた。降温過程での炭酸ガスの吸収反応及び複炭酸塩の凝固は、約850℃の温度より同時に起こった。
【0020】
図2に、熱重量分析の結果を示す。昇温過程では、約400℃よりスーパーライトの生成に伴う炭酸ガスの吸収により重量が増加し、エーライトの分解により生じたカルシア及びカルシウムシリケートの炭酸ガス吸収が700℃を超えたところから始まった。炭酸ガスの放出は900℃から始まり、複炭酸塩の溶融に伴って2段階の炭酸ガス放出が行われ、結果的に炭酸ガス吸収率が増加した。降温過程での炭酸ガス吸収は900℃を過ぎたところから始まり、カルシア及びカルシウムシリケートは、炭酸カルシウム及び炭酸塩に戻った。スーパーライト系複炭酸塩の凝固と炭酸ガスの吸収反応は同じ温度で起こるため、吸収過程での重量変化は、2段階に分裂することはなかった。
【0021】
図3に、エーライトCa3 SiO5 に炭酸水素ナトリウムNaHCO3 を、カルシウムとナトリウムの原子比で1:1に添加したものからなる炭酸ガス吸収材の炭酸ガス気流中での熱流(heat flow)を示差熱分析した結果を示す。200℃までに炭酸水素ナトリウムが分解して下記(4)式のように炭酸ナトリウムが生成すると同時に、下記(5)式のようなエーライトの分解反応が生じ、その後、下記(6)式のようなエーライトが分解して生じるカルシアと炭酸ナトリウムが反応し、ナトリウム−カルシウム複炭酸塩を生成した。
2NaHCO3(s) → Na2CO3(s) + H2(g) + CO2 (g) (4)
Ca3SiO5 (s) → Ca2SiO4 (s)+ CaO(s) (5)
Na2CO3(s) + CaO(s) → Na x Cay (CO3) z (s) (6)
【0022】
昇温過程では、更に、800℃付近で上記(6)式で生じたナトリウム−カルシウム複炭酸塩と上記(5)式で生じたビーライトが反応して、下記(7)式のようにナトリウム−カルシウム−シリコン複炭酸塩が生成するのに伴う発熱反応が現れた。
Nax Cay (CO3) z (s) + Ca2SiO4 (s) + yCO2 → Na−Ca−Si−(CO3) x (s) (7)
900℃付近で、炭酸カルシウムが炭酸ガスを放出する反応に伴う吸熱反応が現れるのに引き続いて、970℃付近で、ナトリウム−カルシウム−シリコン複炭酸塩の溶融に伴う吸熱反応が現れた。
【0023】
図4に、熱重量分析の結果を示す。200℃までに、上記式(4)から(5)の炭酸水素ナトリウムの分解反応とエーライトの分解反応に伴う重量減少が現れた。その後、上記(6)式のように、炭酸ガスを吸収することによる複炭酸塩の生成に伴って徐々に重量が増加し、カルシア及びカルシウムシリケートの炭酸ガス吸収が約800℃の温度より始まった。炭酸カルシウム及びカルシウム−シリカ複炭酸塩の炭酸ガス放出反応は、約900℃の温度から始まり、ナトリウム−カルシウム−シリコン複炭酸塩の溶融に伴い炭酸ガスの放出量が加速され、炭酸ガス放出を示す重量減少は、2段階で起こった。図3及び図4は、炭酸カルシウム及びカルシウム−シリコン複炭酸塩の炭酸ガス放出及び吸収反応が、溶融したナトリウム−カルシウム−シリコン複炭酸塩を介して行われることを意味する。
【0024】
図5に、エーライトCa3 SiO5 に炭酸水素カリウムKHCO3 を、カルシウムとカリウムの原子比で1:1に添加したものからなる炭酸ガス吸収材の炭酸ガス気流中での熱流(heat flow)を示差熱分析した結果を示す。発熱反応及び吸熱反応の出現の仕方は、図3とほとんど同じであり、ナトリウムの場合と同じ機構で炭酸ガスの吸収及び放出反応が起こった。カリウムの場合の反応機構は、上記式(4)、(6)及び(7)のNaをKで置換えることができ、下記式(8)から(10)で示すことができる。
2KHCO3(s) → K2CO3(s) + H2(g) + CO2(g) (8)
K2CO3(s) + CaO(s) → Kx Cay (CO3) z (s) (9)
K x Cay (CO3) z (s) + Ca2SiO4 (s) + yCO2→ K−Ca−Si−(CO3)x (s) (10)
【0025】
図6に、熱重量分析の結果を示す。200℃までに、上記式(8)と(5)の炭酸水素カリウムの分解反応とエーライトの分解反応に伴う重量減少が現れた。その後、上記(9)式のように、炭酸ガスを吸収することによる複炭酸塩の生成に伴って徐々に重量が増加し、カルシア及びカルシウムシリケートの炭酸ガス吸収が800℃ほどの温度より始まった。炭酸カルシウム及びカルシウム−シリカ複炭酸塩の炭酸ガス放出反応は、約900℃の温度から始まり、カリウム−カルシウム−シリコン複炭酸塩の溶融に伴い炭酸ガスの放出量が加速され、炭酸ガス放出を示す重量減少は、2段階で起こった。
【0026】
図7に、ナトリウムの添加量に対する炭酸ガス吸収率を示す。炭酸ガスの吸収率は、高温で重量が一定となるところから炭酸ガスを吸収して重量変化がなくなったところまでの重量減少率の差異で求められる。初期エーライトCa3 SiO5 重量に対する600℃での吸収量である。ナトリウムの添加に伴い、カルシウムとナトリウムの原子比が1:1までは直線的に吸収率が増加し、1:1の吸収材の炭酸ガス吸収率は、純粋なエーライトCa3 SiO5 の2倍以上となった。これは、ナトリウム−カルシウム−シリコン複炭酸塩の溶融体積が増加し、溶融塩に取り込まれる炭酸カルシウム及びカルシウム−シリコン複炭酸塩の量が増加し、炭酸ガスを放出した後のカルシアあるいはカルシウムシリケートの焼結及び蒸発が抑制されたためである。
【0027】
カルシウムに対する添加したナトリウムの原子比が1:1より過剰になると、吸収率の増加が鈍化した。これは、炭酸ガスの吸収及び放出に強く関与する炭酸カルシウムの生成よりもナトリウム−カルシウム−シリコン複炭酸塩の生成割合が多くなるためである。
図8に、2回の昇温及び降温後の重量減少のエーライト重量に対する重量減少率を示す。カルシウムとナトリウムの原子比が1:0〜2の全範囲で、重量減少率は2%以内に抑制された。これは、炭酸ガスを放出した後のカルシア及びカルシウムシリケートの高温における焼結が抑制されたためである。特に、ナトリウムの添加量が20〜50%のものの重量減少は0.2%に抑制された。
図9に、カリウムの添加量に対する炭酸ガス吸収率を示す。カリウムの場合も、吸収率はエーライトのみの場合より2倍ほど大きくなった。
【0028】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、カルシウムシリケート系の高温炭酸ガス吸収材及び炭酸ガス分離方法に係るものであり、本発明により、1)本発明の高温炭酸ガス吸収材は、物質存在量の問題を解決し、1000℃の高温においても吸収材のカルシア系酸化物の焼結及び蒸発を抑制することができる、2)高い吸収率で炭酸ガスを吸収することにより、800〜1000℃の温度範囲で石炭ガス化炉等より出てくる高温ガスから、直接、炭酸ガスのみを捕捉する炭酸ガス吸収剤を提供することができる、3)上記炭酸ガス吸収材を使用し、800〜1000℃の高温排ガス中の炭酸ガスを捕捉させる新しい炭酸ガス分離方法を提供することができる、という格別の効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】純粋なエーライトCa3 SiO5 の熱重量分析の結果を示す。
【図2】純粋なエーライトCa3 SiO5 の示差熱分析の結果を示す。
【図3】カルシウムとナトリウムの原子比が1:1のときの示差熱分析の結果を示す。
【図4】カルシウムとナトリウムの原子比が1:1のときの熱重量分析の結果を示す。
【図5】カルシウムとカリウムの原子比が1:1のときの示差熱分析の結果を示す。
【図6】カルシウムとカリウムの原子比が1:1のときの熱重量分析の結果を示す。
【図7】ナトリウムの添加量に対する600℃における炭酸ガス吸収率を示す。
【図8】ナトリウムの添加量に対する重量減少率を示す。
【図9】カリウムの添加量に対する重量減少率を示す。
Claims (6)
- カルシウムシリケート系の800〜1000℃の高温域における炭酸ガスの吸収及び放出反応を利用して、高温におけるカルシア系酸化物の焼結による炭酸ガス吸収効率の低下を抑制する炭酸ガス吸収材であって、上記カルシウムシリケート系が、カルシウムとシリコンの比が3:1となるエーライトCa3 SiO5 を構成要素として含むことを特徴とする炭酸ガス吸収材。
- 炭酸ガス吸収材が、ナトリウム又はカリウムを添加したエーライトから構成されることを特徴とする請求項1記載の炭酸ガス吸収材。
- ナトリウム−カルシウム−シリコンの複炭酸塩及びカリウム−カルシウム−シリコンの複炭酸塩の溶融状態下で炭酸ガスの吸収及び放出を行うことを特徴とする請求項1記載の炭酸ガス吸収材。
- ナトリウム及びカリウムのエーライトに対する混合割合が、カルシウム原子とナトリウムあるいはカリウムの原子比に換算して1:0〜2モルで示される比率であることを特徴とする請求項2記載の炭酸ガス吸収材。
- 請求項1記載の炭酸ガス吸収材の炭酸ガスの吸収及び放出反応を利用して、該炭酸ガス吸収材に、800〜1000℃の温度範囲において高温排ガス中の炭酸ガスを捕捉さて、該高温排ガスから炭酸ガスを分離することを特徴とする炭酸ガス分離方法。
- 炭酸ガスの吸収及び放出反応を、ナトリウム−カルシウム−シリコンの複炭酸塩及びカリウム−カルシウム−シリコンの複炭酸塩の溶融状態下で行うことを特徴とする請求項5記載の炭酸ガス分離方法。
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