JP2004154061A - 単環式カロテノイドの合成に有用な遺伝子、および単環式カロテノイドの製造法 - Google Patents

単環式カロテノイドの合成に有用な遺伝子、および単環式カロテノイドの製造法 Download PDF

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Abstract

【課題】自然界には微量にしか存在しない単環式カロテノイドを大量に生産する手段を提供する。
【解決手段】種々の単環式カロテノイド合成のキーとなるカロテノイドであるγ−カロチンの合成を担う酵素をコードする遺伝子、及び、この遺伝子を導入・発現した微生物を利用したγ−カロチンを始めとする各種単環式カロテノイドの製造法。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、種々の単環式カロテノイド合成のキーとなるカロテノイドであるγ(ガンマ)−カロチン(γ−カロテン、γ−carotene)の合成を担う酵素をコードする遺伝子、及び、この遺伝子を導入・発現した微生物を利用したγ−カロチンを始めとする各種単環式カロテノイドの製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
カロテノイド(carotenoid、カロチノイドとも呼ばれる)とは、通常炭素鎖が40のイソプレン骨格からなる自然界に豊富に存在する色素の総称である。現在までに600種以上のカロテノイドが単離されている(Pfander, H., ed., Key to Carotenoids, Basel, Birkhauser, 1987)。最近ではカロテノイドの持つ種々の癌(がん)に対する予防効果が注目されており、数多くの報告がなされている(たとえば、西野輔翼、村越倫明、矢野昌充, Food Style 21, 4, 53−55, 2000; Giovannucci, E., Ascherio, A., Rimm, E. B., Stampfer, M. J., Colditz, G. A., Willet, W. C., J. National Cancer Institute, 87, 1767−1776, 1995)。
【0003】
カロテノイドは多様な種類からなるにもかかわらず、現在までに癌の予防試験(ヒト疫学試験、動物投与試験等)に使われてきたカロテノイドの種類はごく限られたものであった。それらのカロテノイドは、β−カロチン(β−carotene、β−カロテンとも呼ばれる:化学合成品)、リコペン(lycopene、リコピンとも呼ばれる:トマトから抽出)、α−カロチン(α−carotene、α−カロテンとも呼ばれる:パーム油から抽出)、ルテイン(lutein:マリーゴールドから抽出)、アスタキサンチン(astaxanthin:オキアミ等から抽出)、フコキサンチン(fucoxanthin:食用海藻から抽出)等である。これらの色素を用いた癌予防試験の結果、カロテノイドの癌予防効果は、カロテノイドの種類によって異なることが明らかとなってきた。一例として、国立がんセンター研究所の高須賀伸夫らが行ったマウスを用いた実験結果(1996年カロテノイド研究談話会報告)を示したい。肺癌(ddyマウス肺二段階発癌モデル)の発生率は、カロテノイドを投与しないコントロールマウスを100%とすると、リコペンまたはα−カロチン投与マウスが40%、ルテインまたはアスタキサンチン投与マウスが70%、β−カロチン投与マウスが139%の癌発生率であった(フコキサンチンは未実施)。肝臓癌(マウス自然肝臓癌発癌モデル)の発生率は、同じくカロテノイドを投与しないコントロールマウスを100%とすると、アスタキサンチンまたはフコキサンチン投与マウスが30%、α−カロチンまたはルテイン投与マウスが50%、β−カロチン投与マウスが70%、リコペン投与マウスが100%の癌発生率であった。皮膚癌(マウス皮膚癌発癌モデル)の発生率は、同じくカロテノイドを投与しないコントロールマウスを100%とすると、フコキサンチンまたはリコペン投与マウスが10%、アスタキサンチン投与マウスが100%の癌発生率であった(他のカロテノイドは実施されず)。これら3つの発癌モデルの結果を比較すると、肺癌や皮膚癌の抑制で効果が高かったリコペンの効果が肝臓癌の抑制には効果が無いこと、肝臓癌の抑制で効果が高かったアスタキサンチンの効果が皮膚癌の抑制には効果が無いこと等がわかる。
【0004】
以上の結果は、600種類以上あるカロテノイドの中で、実際に動物個体を用いたレベル以上の研究で、癌の予防効果が検討されているものは、高々10種類に満たないということ、それにもかかわらず、カロテノイドの癌予防効果にはカロテノイドの個性が認められるということを示している。実際に検討されてきたカロテノイドの種類が少ないことの最大の原因は、多量に抽出、精製できるカロテノイドの種類が上記のものに限られているということだと思われる。
【0005】
上記の問題を解決するための有力な手段として、カロテノイド生合成遺伝子を組み込んだ酵母や大腸菌等で目的とするカロテノイドを多量生産する方法が考えられる。たとえば、キリンビールの三浦らは、本来カロテノイドを生合成できない食用酵母キャンディダ・ユーティリス(Candida utilis)に、カロテノイド生合成遺伝子群を導入・発現させて、アスタキサンチン、β−カロチン、リコペンを0.4〜1.1%合成させるのに成功した(Miura, Y., Kondo, K., Saito, T., Shimada, H., Fraser, P. D., Misawa, N., Appl. Environ. Microbiol., 64, 1226−1229, 1998)。この遺伝子組換え法によれば、種々の生合成遺伝子の組み合わせにより、これまで自然界に存在が認められていなかったか、ごく微量しか存在していなかったようなカロテノイドをも多量生産することが可能となる。たとえば、日本医科大学の高市らは、これまでナマズに微量存在しているという報告しかなかったパラシロキサンチン(parasiloxanthin)を組換え大腸菌で主要カロテノイド産物として生産した(Takaichi, S., Sandmann, G., Schnurr, G., Satomi, Y., Suzuki, A., Misawa, N. Eur. J. Biochem., 241, 291−296, 1996)。また、今まで自然界に報告が無かった“非天然型”のカロテノイドであるアスタキサンチン−β−ジグルコシド(astaxanthin−β−diglucoside)を組換え大腸菌で合成させたという報告もある(Yokoyama, A., Shizuri, Y., Misawa, N., Tetrahed. Lett., 39, 3709−3712, 1998)。これらの例は、両端が環化された(β−イオノン環を持つ)カロテノイドであるが、両端が直鎖のままの非環式カロテノイドの例もある。たとえば、Frankfurt大学のAlbrechtらは、今まで自然界に報告が無かった非環式カロテノイドである1,1’−ジヒドロキシ−3,4,3’,4’−テトラデヒドロリコペン(1,1’−dihydroxy−3,4,3’,4’−tetradehydrolycopene)を組換え大腸菌に作らせている(Albrecht, M., Takaichi, S., Steiger, S., Wang, Z. −Y., Sandmann, G., Nature Biotechnol., 18, 843−846, 2000)。
【0006】
各種のカロテノイド生産用組換え微生物の作製に最も広く利用されてきたカロテノイド生合成遺伝子は、エルウィニア(Erwinia)属細菌(エルウィニア・ウレドボラ(Erwinia uredovora)等)由来のものである。エルウィニア属細菌から取得された遺伝子は、crtEcrtBcrtIcrtYcrtZcrtX の6遺伝子であり、これらの遺伝子がコードする生合成酵素(CrtE、CrtB、CrtI、CrtY、CrtZ、CrtX)の機能は図1に示されている(非特許文献1参照)。アスタキサンチンを生合成させたい場合は、さらに、海洋細菌であるパラコッカス(Paracoccus)属細菌[Paracoccus sp. MBIC01143(Agrobacterium aurantiacum)等]由来のcrtZcrtW 遺伝子が使われている(図1)。エルウィニア属細菌のcrtEcrtBcrtIcrtY遺伝子を導入・発現させた大腸菌はβ−カロチンを合成するが、これにさらに海洋細菌由来のcrtZcrtW 遺伝子を導入・発現させると、その組換え大腸菌はアスタキサンチンを合成するようになる。さらに、このアスタキサンチンを合成する大腸菌にエルウィニア属細菌のcrtX遺伝子を導入・発現させると、その組換え大腸菌は“非天然型”のアスタキサンチン−β−ジグルコシドを合成するようになる(図1)。
【0007】
1,1’−ジヒドロキシ−3,4,3’,4’−テトラデヒドロリコペンのような非環式カロテノイドを合成させる場合は、環化酵素遺伝子であるcrtY遺伝子は使わずに、リコペンなどの直鎖状カロテノイドを作らせた大腸菌への導入・発現用に、光合成細菌であるロドバクター(Rhodobacter)属細菌(Rhodobacter capsulatus 等)由来の直鎖上カロテノイド修飾酵素遺伝子であるcrtC(1’−ヒドラーゼ)、crtD(3’,4’−デサチュラーゼ)遺伝子などが使用されている。
【0008】
以上述べてきたように、自然界に存在量が限られているか存在が確認されていなかった“非天然型”のカロテノイドを大腸菌等の微生物に多量生産させるために、カロテノイド生合成遺伝子を利用することが可能であることが示されつつある。しかしながら、この生物工学的方法により現在までに合成されたカロテノイドはいずれも、両端が環化されたカロテノイド(たとえば、アスタキサンチン−β−ジグルコシド、パラシロキサンチン等)か、両端とも環化されない非環式カロテノイド(たとえば、1,1’−ジヒドロキシ−3,4,3’,4’−テトラデヒドロリコペン等)のどちらかであった。
【0009】
一方のみが環化した単環式カロテノイドであるγ−カロチンはパーム油に含まれていることが知られているが、γ−カロチンの含量はパーム油に含まれる全カロテノイドの数%に過ぎなく、多量調製が不可能であった。パーム油カロチンには、60〜70%のβ−カロチン、30〜40%のα−カロチン、数%のγ−カロチン、リコペンが含まれる。パーム油カロチンには肺癌や肝臓癌などいくつかの癌に対して優れた予防効果があることが知られてきており、微量のγ−カロチンが効いている可能性が高いとされている(ハイアルファ、食品添加物:パーム油カロチン30%植物油懸濁液、ライオン(株)パンフレット;京都府立医科大学、西野輔翼教授、私信)。しかしながら、γ−カロチンを始めとした単環式カロテノイドは植物界を始め、自然界には微量にしか存在しなく、多量生産することが不可能であり、したがって、種々の癌予防試験の実施もできなかった。
【0010】
【非特許文献1】
Misawa, N., Satomi, Y., Kondo, K., Yokoyama, A., Kajiwara, S.,Saito, T., Ohtani, T., Miki, W., J. Bacteriol., 177, 6575−6584, 1995)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、γ−カロチンを合成する酵素遺伝子を取得し、この遺伝子を導入・発現させた組換え微生物を利用した、γ−カロチンを始めとした単環式カロテノイドの効率的製造法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、CFB(Cytophaga−Flavobacterium−Bacterioides)グループに属する新種の海洋細菌フラボバクテリウム属(Flavobacterium sp.)A99−3株(MBIC03313)が単環式カロテノイドのミキソール(myxol)を作ることができ、両端が環化されたカロテノイドの合成が全く確認されないことに着目した。鋭意研究を重ねた結果、本海洋細菌より、リコペンからγ−カロチンを合成する環化酵素遺伝子を取得することに成功した。また、ファルネシルピロリン酸(FPP)からリコペンを合成するのに必要なcrtEcrtBcrtI 遺伝子を導入・発現させた大腸菌にさらに、本遺伝子を導入・発現させることにより、組換え大腸菌はγ−カロチンを合成できるようになることを確認した。この際、培養条件によっては、γ−カロチンよりさらに環化反応が進んだβ−カロチンも合成されるが、このβ−カロチン合成を抑えてγ−カロチンの収量を向上させる遺伝子も見出した。
本発明は、以上の知見を基に完成されたものである。
【0013】
即ち、本発明の第一は、以下の(a)、(b)、又は(c)に示すペプチドをコードする遺伝子である。
(a)配列番号2記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
(b)配列番号2記載のアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつリコペンβ−モノシクラーゼ活性を有するペプチド、
(c)配列番号1記載の塩基配列からなるDNA又はそれと相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAがコードする細菌由来のペプチドであって、リコペンβ−モノシクラーゼ活性を有するペプチド。
【0014】
本発明の第二は、上記遺伝子を、他のカロテノイド生合成遺伝子とともに導入して得られる微生物である。
【0015】
本発明の第三は、上記遺伝子を、他のカロテノイド生合成遺伝子を含む微生物に導入して得られる微生物である。
【0016】
本発明の第四は、以下の(d)、(e)、又は(f)に示すペプチドをコードする遺伝子を、上記微生物(本発明の第二または第三の微生物)にさらに導入して得られる微生物である。
(d)配列番号4記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
(e)配列番号4記載のアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつリコペンβ−モノシクラーゼ活性を増強するペプチド、
(f)配列番号3記載の塩基配列からなるDNA又はそれと相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAがコードする細菌由来のペプチドであって、リコペンβ−モノシクラーゼ活性を増強するペプチド。
【0017】
本発明の第五は、上記微生物を培地に培養して培養物又は菌体から単環式カロテノイドを得ることを特徴とする、単環式カロテノイドの製造法である。
【0018】
本発明の第六は、以下の(a)、(b)、又は(c)に示すペプチドである。
(a)配列番号2記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
(b)配列番号2記載のアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつリコペンβ−モノシクラーゼ活性を有するペプチド、
(c)配列番号1記載の塩基配列からなるDNA又はそれと相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAがコードする細菌由来のペプチドであって、リコペンβ−モノシクラーゼ活性を有するペプチド。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.遺伝子源の海洋細菌フラボバクテリウム属A99−3株
目的とする遺伝子の供給源となった海洋細菌フラボバクテリウム属(Flavobacterium sp.)A99−3株(MBIC 03313)は、パラオ海域のカイメン(Homaxinella sp.)から分離されたものである。本海洋細菌が作るカロテノイドはミキソールであることが、(株)海洋バイオテクノロジー研究所の横山と幹により同定された。この成果は、平成5年10月15日に「ミクソールの製造法およびその用途」として特許出願されている(特開平7−107993号公報)。また、本菌は、平成5年10月12日に寄託されている(寄託番号 P−13903)。また、本海洋細菌は、ミキソールを生産するFlavobacterium sp. P99−3として論文発表されている(Yokoyama, A,Miki, W., Fisheries Sci., 61, 684−686, 1995;ここで言う“P99−3”はA99−3と同一菌である)。
【0020】
(株)海洋バイオテクノロジー研究所で16S rDNAやgyrB遺伝子を利用して、本菌の分類上の位置を検討したところ、本菌はCFB(Cytophaga−Flavobacterium−Bacterioides)グループ内の、新属新種であると考えられた(未発表データ)。最も近い属は、南極等から単離された好冷細菌であるサイコロフレクサス(Psychroflexus )属であった(未発表データ)。
【0021】
2.海洋細菌フラボバクテリウム属A99−3株におけるミキソール生合成経路の推定
海洋細菌フラボバクテリウム属(Flavobacterium sp.)A99−3株において推定されたミキソールの生合成経路を図2に示した。リコペンまでの生合成経路はエルウィニア属細菌の経路と同じであると考えられる。次の環化酵素リコペンβ−モノシクラーゼ(lycopene β−monocyclase;CrtY−γと呼ぶ)が本菌では独特で、リコペンの片方のみを環化してγ−カロチンを作ると思われる。次にエルウィニア属細菌のcrtZに相当する遺伝子が働くと、3−ヒドロキシ‐γ−カロチン(3−hydroxy−γ−carotene)が生成すると考えられる。γ−カロチンにロドバクター属細菌のcrtC(1’−ヒドラーゼ;1’−hydolase)とcrtD(3’4’−デサチュラーゼ;3’4’−desaturase)遺伝子が働くと、3’,4’−ジデヒドロ−1’,2’−ジヒドロ−β,ψ−カロチン−1’−オール(3’4’−didehydro−1’2’−dihydro−β,ψ−caroten−1’−ol)が生成すると考えられる。γ−カロチンに、これら3種類の酵素CrtZ、CrtC、CrtDと、2’−モノオキシゲナーゼ(2’−monooxygenase)等が連続的に働くと、最終産物であるミキソールが生成されると考えられる。
【0022】
3.環化酵素リコペンβ−モノシクラーゼをコードする遺伝子(本発明の遺伝子)
本発明の遺伝子は、以下の(a)、(b)、又は(c)に示すペプチドをコードするものである。(a)配列番号2記載のアミノ酸配列からなるペプチド、(b)配列番号2記載のアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつリコペンβ−モノシクラーゼ活性を有するペプチド、(c)配列番号1記載の塩基配列からなるDNA又はそれと相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAがコードする細菌由来のペプチドであって、リコペンβ−モノシクラーゼ活性を有するペプチド。
【0023】
(a)のペプチドは、フラボバクテリウム属A99−3株から得られたリコペンβ−モノシクラーゼ活性を有する377個のアミノ酸配列からなるペプチド(CrtY−γとも呼ぶ)である。
【0024】
(b)のペプチドは、(a)のペプチドに、リコペンβ−モノシクラーゼ活性を失わせない程度の変異が導入されたペプチドである。このような変異は、自然界において生じる変異のほかに、人為的な変異をも含む。人為的変異を生じさせる手段としては、部位特異的変異誘発法(Nucleic Acids Res. 10, 6487−6500, 1982)などを挙げることができるが、これに限定されるわけではない。変異したアミノ酸の数は、リコペンβ−モノシクラーゼ活性を失わせない限り、その個数は制限されないが、通常は、30アミノ酸以内であり、好ましくは20アミノ酸以内であり、更に好ましくは10アミノ酸以内であり、最も好ましくは5アミノ酸以内である。
【0025】
(c)のペプチドは、DNA同士のハイブリダイゼーションを利用することにより得られる細菌由来のリコペンβ−モノシクラーゼ活性を有するペプチドである。(c)のペプチドにおける「ストリンジェントな条件」とは、特異的なハイブリダイゼーションのみが起き、非特異的なハイブリダイゼーションが起きないような条件をいう。このような条件は、通常、「1×SSC、0.1%SDS、37℃」程度であり、好ましくは「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」程度であり、更に好ましくは「0.2×SSC、0.1%SDS、65℃」程度である。ハイブリダイゼーションにより得られるDNAは、配列番号1記載の塩基配列により表されるDNAと通常高い相同性を有する。高い相同性とは、60%以上の相同性、好ましくは75%以上の相同性、更に好ましくは90%以上の相同性を指す。
【0026】
本発明の遺伝子は、例えば、以下のようにして得ることができる。まず、海洋細菌フラボバクテリウム属(Flavobacterium sp.)A99−3株のコスミドライブラリーを作製し、エルウィニア・ウレドボラ等のエルウィニア属細菌のcrtEcrtBcrtI 遺伝子を導入・発現させた大腸菌宿主(赤色)に感染させる。感染させた後、大腸菌の色がやや黄色がかった赤色を示すコロニーを選び、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分析し、γ−カロチン、またはその代謝物の単環式カロテノイドを作る菌を探すことにより、本発明の遺伝子を含むDNA断片を得ることができる。
【0027】
4.リコペンβ−モノシクラーゼの活性を増強する遺伝子
以下の(d)、(e)、又は(f)に示すペプチドをコードする遺伝子を本発明のリコペンβ−モノシクラーゼ遺伝子とともに微生物に導入し発現させると、γ−カロチンを始めとする単環式カロテノイドの収率を上げることができる。(d)配列番号4記載のアミノ酸配列からなるペプチド、(e)配列番号4記載のアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつリコペンβ−モノシクラーゼ活性を増強するペプチド、(f)配列番号3記載の塩基配列からなるDNA又はそれと相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAがコードする細菌由来のペプチドであって、リコペンβ−モノシクラーゼ活性を増強するペプチド。
【0028】
(d)のペプチドは、フラボバクテリウム属A99−3株から得られたリコペンβ−モノシクラーゼ活性を増強する239個のアミノ酸配列からなるペプチド(CrtAと呼ぶ)である。
【0029】
(e)のペプチドは、(d)のペプチドに、リコペンβ−モノシクラーゼ活性の増強能を失わせない程度の変異が導入されたペプチドである。このような変異は、自然界において生じる変異のほかに、人為的な変異をも含む。変異したアミノ酸の数は、リコペンβ−モノシクラーゼ活性の増強能を失わせない限り、その個数は制限されないが、通常は、20アミノ酸以内であり、好ましくは12アミノ酸以内であり、更に好ましくは6アミノ酸以内であり、最も好ましくは3アミノ酸以内である。
【0030】
(f)のペプチドは、DNA同士のハイブリダイゼーションを利用することにより得られる細菌由来のリコペンβ−モノシクラーゼ活性を増強するペプチドである。(f)のペプチドにおける「ストリンジェントな条件」とは、特異的なハイブリダイゼーションのみが起き、非特異的なハイブリダイゼーションが起きないような条件をいう。このような条件は上述の通りである。
【0031】
上記遺伝子は、例えば、以下のようにして得ることができる。まず、海洋細菌フラボバクテリウム属(Flavobacterium sp.)A99−3株のコスミドライブラリーを作製し、エルウィニア・ウレドボラ等のエルウィニア属細菌のcrtEcrtBcrtI 遺伝子を導入・発現させた大腸菌宿主(赤色)に感染させる。感染させた後、大腸菌の色がやや黄色がかった赤色を示すコロニーを選び、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分析し、γ−カロチン、またはその代謝物の単環式カロテノイドを作る菌を探すことにより、上記遺伝子を含むDNA断片を得ることができる。
【0032】
5.単環式カロテノイドの製造法
本発明の単環式カロテノイドの製造法は、本発明の遺伝子等を、微生物に導入し、この微生物を培地に培養して培養物又は菌体から単環式カロテノイドを得ることを特徴とするものである。ここで、単環式カロテノイドとは、一方の末端のみが環化しているカロテノイドをいい、例えば、γ−カロチン、3−ヒドロキシ−γ−カロチン、3’,4’−ジデヒドロ−1’,2’−ジヒドロ−β,ψ−カロチン−1’−オール、ミキソールなどがこれに含まれる。
【0033】
微生物には、本発明の遺伝子だけでなく、他のカロテノイド生合成遺伝子も導入するが、微生物がもともと他のカロテノイド生合成遺伝子を含むものである場合には、その必要はない。ただし、もともと他のカロテノイド生合成遺伝子を持つ微生物がβ−カロチンまたはその代謝物を作っている場合は、自生のリコペン β−シクラーゼ活性を抑える等の工夫が必要になる場合がある。
【0034】
使用する微生物としては、大腸菌を例示できるが、これ以外の微生物であってもよい。
【0035】
他のカロテノイド生合成遺伝子は、少なくとも、FPPまたはゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)からリコペンを合成するのに必要とされる遺伝子群を含む。このような遺伝子群の具体例としては、FPPからGGPPを合成する酵素遺伝子crtE、2分子のGGPPからフィトエン(phytoene)を合成する遺伝子crtB、フィトエンからリコペンを合成するcrtI 遺伝子(通常、エルウィニア属細菌由来のもの)などを例示できる。
【0036】
これらの遺伝子群を適当な発現ベクターに導入し、発現させたい微生物に導入すれば、その組換え微生物はリコペンを作るようになる(基質のFPPはすべての微生物が作ることができる。GGPPも微生物によっては合成量が少ないものもあるが、すべての微生物が作ることができる。)。そのリコペン産生微生物に、本発明の遺伝子(リコペンβ−モノシクラーゼをコードする遺伝子、crtY− γ)をさらに導入・発現させれば、その微生物はγ−カロチンを作るようになる。
【0037】
上記の組換え微生物に更に、リコペンβ−モノシクラーゼ活性を増強する遺伝子(crtA)を導入・発現させれば、その微生物はより多くのγ−カロチンを作るようになる。
【0038】
更に、このような微生物に、crtZ遺伝子を導入・発現させれば、その微生物は3−ヒドロキシ−γ−カロチンを作るようになり、crtC及びcrtD遺伝子を導入すれば、その微生物は、3’,4’−ジデヒドロ−1’,2’−ジヒドロ−β,ψ−カロチン−1’−オール作るようになり、crtZcrtCcrtDと、2’−モノオキシゲナーゼ(2’−monooxygenase)遺伝子(通常、ロドバクター属細菌由来のもの)等を導入・発現させると、その微生物は、最終産物の単環式カロテノイドであるミキソールを作るようになる。
【0039】
大腸菌や酵母等の種々の微生物のベクターの情報や外来遺伝子の導入・発現法は、多くの実験書に記載されているので(たとえば、Sambrook, J., Russel,D. W., Molecular Cloning A Laboratory Manual, 3rd Edition, CSHL Press, 2001)、それらに従ってベクターの選択、遺伝子の導入、発現を行うことができる。
【0040】
【実施例】
[実施例1]菌株、プラスミド、生育条件
本発明に用いられた菌株とプラスミドを表1に示す。菌株の培養は 30℃でLuria−Bertani (LB) 培地 (Sambrook et al, 1989)を用いて行われた。必要に応じて、ampicillin (Ap:100 μg/ml)またはchloramphenicol (Cm:20 μg/ml) を培地に加えた。
【0041】
【表1】
Figure 2004154061
Sambrook, J., Fritsch, E. F., and Maniatis, T. 1989. Molecular cloning: a laboratory manual, 2nd ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press, ColdSpring Harbor, N.Y.
Yokoyama, A. and Miki, W. 1995. Isolation of myxol from a marine bacterium Flavobacterium sp. associated with a marine sponge. Fish. Sci. 61:684−686.
Cunningham, F. X. Jr, Chamovitz, D., Misawa, N., Gantt, E. and Hirschberg, J. 1993. Cloning and functional expression in Escherichia coli of acyanobacterial gene for lycopene cyclase, the enzyme that catalyzes thebiosynthesis of beta−carotene. FEBS Lett. 328: 130−138.
Misawa, N., Satomi, Y., Kondo, K., Yokoyama, A., Kajiwara, S., Saito, T., Ohtani, T., and Miki, W. 1995. Structure and functional analysis of a marine bacterial carotenoid biosynthesis gene cluster and astaxanthin biosynthetic pathway proposed at the gene lebel. J. Bacteriol. 177: 6575−6584.
【0042】
[実施例2]遺伝子操作技術
プラスミドの精製はQIAprep (Qiagen)を用いて行った。制限酵素処理、ライゲーション反応、形質転換等の通常の遺伝子操作実験は、前述のSambrook ら (1989)のMolecular Cloningに示された方法により行った。
【0043】
[実施例3]フラボバクテリウム属A99−3株から染色体DNAの調製
フラボバクテリウム属(Flavobacterium sp.)A99−3株(MBIC 03313)を1,000mlのMarine Broth (MB) 培地(Difco製)で、20℃で3日間培養した。菌体を集菌後、STE緩衝液(100 mM NaCl、10 mM TrisCl、1 mM EDTA、pH8.0)で洗浄し、68℃で15分間熱処理した後、5 mg/mlのリゾチームと100 μg/mlのRNase Aを含むI液(50 mM グルコース、25 mM TrisCl、10 mM EDTA、pH8)に懸濁した。37℃で1時間インキュベートした後、250 μg/mlになるようにproteinase Kを加え、37℃で10分間インキュベートした。さらに、最終濃度が1%になるようにN−Lauroylsarcosine・Naを加え、よく混合した後、37℃で1時間インキュベートした。さらに、フェノール/クロロホルム抽出を数回行った後、2倍量のエタノールをゆっくり加えながら、析出してきた染色体DNAをガラス棒に巻き付け、70%エタノールでリンスした後、2 mlのTE緩衝液に溶解して、染色体DNA調製液とした。
【0044】
[実施例4]コスミドライブラリーの調製
染色体DNAの調製液からファージ粒子を得るところまでの実験法は、Stratagene社のSuperCos 1 Cosmid Vector Kitの取り扱い説明書に従って行った。すなわち、フラボバクテリウム属A99−3株から調製した染色体DNAを制限酵素Sau3AIで部分分解し、コスミドベクターSuperCos 1のBamHI サイトに連結し、LAMBDA INN (Wako, Osaka, Japan)を用いてファージ粒子にパッケージングした。そして、エルウィニア・ウレドボラ のcrtEcrtBcrtI 遺伝子を含むリコペン産生用プラスミドpACCRT−EIBを保持している大腸菌(E. coli)XL1−Blue MR株に、そのファージを感染させ、ApとCmの両方に耐性のコロニーをApとCmを含むLBプレート上に1,000個得た。
【0045】
[実施例5]リコペンβ−モノシクラーゼ遺伝子の単離
pACCRT−EIB(培地成分からリコペンを合成できる遺伝子を含む)を保持した大腸菌XL1−Blue MR株に、フラボバクテリウム属A99−3株のリコペンβ−モノシクラーゼ(lycopene β−monocyclase)遺伝子を含むDNA断片がSuperCos 1 ベクターにより導入・発現されていれば、このクローンはリコペンをさらに代謝して、γ−カロチンを作るはずである。リコペンはピンク色を呈するが、γ−カロチンは(オレンジ色を帯びた)黄色を呈するため、プレート上のApとCmの両方に耐性の1,000コロニーから目で見て黄色を帯びたようなコロニーを300個選んだ。色の変化は不明確であったため、これらの大腸菌を液体培養し、菌体をアセトン抽出したものを用いて、フォトダイオードアレー[photodiode array (PDA)]検出を伴った高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析を行った(詳細は実施例8に記載)。HPLCの保持時間(33.1分)と紫外可視吸収スペクトル(λmax、434、465、494nm)(Jeffrey et al, 1997)により、γ−カロチンを生成していると考えられる3クローンを得た。ちなみに、この条件でのリコペン及びβ−カロチンの保持時間はそれぞれ、23.6分及び46.6分であった。
【0046】
3クローンの中の1クローンに含まれていたフラボバクテリウム属(Flavobacterium sp.)A99−1株由来の40 kbのDNA断片を含むプラスミドをpSC0601と名付け、その後の解析に用いた。
【0047】
Jeffrey, S. W., Mantoura, R. F. C., and Wright, S. W. (edited). 1997. Phytoplankton pigments in oceanography: Guidelines to Modern Methods. UNESCO Publishing.
【0048】
[実施例6] サブクローニングと塩基配列の決定
プラスミドpSC0601の挿入DNA断片をいくつかの制限酵素による消化後、pBluescript II KS(Toyobo)に挿入し、大腸菌JM109を形質転換した。これらの大腸菌を液体培養し、菌体をアセトン抽出したものを用いて、実施例8のHPLC分析により、いくつかのクローンに活性があることを確認した。そのうちの1つである、4.7 kbの SalI−SacI断片がpBluescript II KSSalI−SacI部位に挿入されたプラスミドをpBS0603と名づけ、このDNA断片の塩基配列を決定した。DNA sequencing kit (Dye Terminator Cycle Sequence; Perkin−Elmer) と model 3700 DNAsequencer (Perkin−Elmer) を付属のプロトコールに従って用いDNA断片(4.7 kb)の塩基配列を両方向決定した。決定された塩基配列はSequencher, version 3.0 (Gene Codes Corporation)を用いて解析し、確定したORFのホモロジー検索はBLAST (Altschul and Lipman, 1990)によって行った。
【0049】
その結果、リコペンβ−モノシクラーゼ遺伝子(crtY− γ)であると考えられる、377個のアミノ酸配列をコードする1134 bpのオープンリーディングフレーム(ORF)が見出された。この遺伝子にコードされる377個のアミノ酸配列は、既存のパラコッカス属(Paracoccus sp.)MBIC01143株(Agrobacterium aurantiacum)やエルウィニア・ウレドボラ(Erwinia uredovora)等のリコペンβ−シクラーゼ(CrtY:リコペンの両端を環化する酵素)(Misawa et al, 1995)とアミノ酸配列全体にわたって相同性を有していたが、相同性の程度は低かった。すなわち、このフラボバクテリウム属(Flavobacterium sp.)A99−1株のリコペンβ−モノシクラーゼ(CrtY−γ)は、パラコッカス属MBIC01143株、及びエルウィニア・ウレドボラのリコペン β−シクラーゼ(CrtY)とそれぞれ、22%及び19%の同一性(identity)を有していた。
【0050】
更に、上記のリコペンβ−モノシクラーゼ(crtY− γ)遺伝子の隣に、239個のアミノ酸配列をコードする720 bpのオープンリーディングフレーム(ORF)が見出された。この遺伝子にコードされる239個のアミノ酸配列は、既存のロドバクター(Rhodobacter)属細菌等のCrtA[2’−モノオキシゲナーゼ(2’−monooxygenase)](Armstrong et al, 1989)とアミノ酸配列全体にわたって相同性を有していた。これが、今回、リコペンβ−モノシクラーゼ活性を増強する遺伝子として発見されたものである。
【0051】
Altschul, S. F. and Lipman, D. J. 1990. Protein database searches for multiple alignments. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 5509−5513.
Misawa, N., Satomi, Y., Kondo, K., Yokoyama, A., Kajiwara, S., Saito, T., Ohtani, T., and Miki, W. 1995. Structure and functional analysis of a marine bacterial carotenoid biosynthesis gene cluster and astaxanthin biosynthetic pathway proposed at the gene level. J. Bacteriol. 177: 6575−6584.
Armstrong, G. A., Alberti, M., Leach, F., and Hearst, J. E. 1989. Nucleotide sequence, organization, and nature of the protein products of thecarotenoid biosynthesis gene cluster of Rhodobacter capsulatus. Mol. Gen. Genet. 216: 254−268.
【0052】
[実施例7] 色素分析用プラスミドの作製
実施例6で得られたプラスミドpBS0603を材料として用いて、色素分析用に次の2種類のプラスミドを作製した。
pBS0603から1.54 kb EcoRV−EcoRI断片を除き、代わりに、EcoRI−NotI−BamHIアダプター(BamHI末端側は平滑)(Takara)を挿入したプラスミドを作製し、pBS0603dDOと名付けた。本プラスミドには、pBluescript II KSベクターに、フラボバクテリウムA99−3株のcrtY− γcrtAの2遺伝子が挿入されている。次に、リコペンβ−モノシクラーゼ(crtY− γ)遺伝子のみを大腸菌で発現させるためのプラスミド(pG0604)を以下のようにして作製した。オリゴヌクレオチド5’ TGTCTGCAGGATTTCAACCGTATTTGATT 3’と5’ TATGGATCCCAATTCTTCAATCTTAAAGGAG 3’を用いて、プラスミドpSC0601を鋳型としてcrtY− γ遺伝子をPCRにより増幅し、得られた増幅物をpGEM−T Easyベクター(Promega製)に、このベクターの取り扱い説明書に従ってクローン化して作製した。PCRは、94°Cで10分間の加熱後、94℃で1分、50℃で1分、72℃で2分を繰り返し40回行い、最後に72℃で10分間伸長反応を行った。
【0053】
[実施例8] 大腸菌に蓄積されたカロテノイドの抽出と解析
プラスミド pACCRT−EIBを含む大腸菌(E. coli)はリコペンを細胞内に蓄積する。 pACCRT−EIB とSuperCos 1 によるコスミドを含む 大腸菌(E. coli)XL1−Blue MR、またはpACCRT−EIBとpBluescript II KSによりサブクローンされたプラスミドを含む大腸菌JM109、またはpACCRT−EIBとpG0604を含む大腸菌JM109は、CmとAp を含むLB 培地で2日間、30℃で振盪培養された(100 rpm)。そして、培養液から菌体を集菌し、アセトンを加え、室温で30分間撹拌した。抽出液を14,000 x gで5 分間(4°C)遠心し, カロテノイド色素抽出液である上澄み液をHPLC(model 2695、Waters製)分析にかけた。条件は、25°C で逆相カラム(3.9 x300 mm, Nova−pak HR 6 μm C18; Waters製)を用い、アセトニトリル(acetonitrile)−メタノール(methanol)− 2−プロパノール(2−propanol)(90:6:4)で、1 ml/minの速さで展開し、Waters model 2996 PDA 検出器によりモニターした。
【0054】
プラスミドpBS0603dDO(crtY− γcrtAを含む)またはpG0604(crtY− γを含む)がpACCRT‐EIBとともに導入された大腸菌を液体培養し、菌体をアセトン抽出したものを用いてHPLC分析を行った。その結果、両者のカロテノイド総量はほぼ同じであったが、前者が85%のγ−カロチンと15%のβ−カロチンを合成していたのに対して、後者は40%のγ−カロチンと60%のβ−カロチンを合成したことが明らかとなった(γ−カロチンの同定は実施例9参照)。なお、両者とも基質のリコペンはほとんど残っていなかった。以上の結果から、CrtY−γはリコペンからγ−カロチンを作るが、培養条件によっては、生成したγ−カロチンの一部をβ−カロチンにまで変換することがわかった。また、CrtAがCrtY−γと共存すると、γ−カロチンの合成量が増えたことから、フラボバクテリウムA99−3株のCrtAはリコペンβ−モノシクラーゼ活性を増強することがわかった。なお、上記のcrtY− γ遺伝子の変わりに、エルウィニア属細菌のcrtY遺伝子をpACCRT−EIBとともに用いると、上記と同等の条件では、ほぼ100%のβ−カロチンが得られ、γ−カロチンは得られない。
【0055】
[実施例9] γ−カロチンの同定
プラスミドpBS0603dDOを、pACCRT−EIBを含む大腸菌(E. coli)JM109株に導入し、Ap及びCmを含むLB培地2,000 mlで30℃、2日間培養した(100 rpm)。培養液から集菌した菌体を、300 mlのアセトンにより抽出した。これを濃縮後、200 mlのへキサンにより2回抽出した。さらに、へキサン層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけ、へキサン−酢酸エチル(50:1)で展開溶出することにより、γ−カロチンと考えられる純品を1 mg得た。
【0056】
本物質による紫外−可視吸収スペクトル、FD−MSスペクトル(日立二重収束質量分析計 M−2500)(m/e 536)、及びH−NMR(500 MHz、JEOLα)スペクトルにより、本品はγ−カロチン(β,ψ−carotene)と同定された。
【0057】
【発明の効果】
本発明により、自然界には微量にしか存在しない単環式カロテノイドを大量に生産することが可能になる。
【0058】
【配列表】
Figure 2004154061
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【図面の簡単な説明】
【図1】エルウィニア属細菌およびパラコッカス属細菌における各種カロテノイド合成遺伝子の機能と生合成経路を示す図。
【図2】海洋細菌フラボバクテリウム属(Flavobacterium sp.)A99−3株における各種カロテノイド合成遺伝子の機能と推定されたカロテノイドの生合成経路を示す図。

Claims (8)

  1. 以下の(a)、(b)、又は(c)に示すペプチドをコードする遺伝子:
    (a)配列番号2記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
    (b)配列番号2記載のアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつリコペンβ−モノシクラーゼ活性を有するペプチド、
    (c)配列番号1記載の塩基配列からなるDNA又はそれと相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAがコードする細菌由来のペプチドであって、リコペンβ−モノシクラーゼ活性を有するペプチド。
  2. 請求項1に記載の遺伝子を、他のカロテノイド生合成遺伝子とともに導入して得られる微生物。
  3. 請求項1に記載の遺伝子を、他のカロテノイド生合成遺伝子を含む微生物に導入して得られる微生物。
  4. 以下の(d)、(e)、又は(f)に示すペプチドをコードする遺伝子を、請求項2又は3に記載の微生物にさらに導入して得られる微生物:
    (d)配列番号4記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
    (e)配列番号4記載のアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつリコペンβ−モノシクラーゼ活性を増強するペプチド、
    (f)配列番号3記載の塩基配列からなるDNA又はそれと相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAがコードする細菌由来のペプチドであって、リコペンβ−モノシクラーゼ活性を増強するペプチド。
  5. 請求項2乃至4のいずれか一項に記載の微生物を培地に培養して培養物又は菌体から単環式カロテノイドを得ることを特徴とする、単環式カロテノイドの製造法。
  6. 微生物が大腸菌である請求項5に記載の単環式カロテノイドの製造法。
  7. 他のカロテノイド生合成遺伝子が、少なくとも、ファルネシルピロリン酸またはゲラニルゲラニルピロリン酸からリコペンを合成するのに必要とされる遺伝子群を含む、請求項5に記載の単環式カロテノイドの製造法。
  8. 以下の(a)、(b)、又は(c)に示すペプチド:
    (a)配列番号2記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
    (b)配列番号2記載のアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつリコペンβ−モノシクラーゼ活性を有するペプチド、
    (c)配列番号1記載の塩基配列からなるDNA又はそれと相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAがコードする細菌由来のペプチドであって、リコペンβ−モノシクラーゼ活性を有するペプチド。
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