JP2004152448A - 可撓性基板の配置方法と磁気ディスク装置 - Google Patents

可撓性基板の配置方法と磁気ディスク装置 Download PDF

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Abstract

【目的】読み出しヘッドの信号線に誘起されるノイズを簡単な構成で低減するFPCの配置方法及び磁気ディスク装置を提供する。
【構成】所望のトラック上に位置決めされたディスク10に対して情報の記録、再生を行う磁気ヘッド7に信号を供給する導体パターンを配線した第1のFPC12と、ピボット軸5を中心として回動することによりトラック移動するVCM26に対し電力を供給する導体パターンを配線した第2のFPC12Aとを別々に配置し、両FPCパターン間の電磁的な結合を低減させる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パーソナルコンピュータなどの外部記憶装置に用いられる揺動型VCM(Voice Coil Motor:ボイスコイルモータ)に用いられる可撓性基板であるFPC(Flexible Printed Circuit:フレキシブルプリンテッドサーキット)の配置方法と、これを用いた磁気ディスク装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的な従来の磁気ディスク装置における揺動型VCMは、シャーシ(図示せず:図1と同様)に対して上・下ヨーク、マグネット、コイル、ピボット軸受などから構成されることが知られている。また、磁気ヘッド及びVCMコイルと本体回路との電気的な接続に関しては、FPCが用いられている。このFPCを経由して、VCMコイルに通電し、磁気ヘッドを所要のトラックへと移動し、更にFPCを経由して、所要のデータを記録又は再生することができるように構成されている(例えば下記の特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−339407号公報(図1、要約書)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
近年、パーソナルコンピュータの小型化・性能向上により、磁気ディスク装置に要求される性能も高まっている。小型・大容量・高速・安価な磁気ディスク装置が望まれている。しかしながら、上述した従来の磁気ディスク装置においては、以下に述べる問題があった。
【0005】
本体回路部分と磁気ヘッド及びVCMに対しての電気的な接続には、FPCが用いられ、このFPCは、通常VCMのピボット(回転中心)付近を通り、本体回路との間で、移動しないコネクタなどにより接続されていた。このため、VCMコイルに通電しヘッドが移動する際、隣接するGMR(Giant Magneto Resistive)ヘッドの信号線にノイズが誘起され、GMRヘッドの読み出し信号が劣化し、位置検出信号のノイズ成分が増し位置決め精度が低下したり、データの誤り率が増加したりしていた。
【0006】
このGMRヘッドの読み出し信号の劣化を防ぐようにするため、読み出しヘッドの信号線をVCMコイルへの給電線より最も遠くなるように離して配置するよう工夫したり、読み出しヘッドの信号線とVCMコイルへの給電線との隙間を大きくしたり、同隙間にダミーのパターンを配置するなどして電気的結合を疎にしたり、複雑なファームウェア(Firmware)などを用いて高度なエラー訂正処理をするなどしてノイズ低減の対応をしてきた。このため、FPCのコストが上昇するとともに、複雑なFirmwareなどにより開発費が増加するなどした。
【0007】
本発明は上述した従来例に係る問題点を解決するためになされたもので、読み出しヘッドの信号線に誘起されるノイズを簡単な構成で低減するFPCの配置方法及びこれを用いた安価で高性能な磁気ディスク装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る可撓性基板の配置方法は、磁気ディスクに対して情報の記録、再生を行う磁気ヘッドに信号を供給する導体パターンを配線した第1の可撓性基板と、所定の回転軸を中心として回動することにより前記磁気ヘッドをトラック移動させるVCMに対し電力を供給する導体パターンを配線した第2の可撓性基板とを有し、前記第1の可撓性基板と前記第2の可撓性基板とをそれぞれ個別に配置し、両可撓性基板のパターン間の電磁的な結合を低減させるものである。この方法によれば、VCMコイルに通電することによって発生するノイズがGMRヘッドの読み出し信号線に誘起し信号を劣化することを低減させることができ、ヘッド読み出し信号の劣化が抑えられるためデータ誤り率を低減することができる。また、ヘッド位置信号の劣化も同時に抑えられるため高精度の位置決めが可能である。
【0009】
また、前記第1の可撓性基板はトラック位置により曲率半径が変化し、前記第2の可撓性基板は前記第1の可撓性基板と同等の機械特性を有することを特徴とするものである。この方法によれば、トラック位置によって可撓性基板により発生する回転軸による負荷を実質的になくすことができる。これによって、高精度の位置決めが可能となる。
【0010】
また、前記第2の可撓性基板は、前記回転軸とVCMのコイルの中心を結ぶ線に対して第1の可撓性基板とは反対側の位置に配置することを特徴とするものである。この方法によれば、回転軸に対する可撓性基板により発生する負荷トルクを確実にキャンセルすることができる。また、線対称に配置したことにより、耐振動などの負荷トルク以外の特性に関してもバランス良い構成とすることができる。
【0011】
さらに、本発明に係る磁気ディスク装置は、磁気ディスクと、前記磁気ディスクを回転駆動するスピンドルモータと、一端に磁気ヘッドが設けられ、他端にコイルを有し、所定の回転軸を中心として前記磁気ヘッドをトラック移動させるVCMと、少なくとも前記VCM及び前記磁気ヘッドと本体回路との電気的な接続を行う可撓性基板とを有する磁気ディスク装置において、
前記磁気ヘッドに信号を供給する導体パターンを配線した第1の可撓性基板と、前記VCMに対し電力を供給する導体パターンを配線した第2の可撓性基板とをそれぞれ個別に配置し、両可撓性基板のパターン間の電磁的な結合を低減させるよう構成したものである。この構成によれば、VCMコイルに通電することによって発生する誘導ノイズがGMRヘッドの読み出し信号線に誘起し信号を劣化することを低減することができ、データ誤り率を低減することができる。また、高い柔軟性を必要とする高価な可撓性基板を用いることなく、安価な可撓性基板によりヘッド読み出し信号の劣化が抑えられるため高精度の位置決めが可能でコストの低減ができ、安価で特性のよい磁気ディスク装置が実現できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る磁気ディスク装置(HDD:Hard Disk Drive:ハードディスクドライブ)の要部を示す平面図である。回路部分を除くHDA(Hard Disk Assemble:ハードディスクアセンブル)1は、概箱状をしたアルミニウム製などの金属性シャーシ2と、シャーシ2の上部を塞ぐカバー(図示せず)とを有している。また、HDA1内には、アルミニウムやガラスなどの非磁性基材上にスパッタリングなどによりCo−Cr系などの磁性膜を形成し、所要の保護膜や、潤滑層を形成した磁気記録媒体としてのディスク10が配置されている。
【0013】
スピンドルモータ14は、ディスク10を一定速度で回転させる。スピンドルモータ14の軸受には、流体軸受を用いてあり、モータの形態は周対向型のDDモータである。これにより、ディスク10を高い回転精度で回転できるようにしてある。ディスク10の半径方向の振れについては、RRO・NRROなどで規定され高精度の要求を満たすように設計されている。
【0014】
ディスク10に対して情報の記録又は再生を行う磁気ヘッド7は、磁気ヘッド7を支持するサスペンション6の先に、ジンバルばね(図示せず)に取り付けられて、ロードビーム(図示せず)により付勢力が伝達されるようになっている。磁気ヘッド7は、スライダ(図示せず)に書き込み用の薄膜ヘッドと、読み出し用のGMRヘッドとが取り付けられ、スライダに設けられた所要形状のABS(Air Bearing Surface:エアーベアリングサーフェス)面により負圧スライダとしてある。
【0015】
サスペンション6は、回転軸であるピボット軸5及びピボット軸受5aによりディスク10のトラック方向(半径方向)に対して回動自在に支持されている。アクチュエータ18は、サスペンション6とコイルアーム8とで構成されている。アクチュエータ18は、VCM26により回動及び位置決めされ、磁気ヘッド7を所要のトラック方向に移動又は位置決めされるようになっている。ディスク10の外周側には、アクチュエータ18の待避位置にランプ3が設けられており、HDDの動作停止の際に、アクチュエータ18を待避位置にアンロードし、HDDの非動作時に、アクチュエータ18を待避位置に保持する。
【0016】
シャーシ2の下面には、図示していない、モータなどの動作などを制御する駆動回路や、R/W回路、HDC(Hard Disk Controller:ハードディスクコントローラ)などが実装された回路基板が固定されHDDとなる。このHDDは、ロード/アンロード機構の形態をとっている。ディスク10は、HDDが動作・非動作のとき、スピンドルモータ14により回転・停止する。ディスク10の表面には、図示していないが、データ及びサーボ情報が記録されるトラックが同心円状に配置されている。トラックは、更に細かな、512Byte単位などのセクターに分割されている。また、トラック位置によって線記録密度がほぼ一定になるようにゾーンビット記録をするようになっている。
【0017】
コイルアーム8とサスペンション6とは、回転軸であるピボット軸5及びピボット軸受5aに回動自在に支持されており、ピボット軸5に対してそれぞれが反対の位置関係に配置されている。また、サスペンション6の先端部には、ランプ3に待避するためのタブ11が設けられている。タブ11は、待避位置に移動したときに、ランプ3により保持される部分であり、ランプ3に接触する凸部が形成されている(図示せず)。これは、ランプ3との摩擦を低減して汚染の防止とディスク10上から待避位置又は逆の移動の際に磁気ヘッド7の姿勢が変化してディスク10との接触を防止するためである。
【0018】
本発明の第1の実施の形態におけるHDA1においては、1プラッタ−1ヘッドと称され、ディスク10の上面のみを記録面とし、1つの磁気ヘッド7を用いる形態としている。磁気ヘッド7は、図示しない回路基板からデータをディスク10に記録し、また、ディスク10に記録されたデータの読み出しを行う。記録については、16−17の変調方式を用いてByte単位でコードの変換を行い記憶容量の向上と記録・再生の特性の向上を行っている。
【0019】
これらの信号は、第1のFPC12を介して磁気ヘッド7との間で授受され、本体回路とは、移動しないコネクタによって接続されている。第1のFPC12には、書き込み用の薄膜ヘッドに書き込み電流を供給する2本の信号線と、読み出し用のGMRヘッドにセンス電流を供給する2本の信号線があり、少なくとも4本の信号線のパターンが設けられている。
【0020】
一方、第2のFPC12Aには、VCM26のコイル9に比較的大きな電力を供給するための2本の給電線があり、少なくとも2本のパターンが設けられており、第1のFPC12の配置とは異なる位置に配置されている。
【0021】
本発明の第1の実施の形態において、第2のFPC12Aは、第1のFPC12と構成として同じものが使われている。FPCの構成としては、ベースフィルムとカバーフィルムに1/2 Mil(25μm)厚のポリイミドフィルムを用い、導体には、1/2 Oz(18μm)の圧延銅箔を用いてある。
【0022】
磁気ヘッド7は、スライダに取り付けられ、サスペンション6により与えられる付勢力によりディスク10に付勢されている。スライダは前述のように所要の形状を持たせたABS面を持つ負圧スライダとしてあり、ディスク10の回転により発生する空気流の流入により、所要の正・負圧を生じ非常にわずかな浮上量(10〜30nm)にて安定して浮動するようになっている。
【0023】
VCM26は、コイル9と、上ヨーク25、下ヨーク19及びマグネット13とから構成されている。アクチュエータ18のコイルアーム8に固定されたコイル9の下端面には、所定の空隙を介してマグネット13が対向配置されている。マグネット13は、下ヨーク19に固定されている。コイル9の上方には、所定の空隙を介して上ヨーク25が対向配置されている。
【0024】
この構成により磁気回路を形成し、コイルアーム8を上ヨーク25とマグネット13とに挟まれた空間に配置してあるので、コイル9が回動可能となっている。マグネット13には、エネルギー積の高いNd−Fe系の焼結製で、表面をNiめっきなどによる防錆処理をした面内に2極に着磁して用いてある。
【0025】
ランプ3は、図示していないが、タブ11に対応する斜面、平面などから形成される複合平面形状で、アンロード時のサスペンション6の揺動に伴うタブ11の運動方向、すなわちディスク10の径方向外側に向けて、上記複合平面が配置されて、シャーシ2に固定されている。なお、アクチュエータ18とVCM26とランプ3とで、ロード/アンロード機構を構成している。
【0026】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係るHDDにおけるVCM26の回転軸であるピボット軸5及びピボット軸受5aの断面図を示している。ピボット軸受5aには、深溝型のラジアルベアリング15を2個用いて、定位置与圧にて構成してある。外輪には、カラー16が取り付けられ、サスペンション6が固定される。ピボット軸5には、シャーシ2に対して固定するためのねじ17が設けられている。少ない回転トルクで回転するとともに、振れが厳しく抑えられている。
【0027】
次に、HDDの動作について説明する。回路基板により、スピンドルモータ14が駆動され、ディスク10が所定の回転速度で回転する。本発明の第1の実施の形態においては、50S−1(3,000rpm)としてある。ランプ3に退避していた磁気ヘッド7がVCM26によりピボット軸5を中心に回動し磁気ヘッド7をディスク10面へとロードする。ディスク10の回転により発生した空気流が、スライダとディスク10との間を通る。このため、スライダは、サスペンション6の付勢力に抗して、ディスク10との間で非常にわずかな浮上量(10〜30nm)にて安定して浮動する。これにより、磁気ヘッド7のロードが完了する。続いて、トラック情報などを読み取りアクワイヤーと呼ばれるトラック認識などの一連の動作が行われる。
【0028】
次に、VCM26のコイル9に通電されると、マグネット13からの磁束とコイル9の電流とによってフレミングの左手の法則に従って推力が発生する。コイル9は、マグネット13が固定されているのでその反作用として推力を発生しアクチュエータ18をピボット軸5に対して回動させる。これにより、アクチュエータ18はコイル9への通電量に応じた角度回動される。サスペンション6に支持された磁気ヘッド7は、ディスク10の半径方向に沿って、ディスク10上を浮上状態で移動し、所望のトラック上に位置決めされ、ディスク10に対して情報の記録、再生が行われる。
【0029】
VCM26の推力は、バラツキが少なくなるようピボット軸受5aの回動中心に対するマグネット13の取り付けが所要の精度になるように行われている。これは、推力の発生がB・I・L(磁束×電流×長さ)則によるもので、コイル9に対して鎖交する磁束のバラツキを避けるためである。
【0030】
従来、FPCは、読み出し用のGMRヘッドにセンス電流を供給する2本の信号線及び書き込み用の薄膜ヘッドに書き込み電流を供給する2本の信号線と、VCM26のコイル9に比較的大きな電力を供給するための2本の給電線とによる少なくとも6本のパターンが同一のFPC面に設けられており、VCM26のコイル9への通電によって微弱なGMRヘッドからの読み出し信号線上に誘起するノイズを低減するため、読み出し用のGMRヘッドへの信号線は、VCM26のコイル9への給電線より最も遠くなるように離して配置したり、これら2種類のパターンの間を比較的大きな隙間によって隔離するなどして対応してきた。
【0031】
本発明の第1の実施の形態においては、これら2種類のパターンが別々のFPC(12と12A)上に配置され、機械的に離れて配置されるので、このような問題が容易に解消できる。この説明を図3に基づいて行う。図3は、上記のパターン間に存在する電磁的な結合を模式的に示したものである。図3に示すように、電磁的な結合は、誘導性の結合である相互インダクタンスMによるものと、パターン間に存在する浮遊容量C1,C2,C3,C4による静電性結合によるものとの2種類がある。ここで、いずれの結合においても、その強さはパターン間の距離に逆比例の関係がある。
【0032】
これらの結合によるGMRヘッドの読み出し信号の劣化を低減するためには結合を疎にすればよいことは明らかであり、そのため、上記の2種類のパターンの間隔を広げることが最も簡単な方法である。従来は、図4に示すように、同一のFPC上で上記2種類のパターンの間隔を大きくすることにより、すなわち、図4において、信号線20A,20B,21A,21Bと、給電線22A,22Bとの間隔を大きくすることにより対策してきたが、この間隔を大きくするには、FPCの幅寸法を大きくすればよいが、機械的な負荷の増加と寸法上の制約があった。
【0033】
本発明の第1の実施の形態によれば、図5に示すように、上記2種類のパターンを別々のFPC、すなわち、第1のFPC12に、信号線20A,20B,21A,21Bのパターンを設けるとともに、第2のFPC12Aに、給電線22A,22Bのパターンを設けることによって、2種類のパターンを配置するので十分な間隔を確保することができ、GMRヘッドの読み出し信号の劣化を低減でき、誤り率の低減を可能とすることができる。
【0034】
図6において、横軸は周波数を示し、縦軸にはGMRヘッドの読み出し信号線の信号振幅レベルを示すサーボ信号のパワースペクトルを示している。従来例によれば、図6の破線で示したように、使用帯域全域においてノイズが観察される。これは図1で示すようにVCM26のコイル9の給電線とGMRヘッドの信号線が平行して比較的近くに配置されているため、VCM26のコイル9を駆動する給電線に通電した結果GMRヘッドの読み出し信号が劣化することによるものである。今、図5に示すように、GMRヘッドに対する導体パターンを配線した第1のFPC12と、VCM26に対する電力を供給する導体パターンを配線した第2のFPC12Aとを別々に配置し、両FPCパターン間の電磁的な結合を低減するように配置した本発明の第1の実施の形態では、図6の実線で示すような特性が得られる。これにより、VCM26のコイル9の通電、すなわちVCM26の動作によるGMRヘッド読み出し信号の劣化が減少することが理解できよう。ここに説明した内容は、従来のフォト印刷法を用いる高価な狭いパターン設計ルールのFPCを使用せず、スクリーン印刷法で形成可能な、最小パターン幅、最小パターン間隔が共に0.125mm程以上のFPCパターン設計ルールを適用できることが容易に理解できよう。
【0035】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態に係る磁気ディスク装置を図7に示す。図7に示す本発明の第2の実施の形態では、トラック位置により曲率半径が変化するFPCを第1のFPC12とし、この第1のFPC12と同等の機械特性を有するFPCを第2のFPC12Aとして用いて、トラック位置によってFPCにより発生するピボット軸5による負荷を実質的になくし、高精度の位置決めを可能にしている。そして、第2のFPC12Aを、ピボット軸5とVCM26のコイル9の中心を結ぶ線に対して第1のFPC12と線対称となる位置に配置することで、ピボット軸5に対するFPCにより発生する負荷トルクを確実にキャンセルし、また、線対称に配置したことにより、耐振動などの負荷トルク以外の特性に関してもバランス良い構成としている。
【0036】
FPCはVCM26の回動に伴いトラック位置によってその曲率半径が変化する。これにより、曲げ応力が変化して反力として負荷が変化する。つまり、VCM26の推力が回動方向の位置によってあたかも変化したように振舞うことになる。対応として、従来、トラックの位置に対してコイル9に流す電流値を調整したり、サーボループのゲイン調整などをHDA1毎に行ったり、Firmwareなどに電流調整などのステップを入れることなどで対応していた。また、FPCの負荷を低減するために、柔軟性が高い高価なFPCを用いたりすることで対応してきた。本発明の第2の実施の形態においては、第1のFPC12の負荷が第2のFPC12Aによってキャンセルすることができるので、このような問題が容易に解消できる。
【0037】
この説明を図8に基づいて行う。図8において、横軸は、トラック位置を示し、縦軸は、FPCによる負荷を示している。縦軸における符号の+は磁気ヘッド7を内周側へと移動させる方向を示してある。従来例によれば、図の破線で示したような負荷がトラック位置によって変化しながら発生する。これは、図1に示すように、FPCが湾曲した形態にてHDA1に配置してあるために、FPCは直線状になろうとする(曲がりがないように)方向に力を発生させる。どのトラック位置においても磁気ヘッド7を内周側へと移動させる方向に負荷としてピボット軸回りへの負荷トルクが発生するためである。
【0038】
この本発明の第2の実施の形態では、第1のFPC12に対して同等の機械特性を有する第2のFPC12Aをピボット軸5とVCM26のコイル9の中心を結ぶ線に対して線対称となる位置に配置し、第2のFPC12Aにより発生する負荷を一点鎖線で示している。この第2のFPC12Aは、第1のFPC12と同じ機械特性を有しており、第1のFPC12と逆に作用するために2つのFPCの負荷が打ち消しあって2点鎖線で示した本発明の特性が得られる。
【0039】
これにより、トラックによって負荷の変化がなく、しかも非常に少ない負荷とすることが理解できよう。今説明した内容は、FPCが同等の機械特性を持っていればよいので、高価な柔軟性の高いFPCを用いなくとも実現できることは、容易に理解できよう。また、曲率の変化、つまり、トラック位置に対しての負荷の変化が、この本発明の第2の実施の形態で示したものと比べ複雑であっても同様な効果が得られることも理解できよう。
【0040】
次に、図9により実際のHDDとしての位置決め精度の特性を説明する。図9においては、横軸に時間の経過を示しており、縦軸には、上段よりヘッドを移動する際の目標値を実線で、本発明の第2の実施の形態における移動の状態を一点鎖線で、従来例を破線で示している。2段目には、実際移動したときのPES(Position Error Signal:ポジションエラーシグナル)信号を示してある。PES信号は、通常、トラックピッチに対して磁気ヘッド7のトラック方向の位置ズレ量をトラックピッチで正規化した値が用いられ、読み出しに対しては、5〜7%程度で可能とし、書き込みに対しては、3%以内程度で可能とすることが知られている。つまり、磁気ヘッド7が、読み出し又は書き込み可能な位置決め状態になったことを判断する指標となる。したがって、この時間が短い方が優れたHDDであることを示す指標となる。
【0041】
3段目には、本発明の第2の実施の形態による場合と4段目には、従来例による場合の書き込み可能な状態(WT可能)になっている期間を1として示してある。これは、PES信号が、3%以下になっている状態を示してある。書き込み可能な状態は、読み出しも可能な状態であり、HDDがシークした後に使える期間を示すものと考えてもよい。
【0042】
この図9によれば、本発明を用いることで、シークした後すぐに書き込み・読み出し可能な状態とできていることが理解されよう。これによれば、シークに伴う無駄時間が低減できるのでHDDのパフォーマンスが向上できる。これらは、FPCによる負荷トルクが低減したために、目標値に対する移動の指令に伴うVCM26への供給電流に対して、磁気ヘッド7が指令どおりの挙動ができるようになったことによるものである。
【0043】
更に言い換えると、従来のVCMを用いてもアクセス時間が短縮できパフォーマンスの高いHDDが実現できることを意味する。また、トラックの位置に対してコイル9に流す電流値を調整したり、サーボループのゲイン調整などをHDA1毎に行ったり、Firmwareなどに電流調整などのステップを入れることなども不要にすることができる。
【0044】
図10と図11は、従来例と比較して示す本発明の第2の実施の形態に係るVCM26のゲイン特性とHDDの外乱と位置決め特性を示す図である。これらの図において、横軸に外乱を示し、縦軸に、図10はVCM26のゲイン、図11はPES(Position Error Signal)信号をそれぞれ示し、本発明の第2の実施の形態における特性を二点鎖線で、従来例を破線で示している。本発明の第2の実施の形態においては、従来例のように、外乱の影響を受けることなく、平坦で良好な特性を得ることができる。
【0045】
以上説明した内容については、組み合わせて実施することも可能であり、適宜変更して適用することも可能であることは明白である。
【0046】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、ピボット軸を中心として回動することによりトラック移動するVCMにおいて、磁気ヘッドに対する信号を供給する導体パターンを配線した第1のFPCと、VCMに対する電力を供給する導体パターンを配線した第2のFPCとを別々に配置し、両FPCパターン間の電磁的な結合を低減することにより、VCMのコイルに通電することによって発生するノイズがGMRヘッドの読み出し信号線に誘起し信号を劣化することを低減することができ、ヘッド読み出し信号の劣化が抑えられるためデータ誤り率を低減することができ、また、ヘッド位置信号の劣化も同時に抑えられるため高精度の位置決めができるという効果を有する磁気ディスク装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるHDDの要部平面図
【図2】本発明の第1の実施の形態におけるピボット軸受の断面図
【図3】本発明の第1の実施の形態におけるFPCの電磁的な結合を説明する図
【図4】本発明の説明に用いる従来の磁気ディスク装置におけるFPCの構成を示す要部の平面図
【図5】本発明の第1の実施の形態におけるFPCの構成を示す要部の平面図
【図6】本発明の第1の実施の形態におけるGMRヘッドの読み出し信号のパワースペクトルの一例を示す図
【図7】本発明の第2の実施の形態におけるHDDの要部平面図
【図8】本発明の第2の実施の形態におけるFPCの負荷を説明する図
【図9】本発明の第2の実施の形態におけるHDDの位置決め精度を説明する図
【図10】本発明の第2の実施の形態におけるVCMのゲイン特性を示す図
【図11】本発明の第2の実施の形態におけるHDDの外乱と位置決め特性を示す図
【符号の説明】
1 HDA
2 シャーシ
3 ランプ
5 ピボット軸
5a ピボット軸受
6 サスペンション
7 磁気ヘッド
8 コイルアーム
9 コイル
10 ディスク
11 タブ
12 第1のFPC
12A 第2のFPC
13 マグネット
14 スピンドルモータ
15 ラジアルベアリング
16 カラー
17 ねじ
18 アクチュエータ
19 下ヨーク
20A、20B、21A、21B 信号線
22A、22B 給電線
25 上ヨーク
26 VCM

Claims (4)

  1. 磁気ディスクに対して情報の記録、再生を行う磁気ヘッドに信号を供給する導体パターンを配線した第1の可撓性基板と、所定の回転軸を中心として回動することにより前記磁気ヘッドをトラック移動させるVCMに対し電力を供給する導体パターンを配線した第2の可撓性基板とを有し、前記第1の可撓性基板と前記第2の可撓性基板とをそれぞれ個別に配置し、両可撓性基板のパターン間の電磁的な結合を低減させる可撓性基板の配置方法。
  2. 前記第1の可撓性基板はトラック位置により曲率半径が変化し、前記第2の可撓性基板は前記第1の可撓性基板と同等の機械特性を有する請求項1に記載の可撓性基板の配置方法。
  3. 前記第2の可撓性基板は、前記回転軸とVCMのコイルの中心を結ぶ線に対して第1の可撓性基板とは反対側の位置に配置する請求項2に記載の可撓性基板の配置方法。
  4. 磁気ディスクと、前記磁気ディスクを回転駆動するスピンドルモータと、一端に磁気ヘッドが設けられ、他端にコイルを有し、所定の回転軸を中心として前記磁気ヘッドをトラック移動させるVCMと、少なくとも前記VCM及び前記磁気ヘッドと本体回路との電気的な接続を行う可撓性基板とを有する磁気ディスク装置において、
    前記磁気ヘッドに信号を供給する導体パターンを配線した第1の可撓性基板と、前記VCMに対し電力を供給する導体パターンを配線した第2の可撓性基板とをそれぞれ個別に配置し、両可撓性基板のパターン間の電磁的な結合を低減させるよう構成した磁気ディスク装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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