JP2004151679A - 平版印刷版用アルカリ性現像液及び平版印刷版の製版方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】平版印刷版原版からの製版において、長期間のランニング処理によっても感光層成分などに由来するカスやヘドロの発生を抑制し、安定に現像処理を行うことができるアルカリ性現像液を提供する。
【解決手段】特定の式にて示される珪素含有化合物を含有することを特徴とする平版印刷版用アルカリ性現像液;及び支持体上に画像形成層を有する平版印刷版原版を露光後、上記アルカリ性現像液で現像処理することを含む平版印刷版の製版方法。
【解決手段】特定の式にて示される珪素含有化合物を含有することを特徴とする平版印刷版用アルカリ性現像液;及び支持体上に画像形成層を有する平版印刷版原版を露光後、上記アルカリ性現像液で現像処理することを含む平版印刷版の製版方法。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、平版印刷版原版からの製版に使用するアルカリ性現像液に関し、さらに平版印刷版の製版方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
平版印刷版の製版工程では、感光層成分を現像浴で現像液に溶解させ、次いで水洗、ガム引きを自動現像機によって行うのが一般的である。版の処理量の増大に伴い、現像浴中ではアルカリ現像液中に溶出した感光層成分及び支持体成分の濃度が増大し、これに伴って感光層成分や支持体成分がカスとして沈殿したり、現像液に溶解しきれず、版上にカスとなって付着し、インキ着肉不良や地汚れ等が発生することがしばしば起こった。
この問題を解決するためには、高アルカリ性の現像液を用い、かつよりアルカリ性の高い現像補充液を用いることも提案されているが、アルカリ活性度の変化が大きいため現像安定性が十分でなく、特に長期間のランニング処理においては問題が大きかった。また種々の界面活性剤が検討されているが、十分ではなかった。
上記インキ着肉不良や地汚れの発生を防止することを目的として、特開平8−171214号公報には、珪酸塩とアルカリ可溶性樹脂を含有する水系アルカリ現像液が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、現像液中にヘドロ等の種々のカスが発生しやすいという問題があった。特に珪酸塩濃度が高い場合に顕著であった。また、珪酸塩を含まない現像液も提案されているが、この場合版上にアルミニウムを主成分とするカスが発生するという問題があった。また、一般式 X−(CH2)y−Si(R1)n(OR2)3−n(X:リン酸エステルなど)で表されるシラン化合物を0.1〜50g/リットル含有する、感光性ジアゾ系平版印刷版用の現像液が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−171214号公報
【特許文献2】
ドイツ特許第4211934号明細書
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、長期間のランニング処理によっても感光層成分などに由来するカスやヘドロの発生を抑制し、安定に現像処理を行うことができるアルカリ性現像液を提供することにある。本発明の目的はまた、そのような現像液を用いて、長期間のランニング処理によっても感光層成分などに由来するカスの版への付着がなく、インキ着肉不良や地汚れ等が発生することなく、現像液中にヘドロが少なく安定に処理することができ、かつ版上にアルミニウムを主成分とするカスの発生しない平版印刷版の製版方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の珪素含有化合物をアルカリ性現像液に含ませることにより、長期間のランニング処理によっても感光層成分などに由来するカスやヘドロの発生を抑制し、安定に現像処理を行うことができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
従って本発明は、下記一般式(I)で示される化合物を含有することを特徴とする平版印刷版用アルカリ性現像液である。
(式中、R1、R2、R3、R4及びR5は各々独立して水素原子又はアルキル基を表し、Xは単結合、−N(R6)−(R6は水素原子又はアルキル基を表す。)、−N+(R7)(R8)−(R7及びR8は各々独立して水素原子又はアルキル基を表す。)、−S−又は−O−を表し;Yはアミノ基、水酸基、エポキシ基、ウレイド基、カルバモイル基、カルボキシル基、ジヒドロキシアルキル基、スルファモイル基、芳香族基、又は又は−N+(R10)(R11)(R12)(R10、R11、R12は各々独立に水素原子又はアルキル基を表す。)を表し;aは0又は1以上の整数を表し;及びbは1以上の整数を表す。)
本発明はさらに、支持体上に画像形成層を有する平版印刷版原版を露光後、上記アルカリ性現像液で現像処理することを含む平版印刷版の製版方法である。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。先ず、アルカリ性現像液について説明する。
本発明のアルカリ性現像液(以下、単に現像液とも称する。)は、アルカリ性の水溶液であって、従来公知のアルカリ剤として使われる塩基を一般的に含むものである。本発明の現像液はまた、少なくとも一種の非還元糖及び/又はSiO2を含有することが好ましく、このSiO2の源としてアルカリ金属の珪酸塩を含ませることができる。本発明の現像液は更に、緩衝剤、界面活性剤、現像安定化剤などの添加剤を、本発明が目的とする効果を奏する範囲内で添加することができる。
本発明のアルカリ性現像液は、現像開始液としても現像補充液としても適用できる。したがって、特に記載のない限り、現像開始液及び現像補充液を一括して現像液と称する。
本発明のアルカリ性現像液は、上記のようなアルカリ水溶液中に特定の珪素含有化合物を含むことを特徴とする。
以下に現像液の各成分を説明する。
【0007】
[一般式(I)で示される珪素含有化合物]
式(I)中、R1、R2、R3、R4及びR5は各々独立して水素原子又はアルキル基、具体的には炭素原子数1〜10のアルキル基を表す。aが2以上の場合、R4、R5は各々同一でも異なっていてもよい。Xは単結合、−N(R6)−(R6は水素原子又は炭素原子数1〜8のアルキル基を表す。)、−N+(R7)(R8)−(R7及びR8は各々独立して水素原子又は炭素原子数1〜8のアルキル基を表す。)、−S−又は−O−を表す。
式(I)中、Yはアミノ基(−NH2)、水酸基(−OH)、
エポキシ基:
、ウレイド基(−NHC(O)NH2)、カルバモイル基(−C(O)NH2)、カルボキシル基(−COOH)、ジヒドロキシアルキル基(アルキル基は炭素原子数1〜10程度である)、スルファモイル基(該スルファモイル基は置換基を有していてもよく、具体的には−SO2NH(R9)(R9は水素原子又は炭素原子数1〜8のアルキル基を表す。)で表わされる。)、芳香族基(芳香族基としてフェニル基、ナフチル基などがあり、それらは置換基を有していてもよく、置換基として炭素原子数1〜20のアルキル基及びアルケニル基、カルボキシル基、ニトリル基、アミノ基、水酸基などがある。)、−N+(R10)(R11)(R12)(R10、R11、R12は各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜20のアルキル基を表す。)などから選ばれ、酸性基は塩を形成していてもよい。式中aは0又は1以上の整数、一般的には0又は1〜10の整数を表し、bは1以上の整数、一般的には1〜20までの整数を表す。上記R1〜R12のアルキル基は置換基を有していてもよく、その置換基として水酸基、ハロゲン原子などがある。
式中X又はYに陽イオンがある場合には対となる陰イオンが存在し、それらは例えば、Cl−、Br−、I−、F−、H2PO4 −、PO4 3−、H2PO3 −、HPO3 2−、ClO4 −、NO3 −、BF4 −、ClO3 −、PO3 3−、HSO4 −、SO4 2−、HCO3 −、CO3 2−、PF6 −などである。
【0008】
一般式(I)で表される化合物の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0009】
【0010】
一般式(I)で示される化合物は常法により合成することができる。また、市場において一般に入手することができ、本発明では市販品を使用することもできる。そのような市販品の例として、信越化学、チッソ、東レシリコーン、東芝シリコーン、アズマックスなどのメーカーより市販されている製品がある。
本発明の現像液において、一般式(I)で示される化合物を1種、又は2種以上含ませることができる。
本発明のアルカリ性現像液中における一般式(I)で示される化合物の含有量は、版上のカスを抑制する効果を十分に発揮するために0.01〜20質量%が適当であり、より好ましくは0.02〜10質量%、さらに好ましくは0.05〜5質量%である。
【0011】
[アルカリ金属珪酸塩]
本発明の現像液にはアルカリ金属の珪酸塩を含めてもよく、そのようなアルカリ金属の珪酸塩としては、例えば、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウムなどがあり、それらを単独または組み合わせて用いることができる。このとき、該珪酸塩の成分である酸化珪素SiO2とアルカリ酸化物M2O(Mはアルカリ金属を表す。)との混合比率、及び濃度の調整により、現像性を容易に調節することができる。前記酸化珪素SiO2とアルカリ酸化物M2Oとの混合比率(SiO2/M2O:モル比)が0.5〜3.0のものが好ましく、1.0〜2.0のものがより好ましい。
本発明の現像液において、アルカリ金属珪酸塩を主要なアルカリ剤として用いてもよい。現像液におけるアルカリ金属塩の含有量は一般的に、SiO2換算で0.5〜5.0質量%の範囲である。現像液に下記の非還元糖を含めるとき、アルカリ金属珪酸塩の含有量は、SiO2換算で0.5質量%以下であることが好ましい。
【0012】
[非還元糖]
本発明の現像液中には非還元糖を含めてもよい。かかる非還元糖とは、遊離のアルデヒド基やケトン基を持たず、還元性を示さない糖類であり、還元基同士の結合したトレハロース型少糖類、糖類の還元基と非糖類が結合した配糖体および糖類に水素添加して還元した糖アルコールに分類され、何れも本発明に好適に用いられる。
トレハロース型少糖類には、サッカロースやトレハロースがあり、配糖体としては、アルキル配糖体、フェノール配糖体、カラシ油配糖体などが挙げられる。また糖アルコールとしてはD,L−アラビット、リビット、キシリット、D,L−ソルビット、D,L−マンニット、D,L−イジット、D,L−タリット、ズルシット、アロズルシット及びメソイノシットなどが挙げられる。更に二糖類の水素添加で得られるマルチトールおよびオリゴ糖の水素添加で得られる還元体(還元水あめ)が好適に用いられる。これらの中で本発明に好ましい非還元糖は、糖アルコールとサッカロースであり、特にD−ソルビット、サッカロース、還元水あめが適度なpH領域に緩衝作用があることと、低価格であることで好ましい。
【0013】
これらの非還元糖は、単独もしくは二種以上を組み合わせて使用でき、それらの現像液中に占める割合は、十分な緩衝作用を得て、且つ高濃縮化する際の利便性とコストの観点から、0.1〜30質量%が好ましく、更に好ましくは1〜20質量%である。
【0014】
[塩基]
本発明の現像液中に使用する塩基としては、従来より知られているアルカリ剤が使用できる。例えば、水酸化ナトリウム、同カリウム、同リチウム、燐酸三ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、燐酸二ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、硼酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウムなどの無機アルカリ剤が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤も用いられる。これらのアルカリ剤は単独もしくは二種以上を組み合わせて用いられる。これらの中で好ましいのは水酸化ナトリウム、同カリウムである。その理由は、非還元糖に対するこれらの量を調整することにより広いpH領域でpH調整が可能となるためである。また、燐酸三ナトリウム、同カリウム、炭酸ナトリウム、同カリウムなどもそれ自身に緩衝作用があるので好ましい。これらのアルカリ剤は現像液のpHを9.0〜13.5の範囲になるように添加され、その添加量は所望のpH、非還元糖の種類と添加量によって決められるが、より好ましいpH範囲は10.0〜13.2である。
【0015】
本発明における現像液には更に、糖類以外の弱酸と強塩基からなるアルカリ性緩衝液が併用できる。かかる緩衝液として用いられる弱酸としては、解離定数(pKa)が10.0〜13.2のものが好ましい。このような弱酸としては、Pergamon Press社発行のIONISATION CONSTANTS OF ORGANIC ACIDS IN AQUEOUS SOLUTION などに記載されているものから選ばれ、例えば2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール−1(pKa 12.74)、トリフルオロエタノール(同12.37)、トリクロロエタノール(同12.24)などのアルコール類、ピリジン−2−アルデヒド(同12.68)、ピリジン−4−アルデヒド(同12.05)などのアルデヒド類、サリチル酸(同13.0)、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸(同12.84)、カテコール(同12.6)、没食子酸(同12.4)、スルホサリチル酸(同11.7)、3,4−ジヒドロキシスルホン酸(同12.2)、3,4−ジヒドロキシ安息香酸(同11.94)、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン(同11.82)、ハイドロキノン(同11.56)、ピロガロール(同11.34)、o−クレゾール(同10.33)、レゾルシノール(同11.27)、p−クレゾール(同10.27)、m−クレゾール(同10.09)などのフェノール性水酸基を有する化合物、
【0016】
2−ブタノンオキシム(同12.45)、アセトキシム(同12.42)、1,2−シクロヘプタンジオンヂオキシム(同12.3)、2−ヒドロキシベンズアルデヒドオキシム(同12.10)、ジメチルグリオキシム(同11.9)、エタンジアミド ジオキシム(同11.37)、アセトフェノンオキシム(同11.35)などのオキシム類、アデノシン(同12.56)、イノシン(同12.5)、グアニン(同12.3)、シトシン(同12.2)、ヒポキサンチン(同12.1)、キサンチン(同11.9)などの核酸関連物質、他に、ジエチルアミノメチルホスホン酸(同12.32)、1−アミノ−3,3,3−トリフルオロ安息香酸(同12.29)、イソプロピリデンジホスホン酸(同12.10)、1,1−エチリデンジホスホン酸(同11.54)、1,1−エチリデンジホスホン酸1−ヒドロキシ(同11.52)、ベンズイミダゾール(同12.86)、チオベンズアミド(同12.8)、ピコリンチオアミド(同12.55)、バルビツル酸(同12.5)などの弱酸が挙げられる。
【0017】
これらの弱酸の中で好ましいのは、スルホサリチル酸、サリチル酸である。これらの弱酸に組み合わせる塩基としては、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウムおよび同リチウムが好適に用いられる。これらのアルカリ剤は単独もしくは二種以上を組み合わせて用いられる。上記の各種アルカリ剤は濃度および組み合わせによりpHを好ましい範囲内に調整して使用される。
【0018】
[界面活性剤]
本発明の現像液には、現像性の促進や現像カスの分散および印刷版画像部の親インキ性を高める目的で、必要に応じて種々界面活性剤や有機溶剤を添加できる。好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系および両性界面活性剤が挙げられる。界面活性剤の好ましい例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、しょ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシドなどの非イオン性界面活性剤、
【0019】
脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホ琥珀酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類などのアニオン界面活性剤、アルキルアミン塩類、テトラブチルアンモニウムブロミド等の第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体などのカチオン性界面活性剤、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミダゾリン類などの両性界面活性剤が挙げられる。以上挙げた界面活性剤の中でポリオキシエチレンとあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレンなどのポリオキシアルキレンに読み替えることもでき、それらの界面活性剤もまた包含される。
【0020】
更に好ましい界面活性剤は分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系の界面活性剤である。かかるフッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステルなどのアニオン型、パーフルオロアルキルベタインなどの両性型、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩などのカチオン型およびパーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基および親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基および親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基含有ウレタンなどの非イオン型が挙げられる。上記の界面活性剤は、単独もしくは2種以上を組み合わせて使用することができ、現像液中に0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜5質量%の範囲で添加される。
【0021】
[現像安定化剤]
本発明の現像液には、種々の現像安定化剤が添加することができる。それらの好ましい例として、特開平6−282079号公報記載の糖アルコールのポリエチレングリコール付加物、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどのテトラアルキルアンモニウム塩、テトラブチルホスホニウムブロマイドなどのホスホニウム塩およびジフェニルヨードニウムクロライドなどのヨードニウム塩が好ましい例として挙げられる。更には、特開昭50−51324号公報記載のアニオン界面活性剤または両性界面活性剤、また特開昭55−95946号公報記載の水溶性カチオニックポリマー、特開昭56−142528号公報に記載されている水溶性の両性高分子電解質がある。更に、特開昭59−84241号公報のアルキレングリコールが付加された有機ホウ素化合物、特開昭60−111246号公報記載のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック重合型の水溶性界面活性剤、特開昭60−129750号公報のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンを置換したアルキレンジアミン化合物、特開昭61−215554号公報記載の重量平均分子量300以上のポリエチレングリコール、特開昭63−175858号公報のカチオン性基を有する含フッ素界面活性剤、特開平2−39157号公報の酸またはアルコールに4モル以上のエチレンオキシドを付加して得られる水溶性エチレンオキシド付加化合物と、水溶性ポリアルキレン化合物、及び特開平6−282079号公報の糖アルコールのエチレンオキシド付加物などが挙げられる。
【0022】
[有機溶剤]
現像液には更に必要により有機溶剤が加えられる。かかる有機溶剤としては、水に対する溶解度が約10質量%以下のものが適しており、好ましくは5質量%以下のものから選ばれる。例えば、1−フェニルエタノール、2−フェニルエタノール、3−フェニル−1−プロパノール、4−フェニル−1−ブタノール、4−フェニル−2−ブタノール、2−フェニル−1−ブタノール、2−フェノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール、o−メトキシベンジルアルコール、m−メトキシベンジルアルコール、p−メトキシベンジルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノールおよび4−メチルシクロヘキサノール、N−フェニルエタノールアミンおよびN−フェニルジエタノールアミンなどを挙げることができる。有機溶剤の含有量は使用液の総重量に対して0.1〜5質量%である。その使用量は界面活性剤の使用量と密接な関係があり、有機溶剤を完全に溶解させて良好な現像性を確保するため、有機溶剤の量が増すにつれ、界面活性剤の量は増加させることが好ましい。
【0023】
[還元剤]
本発明の現像液には更に還元剤を加えることができる。これは印刷版の汚れを防止するものであり、特に感光性ジアゾニウム塩化合物を含むネガ型感光性平版印刷版を現像する際に有効である。好ましい有機還元剤としては、チオサリチル酸、ハイドロキノン、メトール、メトキシキノン、レゾルシン、2−メチルレゾルシンなどのフェノール化合物、フェニレンジアミン、フェニルヒドラジンなどのアミン化合物が挙げられる。更に好ましい無機の還元剤としては、亜硫酸、亜硫酸水素酸、亜リン酸、亜リン酸水素酸、亜リン酸二水素酸、チオ硫酸および亜ジチオン酸などの無機酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などを挙げることができる。これらの還元剤のうち汚れ防止効果が特に優れているのは亜硫酸塩である。これらの還元剤は使用時の現像液に対して好ましくは、0.05〜5質量%の範囲で含有される。
【0024】
[有機カルボン酸]
本発明における現像液には更に有機カルボン酸を加えることもできる。好ましい有機カルボン酸は炭素原子数6〜20の脂肪族カルボン酸および芳香族カルボン酸である。脂肪族カルボン酸の具体的な例としては、カプロン酸、エナンチル酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸などがあり、特に好ましいのは炭素数8〜12のアルカン酸である。また炭素鎖中に二重結合を有する不飽和脂肪酸でも、枝分かれした炭素鎖のものでもよい。芳香族カルボン酸としてはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環などにカルボキシル基が置換された化合物で、具体的には、o−クロロ安息香酸、p−クロロ安息香酸、o−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、o−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、没食子酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸などがあるがヒドロキシナフトエ酸は特に有効である。上記脂肪族および芳香族カルボン酸は水溶性を高めるためにナトリウム塩やカリウム塩またはアンモニウム塩として用いるのが好ましい。本発明で用いる現像液の有機カルボン酸の含有量は格別な制限はないが、十分な効果を発揮するために使用時の現像液に対して0.1〜10質量%が適当であり、より好ましくは0.5〜4質量%である。
【0025】
[その他]
本発明の現像液には、更に必要に応じて、防腐剤、着色剤、増粘剤、消泡剤および硬水軟化剤などを含有させることもできる。硬水軟化剤としては例えば、ポリ燐酸およびそのナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、ニトリロトリ酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸および1,3−ジアミノ−2−プロパノールテトラ酢酸などのアミノポリカルボン酸およびそれらのナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ(メチレンホスホン酸)および1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸やそれらのナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩を挙げることができる。
【0026】
このような硬水軟化剤はそのキレート化力と使用される硬水の硬度および硬水の量によって最適値が変化するが、一般的な使用量を示せば、使用時の現像液に0.01〜5質量%、より好ましくは0.01〜0.5質量%の範囲である。
現像液の残余の成分は水である。本発明における現像液は、使用時よりも水の含有量を少なくした濃縮液としておき、使用時に水で希釈するようにしておくことが運搬上有利である。この場合の濃縮度は各成分が分離や析出を起こさない程度が適当である。
【0027】
本発明はさらに、支持体上に画像形成層を有する平版印刷版原版を露光後、上記に詳述したアルカリ性現像液で現像処理することを含む平版印刷版の製版方法に向けられている。
本発明の平版印刷版の製版方法において、上記アルカリ性現像液を現像開始液として、又は現像補充液として、あるいは両方に採用することができる。
本発明の現像液で現像される平版印刷版原版は限定されるものではなく、例えば支持体上に以下に例示する感光層、感熱層などの画像記録層を設けたものである。画像記録層は例えば、コンベンショナルポジタイプ、コンベンショナルネガタイプ、フォトポリマータイプ(光重合型)、サーマルポジタイプ、サーマルネガタイプ(熱重合型及び酸架橋型)が好適に挙げられる。ここでいうコンベンショナルとは、透明陽画又は透明陰画を通して、画像様露光をする従来型の平版印刷版原版を示す。以下、これらの画像記録層について説明する。
【0028】
<コンベンショナルポジタイプ>
コンベンショナルポジタイプの感光性樹脂組成物の好ましいものとして、o−キノンジアジド化合物とアルカリ可溶性高分子化合物とを含有する組成物が挙げられる。o−キノンジアジド化合物としては、例えば、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとフェノール・ホルムアルデヒド樹脂またはクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂とのエステルや、米国特許第3,635,709号明細書に記載されている1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとピロガロール・アセトン樹脂とのエステルがある。アルカリ可溶性高分子化合物は例えば、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂、フェノール・クレゾール・ホルムアルデヒド共縮合樹脂、ポリヒドロキシスチレン、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドの共重合体、特開平7−36184号公報に記載されているカルボキシ基含有ポリマー等が挙げられる。また、特開昭51−34711号公報に記載されているようなフェノール性ヒドロキシ基を含有するアクリル系樹脂、特開平2−866号に記載されているスルホンアミド基を有するアクリル系樹脂や、ウレタン系の樹脂等、種々のアルカリ可溶性の高分子化合物も用いることができる。さらに感光性樹脂組成物には、特開平7−92660号公報〔0024〕〜〔0027〕で示されている感度調節剤、焼出剤、染料等の化合物や同公報〔0031〕で示されているような塗布性を良化するための界面活性剤を加えることが好ましい。
これらo−キノンジアジド化合物とアルカリ可溶性高分子化合物とを含有する感光性組成物を支持体上に設けたコンベンショナルポジ型感光性平版印刷版原版は紫外線を用いて画像様露光された後、アルカリ性現像液で現像される。
【0029】
<コンベンショナルネガタイプ>
コンベンショナルネガタイプの感光性樹脂組成物としては、ジアゾ樹脂とアルカリ可溶性または膨潤性の高分子化合物(結合剤)とを含有するものが挙げられる。
ジアゾ樹脂としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩とホルムアルデヒド等の活性カルボニル基含有化合物との縮合物が挙げられ、さらに例えば、p−ジアゾフェニルアミン類とホルムアルデヒドとの縮合物とヘキサフルオロリン酸塩またはテトラフルオロホウ酸塩との反応生成物である有機溶媒可溶性ジアゾ樹脂無機塩が挙げられる。特に、特開昭59−78340号公報に記載されている6量体以上を20モル%以上含んでいる高分子量ジアゾ化合物が好ましい。好適な結合剤としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸またはマレイン酸を必須成分として含む共重合体、例えば、特開昭50−118802号公報に記載されているような2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸等のモノマーの多元共重合体や、特開昭56−4144号公報に記載されているようなアルキルアクリレート、(メタ)アクリロニトリル、および、不飽和カルボン酸からなる多元共重合体を挙げることができる。さらに感光性樹脂組成物には、特開平7−281425号公報〔0014〕〜〔0015〕で示されている焼出剤、染料、塗膜の柔軟性や耐摩耗性を付与するための可塑剤、現像促進剤等の化合物、塗布性を良化するための界面活性剤を加えることが好ましい。
【0030】
上述したコンベンショナルタイプのポジ型もしくはネガ型感光層の下層としては、特開2000−105462号公報に記載されている、酸基を有する構成成分とオニウム基を有する構成成分とを有する高分子化合物を含有する中間層を設けることが好ましい。
このようにして作成されたコンベンショナルネガタイプ感光性樹脂組成物を用いた感光性平版印刷版は、紫外線を用いて画像様露光された後、現像液で現像される。
【0031】
<フォトポリマータイプ>
(感光層)
フォトポリマータイプの光重合型感光性組成物(以下「光重合性組成物」という)は、付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物(以下、単に「エチレン性不飽和結合含有化合物」という)と、光重合開始剤と、高分子結合剤とを必須成分として含有し、必要に応じて、着色剤、可塑剤、熱重合禁止剤等の種々の化合物を含有する。
光重合性組成物に含有されるエチレン性不飽和結合含有化合物は、光重合性組成物が活性光線の照射を受けた場合に、光重合開始剤の作用により付加重合し、架橋し硬化するようなエチレン性不飽和結合を有する化合物である。エチレン性不飽和結合含有化合物は、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物の中から任意に選択することができ、例えば、モノマー、プレポリマー(即ち、2量体、3量体およびオリゴマー)、これらの混合物、これらの共重合体等の化学的形態を有する。モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミドが挙げられる。またウレタン系付加重合性化合物も好適である。
【0032】
光重合性組成物に含有される開始剤としては、使用する光源の波長により、種々の光重合開始剤または2種以上の光重合開始剤の併用系(光開始系)を適宜選択して用いることができ、例えば、特開2001−22079号公報〔0021〕〜〔0023〕で示されている開始系が好ましい。光重合性組成物に含有される高分子結合剤は、光重合性組成物の皮膜形成剤として機能するだけでなく、感光層をアルカリ現像液に溶解させる必要があるため、アルカリ水に可溶性または膨潤性である有機高分子重合体が使用される。上記高分子としては同公報〔0036〕〜〔0063〕で示されている物が有用である。その他光重合性組成物には、同公報〔0079〕〜〔0088〕で示されている添加剤(例えば塗布性を良化するための界面活性剤)を加えることも好ましい。
また、上記感光層の上に、酸素の重合禁止作用を防止するために酸素遮断性保護層を設けることが好ましい。酸素遮断性保護層に含有される重合体としては、ポリビニルアルコール又はその共重合体が挙げられる。さらにフォトポリマータイプの感光層の下層として特開2001−228608号公報〔0124〕〜〔0165〕で示されているような中間層もしくは接着層を設けるのも好ましい。かかるフォトポリマータイプの光重合型感光性組成物を用いた感光性平版印刷版は高圧水銀灯などの紫外線、アルゴンレーザーおよび紫外線レーザーを用いて画像様露光された後、現像液で現像される。
【0033】
<サーマルポジタイプ>
(感熱層)
サーマルポジタイプの感熱層は、アルカリ可溶性高分子化合物と光熱変換物質とを含有する。このアルカリ可溶性高分子化合物は、高分子中に酸性基を含有する単独重合体、これらの共重合体、およびこれらの混合物を包含し、特に下記(1)や(2)のような酸性基を有するものが、アルカリ現像液に対する溶解性の点で好ましい:(1)フェノール性ヒドロキシ基(−Ar−OH)、(2)スルホンアミド基(−SO2 NH−R)。とりわけ、赤外線レーザ等による露光での画像形成性に優れる点で、フェノール性ヒドロキシ基を有することが好ましく、例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−およびm−/p−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂等のノボラック樹脂;ピロガロールアセトン樹脂が好ましく挙げられる。さらに詳しくは特開2001−305722号公報の〔0023〕〜〔0042〕で示されている高分子が好ましく用いられる。
【0034】
光熱変換物質は、露光エネルギーを熱に変換して感熱層の露光部領域の相互作用解除を効率よく行うことを可能とする。記録感度の観点から、波長700〜1200nmの赤外域に光吸収域がある顔料または染料が好ましい。染料としては具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体(例えば、ニッケルチオレート錯体)等の染料を用いることができる。中でも、シアニン染料が好ましく、特開2001−305722号公報の一般式(I)で示されたシアニン染料を挙げることができる。サーマルポジタイプの組成物中には、前記コンベンショナルポジタイプで記述した物と同様の感度調節剤、焼出剤、染料等の化合物や塗布性を良化するための界面活性剤を加えることが好ましく、詳しくは特開2001−305722号公報の〔0053〕〜〔0059〕で示されている化合物が好ましい。
【0035】
サーマルポジタイプの感熱層は単層でもよいし、特開平11−218914号公報に記載されているような2層構造として設けてもよい。
サーマルポジタイプの感熱層と支持体との間には、下塗層を設けることが好ましい。下塗層に含有される成分としては特開2001−305722号公報の〔0068〕で示された種々の有機化合物が挙げられる。
これらアルカリ可溶性高分子化合物と光熱変換物質とを含有する感熱性組成物を支持体上に設けたサーマルポジ型感熱性平版印刷版原版は赤外線レーザを用いて画像様露光された後、アルカリ性現像液で現像される。
【0036】
<サーマルネガタイプ>
(感熱層)
サーマルネガタイプの感熱層は、赤外線レーザ照射部が硬化して画像部を形成するネガ型の感熱層である。
このようなサーマルネガタイプの感熱層の一つとして、重合型の層が好適に挙げられる。重合層は、(A)赤外線吸収剤と、(B)ラジカル発生剤(ラジカル重合開始剤)と、発生したラジカルにより重合反応を起こして硬化する(C)ラジカル重合性化合物と、(D)バインダーポリマーとを含有する。
重合層においては、赤外線吸収剤が吸収した赤外線を熱に変換し、この際発生した熱により、オニウム塩等のラジカル重合開始剤が分解し、ラジカルが発生する。ラジカル重合性化合物は、末端エチレン性不飽和結合を有する化合物から選ばれ、発生したラジカルにより連鎖的に重合反応が生起し、硬化する。(A)赤外線吸収剤としては、例えば、前述したサーマルポジタイプの感熱層に含有される前記光熱変換物質が挙げられるが、特にシアニン色素の具体例としては特開2001−133969号公報の段落番号〔0017〕〜〔0019〕に記載されたものを挙げることができる。(B)ラジカル発生剤としては、オニウム塩が挙げられ、好適に用いることのできるオニウム塩の具体例としては、特開2001−133969号公報の段落番号〔0030〕〜〔0033〕に記載されたものを挙げることができる。(C)ラジカル重合性化合物は、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。(D)バインダーポリマーとしては線状有機ポリマーを用いることが好ましくい、水または弱アルカリ水に可溶性または膨潤性である線状有機ポリマーが選択される。特にこれらの中で、ベンジル基またはアリル基と、カルボキシ基とを側鎖に有する(メタ)アクリル樹脂が、膜強度、感度および現像性のバランスに優れており好適である。(C)ラジカル重合性化合物および(D)バインダーポリマーに関しては同公報〔0036〕〜〔0060〕に詳しく記載された物が使用できる。その他の添加物としては、同公報〔0061〕〜〔0068〕で示されている添加剤(例えば塗布性を良化するための界面活性剤)を加えることも好ましい。
【0037】
また、重合型のほかに、サーマルネガタイプの感熱層の一つとして、酸架橋型の層が好適に挙げられる。酸架橋層は、(E)光または熱により酸を発生する化合物(以下「酸発生剤」という。)と、(F)発生した酸により架橋する化合物(以下「架橋剤」という。)とを含有し、更に、酸の存在下で架橋剤と反応しうる(G)アルカリ可溶性高分子化合物を含有する。赤外線レーザのエネルギーを効率よく使用するため、酸架橋層には(A)赤外線吸収剤が配合される。(E)酸発生剤としては、光重合の光開始剤、色素類の光変色剤、マイクロレジスト等に使用されている酸発生剤等の、熱分解して酸を発生しうる化合物が挙げられる。(F)架橋剤には、(i)ヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基で置換された芳香族化合物、(ii)N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基またはN−アシルオキシメチル基を有する化合物、または(iii)エポキシ化合物が挙げられる。(G)アルカリ可溶性高分子化合物としては、ノボラック樹脂、側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマー等が挙げられる。
これら重合型および酸架橋型のサーマルネガタイプ感熱層を支持体上に設けたサーマルネガ型感熱性平版印刷版原版は赤外線レーザを用いて画像様露光された後、アルカリ性現像液で現像される。
【0038】
<支持体>
上記の画像記録層を設ける平版印刷版原版の支持体としては、一般的にアルミニウム板が使われる。アルミニウム板は、純アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とし微量の異原子を含むアルミニウム合金等の板状体である。この異原子には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等がある。合金組成としては、10質量%以下の異原子含有率が適当である。好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは、精錬技術上製造が困難であるため、できるだけ異原子を含まないものがよい。また、上述した程度の異原子含有率のアルミニウム合金であれば、本発明に使用し得る素材ということができる。アルミニウム板は、その組成が特に限定されるものではなく、従来公知、公用の素材のものを適宜利用することができる。好ましい素材として、JIS A 1050、同1100、同1200、同3003、同3103、同3005材が挙げられる。本発明において用いられるアルミニウム板の厚さは、約0.1mm〜0.6mm程度が適当である。アルミニウム板を粗面化処理するに先立ち、表面の圧延油を除去するための、例えば界面活性剤またはアルカリ性水溶液で処理する脱脂処理が必要に応じて行われる。
次いで、粗面化処理、陽極酸化処理、親水性処理などが適宜組み合わせて行われ、例えば特開2001−356494号公報に開示されているような支持体の処理方法がある。
このような支持体に、画像記録層を塗設して平版印刷版用原版が得られるが、画像記録層を塗布する前に、中間層を設けてもよい。このような中間層として有機高分子化合物を含むものがよく用いられ、例えば特開2001−356494号公報に開示されているものなどがある。
平版印刷版用原版の裏面には、必要に応じて、重ねた場合における画像記録層の傷付きを防止するために、有機高分子化合物からなる被覆層(「バックコート層」ともいう。)を設けることができる。
【0039】
〔露光〕
像露光に用いられる活性光線の光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯等がある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。またg線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。レーザービームとしてはヘリウム・ネオンレーザー、アルゴンレーザー、クリプトンレーザー、ヘリウム・カドミウムレーザー、KrFエキシマレーザー等が挙げられる。またレーザー直描型印刷版においては近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源が好ましく、固体レーザー、半導体レーザーが特に好ましい。
【0040】
本発明のアルカリ性現像液及びそれを用いた製版方法は、画像形成層が感熱性層である平版印刷版原版に適用する場合により効果が大きく、更にはポジ型感熱性層である場合に特に有効である。
【0041】
本発明の方法に従って現像処理された版は、その後、水洗及び/又はリンス及び/又はガム引きなどして得られた平版印刷版に不必要な画像部(例えば原画フィルムのフィルムエッジ跡など)がある場合には、その不必要な画像部の消去が行なわれる。このような消去は、例えば特公平2−13293号公報に記載されているような消去液を不必要画像部に塗布し、そのまま所定の時間放置したのちに水洗することにより行なう方法が好ましいが、特開平59−174842号公報に記載されているようなオプティカルファイバーで導かれた活性光線を不必要画像部に照射したのち現像する方法も利用できる。
【0042】
以上のようにして本発明の製版方法により得られた平版印刷版は所望により不感脂化ガムを塗布したのち、印刷工程に供することができるが、より一層の高耐刷力の平版印刷版としたい場合にはバーニング処理が施される。平版印刷版をバーニングする場合には、バーニング前に特公昭61−2518号、同55−28062号、特開昭62−31859号、同61−159655号の各公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。
その方法としては、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿にて、平版印刷版上に塗布するか、整面液を満たしたバット中に印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターによる塗布などが適用される。また、塗布した後でスキージ、あるいは、スキージローラーで、その塗布量を均一にすることは、より好ましい結果を与える。
【0043】
整面液の塗布量は一般に0.03〜0.8g/m2(乾燥重量)が適当である。整面液が塗布された平版印刷版は必要であれば乾燥された後、バーニングプロセッサー(たとえば富士写真フイルム(株)より販売されているバーニングプロセッサー:「BP−1300」)などで高温に加熱される。この場合の加熱温度及び時間は、画像を形成している成分の種類にもよるが、180〜300℃の範囲で1〜20分の範囲が好ましい。
【0044】
バーニング処理された平版印刷版は、必要に応じて適宜、水洗、ガム引きなどの従来より行なわれている処理を施こすことができるが、水溶性高分子化合物等を含有する整面液が使用された場合にはガム引きなどのいわゆる不感脂化処理を省略することができる。このような処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0045】
【実施例】
以下、実施例を以て本発明を詳細に説明する。
【0046】
−平版印刷版原版の作製−
版材a:ジアゾ系ポジ型感光性平版印刷版
厚さ0.30mmのアルミニウム板をナイロンブラシと400メッシュのパミストンの水懸濁液を用いその表面を砂目立てした後、よく水で洗浄した。10%水酸化ナトリウムに70℃で60秒間浸漬してエッチングした後、流水で水洗後20%HNO3で中和洗浄、水洗した。これをVA=12.7Vの条件下で正弦波の交番波形電流を用いて1%硝酸水溶液中で160クーロン/dm2の陽極時電気量で電解粗面化処理を行った。その表面粗さを測定したところ0.6μm(Ra表示)であった。ひきつづいて30%のH2SO4水溶液中に浸漬し55℃で2分間デスマットした後、20%H2SO4水溶液中で、砂目立てした面に陰極を配置して、電流密度2A/dm2において厚さが2.7g/m2になるように陽極酸化し、基板を作製した。尚、この時の裏面の陽極酸化皮膜はアルミニウム板の中央部で約0.2g/m2、端部で約0.5g/m2であった。
【0047】
上記の基板の表面に下記感光液1を塗布し、乾燥後の塗布重量が2.5g/m2となるように感光性層を設けた。
【0048】
このようにして作製した感光性層の表面に下記の様にしてマット層形成用樹脂液を吹き付けてマット層を設けたポジ型平版印刷版(a)を得た。
マット層形成用樹脂液としてメチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸(仕込質量比 65:20:15)共重合体の一部をナトリウム塩とした12%水溶液を準備し、回転霧化静電塗装機で霧化頭回転数25,000rpm、樹脂液の送液量は40ml/分、霧化頭への印加電圧は−90kv、塗布時の周囲温度は25℃、相対湿度は50%とし、塗布後2.5秒で塗布面に蒸気を吹き付けて湿潤させ、ついで湿潤した3秒後に温度60℃、湿度10%の温風を5秒間吹き付けて乾燥させた。マットの高さは平均約6μm、大きさは平均約30μm、塗布量は150mg/m2であった。
【0049】
版材b:光重合系ネガ型感光性平版印刷版
厚さ0.30mmの材質1Sのアルミニウム板を8号ナイロンブラシと800メッシュのパミストンの水懸濁液を用い、その表面を砂目立てした後、よく水で洗浄した。10%水酸化ナトリウムに70℃で60秒間浸漬してエッチングした後、流水で水洗後、20%HNO3で中和洗浄、水洗した。これをVA=12.7Vの条件下で正弦波の交番波形電流を用いて1%硝酸水溶液中で300クーロン/dm2の陽極時電気量で電解粗面化処理を行った。その表面粗さを測定したところ0.45μm(Ra表示)であった。ひきつづいて30%のH2SO4水溶液中に浸漬し、55℃で2分間デスマットした後、33℃、20%H2SO4水溶液中で、砂目立てした面に陰極を配置して、電流密度5A/dm2において50秒間陽極酸化したところ厚さが2.7g/m2であった。
このように処理されたアルミニウム板上に、下記組成の光重合性組成物を乾燥塗布重量が1.5g/m2となるように塗布し、100℃で1分間乾燥させ、感光層を形成した。
【0050】
【0051】
【化1】
【0052】
この感光層上に下記組成の保護層用塗布液O−1を乾燥塗布重量が2.5g/m2となるように塗布し、120℃で3分間乾燥させ、光重合性平版印刷版(b)を得た。
(保護層用塗布液O−1)
ポリビニルアルコール 22質量部
(ケン化度98モル% 重合度500)
EMALEX710 1質量部
(日本エマルジョン社製ノニオン界面活性剤)
水 450質量部
【0053】
版材c:ネガ型感熱性平版印刷版
[支持体の作成]
厚さ0.03mmのアルミニウム板をナイロンブラシと400メッシュのパミストンの水懸濁液を用いその表面を砂目立てした後、水洗した。10%水酸化ナトリウムに60℃で40秒間浸せきしてエッチングした後、流水で水洗後20%硝酸で中和洗浄、水洗した。これをVA=12.7Vの条件下で正弦波の交番波形電流を用いて1%硝酸水溶液中で160クーロン/dm2の陽極電気量で電解粗面化処理を行った。その表面粗さを測定したところ、0.6μm(Ra表示)であった。引き続いて30%の硝酸水溶液中に浸せきし55℃で1分間デスマットした後、20%硝酸水溶液中で、電流密度2A/dm2のおいて厚さが2.7g/m2になるように陽極酸化し、基板(I)を調製した。
【0054】
[親水層の形成]
このように処理された基板(I)の表面に下記組成の親水層塗布液を塗布し、80℃、30秒間乾燥した。乾燥後の皮膜量は20mg/m2であった。
【0055】
親水層塗布液組成
・βアラニン 0.10 g
・メタノール 100 g
【0056】
[感熱層の形成]
架橋剤[KZ−9]の合成
1−[α−メチル−α−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]−4−[α、α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼンを、水酸化カリウム水溶液中で、ホルマリンと反応させた。反応溶液を硫酸で酸性とし晶析させ、さらにメタノールから再結晶することにより、下記構造の架橋剤[KZ−9]を得た。逆相HPLCにより純度を測定したところ、92%であった。
【0057】
【化2】
【0058】
バインダーポリマー[BP−1]の入手
丸善石油化学(株)製のポリ(p−ヒドロキシスチレン)、マルカ リンカーM S−4P(商品名)を入手し、[BP−1]とした。
【0059】
次に、下記感熱層塗布液[P]を調製し、この溶液を、上記の親水層を形成したアルミニウム支持体である基板(I)上に塗布し、100℃で1分間乾燥して感熱層を形成し、ネガ型感熱性平版印刷版(c)を得た。乾燥後の被覆量は1.5g/m2であった。
塗布液[P]に用いた酸発生剤[SH−1]および赤外線吸収剤[IK−1]の構造を以下に示す。
【0060】
感熱層塗布液[P]
・酸発生剤[SH−1] 0.3 g
・架橋剤[KZ−9] 0.5 g
・バインダーポリマー[BP−1] 1.5 g
・赤外線吸収剤[IK−1] 0.07 g
・AIZEN SPILON BLUE C−RH 0.035 g
(保土ヶ谷化学(株)製)
・フッ素系界面活性剤 0.01 g
(メガファックF−177、大日本インキ化学工業(株)製)
・無水フタル酸 0.05 g
・メチルエチルケトン 12 g
・メチルアルコール 10 g
・1−メトキシ−2−プロパノール 4 g
・3−メトキシ−1−プロパノール 4 g
【0061】
【化3】
【0062】
版材d:ポジ型感熱性平版印刷版
0.3mm厚のアルミニウム板(材質1050)をトリクロロエチレンで洗浄して脱脂した後、ナイロンブラシと400メッシュのパミス−水懸濁液を用い、この表面を砂目立てし、水でよく洗浄した。
洗浄後、このアルミニウム板を45℃の25%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗した後、さらに20%硝酸水溶液に20秒間浸漬し、再度水洗した。このときの砂目立て表面のエッチング量は、約3g/m2であった。
【0063】
次に、このアルミニウム板を7%硫酸を電解液として、電流密度15A/dm2の直流電流で3g/m2の陽極酸化被膜を設けた後、水洗、乾燥した。
これを、30℃の珪酸ナトリウム2.5%水溶液で10秒処理し、下記下塗り層用塗布液を塗布し、80℃下で15秒間乾燥して支持体を得た。乾燥後の下塗り層の乾燥塗布量は、15mg/m2であった。
【0064】
<下塗り層用塗布液>
下記共重合体P(分子量28000) 0.3g
メタノール 100g
水 1g
【0065】
【化4】
【0066】
<共重合体1の合成>
攪拌機、冷却管及び滴下ロートを備えた500ml三つ口フラスコにメタクリル酸31.0g(0.36モル)、クロロギ酸エチル39.1g(0.36モル)及びアセトニトリル200mlを入れ、氷水浴で冷却しながら混合物を攪拌した。この混合物にトリエチルアミン36.4g(0.36モル)を約1時間かけて滴下ロートにより滴下した。滴下終了後、氷水浴を取り去り、室温下で30分間混合物を攪拌した。この反応混合物にp−アミノベンゼンスルホンアミド51.7g(0.30モル)を加え、油浴にて70℃に温めながら混合物を1時間攪拌した。反応終了後、この混合物を水1リットルにこの水を攪拌しながら投入し、30分間得られた混合物を攪拌した。この混合物をろ過して析出物を取り出し、これを水500mlでスラリーにした後、このスラリーをろ過し、得られた固体を乾燥することにより、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミドの白色固体が得られた(収量46.9g)
【0067】
次に攪拌機、冷却管及び滴下ロートを備えた20ml三つ口フラスコにN−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド4.61g、(0.0192モル)、メタクリル酸エチル2.94g(0.0258モル)、アクリロニトリル0.80g(0.015モル)及びN,N−ジメチルアセトアミド20gを入れ、湯水浴により65℃に加熱しながら混合物を攪拌した。この混合物に「V−65」(和光純薬(株)製)0.15gを加え、65℃に保ちながら窒素気流下2時間混合物を攪拌した。この反応混合物にさらにN−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド4.61g、メタクリル酸エチル2.94g、アクリロニトリル0.80g、N,N−ジメチルアセトアミド及び「V−65」0.15gの混合物を2時間かけて滴下ロートにより滴下した。滴下終了後、さらに65℃で2時間得られた混合物を攪拌した。反応終了後、メタノール40gを混合物に加え、冷却し、得られた混合物を水2リットルにこの水を攪拌しながら投入し、30分間混合物を攪拌した後、析出物をろ過により取り出し、乾燥することにより15gの白色固体を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、この特定の共重合体の重量平均分子量(ポリスチレン標準)を測定したところ、53,000であった。
【0068】
得られた支持体上に下記感熱層塗布液を、乾燥塗布量が、1.8g/m2となるように塗布し、ポジ型の平版印刷版原版(d)を得た。
【0069】版材e:ポジ型感熱性平版印刷版(2層型)[基板の作成]
厚さ0.24mmのアルミニウム板(Si:0. 06質量%、Fe:0.30質量%、Cu:0. 014質量%、Mn:0.001質量%、Mg:0.001質量%、Zn:0.001質量%、Ti:0.03質量%を含有し、残部はAlと不可避不純物のアルミニウム合金)に対し以下に示す表面処理を連続的に行った。
【0070】
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル、アンモニウムイオンを0.007質量%含む。)、温度80℃であった。水洗後、アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.20g/m2溶解し、スプレーによる水洗を行った。その後、温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、スプレーによる水洗を行った。
【0071】
二段給電電解処理法の陽極酸化装置を用いて陽極酸化処理を行った。電解部に供給した電解液としては、硫酸を用いた。その後、スプレーによる水洗を行った。最終的な酸化皮膜量は2.7g/m2であった。
陽極酸化処理により得られたアルミニウム支持体を温度30℃の3号ケイ酸ソーダの1質量%水溶液の処理槽中へ、10秒間、浸せきすることでアルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。
上記のようにして得られたアルカリ金属ケイ酸塩処理後のアルミニウム支持体上に、版材dと同じ下塗液を塗布し、80℃で15秒間乾燥し、塗膜を形成させた。乾燥後の塗膜の被覆量は15mg/m2であった。
【0072】
得られたウエブ状の基板に以下の下層用塗布液1を塗布量が0.85g/m2になるようバーコーターで塗布したのち160℃で44秒間乾燥し、直ちに17〜20℃の冷風で支持体の温度が35℃になるまで冷却した後、上部感熱層用塗布液1を塗布量が0.22g/m2になるようバーコーター塗布したのち、148℃で25分間乾燥し、更に20〜26℃の風で徐冷し、2層系ポジ型平版印刷版原版(e)を作成した。
【0073】
【0074】
【化5】
【0075】
【0076】
【化6】
【0077】
上記感熱性平版印刷版において、上部感熱層塗布時に下層を部分的に相溶させることにより上部感熱層表面に微細な突起が発生した。電子顕微鏡により5000倍で撮影された写真の100μm2当たりの突起の数を数えたところ、120個観測され、1.2個/μm2であった。
【0078】
−現像液の調製−
現像開始液a−1〜a−10及び現像補充液b−1〜b−16を各々、下記表1及び表2〜3の組成に従って調製した。表1〜3中、No.1〜11の化合物とは、上記に挙げた一般式(I)で示される化合物の具体例に符合する。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
[実施例1〜17及び比較例1〜8]
上記で作製した版材a〜eを露光し、表4に示すように自動現像機を用いて各種現像開始液、現像補充液、フィニッシャーで製版処理した。得られた平版印刷版を印刷に供し、インキ着肉性及び汚れ性を調べた。また、現像槽においてヘドロを観察した。さらに、版上のカスを調べた。以下に、製版処理条件及び評価方法を説明する。
<露光>
ジアゾ系ポジ型感光性平版印刷版:大日本スクリーン社製プリンター、P−806−Gによりフィルム原稿を通して85カウンドにて露光した。
光重合系ネガ型感光性平版印刷版:FD−YAGレーザー(CSI社製プレートジェット4)により100μJ/cm2の露光量で露光した。
ネガ型感熱性平版印刷版及びポジ型感熱性平版印刷版:
平版印刷版原版をクレオ社製プレートセッターTrendsetter3244Fを用いて(回転数:150rpm)露光した。ポジ型感熱性平版印刷版は露光後、パネルヒーターにて、110℃で30秒間加熱処理。
【0083】
<現像>
各自動現像機にて1003mm×800mmのサイズの印刷版を一日当たり50版づつ、2ヶ月間処理した。
<印刷>
平版印刷版をオフセット印刷機スプリント25(小森印刷機製造(株)製)にセットして印刷を行い、着肉性(インキのつきやすさ)、汚れ性を調べた。
<ヘドロ>
2ヶ月間処理した後に現像槽の液を抜き、ヘドロを観察した。
<版上カス>
自動現像機停止後再起動時の処理プレート1版当たりのアルミが主成分である版上カスの数をルーペを用いて数えた。
結果を表4に示す。
【0084】
【表4】
【0085】
【発明の効果】
本発明のアルカリ性現像液及び製版方法により、長期間のランニング処理によっても感光層成分に由来するカスの付着がなく、インキ着肉不良や地汚れ等が発生することなく、現像液中にヘドロが少なく、安定に現像処理することができ、かつ版上にアルミニウムを主成分とするカスの発生しない優れた平版印刷版を得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、平版印刷版原版からの製版に使用するアルカリ性現像液に関し、さらに平版印刷版の製版方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
平版印刷版の製版工程では、感光層成分を現像浴で現像液に溶解させ、次いで水洗、ガム引きを自動現像機によって行うのが一般的である。版の処理量の増大に伴い、現像浴中ではアルカリ現像液中に溶出した感光層成分及び支持体成分の濃度が増大し、これに伴って感光層成分や支持体成分がカスとして沈殿したり、現像液に溶解しきれず、版上にカスとなって付着し、インキ着肉不良や地汚れ等が発生することがしばしば起こった。
この問題を解決するためには、高アルカリ性の現像液を用い、かつよりアルカリ性の高い現像補充液を用いることも提案されているが、アルカリ活性度の変化が大きいため現像安定性が十分でなく、特に長期間のランニング処理においては問題が大きかった。また種々の界面活性剤が検討されているが、十分ではなかった。
上記インキ着肉不良や地汚れの発生を防止することを目的として、特開平8−171214号公報には、珪酸塩とアルカリ可溶性樹脂を含有する水系アルカリ現像液が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、現像液中にヘドロ等の種々のカスが発生しやすいという問題があった。特に珪酸塩濃度が高い場合に顕著であった。また、珪酸塩を含まない現像液も提案されているが、この場合版上にアルミニウムを主成分とするカスが発生するという問題があった。また、一般式 X−(CH2)y−Si(R1)n(OR2)3−n(X:リン酸エステルなど)で表されるシラン化合物を0.1〜50g/リットル含有する、感光性ジアゾ系平版印刷版用の現像液が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−171214号公報
【特許文献2】
ドイツ特許第4211934号明細書
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、長期間のランニング処理によっても感光層成分などに由来するカスやヘドロの発生を抑制し、安定に現像処理を行うことができるアルカリ性現像液を提供することにある。本発明の目的はまた、そのような現像液を用いて、長期間のランニング処理によっても感光層成分などに由来するカスの版への付着がなく、インキ着肉不良や地汚れ等が発生することなく、現像液中にヘドロが少なく安定に処理することができ、かつ版上にアルミニウムを主成分とするカスの発生しない平版印刷版の製版方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の珪素含有化合物をアルカリ性現像液に含ませることにより、長期間のランニング処理によっても感光層成分などに由来するカスやヘドロの発生を抑制し、安定に現像処理を行うことができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
従って本発明は、下記一般式(I)で示される化合物を含有することを特徴とする平版印刷版用アルカリ性現像液である。
(式中、R1、R2、R3、R4及びR5は各々独立して水素原子又はアルキル基を表し、Xは単結合、−N(R6)−(R6は水素原子又はアルキル基を表す。)、−N+(R7)(R8)−(R7及びR8は各々独立して水素原子又はアルキル基を表す。)、−S−又は−O−を表し;Yはアミノ基、水酸基、エポキシ基、ウレイド基、カルバモイル基、カルボキシル基、ジヒドロキシアルキル基、スルファモイル基、芳香族基、又は又は−N+(R10)(R11)(R12)(R10、R11、R12は各々独立に水素原子又はアルキル基を表す。)を表し;aは0又は1以上の整数を表し;及びbは1以上の整数を表す。)
本発明はさらに、支持体上に画像形成層を有する平版印刷版原版を露光後、上記アルカリ性現像液で現像処理することを含む平版印刷版の製版方法である。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。先ず、アルカリ性現像液について説明する。
本発明のアルカリ性現像液(以下、単に現像液とも称する。)は、アルカリ性の水溶液であって、従来公知のアルカリ剤として使われる塩基を一般的に含むものである。本発明の現像液はまた、少なくとも一種の非還元糖及び/又はSiO2を含有することが好ましく、このSiO2の源としてアルカリ金属の珪酸塩を含ませることができる。本発明の現像液は更に、緩衝剤、界面活性剤、現像安定化剤などの添加剤を、本発明が目的とする効果を奏する範囲内で添加することができる。
本発明のアルカリ性現像液は、現像開始液としても現像補充液としても適用できる。したがって、特に記載のない限り、現像開始液及び現像補充液を一括して現像液と称する。
本発明のアルカリ性現像液は、上記のようなアルカリ水溶液中に特定の珪素含有化合物を含むことを特徴とする。
以下に現像液の各成分を説明する。
【0007】
[一般式(I)で示される珪素含有化合物]
式(I)中、R1、R2、R3、R4及びR5は各々独立して水素原子又はアルキル基、具体的には炭素原子数1〜10のアルキル基を表す。aが2以上の場合、R4、R5は各々同一でも異なっていてもよい。Xは単結合、−N(R6)−(R6は水素原子又は炭素原子数1〜8のアルキル基を表す。)、−N+(R7)(R8)−(R7及びR8は各々独立して水素原子又は炭素原子数1〜8のアルキル基を表す。)、−S−又は−O−を表す。
式(I)中、Yはアミノ基(−NH2)、水酸基(−OH)、
エポキシ基:
、ウレイド基(−NHC(O)NH2)、カルバモイル基(−C(O)NH2)、カルボキシル基(−COOH)、ジヒドロキシアルキル基(アルキル基は炭素原子数1〜10程度である)、スルファモイル基(該スルファモイル基は置換基を有していてもよく、具体的には−SO2NH(R9)(R9は水素原子又は炭素原子数1〜8のアルキル基を表す。)で表わされる。)、芳香族基(芳香族基としてフェニル基、ナフチル基などがあり、それらは置換基を有していてもよく、置換基として炭素原子数1〜20のアルキル基及びアルケニル基、カルボキシル基、ニトリル基、アミノ基、水酸基などがある。)、−N+(R10)(R11)(R12)(R10、R11、R12は各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜20のアルキル基を表す。)などから選ばれ、酸性基は塩を形成していてもよい。式中aは0又は1以上の整数、一般的には0又は1〜10の整数を表し、bは1以上の整数、一般的には1〜20までの整数を表す。上記R1〜R12のアルキル基は置換基を有していてもよく、その置換基として水酸基、ハロゲン原子などがある。
式中X又はYに陽イオンがある場合には対となる陰イオンが存在し、それらは例えば、Cl−、Br−、I−、F−、H2PO4 −、PO4 3−、H2PO3 −、HPO3 2−、ClO4 −、NO3 −、BF4 −、ClO3 −、PO3 3−、HSO4 −、SO4 2−、HCO3 −、CO3 2−、PF6 −などである。
【0008】
一般式(I)で表される化合物の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0009】
【0010】
一般式(I)で示される化合物は常法により合成することができる。また、市場において一般に入手することができ、本発明では市販品を使用することもできる。そのような市販品の例として、信越化学、チッソ、東レシリコーン、東芝シリコーン、アズマックスなどのメーカーより市販されている製品がある。
本発明の現像液において、一般式(I)で示される化合物を1種、又は2種以上含ませることができる。
本発明のアルカリ性現像液中における一般式(I)で示される化合物の含有量は、版上のカスを抑制する効果を十分に発揮するために0.01〜20質量%が適当であり、より好ましくは0.02〜10質量%、さらに好ましくは0.05〜5質量%である。
【0011】
[アルカリ金属珪酸塩]
本発明の現像液にはアルカリ金属の珪酸塩を含めてもよく、そのようなアルカリ金属の珪酸塩としては、例えば、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウムなどがあり、それらを単独または組み合わせて用いることができる。このとき、該珪酸塩の成分である酸化珪素SiO2とアルカリ酸化物M2O(Mはアルカリ金属を表す。)との混合比率、及び濃度の調整により、現像性を容易に調節することができる。前記酸化珪素SiO2とアルカリ酸化物M2Oとの混合比率(SiO2/M2O:モル比)が0.5〜3.0のものが好ましく、1.0〜2.0のものがより好ましい。
本発明の現像液において、アルカリ金属珪酸塩を主要なアルカリ剤として用いてもよい。現像液におけるアルカリ金属塩の含有量は一般的に、SiO2換算で0.5〜5.0質量%の範囲である。現像液に下記の非還元糖を含めるとき、アルカリ金属珪酸塩の含有量は、SiO2換算で0.5質量%以下であることが好ましい。
【0012】
[非還元糖]
本発明の現像液中には非還元糖を含めてもよい。かかる非還元糖とは、遊離のアルデヒド基やケトン基を持たず、還元性を示さない糖類であり、還元基同士の結合したトレハロース型少糖類、糖類の還元基と非糖類が結合した配糖体および糖類に水素添加して還元した糖アルコールに分類され、何れも本発明に好適に用いられる。
トレハロース型少糖類には、サッカロースやトレハロースがあり、配糖体としては、アルキル配糖体、フェノール配糖体、カラシ油配糖体などが挙げられる。また糖アルコールとしてはD,L−アラビット、リビット、キシリット、D,L−ソルビット、D,L−マンニット、D,L−イジット、D,L−タリット、ズルシット、アロズルシット及びメソイノシットなどが挙げられる。更に二糖類の水素添加で得られるマルチトールおよびオリゴ糖の水素添加で得られる還元体(還元水あめ)が好適に用いられる。これらの中で本発明に好ましい非還元糖は、糖アルコールとサッカロースであり、特にD−ソルビット、サッカロース、還元水あめが適度なpH領域に緩衝作用があることと、低価格であることで好ましい。
【0013】
これらの非還元糖は、単独もしくは二種以上を組み合わせて使用でき、それらの現像液中に占める割合は、十分な緩衝作用を得て、且つ高濃縮化する際の利便性とコストの観点から、0.1〜30質量%が好ましく、更に好ましくは1〜20質量%である。
【0014】
[塩基]
本発明の現像液中に使用する塩基としては、従来より知られているアルカリ剤が使用できる。例えば、水酸化ナトリウム、同カリウム、同リチウム、燐酸三ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、燐酸二ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、硼酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウムなどの無機アルカリ剤が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤も用いられる。これらのアルカリ剤は単独もしくは二種以上を組み合わせて用いられる。これらの中で好ましいのは水酸化ナトリウム、同カリウムである。その理由は、非還元糖に対するこれらの量を調整することにより広いpH領域でpH調整が可能となるためである。また、燐酸三ナトリウム、同カリウム、炭酸ナトリウム、同カリウムなどもそれ自身に緩衝作用があるので好ましい。これらのアルカリ剤は現像液のpHを9.0〜13.5の範囲になるように添加され、その添加量は所望のpH、非還元糖の種類と添加量によって決められるが、より好ましいpH範囲は10.0〜13.2である。
【0015】
本発明における現像液には更に、糖類以外の弱酸と強塩基からなるアルカリ性緩衝液が併用できる。かかる緩衝液として用いられる弱酸としては、解離定数(pKa)が10.0〜13.2のものが好ましい。このような弱酸としては、Pergamon Press社発行のIONISATION CONSTANTS OF ORGANIC ACIDS IN AQUEOUS SOLUTION などに記載されているものから選ばれ、例えば2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール−1(pKa 12.74)、トリフルオロエタノール(同12.37)、トリクロロエタノール(同12.24)などのアルコール類、ピリジン−2−アルデヒド(同12.68)、ピリジン−4−アルデヒド(同12.05)などのアルデヒド類、サリチル酸(同13.0)、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸(同12.84)、カテコール(同12.6)、没食子酸(同12.4)、スルホサリチル酸(同11.7)、3,4−ジヒドロキシスルホン酸(同12.2)、3,4−ジヒドロキシ安息香酸(同11.94)、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン(同11.82)、ハイドロキノン(同11.56)、ピロガロール(同11.34)、o−クレゾール(同10.33)、レゾルシノール(同11.27)、p−クレゾール(同10.27)、m−クレゾール(同10.09)などのフェノール性水酸基を有する化合物、
【0016】
2−ブタノンオキシム(同12.45)、アセトキシム(同12.42)、1,2−シクロヘプタンジオンヂオキシム(同12.3)、2−ヒドロキシベンズアルデヒドオキシム(同12.10)、ジメチルグリオキシム(同11.9)、エタンジアミド ジオキシム(同11.37)、アセトフェノンオキシム(同11.35)などのオキシム類、アデノシン(同12.56)、イノシン(同12.5)、グアニン(同12.3)、シトシン(同12.2)、ヒポキサンチン(同12.1)、キサンチン(同11.9)などの核酸関連物質、他に、ジエチルアミノメチルホスホン酸(同12.32)、1−アミノ−3,3,3−トリフルオロ安息香酸(同12.29)、イソプロピリデンジホスホン酸(同12.10)、1,1−エチリデンジホスホン酸(同11.54)、1,1−エチリデンジホスホン酸1−ヒドロキシ(同11.52)、ベンズイミダゾール(同12.86)、チオベンズアミド(同12.8)、ピコリンチオアミド(同12.55)、バルビツル酸(同12.5)などの弱酸が挙げられる。
【0017】
これらの弱酸の中で好ましいのは、スルホサリチル酸、サリチル酸である。これらの弱酸に組み合わせる塩基としては、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウムおよび同リチウムが好適に用いられる。これらのアルカリ剤は単独もしくは二種以上を組み合わせて用いられる。上記の各種アルカリ剤は濃度および組み合わせによりpHを好ましい範囲内に調整して使用される。
【0018】
[界面活性剤]
本発明の現像液には、現像性の促進や現像カスの分散および印刷版画像部の親インキ性を高める目的で、必要に応じて種々界面活性剤や有機溶剤を添加できる。好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系および両性界面活性剤が挙げられる。界面活性剤の好ましい例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、しょ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシドなどの非イオン性界面活性剤、
【0019】
脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホ琥珀酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類などのアニオン界面活性剤、アルキルアミン塩類、テトラブチルアンモニウムブロミド等の第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体などのカチオン性界面活性剤、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミダゾリン類などの両性界面活性剤が挙げられる。以上挙げた界面活性剤の中でポリオキシエチレンとあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレンなどのポリオキシアルキレンに読み替えることもでき、それらの界面活性剤もまた包含される。
【0020】
更に好ましい界面活性剤は分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系の界面活性剤である。かかるフッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステルなどのアニオン型、パーフルオロアルキルベタインなどの両性型、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩などのカチオン型およびパーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基および親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基および親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基含有ウレタンなどの非イオン型が挙げられる。上記の界面活性剤は、単独もしくは2種以上を組み合わせて使用することができ、現像液中に0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜5質量%の範囲で添加される。
【0021】
[現像安定化剤]
本発明の現像液には、種々の現像安定化剤が添加することができる。それらの好ましい例として、特開平6−282079号公報記載の糖アルコールのポリエチレングリコール付加物、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどのテトラアルキルアンモニウム塩、テトラブチルホスホニウムブロマイドなどのホスホニウム塩およびジフェニルヨードニウムクロライドなどのヨードニウム塩が好ましい例として挙げられる。更には、特開昭50−51324号公報記載のアニオン界面活性剤または両性界面活性剤、また特開昭55−95946号公報記載の水溶性カチオニックポリマー、特開昭56−142528号公報に記載されている水溶性の両性高分子電解質がある。更に、特開昭59−84241号公報のアルキレングリコールが付加された有機ホウ素化合物、特開昭60−111246号公報記載のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック重合型の水溶性界面活性剤、特開昭60−129750号公報のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンを置換したアルキレンジアミン化合物、特開昭61−215554号公報記載の重量平均分子量300以上のポリエチレングリコール、特開昭63−175858号公報のカチオン性基を有する含フッ素界面活性剤、特開平2−39157号公報の酸またはアルコールに4モル以上のエチレンオキシドを付加して得られる水溶性エチレンオキシド付加化合物と、水溶性ポリアルキレン化合物、及び特開平6−282079号公報の糖アルコールのエチレンオキシド付加物などが挙げられる。
【0022】
[有機溶剤]
現像液には更に必要により有機溶剤が加えられる。かかる有機溶剤としては、水に対する溶解度が約10質量%以下のものが適しており、好ましくは5質量%以下のものから選ばれる。例えば、1−フェニルエタノール、2−フェニルエタノール、3−フェニル−1−プロパノール、4−フェニル−1−ブタノール、4−フェニル−2−ブタノール、2−フェニル−1−ブタノール、2−フェノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール、o−メトキシベンジルアルコール、m−メトキシベンジルアルコール、p−メトキシベンジルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノールおよび4−メチルシクロヘキサノール、N−フェニルエタノールアミンおよびN−フェニルジエタノールアミンなどを挙げることができる。有機溶剤の含有量は使用液の総重量に対して0.1〜5質量%である。その使用量は界面活性剤の使用量と密接な関係があり、有機溶剤を完全に溶解させて良好な現像性を確保するため、有機溶剤の量が増すにつれ、界面活性剤の量は増加させることが好ましい。
【0023】
[還元剤]
本発明の現像液には更に還元剤を加えることができる。これは印刷版の汚れを防止するものであり、特に感光性ジアゾニウム塩化合物を含むネガ型感光性平版印刷版を現像する際に有効である。好ましい有機還元剤としては、チオサリチル酸、ハイドロキノン、メトール、メトキシキノン、レゾルシン、2−メチルレゾルシンなどのフェノール化合物、フェニレンジアミン、フェニルヒドラジンなどのアミン化合物が挙げられる。更に好ましい無機の還元剤としては、亜硫酸、亜硫酸水素酸、亜リン酸、亜リン酸水素酸、亜リン酸二水素酸、チオ硫酸および亜ジチオン酸などの無機酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などを挙げることができる。これらの還元剤のうち汚れ防止効果が特に優れているのは亜硫酸塩である。これらの還元剤は使用時の現像液に対して好ましくは、0.05〜5質量%の範囲で含有される。
【0024】
[有機カルボン酸]
本発明における現像液には更に有機カルボン酸を加えることもできる。好ましい有機カルボン酸は炭素原子数6〜20の脂肪族カルボン酸および芳香族カルボン酸である。脂肪族カルボン酸の具体的な例としては、カプロン酸、エナンチル酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸などがあり、特に好ましいのは炭素数8〜12のアルカン酸である。また炭素鎖中に二重結合を有する不飽和脂肪酸でも、枝分かれした炭素鎖のものでもよい。芳香族カルボン酸としてはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環などにカルボキシル基が置換された化合物で、具体的には、o−クロロ安息香酸、p−クロロ安息香酸、o−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、o−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、没食子酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸などがあるがヒドロキシナフトエ酸は特に有効である。上記脂肪族および芳香族カルボン酸は水溶性を高めるためにナトリウム塩やカリウム塩またはアンモニウム塩として用いるのが好ましい。本発明で用いる現像液の有機カルボン酸の含有量は格別な制限はないが、十分な効果を発揮するために使用時の現像液に対して0.1〜10質量%が適当であり、より好ましくは0.5〜4質量%である。
【0025】
[その他]
本発明の現像液には、更に必要に応じて、防腐剤、着色剤、増粘剤、消泡剤および硬水軟化剤などを含有させることもできる。硬水軟化剤としては例えば、ポリ燐酸およびそのナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、ニトリロトリ酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸および1,3−ジアミノ−2−プロパノールテトラ酢酸などのアミノポリカルボン酸およびそれらのナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ(メチレンホスホン酸)および1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸やそれらのナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩を挙げることができる。
【0026】
このような硬水軟化剤はそのキレート化力と使用される硬水の硬度および硬水の量によって最適値が変化するが、一般的な使用量を示せば、使用時の現像液に0.01〜5質量%、より好ましくは0.01〜0.5質量%の範囲である。
現像液の残余の成分は水である。本発明における現像液は、使用時よりも水の含有量を少なくした濃縮液としておき、使用時に水で希釈するようにしておくことが運搬上有利である。この場合の濃縮度は各成分が分離や析出を起こさない程度が適当である。
【0027】
本発明はさらに、支持体上に画像形成層を有する平版印刷版原版を露光後、上記に詳述したアルカリ性現像液で現像処理することを含む平版印刷版の製版方法に向けられている。
本発明の平版印刷版の製版方法において、上記アルカリ性現像液を現像開始液として、又は現像補充液として、あるいは両方に採用することができる。
本発明の現像液で現像される平版印刷版原版は限定されるものではなく、例えば支持体上に以下に例示する感光層、感熱層などの画像記録層を設けたものである。画像記録層は例えば、コンベンショナルポジタイプ、コンベンショナルネガタイプ、フォトポリマータイプ(光重合型)、サーマルポジタイプ、サーマルネガタイプ(熱重合型及び酸架橋型)が好適に挙げられる。ここでいうコンベンショナルとは、透明陽画又は透明陰画を通して、画像様露光をする従来型の平版印刷版原版を示す。以下、これらの画像記録層について説明する。
【0028】
<コンベンショナルポジタイプ>
コンベンショナルポジタイプの感光性樹脂組成物の好ましいものとして、o−キノンジアジド化合物とアルカリ可溶性高分子化合物とを含有する組成物が挙げられる。o−キノンジアジド化合物としては、例えば、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとフェノール・ホルムアルデヒド樹脂またはクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂とのエステルや、米国特許第3,635,709号明細書に記載されている1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとピロガロール・アセトン樹脂とのエステルがある。アルカリ可溶性高分子化合物は例えば、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂、フェノール・クレゾール・ホルムアルデヒド共縮合樹脂、ポリヒドロキシスチレン、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドの共重合体、特開平7−36184号公報に記載されているカルボキシ基含有ポリマー等が挙げられる。また、特開昭51−34711号公報に記載されているようなフェノール性ヒドロキシ基を含有するアクリル系樹脂、特開平2−866号に記載されているスルホンアミド基を有するアクリル系樹脂や、ウレタン系の樹脂等、種々のアルカリ可溶性の高分子化合物も用いることができる。さらに感光性樹脂組成物には、特開平7−92660号公報〔0024〕〜〔0027〕で示されている感度調節剤、焼出剤、染料等の化合物や同公報〔0031〕で示されているような塗布性を良化するための界面活性剤を加えることが好ましい。
これらo−キノンジアジド化合物とアルカリ可溶性高分子化合物とを含有する感光性組成物を支持体上に設けたコンベンショナルポジ型感光性平版印刷版原版は紫外線を用いて画像様露光された後、アルカリ性現像液で現像される。
【0029】
<コンベンショナルネガタイプ>
コンベンショナルネガタイプの感光性樹脂組成物としては、ジアゾ樹脂とアルカリ可溶性または膨潤性の高分子化合物(結合剤)とを含有するものが挙げられる。
ジアゾ樹脂としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩とホルムアルデヒド等の活性カルボニル基含有化合物との縮合物が挙げられ、さらに例えば、p−ジアゾフェニルアミン類とホルムアルデヒドとの縮合物とヘキサフルオロリン酸塩またはテトラフルオロホウ酸塩との反応生成物である有機溶媒可溶性ジアゾ樹脂無機塩が挙げられる。特に、特開昭59−78340号公報に記載されている6量体以上を20モル%以上含んでいる高分子量ジアゾ化合物が好ましい。好適な結合剤としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸またはマレイン酸を必須成分として含む共重合体、例えば、特開昭50−118802号公報に記載されているような2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸等のモノマーの多元共重合体や、特開昭56−4144号公報に記載されているようなアルキルアクリレート、(メタ)アクリロニトリル、および、不飽和カルボン酸からなる多元共重合体を挙げることができる。さらに感光性樹脂組成物には、特開平7−281425号公報〔0014〕〜〔0015〕で示されている焼出剤、染料、塗膜の柔軟性や耐摩耗性を付与するための可塑剤、現像促進剤等の化合物、塗布性を良化するための界面活性剤を加えることが好ましい。
【0030】
上述したコンベンショナルタイプのポジ型もしくはネガ型感光層の下層としては、特開2000−105462号公報に記載されている、酸基を有する構成成分とオニウム基を有する構成成分とを有する高分子化合物を含有する中間層を設けることが好ましい。
このようにして作成されたコンベンショナルネガタイプ感光性樹脂組成物を用いた感光性平版印刷版は、紫外線を用いて画像様露光された後、現像液で現像される。
【0031】
<フォトポリマータイプ>
(感光層)
フォトポリマータイプの光重合型感光性組成物(以下「光重合性組成物」という)は、付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物(以下、単に「エチレン性不飽和結合含有化合物」という)と、光重合開始剤と、高分子結合剤とを必須成分として含有し、必要に応じて、着色剤、可塑剤、熱重合禁止剤等の種々の化合物を含有する。
光重合性組成物に含有されるエチレン性不飽和結合含有化合物は、光重合性組成物が活性光線の照射を受けた場合に、光重合開始剤の作用により付加重合し、架橋し硬化するようなエチレン性不飽和結合を有する化合物である。エチレン性不飽和結合含有化合物は、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物の中から任意に選択することができ、例えば、モノマー、プレポリマー(即ち、2量体、3量体およびオリゴマー)、これらの混合物、これらの共重合体等の化学的形態を有する。モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミドが挙げられる。またウレタン系付加重合性化合物も好適である。
【0032】
光重合性組成物に含有される開始剤としては、使用する光源の波長により、種々の光重合開始剤または2種以上の光重合開始剤の併用系(光開始系)を適宜選択して用いることができ、例えば、特開2001−22079号公報〔0021〕〜〔0023〕で示されている開始系が好ましい。光重合性組成物に含有される高分子結合剤は、光重合性組成物の皮膜形成剤として機能するだけでなく、感光層をアルカリ現像液に溶解させる必要があるため、アルカリ水に可溶性または膨潤性である有機高分子重合体が使用される。上記高分子としては同公報〔0036〕〜〔0063〕で示されている物が有用である。その他光重合性組成物には、同公報〔0079〕〜〔0088〕で示されている添加剤(例えば塗布性を良化するための界面活性剤)を加えることも好ましい。
また、上記感光層の上に、酸素の重合禁止作用を防止するために酸素遮断性保護層を設けることが好ましい。酸素遮断性保護層に含有される重合体としては、ポリビニルアルコール又はその共重合体が挙げられる。さらにフォトポリマータイプの感光層の下層として特開2001−228608号公報〔0124〕〜〔0165〕で示されているような中間層もしくは接着層を設けるのも好ましい。かかるフォトポリマータイプの光重合型感光性組成物を用いた感光性平版印刷版は高圧水銀灯などの紫外線、アルゴンレーザーおよび紫外線レーザーを用いて画像様露光された後、現像液で現像される。
【0033】
<サーマルポジタイプ>
(感熱層)
サーマルポジタイプの感熱層は、アルカリ可溶性高分子化合物と光熱変換物質とを含有する。このアルカリ可溶性高分子化合物は、高分子中に酸性基を含有する単独重合体、これらの共重合体、およびこれらの混合物を包含し、特に下記(1)や(2)のような酸性基を有するものが、アルカリ現像液に対する溶解性の点で好ましい:(1)フェノール性ヒドロキシ基(−Ar−OH)、(2)スルホンアミド基(−SO2 NH−R)。とりわけ、赤外線レーザ等による露光での画像形成性に優れる点で、フェノール性ヒドロキシ基を有することが好ましく、例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−およびm−/p−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂等のノボラック樹脂;ピロガロールアセトン樹脂が好ましく挙げられる。さらに詳しくは特開2001−305722号公報の〔0023〕〜〔0042〕で示されている高分子が好ましく用いられる。
【0034】
光熱変換物質は、露光エネルギーを熱に変換して感熱層の露光部領域の相互作用解除を効率よく行うことを可能とする。記録感度の観点から、波長700〜1200nmの赤外域に光吸収域がある顔料または染料が好ましい。染料としては具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体(例えば、ニッケルチオレート錯体)等の染料を用いることができる。中でも、シアニン染料が好ましく、特開2001−305722号公報の一般式(I)で示されたシアニン染料を挙げることができる。サーマルポジタイプの組成物中には、前記コンベンショナルポジタイプで記述した物と同様の感度調節剤、焼出剤、染料等の化合物や塗布性を良化するための界面活性剤を加えることが好ましく、詳しくは特開2001−305722号公報の〔0053〕〜〔0059〕で示されている化合物が好ましい。
【0035】
サーマルポジタイプの感熱層は単層でもよいし、特開平11−218914号公報に記載されているような2層構造として設けてもよい。
サーマルポジタイプの感熱層と支持体との間には、下塗層を設けることが好ましい。下塗層に含有される成分としては特開2001−305722号公報の〔0068〕で示された種々の有機化合物が挙げられる。
これらアルカリ可溶性高分子化合物と光熱変換物質とを含有する感熱性組成物を支持体上に設けたサーマルポジ型感熱性平版印刷版原版は赤外線レーザを用いて画像様露光された後、アルカリ性現像液で現像される。
【0036】
<サーマルネガタイプ>
(感熱層)
サーマルネガタイプの感熱層は、赤外線レーザ照射部が硬化して画像部を形成するネガ型の感熱層である。
このようなサーマルネガタイプの感熱層の一つとして、重合型の層が好適に挙げられる。重合層は、(A)赤外線吸収剤と、(B)ラジカル発生剤(ラジカル重合開始剤)と、発生したラジカルにより重合反応を起こして硬化する(C)ラジカル重合性化合物と、(D)バインダーポリマーとを含有する。
重合層においては、赤外線吸収剤が吸収した赤外線を熱に変換し、この際発生した熱により、オニウム塩等のラジカル重合開始剤が分解し、ラジカルが発生する。ラジカル重合性化合物は、末端エチレン性不飽和結合を有する化合物から選ばれ、発生したラジカルにより連鎖的に重合反応が生起し、硬化する。(A)赤外線吸収剤としては、例えば、前述したサーマルポジタイプの感熱層に含有される前記光熱変換物質が挙げられるが、特にシアニン色素の具体例としては特開2001−133969号公報の段落番号〔0017〕〜〔0019〕に記載されたものを挙げることができる。(B)ラジカル発生剤としては、オニウム塩が挙げられ、好適に用いることのできるオニウム塩の具体例としては、特開2001−133969号公報の段落番号〔0030〕〜〔0033〕に記載されたものを挙げることができる。(C)ラジカル重合性化合物は、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。(D)バインダーポリマーとしては線状有機ポリマーを用いることが好ましくい、水または弱アルカリ水に可溶性または膨潤性である線状有機ポリマーが選択される。特にこれらの中で、ベンジル基またはアリル基と、カルボキシ基とを側鎖に有する(メタ)アクリル樹脂が、膜強度、感度および現像性のバランスに優れており好適である。(C)ラジカル重合性化合物および(D)バインダーポリマーに関しては同公報〔0036〕〜〔0060〕に詳しく記載された物が使用できる。その他の添加物としては、同公報〔0061〕〜〔0068〕で示されている添加剤(例えば塗布性を良化するための界面活性剤)を加えることも好ましい。
【0037】
また、重合型のほかに、サーマルネガタイプの感熱層の一つとして、酸架橋型の層が好適に挙げられる。酸架橋層は、(E)光または熱により酸を発生する化合物(以下「酸発生剤」という。)と、(F)発生した酸により架橋する化合物(以下「架橋剤」という。)とを含有し、更に、酸の存在下で架橋剤と反応しうる(G)アルカリ可溶性高分子化合物を含有する。赤外線レーザのエネルギーを効率よく使用するため、酸架橋層には(A)赤外線吸収剤が配合される。(E)酸発生剤としては、光重合の光開始剤、色素類の光変色剤、マイクロレジスト等に使用されている酸発生剤等の、熱分解して酸を発生しうる化合物が挙げられる。(F)架橋剤には、(i)ヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基で置換された芳香族化合物、(ii)N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基またはN−アシルオキシメチル基を有する化合物、または(iii)エポキシ化合物が挙げられる。(G)アルカリ可溶性高分子化合物としては、ノボラック樹脂、側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマー等が挙げられる。
これら重合型および酸架橋型のサーマルネガタイプ感熱層を支持体上に設けたサーマルネガ型感熱性平版印刷版原版は赤外線レーザを用いて画像様露光された後、アルカリ性現像液で現像される。
【0038】
<支持体>
上記の画像記録層を設ける平版印刷版原版の支持体としては、一般的にアルミニウム板が使われる。アルミニウム板は、純アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とし微量の異原子を含むアルミニウム合金等の板状体である。この異原子には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等がある。合金組成としては、10質量%以下の異原子含有率が適当である。好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは、精錬技術上製造が困難であるため、できるだけ異原子を含まないものがよい。また、上述した程度の異原子含有率のアルミニウム合金であれば、本発明に使用し得る素材ということができる。アルミニウム板は、その組成が特に限定されるものではなく、従来公知、公用の素材のものを適宜利用することができる。好ましい素材として、JIS A 1050、同1100、同1200、同3003、同3103、同3005材が挙げられる。本発明において用いられるアルミニウム板の厚さは、約0.1mm〜0.6mm程度が適当である。アルミニウム板を粗面化処理するに先立ち、表面の圧延油を除去するための、例えば界面活性剤またはアルカリ性水溶液で処理する脱脂処理が必要に応じて行われる。
次いで、粗面化処理、陽極酸化処理、親水性処理などが適宜組み合わせて行われ、例えば特開2001−356494号公報に開示されているような支持体の処理方法がある。
このような支持体に、画像記録層を塗設して平版印刷版用原版が得られるが、画像記録層を塗布する前に、中間層を設けてもよい。このような中間層として有機高分子化合物を含むものがよく用いられ、例えば特開2001−356494号公報に開示されているものなどがある。
平版印刷版用原版の裏面には、必要に応じて、重ねた場合における画像記録層の傷付きを防止するために、有機高分子化合物からなる被覆層(「バックコート層」ともいう。)を設けることができる。
【0039】
〔露光〕
像露光に用いられる活性光線の光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯等がある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。またg線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。レーザービームとしてはヘリウム・ネオンレーザー、アルゴンレーザー、クリプトンレーザー、ヘリウム・カドミウムレーザー、KrFエキシマレーザー等が挙げられる。またレーザー直描型印刷版においては近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源が好ましく、固体レーザー、半導体レーザーが特に好ましい。
【0040】
本発明のアルカリ性現像液及びそれを用いた製版方法は、画像形成層が感熱性層である平版印刷版原版に適用する場合により効果が大きく、更にはポジ型感熱性層である場合に特に有効である。
【0041】
本発明の方法に従って現像処理された版は、その後、水洗及び/又はリンス及び/又はガム引きなどして得られた平版印刷版に不必要な画像部(例えば原画フィルムのフィルムエッジ跡など)がある場合には、その不必要な画像部の消去が行なわれる。このような消去は、例えば特公平2−13293号公報に記載されているような消去液を不必要画像部に塗布し、そのまま所定の時間放置したのちに水洗することにより行なう方法が好ましいが、特開平59−174842号公報に記載されているようなオプティカルファイバーで導かれた活性光線を不必要画像部に照射したのち現像する方法も利用できる。
【0042】
以上のようにして本発明の製版方法により得られた平版印刷版は所望により不感脂化ガムを塗布したのち、印刷工程に供することができるが、より一層の高耐刷力の平版印刷版としたい場合にはバーニング処理が施される。平版印刷版をバーニングする場合には、バーニング前に特公昭61−2518号、同55−28062号、特開昭62−31859号、同61−159655号の各公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。
その方法としては、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿にて、平版印刷版上に塗布するか、整面液を満たしたバット中に印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターによる塗布などが適用される。また、塗布した後でスキージ、あるいは、スキージローラーで、その塗布量を均一にすることは、より好ましい結果を与える。
【0043】
整面液の塗布量は一般に0.03〜0.8g/m2(乾燥重量)が適当である。整面液が塗布された平版印刷版は必要であれば乾燥された後、バーニングプロセッサー(たとえば富士写真フイルム(株)より販売されているバーニングプロセッサー:「BP−1300」)などで高温に加熱される。この場合の加熱温度及び時間は、画像を形成している成分の種類にもよるが、180〜300℃の範囲で1〜20分の範囲が好ましい。
【0044】
バーニング処理された平版印刷版は、必要に応じて適宜、水洗、ガム引きなどの従来より行なわれている処理を施こすことができるが、水溶性高分子化合物等を含有する整面液が使用された場合にはガム引きなどのいわゆる不感脂化処理を省略することができる。このような処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0045】
【実施例】
以下、実施例を以て本発明を詳細に説明する。
【0046】
−平版印刷版原版の作製−
版材a:ジアゾ系ポジ型感光性平版印刷版
厚さ0.30mmのアルミニウム板をナイロンブラシと400メッシュのパミストンの水懸濁液を用いその表面を砂目立てした後、よく水で洗浄した。10%水酸化ナトリウムに70℃で60秒間浸漬してエッチングした後、流水で水洗後20%HNO3で中和洗浄、水洗した。これをVA=12.7Vの条件下で正弦波の交番波形電流を用いて1%硝酸水溶液中で160クーロン/dm2の陽極時電気量で電解粗面化処理を行った。その表面粗さを測定したところ0.6μm(Ra表示)であった。ひきつづいて30%のH2SO4水溶液中に浸漬し55℃で2分間デスマットした後、20%H2SO4水溶液中で、砂目立てした面に陰極を配置して、電流密度2A/dm2において厚さが2.7g/m2になるように陽極酸化し、基板を作製した。尚、この時の裏面の陽極酸化皮膜はアルミニウム板の中央部で約0.2g/m2、端部で約0.5g/m2であった。
【0047】
上記の基板の表面に下記感光液1を塗布し、乾燥後の塗布重量が2.5g/m2となるように感光性層を設けた。
【0048】
このようにして作製した感光性層の表面に下記の様にしてマット層形成用樹脂液を吹き付けてマット層を設けたポジ型平版印刷版(a)を得た。
マット層形成用樹脂液としてメチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸(仕込質量比 65:20:15)共重合体の一部をナトリウム塩とした12%水溶液を準備し、回転霧化静電塗装機で霧化頭回転数25,000rpm、樹脂液の送液量は40ml/分、霧化頭への印加電圧は−90kv、塗布時の周囲温度は25℃、相対湿度は50%とし、塗布後2.5秒で塗布面に蒸気を吹き付けて湿潤させ、ついで湿潤した3秒後に温度60℃、湿度10%の温風を5秒間吹き付けて乾燥させた。マットの高さは平均約6μm、大きさは平均約30μm、塗布量は150mg/m2であった。
【0049】
版材b:光重合系ネガ型感光性平版印刷版
厚さ0.30mmの材質1Sのアルミニウム板を8号ナイロンブラシと800メッシュのパミストンの水懸濁液を用い、その表面を砂目立てした後、よく水で洗浄した。10%水酸化ナトリウムに70℃で60秒間浸漬してエッチングした後、流水で水洗後、20%HNO3で中和洗浄、水洗した。これをVA=12.7Vの条件下で正弦波の交番波形電流を用いて1%硝酸水溶液中で300クーロン/dm2の陽極時電気量で電解粗面化処理を行った。その表面粗さを測定したところ0.45μm(Ra表示)であった。ひきつづいて30%のH2SO4水溶液中に浸漬し、55℃で2分間デスマットした後、33℃、20%H2SO4水溶液中で、砂目立てした面に陰極を配置して、電流密度5A/dm2において50秒間陽極酸化したところ厚さが2.7g/m2であった。
このように処理されたアルミニウム板上に、下記組成の光重合性組成物を乾燥塗布重量が1.5g/m2となるように塗布し、100℃で1分間乾燥させ、感光層を形成した。
【0050】
【0051】
【化1】
【0052】
この感光層上に下記組成の保護層用塗布液O−1を乾燥塗布重量が2.5g/m2となるように塗布し、120℃で3分間乾燥させ、光重合性平版印刷版(b)を得た。
(保護層用塗布液O−1)
ポリビニルアルコール 22質量部
(ケン化度98モル% 重合度500)
EMALEX710 1質量部
(日本エマルジョン社製ノニオン界面活性剤)
水 450質量部
【0053】
版材c:ネガ型感熱性平版印刷版
[支持体の作成]
厚さ0.03mmのアルミニウム板をナイロンブラシと400メッシュのパミストンの水懸濁液を用いその表面を砂目立てした後、水洗した。10%水酸化ナトリウムに60℃で40秒間浸せきしてエッチングした後、流水で水洗後20%硝酸で中和洗浄、水洗した。これをVA=12.7Vの条件下で正弦波の交番波形電流を用いて1%硝酸水溶液中で160クーロン/dm2の陽極電気量で電解粗面化処理を行った。その表面粗さを測定したところ、0.6μm(Ra表示)であった。引き続いて30%の硝酸水溶液中に浸せきし55℃で1分間デスマットした後、20%硝酸水溶液中で、電流密度2A/dm2のおいて厚さが2.7g/m2になるように陽極酸化し、基板(I)を調製した。
【0054】
[親水層の形成]
このように処理された基板(I)の表面に下記組成の親水層塗布液を塗布し、80℃、30秒間乾燥した。乾燥後の皮膜量は20mg/m2であった。
【0055】
親水層塗布液組成
・βアラニン 0.10 g
・メタノール 100 g
【0056】
[感熱層の形成]
架橋剤[KZ−9]の合成
1−[α−メチル−α−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]−4−[α、α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼンを、水酸化カリウム水溶液中で、ホルマリンと反応させた。反応溶液を硫酸で酸性とし晶析させ、さらにメタノールから再結晶することにより、下記構造の架橋剤[KZ−9]を得た。逆相HPLCにより純度を測定したところ、92%であった。
【0057】
【化2】
【0058】
バインダーポリマー[BP−1]の入手
丸善石油化学(株)製のポリ(p−ヒドロキシスチレン)、マルカ リンカーM S−4P(商品名)を入手し、[BP−1]とした。
【0059】
次に、下記感熱層塗布液[P]を調製し、この溶液を、上記の親水層を形成したアルミニウム支持体である基板(I)上に塗布し、100℃で1分間乾燥して感熱層を形成し、ネガ型感熱性平版印刷版(c)を得た。乾燥後の被覆量は1.5g/m2であった。
塗布液[P]に用いた酸発生剤[SH−1]および赤外線吸収剤[IK−1]の構造を以下に示す。
【0060】
感熱層塗布液[P]
・酸発生剤[SH−1] 0.3 g
・架橋剤[KZ−9] 0.5 g
・バインダーポリマー[BP−1] 1.5 g
・赤外線吸収剤[IK−1] 0.07 g
・AIZEN SPILON BLUE C−RH 0.035 g
(保土ヶ谷化学(株)製)
・フッ素系界面活性剤 0.01 g
(メガファックF−177、大日本インキ化学工業(株)製)
・無水フタル酸 0.05 g
・メチルエチルケトン 12 g
・メチルアルコール 10 g
・1−メトキシ−2−プロパノール 4 g
・3−メトキシ−1−プロパノール 4 g
【0061】
【化3】
【0062】
版材d:ポジ型感熱性平版印刷版
0.3mm厚のアルミニウム板(材質1050)をトリクロロエチレンで洗浄して脱脂した後、ナイロンブラシと400メッシュのパミス−水懸濁液を用い、この表面を砂目立てし、水でよく洗浄した。
洗浄後、このアルミニウム板を45℃の25%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗した後、さらに20%硝酸水溶液に20秒間浸漬し、再度水洗した。このときの砂目立て表面のエッチング量は、約3g/m2であった。
【0063】
次に、このアルミニウム板を7%硫酸を電解液として、電流密度15A/dm2の直流電流で3g/m2の陽極酸化被膜を設けた後、水洗、乾燥した。
これを、30℃の珪酸ナトリウム2.5%水溶液で10秒処理し、下記下塗り層用塗布液を塗布し、80℃下で15秒間乾燥して支持体を得た。乾燥後の下塗り層の乾燥塗布量は、15mg/m2であった。
【0064】
<下塗り層用塗布液>
下記共重合体P(分子量28000) 0.3g
メタノール 100g
水 1g
【0065】
【化4】
【0066】
<共重合体1の合成>
攪拌機、冷却管及び滴下ロートを備えた500ml三つ口フラスコにメタクリル酸31.0g(0.36モル)、クロロギ酸エチル39.1g(0.36モル)及びアセトニトリル200mlを入れ、氷水浴で冷却しながら混合物を攪拌した。この混合物にトリエチルアミン36.4g(0.36モル)を約1時間かけて滴下ロートにより滴下した。滴下終了後、氷水浴を取り去り、室温下で30分間混合物を攪拌した。この反応混合物にp−アミノベンゼンスルホンアミド51.7g(0.30モル)を加え、油浴にて70℃に温めながら混合物を1時間攪拌した。反応終了後、この混合物を水1リットルにこの水を攪拌しながら投入し、30分間得られた混合物を攪拌した。この混合物をろ過して析出物を取り出し、これを水500mlでスラリーにした後、このスラリーをろ過し、得られた固体を乾燥することにより、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミドの白色固体が得られた(収量46.9g)
【0067】
次に攪拌機、冷却管及び滴下ロートを備えた20ml三つ口フラスコにN−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド4.61g、(0.0192モル)、メタクリル酸エチル2.94g(0.0258モル)、アクリロニトリル0.80g(0.015モル)及びN,N−ジメチルアセトアミド20gを入れ、湯水浴により65℃に加熱しながら混合物を攪拌した。この混合物に「V−65」(和光純薬(株)製)0.15gを加え、65℃に保ちながら窒素気流下2時間混合物を攪拌した。この反応混合物にさらにN−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド4.61g、メタクリル酸エチル2.94g、アクリロニトリル0.80g、N,N−ジメチルアセトアミド及び「V−65」0.15gの混合物を2時間かけて滴下ロートにより滴下した。滴下終了後、さらに65℃で2時間得られた混合物を攪拌した。反応終了後、メタノール40gを混合物に加え、冷却し、得られた混合物を水2リットルにこの水を攪拌しながら投入し、30分間混合物を攪拌した後、析出物をろ過により取り出し、乾燥することにより15gの白色固体を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、この特定の共重合体の重量平均分子量(ポリスチレン標準)を測定したところ、53,000であった。
【0068】
得られた支持体上に下記感熱層塗布液を、乾燥塗布量が、1.8g/m2となるように塗布し、ポジ型の平版印刷版原版(d)を得た。
【0069】版材e:ポジ型感熱性平版印刷版(2層型)[基板の作成]
厚さ0.24mmのアルミニウム板(Si:0. 06質量%、Fe:0.30質量%、Cu:0. 014質量%、Mn:0.001質量%、Mg:0.001質量%、Zn:0.001質量%、Ti:0.03質量%を含有し、残部はAlと不可避不純物のアルミニウム合金)に対し以下に示す表面処理を連続的に行った。
【0070】
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル、アンモニウムイオンを0.007質量%含む。)、温度80℃であった。水洗後、アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.20g/m2溶解し、スプレーによる水洗を行った。その後、温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、スプレーによる水洗を行った。
【0071】
二段給電電解処理法の陽極酸化装置を用いて陽極酸化処理を行った。電解部に供給した電解液としては、硫酸を用いた。その後、スプレーによる水洗を行った。最終的な酸化皮膜量は2.7g/m2であった。
陽極酸化処理により得られたアルミニウム支持体を温度30℃の3号ケイ酸ソーダの1質量%水溶液の処理槽中へ、10秒間、浸せきすることでアルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。
上記のようにして得られたアルカリ金属ケイ酸塩処理後のアルミニウム支持体上に、版材dと同じ下塗液を塗布し、80℃で15秒間乾燥し、塗膜を形成させた。乾燥後の塗膜の被覆量は15mg/m2であった。
【0072】
得られたウエブ状の基板に以下の下層用塗布液1を塗布量が0.85g/m2になるようバーコーターで塗布したのち160℃で44秒間乾燥し、直ちに17〜20℃の冷風で支持体の温度が35℃になるまで冷却した後、上部感熱層用塗布液1を塗布量が0.22g/m2になるようバーコーター塗布したのち、148℃で25分間乾燥し、更に20〜26℃の風で徐冷し、2層系ポジ型平版印刷版原版(e)を作成した。
【0073】
【0074】
【化5】
【0075】
【0076】
【化6】
【0077】
上記感熱性平版印刷版において、上部感熱層塗布時に下層を部分的に相溶させることにより上部感熱層表面に微細な突起が発生した。電子顕微鏡により5000倍で撮影された写真の100μm2当たりの突起の数を数えたところ、120個観測され、1.2個/μm2であった。
【0078】
−現像液の調製−
現像開始液a−1〜a−10及び現像補充液b−1〜b−16を各々、下記表1及び表2〜3の組成に従って調製した。表1〜3中、No.1〜11の化合物とは、上記に挙げた一般式(I)で示される化合物の具体例に符合する。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
[実施例1〜17及び比較例1〜8]
上記で作製した版材a〜eを露光し、表4に示すように自動現像機を用いて各種現像開始液、現像補充液、フィニッシャーで製版処理した。得られた平版印刷版を印刷に供し、インキ着肉性及び汚れ性を調べた。また、現像槽においてヘドロを観察した。さらに、版上のカスを調べた。以下に、製版処理条件及び評価方法を説明する。
<露光>
ジアゾ系ポジ型感光性平版印刷版:大日本スクリーン社製プリンター、P−806−Gによりフィルム原稿を通して85カウンドにて露光した。
光重合系ネガ型感光性平版印刷版:FD−YAGレーザー(CSI社製プレートジェット4)により100μJ/cm2の露光量で露光した。
ネガ型感熱性平版印刷版及びポジ型感熱性平版印刷版:
平版印刷版原版をクレオ社製プレートセッターTrendsetter3244Fを用いて(回転数:150rpm)露光した。ポジ型感熱性平版印刷版は露光後、パネルヒーターにて、110℃で30秒間加熱処理。
【0083】
<現像>
各自動現像機にて1003mm×800mmのサイズの印刷版を一日当たり50版づつ、2ヶ月間処理した。
<印刷>
平版印刷版をオフセット印刷機スプリント25(小森印刷機製造(株)製)にセットして印刷を行い、着肉性(インキのつきやすさ)、汚れ性を調べた。
<ヘドロ>
2ヶ月間処理した後に現像槽の液を抜き、ヘドロを観察した。
<版上カス>
自動現像機停止後再起動時の処理プレート1版当たりのアルミが主成分である版上カスの数をルーペを用いて数えた。
結果を表4に示す。
【0084】
【表4】
【0085】
【発明の効果】
本発明のアルカリ性現像液及び製版方法により、長期間のランニング処理によっても感光層成分に由来するカスの付着がなく、インキ着肉不良や地汚れ等が発生することなく、現像液中にヘドロが少なく、安定に現像処理することができ、かつ版上にアルミニウムを主成分とするカスの発生しない優れた平版印刷版を得ることができる。
Claims (2)
- 下記一般式(I)で示される化合物を含有することを特徴とする平版印刷版用アルカリ性現像液。
(式中、R1、R2、R3、R4及びR5は各々独立して水素原子又はアルキル基を表し、Xは単結合、−N(R6)−(R6は水素原子又はアルキル基を表す。)、−N+(R7)(R8)−(R7及びR8は各々独立して水素原子又はアルキル基を表す。)、−S−又は−O−を表し;Yはアミノ基、水酸基、エポキシ基、ウレイド基、カルバモイル基、カルボキシル基、ジヒドロキシアルキル基、スルファモイル基、スルファモイル基、芳香族基、又は−N+(R10)(R11)(R12)(R10、R11、R12は各々独立に水素原子又はアルキル基を表す。)を表し;aは0又は1以上の整数を表し;及びbは1以上の整数を表す。) - 支持体上に画像形成層を有する平版印刷版原版を露光後、請求項1記載のアルカリ性現像液で現像処理することを含む平版印刷版の製版方法
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