JP2004150894A - タイヤ用試験機の精度維持方法及びタイヤの製品性能測定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】タイヤ用試験機としての精度維持を図ることができ、もってこの試験機によって測定したタイヤの製品性能に関する管理が高い信憑性のもと行えるものとする。
【解決手段】複数本のマスタータイヤX,Yを継続的に測定し、これらの測定データの経時変化から試験機1の異常を判別し、必要に応じて試験機1の精度調整を実施する。
【選択図】 図1
【解決手段】複数本のマスタータイヤX,Yを継続的に測定し、これらの測定データの経時変化から試験機1の異常を判別し、必要に応じて試験機1の精度調整を実施する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、タイヤ用試験機の精度維持方法及びタイヤの製品性能測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
タイヤの製造工程では、製造後のタイヤに関してその製品性能を確認するために、例えば転がり抵抗を測定する転がり抵抗試験機等をはじめとする各種のタイヤ用試験機(特開平6−102149号公報に記載の「タイヤ異常判別装置」等もその一例である)を用いた製品性能試験が行われている。
このようなタイヤ用試験機では、一般に、その測定精度を一定に保つ目的で、数ヶ月から数年に一回、定期点検、校正、検定などを行っている。
【0003】
【特許文献1】
特開平6−102149号公報
【0004】
また、そのうえで、実際にタイヤの製品性能測定を実施する場合には、制御基盤の通電及び試験機の暖機運転を行った後、この試験機に一本のマスタータイヤをセットし、代表的な試験モードにて模擬測定を実施し、このとき得られた測定データを前回実施した模擬測定データと比較する。
そして、この比較の結果、前回の測定データと今回の測定データとの間に顕著な差異が認められないこと(数値差が管理範囲内にあること)を確認してから、実際の製品タイヤに対する測定に移行するということを行っている。
【0005】
このとき、もし前回の測定データと今回の測定データとの間に顕著な差異が認められた場合(数値差が管理範囲を逸脱しているとき)には、再測定を実施して、今回の測定データに錯誤がないことを確認したあとで試験機に異常が起きていると考えるものとしていた。
そこで試験機において制御系にエラーが生じていないか、機械的に誤差、破損、局部的摩耗が生じていないか等を点検し、その結果に基づいて調整や部品交換、修理など、必要な処置をすればよいことになる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来における試験機の使用手順において、マスタータイヤに対する模擬測定を行った際に、前回の測定データと今回の測定データとの間に顕著な差異が認められた場合であっても、必ずしも試験機に異常が起こっていない場合があった。
それはマスタータイヤ自体に異常(品質的な劣化や変形など)が起こっている場合であった。しかしながら、マスタータイヤ自体の異常は、外見的に亀裂やカケ、変色などが知見できるような余程の場合を除き、異常であるとの判定は甚だ困難である。
【0007】
従って、その後も所定期間、継続的にマスタータイヤとしての使用を続け、測定データの推移を見ながら異常であるか否かの判定していくしかない、ということがある。
しかしこのようなことをしていると、その間、試験機としての調整にも遅れ、この試験機で測定を行うべきタイヤの製品管理としても滞りを起こす、或いは測定データの信憑性に確信が持てないといった状態が続くということにも成りかねないのである。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、タイヤ用試験機としての精度維持を図り、もってこの試験機によって測定したタイヤの製品性能に関する管理が高い信憑性のもと行えるようにしたタイヤ用試験機の精度維持方法及びタイヤの製品性能測定方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明に係るタイヤ用試験機の精度維持方法は、複数本のマスタータイヤを使用する。
そして、これら複数本のマスタータイヤを継続的に測定し、これらの測定データの経時変化から、試験機の異常を判別し、必要に応じて試験機の精度調整を実施するものである。
【0010】
また、本発明に係るタイヤの製品性能測定方法は、所定のタイヤ用試験機でタイヤの製品性能を測定するのに先立ち、この試験機で複数本のマスタータイヤを模擬測定し、各マスタータイヤに関する個々の測定データの経時比較から試験機異常を判別し、必要に応じて試験機異常を矯正してからタイヤの製品性能測定を実施するものである。
このように、複数本のマスタータイヤを使用すれば、個々のマスタータイヤに対する模擬測定を行った際に、前回の測定データと今回の測定データとの間に顕著な差異が認められた場合(その他、詳細な説明は後述する)において、マスタータイヤ自体に異常があるのか否かを容易に判別することができ、その結果、測定データ差の原因がマスタータイヤ側にあるのか、それとも試験機側にあるのかを容易且つ確実に判別することができる。
【0011】
そのため、試験機側に原因がある場合の点検、修理、調整等を、時期を逸することなく的確に行えることになる。
結果として、タイヤ用試験機としての精度維持を図ることができ、もってこの試験機によって測定したタイヤの製品性能に関する管理が高い信憑性のもと行えるものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1は、タイヤ用試験機1(図例は転がり抵抗試験機としている)に対して本発明に係る精度維持方法を実施している状況を模式的に示している。
この精度維持方法では、複数本のマスタータイヤX,Y,…(図例ではX,Yの2本とした)を使用する。
すなわち、試験機1により、製品とすべきタイヤについてその製品性能試験を実施する場合には、制御基盤の通電及び暖機運転を行ったうえで、まず最初に(製品とすべきタイヤに先だって)、この試験機1に対してマスタータイヤXをセットする。
【0013】
そして、このマスタータイヤXについて代表的な試験モードにて模擬測定をする。
また、このマスタータイヤXに対する模擬測定を一通り終えた後、次に試験機1からマスタータイヤXを外すと共に、代わりにマスタータイヤYをセットする。そして、このマスタータイヤYについて代表的な試験モードにて模擬測定をする。
このようにして複数本のマスタータイヤX,Yに関して模擬測定を行って得た測定データを、個々における過去の測定データ(マスタータイヤXならそれ自体の過去データ、マスタータイヤYならそれ自体の過去データという意味)と比較する。
【0014】
ここにおいて、一般にタイヤには、品質的な変化は数年(10年近く)にわたり極めてゆっくり起こるといった特性がある。
例えば、図2に示すようにタイヤの転がり抵抗に関して言えば、新品時点から数回(4〜5回)の測定では測定データに若干の変化が認められるものの、その後は数年にわたって略一定の測定データが得られることが判っている。
そして、タイヤが寿命末期に近づくと(図2中の矢符E部参照)測定データは徐々に増加傾向を示し、やがては管理範囲を逸脱することになるのである。
【0015】
なお、転がり抵抗に限って付言しておけば、測定データが所定期間にわたって減少傾向を続けるということはないと考えてよい(短期的には減少することもあり得る)。
上記の測定データの比較内容につき、以下、具体例を挙げて説明する。
いま、マスタータイヤXにおける今回の測定データを[Xn]とおき、その1回前に測定した前回測定データを[Xn−1]とおく。
従って、([Xn]−[Xn−1])の値がゼロよりも大きい(プラスの値である)ときには今回の測定データ[Xn]が増加傾向にあることを表し、反対に([Xn]−[Xn−1])の値がゼロよりも小さい(マイナスの値である)ときには今回の測定データ[Xn]が減少傾向にあることを表すことになる。
【0016】
なお、実際の測定では、タイヤの製造バラツキや試験機1の測定誤差をはじめ、試験時の気温や湿度など、各種条件が異なることから、図3に示すように、この([Xn]−[Xn−1])の値に対して増加方向及び減少方向でそれぞれに所定の許容範囲を持たせるものとして、上限RH及び下限RLを設定するものとした。
これからRL≦([Xn−1]−[Xn])≦RHを、マスタータイヤXの管理範囲とおくものとする。
【0017】
従って、模擬測定を行って[Xn]を得るたびに、毎回、([Xn]−[Xn−1])の値を算出し、その値が下限RLに満たないときや上限RHを超えたときに、そのマスタータイヤXは異常タイヤであると判別するということである。
但し、増加傾向や減少傾向が小さいときには、([Xn]−[Xn−1])の値が管理範囲内に入り、その結果、増加傾向無し又は減少傾向無しと判断されたとしても、過去数回前まで遡って測定データの比較をしたときに、明らかな増加傾向又は減少傾向が認められるといった場合もあり得る。
【0018】
そこで、過去適数回分の測定データ(例えば10回分)の平均値[V]を算出し、この平均値(V)を今回の測定データ[Xn]と比較することを行って、これにより得られる結果をも含めてタイヤ側の異常か試験機1側の異常かを判断するのが好ましい。
即ち、RL ≦|([Xn]−[V])|≦RH という制限をも加えるものとする。
これらのことは、マスタータイヤYに関しても同様に定義する。
【0019】
図4は、本発明に係る精度維持方法において、試験機1によりマスタータイヤX,Yの模擬測定を行い、それぞれ([Xn]−[Xn−1])の値、及び([Yn]−[Yn−1])の値を算出した段階以降の代表的な流れ(判定手順)を示したフローチャートである。
なお、この図4中では、図面の煩雑を避けるために([Xn]−[Xn−1])をWxと表記し、また([Yn]−[Yn−1])をWyと表記した。
まず、スタート後、ステップ100においてマスタータイヤXのWx値が管理範囲の上限RH以下であることが判明し、且つステップ101において管理範囲の下限RL以上であることが判明したとき、マスタータイヤXに異常は認められないものと仮判定をする(ステップ102参照)。
【0020】
また、次にステップ103においてマスタータイヤYのWy値が管理範囲の上限RH以下であることが判明し、且つステップ104において管理範囲の下限RL以上であることが判明したとき、マスタータイヤYに異常は認められないものと仮判定をする(ステップ105)。
そこで、これらステップ102,105の総合判定として、ステップ106で、マスタータイヤX,Y及び試験機1の全てに異常は認められないものと結論する。
【0021】
従って、その後引き続き、製品とすべきタイヤについて実際にその製品性能試験を実施するものとすればよい(ステップ107参照)。
しかし、上記ステップ100においてマスタータイヤXのWx値が管理範囲の上限RHを超えていることが判明したとする。
このときにはマスタータイヤXに寿命等を原因とした異常が起こっていることを疑うことができる(ステップ109)。
そこで次に、ステップ110においてマスタータイヤYのWy値が管理範囲の上限RHを超えているか否かの判定を行う。もし、超えていれば、本来ならマスタータイヤYに関しても寿命等を原因とした異常が起こっていることを疑う(ステップ113)ところであるが、これらステップ109,113の総合判定としては、ステップ114で、試験機1に異常が起こっていると結論する。
【0022】
これは両方のマスタータイヤX,Yが、同時に、同方向(この場合は増加方向)へ品質異常を起こすということは考えにくいという事情を根拠とする。
そのため、この結果を踏まえて、試験機1の点検や修理、或いは精度調整を実施する(ステップ115参照)。
なお、ここにおいてマスタータイヤX,Yに異常が起こっているか否かは敢えて結論しないものとすればよい。すなわち、その結論は、試験機1の矯正完了後に、再びマスタータイヤX,Yを用いた模擬測定を行ってから、最終的な結論を下せばよい。
【0023】
ところで、上記ステップ110にてマスタータイヤYのWy値が管理範囲の上限RHを超えていないことが判明したときには、次のステップ111にてマスタータイヤYのWy値が管理範囲の下限RL以上であるか否かの判定に進む。
このステップ111において、もし下限RL以上であることが判明したときには、マスタータイヤYに関しては異常は認められないものと仮判定をする(ステップ116)。
そこでステップ109,116の総合判定として、ステップ117で、マスタータイヤY及び試験機1に異常は認められないものの、マスタータイヤXだけが寿命等を原因とした異常を起こしているものと結論する。
【0024】
従って、マスタータイヤXを新品のものに交換したうえで(ステップ118参照)、更にマスタータイヤX,Yを用いた模擬測定を初めからやり直すようにすればよい。
なお、上記したようにタイヤの転がり抵抗等の場合、タイヤの新品時点から数回(4〜5回)の測定では測定データに若干の増加が認められることがあるので、マスタータイヤXを新品のものと交換してから4〜5回の測定データは採用しないようにするのが好ましい。
【0025】
これとは異なり、上記ステップ111にてマスタータイヤYのWy値が管理範囲の下限RLに満たないことが判明したときには、このマスタータイヤYにもなんらかの異常が起こっているものと仮判定をする(ステップ119参照)。
しかしながら、このときのデータは減少を表しており、短期的に現れるもの(異常とは言えない日常的或いは試験条件的なもの)と推定することもできる。
そこで、この場合にはマスタータイヤYに対する結論は出さずに、暫時的に測定データを監視するといった対策をとることもできる(ステップ120参照)。
【0026】
ただ、マスタータイヤXに対する判定はステップ109でのものを採用できるため、ステップ120からステップ118へと進んでマスタータイヤXの交換を行うようにしてもよい。
また、このとき同時に試験機1の異常を疑う材料としてもよい。
上記ステップ100,101を経てステップ102でマスタータイヤXが異常無しと仮判定されたとき、ステップ103でマスタータイヤYのWy値が管理範囲の上限RHを超えていることが判明したとする。
【0027】
このときにはマスタータイヤYに寿命等を原因とした異常が起こっていることを疑う(ステップ121)。
そのため、ステップ102,121の総合判定として、ステップ122で、マスタータイヤX及び試験機1に異常は認められないものの、マスタータイヤYだけが寿命等を原因とした異常を起こしているものと結論する。
従って、マスタータイヤYを新品のものに交換したうえで(ステップ123参照)、更にマスタータイヤX,Yを用いた模擬測定を初めからやり直すようにすればよい。
【0028】
なお、この場合も、マスタータイヤYを新品のものと交換してから4〜5回の測定データは採用しないようにするのが好ましい。
上記ステップ103でマスタータイヤYのWy値が管理範囲の上限RH以内に収まっていたが、次のステップ104においてWy値が管理範囲の下限RLに満たないことが判明したときには、やはりマスタータイヤYになんらかの異常が起こっていることを疑う(ステップ125参照)。
そこで、上記したステップ120のときと同様に、マスタータイヤYに対し、暫時的に測定データを監視するといった対策をとることが勧められる(ステップ126参照)。
【0029】
また同様に、試験機1の異常を疑うのも一手である。
一方、最初のステップ100においてマスタータイヤXのWx値が管理範囲の上限RH以下に収まっていることが判明したものの、次のステップ101で、このWx値が管理範囲の下限RLに満たないことが判明したとする。
このときには、マスタータイヤXになんらかの異常が起こっていることを疑う(ステップ127参照)。
そのうえで、ステップ128においてマスタータイヤYのWy値が管理範囲の上限RH以上であるか否かの判定に進む。
【0030】
このステップ128において、上限RH以内であることが判明したときには、更に次のステップ129で、マスタータイヤYのWy値が管理範囲の下限RL以上であるか否かの判定に進む。
このステップ129において、下限RL以上であることが判明したときには、マスタータイヤYに関しては異常は認められないものと仮判定をする(ステップ130参照)。
そのため、ステップ127,130の総合判定として、ステップ131で、マスタータイヤYに関しては異常は認められないと結論し、マスタータイヤXにはなんらかの異常が起こっていると疑う程度の結論に留める。
【0031】
そこで、マスタータイヤXを新品のものに交換するか又は交換しないで、このマスタータイヤXに対して暫時的に測定データを監視するといった対策をとればよい。
また、試験機1の異常を疑う材料としてもよい。
上記ステップ128において、もし、マスタータイヤYのWy値が管理範囲の上限RHを超えていることが判明したときには、マスタータイヤYに寿命等を原因とした異常が起こっていることを疑う(ステップ132)。
【0032】
そのため、ステップ127,132の総合判定として、ステップ133で、マスタータイヤYに関しては寿命等を原因とした異常が起こっていると結論し、マスタータイヤXにはなんらかの異常が起こっていると疑う程度の結論に留める。
そこで、まずはマスタータイヤYを新品のものに交換したうえで(ステップ123参照)、マスタータイヤXを新品のものに交換するか又は交換しないで、このマスタータイヤXに対して暫時的に測定データを監視するといった対策をとればよい。
【0033】
また、試験機1の異常を疑う材料としてもよい。
上記ステップ129において、もし、マスタータイヤYのWy値が管理範囲の下限RLに満たないものであることが判明したときには、本来ならマスタータイヤYに関してもなんらかの異常が起こっていることを疑う(ステップ134参照)ところであるが、ステップ127,134の総合判定としては、ステップ114で、試験機1に異常が起こっていると結論する。
これは両方のマスタータイヤX,Yが、同時に、同方向(この場合は減少方向)へ品質異常を起こすということは考えにくいという事情を根拠とする。
【0034】
そのため、この結果を踏まえて、試験機1の点検や修理、或いは精度調整を実施する(ステップ115参照)。
なお、ここにおいても、マスタータイヤX,Yに異常が起こっているか否かは敢えて結論しないものとすればよい。すなわち、その結論は、試験機1の矯正完了後、再びマスタータイヤX,Yを用いた模擬測定を行ってから、最終的な結論を下せばよい。
以上の説明から明らかなように、複数本のマスタータイヤX,Yを使用して模擬測定を実施すれば、これらマスタータイヤX,Y自体に異常があるのか否かを容易に判別することができ、その結果、測定データ差の原因がマスタータイヤX,Y側にあるのか、それとも試験機1側にあるのかを容易且つ確実に判別することができる。
【0035】
殊に、タイヤの転がり抵抗を測定する場合には、ロードセルのキャパシティに対して非常に小さな変化を測定しており、従来、測定データ差の原因がマスタータイヤX,Y側にあるのか、それとも試験機1側にあるのかといった判別が極めて困難とされてきたものの一つであるが、本発明によってこの問題を一気に解消できたことの効果は甚だ大であると言える。
このようなことから、試験機1側に原因があるとされた場合の点検、修理、調整などを、時期を逸することなく的確に行えることになり、結果として、試験機1としての精度維持を図ることができ、もってこの試験機1によって測定したタイヤの製品性能に関する管理が高い信憑性のもと行えるものである。
【0036】
なお、前記した図2で、185サイズのタイヤをマスタータイヤXとおき、175サイズのタイヤをマスタータイヤYとおいて、より具体的な例を示すと次のようになる。
すなわち、マスタータイヤY(175サイズ)では、過去10年間(120ヶ月)にわたる測定データが略一定であり、各タイヤの品質変化が極めてゆっくり起こっていることが明らかであるが、最近3ヶ月(グラフ右端)の測定データを見ると、約3ポイントの急激な挙動(転がり抵抗係数の増加)が認められる。
【0037】
これに対し、マスタータイヤX(185サイズ)では、過去5年近く(約60ヶ月)にわたる測定データが略一定であり、各タイヤの品質変化が極めてゆっくり起こっていることが明らかである。そして、この状態は最近3ヶ月も同様に保たれている。
これらのことから、マスタータイヤXに異常はないが、マスタータイヤYでは寿命を原因とした異常が起こっていると結論付けることができ、この場合、試験機1に異常はないと判定することができるのである。
【0038】
この具体例は、図4のフローチャートで言えば、ステップ100,101,102,103,121,122といった流れに該当する。
また、図2のグラフ中、90ヶ月の時点を観察すると、マスタータイヤX,Yの両方ともが、僅かであるものの急激な挙動(転がり抵抗係数の増加)を起こしていることが認められる。
そこで、この挙動に関してはマスタータイヤX,Yではなく、試験機1側の異常であると判定し、試験機1に対してロードセルの検定を実施し調整したところ、挙動の解消が図れた。
【0039】
この具体例は、図4のフローチャートで言えば、ステップ100,109,110,113,114といった流れに該当する。
ところで、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
例えば、マスタータイヤの使用本数は2本に限定されるものではなく、3本、又はそれ以上としてもよい。
なお、3本のマスタータイヤを使用する場合にあって、これらを模擬測定した結果、もし、1本は増加傾向、1本は減少傾向、他の1本は変化無しといった状況になったときには、再現性の確認をしたり、試験機1の計測システムや制御システム等を点検、精査するなどして総合的に判断する必要がある。
【0040】
マスタータイヤは、それぞれサイズはトレッドパターン、用途などが異なるものであってもよいし、同じものであってもよい。
試験機1は、タイヤの転がり抵抗試験機に限定されるものではない。
【0041】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明に係るタイヤ用試験機の精度維持方法及びタイヤの製品性能測定方法では、タイヤ用試験機としての精度維持を図ることができ、もってこの試験機によって測定したタイヤの製品性能に関する管理が高い信憑性のもと行えるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】タイヤ用試験機に対して本発明に係る精度維持方法を実施している状況を模式的に示した斜視図である。
【図2】タイヤの品質的な経時変化を示したグラフである。
【図3】説明の便宜上からマスタータイヤの管理範囲を仮設定した図である。
【図4】本本発明に係る精度維持方法の代表的流れを説明したフローチャートである。
【符号の説明】
1 試験機
X マスタータイヤ
Y マスタータイヤ
【発明の属する技術分野】
本発明は、タイヤ用試験機の精度維持方法及びタイヤの製品性能測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
タイヤの製造工程では、製造後のタイヤに関してその製品性能を確認するために、例えば転がり抵抗を測定する転がり抵抗試験機等をはじめとする各種のタイヤ用試験機(特開平6−102149号公報に記載の「タイヤ異常判別装置」等もその一例である)を用いた製品性能試験が行われている。
このようなタイヤ用試験機では、一般に、その測定精度を一定に保つ目的で、数ヶ月から数年に一回、定期点検、校正、検定などを行っている。
【0003】
【特許文献1】
特開平6−102149号公報
【0004】
また、そのうえで、実際にタイヤの製品性能測定を実施する場合には、制御基盤の通電及び試験機の暖機運転を行った後、この試験機に一本のマスタータイヤをセットし、代表的な試験モードにて模擬測定を実施し、このとき得られた測定データを前回実施した模擬測定データと比較する。
そして、この比較の結果、前回の測定データと今回の測定データとの間に顕著な差異が認められないこと(数値差が管理範囲内にあること)を確認してから、実際の製品タイヤに対する測定に移行するということを行っている。
【0005】
このとき、もし前回の測定データと今回の測定データとの間に顕著な差異が認められた場合(数値差が管理範囲を逸脱しているとき)には、再測定を実施して、今回の測定データに錯誤がないことを確認したあとで試験機に異常が起きていると考えるものとしていた。
そこで試験機において制御系にエラーが生じていないか、機械的に誤差、破損、局部的摩耗が生じていないか等を点検し、その結果に基づいて調整や部品交換、修理など、必要な処置をすればよいことになる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来における試験機の使用手順において、マスタータイヤに対する模擬測定を行った際に、前回の測定データと今回の測定データとの間に顕著な差異が認められた場合であっても、必ずしも試験機に異常が起こっていない場合があった。
それはマスタータイヤ自体に異常(品質的な劣化や変形など)が起こっている場合であった。しかしながら、マスタータイヤ自体の異常は、外見的に亀裂やカケ、変色などが知見できるような余程の場合を除き、異常であるとの判定は甚だ困難である。
【0007】
従って、その後も所定期間、継続的にマスタータイヤとしての使用を続け、測定データの推移を見ながら異常であるか否かの判定していくしかない、ということがある。
しかしこのようなことをしていると、その間、試験機としての調整にも遅れ、この試験機で測定を行うべきタイヤの製品管理としても滞りを起こす、或いは測定データの信憑性に確信が持てないといった状態が続くということにも成りかねないのである。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、タイヤ用試験機としての精度維持を図り、もってこの試験機によって測定したタイヤの製品性能に関する管理が高い信憑性のもと行えるようにしたタイヤ用試験機の精度維持方法及びタイヤの製品性能測定方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明に係るタイヤ用試験機の精度維持方法は、複数本のマスタータイヤを使用する。
そして、これら複数本のマスタータイヤを継続的に測定し、これらの測定データの経時変化から、試験機の異常を判別し、必要に応じて試験機の精度調整を実施するものである。
【0010】
また、本発明に係るタイヤの製品性能測定方法は、所定のタイヤ用試験機でタイヤの製品性能を測定するのに先立ち、この試験機で複数本のマスタータイヤを模擬測定し、各マスタータイヤに関する個々の測定データの経時比較から試験機異常を判別し、必要に応じて試験機異常を矯正してからタイヤの製品性能測定を実施するものである。
このように、複数本のマスタータイヤを使用すれば、個々のマスタータイヤに対する模擬測定を行った際に、前回の測定データと今回の測定データとの間に顕著な差異が認められた場合(その他、詳細な説明は後述する)において、マスタータイヤ自体に異常があるのか否かを容易に判別することができ、その結果、測定データ差の原因がマスタータイヤ側にあるのか、それとも試験機側にあるのかを容易且つ確実に判別することができる。
【0011】
そのため、試験機側に原因がある場合の点検、修理、調整等を、時期を逸することなく的確に行えることになる。
結果として、タイヤ用試験機としての精度維持を図ることができ、もってこの試験機によって測定したタイヤの製品性能に関する管理が高い信憑性のもと行えるものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1は、タイヤ用試験機1(図例は転がり抵抗試験機としている)に対して本発明に係る精度維持方法を実施している状況を模式的に示している。
この精度維持方法では、複数本のマスタータイヤX,Y,…(図例ではX,Yの2本とした)を使用する。
すなわち、試験機1により、製品とすべきタイヤについてその製品性能試験を実施する場合には、制御基盤の通電及び暖機運転を行ったうえで、まず最初に(製品とすべきタイヤに先だって)、この試験機1に対してマスタータイヤXをセットする。
【0013】
そして、このマスタータイヤXについて代表的な試験モードにて模擬測定をする。
また、このマスタータイヤXに対する模擬測定を一通り終えた後、次に試験機1からマスタータイヤXを外すと共に、代わりにマスタータイヤYをセットする。そして、このマスタータイヤYについて代表的な試験モードにて模擬測定をする。
このようにして複数本のマスタータイヤX,Yに関して模擬測定を行って得た測定データを、個々における過去の測定データ(マスタータイヤXならそれ自体の過去データ、マスタータイヤYならそれ自体の過去データという意味)と比較する。
【0014】
ここにおいて、一般にタイヤには、品質的な変化は数年(10年近く)にわたり極めてゆっくり起こるといった特性がある。
例えば、図2に示すようにタイヤの転がり抵抗に関して言えば、新品時点から数回(4〜5回)の測定では測定データに若干の変化が認められるものの、その後は数年にわたって略一定の測定データが得られることが判っている。
そして、タイヤが寿命末期に近づくと(図2中の矢符E部参照)測定データは徐々に増加傾向を示し、やがては管理範囲を逸脱することになるのである。
【0015】
なお、転がり抵抗に限って付言しておけば、測定データが所定期間にわたって減少傾向を続けるということはないと考えてよい(短期的には減少することもあり得る)。
上記の測定データの比較内容につき、以下、具体例を挙げて説明する。
いま、マスタータイヤXにおける今回の測定データを[Xn]とおき、その1回前に測定した前回測定データを[Xn−1]とおく。
従って、([Xn]−[Xn−1])の値がゼロよりも大きい(プラスの値である)ときには今回の測定データ[Xn]が増加傾向にあることを表し、反対に([Xn]−[Xn−1])の値がゼロよりも小さい(マイナスの値である)ときには今回の測定データ[Xn]が減少傾向にあることを表すことになる。
【0016】
なお、実際の測定では、タイヤの製造バラツキや試験機1の測定誤差をはじめ、試験時の気温や湿度など、各種条件が異なることから、図3に示すように、この([Xn]−[Xn−1])の値に対して増加方向及び減少方向でそれぞれに所定の許容範囲を持たせるものとして、上限RH及び下限RLを設定するものとした。
これからRL≦([Xn−1]−[Xn])≦RHを、マスタータイヤXの管理範囲とおくものとする。
【0017】
従って、模擬測定を行って[Xn]を得るたびに、毎回、([Xn]−[Xn−1])の値を算出し、その値が下限RLに満たないときや上限RHを超えたときに、そのマスタータイヤXは異常タイヤであると判別するということである。
但し、増加傾向や減少傾向が小さいときには、([Xn]−[Xn−1])の値が管理範囲内に入り、その結果、増加傾向無し又は減少傾向無しと判断されたとしても、過去数回前まで遡って測定データの比較をしたときに、明らかな増加傾向又は減少傾向が認められるといった場合もあり得る。
【0018】
そこで、過去適数回分の測定データ(例えば10回分)の平均値[V]を算出し、この平均値(V)を今回の測定データ[Xn]と比較することを行って、これにより得られる結果をも含めてタイヤ側の異常か試験機1側の異常かを判断するのが好ましい。
即ち、RL ≦|([Xn]−[V])|≦RH という制限をも加えるものとする。
これらのことは、マスタータイヤYに関しても同様に定義する。
【0019】
図4は、本発明に係る精度維持方法において、試験機1によりマスタータイヤX,Yの模擬測定を行い、それぞれ([Xn]−[Xn−1])の値、及び([Yn]−[Yn−1])の値を算出した段階以降の代表的な流れ(判定手順)を示したフローチャートである。
なお、この図4中では、図面の煩雑を避けるために([Xn]−[Xn−1])をWxと表記し、また([Yn]−[Yn−1])をWyと表記した。
まず、スタート後、ステップ100においてマスタータイヤXのWx値が管理範囲の上限RH以下であることが判明し、且つステップ101において管理範囲の下限RL以上であることが判明したとき、マスタータイヤXに異常は認められないものと仮判定をする(ステップ102参照)。
【0020】
また、次にステップ103においてマスタータイヤYのWy値が管理範囲の上限RH以下であることが判明し、且つステップ104において管理範囲の下限RL以上であることが判明したとき、マスタータイヤYに異常は認められないものと仮判定をする(ステップ105)。
そこで、これらステップ102,105の総合判定として、ステップ106で、マスタータイヤX,Y及び試験機1の全てに異常は認められないものと結論する。
【0021】
従って、その後引き続き、製品とすべきタイヤについて実際にその製品性能試験を実施するものとすればよい(ステップ107参照)。
しかし、上記ステップ100においてマスタータイヤXのWx値が管理範囲の上限RHを超えていることが判明したとする。
このときにはマスタータイヤXに寿命等を原因とした異常が起こっていることを疑うことができる(ステップ109)。
そこで次に、ステップ110においてマスタータイヤYのWy値が管理範囲の上限RHを超えているか否かの判定を行う。もし、超えていれば、本来ならマスタータイヤYに関しても寿命等を原因とした異常が起こっていることを疑う(ステップ113)ところであるが、これらステップ109,113の総合判定としては、ステップ114で、試験機1に異常が起こっていると結論する。
【0022】
これは両方のマスタータイヤX,Yが、同時に、同方向(この場合は増加方向)へ品質異常を起こすということは考えにくいという事情を根拠とする。
そのため、この結果を踏まえて、試験機1の点検や修理、或いは精度調整を実施する(ステップ115参照)。
なお、ここにおいてマスタータイヤX,Yに異常が起こっているか否かは敢えて結論しないものとすればよい。すなわち、その結論は、試験機1の矯正完了後に、再びマスタータイヤX,Yを用いた模擬測定を行ってから、最終的な結論を下せばよい。
【0023】
ところで、上記ステップ110にてマスタータイヤYのWy値が管理範囲の上限RHを超えていないことが判明したときには、次のステップ111にてマスタータイヤYのWy値が管理範囲の下限RL以上であるか否かの判定に進む。
このステップ111において、もし下限RL以上であることが判明したときには、マスタータイヤYに関しては異常は認められないものと仮判定をする(ステップ116)。
そこでステップ109,116の総合判定として、ステップ117で、マスタータイヤY及び試験機1に異常は認められないものの、マスタータイヤXだけが寿命等を原因とした異常を起こしているものと結論する。
【0024】
従って、マスタータイヤXを新品のものに交換したうえで(ステップ118参照)、更にマスタータイヤX,Yを用いた模擬測定を初めからやり直すようにすればよい。
なお、上記したようにタイヤの転がり抵抗等の場合、タイヤの新品時点から数回(4〜5回)の測定では測定データに若干の増加が認められることがあるので、マスタータイヤXを新品のものと交換してから4〜5回の測定データは採用しないようにするのが好ましい。
【0025】
これとは異なり、上記ステップ111にてマスタータイヤYのWy値が管理範囲の下限RLに満たないことが判明したときには、このマスタータイヤYにもなんらかの異常が起こっているものと仮判定をする(ステップ119参照)。
しかしながら、このときのデータは減少を表しており、短期的に現れるもの(異常とは言えない日常的或いは試験条件的なもの)と推定することもできる。
そこで、この場合にはマスタータイヤYに対する結論は出さずに、暫時的に測定データを監視するといった対策をとることもできる(ステップ120参照)。
【0026】
ただ、マスタータイヤXに対する判定はステップ109でのものを採用できるため、ステップ120からステップ118へと進んでマスタータイヤXの交換を行うようにしてもよい。
また、このとき同時に試験機1の異常を疑う材料としてもよい。
上記ステップ100,101を経てステップ102でマスタータイヤXが異常無しと仮判定されたとき、ステップ103でマスタータイヤYのWy値が管理範囲の上限RHを超えていることが判明したとする。
【0027】
このときにはマスタータイヤYに寿命等を原因とした異常が起こっていることを疑う(ステップ121)。
そのため、ステップ102,121の総合判定として、ステップ122で、マスタータイヤX及び試験機1に異常は認められないものの、マスタータイヤYだけが寿命等を原因とした異常を起こしているものと結論する。
従って、マスタータイヤYを新品のものに交換したうえで(ステップ123参照)、更にマスタータイヤX,Yを用いた模擬測定を初めからやり直すようにすればよい。
【0028】
なお、この場合も、マスタータイヤYを新品のものと交換してから4〜5回の測定データは採用しないようにするのが好ましい。
上記ステップ103でマスタータイヤYのWy値が管理範囲の上限RH以内に収まっていたが、次のステップ104においてWy値が管理範囲の下限RLに満たないことが判明したときには、やはりマスタータイヤYになんらかの異常が起こっていることを疑う(ステップ125参照)。
そこで、上記したステップ120のときと同様に、マスタータイヤYに対し、暫時的に測定データを監視するといった対策をとることが勧められる(ステップ126参照)。
【0029】
また同様に、試験機1の異常を疑うのも一手である。
一方、最初のステップ100においてマスタータイヤXのWx値が管理範囲の上限RH以下に収まっていることが判明したものの、次のステップ101で、このWx値が管理範囲の下限RLに満たないことが判明したとする。
このときには、マスタータイヤXになんらかの異常が起こっていることを疑う(ステップ127参照)。
そのうえで、ステップ128においてマスタータイヤYのWy値が管理範囲の上限RH以上であるか否かの判定に進む。
【0030】
このステップ128において、上限RH以内であることが判明したときには、更に次のステップ129で、マスタータイヤYのWy値が管理範囲の下限RL以上であるか否かの判定に進む。
このステップ129において、下限RL以上であることが判明したときには、マスタータイヤYに関しては異常は認められないものと仮判定をする(ステップ130参照)。
そのため、ステップ127,130の総合判定として、ステップ131で、マスタータイヤYに関しては異常は認められないと結論し、マスタータイヤXにはなんらかの異常が起こっていると疑う程度の結論に留める。
【0031】
そこで、マスタータイヤXを新品のものに交換するか又は交換しないで、このマスタータイヤXに対して暫時的に測定データを監視するといった対策をとればよい。
また、試験機1の異常を疑う材料としてもよい。
上記ステップ128において、もし、マスタータイヤYのWy値が管理範囲の上限RHを超えていることが判明したときには、マスタータイヤYに寿命等を原因とした異常が起こっていることを疑う(ステップ132)。
【0032】
そのため、ステップ127,132の総合判定として、ステップ133で、マスタータイヤYに関しては寿命等を原因とした異常が起こっていると結論し、マスタータイヤXにはなんらかの異常が起こっていると疑う程度の結論に留める。
そこで、まずはマスタータイヤYを新品のものに交換したうえで(ステップ123参照)、マスタータイヤXを新品のものに交換するか又は交換しないで、このマスタータイヤXに対して暫時的に測定データを監視するといった対策をとればよい。
【0033】
また、試験機1の異常を疑う材料としてもよい。
上記ステップ129において、もし、マスタータイヤYのWy値が管理範囲の下限RLに満たないものであることが判明したときには、本来ならマスタータイヤYに関してもなんらかの異常が起こっていることを疑う(ステップ134参照)ところであるが、ステップ127,134の総合判定としては、ステップ114で、試験機1に異常が起こっていると結論する。
これは両方のマスタータイヤX,Yが、同時に、同方向(この場合は減少方向)へ品質異常を起こすということは考えにくいという事情を根拠とする。
【0034】
そのため、この結果を踏まえて、試験機1の点検や修理、或いは精度調整を実施する(ステップ115参照)。
なお、ここにおいても、マスタータイヤX,Yに異常が起こっているか否かは敢えて結論しないものとすればよい。すなわち、その結論は、試験機1の矯正完了後、再びマスタータイヤX,Yを用いた模擬測定を行ってから、最終的な結論を下せばよい。
以上の説明から明らかなように、複数本のマスタータイヤX,Yを使用して模擬測定を実施すれば、これらマスタータイヤX,Y自体に異常があるのか否かを容易に判別することができ、その結果、測定データ差の原因がマスタータイヤX,Y側にあるのか、それとも試験機1側にあるのかを容易且つ確実に判別することができる。
【0035】
殊に、タイヤの転がり抵抗を測定する場合には、ロードセルのキャパシティに対して非常に小さな変化を測定しており、従来、測定データ差の原因がマスタータイヤX,Y側にあるのか、それとも試験機1側にあるのかといった判別が極めて困難とされてきたものの一つであるが、本発明によってこの問題を一気に解消できたことの効果は甚だ大であると言える。
このようなことから、試験機1側に原因があるとされた場合の点検、修理、調整などを、時期を逸することなく的確に行えることになり、結果として、試験機1としての精度維持を図ることができ、もってこの試験機1によって測定したタイヤの製品性能に関する管理が高い信憑性のもと行えるものである。
【0036】
なお、前記した図2で、185サイズのタイヤをマスタータイヤXとおき、175サイズのタイヤをマスタータイヤYとおいて、より具体的な例を示すと次のようになる。
すなわち、マスタータイヤY(175サイズ)では、過去10年間(120ヶ月)にわたる測定データが略一定であり、各タイヤの品質変化が極めてゆっくり起こっていることが明らかであるが、最近3ヶ月(グラフ右端)の測定データを見ると、約3ポイントの急激な挙動(転がり抵抗係数の増加)が認められる。
【0037】
これに対し、マスタータイヤX(185サイズ)では、過去5年近く(約60ヶ月)にわたる測定データが略一定であり、各タイヤの品質変化が極めてゆっくり起こっていることが明らかである。そして、この状態は最近3ヶ月も同様に保たれている。
これらのことから、マスタータイヤXに異常はないが、マスタータイヤYでは寿命を原因とした異常が起こっていると結論付けることができ、この場合、試験機1に異常はないと判定することができるのである。
【0038】
この具体例は、図4のフローチャートで言えば、ステップ100,101,102,103,121,122といった流れに該当する。
また、図2のグラフ中、90ヶ月の時点を観察すると、マスタータイヤX,Yの両方ともが、僅かであるものの急激な挙動(転がり抵抗係数の増加)を起こしていることが認められる。
そこで、この挙動に関してはマスタータイヤX,Yではなく、試験機1側の異常であると判定し、試験機1に対してロードセルの検定を実施し調整したところ、挙動の解消が図れた。
【0039】
この具体例は、図4のフローチャートで言えば、ステップ100,109,110,113,114といった流れに該当する。
ところで、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
例えば、マスタータイヤの使用本数は2本に限定されるものではなく、3本、又はそれ以上としてもよい。
なお、3本のマスタータイヤを使用する場合にあって、これらを模擬測定した結果、もし、1本は増加傾向、1本は減少傾向、他の1本は変化無しといった状況になったときには、再現性の確認をしたり、試験機1の計測システムや制御システム等を点検、精査するなどして総合的に判断する必要がある。
【0040】
マスタータイヤは、それぞれサイズはトレッドパターン、用途などが異なるものであってもよいし、同じものであってもよい。
試験機1は、タイヤの転がり抵抗試験機に限定されるものではない。
【0041】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明に係るタイヤ用試験機の精度維持方法及びタイヤの製品性能測定方法では、タイヤ用試験機としての精度維持を図ることができ、もってこの試験機によって測定したタイヤの製品性能に関する管理が高い信憑性のもと行えるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】タイヤ用試験機に対して本発明に係る精度維持方法を実施している状況を模式的に示した斜視図である。
【図2】タイヤの品質的な経時変化を示したグラフである。
【図3】説明の便宜上からマスタータイヤの管理範囲を仮設定した図である。
【図4】本本発明に係る精度維持方法の代表的流れを説明したフローチャートである。
【符号の説明】
1 試験機
X マスタータイヤ
Y マスタータイヤ
Claims (2)
- 複数本のマスタータイヤ(X,Y)を継続的に測定し、これらの測定データの経時変化から試験機(1)の異常を判別し、必要に応じて試験機(1)の精度調整を実施することを特徴とするタイヤ用試験機の精度維持方法。
- 所定のタイヤ用試験機(1)でタイヤの製品性能を測定するのに先立ち、この試験機(1)で複数本のマスタータイヤ(X,Y)を模擬測定し、各マスタータイヤ(X,Y)に関する個々の測定データの経時比較から試験機(1)の異常を判別し、必要に応じて試験機(1)の異常を矯正してからタイヤの製品性能測定を実施することを特徴とするタイヤの製品性能測定方法。
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