JP2004149998A - 木質炭練込み合成繊維及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】微粉木質炭が分散性良好な状態で練込まれた吸放湿性,ガス脱着性,遠赤保温性などに優れた合成繊維を容易に得る。
【解決手段】平均粒径が30μ以下の木質炭30重量%以下と分散向上剤10重量%以下を合成ポリマー中に混合分散させ、分散性良好な木質炭練込み繊維を得る。
特に木質炭では効果の大きい嵩比重が1.0以下で炭素純分が75%以上の木炭が好ましく、合成繊維では汎用でリサイクル可能なポリエステル繊維が望ましい。また木質炭の分散性を更に高める為には、一度木質炭と分散向上剤を合成ポリマーに多量溶融混練したマスターバッチを作成し、それを再度合成ポリマーに添加混合し溶融混練する方法が好ましい。
【解決手段】平均粒径が30μ以下の木質炭30重量%以下と分散向上剤10重量%以下を合成ポリマー中に混合分散させ、分散性良好な木質炭練込み繊維を得る。
特に木質炭では効果の大きい嵩比重が1.0以下で炭素純分が75%以上の木炭が好ましく、合成繊維では汎用でリサイクル可能なポリエステル繊維が望ましい。また木質炭の分散性を更に高める為には、一度木質炭と分散向上剤を合成ポリマーに多量溶融混練したマスターバッチを作成し、それを再度合成ポリマーに添加混合し溶融混練する方法が好ましい。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、木質炭練込み合成繊維及びその製造方法に関し、吸放湿性,ガス吸着性,遠赤保温性等を有する木質炭が、良好に分散され練込まれた合成繊維を容易に得ようとするものである。
【0002】
【従来の技術】
木質炭は、多孔質でガスや蒸気を吸着し且つ遠赤外線を放射する事が知られており、繊維や繊維製品に付着又は練込む為のいろいろな試みがなされてきた。
例えば、特開平10−292268号公報,特開平11−229219号公報,特開2000−27071号公報,特開2001−18312号公報などにみられる如く、木質炭を粉砕してバインダーと共に繊維製品に付着させる方法が開示されている。 しかしこれらの方法では、木質炭が脱落したり繊維製品の風合いが硬くなる問題があった。
一方、実用新案第3079956号公報には備長炭を練り込んだポリエステル繊維が示されているが、本発明の如く分散向上剤の記載がなく、備長炭の凝集により紡糸・延伸時の糸切れや備長炭の効能低下が起こり易かった。
また、特開2001−262431号公報には木炭練込みレイヨンが記載されているが、これはビスコース溶液に木炭を添加する為良好な分散性が得られるが、本発明の如き合成繊維では分散性向上が必要で前記の公知技術では容易に達成出来なかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ガス吸着性や遠赤保温性などを有する微粉木質炭を分散性良好な状態で合成繊維に練込み、高機能性繊維を容易に製造しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、平均粒径が30μ以下の木質炭30重量%以下と分散性向上剤10重量%以下を合成ポリマー中に混合分散させ、常法により紡糸・延伸を施す事により、分散性に優れた木質炭練込み合成繊維を得るに至ったものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明に言う合成繊維とは、ポリエステル系繊維,ポリアミド系繊維,ポリビニルアルコール系繊維,ポリアクリロニトリル系繊維,ポリスチレン系繊維,ポリ塩化ビニル系繊維,ポリプロピレン系繊維,ポリエチレン系繊維,ポリウレタン系繊維などを意味する。
特に汎用繊維として使用されているポリエステル系繊維、さらにその中でも環境に優しい再生ポリエステル系繊維が好ましい。
【0006】
一方木質炭としては、赤松,ナラ,クヌギ等から得られる木炭、あるいはカシから得られる備長炭、さらには竹炭や産廃材料炭などガス吸着性,吸放湿性,脱臭性,帯電防止性,イオン交換機能,遠赤外線放射性など木質炭が有する各種の機能を発揮出来るものであれば、原材料や製造方法などは特に限定されない。
【0007】
木質炭の製造方法としては、例えば木炭は本件出願人が特開2001−262431号に記載している技術が応用出来る。
具体的には、木炭の原料として赤松などの針葉樹を用い、木材を細かく裁断して最大径が10〜60mm程度の木材チップを450〜550℃で熱処理して炭化させる低温炭化工程と、それに続いて木材チップの炭化物を800〜900℃,480〜960秒で熱処理して更に炭化する高温炭化工程と、高温炭化工程の終了時点で炭化物に水を接触させる活性化工程を行う。
上記工程で得られる活性化木炭は、炭素純度が高く内部に多数の微細孔を有する多孔質構造であり、物理的及び化学的な作用で高い吸着性能を示す。特に低温炭化物と高温炭化物が混在する事で、両者の優れた機能が相乗的に発揮されて実用的に高い機能を有するものとなる。
【0008】
備長炭に代表される白炭の製造方法としては、主にうばめ樫を原料として1000℃前後で熱処理をし、さらに空気に接触させながら1000℃以上で熱処理した後、焼却灰で空気との接触を遮断して消火して得られる。
竹炭の製造方法は、出来るだけ無機化して純度を高める為に精錬温度を1000℃以上で白炭に焼く備長炭製法が好ましい。従って竹炭は、1000℃前後の熱処理と空気接触下で1000℃以上の熱処理をした後、焼却灰で消火して得られる。
【0009】
一方、これらの木質炭の中では特に嵩比重が1.0以下で炭素純度が75%以上のものが本発明の効果を十分に発揮出来るので好ましい。特に嵩比重が0.9以下で炭素純度が80%以上が好ましい。
嵩比重が1.0を超えると、多孔質構造が阻害され表面積が小さくなり本発明の効果が減少するので好ましくない。
また炭素純度が75%未満では灰分や揮発分などの不純物が多く残っており、炭素本来が持っている物理的,化学的な機能を低下させて好ましくない。
【0010】
なお、目的に合わせて難燃性,防ダニ性,抗菌性,マイナスイオン性,帯電防止性,染色性などの機能性を付与する薬剤や顔料,紫外線吸収剤,酸化防止剤などを該ポリマーに添加しても何ら支障ない。
【0011】
本発明では繊維に練込むため、これらの木質炭を微細な粉体にして使用するが、粉砕方法としては例えば旋回式渦流粉砕装置など通常の粉砕装置及び粉砕条件が適用出来る。
木質炭の平均粒径は30μ以下、好ましくは10μ以下、更に好ましくは5μ以下である。
平均粒径が30μを超えたり最大粒径が100μを超えると、紡糸時のフィルター詰まりや糸切れ等で繊維製造が困難となり、更に粒径が大きい為に表面積が少なくなり木質炭の効果が減少する。
【0012】
また、該木質炭の練込む量は30重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは2〜10重量%である。
木質炭が30重量%を超えると、凝集やポリマーの粘度低下などで繊維製造が困難となり、1重量%未満では木質炭の機能性を十分に発揮出来なくなり好ましくない。
【0013】
更に本発明では、分散向上剤を用いて合成繊維中に該木質炭を出来る限り均一に分散させる必要がある。
分散向上剤としては、200℃以上好ましくは250℃以上の耐熱性があり、且つ合成ポリマーと木質炭の相溶性を助長させたり、ポリマーの流動性を促進するものである。
例えば、ビスフェノールSやビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物,モンタン酸グリセリンエステル,モンタン酸カルシュウム系ワックス,ポリエステルワックス,リン酸エステル,フタール酸エステル,クエン酸エステル,マレイン酸エステル,ステアリン酸カルシュウムなどが挙げられる。
なお、ポリマーや木質炭の種類によって該分散剤は選択され、2種類以上の分散剤を用いても何ら支障ない。
【0014】
該分散向上剤の添加量は、合成繊維中に10重量%以下好ましくは5重量%以下、更に好ましくは0.1〜3重量%である。
10重量%を超えると、紡糸・延伸が困難になったり繊維の強伸度などの物性が低下し、更にコスト高となる問題が生じて来る。
一方0.05重量%未満では、分散性が低下して紡糸・延伸での糸切れが起こりやすく且つ木質炭の効果が減少して好ましくない。
【0015】
次いで、前記木質炭及び分散向上剤を合成ポリマーと混合して、該ポリマーの溶融液又は溶剤溶液の中に分散させる。
この場合、予め該木質炭や分散向上剤を多量に練込んだポリマーのマスターペレットを作成し、該マスターペレットを合成ポリマーペレットに添加して練込む方法が、2回の練込み(混合分散)工程を通す為木質炭の均一分散繊維が得やすいので好ましい。
マスターペレットを作成する場合、そのベースポリマーは繊維を形成するポリマーと同種又は異種のいずれでも良いが、相溶性の点で同種ポリマーが望ましい。
また、木質炭と分散剤は別々に又は伺時に添加混合しても良いが、均一分散化と工程簡素化の点で同時に混合したマスターペレットを作成するのが好ましい。なおマスターペレット中の木質炭と分散剤の含有量は、出来るだけ多い方がその後の合成ポリマーへの添加が少なく望ましいが、繊維化工程でのトラブルを考慮して少なくとも100メッシュ以上、好ましくは200メッシュ以上の金網フィルターを通過する含有量が良く、一般には木質炭10〜50重量%,分散剤5〜30重量%が考えられる。
【0016】
引き続き、熱又は溶剤で溶解された合成ポリマーは、該木質炭及び分散向上剤を練込み分散した状態で、通常の溶融紡糸,乾式紡糸,湿式紡糸,乾湿式紡糸などの方法でノズルより吐出される。
なお紡糸工程では、ポリマーフィルターやノズルフィルターを設けて木質炭や分散剤の凝集物を除去し紡糸を容易にさせる。
凝集物が多いと、フィルター圧上昇により寿命が短くなったり、あるいはフィルターを通過した凝集物が糸切れを起こしたり、さらには木質炭の効果が減少する恐れがあり、如何に凝集物を少なくして木質炭の分散性を向上させるかが重要なポイントになる。
【0017】
次いで、得られた紡糸原糸を延伸して分子の配向結晶化を進め、強伸度などの瀬に物性や寸法安定性を向上させる。
更に必要に応じて、短繊維(ステープル)では捲縮・乾燥・カット・梱包の工程を、長繊維(フィラメント)では捲縮・絡合・巻取の工程を通して出荷される。
【0018】
本発明により得られる木質炭の分散良好な合成繊維は、他の繊維と混合しても何ら問題なく、木質炭の特徴である吸放湿性,ガス吸収性,消臭性,帯電防止性,遠赤保温性などの機能性を発揮し、織物,編物,不織布,詰め綿として衣料用,産業資材用,寝装,インテリア,医療,建材,雑貨など幅広く活用されるものである。
【0019】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はその主旨を超えない限りこれらの例に何ら制約されるものではない。
本実施例に記載される繊維の物性は以下の方法により測定されたものである。
【0020】
1)木質炭の平均粒径(μ)
微粉末化した木質炭をレザーマイクロサイザー(投影式測定機)にかけて、粒径を測定しその平均値を求めた。
【0021】
2)木質炭の嵩比重(g/cm3)
微粉砕する直前の木質炭を100℃x2時間絶乾したあと、100cm3の容器に満杯に詰めてその時の内容物重量(g)を測定して嵩比重を求め、n=3の平均値を採用した。
【0022】
3)木質炭の炭素純分(%)
蛍光X線分析機を用いて、含有成分を測定し炭素成分量を求め、n=3の平均値を採用した。
【0023】
4)繊度(dtex)
フィラメントの場合は、10000m長の重量を測定してn=5の平均値を求めた。ステープルの場合は、デニールコンピューターによりデニール値を測定してそれに係数1.11を乗じてデシテックス(dtex)を算出しn=5の平均値を求めた。
【0024】
5)引張強伸度(cN/dtex,%)
フィラメントの場合は、JISL−1013に準じて試料長20cm,引張速度100%/分でキャプスタンキャップ付きオートグラフにて切断時の強力(cN)と伸びを10回測定し、強度(cN/dtex)は前記測定試料の繊度で除して、それぞれの平均値を求めた。
ステープルの場合は、JISL−1015に準じて試料長3cm,引張速度100%/分でインストロンにて切断時の強力と伸びを10回測定し、強度は繊度で除してそれぞれの平均値を求めた。
【0025】
6)吸放湿性
試料を105℃で2時間絶乾して重量W0を測定した後、20℃x65%RHの環境に24時間維持して試料重量W1を測定し、(W1−W0)/W0x100の式より吸湿率(%)を算出した。
次に試料を20℃x40%RHの環境に24時間保持した後の重量W2を測定し、(W1−W2)/W0x100の式より放湿率(%)を算出した。
【0026】
7)ガス吸着性
ガラス製容器(11.4L)に試料3gを入れ、試験ガスを注入して容器内の環境を初期濃度に設定した。次いで容器内の環境を2時間攪拌した後、容器内の残留ガス濃度を北川式ガス検知器を用いて測定した。
【0027】
8)ガス離脱性
試験ガスを所定濃度注入した20℃±5℃の試験環境に、試料1gを入れて10時間放置したあと、試料を試験環境から取り出し20℃x65%RHで14時間放置した。この操作を2回繰り返し、試験前後の重量変化から試料に残留する試験ガスの割合(%)を求めた。
【0028】
9)遠赤保温性
木質炭練込み繊維の不織布または布帛を10cmx10cmに切り、対照に木質炭未添加で同一目付及びサイズの不織布または布帛を横に並べて置き、1m離れた上から500Wの白色電球2コを点灯して1分間照射した後、該電球を消灯して直後,3秒後,13秒後のサーモグラフィを撮って両者の平均温度を求め、遠赤放射性と保温性を評価した。
【0029】
実施例1及び比較例1
使用済みPETボトルを粉砕・洗浄・乾燥して得られたフレークを260〜280℃で溶融押出して再生ポリエステルペレットを作成した。
一方、赤松材をチップにして500℃x140時間で炭化させ、更に酸素を与えて850℃x40分で炭化を終了させた後、水をかけて嵩比重が0.2g/cm3、炭素純分が95%の活性化木炭を得た。
該活性化木炭を旋回禍流式粉砕装置にて平均粒径0.5μ,最大粒径2.5μの微粉末にした後、前記再生ポリエステルペレットに該木炭粉50重量%とビスフェノールSEO2モル%付加物の分散向上剤10重量%を添加して、280℃のバンバリーミキサーにて混練し200メッシュのフィルターを通してマスターバッチを作成した。
得られたマスターバッチを前記再生ポリエルテルペレットに10重量%添加して、260−270−275−280℃の4セクションからなる単軸押出機にて溶融混練し200メッシュのフィルターを通して600ホールのノズル8個を並べて650m/分の速度で紡糸した。
その時紡糸油剤を付与し、得られた約15万dtexのトウを28本合わせて78−85℃の水浴2段で合計4.2倍延伸し、続けてクリンパー(捲縮機)で13ケ/inの捲縮を施した後、140℃の熱風で乾燥しカットして6dtexx64mmのステープルを生産した。
なお、紡糸時のフィルター圧の上昇やノズル詰まりによる単糸切れはほとんどなく、その後の延伸・捲縮でも問題なく工程通過性の良好なものであった。
得られた再生ポリエステル綿は、5重量%の木炭がほぼ均一に分散されて黒色を有し、単繊維強度は3.2cN/dtex,伸度は63%を示し、通常のポリエステル繊維と遜色ないものであった。
次いで、該木炭練込み綿をカードに通してニードルパンチ方式にて目付150g/m2,厚さ5mmの不織布を作成した。
一方比較例1として、該木炭練込みマスターバッチを添加せずに実施例1と同様にポリエステル綿及び不織布を作成し、表1に両者の不織布特性を記載した。実施例1は、対照の比較例1に比べて65%RHの吸湿率が0.13%大きく且つ放湿は対照より多く、吸放湿性に優れる事が判った。
また、酢酸,アンモニア,硫化水素のガス脱着性においても、実施例1は比較例1より吸着と離脱が大きく良好であった。
さらに遠赤保温性においても、実施例1は比較例1よりランプ照射時の表面温度が高く、遠赤外線を多く出しており、ランプ消灯後も保温性を持続していた。
【0030】
実施例2
あか樫材のチップを1000℃x48時間で炭化させ嵩比重が0.8g/cm3,炭素純度が95%の備長炭を得たあと、粉砕して平均粒径が2.8μの備長炭粉末を得た。
該備長炭及び分散向上剤のポリエステルワックスを実施例1で用いた再生ポリエステルペレットにそれぞれ40重量%及び8重量%添加混合して、280℃のバンバリーミキサーで溶融混練し300メッシュでフィルターしてマスターバッチを作成した。
次いで、前記再生ポリエステルペレットに該マスターバッチを8重量%添加混合して270〜290℃の押出機で溶融混練し、300メッシュのフィルターを通して408ホールのノズルで紡糸した。
続けて80−150℃の2対のローラ間で4倍延伸し、210℃のクリンパーにて1600dtex/408fのバルキーヤーンを得た。
紡糸・延伸工程での糸切れは、3日間で2回と十分に生産出来るものであり、300メッシュのフィルター圧上昇もわずかであった。
これより、3.2重量%含有の備長炭は凝集がほとんどなく繊維中に分散されていると推察される。
得られたバルキーヤーンの強度は2.8cN/dtex、伸度は27%と実用に十分耐えられるもので、これを用いて編み地を作成し備長炭の効果を評価した。
吸湿率は0.40%,放湿率は0.19%と吸放湿性が良好であった。また、アンモニアガス吸着性は、初期濃度60ppmが33ppmに減少して吸着し易く、離脱性も初期濃度400ppmで残留率0.5%を示しガス脱着性にも優れていた。
遠赤保温性は、1分間ランプ照射して消灯直後で平均温度が32.5℃と備長炭未添加の対照編み地より1.3℃高く且つ8秒後でも0.8℃の差があり、明らかに良好で備長炭の効果が十分発揮されていた。
【0031】
実施例3
竹炭をチップにして700℃x48時間で炭化させ嵩比重0.5g/cm3,炭素純度60%の竹炭を得た後、粉砕して平均粒径5.1μの粉末を得た。
その後、該竹炭粉末とモンタン酸グリセリンエステルの分散向上剤をナイロン6ペレットに各々30重量%と2重量%を添加し、2軸押出機で溶融混練して250メッシュのフィルターを通してマスターバッチを作成した。
次いで、該マスターバッチをナイロン6ペレットに20重量%添加し、210〜260℃の単軸押出機で溶融混練して300メッシュのフィルターで24ホールのノズルから吐出して紡糸速度1000m/分で紡糸した。
得られた紡糸原糸をインドロー方式の仮撚加工機で3.8倍延伸し、竹炭が6重量%練り込まれた167dtex/24fの加工糸を作成し、タテ糸に40番手の木綿を使いヨコ糸に該竹炭入り加工糸を用いて1/1の平織物を得た。
紡糸・延伸・仮撚の各工程でのトラブルはほとんどなく、加工糸の強度は2.5cN/dtex、伸度は58%と製織に十分耐えられるものであった。
対照として、竹炭未添加のナイロン加工糸をヨコ糸に用いて実施例3と同様の織物を作成し、該竹炭入り織物と比較評価した。
該竹炭入り織物は、対照に比べて吸湿率が1.2%多く、且つアンモニアガス吸着性も、初期濃度100ppmで残留が41ppm対照の57ppmより少なく吸着され易い事が判った。
更に、遠赤保温性も対照より直後で1.5℃,8秒後で0.9℃高く、竹炭の効果がみられた。
この織物は枕,布団などのカバーやシーツ等健康商品として価値あるものであった。
【0032】
比較例2
実施例2において、該分散向上剤を添加しないで実施したが、マスターバッチを作成する時に300メッシュのフィルターに備長炭の凝集物が体積し易く、紡糸時もフィルター圧の上昇が速く且つ延伸・捲縮時の単糸切れが多発した。
得られたバルキーヤーンには備長炭の凝集物があり、吸放湿性,ガス吸収性,遠赤保温性いずれも実施例2よりも劣っていた。
【0033】
【発明の効果】本発明により、吸放湿性,ガス脱着性,遠赤保温性などを有する微粉木質炭が分散性良好な状態で練込まれた高機能性の合成繊維が容易に得られる。
合成繊維の中では、特に大量生産されリサイクルも可能なポリエステル系繊維が好ましく、該木質炭入り合成繊維は、織物,編物,不織布,詰め綿として衣料,産業資材,寝装,インテリア,医療,建材,雑貨など幅広く活用されるものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、木質炭練込み合成繊維及びその製造方法に関し、吸放湿性,ガス吸着性,遠赤保温性等を有する木質炭が、良好に分散され練込まれた合成繊維を容易に得ようとするものである。
【0002】
【従来の技術】
木質炭は、多孔質でガスや蒸気を吸着し且つ遠赤外線を放射する事が知られており、繊維や繊維製品に付着又は練込む為のいろいろな試みがなされてきた。
例えば、特開平10−292268号公報,特開平11−229219号公報,特開2000−27071号公報,特開2001−18312号公報などにみられる如く、木質炭を粉砕してバインダーと共に繊維製品に付着させる方法が開示されている。 しかしこれらの方法では、木質炭が脱落したり繊維製品の風合いが硬くなる問題があった。
一方、実用新案第3079956号公報には備長炭を練り込んだポリエステル繊維が示されているが、本発明の如く分散向上剤の記載がなく、備長炭の凝集により紡糸・延伸時の糸切れや備長炭の効能低下が起こり易かった。
また、特開2001−262431号公報には木炭練込みレイヨンが記載されているが、これはビスコース溶液に木炭を添加する為良好な分散性が得られるが、本発明の如き合成繊維では分散性向上が必要で前記の公知技術では容易に達成出来なかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ガス吸着性や遠赤保温性などを有する微粉木質炭を分散性良好な状態で合成繊維に練込み、高機能性繊維を容易に製造しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、平均粒径が30μ以下の木質炭30重量%以下と分散性向上剤10重量%以下を合成ポリマー中に混合分散させ、常法により紡糸・延伸を施す事により、分散性に優れた木質炭練込み合成繊維を得るに至ったものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明に言う合成繊維とは、ポリエステル系繊維,ポリアミド系繊維,ポリビニルアルコール系繊維,ポリアクリロニトリル系繊維,ポリスチレン系繊維,ポリ塩化ビニル系繊維,ポリプロピレン系繊維,ポリエチレン系繊維,ポリウレタン系繊維などを意味する。
特に汎用繊維として使用されているポリエステル系繊維、さらにその中でも環境に優しい再生ポリエステル系繊維が好ましい。
【0006】
一方木質炭としては、赤松,ナラ,クヌギ等から得られる木炭、あるいはカシから得られる備長炭、さらには竹炭や産廃材料炭などガス吸着性,吸放湿性,脱臭性,帯電防止性,イオン交換機能,遠赤外線放射性など木質炭が有する各種の機能を発揮出来るものであれば、原材料や製造方法などは特に限定されない。
【0007】
木質炭の製造方法としては、例えば木炭は本件出願人が特開2001−262431号に記載している技術が応用出来る。
具体的には、木炭の原料として赤松などの針葉樹を用い、木材を細かく裁断して最大径が10〜60mm程度の木材チップを450〜550℃で熱処理して炭化させる低温炭化工程と、それに続いて木材チップの炭化物を800〜900℃,480〜960秒で熱処理して更に炭化する高温炭化工程と、高温炭化工程の終了時点で炭化物に水を接触させる活性化工程を行う。
上記工程で得られる活性化木炭は、炭素純度が高く内部に多数の微細孔を有する多孔質構造であり、物理的及び化学的な作用で高い吸着性能を示す。特に低温炭化物と高温炭化物が混在する事で、両者の優れた機能が相乗的に発揮されて実用的に高い機能を有するものとなる。
【0008】
備長炭に代表される白炭の製造方法としては、主にうばめ樫を原料として1000℃前後で熱処理をし、さらに空気に接触させながら1000℃以上で熱処理した後、焼却灰で空気との接触を遮断して消火して得られる。
竹炭の製造方法は、出来るだけ無機化して純度を高める為に精錬温度を1000℃以上で白炭に焼く備長炭製法が好ましい。従って竹炭は、1000℃前後の熱処理と空気接触下で1000℃以上の熱処理をした後、焼却灰で消火して得られる。
【0009】
一方、これらの木質炭の中では特に嵩比重が1.0以下で炭素純度が75%以上のものが本発明の効果を十分に発揮出来るので好ましい。特に嵩比重が0.9以下で炭素純度が80%以上が好ましい。
嵩比重が1.0を超えると、多孔質構造が阻害され表面積が小さくなり本発明の効果が減少するので好ましくない。
また炭素純度が75%未満では灰分や揮発分などの不純物が多く残っており、炭素本来が持っている物理的,化学的な機能を低下させて好ましくない。
【0010】
なお、目的に合わせて難燃性,防ダニ性,抗菌性,マイナスイオン性,帯電防止性,染色性などの機能性を付与する薬剤や顔料,紫外線吸収剤,酸化防止剤などを該ポリマーに添加しても何ら支障ない。
【0011】
本発明では繊維に練込むため、これらの木質炭を微細な粉体にして使用するが、粉砕方法としては例えば旋回式渦流粉砕装置など通常の粉砕装置及び粉砕条件が適用出来る。
木質炭の平均粒径は30μ以下、好ましくは10μ以下、更に好ましくは5μ以下である。
平均粒径が30μを超えたり最大粒径が100μを超えると、紡糸時のフィルター詰まりや糸切れ等で繊維製造が困難となり、更に粒径が大きい為に表面積が少なくなり木質炭の効果が減少する。
【0012】
また、該木質炭の練込む量は30重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは2〜10重量%である。
木質炭が30重量%を超えると、凝集やポリマーの粘度低下などで繊維製造が困難となり、1重量%未満では木質炭の機能性を十分に発揮出来なくなり好ましくない。
【0013】
更に本発明では、分散向上剤を用いて合成繊維中に該木質炭を出来る限り均一に分散させる必要がある。
分散向上剤としては、200℃以上好ましくは250℃以上の耐熱性があり、且つ合成ポリマーと木質炭の相溶性を助長させたり、ポリマーの流動性を促進するものである。
例えば、ビスフェノールSやビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物,モンタン酸グリセリンエステル,モンタン酸カルシュウム系ワックス,ポリエステルワックス,リン酸エステル,フタール酸エステル,クエン酸エステル,マレイン酸エステル,ステアリン酸カルシュウムなどが挙げられる。
なお、ポリマーや木質炭の種類によって該分散剤は選択され、2種類以上の分散剤を用いても何ら支障ない。
【0014】
該分散向上剤の添加量は、合成繊維中に10重量%以下好ましくは5重量%以下、更に好ましくは0.1〜3重量%である。
10重量%を超えると、紡糸・延伸が困難になったり繊維の強伸度などの物性が低下し、更にコスト高となる問題が生じて来る。
一方0.05重量%未満では、分散性が低下して紡糸・延伸での糸切れが起こりやすく且つ木質炭の効果が減少して好ましくない。
【0015】
次いで、前記木質炭及び分散向上剤を合成ポリマーと混合して、該ポリマーの溶融液又は溶剤溶液の中に分散させる。
この場合、予め該木質炭や分散向上剤を多量に練込んだポリマーのマスターペレットを作成し、該マスターペレットを合成ポリマーペレットに添加して練込む方法が、2回の練込み(混合分散)工程を通す為木質炭の均一分散繊維が得やすいので好ましい。
マスターペレットを作成する場合、そのベースポリマーは繊維を形成するポリマーと同種又は異種のいずれでも良いが、相溶性の点で同種ポリマーが望ましい。
また、木質炭と分散剤は別々に又は伺時に添加混合しても良いが、均一分散化と工程簡素化の点で同時に混合したマスターペレットを作成するのが好ましい。なおマスターペレット中の木質炭と分散剤の含有量は、出来るだけ多い方がその後の合成ポリマーへの添加が少なく望ましいが、繊維化工程でのトラブルを考慮して少なくとも100メッシュ以上、好ましくは200メッシュ以上の金網フィルターを通過する含有量が良く、一般には木質炭10〜50重量%,分散剤5〜30重量%が考えられる。
【0016】
引き続き、熱又は溶剤で溶解された合成ポリマーは、該木質炭及び分散向上剤を練込み分散した状態で、通常の溶融紡糸,乾式紡糸,湿式紡糸,乾湿式紡糸などの方法でノズルより吐出される。
なお紡糸工程では、ポリマーフィルターやノズルフィルターを設けて木質炭や分散剤の凝集物を除去し紡糸を容易にさせる。
凝集物が多いと、フィルター圧上昇により寿命が短くなったり、あるいはフィルターを通過した凝集物が糸切れを起こしたり、さらには木質炭の効果が減少する恐れがあり、如何に凝集物を少なくして木質炭の分散性を向上させるかが重要なポイントになる。
【0017】
次いで、得られた紡糸原糸を延伸して分子の配向結晶化を進め、強伸度などの瀬に物性や寸法安定性を向上させる。
更に必要に応じて、短繊維(ステープル)では捲縮・乾燥・カット・梱包の工程を、長繊維(フィラメント)では捲縮・絡合・巻取の工程を通して出荷される。
【0018】
本発明により得られる木質炭の分散良好な合成繊維は、他の繊維と混合しても何ら問題なく、木質炭の特徴である吸放湿性,ガス吸収性,消臭性,帯電防止性,遠赤保温性などの機能性を発揮し、織物,編物,不織布,詰め綿として衣料用,産業資材用,寝装,インテリア,医療,建材,雑貨など幅広く活用されるものである。
【0019】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はその主旨を超えない限りこれらの例に何ら制約されるものではない。
本実施例に記載される繊維の物性は以下の方法により測定されたものである。
【0020】
1)木質炭の平均粒径(μ)
微粉末化した木質炭をレザーマイクロサイザー(投影式測定機)にかけて、粒径を測定しその平均値を求めた。
【0021】
2)木質炭の嵩比重(g/cm3)
微粉砕する直前の木質炭を100℃x2時間絶乾したあと、100cm3の容器に満杯に詰めてその時の内容物重量(g)を測定して嵩比重を求め、n=3の平均値を採用した。
【0022】
3)木質炭の炭素純分(%)
蛍光X線分析機を用いて、含有成分を測定し炭素成分量を求め、n=3の平均値を採用した。
【0023】
4)繊度(dtex)
フィラメントの場合は、10000m長の重量を測定してn=5の平均値を求めた。ステープルの場合は、デニールコンピューターによりデニール値を測定してそれに係数1.11を乗じてデシテックス(dtex)を算出しn=5の平均値を求めた。
【0024】
5)引張強伸度(cN/dtex,%)
フィラメントの場合は、JISL−1013に準じて試料長20cm,引張速度100%/分でキャプスタンキャップ付きオートグラフにて切断時の強力(cN)と伸びを10回測定し、強度(cN/dtex)は前記測定試料の繊度で除して、それぞれの平均値を求めた。
ステープルの場合は、JISL−1015に準じて試料長3cm,引張速度100%/分でインストロンにて切断時の強力と伸びを10回測定し、強度は繊度で除してそれぞれの平均値を求めた。
【0025】
6)吸放湿性
試料を105℃で2時間絶乾して重量W0を測定した後、20℃x65%RHの環境に24時間維持して試料重量W1を測定し、(W1−W0)/W0x100の式より吸湿率(%)を算出した。
次に試料を20℃x40%RHの環境に24時間保持した後の重量W2を測定し、(W1−W2)/W0x100の式より放湿率(%)を算出した。
【0026】
7)ガス吸着性
ガラス製容器(11.4L)に試料3gを入れ、試験ガスを注入して容器内の環境を初期濃度に設定した。次いで容器内の環境を2時間攪拌した後、容器内の残留ガス濃度を北川式ガス検知器を用いて測定した。
【0027】
8)ガス離脱性
試験ガスを所定濃度注入した20℃±5℃の試験環境に、試料1gを入れて10時間放置したあと、試料を試験環境から取り出し20℃x65%RHで14時間放置した。この操作を2回繰り返し、試験前後の重量変化から試料に残留する試験ガスの割合(%)を求めた。
【0028】
9)遠赤保温性
木質炭練込み繊維の不織布または布帛を10cmx10cmに切り、対照に木質炭未添加で同一目付及びサイズの不織布または布帛を横に並べて置き、1m離れた上から500Wの白色電球2コを点灯して1分間照射した後、該電球を消灯して直後,3秒後,13秒後のサーモグラフィを撮って両者の平均温度を求め、遠赤放射性と保温性を評価した。
【0029】
実施例1及び比較例1
使用済みPETボトルを粉砕・洗浄・乾燥して得られたフレークを260〜280℃で溶融押出して再生ポリエステルペレットを作成した。
一方、赤松材をチップにして500℃x140時間で炭化させ、更に酸素を与えて850℃x40分で炭化を終了させた後、水をかけて嵩比重が0.2g/cm3、炭素純分が95%の活性化木炭を得た。
該活性化木炭を旋回禍流式粉砕装置にて平均粒径0.5μ,最大粒径2.5μの微粉末にした後、前記再生ポリエステルペレットに該木炭粉50重量%とビスフェノールSEO2モル%付加物の分散向上剤10重量%を添加して、280℃のバンバリーミキサーにて混練し200メッシュのフィルターを通してマスターバッチを作成した。
得られたマスターバッチを前記再生ポリエルテルペレットに10重量%添加して、260−270−275−280℃の4セクションからなる単軸押出機にて溶融混練し200メッシュのフィルターを通して600ホールのノズル8個を並べて650m/分の速度で紡糸した。
その時紡糸油剤を付与し、得られた約15万dtexのトウを28本合わせて78−85℃の水浴2段で合計4.2倍延伸し、続けてクリンパー(捲縮機)で13ケ/inの捲縮を施した後、140℃の熱風で乾燥しカットして6dtexx64mmのステープルを生産した。
なお、紡糸時のフィルター圧の上昇やノズル詰まりによる単糸切れはほとんどなく、その後の延伸・捲縮でも問題なく工程通過性の良好なものであった。
得られた再生ポリエステル綿は、5重量%の木炭がほぼ均一に分散されて黒色を有し、単繊維強度は3.2cN/dtex,伸度は63%を示し、通常のポリエステル繊維と遜色ないものであった。
次いで、該木炭練込み綿をカードに通してニードルパンチ方式にて目付150g/m2,厚さ5mmの不織布を作成した。
一方比較例1として、該木炭練込みマスターバッチを添加せずに実施例1と同様にポリエステル綿及び不織布を作成し、表1に両者の不織布特性を記載した。実施例1は、対照の比較例1に比べて65%RHの吸湿率が0.13%大きく且つ放湿は対照より多く、吸放湿性に優れる事が判った。
また、酢酸,アンモニア,硫化水素のガス脱着性においても、実施例1は比較例1より吸着と離脱が大きく良好であった。
さらに遠赤保温性においても、実施例1は比較例1よりランプ照射時の表面温度が高く、遠赤外線を多く出しており、ランプ消灯後も保温性を持続していた。
【0030】
実施例2
あか樫材のチップを1000℃x48時間で炭化させ嵩比重が0.8g/cm3,炭素純度が95%の備長炭を得たあと、粉砕して平均粒径が2.8μの備長炭粉末を得た。
該備長炭及び分散向上剤のポリエステルワックスを実施例1で用いた再生ポリエステルペレットにそれぞれ40重量%及び8重量%添加混合して、280℃のバンバリーミキサーで溶融混練し300メッシュでフィルターしてマスターバッチを作成した。
次いで、前記再生ポリエステルペレットに該マスターバッチを8重量%添加混合して270〜290℃の押出機で溶融混練し、300メッシュのフィルターを通して408ホールのノズルで紡糸した。
続けて80−150℃の2対のローラ間で4倍延伸し、210℃のクリンパーにて1600dtex/408fのバルキーヤーンを得た。
紡糸・延伸工程での糸切れは、3日間で2回と十分に生産出来るものであり、300メッシュのフィルター圧上昇もわずかであった。
これより、3.2重量%含有の備長炭は凝集がほとんどなく繊維中に分散されていると推察される。
得られたバルキーヤーンの強度は2.8cN/dtex、伸度は27%と実用に十分耐えられるもので、これを用いて編み地を作成し備長炭の効果を評価した。
吸湿率は0.40%,放湿率は0.19%と吸放湿性が良好であった。また、アンモニアガス吸着性は、初期濃度60ppmが33ppmに減少して吸着し易く、離脱性も初期濃度400ppmで残留率0.5%を示しガス脱着性にも優れていた。
遠赤保温性は、1分間ランプ照射して消灯直後で平均温度が32.5℃と備長炭未添加の対照編み地より1.3℃高く且つ8秒後でも0.8℃の差があり、明らかに良好で備長炭の効果が十分発揮されていた。
【0031】
実施例3
竹炭をチップにして700℃x48時間で炭化させ嵩比重0.5g/cm3,炭素純度60%の竹炭を得た後、粉砕して平均粒径5.1μの粉末を得た。
その後、該竹炭粉末とモンタン酸グリセリンエステルの分散向上剤をナイロン6ペレットに各々30重量%と2重量%を添加し、2軸押出機で溶融混練して250メッシュのフィルターを通してマスターバッチを作成した。
次いで、該マスターバッチをナイロン6ペレットに20重量%添加し、210〜260℃の単軸押出機で溶融混練して300メッシュのフィルターで24ホールのノズルから吐出して紡糸速度1000m/分で紡糸した。
得られた紡糸原糸をインドロー方式の仮撚加工機で3.8倍延伸し、竹炭が6重量%練り込まれた167dtex/24fの加工糸を作成し、タテ糸に40番手の木綿を使いヨコ糸に該竹炭入り加工糸を用いて1/1の平織物を得た。
紡糸・延伸・仮撚の各工程でのトラブルはほとんどなく、加工糸の強度は2.5cN/dtex、伸度は58%と製織に十分耐えられるものであった。
対照として、竹炭未添加のナイロン加工糸をヨコ糸に用いて実施例3と同様の織物を作成し、該竹炭入り織物と比較評価した。
該竹炭入り織物は、対照に比べて吸湿率が1.2%多く、且つアンモニアガス吸着性も、初期濃度100ppmで残留が41ppm対照の57ppmより少なく吸着され易い事が判った。
更に、遠赤保温性も対照より直後で1.5℃,8秒後で0.9℃高く、竹炭の効果がみられた。
この織物は枕,布団などのカバーやシーツ等健康商品として価値あるものであった。
【0032】
比較例2
実施例2において、該分散向上剤を添加しないで実施したが、マスターバッチを作成する時に300メッシュのフィルターに備長炭の凝集物が体積し易く、紡糸時もフィルター圧の上昇が速く且つ延伸・捲縮時の単糸切れが多発した。
得られたバルキーヤーンには備長炭の凝集物があり、吸放湿性,ガス吸収性,遠赤保温性いずれも実施例2よりも劣っていた。
【0033】
【発明の効果】本発明により、吸放湿性,ガス脱着性,遠赤保温性などを有する微粉木質炭が分散性良好な状態で練込まれた高機能性の合成繊維が容易に得られる。
合成繊維の中では、特に大量生産されリサイクルも可能なポリエステル系繊維が好ましく、該木質炭入り合成繊維は、織物,編物,不織布,詰め綿として衣料,産業資材,寝装,インテリア,医療,建材,雑貨など幅広く活用されるものである。
Claims (6)
- 平均粒径が30μ以下の木質炭30重量%以下と分散向上剤10重量%以下が含有している木質炭練込み合成繊維。
- 請求項1において、該繊維がポリエステル系繊維である木質炭練込み合成繊維。
- 請求項1及び請求項2において、該木質炭の嵩比重が1.0以下で且つ炭素純度が75%以上である木質炭練込み合成繊維。
- 平均粒径が30μ以下の木質炭30重量%以下と分散向上剤10重量%以下を合成ポリマー添加し、該ポリマーの溶融液又は溶剤溶液中に混合分散させ、常法により紡糸・延伸を施す事を特徴とする木質炭練込み合成繊維の製造方法。
- 請求項4において、該木質炭と分散向上剤が含有しているマスターペレットをポリエステル系ペレットに添加して溶融混合させる事を特徴とする木質炭練込み合成繊維の製造方法。
- 請求項4及び請求項6において、該木質炭の嵩比重が1.0以下で且つ炭素純度が75%以上である木質炭練込み合成繊維の製造方法。
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CN106757773A (zh) * | 2016-12-12 | 2017-05-31 | 天鼎丰非织造布有限公司 | 一种抗菌、阻燃、防静电非织造布及其织造方法 |
CN109171033A (zh) * | 2018-08-21 | 2019-01-11 | 青岛雪达集团有限公司 | 一种备长炭穴位保健功能性长袖t恤及制作方法 |
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2002
- 2002-10-28 JP JP2002350491A patent/JP2004149998A/ja not_active Withdrawn
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