JP2004149948A - 酵素処理した化学パルプの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】パルプにキシラン分解活性とCMC分解活性を有する酵素を添加処理し漂白薬品原単位を向上させ、さらに抄紙後の紙のベッセルピックを改善させた酵素処理した化学パルプの製造方法を提供する。
【解決手段】キシラン分解活性とCMC分解活性の比が5〜15:1である酵素を、パルプに対してキシラン分解活性として4〜8unit/絶乾パルプgであるように添加して酵素処理することを特徴とする酵素処理した化学パルプの製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】キシラン分解活性とCMC分解活性の比が5〜15:1である酵素を、パルプに対してキシラン分解活性として4〜8unit/絶乾パルプgであるように添加して酵素処理することを特徴とする酵素処理した化学パルプの製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酵素処理した化学パルプの製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、酵素の分解活性がキシラン分解活性とCMC分解活性の比が特定の比である酵素を用いて処理した後に多段漂白を行い、漂白時の薬品原単位を改善し、かつ抄紙後における紙のベッセルピックを改善させた化学パルプ製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
パルプの漂白の目的は、パルプ繊維内部や表面のリグニンや着色物質を分解、変質させたり、可溶性にして取り除き、白色度を上昇させることである。
【0003】
従来、化学パルプの漂白は、塩素、次亜塩素酸塩、二酸化塩素などの塩素系の薬品を主体として用いる多段漂白方法が一般的である。これら塩素系の薬品と有機物が反応し、例えばダイオキシンに代表されるような有機塩素化合物が生成するため、近年では環境汚染の可能性が指摘されている。
【0004】
そのため、現在では出来るだけ塩素系薬品の使用量を削減させるため、漂白段の前工程や途中で酸素や過酸化水素などの酸素系の薬品を添加して、パルプの脱リグニンを促進させる方法が普及している。
【0005】
また、さらに塩素系薬品の使用量を削減させる方法として、漂白段の前工程や途中で漂白用酵素を添加して、パルプの脱リグニンを図る方法が注目されている。用いられる酵素は、一般にキシラナーゼ、セルラーゼ、マンナナーゼなどが知られている(例えば、特許文献1〜2参照)。
【0006】
キシラナーゼは、未晒パルプ中のヘミセルロースの一部であるキシランを分解する。その際、キシランに付随するリグニンをも除去してパルプの白色度を向上させ、ひいては漂白時の薬品原単位の向上につなげることができる。キシランは蒸解前期で溶出した後アルカリ濃度が低下する蒸解後期でパルプに再吸着したキシランも含まれる。
【0007】
しかし、キシラナーゼは対パルプ添加率が低すぎると本来の目的である脱リグニン効果が低く、また、添加率が高すぎるとパルプの強度低下や収率の低下をもたらし、さらに、排水中のCOD負荷を増大させ、排水処理費の悪化を招くという問題があった(例えば、非特許文献1参照)。
【0008】
一方、化学パルプの主原料としての広葉樹は、森林資源の保護に関連し、従来の天然木から植林木へと移行しつつある。その植林樹種は一般にユーカリ材が選択されている。
【0009】
ユーカリ材は一般に成長が速いなどの長所があるが、木材組織の中のベッセル(導管)が大きく、また硬く、個数も多い。そのため、ユーカリ材主体のパルプを用いた紙は、印刷時にベッセルが剥離してピッキングが多く発生するという問題があった。
【0010】
近年、このベッセルピック改善対策として、パルプにセルラーゼを添加する方法が開発されている。セルラーゼによりベッセルの構成体でもあるセルロースを改質し、叩解性の改善を行い、ベッセルピックの改善を狙う方法である。(例えば、特許文献3参照)。
【0011】
しかし、セルラーゼは対パルプ添加率が低すぎると本来の目的である叩解性の改善効果が低く、また、添加率が高すぎるとパルプの強度低下や収率の大幅な低下をもたらすという問題があった。
【0012】
前述の酵素類には、各々の本来の目的以外にも、他の効果は認められる。例えばキシラナーゼにはセルロースの改質効果もあり、また、セルラーゼには脱リグニン促進の効果もあるが、それらの効果は本来の目的と併用できるほど大きくはない。
【0013】
酵素を使用して、パルプの漂白薬品原単位の向上とベッセルピックの改善の効果を一気に発揮させるには、キシラナーゼとセルラーゼを併用する方法が考えられるが、複数の酵素を併用すれば反応条件が複雑になり、また、さらにトータルとしての対パルプ添加率が高くなるためコストアップになり、さらにまた、パルプの強度低下や収率の大幅な低下をもたらすという問題があった。
【0014】
【特許文献1】
特公平2−264087号公報
【特許文献2】
特公平2−293486号公報
【特許文献3】
特公平2−20756号公報
【非特許文献1】
石津 敦著「ヘミセルラーゼを用いたクラフトパルプの漂白」木材学会誌、1993年、vol.39、No.12、p1355−1340
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、パルプにキシラン分解活性とCMC分解活性を有する酵素を添加処理し漂白薬品原単位を向上させ、さらに抄紙後における紙のベッセルピックを改善させた酵素処理した化学パルプの製造方法を提供するものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記従来の問題点を解決し鋭意研究の結果、本発明の酵素処理した化学パルプの製造方法を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明の酵素処理した化学パルプの製造方法は、キシラン分解活性とCMC分解活性の比が5〜15:1である酵素を、パルプに対してキシラン分解活性として4〜8unit/絶乾パルプgであるように添加して酵素処理することを特徴とするものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の化学パルプの製造方法について、詳細に説明する。
本発明の酵素処理した化学パルプの製造方法は、キシラン分解活性とCMC分解活性の比が5〜15:1である酵素を用い、パルプに対してキシラン分解活性として4〜8unit/絶乾パルプgであるように添加して処理することにより、漂白薬品原単位を改善し、さらにベッセルピックを改善することにある。
【0019】
本発明において、用いられる酵素の添加率としては、キシラン分解活性として4〜8unit/絶乾パルプgであり、CMC分解活性として0.3〜1.6unit/絶乾パルプgである。
【0020】
本発明において、使用する酵素は、キシラン分解活性およびCMC分解活性を有する酵素であり、好ましくはキシラン分解活性が10000unit/g以上であり、CMC分解活性が1000unit/g以上の酵素である。具体的には、合同酒精社製のキシラナーゼ酵素である”GODO−TXL”などが挙げられる。
【0021】
本発明において、酵素の添加条件として、処理温度が30〜80℃、好ましくは50〜60℃であり、また、処理時間が10分以上であれば特に限定されず、さらに処理pHが3〜8、好ましくは4〜6である。
【0022】
本発明において、pH調整に用いる薬品は特に限定されない。
【0023】
本発明において、酵素の添加場所としては酸素処理後に添加した後、多段漂白を行うことが好ましいが、添加場所は特に限定されない。
【0024】
本発明において、酵素処理後の多段漂白は通常3段以上であり、例えば、塩素を用いた従来からのシーケンス、塩素ガスのみ用いないECFシーケンス、あるいは塩素系薬品を全く用いないTCFシーケンスでも良く、酵素処理前後のシーケンスは特に限定されない。
【0025】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、実施例において示す「部」および「%」は、特に明示しない限り、質量部および質量%を示す。
【0026】
実施例1〜3
広葉樹(豪州ユーカリ100%)の実機クラフト蒸解後の酸素処理パルプを十分洗浄脱水した。この未晒パルプのパルプ濃度を10質量%に調整し、硫酸でpH5.0〜5.5に調整した後、キシラン分解活性が16250unit/g、CMC分解活性が1260unit/g、その比率が13:1である合同酒精社製のGODO−TXLを、キシラン分解活性として対絶乾パルプ1g当たり5、6、7unit添加し、温度50℃、時間40分、pH5.0で反応させた後に洗浄して酵素処理パルプを得、それぞれ実施例1、2、3とした。反応条件を表1に示す。なお、表1中のX/C比は、キシラン分解活性/CMC分解活性の比である。また、酵素添加量は、キシラン分解活性としての添加量であり、単位はunit/絶乾パルプgである。
【0027】
実施例1、2、3で得られたパルプの白色度、パルプ粘度、カッパー価を前記の方法で測定した。また、これとは別に、未晒パルプの重量(絶乾重量相当分)を正確に分取し酵素処理の後、パルプを十分洗浄し全量を乾燥させた絶乾重量から、酵素による収率を算出した。測定結果を表1に示す。
【0028】
酵素処理前パルプの白色度は50.1%、カッパー価は9.9、粘度は33.5mPasであった。なお、評価方法については、後述する。
【0029】
比較例1〜4
実施例1で用いた酵素と同一の酵素を用い、キシラン分解活性として対絶乾パルプ1g当たり表1に示したように添加した以外は、実施例1と同様にして酵素処理パルプを得、それぞれ比較例1、2、3、4とした。結果を表1に示す。
【0030】
比較例5〜10
実施例1で用いた酵素の代わりに、キシラン分解活性が2200unit/g、CMC分解活性が3700unit/gであり、その比率が0.6:1である合同酒精社製のGODO−TCLを用い、温度30℃、時間40分で反応させ、キシラン分解活性として対絶乾パルプ1g当たり表1に示したように添加して酵素処理パルプを得、それぞれ比較例5、6、7、8、9、10とした。結果を表1に示す。
【0031】
次に、上記で得られた酵素処理パルプについて、塩素〜アルカリ抽出〜次亜塩素酸ナトリウム〜二酸化塩素によるラボ漂白(下記に示す)を行って後、PFIミルを用いて濾水度420〜450(CSFml)になるように叩解し、化学パルプ(表1中の漂白後パルプ)を得た。得られた化学パルプについて、白色度とパルプ粘度および手抄きシートによるベッセルピックを下記の測定方法により測定し、その評価結果を表1に示した。
【0032】
<漂白の条件>
ラボ漂白の条件は、塩素段は塩素添加率対パルプ1.0%、温度50℃、時間30分、アルカリ抽出段は水酸化ナトリウム添加率対パルプ1.0%、温度50℃、時間40分、次亜塩素酸ナトリウム段は有効塩素として添加率対パルプ0.2%、温度60℃、時間40分、二酸化塩素段は二酸化塩素添加率対パルプ0.2%、温度75℃、時間100分で行った。
【0033】
<白色度>
白色度は、JIS P8123に基づいて測定した。
【0034】
<カッパー価>
カッパー価は、TAPPI T−236 hm−85に基づいて測定した。カッパー価は、未晒パルプ中の残存リグニン量の指標として用いら、例えば、広葉樹のカッパー価は、蒸解後の未晒パルプでは15〜20、酸素漂白後では5〜10である。一般にパルプのカッパー価が低下すると漂白性は向上し、従って漂白薬品原単位は向上する。
【0035】
<パルプ粘度>
パルプ粘度は、TAPPI T−230 hm−82に基づいて測定した。パルプ粘度はパルプを構成している主な多糖類であるセルロースの重合度と比例しており、パルプが蒸解行程や漂白行程で受ける化学的なダメージ、すなわちパルプの強度の指標として用いられる。パルプ粘度は、樹種や蒸解法、漂白法により大きく異なり、一般にパルプ粘度が低下すると叩解性は向上し、また、繊維間結合が向上するためベッセルピックへの改善効果はあるが、粘度がさらに著しく低下するとパルプの強度は低下し、また、収率も大きく低下する。
【0036】
<ベッセルピック>
ベッセルピックの評価は、叩解にはPFIミル(熊谷理器工業社製)、印刷にはRI試験機(石川島機械社製)を用いて測定した。パルプのベッセルピックは、坪量60g/m2のパルプシートを調湿後RI試験機で印刷した後、30cm2 当たりのベッセルの剥け個数で表し、抄紙後のベッセルピックの指標として用いられる。
【0037】
【表1】
【0038】
評価;酵素処理後の未晒パルプの特性(表中の酵素処理パルプ)について、評価結果を表1に示した。まず、カッパー価をみると、実施例1〜3および比較例1〜4ではキシラナーゼ酵素である同一の酵素(TXL)の添加率を変化させたものであるが、酵素添加率とカッパー価はおよそ反比例している。また、比較例5〜10は、セルラーゼ酵素(TCL)の添加率を変化させたものであるが、酵素添加率とカッパー価はおよそ反比例しており、その水準は両酵素とも同レベルである。
【0039】
同様にパルプ粘度とパルプ収率をみると、両酵素ともに酵素添加率とおよそ反比例している。しかし、比較例5〜10のセルラーゼ酵素(TCL)は実施例1〜3および比較例1〜4のキシラナーゼ酵素(TXL)よりも粘度が大きく低下していることがわかる。これは両酵素の添加率がキシラン分解活性で揃えているため、比較例5〜10のセルラーゼ酵素(TCL)は実施例1〜3および比較例1〜4のキシラナーゼ酵素(TXL)よりもCMC分解活性としては添加率が高くなるためである。
【0040】
一方、漂白性をみると、漂白後パルプの白色度は、実施例1〜3および比較例1〜4のキシラナーゼ酵素(TXL)と比較例5〜10のセルラーゼ酵素(TCL)ともに、漂白前の未晒パルプ(表中の酵素処理パルプ)のカッパー価にほぼ支配されている。同一の漂白条件における白色度が高いと、同一白色度を得るための漂白薬品原単位は向上する。実施例1〜3および比較例3〜4では、比較例1〜2よりも優位である。また、比較例8〜10は、比較例5〜7よりも優位である。
【0041】
また、パルプ粘度をみると、両酵素とも漂白前の未晒パルプ(表中の酵素処理パルプ)の粘度とほぼ連動しており、さらにベッセルピック数とも連動している。
【0042】
両酵素をキシラン分解活性で揃えて比較した時、実施例1〜3のキシラナーゼ酵素(TXL)は比較例5〜10のセルラーゼ酵素(TCL)と漂白性が同等であり、また、さらに粘度低下が少なく未晒パルプの収率の低下を抑え、かつベッセルピックへの改善効果もあるといえる。つまり、比較例5〜10のセルラーゼ酵素(TCL)は漂白性が同等であるが、粘度の低下が大きくベッセルピックへの効果はあるもののパルプ収率の低下幅は大きいといえる。
【0043】
また、実施例1〜3と同一のキシラナーゼ酵素(TXL)を用いて酵素添加率を低くした比較例1〜2と酵素添加率を高くした比較例3〜4でみると、酵素添加率が低いと漂白性やベッセルピックへの改善の効果が劣る。また、酵素添加率が高いと漂白性の向上や収率低下の改善効果はあるものの、ベッセルピックの改善効果が劣る。従って、実施例1〜3の酵素添加率が漂白薬品原単位の向上と収率の低下を抑え、かつベッセルピックへの改善の効果があることが分かる。
【0044】
【発明の効果】
上記より、本発明の酵素処理した化学パルプの製造方法は、キシラン分解活性とCMC分解活性の比が5〜15:1である酵素を、パルプに対してキシラン分解活性として4〜8unit/絶乾パルプg添加して処理することにより、漂白時の漂白薬品原単位を改善し、さらに抄紙後における紙のベッセルピックを改善させることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、酵素処理した化学パルプの製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、酵素の分解活性がキシラン分解活性とCMC分解活性の比が特定の比である酵素を用いて処理した後に多段漂白を行い、漂白時の薬品原単位を改善し、かつ抄紙後における紙のベッセルピックを改善させた化学パルプ製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
パルプの漂白の目的は、パルプ繊維内部や表面のリグニンや着色物質を分解、変質させたり、可溶性にして取り除き、白色度を上昇させることである。
【0003】
従来、化学パルプの漂白は、塩素、次亜塩素酸塩、二酸化塩素などの塩素系の薬品を主体として用いる多段漂白方法が一般的である。これら塩素系の薬品と有機物が反応し、例えばダイオキシンに代表されるような有機塩素化合物が生成するため、近年では環境汚染の可能性が指摘されている。
【0004】
そのため、現在では出来るだけ塩素系薬品の使用量を削減させるため、漂白段の前工程や途中で酸素や過酸化水素などの酸素系の薬品を添加して、パルプの脱リグニンを促進させる方法が普及している。
【0005】
また、さらに塩素系薬品の使用量を削減させる方法として、漂白段の前工程や途中で漂白用酵素を添加して、パルプの脱リグニンを図る方法が注目されている。用いられる酵素は、一般にキシラナーゼ、セルラーゼ、マンナナーゼなどが知られている(例えば、特許文献1〜2参照)。
【0006】
キシラナーゼは、未晒パルプ中のヘミセルロースの一部であるキシランを分解する。その際、キシランに付随するリグニンをも除去してパルプの白色度を向上させ、ひいては漂白時の薬品原単位の向上につなげることができる。キシランは蒸解前期で溶出した後アルカリ濃度が低下する蒸解後期でパルプに再吸着したキシランも含まれる。
【0007】
しかし、キシラナーゼは対パルプ添加率が低すぎると本来の目的である脱リグニン効果が低く、また、添加率が高すぎるとパルプの強度低下や収率の低下をもたらし、さらに、排水中のCOD負荷を増大させ、排水処理費の悪化を招くという問題があった(例えば、非特許文献1参照)。
【0008】
一方、化学パルプの主原料としての広葉樹は、森林資源の保護に関連し、従来の天然木から植林木へと移行しつつある。その植林樹種は一般にユーカリ材が選択されている。
【0009】
ユーカリ材は一般に成長が速いなどの長所があるが、木材組織の中のベッセル(導管)が大きく、また硬く、個数も多い。そのため、ユーカリ材主体のパルプを用いた紙は、印刷時にベッセルが剥離してピッキングが多く発生するという問題があった。
【0010】
近年、このベッセルピック改善対策として、パルプにセルラーゼを添加する方法が開発されている。セルラーゼによりベッセルの構成体でもあるセルロースを改質し、叩解性の改善を行い、ベッセルピックの改善を狙う方法である。(例えば、特許文献3参照)。
【0011】
しかし、セルラーゼは対パルプ添加率が低すぎると本来の目的である叩解性の改善効果が低く、また、添加率が高すぎるとパルプの強度低下や収率の大幅な低下をもたらすという問題があった。
【0012】
前述の酵素類には、各々の本来の目的以外にも、他の効果は認められる。例えばキシラナーゼにはセルロースの改質効果もあり、また、セルラーゼには脱リグニン促進の効果もあるが、それらの効果は本来の目的と併用できるほど大きくはない。
【0013】
酵素を使用して、パルプの漂白薬品原単位の向上とベッセルピックの改善の効果を一気に発揮させるには、キシラナーゼとセルラーゼを併用する方法が考えられるが、複数の酵素を併用すれば反応条件が複雑になり、また、さらにトータルとしての対パルプ添加率が高くなるためコストアップになり、さらにまた、パルプの強度低下や収率の大幅な低下をもたらすという問題があった。
【0014】
【特許文献1】
特公平2−264087号公報
【特許文献2】
特公平2−293486号公報
【特許文献3】
特公平2−20756号公報
【非特許文献1】
石津 敦著「ヘミセルラーゼを用いたクラフトパルプの漂白」木材学会誌、1993年、vol.39、No.12、p1355−1340
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、パルプにキシラン分解活性とCMC分解活性を有する酵素を添加処理し漂白薬品原単位を向上させ、さらに抄紙後における紙のベッセルピックを改善させた酵素処理した化学パルプの製造方法を提供するものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記従来の問題点を解決し鋭意研究の結果、本発明の酵素処理した化学パルプの製造方法を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明の酵素処理した化学パルプの製造方法は、キシラン分解活性とCMC分解活性の比が5〜15:1である酵素を、パルプに対してキシラン分解活性として4〜8unit/絶乾パルプgであるように添加して酵素処理することを特徴とするものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の化学パルプの製造方法について、詳細に説明する。
本発明の酵素処理した化学パルプの製造方法は、キシラン分解活性とCMC分解活性の比が5〜15:1である酵素を用い、パルプに対してキシラン分解活性として4〜8unit/絶乾パルプgであるように添加して処理することにより、漂白薬品原単位を改善し、さらにベッセルピックを改善することにある。
【0019】
本発明において、用いられる酵素の添加率としては、キシラン分解活性として4〜8unit/絶乾パルプgであり、CMC分解活性として0.3〜1.6unit/絶乾パルプgである。
【0020】
本発明において、使用する酵素は、キシラン分解活性およびCMC分解活性を有する酵素であり、好ましくはキシラン分解活性が10000unit/g以上であり、CMC分解活性が1000unit/g以上の酵素である。具体的には、合同酒精社製のキシラナーゼ酵素である”GODO−TXL”などが挙げられる。
【0021】
本発明において、酵素の添加条件として、処理温度が30〜80℃、好ましくは50〜60℃であり、また、処理時間が10分以上であれば特に限定されず、さらに処理pHが3〜8、好ましくは4〜6である。
【0022】
本発明において、pH調整に用いる薬品は特に限定されない。
【0023】
本発明において、酵素の添加場所としては酸素処理後に添加した後、多段漂白を行うことが好ましいが、添加場所は特に限定されない。
【0024】
本発明において、酵素処理後の多段漂白は通常3段以上であり、例えば、塩素を用いた従来からのシーケンス、塩素ガスのみ用いないECFシーケンス、あるいは塩素系薬品を全く用いないTCFシーケンスでも良く、酵素処理前後のシーケンスは特に限定されない。
【0025】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、実施例において示す「部」および「%」は、特に明示しない限り、質量部および質量%を示す。
【0026】
実施例1〜3
広葉樹(豪州ユーカリ100%)の実機クラフト蒸解後の酸素処理パルプを十分洗浄脱水した。この未晒パルプのパルプ濃度を10質量%に調整し、硫酸でpH5.0〜5.5に調整した後、キシラン分解活性が16250unit/g、CMC分解活性が1260unit/g、その比率が13:1である合同酒精社製のGODO−TXLを、キシラン分解活性として対絶乾パルプ1g当たり5、6、7unit添加し、温度50℃、時間40分、pH5.0で反応させた後に洗浄して酵素処理パルプを得、それぞれ実施例1、2、3とした。反応条件を表1に示す。なお、表1中のX/C比は、キシラン分解活性/CMC分解活性の比である。また、酵素添加量は、キシラン分解活性としての添加量であり、単位はunit/絶乾パルプgである。
【0027】
実施例1、2、3で得られたパルプの白色度、パルプ粘度、カッパー価を前記の方法で測定した。また、これとは別に、未晒パルプの重量(絶乾重量相当分)を正確に分取し酵素処理の後、パルプを十分洗浄し全量を乾燥させた絶乾重量から、酵素による収率を算出した。測定結果を表1に示す。
【0028】
酵素処理前パルプの白色度は50.1%、カッパー価は9.9、粘度は33.5mPasであった。なお、評価方法については、後述する。
【0029】
比較例1〜4
実施例1で用いた酵素と同一の酵素を用い、キシラン分解活性として対絶乾パルプ1g当たり表1に示したように添加した以外は、実施例1と同様にして酵素処理パルプを得、それぞれ比較例1、2、3、4とした。結果を表1に示す。
【0030】
比較例5〜10
実施例1で用いた酵素の代わりに、キシラン分解活性が2200unit/g、CMC分解活性が3700unit/gであり、その比率が0.6:1である合同酒精社製のGODO−TCLを用い、温度30℃、時間40分で反応させ、キシラン分解活性として対絶乾パルプ1g当たり表1に示したように添加して酵素処理パルプを得、それぞれ比較例5、6、7、8、9、10とした。結果を表1に示す。
【0031】
次に、上記で得られた酵素処理パルプについて、塩素〜アルカリ抽出〜次亜塩素酸ナトリウム〜二酸化塩素によるラボ漂白(下記に示す)を行って後、PFIミルを用いて濾水度420〜450(CSFml)になるように叩解し、化学パルプ(表1中の漂白後パルプ)を得た。得られた化学パルプについて、白色度とパルプ粘度および手抄きシートによるベッセルピックを下記の測定方法により測定し、その評価結果を表1に示した。
【0032】
<漂白の条件>
ラボ漂白の条件は、塩素段は塩素添加率対パルプ1.0%、温度50℃、時間30分、アルカリ抽出段は水酸化ナトリウム添加率対パルプ1.0%、温度50℃、時間40分、次亜塩素酸ナトリウム段は有効塩素として添加率対パルプ0.2%、温度60℃、時間40分、二酸化塩素段は二酸化塩素添加率対パルプ0.2%、温度75℃、時間100分で行った。
【0033】
<白色度>
白色度は、JIS P8123に基づいて測定した。
【0034】
<カッパー価>
カッパー価は、TAPPI T−236 hm−85に基づいて測定した。カッパー価は、未晒パルプ中の残存リグニン量の指標として用いら、例えば、広葉樹のカッパー価は、蒸解後の未晒パルプでは15〜20、酸素漂白後では5〜10である。一般にパルプのカッパー価が低下すると漂白性は向上し、従って漂白薬品原単位は向上する。
【0035】
<パルプ粘度>
パルプ粘度は、TAPPI T−230 hm−82に基づいて測定した。パルプ粘度はパルプを構成している主な多糖類であるセルロースの重合度と比例しており、パルプが蒸解行程や漂白行程で受ける化学的なダメージ、すなわちパルプの強度の指標として用いられる。パルプ粘度は、樹種や蒸解法、漂白法により大きく異なり、一般にパルプ粘度が低下すると叩解性は向上し、また、繊維間結合が向上するためベッセルピックへの改善効果はあるが、粘度がさらに著しく低下するとパルプの強度は低下し、また、収率も大きく低下する。
【0036】
<ベッセルピック>
ベッセルピックの評価は、叩解にはPFIミル(熊谷理器工業社製)、印刷にはRI試験機(石川島機械社製)を用いて測定した。パルプのベッセルピックは、坪量60g/m2のパルプシートを調湿後RI試験機で印刷した後、30cm2 当たりのベッセルの剥け個数で表し、抄紙後のベッセルピックの指標として用いられる。
【0037】
【表1】
【0038】
評価;酵素処理後の未晒パルプの特性(表中の酵素処理パルプ)について、評価結果を表1に示した。まず、カッパー価をみると、実施例1〜3および比較例1〜4ではキシラナーゼ酵素である同一の酵素(TXL)の添加率を変化させたものであるが、酵素添加率とカッパー価はおよそ反比例している。また、比較例5〜10は、セルラーゼ酵素(TCL)の添加率を変化させたものであるが、酵素添加率とカッパー価はおよそ反比例しており、その水準は両酵素とも同レベルである。
【0039】
同様にパルプ粘度とパルプ収率をみると、両酵素ともに酵素添加率とおよそ反比例している。しかし、比較例5〜10のセルラーゼ酵素(TCL)は実施例1〜3および比較例1〜4のキシラナーゼ酵素(TXL)よりも粘度が大きく低下していることがわかる。これは両酵素の添加率がキシラン分解活性で揃えているため、比較例5〜10のセルラーゼ酵素(TCL)は実施例1〜3および比較例1〜4のキシラナーゼ酵素(TXL)よりもCMC分解活性としては添加率が高くなるためである。
【0040】
一方、漂白性をみると、漂白後パルプの白色度は、実施例1〜3および比較例1〜4のキシラナーゼ酵素(TXL)と比較例5〜10のセルラーゼ酵素(TCL)ともに、漂白前の未晒パルプ(表中の酵素処理パルプ)のカッパー価にほぼ支配されている。同一の漂白条件における白色度が高いと、同一白色度を得るための漂白薬品原単位は向上する。実施例1〜3および比較例3〜4では、比較例1〜2よりも優位である。また、比較例8〜10は、比較例5〜7よりも優位である。
【0041】
また、パルプ粘度をみると、両酵素とも漂白前の未晒パルプ(表中の酵素処理パルプ)の粘度とほぼ連動しており、さらにベッセルピック数とも連動している。
【0042】
両酵素をキシラン分解活性で揃えて比較した時、実施例1〜3のキシラナーゼ酵素(TXL)は比較例5〜10のセルラーゼ酵素(TCL)と漂白性が同等であり、また、さらに粘度低下が少なく未晒パルプの収率の低下を抑え、かつベッセルピックへの改善効果もあるといえる。つまり、比較例5〜10のセルラーゼ酵素(TCL)は漂白性が同等であるが、粘度の低下が大きくベッセルピックへの効果はあるもののパルプ収率の低下幅は大きいといえる。
【0043】
また、実施例1〜3と同一のキシラナーゼ酵素(TXL)を用いて酵素添加率を低くした比較例1〜2と酵素添加率を高くした比較例3〜4でみると、酵素添加率が低いと漂白性やベッセルピックへの改善の効果が劣る。また、酵素添加率が高いと漂白性の向上や収率低下の改善効果はあるものの、ベッセルピックの改善効果が劣る。従って、実施例1〜3の酵素添加率が漂白薬品原単位の向上と収率の低下を抑え、かつベッセルピックへの改善の効果があることが分かる。
【0044】
【発明の効果】
上記より、本発明の酵素処理した化学パルプの製造方法は、キシラン分解活性とCMC分解活性の比が5〜15:1である酵素を、パルプに対してキシラン分解活性として4〜8unit/絶乾パルプg添加して処理することにより、漂白時の漂白薬品原単位を改善し、さらに抄紙後における紙のベッセルピックを改善させることができる。
Claims (1)
- 酵素処理した化学パルプの製造方法において、キシラン分解活性とCMC分解活性の比が5〜15:1である酵素を、パルプに対してキシラン分解活性として4〜8unit/絶乾パルプgであるように添加して酵素処理することを特徴とする酵素処理した化学パルプの製造方法。
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---|---|---|---|
JP2002315404A JP2004149948A (ja) | 2002-10-30 | 2002-10-30 | 酵素処理した化学パルプの製造方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2018204158A (ja) * | 2017-06-09 | 2018-12-27 | 王子ホールディングス株式会社 | リグノセルロース系原料からの溶解パルプの製造方法 |
-
2002
- 2002-10-30 JP JP2002315404A patent/JP2004149948A/ja active Pending
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