JP2004149930A - 植物繊維シート、その製造方法及びこれを用いた繊維強化プラスチック - Google Patents

植物繊維シート、その製造方法及びこれを用いた繊維強化プラスチック Download PDF

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Masahiko Tokushige
雅彦 徳重
Akira Sugawara
亮 菅原
Susumu Nakahara
進 中原
Yuzo Okudaira
有三 奥平
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Abstract

【課題】強化材として植物繊維を含有した繊維強化プラスチックであって、水中等に長時間置かれた場合でも、寸法の安定性に優れた繊維強化プラスチック、及びこれに用いる植物繊維シートを提供する。
【解決手段】本発明に係る繊維強化プラスチックに用いる植物繊維シートは、強化材が植物繊維をシート状に形成させてなるものに前記植物繊維の細胞壁内の空隙に樹脂を含浸した植物シートであるので、水分を吸収しにくくなり、水分の存在下でも寸法の安定性が良好となるという効果が得られる。さらに、この植物繊維シートを含有した繊維強化プラスチックは、従来のガラス繊維が不燃物であるのに対して、植物繊維は可燃物であるので、本繊維強化プラスチックを廃棄物として燃焼処理するときに、発生する残渣が少なくなるという効果が得られる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物繊維をシート状に形成してなる植物繊維シート、その植物繊維シートの製造方法及びその植物繊維シートを強化材として用いた繊維強化プラスチックに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
繊維強化プラスチックは、通常、強化材となる繊維材として、強度が良好で軽量なガラス繊維を含有するものが一般的である。しかし、このようなガラス繊維を強化材として含有した繊維強化プラスチックは、廃棄物として焼却する場合には、ガラス繊維が不燃物であるために、燃焼炉を痛めたり、燃焼効率が低くなったり、また、焼却後の残渣が多くなる。
【0003】
このような問題に対処するべく、強化材としてガラス繊維に替え植物繊維を含有した繊維強化プラスチックが、特開2002−69208や特開平11―147211に提案されている。これらの繊維強化プラスチックは植物繊維に特別な処理がなされていないために、強化材の植物繊維の細胞壁内に空隙が存在している。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−69208号公報(第1−5頁)
【0005】
【特許文献2】
特開平11―147211号公報(第1−4頁、図1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の植物繊維を含有した繊維強化プラスチックは、強化材の植物繊維の細胞壁内に空隙が存在しているために、植物繊維は水分の吸収によって膨張するので、水中あるいは湿気の多い環境下に長時間放置された場合には、寸法変化を招くことがある。
【0007】
本発明は、かかる事由に鑑みてなしたもので、その目的とするところは、水中あるいは湿気の多い環境下に長時間放置された場合でも、寸法の安定性に優れた繊維強化プラスチック、これに用いる植物繊維シート、これらの製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明の植物繊維シートは、植物繊維をシート状に形成してなる植物繊維シートにおいて、前記植物繊維の細胞壁内の空隙に樹脂を含浸してなることを特徴としている。
【0009】
請求項2に係る発明の植物繊維シートは、請求項1記載の植物繊維シートであって、前記樹脂が、熱硬化性樹脂のモノマーまたはオリゴマーの少なくともいずれかを含んでいることを特徴としている。
【0010】
請求項3に係る発明の植物繊維シートは、請求項1又は請求項2に記載の植物繊維シートであって、前記樹脂の分子量が100以上500以下であることを特徴としている。
【0011】
請求項4に係る発明の植物繊維シートは、請求項1乃至請求項3記載の植物繊維シートであって、前記樹脂がフェノール樹脂であることを特徴としている。
【0012】
請求項5に係る発明の植物繊維シートの製造方法は、請求項1乃至請求項4記載の植物繊維シートの製造方法であって、前記植物繊維をシート状に形成し、次に、前記植物繊維の含水率を低減し、次に、植物繊維の細胞壁内の空隙に樹脂を含浸することを特徴としている。
【0013】
請求項6に係る発明の植物繊維シートの製造方法は、請求項5に記載の製造方法であって、前記植物繊維の含水率を低減する方法が、減圧雰囲気下に前記植物繊維を保持したことを特徴としている。
【0014】
請求項7に係る発明の植物繊維シートの製造方法は、請求項5又は請求項6記載の製造方法であって、減圧雰囲気下で前記植物繊維の細胞壁内の空隙に樹脂を含浸することを特徴としている。
【0015】
請求項8に係る発明の植物繊維シートの製造方法は、請求項5乃至請求項7記載の製造方法であって、前記植物繊維の細胞壁内の空隙に樹脂を含浸した植物繊維シートを加圧雰囲気下に保持することを特徴としている。
【0016】
請求項9に係る発明の繊維強化プラスチックは、請求項1乃至請求項8記載の植物繊維シートを強化材として含有することを特徴としている。
【0017】
【発明の実施の形態】
(実施形態1)
実施形態1に係る植物繊維シートを図1〜3に基づいて説明する。図1は植物繊維で得られた不織布である植物繊維シートの平面図、図2は植物繊維で得られた織布である植物繊維シートの平面図、図3は植物繊維の細胞の断面図である。
【0018】
1は植物繊維であり、このものは、後述する不織布2や織布3のような植物繊維シートを形成する。植物繊維1は、例えば、リグノセルロース繊維、具体的には、ケナフ、亜麻、ラミー、大麻、ジュート等の靭皮から採取する繊維や、マニラ麻やサイザル麻等の茎又は葉の筋から採取する植物繊維を用いる。そして、セルロースとリグニンのほか、ヘミセルロースやペクチン等の成分で構成されている。この植物繊維1は、主成分としてセルロースを含む繊維状の物であれば、上記物質に限定されるものではない。
【0019】
この植物繊維1は、ケナフ等より採取した後、切断や解繊することにより、適宜数よりなる繊維束を、例えば、30〜60mm程度の長さに調整し、これを延ばして糸状にする。そして、この植物繊維1、すなわち、繊維束を絡み合わすことにより、図1に示す不織布2に仕上げる。この不織布2の製造例としては、植物繊維1にニードルパンチをかけることや、植物繊維と熱可塑性樹脂を混合したものを布状に形成して加熱するにより接着させることがある。他にも、植物繊維を適当な方法で布状に配列させ、外力又は植物繊維自体の融着力により植物繊維を接合してシート状に形成させるものであればよく、前記の製造方法に限定されるものではない。
【0020】
一方、植物繊維1、すなわち、繊維束を例えば、数10〜数100mの長尺の糸状に形成し、編み込むみことにより、図2に示す織布3とすることもできる。この織布3は、糸状の植物繊維1を、綾織、平織、朱子織等により編み込むことにより、製造される。他にも、繊維束の経糸と緯線とを互いに交錯して編み込む製造法であればよく、これらの方法に限定されるものではない。
【0021】
これら不織布2又は織布3とした植物繊維シートは、以下の工程を経て完成する。すなわち、植物繊維シートを形成する植物繊維1の細胞壁内の空隙に含浸用樹脂を含浸させるのである。この含浸用樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等を用いる。
【0022】
植物繊維1は、図3(a)に示すように、その細胞壁4の大きさは約10μmであり、この内部の空隙5の大きさは0.5〜0.1μm程度である。したがって、含浸用樹脂の分子のサイズが大きいと、この空隙5に含浸用樹脂を含浸することができない。このために、含浸用樹脂の分子の形体としてはモノマー又はオリゴマーであることが好ましい。また、含浸用樹脂の分子量は、100以上500以下であることが好ましい。これは、分子量が500を超えると分子のサイズが大きくなるので空隙5に含浸することが困難となり、分子量が100未満では樹脂の分子構造を維持することが困難となるからである。なお、空隙5に含浸した後に含浸用樹脂が重合することで分子量が500を超えても、問題はない。
【0023】
また、植物繊維1に水分が含まれている、すなわち、細胞壁4の内部の空隙5に水が残存していると、空隙5への含浸用樹脂の含浸が困難になるので、植物繊維1を乾燥や減圧することにより水分、すなわち、含水率を低減させることが好ましい。
【0024】
そして、植物繊維1の細胞壁4の内部の空隙5への含浸用樹脂の含浸は、例えば、含浸用樹脂をスプレー塗布したり、植物繊維を含浸用樹脂中に浸漬する等により行う。これにより、図3(b)に示すように、空隙5に含浸用樹脂が充填される。また、含浸用樹脂を含浸するときに、植物繊維を減圧雰囲気下にしておくと、含浸用樹脂が細胞壁4の内部の空隙5に入り易くなり好ましい。さらに、含浸後に、植物繊維1を加圧雰囲気下で保持すると、含浸用樹脂が細胞壁4の内部の空隙5に入る効果が促進され好ましい。
【0025】
以上のように、含浸用樹脂を植物繊維の細胞壁4の内部の空隙5に含浸することにより、空隙5に含浸用樹脂が充填され、植物繊維が水分を吸収する量が低減する。
【0026】
(実施形態2)
実施形態2に係る繊維強化プラスチックについて図4及び図5に基づいて説明する。図4及び図5は植物繊維シート2を強化材として含有した繊維強化プラスチックの断面図である。
【0027】
この繊維強化プラスチックは、マトリックス樹脂6と実施形態1で説明した植物繊維シート2または3とからなっている。ここで、植物繊維シート2または3は、図4に示すように、1枚であってもよいし、図5に示すように、複数枚であってもよい。マトリックス樹脂6は、不飽和ポリエステル、エポキシ、フェノール、メラニン等の熱硬化性樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、飽和ポリエステル、ABS等の熱可塑性樹脂等を用いる。ただし、通常の繊維強化プラスチックのマトリックス樹脂として用いられる樹脂であればよく、上記の樹脂に限定されるものではない。
【0028】
繊維強化プラスチックは、植物繊維シート2または3とマトリックス樹脂6とを積層することにより得ることができる。具体的には、所定の板状を得るための型に液状のマトリックス樹脂を未硬化状態で充填し、この溶融状態のマトリックス樹脂6中に植物繊維シート2または3を含有させて固化する。さらに、必要に応じて板状のものを養生し、加熱・圧縮成形をすることで、機械強度の向上や寸法の安定をはかることができる。
【0029】
かかる繊維強化プラスチックは、強化材である植物繊維シート2または3を含有しているので、強度が向上するうえに、植物繊維1の細胞壁4の内部の空隙5に含浸用樹脂を含浸しているので、水分を吸収する量が低減して寸法の安定性に優れたものとなる。
【0030】
なお、本実施形態では、植物繊維シート2または3の具体的適用例として、繊維強化プラスチックを示したが、この植物繊維シートは、漆喰の補強材のような構造材の補強材としても利用可能である。
【0031】
(実施例1)
ケナフ茎部の外皮部分となる靱皮から得られたケナフ繊維束を切断及び解繊することにより、繊維束の平均長さが50mmのケナフ繊維を得た。試料を乾燥炉によって全乾状態にして含水率を求める全乾法により、このケナフ繊維の含水率を測定した結果、含水率は10%であった。なお。含水率は以下の式で定義される。
【0032】
含水率(%)=(w1―w2)/w2×100
ここで、w1は全乾状態にする前の繊維質量、w2は全乾状態での繊維質量をそれぞれ表している。
【0033】
このケナフ繊維の繊維方向が無配向となるようにシート状に配置した後、ケナフ繊維と繊維状のポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂(帝人株式会社製、融点140℃)とが質量比で4:1となるように混合して絡み合わせた。これを、170℃で30秒間、加熱処理することで、ケナフ繊維をPET樹脂で接着させた植物繊維シートの中間物を作製した。
【0034】
次に、前記植物繊維シートの中間物に、含浸用樹脂を含浸することで、植物繊維シートとする。本実施例では、含浸用樹脂として、フェノール樹脂(群栄化学工業株式会社製PL4664)を用いた。このフェノール樹脂の分子量を、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)法により測定した結果、平均値が450であり、500以下のものが約90%を占めていた。なお、GPC法の測定装置は東ソー株式会社製HLC802A、カラムはG1000HとG2000Hを各2本ずつ、溶離液はTHF溶液、検出器は示差屈折計を用いた。前記植物繊維シートの中間物を前記フェノール樹脂に大気圧下で浸漬することで、植物繊維の細胞壁内の空隙に含浸用樹脂を含浸させた。こうして得られた植物繊維シートの表面をハンドローラーで軽く圧力を加えながら絞ることで、表面や植物繊維の間等に残った余分な樹脂を取り除いた。このようにして、面密度80g/mの植物繊維シートを得た。
【0035】
さらに、前記植物シートを強化材として、マトリックス樹脂中に含有させることで、繊維強化プラスチックを作製する。本実施例では、マトリックス樹脂として、不飽和ポリエステル樹脂(松下電工株式会社製SD−4200)を用い、前記植物繊維シートを10枚積層したものを液体のマトリックス樹脂中に含有させた後に、マトリックス樹脂を硬化させて、板状の成形材とした。さらに、この板状成形材を40℃で7時間養生した後、表面温度が135℃の熱板プレスで4分間、圧縮成形することで、形状が縦横300mm、厚さ5mmで、比重が1.6の繊維強化プラスチックを得た。
【0036】
(実施例2)
実施例1と同一のケナフ繊維を用い、同一の方法で植物繊維シートの中間物を作成した。本実施例では、含浸用樹脂として、実施例1とは異なるフェノール樹脂(群栄化学工業株式会社製PL4630)を用いた。このフェノール樹脂の分子量を、GPC法により測定した結果、平均値が970で、500以下のものが約10%存在していた。このフェノール樹脂を用いて、実施例1と同一の条件で中間物の植物繊維に樹脂を含浸させることで、面密度が同じである植物繊維シートを得た。さらに、実施例1と同一のマトリックス樹脂を用いて、同一条件で繊維強化プラスチックを作製した。得られた繊維強化プラスチックの形状・比重も同じであった。
【0037】
(実施例3)
実施例1と同一のケナフ繊維を用い、同一の方法で植物繊維シートの中間物を作成した後、これを105℃で3時間乾燥させた。この後、含浸用樹脂は、実施例1と同一のものを用いて、実施例1と同一の条件で中間物の植物繊維に樹脂を含浸させて、面密度が同じである植物繊維シートを得た。さらに、実施例1と同一のマトリックス樹脂を用いて、同一条件で繊維強化プラスチックを作製した。得られた繊維強化プラスチックの形状・比重も同じであった。ここで、乾燥後のケナフ繊維の含水率を実施例1と同一の測定方法で測定した結果、含水率は1%であった。
【0038】
(実施例4)
実施例1と同一のケナフ繊維を用い、同一の方法で植物繊維シートの中間物を作成した後、これを0.1気圧の雰囲気下に5分間保持することで、乾燥させた。この後、含浸用樹脂は、実施例1と同一のものを用いて、実施例1と同一の条件で中間物の植物繊維に樹脂を含浸させて、面密度が同じである植物繊維シートを得た。さらに、実施例1と同一のマトリックス樹脂を用いて、同一条件で繊維強化プラスチックを作製した。得られた繊維強化プラスチックの形状・比重も同じであった。ここで、乾燥後のケナフ繊維の含水率を実施例1と同一の測定方法で測定した結果、含水率は1%であった。
【0039】
(実施例5)
実施例1と同一のケナフ繊維を用い、同一の方法で植物繊維シートの中間物を作成した後、これを0.1気圧の雰囲気下に5分間保持することで、乾燥させた。この後、含浸用樹脂は、実施例1と同一のものを用いて、前記低圧雰囲気下で中間物の植物繊維に樹脂を含浸させた。さらに、この後、これを10気圧の加圧雰囲気下に5分間保持して、面密度が同じである植物繊維シートを得た。この後、実施例1と同一のマトリックス樹脂を用いて、同一条件で繊維強化プラスチックを作製した。得られた繊維強化プラスチックの形状・比重も同じであった。ここで、乾燥後のケナフ繊維の含水率を実施例1と同一の測定方法で測定した結果、含水率は1%であった。
【0040】
(比較例)
実施例1と同一のケナフ繊維を用い、同一の方法で植物繊維シートの中間物を作成した。この後、この中間物を用いて(含浸用樹脂を含浸することなく)、実施例1と同一のマトリックス樹脂を用いて、同一条件で繊維強化プラスチックを作製した。得られた繊維強化プラスチックの形状・比重も同じであった。
【0041】
(特性評価)
前記の実施例1〜5及び比較例で得られた板状の繊維強化プラスチックについて、水分吸収試験による寸法変化を測定した。具体的には、90℃の湯浴に8時間浸漬したときの厚さ膨張率を測定した。ここで、厚さ膨張率は以下の式で定義される。
【0042】
厚さ膨張率(%)=(d2―d1)/d1×100
ここで、d2は湯浴浸漬後の厚さ、d1は湯浴浸漬前の厚さをそれぞれ表している。
【0043】
また、試験は、各5個の試料を用いて行い、それぞれの平均値を求めた。以下に、各繊維強化プラスチックの厚さ膨張率の測定結果を示す。実施例1〜5の繊維強化プラスチックの厚さ膨張率は、いずれも、比較例の繊維強化プラスチックの厚さ膨張率よりも小さくなっている。
実施例1:0.38%
実施例2:0.53%
実施例3:0.35%
実施例4:0.31%
実施例5:0.25%
比較例 :0.58%
実施例1の平均分子量が450の含浸用樹脂を植物繊維に含浸した繊維強化プラスチックは、含浸用樹脂を含浸していない比較例の繊維強化プラスチックよりも、厚さ膨張率が約65%に小さくなっている。つまり、フェノール樹脂を植物繊維の細胞壁内の空隙に含浸することで、水分を吸収しにくくなり、水中に放置されたときの寸法安定性が良好になっている。
【0044】
実施例2の平均分子量が970の含浸用樹脂を植物繊維に含浸した繊維強化プラスチックは、含浸用樹脂を含浸していない比較例の繊維強化プラスチックと比べて、厚さ膨張率がわずかに小さくなっている。つまり、分子量が500を超えると、含浸用樹脂が植物繊維の細胞壁内の空隙に含浸しにくくなる。このために、残存している空隙に水の分子が侵入し易くなり、水中に放置されたときの寸法安定性への効果が小さくなっている。
【0045】
実施例3の加熱乾燥により含水率を低減した植物繊維に、平均分子量が450の含浸用樹脂を含浸した繊維強化プラスチックは、植物繊維を乾燥させていない実施例1の繊維強化プラスチックよりも、さらに厚さ膨張率が小さくなっている。つまり、含水率を低減した植物繊維にフェノール樹脂を含浸することにより、細胞壁内の空隙への樹脂含浸が進行し易くなる。このことで、より水分を吸収しにくくなり、水中に放置されたときの寸法安定性がさらに良好になっている。
【0046】
実施例4の減圧雰囲気下での乾燥により含水率を低減した植物繊維に、平均分子量が450の含浸用樹脂を含浸した繊維強化プラスチックは、実施例3の繊維強化プラスチックよりも、さらに厚さ膨張率が小さくなっている。つまり、減圧により含水率を低減した植物繊維にフェノール樹脂を含浸することにより、細胞壁内の空隙への樹脂含浸が、実施例3よりも進行し易くなる。このことで、より水分を吸収しにくくなり、水中に放置されたときの寸法安定性がさらに良好になっている。
【0047】
実施例5の減圧雰囲気下での乾燥により含水率を低減した植物繊維に、平均分子量が450の含浸用樹脂を含浸した後に加圧雰囲気下で保持した繊維強化プラスチックは、実施例4の繊維強化プラスチックよりも、さらに厚さ膨張率が小さくなっている。つまり、植物繊維にフェノール樹脂を含浸した後に加圧することにより、細胞壁内の空隙への樹脂含浸が、実施例4よりも進行し易くなる。このことで、より水分を吸収しにくくなり、水中に放置されたときの寸法安定性がさらに良好になっている。
【0048】
【発明の効果】
請求項1に係る植物繊維シートは、植物繊維をシート状に形成してなるものにおいて、前記植物繊維の細胞壁内の空隙に樹脂を含浸してなるので、水分を吸収しにくくなり、水中に放置されたときの寸法安定性の安定性が良好となる。
【0049】
請求項2に係る植物繊維シートは、請求項1記載の構成において、前記樹脂が、熱硬化性樹脂のモノマーまたはオリゴマーの少なくともいずれかを含んでいるので、植物繊維の細胞壁内の空隙に樹脂が含浸し易くなる。このため、請求項1の効果に加えて、植物繊維シートは水分をより吸収しにくくなり、水中に放置されたときの寸法安定性がさらに良好になる。
【0050】
請求項3に係る植物繊維シートは、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記樹脂の分子量が100以上500以下であるので、植物繊維の細胞壁内の空隙に樹脂がさらに含浸し易くなる。このため、請求項1又は請求項2のいずれかの効果に加えて、植物繊維シートは水分をより吸収しにくくなり、水中に放置されたときの寸法安定性がさらに良好になる。
【0051】
請求項4に係る植物繊維シートは、請求項1乃至請求項3記載の植物繊維シートにおいて、前記樹脂がフェノール樹脂であるので、他の含浸用樹脂と比べると植物繊維との親和性が良好であり、植物繊維の細胞壁内の空隙に樹脂がさらに含浸し易くなる。このために請求項1乃至請求項3のいずれかの効果に加えて、植物繊維シートは水分をより吸収しにくくなり、水中に放置されたときの寸法安定性がさらに良好になる。
【0052】
請求項5に係る植物繊維シートの製造方法は、請求項1乃至請求項4記載の植物繊維シートの製造方法であって、前記植物繊維をシート状に形成し、次に、前記植物繊維の含水率を低減し、次に、植物繊維の細胞壁内の空隙に樹脂を含浸するので、植物繊維の細胞壁内の空隙に樹脂がさらに含浸し易くなる。このために請求項1乃至請求項4のいずれかの効果に加えて、植物繊維シートは水分をより吸収しにくくなり、水中に放置されたときの寸法安定性がさらに良好になる。
【0053】
請求項6に係る植物繊維シートの製造方法は、請求項5記載の植物繊維シートの製造方法であって、前記植物繊維の含水率を低減する方法が、減圧雰囲気下に前記植物繊維を保持する方法であるので、植物繊維の細胞壁内の空隙に樹脂がさらに含浸し易くなる。このために請求項5の効果に加えて、植物繊維シートは水分をより吸収しにくくなり、水中に放置されたときの寸法安定性がさらに良好になる。
【0054】
請求項7に係る植物繊維シートの製造方法は、請求項5又は請求項6記載の植物繊維シートの製造方法であって、減圧雰囲気下で前記植物繊維の細胞壁内の空隙に樹脂を含浸するので、植物繊維の細胞壁内の空隙に樹脂がさらに含浸し易くなる。このために請求項6又は請求項7の効果に加えて、植物繊維シートは水分をより吸収しにくくなり、水中に放置されたときの寸法安定性がさらに良好になる。
【0055】
請求項8に係る植物繊維シート又の製造方法は、請求項5乃至請求項7記載の植物繊維シートの製造方法であって、前記植物繊維の細胞壁内の空隙に樹脂を含浸した植物繊維シートを加圧雰囲気下で保持するので、植物繊維の細胞壁内の空隙に樹脂がさらに含浸し易くなる。このために請求項5乃至請求項7のいずれかの効果に加えて、植物繊維シートは水分をより吸収しにくくなり、水中に放置されたときの寸法安定性がさらに良好になる。
【0056】
請求項9に係る繊維強化プラスチックは、請求項1乃至請求項9記載の植物繊維シートを強化材として含有しているので、水分を吸収しにくくなり、水分の存在下でも繊維強化プラスチックの寸法の安定性が良好となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1に係る不織布である植物繊維シートの平面図である。
【図2】同じく、織布である植物繊維シートの平面図である。
【図3】同じく、植物繊維の細胞壁内部の断面図で、(a)は含浸用樹脂を含浸する前の状態の断面図であり、(b)は含浸用樹脂を含浸した後の状態の断面図でである。
【図4】実施形態2に係る繊維強化プラスチックの断面図である。
【図5】同じく、繊維強化プラスチックの別の例の断面図である。
【符号の説明】
1 植物繊維
2 植物繊維シート(不織布)
3 植物繊維シート(織布)
4 植物繊維の細胞壁
5 植物繊維の細胞壁内の空隙
6 マトリックス樹脂

Claims (9)

  1. 植物繊維をシート状に形成してなる植物繊維シートにおいて、前記植物繊維の細胞壁内の空隙に樹脂を含浸してなることを特徴とする植物繊維シート。
  2. 前記樹脂は、熱硬化性樹脂のモノマーまたはオリゴマーの少なくともいずれかを含んでいることを特徴とする請求項1記載の植物繊維シート。
  3. 前記樹脂は、その分子量が100以上500以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の植物繊維シート。
  4. 前記樹脂は、フェノール樹脂であることを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の植物繊維シート。
  5. 植物繊維をシート状に形成し、次に、その植物繊維の含水率を低減し、次に、その植物繊維の細胞壁内の空隙に請求項1乃至請求項4記載のいずれかの樹脂を含浸することを特徴とする植物繊維シートの製造方法。
  6. 前記植物繊維の含水率の低減は、減圧雰囲気下に植物繊維を保持するものであることを特徴とする請求項5記載の植物繊維シートの製造方法。
  7. 前記植物繊維の細胞壁内の空隙への樹脂の含浸は、減圧雰囲気下で行うことを特徴とする請求項5又は請求項6記載の植物繊維シートの製造方法。
  8. 前記植物繊維の細胞壁内の空隙に樹脂を含浸した植物繊維シートを加圧雰囲気下で保持することを特徴とする請求項5乃至請求項7記載の植物繊維シートの製造方法。
  9. 請求項1乃至請求項8記載の植物繊維シートを強化材として含有することを特徴とする繊維強化プラスチック。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2011062007A1 (ja) 2009-11-17 2011-05-26 倉敷紡績株式会社 繊維強化樹脂用紡績糸と中間体及びこれを用いた繊維強化樹脂成形体
WO2011099611A1 (ja) 2010-02-15 2011-08-18 倉敷紡績株式会社 繊維強化樹脂用シート及びこれを用いた繊維強化樹脂成形体
JP2015151475A (ja) * 2014-02-14 2015-08-24 ユニチカトレーディング株式会社 繊維強化プラスチック

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