JP2004149335A - カーボンナノチューブの製造方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】炭素材料を陰極1として陽極電極3との間にて直流アーク放電を行うことにより、カーボンナノチューブを合成するカーボンナノチューブの製造方法であって、炭素材料は、材質が主として炭素質であることを特徴とする。
また、炭素材料は、その電気抵抗値が4000μΩ・cm以上もしくは熱伝導率が40W/mK以下であることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はアーク放電法によってカーボンナノチューブを製造するカーボンナノチューブの製造方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
カーボンナノチューブとは、炭素原子が6角形に規則正しく並んだグラフェンシートが円筒形に丸まったものであり、特異な物性を有していることから、新素材として注目されている。このようなカーボンナノチューブは、2つの炭素材料間にてアーク放電を行うことにより、陰極側の炭素電極側に凝集する堆積物中及びアーク周辺部に飛散する煤状物中に形成されることが知られている。そして、アーク放電法によってカーボンナノチューブの収率を向上させるための技術が種々提案されている。
【0003】
例えば、希ガス中でアーク放電し、カーボンを蒸発させた後凝縮させてカーボンナノチューブを形成させるに際し、希ガスで満たされた反応チャンバーの温度範囲を1000℃〜4000℃としてアーク放電することで、長さと直径の分布のそろったカーボンナノチューブを製造するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、炭素陽極と炭素陰極の両方を円筒形状のカーボンヒータで覆い、カーボンヒータの放熱温度が500℃〜2000℃となるようにしてアーク放電を行うようにすることで、生成されるカーボンナノチューブの純度及び収量を増加させるようにしたものもある(例えば、特許文献2参照)。
さらに、炭素電極からなる陽極の先端部分を加熱した後、アーク放電することにより均質なカーボンナノチューブを効率よく生成することが出来るとしているものもある(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−157016号公報
【特許文献2】
特開2000−203820号公報
【特許文献3】
特開2000−344505号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1のように反応チャンバー全体の温度を上げる場合、製造装置が複雑になるという問題がある。
また、両電極または陽極のみを加熱する場合は、陽極電極の消耗量が大きい割りにカーボンナノチューブの合成比率が低いという問題がある。
【0007】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、製造装置の単純化ができると共に生成されるカーボンナノチューブの合成比率を高めることを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るカーボンナノチューブの製造方法は、炭素材料を陰極として陽極電極との間にて直流アーク放電を行うことにより、カーボンナノチューブを合成する方法であって、前記炭素材料は、材質が主として炭素質であることを特徴とするものである。
【0009】
また、炭素材料を陰極として陽極電極との間にて直流アーク放電を行うことにより、カーボンナノチューブを合成するカーボンナノチューブの製造方法であって、前記炭素材料は、その電気抵抗値が4000μΩ・cm以上もしくは熱伝導率が40W/mK以下であることを特徴とするものである。
【0010】
また、陰極と陽極の相対位置を移動させながら直流アーク放電を行うことを特徴とするものである。
【0011】
また、大気雰囲気中にてアーク放電を行うことを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明に係るカーボンナノチューブの製造装置は、炭素材料からなる陰極電極と、該陰極電極と所定の間隔を離して対向配置された陽極電極と、該陽極電極及び前記陰極電極に接続されてこれらの電極間にアーク放電を起こさせるアーク放電用電源とを備えてなり、前記炭素材料は、材質が主として炭素質であることを特徴とするものである。
【0013】
また、炭素材料からなる陰極電極と、該陰極電極と所定の間隔を離して対向配置された陽極電極と、該陽極電極及び前記陰極電極に接続されてこれらの電極間にアーク放電を起こさせるアーク放電用電源とを備えてなり、前記炭素材料は、その電気抵抗値が4000μΩ・cm以上もしくは熱伝導率が40W/mK以下であることを特徴とするものである。
【0014】
また、陰極電極と陽極電極を相対的に移動させる移動手段を備えたことを特徴とするものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
具体的な実施の形態を説明する前に、本発明がなされるに至った経緯を説明する。
アーク放電によるカーボンナノチューブ合成の一般的な考えは、主として陽極炭素電極から発生した炭素蒸気および炭素イオンが陰極側に拡散し、陽極より温度の低い陰極電極表面にて凝縮することによりカーボンナノチューブ(特に多層カーボンナノチューブ)が合成されるというものである。
【0016】
そのため、陰極の温度は低い方がカーボンナノチューブの成長速度が速く、陰極材料は耐熱性伝導材料であれば炭素材料である必要もないと考えられている。このような考えを前提として、陽極からの炭素蒸気および炭素イオンを増加させることがカーボンナノチューブの合成比率を高めることに大きく寄与するものとされていた。
このため、従来例で示したようにカーボンナノチューブの収量を大きくするために、反応系全体、あるいは陽極の加熱が行われていたのである。
【0017】
しかしながら、本願発明者の実験によると、陽極からの炭素蒸気および炭素イオンのみを増加させても黒鉛質炭素紛もしくは非晶質炭素紛が陰極表面に多量に付着し、カーボンナノチューブの合成比率の低いものしか生成できなかった。
そこで、本願発明者は種々実験を繰り返した結果、カーボンナノチューブの合成比率を高める重要なファクターは陽極側ではなく、陰極側にあるのではないかとの知見を得た。
【0018】
そこで、アーク放電によるカーボンナノチューブの合成に用いられる陰極炭素材料について考察した。
アーク放電によるカーボンナノチューブの合成に用いられる陰極炭素材料は、一般的に次のような工程にて製造される。
石油系または石炭系の各種コークス粉等を原料の炭素質粉とし、それにコールタールピッチや石油系ピッチ等の各種ピッチ類等を結合材とし混合・撹拌する。このように得られた有機物を型込成形、押出成形、CIP形成などの方法により形成し、一般に1500℃以下の温度にて焼成処理を行う。この時点で、原料有機物は重縮合をほぼ完了し、炭素化された状態となる。
【0019】
その後、必要に応じて各種ピッチ類等を含浸し、再熱処理を行ったり、さらに必要により、3000℃以下の温度にて黒鉛化熱処理を行う。このようにして、必要とされる機械性能および物性を有する炭素材料が製造されている。
製造された炭素材料は、原料や製造方法および製造時の熱処理温度により、その構造、組織、機械的特性や物性などが大きく異なる。
【0020】
そこで、まず製造時の熱処理温度に着目して、この熱処理温度の異なる種々の炭素材料を陰極材料として用いてアーク放電を行い、カーボンナノチューブの合成量を比較した。
その結果、製造時の熱処理温度が1500℃以下の低温処理の炭素材料を用いると多くのカーボンナノチューブを合成できることが判明した。
製造時の熱処理温度が1500℃以下の炭素材料は、炭素の黒鉛化がほとんど進んでいない炭素からなる、いわゆる炭素質といわれる炭素材料である。
つまり、発明者は、炭素陰極材料として炭素質を用いることで、カーボンナノチューブの収量を贈大させることができるとの知見を得たのである。
【0021】
次に、何故、製造時の熱処理温度が1500℃以下の炭素質材料を用いた場合にカーボンナノチューブの収量を高めることができたのかについて考察した。
この考察に際し、製造時の熱処理温度が低いものと、高温処理したものとを用いてアーク放電を行い、それぞれの放電部をサーモビューアで観察した(図4参照)。図4において、陰極材料Fが低温熱処理のものであり、陰極材料Dが高温熱処理のものである。図4から分かるように、熱処理温度が低い陰極材料Fは放電部の高温領域が広くなっていることが分かる。このことから、発明者はカーボンナノチューブ生成の重要なファクターとして、炭素陰極の放電部の温度が関係しているとの知見得た。
【0022】
そこで、次に、陰極炭素材料の製造時の熱処理温度と、放電部の温度との関係を考察した。
炭素陰極材料に関し、放電部の温度に重要な影響をもたらす因子として、電気抵抗値(固有抵抗)および熱伝導率が考えられる。
ところで、熱処理温度の比較的低い炭素材料は、黒鉛化(結晶化)度が低いため、電気抵抗値(固有抵抗)が高く、熱伝導率の低いものとなる。つまり、このような材料を陰極材料として用いると、アーク発生部の陰極電極はアーク放電時に高い電流密度であるので、電気抵抗発熱のため陰極点近傍が高温度となり、また、熱伝導率が低いため熱が逃げにくく、陰極点近傍の狭い範囲がより高温に加熱されることになる。そのため、陰極の温度がカーボンナノチューブの生成されやすい温度範囲となり、収量ならびに純度の高いカーボンナノチューブが生成したものと考えられる。
【0023】
つまり、発明者は、カーボンナノチューブ生成と陰極炭素材料の性質として、電気抵抗値(固有抵抗)が高いこと、また、熱伝導率の低いことが有用な性質であるとの知見を得たのである。
【0024】
次に、発明者は、陰極炭素材料の製造時の熱処理温度、及び電気抵抗値(固有抵抗)、熱伝導率を具体的に特定するために、各種炭素材料を陰極に用いてアーク放電を行い、この際のカーボンナノチューブ生成の有無と合成されたカーボンナノチューブの純度について調査を行った。
その結果を表1に示す。
【表1】
表1において、カーボンナノチューブ(表中CNTと表記した。)の純度、収量については、アーク放電終了後、陰極に付着した生成物を調べたものである。
【0025】
なお、放電条件は以下の通りである。
(1)炭素陰極:直径36mmの棒状炭素材料で材質を種々変更(A〜G)
(2)陽極 :直径10mmの棒状炭素陽極
(3)放電用ガス:Arガス(陽極放電発生部に供給)
(4)雰囲気ガス:大気雰囲気
【0026】
表1に示されるように、カーボンナノチューブが高純度で多く生成された陰極炭素材料は、表1中、A、F、Gであった。これらは全て材質が炭素質であり、製造時の熱処理温度が1000℃から1500℃のものであった。
一方、表1中、A、F、G以外のものは、材質が黒鉛質、あるいは黒鉛質と炭素質の混ざったものであった。
このことから、カーボンナノチューブが高純度で多く生成するための陰極炭素材料の条件として、材質が炭素質であることが必要であることが確認できたと共に、そのための製造時の熱処理温度としては1000℃から1500℃の範囲にあることが必要であることが分かった。
【0027】
また、陰極炭素材料A、F、Gの固有抵抗値は、それぞれ5900μΩ・cm、4600μΩ・cm、11000μΩ・cmであった。一方、カーボンナノチューブの収量及び純度が普通程度であった陰極炭素材料Eの固有抵抗値は3500μΩ・cmであった。
このことから、陰極炭素材料の固有抵抗値は、3500μΩ・cmより大きく、好ましくは4000μΩ・cm以上であればよいことが分かる。
【0028】
また、陰極炭素材料A、F、Gの熱伝導率は、それぞれ23W/mK、31W/mK、20W/mKであった。一方、カーボンナノチューブの収量及び純度が普通程度であった陰極炭素材料Eの熱伝導率は52W/mKであった。
このことから、陰極炭素材料の熱伝導率は、52W/mKより小さく、好ましくは40W/mK以下であればよいことが分かる。
【0029】
なお、上記の実験において、陽極炭素材料の材質を変更したが、カーボンナノチューブの収量及び純度にはほとんど影響がなかった。このことからも、陰極炭素材料の材質こそがカーボンナノチューブの収量及び純度に大きく影響することが確認できた。
【0030】
以上詳細に説明したように、本発明は、従来カーボンナノチューブ生成には陽極、特に陽極温度が重要なファクターであるとの既成概念を打破し、陰極の材質に着目するという発想転換から生まれたものである。
そして、発明者が具体的に得た知見は、製造時の熱処理温度が1000℃から1500℃である材質が炭素質からなる炭素材料を陰極として用いることで純度の高いカーボンナノチューブを生成できこと、および、電気抵抗値が4000μΩ・cm以上、熱伝導率が40W/mK以下となる炭素材料を陰極として用いることで純度の高いカーボンナノチューブを生成できことである。
もっとも、たとえ製造時の熱処理温度が1000℃から1500℃の範囲内でなかったとしても、原料炭素質粉や結合材材質を変化させて電気抵抗値が4000μΩ・cm以上、熱伝導率が40W/mK以下となる炭素材料であればよい。
【0031】
なお、通常電極用として使用されている炭素電極の電気抵抗値は500から2000μΩ・cm程度の範囲であり、また熱伝導率は、50から200W/mKの範囲であり、本発明で用いる炭素材料はこれらのものとは大きく異なるものである。
【0032】
以下、上記のような材質からなる陰極炭素電極を用いたカーボンナノチューブ製造装置について説明する。
図1は本発明の一実施の形態の構成説明図であり、カーボンナノチューブ製造装置の基本的な構成を示したものである。
本実施の形態のカーボンナノチューブ製造装置は、炭素材料からなる炭素陰極1、炭素材料からなる陽極3、アーク放電発生用直流電源5、陽極冷却手段7から構成されている。
【0033】
炭素陰極1と陽極3は適当な間隙を介して配置され、それぞれアーク放電発生用直流電源5に接続される。炭素陰極1の材質は、製造時の熱処理温度が1000℃から1500℃の範囲内のもので炭素質からなるもの、または、原料炭素質粉や結合材材質を変化させて電気抵抗値を4000μΩ・cm以上、熱伝導率を40W/mK以下としたものである。
なお、炭素陰極1と陽極3は反応チャンバーに入れてもよいし、あるいは容器外の大気雰囲気下でも構わない。
陽極冷却手段7は、例えば陽極3の放電発生部近傍に取り付けられた水冷銅であり、放電発生部近傍の陽極外周を冷却する。
【0034】
また、陽極側には、図示していない放電ガス供給手段が設けられており、例えば不活性ガス好ましくはArガス、およびこれらのガスを含む混合ガスを、陽極3から炭素陰極1に至る放電発生空間に、陽極側から陰極側に向けて連続供給できるように構成されている。ここに言う放電発生空間とは、陽極側から陰極側に至るアークの発生空間をいう。このように、放電発生空間に不活性ガスを連続供給することで、ガスの電離度が高くなってガス流経路に沿ってアークが発生し、その陰極点の移動が抑制される。これによって、固定された陰極点で高純度のカーボンナノチューブが合成されることになる。
【0035】
上記のように構成されたカーボンナノチューブ製造装置によってカーボンナノチューブを製造するには、陽極冷却手段7によって陽極の放電発生部近傍を冷却した状態で放電用ガス供給手段から放電発生空間に不活性ガスを供給してアーク放電を行う。
【0036】
このとき、炭素陰極1が上記の材質であり、かつ炭素陰極はアーク放電時に高い電流密度であることから、アーク発生部は電気抵抗発熱のため陰極点近傍が高温度となる。また、炭素陰極1は熱伝導率が低いため、陰極点近傍の狭い範囲がより高温に加熱されることになる。そのため、陰極の温度がカーボンナノチューブの生成されやすい温度範囲となり、収量ならびに純度の高いカーボンナノチューブが生成される。
【0037】
また、陽極冷却手段7による冷却により陽極3の過熱を防ぐことができ、陽極3の過度の蒸発を抑制できる。これにより、蒸発した陽極材料が生成されたカーボンナノチューブ表面に不純物として付着し、純度を下げるのを抑制できる。さらに、陽極3の消耗を抑えることができ、陽極の長寿命化が図られる。
【0038】
なお、上記実施の形態においては、炭素陰極1と陽極3は反応チャンバーに入れてもよいし、あるいは容器外の大気雰囲気下でも構わないとした。
しかし、大気雰囲気下で放電を行うようにすれば、密閉したチャンバー内での合成法に比べ、装置が簡略化でき、操作性もいたって向上する。また、合成直後の陰極生成物が高温で大気と触れ合うため、結晶的構造欠陥の多い不純物である多結晶黒鉛や非晶質カーボンが優先的に酸化・燃焼し、高純度のカーボンナノチューブから成る生成物を合成することができる。
【0039】
実施の形態2.
カーボンナノチューブ合成方法においては、アークが集中した中心部に高純度のカーボンナノチューブから成る生成物が得られるが、常に同一場所にて放電を行うと、徐々に単位時間当りのカーボンナノチューブの合成量が低下してくる。これは、合成されたカーボンナノチューブが長時間アークに曝されことから、カーボンナノチューブの合成過程と分解過程が同時に進行しているためであると考えられる。
そこで、本実施の形態においては両電極の相対位置を連続的に移動させ、アークの陰極点を陰極材料上で連続的に移動させるようにしたものである。以下、具体的に説明する。
【0040】
本実施の形態のカーボンナノチューブ製造装置は、実施の形態1と同様の材質からなる炭素陰極1、陽極3、アーク放電発生用直流電源5、陽極冷却手段7、陽極3を炭素陰極1に対して相対的に移動させる移動機構9から構成されている。
【0041】
移動機構9はレール11上を所定速度で走行できる台車13から構成され、台車13に陽極3が取り付けられている。
陽極冷却手段7は実施の形態1と同様のものであり、陽極3の放電発生部近傍に設置された水冷銅である。
【0042】
以上のように構成されたカーボンナノチューブ製造装置によってカーボンナノチューブを製造する方法について説明する。
基本的な装置の動作は実施の形態1と同様であり、陽極3の放電発生部近傍を冷却しながら、図示しない放電用ガス供給手段から放電発生空間に不活性ガスを噴射してアーク放電を行いつつ、台車13を所定の速度、例えば10cm/minで移動させる。
【0043】
このようにすることで、両電極の相対位置を連続的に移動させ、アークの陰極点を陰極材料上で連続的に移動させることができる。これにより、カーボンナノチューブの合成量に対する分解量の割合を減少でき、適正な移動速度においては常に単位時間当りのカーボンナノチューブの合成量を最大にすることができる。
【0044】
なお、上記の実施の形態2においては、炭素陰極1の例として、平板又は角柱状のものを想定し、陽極3が炭素陰極1の表面に沿う方向に移動する例を示した。
しかし、本発明はこれに限られるものではなく、例えば図3の模式図に示すように、炭素陰極1として円柱状のものを用いて該炭素陰極1を回転させると共に、陽極3を円柱の軸線方向に移動させ、螺旋を描く形で陰極点を移動させるようにしてもよい。
【0045】
(実施例)
上記実施形態の装置を用いて、以下の条件で実際に放電を行った。
(1)陽極電極:外径6mmの円柱状炭素電極
(2)陰極電極:直径35mmの円柱状炭素電極
(3)陰極電極の回転速度:1.5回転/分
(4)陽極電極の移動速度:35mm/分
(5)雰囲気ガス:大気雰囲気中(圧力は大気圧)
(6)放電条件:電流100A、電圧20V(アーク長約1mm)
【0046】
アーク放電後、陰極電極上で陰極点が移動した螺旋状の位置に、幅2mm〜3mm程度、厚さ100ミクロン程度の高純度カーボンナノチューブが合成された。なお、このカーボンナノチューブテープの幅および厚さは、電極の形状、サイズおよび合成条件により変化させることができる。
【0047】
上記の実施の形態においては、陽極として炭素電極を用いた例を挙げたが、この陽極電極は特に特性に制限はなく、黒鉛化された炭素材料を用いてもよい。
また、必ずしも炭素材料を用いる必要もなく、例えば水冷銅電極などの非消耗金属電極を用いてもよい。
【0048】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明においては、材質が主として炭素質の炭素材料を陰極として用いてアーク放電を行うようにしたので、簡単な装置でカーボンナノチューブの収量を多くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態の構成の説明図である。
【図2】本発明の他の実施の形態の構成の説明図である。
【図3】本発明の他の実施の形態の他の態様の説明図である。
【図4】放電部の温度状態を説明するための説明図である。
【符号の説明】
1 炭素陰極
3 陽極
5 アーク放電用電源
7 陽極冷却手段
9 移動機構
Claims (7)
- 炭素材料を陰極として陽極電極との間にて直流アーク放電を行うことにより、カーボンナノチューブを合成するカーボンナノチューブの製造方法であって、
前記炭素材料は、材質が主として炭素質であることを特徴とするカーボンナノチューブの製造方法。 - 炭素材料を陰極として陽極電極との間にて直流アーク放電を行うことにより、カーボンナノチューブを合成するカーボンナノチューブの製造方法であって、
前記炭素材料は、その電気抵抗値が4000μΩ・cm以上もしくは熱伝導率が40W/mK以下であることを特徴とするカーボンナノチューブの製造方法。 - 陰極と陽極の相対位置を移動させながら直流アーク放電を行うことを特徴とする請求項1又は2記載のカーボンナノチューブの製造方法。
- 大気雰囲気中にてアーク放電を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカーボンナノチューブの製造方法。
- 炭素材料からなる陰極電極と、該陰極電極と所定の間隔を離して対向配置された陽極電極と、該陽極電極及び前記陰極電極に接続されてこれらの電極間にアーク放電を起こさせるアーク放電用電源とを備えてなり、
前記炭素材料は、材質が主として炭素質であることを特徴とするカーボンナノチューブ製造装置。 - 炭素材料からなる陰極電極と、該陰極電極と所定の間隔を離して対向配置された陽極電極と、該陽極電極及び前記陰極電極に接続されてこれらの電極間にアーク放電を起こさせるアーク放電用電源とを備えてなり、
前記炭素材料は、その電気抵抗値が4000μΩ・cm以上もしくは熱伝導率が40W/mK以下であることを特徴とするカーボンナノチューブ製造装置。 - 陰極電極と陽極電極を相対的に移動させる移動手段を備えたことを特徴とする請求項5又は6記載のカーボンナノチューブ製造装置。
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