JP2004148206A - 土壌の浄化方法および浄化装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】アルカリや過酸化水素水等の二次汚染物質の排出がなく、油により汚染された土壌から油を迅速に分離、分解する土壌の浄化装置を提供する。
【解決手段】液体2aを収容するキャビテーション槽2と、このキャビテーション槽2に収容された液体2aの圧力を、大気圧よりも高い圧力にするための圧力調整手段5と、このキャビテーション槽2に収容された液体2aに高圧水を噴射することにより、液体2aの少なくとも一部にキャビテーションが発生するキャビテーション領域8を形成するための高圧水噴射装置3と、キャビテーション領域8に、油により汚染された土壌またはこの土壌と水とを混合したスラリーを供給するための土壌またはスラリー供給装置4とを備える土壌の浄化装置1である。
【選択図】 図1
【解決手段】液体2aを収容するキャビテーション槽2と、このキャビテーション槽2に収容された液体2aの圧力を、大気圧よりも高い圧力にするための圧力調整手段5と、このキャビテーション槽2に収容された液体2aに高圧水を噴射することにより、液体2aの少なくとも一部にキャビテーションが発生するキャビテーション領域8を形成するための高圧水噴射装置3と、キャビテーション領域8に、油により汚染された土壌またはこの土壌と水とを混合したスラリーを供給するための土壌またはスラリー供給装置4とを備える土壌の浄化装置1である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、土壌の浄化方法および浄化装置に関するものであり、具体的には、油が付着して汚染された土壌から油を効率よく分離および分解するための土壌の浄化方法および浄化装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
環境意識が高まるなか、汚染された土壌を浄化することが強く求められている。特に、油により汚染された土壌は全国的に広く存在するため、かかる土壌が存在する現地で迅速に浄化する技術の開発が急務となっている。そこで、これまでにも、油により汚染された土壌を浄化する技術が多数提案されている。なお、一般的に、油は石油系油(ガソリン、燃料、タール、原油等)と非石油系油(植物油、動物油)とに分類されるが、本明細書において「油により汚染された土壌」とは、石油系油または非石油系油に汚染された土壌を意味する。
【0003】
例えば特許文献1には、油により汚染された土壌をアルカリ溶液に浸漬してから過酸化水素水を注入し、この注入により発生する微細気泡に分離すべき油を連行させて浮上分離させる、いわゆる気泡連行法を利用した土壌の浄化方法および浄化装置にかかる発明が提案されている。
【0004】
特許文献2には、土壌中の油を微生物により水と二酸化炭素とに分解させる、いわゆるバイオレメディエーション法を利用した土壌の浄化方法にかかる発明が提案されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、有害有機化合物を液体中に取り込み、その液体を高圧で噴射することにより生じるキャビテーションを利用した有害物質の処理方法にかかる発明が提案されている。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−18420 号公報
【特許文献2】
特開平9−276831号公報
【特許文献3】
特開2001−300521号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、本発明者らの検討結果によれば、これらの従来の技術によっては、処理に伴う二次汚染を生じることなく、油により汚染された土壌を短期間で浄化することはできない。
【0008】
特許文献1により開示された発明を実施するには、アルカリや過酸化水素等の残留による二次汚染の防止処理や分離した油の後処理を別途行う必要が不可避的に生じる。このため、処理コストが上昇したり、処理操作が煩雑化する。
【0009】
特許文献2により開示された発明では、微生物の活性化を維持および促進するために土壌を適当な温度に保温する必要が生じたり、処理条件によっては浄化に数ヶ月間という長期間を要したり、さらに分離する油が合成油である場合には事実上適用できない。
【0010】
さらに、特許文献3により開示された発明は、有害有機化合物を水に溶け込ませた液体しか浄化することができず、土壌に付着した油分の浄化には適用できない。
【0011】
本発明の目的は、土壌の浄化方法および浄化装置を提供することであり、例えばアルカリや過酸化水素水等の二次汚染物質の排出がなく、油により汚染された土壌から油を迅速に分離して分解することができる土壌の浄化方法および浄化装置を提供することであり、これにより、油が付着して汚染された土壌から油を効率よく迅速に分解および分離することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、以下に列記する新規かつ重要な知見(1) 〜(4) 、すなわち
(1)油により汚染された土壌に水を混合してスラリー化し、スラリー化したこの土壌を、高圧水の噴射により生じるキャビテーション領域に存在させれば、キャビテーションを利用して油により汚染された土壌を浄化できること、
(2)上記(1) 項の知見における浄化のメカニズムは、高圧水の噴射によりキャビテーション気泡が発生し、この気泡の崩壊時に生じる衝撃圧力により油により汚染された土壌から油分が分離され、また、気泡の崩壊時には高温高圧場となり、この高温高圧場の発生により音響化学的作用と呼ばれる化学反応が生じ、油により汚染された土壌から分離された油が二酸化炭素と水とに分解される、と考えられること、
【0013】
(3)すなわち、高圧水を噴射して発生したキャビテーションを、油により汚染された土壌の浄化に利用することにより、土壌から油を分離し、さらに、油分を二酸化炭素と水とに分解して無害化できること、および
(4)キャビテーションの発生を大気圧より高い圧力 (背圧) の雰囲気下、望ましくはゲージ圧で0.01〜0.4MPaで行うことにより、油により汚染された土壌から油分を分離する効率が著しく向上すること
を得て、これらの知見(1) 〜(4) に基づいて本発明を完成した。
【0014】
本発明は、大気圧より高い圧力下にある液体中で、油が付着した土壌に、キャビテーションによる気泡の崩壊に起因した高温高圧を作用させることにより、油を土壌から分離して分解することを特徴とする土壌の浄化方法である。
【0015】
また、本発明は、大気圧より高い圧力下にある液体中で高圧液体を噴射してキャビテーションを発生した領域に、油が付着した土壌と液体とを混合したスラリーを供給することにより、油を土壌から分離して分解する第1の浄化処理を行うことを特徴とする土壌の浄化方法である。
【0016】
この本発明にかかる土壌の浄化方法では、さらに、第1の浄化処理を行った後に、大気圧より高い圧力下にある液体中で高圧液体を噴射してキャビテーションを発生した領域に、浄化処理を行われたスラリーを供給することにより、油をスラリーに混合された土壌から分離して分解する第2の浄化処理を、1回または複数回繰り返し行うことが、望ましい。
【0017】
この本発明にかかる土壌の浄化方法では、さらに、第1の浄化処理を行われたスラリーから液体を分離してスラリーを濃縮した後に1回目の第2の浄化処理を行うこと、および/または、連続する複数回の第2の浄化処理のうち先行する第2の浄化処理を行われたスラリーから液体を分離してスラリーを濃縮した後に後行する第2の浄化処理を行うことが、望ましい。
【0018】
これらの本発明にかかる土壌の浄化方法では、第1の浄化処理、または、1回または連続する複数回の第2の浄化処理のうちの最終の第2の浄化処理を終えたスラリーから液体を分離することが、望ましい。
【0019】
これらの本発明にかかる土壌の浄化方法では、大気圧より高い圧力が、ゲージ圧で、0.01〜0.4MPaであることが、望ましい。
別の観点からは、本発明は、液体を収容する第1のキャビテーション槽、第1のキャビテーション槽に収容された液体に負荷される圧力を大気圧より高い圧力にするための圧力調整手段、第1のキャビテーション槽に収容された液体に高圧液体を噴射することにより液体にキャビテーションが発生する領域を形成するための高圧液体噴射装置、および、キャビテーションを発生した領域に油が付着した土壌またはこの土壌と液体とを混合したスラリーを供給するための供給装置を有する第1の浄化機構を備えることを特徴とする土壌の浄化装置である。
【0020】
この本発明にかかる土壌の浄化装置では、さらに、液体を収容する第2のキャビテーション槽、第2のキャビテーション槽に収容された液体に負荷される圧力を大気圧より高い圧力にするための圧力調整手段、第2のキャビテーション槽に収容された液体に高圧液体を噴射することにより液体にキャビテーションが発生する領域を形成するための高圧液体噴射装置、および、キャビテーションを発生した領域に油が付着した土壌またはこの土壌と液体とを混合したスラリーを供給するための供給装置を有する第2の浄化機構を、1基または直列に複数基備えることが、望ましい。
【0021】
この本発明にかかる土壌の浄化装置では、さらに、第1のキャビテーション槽、1基もしくは複数基の第2のキャビテーション槽のうちの少なくとも一つから排出される、土壌を含有するスラリーから液体を分離することによりこのスラリーを濃縮するための濃縮槽を備えることが、望ましい。
【0022】
これらの本発明にかかる土壌の浄化装置では、第1のキャビテーション槽、または、1基もしくは複数基の第2のキャビテーション槽のうちの最終の第2のキャビテーション槽から排出される、土壌を含有するスラリーから液体を分離するための分離槽を備えることが、望ましい。
【0023】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
以下、本発明にかかる土壌の浄化方法および浄化装置の実施の形態を、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。なお、以下の説明では、油が付着した土壌と混合する液体が水であり、高圧液体が水である場合を例にとるが、本発明はこれに限定されるものでなく、液体や高圧液体は海水やアルカリ水などとすることができる。
【0024】
図1は、本実施の形態の土壌の浄化装置1を模式的に示す説明図である。同図に示すように、この浄化装置1は、キャビテーション槽2と、高圧水噴射ノズル3と、土壌またはスラリー供給装置4と、圧力調整手段5と、分離槽6とを有する。このキャビテーション槽2とは、内部に収容する液体2aにキャビテーションを発生するためのものである。
【0025】
図2は、キャビテーション槽2の内部の状況を模式的に示す説明図である。また、図3は、キャビテーション槽2の内部の状況を具体的に示す説明図である。なお、図1および図3においてはキャビテーション槽2は竪型に配置されているのに対し、図2では横型に配置しているが、これは説明の便宜上単に変更したものである。また、本実施の形態では、図3に示すキャビテーション槽2を用いたが、本発明はこのキャビテーション槽2には限定されず、同様の機能を有するキャビテーション槽であれば、このキャビテーション槽2以外の他のキャビテーション槽も同様に用いることができる。
【0026】
図2に示すように、キャビテーション槽2は、高圧水噴射装置として高圧水噴射ノズル (本明細書では「キャビテーションノズル」ともいう) 3を本体内部に設けられている。キャビテーションノズル3は、キャビテーション槽2に収容された液体2aに高圧水7を噴射することにより、液体2aの少なくとも一部にキャビテーションが発生するキャビテーション領域8を形成する。
【0027】
図2に示すように、液体2a中に浸漬したキャビテーションノズル3から高圧水7を噴射すると、ノズル出口近傍において乱流状態となり、この乱流域内においてせん断応力が最大となる位置、つまり速度勾配の最大となる位置で静圧が低下する。この静圧が液体の蒸気圧以下まで低下すると蒸気泡9が発生し、いわゆるキャビテーション領域8が形成される (図2における説明書き▲1▼参照) 。この蒸気泡9は、液体2aの流れに沿って流下して圧力が回復し、場の圧力(静圧)が液体2aの蒸気圧を超えて回復すると急激に崩壊し、瞬間的に1000atm 以上の高い衝撃圧力と1000K 以上の高温場とが生じる (図2における説明書き▲2▼参照) 。
【0028】
この蒸気泡9の崩壊領域内にスラリー化した油汚染土壌10が存在すれば、はじめに、高速噴流11により土粒子12に付着している付着油分13が剥離して分離し、次いで、蒸気泡9の崩壊時の衝撃圧により油分14が分離する。また、分離した油分14は衝撃圧により乳化され、液体2a中に懸濁する。このように、キャビテーション槽2に供給された油汚染土壌10はキャビテーション領域8に曝されるので、土粒子12に付着した油分13は、キャビテーション気泡の崩壊時の高圧場により、土粒子12から分離される。
【0029】
さらに、蒸気泡9の崩壊時の局所的高圧高温場では、音響化学反応とよばれる分子の熱分解反応が生じることが知られている (図2における説明▲3▼参照) 。この熱分解反応により、油のC−H 化学結合鎖が切断され、C とH のラジカルが生成する。同時に洗浄水は、下記(1) 式に示すように、音響化学的作用により、水分子が分解し、OHラジカル(・OH)が生成する。さらに、下記(2) 式〜(6) 式に示すように、このOHラジカルによる酸化作用で、油分は、水と二酸化炭素とに分解されて無害化され、土壌は洗浄される(浄化工程)。
【0030】
H2O →・OH+ H・ ・・・・・・・ (1)
・OH+・OH→ H2O2 ・・・・・・・ (2)
・OH+H2O2→ H2O+ HO2・ ・・・・・・・ (3)
・OH+ HO2・→ H2O+O2 ・・・・・・・ (4)
:C +O2→ CO 2 ・・・・・・・ (5)
・OH+ H・→ H 2 O ・・・・・・・ (6)
このようにして、キャビテーション槽2の内部で油汚染土壌10の浄化が行われる。
【0031】
図1に示すように、本実施の形態の浄化装置1は、土壌またはスラリー供給装置4を有する。この土壌またはスラリー供給装置4は、キャビテーション槽2に収容されて液体2aに形成されたキャビテーション領域8に、油により汚染された土壌またはこの土壌と水とを混合したスラリーを供給するための装置であり、本実施の形態では、土壌またはスラリーを圧送するためのポンプを用いた。
【0032】
ポンプ4により圧送された土壌またはスラリーは、図3に示すように、キャビテーション槽2の壁面に設けられた土壌またはスラリー噴出ノズル4aを介して、キャビテーション領域8に供給される。すなわち、本実施の形態では、高圧水7を噴射するためのキャビテーションノズル3と、スラリーを噴出するためのスラリー噴出ノズル4aとを、それぞれキャビテーション槽2の壁面に設けている。
【0033】
また、図1に示すように、本実施の形態の浄化装置1は、圧力調整手段5を有する。この圧力調整手段5は、キャビテーション槽2に収容された液体2aの圧力を、大気圧よりも高い圧力にするためのものである。具体的には、キャビテーション槽2の出側には、キャビテーション槽2の圧力(背圧)を計測する圧力計15と、背圧を調整する背圧調整手段16とからなる圧力調整手段5が設けられている。
【0034】
本発明者が行った、油汚染土壌を用いたモデル実験によれば、高圧水噴射ノズル3の圧力が等しい場合に、キャビテーションによる油汚染土壌10の油分浄化性は、キャビテーション領域8における雰囲気圧力(以下、「背圧」という)に依存する。
【0035】
図4は、油分量 2.5wt%の油汚染土壌に10MPa の高圧水を一回照射した場合、土壌に残存する油分量 (wt%) と背圧(MPa) との関係を示すグラフである。なお、背圧はゲージ圧で示している。
【0036】
図4にグラフで示すように、背圧を徐々に増加すると油分量が減少して浄化効率が向上するが、ある最適な背圧 (約0.2MPa) を超えてより高くすると油分量が増加に転じ、浄化効率が低下することがわかった。すなわち、背圧を大気圧よりも高くすれば浄化効率が向上するものの、背圧が過小であると浄化効率の向上効果が小さい。また、背圧が過大では、高速ジェットによる静圧の低下が阻害されるために、キャビテーション自体が発生し難くなり、浄化効率の向上効果が小さい。
【0037】
この結果から、キャビテーション領域8を油汚染土壌10の浄化に適用する際に、浄化効率の向上を図ることができる適当な背圧は、ゲージ圧で、0.01〜0.4MPaの範囲であり、さらに望ましくは0.1 〜0.3MPaの範囲である。
【0038】
また、本実施の形態の浄化装置1は、分離槽6を有する。この分離槽6は、キャビテーション領域8に供給されて浄化されたスラリーから、液体を分離するための槽である。
【0039】
なお、図1における符合17は、処理すべき油汚染土壌と水とを混合してスラリーとするための混合槽を示し、符合18は処理すべき油汚染土壌19を混合槽17に投入するための油汚染土壌搬送装置を示し、符合20は、高圧水7を生成するためのポンプを示す。
【0040】
本実施の形態の土壌の浄化装置1は、以上のように構成される。次に、この浄化装置1により油汚染土壌10が浄化される状況を説明する。
図1において、混合槽17に油汚染土壌搬送装置18を用いて油汚染土壌19を投入し、水と混合して油汚染土壌19をスラリー化し(混合工程)、次にスラリー化した油汚染土壌19を、土壌またはスラリー供給装置4でキャビテーション槽2に供給する(スラリー供給工程)。
【0041】
次いで、分離槽6の上澄み水をポンプ20で加圧し、キャビテーション槽2に設置されたキャビテーションノズル3からキャビテーション槽2内へ高圧水7を噴射し、キャビテーション槽2内にキャビテーション領域8を発生させる。キャビテーション槽2に供給された油汚染土壌10はキャビテーションに曝されるので、土粒子12に付着した付着油分13はキャビテーション気泡崩壊時の高圧場で土粒子12から分離される。
【0042】
また、分離された油分14は、音響化学的作用により、油分14の主成分である炭化水素化合物の結合鎖が切断され、油分が分解される。さらに、音響化学的作用により、水分子も分解されOHラジカルが生成し、このOHラジカルによる酸化作用により、油分は水と二酸化炭素とに分解され、土壌が洗浄される(浄化工程)。
【0043】
この際、キャビテーション槽2の出側に設けられた圧力計15と背圧調整手段16とにより、キャビテーション槽2内の圧力(背圧)が適正な範囲に調整される(背圧調整工程)。洗浄された油汚染土壌10は、分離槽6で固形分である浄化土壌21と液体分である水22とに分離される(固液分離工程)。
【0044】
分離槽6で分離された液体分である水22は、浄化用水もしくはスラリー化用水として循環再利用される。浄化土壌21に付着して系外へ持ち出される水や蒸散で減少した水は、補給水23で補充される。
【0045】
このように、本実施形態によれば、キャビテーション領域8に油汚染土壌10を供給することにより、油汚染土壌10から油分を物理的に分離し、さらに音響化学的作用に油分を分離することができる。この際、背圧を適正な範囲に調整することにより、物理的および音響学的作用に基づくキャビテーションを利用した油汚染土壌10の浄化効率を高めることができる。
【0046】
この方法は、生分解を利用するバイオレメディエーション法に比較すると、油分の分解速度が速く、極めて効率的である。また、この方法ではキャビテーションを発生させるための加圧流体は基本的に水だけでよいので、アルカリや過酸化水素水などの二次汚染物質の発生もない。すなわち、本実施の形態の浄化装置1は、完全なクローズドシステムであり、蒸散および浄化土壌への付着により持ち出される水を補給する以外、全て系内で処理可能であり、汚染物質の系外への搬出は一切発生しない。
【0047】
このように、この浄化装置1によれば、油汚染土壌を二次汚染物質の排出がなく迅速に浄化できる。また、この浄化装置1は、ポンプ用電源をディーゼルエンジン等から供給することにより、可搬式の浄化装置として構成可能であるため、全国的に広く点在している汚染サイトを容易に効率よく浄化できる。
【0048】
以上説明したように、本実施の形態により、例えばアルカリや過酸化水素水等の二次汚染物質の排出がなく、油により汚染された土壌から油を迅速に分離して分解することができる土壌の浄化方法および浄化装置を提供することができ、これにより、油が付着して汚染された土壌から油を効率よく分解および分離することができる。
【0049】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態を説明する。図5は、本実施の形態の浄化装置24を模式的に示す説明図である。同図に示すように、この浄化装置24が上述した第1の実施の形態と相違するのは、略述すれば、キャビテーション槽2a〜2cを3基並設し、第1のキャビテーション槽2aから排出されたスラリーを第2のキャビテーション槽2bに供給し、第2のキャビテーション槽2bから排出されたスラリーを第3のキャビテーション槽2cに供給する点である。
【0050】
すなわち、混合槽17による混合工程、第1のキャビテーション槽2aへのスラリー供給工程、第1のキャビテーション槽2a内でのキャビテーションによる浄化工程、背圧調整工程および固液分離工程は、上述した第1の実施の形態と同じである。
【0051】
本実施の形態では、第1のキャビテーション槽2aで1回目の洗浄が行われた油汚染土壌は、続いて第2のキャビテーション槽2bに取り付けられたキャビテーションノズル3bから第2のキャビテーション槽2b内へ噴射され、第2のキャビテーション槽2b内にキャビテーションが発生し、2回目の洗浄が行われる。
【0052】
第2のキャビテーション槽2bで2回目の洗浄が行われた油汚染土壌は、続いて第3のキャビテーション槽2cに取り付けられたキャビテーションノズル3cから第3のキャビテーション槽2c内へ噴射され、第3のキャビテーション槽2c内にキャビテーションが発生し、3回目の洗浄が行われる。
【0053】
第1キャビテーション槽2a、第2キャビテーション槽2bおよび第3キャビテーション槽2cのそれぞれの出側には、それぞれのキャビテーション槽内圧力(背圧)を測定する圧力計15a 〜15c と、その背圧を調整する背圧調整手段16a 〜16c とを設け、この圧力計15a 〜15c と背圧調整手段16a 〜16c とによりそれぞれのキャビテーション槽内の背圧を適正範囲に調整する。
【0054】
3回目の洗浄を終了した土壌は分離槽6に貯められ、分離槽6で分離された固形分は、浄化土壌21として修復される。そして、液体分である水は浄化用水またはスラリー化用水22として循環再利用される。水が不足する場合には補給水23が補充される。
【0055】
本実施の形態によれば、3回の洗浄を連続的に行うため、第1の実施の形態に比較して、浄化土壌21に含まれる油分量をより低下することができる。
また、本実施の形態の浄化装置24は、完全なクローズドシステムであり、蒸散および浄化土壌への付着により持ち出される水を補給する以外、全て系内で処理可能であり、汚染物質の系外への搬出は一切発生しない。
【0056】
なお、本実施の形態では、3基のキャビテーション槽2a〜2cを並設した場合を例にとったが、本発明はこの場合に限定されるものではなく、土壌中の油分量や浄化目標値に応じて、その段数は適宜決定すればよい。
【0057】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態を説明する。図6は、本実施の形態の浄化装置25を模式的に示す説明図である。本実施の形態が第2の実施の形態と相違するのは、キャビテーション槽2a、2bの出側に、固液分離装置26a 、26b 、例えば液体サイクロンをそれぞれ設けることにより各洗浄後毎に土壌分を濃縮する濃縮工程を設けて、次段での洗浄効率を向上させるものである。
【0058】
すなわち、この浄化装置25は、第1の浄化機構、第2の浄化機構および第3の浄化機構からなる。
第1の浄化機構は、液体を収容する第1のキャビテーション槽2aと、第1のキャビテーション槽2aに収容された液体の圧力を、大気圧よりも高い圧力にするための第1の圧力調整手段5aと、第1のキャビテーション槽2aに収容された液体に高圧水を噴射することにより、液体の一部にキャビテーションが発生する第1のキャビテーション領域を形成するための第1の高圧水噴射装置であるキャビテーションノズル3aと、第1のキャビテーション領域に、油により汚染された土壌と水とを混合したスラリーを存在させるためのスラリー供給装置4aとを有する。
【0059】
第2の浄化機構は、第1のキャビテーション槽2aから排出される、土壌を含有するスラリーから液体を分離することによりスラリーを濃縮する濃縮槽26a と、液体を収容するとともに、濃縮槽26a から排出された濃縮されたスラリーを収容する第2のキャビテーション槽2bと、第2のキャビテーション槽2bに収容された液体の圧力を、大気圧よりも高い圧力にするための第2の圧力調整手段5bと、第2のキャビテーション槽2bに収容された液体に高圧水を噴射することにより、液体の一部にキャビテーションが発生する第2のキャビテーション領域を形成するための第2の高圧水噴射装置であるキャビテーションノズル3bとを有する。
【0060】
さらに、第3の浄化機構は、第2のキャビテーション槽2bから排出される、土壌を含有するスラリーから液体を分離することによりスラリーを濃縮する濃縮槽26b と、液体を収容するとともに、濃縮槽26b から排出された濃縮されたスラリーを収容する第3のキャビテーション槽2cと、第3のキャビテーション槽2cに収容された液体の圧力を、大気圧よりも高い圧力にするための第3の圧力調整手段5cと、第3のキャビテーション槽2cに収容された液体に高圧水を噴射することにより、液体の少なくとも一部にキャビテーションが発生する第3のキャビテーション領域を形成するための第3の高圧水噴射装置であるキャビテーションノズル3cと、第3のキャビテーション槽2cから排出される、土壌を含有するスラリーから液体を分離するための分離槽6とを有する。
【0061】
すなわち、本実施の形態の浄化装置25は、複数段(図示例では3段の場合を例示)のキャビテーション槽2a〜2cを備えており、連続的に汚染土壌を浄化できる。混合槽17により油汚染土壌をスラリー化する混合工程、スラリー化した油汚染土壌を第1のキャビテーション槽2aへ供給するスラリー供給工程、ポンプ20a で加圧した水を第1のキャビテーション槽2aに供給して洗浄する浄化工程、圧力計15a と背圧調整手段16a とによりキャビテーション槽2a内の圧力を調整する背圧調整工程は、上述した第2の実施の形態の浄化装置24と同じである。
【0062】
しかし、第2の実施の形態の浄化装置24では、第1のキャビテーション槽2aで洗浄された油汚染土壌は、次の第2のキャビテーション槽2b、さらに第3のキャビテーション槽2cへと洗浄が進むにつれてキャビテーションノズル3a、3b、3cからの水で希釈されるため、後段ほどスラリー中の土壌の割合が低下し、洗浄効率が低化する。
【0063】
そこで、本実施の形態では、第1のキャビテーション槽2a、第2のキャビテーション槽2bの出側に、固液分離装置である液体サイクロン26a 、26b を設けることにより各洗浄毎に土壌分を濃縮する濃縮工程を設け、次段での洗浄効率を向上させている。つまり、第1のキャビテーション槽2aの出側に液体サイクロン26a を設け、土壌分は分離土壌槽27a に貯えられた後、スラリーポンプ4bで第2のキャビテーション槽2bに供給される。
【0064】
一方、液体サイクロン26a で分離された水は分離水槽28a に貯えられた後、ポンプ20b で加圧され、第2のキャビテーション槽2bに装着されたノズル3bから噴出され、第2のキャビテーション槽2b内でキャビテーションが生じ、油汚染土壌は2回目の洗浄が行われる。
【0065】
第2のキャビテーション槽2bで洗浄された土壌は、同様に液体サイクロン26b で濃縮された後、第3のキャビテーション槽2cで洗浄され、最終的に分離槽6で水22と浄化土壌21に分離される。水22は、浄化用水もしくはスラリー化用水として循環再利用され、浄化土壌21に付着して系外への持ち出される水や蒸散で減少した水は、補給水23で補充される。なお、符号27b は分離土壌槽で、28b は分離水槽を示す。
【0066】
このように、本実施の形態の浄化装置25によれば、上述した第2の実施の形態の浄化装置24に比較して、第2のキャビテーション槽2b、第3のキャビテーション槽2cでの洗浄効率が向上する。
【0067】
また、本実施の形態の浄化装置25は、完全なクローズドシステムであり、蒸散および浄化土壌への付着により持ち出される水を補給する以外、全て系内で処理可能であり、汚染物質の系外への搬出は一切発生しない。
【0068】
なお、本実施の形態では、3基のキャビテーション槽2a〜2cを並設した場合を例にとったが、本発明はこの場合に限定されるものではなく、土壌中の油分量や浄化目標値に応じて、その段数は適宜決定すればよい。
【0069】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明により、例えばアルカリや過酸化水素水等の二次汚染物質の排出がなく、油により汚染された土壌から油を迅速に分離して分解することができる土壌の浄化方法および浄化装置を提供することができた。これにより、全国的に広く点在している、油が付着して汚染された土壌から油を効率よく迅速に分解および分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態の土壌の浄化装置を模式的に示す説明図である。
【図2】第1の実施の形態におけるキャビテーション槽の内部の状況を模式的に示す説明図である。
【図3】キャビテーション槽の内部の状況を具体的に示す説明図である。
【図4】油分量 2.5wt%の油汚染土壌に10MPa の高圧水を一回照射した場合に、土壌に残存する油分量 (wt%) と背圧(MPa) との関係を示すグラフである。
【図5】第2の実施の形態の浄化装置を模式的に示す説明図である。
【図6】第3の実施の形態の浄化装置を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
1 浄化装置
2 キャビテーション槽
2a 液体
3 高圧水噴射ノズル
4 土壌またはスラリー供給装置
4a スラリー噴出ノズル
5 圧力調整手段
6 分離槽
7 水
8 キャビテーション領域
10 油汚染土壌
15 圧力計
16 背圧調整手段
17 混合槽
18 油汚染土壌搬送装置
19 油汚染土壌
20 ポンプ
【発明の属する技術分野】
本発明は、土壌の浄化方法および浄化装置に関するものであり、具体的には、油が付着して汚染された土壌から油を効率よく分離および分解するための土壌の浄化方法および浄化装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
環境意識が高まるなか、汚染された土壌を浄化することが強く求められている。特に、油により汚染された土壌は全国的に広く存在するため、かかる土壌が存在する現地で迅速に浄化する技術の開発が急務となっている。そこで、これまでにも、油により汚染された土壌を浄化する技術が多数提案されている。なお、一般的に、油は石油系油(ガソリン、燃料、タール、原油等)と非石油系油(植物油、動物油)とに分類されるが、本明細書において「油により汚染された土壌」とは、石油系油または非石油系油に汚染された土壌を意味する。
【0003】
例えば特許文献1には、油により汚染された土壌をアルカリ溶液に浸漬してから過酸化水素水を注入し、この注入により発生する微細気泡に分離すべき油を連行させて浮上分離させる、いわゆる気泡連行法を利用した土壌の浄化方法および浄化装置にかかる発明が提案されている。
【0004】
特許文献2には、土壌中の油を微生物により水と二酸化炭素とに分解させる、いわゆるバイオレメディエーション法を利用した土壌の浄化方法にかかる発明が提案されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、有害有機化合物を液体中に取り込み、その液体を高圧で噴射することにより生じるキャビテーションを利用した有害物質の処理方法にかかる発明が提案されている。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−18420 号公報
【特許文献2】
特開平9−276831号公報
【特許文献3】
特開2001−300521号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、本発明者らの検討結果によれば、これらの従来の技術によっては、処理に伴う二次汚染を生じることなく、油により汚染された土壌を短期間で浄化することはできない。
【0008】
特許文献1により開示された発明を実施するには、アルカリや過酸化水素等の残留による二次汚染の防止処理や分離した油の後処理を別途行う必要が不可避的に生じる。このため、処理コストが上昇したり、処理操作が煩雑化する。
【0009】
特許文献2により開示された発明では、微生物の活性化を維持および促進するために土壌を適当な温度に保温する必要が生じたり、処理条件によっては浄化に数ヶ月間という長期間を要したり、さらに分離する油が合成油である場合には事実上適用できない。
【0010】
さらに、特許文献3により開示された発明は、有害有機化合物を水に溶け込ませた液体しか浄化することができず、土壌に付着した油分の浄化には適用できない。
【0011】
本発明の目的は、土壌の浄化方法および浄化装置を提供することであり、例えばアルカリや過酸化水素水等の二次汚染物質の排出がなく、油により汚染された土壌から油を迅速に分離して分解することができる土壌の浄化方法および浄化装置を提供することであり、これにより、油が付着して汚染された土壌から油を効率よく迅速に分解および分離することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、以下に列記する新規かつ重要な知見(1) 〜(4) 、すなわち
(1)油により汚染された土壌に水を混合してスラリー化し、スラリー化したこの土壌を、高圧水の噴射により生じるキャビテーション領域に存在させれば、キャビテーションを利用して油により汚染された土壌を浄化できること、
(2)上記(1) 項の知見における浄化のメカニズムは、高圧水の噴射によりキャビテーション気泡が発生し、この気泡の崩壊時に生じる衝撃圧力により油により汚染された土壌から油分が分離され、また、気泡の崩壊時には高温高圧場となり、この高温高圧場の発生により音響化学的作用と呼ばれる化学反応が生じ、油により汚染された土壌から分離された油が二酸化炭素と水とに分解される、と考えられること、
【0013】
(3)すなわち、高圧水を噴射して発生したキャビテーションを、油により汚染された土壌の浄化に利用することにより、土壌から油を分離し、さらに、油分を二酸化炭素と水とに分解して無害化できること、および
(4)キャビテーションの発生を大気圧より高い圧力 (背圧) の雰囲気下、望ましくはゲージ圧で0.01〜0.4MPaで行うことにより、油により汚染された土壌から油分を分離する効率が著しく向上すること
を得て、これらの知見(1) 〜(4) に基づいて本発明を完成した。
【0014】
本発明は、大気圧より高い圧力下にある液体中で、油が付着した土壌に、キャビテーションによる気泡の崩壊に起因した高温高圧を作用させることにより、油を土壌から分離して分解することを特徴とする土壌の浄化方法である。
【0015】
また、本発明は、大気圧より高い圧力下にある液体中で高圧液体を噴射してキャビテーションを発生した領域に、油が付着した土壌と液体とを混合したスラリーを供給することにより、油を土壌から分離して分解する第1の浄化処理を行うことを特徴とする土壌の浄化方法である。
【0016】
この本発明にかかる土壌の浄化方法では、さらに、第1の浄化処理を行った後に、大気圧より高い圧力下にある液体中で高圧液体を噴射してキャビテーションを発生した領域に、浄化処理を行われたスラリーを供給することにより、油をスラリーに混合された土壌から分離して分解する第2の浄化処理を、1回または複数回繰り返し行うことが、望ましい。
【0017】
この本発明にかかる土壌の浄化方法では、さらに、第1の浄化処理を行われたスラリーから液体を分離してスラリーを濃縮した後に1回目の第2の浄化処理を行うこと、および/または、連続する複数回の第2の浄化処理のうち先行する第2の浄化処理を行われたスラリーから液体を分離してスラリーを濃縮した後に後行する第2の浄化処理を行うことが、望ましい。
【0018】
これらの本発明にかかる土壌の浄化方法では、第1の浄化処理、または、1回または連続する複数回の第2の浄化処理のうちの最終の第2の浄化処理を終えたスラリーから液体を分離することが、望ましい。
【0019】
これらの本発明にかかる土壌の浄化方法では、大気圧より高い圧力が、ゲージ圧で、0.01〜0.4MPaであることが、望ましい。
別の観点からは、本発明は、液体を収容する第1のキャビテーション槽、第1のキャビテーション槽に収容された液体に負荷される圧力を大気圧より高い圧力にするための圧力調整手段、第1のキャビテーション槽に収容された液体に高圧液体を噴射することにより液体にキャビテーションが発生する領域を形成するための高圧液体噴射装置、および、キャビテーションを発生した領域に油が付着した土壌またはこの土壌と液体とを混合したスラリーを供給するための供給装置を有する第1の浄化機構を備えることを特徴とする土壌の浄化装置である。
【0020】
この本発明にかかる土壌の浄化装置では、さらに、液体を収容する第2のキャビテーション槽、第2のキャビテーション槽に収容された液体に負荷される圧力を大気圧より高い圧力にするための圧力調整手段、第2のキャビテーション槽に収容された液体に高圧液体を噴射することにより液体にキャビテーションが発生する領域を形成するための高圧液体噴射装置、および、キャビテーションを発生した領域に油が付着した土壌またはこの土壌と液体とを混合したスラリーを供給するための供給装置を有する第2の浄化機構を、1基または直列に複数基備えることが、望ましい。
【0021】
この本発明にかかる土壌の浄化装置では、さらに、第1のキャビテーション槽、1基もしくは複数基の第2のキャビテーション槽のうちの少なくとも一つから排出される、土壌を含有するスラリーから液体を分離することによりこのスラリーを濃縮するための濃縮槽を備えることが、望ましい。
【0022】
これらの本発明にかかる土壌の浄化装置では、第1のキャビテーション槽、または、1基もしくは複数基の第2のキャビテーション槽のうちの最終の第2のキャビテーション槽から排出される、土壌を含有するスラリーから液体を分離するための分離槽を備えることが、望ましい。
【0023】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
以下、本発明にかかる土壌の浄化方法および浄化装置の実施の形態を、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。なお、以下の説明では、油が付着した土壌と混合する液体が水であり、高圧液体が水である場合を例にとるが、本発明はこれに限定されるものでなく、液体や高圧液体は海水やアルカリ水などとすることができる。
【0024】
図1は、本実施の形態の土壌の浄化装置1を模式的に示す説明図である。同図に示すように、この浄化装置1は、キャビテーション槽2と、高圧水噴射ノズル3と、土壌またはスラリー供給装置4と、圧力調整手段5と、分離槽6とを有する。このキャビテーション槽2とは、内部に収容する液体2aにキャビテーションを発生するためのものである。
【0025】
図2は、キャビテーション槽2の内部の状況を模式的に示す説明図である。また、図3は、キャビテーション槽2の内部の状況を具体的に示す説明図である。なお、図1および図3においてはキャビテーション槽2は竪型に配置されているのに対し、図2では横型に配置しているが、これは説明の便宜上単に変更したものである。また、本実施の形態では、図3に示すキャビテーション槽2を用いたが、本発明はこのキャビテーション槽2には限定されず、同様の機能を有するキャビテーション槽であれば、このキャビテーション槽2以外の他のキャビテーション槽も同様に用いることができる。
【0026】
図2に示すように、キャビテーション槽2は、高圧水噴射装置として高圧水噴射ノズル (本明細書では「キャビテーションノズル」ともいう) 3を本体内部に設けられている。キャビテーションノズル3は、キャビテーション槽2に収容された液体2aに高圧水7を噴射することにより、液体2aの少なくとも一部にキャビテーションが発生するキャビテーション領域8を形成する。
【0027】
図2に示すように、液体2a中に浸漬したキャビテーションノズル3から高圧水7を噴射すると、ノズル出口近傍において乱流状態となり、この乱流域内においてせん断応力が最大となる位置、つまり速度勾配の最大となる位置で静圧が低下する。この静圧が液体の蒸気圧以下まで低下すると蒸気泡9が発生し、いわゆるキャビテーション領域8が形成される (図2における説明書き▲1▼参照) 。この蒸気泡9は、液体2aの流れに沿って流下して圧力が回復し、場の圧力(静圧)が液体2aの蒸気圧を超えて回復すると急激に崩壊し、瞬間的に1000atm 以上の高い衝撃圧力と1000K 以上の高温場とが生じる (図2における説明書き▲2▼参照) 。
【0028】
この蒸気泡9の崩壊領域内にスラリー化した油汚染土壌10が存在すれば、はじめに、高速噴流11により土粒子12に付着している付着油分13が剥離して分離し、次いで、蒸気泡9の崩壊時の衝撃圧により油分14が分離する。また、分離した油分14は衝撃圧により乳化され、液体2a中に懸濁する。このように、キャビテーション槽2に供給された油汚染土壌10はキャビテーション領域8に曝されるので、土粒子12に付着した油分13は、キャビテーション気泡の崩壊時の高圧場により、土粒子12から分離される。
【0029】
さらに、蒸気泡9の崩壊時の局所的高圧高温場では、音響化学反応とよばれる分子の熱分解反応が生じることが知られている (図2における説明▲3▼参照) 。この熱分解反応により、油のC−H 化学結合鎖が切断され、C とH のラジカルが生成する。同時に洗浄水は、下記(1) 式に示すように、音響化学的作用により、水分子が分解し、OHラジカル(・OH)が生成する。さらに、下記(2) 式〜(6) 式に示すように、このOHラジカルによる酸化作用で、油分は、水と二酸化炭素とに分解されて無害化され、土壌は洗浄される(浄化工程)。
【0030】
H2O →・OH+ H・ ・・・・・・・ (1)
・OH+・OH→ H2O2 ・・・・・・・ (2)
・OH+H2O2→ H2O+ HO2・ ・・・・・・・ (3)
・OH+ HO2・→ H2O+O2 ・・・・・・・ (4)
:C +O2→ CO 2 ・・・・・・・ (5)
・OH+ H・→ H 2 O ・・・・・・・ (6)
このようにして、キャビテーション槽2の内部で油汚染土壌10の浄化が行われる。
【0031】
図1に示すように、本実施の形態の浄化装置1は、土壌またはスラリー供給装置4を有する。この土壌またはスラリー供給装置4は、キャビテーション槽2に収容されて液体2aに形成されたキャビテーション領域8に、油により汚染された土壌またはこの土壌と水とを混合したスラリーを供給するための装置であり、本実施の形態では、土壌またはスラリーを圧送するためのポンプを用いた。
【0032】
ポンプ4により圧送された土壌またはスラリーは、図3に示すように、キャビテーション槽2の壁面に設けられた土壌またはスラリー噴出ノズル4aを介して、キャビテーション領域8に供給される。すなわち、本実施の形態では、高圧水7を噴射するためのキャビテーションノズル3と、スラリーを噴出するためのスラリー噴出ノズル4aとを、それぞれキャビテーション槽2の壁面に設けている。
【0033】
また、図1に示すように、本実施の形態の浄化装置1は、圧力調整手段5を有する。この圧力調整手段5は、キャビテーション槽2に収容された液体2aの圧力を、大気圧よりも高い圧力にするためのものである。具体的には、キャビテーション槽2の出側には、キャビテーション槽2の圧力(背圧)を計測する圧力計15と、背圧を調整する背圧調整手段16とからなる圧力調整手段5が設けられている。
【0034】
本発明者が行った、油汚染土壌を用いたモデル実験によれば、高圧水噴射ノズル3の圧力が等しい場合に、キャビテーションによる油汚染土壌10の油分浄化性は、キャビテーション領域8における雰囲気圧力(以下、「背圧」という)に依存する。
【0035】
図4は、油分量 2.5wt%の油汚染土壌に10MPa の高圧水を一回照射した場合、土壌に残存する油分量 (wt%) と背圧(MPa) との関係を示すグラフである。なお、背圧はゲージ圧で示している。
【0036】
図4にグラフで示すように、背圧を徐々に増加すると油分量が減少して浄化効率が向上するが、ある最適な背圧 (約0.2MPa) を超えてより高くすると油分量が増加に転じ、浄化効率が低下することがわかった。すなわち、背圧を大気圧よりも高くすれば浄化効率が向上するものの、背圧が過小であると浄化効率の向上効果が小さい。また、背圧が過大では、高速ジェットによる静圧の低下が阻害されるために、キャビテーション自体が発生し難くなり、浄化効率の向上効果が小さい。
【0037】
この結果から、キャビテーション領域8を油汚染土壌10の浄化に適用する際に、浄化効率の向上を図ることができる適当な背圧は、ゲージ圧で、0.01〜0.4MPaの範囲であり、さらに望ましくは0.1 〜0.3MPaの範囲である。
【0038】
また、本実施の形態の浄化装置1は、分離槽6を有する。この分離槽6は、キャビテーション領域8に供給されて浄化されたスラリーから、液体を分離するための槽である。
【0039】
なお、図1における符合17は、処理すべき油汚染土壌と水とを混合してスラリーとするための混合槽を示し、符合18は処理すべき油汚染土壌19を混合槽17に投入するための油汚染土壌搬送装置を示し、符合20は、高圧水7を生成するためのポンプを示す。
【0040】
本実施の形態の土壌の浄化装置1は、以上のように構成される。次に、この浄化装置1により油汚染土壌10が浄化される状況を説明する。
図1において、混合槽17に油汚染土壌搬送装置18を用いて油汚染土壌19を投入し、水と混合して油汚染土壌19をスラリー化し(混合工程)、次にスラリー化した油汚染土壌19を、土壌またはスラリー供給装置4でキャビテーション槽2に供給する(スラリー供給工程)。
【0041】
次いで、分離槽6の上澄み水をポンプ20で加圧し、キャビテーション槽2に設置されたキャビテーションノズル3からキャビテーション槽2内へ高圧水7を噴射し、キャビテーション槽2内にキャビテーション領域8を発生させる。キャビテーション槽2に供給された油汚染土壌10はキャビテーションに曝されるので、土粒子12に付着した付着油分13はキャビテーション気泡崩壊時の高圧場で土粒子12から分離される。
【0042】
また、分離された油分14は、音響化学的作用により、油分14の主成分である炭化水素化合物の結合鎖が切断され、油分が分解される。さらに、音響化学的作用により、水分子も分解されOHラジカルが生成し、このOHラジカルによる酸化作用により、油分は水と二酸化炭素とに分解され、土壌が洗浄される(浄化工程)。
【0043】
この際、キャビテーション槽2の出側に設けられた圧力計15と背圧調整手段16とにより、キャビテーション槽2内の圧力(背圧)が適正な範囲に調整される(背圧調整工程)。洗浄された油汚染土壌10は、分離槽6で固形分である浄化土壌21と液体分である水22とに分離される(固液分離工程)。
【0044】
分離槽6で分離された液体分である水22は、浄化用水もしくはスラリー化用水として循環再利用される。浄化土壌21に付着して系外へ持ち出される水や蒸散で減少した水は、補給水23で補充される。
【0045】
このように、本実施形態によれば、キャビテーション領域8に油汚染土壌10を供給することにより、油汚染土壌10から油分を物理的に分離し、さらに音響化学的作用に油分を分離することができる。この際、背圧を適正な範囲に調整することにより、物理的および音響学的作用に基づくキャビテーションを利用した油汚染土壌10の浄化効率を高めることができる。
【0046】
この方法は、生分解を利用するバイオレメディエーション法に比較すると、油分の分解速度が速く、極めて効率的である。また、この方法ではキャビテーションを発生させるための加圧流体は基本的に水だけでよいので、アルカリや過酸化水素水などの二次汚染物質の発生もない。すなわち、本実施の形態の浄化装置1は、完全なクローズドシステムであり、蒸散および浄化土壌への付着により持ち出される水を補給する以外、全て系内で処理可能であり、汚染物質の系外への搬出は一切発生しない。
【0047】
このように、この浄化装置1によれば、油汚染土壌を二次汚染物質の排出がなく迅速に浄化できる。また、この浄化装置1は、ポンプ用電源をディーゼルエンジン等から供給することにより、可搬式の浄化装置として構成可能であるため、全国的に広く点在している汚染サイトを容易に効率よく浄化できる。
【0048】
以上説明したように、本実施の形態により、例えばアルカリや過酸化水素水等の二次汚染物質の排出がなく、油により汚染された土壌から油を迅速に分離して分解することができる土壌の浄化方法および浄化装置を提供することができ、これにより、油が付着して汚染された土壌から油を効率よく分解および分離することができる。
【0049】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態を説明する。図5は、本実施の形態の浄化装置24を模式的に示す説明図である。同図に示すように、この浄化装置24が上述した第1の実施の形態と相違するのは、略述すれば、キャビテーション槽2a〜2cを3基並設し、第1のキャビテーション槽2aから排出されたスラリーを第2のキャビテーション槽2bに供給し、第2のキャビテーション槽2bから排出されたスラリーを第3のキャビテーション槽2cに供給する点である。
【0050】
すなわち、混合槽17による混合工程、第1のキャビテーション槽2aへのスラリー供給工程、第1のキャビテーション槽2a内でのキャビテーションによる浄化工程、背圧調整工程および固液分離工程は、上述した第1の実施の形態と同じである。
【0051】
本実施の形態では、第1のキャビテーション槽2aで1回目の洗浄が行われた油汚染土壌は、続いて第2のキャビテーション槽2bに取り付けられたキャビテーションノズル3bから第2のキャビテーション槽2b内へ噴射され、第2のキャビテーション槽2b内にキャビテーションが発生し、2回目の洗浄が行われる。
【0052】
第2のキャビテーション槽2bで2回目の洗浄が行われた油汚染土壌は、続いて第3のキャビテーション槽2cに取り付けられたキャビテーションノズル3cから第3のキャビテーション槽2c内へ噴射され、第3のキャビテーション槽2c内にキャビテーションが発生し、3回目の洗浄が行われる。
【0053】
第1キャビテーション槽2a、第2キャビテーション槽2bおよび第3キャビテーション槽2cのそれぞれの出側には、それぞれのキャビテーション槽内圧力(背圧)を測定する圧力計15a 〜15c と、その背圧を調整する背圧調整手段16a 〜16c とを設け、この圧力計15a 〜15c と背圧調整手段16a 〜16c とによりそれぞれのキャビテーション槽内の背圧を適正範囲に調整する。
【0054】
3回目の洗浄を終了した土壌は分離槽6に貯められ、分離槽6で分離された固形分は、浄化土壌21として修復される。そして、液体分である水は浄化用水またはスラリー化用水22として循環再利用される。水が不足する場合には補給水23が補充される。
【0055】
本実施の形態によれば、3回の洗浄を連続的に行うため、第1の実施の形態に比較して、浄化土壌21に含まれる油分量をより低下することができる。
また、本実施の形態の浄化装置24は、完全なクローズドシステムであり、蒸散および浄化土壌への付着により持ち出される水を補給する以外、全て系内で処理可能であり、汚染物質の系外への搬出は一切発生しない。
【0056】
なお、本実施の形態では、3基のキャビテーション槽2a〜2cを並設した場合を例にとったが、本発明はこの場合に限定されるものではなく、土壌中の油分量や浄化目標値に応じて、その段数は適宜決定すればよい。
【0057】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態を説明する。図6は、本実施の形態の浄化装置25を模式的に示す説明図である。本実施の形態が第2の実施の形態と相違するのは、キャビテーション槽2a、2bの出側に、固液分離装置26a 、26b 、例えば液体サイクロンをそれぞれ設けることにより各洗浄後毎に土壌分を濃縮する濃縮工程を設けて、次段での洗浄効率を向上させるものである。
【0058】
すなわち、この浄化装置25は、第1の浄化機構、第2の浄化機構および第3の浄化機構からなる。
第1の浄化機構は、液体を収容する第1のキャビテーション槽2aと、第1のキャビテーション槽2aに収容された液体の圧力を、大気圧よりも高い圧力にするための第1の圧力調整手段5aと、第1のキャビテーション槽2aに収容された液体に高圧水を噴射することにより、液体の一部にキャビテーションが発生する第1のキャビテーション領域を形成するための第1の高圧水噴射装置であるキャビテーションノズル3aと、第1のキャビテーション領域に、油により汚染された土壌と水とを混合したスラリーを存在させるためのスラリー供給装置4aとを有する。
【0059】
第2の浄化機構は、第1のキャビテーション槽2aから排出される、土壌を含有するスラリーから液体を分離することによりスラリーを濃縮する濃縮槽26a と、液体を収容するとともに、濃縮槽26a から排出された濃縮されたスラリーを収容する第2のキャビテーション槽2bと、第2のキャビテーション槽2bに収容された液体の圧力を、大気圧よりも高い圧力にするための第2の圧力調整手段5bと、第2のキャビテーション槽2bに収容された液体に高圧水を噴射することにより、液体の一部にキャビテーションが発生する第2のキャビテーション領域を形成するための第2の高圧水噴射装置であるキャビテーションノズル3bとを有する。
【0060】
さらに、第3の浄化機構は、第2のキャビテーション槽2bから排出される、土壌を含有するスラリーから液体を分離することによりスラリーを濃縮する濃縮槽26b と、液体を収容するとともに、濃縮槽26b から排出された濃縮されたスラリーを収容する第3のキャビテーション槽2cと、第3のキャビテーション槽2cに収容された液体の圧力を、大気圧よりも高い圧力にするための第3の圧力調整手段5cと、第3のキャビテーション槽2cに収容された液体に高圧水を噴射することにより、液体の少なくとも一部にキャビテーションが発生する第3のキャビテーション領域を形成するための第3の高圧水噴射装置であるキャビテーションノズル3cと、第3のキャビテーション槽2cから排出される、土壌を含有するスラリーから液体を分離するための分離槽6とを有する。
【0061】
すなわち、本実施の形態の浄化装置25は、複数段(図示例では3段の場合を例示)のキャビテーション槽2a〜2cを備えており、連続的に汚染土壌を浄化できる。混合槽17により油汚染土壌をスラリー化する混合工程、スラリー化した油汚染土壌を第1のキャビテーション槽2aへ供給するスラリー供給工程、ポンプ20a で加圧した水を第1のキャビテーション槽2aに供給して洗浄する浄化工程、圧力計15a と背圧調整手段16a とによりキャビテーション槽2a内の圧力を調整する背圧調整工程は、上述した第2の実施の形態の浄化装置24と同じである。
【0062】
しかし、第2の実施の形態の浄化装置24では、第1のキャビテーション槽2aで洗浄された油汚染土壌は、次の第2のキャビテーション槽2b、さらに第3のキャビテーション槽2cへと洗浄が進むにつれてキャビテーションノズル3a、3b、3cからの水で希釈されるため、後段ほどスラリー中の土壌の割合が低下し、洗浄効率が低化する。
【0063】
そこで、本実施の形態では、第1のキャビテーション槽2a、第2のキャビテーション槽2bの出側に、固液分離装置である液体サイクロン26a 、26b を設けることにより各洗浄毎に土壌分を濃縮する濃縮工程を設け、次段での洗浄効率を向上させている。つまり、第1のキャビテーション槽2aの出側に液体サイクロン26a を設け、土壌分は分離土壌槽27a に貯えられた後、スラリーポンプ4bで第2のキャビテーション槽2bに供給される。
【0064】
一方、液体サイクロン26a で分離された水は分離水槽28a に貯えられた後、ポンプ20b で加圧され、第2のキャビテーション槽2bに装着されたノズル3bから噴出され、第2のキャビテーション槽2b内でキャビテーションが生じ、油汚染土壌は2回目の洗浄が行われる。
【0065】
第2のキャビテーション槽2bで洗浄された土壌は、同様に液体サイクロン26b で濃縮された後、第3のキャビテーション槽2cで洗浄され、最終的に分離槽6で水22と浄化土壌21に分離される。水22は、浄化用水もしくはスラリー化用水として循環再利用され、浄化土壌21に付着して系外への持ち出される水や蒸散で減少した水は、補給水23で補充される。なお、符号27b は分離土壌槽で、28b は分離水槽を示す。
【0066】
このように、本実施の形態の浄化装置25によれば、上述した第2の実施の形態の浄化装置24に比較して、第2のキャビテーション槽2b、第3のキャビテーション槽2cでの洗浄効率が向上する。
【0067】
また、本実施の形態の浄化装置25は、完全なクローズドシステムであり、蒸散および浄化土壌への付着により持ち出される水を補給する以外、全て系内で処理可能であり、汚染物質の系外への搬出は一切発生しない。
【0068】
なお、本実施の形態では、3基のキャビテーション槽2a〜2cを並設した場合を例にとったが、本発明はこの場合に限定されるものではなく、土壌中の油分量や浄化目標値に応じて、その段数は適宜決定すればよい。
【0069】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明により、例えばアルカリや過酸化水素水等の二次汚染物質の排出がなく、油により汚染された土壌から油を迅速に分離して分解することができる土壌の浄化方法および浄化装置を提供することができた。これにより、全国的に広く点在している、油が付着して汚染された土壌から油を効率よく迅速に分解および分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態の土壌の浄化装置を模式的に示す説明図である。
【図2】第1の実施の形態におけるキャビテーション槽の内部の状況を模式的に示す説明図である。
【図3】キャビテーション槽の内部の状況を具体的に示す説明図である。
【図4】油分量 2.5wt%の油汚染土壌に10MPa の高圧水を一回照射した場合に、土壌に残存する油分量 (wt%) と背圧(MPa) との関係を示すグラフである。
【図5】第2の実施の形態の浄化装置を模式的に示す説明図である。
【図6】第3の実施の形態の浄化装置を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
1 浄化装置
2 キャビテーション槽
2a 液体
3 高圧水噴射ノズル
4 土壌またはスラリー供給装置
4a スラリー噴出ノズル
5 圧力調整手段
6 分離槽
7 水
8 キャビテーション領域
10 油汚染土壌
15 圧力計
16 背圧調整手段
17 混合槽
18 油汚染土壌搬送装置
19 油汚染土壌
20 ポンプ
Claims (10)
- 大気圧より高い圧力下にある液体中で、油が付着した土壌に、キャビテーションによる気泡の崩壊に起因した高温高圧を作用させることにより、前記油を前記土壌から分離して分解することを特徴とする土壌の浄化方法。
- 大気圧より高い圧力下にある液体中で高圧液体を噴射してキャビテーションを発生した領域に、油が付着した土壌と液体とを混合したスラリーを供給することにより、前記油を前記土壌から分離して分解する第1の浄化処理を行うことを特徴とする土壌の浄化方法。
- さらに、前記第1の浄化処理を行った後に、大気圧より高い圧力下にある液体中で高圧液体を噴射してキャビテーションを発生した領域に、浄化処理を行われたスラリーを供給することにより、油を前記スラリーに混合された土壌から分離して分解する第2の浄化処理を、1回または複数回繰り返し行うことを特徴とする請求項2に記載された土壌の浄化方法。
- さらに、前記第1の浄化処理を行われたスラリーから液体を分離して該スラリーを濃縮した後に1回目の前記第2の浄化処理を行うこと、および/または、連続する複数回の前記第2の浄化処理のうち先行する第2の浄化処理を行われたスラリーから液体を分離して該スラリーを濃縮した後に後行する第2の浄化処理を行うことを特徴とする請求項3に記載された土壌の浄化方法。
- 前記第1の浄化処理、または、1回または連続する複数回の前記第2の浄化処理のうちの最終の第2の浄化処理を終えたスラリーから液体を分離する請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載された土壌の浄化方法。
- 前記大気圧より高い圧力は、ゲージ圧で、0.01〜0.4MPaである請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載された土壌の浄化方法。
- 液体を収容する第1のキャビテーション槽、該第1のキャビテーション槽に収容された液体に負荷される圧力を大気圧より高い圧力にするための圧力調整手段、該第1のキャビテーション槽に収容された液体に高圧液体を噴射することにより該液体にキャビテーションが発生する領域を形成するための高圧液体噴射装置、および、該キャビテーションを発生した領域に油が付着した土壌または該土壌と液体とを混合したスラリーを供給するための供給装置を有する第1の浄化機構を備えることを特徴とする土壌の浄化装置。
- さらに、液体を収容する第2のキャビテーション槽、該第2のキャビテーション槽に収容された液体に負荷される圧力を大気圧より高い圧力にするための圧力調整手段、該第2のキャビテーション槽に収容された液体に高圧液体を噴射することにより該液体にキャビテーションが発生する領域を形成するための高圧液体噴射装置、および、該キャビテーションを発生した領域に油が付着した土壌または該土壌と液体とを混合したスラリーを供給するための供給装置を有する第2の浄化機構を、1基または直列に複数基備えることを特徴とする請求項7に記載された土壌の浄化装置。
- さらに、第1のキャビテーション槽、1基もしくは複数基の前記第2のキャビテーション槽のうちの少なくとも一つから排出される、土壌を含有するスラリーから液体を分離することにより該スラリーを濃縮するための濃縮槽を備えることを特徴とする請求項8に記載された土壌の浄化装置。
- 前記第1のキャビテーション槽、または、1基もしくは複数基の前記第2のキャビテーション槽のうちの最終の第2のキャビテーション槽から排出される、土壌を含有するスラリーから液体を分離するための分離槽を備えることを特徴とする請求項7から請求項9までのいずれか1項に記載された土壌の浄化装置。
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2002
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