JP2004147417A - 電動モータのマグネットカバー圧入方法及びその装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】電動モータのヨークに内装されるマグネットの内周面にマグネットカバーを圧入するに際し、マグネットカバーを圧入治具に同軸的に嵌合し、マグネットカバーの芯ずれ、傾き、倒れ等を回避することにより、圧入性を向上し、マグネットカバーの異常変形、損傷を防止すること。
【解決手段】電動モータ20のマグネットカバー圧入方法において、圧入冶具70の外周に設けた弾性体71Bにマグネットカバー60を嵌合し、マグネットカバー60を圧入冶具70に同軸的に嵌合する状態でマグネット52に圧入するもの。
【選択図】 図4
【解決手段】電動モータ20のマグネットカバー圧入方法において、圧入冶具70の外周に設けた弾性体71Bにマグネットカバー60を嵌合し、マグネットカバー60を圧入冶具70に同軸的に嵌合する状態でマグネット52に圧入するもの。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動モータのマグネットカバー圧入方法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電動パワーステアリング装置等に用いられる電動モータにおいて、特許文献1に記載の如く、ヨークの内側にマグネットを配置し、圧入治具に嵌合されたマグネットカバーをその圧入始端部からマグネットの内周面に沿って圧入し、マグネットをヨークに固定するものがある。
【0003】
特許文献1の如くの従来技術では、マグネットの内径に対して小径状態から大径状態となるようにマグネットカバーの圧入始端部に形成したテーパ面を、マグネットの内周コーナー部に当てがい、マグネットカバーをマグネットに対して芯出しした状態で、マグネットカバーを圧入することとしている。
【0004】
【特許文献1】
特公平5−59661(2頁、第4図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
▲1▼マグネットカバーを圧入治具に遊嵌して圧入するものであり、マグネットカバーを圧入治具に同軸化できない。このため、圧入治具をマグネットに同軸配置しても、マグネットカバーがマグネットに芯ずれ、傾き、倒れ等を伴って圧入され、スムーズに低荷重で圧入できず、圧入性が悪い。また、マグネットカバーに偏荷重が作用し、マグネットカバーの異常変形、損傷を生ずる虞がある。
【0006】
▲2▼マグネットカバーの圧入始端部にテーパ面を形成し、マグネットの内周コーナー部と芯出ししようとする場合には、マグネットカバーのテーパ面とマグネットの内周コーナー部の形状をともに高精度に形成する必要があり、特にマグネットの側を高精度に加工することに困難があり、コスト高になる。また、この場合には、マグネットカバーの圧入始端部の芯出しはできても、軸長の長いマグネットカバーの傾き、倒れ等を回避することができない。
【0007】
本発明の課題は、電動モータのヨークに内装されるマグネットの内周面にマグネットカバーを圧入するに際し、マグネットカバーを圧入治具に同軸的に嵌合し、マグネットカバーの芯ずれ、傾き、倒れ等を回避することにより、圧入性を向上し、マグネットカバーの異常変形、損傷を防止することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、ヨークの内側にマグネットを配置し、圧入治具に嵌合されたマグネットカバーをその圧入始端部からマグネットの内周面に沿って圧入し、マグネットをヨークに固定する電動モータのマグネットカバー圧入方法において、圧入治具の外周に設けた弾性体にマグネットカバーを嵌合し、マグネットカバーを圧入治具に同軸的に嵌合する状態でマグネットに圧入するようにしたものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において更に、前記弾性体が圧入治具の外周の周方向に間隔をおいた複数位置に設けられるようにしたものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において更に、前記弾性体が圧入治具の外周の軸方向に間隔をおいた複数位置に設けられるようにしたものである。
【0011】
請求項4の発明は、ヨークの内側にマグネットを配置し、圧入治具に嵌合されたマグネットカバーをその圧入始端部からマグネットの内周面に沿って圧入し、マグネットをヨークに固定する電動モータのマグネットカバー圧入装置において、圧入治具の外周に弾性体を設け、圧入治具の外周に設けた弾性体にマグネットカバーを嵌合し、マグネットカバーを圧入治具に同軸的に嵌合する状態でマグネットに圧入可能にするようにしたものである。
【0012】
請求項5の発明は、請求項4の発明において更に、前記弾性体が圧入治具の外周の周方向に間隔をおいた複数位置に設けられるようにしたものである。
【0013】
請求項6の発明は、請求項4又は5の発明において更に、前記弾性体が圧入治具の外周の軸方向に間隔をおいた複数位置に設けられるようにしたものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は電動パワーステアリング装置を一部破断して示す正面図、図2は図1の要部断面図、図3は電動モータを示す断面図、図4はマグネットとマグネットカバーと圧入治具を示し、(A)は全体を示す模式図、(B)は圧入治具の先端部を示す模式図、(C)は圧入冶具の後端部を示す模式図、図5は圧入治具の第1押当面の作用を示し、(A)は本発明例を示す模式図、(B)は比較例を示す模式図、図6は本発明の変形例を示す模式図である。
【0015】
電動パワーステアリング装置10は、図1、図2に示す如く、ハウジング11にステアリング入力軸12を支持し、入力軸12にトーションバー13を介して出力軸14(不図示)を連結し、この出力軸14にピニオンを設け、このピニオンに噛み合うラックを備えたラック軸15をハウジング11に左右動可能に支持している。入力軸12と出力軸14の間には操舵トルクセンサ16(不図示)を設けている。操舵トルクセンサ16は、ステアリングホィールに加えた操舵トルクが出力軸14に付与され、トーションバー13の弾性ねじり変形により、入力軸12と出力軸14の間に生ずる相対回転変位に基づき、操舵トルクを検出する。
【0016】
電動パワーステアリング装置10は、ラック軸15の両端部をハウジング11の両側に突出し、それらの端部にタイロッド(不図示)が連結されて、ラック軸15の左右動によりタイロッドを介して左右の車輪を転蛇可能とする。尚、ラック軸15の一端はラックガイド(不図示)により、他端は軸受ブッシュ24によりハウジング11に支持される。
【0017】
電動パワーステアリング装置10は、ハウジング11内で、ラック軸15の周囲に電動モータ20を設けるとともに、電動モータ20により駆動されるスリーブ21をラック軸15の外周に間隙をおいてラック軸15と同軸配置し、スリーブ21の一端部を軸受22により、他端部を軸受23により支持している。
【0018】
電動パワーステアリング装置10は、ラック軸15にボールねじ30を設けており、ボールねじ30にボール31を介して噛み合うナット32を有している。電動モータ20のスリーブ21の前述した軸受23に支持される延長部は、拡径延長部21Aとされており、ナット32に同軸に、かつナット32の外周に隙間嵌め(一定以上の回転力、軸力により相対移動できる)されて延在され、トルクリミッタ40を介してナット32と回転結合されている。
【0019】
トルクリミッタ40は、スリーブ21の延長部21Aの内部で、ナット32の両端面に板ばね41、42を添設し、延長部21Aの開口端に螺合したロックナット43によりそれらの板ばね41、42の締め代(初期弾発力)を調整可能としている。これにより、電動パワーステアリング装置10の通常使用される常用域のトルク(リミットトルクより小なるトルク)では、板バネ41、42の弾発力によりスリーブ21とナット32を滑りなく結合し続け、電動モータ20の発生トルクをナット32に伝える。他方、タイヤが操舵中に縁石に乗り上げる等により、ラック軸15のストロークが急停止せしめられ、ボールねじ30のリードの比率で高速回転していた電動モータ20の慣性力がボールねじ30のねじ溝に大きな衝撃力を及ぼすことの起因となる、その板バネ41、42の弾発力を越える衝撃トルク(リミットトルク)に対しては、スリーブ21とナット32の間に滑りを生じさせ、電動モータ20の発生トルクをナット32に伝えないようにし、ボールねじ30のねじ溝の損傷等を防止する。
【0020】
以下、電動パワーステアリング装置10の動作について説明する。
(1)操舵トルクセンサ16が検出した操舵トルクが所定値より低いとき、操舵アシスト力は不要であり、電動モータ20は駆動されない。
【0021】
(2)操舵トルクセンサ16が検出した操舵トルクが所定値を越えるとき、操舵アシスト力を必要とするから、電動モータ20が駆動される。電動モータ20の発生トルクがスリーブ21を介してナット32に操舵アシスト力として伝えられ、ナット32の回転をボールねじ30によりラック軸15の直線運動とし、ラック軸15に連動する車輪に操舵アシスト力として付与する。
【0022】
しかるに、電動モータ20は、図3に示す如く、ハウジング11をヨーク51としており、ヨーク51の内周に固定される複数個のステータ側のマグネット52と、マグネット52の内側に間隙をおいて配置されるロータ53とを有する。ロータ53は、鉄芯にコイルを巻き回して構成され、前述のスリーブ21をその内周に固定化されて備える。また、ハウジング11の内部にブラシホルダステー54を固定し、このブラシホルダステー54に固定したブラシホルダにブラシ55を保持している。ブラシ55は、ブラシホルダステー54に設けたばねによりロータ53の端部寄りに設けたコンミテータ56に接触せしめられる。電動モータ20は、ブラシ55、コンミテータ56を介してロータ53に給電されると、ロータ53の磁力線がマグネット52の磁界を切ることにより、ロータ53を回転駆動する。
【0023】
電動モータ20は、図4に示す如く、本発明のマグネットカバー圧入装置により、ヨーク51の内周に配置したマグネット52の内周面52Aにマグネットカバー60が圧入される。マグネットカバー60は、マグネット52をヨーク51の内周に固定するとともに、マグネット52を被覆し、マグネット52の破損や、破損したマグネット52がロータ53の側に飛散することによるロータ53の回転の阻止を回避する。
【0024】
マグネットカバー圧入装置によるマグネットカバー60の圧入方法は以下の如くである。
【0025】
(1)マグネット52の一端側(マグネットカバー60が圧入開始される側)の端面の内側コーナー部53(端面と内周面52Aの交差部)に、面取り状のテーパ状端面53Aを形成する。
【0026】
(2)マグネットカバー60を薄板鋼板等により筒状成形し、マグネット52の内周面52Aに圧入されるカバー部61と、カバー部61より大外径をなしてヨーク51の内周に圧入保持されるフランジ部62とを形成する。カバー部61の外径はマグネット52の内周面52Aの内径よりも大きく設定される。図4において、60Aは溶接部を示す。
【0027】
このとき、カバー部61の圧入始端部63の周方向の全域に、カバー部61から内側(半径方向内方側)へ張り出る環状の第1折り曲げ部63Aを設ける。第1折り曲げ部63Aはカバー部61に対し直交するものに限らず、先端側に向けて縮径されたテーパ状をなすものでも良い。
【0028】
また、マグネットカバー60の圧入終端部64の周方向の全域に、カバー部61から外側(半径方向外方向側)へ張り出しフランジ部62に交わる環状の第2折り曲げ部64Aを設ける。第2折り曲げ部64Aはカバー部61、フランジ62に対し直交する。
【0029】
(3)圧入冶具70を用意し、マグネットカバー60のカバー部61、フランジ部62がそれぞれ嵌合するポンチ部71、ボス部72を具備せしめる。
【0030】
ポンチ部71の外周面71Aにはゴム等の筒状弾性体71Bが焼付き(又は接着剤による接着)によって設けられ、弾性体71Bにマグネットカバー60のカバー部61を軽圧入して嵌合し(隙間なく挿入又は微小隙間を介して挿入して嵌合でも可)、マグネットカバー60のカバー部61を圧入冶具70のポンチ部71に同軸的に嵌合可能とする。ポンチ部71の外周面71A、弾性体71Bは、圧入冶具70によるマグネットカバー60のマグネット52への圧入時に、マグネット52の内周面52Aとの間でマグネットカバー60のカバー部61を挟むものであり、外周面71Aの外径と弾性体71Bの厚み(圧縮度)はマグネット52の内径とマグネットカバー60の板厚により決定される。
【0031】
ボス部72の外周面72Aにはゴム等の筒状弾性体72Bが焼付き(又は接着剤による接着)によって設けられ、弾性体72Bにマグネットカバー60のフランジ62を軽圧入して嵌合し(隙間なく挿入又は微小隙間を介して挿入して嵌合でも可)、マグネットカバー60のフランジ62を圧入冶具70のボス部72に同軸的に嵌合可能とする。ボス部72の外周面72A、弾性体72Bは、圧入冶具70によるマグネットカバー60のマグネット52への圧入時に、ヨーク51との間でマグネットカバー60のフランジ62を挟むものであり、外周面72Aの外径と弾性体72Bの厚み(圧縮度)はヨーク51の内径とマグネットカバー60の板厚により決定される。
【0032】
このとき、ポンチ部71の先端部73に、ポンチ部71の外周面71Aより小径の第1押当面73A、本実施形態では先端側に向けて縮径されたテーパ状をなす第1押当面73Aを設ける。
【0033】
尚、本発明者は、圧入治具70によりマグネットカバー60の第1折り曲げ部63Aをマグネット52の内周面52Aの側にスムースに押込み変形させるためには、圧入治具70の第1押当面73Aがマグネット52の内側コーナー部53との間でマグネットカバー60の第1折り曲げ部63Aに及ぼすモーメントMをより大きくするように、モーメントMの腕の長さLを大きくすること、換言すれば圧入治具70の第1押当面73Aにおけるマグネットカバー60の第1折り曲げ部63Aを押当て支持する外径をより小径にすることが必要であることを知見した。しかしながら、従来の圧入治具は、マグネットの内周面との間でマグネットカバーを挟む真直円柱状のポンチ部の先端面を押当面としている。このため、従来の圧入治具では、圧入治具の押当面においてマグネットカバーの折り曲げ部を押当て支持する外径は、ポンチ部の外径と略同一であって、前述の如くにマグネットの内径とマグネットカバーの板厚により限定される値より小径化できず、上述のモーメントMの腕の長さLBを大きくできなかった(図5(B))。
【0034】
また、ポンチ部71の後端部74に、ポンチ部71に直交し、ポンチ部71をボス部72につなぐ段差面状の第2押当面74Aを設ける。
【0035】
圧入治具70にマグネットカバー60を嵌合し、マグネットカバー60の第1折り曲げ部63Aを第1押当面73Aに押当てた自由状態(嵌合ままの状態)で、マグネットカバー60の第2折り曲げ部64Aは軸方向において第2押当面74Aとの間に一定の間隙Gを介する。
【0036】
このとき、ポンチ部71における後端部74の第2押当面74Aに、上述の間隙Gと同一又はより薄いゴム等の板状弾性体74Bが焼付き(又は接着剤による接着)によって設けられる。
【0037】
尚、圧入冶具70において、ポンチ部71の外周面71A、ボス部72の外周面72A、後端部74の第2押当面74Aのそれぞれに設けられる弾性体71B、72B、74Bは、本実施形態では圧入冶具70の周方向及び軸方向の双方で連続一体化される。
【0038】
(4)ヨーク51の内周に複数個のマグネット52を位置決めした状態下で、ヨーク51とマグネット52をそれらの支持手段により固定保持する。
【0039】
(5)圧入治具70をヨーク51とマグネット52の支持手段に同軸配置する。圧入治具70のポンチ部71、ボス部72の外周面71A、72Aに設けられている弾性体71B、72Bに嵌合したマグネットカバー60をその圧入始端部63からマグネット52の内周面52Aに沿って圧入し、マグネット52をヨーク51に固定する。
【0040】
このとき、第1段階で、圧入治具70の先端部73の第1押当面73Aを、マグネットカバー60の圧入始端部63の第1折り曲げ部63Aに押当て、かつマグネットカバー60の圧入始端部63の第1折り曲げ部63Aをマグネット52のテーパ状端面53Aに対向するように位置決めし、該マグネットカバー60の第1折り曲げ部63Aをマグネット52のテーパ状端面53Aから内周面52Aの側に沿うように押込み変形させて圧入開始する。
【0041】
第1段階経過後の第2段階では、マグネットカバー60の第1折り曲げ部63Aが押込み変形せしめられたことによって該マグネットカバー60が圧入治具70の軸方向に相対変位し、圧入治具70の後端部74の第2押当面74Aに設けられている弾性体74Bがマグネットカバー60の圧入終端部64の第2折り曲げ部64Aに押当たる。これにより、圧入治具70は、第1押当面73Aをマグネットカバー60の第1折り曲げ部63Aに押当てることに加え、第2押当面74Aの弾性体74Bをマグネットカバー60の第2折り曲げ部64Aに押当て、圧入荷重を第1押当面73Aと第2押当面74A(弾性体74B)のそれぞれからマグネットカバー60の圧入始端部63と圧入終端部64のそれぞれに同時に及ぼしつつ圧入を更に進める。
【0042】
本実施形態では、圧入冶具70に弾性体71B、72Bを設けたことにより、以下の作用がある。
【0043】
▲1▼マグネットカバー60の内周面と圧入冶具70の外周面との環状隙間に介装されることとなる弾性体71B、72Bにより、マグネットカバー60は圧入冶具70に容易に同軸的に嵌合する。圧入冶具70をマグネット52に同軸配置することにより、マグネットカバー60はマグネット52に芯ずれ、傾き、倒れ等を伴なうことなく圧入され、スムーズに低荷重で圧入でき、圧入性が良い。また、マグネットカバー60に偏荷重が作用することがなく、マグネットカバー60の異常変形、損傷を生じない。
【0044】
▲2▼圧入冶具70にマグネットカバー60を嵌合したセット工程で、マグネットカバー60の脱落を防止でき、圧入作業性を向上できる。
【0045】
▲3▼圧入冶具70の外周に弾性体71B、72Bを設けるだけの簡素な設備により、上述▲1▼、▲2▼を実現できる。
【0046】
尚、本実施形態によれば以下の作用もある。
▲1▼マグネットカバー60の圧入の第1段階で、圧入治具70の第1押当面73Aをマグネットカバー60の圧入始端部63の第1折り曲げ部63Aに押当てて圧入開始し、第2段階で、圧入治具70の第2押当面74A(弾性体74B)をマグネットカバー60の圧入終端部64の第2折り曲げ部64Aに押当てて圧入を更に進める。
【0047】
従って、マグネットカバー60の圧入開始経過後には、圧入治具70が付与する圧入荷重をマグネットカバー60の圧入始端部63と圧入終端部64の双方に分散して及ぼすものとなり、圧入性を向上できる。
【0048】
また、マグネットカバー60の圧入開始経過後には、マグネットカバー60の圧入始端部63の側に過大荷重が及び続くことがなく、マグネットカバー60の異常変形、損傷を防止できる。マグネットカバー60に過大圧入荷重が及び続けないから、マグネットカバー60の材料強度を高強度化する必要がないし、より薄板化でき、電動モータ20の性能を向上できる。
【0049】
▲2▼マグネットカバー60の圧入開始時には、圧入治具70が付与する圧入荷重をマグネットカバー60の圧入始端部63の第1折り曲げ部63Aに集中的に作用せしめるものとし、この第1折り曲げ部63Aをマグネット52の内周面52Aの側にスムースに押込み変形させることにて、圧入開始のスムースを図ることができる。
【0050】
▲3▼圧入治具70の第1押当面73Aをテーパ状にしたことにより、マグネットカバー60を圧入治具70及びマグネット52に対して芯出しした状態でマグネット52の内周面52Aにスムースに導入して圧入開始できるから、圧入荷重を低減して圧入性を向上し、マグネットカバー60の異常変形、損傷を防止できる。
【0051】
▲4▼圧入治具70の先端部73にその外周面71Aより小径のテーパ状第1押当面73Aを設けたことにより、圧入治具70の外周面71Aより小径側でマグネットカバー60の圧入始端部63の第1折り曲げ部63Aを押当支持できる。従って、マグネットカバー60の圧入開始時に、圧入治具70の先端部73の第1押当面73Aがマグネット52の内側コーナー部53との間でマグネットカバー60の第1折り曲げ部63Aに及ぼす圧入荷重起因モーメントMの腕の長さLAが大きくなる(図5(A))。このため、圧入荷重を大きくしなくても、マグネットカバー60の第1折り曲げ部63Aをマグネット52の内周面52Aの側に押込み変形させる上記モーメントが大きくなり、マグネットカバー60の第1折り曲げ部63Aをスムースに押込み変形して圧入開始でき、マグネットカバー60の異常変形、損傷を防止できる。
【0052】
▲5▼マグネット52の内側コーナー部53にテーパ状端面53Aを形成し、マグネットカバー60の圧入始端部63をマグネット52のテーパ状端面53Aに対して押圧することにより、マグネットカバー60はマグネット52に対して芯出しされた状態でその内周面52Aにスムースに導入される。そして、マグネット52のテーパ状端面53Aは、押圧反力の径方向分力により、マグネットカバー60の外径を、該マグネットカバー60の圧入始端部63から終端部64に渡る全域で、連続的に周方向均等に絞り成形する。これにより、マグネットカバー60は長手方向の全域について、マグネット52のテーパ状端面53Aを介してその内周面52Aに低荷重でスムースに連続的に圧入され続け、異常変形、損傷を生じない。
【0053】
図6の変形例は、圧入治具70の先端部73に設ける第1押当面73Aを、ポンチ部71の外周面71Aに対し段差をなす小径円柱部の先端面にて構成したものである。この第1押当面73Aにあっても、マグネット52のテーパ状端面53Aとの間でマグネットカバー60の第1折り曲げ部63Aに及ぼす圧入荷重起因モーメントMの腕の長さLを大きくし、結果として、圧入荷重を大きくしなくても、マグネットカバー60の第1折り曲げ部63Aをスムースに押込み変形して圧入開始できる。
【0054】
本発明の実施に用いる圧入冶具70としては、弾性体が外周の周方向に間隔をおいた複数位置に設けられるものでも良い。これによれば、弾性体を圧入冶具の外周の周方向に分割配置することにより、マグネットカバーと弾性体との接触面積を低減し、マグネットカバーの圧入冶具への嵌合挿入作業性を向上しながら、圧入冶具との同軸嵌合度を確保できる。
【0055】
本発明の実施に用いる圧入冶具70としては、弾性体が外周の軸方向に間隔をおいた複数位置に設けられるものでも良い。これによれば、弾性体を圧入冶具の外周の軸方向で、例えば先端部と後端部に分割配置することにより、軸長の長いマグネットカバーと圧入冶具との同軸嵌合度を簡易に確保でき、マグネットカバーの傾き、倒れ等を回避できる。また、マグネットカバーと弾性体との接触面積を低減し、マグネットカバーの圧入冶具への嵌合挿入作業性を向上できる。
【0056】
本発明の圧入冶具70を構成する弾性体は、ゴムに限らず、圧入冶具の外周の周方向又は軸方向に沿って設けた金属又はプラスチックの板ばね、圧入冶具の外周に埋込んだコイルばねにバックアップされて圧入冶具の外周面に付勢状態で突き出るボール等であっても良い。
【0057】
以上、本発明の実施の形態を図面により記述したが、本発明の具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、マグネットカバー60の材質としてアルミ、ステンレス等が採用でき、マグネットカバー60の肉厚、マグネット52の個数等は自由に選択できる。
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、電動モータのヨークに内装されるマグネットの内周面にマグネットカバーを圧入するに際し、マグネットカバーを圧入治具に同軸的に嵌合し、マグネットカバーの芯ずれ、傾き、倒れ等を回避することにより、圧入性を向上し、マグネットカバーの異常変形、損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は電動パワーステアリング装置を一部破断して示す正面図である。
【図2】図2は図1の要部断面図である。
【図3】図3は電動モータを示す断面図である。
【図4】図4はマグネットとマグネットカバーと圧入治具を示し、(A)は全体を示す模式図、(B)は圧入治具の先端部を示す模式図、(C)は圧入冶具の後端部を示す模式図である。
【図5】図5は圧入治具の第1押当面の作用を示し、(A)は本発明例を示す模式図、(B)は比較例を示す模式図である。
【図6】図6は本発明の変形例を示す模式図である。
【符号の説明】
20 電動モータ
51 ヨーク
52 マグネット
52A 内周面
60 マグネットカバー
63 圧入始端部
70 圧入冶具
71B、72B 弾性体
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動モータのマグネットカバー圧入方法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電動パワーステアリング装置等に用いられる電動モータにおいて、特許文献1に記載の如く、ヨークの内側にマグネットを配置し、圧入治具に嵌合されたマグネットカバーをその圧入始端部からマグネットの内周面に沿って圧入し、マグネットをヨークに固定するものがある。
【0003】
特許文献1の如くの従来技術では、マグネットの内径に対して小径状態から大径状態となるようにマグネットカバーの圧入始端部に形成したテーパ面を、マグネットの内周コーナー部に当てがい、マグネットカバーをマグネットに対して芯出しした状態で、マグネットカバーを圧入することとしている。
【0004】
【特許文献1】
特公平5−59661(2頁、第4図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
▲1▼マグネットカバーを圧入治具に遊嵌して圧入するものであり、マグネットカバーを圧入治具に同軸化できない。このため、圧入治具をマグネットに同軸配置しても、マグネットカバーがマグネットに芯ずれ、傾き、倒れ等を伴って圧入され、スムーズに低荷重で圧入できず、圧入性が悪い。また、マグネットカバーに偏荷重が作用し、マグネットカバーの異常変形、損傷を生ずる虞がある。
【0006】
▲2▼マグネットカバーの圧入始端部にテーパ面を形成し、マグネットの内周コーナー部と芯出ししようとする場合には、マグネットカバーのテーパ面とマグネットの内周コーナー部の形状をともに高精度に形成する必要があり、特にマグネットの側を高精度に加工することに困難があり、コスト高になる。また、この場合には、マグネットカバーの圧入始端部の芯出しはできても、軸長の長いマグネットカバーの傾き、倒れ等を回避することができない。
【0007】
本発明の課題は、電動モータのヨークに内装されるマグネットの内周面にマグネットカバーを圧入するに際し、マグネットカバーを圧入治具に同軸的に嵌合し、マグネットカバーの芯ずれ、傾き、倒れ等を回避することにより、圧入性を向上し、マグネットカバーの異常変形、損傷を防止することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、ヨークの内側にマグネットを配置し、圧入治具に嵌合されたマグネットカバーをその圧入始端部からマグネットの内周面に沿って圧入し、マグネットをヨークに固定する電動モータのマグネットカバー圧入方法において、圧入治具の外周に設けた弾性体にマグネットカバーを嵌合し、マグネットカバーを圧入治具に同軸的に嵌合する状態でマグネットに圧入するようにしたものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において更に、前記弾性体が圧入治具の外周の周方向に間隔をおいた複数位置に設けられるようにしたものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において更に、前記弾性体が圧入治具の外周の軸方向に間隔をおいた複数位置に設けられるようにしたものである。
【0011】
請求項4の発明は、ヨークの内側にマグネットを配置し、圧入治具に嵌合されたマグネットカバーをその圧入始端部からマグネットの内周面に沿って圧入し、マグネットをヨークに固定する電動モータのマグネットカバー圧入装置において、圧入治具の外周に弾性体を設け、圧入治具の外周に設けた弾性体にマグネットカバーを嵌合し、マグネットカバーを圧入治具に同軸的に嵌合する状態でマグネットに圧入可能にするようにしたものである。
【0012】
請求項5の発明は、請求項4の発明において更に、前記弾性体が圧入治具の外周の周方向に間隔をおいた複数位置に設けられるようにしたものである。
【0013】
請求項6の発明は、請求項4又は5の発明において更に、前記弾性体が圧入治具の外周の軸方向に間隔をおいた複数位置に設けられるようにしたものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は電動パワーステアリング装置を一部破断して示す正面図、図2は図1の要部断面図、図3は電動モータを示す断面図、図4はマグネットとマグネットカバーと圧入治具を示し、(A)は全体を示す模式図、(B)は圧入治具の先端部を示す模式図、(C)は圧入冶具の後端部を示す模式図、図5は圧入治具の第1押当面の作用を示し、(A)は本発明例を示す模式図、(B)は比較例を示す模式図、図6は本発明の変形例を示す模式図である。
【0015】
電動パワーステアリング装置10は、図1、図2に示す如く、ハウジング11にステアリング入力軸12を支持し、入力軸12にトーションバー13を介して出力軸14(不図示)を連結し、この出力軸14にピニオンを設け、このピニオンに噛み合うラックを備えたラック軸15をハウジング11に左右動可能に支持している。入力軸12と出力軸14の間には操舵トルクセンサ16(不図示)を設けている。操舵トルクセンサ16は、ステアリングホィールに加えた操舵トルクが出力軸14に付与され、トーションバー13の弾性ねじり変形により、入力軸12と出力軸14の間に生ずる相対回転変位に基づき、操舵トルクを検出する。
【0016】
電動パワーステアリング装置10は、ラック軸15の両端部をハウジング11の両側に突出し、それらの端部にタイロッド(不図示)が連結されて、ラック軸15の左右動によりタイロッドを介して左右の車輪を転蛇可能とする。尚、ラック軸15の一端はラックガイド(不図示)により、他端は軸受ブッシュ24によりハウジング11に支持される。
【0017】
電動パワーステアリング装置10は、ハウジング11内で、ラック軸15の周囲に電動モータ20を設けるとともに、電動モータ20により駆動されるスリーブ21をラック軸15の外周に間隙をおいてラック軸15と同軸配置し、スリーブ21の一端部を軸受22により、他端部を軸受23により支持している。
【0018】
電動パワーステアリング装置10は、ラック軸15にボールねじ30を設けており、ボールねじ30にボール31を介して噛み合うナット32を有している。電動モータ20のスリーブ21の前述した軸受23に支持される延長部は、拡径延長部21Aとされており、ナット32に同軸に、かつナット32の外周に隙間嵌め(一定以上の回転力、軸力により相対移動できる)されて延在され、トルクリミッタ40を介してナット32と回転結合されている。
【0019】
トルクリミッタ40は、スリーブ21の延長部21Aの内部で、ナット32の両端面に板ばね41、42を添設し、延長部21Aの開口端に螺合したロックナット43によりそれらの板ばね41、42の締め代(初期弾発力)を調整可能としている。これにより、電動パワーステアリング装置10の通常使用される常用域のトルク(リミットトルクより小なるトルク)では、板バネ41、42の弾発力によりスリーブ21とナット32を滑りなく結合し続け、電動モータ20の発生トルクをナット32に伝える。他方、タイヤが操舵中に縁石に乗り上げる等により、ラック軸15のストロークが急停止せしめられ、ボールねじ30のリードの比率で高速回転していた電動モータ20の慣性力がボールねじ30のねじ溝に大きな衝撃力を及ぼすことの起因となる、その板バネ41、42の弾発力を越える衝撃トルク(リミットトルク)に対しては、スリーブ21とナット32の間に滑りを生じさせ、電動モータ20の発生トルクをナット32に伝えないようにし、ボールねじ30のねじ溝の損傷等を防止する。
【0020】
以下、電動パワーステアリング装置10の動作について説明する。
(1)操舵トルクセンサ16が検出した操舵トルクが所定値より低いとき、操舵アシスト力は不要であり、電動モータ20は駆動されない。
【0021】
(2)操舵トルクセンサ16が検出した操舵トルクが所定値を越えるとき、操舵アシスト力を必要とするから、電動モータ20が駆動される。電動モータ20の発生トルクがスリーブ21を介してナット32に操舵アシスト力として伝えられ、ナット32の回転をボールねじ30によりラック軸15の直線運動とし、ラック軸15に連動する車輪に操舵アシスト力として付与する。
【0022】
しかるに、電動モータ20は、図3に示す如く、ハウジング11をヨーク51としており、ヨーク51の内周に固定される複数個のステータ側のマグネット52と、マグネット52の内側に間隙をおいて配置されるロータ53とを有する。ロータ53は、鉄芯にコイルを巻き回して構成され、前述のスリーブ21をその内周に固定化されて備える。また、ハウジング11の内部にブラシホルダステー54を固定し、このブラシホルダステー54に固定したブラシホルダにブラシ55を保持している。ブラシ55は、ブラシホルダステー54に設けたばねによりロータ53の端部寄りに設けたコンミテータ56に接触せしめられる。電動モータ20は、ブラシ55、コンミテータ56を介してロータ53に給電されると、ロータ53の磁力線がマグネット52の磁界を切ることにより、ロータ53を回転駆動する。
【0023】
電動モータ20は、図4に示す如く、本発明のマグネットカバー圧入装置により、ヨーク51の内周に配置したマグネット52の内周面52Aにマグネットカバー60が圧入される。マグネットカバー60は、マグネット52をヨーク51の内周に固定するとともに、マグネット52を被覆し、マグネット52の破損や、破損したマグネット52がロータ53の側に飛散することによるロータ53の回転の阻止を回避する。
【0024】
マグネットカバー圧入装置によるマグネットカバー60の圧入方法は以下の如くである。
【0025】
(1)マグネット52の一端側(マグネットカバー60が圧入開始される側)の端面の内側コーナー部53(端面と内周面52Aの交差部)に、面取り状のテーパ状端面53Aを形成する。
【0026】
(2)マグネットカバー60を薄板鋼板等により筒状成形し、マグネット52の内周面52Aに圧入されるカバー部61と、カバー部61より大外径をなしてヨーク51の内周に圧入保持されるフランジ部62とを形成する。カバー部61の外径はマグネット52の内周面52Aの内径よりも大きく設定される。図4において、60Aは溶接部を示す。
【0027】
このとき、カバー部61の圧入始端部63の周方向の全域に、カバー部61から内側(半径方向内方側)へ張り出る環状の第1折り曲げ部63Aを設ける。第1折り曲げ部63Aはカバー部61に対し直交するものに限らず、先端側に向けて縮径されたテーパ状をなすものでも良い。
【0028】
また、マグネットカバー60の圧入終端部64の周方向の全域に、カバー部61から外側(半径方向外方向側)へ張り出しフランジ部62に交わる環状の第2折り曲げ部64Aを設ける。第2折り曲げ部64Aはカバー部61、フランジ62に対し直交する。
【0029】
(3)圧入冶具70を用意し、マグネットカバー60のカバー部61、フランジ部62がそれぞれ嵌合するポンチ部71、ボス部72を具備せしめる。
【0030】
ポンチ部71の外周面71Aにはゴム等の筒状弾性体71Bが焼付き(又は接着剤による接着)によって設けられ、弾性体71Bにマグネットカバー60のカバー部61を軽圧入して嵌合し(隙間なく挿入又は微小隙間を介して挿入して嵌合でも可)、マグネットカバー60のカバー部61を圧入冶具70のポンチ部71に同軸的に嵌合可能とする。ポンチ部71の外周面71A、弾性体71Bは、圧入冶具70によるマグネットカバー60のマグネット52への圧入時に、マグネット52の内周面52Aとの間でマグネットカバー60のカバー部61を挟むものであり、外周面71Aの外径と弾性体71Bの厚み(圧縮度)はマグネット52の内径とマグネットカバー60の板厚により決定される。
【0031】
ボス部72の外周面72Aにはゴム等の筒状弾性体72Bが焼付き(又は接着剤による接着)によって設けられ、弾性体72Bにマグネットカバー60のフランジ62を軽圧入して嵌合し(隙間なく挿入又は微小隙間を介して挿入して嵌合でも可)、マグネットカバー60のフランジ62を圧入冶具70のボス部72に同軸的に嵌合可能とする。ボス部72の外周面72A、弾性体72Bは、圧入冶具70によるマグネットカバー60のマグネット52への圧入時に、ヨーク51との間でマグネットカバー60のフランジ62を挟むものであり、外周面72Aの外径と弾性体72Bの厚み(圧縮度)はヨーク51の内径とマグネットカバー60の板厚により決定される。
【0032】
このとき、ポンチ部71の先端部73に、ポンチ部71の外周面71Aより小径の第1押当面73A、本実施形態では先端側に向けて縮径されたテーパ状をなす第1押当面73Aを設ける。
【0033】
尚、本発明者は、圧入治具70によりマグネットカバー60の第1折り曲げ部63Aをマグネット52の内周面52Aの側にスムースに押込み変形させるためには、圧入治具70の第1押当面73Aがマグネット52の内側コーナー部53との間でマグネットカバー60の第1折り曲げ部63Aに及ぼすモーメントMをより大きくするように、モーメントMの腕の長さLを大きくすること、換言すれば圧入治具70の第1押当面73Aにおけるマグネットカバー60の第1折り曲げ部63Aを押当て支持する外径をより小径にすることが必要であることを知見した。しかしながら、従来の圧入治具は、マグネットの内周面との間でマグネットカバーを挟む真直円柱状のポンチ部の先端面を押当面としている。このため、従来の圧入治具では、圧入治具の押当面においてマグネットカバーの折り曲げ部を押当て支持する外径は、ポンチ部の外径と略同一であって、前述の如くにマグネットの内径とマグネットカバーの板厚により限定される値より小径化できず、上述のモーメントMの腕の長さLBを大きくできなかった(図5(B))。
【0034】
また、ポンチ部71の後端部74に、ポンチ部71に直交し、ポンチ部71をボス部72につなぐ段差面状の第2押当面74Aを設ける。
【0035】
圧入治具70にマグネットカバー60を嵌合し、マグネットカバー60の第1折り曲げ部63Aを第1押当面73Aに押当てた自由状態(嵌合ままの状態)で、マグネットカバー60の第2折り曲げ部64Aは軸方向において第2押当面74Aとの間に一定の間隙Gを介する。
【0036】
このとき、ポンチ部71における後端部74の第2押当面74Aに、上述の間隙Gと同一又はより薄いゴム等の板状弾性体74Bが焼付き(又は接着剤による接着)によって設けられる。
【0037】
尚、圧入冶具70において、ポンチ部71の外周面71A、ボス部72の外周面72A、後端部74の第2押当面74Aのそれぞれに設けられる弾性体71B、72B、74Bは、本実施形態では圧入冶具70の周方向及び軸方向の双方で連続一体化される。
【0038】
(4)ヨーク51の内周に複数個のマグネット52を位置決めした状態下で、ヨーク51とマグネット52をそれらの支持手段により固定保持する。
【0039】
(5)圧入治具70をヨーク51とマグネット52の支持手段に同軸配置する。圧入治具70のポンチ部71、ボス部72の外周面71A、72Aに設けられている弾性体71B、72Bに嵌合したマグネットカバー60をその圧入始端部63からマグネット52の内周面52Aに沿って圧入し、マグネット52をヨーク51に固定する。
【0040】
このとき、第1段階で、圧入治具70の先端部73の第1押当面73Aを、マグネットカバー60の圧入始端部63の第1折り曲げ部63Aに押当て、かつマグネットカバー60の圧入始端部63の第1折り曲げ部63Aをマグネット52のテーパ状端面53Aに対向するように位置決めし、該マグネットカバー60の第1折り曲げ部63Aをマグネット52のテーパ状端面53Aから内周面52Aの側に沿うように押込み変形させて圧入開始する。
【0041】
第1段階経過後の第2段階では、マグネットカバー60の第1折り曲げ部63Aが押込み変形せしめられたことによって該マグネットカバー60が圧入治具70の軸方向に相対変位し、圧入治具70の後端部74の第2押当面74Aに設けられている弾性体74Bがマグネットカバー60の圧入終端部64の第2折り曲げ部64Aに押当たる。これにより、圧入治具70は、第1押当面73Aをマグネットカバー60の第1折り曲げ部63Aに押当てることに加え、第2押当面74Aの弾性体74Bをマグネットカバー60の第2折り曲げ部64Aに押当て、圧入荷重を第1押当面73Aと第2押当面74A(弾性体74B)のそれぞれからマグネットカバー60の圧入始端部63と圧入終端部64のそれぞれに同時に及ぼしつつ圧入を更に進める。
【0042】
本実施形態では、圧入冶具70に弾性体71B、72Bを設けたことにより、以下の作用がある。
【0043】
▲1▼マグネットカバー60の内周面と圧入冶具70の外周面との環状隙間に介装されることとなる弾性体71B、72Bにより、マグネットカバー60は圧入冶具70に容易に同軸的に嵌合する。圧入冶具70をマグネット52に同軸配置することにより、マグネットカバー60はマグネット52に芯ずれ、傾き、倒れ等を伴なうことなく圧入され、スムーズに低荷重で圧入でき、圧入性が良い。また、マグネットカバー60に偏荷重が作用することがなく、マグネットカバー60の異常変形、損傷を生じない。
【0044】
▲2▼圧入冶具70にマグネットカバー60を嵌合したセット工程で、マグネットカバー60の脱落を防止でき、圧入作業性を向上できる。
【0045】
▲3▼圧入冶具70の外周に弾性体71B、72Bを設けるだけの簡素な設備により、上述▲1▼、▲2▼を実現できる。
【0046】
尚、本実施形態によれば以下の作用もある。
▲1▼マグネットカバー60の圧入の第1段階で、圧入治具70の第1押当面73Aをマグネットカバー60の圧入始端部63の第1折り曲げ部63Aに押当てて圧入開始し、第2段階で、圧入治具70の第2押当面74A(弾性体74B)をマグネットカバー60の圧入終端部64の第2折り曲げ部64Aに押当てて圧入を更に進める。
【0047】
従って、マグネットカバー60の圧入開始経過後には、圧入治具70が付与する圧入荷重をマグネットカバー60の圧入始端部63と圧入終端部64の双方に分散して及ぼすものとなり、圧入性を向上できる。
【0048】
また、マグネットカバー60の圧入開始経過後には、マグネットカバー60の圧入始端部63の側に過大荷重が及び続くことがなく、マグネットカバー60の異常変形、損傷を防止できる。マグネットカバー60に過大圧入荷重が及び続けないから、マグネットカバー60の材料強度を高強度化する必要がないし、より薄板化でき、電動モータ20の性能を向上できる。
【0049】
▲2▼マグネットカバー60の圧入開始時には、圧入治具70が付与する圧入荷重をマグネットカバー60の圧入始端部63の第1折り曲げ部63Aに集中的に作用せしめるものとし、この第1折り曲げ部63Aをマグネット52の内周面52Aの側にスムースに押込み変形させることにて、圧入開始のスムースを図ることができる。
【0050】
▲3▼圧入治具70の第1押当面73Aをテーパ状にしたことにより、マグネットカバー60を圧入治具70及びマグネット52に対して芯出しした状態でマグネット52の内周面52Aにスムースに導入して圧入開始できるから、圧入荷重を低減して圧入性を向上し、マグネットカバー60の異常変形、損傷を防止できる。
【0051】
▲4▼圧入治具70の先端部73にその外周面71Aより小径のテーパ状第1押当面73Aを設けたことにより、圧入治具70の外周面71Aより小径側でマグネットカバー60の圧入始端部63の第1折り曲げ部63Aを押当支持できる。従って、マグネットカバー60の圧入開始時に、圧入治具70の先端部73の第1押当面73Aがマグネット52の内側コーナー部53との間でマグネットカバー60の第1折り曲げ部63Aに及ぼす圧入荷重起因モーメントMの腕の長さLAが大きくなる(図5(A))。このため、圧入荷重を大きくしなくても、マグネットカバー60の第1折り曲げ部63Aをマグネット52の内周面52Aの側に押込み変形させる上記モーメントが大きくなり、マグネットカバー60の第1折り曲げ部63Aをスムースに押込み変形して圧入開始でき、マグネットカバー60の異常変形、損傷を防止できる。
【0052】
▲5▼マグネット52の内側コーナー部53にテーパ状端面53Aを形成し、マグネットカバー60の圧入始端部63をマグネット52のテーパ状端面53Aに対して押圧することにより、マグネットカバー60はマグネット52に対して芯出しされた状態でその内周面52Aにスムースに導入される。そして、マグネット52のテーパ状端面53Aは、押圧反力の径方向分力により、マグネットカバー60の外径を、該マグネットカバー60の圧入始端部63から終端部64に渡る全域で、連続的に周方向均等に絞り成形する。これにより、マグネットカバー60は長手方向の全域について、マグネット52のテーパ状端面53Aを介してその内周面52Aに低荷重でスムースに連続的に圧入され続け、異常変形、損傷を生じない。
【0053】
図6の変形例は、圧入治具70の先端部73に設ける第1押当面73Aを、ポンチ部71の外周面71Aに対し段差をなす小径円柱部の先端面にて構成したものである。この第1押当面73Aにあっても、マグネット52のテーパ状端面53Aとの間でマグネットカバー60の第1折り曲げ部63Aに及ぼす圧入荷重起因モーメントMの腕の長さLを大きくし、結果として、圧入荷重を大きくしなくても、マグネットカバー60の第1折り曲げ部63Aをスムースに押込み変形して圧入開始できる。
【0054】
本発明の実施に用いる圧入冶具70としては、弾性体が外周の周方向に間隔をおいた複数位置に設けられるものでも良い。これによれば、弾性体を圧入冶具の外周の周方向に分割配置することにより、マグネットカバーと弾性体との接触面積を低減し、マグネットカバーの圧入冶具への嵌合挿入作業性を向上しながら、圧入冶具との同軸嵌合度を確保できる。
【0055】
本発明の実施に用いる圧入冶具70としては、弾性体が外周の軸方向に間隔をおいた複数位置に設けられるものでも良い。これによれば、弾性体を圧入冶具の外周の軸方向で、例えば先端部と後端部に分割配置することにより、軸長の長いマグネットカバーと圧入冶具との同軸嵌合度を簡易に確保でき、マグネットカバーの傾き、倒れ等を回避できる。また、マグネットカバーと弾性体との接触面積を低減し、マグネットカバーの圧入冶具への嵌合挿入作業性を向上できる。
【0056】
本発明の圧入冶具70を構成する弾性体は、ゴムに限らず、圧入冶具の外周の周方向又は軸方向に沿って設けた金属又はプラスチックの板ばね、圧入冶具の外周に埋込んだコイルばねにバックアップされて圧入冶具の外周面に付勢状態で突き出るボール等であっても良い。
【0057】
以上、本発明の実施の形態を図面により記述したが、本発明の具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、マグネットカバー60の材質としてアルミ、ステンレス等が採用でき、マグネットカバー60の肉厚、マグネット52の個数等は自由に選択できる。
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、電動モータのヨークに内装されるマグネットの内周面にマグネットカバーを圧入するに際し、マグネットカバーを圧入治具に同軸的に嵌合し、マグネットカバーの芯ずれ、傾き、倒れ等を回避することにより、圧入性を向上し、マグネットカバーの異常変形、損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は電動パワーステアリング装置を一部破断して示す正面図である。
【図2】図2は図1の要部断面図である。
【図3】図3は電動モータを示す断面図である。
【図4】図4はマグネットとマグネットカバーと圧入治具を示し、(A)は全体を示す模式図、(B)は圧入治具の先端部を示す模式図、(C)は圧入冶具の後端部を示す模式図である。
【図5】図5は圧入治具の第1押当面の作用を示し、(A)は本発明例を示す模式図、(B)は比較例を示す模式図である。
【図6】図6は本発明の変形例を示す模式図である。
【符号の説明】
20 電動モータ
51 ヨーク
52 マグネット
52A 内周面
60 マグネットカバー
63 圧入始端部
70 圧入冶具
71B、72B 弾性体
Claims (6)
- ヨークの内側にマグネットを配置し、
圧入治具に嵌合されたマグネットカバーをその圧入始端部からマグネットの内周面に沿って圧入し、
マグネットをヨークに固定する電動モータのマグネットカバー圧入方法において、
圧入治具の外周に設けた弾性体にマグネットカバーを嵌合し、マグネットカバーを圧入治具に同軸的に嵌合する状態でマグネットに圧入することを特徴とする電動モータのマグネットカバー圧入方法。 - 前記弾性体が圧入治具の外周の周方向に間隔をおいた複数位置に設けられる請求項1に記載の電動モータのマグネットカバー圧入方法。
- 前記弾性体が圧入治具の外周の軸方向に間隔をおいた複数位置に設けられる請求項1又は2に記載の電動モータのマグネットカバー圧入方法。
- ヨークの内側にマグネットを配置し、
圧入治具に嵌合されたマグネットカバーをその圧入始端部からマグネットの内周面に沿って圧入し、
マグネットをヨークに固定する電動モータのマグネットカバー圧入装置において、
圧入治具の外周に弾性体を設け、
圧入治具の外周に設けた弾性体にマグネットカバーを嵌合し、マグネットカバーを圧入治具に同軸的に嵌合する状態でマグネットに圧入可能にすることを特徴とする電動モータのマグネットカバー圧入装置。 - 前記弾性体が圧入治具の外周の周方向に間隔をおいた複数位置に設けられる請求項4に記載の電動モータのマグネットカバー圧入装置。
- 前記弾性体が圧入治具の外周の軸方向に間隔をおいた複数位置に設けられる請求項4又は5に記載の電動モータのマグネットカバー圧入装置。
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