JP2004147411A - ハイブリッド車用動力伝達装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】回転電機側の回転軸17とエンジン側の回転軸16との間に太陽歯車20、内接歯車21及びキャリア22に支持された遊星歯車24を有する遊星歯車機構25を設ける。内接歯車21を固定するオン状態と内接歯車の固定を解除するオフ状態とを切り換える第1のクラッチ機構C1と、内接歯車21を支持する可動部材43と太陽歯車20とを結合して太陽歯車20とキャリア22とを一体に回転させるように結合するオン状態とこの結合を解除するオフ状態とを切り換える第2のクラッチ機構C2と、クラッチ機構C1及びC2の一方をオン状態にしたときに他方をオフ状態にするように操作する操作機構とを設ける。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両駆動用のエンジンと、電動機及び発電機に兼用される回転電機とを備えたバイブリッド車のエンジンと回転電機との間に設けられるバイブリッド車用動力伝達装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エンジン(内燃機関)と電動機とを駆動源として用いるハイブリッド車両において、エンジンを始動するために用いる始動用電動機と、エンジンアシスト用の電動機とでは、必要とされる動作特性が相違する。
【0003】
始動用電動機によりエンジンを始動する際には、エンジンをクランキングするために大きなトルクを発生させる必要があるが、エンジンを始動させることができればよいため、電動機の回転速度は、それほど高くなる必要はなく、その無負荷回転速度は、エンジンのアイドリング速度よりも低くてよい。
【0004】
一方、エンジンが始動した後、電動機によりエンジンをアシストする(エンジンによる負荷の駆動を助ける)際には、電動機の無負荷回転速度をエンジンのアイドリング速度よりも十分に高くして、電動機をアイドリング速度よりも高い速度で運転することができるようにしておく必要がある。
【0005】
一般には、エンジンアシスト時の電動機の無負荷回転速度をエンジンの出力がピークに達する回転速度付近の速度に設定することが多い。
【0006】
図6は、エンジンを始動する際、及びエンジンをアシストする際に電動機に要求されるトルク対回転速度特性を示したもので、同図の曲線aは、エンジンを始動する際に要求される特性を示し、曲線bはエンジンをアシストする際に要求される特性を示している。
【0007】
エンジンのクランク軸と1台の電動機の回転軸とを減速比1:1で連結して、該電動機によりエンジンの始動と、アシストとの双方を行わせようとすると、電動機は、エンジンの始動時に要求される特性とアシスト時に要求される特性との双方を満足する図6の曲線cのような特性を有していることが必要とされる。
【0008】
電動機として運転した際に、図6の曲線cのような特性を有する回転電機を発電機として動作させて、該回転電機の出力によりバッテリを充電するようにした場合、発電出力が大きくなるため、バッテリに流れる充電電流が過大になるおそれがあり、またバッテリの過充電を防止するための出力電圧の調整も容易ではない。
【0009】
回転電機が磁石回転子を備えた磁石界磁回転形のものである場合には、発電出力が過大になったときに回転電機の出力を短絡することにより電圧調整を行うことができるが、この場合、回転電機の電機子巻線に大きな短絡電流が流れるため、巻線からの発熱が多くなり、好ましくない。また図6の曲線cのような特性を有する回転電機は、大形で重量が重くなる上にコストが高くなるのを避けられない。
【0010】
上記の問題を解決するため、エンジンを始動する際には、回転電機の回転を大きな減速比で減速してエンジンのクランク軸に伝達し、エンジンをアシストする際には、回転電機の回転を小さな減速比で減速してエンジンのクランク軸に伝達するように、回転電機とエンジンとの間に設ける動力伝達装置を構成することが考えられる。
【0011】
車両用の回転電機とエンジンとの間に設ける動力伝達装置に係わる従来技術としては、例えば特許文献1に示すように、遊星歯車機構を用いたものがある。
【0012】
図7は、特許文献1に示された動力伝達装置の構成を模式的に示した構成図で、同図において、1はエンジン、2はエンジン1のクランク軸1aに変速機3を介して連結された車両の駆動輪、4は電動機と発電機とに兼用される回転電機(M/G)、5はエンジン1側の回転軸(クランク軸1aまたはクランク軸に適宜の伝達機構若しくは継手を介して連結された回転軸)6と回転電機4側の回転軸(回転電機の回転軸または回転電機の回転軸に継手などを介して連結された回転軸)7との間に設けられた動力伝達装置である。
【0013】
動力伝達装置5は、回転電機4側の回転軸7に取りつけられた太陽歯車501と、太陽歯車501を同軸的に囲むように設けられた内接歯車502と、エンジン1側の回転軸6に取りつけられたキャリア503と、キャリア503に遊星歯車軸504を介して回転自在に支持されて太陽歯車501と内接歯車502とに噛み合わされた遊星歯車505と、内接歯車502を固定したり、該内接歯車の固定を解除したりする電磁クラッチ506と、回転電機側の回転軸7と遊星歯車軸504とに結合されて、エンジン側の回転軸6からキャリア503と遊星歯車軸504とを通して伝達される動力を回転電機4側の回転軸7に伝達するワンウェイクラッチ507とからなっている。
【0014】
図7に示した動力伝達装置5は、エンジンを始動する際に電磁クラッチ506をオン状態にして内接歯車502を固定することにより、始動用電動機として駆動される回転電機4の回転を太陽歯車501と遊星歯車505と内接歯車502とからなる遊星歯車機構により減速してエンジン1のクランク軸に伝達する。
【0015】
またエンジンを始動した後は、電磁クラッチ506をオフ状態にして内接歯車の固定を解除することにより、エンジン1の回転を回転軸6と遊星歯車軸504とワンウェイクラッチ507とを通して回転電機4側の回転軸7に1対1の減速比で伝達し、これにより回転電機4を駆動して、該回転電機を発電機として運転する。
【0016】
【特許文献1】
特開2001−298900号公報
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
図7に示した従来の動力伝達装置によれば、エンジンの始動時に回転電機の回転を減速してエンジンに伝達することができるため、小形の回転電機を用いてエンジンに大きなトルクを伝達することができる。またエンジンが始動した後は、エンジンの回転が遊星歯車機構により増速されることなく、1対1の減速比で回転電機に伝達されるため、回転電機の回転が高くなりすぎるのを防ぐことができる。
【0018】
しかしながら、図7に示した動力伝達装置は、回転電機の回転軸4aと遊星歯車軸504との間にワンウェイクラッチ507が設けられているため、回転電機4からエンジン1に1対1の減速比で動力を伝達することができず、車両の走行中に回転電機4を電動機として動作させて、エンジンをアシストすることができないという問題があった。そのため、この動力伝達装置は、車両の走行中、回転電機を電動機として動作させて、該電動機によりエンジンをアシストするハイブリッド車には適用することができなかった。
【0019】
本発明の目的は、エンジンの始動時には回転電機の回転を大きな減速比をもってエンジンのクランク軸に伝達して、小形の回転電機でエンジンを始動することを可能にし、エンジンが始動した後は回転電機とエンジンのクランク軸との間を始動時よりも小さい減速比をもって結合して、回転電機をエンジンアシスト用の電動機として運転したり、バッテリ充電用発電機として運転したりすることを可能にするハイブリッド車用の動力伝達装置を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明は、車両駆動用のエンジンと、電動機及び発電機に兼用される回転電機とを備えたバイブリッド車のエンジン側の回転軸と回転電機側の回転軸との間に設けられるバイブリッド車用動力伝達装置に係わるものである。
【0021】
上記「エンジン側の回転軸」は、エンジンのクランク軸自体でもよく、クランク軸にベルト伝達機構などの適宜の伝達機構を介して連結された回転軸、あるいはクランク軸にカップリング(継手)を介して連結された回転軸でもよい。
【0022】
上記「回転電機側の回転軸」は、回転電機の回転軸自体でもよく、回転電機の回転軸にカップリング等を介して連結された回転軸でもよい。
【0023】
本発明に係わる動力伝達装置は、回転電機側の回転軸とともに回転するように設けられた太陽歯車と、太陽歯車を囲むように設けられて回転可能に支持された内接歯車と、エンジン側の回転軸に取りつけられたキャリアに回転自在に支持されて内接歯車と太陽歯車とに噛み合わされた遊星歯車とを備えた遊星歯車機構と、回転電機の回転を減速してエンジン側に伝達するべく内接歯車を固定して遊星歯車の遊星運動を許容した状態を第1の状態とし、回転電機とエンジンとの間で1対1の減速比で動力の伝達を行わせるべく内接歯車の固定を解除するとともにキャリアと太陽歯車との間を機械的に結合した状態を第2の状態として、遊星歯車機構の状態を第1の状態と第2の状態とに切り換えて遊星歯車機構の減速比を切り換える減速比切換機構とを備えている。
【0024】
上記のように構成すると、エンジンの始動時に遊星歯車機構を第1の状態に切り換えることにより、回転電機の回転を遊星歯車機構により減速してエンジンに伝達することができるため、太陽歯車側から見た遊星歯車機構の減速比を十分に大きく設定しておくことにより、小形の回転電機を用いてエンジンを始動することができる。
【0025】
またエンジンが始動した後は、遊星歯車機構を第2の状態に切り換えることにより、回転電機側の回転軸とエンジン側の回転軸との間を1対1の減速比で双方向に結合することができるため、回転電機を電動機として運転することによりエンジンをアシストしたり、エンジンにより回転電機を駆動して該回転電機を発電機として運転したりすることができる。
【0026】
このように、本発明によれば、回転電機を小形に構成することができるため、回転電機を発電機として動作させる際に、発電出力が過大になることがない。従って、回転電機の出力を短絡して電圧調整を行う際に、大きな短絡電流が流れるの防ぐことができ、電圧調整時の電機子コイルの温度上昇を抑えることができる。
【0027】
上記減速比切換機構は、内接歯車を固定してその回転を阻止した状態であるオン状態と内接歯車の固定を解除した状態であるオフ状態とに切り換えが可能な第1のクラッチ機構と、キャリアと太陽歯車とを同じ速度で回転させるようにキャリアと太陽歯車との間を機械的に結合した状態であるオン状態とキャリアと太陽歯車との間で相対的な回転が生じるのを許容するようにキャリアと太陽歯車との間の結合を解除した状態であるオフ状態とに切り換えが可能な第2のクラッチ機構と、第1のクラッチ機構及び第2のクラッチ機構の一方をオン状態にしたときに他方をオフ状態にするように第1のクラッチ機構及び第2のクラッチ機構を操作するクラッチ操作機構とにより構成することができる。
【0028】
本発明の好ましい態様では、上記動力伝達装置が、回転電機側の回転軸に取りつけられた太陽歯車と、強磁性材料からなっていて、太陽歯車と回転電機との間に位置させた状態で回転電機側の回転軸に対して回転自在に、かつ回転電機側の回転軸の軸線方向にスラスト可能に支持された可動部材と、可動部材を太陽歯車側に付勢するバネと、可動部材を取り囲むように設けられて励磁された際にバネの付勢力に抗して可動部材を回転電機側に駆動する電磁コイルと、太陽歯車を同軸的に囲むように設けられて可動部材に支持された内接歯車と、エンジン側の回転軸に取りつけられたキャリアと、キャリアに回転自在に支持されるとともに、内接歯車と太陽歯車とに噛み合わされた遊星歯車とを備えた機構部と、この機構部を収容するように構成されて回転電機のハウジング及び前記エンジンのケースに対して固定された機構ケースと、内接歯車側に設けられた第1のクラッチ構成用可動側歯部と、電磁コイルが励磁されて可動部材が太陽歯車から離れる方向に駆動されて内接歯車が可動部材とともに変位させられたときに第1のクラッチ構成用可動側歯部に噛み合い、電磁コイルが消勢されてバネの付勢力により可動部材が太陽歯車側に変位させられたときに第1のクラッチ構成用可動側歯部から外れるように配設位置が定められて機構ケースに対して固定された第1のクラッチ構成用固定側歯部と、電磁コイルが消勢されて可動部材がバネの付勢力により太陽歯車側に駆動されたときに太陽歯車の歯に噛み合って内接歯車と太陽歯車とを機械的に一体化するように結合し、電磁コイルが励磁されて可動部材が太陽歯車から離れる側に駆動されたときに太陽歯車の歯部から外れて内接歯車と太陽歯車との結合を解除するように配設位置が定められて可動部材に対して固定された第2のクラッチ構成用歯部とにより構成される。
【0029】
上記の構成では、第2のクラッチ構成用歯部を可動部材側に設けて、該第2のクラッチ構成用歯部を太陽歯車に噛み合せるようにしているが、該第2のクラッチ構成用歯部をキャリア側に設けて、該第2のクラッチ構成用歯部を内接歯車に噛み合わせるようにしてもよい。
【0030】
即ち、電磁コイルが消勢されて可動部材がバネの付勢力により太陽歯車側に駆動されたときに内接歯車の歯に噛み合って内接歯車とキャリアとを機械的に一体化するように結合し、電磁コイルが励磁されて可動部材が太陽歯車から離れる側に駆動されたときに内接歯車の歯部から外れて内接歯車とキャリアとの結合を解除するように配設位置が定められた第2のクラッチ構成用歯部を、キャリアに対して固定した状態で設けるようにしてもよい。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0032】
図1は本発明の第1の実施形態の構成を概略的に示したもので、同図において、11はエンジン、12はエンジン11のクランク軸11aに変速機13を介して連結された車両の駆動輪、14は電動機と発電機とに兼用される回転電機(M/G)、15はエンジン11側の回転軸16と回転電機14側の回転軸17との間に設けられた動力伝達装置である。
【0033】
動力伝達装置15は、回転電機側の回転軸17とともに回転するように設けられた太陽歯車20と、太陽歯車20を囲むように設けられて回転可能に支持された内接歯車21と、エンジン側の回転軸16に取りつけられたキャリア22と、キャリア22に遊星歯車軸23を介して回転自在に支持されて内接歯車21と太陽歯車20とに噛み合わされた遊星歯車24とを備えた遊星歯車機構25と、内接歯車21を固定してその回転を阻止した状態であるオン状態と、内接歯車21の固定を解除した状態であるオフ状態とに切り換えが可能な第1のクラッチ機構C1と、キャリア22と太陽歯車20とを同じ速度で回転させるようにキャリア22と太陽歯車20との間を機械的に結合した状態にする状態であるオン状態と、キャリア22と太陽歯車20との間で相対的な回転が生じるのを許容するようにキャリア22と太陽歯車20との間の結合を解除した状態であるオフ状態とに切り換えが可能な第2のクラッチ機構C2と、第1のクラッチ機構C1及び第2のクラッチ機構C2の一方をオン状態にしたときに他方をオフ状態にするように第1のクラッチ機構C1及び第2のクラッチ機構C2を操作するクラッチ操作機構(図1には図示せず。)とにより構成されている。
【0034】
第1のクラッチ機構C1は、内接歯車21または内接歯車21に機械的に結合された部材に係合して該内接歯車21を固定する状態(オン状態)と、該内接歯車21の固定を解除する状態(オフ状態)をとり得るように構成すればよく、種々の構成をとることができるが、図1に示した例では、内接歯車21の外周に固定された環状部材26と、電磁石により駆動されて環状部材26の係止と該係止の解除とを行なう係止具27とにより第1のクラッチ機構C1が構成されている。
【0035】
第2のクラッチ機構C2は、キャリア22と太陽歯車20との間を機械的に結合した状態と、キャリア22と太陽歯車20との間の結合を解除した状態とをとり得るものであればよく、その構成は任意であるが、図1に示した例では、回転電機側の回転軸17に取り付けられた回転電機側クラッチ板28と、キャリア22に機械的に結合されたエンジン側クラッチ板29と、電磁石を駆動源としてクラッチ板28と29とを相互に機械的に結合した状態と、該結合を解除した状態とに切り換えられるクラッチ部材30とにより第2のクラッチ機構C2が構成されている。
【0036】
図1に示した動力伝達装置においては、回転電機の動作状態に応じて、図2に示すようにクラッチ機構C1及びC2のオンオフの状態が決められる。即ち、回転電機14を始動用電動機として運転してエンジンを始動する際には、第1のクラッチ機構C1をオン状態にし、第2のクラッチ機構C2をオフ状態にして、回転電機14の回転を太陽歯車20と遊星歯車24とキャリア22とを通してエンジンのクランク軸に伝達する。太陽歯車の歯数をZ1、内接歯車の歯数をZ3とすると、エンジンの始動時には、回転電機側の回転軸17の回転がZ1/(Z1+Z3)の減速比で減速されてエンジン側の回転軸16に伝達され、回転電機の出力トルクが(Z1+Z3)/Z1倍となってエンジン側に伝達される。従って、小形の回転電機を用いてエンジンのクランキングを行なわせてエンジンを始動することができる。
【0037】
またエンジンが始動した後は、第1のクラッチ機構C1をオフ状態にし、第2のクラッチ機構C2をオン状態にする。この状態では、太陽歯車20と遊星歯車24とキャリア22とが相対的に回転しないように固定されて、太陽歯車20とキャリア22とが一体に回転するように相互に機械的に結合されるとともに、内接歯車21が回転自在な状態になるため、エンジン側の回転軸16と回転電機側の回転軸17との間が双方向に1対1の減速比で結合された状態になる。
【0038】
従ってこの状態では、回転電機14を発電機として運転する状況にあるのか、回転電機14を電動機として動作させて車両を加速するためにエンジンをアシストする状況にあるのかを判断して、状況に応じて回転電機を制御することにより、回転電機を発電機として運転してバッテリの充電を行なわせたり、回転電機を電動機として動作させてエンジンをアシストしたりすることができる。
【0039】
図1に示した例では、第1のクラッチ機構C1と、第2のクラッチ機構C2と、これらのクラッチ機構のいずれか一方をオン状態にしたときに他方をオフ状態にするように両クラッチ機構を操作するクラッチ操作機構とにより、遊星歯車の減速比を切り換える減速比切換機構が構成されている。
【0040】
この減速比切換機構は、回転電機14の回転を減速してエンジン11側に伝達するべく内接歯車21を固定して遊星歯車24の遊星運動を許容した状態を第1の状態とし、回転電機14とエンジン11との間で1対1の減速比で動力の伝達を行わせるべく内接歯車の固定を解除するとともにキャリア22と太陽歯車20との間を機械的に結合した状態を第2の状態として、遊星歯車機構25の状態を第1の状態と第2の状態とに切り換えて遊星歯車機構の減速比を切り換える。
【0041】
動力伝達装置15の更に具体的な構成例を図3に示した。図3の上側の半部は第1のクラッチ機構C1及び第2のクラッチ機構C2をそれぞれオン状態及びオフ状態にした状態を示しており、図3の下側の半部は第1のクラッチ機構C1及び第2のクラッチ機構C2をそれぞれオフ状態及びオン状態にした状態を示している。
【0042】
図3において、31は図示しない回転電機14のハウジング及びエンジン11のケースに対して固定された機構ケースで、図示の機構ケース31は、カップ状に形成されたケース本体32と、該ケース本体の開口部を閉じる蓋板33とからなっている。ケース本体32の開口部と反対側の端部には、外側に突出した円筒状の突出部34が形成され、この突出部34の端部壁に軸受35を介してエンジン側回転軸16が支持されている。回転電機側の回転軸17はエンジン側の回転軸16と中心軸線を共有した状態で配置されていて、該回転軸17が蓋板33に軸受36を介して回転自在に支持されている。
【0043】
エンジン側の回転軸16の機構ケース31内に配置された端部には円筒状のボス部37が一体に形成され、ボス部37の先端部に円板状のキャリア22が一体に形成されている。ボス部37内に回転電機側の回転軸17の先端が挿入され、回転軸17の先端部とボス部37とが軸受39を介して結合されている。
【0044】
回転電機側の回転軸17のキャリア22寄りの部分に太陽歯車20が固定されている。回転軸17にはまた、太陽歯車20よりも回転電機側位置させた状態で、ころがり軸受41が取り付けられ、このころがり軸受41の外輪に強磁性材料からなる円筒状の可動部材43がスライド自在に嵌合されている。従って可動部材43は、軸受41を介して回転軸17に対して回転自在に、かつ軸線方向にスラスト可能に支持されている。回転軸17にはまたバネ受け板44が固定され、このバネ受け板44と可動部材43との間に、該可動部材43を太陽歯車20側に付勢するバネ45が配設されている。可動部材43の太陽歯車側の端部の外周から径方向の外側に突出させた状態で内接歯車支持部46が設けられ、この支持部46の外周部に、太陽歯車20を同軸的に取り囲む内接歯車21が支持されている。
【0045】
キャリア22には複数の遊星歯車24が遊星歯車軸23を介して回転自在に支持され、これらの遊星歯車24が、太陽歯車20と内接歯車21とに噛み合わされている。可動部材43を同心的に取り囲むように電磁コイル50が設けられていて、この電磁コイル50が励磁されたときに生じる磁気吸引力により可動部材43がバネ45の付勢力に抗して回転電機側に駆動され、電磁コイル50が消勢されたときにバネ45の付勢力により可動部材43が太陽歯車20側に駆動されるようになっている。
【0046】
内接歯車21は、環状に形成された基体21aの内周に歯21bを刻設したものからなっていて、基体21aの回転電機側の端部外周には第1のクラッチ構成用可動側歯部51が形成され、機構ケース31のケース本体32の周壁部の内面には、第1のクラッチ構成用固定側歯部52が形成されている。第2のクラッチ構成用歯部52は、電磁コイル50が励磁されて可動部材43が太陽歯車20から離れる方向に駆動されて内接歯車21が可動部材とともに変位させられたときに第1のクラッチ構成用可動側歯部51に噛み合い、電磁コイル50が消勢されてバネ45の付勢力により可動部材43が太陽歯車側に変位させられたときに第1のクラッチ構成用可動側歯部51から外れるようにその配設位置が定められている。
【0047】
また、可動部材43の太陽歯車側の端部の内周に、第2のクラッチ構成用歯部53が形成されている。第2のクラッチ構成用歯部53は、電磁コイル50が消勢されて可動部材43がバネ45の付勢力により太陽歯車20側に駆動されたときに太陽歯車20の歯に噛み合って内接歯車21と太陽歯車20とを機械的に一体化するように結合し、電磁コイル50が励磁されて可動部材43が太陽歯車20から離れる側に駆動されたときに太陽歯車20の
歯部から外れて内接歯車21と太陽歯車20との結合を解除するようにその配設位置が定められている。
【0048】
この例では、キャリア22と、太陽歯車20と、内接歯車21と、遊星歯車24とにより遊星歯車機構25が構成され、この遊星歯車機構25とバネ45と、電磁コイル50とにより構成された動力伝達装置15の機構部が機構ケース31内に収容されている。
【0049】
また第1のクラッチ構成用可動側歯部51と、第1のクラッチ構成用固定側歯部52とにより、内接歯車21を固定してその回転を阻止した状態であるオン状態と、内接歯車21の固定を解除した状態であるオフ状態とに切り換えが可能な第1のクラッチ機構C1が構成され、第2のクラッチ構成用歯部53と太陽歯車20とにより、キャリア22と太陽歯車20とを同じ速度で回転させるようにキャリア22と太陽歯車20との間を機械的に結合した状態であるオン状態と、キャリア22と太陽歯車20との間で相対的な回転が生じるのを許容するようにキャリア22と太陽歯車20との間の結合を解除した状態であるオフ状態とに切り換えが可能な第2のクラッチ機構C2が構成されている。
【0050】
更に、電磁コイル50と可動部材43とにより、第1のクラッチ機構C1及び第2のクラッチ機構C2の一方をオン状態にしたときに他方をオフ状態にするように第1のクラッチ機構C1及び第2のクラッチ機構C2を操作するクラッチ操作機構が構成されている。
【0051】
また上記第1及び第2のクラッチ機構とクラッチ操作機構とにより、回転電機14の回転を減速してエンジン11側に伝達するべく内接歯車21を固定して遊星歯車24の遊星運動を許容した状態を第1の状態とし、回転電機14とエンジン11との間で1対1の減速比で動力の伝達を行わせるべく内接歯車21の固定を解除するとともにキャリア22と太陽歯車20との間を機械的に結合した状態を第2の状態として、遊星歯車機構25の状態を第1の状態と第2の状態とに切り換えて遊星歯車機構25の減速比を切り換える減速比切換機構が構成されている。
【0052】
図3に示した動力伝達装置において、電磁コイル50が励磁されている状態では、同図の上半分に示されているように、内接歯車21の外周に形成された第1のクラッチ構成用可動側歯部51が機構ケース32の内周に形成された第1のクラッチ構成用固定側歯部52に噛み合って、第1のクラッチ機構C1がオン状態にあるため、内接歯車21はその回転が阻止された状態にある。またこのとき可動部材43の内周に形成された第2のクラッチ構成用歯部53が太陽歯車20から離脱した状態にあって、第2のクラッチ機構C2がオフ状態にあり、太陽歯車20と遊星歯車24との間、及び遊星歯車24と内接歯車21との間で相対的な回転運動が行なわれるのが許容された状態にあるため、回転電機が電動機として運転されて回転軸17が回転駆動されると、その回転が太陽歯車20と遊星歯車24とキャリア22とを介してエンジン側の回転軸16に伝達される。このとき回転電機の回転は遊星歯車機構25により減速された状態でエンジンに伝達されるため、回転電機として小形のものを用いても、エンジンに大きなトルクを伝達して、エンジンのクランキングを支障なく行なわせることができる。
【0053】
エンジンを始動した後、電磁コイル50を消勢すると、図3の下半分に示されているように、可動部材43がバネ45により駆動されて太陽歯車20側に移動させられるため、第1のクラッチ構成用可動側歯部51が第1のクラッチ構成用固定側歯部52から離脱するとともに、第2のクラッチ構成用歯部53が太陽歯車20に噛み合う。これにより第1のクラッチ機構C1がオフ状態にされて、内接歯車21が可動部材43とともに自在に回転し得る状態にされるとともに、第2のクラッチ機構C2がオン状態にされて、内接歯車21と太陽歯車20とが相互に結合されて遊星歯車24と太陽歯車20との間及び遊星歯車24と内接歯車21との間で相対的な回転運動が生じるのが阻止された状態になるため、太陽歯車20とキャリア22とが一体に回転するように相互に機械的に結合された状態になり、回転電機側回転軸17とエンジン側回転軸16との間が双方向に1対1の減速比で結合された状態になる。この状態では、エンジンにより回転電機を駆動する状態にすることにより回転電機を発電機として動作させてバッテリの充電などを行なうことができ、回転電機を電動機として動作させて回転電機からエンジンにトルクを伝達することにより、エンジンをアシストすることができる。
【0054】
図3に示した例では、可動部材43の内周側に設けた第2のクラッチ構成用歯部53と、太陽歯車20とにより第2のクラッチ機構C2を構成して、第2のクラッチ構成用歯部53を太陽歯車20に噛み合わせることにより、第2のクラッチ機構C2をオン状態にして太陽歯車20とキャリア22とを一体に回転させるように両者を機械的に結合するようにしたが、第2のクラッチ機構C2は、必ずしもこのように構成する場合に限定されない。例えば図4に示したように、キャリア22の外周に第2のクラッチ構成用固定側歯部55を形成して、この第2のクラッチ構成用固定側歯部55と内接歯車21とにより第2のクラッチ機構C2を構成するようにしてもよい。
【0055】
図4においても、上側半部は第1のクラッチ機構C1及び第2のクラッチ機構C2をそれぞれオン状態及びオフ状態にした状態を示しており、下側の半部は第1のクラッチ機構C1及び第2のクラッチ機構C2をそれぞれオフ状態及びオン状態にした状態を示している。
【0056】
図4に示した例では、電磁コイル50が励磁されて、同図の上半部に示されたように、可動部材43が回転電機側に移動させられたときに第1のクラッチ構成用可動側歯部51が機構ケース31の内周の第1のクラッチ構成用固定側歯部52に噛み合うため、第1のクラッチ機構C1がオン状態になる。このとき内接歯車21はキャリア22の外周の第2のクラッチ構成用固定側歯部55から離脱しているため、第2のクラッチ機構C2はオフ状態にある。この状態では、内接歯車21が固定され、遊星歯車24と内接歯車21との間及び遊星歯車24と太陽歯車20との間で相対的な回転運動が行なわれるのが許容されるため、回転電機の回転が遊星歯車機構25により減速されてエンジンのクランク軸に伝達される。
【0057】
電磁コイル50が消勢され、可動部材43がバネ45により付勢されて太陽歯車20側に移動させられると、内接歯車21がキャリア22の外周に設けられた第2のクラッチ構成用固定側歯部55に噛み合って第2のクラッチ機構C2がオン状態になる。この状態では、遊星歯車24と内接歯車21との間及び遊星歯車24と太陽歯車20との間で相対的な回転運動が行なわれるのが阻止された状態になるため、太陽歯車20とキャリア22との間が双方向に減速比1対1で機械的に結合されて、回転電機とエンジンとの間で双方向に動力が伝達される状態になる。
【0058】
図1に示したハイブリッド車で用いる回転電機14の一例を、該回転電機を制御する電気回路とともに図5に示した。
【0059】
図5に示された回転電機14は、カップ状に形成された回転子ヨーク60の周壁部の内周に2つの永久磁石61及び62を取り付けて2極の磁石界磁を構成した磁石回転子63と、120°間隔で設けられた3つの歯部64uないし64wを有する電機子鉄心64の歯部64uないし64wにそれぞれ電機子コイルLuないしLwを巻装してなる固定子65とからなっている。
【0060】
なお図5に示した例では、回転電機14がアウタロータ形に構成されているが、回転電機14はインナーロータ形のものでもよい。
【0061】
図5においてBはバッテリで、バッテリBの出力はインバータINVを通して回転電機14の電機子コイルに供給されている。図示のインバータINVは、オンオフ制御が可能な6個のスイッチ素子Qu,Qv,Qw,Qx,Qy及びQzを3相ブリッジ接続して構成したスイッチ素子のブリッジ回路と、該ブリッジ回路を構成するスイッチ素子Qu,Qv,Qw,Qx,Qy及びQzにそれぞれ逆並列接続された帰還用ダイオードDu,Dv,Dw,Dx,Dy及びDzとを備えた周知のブリッジ形のインバータで、該インバータINVの直流側端子ta,tb間にバッテリBが接続されている。図示の例では、インバータを構成するスイッチ素子Qu,Qv,Qw,Qx,Qy及びQzとしてMOSFETが用いられ、これらのスイッチを構成するFETのドレインソース間に形成された寄生ダイオードが帰還用ダイオードDu,Dv,Dw,Dx,Dy及びDzとして用いられている。
【0062】
なおインバータに用いるスイッチ素子はFETに限られるものではなく、バイポーラトランジスタやIGBTなどでもよい。
【0063】
インバータINVの3相の交流側端子tu,tv及びtwにそれぞれ回転電機2の3相の電機子コイルLu,Lv及びLwから引き出された3相の端子が接続されている。
【0064】
図5においてCNTは、マイクロプロセッサとインバータのドライブ回路とを備えたコントローラで、該コントローラCNTのドライブ回路からインバータINVの6個のスイッチ素子Qu,Qv,Qw,Qx,Qy及びQzの制御端子(図示の例ではFETのゲート)に駆動信号(スイッチ素子をオン状態にするための信号)U,V,W,X,Y及びZが与えられるようになっている。
【0065】
コントローラCNTには、回転電機2の回転子の磁石界磁の回転角度位置を検出する位置センサhu,hv及びhwの出力Hu,Hv及びHwと、アクセル操作部材のポジションを検出するアクセルセンサ66の出力とが入力されている。回転電機の回転子の磁石界磁の回転角度位置を検出する位置センサhu〜hwは、通常ホールICからなっていて、回転電機の3相の電機子コイルのそれぞれに対して設けられ、3相の位置センサhu〜hwは、3相の電機子コイルLu〜Lwに対してそれぞれ設定された所定の検出位置で図示しない回転子の磁極の極性を検出して、検出している磁極の極性に応じて高レベルまたは低レベルを示す矩形波状の位置検出信号Hu,Hv及びHwを出力する。
【0066】
コントローラCNTは、回転電機を電動機として運転する際に、上記位置検出信号から、回転電機の回転子を所定の方向(エンジンを始動させる方向またはエンジンをアシストする方向)に回転させるために励磁する必要がある相(励磁相)を決定して、決定した励磁相の電機子コイルに駆動電流を流すべく、ドライブ回路からインバータINVの所定のスイッチ素子(オン状態にするスイッチ素子)に駆動信号を与える。
【0067】
アクセルセンサ66はアクセル操作部材(アクセルグリップやアクセルペダル)に入力軸が連結されたポテンショメータからなっていて、アクセル操作部材のポジションに比例した電気信号を発生する。コントローラCNTは、回転電機を電動機として運転する際に、該電動機の電機子電流の平均値をアクセル操作部材のポジションに見合った大きさとするように、インバータINVのブリッジの上辺または下辺を構成するスイッチ素子を所定のデューティ比でオンオフ制御して、バッテリBからインバータINVを通して回転電機14の電機子コイルLuないしLwに供給する駆動電流をPWM制御する。
【0068】
コントローラCNTはまた、車両に搭載されたバッテリBの両端の電圧を目標値に保つようにインバータINVを制御する電圧調整手段を備えている。この電圧調整手段は、バッテリBの電圧を検出して、その検出電圧が目標値より低く、かつ回転速度が無負荷回転速度以下のときにチョッパ制御またはドライブ制御を行ってバッテリの充電を行い、検出電圧が目標値より低く、回転速度が無負荷回転速度以上のときには、ドライブ制御を行ってバッテリの充電を行うか、または整流モード(インバータのすべてのスイッチ素子をオフ状態にするモード)でバッテリの充電を行う。
【0069】
上記電圧調整手段はまた、検出電圧が目標値より高く、かつ回転速度が無負荷回転速度以下であるときには、インバータのすべてのスイッチ素子をオフ状態にし、検出電圧が目標値よりも高く、かつ回転速度が無負荷回転速度を超えているときには、ドライブ制御または短絡制御を行って、バッテリの両端の電圧を目標値に保つように制御する。
【0070】
上記ドライブ制御は、磁石界磁回転形の回転電機において、電機子コイルの誘起電圧に対して所定の位相角を有する交流制御電圧をバッテリからインバータを通して電機子コイルに印加するように、インバータを構成する各スイッチ素子の駆動期間(スイッチ素子をオン状態にする期間)と非駆動期間(スイッチ素子をオフ状態にする期間)とを定めて、定められた駆動期間の間各スイッチ素子をオン状態にするための駆動信号を各スイッチ素子に与えるスイッチ制御装置を設けて、出力(回転電機の出力電圧または出力電流)対回転速度特性を所望の特性とするべく、電機子コイルの誘起電圧に対する交流制御電圧の位相を変化させる制御である。
【0071】
磁石界磁回転形の回転電機においては、バッテリからインバータを通して電機子コイルに印加する交流制御電圧の位相を変化させることにより、電機子コイルに作用する磁界を制御することができるため、該回転電機が発電機として運転される際の出力対回転速度特性や入力トルク対回転速度特性などを適宜に変化させることができる。
【0072】
一般に、電機子コイルの現在の誘起電圧の位相に対して進角した位相角を有する交流制御電圧をバッテリからインバータを通して電機子コイルに印加することにより発電出力を低下させてバッテリの充電電流を小さくすることができ、電機子コイルの現在の誘起電圧の位相に対して遅角した位相角を有する交流制御電圧をバッテリからインバータを通して電機子コイルに印加することにより発電出力を増加させて、バッテリの充電電流を増加させることができる。
【0073】
従って、上記のドライブ制御を行うと、回転速度が回転電機の無負荷回転速度以下のときであっても、電機子コイルの現在の誘起電圧の位相に対する制御電圧の位相角を遅れ側に変化させることにより、電機子コイルからバッテリに充電電流を供給することができ、回転速度が無負荷回転速度を超えていて、バッテリの電圧が目標値を超えているときには、電機子コイルの現在の誘起電圧の位相に対する制御電圧の位相角を進み側に変化させることにより、バッテリの充電電流を抑制してバッテリの過充電を防ぐことができる。
【0074】
なお上記のドライブ制御は、特開平11−46456号に示されているように既に公知である。
【0075】
また上記チョッパ制御は、インバータのブリッジの下辺を構成するすべてのスイッチ素子Qx,Qy及びQzを同時にオンオフさせることにより、電機子コイルを流れる電流を断続させて、電機子コイルの誘起電圧を昇圧する制御である。回転速度が無負荷回転速度以下の状態でバッテリの両端の電圧が低く、その充電を必要としているときに、上記のようなチョッパ制御を行うと、回転速度が無負荷回転速度以下の状態でもバッテリを充電することができる。
【0076】
なお回転電機のチョッパ制御は、例えば特開昭59−35538号に示されているように既に公知である。
【0077】
また上記短絡制御は、エンジン11の回転速度が回転電機14の無負荷回転速度を超えている状態で、バッテリBの両端の電圧が目標値を超えたときに、インバータのブリッジの下辺を構成するスイッチ素子Qx,Qy及びQzを同時にオン状態にしてこれらのスイッチ素子といずれかの帰還用ダイオードとを通して回転電機14の端子間を短絡し、バッテリBの両端の電圧が目標値以下になったときにスイッチ素子Qx,Qy及びQzをオフ状態にして回転電機の端子間の短絡を解除するように、バッテリの両端の電圧に応じてインバータのブリッジの下辺のスイッチ素子Qx,Qy及びQzのオンオフを制御するものである。
【0078】
このような制御を行うことにより、回転速度が無負荷回転速度を超えている状態でバッテリに過大な電圧が印加されたり、過大な充電電流が流れたりするのを防いで、バッテリの両端の電圧を目標値に保つことができる。
【0079】
なおこのようにインバータを構成するスイッチ素子を制御して発電機からインバータ内の整流回路を通してバッテリに印加される電圧を調整する方法は既に公知である。
【0080】
コントローラCNTは、エンジンの点火時期を制御したり、エンジンの燃料を供給するインジェクタからの燃料噴射量を制御したりする手段等、エンジンを動作させるために必要な各種の制御手段を更に備えているが、これらの手段は従来のものと同様であるので、その説明は省略する。
【0081】
図1に示したハイブリッド車において、コントローラCNTは、エンジン11の始動時に、図示しないキースイッチなどにより始動指令が与えられたときに第1のクラッチ機構C1をオン状態にし、第2のクラッチ機構C2をオフ状態にする。動力伝達装置が図3または図4に示すように構成されている場合には、電磁コイル50を励磁することにより、第1のクラッチ機構及び第2のクラッチ機構をそれぞれオン状態及びオフ状態にする。この状態で、回転電機14をスタータモータとして運転するようにインバータINVを制御し、エンジンの始動を行なわせる。
【0082】
コントローラCNTは、モータとして運転されている回転電機14の回転速度が始動完了速度に達したときに、第1のクラッチ機構C1をオフ状態にするとともに、第2のクラッチ機構C2をオン状態にする。動力伝達装置が図3または図4に示すように構成されている場合には、電磁コイル50を消勢することにより、第1のクラッチ機構及び第2のクラッチ機構をそれぞれオフ状態及びオン状態にする。この状態では、回転電機14側の回転軸17がエンジン側の回転軸16に1:1の減速比で双方向に結合されるため、回転電機14側の回転軸17の回転速度はエンジン側回転軸16のの回転速度と同じになる。
【0083】
この状態で回転電機14を電動機として運転すると、回転電機のトルクが回転軸17−太陽歯車20−遊星歯車24−キャリア22−回転軸16の経路でエンジン11のクランク軸に伝達され、エンジンが回転電機によりアシストされる。この状態では、車両の駆動輪12がエンジン11と回転電機14との双方により駆動される。
【0084】
このように、回転電機14をエンジンアシスト用の電動機として運転する際には、回転電機の出力トルクを増大させるように、回転電機の励磁相の切替位相を、位置検出器の出力Hu,Hv及びHwの出力により決まる理論的な切替位相よりも進ませる進み角制御を行わせるのが好ましい。
【0085】
上記のように、回転電機14側の回転軸17とエンジン側の回転軸16とを減速比1対1で結合している状態で、バッテリBの充電が必要なとき(バッテリの両端の電圧が目標値以下のとき)には、エンジン11の出力トルクを回転電機14に伝達して、回転電機14を駆動することにより、回転電機14を発電機として運転する。
【0086】
このように、回転電機14が発電機として運転されるようになると、回転電機14の電機子コイルLu〜LwからインバータINV内の帰還用ダイオードDu,Dv,Dw,Dx,Dy及びDzと、スイッチ素子Qu,Qv,Qw,Qx,Qy及びQzにより構成された回路を通してバッテリBに充電電流が流れ、該バッテリが充電される。このようにバッテリBを充電している状態で、バッテリBの充電が完了してその両端の電圧が目標値を超えると、コントローラCNTがインバータINVのブリッジの下辺のスイッチ素子Qx〜Qzを同時にオン状態にして回転電機の出力を短絡する短絡制御を行うか、または前記ドライブ制御を行い、これによりバッテリBの充電を停止させるかまたは抑制して、バッテリBの過充電を防止する。
【0087】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、太陽歯車が回転電機側の回転軸とともに回転し、遊星歯車を保持したキャリアがエンジン側の回転軸とともに回転するように設けられた遊星歯車機構と、回転電機の回転を遊星歯車機構により減速してエンジン側の回転軸に伝達する状態と太陽歯車及びキャリアを一体に回転させる状態とを切り換える減速比切換機構とを設けたので、エンジンの始動時には、回転電機の回転を遊星歯車機構により減速してエンジンに伝達することができ、エンジンが始動した後は、回転電機側の回転軸とエンジン側の回転軸との間を1対1の減速比で結合して、回転電機とエンジンとの間で双方向に動力の伝達を行なわせることができる。
【0088】
このように、本発明に係わる動力伝達装置を用いれば、エンジンの始動時に回転電機の回転を減速してエンジンに伝達することができるため、回転電機を小形に構成してもエンジンの始動を支障なく行なわせることができる。
【0089】
また本発明によれば、エンジンが始動した後は、回転電機側の回転軸とエンジン側の回転軸との間を1対1の減速比で双方向に結合することができるため、回転電機を電動機として運転することによりエンジンをアシストしたり、回転電機を発電機として動作させて、該回転電機の出力でバッテリを充電したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わるハイブリッド車の構成例を模式的に示した構成図である。
【図2】図1に示した車両において、回転電機の動作状態と、動力伝達装置のクラッチ機構の状態との関係を示した図表である。
【図3】図1に示した車両で用いる動力伝達装置の具体的な構成例を示した断面図である。
【図4】図1に示した車両で用いる動力伝達装置の他の具体的構成例を示した断面図である。
【図5】図1に示したハイブリッド車両において用いる回転電機の具体例と、該回転電機を制御する電気回路の一例とを示した回路図である。
【図6】エンジンを始動する際及びエンジンをアシストする際に回転電機に要求されるトルク対回転速度特性を示したグラフである。
【図7】回転電機を発電機と始動用電動機として兼用するようにした車両の構成を模式的に示した構成図である。
【符号の説明】
11:エンジン、14:回転電機、15:動力伝達装置、16:エンジン側回転軸、17:回転電機側回転軸、20:太陽歯車、21:内接歯車、22:キャリア、23:遊星歯車軸、24:遊星歯車、25:遊星歯車機構、C1:第1のクラッチ機構、C2:第2のクラッチ機構、31:機構ケース、50:電磁コイル、43:可動部材、45:バネ、51:第1のクラッチ構成用可動側歯部、52:第1のクラッチ構成用固定側歯部、53,55:第2のクラッチ構成用歯部。
Claims (4)
- 車両駆動用のエンジンと、電動機及び発電機に兼用される回転電機とを備えたバイブリッド車の前記エンジン側の回転軸と前記回転電機側の回転軸との間に設けられるバイブリッド車用動力伝達装置において、
前記回転電機側の回転軸とともに回転するように設けられた太陽歯車と、前記太陽歯車を囲むように設けられて回転可能に支持された内接歯車と、前記エンジン側の回転軸に取りつけられたキャリアに回転自在に支持されて前記内接歯車と太陽歯車とに噛み合わされた遊星歯車とを備えた遊星歯車機構と、
前記回転電機の回転を減速して前記エンジン側に伝達するべく前記内接歯車を固定して前記遊星歯車の遊星運動を許容した状態を第1の状態とし、前記回転電機とエンジンとの間で1対1の減速比で動力の伝達を行わせるべく前記内接歯車の固定を解除するとともに前記太陽歯車とキャリアとの間を機械的に結合した状態を第2の状態として、前記遊星歯車機構の状態を前記第1の状態と第2の状態とに切り換えて前記遊星歯車機構の減速比を切り換える減速比切換機構と、
を具備してなるハイブリッド車両用動力伝達装置。 - 前記減速比切換機構は、
前記内接歯車を固定してその回転を阻止した状態であるオン状態と、前記内接歯車の固定を解除した状態であるオフ状態とに切り換えが可能な第1のクラッチ機構と、
前記キャリアと太陽歯車とを同じ速度で回転させるように前記キャリアと太陽歯車との間を機械的に結合した状態であるオン状態と、前記キャリアと太陽歯車との間で相対的な回転が生じるのを許容するように前記キャリアと太陽歯車との間の結合を解除した状態であるオフ状態とに切り換えが可能な第2のクラッチ機構と、
前記第1のクラッチ機構及び第2のクラッチ機構の一方をオン状態にしたときに他方をオフ状態にするように前記第1のクラッチ機構及び第2のクラッチ機構を操作するクラッチ操作機構と、
を具備してなる請求項1に記載のハイブリッド車両用動力伝達装置。 - 車両駆動用のエンジンと、電動機及び発電機に兼用される回転電機とを備えたバイブリッド車の前記エンジン側の回転軸と前記回転電機側の回転軸との間に設けられるバイブリッド車用動力伝達装置において、
前記回転電機側の回転軸に取りつけられた太陽歯車と、強磁性材料からなっていて、前記太陽歯車と前記回転電機との間に位置させた状態で前記回転電機側の回転軸に対して回転自在に、かつ前記回転電機側の回転軸の軸線方向にスラスト可能に支持された可動部材と、前記可動部材を前記太陽歯車側に付勢するバネと、前記可動部材を取り囲むように設けられて励磁された際に前記バネの付勢力に抗して前記可動部材を前記回転電機側に駆動する電磁コイルと、前記太陽歯車を同軸的に囲むように設けられて前記可動部材に支持された内接歯車と、前記エンジン側の回転軸に取りつけられたキャリアと、前記キャリアに回転自在に支持されるとともに、前記内接歯車と太陽歯車とに噛み合わされた遊星歯車とを備えた機構部と、
前記機構部を収容するように構成されて前記回転電機のハウジング及び前記エンジンのケースに対して固定された機構ケースと、
前記内接歯車側に設けられた第1のクラッチ構成用可動側歯部と、
前記電磁コイルが励磁されて前記可動部材が前記太陽歯車から離れる方向に駆動されて前記内接歯車が前記可動部材とともに変位させられたときに前記第1のクラッチ構成用可動側歯部に噛み合い、前記電磁コイルが消勢されて前記バネの付勢力により前記可動部材が前記太陽歯車側に変位させられたときに前記第1のクラッチ構成用可動側歯部から外れるように配設位置が定められて前記機構ケースに対して固定された第1のクラッチ構成用固定側歯部と、
前記電磁コイルが消勢されて前記可動部材が前記バネの付勢力により前記太陽歯車側に駆動されたときに前記太陽歯車の歯に噛み合って前記内接歯車と前記太陽歯車とを機械的に一体化するように結合し、前記電磁コイルが励磁されて前記可動部材が前記太陽歯車から離れる側に駆動されたときに前記太陽歯車の歯部から外れて前記内接歯車と前記太陽歯車との結合を解除するように配設位置が定められて前記可動部材に対して固定された第2のクラッチ構成用歯部と、
を具備してなるハイブリッド車用動力伝達装置。 - 車両駆動用のエンジンと、電動機及び発電機に兼用される回転電機とを備えたバイブリッド車の前記エンジン側の回転軸と前記回転電機側の回転軸との間に設けられるバイブリッド車用動力伝達装置において、
前記回転電機側の回転軸に取りつけられた太陽歯車と、強磁性材料からなっていて、前記太陽歯車と前記回転電機との間に位置させた状態で前記回転電機側の回転軸に対して回転自在に、かつ前記回転電機側の回転軸の軸線方向にスラスト可能に支持された可動部材と、前記可動部材を前記太陽歯車側に付勢するバネと、前記可動部材を取り囲むように設けられて励磁された際に前記バネの付勢力に抗して前記可動部材を前記太陽歯車から離れる方向に駆動する電磁コイルと、前記太陽歯車を同軸的に囲むように設けられて前記可動部材に支持された内接歯車と、前記エンジン側の回転軸に取りつけられたキャリアと、前記キャリアに回転自在に支持されるとともに、前記内接歯車と太陽歯車とに噛み合わされた遊星歯車とを備えた機構部と、
前記機構部を収容するように構成されて前記回転電機のハウジング及び前記エンジンのケースに対して固定された機構ケースと、
前記内接歯車側に設けられた第1のクラッチ構成用可動側歯部と、
前記電磁コイルが励磁されて前記可動部材が前記太陽歯車から離れる方向に駆動されて前記内接歯車が前記可動部材とともに変位させられたときに前記第1のクラッチ構成用可動側歯部に噛み合い、前記電磁コイルが消勢されて前記バネの付勢力により前記可動部材が前記太陽歯車側に変位させられたときに前記第1のクラッチ構成用可動側歯部から外れるように配設位置が定められて前記機構ケースに対して固定された第1のクラッチ構成用固定側歯部と、
前記電磁コイルが消勢されて前記可動部材が前記バネの付勢力により前記太陽歯車側に駆動されたときに前記内接歯車の歯に噛み合って前記内接歯車と前記キャリアとを機械的に一体化するように結合し、前記電磁コイルが励磁されて前記可動部材が前記太陽歯車から離れる側に駆動されたときに前記内接歯車の歯部から外れて前記内接歯車と前記キャリアとの結合を解除するように配設位置が定められて前記キャリアに対して固定された第2のクラッチ構成用歯部と、
を具備してなるハイブリッド車用動力伝達装置。
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JP2007267536A (ja) * | 2006-03-29 | 2007-10-11 | Kyocera Mita Corp | 画像形成装置に用いられる駆動装置 |
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