JP2004146239A - 固体高分子電解質型燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】固体高分子電解質型燃料電池の電圧を安定にする。その為の撥水送を適切に設ける技術を提供する。
【解決手段】溶剤可溶なフッ素樹脂を用いてセパレータの撥水化を行い、電解質膜−電極接合体と接するリブの先端部にも0.7μm以下の撥水層を形成する。その為,水がセパレータに留まることによる電池電圧の低下を防ぐことができる。また,またフッ素樹脂液の濃度を調節して塗布し,0.7μm以下となるようにするが,これにより,リブと電解質膜−電極接合体との間に微視的な接触を行わせて導電性を改善する。
【選択図】 図3
【解決手段】溶剤可溶なフッ素樹脂を用いてセパレータの撥水化を行い、電解質膜−電極接合体と接するリブの先端部にも0.7μm以下の撥水層を形成する。その為,水がセパレータに留まることによる電池電圧の低下を防ぐことができる。また,またフッ素樹脂液の濃度を調節して塗布し,0.7μm以下となるようにするが,これにより,リブと電解質膜−電極接合体との間に微視的な接触を行わせて導電性を改善する。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素イオン伝導性高分子電解質膜(陽子イオン交換膜)を用いた固体高分子電解質型燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体高分子電解質型燃料電池は、水素を含有する燃料ガスと、空気などの酸素を含有する酸化剤ガスとを、水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質膜を介して電気化学的に反応させることで、電力を発生させる。通常、燃料電池を実際に使用するときは、単電池を数多く重ねた積層構造を採用する。燃料電池の運転時には電力発生とともに発熱が起こるが、積層電池では、単電池数セル毎に冷却板を設け、電池温度を一定に保つ必要がある。
【0003】
また、上記燃料電池に使用している固体高分子電解質膜は、水分を十分に含んだ状態で機能するため、供給するガスは加湿して供給する必要がある。これに加えて、上記燃料電池の酸化剤ガス側においては、電池反応により水が生成するため、このような水を速やかに排出することが求められる。
【0004】
この問題を解決する方法としては、例えば、特許文献1には、界面活性剤とこれに分散させたテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂とを含む分散液をセパレータに塗布し、焼き付けによりセパレータの表面に撥水層を形成する方法が記載されている。しかし、フッ素樹脂の融点を超える温度が必要であり、大量生産には向いているが、今後の固体高分子電解質型燃料電池のセパレータとして主流になると予想される樹脂成型セパレータへの適用は困難であると考えられる。
【0005】
これに対し、特許文献2には、フルオロアルキルシランによってセパレータの表面の官能基と化学的に結合する撥水層を形成する方法が開示されている。しかし、固体高分子電解質型燃料電池のガス流路は、80℃前後で水蒸気で飽和するか、またはそれに近い湿度環境下に曝されるため、一般的にこのような化学結合は容易に加水分解してしまい、耐久性の点で問題がある。
【0006】
また、上記特許文献1においては、溶剤可溶性含フッ素重合体の溶液を塗布・乾燥し、セパレータの表面に撥水層を形成する方法が開示されている。上記特許文献1および2の方法と比較して、この方法で得られる撥水層は、膜厚さを制御し易く、高温高湿環境下においても耐久性に優れる。しかし、セパレータのリブが電解質膜電極接合体と接する面で撥水層を研磨をすると、当該面における撥水性が失われてこの部分に水の蓄積が生じ、水詰まり防止効果が減少して電圧が低下してしまうという問題がある。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−12250号公報
【特許文献2】
特開平11−339827号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、従来からも、固体高分子電解質型燃料電池のセパレータの表面には撥水層を設ける技術が提案されているが、温度、水分および研磨に耐え得る有効な撥水層は見出されていなかった。そこで、本発明は、電解質膜電極接合体とセパレータとの間に温度、水分および研磨に強い撥水層を有し、当該撥水層の破損などによる電圧低下を抑制し得る固体高分子電解質型燃料電池を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、電解質膜−電極接合体と、両面にリブを有し前記接合体を挟持する第一のセパレータおよび第二のセパレータとを含む燃料電池であって、前記接合体と前記リブとの間に撥水層を有し、前記撥水層を部分的に貫通して前記接合体と前記リブとが電気的に導通していることを特徴とする固体高分子電解質型燃料電池を提供する。
【0010】
前記撥水層が、溶剤に可溶なフッ素樹脂で構成されているのが有効である。
また、前記フッ素樹脂の融点が150℃以下であるのが有効である。
さらに、前記撥水層の平均厚さが0.7μm以下であるのが有効である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明は、電解質膜−電極接合体と、両面にリブを有し、前記接合体を挟持する第一のセパレータおよび第二のセパレータとを含む燃料電池であって、前記接合体と前記リブとの間に撥水層を有し、前記撥水層を部分的に貫通して前記接合体と前記リブとが電気的に導通していることを特徴とする固体高分子電解質型燃料電池を提供する。
【0012】
本発明者らは、溶剤に可溶なフッ素樹脂を用いて撥水層をセパレータの流路とリブの電池反応に寄与する実質的全体に形成した後に、セパレータと電解質膜電極接合体との積層を行うことで、水がセパレータに溜まることによる電池電圧の低下を防ぐことができることを見出した。
【0013】
この際、セパレータに形成されたリブの、電解質膜−電極接合体と接する部分には、厚さの平均が0.7μm以下となるように、フッ素樹脂溶液の濃度を調節して塗布する。そして、セパレータと必要な数の電解質膜−電極接合体とを交互に積層し、セパレータのリブと電解質膜−電極接合体の間の接触圧力が、平方センチメートルあたり5kg重以上になるように締結する。
【0014】
これにより、前記撥水層を部分的に貫通して前記接合体と前記リブとを電気的に導通させることができ、リブと電解質膜−電極接合体との間に微視的な接触を行わせて導電性を改善することができる。そして、電解質膜−電極接合体と接するリブ先端部における撥水層が除去することによって発生する、電池電圧の低下の可能性を回避することができる。
【0015】
上述のように、本発明に係る固体高分子電解質型燃料電池は、換言すると、固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜を挟んで配された触媒反応層を有する一対の電極と、前記電極の一方に水素を含有する燃料を供給分配し前記電極の他方に酸素を含む酸化剤ガスを供給分配する手段とを具備する単電池を、導電性のセパレータを介して複数個積層し、得られる積層体を必要な荷重を加えて締結して得られる。
【0016】
導電性のセパレータとしては、金属製のセパレータの他、樹脂含浸黒鉛板を切削加工やサンドブラスト加工などによって所定形状に加工して得られるセパレータ、樹脂と黒鉛の混合物を圧縮成型や射出成型などによって所定形状に成型して得られるセパレータなどを用いることができる。
【0017】
また、電解質膜−電極接合体とリブとの間に存在する撥水層を構成する材料は、溶剤に可溶なフッ素樹脂であるのが好ましい。かかるフッ素樹脂としては、80℃程度の温度下で、かつ飽和またはそれに近い湿度環境下において安定なものであればよい。例えばダイニオンTHV220(ダイニオン社製)などの低級ケトン系溶剤およびエステル系溶剤に溶解し得るフッ素樹脂、サイトップ(旭硝子(株)製)などのフッ素系溶剤に溶解し得るフッ素樹脂などを利用することができる。なかでも、サイトップ標準グレード(旭硝子(株)製)などの、末端にカルボキシル基を有するフッ素樹脂は、黒鉛を含む材料で構成されるセパレータに対して高い密着性を有するため好ましい。
【0018】
溶剤可溶なフッ素樹脂による撥水層は、例えば刷毛塗り、浸漬、スプレー塗布、スピンコート、その他得られる膜の厚さを所定の厚さに制御し得る方法であれば、いかなる方法も用いることができる。
以下に、図面を参照しながら実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0019】
【実施例】
《実施例1》
粒径が数ミクロン以下のカーボン粉末を塩化白金酸水溶液に浸漬し、還元処理によってカーボン粉末表面に白金触媒を担持させた。このときのカーボンと担持した白金の重量比は1:1とした。ついで、この白金を担持したカーボン粉末を高分子電解質のアルコール分散液中に分散させ、スラリーを調製した。
一方、厚さ400ミクロンのカーボンペーパーにフッ素樹脂の水性ディスパージョン(ダイキン工業(株)製の「ネオフロンND−1」)を含浸させて乾燥し、その後、400℃で30分間の熱処理を行って撥水性を付与したガス拡散層を得た。
【0020】
得られたガス拡散層に、得られたスラリーを均一に塗布して、電極触媒層を得た。電極触媒層を備えた一対のガス拡散層を、電極触媒層を備えた面を内側に向けて向かい合わせ、高分子電解質膜(プロトン交換膜)を挟んで重ね合わせた後、これを乾燥して電解質膜−電極接合体(MEA)を得た。
【0021】
撥水層を有するセパレータは、次の手順によって得た。
まず、樹脂含浸によってガスの透過性を抑えた黒鉛板を切削によって加工し、両面に所定の形状のガス流路を設けたセパレータを得た。その後、溶剤洗浄およびUVオゾン照射によって表面の洗浄を行った。
【0022】
次に、撥水処理溶液として、サイトップCTX−109A(旭硝子(株)製)を溶媒CT−SOLV−100(旭硝子(株)製)で希釈し、サイトップ樹脂の0.5%溶液を得た。続いて、この撥水処理溶液をセパレータのガス流路部分の全面にわたり、刷毛塗りによって塗布した後、100℃で1時間乾燥した。これにより、セパレータの流路とリブすべてに撥水層を形成した。この処理をセパレータの両面のガス流路(アノード側ガス流路およびカソード側ガス流路)について行った。同じ条件によって形成した撥水層の厚みを蝕針式表面粗さ計により測定したところ、平均0.3μmであった。
【0023】
次に、図1に示すように、まず、ガス拡散層1と触媒層(図示せず)と高分子電解質膜(プロトン交換膜)2などで構成されるMEA3を、フッ素ゴムを所定の形状に加工したシール部材4で挟み込んだ。次に、撥水層を形成したセパレータ5によってMEA3を挟み込んだ。なお、図1は、MEAを一対のセパレータで挟持する方法を示す図である。
【0024】
図2は、単電池を積層して得られるスタックからなる燃料電池の構造を示す概略図である。MEA3とセパレータ5または内部にクーラント流路を有するセパレータ6とを直列に積み重ねてスタックを得、端板7、バネ8、ナット9およびロッド10を用いて、セパレータ6に対する荷重がリブ1平方cmあたりに6kg重になるようにスタックを締結した。なお、本実施例においては、3枚のMEAを積層した。
【0025】
ここで、図3は、スタックを締結する時に、セパレータ6のリブ11とMEA3のガス拡散層1が撥水層12を介して接している様子を模式的に表す図である。この図に示すように、ガス拡散層1を形成する繊維が、フッ素樹脂によって構成される撥水層12を部分的に貫通して導通が生じる程度、またはトンネル電流によって導通が生じる程度、すなわち10nm程度以下までガス拡散層1をリブ11に接近させる。
【0026】
得られた燃料電池に、水素を80%、二酸化炭素を20%含むガスを燃料ガスとして供給し、空気を酸化剤ガスとして供給した。同時に、クーラントとして水を循環させた。この時、燃料電池の入口における水温を65℃、燃料電池の出口における水温を70℃となるように設定した。燃料利用率70%、空気利用率30%および電流密度0.3A/cm2の条件で発電を行った。
【0027】
《実施例2》
撥水処理溶液として、ダイニオンTHV220(ダイニオン社製)をアセトン中に0.3%溶かして得られた溶液を用い、100℃にて1時間乾燥した。実施例1と同様に、刷毛塗りにてセパレータのガス流路とリブすべてに撥水層を形成した。実施例1と同様に撥水層の厚みを測定したところ、平均0.3μmであった。これらのセパレータを用い、実施例1と同様の燃料電池を作製して発電を行った。
【0028】
《比較例》
セパレータのリブの先端部について、撥水層の除去を1000番のサンドペーパーで行った以外は、実施例1と同様にしてセパレータに撥水層を設けた。このセパレータを用い、実施例1と同様にして燃料電池を作製して発電を行った。
表1に、実施例1、2および比較例1において作製した燃料電池の発電試験の結果を示す。
【0029】
【表1】
【0030】
表1に示すように、実施例1および2では、ガス流路の閉塞による電圧低下も発生せず、良好な結果が得られた。これに対して、比較例では、発電開始後10時間程度を経過した頃から、燃料電池を構成する3つの単電池の内の1つで電圧の大きな低下が発生するようになった。これは、セパレータのリブの先端を研磨したことで、MEAのガス拡散層とリブの間に水が保持されたことによってガスの拡散が阻害されたことによると考えられる。
【0031】
《実施例3》
次に、撥水層の厚みを変えた他は実施例1と同様にして試験を行った。処理溶液としてサイトップ樹脂(旭硝子(株)製)を用いた他は実施例1と同様にして燃料電池を作製し、同じ条件にて発電を行った。膜の厚みは蝕針式表面粗さ計により測定した。図4に撥水層の平均厚さと初期の単電池(セル)平均電圧の関係を示す。これによれば、単電池の電圧は撥水層の厚みが0.7μmを超えると急激に低下することがわかる。したがって撥水層の厚みは0.7μm以下であることが望ましい。
【0032】
【発明の効果】
本発明に係る固体高分子電解質型燃料電池は、溶剤に可溶なフッ素樹脂を用いて撥水層をセパレータの流路とリブの電池反応に寄与する実質的全体に形成し、その後にセパレータと電解質膜−電極接合体を積層して得られるものである。そのため、水がセパレータに溜まることによる電池電圧の低下を防ぐことができる。この際、セパレータに形成されたリブの電解質膜−電極接合体と接する部分には、厚さの平均が0.7μm以下となるように、フッ素樹脂溶液の濃度を調節して塗布して撥水層を設けるが、リブと電解質膜−電極接合体との間に微視的な接触を行わせて導電性を改善する。これにより、電解質膜−電極接合体と接するリブ先端部における撥水層を除去することによって発生する、電圧の低下の可能性を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】セパレータとMEAの積層状態を示す断面図である。
【図2】燃料電池の構造の概略図である。
【図3】セパレータとMEAの微視的な位置関係を示す図である。
【図4】撥水層の膜厚さとセルの電圧特性の関係を説明する図である。
【符号の説明】
1 ガス拡散層
2 高分子電解質膜
3 MEA
4 シール部材
5 セパレータ
6 セパレータ
7 端板
8 バネ
9 ナット
10 ロッド
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素イオン伝導性高分子電解質膜(陽子イオン交換膜)を用いた固体高分子電解質型燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体高分子電解質型燃料電池は、水素を含有する燃料ガスと、空気などの酸素を含有する酸化剤ガスとを、水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質膜を介して電気化学的に反応させることで、電力を発生させる。通常、燃料電池を実際に使用するときは、単電池を数多く重ねた積層構造を採用する。燃料電池の運転時には電力発生とともに発熱が起こるが、積層電池では、単電池数セル毎に冷却板を設け、電池温度を一定に保つ必要がある。
【0003】
また、上記燃料電池に使用している固体高分子電解質膜は、水分を十分に含んだ状態で機能するため、供給するガスは加湿して供給する必要がある。これに加えて、上記燃料電池の酸化剤ガス側においては、電池反応により水が生成するため、このような水を速やかに排出することが求められる。
【0004】
この問題を解決する方法としては、例えば、特許文献1には、界面活性剤とこれに分散させたテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂とを含む分散液をセパレータに塗布し、焼き付けによりセパレータの表面に撥水層を形成する方法が記載されている。しかし、フッ素樹脂の融点を超える温度が必要であり、大量生産には向いているが、今後の固体高分子電解質型燃料電池のセパレータとして主流になると予想される樹脂成型セパレータへの適用は困難であると考えられる。
【0005】
これに対し、特許文献2には、フルオロアルキルシランによってセパレータの表面の官能基と化学的に結合する撥水層を形成する方法が開示されている。しかし、固体高分子電解質型燃料電池のガス流路は、80℃前後で水蒸気で飽和するか、またはそれに近い湿度環境下に曝されるため、一般的にこのような化学結合は容易に加水分解してしまい、耐久性の点で問題がある。
【0006】
また、上記特許文献1においては、溶剤可溶性含フッ素重合体の溶液を塗布・乾燥し、セパレータの表面に撥水層を形成する方法が開示されている。上記特許文献1および2の方法と比較して、この方法で得られる撥水層は、膜厚さを制御し易く、高温高湿環境下においても耐久性に優れる。しかし、セパレータのリブが電解質膜電極接合体と接する面で撥水層を研磨をすると、当該面における撥水性が失われてこの部分に水の蓄積が生じ、水詰まり防止効果が減少して電圧が低下してしまうという問題がある。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−12250号公報
【特許文献2】
特開平11−339827号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、従来からも、固体高分子電解質型燃料電池のセパレータの表面には撥水層を設ける技術が提案されているが、温度、水分および研磨に耐え得る有効な撥水層は見出されていなかった。そこで、本発明は、電解質膜電極接合体とセパレータとの間に温度、水分および研磨に強い撥水層を有し、当該撥水層の破損などによる電圧低下を抑制し得る固体高分子電解質型燃料電池を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、電解質膜−電極接合体と、両面にリブを有し前記接合体を挟持する第一のセパレータおよび第二のセパレータとを含む燃料電池であって、前記接合体と前記リブとの間に撥水層を有し、前記撥水層を部分的に貫通して前記接合体と前記リブとが電気的に導通していることを特徴とする固体高分子電解質型燃料電池を提供する。
【0010】
前記撥水層が、溶剤に可溶なフッ素樹脂で構成されているのが有効である。
また、前記フッ素樹脂の融点が150℃以下であるのが有効である。
さらに、前記撥水層の平均厚さが0.7μm以下であるのが有効である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明は、電解質膜−電極接合体と、両面にリブを有し、前記接合体を挟持する第一のセパレータおよび第二のセパレータとを含む燃料電池であって、前記接合体と前記リブとの間に撥水層を有し、前記撥水層を部分的に貫通して前記接合体と前記リブとが電気的に導通していることを特徴とする固体高分子電解質型燃料電池を提供する。
【0012】
本発明者らは、溶剤に可溶なフッ素樹脂を用いて撥水層をセパレータの流路とリブの電池反応に寄与する実質的全体に形成した後に、セパレータと電解質膜電極接合体との積層を行うことで、水がセパレータに溜まることによる電池電圧の低下を防ぐことができることを見出した。
【0013】
この際、セパレータに形成されたリブの、電解質膜−電極接合体と接する部分には、厚さの平均が0.7μm以下となるように、フッ素樹脂溶液の濃度を調節して塗布する。そして、セパレータと必要な数の電解質膜−電極接合体とを交互に積層し、セパレータのリブと電解質膜−電極接合体の間の接触圧力が、平方センチメートルあたり5kg重以上になるように締結する。
【0014】
これにより、前記撥水層を部分的に貫通して前記接合体と前記リブとを電気的に導通させることができ、リブと電解質膜−電極接合体との間に微視的な接触を行わせて導電性を改善することができる。そして、電解質膜−電極接合体と接するリブ先端部における撥水層が除去することによって発生する、電池電圧の低下の可能性を回避することができる。
【0015】
上述のように、本発明に係る固体高分子電解質型燃料電池は、換言すると、固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜を挟んで配された触媒反応層を有する一対の電極と、前記電極の一方に水素を含有する燃料を供給分配し前記電極の他方に酸素を含む酸化剤ガスを供給分配する手段とを具備する単電池を、導電性のセパレータを介して複数個積層し、得られる積層体を必要な荷重を加えて締結して得られる。
【0016】
導電性のセパレータとしては、金属製のセパレータの他、樹脂含浸黒鉛板を切削加工やサンドブラスト加工などによって所定形状に加工して得られるセパレータ、樹脂と黒鉛の混合物を圧縮成型や射出成型などによって所定形状に成型して得られるセパレータなどを用いることができる。
【0017】
また、電解質膜−電極接合体とリブとの間に存在する撥水層を構成する材料は、溶剤に可溶なフッ素樹脂であるのが好ましい。かかるフッ素樹脂としては、80℃程度の温度下で、かつ飽和またはそれに近い湿度環境下において安定なものであればよい。例えばダイニオンTHV220(ダイニオン社製)などの低級ケトン系溶剤およびエステル系溶剤に溶解し得るフッ素樹脂、サイトップ(旭硝子(株)製)などのフッ素系溶剤に溶解し得るフッ素樹脂などを利用することができる。なかでも、サイトップ標準グレード(旭硝子(株)製)などの、末端にカルボキシル基を有するフッ素樹脂は、黒鉛を含む材料で構成されるセパレータに対して高い密着性を有するため好ましい。
【0018】
溶剤可溶なフッ素樹脂による撥水層は、例えば刷毛塗り、浸漬、スプレー塗布、スピンコート、その他得られる膜の厚さを所定の厚さに制御し得る方法であれば、いかなる方法も用いることができる。
以下に、図面を参照しながら実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0019】
【実施例】
《実施例1》
粒径が数ミクロン以下のカーボン粉末を塩化白金酸水溶液に浸漬し、還元処理によってカーボン粉末表面に白金触媒を担持させた。このときのカーボンと担持した白金の重量比は1:1とした。ついで、この白金を担持したカーボン粉末を高分子電解質のアルコール分散液中に分散させ、スラリーを調製した。
一方、厚さ400ミクロンのカーボンペーパーにフッ素樹脂の水性ディスパージョン(ダイキン工業(株)製の「ネオフロンND−1」)を含浸させて乾燥し、その後、400℃で30分間の熱処理を行って撥水性を付与したガス拡散層を得た。
【0020】
得られたガス拡散層に、得られたスラリーを均一に塗布して、電極触媒層を得た。電極触媒層を備えた一対のガス拡散層を、電極触媒層を備えた面を内側に向けて向かい合わせ、高分子電解質膜(プロトン交換膜)を挟んで重ね合わせた後、これを乾燥して電解質膜−電極接合体(MEA)を得た。
【0021】
撥水層を有するセパレータは、次の手順によって得た。
まず、樹脂含浸によってガスの透過性を抑えた黒鉛板を切削によって加工し、両面に所定の形状のガス流路を設けたセパレータを得た。その後、溶剤洗浄およびUVオゾン照射によって表面の洗浄を行った。
【0022】
次に、撥水処理溶液として、サイトップCTX−109A(旭硝子(株)製)を溶媒CT−SOLV−100(旭硝子(株)製)で希釈し、サイトップ樹脂の0.5%溶液を得た。続いて、この撥水処理溶液をセパレータのガス流路部分の全面にわたり、刷毛塗りによって塗布した後、100℃で1時間乾燥した。これにより、セパレータの流路とリブすべてに撥水層を形成した。この処理をセパレータの両面のガス流路(アノード側ガス流路およびカソード側ガス流路)について行った。同じ条件によって形成した撥水層の厚みを蝕針式表面粗さ計により測定したところ、平均0.3μmであった。
【0023】
次に、図1に示すように、まず、ガス拡散層1と触媒層(図示せず)と高分子電解質膜(プロトン交換膜)2などで構成されるMEA3を、フッ素ゴムを所定の形状に加工したシール部材4で挟み込んだ。次に、撥水層を形成したセパレータ5によってMEA3を挟み込んだ。なお、図1は、MEAを一対のセパレータで挟持する方法を示す図である。
【0024】
図2は、単電池を積層して得られるスタックからなる燃料電池の構造を示す概略図である。MEA3とセパレータ5または内部にクーラント流路を有するセパレータ6とを直列に積み重ねてスタックを得、端板7、バネ8、ナット9およびロッド10を用いて、セパレータ6に対する荷重がリブ1平方cmあたりに6kg重になるようにスタックを締結した。なお、本実施例においては、3枚のMEAを積層した。
【0025】
ここで、図3は、スタックを締結する時に、セパレータ6のリブ11とMEA3のガス拡散層1が撥水層12を介して接している様子を模式的に表す図である。この図に示すように、ガス拡散層1を形成する繊維が、フッ素樹脂によって構成される撥水層12を部分的に貫通して導通が生じる程度、またはトンネル電流によって導通が生じる程度、すなわち10nm程度以下までガス拡散層1をリブ11に接近させる。
【0026】
得られた燃料電池に、水素を80%、二酸化炭素を20%含むガスを燃料ガスとして供給し、空気を酸化剤ガスとして供給した。同時に、クーラントとして水を循環させた。この時、燃料電池の入口における水温を65℃、燃料電池の出口における水温を70℃となるように設定した。燃料利用率70%、空気利用率30%および電流密度0.3A/cm2の条件で発電を行った。
【0027】
《実施例2》
撥水処理溶液として、ダイニオンTHV220(ダイニオン社製)をアセトン中に0.3%溶かして得られた溶液を用い、100℃にて1時間乾燥した。実施例1と同様に、刷毛塗りにてセパレータのガス流路とリブすべてに撥水層を形成した。実施例1と同様に撥水層の厚みを測定したところ、平均0.3μmであった。これらのセパレータを用い、実施例1と同様の燃料電池を作製して発電を行った。
【0028】
《比較例》
セパレータのリブの先端部について、撥水層の除去を1000番のサンドペーパーで行った以外は、実施例1と同様にしてセパレータに撥水層を設けた。このセパレータを用い、実施例1と同様にして燃料電池を作製して発電を行った。
表1に、実施例1、2および比較例1において作製した燃料電池の発電試験の結果を示す。
【0029】
【表1】
【0030】
表1に示すように、実施例1および2では、ガス流路の閉塞による電圧低下も発生せず、良好な結果が得られた。これに対して、比較例では、発電開始後10時間程度を経過した頃から、燃料電池を構成する3つの単電池の内の1つで電圧の大きな低下が発生するようになった。これは、セパレータのリブの先端を研磨したことで、MEAのガス拡散層とリブの間に水が保持されたことによってガスの拡散が阻害されたことによると考えられる。
【0031】
《実施例3》
次に、撥水層の厚みを変えた他は実施例1と同様にして試験を行った。処理溶液としてサイトップ樹脂(旭硝子(株)製)を用いた他は実施例1と同様にして燃料電池を作製し、同じ条件にて発電を行った。膜の厚みは蝕針式表面粗さ計により測定した。図4に撥水層の平均厚さと初期の単電池(セル)平均電圧の関係を示す。これによれば、単電池の電圧は撥水層の厚みが0.7μmを超えると急激に低下することがわかる。したがって撥水層の厚みは0.7μm以下であることが望ましい。
【0032】
【発明の効果】
本発明に係る固体高分子電解質型燃料電池は、溶剤に可溶なフッ素樹脂を用いて撥水層をセパレータの流路とリブの電池反応に寄与する実質的全体に形成し、その後にセパレータと電解質膜−電極接合体を積層して得られるものである。そのため、水がセパレータに溜まることによる電池電圧の低下を防ぐことができる。この際、セパレータに形成されたリブの電解質膜−電極接合体と接する部分には、厚さの平均が0.7μm以下となるように、フッ素樹脂溶液の濃度を調節して塗布して撥水層を設けるが、リブと電解質膜−電極接合体との間に微視的な接触を行わせて導電性を改善する。これにより、電解質膜−電極接合体と接するリブ先端部における撥水層を除去することによって発生する、電圧の低下の可能性を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】セパレータとMEAの積層状態を示す断面図である。
【図2】燃料電池の構造の概略図である。
【図3】セパレータとMEAの微視的な位置関係を示す図である。
【図4】撥水層の膜厚さとセルの電圧特性の関係を説明する図である。
【符号の説明】
1 ガス拡散層
2 高分子電解質膜
3 MEA
4 シール部材
5 セパレータ
6 セパレータ
7 端板
8 バネ
9 ナット
10 ロッド
Claims (4)
- 電解質膜−電極接合体と、両面にリブを有し前記接合体を挟持する第一のセパレータおよび第二のセパレータとを含む燃料電池であって、
前記接合体と前記リブとの間に撥水層を有し、前記撥水層を部分的に貫通して前記接合体と前記リブとが電気的に導通していることを特徴とする固体高分子電解質型燃料電池。 - 前記撥水層が、溶剤に可溶なフッ素樹脂で構成されていることを特徴とする請求項1記載の固体高分子電解質型燃料電池。
- 前記フッ素樹脂の融点が150℃以下であることを特徴とする請求項2記載の固体高分子電解質型燃料電池。
- 前記撥水層の平均厚さが0.7μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の固体高分子電解質型燃料電池。
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JP2002310858A JP2004146239A (ja) | 2002-10-25 | 2002-10-25 | 固体高分子電解質型燃料電池 |
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JP2002310858A JP2004146239A (ja) | 2002-10-25 | 2002-10-25 | 固体高分子電解質型燃料電池 |
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JP2002310858A Pending JP2004146239A (ja) | 2002-10-25 | 2002-10-25 | 固体高分子電解質型燃料電池 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2007139236A1 (ja) | 2006-06-01 | 2007-12-06 | Tohcello Co., Ltd. | ポリ乳酸系組成物からなる成形品 |
JP2014216231A (ja) * | 2013-04-26 | 2014-11-17 | 日産自動車株式会社 | 燃料電池 |
-
2002
- 2002-10-25 JP JP2002310858A patent/JP2004146239A/ja active Pending
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