JP2004143870A - 道路反射鏡の耐食性向上方法及び道路反射鏡 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ステンレス製道路反射鏡の裏面にステンレスより電気的に卑である金属を接触させてステンレス鏡に対して有効な電位差を保つ流電陽極方式または、補助電極と外部電源を用いてステンレス鏡の電位差を保つようにする外部電源方式を用いることによって耐食性を向上させることができる。また、裏面に取り付けた裏板に外気を通すための開口部を均等に設けることにより、裏板を取り付けた状態で耐食性を効果的に発現させることができる。これにより、環境の厳しい海岸地域でも良好に孔食を防止でき、長期にわたり腐食による道路反射鏡の視認性低下を防いで、安全な自動車の走行に寄与することができる。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、道路周辺に設置される道路反射鏡に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
道路反射鏡は、信号のない交差点や角地、見通しの悪い曲がり角などに取り付けられ、鏡体の反射により、走行しているドライバーに、直接見ることの出来ない他の自動車を認識できるようにするものであり、安全な走行を促す重要な道路付帯設備である。最近では、ヒーターを取り付けたり、鏡面に超親水化処理を施して結露を防止したり、表面に超撥水処理を施し水滴の付着を低減し、視認性を確保する等の機能的な道路反射鏡も開発、設置されている。(例えば特許文献1〜4)
【0003】
道路反射鏡鏡面の素材としては、ステンレスやアクリル樹脂、ガラス等を用いたものがあるが、アクリル樹脂製やガラス製のものは割れやすかったり、またアクリル樹脂製のものは経時的に樹脂が劣化して視認性が低下するなどの欠点がある。ステンレスは強度も強く、割れることもない。また、不動態被膜を形成するため、耐食性も非常に高いため、通常の環境下では長期間にわたり良好な耐久性を保持する。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−152418公報
【特許文献2】
特開2000−51028公報
【特許文献3】
特開2000−17620公報
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ステンレス製品は海岸地などに設置されると、海塩粒子などに含まれる塩化物イオンにより、不動態被膜が破壊され、孔食が発生する場合がある。孔食が発生すると、視認性が低下するため、その役割を果たすことができなくなる。また、ステンレス鏡の表面に塗膜がコーティングされている場合は、塗膜中のピンホール部分が集中的に腐食されるため、特に孔食が起きやすい。これらのような孔食を防ぐためには、鏡に使われているステンレスの金属組成を変更し、素材自体の耐食性を向上させなければならないが、金属組成の変更は素材の加工性や脆性などを大きく変えてしまうため、使用には十分な検証が必要であるとともに、材料費が大きく変わったり、加工設備を大幅に改造しなければならないなど、時間的にも費用的にも問題であった。
【0006】
そこで本発明は上記の如き問題点に鑑みてなされたものであり、鏡に使われているステンレスの金属組成をかえることなく、従来の部材をそのまま利用できる、簡易で安価なステンレス製道路反射鏡の耐食性向上方法を提供せんとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明者は鋭意研究した結果、電気的な作用で金属の電位を変化させて腐食を防止するする電気防食法のなかで、陰極防食法がとくに有効であり、ステンレス製道路反射鏡の裏面にステンレスより電気的に卑である金属を接触させることにより接触させた金属が流電陽極となり、防食体であるステンレス鏡に対して有効な電位差を保つ流電陽極方式または、補助電極を取り付け、前記補助電源を正極、ステンレス鏡を負極として電極に直流電源を通電させることによりステンレス鏡の電位差を保つようにする外部電源方式を用いることによって、耐食性が向上することを知得した。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。すなわち、ステンレス製の鏡の裏面に、ステンレスより電気的に卑である金属を接触させたことを特徴とするものである。
【0009】
流電陽極方式では、防食対象であるステンレスの裏面に、ステンレスより電気的に卑である金属を接触させることにより、両金属間にステンレスが陰極、前記金属が陽極となる電位差が生じ、電流を流すことにより、防食する方法である。これは、空気中の水分や雨水などが陽極金属に付着すると、陽極金属は溶解してイオンとなり、そのときに電子が発生する作用によるものである。陽極で発生した電子は陰極であるステンレスへ送られ、陰極であるステンレスが腐食するのを防ぐため、陰極であるステンレス基材は耐食性が向上する。
【0010】
一般的に流電陽極方式による防食効果は、陽極金属を接触させた直近にのみ効果が及ぶため、耐食性のみを考えた場合、表側にも卑な金属を接触させたほうが好ましいが、本発明の場合、表側は道路反射鏡の機能を保持させる必要があるため、表面には処理することが出来ず、裏面にのみ卑な金属を接触させている。そのため、表側の面まで防食効果が十分に発揮されるか懸念されるが、ステンレス鏡の場合、基材の厚さも1mm以下であり、また裏面の全面に均一に金属を接触させることで。十分な防食効果を発揮させることができる。
【0011】
また、ステンレスより電気的に卑である金属は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、鉛の中より選ばれた少なくとも一つ以上の金属または、前記金属を含む合金であることを特徴とするものである。
【0012】
流電陽極としてステンレスの裏面に接触させる金属は、ステンレスより卑である金属であれば、特に限定されるものではないが、使用期間中、被防食体に対して有効な電位を保ち、しかも単位重量あたりの発生電気量が大きく、溶解が出来るだけ均一なものが好ましい。一般的に実用されている金属としては、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム等の金属または、それらの金属を含む合金がある。また前記金属の取り付け方法は、ステンレス鏡の裏面に均等に接触していれば、特に限定されるものではなく、例えば前記金属を含んだ液状組成物を塗装してもよいし、金属板を接着材や溶接などで取り付けるようにしてもよいし、金属を溶射してもよいし、吸着や蒸着させてもよいし、めっきしてもよい。
【0013】
また、電気的に卑である金属が接触させられた鏡裏面には、裏板が取り付けられており、裏板には外気を通すための開口部が穿設されていることを特徴とするものである。
【0014】
道路反射鏡の裏面には、鏡を保護し、支柱へ鏡を取り付けるための冶具が取り付けられた裏板が設けられている。裏板が取り付けられていると、鏡の裏に設けられた流電陽極に外気が当たらず、流電陽極が溶出するだけの十分な水分が供給されないため、防食効果が十分に発揮されない。したがって、鏡の裏面に設けられた流電陽極の金属に十分な外気をあてるため、裏板に外気を通すための開口部を穿設するとよい。その開口部は、内部に十分に外気が入る大きさで、流電陽極の金属に均等に外気があたるように配置される。開口部が均等に配置されていなければ、外気があたりにくい部分は、防食効果が発現せず、また逆に外気が良く当たる部分は、流電電極の流出が速く、効果を長期間維持できない場合がある。したがって、開口部は裏板に均等に配置され、防食効果が十分に発現する範囲で、適当な大きさにすればよい。
【0015】
また、ステンレス製の鏡の裏面に、ステンレスより電気的に卑である金属を接触させており、前記金属には保湿性物質を接触させていることを特徴とするものである。
【0016】
金属による犠牲防食は、ステンレスより電気的に卑である金属が水への溶解により、電子をステンレスへ供給することにより起こる。そのため、陽極金属に水分を保持させておくような保湿材を接触させておけば、金属の溶出が容易になり、より高い耐食性を得ることが出来るとともに、常に効果を発揮することが出来る。
【0017】
また、ステンレス製の道路反射鏡に直流電源と補助電極を取り付け、ステンレス製の鏡を負極、補助電極を正極として、鏡と補助電極間に通電することにより耐食性を向上させたことを特徴とするものである。
【0018】
ステンレス鏡に、補助電極と直流電源を取り付け、直流電源の正極側に補助電極、負極側に被防食体であるステンレス鏡自身を接続して通電させておけば、ステンレス鏡は、常に電位が保たれるため耐食性が向上する。
【0019】
補助電極は、通電するものであれば特に限定されるものではないが、例えば黒鉛、鉛合金、高けい素鉄、酸化鉄、白金めっきチタンなどがよく用いられる。また、電源は商用電源などの交流電源をシリコン整流器等で、直流に変換したものでも良いし、直流電池、風力発電、太陽光発電などを用いても良い。また、環境の変化の激しいところでは、所要防食電流が変化し、過防食により腐食が増大する可能性もあるので、場合によっては、電流を調整できる定電位装置を使用するとよい。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について、以下に具体的に説明する。図1は、一般的な道路反射鏡の概略図である。支柱10に反射鏡1が取り付けられている。反射鏡1の表面には、超親水性の塗膜や超撥水性の塗膜が形成されている場合もある。このようなステンレス製の道路反射鏡の裏面に、ステンレスより卑である金属を接触させ、流電陽極とすることによって耐食性が向上する。その断面図の一例を図2に示す。ステンレス鏡21の裏面に、流電陽極22を接触させている。流電陽極22から、金属が流出する(a)と、電子が流電陽極よりステンレス鏡へと流れ込む(b)ことによって、防食作用が働く。
【0021】
ステンレス鏡裏面に金属を設ける方法としては、例えば塗装であれば、亜鉛を含んだジンクリッチペイント、鉛丹ペイント等を、鏡裏面に、刷毛等で均等に塗布すればよい。また、ステンレス鏡裏面に亜鉛めっき鋼板などを鏡裏面の形にあわせて取り付けてもよい。このように部材を接触させる場合は、十分に被防食体と接触していることが必要であり、接着剤や溶接などをもちいることが好ましい。
【0022】
接触させる金属の付着量であるが、特に制限はなく、裏面に均一に接触していることが肝要である。ただし、付着量は効果の持続時間に係わるため、付着させられる範囲で、出来るだけ付着させたほうがよい。
【0023】
さらに、図3は、道路反射鏡を裏側から見た図である。鏡裏面には裏板31が取り付けられている。裏板は鏡を設置する際に支柱に固定するための冶具が取り付けられている。流電陽極である金属を設置した上に裏板31を取り付けると、流電陽極である金属に外気の水分が接触せず、防食効果を発揮することが出来ない。そのため、裏板には流電陽極である金属を効率的に外気と接触させて金属を流出させるために、外気取り入れ孔を穿設する必要がある。出来るだけ内部の流電電極が均等に防食効果を発揮するためには、外気が均等に流電電極に当たる必要があるため、外気取り入れ孔は、裏板面に均等に配置される。外気取り入れ孔の大きさや、孔の位置は特に限定されるものではないが、例えば図3では、円を描くように一定間隔で外気取り入れ孔32が設けられていてもよい。
【0024】
また、図4には、鏡裏面に流電陽極とともに保湿材を取り付けた場合の、道路反射鏡の断面図を示す。裏面に流電陽極が設けられたステンレス鏡1の裏側に、流電陽極と接触するよう、水分を保持する保湿材41を設け、その上から外気取り入れ孔32が穿設された裏板を取り付ける。保湿材は、水分を保持するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、スポンジ、砂利や砂等の粒子状物質、グラスウールや合成繊維などの繊維状物質、シリカゲルや活性炭やゼオライトのような多孔質体、吸水性ポリマーなどが利用できる。保水材を流電陽極に接触させて設けることにより、流電陽極が効率的に、かつ均一に溶出することができ、高い防食効果を期待できる。また、無降雨期間においても、保湿材に水分が蓄積されているため、溶出が促されて十分な耐食性を発揮することが出来る。
【0025】
ステンレス鏡に電気防食を行った具体的な実施の形態と、耐食性の向上効果を実施例により示す。
【0026】
(実施例1)
20cm×20cmのステンレス鏡面板の裏面にジンクリッチペイントを約1000g/平米のとなるように均一に刷毛を用いて塗装した。
(実施例2)
20cm×20cmのステンレス鏡面の鏡面に酸化チタンによる光触媒塗膜をコーティングし、裏面に、実施例1と同様の処理を施した。
(比較例1)
20cm×20cmのステンレス鏡面には、なにも処理をしていない。
【0027】
実施例1、2と比較例1のステンレス鏡に冠して促進耐食性試験を行った。促進耐食性試験は、自動車技術者協会(JASO)規格にある自動車材料腐食評価試験法M609に記載の条件で試験を行った。なお、塩水として酸性塩水を用いた。促進試験700サイクル後の観察状況を表1に示す。
【0028】
【0029】
表1に示すように、促進耐食性試験700サイクルにおいて、裏面に流電陽極となる亜鉛を含んだジンクリッチペイントを塗装したステンレス鏡は、孔食の発生もほとんどみられなかった。また、ステンレス鏡面上に塗膜がコーティングされているような、孔食が発生し易い場合でも、実施例2に示すように良好に防食効果を示している。
【0030】
(実施例3)
600mmφのステンレス鏡裏面にジンクリッチペイントを、1000g/平米の厚さで、全面均一になるように刷毛で塗装した。その上から裏板が取り付けた。裏板には、φ5mmの開口部10個が円形に配置され、さらに、一つのφ5mmの孔の周りにそれぞれφ2mm開口部が3つずつ穿設された裏板を取り付けた。
(実施例4)
実施例1と同様の処理を施したステンレス鏡の鏡面に酸化チタン光触媒塗膜をコーティングした。
(比較例2)
600mmφのステンレス鏡には、防食処理をせず開口部のない裏板をとりつけた。
【0031】
実施例3、4と比較例2のステンレス鏡を、海岸から5mの位置に暴露し、孔食の発生状況を観察した。暴露4ヶ月後の観察状況を表2に示す。
【0032】
【0033】
表2に示すように、沿岸地での実暴露においても、裏面に流電陽極となる亜鉛を含んだジンクリッチペイントを塗装することによって、ステンレス表面の孔食を抑えることができる。また、ステンレス鏡面上に塗膜がコーティングされているような、孔食が発生し易い場合でも、良好に防食効果を示している。
【0034】
次に、ステンレス鏡に補助電極と直流電源を取り付けて、耐食性を向上させる外部電源方式の一例を図5に示す。直流電極51の正極511に補助電極52を接続し、直流電源の負極512に防食対象であるステンレス鏡を接続する。環境の変化の激しいところでは、定電位装置を使用して、常に一定の電位を保つようにしても良い。直流電源には、商用電源を直流に変換して用いても良いし、太陽電池や風力発電などを、用いることもできる。
【0035】
【発明の効果】
以上のように、本発明では、ステンレス製道路反射鏡の裏面にステンレスより電気的に卑である金属を接触させてステンレス鏡に対して有効な電位差を保つ流電陽極方式または、補助電極と外部電源を用いてステンレス鏡の電位差を保つようにする外部電源方式を用いることによって耐食性を向上させたものであり、孔食の発生しやすい海岸地域でも良好に効果を発揮し、また、孔食の発生しやすい表面に塗膜が存在する場合でも良好な耐食性を発揮することができ、長期にわたり腐食による道路反射鏡の視認性低下を防いで、安全な自動車の走行に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる道路反射鏡の実施の形態の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の道路反射鏡の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の道路反射鏡の実施の形態の一例で、裏側から見た図を示すものである。
【図4】本発明の道路反射鏡の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図5】本発明の道路反射鏡の実施の形態の一例を示す概略図である。
a 流電電極の流出
b 防食電子の動き
1 ステンレス製道路反射鏡
10 支柱
21 ステンレス基材
22 流電陽極
23 塗膜
31 裏板
32 外気取り入れ孔
41 保湿材
42 支柱に固定するための治具
51 外部電源
511 正極
512 負極
52 補助電極
53 絶縁体
Claims (6)
- ステンレス製の鏡の裏面に、ステンレスより電気的に卑である金属を接触させたことを特徴とする道路反射鏡の耐食性向上方法。
- ステンレスより電気的に卑である金属は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、鉛の中より選ばれた少なくとも一つ以上の金属または、前記金属を含む合金であることを特徴とする請求項1に記載の道路反射鏡の耐食性向上方法。
- 電気的に卑である金属が接触させられた鏡裏面には、裏板が取り付けられており、裏板には外気を通すための開口部が穿設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の道路反射鏡の耐食性向上方法。
- ステンレス製の鏡の裏面に、ステンレスより電気的に卑である金属を接触させており、前記金属には保湿性物質を接触させていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の道路反射鏡の耐食性向上方法。
- ステンレス製の道路反射鏡に直流電源と補助電極を取り付け、ステンレス製の鏡を負極、補助電極を正極として、鏡と補助電極間に通電することにより耐食性を向上させたことを特徴とする道路反射鏡の耐食性向上方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法で耐食性を向上させたことを特徴とする道路反射鏡。
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JP2002312111A JP3962312B2 (ja) | 2002-10-28 | 2002-10-28 | 道路反射鏡の耐食性向上方法及び道路反射鏡 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011026673A (ja) * | 2009-07-27 | 2011-02-10 | Kyushu Univ | 犠牲陽極パネル、及び犠牲陽極パネルを利用した防食方法 |
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2002
- 2002-10-28 JP JP2002312111A patent/JP3962312B2/ja not_active Expired - Fee Related
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