JP2004143529A - 薄膜形成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】中空部を有する複数の基体に対して、各基体の中空部の内壁全体に均一性良く薄膜を形成することのできる装置を提供する。
【解決手段】この薄膜形成装置は、真空容器2と、蒸発物質6を発生させる蒸発源4と、中空部12を有する基体10をその中空部が蒸発源4に向く方向にそれぞれ保持する複数の基体保持具34とを備えている。更に、各基体保持具34を、それに保持した基体10の中空部12が蒸発源4の前方に順次位置するように移動(旋回)させる移動機構50と、各基体保持具34を、それに保持した基体10の中空部12を貫く中心軸44を中心にして回転させる回転機構30とを備えている。
【選択図】 図1
【解決手段】この薄膜形成装置は、真空容器2と、蒸発物質6を発生させる蒸発源4と、中空部12を有する基体10をその中空部が蒸発源4に向く方向にそれぞれ保持する複数の基体保持具34とを備えている。更に、各基体保持具34を、それに保持した基体10の中空部12が蒸発源4の前方に順次位置するように移動(旋回)させる移動機構50と、各基体保持具34を、それに保持した基体10の中空部12を貫く中心軸44を中心にして回転させる回転機構30とを備えている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば金型、工具、筒状部材等の、中空部を有する基体の中空部の内壁に、耐摩耗性等を向上させるための薄膜を形成する薄膜形成装置に関し、より具体的には、基体の中空部の内壁全体に均一性良く薄膜を形成する手段に関する。
【0002】
【従来の技術】
成膜すべき複数の基体を、回転テーブルに乗せて各基体を水平方向に回転させると共に、往復直線運動をさせながら、各基体の側面に薄膜を形成する技術は既に提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、成膜すべき複数の基体を、回転テーブルおよびその上の回転テーブル部材に乗せて各基体を水平方向に自公転させながら、各基体の側面に薄膜を形成する技術も既に提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特許第3199516号公報(段落番号0016、図1、図2)
【特許文献2】
特開昭59−190359号公報(第10頁左下欄、第13頁右上欄、第1図、第2図)
【0004】
上記特許文献2に記載の技術と同様の思想に基づく従来の薄膜形成装置の一例を、図9および図10を参照して説明する。
【0005】
この薄膜形成装置は、真空に排気される真空容器2と、この真空容器2に取り付けられていて、後述する基体保持具14上の基体10に向けて蒸発物質6を発生させる複数台(図示例では2台)の蒸発源4とを備えている。
【0006】
真空容器2内には、モータ24によって回転軸20を介して矢印A(またはその逆)に示す方向(具体的には水平方向)に回転させられる回転テーブル18が設けられている。22は軸受である。
【0007】
回転テーブル18上には、中空部12を有する基体10を、その中空部12が蒸発源4に向く方向にそれぞれ保持するものであって、図示しない回転機構によって矢印B(またはその逆)に示す方向(具体的には水平方向)に回転させられる複数の基体保持具14が設けられている。この各基体10を矢印B方向に回転させる場合の中心軸26(図10参照)は、上記回転軸20に平行である。16は軸受である。
【0008】
各基体10は、例えば、金型(より具体的には雌型)、工具、筒状部材等であり、凹部、筒状部等の中空部12をそれぞれ有している。
【0009】
この薄膜形成装置によれば、上記矢印A方向の回転によって複数の基体10を蒸発源4の前方に順次位置するように水平方向に回転(公転)させると共に、上記矢印B方向の回転によって各基体10を水平方向に回転(自転)させながら、蒸発源4から発生させた蒸発物質6を各基体10の中空部12の内壁に入射堆積させて、当該内壁に薄膜を形成することができる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記薄膜形成装置では、基体10を自公転させるようにしているけれども、両回転はどちらも水平方向の回転であるので、各基体10の中空部12の水平方向に位置する左右の側面や奥に位置する底面に入射する蒸発物質6の角度を変化させて、そこに形成される薄膜の均一化(より具体的には、当該薄膜の膜厚、硬度、密着性等の膜質の均一化。以下同じ)を図ることはできるけれども、各基体10の中空部12の上下に位置する面に入射する蒸発物質6の角度は変化せず一定のままであるので、各基体10の中空部12の上下に位置する面に形成される薄膜の均一化を図ることはできない。従って、各基体10の中空部12の内壁全体で見れば、その上下に位置する面と、それ以外の面とで薄膜の膜質が異なることになり、各基体10の中空部12の内壁に形成される薄膜の膜質が不均一になる。
【0011】
前記特許文献1に記載の技術は、複数の基体10を、上記矢印Aのように公転させる代わりに、往復直線運動させるものであり、この場合も、上記と同様の課題が存在する。
【0012】
そこでこの発明は、中空部を有する複数の基体に対して、各基体の中空部の内壁全体に均一性良く薄膜を形成することのできる薄膜形成装置を提供することを主たる目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る薄膜形成装置は、真空に排気される真空容器と、蒸発物質を発生させる蒸発源と、前記真空容器内に設けられていて、中空部を有する基体をその中空部が前記蒸発源に向く方向にそれぞれ保持する複数の基体保持具とを備えていて、各基体保持具に保持した各基体の中空部の内壁に前記蒸発物質を入射させて薄膜を形成する薄膜形成装置において、前記各基体保持具を、それに保持した基体の中空部が前記蒸発源の前方に順次位置するように移動させる移動機構と、前記各基体保持具を、それに保持した基体の中空部を貫く中心軸を中心にして回転させる回転機構とを備えることを特徴としている。
【0014】
この薄膜形成装置においては、中空部を有する基体は、各基体保持具に、各基体の中空部が蒸発源に向く方向にそれぞれ保持される。
【0015】
そして、上記移動機構によって、各基体保持具に保持された基体を、その中空部が蒸発源の前方に順次位置するように移動させることができる。この移動は、旋回運動でも良いし、往復直線運動でも良い。この移動によって、蒸発源から発生する蒸発物質が各基体の中空部の内壁に入射する際の角度が、当該移動方向において変化するので、当該移動方向において、基体の中空部の内壁に形成される薄膜の均一化を図ることができる。これを第1の均一化作用と呼ぶことにする。
【0016】
更に、上記回転機構によって、各基体保持具に保持された基体を、その中空部を貫く中心軸を中心にして回転させることができる。この回転方向は、前述した従来技術の回転方向(例えば図10に示す矢印B方向)とは全く(例えば90度)異なるものである。この発明において各基体は、上述したように、その中空部が蒸発源に向く方向に保持されているので、各基体が蒸発源の前方に位置してその中空部が蒸発源に向いたときには、当該中空部を貫く中心軸は蒸発源の蒸発面に立てた垂線にほぼ平行(平行を含む。以下同じ)な状態になる。そのような中心軸を中心にして回転した状態になるように、上記回転機構によって各基体を回転させることができる。
【0017】
この回転によって、蒸発源から発生する蒸発物質が各基体の中空部の内壁に入射する状態が、当該回転方向において変化するので、当該回転方向において、基体の中空部の内壁に形成される薄膜の均一化を図ることができる。これを第2の均一化作用と呼ぶことにする。
【0018】
上記第1の均一化作用と第2の均一化作用とは、基体の中空部の内壁に形成される薄膜の均一化を図る方向が異なる。この薄膜形成装置によれば、このような均一化方向の異なる二つの均一化作用を併用することができるので、各基体の中空部の内壁全体に均一性良く薄膜を形成することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明に係る薄膜形成装置の一実施形態を示す横断面図である。図2は、図1中の移動機構および回転機構周りを矢印P方向に見て拡大して部分的に示す側面図である。図3は、図1中の回転機構周りを矢印Q方向に見て拡大して部分的に示す正面図である。図9および図10に示した従来例と同一または相当する部分には同一符号を付し、以下においては当該従来例との相違点を主に説明する。
【0020】
この薄膜形成装置は、前述したような真空容器2およびそれに取り付けられた前述したような蒸発源4を備えている。
【0021】
蒸発源4の数は1台以上で任意である。例えばこの実施形態のように、2台の蒸発源4を、後述する保持具52等を挟んで相対向するように配置しても良いし、必要に応じて、真空容器2の残りの2面にも蒸発源4を配置して合計4台にしても良い。蒸発源4を、真空容器2の同一面の上下方向に複数台(即ち複数段に)配置しても良い。蒸発源4を多くする方が、成膜のスループットや成膜の均一性等がより向上する。後述する他の実施形態においても同様である。
【0022】
各蒸発源4は、この実施形態では、アーク放電によって陰極5を加熱して陰極物質を蒸発物質6として蒸発させるアーク式蒸発源である。各陰極5と陽極兼用の真空容器2との間にはアーク電源8が接続されている。7は絶縁物である。但し各蒸発源4は、イオン等によってターゲットをスパッタしてスパッタ粒子を蒸発物質6として発生させるスパッタ式蒸発源等でも良い。後述する他の実施形態においても同様である。
【0023】
このような蒸発源4を用いて、各基体10の中空部12の内壁に、例えばTiN、TiCN、TiAlN、CrN等の薄膜を形成することができる。これによって、各基体10の耐摩耗性、摺動性等を向上させることができる。なお、上記のような化合物薄膜を形成するときは、蒸発物質6と反応する反応性ガスを真空容器2内に導入すれば良い。
【0024】
真空容器2内には、前述したような中空部12を有する基体10を、その中空部12が蒸発源4に向く方向にそれぞれ保持する複数の基体保持具34が設けられている。各基体保持具34は、より具体的には、この実施形態では、各基体10の中空部12が水平外向きに向くように、各基体10をそれぞれ保持する。
【0025】
この薄膜形成装置は、上記基体保持具34を、それに保持した基体10の中空部12が各蒸発源4の前方に順次位置するように移動させる(この実施形態では旋回運動させる)移動機構50を備えている。
【0026】
移動機構50は、この例では、上記各基体保持具34を保持する円形の保持具52と、それの中心部に接続された回転軸54と、この回転軸54を介して保持具52を矢印A(またはその逆でも良い)に示す方向(この実施形態では水平方向)に回転させるモータ58とを備えている。モータ58は真空容器2外に設けられており、回転軸54が真空容器2を貫通する部分には真空シール機能を有する軸受56が設けられている。
【0027】
この薄膜形成装置は、更に、各基体保持具34を、それに保持した基体10の中空部12を貫く中心軸44を中心にして矢印C(またはその逆でも良い)に示す方向に回転させる回転機構30を備えている。
【0028】
回転機構30は、この実施形態では、各基体保持具34をその軸35の部分で上記保持具52から回転自在に支持する軸受36と、各基体保持具34の外部に放射状に張り出した複数本のアーム38と、支柱42に固定されていてこのアーム38に当接する当接部材40とを備えている。当接部材40およびその支柱42は、この実施形態では図1に示すように、保持具52を挟んで相対向する2箇所に設けているが、それに限られるものではなく、1箇所でも、3箇所以上でも良い。多くする方が、各基体保持具34をより頻繁に回転させることができるので、成膜の均一性向上の観点からは好ましい。後述する他の実施形態においても同様である。
【0029】
移動機構50によって保持具52およびそれに取り付けた基体保持具34を矢印Aに示すように回転させると、図2および図3に示すように、当接部材40の上方に来た基体保持具34のアーム38が当接部材40に当接して、当該基体保持具34は矢印Cに示すように、保持している基体10と共にその中心軸44を中心にして回転させられる。この例では当接部材40を2箇所に設けているので、各基体保持具34は円周上の2箇所で上記のようにそれぞれ回転させられる。
【0030】
回転機構30に、上記のようなアーム38および当接部材40を用いると、構造を簡略化することができる。但し、モータ等を用いて各基体保持具34を上記のように回転させるようにしても良い。後述する他の実施形態においても同様である。
【0031】
この薄膜形成装置においては、前述したように、中空部12を有する基体10は、各基体保持具34に、各基体10の中空部12が蒸発源4に向く方向にそれぞれ保持される。
【0032】
そして、上記移動機構50によって、各基体保持具34に保持された基体10を、矢印Aに示すように、その中空部12が各蒸発源4の前方に順次位置するように旋回させることができる。この旋回によって、蒸発源4から発生する蒸発物質6が各基体10の中空部12の内壁に入射する際の角度が、当該旋回方向において変化するので、当該旋回方向において、基体10の中空部12の内壁に形成される薄膜の均一化を図ることができる。即ち、各基体保持具34の矢印A方向の旋回に伴って、基体10の中空部12の水平方向に位置する左右の面に入射する蒸発物質6の角度が、負の角度から角度0を経て正の角度へと連続的に変化することになるので、中空部12の内壁に形成される薄膜の膜質の均一化を図ることができる。これが第1の均一化作用である。もっともこの第1の均一化作用と同様の作用は、前述した従来技術でも奏することができる。
【0033】
この薄膜形成装置においては、更に、上記回転機構30によって、各基体保持具34に保持された基体10を、矢印Cに示すように、その中空部12を貫く中心軸44を中心にして回転させることができる。この回転方向は、前述した従来技術の回転方向(例えば図10に示す矢印B方向)とは全く(この例では90度)異なるものである。この実施形態の装置において各基体10は、上述したように、その中空部12が蒸発源4に向く方向に保持されているので、各基体10が蒸発源4の前方に位置してその中空部12が蒸発源4に向いたときには、当該中空部12を貫く中心軸44は蒸発源4の蒸発面に立てた垂線にほぼ平行な状態になる。そのような中心軸44を中心にして回転した状態になるように、上記回転機構30によって各基体10を矢印Cに示すように回転させることができる。この回転は、必ずしも蒸発源4の前方で行う必要はない。各基体保持具34が矢印Aのように旋回させられる間のどこかで回転させれば良い。
【0034】
この矢印Cに示すような回転によって、蒸発源4から発生する蒸発物質6が各基体10の中空部12の内壁に入射する状態が、当該回転方向において変化するので、当該回転方向において、基体10の中空部12の内壁に形成される薄膜の均一化を図ることができる。即ち、各基体保持具34の矢印C方向の回転に伴って、基体10の中空部12の内壁の面は、水平方向に対して上下にも左右にも位置するようになり、その様々な位置をとる面に対して蒸発物質6が入射することになるので、中空部12の内壁に形成される薄膜の膜質の均一化を図ることができる。これが第2の均一化作用である。
【0035】
上記第1の均一化作用と第2の均一化作用とは、基体10の中空部12の内壁に形成される薄膜の均一化を図る方向が異なる。ほぼ90度異なる。この点で、前述した従来技術とは全く異なる。この薄膜形成装置によれば、このような均一化方向の異なる二つの均一化作用を併用することができるので、各基体10の中空部12の内壁全体に均一性良く薄膜を形成することができる。
【0036】
上記第2の均一化作用を更に説明すると、図10等に示した従来技術では、基体10を矢印Bのように回転させても、中空部12の内壁の上面または下面に蒸発源4から入射する蒸発物質6の入射角度は変わらない。例えば、中空部12の中心よりも蒸発源4の中心が下方にずれて位置していると、中空部12の上面への入射角度は大きく、下面への入射角度は小さい(あるいは陰になって成膜されない)ままである。中空部12の中心よりも蒸発源4の中心が上方にずれて位置していると、上記と逆になる。従って、当該上面または下面に対しては、基体10を矢印Bのように回転させても効果はない。基体10を上下に複数段積んで配置することもあり、その場合も、中空部12の中心と蒸発源4の中心とが上下方向にずれることになるので、上記のような問題が生じる。
【0037】
これに対して、この実施形態の薄膜形成装置では、上記のように、各基体保持具34の矢印C方向の回転に伴って、基体10の中空部12の面は、水平方向に対して上下にも左右にも位置するようになるので、中空部12の中心と蒸発源4の中心とが上下方向にずれていても、基体10の矢印C方向の回転によって、中空部12のどの面にも蒸発物質が万遍なく入射するようになり、中空部12の内壁に形成される膜質の均一化を図ることができる。従って、この薄膜形成装置では、上下方向に積むことのできる基体10の段数の自由度が従来技術に比べて遙かに高い。
【0038】
上記回転機構30には、例えば図4に示す例のように、基体保持具34の外周部に形成された歯車60と、支柱64に固定されていてこの歯車60と噛み合うラック62との組み合わせを用いても良い。ラック62の平面形状は、基体保持具34の矢印A方向の旋回に対応した円弧状をしている。基体保持具34が前述したように矢印A方向に移動(旋回)すると、ラック62の部分で、各基体保持具34は前記と同様に矢印C方向に回転させられる。ラック62は、保持具52の周囲の全周に設けても良い。そのようにすると、各基体保持具34を矢印A方向に旋回させているときに各基体保持具34を常に矢印C方向に回転させることができるので、成膜の均一性をより高めることができる。
【0039】
各基体保持具34を、それに保持した基体10の中空部12が蒸発源4の前方に順次位置するように移動させる移動機構50は、上記実施形態のように各基体保持具34を旋回運動させるものの他に、各基体保持具34を往復直線運動させるものでも良い。その場合の実施形態を次に説明する。
【0040】
図5は、この発明に係る薄膜形成装置の他の実施形態を示す横断面図である。図6は、図5中の移動機構および回転機構周りを横から見て拡大して部分的に示す縦断面図であり、図5のH−H断面に概ね相当する。図7は、図5中の回転機構周りを拡大して部分的に示す正面図である。以下においては、図1〜図4に示した実施形態との相違点を主体に説明する。
【0041】
この薄膜形成装置は、真空弁66によって仕切られた複数の真空容器2を備えており、この実施形態ではその内の一つに、上記蒸発源4を取り付けている。この蒸発源4は、図示例では1台であるけれども、それに限られるものではなく、1台以上で任意である。このような薄膜形成装置は、基体10を一方から他方へと直線状に搬送して連続的に処理するのに適している。
【0042】
移動機構50は、この実施形態では、枠状の保持具52を有しており、その上下の辺間をつなぐ複数の支柱部53に、前記基体保持具34が軸受36を介して矢印C方向に回転自在に取り付けられている。但し、保持具52は枠状以外のもの、例えば平板状のものでも良い。
【0043】
この保持具52の例えば下端部には動力伝達部68が連結されており、この動力伝達部68を回転軸54およびモータ58を介して矢印D(図6参照)に示すように往復回転させることによって、保持具52を真空容器2内で矢印Eに示すように往復直線運動させることができる。56は真空シール機能を有する軸受である。保持具52のこの直線運動は、ガイド70によってガイドされる。動力伝達部68は、例えば、保持具52と接して動力を伝達するローラでも良いし、保持具52に設けたラックと噛み合う歯車でも良い。
【0044】
各基体保持具34を回転させる回転機構30は、前記実施形態と同様、各基体保持具34から張り出した複数本のアーム38およびそれに当接する当接部材40を有している。当接部材40は支柱42によって支えられている。この当接部材40および支柱42を設ける箇所は、1箇所に限られるものではない。
【0045】
上記移動機構50によって、保持具52およびそれに取り付けた基体保持具34を矢印Eに示すように往復直線運動させると、図6および図7に示すように、当接部材40の上方に来た基体保持具34のアーム38が当接部材40に当接して、各基体保持具34は矢印Cに示すように、基体10の中空部12を貫く中心軸44を中心にして回転(この実施形態では往復回転)させられる。
【0046】
この薄膜形成装置においても、前記図1等に示した実施形態の場合と同様の作用効果を奏する。即ち、上記矢印Eに示すような移動によって、蒸発源4から発生する蒸発物質6が各基体10の中空部12の内壁に入射する際の角度が、当該移動方向において変化するので、当該移動方向において、基体10の中空部12の内壁に形成される薄膜の均一化を図ることができる。これが第1の均一化作用である。
【0047】
しかも上記矢印Cに示すような回転によって、蒸発源4から発生する蒸発物質6が各基体10の中空部12の内壁に入射する状態が、当該回転方向において変化するので、当該回転方向において、基体10の中空部12の内壁に形成される薄膜の均一化を図ることができる。これが第2の均一化作用である。
【0048】
上記第1の均一化作用と第2の均一化作用とは、前記実施形態の場合と同様、基体10の中空部12の内壁に形成される薄膜の均一化を図る方向が異なる。この薄膜形成装置によれば、このような均一化方向の異なる二つの均一化作用を併用することができるので、各基体10の中空部12の内壁全体に均一性良く薄膜を形成することができる。
【0049】
回転機構30には、図4に示した例の場合と同様、図8に示す例のように、基体保持具34の外周部に設けた歯車60と、それに噛み合うラック62との組み合わせを用いても良い。ラック62は、この例では直線状をしている。その他は、図4の所で説明したのと同様である。
【0050】
【発明の効果】
以上のようにこの発明によれば、移動機構による上記第1の均一化作用と回転機構による上記第2の均一化作用とは、基体の中空部の内壁に形成される薄膜の均一化を図る方向が異なり、このような均一化方向の異なる二つの均一化作用を併用することができるので、各基体の中空部の内壁全体に均一性良く薄膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る薄膜形成装置の一実施形態を示す横断面図である。
【図2】図1中の移動機構および回転機構周りを矢印P方向に見て拡大して部分的に示す側面図である。
【図3】図1中の回転機構周りを矢印Q方向に見て拡大して部分的に示す正面図である。
【図4】図1の装置に適用する回転機構の他の例を示す正面図であり、図3の例に対応している。
【図5】この発明に係る薄膜形成装置の他の実施形態を示す横断面図である。
【図6】図5中の移動機構および回転機構周りを横から見て拡大して部分的に示す縦断面図であり、図5のH−H断面に概ね相当する。
【図7】図5中の回転機構周りを拡大して部分的に示す正面図である。
【図8】図5の装置に適用する回転機構の他の例を示す正面図であり、図7の例に対応している。
【図9】従来の薄膜形成装置の一例を示す横断面図である。
【図10】図9中の回転テーブル周りを示す縦断面図である。
【符号の説明】
2 真空容器
4 蒸発源
6 蒸発物質
10 基体
12 中空部
30 回転機構
34 基体保持具
44 中心軸
50 移動機構
58 モータ
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば金型、工具、筒状部材等の、中空部を有する基体の中空部の内壁に、耐摩耗性等を向上させるための薄膜を形成する薄膜形成装置に関し、より具体的には、基体の中空部の内壁全体に均一性良く薄膜を形成する手段に関する。
【0002】
【従来の技術】
成膜すべき複数の基体を、回転テーブルに乗せて各基体を水平方向に回転させると共に、往復直線運動をさせながら、各基体の側面に薄膜を形成する技術は既に提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、成膜すべき複数の基体を、回転テーブルおよびその上の回転テーブル部材に乗せて各基体を水平方向に自公転させながら、各基体の側面に薄膜を形成する技術も既に提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特許第3199516号公報(段落番号0016、図1、図2)
【特許文献2】
特開昭59−190359号公報(第10頁左下欄、第13頁右上欄、第1図、第2図)
【0004】
上記特許文献2に記載の技術と同様の思想に基づく従来の薄膜形成装置の一例を、図9および図10を参照して説明する。
【0005】
この薄膜形成装置は、真空に排気される真空容器2と、この真空容器2に取り付けられていて、後述する基体保持具14上の基体10に向けて蒸発物質6を発生させる複数台(図示例では2台)の蒸発源4とを備えている。
【0006】
真空容器2内には、モータ24によって回転軸20を介して矢印A(またはその逆)に示す方向(具体的には水平方向)に回転させられる回転テーブル18が設けられている。22は軸受である。
【0007】
回転テーブル18上には、中空部12を有する基体10を、その中空部12が蒸発源4に向く方向にそれぞれ保持するものであって、図示しない回転機構によって矢印B(またはその逆)に示す方向(具体的には水平方向)に回転させられる複数の基体保持具14が設けられている。この各基体10を矢印B方向に回転させる場合の中心軸26(図10参照)は、上記回転軸20に平行である。16は軸受である。
【0008】
各基体10は、例えば、金型(より具体的には雌型)、工具、筒状部材等であり、凹部、筒状部等の中空部12をそれぞれ有している。
【0009】
この薄膜形成装置によれば、上記矢印A方向の回転によって複数の基体10を蒸発源4の前方に順次位置するように水平方向に回転(公転)させると共に、上記矢印B方向の回転によって各基体10を水平方向に回転(自転)させながら、蒸発源4から発生させた蒸発物質6を各基体10の中空部12の内壁に入射堆積させて、当該内壁に薄膜を形成することができる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記薄膜形成装置では、基体10を自公転させるようにしているけれども、両回転はどちらも水平方向の回転であるので、各基体10の中空部12の水平方向に位置する左右の側面や奥に位置する底面に入射する蒸発物質6の角度を変化させて、そこに形成される薄膜の均一化(より具体的には、当該薄膜の膜厚、硬度、密着性等の膜質の均一化。以下同じ)を図ることはできるけれども、各基体10の中空部12の上下に位置する面に入射する蒸発物質6の角度は変化せず一定のままであるので、各基体10の中空部12の上下に位置する面に形成される薄膜の均一化を図ることはできない。従って、各基体10の中空部12の内壁全体で見れば、その上下に位置する面と、それ以外の面とで薄膜の膜質が異なることになり、各基体10の中空部12の内壁に形成される薄膜の膜質が不均一になる。
【0011】
前記特許文献1に記載の技術は、複数の基体10を、上記矢印Aのように公転させる代わりに、往復直線運動させるものであり、この場合も、上記と同様の課題が存在する。
【0012】
そこでこの発明は、中空部を有する複数の基体に対して、各基体の中空部の内壁全体に均一性良く薄膜を形成することのできる薄膜形成装置を提供することを主たる目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る薄膜形成装置は、真空に排気される真空容器と、蒸発物質を発生させる蒸発源と、前記真空容器内に設けられていて、中空部を有する基体をその中空部が前記蒸発源に向く方向にそれぞれ保持する複数の基体保持具とを備えていて、各基体保持具に保持した各基体の中空部の内壁に前記蒸発物質を入射させて薄膜を形成する薄膜形成装置において、前記各基体保持具を、それに保持した基体の中空部が前記蒸発源の前方に順次位置するように移動させる移動機構と、前記各基体保持具を、それに保持した基体の中空部を貫く中心軸を中心にして回転させる回転機構とを備えることを特徴としている。
【0014】
この薄膜形成装置においては、中空部を有する基体は、各基体保持具に、各基体の中空部が蒸発源に向く方向にそれぞれ保持される。
【0015】
そして、上記移動機構によって、各基体保持具に保持された基体を、その中空部が蒸発源の前方に順次位置するように移動させることができる。この移動は、旋回運動でも良いし、往復直線運動でも良い。この移動によって、蒸発源から発生する蒸発物質が各基体の中空部の内壁に入射する際の角度が、当該移動方向において変化するので、当該移動方向において、基体の中空部の内壁に形成される薄膜の均一化を図ることができる。これを第1の均一化作用と呼ぶことにする。
【0016】
更に、上記回転機構によって、各基体保持具に保持された基体を、その中空部を貫く中心軸を中心にして回転させることができる。この回転方向は、前述した従来技術の回転方向(例えば図10に示す矢印B方向)とは全く(例えば90度)異なるものである。この発明において各基体は、上述したように、その中空部が蒸発源に向く方向に保持されているので、各基体が蒸発源の前方に位置してその中空部が蒸発源に向いたときには、当該中空部を貫く中心軸は蒸発源の蒸発面に立てた垂線にほぼ平行(平行を含む。以下同じ)な状態になる。そのような中心軸を中心にして回転した状態になるように、上記回転機構によって各基体を回転させることができる。
【0017】
この回転によって、蒸発源から発生する蒸発物質が各基体の中空部の内壁に入射する状態が、当該回転方向において変化するので、当該回転方向において、基体の中空部の内壁に形成される薄膜の均一化を図ることができる。これを第2の均一化作用と呼ぶことにする。
【0018】
上記第1の均一化作用と第2の均一化作用とは、基体の中空部の内壁に形成される薄膜の均一化を図る方向が異なる。この薄膜形成装置によれば、このような均一化方向の異なる二つの均一化作用を併用することができるので、各基体の中空部の内壁全体に均一性良く薄膜を形成することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明に係る薄膜形成装置の一実施形態を示す横断面図である。図2は、図1中の移動機構および回転機構周りを矢印P方向に見て拡大して部分的に示す側面図である。図3は、図1中の回転機構周りを矢印Q方向に見て拡大して部分的に示す正面図である。図9および図10に示した従来例と同一または相当する部分には同一符号を付し、以下においては当該従来例との相違点を主に説明する。
【0020】
この薄膜形成装置は、前述したような真空容器2およびそれに取り付けられた前述したような蒸発源4を備えている。
【0021】
蒸発源4の数は1台以上で任意である。例えばこの実施形態のように、2台の蒸発源4を、後述する保持具52等を挟んで相対向するように配置しても良いし、必要に応じて、真空容器2の残りの2面にも蒸発源4を配置して合計4台にしても良い。蒸発源4を、真空容器2の同一面の上下方向に複数台(即ち複数段に)配置しても良い。蒸発源4を多くする方が、成膜のスループットや成膜の均一性等がより向上する。後述する他の実施形態においても同様である。
【0022】
各蒸発源4は、この実施形態では、アーク放電によって陰極5を加熱して陰極物質を蒸発物質6として蒸発させるアーク式蒸発源である。各陰極5と陽極兼用の真空容器2との間にはアーク電源8が接続されている。7は絶縁物である。但し各蒸発源4は、イオン等によってターゲットをスパッタしてスパッタ粒子を蒸発物質6として発生させるスパッタ式蒸発源等でも良い。後述する他の実施形態においても同様である。
【0023】
このような蒸発源4を用いて、各基体10の中空部12の内壁に、例えばTiN、TiCN、TiAlN、CrN等の薄膜を形成することができる。これによって、各基体10の耐摩耗性、摺動性等を向上させることができる。なお、上記のような化合物薄膜を形成するときは、蒸発物質6と反応する反応性ガスを真空容器2内に導入すれば良い。
【0024】
真空容器2内には、前述したような中空部12を有する基体10を、その中空部12が蒸発源4に向く方向にそれぞれ保持する複数の基体保持具34が設けられている。各基体保持具34は、より具体的には、この実施形態では、各基体10の中空部12が水平外向きに向くように、各基体10をそれぞれ保持する。
【0025】
この薄膜形成装置は、上記基体保持具34を、それに保持した基体10の中空部12が各蒸発源4の前方に順次位置するように移動させる(この実施形態では旋回運動させる)移動機構50を備えている。
【0026】
移動機構50は、この例では、上記各基体保持具34を保持する円形の保持具52と、それの中心部に接続された回転軸54と、この回転軸54を介して保持具52を矢印A(またはその逆でも良い)に示す方向(この実施形態では水平方向)に回転させるモータ58とを備えている。モータ58は真空容器2外に設けられており、回転軸54が真空容器2を貫通する部分には真空シール機能を有する軸受56が設けられている。
【0027】
この薄膜形成装置は、更に、各基体保持具34を、それに保持した基体10の中空部12を貫く中心軸44を中心にして矢印C(またはその逆でも良い)に示す方向に回転させる回転機構30を備えている。
【0028】
回転機構30は、この実施形態では、各基体保持具34をその軸35の部分で上記保持具52から回転自在に支持する軸受36と、各基体保持具34の外部に放射状に張り出した複数本のアーム38と、支柱42に固定されていてこのアーム38に当接する当接部材40とを備えている。当接部材40およびその支柱42は、この実施形態では図1に示すように、保持具52を挟んで相対向する2箇所に設けているが、それに限られるものではなく、1箇所でも、3箇所以上でも良い。多くする方が、各基体保持具34をより頻繁に回転させることができるので、成膜の均一性向上の観点からは好ましい。後述する他の実施形態においても同様である。
【0029】
移動機構50によって保持具52およびそれに取り付けた基体保持具34を矢印Aに示すように回転させると、図2および図3に示すように、当接部材40の上方に来た基体保持具34のアーム38が当接部材40に当接して、当該基体保持具34は矢印Cに示すように、保持している基体10と共にその中心軸44を中心にして回転させられる。この例では当接部材40を2箇所に設けているので、各基体保持具34は円周上の2箇所で上記のようにそれぞれ回転させられる。
【0030】
回転機構30に、上記のようなアーム38および当接部材40を用いると、構造を簡略化することができる。但し、モータ等を用いて各基体保持具34を上記のように回転させるようにしても良い。後述する他の実施形態においても同様である。
【0031】
この薄膜形成装置においては、前述したように、中空部12を有する基体10は、各基体保持具34に、各基体10の中空部12が蒸発源4に向く方向にそれぞれ保持される。
【0032】
そして、上記移動機構50によって、各基体保持具34に保持された基体10を、矢印Aに示すように、その中空部12が各蒸発源4の前方に順次位置するように旋回させることができる。この旋回によって、蒸発源4から発生する蒸発物質6が各基体10の中空部12の内壁に入射する際の角度が、当該旋回方向において変化するので、当該旋回方向において、基体10の中空部12の内壁に形成される薄膜の均一化を図ることができる。即ち、各基体保持具34の矢印A方向の旋回に伴って、基体10の中空部12の水平方向に位置する左右の面に入射する蒸発物質6の角度が、負の角度から角度0を経て正の角度へと連続的に変化することになるので、中空部12の内壁に形成される薄膜の膜質の均一化を図ることができる。これが第1の均一化作用である。もっともこの第1の均一化作用と同様の作用は、前述した従来技術でも奏することができる。
【0033】
この薄膜形成装置においては、更に、上記回転機構30によって、各基体保持具34に保持された基体10を、矢印Cに示すように、その中空部12を貫く中心軸44を中心にして回転させることができる。この回転方向は、前述した従来技術の回転方向(例えば図10に示す矢印B方向)とは全く(この例では90度)異なるものである。この実施形態の装置において各基体10は、上述したように、その中空部12が蒸発源4に向く方向に保持されているので、各基体10が蒸発源4の前方に位置してその中空部12が蒸発源4に向いたときには、当該中空部12を貫く中心軸44は蒸発源4の蒸発面に立てた垂線にほぼ平行な状態になる。そのような中心軸44を中心にして回転した状態になるように、上記回転機構30によって各基体10を矢印Cに示すように回転させることができる。この回転は、必ずしも蒸発源4の前方で行う必要はない。各基体保持具34が矢印Aのように旋回させられる間のどこかで回転させれば良い。
【0034】
この矢印Cに示すような回転によって、蒸発源4から発生する蒸発物質6が各基体10の中空部12の内壁に入射する状態が、当該回転方向において変化するので、当該回転方向において、基体10の中空部12の内壁に形成される薄膜の均一化を図ることができる。即ち、各基体保持具34の矢印C方向の回転に伴って、基体10の中空部12の内壁の面は、水平方向に対して上下にも左右にも位置するようになり、その様々な位置をとる面に対して蒸発物質6が入射することになるので、中空部12の内壁に形成される薄膜の膜質の均一化を図ることができる。これが第2の均一化作用である。
【0035】
上記第1の均一化作用と第2の均一化作用とは、基体10の中空部12の内壁に形成される薄膜の均一化を図る方向が異なる。ほぼ90度異なる。この点で、前述した従来技術とは全く異なる。この薄膜形成装置によれば、このような均一化方向の異なる二つの均一化作用を併用することができるので、各基体10の中空部12の内壁全体に均一性良く薄膜を形成することができる。
【0036】
上記第2の均一化作用を更に説明すると、図10等に示した従来技術では、基体10を矢印Bのように回転させても、中空部12の内壁の上面または下面に蒸発源4から入射する蒸発物質6の入射角度は変わらない。例えば、中空部12の中心よりも蒸発源4の中心が下方にずれて位置していると、中空部12の上面への入射角度は大きく、下面への入射角度は小さい(あるいは陰になって成膜されない)ままである。中空部12の中心よりも蒸発源4の中心が上方にずれて位置していると、上記と逆になる。従って、当該上面または下面に対しては、基体10を矢印Bのように回転させても効果はない。基体10を上下に複数段積んで配置することもあり、その場合も、中空部12の中心と蒸発源4の中心とが上下方向にずれることになるので、上記のような問題が生じる。
【0037】
これに対して、この実施形態の薄膜形成装置では、上記のように、各基体保持具34の矢印C方向の回転に伴って、基体10の中空部12の面は、水平方向に対して上下にも左右にも位置するようになるので、中空部12の中心と蒸発源4の中心とが上下方向にずれていても、基体10の矢印C方向の回転によって、中空部12のどの面にも蒸発物質が万遍なく入射するようになり、中空部12の内壁に形成される膜質の均一化を図ることができる。従って、この薄膜形成装置では、上下方向に積むことのできる基体10の段数の自由度が従来技術に比べて遙かに高い。
【0038】
上記回転機構30には、例えば図4に示す例のように、基体保持具34の外周部に形成された歯車60と、支柱64に固定されていてこの歯車60と噛み合うラック62との組み合わせを用いても良い。ラック62の平面形状は、基体保持具34の矢印A方向の旋回に対応した円弧状をしている。基体保持具34が前述したように矢印A方向に移動(旋回)すると、ラック62の部分で、各基体保持具34は前記と同様に矢印C方向に回転させられる。ラック62は、保持具52の周囲の全周に設けても良い。そのようにすると、各基体保持具34を矢印A方向に旋回させているときに各基体保持具34を常に矢印C方向に回転させることができるので、成膜の均一性をより高めることができる。
【0039】
各基体保持具34を、それに保持した基体10の中空部12が蒸発源4の前方に順次位置するように移動させる移動機構50は、上記実施形態のように各基体保持具34を旋回運動させるものの他に、各基体保持具34を往復直線運動させるものでも良い。その場合の実施形態を次に説明する。
【0040】
図5は、この発明に係る薄膜形成装置の他の実施形態を示す横断面図である。図6は、図5中の移動機構および回転機構周りを横から見て拡大して部分的に示す縦断面図であり、図5のH−H断面に概ね相当する。図7は、図5中の回転機構周りを拡大して部分的に示す正面図である。以下においては、図1〜図4に示した実施形態との相違点を主体に説明する。
【0041】
この薄膜形成装置は、真空弁66によって仕切られた複数の真空容器2を備えており、この実施形態ではその内の一つに、上記蒸発源4を取り付けている。この蒸発源4は、図示例では1台であるけれども、それに限られるものではなく、1台以上で任意である。このような薄膜形成装置は、基体10を一方から他方へと直線状に搬送して連続的に処理するのに適している。
【0042】
移動機構50は、この実施形態では、枠状の保持具52を有しており、その上下の辺間をつなぐ複数の支柱部53に、前記基体保持具34が軸受36を介して矢印C方向に回転自在に取り付けられている。但し、保持具52は枠状以外のもの、例えば平板状のものでも良い。
【0043】
この保持具52の例えば下端部には動力伝達部68が連結されており、この動力伝達部68を回転軸54およびモータ58を介して矢印D(図6参照)に示すように往復回転させることによって、保持具52を真空容器2内で矢印Eに示すように往復直線運動させることができる。56は真空シール機能を有する軸受である。保持具52のこの直線運動は、ガイド70によってガイドされる。動力伝達部68は、例えば、保持具52と接して動力を伝達するローラでも良いし、保持具52に設けたラックと噛み合う歯車でも良い。
【0044】
各基体保持具34を回転させる回転機構30は、前記実施形態と同様、各基体保持具34から張り出した複数本のアーム38およびそれに当接する当接部材40を有している。当接部材40は支柱42によって支えられている。この当接部材40および支柱42を設ける箇所は、1箇所に限られるものではない。
【0045】
上記移動機構50によって、保持具52およびそれに取り付けた基体保持具34を矢印Eに示すように往復直線運動させると、図6および図7に示すように、当接部材40の上方に来た基体保持具34のアーム38が当接部材40に当接して、各基体保持具34は矢印Cに示すように、基体10の中空部12を貫く中心軸44を中心にして回転(この実施形態では往復回転)させられる。
【0046】
この薄膜形成装置においても、前記図1等に示した実施形態の場合と同様の作用効果を奏する。即ち、上記矢印Eに示すような移動によって、蒸発源4から発生する蒸発物質6が各基体10の中空部12の内壁に入射する際の角度が、当該移動方向において変化するので、当該移動方向において、基体10の中空部12の内壁に形成される薄膜の均一化を図ることができる。これが第1の均一化作用である。
【0047】
しかも上記矢印Cに示すような回転によって、蒸発源4から発生する蒸発物質6が各基体10の中空部12の内壁に入射する状態が、当該回転方向において変化するので、当該回転方向において、基体10の中空部12の内壁に形成される薄膜の均一化を図ることができる。これが第2の均一化作用である。
【0048】
上記第1の均一化作用と第2の均一化作用とは、前記実施形態の場合と同様、基体10の中空部12の内壁に形成される薄膜の均一化を図る方向が異なる。この薄膜形成装置によれば、このような均一化方向の異なる二つの均一化作用を併用することができるので、各基体10の中空部12の内壁全体に均一性良く薄膜を形成することができる。
【0049】
回転機構30には、図4に示した例の場合と同様、図8に示す例のように、基体保持具34の外周部に設けた歯車60と、それに噛み合うラック62との組み合わせを用いても良い。ラック62は、この例では直線状をしている。その他は、図4の所で説明したのと同様である。
【0050】
【発明の効果】
以上のようにこの発明によれば、移動機構による上記第1の均一化作用と回転機構による上記第2の均一化作用とは、基体の中空部の内壁に形成される薄膜の均一化を図る方向が異なり、このような均一化方向の異なる二つの均一化作用を併用することができるので、各基体の中空部の内壁全体に均一性良く薄膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る薄膜形成装置の一実施形態を示す横断面図である。
【図2】図1中の移動機構および回転機構周りを矢印P方向に見て拡大して部分的に示す側面図である。
【図3】図1中の回転機構周りを矢印Q方向に見て拡大して部分的に示す正面図である。
【図4】図1の装置に適用する回転機構の他の例を示す正面図であり、図3の例に対応している。
【図5】この発明に係る薄膜形成装置の他の実施形態を示す横断面図である。
【図6】図5中の移動機構および回転機構周りを横から見て拡大して部分的に示す縦断面図であり、図5のH−H断面に概ね相当する。
【図7】図5中の回転機構周りを拡大して部分的に示す正面図である。
【図8】図5の装置に適用する回転機構の他の例を示す正面図であり、図7の例に対応している。
【図9】従来の薄膜形成装置の一例を示す横断面図である。
【図10】図9中の回転テーブル周りを示す縦断面図である。
【符号の説明】
2 真空容器
4 蒸発源
6 蒸発物質
10 基体
12 中空部
30 回転機構
34 基体保持具
44 中心軸
50 移動機構
58 モータ
Claims (1)
- 真空に排気される真空容器と、蒸発物質を発生させる蒸発源と、前記真空容器内に設けられていて、中空部を有する基体をその中空部が前記蒸発源に向く方向にそれぞれ保持する複数の基体保持具とを備えていて、各基体保持具に保持した各基体の中空部の内壁に前記蒸発物質を入射させて薄膜を形成する薄膜形成装置において、前記各基体保持具を、それに保持した基体の中空部が前記蒸発源の前方に順次位置するように移動させる移動機構と、前記各基体保持具を、それに保持した基体の中空部を貫く中心軸を中心にして回転させる回転機構とを備えることを特徴とする薄膜形成装置。
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