JP2004142309A - 伸縮型画像形成装置のキャッピング機構及びそのキャッピング機構を備えた伸縮型画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】伸縮型画像形成装置にキャッピング機構を備えさせる場合において、キャッピング動作のタイミングを適切に設定することで実用性の高いキャッピング機構及びそのキャッピング機構を備えた伸縮型画像形成装置を提供する。
【解決手段】センタケーシングに対してスライド移動自在なサイドケーシング22の底板上にカム部92を設ける。サイドケーシング22をスライド移動させてケーシングを伸長姿勢から収縮姿勢にする際、カム部92の傾斜面92aがキャッピング部材91の下面に当接してこのキャッピング部材91をインクヘッド41に向けて上昇移動させる。ケーシングが収縮姿勢となった際、キャッピング部材91がインクヘッド41の下面に押圧され、インクノズルが気密状態に覆われる。
【選択図】 図6
【解決手段】センタケーシングに対してスライド移動自在なサイドケーシング22の底板上にカム部92を設ける。サイドケーシング22をスライド移動させてケーシングを伸長姿勢から収縮姿勢にする際、カム部92の傾斜面92aがキャッピング部材91の下面に当接してこのキャッピング部材91をインクヘッド41に向けて上昇移動させる。ケーシングが収縮姿勢となった際、キャッピング部材91がインクヘッド41の下面に押圧され、インクノズルが気密状態に覆われる。
【選択図】 図6
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、伸縮型画像形成装置に備えられた記録ヘッドをキャッピングするための機構及びそのキャッピング機構を備えた伸縮型画像形成装置に係る。特に、本発明は、伸縮型画像形成装置にキャッピング機構を備えさせる場合の構成の具体化を図るものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えば下記の特許文献1や特許文献2に開示されているインクジェットタイプの伸縮型画像形成装置(以下、伸縮型プリンタと呼ぶ)が提案されている。この種のプリンタは、使用時には記録用紙のサイズに応じて伸縮させることが可能である一方、非使用時には最も収縮した状態とすることによって携帯性に優れた形状となり、モバイル機器としての利用価値が高い。
【0003】
具体的に各特許文献に開示されている伸縮型プリンタは、互いにスライド可能に嵌め合わされた複数のケーシング部材によってケーシング(筐体)が形成され、このケーシングの内部空間に画像形成機構が収容された構成となっている。
【0004】
そして、非使用時には上記内部空間を最も小さくするようにケーシング部材をスライド(収縮方向へスライド)させることでプリンタの小型化が図れる。一方、使用時には、記録用紙のサイズに応じてケーシング部材をスライド(伸長方向へスライド)させることにより、給紙口及び排紙口の開口幅を記録用紙の幅に合わせて広げると共にその記録用紙の幅方向全体に対する画像形成動作が可能となるように画像形成機構の画像形成可能エリアも広げるようにしている。このようにケーシング部材がスライドすることで、複数種類の記録用紙に対する画像形成を可能にしている。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−230662号公報
【特許文献2】
特開2001−180063号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この種の伸縮型プリンタにあっても、一般的なインクジェットプリンタ(非伸縮型のもの)と同様に、非使用状態が長期間に亘る場合にはインクノズル部分でのインクの乾燥や塵埃等の付着が懸念される。
【0007】
一般的なインクジェットプリンタにあっては、キャリッジの主走査方向の一端側をメンテナンスポジションとしておき、印刷動作の終了後には、キャリッジをメンテナンスポジションまで移動させ、このメンテナンスポジションに配置されたキャッピング部材によってインクヘッドをキャッピングしている。これにより、インクノズル部分を気密状態にしてインクの乾燥や塵埃等の付着を防止している。
【0008】
しかしながら、上記伸縮型プリンタにあっては、非使用状態ではできる限り小型化して携帯性に優れた形状にすることが望まれている。このため、キャリッジ主走査方向の一端側にメンテナンスポジションを設けることは、この主走査方向の長さを長くしてしまうため好ましくない。従って、伸縮型プリンタにキャッピング機構を搭載しようとする場合には、一般的なインクジェットプリンタに搭載されている従来のキャッピング機構とは全く異なる機構が必要となる。
【0009】
そこで、本発明の発明者らは、キャリッジ主走査方向の略中央部にキャッピング機構を配置することについて考察した。
【0010】
この場合、キャッピング機構のキャッピング部材がインクノズル部分に対して進退移動することになるが、このキャッピング部材の移動軌跡の一部は、画像形成時の用紙搬送経路と重なってしまう。つまり、記録用紙の搬送中にキャッピング部材がインクノズル部分に向かって移動する状況が生じたのでは、記録用紙とキャッピング部材とが接触してしまって用紙ジャムが発生してしまうばかりでなく、キャッピング部材の破損も懸念されることになる。このため、キャッピング部材がインクノズル部分に向かって移動するタイミング、つまり、キャッピング動作のタイミングを適切に設定せねば、キャッピング機構を備えた伸縮型プリンタを実現することは不可能である。
【0011】
そして、本発明の発明者らは、伸縮型プリンタに特有の操作であるケーシング部材のスライド(収縮方向へのスライド)操作に着目し、このスライド操作とキャッピング部材によるキャッピング動作とを関連付けることによってキャッピング動作のタイミングを適切に設定することについて考察し、本発明に至った。
【0012】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、伸縮型画像形成装置にキャッピング機構を備えさせる場合において、キャッピング動作のタイミングを適切に設定することで実用性の高いキャッピング機構及びそのキャッピング機構を備えた伸縮型画像形成装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
−発明の概要−
上記の目的を達成するために、本発明は、伸縮型画像形成装置に特有の操作であるケーシングの収縮方向へのスライド操作とキャッピング動作とを連動させることにより、ケーシングを収縮方向へスライド操作しない限りキャッピング動作が実行されないようにした。つまり、非画像形成動作時においてのみ、キャッピング部材がインクノズル部分に向かって移動してキャッピング状態が得られるようにした。
【0014】
−解決手段−
具体的には、伸長姿勢と収縮姿勢との間で伸縮可能なケーシングと、インク滴を吐出する記録ヘッドとを備え、上記ケーシングが伸長姿勢であるときに記録ヘッドから記録媒体に向けてインク滴を吐出して画像形成動作を行う伸縮型画像形成装置に搭載されるキャッピング機構を前提とする。このキャッピング機構に対し、非画像形成動作時における記録ヘッドの位置に対向して配設されたキャッピング部材と、ケーシングの伸長姿勢から収縮姿勢への姿勢変化に連動してキャッピング部材を記録ヘッドに向けて前進させることにより記録ヘッドのキャッピングを行わせる連動手段とを備えさせている。
【0015】
この特定事項により、伸縮型画像形成装置は、記録媒体に対する画像形成動作を実行するときには伸長姿勢とされ、記録ヘッドから記録媒体に向けてインク滴を吐出して所定の画像を形成する。そして、画像形成動作が終了して装置の携帯性を図るべく収縮姿勢にする場合には、ユーザの操作等によってケーシングが伸長姿勢から収縮姿勢へと姿勢変化する。このとき、キャッピング部材と記録ヘッドとは互いに対向しており、この姿勢変化に伴い連動手段はキャッピング部材を記録ヘッドに向けて前進させる。そして、ケーシングが収縮姿勢になった状態では、キャッピング部材が記録ヘッドを完全にキャッピングし、記録ヘッドのインクノズル部分を気密状態にしてインクの乾燥や塵埃等の付着が防止される。
【0016】
このように、本解決手段では、伸縮型画像形成装置に特有の動作であるケーシングの伸長姿勢から収縮姿勢への姿勢変化が行われた際にキャッピング動作が実行されるようにしている。つまり、画像形成動作の非実行時にのみキャッピング動作が行われるものとしている。このため、キャッピング部材の移動軌跡が記録用紙の搬送経路と重なっていたとしても、画像形成動作の実行中にケーシングが姿勢変化することは通常はないので、記録用紙の搬送中にキャッピング部材が記録ヘッドに向かって移動することはなく、用紙ジャムの発生やキャッピング部材の破損を招くことがない。言い換えると、キャッピング機構を装置の一端側(キャリッジ主走査方向の一端側)に設けておく必要のない構成を実現でき、装置の小型化と、用紙ジャムやキャッピング部材の破損等の不具合の回避とを両立することが可能なキャッピング機構及びそのキャッピング機構を備えた伸縮型画像形成装置を提供することができて、キャッピング機構を備えた伸縮型画像形成装置の実用性を高めることが可能となる。
【0017】
尚、本解決手段でいう「伸長姿勢」とは、ケーシングが最も伸長された状態だけではなく、適用される記録媒体のサイズに対応する複数段階の伸長姿勢も含む概念である。これに対し、本解決手段でいう「収縮姿勢」とは、画像形成動作の非実行時(携帯時)の姿勢であって、携帯性を考慮するこの種の伸縮型画像形成装置にあっては最も収縮された状態をいう。
【0018】
上記連動手段の具体的な動作を特定する構成としては以下のものが掲げられる。つまり、ケーシングが伸長姿勢から収縮姿勢へ姿勢変化する際の移動力を、キャッピング部材が記録ヘッドに向けて前進する移動力に変換するよう連動手段を構成するものである。
【0019】
一般に、この種の伸縮型画像形成装置では、ユーザの操作によってケーシングが伸縮される。本解決手段では、このユーザの操作力を有効に利用し、ケーシングを伸長姿勢から収縮姿勢へ姿勢変化させる際の操作力(移動力)を、キャッピング部材が記録ヘッドに向けて前進する移動力として有効利用する構成となっている。このため、キャッピング部材を記録ヘッドに向けて前進させるための特別な駆動源は必要なく、装置構成の簡素化を図ることができる。また、電気的な動力によってケーシングを伸長姿勢から収縮姿勢へ姿勢変化させる構成を採用した場合であっても、共通の駆動源(例えば駆動モータ)で、伸長姿勢から収縮姿勢への姿勢変化動作と、キャッピング部材の前進移動動作とを行うことができ、この場合にもキャッピング部材を前進移動させるための特別な駆動源は必要なく、装置構成の簡素化を図ることができる。
【0020】
また、上記目的を達成するための他の解決手段としては以下の構成が掲げられる。つまり、伸長姿勢と収縮姿勢との間で伸縮可能なケーシングと、インク滴を吐出する記録ヘッドとを備え、上記ケーシングが伸長姿勢であるときに記録ヘッドから記録媒体に向けてインク滴を吐出して画像形成動作を行う一方、上記ケーシングが収縮姿勢であるときに非画像形成動作状態となる伸縮型画像形成装置に搭載されるキャッピング機構を前提とする。このキャッピング機構に対し、非画像形成動作時における記録ヘッドの位置に対向して配設されたキャッピング部材を備えさせ、ケーシングが収縮姿勢にあるときにのみ、キャッピング部材が記録ヘッドのインク吐出部を覆って気密状態とする構成としている。
【0021】
この特定事項によっても、キャッピング部材の移動軌跡が記録用紙の搬送経路と重なっていたとしても、記録用紙の搬送中にキャッピング部材が記録ヘッドに向かって移動することはなく、用紙ジャムの発生やキャッピング部材の破損を招くことがない。このため、装置の小型化と、用紙ジャムやキャッピング部材の破損等の不具合の回避とを両立することが可能なキャッピング機構及びそのキャッピング機構を備えた伸縮型画像形成装置を提供することができる。
【0022】
次に、キャッピング部材によって記録ヘッドをキャッピングする際に、これらキャッピング部材と記録ヘッドとによって形成される空間の空気の存在を考慮した構成について説明する。
【0023】
先ず、キャッピング部材を弾性材料により形成しておき、記録ヘッドに対するキャッピング動作に伴ってキャッピング部材内部空間の開放状態と気密状態とを切り換えるように開閉する弁手段をキャッピング部材に備えさせている。
【0024】
この弁手段の切り換え動作(開閉動作)をケーシングの伸縮動作に連動して行わせた場合の具体的な開閉タイミングは以下のとおりである。つまり、ケーシングが伸長姿勢から収縮姿勢へ姿勢変化する際には、キャッピング部材が記録ヘッドのインク吐出部を気密状態に覆った後に弁手段が閉鎖される一方、ケーシングが収縮姿勢から伸長姿勢へ姿勢変化する際には、キャッピング部材が記録ヘッドに対して離間する方向に移動する前に弁手段が開放されるようにしている。
【0025】
上述した如くキャッピング部材を弾性材料で構成した場合、キャッピング部材を記録ヘッドに比較的大きな圧力で押圧すれば、キャッピング部材の弾性変形により、このキャッピング部材と記録ヘッドとの間に形成される空間の気密性は良好に確保され、インクの乾燥や塵埃等の付着を確実に防止することができる。
【0026】
ところが、このキャッピング部材を記録ヘッドに押圧する際、キャッピング部材の変形に伴って上記空間の容積がこの変形量分だけ小さくなる。つまり、この空間内圧力が上昇してしまう可能性がある。これでは、この空間内の空気がインクノズルの内部に混入してしまって次回のインク吐出動作に支障を来してしまう可能性がある。逆に、キャッピング部材を記録ヘッドから離間させる際には、キャッピング部材が元の形状に戻るように変形し、瞬間的に上記空間の容積がこの変形量分だけ大きくなる。つまり、この空間内圧力が低下してしまう可能性がある。これでは、この空間内が負圧となりインクノズルの内部のインクが不用意に滴下してしまって、装置内部を汚してしまったり良好なメニスカスを形成することができなくなる可能性がある。
【0027】
本解決手段ではこの点を考慮している。つまり、キャッピング部材を記録ヘッドに押圧する際に上記空間の容積が小さくなるタイミングや、キャッピング部材を記録ヘッドから離間させる際に上記空間の容積が大きくなるタイミングにあっては、弁手段を開放して上記空間を外気に連通させる。これにより、この空間の内圧を安定させることができ、インクノズルの内部に空気が混入してしまったり、インクノズルの内部のインクが不用意に滴下してしまったりすることを良好に回避できる。
【0028】
尚、ケーシングが収縮姿勢にあるとき、つまり、非画像形成時には、弁手段が閉鎖されており、キャッピング部材と記録ヘッドとの間に形成される空間の気密性は良好に確保され、インクの乾燥や塵埃等の付着は確実に防止されている。
【0029】
キャッピング部材と記録ヘッドとによって形成される空間の空気の存在を考慮した他の解決手段としては以下のものが掲げられる。つまり、キャッピング部材を弾性材料により形成しておき、キャッピング時にキャッピング部材と記録ヘッドとの間で形成される空間の圧力変化に伴って拡張収縮してこの空間との間で空気の授受を行う圧力吸収体を備えさせたものである。
【0030】
この特定事項では、キャッピング部材を記録ヘッドに押圧する際、キャッピング部材の変形に伴って上記空間の容積がこの変形量分だけ小さくなって空間内圧力が上昇すると、この空間内の空気の一部が圧力吸収体に移動し(圧力吸収体の拡張動作)、この圧力吸収体がこの空間内の圧力を吸収する。逆に、キャッピング部材を記録ヘッドから離間させる際、キャッピング部材が元の形状に戻るように変形して上記空間の容積がこの変形量分だけ大きくなって空間内圧力が低下すると、圧力吸収体内の空気がこの空間内へ供給されて(圧力吸収体の収縮動作)、この空間内の圧力が維持される。
【0031】
従って、本解決手段においても、上述した解決手段の場合と同様に、キャッピング部材と記録ヘッドとによって形成される空間の内圧を安定させることができ、インクノズルの内部に空気が混入してしまったり、インクノズルの内部のインクが不用意に滴下してしまったりすることを良好に回避できる。
【0032】
また、キャッピング時に記録ヘッドに当接する弾性材料で成る当接部と、この当接部に移動吸収体を介して取り付けられた調整部とをキャッピング部材に備えさせ、当接部が記録ヘッドに当接した後の弾性変形を伴う移動量を移動吸収体が吸収することにより調整部と記録ヘッドとの相対距離が不変となる構成としている。この場合、調整部の位置は、ケーシングの伸長姿勢から収縮姿勢への姿勢変化に伴って位置決定される。
【0033】
この特定事項によれば、当接部が記録ヘッドに当接した後は調整部と記録ヘッドとの相対距離が不変であるため、当接部が記録ヘッドに更に押圧されて弾性変形したとしてもキャッピング部材と記録ヘッドとによって形成される空間の容積は不変となる。このため、本解決手段においても空間の内圧を安定させることができ、インクノズルの内部に空気が混入してしまったり、インクノズルの内部のインクが不用意に滴下してしまったりすることを良好に回避できる。
【0034】
また、上述した各解決手段のうち何れかのキャッピング機構を備え、使用する記録媒体のサイズに応じてケーシングを伸縮させ、その伸縮に応じて開口幅が変化した給紙口から記録媒体を供給し、ケーシング内に備えられた画像形成機構によって記録媒体上に画像形成を行うよう構成された伸縮型画像形成装置も本発明の技術的思想の範疇である。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本形態では、インクジェット方式の画像形成動作を行う伸縮型プリンタ(伸縮型画像形成装置)に本発明を適用した場合について説明する。
【0036】
(第1実施形態)
−伸縮型プリンタの全体構成の説明−
図1は本形態に係る伸縮型プリンタ1の斜視図を示しており、図1(a)はケーシング2が最も収縮した非使用時の状態(本発明でいう収縮姿勢)を、図1(b)はケーシング2が最も伸長した使用時の状態(本発明でいう伸長姿勢の一形態であって記録用紙に対する画像形成を実行可能な状態)をそれぞれ示す。また、図2(a)は、図1(a)におけるA−A線に沿った断面図であり、図2(b)は、図1(b)におけるB−B線に沿った断面図である。また、これら図では内部機構(画像形成機構)を省略している。
【0037】
図1及び図2に示すように、本伸縮型プリンタ1は、箱形のセンタケーシング21と左右のサイドケーシング22,23とを備えており、センタケーシング21に対して各サイドケーシング22,23がスライド移動することによってケーシング2全体の伸縮が可能となっている。
【0038】
具体的には、図2に示す如く、センタケーシング21の両端開口の縁部にはフランジ部21a,21bが形成されている。このフランジ部21a,21bは、開口の縁部からケーシング外側、つまり、上端縁からは上方に、下端縁からは下方にそれぞれ延びている。また、図示しないが、この開口の縁部の前端縁(図中の手前側の端縁)からは前方(図中の手前側)に、後端縁(図中の奥側の端縁)からは後方(図中の奥側)にそれぞれ延びるフランジ部も形成されている。
【0039】
一方、各サイドケーシング22,23の開口の縁部にもフランジ部22a,22b,23a,23bが形成されている。このフランジ部22a,22b,23a,23bは、開口の縁部からケーシング内側、つまり、上端縁からは下方に、下端縁からは上方にそれぞれ延びている。また、図示しないが、この開口の縁部の前端縁からは後方に、後端縁からは前方にそれぞれ延びるフランジ部も形成されている。
【0040】
このように各フランジ部21a〜23bが形成されたケーシング21,22,23同士が一体的に組み付けられているため、図2(a)に示すように、ケーシング2を最も収縮させた場合には、センタケーシング21のフランジ部21a,21bがサイドケーシング22,23の内側面に当接する。一方、図2(b)に示すように、ケーシング2を最も伸長させた場合には、センタケーシング21のフランジ部21a,21bとサイドケーシング22,23のフランジ部22a,22b,23a,23bとが係止して、それ以上の伸長を阻止し、サイドケーシング22,23がセンタケーシング21から抜け落ちないようになっている。
【0041】
具体的に、ケーシング2を最も収縮させた状態の幅寸法(図2の左右方向寸法)は160mmであり、ケーシング2を最も伸長させた状態の幅寸法は280mmである。これら幅寸法はこれに限るものではない。
【0042】
また、センタケーシング21の前面21cにはその幅方向の全体に亘って給紙口24が形成されており、サイドケーシング22,23の前面22c,23cにも上記給紙口24に連続する給紙口25,26が形成されている。
【0043】
このため、図1(a)及び図2(a)に示す状態ではセンタケーシング21の給紙口24の両端部分とサイドケーシング22,23とが重なり合っており、給紙口全体の幅寸法は小さくなる。一方、図1(b)及び図2(b)に示す状態ではセンタケーシング21の給紙口24からサイドケーシング22,23の給紙口25,26に亘る幅寸法の大きな給紙口が得られる。
【0044】
同様に、センタケーシング21の背面及びサイドケーシング22,23の背面には、サイドケーシング22,23のスライドに伴って幅寸法が変化する図示しない排紙口が形成されており、上記給紙口から給紙されて、ケーシング2内の画像形成機構によって画像形成が行われた記録用紙が、この排紙口から排出されることになる。
【0045】
このようにしてセンタケーシング21に対する各サイドケーシング22,23のスライド移動により、ケーシング2が伸縮し、適用可能な用紙サイズが変更できるようになっている。
【0046】
また、図3に示すように、各サイドケーシング22,23の底面にはラックギア83,84が配設されている。これらラックギア83,84は、ギア同士が水平方向で互いに対向するように配設されていると共に、このギア同士の間にピニオン85が鉛直軸回りに回転自在に支持されている。このピニオン85が各ラックギア83,84に噛み合っていることにより、ラックギア83,84同士はスライド移動時には互いに反対方向へ連動する構成となっている。つまり、一方のサイドケーシング22を収縮方向へ移動させる場合、その移動操作力がピニオン85を介して相手側のラックギア84に伝わり、これによって他方のサイドケーシング23も収縮方向へ移動(図3において(a)(b)の順で移動)する。逆に、一方のサイドケーシング22を伸長方向へ移動させる場合、その移動操作力がピニオン85を介して相手側のラックギア84に伝わり、これによって他方のサイドケーシング23も伸長方向へ移動(図3において(b)(a)の順で移動)するよう構成されている。
【0047】
次に、ケーシング2内に収容されている画像形成機構について説明する。図4は画像形成機構の斜視図である。この図4に示すように画像形成機構は、給紙口(この給紙口は図中の奥側に形成されている)から供給される記録媒体としての記録用紙Pへ画像形成を行うためのものであり、記録ヘッドとしてのインクヘッド41、このインクヘッド41と図示しないインクタンクとを搭載したキャリッジ42、このキャリッジ42を主走査方向に案内するためのガイドシャフト43、画像形成動作時に記録用紙Pの支持台となるプラテン44を備えている。また、上記インクカートリッジは、Bk(ブラック),Y(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン)の各インク毎に個別にキャリッジ42上に搭載されており、それぞれが独立して交換可能となっている。
【0048】
また、この画像形成機構では、ケーシング2を伸長させた状態で電源スイッチをONすると、キャリッジ駆動モータが回転駆動して、上記ガイドシャフト43を支持しているスライドレール45が左方向に移動する(図4に示す矢印参照)。
【0049】
詳しく説明すると、スライドレール45は、一対のボールベアリング列からなるリテーナを介してスライドレール基台46に対し摺動自在に嵌合されており、そのスライドレール基台46はケーシング2内部の図示しないフレームにビス止め等の手段によって固定されている。
【0050】
図5に示すように、スライドレール45の後端両側(図5では下部両側)には、第1ワイヤー51が掛張されており、この第1のワイヤー51が、キャリッジ駆動モータ52に伝動連結された第1ワイヤー駆動プーリ53aに掛張され、キャリッジ駆動モータ52を一方向(図5に矢印で示す方向)に回転させると、第1ワイヤー駆動プーリ53aが図中時計回り方向に回転することにより、スライドレール45が左方向に移動される。
【0051】
一方、キャリッジ42の後部に接続された第2ワイヤー57は、スライドレール45の両端に設けたプーリ54,55を経由して、第2ワイヤー駆動プーリ53bに掛張されており、この第2ワイヤー駆動プーリ53bは、第1ワイヤー駆動プーリ53aと同一軸心上に一体化されてキャリッジ駆動モータ52に伝動連結されたワイヤ駆動プーリ53を構成している。
【0052】
従って、キャリッジ駆動モータ52の回転により、スライドレール45が左方向に移動すると共に、キャリッジ42が、スライドレール45に固定されているガイドシャフト43に沿って左方向に移動する。尚、本実施形態では、第1ワイヤー駆動プーリ53aの直径と、第2ワイヤー駆動プーリ53bの直径の比率を2:1に設定している。このような設定により、キャリッジ42のスライドレール45に対する移動速度が、スライドレール45の移動速度の1/2になるため、キャリッジ42の移動動作がスムーズになり、また、その位置制御を精度よく行えるので、良好な画像品位が得られる。
【0053】
キャリッジ駆動モータの回転方向が上記とは逆方向に切り換えられると、図5の矢印方向とは逆向きの回転となり、スライドレール45が右方向に移動すると共に、キャリッジ42も右方向へ移動する。以上のようにキャリッジ42が移動する際に、キャリッジ42に設けたフォトセンサー(図示省略)によってタイミングフェンス58が読み取られ、これにより、キャリッジ42の移動速度が制御され、画像形成動作が行われる。
【0054】
一方、用紙搬送は、図示しない用紙搬送モータによって回転駆動される用紙フィードローラ71に記録用紙Pを噛み込ませることにより行われる。用紙フィードローラ71は、記録用紙Pを噛み込み、プラテン44上を間欠的に搬送し排紙ローラ72へ搬出する。つまり、用紙フィードローラ71は、インクヘッド41の動作と同期を取って、必要送り量分だけ回転した後は、画像形成のために停止する動作を繰り返し行う。
【0055】
この用紙フィードローラ71には、図示しないピンチローラが、スプリング力によって付勢圧接しており、この圧接力で、用紙を挟持し搬送する。同様に、排紙ローラ72には、排紙スターローラ73が、スプリング力によって付勢圧接しており、この圧接力で用紙が排出される。
【0056】
用紙フィードローラ71の長さは、A4用紙を適用するの場合、中央の140mmにしか摺接しない。用紙の搬送力としては、この程度の長さで十分であるが、A4用紙の幅210mmから140mmを差し引いた70mm(はみ出し部分)に対するガイドが必要となる。そこで、本実施形態では、用紙フィードローラ71に中空パイプを用い、その中に補助用として、フィードローラ中軸を引き出し自在に収納している。つまり、ケーシング2の伸長に伴ってフィードローラ中軸が引き出され、A4用紙の幅方向全体に接触できるようにしている。
【0057】
同様に、プラテン44が形成された台板の内部には、プラテン補助板44aが引き出し自在に収納されており、使用時には、サイドケーシング22,23の引き出し動作に伴いプラテン補助板44aを引き出すことで、プラテン44からはみ出た用紙を案内できるようにしている。
【0058】
−画像形成動作−
上述の如く構成された伸縮型プリンタ1における画像形成動作について以下に説明する。先ず、収縮姿勢にあるケーシング2を、使用する記録用紙Pに応じて伸長させる。つまり、ユーザの操作によってセンタケーシング21に対して各サイドケーシング22,23を左右外側に引き出し、ケーシング2を所定の伸長姿勢にする。
【0059】
この状態で、図示しないコンピュータ等の外部端末から画像情報に基づく画像形成要求が伸縮型プリンタ1に対してなされる。画像形成要求を受信した伸縮型プリンタ1は、給紙口から供給された記録用紙Pをケーシング2内に搬送し、上述した画像形成機構による画像形成動作を行う。つまり、インクヘッド41のインクノズルよりプラテン44上の記録用紙Pへ画像情報に対応してインク滴が吹き付けられる。この時、記録用紙Pはプラテン44上で一旦停止されている。インク滴を吹き付けつつ、キャリッジ42は、ガイドシャフト43に案内されて、主走査方向(ガイドシャフト43の延長方向)に一ライン分走査される(上述したキャリッジ42及びスライドレール45の移動)。それが終了すると、記録用紙Pは、プラテン44上で副走査方向に一定の幅だけ移動する。画像形成機構において、上記処理が画像情報に対応し継続して実施されることにより、記録用紙Pの全面に画像形成がなされる。このようにして画像形成が行われた記録用紙Pは、排紙口から排出され、印刷物としてユーザに提供されることになる。
【0060】
−キャッピング機構の説明−
次に、本形態の特徴部分であるキャッピング機構について図4及び図6を用いて説明する。このキャッピング機構9は、インクヘッド41をキャッピングすることでインクノズル47の周辺部分を気密状態にしてインクの乾燥や塵埃等の付着を防止するためのものである。これにより、次回の画像形成動作時におけるインク吐出性能を良好に維持できるようにしている。尚、図6は、(a)が通常使用時(画像形成動作が可能な状態)、(b)がキャッピング動作開始時、(c)がキャッピング動作の完了時の状態をそれぞれ示している。
【0061】
図4に示すように、上記プラテン44の中央部(キャリッジ42の主走査方向の中央部)には矩形状の開口44bが形成されており、プラテン44の下側で且つこの開口44bの周辺部にキャッピング機構9が配設されている。このキャッピング機構9は、ゴム等の弾性材料によって形成されたキャッピング部材91(図6参照)と、このキャッピング部材91を昇降自在に支持する図示しない支持フレームとを備えている。このキャッピング部材91を昇降させるための機構については後述する。
【0062】
キャッピング部材91は、上部が開放された箱型の部材であって、上記プラテン44に形成されている開口44bに臨む位置に配設されている。また、このキャッピング部材91の開放側端縁部91a(上端縁部)のみが他の部分よりも薄肉に形成されている。つまり、この開放側端縁部91aのみが外力によって容易に圧縮等の変形が可能となっている。また、このキャッピング部材91の上面は同一水平面上にあり、且つ、このキャッピング部材91の下面も同一水平面上にある。そして、後述するキャッピング動作に伴う昇降時にはこれら各面の水平状態が維持されたまま昇降移動するようになっている。尚、このキャッピング部材91は、その全体がゴム等の弾性材料によって形成されている必要はなく、少なくとも上記開放側端縁部91aのみが弾性材料によって形成されておればよい。
【0063】
そして、一方のサイドケーシング22の底板上には、キャッピング部材91の下面に当接することによってこのキャッピング部材91を昇降移動させるための連動手段としてのカム部92を備えている。以下、このカム部92の形状及びサイドケーシング22のスライド移動に伴うカム部92の作用について説明する。
【0064】
このカム部92は、サイドケーシング22の外側(図6における右側)に向かって次第に上方に傾斜する傾斜面92aと、この傾斜面92aの外側端(図6における右側端)から水平方向に延びる水平面92bとを備えている。
【0065】
そして、図6(a)に示すようにケーシング2が伸長姿勢にある通常使用時には、傾斜面92aはキャッピング部材91の下面から退避した位置(図6(a)における右側位置)にあり、このキャッピング部材91の下面にはカム部92は接触していない。このため、キャッピング部材91は自重によって最降下位置にある。これにより、キャッピング部材91は、インクヘッド41の下面及びインクノズル47に対して所定間隔を存した下側に位置しており、これらとの間に記録用紙Pの搬送路を確保している。つまり、この状態では、キャッピング部材91とインクノズル47との間に形成されている搬送路を記録用紙Pが搬送されて上記画像形成動作が行われる。
【0066】
この状態からケーシング2を収縮方向にスライド移動(サイドケーシング22の図6における左方向への移動)させると、図6(b)に示すように、カム部92の傾斜面92aがキャッピング部材91の下面に接触し、キャッピング部材91はこの傾斜面92aから上方への付勢力を受けて、上昇移動を開始する(図6(b)の各矢印参照)。つまり、ケーシング2を伸長姿勢から収縮姿勢へ姿勢変化させる際の移動力(操作力)を、キャッピング部材91がインクヘッド41に向けて前進する移動力に変換することになる。このようにしてサイドケーシング22を収縮方向にスライド移動させるに従ってキャッピング部材91は傾斜面92aに沿って徐々に上方へ移動していく。
【0067】
そして、このサイドケーシング22を更に収縮方向にスライド移動させていくと、図6(c)に示すように、キャッピング部材91の下面が傾斜面92aの上端位置に達して水平面92bに当接することになる。これにより、キャッピング部材91は、この水平面92b上を相対的に水平方向にスライド移動することになり、キャッピング部材91は上昇移動しない。つまり、キャッピング部材91の下面が傾斜面92aの上端位置に達するまでは、キャッピング部材91が上方へ移動し、その後、キャッピング部材91の下面が水平面92bに達した時点でキャッピング部材91の上方移動は停止する。
【0068】
また、図6(a)に示す通常使用時において、キャッピング部材91の下面からカム部92の上端(水平面92bの高さ位置)までの寸法(図6(a)における寸法t1)は、インクヘッド41の下面とキャッピング部材91の上面との間の間隔寸法(図6(a)における寸法t2)よりも僅かに大きく設定されている。このため、キャッピング部材91の下面が傾斜面92aから付勢力を受けて上昇移動していく途中で、このキャッピング部材91の開放側端縁部91aはインクヘッド41の下面に当接するが、その後も、キャッピング部材91の下面は傾斜面92aから付勢力を受け続けるため、キャッピング部材91の開放側端縁部91aはインクヘッド41の下面に所定圧力をもって押圧され、それに伴い、開放側端縁部91aは圧縮される。これにより、インクヘッドの下面に設けられたインクノズル47は、キャッピング部材91によって高い気密性をもって覆われることになる。
【0069】
このように、本形態では、伸縮型プリンタ1の携帯性を図るべく収縮姿勢にする場合に、ケーシング2を伸長姿勢から収縮姿勢へと姿勢変化させれば、同時にキャッピング部材91がインクヘッド41をキャッピングし、インクノズル47の周辺部分を気密状態にしてインクの乾燥や塵埃等の付着が防止される。つまり、伸縮型プリンタ1に特有の動作であるケーシング2の伸長姿勢から収縮姿勢への姿勢変化が行われた際にキャッピング動作が連動する構成となっている。言い換えると、画像形成動作の非実行時にのみキャッピング動作が行われる構成となっている。このため、キャッピング部材91の移動軌跡が記録用紙Pの搬送経路と重なっていても、記録用紙Pの搬送中にキャッピング部材91がインクヘッド41に向かって移動することはなく、用紙ジャムの発生やキャッピング部材91の破損を招くことがない。このため、キャッピング機構9をプリンタ1の一端側(キャリッジ主走査方向の一端側)に設けておく必要のない構成を実現でき、伸縮型プリンタ1の小型化と、用紙ジャムやキャッピング部材91の破損等の不具合の回避とを両立することが可能なキャッピング機構9及びそのキャッピング機構9を備えた伸縮型プリンタ1を提供することができる。
【0070】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について図7を用いて説明する。本形態は、キャッピング部材91に弁手段93を備えさせ、且つカム部92としてこの弁手段93の開閉タイミングを調整するための第2の傾斜面92cを備えさせたものである。その他の構成は上述した第1実施形態のものと同様であるので、ここでは弁手段93及び傾斜面92cについてのみ説明する。
【0071】
尚、図7は、(a)が通常使用時(画像形成動作が可能な状態)、(b)がキャッピング動作開始時、(c)がキャッピング動作の完了時、(d)がキャッピング動作の完了後の弁手段閉鎖時の状態をそれぞれ示している。
【0072】
キャッピング部材91の底板の中央部に上下方向に貫通する貫通孔91bが形成されている。この貫通孔91bには弁手段93が摺動自在に挿通されている。
【0073】
上記貫通孔91bは、断面円形の孔であり、その内径は例えば5mmに設定されている。
【0074】
一方、弁手段93は、上記貫通孔91bに挿通された本体部93aと、この本体部93aの上端に一体形成された弁体93bとを備えている。本体部93aは断面円形であって、その外径は、上記貫通孔91bの内径よりも僅かに小さい値(例えば3mm)に設定されている。そして、弁体93bは、下面が水平面で形成されており、その外径は上記貫通孔91bの内径よりも僅かに大きい値(例えば8mm)に設定されている。
【0075】
このため、図7(a)〜(c)に示すように、弁体93bがキャッピング部材91の底面から浮いた状態では、貫通孔91bの内面と弁手段93の本体部93aの外面との間に形成されている隙間によってキャッピング部材91の内部空間Cと外気とは連通している。
【0076】
それに対し、図7(d)に示すように、弁体93bがキャッピング部材91の底面に当接した状態では、貫通孔91bが弁体93bによって閉鎖され、キャッピング部材91の内部空間Cと外気とが遮断される構成となっている。つまり、この状態では、インクノズル47の周辺部分は気密となる。
【0077】
そして、サイドケーシング22の底板上に備えられているカム部92としては、上記弁手段93の昇降位置を決定するための上記傾斜面92cが備えられている。この傾斜面92cはサイドケーシング22の外側(図7における右側)に向かって次第に下方に傾斜する形状で形成されている。そして、その傾斜面92cの位置は、サイドケーシング22を収縮方向にスライド移動させていった際に、図7(c)に示すように、キャッピング部材91の下面がカム部92の水平面92bに達した後に、弁手段93の本体部93aが傾斜面92cに臨む位置に設定されている。つまり、ケーシング2が伸長姿勢から収縮姿勢へ姿勢変化する際、キャッピング部材91がインクヘッド41のインクノズル47を気密状態に覆った後に、弁手段93が傾斜面92cに沿って下降していき、その後、弁体93bがキャッピング部材91の底面に当接して、貫通孔91bが弁体93bによって閉鎖され、キャッピング部材91の内部空間Cと外気とが遮断される構成となっている。
【0078】
一方、ケーシング2が収縮姿勢から伸長姿勢へ姿勢変化する際には、キャッピング部材91がインクヘッド41に対して離間する方向に移動する前に、弁手段93が傾斜面92cに沿って上昇していき、貫通孔91bが開放されて、キャッピング部材91の内部空間Cと外気とが連通される構成となっている。
【0079】
このような構成であるため、本実施形態では、キャッピング部材91をインクヘッド41に押圧する際に上記空間Cの容積が小さくなる(図7(a)に示す寸法Hが図7(c)に示す寸法hとなる)タイミングや、キャッピング部材91をインクヘッド41から離間させる際に上記空間Cの容積が大きくなる(図7(d)に示す寸法hが図7(a)に示す寸法Hとなる)タイミングにおいて、弁手段93を開放側に位置させて上記空間Cを外気に連通させる。これにより、この空間Cの内圧を安定させることができ、インクノズル47の内部に空気が混入してしまったり、インクノズル47の内部のインクが不用意に滴下してしまったりすることを良好に回避できる。その結果、次回の画像形成動作時におけるインク吐出性能を良好に維持でき、また、滴下したインクによって装置内部が汚れてしまうといったことを回避できる。
【0080】
尚、本形態では、弁手段93が自重によって貫通孔91bを閉鎖する構成としていたが、この弁手段93に下向き(貫通孔91bを閉鎖する方向)の付勢力を与えるスプリング等の付勢手段を備えさせる構成としてもよい。
【0081】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について図8を用いて説明する。本形態は、キャッピング部材91に圧力吸収体94を備えさせ、キャッピング時にキャッピング部材91とインクヘッド41とによって形成される空間Cの圧力変動を、この圧力吸収体94によって吸収できるようにしたものである。その他の構成は上述した第1実施形態のものと同様であるので、ここでは圧力吸収体94についてのみ説明する。
【0082】
尚、図8は、(a)が通常使用時(画像形成動作が可能な状態)、(b)がキャッピング動作開始時、(c)がキャッピング動作の完了時の状態をそれぞれ示している。
【0083】
上記圧力吸収体94は、ゴムまたは樹脂等の軟質材料で形成された袋体であって、キャッピング部材91の側面に接続されている。そして、この圧力吸収体94の内部空間とキャッピング部材91の内部空間Cとは連通されている。また、圧力吸収体94は、外周部が蛇腹形状となっていて、この外周部の変形によって内部空間の容積が容易に変化可能となっている。言い換えると、キャッピング時にキャッピング部材91とインクヘッド41とによって形成される空間Cの内圧が僅かでも変化すると、その圧力によって圧力吸収体94が変形して、この圧力吸収体94の内部空間の容積が容易に変化するようになっている。
【0084】
以下、この圧力吸収体94を備えさせたことによる作用について説明する。先ず、ケーシング2を収縮方向へ姿勢変化させる場合には、キャッピング部材91がインクヘッド41の下面に押圧され、キャッピング部材91の変形に伴って上記空間Cの容積がこの変形量分だけ小さくなって空間内圧力が上昇する。このとき、この空間C内の空気の一部が圧力吸収体94に移動し(圧力吸収体94の拡張動作)、この圧力吸収体94がこの空間C内の圧力を吸収する(図8(c)参照)。
【0085】
逆に、ケーシング2を伸長方向へ姿勢変化させる場合には、キャッピング部材91がインクヘッド41から離間し、キャッピング部材91が元の形状に戻るように変形して上記空間Cの容積がこの変形量分だけ大きくなって空間内圧力が低下する。このとき、圧力吸収体94内の空気がこの空間C内へ供給されて(圧力吸収体94の収縮動作)、この空間C内の圧力が維持される。
【0086】
従って、本実施形態においても、上述した第2実施形態の場合と同様に、キャッピング部材91とインクヘッド41とによって形成される空間Cの内圧を安定させることができ、インクノズル47の内部に空気が混入してしまったり、インクノズルの内部のインクが不用意に滴下してしまったりすることを良好に回避できる。
【0087】
また、本形態の構成によれば、キャッピング部材91がインクヘッド41の下面に押圧された状況で、温度変化に伴って空間C内の空気が膨張した場合であっても、その膨張分を圧力吸収体94が吸収することになるため、空間C内の圧力維持の信頼性の向上を図ることができる。
【0088】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について図9を用いて説明する。本形態は、キャッピング部材91の構成を変更することによって、キャッピング部材91とインクヘッド41とによって形成される空間Cの容積を一定に維持するものである。その他の構成は上述した第1実施形態のものと同様であるので、ここではキャッピング部材91の構成及び上記空間Cの容積を一定に維持するための構成についてのみ説明する。
【0089】
尚、図9は、(a)が通常使用時(画像形成動作が可能な状態)、(b)がキャッピング動作開始時、(c)がキャッピング動作の途中の状態、(d)がキャッピング動作の完了時の状態をそれぞれ示している。
【0090】
図9に示すように、本形態に係るキャッピング部材91は、キャッピング時にインクヘッド41に当接する当接部91c、この当接部91cに対して所定間隔を存した位置にある調整部91d、これら当接部91cと調整部91dとを連結する移動吸収体91eを備えて構成されている。
【0091】
当接部91cは、キャッピング部材91の上端縁を構成する環状の部材であって全体がゴム等の弾性体で形成されている。
【0092】
調整部91dは、キャッピング部材91の下端面を構成する部材であって構成材料はゴム等の弾性体に限らず樹脂材料等であってもよい。
【0093】
移動吸収体91eは、キャッピング部材91の側面を構成する部材であって、上記当接部91cと調整部91dとを連結する蛇腹状の部材である。この移動吸収体91eの構成材料もゴム等の弾性体に限らず樹脂材料等であってもよい。
【0094】
一方、本形態におけるカム部92は、上下一対のカム面95,96を備えている。上側のカム面95は、上記当接部91cの位置をガイドするためのものであって、サイドケーシング22の外側(図9における右側)に向かって次第に上方に傾斜する傾斜面95aを備えている。
【0095】
一方、下側のカム面96は、上記調整部91dの位置をガイドするためのものであって、サイドケーシング22の外側(図9における右側)に向かって次第に上方に傾斜する傾斜面96aと、この傾斜面96aの外側端(図9における右側端)から水平方向に延びる水平面96bとを備えている。
【0096】
つまり、ケーシング2を収縮方向へ移動させる際の初期時(図9(a)の状態から図9(b)の状態を経て図9(c)の状態になるまでの間)では、これら各カム面95,96に備えられた傾斜面95a,96aにより当接部91c及び調整部91dが共に上昇移動する(図9(b),(c)の各矢印参照)。
【0097】
その後、図9(c),(d)に示すように、調整部91dが傾斜面96aの上端位置に達した時点で、この調整部91dは水平面96bにガイドされることになるため、この調整部91dの上方移動は停止する。つまり、当接部91cのみが上昇移動し、傾斜面95aから受ける付勢力によって当接部91cはインクヘッド41の下面に押圧されて弾性変形する。
【0098】
このように当接部91cが気密性を向上させるべく上昇移動したとしても調整部91dは上方移動することがない。つまり、この調整部91dとインクヘッド41との相対距離が不変であるため、キャッピング部材91とインクヘッド41とによって形成される空間Cの容積は不変である。このため、この空間Cの内圧を一定に維持しながら当接部91cを上昇移動させて高い気密性が得られることになる。その結果、本実施形態にあっても、インクノズル47の内部に空気が混入してしまったり、インクノズル47の内部のインクが不用意に滴下してしまったりすることを良好に回避できる。
【0099】
−その他の実施形態−
上述した各実施形態では、インクジェット方式の画像形成動作を行う伸縮型プリンタ1に本発明を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、電子写真方式等により画像形成動作を行う伸縮型プリンタに適用することも可能である。
【0100】
また、上記各実施形態では、サイドケーシング22の底板上に備えられたカム部92によって、ケーシング2の移動力をキャッピング部材91の移動力に変換していたが、リンク機構等、その他の機構によって移動力を変換するようにしてもよい。
【0101】
更には、キャッピング機構9は、装置のコンパクト化を図る上ではキャリッジ主走査方向の略中央部に配置することが好ましいが、本発明にあってはキャッピング機構9の配設位置は特に限定されるものではない。
【0102】
加えて、上記各実施形態では、ユーザの手動操作によってケーシング2の姿勢を伸縮変化させるようにしていたが、本発明はこれに限らず、電気的な動力(例えば電気モータの駆動力)によってケーシング2の姿勢を伸縮変化させる構成に対しても適用可能である。この場合、キャッピング部材91をインクヘッド41に向けて進退移動させるための機構としては、上述した各実施形態の如くカム機構等を使用してもよいし、電気的な動力を直接的にキャッピング部材91に作用させるようにしてもよい(例えば、キャッピング部材91にラックギヤを設けておき、駆動モータの駆動軸に設けたピニオンにラックギヤを噛み合わせる構成など)。
【0103】
【発明の効果】
以上のように、本発明では、伸縮型画像形成装置に特有の操作であるケーシングの収縮方向へのスライド操作とキャッピング動作とを連動させることにより、ケーシングを収縮方向へスライド操作しない限りキャッピング動作が実行されないようにしている。このため、キャッピング部材の移動軌跡が記録用紙の搬送経路と重なっていたとしても、記録用紙の搬送中にキャッピング部材が記録ヘッドに向かって移動することはなく、用紙ジャムの発生やキャッピング部材の破損を招くことがない。その結果、キャッピング機構を装置の一端側(キャリッジ主走査方向の一端側)に設けておく必要のない構成を実現でき、装置の小型化と、用紙ジャムやキャッピング部材の破損等の不具合の回避とを両立することが可能なキャッピング機構及びそのキャッピング機構を備えた伸縮型画像形成装置を提供することができる。
【0104】
また、キャッピング部材に弁手段を備えさせるなどして、キャッピング部材と記録ヘッドとによって形成される空間の内圧を安定的に維持できるようにした場合には、キャッピング動作時の圧力変化が原因でインクノズルの内部に空気が混入してしまったりインクノズルの内部のインクが不用意に滴下してしまったりするといった不具合を回避できる。その結果、次回の画像形成動作時におけるインク吐出性能を良好に維持でき、また、滴下したインクによって装置内部が汚れてしまうといったことを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係る伸縮型プリンタを示し、(a)はケーシングが収縮姿勢にある状態を、(b)はケーシングが伸長姿勢にある状態をそれぞれ示す斜視図である。
【図2】(a)は、図1(a)におけるA−A線に沿った断面図であり、(b)は、図1(b)におけるB−B線に沿った断面図である。
【図3】各ケーシングに備えられたラックギアの移動状態を示す斜視図である。
【図4】画像形成機構の斜視図である。
【図5】画像形成機構の一部を示す平面図である。
【図6】第1実施形態に係るキャッピング機構のキャッピング動作を説明するための図である。
【図7】第2実施形態に係るキャッピング機構のキャッピング動作を説明するための図である。
【図8】第3実施形態に係るキャッピング機構のキャッピング動作を説明するための図である。
【図9】第4実施形態に係るキャッピング機構のキャッピング動作を説明するための図である。
【符号の説明】
1 伸縮型プリンタ(伸縮型画像形成装置)
2 ケーシング
41 インクヘッド(記録ヘッド)
9 キャッピング機構
91 キャッピング部材
91c 当接部
91d 調整部
91e 移動吸収体
92 カム部(連動手段)
93 弁手段
94 圧力吸収体
C 空間
P 記録用紙(記録媒体)
【発明の属する技術分野】
本発明は、伸縮型画像形成装置に備えられた記録ヘッドをキャッピングするための機構及びそのキャッピング機構を備えた伸縮型画像形成装置に係る。特に、本発明は、伸縮型画像形成装置にキャッピング機構を備えさせる場合の構成の具体化を図るものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えば下記の特許文献1や特許文献2に開示されているインクジェットタイプの伸縮型画像形成装置(以下、伸縮型プリンタと呼ぶ)が提案されている。この種のプリンタは、使用時には記録用紙のサイズに応じて伸縮させることが可能である一方、非使用時には最も収縮した状態とすることによって携帯性に優れた形状となり、モバイル機器としての利用価値が高い。
【0003】
具体的に各特許文献に開示されている伸縮型プリンタは、互いにスライド可能に嵌め合わされた複数のケーシング部材によってケーシング(筐体)が形成され、このケーシングの内部空間に画像形成機構が収容された構成となっている。
【0004】
そして、非使用時には上記内部空間を最も小さくするようにケーシング部材をスライド(収縮方向へスライド)させることでプリンタの小型化が図れる。一方、使用時には、記録用紙のサイズに応じてケーシング部材をスライド(伸長方向へスライド)させることにより、給紙口及び排紙口の開口幅を記録用紙の幅に合わせて広げると共にその記録用紙の幅方向全体に対する画像形成動作が可能となるように画像形成機構の画像形成可能エリアも広げるようにしている。このようにケーシング部材がスライドすることで、複数種類の記録用紙に対する画像形成を可能にしている。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−230662号公報
【特許文献2】
特開2001−180063号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この種の伸縮型プリンタにあっても、一般的なインクジェットプリンタ(非伸縮型のもの)と同様に、非使用状態が長期間に亘る場合にはインクノズル部分でのインクの乾燥や塵埃等の付着が懸念される。
【0007】
一般的なインクジェットプリンタにあっては、キャリッジの主走査方向の一端側をメンテナンスポジションとしておき、印刷動作の終了後には、キャリッジをメンテナンスポジションまで移動させ、このメンテナンスポジションに配置されたキャッピング部材によってインクヘッドをキャッピングしている。これにより、インクノズル部分を気密状態にしてインクの乾燥や塵埃等の付着を防止している。
【0008】
しかしながら、上記伸縮型プリンタにあっては、非使用状態ではできる限り小型化して携帯性に優れた形状にすることが望まれている。このため、キャリッジ主走査方向の一端側にメンテナンスポジションを設けることは、この主走査方向の長さを長くしてしまうため好ましくない。従って、伸縮型プリンタにキャッピング機構を搭載しようとする場合には、一般的なインクジェットプリンタに搭載されている従来のキャッピング機構とは全く異なる機構が必要となる。
【0009】
そこで、本発明の発明者らは、キャリッジ主走査方向の略中央部にキャッピング機構を配置することについて考察した。
【0010】
この場合、キャッピング機構のキャッピング部材がインクノズル部分に対して進退移動することになるが、このキャッピング部材の移動軌跡の一部は、画像形成時の用紙搬送経路と重なってしまう。つまり、記録用紙の搬送中にキャッピング部材がインクノズル部分に向かって移動する状況が生じたのでは、記録用紙とキャッピング部材とが接触してしまって用紙ジャムが発生してしまうばかりでなく、キャッピング部材の破損も懸念されることになる。このため、キャッピング部材がインクノズル部分に向かって移動するタイミング、つまり、キャッピング動作のタイミングを適切に設定せねば、キャッピング機構を備えた伸縮型プリンタを実現することは不可能である。
【0011】
そして、本発明の発明者らは、伸縮型プリンタに特有の操作であるケーシング部材のスライド(収縮方向へのスライド)操作に着目し、このスライド操作とキャッピング部材によるキャッピング動作とを関連付けることによってキャッピング動作のタイミングを適切に設定することについて考察し、本発明に至った。
【0012】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、伸縮型画像形成装置にキャッピング機構を備えさせる場合において、キャッピング動作のタイミングを適切に設定することで実用性の高いキャッピング機構及びそのキャッピング機構を備えた伸縮型画像形成装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
−発明の概要−
上記の目的を達成するために、本発明は、伸縮型画像形成装置に特有の操作であるケーシングの収縮方向へのスライド操作とキャッピング動作とを連動させることにより、ケーシングを収縮方向へスライド操作しない限りキャッピング動作が実行されないようにした。つまり、非画像形成動作時においてのみ、キャッピング部材がインクノズル部分に向かって移動してキャッピング状態が得られるようにした。
【0014】
−解決手段−
具体的には、伸長姿勢と収縮姿勢との間で伸縮可能なケーシングと、インク滴を吐出する記録ヘッドとを備え、上記ケーシングが伸長姿勢であるときに記録ヘッドから記録媒体に向けてインク滴を吐出して画像形成動作を行う伸縮型画像形成装置に搭載されるキャッピング機構を前提とする。このキャッピング機構に対し、非画像形成動作時における記録ヘッドの位置に対向して配設されたキャッピング部材と、ケーシングの伸長姿勢から収縮姿勢への姿勢変化に連動してキャッピング部材を記録ヘッドに向けて前進させることにより記録ヘッドのキャッピングを行わせる連動手段とを備えさせている。
【0015】
この特定事項により、伸縮型画像形成装置は、記録媒体に対する画像形成動作を実行するときには伸長姿勢とされ、記録ヘッドから記録媒体に向けてインク滴を吐出して所定の画像を形成する。そして、画像形成動作が終了して装置の携帯性を図るべく収縮姿勢にする場合には、ユーザの操作等によってケーシングが伸長姿勢から収縮姿勢へと姿勢変化する。このとき、キャッピング部材と記録ヘッドとは互いに対向しており、この姿勢変化に伴い連動手段はキャッピング部材を記録ヘッドに向けて前進させる。そして、ケーシングが収縮姿勢になった状態では、キャッピング部材が記録ヘッドを完全にキャッピングし、記録ヘッドのインクノズル部分を気密状態にしてインクの乾燥や塵埃等の付着が防止される。
【0016】
このように、本解決手段では、伸縮型画像形成装置に特有の動作であるケーシングの伸長姿勢から収縮姿勢への姿勢変化が行われた際にキャッピング動作が実行されるようにしている。つまり、画像形成動作の非実行時にのみキャッピング動作が行われるものとしている。このため、キャッピング部材の移動軌跡が記録用紙の搬送経路と重なっていたとしても、画像形成動作の実行中にケーシングが姿勢変化することは通常はないので、記録用紙の搬送中にキャッピング部材が記録ヘッドに向かって移動することはなく、用紙ジャムの発生やキャッピング部材の破損を招くことがない。言い換えると、キャッピング機構を装置の一端側(キャリッジ主走査方向の一端側)に設けておく必要のない構成を実現でき、装置の小型化と、用紙ジャムやキャッピング部材の破損等の不具合の回避とを両立することが可能なキャッピング機構及びそのキャッピング機構を備えた伸縮型画像形成装置を提供することができて、キャッピング機構を備えた伸縮型画像形成装置の実用性を高めることが可能となる。
【0017】
尚、本解決手段でいう「伸長姿勢」とは、ケーシングが最も伸長された状態だけではなく、適用される記録媒体のサイズに対応する複数段階の伸長姿勢も含む概念である。これに対し、本解決手段でいう「収縮姿勢」とは、画像形成動作の非実行時(携帯時)の姿勢であって、携帯性を考慮するこの種の伸縮型画像形成装置にあっては最も収縮された状態をいう。
【0018】
上記連動手段の具体的な動作を特定する構成としては以下のものが掲げられる。つまり、ケーシングが伸長姿勢から収縮姿勢へ姿勢変化する際の移動力を、キャッピング部材が記録ヘッドに向けて前進する移動力に変換するよう連動手段を構成するものである。
【0019】
一般に、この種の伸縮型画像形成装置では、ユーザの操作によってケーシングが伸縮される。本解決手段では、このユーザの操作力を有効に利用し、ケーシングを伸長姿勢から収縮姿勢へ姿勢変化させる際の操作力(移動力)を、キャッピング部材が記録ヘッドに向けて前進する移動力として有効利用する構成となっている。このため、キャッピング部材を記録ヘッドに向けて前進させるための特別な駆動源は必要なく、装置構成の簡素化を図ることができる。また、電気的な動力によってケーシングを伸長姿勢から収縮姿勢へ姿勢変化させる構成を採用した場合であっても、共通の駆動源(例えば駆動モータ)で、伸長姿勢から収縮姿勢への姿勢変化動作と、キャッピング部材の前進移動動作とを行うことができ、この場合にもキャッピング部材を前進移動させるための特別な駆動源は必要なく、装置構成の簡素化を図ることができる。
【0020】
また、上記目的を達成するための他の解決手段としては以下の構成が掲げられる。つまり、伸長姿勢と収縮姿勢との間で伸縮可能なケーシングと、インク滴を吐出する記録ヘッドとを備え、上記ケーシングが伸長姿勢であるときに記録ヘッドから記録媒体に向けてインク滴を吐出して画像形成動作を行う一方、上記ケーシングが収縮姿勢であるときに非画像形成動作状態となる伸縮型画像形成装置に搭載されるキャッピング機構を前提とする。このキャッピング機構に対し、非画像形成動作時における記録ヘッドの位置に対向して配設されたキャッピング部材を備えさせ、ケーシングが収縮姿勢にあるときにのみ、キャッピング部材が記録ヘッドのインク吐出部を覆って気密状態とする構成としている。
【0021】
この特定事項によっても、キャッピング部材の移動軌跡が記録用紙の搬送経路と重なっていたとしても、記録用紙の搬送中にキャッピング部材が記録ヘッドに向かって移動することはなく、用紙ジャムの発生やキャッピング部材の破損を招くことがない。このため、装置の小型化と、用紙ジャムやキャッピング部材の破損等の不具合の回避とを両立することが可能なキャッピング機構及びそのキャッピング機構を備えた伸縮型画像形成装置を提供することができる。
【0022】
次に、キャッピング部材によって記録ヘッドをキャッピングする際に、これらキャッピング部材と記録ヘッドとによって形成される空間の空気の存在を考慮した構成について説明する。
【0023】
先ず、キャッピング部材を弾性材料により形成しておき、記録ヘッドに対するキャッピング動作に伴ってキャッピング部材内部空間の開放状態と気密状態とを切り換えるように開閉する弁手段をキャッピング部材に備えさせている。
【0024】
この弁手段の切り換え動作(開閉動作)をケーシングの伸縮動作に連動して行わせた場合の具体的な開閉タイミングは以下のとおりである。つまり、ケーシングが伸長姿勢から収縮姿勢へ姿勢変化する際には、キャッピング部材が記録ヘッドのインク吐出部を気密状態に覆った後に弁手段が閉鎖される一方、ケーシングが収縮姿勢から伸長姿勢へ姿勢変化する際には、キャッピング部材が記録ヘッドに対して離間する方向に移動する前に弁手段が開放されるようにしている。
【0025】
上述した如くキャッピング部材を弾性材料で構成した場合、キャッピング部材を記録ヘッドに比較的大きな圧力で押圧すれば、キャッピング部材の弾性変形により、このキャッピング部材と記録ヘッドとの間に形成される空間の気密性は良好に確保され、インクの乾燥や塵埃等の付着を確実に防止することができる。
【0026】
ところが、このキャッピング部材を記録ヘッドに押圧する際、キャッピング部材の変形に伴って上記空間の容積がこの変形量分だけ小さくなる。つまり、この空間内圧力が上昇してしまう可能性がある。これでは、この空間内の空気がインクノズルの内部に混入してしまって次回のインク吐出動作に支障を来してしまう可能性がある。逆に、キャッピング部材を記録ヘッドから離間させる際には、キャッピング部材が元の形状に戻るように変形し、瞬間的に上記空間の容積がこの変形量分だけ大きくなる。つまり、この空間内圧力が低下してしまう可能性がある。これでは、この空間内が負圧となりインクノズルの内部のインクが不用意に滴下してしまって、装置内部を汚してしまったり良好なメニスカスを形成することができなくなる可能性がある。
【0027】
本解決手段ではこの点を考慮している。つまり、キャッピング部材を記録ヘッドに押圧する際に上記空間の容積が小さくなるタイミングや、キャッピング部材を記録ヘッドから離間させる際に上記空間の容積が大きくなるタイミングにあっては、弁手段を開放して上記空間を外気に連通させる。これにより、この空間の内圧を安定させることができ、インクノズルの内部に空気が混入してしまったり、インクノズルの内部のインクが不用意に滴下してしまったりすることを良好に回避できる。
【0028】
尚、ケーシングが収縮姿勢にあるとき、つまり、非画像形成時には、弁手段が閉鎖されており、キャッピング部材と記録ヘッドとの間に形成される空間の気密性は良好に確保され、インクの乾燥や塵埃等の付着は確実に防止されている。
【0029】
キャッピング部材と記録ヘッドとによって形成される空間の空気の存在を考慮した他の解決手段としては以下のものが掲げられる。つまり、キャッピング部材を弾性材料により形成しておき、キャッピング時にキャッピング部材と記録ヘッドとの間で形成される空間の圧力変化に伴って拡張収縮してこの空間との間で空気の授受を行う圧力吸収体を備えさせたものである。
【0030】
この特定事項では、キャッピング部材を記録ヘッドに押圧する際、キャッピング部材の変形に伴って上記空間の容積がこの変形量分だけ小さくなって空間内圧力が上昇すると、この空間内の空気の一部が圧力吸収体に移動し(圧力吸収体の拡張動作)、この圧力吸収体がこの空間内の圧力を吸収する。逆に、キャッピング部材を記録ヘッドから離間させる際、キャッピング部材が元の形状に戻るように変形して上記空間の容積がこの変形量分だけ大きくなって空間内圧力が低下すると、圧力吸収体内の空気がこの空間内へ供給されて(圧力吸収体の収縮動作)、この空間内の圧力が維持される。
【0031】
従って、本解決手段においても、上述した解決手段の場合と同様に、キャッピング部材と記録ヘッドとによって形成される空間の内圧を安定させることができ、インクノズルの内部に空気が混入してしまったり、インクノズルの内部のインクが不用意に滴下してしまったりすることを良好に回避できる。
【0032】
また、キャッピング時に記録ヘッドに当接する弾性材料で成る当接部と、この当接部に移動吸収体を介して取り付けられた調整部とをキャッピング部材に備えさせ、当接部が記録ヘッドに当接した後の弾性変形を伴う移動量を移動吸収体が吸収することにより調整部と記録ヘッドとの相対距離が不変となる構成としている。この場合、調整部の位置は、ケーシングの伸長姿勢から収縮姿勢への姿勢変化に伴って位置決定される。
【0033】
この特定事項によれば、当接部が記録ヘッドに当接した後は調整部と記録ヘッドとの相対距離が不変であるため、当接部が記録ヘッドに更に押圧されて弾性変形したとしてもキャッピング部材と記録ヘッドとによって形成される空間の容積は不変となる。このため、本解決手段においても空間の内圧を安定させることができ、インクノズルの内部に空気が混入してしまったり、インクノズルの内部のインクが不用意に滴下してしまったりすることを良好に回避できる。
【0034】
また、上述した各解決手段のうち何れかのキャッピング機構を備え、使用する記録媒体のサイズに応じてケーシングを伸縮させ、その伸縮に応じて開口幅が変化した給紙口から記録媒体を供給し、ケーシング内に備えられた画像形成機構によって記録媒体上に画像形成を行うよう構成された伸縮型画像形成装置も本発明の技術的思想の範疇である。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本形態では、インクジェット方式の画像形成動作を行う伸縮型プリンタ(伸縮型画像形成装置)に本発明を適用した場合について説明する。
【0036】
(第1実施形態)
−伸縮型プリンタの全体構成の説明−
図1は本形態に係る伸縮型プリンタ1の斜視図を示しており、図1(a)はケーシング2が最も収縮した非使用時の状態(本発明でいう収縮姿勢)を、図1(b)はケーシング2が最も伸長した使用時の状態(本発明でいう伸長姿勢の一形態であって記録用紙に対する画像形成を実行可能な状態)をそれぞれ示す。また、図2(a)は、図1(a)におけるA−A線に沿った断面図であり、図2(b)は、図1(b)におけるB−B線に沿った断面図である。また、これら図では内部機構(画像形成機構)を省略している。
【0037】
図1及び図2に示すように、本伸縮型プリンタ1は、箱形のセンタケーシング21と左右のサイドケーシング22,23とを備えており、センタケーシング21に対して各サイドケーシング22,23がスライド移動することによってケーシング2全体の伸縮が可能となっている。
【0038】
具体的には、図2に示す如く、センタケーシング21の両端開口の縁部にはフランジ部21a,21bが形成されている。このフランジ部21a,21bは、開口の縁部からケーシング外側、つまり、上端縁からは上方に、下端縁からは下方にそれぞれ延びている。また、図示しないが、この開口の縁部の前端縁(図中の手前側の端縁)からは前方(図中の手前側)に、後端縁(図中の奥側の端縁)からは後方(図中の奥側)にそれぞれ延びるフランジ部も形成されている。
【0039】
一方、各サイドケーシング22,23の開口の縁部にもフランジ部22a,22b,23a,23bが形成されている。このフランジ部22a,22b,23a,23bは、開口の縁部からケーシング内側、つまり、上端縁からは下方に、下端縁からは上方にそれぞれ延びている。また、図示しないが、この開口の縁部の前端縁からは後方に、後端縁からは前方にそれぞれ延びるフランジ部も形成されている。
【0040】
このように各フランジ部21a〜23bが形成されたケーシング21,22,23同士が一体的に組み付けられているため、図2(a)に示すように、ケーシング2を最も収縮させた場合には、センタケーシング21のフランジ部21a,21bがサイドケーシング22,23の内側面に当接する。一方、図2(b)に示すように、ケーシング2を最も伸長させた場合には、センタケーシング21のフランジ部21a,21bとサイドケーシング22,23のフランジ部22a,22b,23a,23bとが係止して、それ以上の伸長を阻止し、サイドケーシング22,23がセンタケーシング21から抜け落ちないようになっている。
【0041】
具体的に、ケーシング2を最も収縮させた状態の幅寸法(図2の左右方向寸法)は160mmであり、ケーシング2を最も伸長させた状態の幅寸法は280mmである。これら幅寸法はこれに限るものではない。
【0042】
また、センタケーシング21の前面21cにはその幅方向の全体に亘って給紙口24が形成されており、サイドケーシング22,23の前面22c,23cにも上記給紙口24に連続する給紙口25,26が形成されている。
【0043】
このため、図1(a)及び図2(a)に示す状態ではセンタケーシング21の給紙口24の両端部分とサイドケーシング22,23とが重なり合っており、給紙口全体の幅寸法は小さくなる。一方、図1(b)及び図2(b)に示す状態ではセンタケーシング21の給紙口24からサイドケーシング22,23の給紙口25,26に亘る幅寸法の大きな給紙口が得られる。
【0044】
同様に、センタケーシング21の背面及びサイドケーシング22,23の背面には、サイドケーシング22,23のスライドに伴って幅寸法が変化する図示しない排紙口が形成されており、上記給紙口から給紙されて、ケーシング2内の画像形成機構によって画像形成が行われた記録用紙が、この排紙口から排出されることになる。
【0045】
このようにしてセンタケーシング21に対する各サイドケーシング22,23のスライド移動により、ケーシング2が伸縮し、適用可能な用紙サイズが変更できるようになっている。
【0046】
また、図3に示すように、各サイドケーシング22,23の底面にはラックギア83,84が配設されている。これらラックギア83,84は、ギア同士が水平方向で互いに対向するように配設されていると共に、このギア同士の間にピニオン85が鉛直軸回りに回転自在に支持されている。このピニオン85が各ラックギア83,84に噛み合っていることにより、ラックギア83,84同士はスライド移動時には互いに反対方向へ連動する構成となっている。つまり、一方のサイドケーシング22を収縮方向へ移動させる場合、その移動操作力がピニオン85を介して相手側のラックギア84に伝わり、これによって他方のサイドケーシング23も収縮方向へ移動(図3において(a)(b)の順で移動)する。逆に、一方のサイドケーシング22を伸長方向へ移動させる場合、その移動操作力がピニオン85を介して相手側のラックギア84に伝わり、これによって他方のサイドケーシング23も伸長方向へ移動(図3において(b)(a)の順で移動)するよう構成されている。
【0047】
次に、ケーシング2内に収容されている画像形成機構について説明する。図4は画像形成機構の斜視図である。この図4に示すように画像形成機構は、給紙口(この給紙口は図中の奥側に形成されている)から供給される記録媒体としての記録用紙Pへ画像形成を行うためのものであり、記録ヘッドとしてのインクヘッド41、このインクヘッド41と図示しないインクタンクとを搭載したキャリッジ42、このキャリッジ42を主走査方向に案内するためのガイドシャフト43、画像形成動作時に記録用紙Pの支持台となるプラテン44を備えている。また、上記インクカートリッジは、Bk(ブラック),Y(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン)の各インク毎に個別にキャリッジ42上に搭載されており、それぞれが独立して交換可能となっている。
【0048】
また、この画像形成機構では、ケーシング2を伸長させた状態で電源スイッチをONすると、キャリッジ駆動モータが回転駆動して、上記ガイドシャフト43を支持しているスライドレール45が左方向に移動する(図4に示す矢印参照)。
【0049】
詳しく説明すると、スライドレール45は、一対のボールベアリング列からなるリテーナを介してスライドレール基台46に対し摺動自在に嵌合されており、そのスライドレール基台46はケーシング2内部の図示しないフレームにビス止め等の手段によって固定されている。
【0050】
図5に示すように、スライドレール45の後端両側(図5では下部両側)には、第1ワイヤー51が掛張されており、この第1のワイヤー51が、キャリッジ駆動モータ52に伝動連結された第1ワイヤー駆動プーリ53aに掛張され、キャリッジ駆動モータ52を一方向(図5に矢印で示す方向)に回転させると、第1ワイヤー駆動プーリ53aが図中時計回り方向に回転することにより、スライドレール45が左方向に移動される。
【0051】
一方、キャリッジ42の後部に接続された第2ワイヤー57は、スライドレール45の両端に設けたプーリ54,55を経由して、第2ワイヤー駆動プーリ53bに掛張されており、この第2ワイヤー駆動プーリ53bは、第1ワイヤー駆動プーリ53aと同一軸心上に一体化されてキャリッジ駆動モータ52に伝動連結されたワイヤ駆動プーリ53を構成している。
【0052】
従って、キャリッジ駆動モータ52の回転により、スライドレール45が左方向に移動すると共に、キャリッジ42が、スライドレール45に固定されているガイドシャフト43に沿って左方向に移動する。尚、本実施形態では、第1ワイヤー駆動プーリ53aの直径と、第2ワイヤー駆動プーリ53bの直径の比率を2:1に設定している。このような設定により、キャリッジ42のスライドレール45に対する移動速度が、スライドレール45の移動速度の1/2になるため、キャリッジ42の移動動作がスムーズになり、また、その位置制御を精度よく行えるので、良好な画像品位が得られる。
【0053】
キャリッジ駆動モータの回転方向が上記とは逆方向に切り換えられると、図5の矢印方向とは逆向きの回転となり、スライドレール45が右方向に移動すると共に、キャリッジ42も右方向へ移動する。以上のようにキャリッジ42が移動する際に、キャリッジ42に設けたフォトセンサー(図示省略)によってタイミングフェンス58が読み取られ、これにより、キャリッジ42の移動速度が制御され、画像形成動作が行われる。
【0054】
一方、用紙搬送は、図示しない用紙搬送モータによって回転駆動される用紙フィードローラ71に記録用紙Pを噛み込ませることにより行われる。用紙フィードローラ71は、記録用紙Pを噛み込み、プラテン44上を間欠的に搬送し排紙ローラ72へ搬出する。つまり、用紙フィードローラ71は、インクヘッド41の動作と同期を取って、必要送り量分だけ回転した後は、画像形成のために停止する動作を繰り返し行う。
【0055】
この用紙フィードローラ71には、図示しないピンチローラが、スプリング力によって付勢圧接しており、この圧接力で、用紙を挟持し搬送する。同様に、排紙ローラ72には、排紙スターローラ73が、スプリング力によって付勢圧接しており、この圧接力で用紙が排出される。
【0056】
用紙フィードローラ71の長さは、A4用紙を適用するの場合、中央の140mmにしか摺接しない。用紙の搬送力としては、この程度の長さで十分であるが、A4用紙の幅210mmから140mmを差し引いた70mm(はみ出し部分)に対するガイドが必要となる。そこで、本実施形態では、用紙フィードローラ71に中空パイプを用い、その中に補助用として、フィードローラ中軸を引き出し自在に収納している。つまり、ケーシング2の伸長に伴ってフィードローラ中軸が引き出され、A4用紙の幅方向全体に接触できるようにしている。
【0057】
同様に、プラテン44が形成された台板の内部には、プラテン補助板44aが引き出し自在に収納されており、使用時には、サイドケーシング22,23の引き出し動作に伴いプラテン補助板44aを引き出すことで、プラテン44からはみ出た用紙を案内できるようにしている。
【0058】
−画像形成動作−
上述の如く構成された伸縮型プリンタ1における画像形成動作について以下に説明する。先ず、収縮姿勢にあるケーシング2を、使用する記録用紙Pに応じて伸長させる。つまり、ユーザの操作によってセンタケーシング21に対して各サイドケーシング22,23を左右外側に引き出し、ケーシング2を所定の伸長姿勢にする。
【0059】
この状態で、図示しないコンピュータ等の外部端末から画像情報に基づく画像形成要求が伸縮型プリンタ1に対してなされる。画像形成要求を受信した伸縮型プリンタ1は、給紙口から供給された記録用紙Pをケーシング2内に搬送し、上述した画像形成機構による画像形成動作を行う。つまり、インクヘッド41のインクノズルよりプラテン44上の記録用紙Pへ画像情報に対応してインク滴が吹き付けられる。この時、記録用紙Pはプラテン44上で一旦停止されている。インク滴を吹き付けつつ、キャリッジ42は、ガイドシャフト43に案内されて、主走査方向(ガイドシャフト43の延長方向)に一ライン分走査される(上述したキャリッジ42及びスライドレール45の移動)。それが終了すると、記録用紙Pは、プラテン44上で副走査方向に一定の幅だけ移動する。画像形成機構において、上記処理が画像情報に対応し継続して実施されることにより、記録用紙Pの全面に画像形成がなされる。このようにして画像形成が行われた記録用紙Pは、排紙口から排出され、印刷物としてユーザに提供されることになる。
【0060】
−キャッピング機構の説明−
次に、本形態の特徴部分であるキャッピング機構について図4及び図6を用いて説明する。このキャッピング機構9は、インクヘッド41をキャッピングすることでインクノズル47の周辺部分を気密状態にしてインクの乾燥や塵埃等の付着を防止するためのものである。これにより、次回の画像形成動作時におけるインク吐出性能を良好に維持できるようにしている。尚、図6は、(a)が通常使用時(画像形成動作が可能な状態)、(b)がキャッピング動作開始時、(c)がキャッピング動作の完了時の状態をそれぞれ示している。
【0061】
図4に示すように、上記プラテン44の中央部(キャリッジ42の主走査方向の中央部)には矩形状の開口44bが形成されており、プラテン44の下側で且つこの開口44bの周辺部にキャッピング機構9が配設されている。このキャッピング機構9は、ゴム等の弾性材料によって形成されたキャッピング部材91(図6参照)と、このキャッピング部材91を昇降自在に支持する図示しない支持フレームとを備えている。このキャッピング部材91を昇降させるための機構については後述する。
【0062】
キャッピング部材91は、上部が開放された箱型の部材であって、上記プラテン44に形成されている開口44bに臨む位置に配設されている。また、このキャッピング部材91の開放側端縁部91a(上端縁部)のみが他の部分よりも薄肉に形成されている。つまり、この開放側端縁部91aのみが外力によって容易に圧縮等の変形が可能となっている。また、このキャッピング部材91の上面は同一水平面上にあり、且つ、このキャッピング部材91の下面も同一水平面上にある。そして、後述するキャッピング動作に伴う昇降時にはこれら各面の水平状態が維持されたまま昇降移動するようになっている。尚、このキャッピング部材91は、その全体がゴム等の弾性材料によって形成されている必要はなく、少なくとも上記開放側端縁部91aのみが弾性材料によって形成されておればよい。
【0063】
そして、一方のサイドケーシング22の底板上には、キャッピング部材91の下面に当接することによってこのキャッピング部材91を昇降移動させるための連動手段としてのカム部92を備えている。以下、このカム部92の形状及びサイドケーシング22のスライド移動に伴うカム部92の作用について説明する。
【0064】
このカム部92は、サイドケーシング22の外側(図6における右側)に向かって次第に上方に傾斜する傾斜面92aと、この傾斜面92aの外側端(図6における右側端)から水平方向に延びる水平面92bとを備えている。
【0065】
そして、図6(a)に示すようにケーシング2が伸長姿勢にある通常使用時には、傾斜面92aはキャッピング部材91の下面から退避した位置(図6(a)における右側位置)にあり、このキャッピング部材91の下面にはカム部92は接触していない。このため、キャッピング部材91は自重によって最降下位置にある。これにより、キャッピング部材91は、インクヘッド41の下面及びインクノズル47に対して所定間隔を存した下側に位置しており、これらとの間に記録用紙Pの搬送路を確保している。つまり、この状態では、キャッピング部材91とインクノズル47との間に形成されている搬送路を記録用紙Pが搬送されて上記画像形成動作が行われる。
【0066】
この状態からケーシング2を収縮方向にスライド移動(サイドケーシング22の図6における左方向への移動)させると、図6(b)に示すように、カム部92の傾斜面92aがキャッピング部材91の下面に接触し、キャッピング部材91はこの傾斜面92aから上方への付勢力を受けて、上昇移動を開始する(図6(b)の各矢印参照)。つまり、ケーシング2を伸長姿勢から収縮姿勢へ姿勢変化させる際の移動力(操作力)を、キャッピング部材91がインクヘッド41に向けて前進する移動力に変換することになる。このようにしてサイドケーシング22を収縮方向にスライド移動させるに従ってキャッピング部材91は傾斜面92aに沿って徐々に上方へ移動していく。
【0067】
そして、このサイドケーシング22を更に収縮方向にスライド移動させていくと、図6(c)に示すように、キャッピング部材91の下面が傾斜面92aの上端位置に達して水平面92bに当接することになる。これにより、キャッピング部材91は、この水平面92b上を相対的に水平方向にスライド移動することになり、キャッピング部材91は上昇移動しない。つまり、キャッピング部材91の下面が傾斜面92aの上端位置に達するまでは、キャッピング部材91が上方へ移動し、その後、キャッピング部材91の下面が水平面92bに達した時点でキャッピング部材91の上方移動は停止する。
【0068】
また、図6(a)に示す通常使用時において、キャッピング部材91の下面からカム部92の上端(水平面92bの高さ位置)までの寸法(図6(a)における寸法t1)は、インクヘッド41の下面とキャッピング部材91の上面との間の間隔寸法(図6(a)における寸法t2)よりも僅かに大きく設定されている。このため、キャッピング部材91の下面が傾斜面92aから付勢力を受けて上昇移動していく途中で、このキャッピング部材91の開放側端縁部91aはインクヘッド41の下面に当接するが、その後も、キャッピング部材91の下面は傾斜面92aから付勢力を受け続けるため、キャッピング部材91の開放側端縁部91aはインクヘッド41の下面に所定圧力をもって押圧され、それに伴い、開放側端縁部91aは圧縮される。これにより、インクヘッドの下面に設けられたインクノズル47は、キャッピング部材91によって高い気密性をもって覆われることになる。
【0069】
このように、本形態では、伸縮型プリンタ1の携帯性を図るべく収縮姿勢にする場合に、ケーシング2を伸長姿勢から収縮姿勢へと姿勢変化させれば、同時にキャッピング部材91がインクヘッド41をキャッピングし、インクノズル47の周辺部分を気密状態にしてインクの乾燥や塵埃等の付着が防止される。つまり、伸縮型プリンタ1に特有の動作であるケーシング2の伸長姿勢から収縮姿勢への姿勢変化が行われた際にキャッピング動作が連動する構成となっている。言い換えると、画像形成動作の非実行時にのみキャッピング動作が行われる構成となっている。このため、キャッピング部材91の移動軌跡が記録用紙Pの搬送経路と重なっていても、記録用紙Pの搬送中にキャッピング部材91がインクヘッド41に向かって移動することはなく、用紙ジャムの発生やキャッピング部材91の破損を招くことがない。このため、キャッピング機構9をプリンタ1の一端側(キャリッジ主走査方向の一端側)に設けておく必要のない構成を実現でき、伸縮型プリンタ1の小型化と、用紙ジャムやキャッピング部材91の破損等の不具合の回避とを両立することが可能なキャッピング機構9及びそのキャッピング機構9を備えた伸縮型プリンタ1を提供することができる。
【0070】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について図7を用いて説明する。本形態は、キャッピング部材91に弁手段93を備えさせ、且つカム部92としてこの弁手段93の開閉タイミングを調整するための第2の傾斜面92cを備えさせたものである。その他の構成は上述した第1実施形態のものと同様であるので、ここでは弁手段93及び傾斜面92cについてのみ説明する。
【0071】
尚、図7は、(a)が通常使用時(画像形成動作が可能な状態)、(b)がキャッピング動作開始時、(c)がキャッピング動作の完了時、(d)がキャッピング動作の完了後の弁手段閉鎖時の状態をそれぞれ示している。
【0072】
キャッピング部材91の底板の中央部に上下方向に貫通する貫通孔91bが形成されている。この貫通孔91bには弁手段93が摺動自在に挿通されている。
【0073】
上記貫通孔91bは、断面円形の孔であり、その内径は例えば5mmに設定されている。
【0074】
一方、弁手段93は、上記貫通孔91bに挿通された本体部93aと、この本体部93aの上端に一体形成された弁体93bとを備えている。本体部93aは断面円形であって、その外径は、上記貫通孔91bの内径よりも僅かに小さい値(例えば3mm)に設定されている。そして、弁体93bは、下面が水平面で形成されており、その外径は上記貫通孔91bの内径よりも僅かに大きい値(例えば8mm)に設定されている。
【0075】
このため、図7(a)〜(c)に示すように、弁体93bがキャッピング部材91の底面から浮いた状態では、貫通孔91bの内面と弁手段93の本体部93aの外面との間に形成されている隙間によってキャッピング部材91の内部空間Cと外気とは連通している。
【0076】
それに対し、図7(d)に示すように、弁体93bがキャッピング部材91の底面に当接した状態では、貫通孔91bが弁体93bによって閉鎖され、キャッピング部材91の内部空間Cと外気とが遮断される構成となっている。つまり、この状態では、インクノズル47の周辺部分は気密となる。
【0077】
そして、サイドケーシング22の底板上に備えられているカム部92としては、上記弁手段93の昇降位置を決定するための上記傾斜面92cが備えられている。この傾斜面92cはサイドケーシング22の外側(図7における右側)に向かって次第に下方に傾斜する形状で形成されている。そして、その傾斜面92cの位置は、サイドケーシング22を収縮方向にスライド移動させていった際に、図7(c)に示すように、キャッピング部材91の下面がカム部92の水平面92bに達した後に、弁手段93の本体部93aが傾斜面92cに臨む位置に設定されている。つまり、ケーシング2が伸長姿勢から収縮姿勢へ姿勢変化する際、キャッピング部材91がインクヘッド41のインクノズル47を気密状態に覆った後に、弁手段93が傾斜面92cに沿って下降していき、その後、弁体93bがキャッピング部材91の底面に当接して、貫通孔91bが弁体93bによって閉鎖され、キャッピング部材91の内部空間Cと外気とが遮断される構成となっている。
【0078】
一方、ケーシング2が収縮姿勢から伸長姿勢へ姿勢変化する際には、キャッピング部材91がインクヘッド41に対して離間する方向に移動する前に、弁手段93が傾斜面92cに沿って上昇していき、貫通孔91bが開放されて、キャッピング部材91の内部空間Cと外気とが連通される構成となっている。
【0079】
このような構成であるため、本実施形態では、キャッピング部材91をインクヘッド41に押圧する際に上記空間Cの容積が小さくなる(図7(a)に示す寸法Hが図7(c)に示す寸法hとなる)タイミングや、キャッピング部材91をインクヘッド41から離間させる際に上記空間Cの容積が大きくなる(図7(d)に示す寸法hが図7(a)に示す寸法Hとなる)タイミングにおいて、弁手段93を開放側に位置させて上記空間Cを外気に連通させる。これにより、この空間Cの内圧を安定させることができ、インクノズル47の内部に空気が混入してしまったり、インクノズル47の内部のインクが不用意に滴下してしまったりすることを良好に回避できる。その結果、次回の画像形成動作時におけるインク吐出性能を良好に維持でき、また、滴下したインクによって装置内部が汚れてしまうといったことを回避できる。
【0080】
尚、本形態では、弁手段93が自重によって貫通孔91bを閉鎖する構成としていたが、この弁手段93に下向き(貫通孔91bを閉鎖する方向)の付勢力を与えるスプリング等の付勢手段を備えさせる構成としてもよい。
【0081】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について図8を用いて説明する。本形態は、キャッピング部材91に圧力吸収体94を備えさせ、キャッピング時にキャッピング部材91とインクヘッド41とによって形成される空間Cの圧力変動を、この圧力吸収体94によって吸収できるようにしたものである。その他の構成は上述した第1実施形態のものと同様であるので、ここでは圧力吸収体94についてのみ説明する。
【0082】
尚、図8は、(a)が通常使用時(画像形成動作が可能な状態)、(b)がキャッピング動作開始時、(c)がキャッピング動作の完了時の状態をそれぞれ示している。
【0083】
上記圧力吸収体94は、ゴムまたは樹脂等の軟質材料で形成された袋体であって、キャッピング部材91の側面に接続されている。そして、この圧力吸収体94の内部空間とキャッピング部材91の内部空間Cとは連通されている。また、圧力吸収体94は、外周部が蛇腹形状となっていて、この外周部の変形によって内部空間の容積が容易に変化可能となっている。言い換えると、キャッピング時にキャッピング部材91とインクヘッド41とによって形成される空間Cの内圧が僅かでも変化すると、その圧力によって圧力吸収体94が変形して、この圧力吸収体94の内部空間の容積が容易に変化するようになっている。
【0084】
以下、この圧力吸収体94を備えさせたことによる作用について説明する。先ず、ケーシング2を収縮方向へ姿勢変化させる場合には、キャッピング部材91がインクヘッド41の下面に押圧され、キャッピング部材91の変形に伴って上記空間Cの容積がこの変形量分だけ小さくなって空間内圧力が上昇する。このとき、この空間C内の空気の一部が圧力吸収体94に移動し(圧力吸収体94の拡張動作)、この圧力吸収体94がこの空間C内の圧力を吸収する(図8(c)参照)。
【0085】
逆に、ケーシング2を伸長方向へ姿勢変化させる場合には、キャッピング部材91がインクヘッド41から離間し、キャッピング部材91が元の形状に戻るように変形して上記空間Cの容積がこの変形量分だけ大きくなって空間内圧力が低下する。このとき、圧力吸収体94内の空気がこの空間C内へ供給されて(圧力吸収体94の収縮動作)、この空間C内の圧力が維持される。
【0086】
従って、本実施形態においても、上述した第2実施形態の場合と同様に、キャッピング部材91とインクヘッド41とによって形成される空間Cの内圧を安定させることができ、インクノズル47の内部に空気が混入してしまったり、インクノズルの内部のインクが不用意に滴下してしまったりすることを良好に回避できる。
【0087】
また、本形態の構成によれば、キャッピング部材91がインクヘッド41の下面に押圧された状況で、温度変化に伴って空間C内の空気が膨張した場合であっても、その膨張分を圧力吸収体94が吸収することになるため、空間C内の圧力維持の信頼性の向上を図ることができる。
【0088】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について図9を用いて説明する。本形態は、キャッピング部材91の構成を変更することによって、キャッピング部材91とインクヘッド41とによって形成される空間Cの容積を一定に維持するものである。その他の構成は上述した第1実施形態のものと同様であるので、ここではキャッピング部材91の構成及び上記空間Cの容積を一定に維持するための構成についてのみ説明する。
【0089】
尚、図9は、(a)が通常使用時(画像形成動作が可能な状態)、(b)がキャッピング動作開始時、(c)がキャッピング動作の途中の状態、(d)がキャッピング動作の完了時の状態をそれぞれ示している。
【0090】
図9に示すように、本形態に係るキャッピング部材91は、キャッピング時にインクヘッド41に当接する当接部91c、この当接部91cに対して所定間隔を存した位置にある調整部91d、これら当接部91cと調整部91dとを連結する移動吸収体91eを備えて構成されている。
【0091】
当接部91cは、キャッピング部材91の上端縁を構成する環状の部材であって全体がゴム等の弾性体で形成されている。
【0092】
調整部91dは、キャッピング部材91の下端面を構成する部材であって構成材料はゴム等の弾性体に限らず樹脂材料等であってもよい。
【0093】
移動吸収体91eは、キャッピング部材91の側面を構成する部材であって、上記当接部91cと調整部91dとを連結する蛇腹状の部材である。この移動吸収体91eの構成材料もゴム等の弾性体に限らず樹脂材料等であってもよい。
【0094】
一方、本形態におけるカム部92は、上下一対のカム面95,96を備えている。上側のカム面95は、上記当接部91cの位置をガイドするためのものであって、サイドケーシング22の外側(図9における右側)に向かって次第に上方に傾斜する傾斜面95aを備えている。
【0095】
一方、下側のカム面96は、上記調整部91dの位置をガイドするためのものであって、サイドケーシング22の外側(図9における右側)に向かって次第に上方に傾斜する傾斜面96aと、この傾斜面96aの外側端(図9における右側端)から水平方向に延びる水平面96bとを備えている。
【0096】
つまり、ケーシング2を収縮方向へ移動させる際の初期時(図9(a)の状態から図9(b)の状態を経て図9(c)の状態になるまでの間)では、これら各カム面95,96に備えられた傾斜面95a,96aにより当接部91c及び調整部91dが共に上昇移動する(図9(b),(c)の各矢印参照)。
【0097】
その後、図9(c),(d)に示すように、調整部91dが傾斜面96aの上端位置に達した時点で、この調整部91dは水平面96bにガイドされることになるため、この調整部91dの上方移動は停止する。つまり、当接部91cのみが上昇移動し、傾斜面95aから受ける付勢力によって当接部91cはインクヘッド41の下面に押圧されて弾性変形する。
【0098】
このように当接部91cが気密性を向上させるべく上昇移動したとしても調整部91dは上方移動することがない。つまり、この調整部91dとインクヘッド41との相対距離が不変であるため、キャッピング部材91とインクヘッド41とによって形成される空間Cの容積は不変である。このため、この空間Cの内圧を一定に維持しながら当接部91cを上昇移動させて高い気密性が得られることになる。その結果、本実施形態にあっても、インクノズル47の内部に空気が混入してしまったり、インクノズル47の内部のインクが不用意に滴下してしまったりすることを良好に回避できる。
【0099】
−その他の実施形態−
上述した各実施形態では、インクジェット方式の画像形成動作を行う伸縮型プリンタ1に本発明を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、電子写真方式等により画像形成動作を行う伸縮型プリンタに適用することも可能である。
【0100】
また、上記各実施形態では、サイドケーシング22の底板上に備えられたカム部92によって、ケーシング2の移動力をキャッピング部材91の移動力に変換していたが、リンク機構等、その他の機構によって移動力を変換するようにしてもよい。
【0101】
更には、キャッピング機構9は、装置のコンパクト化を図る上ではキャリッジ主走査方向の略中央部に配置することが好ましいが、本発明にあってはキャッピング機構9の配設位置は特に限定されるものではない。
【0102】
加えて、上記各実施形態では、ユーザの手動操作によってケーシング2の姿勢を伸縮変化させるようにしていたが、本発明はこれに限らず、電気的な動力(例えば電気モータの駆動力)によってケーシング2の姿勢を伸縮変化させる構成に対しても適用可能である。この場合、キャッピング部材91をインクヘッド41に向けて進退移動させるための機構としては、上述した各実施形態の如くカム機構等を使用してもよいし、電気的な動力を直接的にキャッピング部材91に作用させるようにしてもよい(例えば、キャッピング部材91にラックギヤを設けておき、駆動モータの駆動軸に設けたピニオンにラックギヤを噛み合わせる構成など)。
【0103】
【発明の効果】
以上のように、本発明では、伸縮型画像形成装置に特有の操作であるケーシングの収縮方向へのスライド操作とキャッピング動作とを連動させることにより、ケーシングを収縮方向へスライド操作しない限りキャッピング動作が実行されないようにしている。このため、キャッピング部材の移動軌跡が記録用紙の搬送経路と重なっていたとしても、記録用紙の搬送中にキャッピング部材が記録ヘッドに向かって移動することはなく、用紙ジャムの発生やキャッピング部材の破損を招くことがない。その結果、キャッピング機構を装置の一端側(キャリッジ主走査方向の一端側)に設けておく必要のない構成を実現でき、装置の小型化と、用紙ジャムやキャッピング部材の破損等の不具合の回避とを両立することが可能なキャッピング機構及びそのキャッピング機構を備えた伸縮型画像形成装置を提供することができる。
【0104】
また、キャッピング部材に弁手段を備えさせるなどして、キャッピング部材と記録ヘッドとによって形成される空間の内圧を安定的に維持できるようにした場合には、キャッピング動作時の圧力変化が原因でインクノズルの内部に空気が混入してしまったりインクノズルの内部のインクが不用意に滴下してしまったりするといった不具合を回避できる。その結果、次回の画像形成動作時におけるインク吐出性能を良好に維持でき、また、滴下したインクによって装置内部が汚れてしまうといったことを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係る伸縮型プリンタを示し、(a)はケーシングが収縮姿勢にある状態を、(b)はケーシングが伸長姿勢にある状態をそれぞれ示す斜視図である。
【図2】(a)は、図1(a)におけるA−A線に沿った断面図であり、(b)は、図1(b)におけるB−B線に沿った断面図である。
【図3】各ケーシングに備えられたラックギアの移動状態を示す斜視図である。
【図4】画像形成機構の斜視図である。
【図5】画像形成機構の一部を示す平面図である。
【図6】第1実施形態に係るキャッピング機構のキャッピング動作を説明するための図である。
【図7】第2実施形態に係るキャッピング機構のキャッピング動作を説明するための図である。
【図8】第3実施形態に係るキャッピング機構のキャッピング動作を説明するための図である。
【図9】第4実施形態に係るキャッピング機構のキャッピング動作を説明するための図である。
【符号の説明】
1 伸縮型プリンタ(伸縮型画像形成装置)
2 ケーシング
41 インクヘッド(記録ヘッド)
9 キャッピング機構
91 キャッピング部材
91c 当接部
91d 調整部
91e 移動吸収体
92 カム部(連動手段)
93 弁手段
94 圧力吸収体
C 空間
P 記録用紙(記録媒体)
Claims (9)
- 伸長姿勢と収縮姿勢との間で伸縮可能なケーシングと、インク滴を吐出する記録ヘッドとを備え、上記ケーシングが伸長姿勢であるときに記録ヘッドから記録媒体に向けてインク滴を吐出して画像形成動作を行う伸縮型画像形成装置に搭載されるキャッピング機構であって、
非画像形成動作時における上記記録ヘッドの位置に対向して配設されたキャッピング部材と、
上記ケーシングの伸長姿勢から収縮姿勢への姿勢変化に連動してキャッピング部材を記録ヘッドに向けて前進させることにより、記録ヘッドのキャッピングを行わせる連動手段とを備えていることを特徴とする伸縮型画像形成装置のキャッピング機構。 - 伸長姿勢と収縮姿勢との間で伸縮可能なケーシングと、インク滴を吐出する記録ヘッドとを備え、上記ケーシングが伸長姿勢であるときに記録ヘッドから記録媒体に向けてインク滴を吐出して画像形成動作を行う一方、上記ケーシングが収縮姿勢であるときに非画像形成動作状態となる伸縮型画像形成装置に搭載されるキャッピング機構であって、
非画像形成動作時における上記記録ヘッドの位置に対向して配設されたキャッピング部材を備え、上記ケーシングが収縮姿勢にあるときにのみ、キャッピング部材が記録ヘッドのインク吐出部を覆って気密状態とするよう構成されていることを特徴とする伸縮型画像形成装置のキャッピング機構。 - 請求項1記載の伸縮型画像形成装置のキャッピング機構において、
連動手段は、ケーシングが伸長姿勢から収縮姿勢へ姿勢変化する際の移動力を、キャッピング部材が記録ヘッドに向けて前進する移動力に変換する構成となっていることを特徴とする伸縮型画像形成装置のキャッピング機構。 - 請求項1、2または3記載の伸縮型画像形成装置のキャッピング機構において、
キャッピング部材は、弾性材料により形成されていると共に、記録ヘッドに対するキャッピング動作に伴ってキャッピング部材内部空間の開放状態と気密状態とを切り換えるように開閉する弁手段を備えていることを特徴とする伸縮型画像形成装置のキャッピング機構。 - 請求項4記載の伸縮型画像形成装置のキャッピング機構において、
弁手段の開閉動作はケーシングの伸縮動作に連動して行われるようになっており、
上記弁手段は、ケーシングが伸長姿勢から収縮姿勢へ姿勢変化する際には、キャッピング部材が記録ヘッドのインク吐出部を気密状態に覆った後に閉鎖される一方、ケーシングが収縮姿勢から伸長姿勢へ姿勢変化する際には、キャッピング部材が記録ヘッドに対して離間する方向に移動する前に開放されるよう構成されていることを特徴とする伸縮型画像形成装置のキャッピング機構。 - 請求項1、2または3記載の伸縮型画像形成装置のキャッピング機構において、
キャッピング部材は、弾性材料により形成されていると共に、キャッピング時に記録ヘッドとの間で形成する空間の圧力変化に伴って拡張収縮してこの空間との間で空気の授受を行う圧力吸収体が備えられていることを特徴とする伸縮型画像形成装置のキャッピング機構。 - 請求項1、2または3記載の伸縮型画像形成装置のキャッピング機構において、
キャッピング部材は、キャッピング時に記録ヘッドに当接する弾性材料で成る当接部と、この当接部に移動吸収体を介して取り付けられた調整部とを備えており、
上記当接部が記録ヘッドに当接した後の弾性変形を伴う移動量を移動吸収体が吸収することにより調整部と記録ヘッドとの相対距離が不変となる構成とされていることを特徴とする伸縮型画像形成装置のキャッピング機構。 - 請求項7記載の伸縮型画像形成装置のキャッピング機構において、
調整部の位置は、ケーシングの伸長姿勢から収縮姿勢への姿勢変化に伴って位置決定されるよう構成されていることを特徴とする伸縮型画像形成装置のキャッピング機構。 - 上記請求項1〜8のうち何れか一つに記載の伸縮型画像形成装置のキャッピング機構を備え、使用する記録媒体のサイズに応じてケーシングを伸縮させ、その伸縮に応じて開口幅が変化した給紙口から記録媒体を供給し、ケーシング内に備えられた画像形成機構によって記録媒体上に画像形成を行うよう構成されていることを特徴とする伸縮型画像形成装置。
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JP2010201700A (ja) * | 2009-03-02 | 2010-09-16 | Brother Ind Ltd | 画像記録装置 |
JP2013237207A (ja) * | 2012-05-16 | 2013-11-28 | Seiko Epson Corp | 液体噴射装置 |
JP2019025751A (ja) * | 2017-07-28 | 2019-02-21 | キヤノン株式会社 | インクジェット記録装置 |
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