JP2004141310A - 脱臭装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】脱臭体4の上流側に水分添加手段3を設け、脱臭体4としてマンガン、銅、コバルトの少なくともいずれかを含む遷移金属の水酸化物および酸化物の混合体もしくは複合体を含むことにより、脱臭体4の硫化水素除去能力を十分に発揮させ、長寿命の脱臭装置とすることができる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に下水やトイレ内の主要悪臭である硫化水素臭を除去するための脱臭装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の脱臭装置は、オゾンによる酸化作用を利用するものや(例えば特許文献1参照)、吸着剤の吸着作用を利用して脱臭するものなどが一般的に存在する。
【0003】
特に硫化水素臭を除去する手段として、発明者らは、銅、マンガン、コバルトらの遷移金属酸化物を吸着剤とする脱臭装置を提案してきた(例えば、特許文献2および3参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平07−148236号公報
【特許文献2】
特開2001−227030号公報
【特許文献3】
特開2001−254421号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来提案してきた遷移金属酸化物は下水やトイレに含まれる悪臭である硫化水素を吸着脱臭し、空気中の酸素および水蒸気と反応することにより、最終的には遷移金属の硫酸塩の形となって安定化するものである。
【0006】
よって、従来の提案では、空気中に存在する水分を利用しているだけでは、遷移金属酸化物の硫化水素除去能力を十分に発揮できないものであった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、吸気口から排気口に至る通気経路には水分添加手段と脱臭体が上流側からこの順に配置され、前記脱臭体にはマンガン、銅、コバルトの少なくともいずれかを含む遷移金属の水酸化物および酸化物の混合体もしくは複合体が含まれている脱臭装置とするものであり、脱臭体の上流側で水分を添加させることにより、硫化水素を吸着した場合最終生成物である硫酸塩への反応を速やかに行なうことができるため、脱臭体の硫化水素除去能力を十分に発揮させ、長寿命の脱臭装置とすることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
請求項1に記載した発明は、吸気口から排気口に至る通気経路には水分添加手段と脱臭体が上流側からこの順に配置され、前記脱臭体にはマンガン、銅、コバルトの少なくともいずれかを含む遷移金属の水酸化物および酸化物の混合体もしくは複合体が含まれている脱臭装置とするものであり、脱臭体の上流側で水分を添加させることにより、硫化水素を吸着した場合、最終生成物である硫酸塩への反応を速やかに行なうことができるため、脱臭体の硫化水素除去能力を十分に発揮させ、長寿命の脱臭装置とすることができる。
【0009】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した発明において、水分添加手段は水と通気した空気の接触によるものであり、簡便な手段で水分添加手段を構成できる。
【0010】
請求項3に記載した発明は、請求項1に記載した発明において、水分添加手段は水蒸気と通記した空気の混合によるものであり、確実に水分を添加できる手段を構成できる。
【0011】
請求項4に記載した発明は、請求項1から3に記載した発明において、遷移金属の水酸化物および酸化物の混合体、もしくは複合体は、遷移金属の水酸化物を100℃以上300℃以下の範囲で加熱して生成させるものであり、これにより、硫化水素の吸着容量をさらに大きくでき、さらなる長寿命化が可能となる。
【0012】
請求項5に記載した発明は、請求項1から4に記載した発明において、脱臭体には遷移金属の水酸化物および酸化物の混合体もしくは複合体に加え、ゼオライトを含むものであり、これにより、硫化水素の以外の臭気であるアンモニアやアミン類、二硫化メチル、酢酸、アセトアルデヒドなども吸着され、さらに有用な脱臭装置とすることができる。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載した発明において、ゼオライトはシリカ/アルミナの比率を10以上1000以下の範囲とするものであり、これにより、アンモニアやアミン類、二硫化メチル、酢酸、アセトアルデヒドなどの臭気成分をバランスよく吸着させ除去することができる。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項5または6に記載した発明において、遷移金属の水酸化物および酸化物の混合体もしくは複合体とゼオライトに対するゼオライトの比率は、10%以上50%以下の範囲とするものであり、これにより、吸着体の硫化水素吸着の長寿命を維持し臭気をバランスよく効果的に除去できる。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7に記載した発明において、脱臭体はハニカム体で構成するものであり、臭気を低圧損で効果的に除去する脱臭装置とすることができる。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載した発明において、ハニカム体の1平方インチあたりのセル数は50個以上500個以下の範囲とするものであり、圧力損失と除去効率のトータル性能としてバランスのよい効果的な脱臭装置とすることができる。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項1から9に記載した発明において、最上流側に集塵手段を設けることにより、臭気だけでなくほこりなどの粒子状物質も除去できるとともに、脱臭体の目詰まりを防止でき、さらに有用な脱臭装置とすることができる。
【0018】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0019】
(実施例1)
図1に第一の実施例における本発明の脱臭装置の構成を示す。図1の(a)は正面図、(b)は側面図である。図1において、1は吸気口、2はフィルターよりなる集塵手段である。フィルター2は吸気口1から吸引された空気からくずやほこりなどの粒子状物質を濾過により除去する。また、3はスポンジなどの通気性を有する多孔質材料に水を十分含ませた水分添加手段であり、4は脱臭体である。さらに、5はファンであり吸気手段とし、6は浄化した空気を排出する排気口である。
【0020】
本発明の脱臭装置の動作を説明する。ファン5が作動すれば、硫化水素などの臭気を含む空気は吸気口1から吸入され、まず、フィルタ2を通過し、ほこりやくずなどの粒子状物質が除去される。その後、水分添加手段3を通過するが、通気の際に多孔質材料に含まれた水分が気化し、臭気を含む空気に水蒸気が添加される。その後、脱臭体4により硫化水素などの臭気が吸着除去され、排気口5から排気される。
【0021】
ここで、脱臭体4にはセラミックファイバーを素材とする1平方インチあたりのセル数が200個であるハニカム体を使用し、本実施例では体積400ccの直方体として用いた。脱臭体4は前記ハニカム体に吸着剤を担持したものであるが、ここで吸着剤は2種類用いた。第一の吸着剤として、マンガン:銅:コバルトの比率を2:1:0.5として作成したそれぞれの水酸化物を、200℃で6時間加熱焼成させたものを用いた。これを吸着剤▲1▼とする。第二の吸着剤としては、シリカ/アルミナの比率が100であるZSM−5型のゼオライトを用いた。これを吸着剤▲2▼とする。
【0022】
吸着剤▲1▼:吸着剤▲2▼を2:1として、コロイダルシリカをバインダーとして、前記ハニカム体にトータル40g担持したものを脱臭体4として用いた。
【0023】
ここで、吸着剤▲1▼は硫化水素を吸着除去するが、酸素と水蒸気の存在下で速やかに反応し、遷移金属の硫酸塩の形となり安定化する。また吸着剤▲2▼はアンモニアやアミン類、二硫化メチル、酢酸、アセトアルデヒドなどの臭気を物理吸着することにより除去する。
【0024】
次に、この脱臭装置を用いて、本発明の効果を検証するための各実験を行なった。
【0025】
(実験例1)
温度20℃相対湿度50%の雰囲気下において50ppmに調整した硫化水素を空間速度30000(h−1)で通気した。このとき、水分添加手段3の働きにより相対湿度50%であったものが脱臭体4に流入するときには相対湿度が70〜80%に加湿されていた。このときの硫化水素の破過特性を図2に示す。対照実験として、水分添加手段を設けなかった場合の結果も合わせて示す。
図2より、除去率が90%時の破過時間は、水分添加手段を設けなかった相対湿度50%の場合より、水分添加手段を設けた場合の方が2倍程度延びていることがわかる。
【0026】
これはマンガンや銅らの複合酸化物が硫化水素を吸着脱臭し、空気中の酸素および水蒸気と反応することにより、最終的には遷移金属の硫酸塩の形となって安定化するため、水分を添加したほうが吸着寿命は延びることを示している。
【0027】
以上から、本実施例のように水分添加手段3を脱臭体4の上流側に設けることにより、遷移金属からなる酸化物の硫化水素除去能力を十分に発揮でき、より長寿命とすることができる。
【0028】
なおここでは、水分添加手段として水を含ませた多孔質材料に通気する方法を用いたが、水と空気の接触によるものであれば、これ以外にもバブリングやスクラバーなどの方法によるものでも同様の効果があるものである。
【0029】
(実験例2)
上記の実験例1では水分添加手段3としてスポンジなどの通気性を有する多孔質材料に水を十分含ませた水分添加手段としたものであるが、ここでは、吸着体4の上流側に水タンクを設け、その中にヒータを水没させ、ヒータに通電することにより水蒸気を発生させるものとした。その構成図を図3に示す。図3において31は吸着体4の上流側に設けられた水タンクであり、この中には水が入れられている。32はヒータでありここでは水没用のセラミックヒータを用いた。31および32により水分添加手段としている。
【0030】
このヒータ32に200W印加して水蒸気を発生させ、実験例1と同様に硫化水素の破過特性を求めた。このとき水分添加手段の働きにより相対湿度50%であったものが脱臭体4に流入するときには相対湿度が約90%に加湿されていた。硫化水素の破過特性を図4に示す。図4より、水分添加手段を設けなかった場合より、本実験例の水分添加手段を設けた場合の方が破過時間は3倍程度に延びていることがわかる。
【0031】
以上のように、水分添加手段は水蒸気を発生させ、水蒸気と通記した空気の混合とすることにより、確実に水分を添加できる手段を構成でき、さらに長寿命な脱臭装置とすることができる。
【0032】
なお、本実験例では、水蒸気の発生手段としてヒータを用いたが、これに限らず、超音波を用いた発生手段などでも同様の効果があるものである。
【0033】
(実験例3)
上記の実験例では吸着剤▲1▼と吸着剤▲2▼を2:1の配合比率、つまりゼオライトを33%として脱臭体4を作成したが、ここでゼオライトなし(0%)、10%、50%、80%としても脱臭体を作成した。
【0034】
以上の脱臭体4をセットした脱臭装置をオフィスのトイレに便器内から直接吸気するようにセットし、風量を0.2m3/分としてにおいの官能評価によるフィールド試験を行なった。
【0035】
ゼオライトなしでは初期から10回に1度くらいの割合でややにおう時もあるが、それ以外では初期はにおわなかった。80%では初期はにおわなかったが半年経過後でにおう時が現れ始めた。また、10%、50%では33%と同様に初期から半年経過後も、におわないレベルを維持していた。
【0036】
以上のように、ゼオライトを配合することにより、金属水酸化物および酸化物だけでは除去されにくい、アンモニアやアミン類、二硫化メチル、酢酸、アセトアルデヒドなども吸着作用により除去され、臭気を全般的に効果的に除去することが可能となる。
【0037】
また、ゼオライトの配合比を10%から50%の範囲とすることにより、除去性能と寿命とのバランスがよくなり、より効果的に除去される脱臭装置とすることができる。
【0038】
(実験例4)
上記の実験例では銅、マンガン、コバルトの水酸化物を200℃で加熱焼成を行ない吸着剤▲1▼としたが、この温度を50℃、100℃、300℃、400℃でも行い吸着剤▲1▼を作成した。それぞれを、同様に吸着剤▲2▼であるゼオライトと共にハニカム体に担持し、硫化水素の破過特性を測定した。
【0039】
同様に空間速度を30000h−1に設定し、また硫化水素濃度は50ppmとして測定した。測定結果を図5に示す。初期はいずれも99%以上の除去率を示していた。図5から除去率が90%時の破過時間をそれぞれ表示すると、50℃品が18時間、100℃品が28時間、200℃品が33時間、300℃品が30時間、400℃品が20時間となり、100℃から300℃の間でピークを持つ結果であった。
【0040】
以上から、上記の遷移金属の水酸化物を100℃から300℃の範囲で加熱焼成して作成すれば、硫化水素の吸着容量を増大させることができ、また、それを脱臭体4に用いることにより、脱臭体4の長寿命化が図れ、さらに有用な脱臭装置とすることができる。
【0041】
(実験例5)
上記の実験例ではシリカ/アルミナ比の値が100のものを用いたが、ここでは、それ以外に5、10、1000、10000の同型のゼオライトを用いて脱臭体4を作成した。同様の方法で、アンモニアおよび二硫化メチルの破過特性を測定した。アンモニアの測定結果を図6に、二硫化メチルの測定結果を図7に示す。なお、図6、図7の図中の数字はシリカ/アルミナの比率の値である。
【0042】
図6からはシリカ/アルミナの比率が小さい方がアンモニア吸着容量は大きくなる傾向があり、図7から逆に大きい方が二硫化メチルの吸着容量が大きくなる傾向があることがわかる。
【0043】
以上から、本発明のようにシリカ/アルミナの比率を10から1000の範囲とすることにより、硫化水素以外の臭気であるアンモニア、二硫化メチルらの臭気に対してバランスよく吸着し、より効果的に臭気を除去できるものとなる。
【0044】
(実験例6)
次に、ハニカム体として実験例1では1平方インチあたりのセル数が200個であるハニカム体を用いたが、ここでは、それ以外に30、50、100、350、500、700のもので脱臭体4を作成した。
【0045】
線速度を1m/秒で通気したときにおける各脱臭体の圧力損失の測定結果を図8に、また空間速度30000h−1における硫化水素の初期除去率の測定結果を図9に示す。また比較対照として、ハニカム体のほか、吸着剤▲1▼および吸着剤▲2▼用いて直径5mmの球形状吸着剤を作成し、吸着体4と同体積に充填したときの結果と合わせて示す。
【0046】
まず図8,図9より、球形状吸着剤の充填品ではセル数700のハニカム体よりも圧力損失が高く、セル数30のハニカム体よりも除去率が低いことがわかる。本発明のように脱臭体をハニカム体とすることにより、圧力損失が低く、除去率の高い高性能な脱臭装置を実現できる。
【0047】
また、ハニカム体においての比較では、図8から、セル数を増加させるに従い圧力損失は増大するため、機器設計における観点ではセル数が小さい方が有利であることがわかる。図9から、除去率に関してはセル数を増加させるに従い除去率も上昇するため除去率の観点からはセル数が大きい方が有利であることがわかる。
【0048】
以上から、本発明のようにハニカム体の1平方インチあたりのセル数を50個から500個の範囲とすることにより、除去率と圧力損失のトータル性能としてバランスのよい効果的な脱臭装置とすることができる。
【0049】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、脱臭体の上流側に水分添加手段を設け、脱臭体としてマンガン、銅、コバルトの少なくともいずれかを含む遷移金属の水酸化物および酸化物の混合体もしくは複合体を含むことにより、脱臭体の硫化水素除去能力を十分に発揮させ、長寿命の脱臭装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1における脱臭装置の構成図
【図2】本発明の実施例1の実験例1における硫化水素の破過特性を示す特性図
【図3】本発明の実施例1の実験例2における脱臭装置の構成図
【図4】同硫化水素の破過特性を示す特性図
【図5】本発明の実施例1の実験例4における吸着剤▲1▼の加熱焼成温度を変えたときの硫化水素の破過特性を示す特性図
【図6】本発明の実施例1の実験例5における吸着剤▲2▼のシリカ/アルミナの比率を変えたときのアンモニアの破過特性を示す特性図
【図7】同二硫化メチルの破過特性を示す特性図
【図8】本発明の実施例1の実験例6におけるハニカム体のセル数を変化させたときの圧力損失の変化を示す特性図
【図9】同初期除去率の変化を示す特性図
【符号の説明】
1 吸気口
2 フィルタ(集塵手段)
3 水分添加手段
4 脱臭体
5 ファン(吸気手段)
6 排気口
Claims (10)
- 吸気口と、吸気口から汚染空気を吸引する吸気手段と、浄化された空気を排気する排気口を有し、前記吸気口から排気口に至る通気経路には水分添加手段と脱臭体が上流側からこの順に配置され、前記脱臭体にはマンガン、銅、コバルトの少なくともいずれかを含む遷移金属の水酸化物および酸化物の混合体もしくは複合体が含まれている脱臭装置。
- 水分添加手段は水と通気した空気の接触によるものである請求項1に記載の脱臭装置。
- 水分添加手段は水蒸気と通気した空気の混合によるものである請求項1に記載の脱臭装置。
- 遷移金属の水酸化物および酸化物の混合体、もしくは複合体は、遷移金属の水酸化物を100℃以上300℃以下の範囲で加熱して生成させたものである請求項1から3のいずれか一項に記載の脱臭装置。
- 脱臭体には遷移金属の水酸化物および酸化物の混合体もしくは複合体に加え、ゼオライトを含む請求項1から4のいずれか一項に記載の脱臭装置。
- ゼオライトはシリカ/アルミナの比率が10以上1000以下の範囲である請求項5に記載の脱臭装置。
- 遷移金属の水酸化物および酸化物の混合体もしくは複合体とゼオライトに対するゼオライトの比率は、10%以上50%以下の範囲である請求項5または6に記載の脱臭装置。
- 脱臭体はハニカム体である請求項1から7のいずれか一項に記載の脱臭装置。
- ハニカム体は1平方インチあたりのセル数が50個以上500個以下の範囲である請求項8に記載の脱臭装置。
- 最上流側に集塵手段を設けた請求項1から9のいずれか一項に記載した脱臭装置。
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