JP2004141081A - 耐熱性ペクチン酸リアーゼ - Google Patents
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Abstract
【課題】絶対嫌気性好熱菌由来の新規なペクチン酸リアーゼタンパク質,該タンパク質をコードする遺伝子、該遺伝子を含有する組み換えベクター、該組み換えベクターを含む形質転換体およびその該形質転換体を用いる前記タンパク質の製造方法に関する。
【解決手段】本発明によるクロストリディウム・ステルコラリウムFERM P−18745株由来のペクチン酸リアーゼPel19Aは、従来の酵素に比較し強力な分解活性を示し、且つ耐熱性に優れており高温で糖質を処理することができる。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明によるクロストリディウム・ステルコラリウムFERM P−18745株由来のペクチン酸リアーゼPel19Aは、従来の酵素に比較し強力な分解活性を示し、且つ耐熱性に優れており高温で糖質を処理することができる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、絶対嫌気性好熱菌由来の新規なペクチン酸リアーゼタンパク質、該タンパク質をコードする遺伝子、該遺伝子を含有する組換えベクター、該組換えベクターを含む形質転換体、該形質転換体を用いる前記タンパク質の製造方法に関する。
【従来の技術】
【0002】
ペクチン酸リアーゼ(EC 4.2.2.2)は、ペクチン酸を脱離反応でランダムに分解し、非還元性末端に4−デオキシ−L−トレオ−ヘクス4−エノピラノシルウロン酸単位を持つウロン酸重合体を生成する酵素である。ペクチン酸リアーゼは、バチルス・ポリミキサ(Bacillus polymyxa)とエルウィニア・カロトボラ(Erwinia carotovora)の培養液に初めて見いだされて以来、様々な細菌および糸状菌類から単離され、研究されている。食品工業において、果汁の清澄化や柑橘類のひょう嚢の除去等に用いられているが、ペクチン含有廃水の後処理、バイオマスの分解、綿繊維の精錬、洗浄剤への配合等への利用が期待されている。
【0003】
特に、バチルス・エスピー KSM−P103株及びバチルス・エスピー KSM−P7株由来のペクチン酸リアーゼ[特許文献1]、バチルス・エスピー KSM−P15株由来のペクチン酸リアーゼ[特許文献2]および[特許文献3]、バチルス・エスピー KSM−P358株由来のペクチン酸リアーゼ[特許文献4]、は、好アルカリ性バチルス属細菌由来の酵素であり、至適pHをアルカリ性側に持つ特徴を有している。アルカリ性側に至適pHを持つことから、洗剤への添加による工業的利用が期待されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−318457号公報
【特許文献2】
特開2000−125877号公報
【特許文献3】
特開2000−253888号公報
【特許文献4】
特開2002−85077号公報
【0005】
また、ペクチン酸リアーゼをコードする遺伝子については、上記のバチルス・エスピー KSM−P103株及びバチルス・エスピー KSM−P7株由来のペクチン酸リアーゼ[特許文献1]、バチルス・エスピー KSM−P15株由来のペクチン酸リアーゼ[特許文献2]および[特許文献3]、バチルス・エスピー KSM−P358株由来のペクチン酸リアーゼ[特許文献4]をコードする遺伝子の他、エルウィニア・クリサンテミ(Erwinia chrysanthemi)[非特許文献1]、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)[非特許文献2]、クロコウジカビ (Aspergillus niger) [非特許文献3]等由来のものが、既にクローニングされ塩基配列が決定されている。絶対嫌気性細菌由来のものとして、クロストリジウム・セルロボランス(C1ostridium cellulovorans)由来のものが報告されている[非特許文献4]。
【0006】
【非特許文献】
【非特許文献1】
アルファーノ,ジェイ.アール,(Alfano,J.R), ハム,ジェイ.エッチ(Ham,J.H), コルマー,エイ(Collmer,A),ジャーナル オブ バクテリオロジー(Journal of Bacteriology), 1995年,米国,177巻, p4553−4556,
【非特許文献2】
ホー,エム.シー(Ho,M.C), ホワイトヘッド,エム.ピー(Whitehead,M.P),クリーブランド,ティー.エイ( Cleveland,T.E), ディーン,アール.エイ(Dean,R.A), カレント ジェネティックス(Current Genetics), 1995年,ドイツ, 7巻, p142−149
【非特許文献3】
ベネン,ジェイ.エイ(Benen,J.A),ケスター,エイチ.シー(Kester,H.C),パレニコバ,エル(Parenicova.L),ヴィッサール,ジェイ(Visser,J),バイオケミストリー(Biochemistry),2000年、米国,39巻,p15563−15569
【非特許文献4】
タマル ワイ(Tamaru Y),ドイ アールエッチ(Doi RH),プロシーディングス オブ ナショナル アカデミー オブ サイエンス(Proceedings of National Academy Of Science),2001年,米国,98巻,p4125−4129
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のペクチン酸リアーゼは工業用酵素として入手可能であるが、高価格、低比活性さらに他の糖質分解酵素が混在しているなどの問題があり、活性の強さ、反応時における安定性の観点から好熱性ペクチン酸リアーゼの開発が望まれている。本発明は、絶対嫌気性菌好熱菌由来のより熱に安定な新規なペクチン酸リアーゼタンパク質、該タンパク質をコードする遺伝子、該遺伝子を含有する組換えベクター、該組換えベクターを含む形質転換体、該形質転換体を用いる前記タンパク質の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、絶対嫌気性好熱性菌クロストリジウム・ステルコラリウム(C1ostridium stercorarium)にペクチン酸リアーゼ遺伝子(pel9A)が存在することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の(a)又は(b)の性質を有する組換えタンパク質であり、且つ該組換えタンパク質をコードする遺伝子である。
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列において少なくとも1個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつペクチン酸リアーゼ活性を有するタンパク質。
【0010】
さらに、本発明は、以下の(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子である。
(c)配列番号1で表される塩基配列を含むDNA。
(d)配列番号1で表される塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつペクチン酸リアーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【0011】
さらに、本発明は、前記の遺伝子を含有する組換えベクターであり、該組換えベクターを含む形質転換体である。
【0012】
さらに、本発明は、前記の形質転換体を培地に培養し、得られる培養物からペクチン酸リアーゼ活性を有するタンパク質を採取することを特徴とする、該タンパク質の製造方法である。
【0013】
さらに、本発明は、クロストリジウム・ステルコラリウムを培地に培養し、得られる培養物からペクチン酸リアーゼ活性を有するタンパク質を採取することを特徴とする、該タンパク質の製造方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の好適な一実施の形態を詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は下記の実施形態によって限定されるものでなく、その要旨を変更することなく様々に改変して実施することができる。また本発明の技術的範囲は均等の範囲にまで及ぶこともある。
【0015】
本発明者らは、絶対嫌気性好熱性菌クロストリジウム・ステルコラリウムの培養上清に、ペクチン酸リアーゼ活性を見出した。そして、ショットガンクローニングを行ったところ、ペクチン酸リアーゼ活性を有するクローンを見出し、遺伝子の解析の結果、多糖リアーゼファミリー9に属するペクチン酸リアーゼ遺伝子(pel9A遺伝子という)であることがわかった。このpel9A遺伝子は、以下のようにしてクローニングすることができる。
【0016】
1.pel9A遺伝子のクローニング
(1)ゲノムDNAライブラリーの調製
クロストリジウム・ステルコラリウムのゲノムDNAは、GS培地、PY培地、VL培地などを用いて、嫌気培養したクロストリジウム・ステルコラリウムから、通常行われる手法により調製することができる。例えば、嫌気条件下で液体培養により得られた菌体を、遠心分離によって回収後、適切な緩衝液(例えばTEバッファー)に懸濁し、次いで、界面活性剤(例えばSDS, CTAB)などによる化学的処理法によって細胞を破壊し、核酸を抽出する。次いで、リボヌクレアーゼ処理によりRNAを分解後、アルコール沈殿させることにより、ゲノムDNAを調製することができる。
【0017】
次いで、得られたゲノムDNAを適当な制限酵素(例えばSau3AIなど)で消化し、クロロホルム処理後、エタノール沈殿によりDNA断片を回収する。得られたDNA断片をアガロースゲル電気泳動などにより分画後、適切なベクター(例えばλgt1O、λgt11などのファージベクター、pBR322、pUC19、pB1uescriptなどのプラスミドベクター、Lawrist4などのコスミドベクターなど)に連結する。最後に、連結物を大腸菌(例えばDH5α株、XL1−b1ue株、C600株、JM109株など)に形質転換することにより、ゲノムDNAライブラリーを調製することができる。なお、本発明において用いたクロストリジウム・ステルコラリウムの微生物受託番号は、[産業技術総合研究所特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番3号)、CIostridium stercorarium F−9,FERM P−18745]である。
【0018】
(2)本発明のpel9A遺伝子のクローニング
本発明のpel9A遺伝子は、ペクチン酸リアーゼ活性を指標として、上記(1)において得られた形質転換体の中からスクリーニングすることができる。形質転換体を寒天平板培地に生育させた後、ペクチン酸を含む軟寒天を重層し、60℃程度に放置することにより、組換え体より酵素を漏出させると同時に酵素反応を行わせる。その後、1M塩化カルシウム溶液を注ぐとペクチン酸リアーゼ活性を生産しているコロニーの周辺には透明環が現れるので、ペクチン酸リアーゼ活性を有するクローンを選択できる。さらに、これらクローンの培養菌体破砕物が、ペクチン酸やペクチンに作用するかを調査することにより、pel9Aを保有するクローンを選択できる。
【0019】
次いで、常法にしたがって、得られたポジティブ株から挿入DNA断片を調製し塩基配列の決定を行う。塩基配列の決定はマキサムーギルバートの化学修飾法、又はM13ファージを用いるジデオキシヌクレオチド鎖終結法等の公知手法により行うことができるが、通常は白動塩基配列決定機(例えばLI−COR社製mode14000L、ファルマシア社製ALFH型等)を用いて配列決定が行われる。そして決定された塩基配列は、Genetyx, DNASISなどのDNA解析ソフトを用いてオープンリーデイングフレームの検索がなされ、得られた推定アミノ酸配列について、データベース検索を行うことにより、公知のタンパク質とのホモロジーを調べることができる。
【0020】
配列番号1に本発明のpel9A遺伝了の塩基配列を、配列番号2に本発明のpel9Aタンパク質のアミノ酸配列を例示するが、このアミノ酸配列からなるタンパク質がペクチン酸リアーゼ活性を有する限り、当該アミノ酸配列において少なくとも1個のアミノ酸に欠失、置換、付加等の変異が生じてもよい。例えば、配列番号2で表されるアミノ酸配列の少なくとも1個、好ましくは1−20個程度、さらに好ましくは1−10個のアミノ酸が欠失してもよく、又は、配列番号2で表わされるアミノ酸配列に少なくとも1個、好ましくは1−20個程度、さらに好ましくは1−10個のアミノ酸が付加してもよく、あるいは、配列番号2で表されるアミノ酸配列の少なくとも1個、好ましくは1−20個程度、さらに好ましくは1−10個のアミノ酸が他のアミノ酸に置換してもよい。
【0021】
また、上記遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるDNAも本発明の遺伝子に含まれる。ストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が15−150 mM、好ましくは15−30 mMであり、温度が37−80℃、好ましくは50−65℃での条件をいう。なお、遺伝子に変異を導入するには、Kunke1法、Gapped dup1ex法等の公知の手法又はこれに準ずる方法により、例えば部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(例えばMutant−K(TAKRA社製)、Mutant−G(TAKRA社製))などを用いて、あるいは、TAKRA社のLA PCR in vitro Mutagenesisシリーズキットを用いて行うことができる。
【0022】
一旦、本発明の遺伝子の塩基配列が確定されると、その後は化学合成によって、又は本遺伝子のcDNA又はゲノムDNAを鋳型としたPCRによって、あるいは該塩基配列を有するDNA断片をプローブとしてハイブリダイズさせることにより、本発明の遺伝子を得ることができる。
【0023】
1.組換えベクターおよび形質転換体の作製
(1)組換えベクターの作製
本発明の組換えベクターは、適当なベクターに本発明の遺伝子を連結(挿入)することにより得ることができる。本発明の遺伝子を挿入するためのベクターは、宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず、例えば、プラスミドDNA、ファージDNA等が挙げられる。プラスミドDNAとしては、大腸菌由来のプラスミド(例えばpBR322、pBR325、pUC118、pUC119、pUC18、pUC19、pCBD−C、pB1uescript等)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB11O,pTP5等)、酵母由来のプラスミド(例えばYEp13、YEP24、YCp50、YIp30等)などが挙げられ、ファージDNAとしてはλファージ等が挙げられる。さらに、レトロウイルス、ワクシニアウイルスなどの動物ウイルス、バキュロウイルス、トガウイルスなどの昆虫ウイルスベクターを用いることもできる。
【0024】
ベクターに本発明の遺伝子を挿入するには、まず、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、適当なベクターDNAの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法などが採用される。本発明の遺伝子は、その遺伝子の機能が発揮されるようにベクターに組み込まれることが必要である。そこで、本発明のベクターには、プロモーター、本発明の遺伝子のほか、所望によりエンハンサーなどのシスエレメント、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、リボソーム結合配列(SD配列)などを含有するものを連結することができる。なお、選択マーカーとしては、例えばアンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、等が挙げられる。
【0025】
(2)形質組換え体の作製
本発明の形質転換体は、本発明の組換えベクターを、目的遺伝子が発現し得るように宿主中に導入することにより得ることができる。ここで、宿主としては、本発明のDNAを発現できるものであれば特に限定されるものではない。例えば、大腸菌(Escherichia coli)等のエシェリヒア属、バチルス・ズブチリス(Baci11ussubti1is)等のバチルス属、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)等のシュードモナス属、リゾビウム・メリロテイ(Rhizobium meliloti)等のリゾビウム属に属する細菌が挙げられ、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等の酵母が挙げられ、COS細胞、CH0細胞等の動物細胞が挙げられ、あるいはSf9、Sf21等の昆虫細胞が挙げられる。大腸菌等の細菌を宿主とする場合は、本発明の組換えベクターが該細菌中で自律複製可能であると同時に、プロモーター、リボゾーム結合配列、本発明の遺伝子、転写終結配列により構成されていることが好ましい。また、プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。大腸菌としては、例えばエシェリヒア・コリ(Escherichia co1i) K12 DH1などが挙げられ、枯草菌としては、例えばバチルス・ズブチリス(Baci11us subti1is) MI 114、207−21などが挙げられる。
【0026】
プロモーターとしては、大腸菌等の宿主中で発現できるものであればいずれを用いてもよい。例えばtrpプロモーター、1acプロモーター、PLプロモーター、PRプロモーターなどの、大腸菌やファージに由来するプロモーターが用いられる。tacプロモーターなどのように、人為的に設計改変されたプロモーターを用いてもよい。細菌への組換えベクターの導入方法としては、細菌にDNAを導入する方法であれば特に限定されるものではない。例えばカルシウムイオンを用いる方法[Cohen et a1.: Proc. Nat1. Acad. Sci., USA, 69, 2110, 1972]やエレクトロポレーション法等が挙げられる。
【0027】
酵母を宿主とする場合は、例えばサッカロミセス・セレビシェ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ピヒア・パストリス(Pichia pastoris)などが用いられる。この場合、プロモーターとしては酵母中で発現できるものであれば特に限定されず、例えばga11プロモーター、ga110プロモーター、ヒートショックタンパク質プロモーター、MFα1プロモーター、PH05プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、AOX1プロモーター等が挙げられる。
【0028】
酵母への組換えベクターの導入方法としては、酵母にDNAを導入する方法であれば特に限定されず、例えばエレクトロポレーション法[Becker,D.M. et a1.: Methods Enzymo1., 194,182, 1990]、スフェロプラスト法[Hinnen, A. et a1.: Proc. Nat1. Acad. Sci., USA, 75, 1929, 1978]、酢酸リチウム法[Itoh, H.: J
.Bacterio1.,153, 163, 983]等が挙げられる。
【0029】
動物細胞を宿主とする場合は、サル細胞COS−7,Vero、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、マウスL細胞、ヒトGH3、ヒト肌細胞などが用いられる。プロモーターとしてSRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CWプロモーター等が用いられ、また、ヒトサイトメガロウイルスの初期遺伝子プロモーター等を用いてもよい。動物細胞への組換えベクターの導入方法としては、例えばエレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等が挙げられる。昆虫細胞を宿主とする場合は、Sf9細胞、Sf21細胞などが用いられる。昆虫細胞への組換えベクターの導入方法としては、例えばリン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法などが用いられる。
【0030】
3.本発明のタンパク質の製造
本発明のタンパク質は、本発明のペクチン酸リアーゼ遺伝子又はペクチン酸リアーゼの触媒ドメイン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列を有するもの、または該アミノ酸配列において少なくとも1個のアミノ酸に前記変異が導入されたアミノ酸配列を有するものをいう。さらに、これらのタンパク質とセルロース結合タンパク質又はβ一ガラクトシダーゼタンパク質との融合タンパク質も本発明のタンパク質に含まれる。本発明のタンパク質は、クロストリジウム属に属する細菌又は前記2において得られた形質転換体の培養物から、以下のようにして製造することができる。ここで、「培養物」とは、培養後の培地上清、培養により得られた細胞若しくは細胞の破砕物のいずれをも意昧するものである。クロストリジウム属に属する細菌(例えばクロストリジウム・ステルコラリウム)又は前記2において得られた形質転換体を培養する方法は、それらの細胞の培養に用いられる通常の方法に従って行われる。
【0031】
培地としては、前記細胞が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、該細胞の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。ここで、炭素源としては、グルコース、フラクトース、スクロース、デキストリン、デンプン等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、グリセロール、工タノール、プロパノール等のアルコール類、動物油、糖蜜などが用いられる。また、窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸若しくは有機酸のアンモニウム塩又はその他の含窒素化合物のほか、ベプトン、肉エキス、酵母エキス、麦芽エキス、コーンスティープリカー等が用いられる。さらに、無機塩類としては、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、コバルト、亜鉛、鉄、モリブデン等の陽イオン、及び硫酸、リン酸、塩酸、硝酸などの陰イオンの塩が用いられる。
【0032】
また、クロストリジウム属に属する細菌などを嫌気培養する場合にはシステインなどの還元作用を有する物質を培地に添加し、菌の接種は培養器上部の空間に残存する酸素を窒素パージ等で十分除去した後に行うことが好ましい。そして嫌気性菌の培養は、嫌気ボックス、嫌気ジャー、ブチルゴム栓付き試験管などで行う。さらに、形質転換体を培養する場合には、必要に応じて培地にアンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を添加してもよい。そして、前記細胞のペクチン酸リアーゼ活性が最高値に達するまで培養を行う。
【0033】
さらに、クロストリジウム属に属する細菌などを培養する場合には、ペクチン酸やペクチンを添加すると細胞当りのペクチン酸リアーゼ活性を上昇させることができる場合があるため、必要に応じてこれらの物質を添加する。さらに、形質転換体の培養において、その形質転換体が誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換されたものである場合には、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、Lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換された微生物を培養するときにはイソプロピルーβ一D一チオガラクトピラノシド(IPTG)等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸(IAA)等を培地に添加してもよい。
【0034】
動物細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているRPMI640培地、DMEM培地又はこれらの培地に牛胎児血清等を添加した培地等が用いられる。培養は、通常、5%C02存在下、37℃で1〜30日行う。培養中は必要に応じてカナマイシン、べニシリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
【0035】
培養後、本発明のペクチン酸リアーゼタンパク質が菌体内又は細胞内に生産される場合には、菌体又は細胞を破砕することによりペクチン酸リアーゼタンパク質を抽出する。菌体の破砕は、超音波、フレンチプレス、ガラスビーズを使用するホモジナイザーなどを用いることができるが、リゾチームや凍結融解法との併用によって行うこともできる。また、本発明のペクチン酸リアーゼタンパク質が菌休外又は細胞外に生産される場合には、培養液をそのまま使用するか、遠心分離等により菌体又は細胞を除去する。その後、タンパク質の単離精製に用いられる一般的な生化学的方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、アフイニティークロマトグラフィー等を単独で又は適宜組み合わせて用いることにより、前記培養物中から本発明のタンパク質を単離精製することができる。
【0036】
4.ペクチン酸リアーゼ活性の測定
ペクチン酸リアーゼの活性は以下のようにして測定することができる。すなわち、酵素溶液をペクチン酸やペクチンに作用させて、生成した4−デオキシ−L−トレオ−ヘクス4−エノピラノシルウロン酸を分光光度計を用いて定量することができる。また、反応により生じたオリゴ糖を薄層クロマトグラフィーなどにより検出することも出来る。
【0037】
5.本発明のタンパク質に対する抗体
本発明においては、本発明のタンパク質に対する抗体を作製することもできる。「抗体」とは、抗原である本発明のペプチドに結合し得る抗体分子全体またはその断片(例えば、FabまたはF(ab’)2断片)を意昧し、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。木発明の抗体は、種々の方法のいずれかによって製造することができる。このような抗体の製造法は当該分野で周知である[例えばSambrook, J et a1., Mo1ecu1ar C1oning, Co1d Spring Harbor Laboratory Press (1989)を参照]。
【0038】
(1)本発明のタンパク質に対するポリクローナル抗体の作製
前記のようにして、遺伝子工学的に作製した本発明のペクチン酸リアーゼタンパク質又はその断片を抗原として、これを哺乳動物、例えばヒト、マウス、ウサギなどに投与する。抗原の動物1匹当たりの投与量は、アジュバントを用いないときは1−5ミリグラムであり、アジュバントを用いるときは25〜100μgである。アジュバントとしては、フロイント完全アジュバント(FCA)、フロイント不完全アジュバント(FIA)、水酸化アルミニウムアジュバント等が挙げられる。免疫は、主として静脈内、皮下、腹腔内等に注入することにより行われる。また、免疫の間隔は特に限定されず、数日から数週間間隔で、好ましくは2〜4週間間隔で、2〜5回、好ましくは3〜4回免疫を行う。そして、最終の免疫口から12−16日後に、好ましくは、酵素免疫測定法(EIA; enzyme immunoassay)、放射性免疫測定法(RIA; radio immunoassay)等で抗体価を測定し、最大の抗体価を示した日に採血し、抗血清を得る。抗血清から抗体の精製が必要とされる場合は、硫安塩析法、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過、アフィニティークロマトグラフィーなどの公知の方法を適宜選択して、又はこれらを組み合わせることにより精製することができる。
【0039】
(2)本発明のタンパク質に対するモノクローナル抗体の作製
(i)抗体産生細胞の採取は前記のようにして、遺伝子工学的に作製した本発明のタンパク質又はその断片を抗原として、哺乳動物、例えばラット、マウス、ウサギなどに投与する。抗原の動物1匹当たりの投与量は、アジュバントを用いないときは1〜5ミリグラムであり、アジュバントを用いるときは25〜100μgである。アジュバントとしては、フロイント完全アジュバント(FCA)、フロイント不完令アジュバント(FIA)、水酸化アルミニウムアジュバント等が挙げられる。免疫は、主として静脈内、皮下、腹腔内に注入することにより行われる。また、免疫の間隔は特に限定されず、数日から数週間間隔で、好ましくは2〜4週間間隔で、2〜5回、好ましくは3〜4回免疫を行う。そして、最終の免疫日から12〜16日後、好ましくは14日後に抗休産生細胞を採集する。抗体産生細胞としては、脾臓細胞、リンパ節細胞、抹消血細胞等が挙げられるが、脾臓細胞又は局所リンパ節細胞が好ましい。
【0040】
(ii)細胞融合
ハイブリドーマを得るため、抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞融合を行う。抗体産生細胞と融合させるミエローマ細胞として、マウスなどの動物の一般に入手可能な株化細胞を使用することができる。使用する細胞株としては、薬剤選択性を有し、未融合の状態ではHAT選択培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジンを含む)で生存できず、抗体産生細胞と融合した状態でのみ生存できる性質を有するものが好ましい。ミエローマ細胞としては、例えばP3×63−Ag.8.U1(P3U1)、Sp2/O、NS−Iなどのマウスミエローマ細胞株が挙げられる。次に、上記ミエローマ細胞と抗体産生細胞とを細胞融合させる。細胞融合は、血清を含まないDMEM、RPMI−1640培地などの動物細胞培養用培地中で、抗体産生細胞とミエローマ細胞とを4:1〜1:4の割合で混合し、細胞融合促進剤存在のもとで融合反応を行う。細胞融合促進剤として、平均分子量1,500ダルトンのポリエチレングリコール等を使用することができる。また、電気刺激(例えばエレクトロポレーション)を利用した市販の細胞融合装置を用いて抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させることもできる。
【0041】
(iii)ハイブリドーマの選別及ぴクローニング
細胞融合処理後の細胞から目的とするハイブリドーマを選別する。その方法として、細胞懸濁液を例えばウシ胎児血清含有RPMI−1640培地などで適当に希釈後、マイクロタイタープレート上にO.8個/ウエル程度まき、各ウエルに選択培地を加え、以後適当に選択培地を交換して培養を行う。その結果、選択培地で培養開始後、約14日前後から生育してくる細胞をハイブリドーマとして得ることができる。次に、増殖してきたハイブリドーマの培養上清中に、目的とする抗体が存在するか否かをスクリーニングする。ハイブリドーマのスクリーニングは、通常の方法に従えばよく、特に限定されない。例えば、ハイブリドーマとして生育したウエルに含まれる培養上清の一部を採集し、酵素免疫測定法、放射性免疫測定法等によって行うことができる。融合細胞のクローニングは、限界希釈法等により行い、最終的にモノクローナル抗体産生細胞であるハイブリドーマを樹立する。
【0042】
モノクローナル抗体の採取
樹立したハイブリドーマからモノクローナル抗体を採取する方法として、通常の細胞培養法又は腹水形成法等を採用することができる。細胞培養法においては、ハイブリドーマを10%ウシ胎児血清含有RPMI−1640培地、MEM培地又は無血清培地等の動物細胞培養培地中で、通常の培養条件(例えば37℃、5%C02濃度)で2〜10日間培養し、その培養上清から抗体を取得する。腹水形成法の場合は、ミエローマ細胞由来の哺乳動物と同種系動物の腹腔内にハイブリドーマを約1×107個投与し、ハイブリドーマを大量に増殖させる。そして、1〜2週間後に腹水または血清を採集する。上記抗体の採取方法において、抗体の精製が必要とされる場合は、硫安塩析法、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過、アフィニティークロマトグラフィーなどの公知の方法を適宜選択して、又はこれらを組み合わせることにより精製することができる。
【0043】
このようにしてポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体が得られた後は、これをリガンドとして、固体担体に結合させることによりアフィニティークロマトグラフィーカラムを作製し、そして該カラムを用い、前記の採取源又は他の採取源から、本発明のペクチン酸リアーゼタンパク質を精製することができる。さらにこれらの抗体は本発明のペクチン酸リアーゼタンパク質を検出するためにウエスタンブロッティングに用いることもできる。
【0044】
【実施例】
[実施例1]ペクチン酸リアーゼ遺伝子のクローニング
(1)染色体DNAの調製
常法に従って、クロストリジウム・ステルコラリウム(C1ostridium stercorarium)の染色体DNAを調製した。すなわち、C1ostridium stercorarium FERM P−18745株を、100mlのGS培地(0.45%酵母エキス、O.5%セロビオース、0.1システイン塩酸塩、2.09%MOPS、O.15% KH2P04、0.29%K2HP04、O.13%(NH4)2S04、O.2%MgCl2、0.03%CaCl2、O.OO025%FeS04・7H20、pH7.4)で、60℃、1日間、嫌気的に培養後、遠心分離することにより菌体を回収した。得られた菌体を10mlのTE緩衝液(10mM Tris−HCl(pH7.4)、1mM EDTA)に懸濁し、これに1mlの10%SDSおよび0.1mlの20ミリグラム/mlプロテイナーゼKを加え、37℃で1時間保温した。次いで2mlの5MNaC1を加えよく撹絆後、1mlの10%CTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロマイド)一0.7MnaClを加え、65℃で10分間保温した。次いで、同量のクロロホルム(4%イソアミルアルコール含有)を加えよく攪拌した後、遠心分離した。得られた上清を滅菌済遠心管に移し、2倍容量のエタノールを加え、室温に10分間放置した。次いで、遠心分離により白沈殿物を回収し、減圧下、デシケーター中で乾燥させた。次いで、1mlのTE緩衝液に溶解し、10mg/mlとなるようにリボヌクレアーゼA溶液を加え、37℃で30分間保温した。0.1m1の3M酢酸ナトリウム(pH8.O)及び2.2m1のエタノールを加え、よく混合した後、遠心分離により上清を除去した。沈殿物をデシケーター中で乾燥させた後O.5m1のTE緩衝液に溶解させることにより染色体DNAを得た。
【0045】
(2)DNAライブラリーの作製
上記(1)において得られたゲノムDNAを用い、クロストリジウム・ステルコラリウムの染色体DNAライブラリーを作製した。すなわち、染色休DNAを制限酵素Sau3AIで部分的に切断した後、O.4%アガロースHI4(宝酒造社製)によるアガロースゲル電気泳動を行い、5〜10kbpのDNA断片を切り出し、GeneC1eanキット(Bio101社製)により回収した。さらに、dGおよびdA存在下、K1enow酵素により、5’−突出末端を一部修復合成し、2ヌクレオチド突出末端を持つ染色体DNA断片を調製した。
一方、プラスミドpB1uescriptIIKS+(Stratagene社製)を制限酵素XhoIで切断した後、GeneC1eanキットにより回収し、5’−突出末端を一部修復合成し、2ヌクレオチド突出末端を持つプラスミドを得た。調製した上記染色体DNA断片と上記プラスミドをT4DNAリガーゼにより連結し、大腸菌DH5α(Escherichia co1i DH5α)に導入した。その際、コンピテントセルおよび形質転換体の調製は塩化カルシウムを用いた常法により実施した。
【0046】
これらの形質転換休を、アンピシリン(50μ1/m1)、IPTG(イプロピルチオーβ一D一ガラクトピラノシド;40μM)、X−ga1(5一ブロモー4一クロロー3一インドリルーβ一D一ガラクトピラノシド;40μg/m1)を含むLB寒天平板(ポリベプトン1.O%、酵母エキスO.5%、NaC1O.5%、寒天1.5%、PH7.O;φ9×1.5センチメートル、丸型シヤーレ)上に塗布し、37℃で培養し、形成したコロニーのうち、白色のものを約5000株採取した。
【0047】
(3)ペクチン酸リアーゼ活性を有するクローンの選択
採取したコロニーをLB寒天平板に接種し、37℃、一晩培養し、再度コロニーを形成させた後、0.4%ペクチン酸を含む0.5%寒天を重層し、寒天を固化させた後60℃で2時間保温した。その後、1MCaCl2溶液を注ぎ、コロニーの周りに透明環が現れたコロニーをポジテイブクローンとした。
【0048】
このポジテイブクローンを、5mlのLB培地(ポリベプトン1.O%、酵母エキスO.5%、NaC1O.5%、pH7.0)に接種し、37℃、一晩振とう培養した。遠心分離により回収した菌体を、5mlの50mMTris−HCl緩衝液PH8に懸濁し、2x30秒の超音波処理により菌体を破砕し、遠心分離により菌体破砕物を除去し、澄明な液を得た。さらに、60℃、15分の加熱処理により大腸菌の酵素を失活させた後、不溶解分を遠心分離で除去し、粗酵素液とした。ペクチン酸リアーゼ活性は、ペクチン酸を基質として確認した。すなわち、O.5m1の200mMTris−HCl緩衝液PH8、0.4mlの0.25mMCaCl2、1mlの0.4%ペクチン酸ナトリウム水溶液とO.1m1の粗酵素を混合し、60℃で反応させた。2mlの50mMHClを加えて反応を止めた後、4−デオキシ−L−トレオ−ヘクス4−エノピラノシルウロン酸残基の生成を235nmの吸光度により測定し、ペクチン酸リアーゼ活性を有する形質転換体を1株取得した。
【0049】
さらに、ジガラクツロン酸およびトリガラクツロン酸に対する作用を調べた。これら基質の加水分解物の確認は110℃、30分熱処理したシリカゲル薄層クロマトグラフィー(MACHERY−NAGEL社製、SIL G−25)を用いて行い、酵素反応は8μ1の0.4%(wt/vo1)各基質溶液、2μ1上記粗酵素液、2μ1の200mMTrisHCl、pH8を¥loch混合し、60℃、12時間反応させた。薄層クロマトグラフィーの展開溶媒は1一ブタノール:水:酢酸(5:3:2、vo1/vo1)を用いた。展開後は風乾させ、硫酸噴霧、及び140℃、5分の処理により発色させた。その結果、該ペクチン酸リアーゼはトリガラクツロン酸に対して作用した。
【0050】
(4)組換えプラスミドの調製
上記(3)で選択した形質転換体をアンピシリン(50μ1/m1)を含む100mlのLB培地にて37℃、一晩培養、集菌した。滅菌水による洗浄後、5mlの溶液I(25mMグルコース、10mMEDTA,25mMTris−HC1(PH8.O))に懸濁し、25ミリグラムのリゾチームを添加し、0℃、30分間放置した。10m1の溶液II(1N−NaOH、5%SDS)を加え、O℃、5分間放置し、さらに、7.5m1の溶液III(3M酢酸ナトリウム(PH4.8))を加え、O℃、30分間放置した。これを遠心し、その上清に50m1のエタノールを加え、さらに遠心し上清を取り除き5mIの溶液IV(10ミリミリリットル酢酸ナトリウム、50リットルTris−HC1(pH8.0)とリボヌクレアーゼA溶液(10ミリグラム/ミリリットル)2.5μ1を加え室温で20分間放置した。これに12m1のエタノールを加え、遠心によりプラスミドを回収、70%エタノールで洗浄、乾燥後0.4m1の減菌水に溶解した。こうして得られた組換え体プラスミドをpPEL9A−1と名付けた。
【0051】
(5)挿入断片の塩基配列の決定
上記(4)で得られたpPEL9A−1を複数の制限酵素で切断し、制限酵素地図を作製し (図1参照)、また、常法によりサブクローニングを行った。すなわち、制限酵素としてHindHI,NdeI,SacIを用い、pPEL9A−1を部分切断後、切断部位をT4DNAリガーゼにより再結合したプラスミドを大腸菌DH5αに再度形質転換し、上記(4)と同様の方法で、プラスミドを複数調製した。これらをプライマー蛍光標識法自動DNAシーケンサー(LI−CORE社製、mode14000L)により挿入断片の塩基配列を解析した。その結果、3720bpの遺伝子配列(配列番号1)およぴ、1240個の推定アミノ酸配列(配列番号2)が得られ、この遺伝子をpel9Aと命名した。
【0052】
次に、DDBJ(DNA Data Bank of Japan)データベースにより相同性を有する酵素を検索した。本酵素は、多糖リアーゼのファミリー9に分類される触媒ドメインを2つ持つ酵素であり、N末端側ドメインとC末端側ドメインの間の相同性は21%であった(図2参照)。本酵素はバチルス・ハロデュランス(Baci11us halodurans)のPelXと約53%の相同性を示した。また、本酵素のC末端側ドメインはクレブシェラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)PelXと32%の相同性、エルウィニア・クリサンテミ(Erwinia chrysanthemi)pelと31%の相同性、バチルス・エスピーKSM−P15 (Bacillus sp. KSM−P15)のPelと47%の相同性、ストレプトミセス・セリカラー(Streptomyces coelicolor)と41%の相同性を示した。 (図3,図4,図5参照)。
【0053】
(6)ペクチン酸リアーゼの精製
(i) 組換えプラスミドの構築
pel9A遺伝子の読み枠をPCR法で増幅しプラスミドベクターpQE−30Tに連結した。すなわち、pPEL9A−1を鋳型とし、プライマーとしてプライマー1(GGCCGGATCCGTAGCTGAAGAAGCAGAGGCAATGC)とプライマー2(GGCCGAGCTCTCCCAGGATGTTGAAAATCCCGGG)を用いて常法に従いpel9A遺伝子を増幅した。増幅したDNA断片を制限酵素BamHIとSacIで切断し、同じくBamHIとSacIで切断した発現ベクタープラスミドpQE−30T(Biosci. Biotechnol. Biochem., 63, 1596−1604, 1999)にT4DNAリガーゼを用いて連結した。構築したプラスミド(pPEL9A−2)を常法通り形質転換法にて、大腸菌M−15株に導入した。
【0054】
(ii)ペクチン酸リアーゼの精製
プラスミドpPEL9A−2を保有する大腸菌組換え体を、500mlのLB培地(ポリベプトン1.O%、酵母エキスO.5%、NaC1O.5%、pH7.0)に接種し、37℃、一晩振とう培養した。遠心分離により回収した菌体を、10mlの50mMTris−HCl緩衝液PH8に懸濁し、5x30秒の超音波処理により菌体を破砕し、遠心分離により菌体破砕物を除去し、澄明な液を得た。この粗酵素溶液をHisTrap キレーティングカラム(アマシャムファルマシアバイオテク社製)に吸着させた後、イミダゾール(pH7.4)の濃度勾配により蛋白質を溶出させた。回収したペクチン酸リアーゼを50mMTris−HCl緩衝液PH8に対して透析しイミダゾールを除いた後、RESOURCE Q カラム(1ml)に吸着させた。吸着した蛋白質を食塩の濃度勾配により溶出し、各画分の純度をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で調べ、単一のバンドにまで純化されたペクチン酸リアーゼを得た。
【0055】
(7)N末端側ドメイン蛋白質の単独発現と精製
(i)組換えプラスミドの構築
N末端側ドメインをコードする領域をPCR法で増幅しプラスミドベクターpQE−30Tに連結した。すなわち、pPEL9A−1を鋳型とし、プライマーとしてプライマー1(GGCCGGATCCGTAGCTGAAGAAGCAGAGGCAATGC)とプライマー3(GGCCGAGCTCTTACACTGTTACCTTGAGGGTTATCGG)を用いて常法に従いN末端側ドメインをコードする領域を増幅した。増幅したDNA断片を制限酵素BamHIとSacIで切断し、同じくBamHIとSacIで切断した発現ベクタープラスミドpQE−30T(Biosci. Biotechnol. Biochem., 63, 1596−1604, 1999)にT4DNAリガーゼを用いて連結した。構築したプラスミド(pPEL9A−3)を常法通り形質転換法にて、大腸菌M−15株に導入した。
【0056】
(ii)N末端側ドメイン蛋白質の精製
プラスミドpPEL9A−3を保有する大腸菌組換え体を、500mlのLB培地(ポリベプトン1.O%、酵母エキスO.5%、NaC1O.5%、pH7.0)に接種し、37℃、一晩振とう培養した。遠心分離により回収した菌体を、10mlの50mMTris−HCl緩衝液PH8に懸濁し、5x30秒の超音波処理により菌体を破砕し、遠心分離により菌体破砕物を除去し、澄明な液を得た。この粗酵素溶液をHisTrap キレーティングカラム(アマシャムファルマシアバイオテク社製)に吸着させた後、イミダゾール(pH7.4)の濃度勾配により蛋白質を溶出させた。回収したN末端側ドメイン蛋白質を50mMTris−HCl緩衝液PH8に対して透析しイミダゾールを除いた後、RESOURCE Q カラム(1ml)に吸着させた。吸着した蛋白質を食塩の濃度勾配により溶出し、各画分の純度をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で調べ、単一のバンドにまで純化されたN末端側ドメイン蛋白質を得た。
【0057】
(8)C末端側ドメイン蛋白質の単独発現と精製
(i)組換えプラスミドの構築
C末端側ドメインをコードする領域をPCR法で増幅しプラスミドベクターpQE−30Tに連結した。すなわち、pPEL9A−1を鋳型とし、プライマーとしてプライマー4(GGCCGGATCCATAACCCTCAAGGTAACAGTGAGGG)とプライマー2(GGCCGAGCTCTCCCAGGATGTTGAAAATCCCGGG)を用いて常法に従いC末端側ドメインをコードする領域を増幅した。増幅したDNA断片を制限酵素BamHIとSacIで切断し、同じくBamHIとSacIで切断した発現ベクタープラスミドpQE−30T(Biosci. Biotechnol. Biochem., 63, 1596−1604, 1999)にT4DNAリガーゼを用いて連結した。構築したプラスミド(pPEL9A−4)を常法通り形質転換法にて、大腸菌M−15株に導入した。
【0058】
(ii)C末端側ドメイン蛋白質の精製
プラスミドpPEL9A−4を保有する大腸菌組換え体を、500mlのLB培地(ポリベプトン1.O%、酵母エキスO.5%、NaC1O.5%、pH7.0)に接種し、37℃、一晩振とう培養した。遠心分離により回収した菌体を、10mlの50mMTris−HCl緩衝液PH8に懸濁し、5x30秒の超音波処理により菌体を破砕し、遠心分離により菌体破砕物を除去し、澄明な液を得た。この粗酵素溶液をHisTrap キレーティングカラム(アマシャムファルマシアバイオテク社製)に吸着させた後、イミダゾール(pH7.4)の濃度勾配により蛋白質を溶出させた。回収したC末端側ドメイン蛋白質を50mMTris−HCl緩衝液PH8に対して透析しイミダゾールを除いた後、RESOURCE Q カラム(1ml)に吸着させた。吸着した蛋白質を食塩の濃度勾配により溶出し、各画分の純度をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で調べ、単一のバンドにまで純化されたC末端側ドメイン蛋白質を得た。
【0059】
(9)ペクチン酸リアーゼ、N末端側ドメイン蛋白質及びC末端側ドメイン蛋白質の活性の比較
ペクチン酸リアーゼ活性は、ペクチン酸を基質として確認した。すなわち、O.5m1の200mMTris−HCl緩衝液PH8、0.4mlの0.25mMCaCl2、1mlの0.4%ペクチン酸ナトリウム水溶液とO.1m1の粗酵素を混合し、60℃で反応させた。2mlの50mMHClを加えて反応を止めた後、4−デオキシ−L−トレオ−ヘクス4−エノピラノシルウロン酸残基の生成を235nmの吸光度により測定した。1分間あたり1μmolの4−デオキシ−L−トレオ−ヘクス4−エノピラノシルウロン酸を生成する活性を1ユニット(U)とすると、ペクチン酸リアーゼ、N末端側ドメイン蛋白質及びC末端側ドメイン蛋白質の比活性はそれぞれ58U/μg、10U/μg、30 U/μgであった。この結果は、触媒ドメインが2つ連結することにより、酵素活性が相乗的に高まることを示した。また、これら3種の酵素の至適温度は65℃であった。
【0060】
【発明の効果】
本発明によるクロストリジウム・ステルコラリウム(C1ostridium stercorarium)FERM P−18745株
由来のペクチン酸リアーゼPel9Aは、その分子内に2つの触媒ドメインを有しており、それらが分子内相乗効果を発揮し、従来の単一触媒ドメインからなる酵素に比較し強力な分解活性を示す。またPel9Aは好熱性細菌由来であるため耐熱性に優れており、従来より高温で糖質を処理することができる。
【0061】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】pPEL9A−1、pPEL9A−2、pPEL9A−3及びpPEL9A−4の制限酵素を示す地図。
【図2】N末端側ドメインとC末端側ドメインとの間の相同性を示す図。
【図3】DDBJ(DNA Data Bank of Japan)により相同性を有する酵素を検索した結果を示す図。
【図4】同上。
【図5】同上。
【符号の説明】
Cs 本発明のClostridium stercorarium
Bh B. Halodurans
Ko Klebsiella oxytoca
Er Erwinia chrysanthemi
B.sp Bacillus sp.
Sc Streptomyces coelicolor
【発明の属する技術分野】
本発明は、絶対嫌気性好熱菌由来の新規なペクチン酸リアーゼタンパク質、該タンパク質をコードする遺伝子、該遺伝子を含有する組換えベクター、該組換えベクターを含む形質転換体、該形質転換体を用いる前記タンパク質の製造方法に関する。
【従来の技術】
【0002】
ペクチン酸リアーゼ(EC 4.2.2.2)は、ペクチン酸を脱離反応でランダムに分解し、非還元性末端に4−デオキシ−L−トレオ−ヘクス4−エノピラノシルウロン酸単位を持つウロン酸重合体を生成する酵素である。ペクチン酸リアーゼは、バチルス・ポリミキサ(Bacillus polymyxa)とエルウィニア・カロトボラ(Erwinia carotovora)の培養液に初めて見いだされて以来、様々な細菌および糸状菌類から単離され、研究されている。食品工業において、果汁の清澄化や柑橘類のひょう嚢の除去等に用いられているが、ペクチン含有廃水の後処理、バイオマスの分解、綿繊維の精錬、洗浄剤への配合等への利用が期待されている。
【0003】
特に、バチルス・エスピー KSM−P103株及びバチルス・エスピー KSM−P7株由来のペクチン酸リアーゼ[特許文献1]、バチルス・エスピー KSM−P15株由来のペクチン酸リアーゼ[特許文献2]および[特許文献3]、バチルス・エスピー KSM−P358株由来のペクチン酸リアーゼ[特許文献4]、は、好アルカリ性バチルス属細菌由来の酵素であり、至適pHをアルカリ性側に持つ特徴を有している。アルカリ性側に至適pHを持つことから、洗剤への添加による工業的利用が期待されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−318457号公報
【特許文献2】
特開2000−125877号公報
【特許文献3】
特開2000−253888号公報
【特許文献4】
特開2002−85077号公報
【0005】
また、ペクチン酸リアーゼをコードする遺伝子については、上記のバチルス・エスピー KSM−P103株及びバチルス・エスピー KSM−P7株由来のペクチン酸リアーゼ[特許文献1]、バチルス・エスピー KSM−P15株由来のペクチン酸リアーゼ[特許文献2]および[特許文献3]、バチルス・エスピー KSM−P358株由来のペクチン酸リアーゼ[特許文献4]をコードする遺伝子の他、エルウィニア・クリサンテミ(Erwinia chrysanthemi)[非特許文献1]、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)[非特許文献2]、クロコウジカビ (Aspergillus niger) [非特許文献3]等由来のものが、既にクローニングされ塩基配列が決定されている。絶対嫌気性細菌由来のものとして、クロストリジウム・セルロボランス(C1ostridium cellulovorans)由来のものが報告されている[非特許文献4]。
【0006】
【非特許文献】
【非特許文献1】
アルファーノ,ジェイ.アール,(Alfano,J.R), ハム,ジェイ.エッチ(Ham,J.H), コルマー,エイ(Collmer,A),ジャーナル オブ バクテリオロジー(Journal of Bacteriology), 1995年,米国,177巻, p4553−4556,
【非特許文献2】
ホー,エム.シー(Ho,M.C), ホワイトヘッド,エム.ピー(Whitehead,M.P),クリーブランド,ティー.エイ( Cleveland,T.E), ディーン,アール.エイ(Dean,R.A), カレント ジェネティックス(Current Genetics), 1995年,ドイツ, 7巻, p142−149
【非特許文献3】
ベネン,ジェイ.エイ(Benen,J.A),ケスター,エイチ.シー(Kester,H.C),パレニコバ,エル(Parenicova.L),ヴィッサール,ジェイ(Visser,J),バイオケミストリー(Biochemistry),2000年、米国,39巻,p15563−15569
【非特許文献4】
タマル ワイ(Tamaru Y),ドイ アールエッチ(Doi RH),プロシーディングス オブ ナショナル アカデミー オブ サイエンス(Proceedings of National Academy Of Science),2001年,米国,98巻,p4125−4129
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のペクチン酸リアーゼは工業用酵素として入手可能であるが、高価格、低比活性さらに他の糖質分解酵素が混在しているなどの問題があり、活性の強さ、反応時における安定性の観点から好熱性ペクチン酸リアーゼの開発が望まれている。本発明は、絶対嫌気性菌好熱菌由来のより熱に安定な新規なペクチン酸リアーゼタンパク質、該タンパク質をコードする遺伝子、該遺伝子を含有する組換えベクター、該組換えベクターを含む形質転換体、該形質転換体を用いる前記タンパク質の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、絶対嫌気性好熱性菌クロストリジウム・ステルコラリウム(C1ostridium stercorarium)にペクチン酸リアーゼ遺伝子(pel9A)が存在することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の(a)又は(b)の性質を有する組換えタンパク質であり、且つ該組換えタンパク質をコードする遺伝子である。
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列において少なくとも1個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつペクチン酸リアーゼ活性を有するタンパク質。
【0010】
さらに、本発明は、以下の(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子である。
(c)配列番号1で表される塩基配列を含むDNA。
(d)配列番号1で表される塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつペクチン酸リアーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【0011】
さらに、本発明は、前記の遺伝子を含有する組換えベクターであり、該組換えベクターを含む形質転換体である。
【0012】
さらに、本発明は、前記の形質転換体を培地に培養し、得られる培養物からペクチン酸リアーゼ活性を有するタンパク質を採取することを特徴とする、該タンパク質の製造方法である。
【0013】
さらに、本発明は、クロストリジウム・ステルコラリウムを培地に培養し、得られる培養物からペクチン酸リアーゼ活性を有するタンパク質を採取することを特徴とする、該タンパク質の製造方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の好適な一実施の形態を詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は下記の実施形態によって限定されるものでなく、その要旨を変更することなく様々に改変して実施することができる。また本発明の技術的範囲は均等の範囲にまで及ぶこともある。
【0015】
本発明者らは、絶対嫌気性好熱性菌クロストリジウム・ステルコラリウムの培養上清に、ペクチン酸リアーゼ活性を見出した。そして、ショットガンクローニングを行ったところ、ペクチン酸リアーゼ活性を有するクローンを見出し、遺伝子の解析の結果、多糖リアーゼファミリー9に属するペクチン酸リアーゼ遺伝子(pel9A遺伝子という)であることがわかった。このpel9A遺伝子は、以下のようにしてクローニングすることができる。
【0016】
1.pel9A遺伝子のクローニング
(1)ゲノムDNAライブラリーの調製
クロストリジウム・ステルコラリウムのゲノムDNAは、GS培地、PY培地、VL培地などを用いて、嫌気培養したクロストリジウム・ステルコラリウムから、通常行われる手法により調製することができる。例えば、嫌気条件下で液体培養により得られた菌体を、遠心分離によって回収後、適切な緩衝液(例えばTEバッファー)に懸濁し、次いで、界面活性剤(例えばSDS, CTAB)などによる化学的処理法によって細胞を破壊し、核酸を抽出する。次いで、リボヌクレアーゼ処理によりRNAを分解後、アルコール沈殿させることにより、ゲノムDNAを調製することができる。
【0017】
次いで、得られたゲノムDNAを適当な制限酵素(例えばSau3AIなど)で消化し、クロロホルム処理後、エタノール沈殿によりDNA断片を回収する。得られたDNA断片をアガロースゲル電気泳動などにより分画後、適切なベクター(例えばλgt1O、λgt11などのファージベクター、pBR322、pUC19、pB1uescriptなどのプラスミドベクター、Lawrist4などのコスミドベクターなど)に連結する。最後に、連結物を大腸菌(例えばDH5α株、XL1−b1ue株、C600株、JM109株など)に形質転換することにより、ゲノムDNAライブラリーを調製することができる。なお、本発明において用いたクロストリジウム・ステルコラリウムの微生物受託番号は、[産業技術総合研究所特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番3号)、CIostridium stercorarium F−9,FERM P−18745]である。
【0018】
(2)本発明のpel9A遺伝子のクローニング
本発明のpel9A遺伝子は、ペクチン酸リアーゼ活性を指標として、上記(1)において得られた形質転換体の中からスクリーニングすることができる。形質転換体を寒天平板培地に生育させた後、ペクチン酸を含む軟寒天を重層し、60℃程度に放置することにより、組換え体より酵素を漏出させると同時に酵素反応を行わせる。その後、1M塩化カルシウム溶液を注ぐとペクチン酸リアーゼ活性を生産しているコロニーの周辺には透明環が現れるので、ペクチン酸リアーゼ活性を有するクローンを選択できる。さらに、これらクローンの培養菌体破砕物が、ペクチン酸やペクチンに作用するかを調査することにより、pel9Aを保有するクローンを選択できる。
【0019】
次いで、常法にしたがって、得られたポジティブ株から挿入DNA断片を調製し塩基配列の決定を行う。塩基配列の決定はマキサムーギルバートの化学修飾法、又はM13ファージを用いるジデオキシヌクレオチド鎖終結法等の公知手法により行うことができるが、通常は白動塩基配列決定機(例えばLI−COR社製mode14000L、ファルマシア社製ALFH型等)を用いて配列決定が行われる。そして決定された塩基配列は、Genetyx, DNASISなどのDNA解析ソフトを用いてオープンリーデイングフレームの検索がなされ、得られた推定アミノ酸配列について、データベース検索を行うことにより、公知のタンパク質とのホモロジーを調べることができる。
【0020】
配列番号1に本発明のpel9A遺伝了の塩基配列を、配列番号2に本発明のpel9Aタンパク質のアミノ酸配列を例示するが、このアミノ酸配列からなるタンパク質がペクチン酸リアーゼ活性を有する限り、当該アミノ酸配列において少なくとも1個のアミノ酸に欠失、置換、付加等の変異が生じてもよい。例えば、配列番号2で表されるアミノ酸配列の少なくとも1個、好ましくは1−20個程度、さらに好ましくは1−10個のアミノ酸が欠失してもよく、又は、配列番号2で表わされるアミノ酸配列に少なくとも1個、好ましくは1−20個程度、さらに好ましくは1−10個のアミノ酸が付加してもよく、あるいは、配列番号2で表されるアミノ酸配列の少なくとも1個、好ましくは1−20個程度、さらに好ましくは1−10個のアミノ酸が他のアミノ酸に置換してもよい。
【0021】
また、上記遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるDNAも本発明の遺伝子に含まれる。ストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が15−150 mM、好ましくは15−30 mMであり、温度が37−80℃、好ましくは50−65℃での条件をいう。なお、遺伝子に変異を導入するには、Kunke1法、Gapped dup1ex法等の公知の手法又はこれに準ずる方法により、例えば部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(例えばMutant−K(TAKRA社製)、Mutant−G(TAKRA社製))などを用いて、あるいは、TAKRA社のLA PCR in vitro Mutagenesisシリーズキットを用いて行うことができる。
【0022】
一旦、本発明の遺伝子の塩基配列が確定されると、その後は化学合成によって、又は本遺伝子のcDNA又はゲノムDNAを鋳型としたPCRによって、あるいは該塩基配列を有するDNA断片をプローブとしてハイブリダイズさせることにより、本発明の遺伝子を得ることができる。
【0023】
1.組換えベクターおよび形質転換体の作製
(1)組換えベクターの作製
本発明の組換えベクターは、適当なベクターに本発明の遺伝子を連結(挿入)することにより得ることができる。本発明の遺伝子を挿入するためのベクターは、宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず、例えば、プラスミドDNA、ファージDNA等が挙げられる。プラスミドDNAとしては、大腸菌由来のプラスミド(例えばpBR322、pBR325、pUC118、pUC119、pUC18、pUC19、pCBD−C、pB1uescript等)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB11O,pTP5等)、酵母由来のプラスミド(例えばYEp13、YEP24、YCp50、YIp30等)などが挙げられ、ファージDNAとしてはλファージ等が挙げられる。さらに、レトロウイルス、ワクシニアウイルスなどの動物ウイルス、バキュロウイルス、トガウイルスなどの昆虫ウイルスベクターを用いることもできる。
【0024】
ベクターに本発明の遺伝子を挿入するには、まず、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、適当なベクターDNAの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法などが採用される。本発明の遺伝子は、その遺伝子の機能が発揮されるようにベクターに組み込まれることが必要である。そこで、本発明のベクターには、プロモーター、本発明の遺伝子のほか、所望によりエンハンサーなどのシスエレメント、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、リボソーム結合配列(SD配列)などを含有するものを連結することができる。なお、選択マーカーとしては、例えばアンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、等が挙げられる。
【0025】
(2)形質組換え体の作製
本発明の形質転換体は、本発明の組換えベクターを、目的遺伝子が発現し得るように宿主中に導入することにより得ることができる。ここで、宿主としては、本発明のDNAを発現できるものであれば特に限定されるものではない。例えば、大腸菌(Escherichia coli)等のエシェリヒア属、バチルス・ズブチリス(Baci11ussubti1is)等のバチルス属、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)等のシュードモナス属、リゾビウム・メリロテイ(Rhizobium meliloti)等のリゾビウム属に属する細菌が挙げられ、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等の酵母が挙げられ、COS細胞、CH0細胞等の動物細胞が挙げられ、あるいはSf9、Sf21等の昆虫細胞が挙げられる。大腸菌等の細菌を宿主とする場合は、本発明の組換えベクターが該細菌中で自律複製可能であると同時に、プロモーター、リボゾーム結合配列、本発明の遺伝子、転写終結配列により構成されていることが好ましい。また、プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。大腸菌としては、例えばエシェリヒア・コリ(Escherichia co1i) K12 DH1などが挙げられ、枯草菌としては、例えばバチルス・ズブチリス(Baci11us subti1is) MI 114、207−21などが挙げられる。
【0026】
プロモーターとしては、大腸菌等の宿主中で発現できるものであればいずれを用いてもよい。例えばtrpプロモーター、1acプロモーター、PLプロモーター、PRプロモーターなどの、大腸菌やファージに由来するプロモーターが用いられる。tacプロモーターなどのように、人為的に設計改変されたプロモーターを用いてもよい。細菌への組換えベクターの導入方法としては、細菌にDNAを導入する方法であれば特に限定されるものではない。例えばカルシウムイオンを用いる方法[Cohen et a1.: Proc. Nat1. Acad. Sci., USA, 69, 2110, 1972]やエレクトロポレーション法等が挙げられる。
【0027】
酵母を宿主とする場合は、例えばサッカロミセス・セレビシェ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ピヒア・パストリス(Pichia pastoris)などが用いられる。この場合、プロモーターとしては酵母中で発現できるものであれば特に限定されず、例えばga11プロモーター、ga110プロモーター、ヒートショックタンパク質プロモーター、MFα1プロモーター、PH05プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、AOX1プロモーター等が挙げられる。
【0028】
酵母への組換えベクターの導入方法としては、酵母にDNAを導入する方法であれば特に限定されず、例えばエレクトロポレーション法[Becker,D.M. et a1.: Methods Enzymo1., 194,182, 1990]、スフェロプラスト法[Hinnen, A. et a1.: Proc. Nat1. Acad. Sci., USA, 75, 1929, 1978]、酢酸リチウム法[Itoh, H.: J
.Bacterio1.,153, 163, 983]等が挙げられる。
【0029】
動物細胞を宿主とする場合は、サル細胞COS−7,Vero、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、マウスL細胞、ヒトGH3、ヒト肌細胞などが用いられる。プロモーターとしてSRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CWプロモーター等が用いられ、また、ヒトサイトメガロウイルスの初期遺伝子プロモーター等を用いてもよい。動物細胞への組換えベクターの導入方法としては、例えばエレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等が挙げられる。昆虫細胞を宿主とする場合は、Sf9細胞、Sf21細胞などが用いられる。昆虫細胞への組換えベクターの導入方法としては、例えばリン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法などが用いられる。
【0030】
3.本発明のタンパク質の製造
本発明のタンパク質は、本発明のペクチン酸リアーゼ遺伝子又はペクチン酸リアーゼの触媒ドメイン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列を有するもの、または該アミノ酸配列において少なくとも1個のアミノ酸に前記変異が導入されたアミノ酸配列を有するものをいう。さらに、これらのタンパク質とセルロース結合タンパク質又はβ一ガラクトシダーゼタンパク質との融合タンパク質も本発明のタンパク質に含まれる。本発明のタンパク質は、クロストリジウム属に属する細菌又は前記2において得られた形質転換体の培養物から、以下のようにして製造することができる。ここで、「培養物」とは、培養後の培地上清、培養により得られた細胞若しくは細胞の破砕物のいずれをも意昧するものである。クロストリジウム属に属する細菌(例えばクロストリジウム・ステルコラリウム)又は前記2において得られた形質転換体を培養する方法は、それらの細胞の培養に用いられる通常の方法に従って行われる。
【0031】
培地としては、前記細胞が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、該細胞の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。ここで、炭素源としては、グルコース、フラクトース、スクロース、デキストリン、デンプン等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、グリセロール、工タノール、プロパノール等のアルコール類、動物油、糖蜜などが用いられる。また、窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸若しくは有機酸のアンモニウム塩又はその他の含窒素化合物のほか、ベプトン、肉エキス、酵母エキス、麦芽エキス、コーンスティープリカー等が用いられる。さらに、無機塩類としては、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、コバルト、亜鉛、鉄、モリブデン等の陽イオン、及び硫酸、リン酸、塩酸、硝酸などの陰イオンの塩が用いられる。
【0032】
また、クロストリジウム属に属する細菌などを嫌気培養する場合にはシステインなどの還元作用を有する物質を培地に添加し、菌の接種は培養器上部の空間に残存する酸素を窒素パージ等で十分除去した後に行うことが好ましい。そして嫌気性菌の培養は、嫌気ボックス、嫌気ジャー、ブチルゴム栓付き試験管などで行う。さらに、形質転換体を培養する場合には、必要に応じて培地にアンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を添加してもよい。そして、前記細胞のペクチン酸リアーゼ活性が最高値に達するまで培養を行う。
【0033】
さらに、クロストリジウム属に属する細菌などを培養する場合には、ペクチン酸やペクチンを添加すると細胞当りのペクチン酸リアーゼ活性を上昇させることができる場合があるため、必要に応じてこれらの物質を添加する。さらに、形質転換体の培養において、その形質転換体が誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換されたものである場合には、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、Lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換された微生物を培養するときにはイソプロピルーβ一D一チオガラクトピラノシド(IPTG)等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸(IAA)等を培地に添加してもよい。
【0034】
動物細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているRPMI640培地、DMEM培地又はこれらの培地に牛胎児血清等を添加した培地等が用いられる。培養は、通常、5%C02存在下、37℃で1〜30日行う。培養中は必要に応じてカナマイシン、べニシリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
【0035】
培養後、本発明のペクチン酸リアーゼタンパク質が菌体内又は細胞内に生産される場合には、菌体又は細胞を破砕することによりペクチン酸リアーゼタンパク質を抽出する。菌体の破砕は、超音波、フレンチプレス、ガラスビーズを使用するホモジナイザーなどを用いることができるが、リゾチームや凍結融解法との併用によって行うこともできる。また、本発明のペクチン酸リアーゼタンパク質が菌休外又は細胞外に生産される場合には、培養液をそのまま使用するか、遠心分離等により菌体又は細胞を除去する。その後、タンパク質の単離精製に用いられる一般的な生化学的方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、アフイニティークロマトグラフィー等を単独で又は適宜組み合わせて用いることにより、前記培養物中から本発明のタンパク質を単離精製することができる。
【0036】
4.ペクチン酸リアーゼ活性の測定
ペクチン酸リアーゼの活性は以下のようにして測定することができる。すなわち、酵素溶液をペクチン酸やペクチンに作用させて、生成した4−デオキシ−L−トレオ−ヘクス4−エノピラノシルウロン酸を分光光度計を用いて定量することができる。また、反応により生じたオリゴ糖を薄層クロマトグラフィーなどにより検出することも出来る。
【0037】
5.本発明のタンパク質に対する抗体
本発明においては、本発明のタンパク質に対する抗体を作製することもできる。「抗体」とは、抗原である本発明のペプチドに結合し得る抗体分子全体またはその断片(例えば、FabまたはF(ab’)2断片)を意昧し、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。木発明の抗体は、種々の方法のいずれかによって製造することができる。このような抗体の製造法は当該分野で周知である[例えばSambrook, J et a1., Mo1ecu1ar C1oning, Co1d Spring Harbor Laboratory Press (1989)を参照]。
【0038】
(1)本発明のタンパク質に対するポリクローナル抗体の作製
前記のようにして、遺伝子工学的に作製した本発明のペクチン酸リアーゼタンパク質又はその断片を抗原として、これを哺乳動物、例えばヒト、マウス、ウサギなどに投与する。抗原の動物1匹当たりの投与量は、アジュバントを用いないときは1−5ミリグラムであり、アジュバントを用いるときは25〜100μgである。アジュバントとしては、フロイント完全アジュバント(FCA)、フロイント不完全アジュバント(FIA)、水酸化アルミニウムアジュバント等が挙げられる。免疫は、主として静脈内、皮下、腹腔内等に注入することにより行われる。また、免疫の間隔は特に限定されず、数日から数週間間隔で、好ましくは2〜4週間間隔で、2〜5回、好ましくは3〜4回免疫を行う。そして、最終の免疫口から12−16日後に、好ましくは、酵素免疫測定法(EIA; enzyme immunoassay)、放射性免疫測定法(RIA; radio immunoassay)等で抗体価を測定し、最大の抗体価を示した日に採血し、抗血清を得る。抗血清から抗体の精製が必要とされる場合は、硫安塩析法、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過、アフィニティークロマトグラフィーなどの公知の方法を適宜選択して、又はこれらを組み合わせることにより精製することができる。
【0039】
(2)本発明のタンパク質に対するモノクローナル抗体の作製
(i)抗体産生細胞の採取は前記のようにして、遺伝子工学的に作製した本発明のタンパク質又はその断片を抗原として、哺乳動物、例えばラット、マウス、ウサギなどに投与する。抗原の動物1匹当たりの投与量は、アジュバントを用いないときは1〜5ミリグラムであり、アジュバントを用いるときは25〜100μgである。アジュバントとしては、フロイント完全アジュバント(FCA)、フロイント不完令アジュバント(FIA)、水酸化アルミニウムアジュバント等が挙げられる。免疫は、主として静脈内、皮下、腹腔内に注入することにより行われる。また、免疫の間隔は特に限定されず、数日から数週間間隔で、好ましくは2〜4週間間隔で、2〜5回、好ましくは3〜4回免疫を行う。そして、最終の免疫日から12〜16日後、好ましくは14日後に抗休産生細胞を採集する。抗体産生細胞としては、脾臓細胞、リンパ節細胞、抹消血細胞等が挙げられるが、脾臓細胞又は局所リンパ節細胞が好ましい。
【0040】
(ii)細胞融合
ハイブリドーマを得るため、抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞融合を行う。抗体産生細胞と融合させるミエローマ細胞として、マウスなどの動物の一般に入手可能な株化細胞を使用することができる。使用する細胞株としては、薬剤選択性を有し、未融合の状態ではHAT選択培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジンを含む)で生存できず、抗体産生細胞と融合した状態でのみ生存できる性質を有するものが好ましい。ミエローマ細胞としては、例えばP3×63−Ag.8.U1(P3U1)、Sp2/O、NS−Iなどのマウスミエローマ細胞株が挙げられる。次に、上記ミエローマ細胞と抗体産生細胞とを細胞融合させる。細胞融合は、血清を含まないDMEM、RPMI−1640培地などの動物細胞培養用培地中で、抗体産生細胞とミエローマ細胞とを4:1〜1:4の割合で混合し、細胞融合促進剤存在のもとで融合反応を行う。細胞融合促進剤として、平均分子量1,500ダルトンのポリエチレングリコール等を使用することができる。また、電気刺激(例えばエレクトロポレーション)を利用した市販の細胞融合装置を用いて抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させることもできる。
【0041】
(iii)ハイブリドーマの選別及ぴクローニング
細胞融合処理後の細胞から目的とするハイブリドーマを選別する。その方法として、細胞懸濁液を例えばウシ胎児血清含有RPMI−1640培地などで適当に希釈後、マイクロタイタープレート上にO.8個/ウエル程度まき、各ウエルに選択培地を加え、以後適当に選択培地を交換して培養を行う。その結果、選択培地で培養開始後、約14日前後から生育してくる細胞をハイブリドーマとして得ることができる。次に、増殖してきたハイブリドーマの培養上清中に、目的とする抗体が存在するか否かをスクリーニングする。ハイブリドーマのスクリーニングは、通常の方法に従えばよく、特に限定されない。例えば、ハイブリドーマとして生育したウエルに含まれる培養上清の一部を採集し、酵素免疫測定法、放射性免疫測定法等によって行うことができる。融合細胞のクローニングは、限界希釈法等により行い、最終的にモノクローナル抗体産生細胞であるハイブリドーマを樹立する。
【0042】
モノクローナル抗体の採取
樹立したハイブリドーマからモノクローナル抗体を採取する方法として、通常の細胞培養法又は腹水形成法等を採用することができる。細胞培養法においては、ハイブリドーマを10%ウシ胎児血清含有RPMI−1640培地、MEM培地又は無血清培地等の動物細胞培養培地中で、通常の培養条件(例えば37℃、5%C02濃度)で2〜10日間培養し、その培養上清から抗体を取得する。腹水形成法の場合は、ミエローマ細胞由来の哺乳動物と同種系動物の腹腔内にハイブリドーマを約1×107個投与し、ハイブリドーマを大量に増殖させる。そして、1〜2週間後に腹水または血清を採集する。上記抗体の採取方法において、抗体の精製が必要とされる場合は、硫安塩析法、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過、アフィニティークロマトグラフィーなどの公知の方法を適宜選択して、又はこれらを組み合わせることにより精製することができる。
【0043】
このようにしてポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体が得られた後は、これをリガンドとして、固体担体に結合させることによりアフィニティークロマトグラフィーカラムを作製し、そして該カラムを用い、前記の採取源又は他の採取源から、本発明のペクチン酸リアーゼタンパク質を精製することができる。さらにこれらの抗体は本発明のペクチン酸リアーゼタンパク質を検出するためにウエスタンブロッティングに用いることもできる。
【0044】
【実施例】
[実施例1]ペクチン酸リアーゼ遺伝子のクローニング
(1)染色体DNAの調製
常法に従って、クロストリジウム・ステルコラリウム(C1ostridium stercorarium)の染色体DNAを調製した。すなわち、C1ostridium stercorarium FERM P−18745株を、100mlのGS培地(0.45%酵母エキス、O.5%セロビオース、0.1システイン塩酸塩、2.09%MOPS、O.15% KH2P04、0.29%K2HP04、O.13%(NH4)2S04、O.2%MgCl2、0.03%CaCl2、O.OO025%FeS04・7H20、pH7.4)で、60℃、1日間、嫌気的に培養後、遠心分離することにより菌体を回収した。得られた菌体を10mlのTE緩衝液(10mM Tris−HCl(pH7.4)、1mM EDTA)に懸濁し、これに1mlの10%SDSおよび0.1mlの20ミリグラム/mlプロテイナーゼKを加え、37℃で1時間保温した。次いで2mlの5MNaC1を加えよく撹絆後、1mlの10%CTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロマイド)一0.7MnaClを加え、65℃で10分間保温した。次いで、同量のクロロホルム(4%イソアミルアルコール含有)を加えよく攪拌した後、遠心分離した。得られた上清を滅菌済遠心管に移し、2倍容量のエタノールを加え、室温に10分間放置した。次いで、遠心分離により白沈殿物を回収し、減圧下、デシケーター中で乾燥させた。次いで、1mlのTE緩衝液に溶解し、10mg/mlとなるようにリボヌクレアーゼA溶液を加え、37℃で30分間保温した。0.1m1の3M酢酸ナトリウム(pH8.O)及び2.2m1のエタノールを加え、よく混合した後、遠心分離により上清を除去した。沈殿物をデシケーター中で乾燥させた後O.5m1のTE緩衝液に溶解させることにより染色体DNAを得た。
【0045】
(2)DNAライブラリーの作製
上記(1)において得られたゲノムDNAを用い、クロストリジウム・ステルコラリウムの染色体DNAライブラリーを作製した。すなわち、染色休DNAを制限酵素Sau3AIで部分的に切断した後、O.4%アガロースHI4(宝酒造社製)によるアガロースゲル電気泳動を行い、5〜10kbpのDNA断片を切り出し、GeneC1eanキット(Bio101社製)により回収した。さらに、dGおよびdA存在下、K1enow酵素により、5’−突出末端を一部修復合成し、2ヌクレオチド突出末端を持つ染色体DNA断片を調製した。
一方、プラスミドpB1uescriptIIKS+(Stratagene社製)を制限酵素XhoIで切断した後、GeneC1eanキットにより回収し、5’−突出末端を一部修復合成し、2ヌクレオチド突出末端を持つプラスミドを得た。調製した上記染色体DNA断片と上記プラスミドをT4DNAリガーゼにより連結し、大腸菌DH5α(Escherichia co1i DH5α)に導入した。その際、コンピテントセルおよび形質転換体の調製は塩化カルシウムを用いた常法により実施した。
【0046】
これらの形質転換休を、アンピシリン(50μ1/m1)、IPTG(イプロピルチオーβ一D一ガラクトピラノシド;40μM)、X−ga1(5一ブロモー4一クロロー3一インドリルーβ一D一ガラクトピラノシド;40μg/m1)を含むLB寒天平板(ポリベプトン1.O%、酵母エキスO.5%、NaC1O.5%、寒天1.5%、PH7.O;φ9×1.5センチメートル、丸型シヤーレ)上に塗布し、37℃で培養し、形成したコロニーのうち、白色のものを約5000株採取した。
【0047】
(3)ペクチン酸リアーゼ活性を有するクローンの選択
採取したコロニーをLB寒天平板に接種し、37℃、一晩培養し、再度コロニーを形成させた後、0.4%ペクチン酸を含む0.5%寒天を重層し、寒天を固化させた後60℃で2時間保温した。その後、1MCaCl2溶液を注ぎ、コロニーの周りに透明環が現れたコロニーをポジテイブクローンとした。
【0048】
このポジテイブクローンを、5mlのLB培地(ポリベプトン1.O%、酵母エキスO.5%、NaC1O.5%、pH7.0)に接種し、37℃、一晩振とう培養した。遠心分離により回収した菌体を、5mlの50mMTris−HCl緩衝液PH8に懸濁し、2x30秒の超音波処理により菌体を破砕し、遠心分離により菌体破砕物を除去し、澄明な液を得た。さらに、60℃、15分の加熱処理により大腸菌の酵素を失活させた後、不溶解分を遠心分離で除去し、粗酵素液とした。ペクチン酸リアーゼ活性は、ペクチン酸を基質として確認した。すなわち、O.5m1の200mMTris−HCl緩衝液PH8、0.4mlの0.25mMCaCl2、1mlの0.4%ペクチン酸ナトリウム水溶液とO.1m1の粗酵素を混合し、60℃で反応させた。2mlの50mMHClを加えて反応を止めた後、4−デオキシ−L−トレオ−ヘクス4−エノピラノシルウロン酸残基の生成を235nmの吸光度により測定し、ペクチン酸リアーゼ活性を有する形質転換体を1株取得した。
【0049】
さらに、ジガラクツロン酸およびトリガラクツロン酸に対する作用を調べた。これら基質の加水分解物の確認は110℃、30分熱処理したシリカゲル薄層クロマトグラフィー(MACHERY−NAGEL社製、SIL G−25)を用いて行い、酵素反応は8μ1の0.4%(wt/vo1)各基質溶液、2μ1上記粗酵素液、2μ1の200mMTrisHCl、pH8を¥loch混合し、60℃、12時間反応させた。薄層クロマトグラフィーの展開溶媒は1一ブタノール:水:酢酸(5:3:2、vo1/vo1)を用いた。展開後は風乾させ、硫酸噴霧、及び140℃、5分の処理により発色させた。その結果、該ペクチン酸リアーゼはトリガラクツロン酸に対して作用した。
【0050】
(4)組換えプラスミドの調製
上記(3)で選択した形質転換体をアンピシリン(50μ1/m1)を含む100mlのLB培地にて37℃、一晩培養、集菌した。滅菌水による洗浄後、5mlの溶液I(25mMグルコース、10mMEDTA,25mMTris−HC1(PH8.O))に懸濁し、25ミリグラムのリゾチームを添加し、0℃、30分間放置した。10m1の溶液II(1N−NaOH、5%SDS)を加え、O℃、5分間放置し、さらに、7.5m1の溶液III(3M酢酸ナトリウム(PH4.8))を加え、O℃、30分間放置した。これを遠心し、その上清に50m1のエタノールを加え、さらに遠心し上清を取り除き5mIの溶液IV(10ミリミリリットル酢酸ナトリウム、50リットルTris−HC1(pH8.0)とリボヌクレアーゼA溶液(10ミリグラム/ミリリットル)2.5μ1を加え室温で20分間放置した。これに12m1のエタノールを加え、遠心によりプラスミドを回収、70%エタノールで洗浄、乾燥後0.4m1の減菌水に溶解した。こうして得られた組換え体プラスミドをpPEL9A−1と名付けた。
【0051】
(5)挿入断片の塩基配列の決定
上記(4)で得られたpPEL9A−1を複数の制限酵素で切断し、制限酵素地図を作製し (図1参照)、また、常法によりサブクローニングを行った。すなわち、制限酵素としてHindHI,NdeI,SacIを用い、pPEL9A−1を部分切断後、切断部位をT4DNAリガーゼにより再結合したプラスミドを大腸菌DH5αに再度形質転換し、上記(4)と同様の方法で、プラスミドを複数調製した。これらをプライマー蛍光標識法自動DNAシーケンサー(LI−CORE社製、mode14000L)により挿入断片の塩基配列を解析した。その結果、3720bpの遺伝子配列(配列番号1)およぴ、1240個の推定アミノ酸配列(配列番号2)が得られ、この遺伝子をpel9Aと命名した。
【0052】
次に、DDBJ(DNA Data Bank of Japan)データベースにより相同性を有する酵素を検索した。本酵素は、多糖リアーゼのファミリー9に分類される触媒ドメインを2つ持つ酵素であり、N末端側ドメインとC末端側ドメインの間の相同性は21%であった(図2参照)。本酵素はバチルス・ハロデュランス(Baci11us halodurans)のPelXと約53%の相同性を示した。また、本酵素のC末端側ドメインはクレブシェラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)PelXと32%の相同性、エルウィニア・クリサンテミ(Erwinia chrysanthemi)pelと31%の相同性、バチルス・エスピーKSM−P15 (Bacillus sp. KSM−P15)のPelと47%の相同性、ストレプトミセス・セリカラー(Streptomyces coelicolor)と41%の相同性を示した。 (図3,図4,図5参照)。
【0053】
(6)ペクチン酸リアーゼの精製
(i) 組換えプラスミドの構築
pel9A遺伝子の読み枠をPCR法で増幅しプラスミドベクターpQE−30Tに連結した。すなわち、pPEL9A−1を鋳型とし、プライマーとしてプライマー1(GGCCGGATCCGTAGCTGAAGAAGCAGAGGCAATGC)とプライマー2(GGCCGAGCTCTCCCAGGATGTTGAAAATCCCGGG)を用いて常法に従いpel9A遺伝子を増幅した。増幅したDNA断片を制限酵素BamHIとSacIで切断し、同じくBamHIとSacIで切断した発現ベクタープラスミドpQE−30T(Biosci. Biotechnol. Biochem., 63, 1596−1604, 1999)にT4DNAリガーゼを用いて連結した。構築したプラスミド(pPEL9A−2)を常法通り形質転換法にて、大腸菌M−15株に導入した。
【0054】
(ii)ペクチン酸リアーゼの精製
プラスミドpPEL9A−2を保有する大腸菌組換え体を、500mlのLB培地(ポリベプトン1.O%、酵母エキスO.5%、NaC1O.5%、pH7.0)に接種し、37℃、一晩振とう培養した。遠心分離により回収した菌体を、10mlの50mMTris−HCl緩衝液PH8に懸濁し、5x30秒の超音波処理により菌体を破砕し、遠心分離により菌体破砕物を除去し、澄明な液を得た。この粗酵素溶液をHisTrap キレーティングカラム(アマシャムファルマシアバイオテク社製)に吸着させた後、イミダゾール(pH7.4)の濃度勾配により蛋白質を溶出させた。回収したペクチン酸リアーゼを50mMTris−HCl緩衝液PH8に対して透析しイミダゾールを除いた後、RESOURCE Q カラム(1ml)に吸着させた。吸着した蛋白質を食塩の濃度勾配により溶出し、各画分の純度をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で調べ、単一のバンドにまで純化されたペクチン酸リアーゼを得た。
【0055】
(7)N末端側ドメイン蛋白質の単独発現と精製
(i)組換えプラスミドの構築
N末端側ドメインをコードする領域をPCR法で増幅しプラスミドベクターpQE−30Tに連結した。すなわち、pPEL9A−1を鋳型とし、プライマーとしてプライマー1(GGCCGGATCCGTAGCTGAAGAAGCAGAGGCAATGC)とプライマー3(GGCCGAGCTCTTACACTGTTACCTTGAGGGTTATCGG)を用いて常法に従いN末端側ドメインをコードする領域を増幅した。増幅したDNA断片を制限酵素BamHIとSacIで切断し、同じくBamHIとSacIで切断した発現ベクタープラスミドpQE−30T(Biosci. Biotechnol. Biochem., 63, 1596−1604, 1999)にT4DNAリガーゼを用いて連結した。構築したプラスミド(pPEL9A−3)を常法通り形質転換法にて、大腸菌M−15株に導入した。
【0056】
(ii)N末端側ドメイン蛋白質の精製
プラスミドpPEL9A−3を保有する大腸菌組換え体を、500mlのLB培地(ポリベプトン1.O%、酵母エキスO.5%、NaC1O.5%、pH7.0)に接種し、37℃、一晩振とう培養した。遠心分離により回収した菌体を、10mlの50mMTris−HCl緩衝液PH8に懸濁し、5x30秒の超音波処理により菌体を破砕し、遠心分離により菌体破砕物を除去し、澄明な液を得た。この粗酵素溶液をHisTrap キレーティングカラム(アマシャムファルマシアバイオテク社製)に吸着させた後、イミダゾール(pH7.4)の濃度勾配により蛋白質を溶出させた。回収したN末端側ドメイン蛋白質を50mMTris−HCl緩衝液PH8に対して透析しイミダゾールを除いた後、RESOURCE Q カラム(1ml)に吸着させた。吸着した蛋白質を食塩の濃度勾配により溶出し、各画分の純度をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で調べ、単一のバンドにまで純化されたN末端側ドメイン蛋白質を得た。
【0057】
(8)C末端側ドメイン蛋白質の単独発現と精製
(i)組換えプラスミドの構築
C末端側ドメインをコードする領域をPCR法で増幅しプラスミドベクターpQE−30Tに連結した。すなわち、pPEL9A−1を鋳型とし、プライマーとしてプライマー4(GGCCGGATCCATAACCCTCAAGGTAACAGTGAGGG)とプライマー2(GGCCGAGCTCTCCCAGGATGTTGAAAATCCCGGG)を用いて常法に従いC末端側ドメインをコードする領域を増幅した。増幅したDNA断片を制限酵素BamHIとSacIで切断し、同じくBamHIとSacIで切断した発現ベクタープラスミドpQE−30T(Biosci. Biotechnol. Biochem., 63, 1596−1604, 1999)にT4DNAリガーゼを用いて連結した。構築したプラスミド(pPEL9A−4)を常法通り形質転換法にて、大腸菌M−15株に導入した。
【0058】
(ii)C末端側ドメイン蛋白質の精製
プラスミドpPEL9A−4を保有する大腸菌組換え体を、500mlのLB培地(ポリベプトン1.O%、酵母エキスO.5%、NaC1O.5%、pH7.0)に接種し、37℃、一晩振とう培養した。遠心分離により回収した菌体を、10mlの50mMTris−HCl緩衝液PH8に懸濁し、5x30秒の超音波処理により菌体を破砕し、遠心分離により菌体破砕物を除去し、澄明な液を得た。この粗酵素溶液をHisTrap キレーティングカラム(アマシャムファルマシアバイオテク社製)に吸着させた後、イミダゾール(pH7.4)の濃度勾配により蛋白質を溶出させた。回収したC末端側ドメイン蛋白質を50mMTris−HCl緩衝液PH8に対して透析しイミダゾールを除いた後、RESOURCE Q カラム(1ml)に吸着させた。吸着した蛋白質を食塩の濃度勾配により溶出し、各画分の純度をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で調べ、単一のバンドにまで純化されたC末端側ドメイン蛋白質を得た。
【0059】
(9)ペクチン酸リアーゼ、N末端側ドメイン蛋白質及びC末端側ドメイン蛋白質の活性の比較
ペクチン酸リアーゼ活性は、ペクチン酸を基質として確認した。すなわち、O.5m1の200mMTris−HCl緩衝液PH8、0.4mlの0.25mMCaCl2、1mlの0.4%ペクチン酸ナトリウム水溶液とO.1m1の粗酵素を混合し、60℃で反応させた。2mlの50mMHClを加えて反応を止めた後、4−デオキシ−L−トレオ−ヘクス4−エノピラノシルウロン酸残基の生成を235nmの吸光度により測定した。1分間あたり1μmolの4−デオキシ−L−トレオ−ヘクス4−エノピラノシルウロン酸を生成する活性を1ユニット(U)とすると、ペクチン酸リアーゼ、N末端側ドメイン蛋白質及びC末端側ドメイン蛋白質の比活性はそれぞれ58U/μg、10U/μg、30 U/μgであった。この結果は、触媒ドメインが2つ連結することにより、酵素活性が相乗的に高まることを示した。また、これら3種の酵素の至適温度は65℃であった。
【0060】
【発明の効果】
本発明によるクロストリジウム・ステルコラリウム(C1ostridium stercorarium)FERM P−18745株
由来のペクチン酸リアーゼPel9Aは、その分子内に2つの触媒ドメインを有しており、それらが分子内相乗効果を発揮し、従来の単一触媒ドメインからなる酵素に比較し強力な分解活性を示す。またPel9Aは好熱性細菌由来であるため耐熱性に優れており、従来より高温で糖質を処理することができる。
【0061】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】pPEL9A−1、pPEL9A−2、pPEL9A−3及びpPEL9A−4の制限酵素を示す地図。
【図2】N末端側ドメインとC末端側ドメインとの間の相同性を示す図。
【図3】DDBJ(DNA Data Bank of Japan)により相同性を有する酵素を検索した結果を示す図。
【図4】同上。
【図5】同上。
【符号の説明】
Cs 本発明のClostridium stercorarium
Bh B. Halodurans
Ko Klebsiella oxytoca
Er Erwinia chrysanthemi
B.sp Bacillus sp.
Sc Streptomyces coelicolor
Claims (7)
- 次の(a)又は(b)の性質を有する組換えタンパク質。
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むタンパク質。
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列において少なくとも1個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつペクチン酸リアーゼ活性を有するタンパク質。 - 請求項1に記載の組換えタンパク質をコードする遺伝子。
- 次の(c)又は(d)のDNAを含むことを特徴とする遺伝子。
(c)配列番号1で表される塩基配列を含むDNA。
(d)配列番号1で表される塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつペクチン酸リアーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。 - 請求項3に記載の遺伝子を含有する組換えベクター。
- 請求項4に記載の組換えベクターを含む形質転換体。
- 請求項5に記載の形質転換体を培地に培養し、得られる培養物からペクチン酸リアーゼ活性を有するタンパク質を採取することを特徴とする、該タンパク質の製造方法
- クロストリジウム・ステルコラリウムに属する細菌を培地に培養し、得られる培養物からペクチン酸リアーゼ活性を有するタンパク質を採取することを特徴とする、該タンパク質の製造方法。
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-
2002
- 2002-10-25 JP JP2002310674A patent/JP2004141081A/ja active Pending
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