JP2004140929A - 電力系統ディジタル処理システムの入力回路監視方式 - Google Patents
電力系統ディジタル処理システムの入力回路監視方式 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】電力系統ディジタル処理システムにおいて、安価で平易な方式によりCPUの入力回路の異常を確実に検出でき、ひいては、CPUが、入力回路の異常であるか、電力系統側の異常であるかを的確に判別することが可能となる
【解決手段】電力系統からの交流信号を入力回路6で処理して得られたディジタル信号に基づいて電力系統のディジタル処理をCPU7により行う電力系統ディジタル処理システムにおいて、前記入力回路6の出力に基づいて前記交流信号の正の領域に対応するディジタル信号と前記交流信号の負の領域に対応するディジタル信号とから前記入力回路6内部の異常の有無を検出するようにした。
【選択図】 図1
【解決手段】電力系統からの交流信号を入力回路6で処理して得られたディジタル信号に基づいて電力系統のディジタル処理をCPU7により行う電力系統ディジタル処理システムにおいて、前記入力回路6の出力に基づいて前記交流信号の正の領域に対応するディジタル信号と前記交流信号の負の領域に対応するディジタル信号とから前記入力回路6内部の異常の有無を検出するようにした。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電力系統からの交流信号を入力回路で処理して得られたディジタル信号に基づいて電力系統のディジタル処理をCPUにより行う電力系統ディジタル処理システムにおける入力回路監視方式に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ディジタル保護リレーにおける保護の動作値、またはディジタル計測装置に置ける計測値の表示等、電力系統ディジタル処理システムにおける処理は実効値を基にしている場合が多く、その場合、従来のディジタル保護リレーまたはディジタル計測装置等、電力系統ディジタル処理システムにおいては、マイクロコンピュータ(以下CPUと略記する)により電力系統からの入力電圧または入力電流の波形についてサンプリング点における電圧値または電流値に対して以下の数式1や数式2を用い、実効値に変換した後に動作値または計測表示値等の演算処理を行っている。
【0003】
irms=Σ(i1 2+i2 2+・・・・+in 2) ・・・・・・・・・・・・・・・(数式1)
vrms=Σ(v1 2+v2 2+・・・・+vn 2) ・・・・・・・・・・・・・・・(数式2)
ただし、波形一周期にn回のデータサンプリングを実施しているものとする。また、irmsは電流の実効値を、vrmsは電圧の実効値を意味する。
【0004】
この方式では、前記CPUまでの入力回路に異常が発生し、当該異常により波形異常が発生しても実効値の変化幅が比較的小さく当該入力回路の異常をCPUが認識できない場合は入力回路の異常が無いものとして実効値への変換処理が継続実行される。つまり、CPUにおいては入力回路の異常により波形異常が発生しているにも拘わらず、当該異常下の実行値に相当する交流波形が入力されたものと認識され、入力回路の異常は検出されないまま、電力系統の状態変化、例えば負荷大或いは小として誤認し、電力系統の状態を正しく把握されない。
【0005】
また、この方式では、前記CPUまでの入力回路に異常が発生し、当該異常による実効値の変化幅が大きく、当該実効値が例えば保護リレ−の動作値より大きくなった場合は、入力回路における異常であるにも拘わらず、電力系統の事故と誤認して保護リレ−が動作してしまう危惧がある。
【0006】
従って、電力系統ディジタル処理システムにおいては、CPUが、入力回路の異常であるか、電力系統側の異常であるかを的確に判別できるようにすることが重要である。
【0007】
ここで、従来におけるCPUの入力側の異常を検出する技術として、例えば、特開平5−161249号公報に記載されたものがあるが、この特開平5−161249号公報に記載の技術は、I11+I12+I13≠0(ただし、I11は3相交流の第1相の相電流、I12は3相交流の第1相の相電流、I13は3相交流の第1相の相電流)を演算部で演算処理して判別し、演算部の入力回路に入力信号を供給するCTの断線を検出するものであり、演算部の入力回路の異常を監視するものではない。
【0008】
マイクロコンピュータのアナログ信号入力系の異常を検出する従来の技術としては、例えば、特開平6−105445号公報に記載されたものがあるが、この特開平6−105445号公報に記載の技術は、点検入力コントロ−ルにより点検信号を電力系統に供給して当該点検信号と電力系統の潮流とを合成し、点検が開始された後、マイクロコンピュータが、点検信号のみから得られた電流I(A)、前記点検信号と前記潮流を含む合成信号から得られた電流I(B)の値が点検開始前より大きい値を示すときにはアナログ信号入力系が正常であると判定し、前記電流I(A)、I(B)の値が点検開始前と同じ値を示すときにはアナログ信号入力系が異常であると判定するものである。
【0009】
【特許文献1】
特開平5−161249号公報(段落番号0009〜0029、図1(a)〜(c))
【特許文献2】
特開平6−105445号公報(段落番号0024、図1〜3)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように、ディジタル保護リレーにおける保護の動作値、またはディジタル計測装置に置ける計測値の表示等、電力系統ディジタル処理システムにおける処理は実効値を基にしている場合が多く、その場合、従来のディジタル保護リレーまたはディジタル計測装置等、電力系統ディジタル処理システムにおいては、CPUにより電力系統からの入力電圧または入力電流の波形についてサンプリング点における電圧値または電流値を実効値に変換した後に動作値または計測表示値等の演算処理を行っている方式では、前記CPUまでの入力回路に異常が発生し、当該異常により波形異常が発生しても実効値の変化幅が比較的小さく当該回路の異常をCPUが認識できない場合は回路の異常が無いものとして実効値への変換処理が継続実行される。つまり、CPUにおいては入力回路の異常により波形異常が発生しているにも拘わらず、当該異常下の実行値に相当する交流波形が入力されたものと認識され、入力回路の異常は検出されないまま、電力系統の状態変化、例えば負荷大或いは小として誤認し、電力系統の状態を正しく把握されない。また、この方式では、前記CPUまでの入力回路に異常が発生し、当該異常による実効値の変化幅が大きく、当該実効値が例えば保護リレ−の動作値より大きくなった場合は、入力回路における異常であるにも拘わらず、電力系統の事故と誤認して保護リレ−が動作してしまう危惧がある。従って、電力系統ディジタル処理システムにおいては、CPUが、入力回路の異常であるか、電力系統側の異常であるかを的確に判別できるようにすることが重要である。
【0011】
従来におけるCPUの入力側の異常を検出する技術として、例えば、前記特許文献1に記載されたものがあるが、前述のように、演算部の入力回路に入力信号を供給するCTの断線を検出するものであり、演算部の入力回路そのものの異常を監視する技術についてはこの公報では言及されていない。
【0012】
ここで、前述のように、マイクロコンピュータのアナログ信号入力系の異常を検出する従来の技術としては、前述のように、前記特許文献1の公開後に公開された前記特許文献2に記載されたものがあるが、この特許文献2に記載の技術は、点検入力コントロ−ルにより点検信号を電力系統に供給して当該点検信号と電力系統の潮流とを合成し、点検が開始された後、マイクロコンピュータが、点検信号のみから得られた電流I(A)、前記点検信号と前記潮流を含む合成信号から得られた電流I(B)の値が点検開始前より大きい値を示すときにはアナログ信号入力系が正常であると判定し、前記電流I(A)、I(B)の値が点検開始前と同じ値を示すときにはアナログ信号入力系が異常であると判定するものであるため、点検入力用電源回路、点検入力用電源回路のON/OFF用スイッチ、点検入力コントロ−ルによる点検信号を電力系統信号系に供給して当該点検信号と電力系統の潮流とを合成する加算器等を設け、点検入力コントロ−ルをする必要があり、構成が複雑で且つ高価なものとなる。
【0013】
この発明は、前述のような実情に鑑みてなされたもので、安価で平易な方式によりCPUの入力回路の異常を確実に検出できるようにすることを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る電力系統ディジタル処理システムの入力回路監視方式は、電力系統からの交流信号を入力回路で処理して得られたディジタル信号に基づいて電力系統のディジタル処理をCPUにより行う電力系統ディジタル処理システムにおいて、前記入力回路の出力に基づいて前記交流信号の正の領域に対応するディジタル信号と前記交流信号の負の領域に対応するディジタル信号とから前記入力回路内部の異常の有無を検出するものである。
【0015】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図1〜図5により説明する。図1はこの発明の実施の形態1を示す電力系統ディジタル処理システムの構成図、図2は動作説明のための電力系統からの入力波形を示す図、図3〜図5はCPUの入力回路に各種異常状態が発生した場合のこの発明の実施の形態1の作用を説明するための波形図である。
【0016】
図1の電力系統ディジタル処理システムは、電力系統(図示省略)から交流信号を入力するCT(変流器)やVT(計器用変圧器)等の交流信号入力手段1と、この交流信号入力手段1から入力された交流信号の振幅を任意の大きさに変化させるオペアンプ等の増幅手段2と、この増幅手段2の中から基本波正分を抽出するアナログフィルタ3と、このアナログフィルタ3からの出力信号をディジタル信号に変換するアナログ−ディジタル変換手段(以下A/Dコンバータと略記する)4と、このディジタル変換手段4からの出力信号を指定のタイミングで順次サンプリングすると共にサンプリングにより得られた信号をホールドするサンプルホールド手段5と、このサンプルホールド手段5でホ−ルドされたディジタル信号に基づいて入力回路6の異常を監視するCPU7と、で構成してある。
【0017】
前記入力回路6は、前記増幅手段2と、前記アナログフィルタ3と、A/Dコンバータ4と、サンプルホールド手段5とから成っている。
【0018】
CPU7は、サンプルホールド手段5によりサンプリングされた電流、電圧等の電気量の交流波形のデ−タから、電力系統の各種状態の計測や電力系統の保護に使用する実効値算出処理に加えて、そのサンプリングされたデータの和を算出する処理を実行し、加算された値が零以外の場合は前記入力回路6の内部回路に異常があると判定する。この判定の概念を以下に詳述する。
【0019】
電力系統から入力手段1を介して入力された電圧や電流などの入力交流波形は、図2に示すように0レベルを中心として正側及び負側に変化する正弦波となっている。従って一周期分のサンプリングされたデータを全て加算すると理論的には0となる。つまり次の式が成立する。
【0020】
Σ(i1+i2+・・・・+in)=0・・・・・・・・・・・・・・・・・(数式3)
Σ(v1+v2+・・・・+vn)=0・・・・・・・・・・・・・・・・・(数式4)
ただし、波形一周期(360°)にn回のデータサンプリングを実施しているものとする。また、i1・・・・in、及びv1・・・・vnは、それぞれサンプリングされた電流および電圧の値である。
【0021】
これに対して、前記入力回路6の内部回路に異常が発生した場合は、前記入力波形が異常となり、正または負に偏るため、上記の数式3及び数式4は成立せず次の式が成立する。
【0022】
Σ(i1+i2+・・・・+in)≠0・・・・・・・・・・・・・・・・・(数式5)
Σ(v1+v2+・・・・+vn)≠0・・・・・・・・・・・・・・・・・(数式6)
ただし、波形一周期(360°)にn回のデータサンプリングを実施しているものとする。また、i1・・・・in、及びv1・・・・vnは、それぞれサンプリングされた電流および電圧の値である。
【0023】
実際の電力系統ディジタル処理システムへの適用においては、例えば、増幅手段2やアナログフィルタ3で使用しているオペアンプのオフセット誤差や抵抗、コンデンサの誤差が存在するため、前記入力回路6の内部回路に異常が発生した場合に、前記数式5及び数式6の通りには必ずしも成立しない。従って、実際の電力系統ディジタル処理システムへの適用においては、判定基準を設け、前記数式5及び数式6の左辺がその範囲内であれば前記入力回路6を経由した信号波形は正常であるとする必要がある。
【0024】
実際の電力系統ディジタル処理システムへ適用した場合における前記入力回路6の異常判定の式は、例えば以下の数式7及び数式8のようにするのが好ましい。
判定値Ref1<Σ(i1+i2+・・・・+in)<判定値Ref2・・・・・・・(数式7)
判定値Ref3<Σ(v1+v2+・・・・+vn)<判定値Ref4・・・・・・・(数式8)
ただし、波形一周期(360°)にn回のデータサンプリングを実施しているものとする。i1・・・・in、及びv1・・・・vnは、それぞれサンプリングされた電流および電圧の値である。また、前記判定値Ref1,Ref2,Ref3,Ref4は、例えば、前記増幅手段2や前記アナログフィルタ3等で使用しているオペアンプのオフセット誤差や抵抗、コンデンサ等の誤差を考慮して任意に設定した値である。
【0025】
なお、数式7、数式8において、前記判定値Ref1と判定値Ref2の各絶対値は同じ値としてもよく、前記判定値Ref3と判定値Ref4の各絶対値は同じ値としてもよい。また電流波形と電圧波形の前記判定値を同じとしてもよい。
【0026】
前記CPU7は、前記数式7、数式8の範囲に入っておれば入力波形は正常、前記数式7、数式8の範囲に入っていなければ入力波形は異常と判定する。前記CPU7は、この判定を一周期(360°)毎に実施し、異常と判定した場合は、保護リレーや計測装置に付属している表示装置等、電力系統ディジタル処理システムに付属の表示装置(図示省略)へのCPU7の入力回路が異常である旨の表示、ブザ−等の報知装置の作動、電力系統ディジタル処理システムに必要な本来の処理機能の出力のロック、等を行う。また、もし保護リレーや計測装置等に外部への出力が可能な接点を有している場合は、前記入力回路の異常発生と伴って当該接点を動作させることにより、前記入力回路の異常を外部へ通報し、併せて入力回路の異常か電力系統の異常かを区別して表示装置に表示するようにしてもよい。
【0027】
また、実際の電力系統ディジタル処理システムへの適用においては、外乱等により入力波形が一時的に変動することも考えられるため、連続した数周期分の波形について前記判定を実施し、連続して前記数式7、数式8の範囲に入っていな場合に波形の異常を確定させるほうが好ましい。
【0028】
なお、CPU7の入力回路の異常により入力波形が異常となる要因としては、例えば次のようなものが考えられる。
1.増幅手段2のオペアンプの断線や内部短絡等の内部回路異常、
2.アナログフィルタ3のオペアンプの断線や内部短絡等の内部回路異常、
3.A/Dコンバータ4の断線や内部短絡等の内部回路異常、
4.サンプルホールド手段5に使用するICの内部回路の断線や内部短絡等の内部回路異常、
5.増幅手段2、アナログフィルタ3、A/Dコンバータ4、及びサンプルホールド手段5で使用されているコンデンサの温度による劣化。
【0029】
次に、図3〜図5により、CPU7の入力回路6に各種異常状態が発生した場合のこの発明の実施の形態1の作用を説明する。
【0030】
図3は、例えば、A/Dコンバータ4の内部回路に異常が発生した場合の、A/Dコンバータ4の出力をアナログ的に等価表示した波形図で、図示のように、正側に、正弦波形の波高値と同じ程度の波高値の異常波形が発生しており、この異常波形の発生に伴いCPU7によって前記数式1又は数式2により求められた実効値も相応に増加している。この図3に示すような状態においては、CPU7による演算結果は、Σ(i1+i2+・・・・+in)>判定値Ref2、Σ(v1+v2+・・・・+vn)>判定値Ref4となり、前記数式7、数式8の範囲に入っていないので、CPU7は「入力回路6に異常有り」の判定をし、前述のように、保護リレーや計測装置に付属している表示装置等、電力系統ディジタル処理システムに付属の表示装置(図示省略)へのCPU7の入力回路が異常である旨の表示、ブザ−等の報知装置の作動、電力系統ディジタル処理システムに必要な本来の処理機能の出力の出力しない方向へのロック、等を行う。また、もし保護リレーや計測装置等に外部への出力が可能な接点を有している場合は、前記入力回路の異常発生と伴って当該接点を動作させることにより、前記入力回路の異常を外部へ通報し、併せて入力回路の異常か電力系統の異常かを区別して表示装置に表示する。
【0031】
図4は、例えば、A/Dコンバータ4の内部回路に異常が発生した場合や、オペアンプにおけるグランド(ア−ス)と信号線とがショ−トした場合の、A/Dコンバータ4の出力をアナログ的に等価表示した波形図で、図示のように、負側に、異常波形が発生しており、この異常波形の発生に伴いCPU7によって前記数式1又は数式2により求められた実効値も相応に減少している。この図4に示すような状態においては、CPU7による演算結果は、判定値Ref1>Σ(i1+i2+・・・・+in)、判定値Ref3>Σ(v1+v2+・・・・+vn)となり、前記数式7、数式8の範囲に入っていないので、CPU7は「入力回路6に異常有り」の判定をし、前述のように、保護リレーや計測装置に付属している表示装置等、電力系統ディジタル処理システムに付属の表示装置(図示省略)へのCPU7の入力回路が異常である旨の表示、ブザ−等の報知装置の作動、電力系統ディジタル処理システムに必要な本来の処理機能の出力の出力しない方向へのロック、等を行う。また、もし保護リレーや計測装置等に外部への出力が可能な接点を有している場合は、前記入力回路の異常発生と伴って当該接点を動作させることにより、前記入力回路の異常を外部へ通報し、併せて入力回路の異常か電力系統の異常かを区別して表示装置に表示する。
【0032】
図5は、例えば、オペアンプのVcc 5Vと信号線とがショ−トした場合の、A/Dコンバータ4の出力をアナログ的に等価表示した波形図で、図示のように、正側に、正弦波形の波高値より高い波高値の異常波形が発生しており、この異常波形の発生に伴いCPU7によって前記数式1又は数式2により求められた実効値は、保護リレ−動作値以上に増加している。この図5に示すような状態においては、CPU7による演算結果は、Σ(i1+i2+・・・・+in)>判定値Ref2、Σ(v1+v2+・・・・+vn)>判定値Ref4となり、前記数式7、数式8の範囲に入っていないので、CPU7は「入力回路6に異常有り」の判定をし、前述のように、保護リレーや計測装置に付属している表示装置等、電力系統ディジタル処理システムに付属の表示装置(図示省略)へのCPU7の入力回路が異常である旨の表示、ブザ−等の報知装置の作動を行わせる。また、保護リレ−の動作出力を出力しないようにロックし、保護リレ−以外についても、電力系統ディジタル処理システムに必要な本来の他のリレ−や測定等の処理機能の出力を出力しない方向へのロック、等を行う。また、もし保護リレーや計測装置等に外部への出力が可能な接点を有している場合は、前記入力回路の異常発生と伴って当該接点を動作させることにより、前記入力回路の異常を外部へ通報し、併せて入力回路の異常か電力系統の異常かを区別して表示装置に表示する。
【0033】
なお、前述の図3及び図4において、前述のこの発明の実施の形態1のように、前記CPU7に前記数式7、数式8の演算及び前記入力回路6の異常の判定機能を設けなかった場合は、前記異常波形が発生することによって実効値が増加したり減少した場合には入力回路6の異常が無いものとして実効値への変換処理が継続実行され、CPU7においては入力回路6の異常により波形異常が発生しているにも拘わらず、当該異常下の実行値に相当する交流波形が入力されたものと認識され、電力系統の状態変化、例えば負荷大或いは小として誤認し、電力系統の状態を正しく把握することが出来ないが、このような不具合は、前述のように、この発明の実施の形態1により解消される。
【0034】
また、前述の図5において、前述のこの発明の実施の形態1のように、前記CPU7に前記数式7、数式8の演算及び前記入力回路6の異常の判定機能を設けなかった場合は、前記異常波形が発生することによって実効値が保護リレ−動作設定値以上に増加した場合には、入力回路6における異常であるにも拘わらず、電力系統の事故と誤認して保護リレ−が動作してしまう危惧があるが、このような危惧は、前述のように、この発明の実施の形態1により解消される。
【0035】
実施の形態2.
前述のこの発明の実施の形態1では、波形一周期(360°)にn回のデータサンプリングを実施している場合について例示したが、正側180°以内、負側180°以内の同一角度範囲(例えば正側0〜90°、負側0〜90°等)について、判定値Ref5<Σ(i1+i2+・・・・+in)<判定値Ref6(数式9)、判定値Ref7<Σ(v1+v2+・・・・+vn)<判定値Ref8(数式8)により入力回路6の異常の判定をするようにしても前述のこの発明の実施の形態1と同等の作用効果がある。なお、この場合、前記判定値Ref5≠前記判定値Ref1、前記判定値Ref6≠前記判定値Ref2、前記判定値Ref7≠前記判定値Ref3、前記判定値Ref8≠前記判定値Ref4であり、前記判定値Ref5、前記判定値Ref6、前記判定値Ref7、及び前記判定値Ref8は、前記判定値Ref1、前記判定値Ref2、前記判定値Ref3、及び前記判定値Ref4と同様に、例えば、前記増幅手段2や前記アナログフィルタ3等で使用しているオペアンプのオフセット誤差や抵抗、コンデンサ等の誤差を考慮して任意に設定する。
【0036】
実施の形態3.
前述のこの発明の実施の形態1では、前記CPU7は、前述のようにサンプルホ−ルド手段5のホ−ルド値に基づいて入力回路6の異常有無を監視する場合について例示したが、サンプルホ−ルド手段5より前段の増幅手段2、アナログフィルタ3、及びA/Dコンバ−タ4の各出力をもCPU7により、前記数式7〜10相当の数式により監視し、増幅手段2、アナログフィルタ3、A/Dコンバ−タ4、及びサンプルホ−ルド手段5の各出力の監視結果を比較することにより、前記入力回路6の内部において前記増幅手段2、アナログフィルタ3、及びA/Dコンバ−タ4、サンプルホ−ルド手段5の何れが異常であるか判別できる。例えば、前記増幅手段2、アナログフィルタ3、A/Dコンバ−タ4、及びサンプルホ−ルド手段5の何れの出力も異常と判定された場合は、前記増幅手段2の異常である、また、例えば、前記増幅手段2、及びアナログフィルタ3の各出力は正常、A/Dコンバ−タ4、及びサンプルホ−ルド手段5の何れの出力も異常と判定された場合は、前記A/Dコンバ−タ4の異常である。これらの判定により、
前記入力回路6の、増幅手段2、アナログフィルタ3、A/Dコンバ−タ4、及びサンプルホ−ルド手段5の何れが異常であるかを表示装置に表示するようにすれば、前記入力回路6の異常時における前記入力回路6のメインテナンスを早く的確に行える。
【0037】
【発明の効果】
この発明は前述のように、電力系統からの交流信号を入力回路で処理して得られたディジタル信号に基づいて電力系統のディジタル処理をCPUにより行う電力系統ディジタル処理システムにおいて、前記入力回路の出力に基づいて前記交流信号の正の領域に対応するディジタル信号と前記交流信号の負の領域に対応するディジタル信号とから前記入力回路内部の異常の有無を検出するようにしたので、安価で平易な方式によりCPUの入力回路の異常を確実に検出でき、ひいては、電力系統ディジタル処理システムにおいて、CPUが、入力回路の異常であるか、電力系統側の異常であるかを的確に判別することが可能となる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1の一例を示すシステム構成図、
【図2】この発明の実施の形態1の動作説明のための電力系統からの入力波形を示す図、
【図3】CPUの入力回路に各種異常状態が発生した場合のこの発明の実施の形態1の作用を説明するための波形図、
【図4】CPUの入力回路に各種異常状態が発生した場合のこの発明の実施の形態1の作用を説明するための波形図、
【図5】CPUの入力回路に各種異常状態が発生した場合のこの発明の実施の形態1の作用を説明するための波形図。
【符号の説明】
1 電力系統からの交流信号入力手段、
6 入力回路、 7 CPU。
【発明の属する技術分野】
この発明は、電力系統からの交流信号を入力回路で処理して得られたディジタル信号に基づいて電力系統のディジタル処理をCPUにより行う電力系統ディジタル処理システムにおける入力回路監視方式に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ディジタル保護リレーにおける保護の動作値、またはディジタル計測装置に置ける計測値の表示等、電力系統ディジタル処理システムにおける処理は実効値を基にしている場合が多く、その場合、従来のディジタル保護リレーまたはディジタル計測装置等、電力系統ディジタル処理システムにおいては、マイクロコンピュータ(以下CPUと略記する)により電力系統からの入力電圧または入力電流の波形についてサンプリング点における電圧値または電流値に対して以下の数式1や数式2を用い、実効値に変換した後に動作値または計測表示値等の演算処理を行っている。
【0003】
irms=Σ(i1 2+i2 2+・・・・+in 2) ・・・・・・・・・・・・・・・(数式1)
vrms=Σ(v1 2+v2 2+・・・・+vn 2) ・・・・・・・・・・・・・・・(数式2)
ただし、波形一周期にn回のデータサンプリングを実施しているものとする。また、irmsは電流の実効値を、vrmsは電圧の実効値を意味する。
【0004】
この方式では、前記CPUまでの入力回路に異常が発生し、当該異常により波形異常が発生しても実効値の変化幅が比較的小さく当該入力回路の異常をCPUが認識できない場合は入力回路の異常が無いものとして実効値への変換処理が継続実行される。つまり、CPUにおいては入力回路の異常により波形異常が発生しているにも拘わらず、当該異常下の実行値に相当する交流波形が入力されたものと認識され、入力回路の異常は検出されないまま、電力系統の状態変化、例えば負荷大或いは小として誤認し、電力系統の状態を正しく把握されない。
【0005】
また、この方式では、前記CPUまでの入力回路に異常が発生し、当該異常による実効値の変化幅が大きく、当該実効値が例えば保護リレ−の動作値より大きくなった場合は、入力回路における異常であるにも拘わらず、電力系統の事故と誤認して保護リレ−が動作してしまう危惧がある。
【0006】
従って、電力系統ディジタル処理システムにおいては、CPUが、入力回路の異常であるか、電力系統側の異常であるかを的確に判別できるようにすることが重要である。
【0007】
ここで、従来におけるCPUの入力側の異常を検出する技術として、例えば、特開平5−161249号公報に記載されたものがあるが、この特開平5−161249号公報に記載の技術は、I11+I12+I13≠0(ただし、I11は3相交流の第1相の相電流、I12は3相交流の第1相の相電流、I13は3相交流の第1相の相電流)を演算部で演算処理して判別し、演算部の入力回路に入力信号を供給するCTの断線を検出するものであり、演算部の入力回路の異常を監視するものではない。
【0008】
マイクロコンピュータのアナログ信号入力系の異常を検出する従来の技術としては、例えば、特開平6−105445号公報に記載されたものがあるが、この特開平6−105445号公報に記載の技術は、点検入力コントロ−ルにより点検信号を電力系統に供給して当該点検信号と電力系統の潮流とを合成し、点検が開始された後、マイクロコンピュータが、点検信号のみから得られた電流I(A)、前記点検信号と前記潮流を含む合成信号から得られた電流I(B)の値が点検開始前より大きい値を示すときにはアナログ信号入力系が正常であると判定し、前記電流I(A)、I(B)の値が点検開始前と同じ値を示すときにはアナログ信号入力系が異常であると判定するものである。
【0009】
【特許文献1】
特開平5−161249号公報(段落番号0009〜0029、図1(a)〜(c))
【特許文献2】
特開平6−105445号公報(段落番号0024、図1〜3)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように、ディジタル保護リレーにおける保護の動作値、またはディジタル計測装置に置ける計測値の表示等、電力系統ディジタル処理システムにおける処理は実効値を基にしている場合が多く、その場合、従来のディジタル保護リレーまたはディジタル計測装置等、電力系統ディジタル処理システムにおいては、CPUにより電力系統からの入力電圧または入力電流の波形についてサンプリング点における電圧値または電流値を実効値に変換した後に動作値または計測表示値等の演算処理を行っている方式では、前記CPUまでの入力回路に異常が発生し、当該異常により波形異常が発生しても実効値の変化幅が比較的小さく当該回路の異常をCPUが認識できない場合は回路の異常が無いものとして実効値への変換処理が継続実行される。つまり、CPUにおいては入力回路の異常により波形異常が発生しているにも拘わらず、当該異常下の実行値に相当する交流波形が入力されたものと認識され、入力回路の異常は検出されないまま、電力系統の状態変化、例えば負荷大或いは小として誤認し、電力系統の状態を正しく把握されない。また、この方式では、前記CPUまでの入力回路に異常が発生し、当該異常による実効値の変化幅が大きく、当該実効値が例えば保護リレ−の動作値より大きくなった場合は、入力回路における異常であるにも拘わらず、電力系統の事故と誤認して保護リレ−が動作してしまう危惧がある。従って、電力系統ディジタル処理システムにおいては、CPUが、入力回路の異常であるか、電力系統側の異常であるかを的確に判別できるようにすることが重要である。
【0011】
従来におけるCPUの入力側の異常を検出する技術として、例えば、前記特許文献1に記載されたものがあるが、前述のように、演算部の入力回路に入力信号を供給するCTの断線を検出するものであり、演算部の入力回路そのものの異常を監視する技術についてはこの公報では言及されていない。
【0012】
ここで、前述のように、マイクロコンピュータのアナログ信号入力系の異常を検出する従来の技術としては、前述のように、前記特許文献1の公開後に公開された前記特許文献2に記載されたものがあるが、この特許文献2に記載の技術は、点検入力コントロ−ルにより点検信号を電力系統に供給して当該点検信号と電力系統の潮流とを合成し、点検が開始された後、マイクロコンピュータが、点検信号のみから得られた電流I(A)、前記点検信号と前記潮流を含む合成信号から得られた電流I(B)の値が点検開始前より大きい値を示すときにはアナログ信号入力系が正常であると判定し、前記電流I(A)、I(B)の値が点検開始前と同じ値を示すときにはアナログ信号入力系が異常であると判定するものであるため、点検入力用電源回路、点検入力用電源回路のON/OFF用スイッチ、点検入力コントロ−ルによる点検信号を電力系統信号系に供給して当該点検信号と電力系統の潮流とを合成する加算器等を設け、点検入力コントロ−ルをする必要があり、構成が複雑で且つ高価なものとなる。
【0013】
この発明は、前述のような実情に鑑みてなされたもので、安価で平易な方式によりCPUの入力回路の異常を確実に検出できるようにすることを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る電力系統ディジタル処理システムの入力回路監視方式は、電力系統からの交流信号を入力回路で処理して得られたディジタル信号に基づいて電力系統のディジタル処理をCPUにより行う電力系統ディジタル処理システムにおいて、前記入力回路の出力に基づいて前記交流信号の正の領域に対応するディジタル信号と前記交流信号の負の領域に対応するディジタル信号とから前記入力回路内部の異常の有無を検出するものである。
【0015】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図1〜図5により説明する。図1はこの発明の実施の形態1を示す電力系統ディジタル処理システムの構成図、図2は動作説明のための電力系統からの入力波形を示す図、図3〜図5はCPUの入力回路に各種異常状態が発生した場合のこの発明の実施の形態1の作用を説明するための波形図である。
【0016】
図1の電力系統ディジタル処理システムは、電力系統(図示省略)から交流信号を入力するCT(変流器)やVT(計器用変圧器)等の交流信号入力手段1と、この交流信号入力手段1から入力された交流信号の振幅を任意の大きさに変化させるオペアンプ等の増幅手段2と、この増幅手段2の中から基本波正分を抽出するアナログフィルタ3と、このアナログフィルタ3からの出力信号をディジタル信号に変換するアナログ−ディジタル変換手段(以下A/Dコンバータと略記する)4と、このディジタル変換手段4からの出力信号を指定のタイミングで順次サンプリングすると共にサンプリングにより得られた信号をホールドするサンプルホールド手段5と、このサンプルホールド手段5でホ−ルドされたディジタル信号に基づいて入力回路6の異常を監視するCPU7と、で構成してある。
【0017】
前記入力回路6は、前記増幅手段2と、前記アナログフィルタ3と、A/Dコンバータ4と、サンプルホールド手段5とから成っている。
【0018】
CPU7は、サンプルホールド手段5によりサンプリングされた電流、電圧等の電気量の交流波形のデ−タから、電力系統の各種状態の計測や電力系統の保護に使用する実効値算出処理に加えて、そのサンプリングされたデータの和を算出する処理を実行し、加算された値が零以外の場合は前記入力回路6の内部回路に異常があると判定する。この判定の概念を以下に詳述する。
【0019】
電力系統から入力手段1を介して入力された電圧や電流などの入力交流波形は、図2に示すように0レベルを中心として正側及び負側に変化する正弦波となっている。従って一周期分のサンプリングされたデータを全て加算すると理論的には0となる。つまり次の式が成立する。
【0020】
Σ(i1+i2+・・・・+in)=0・・・・・・・・・・・・・・・・・(数式3)
Σ(v1+v2+・・・・+vn)=0・・・・・・・・・・・・・・・・・(数式4)
ただし、波形一周期(360°)にn回のデータサンプリングを実施しているものとする。また、i1・・・・in、及びv1・・・・vnは、それぞれサンプリングされた電流および電圧の値である。
【0021】
これに対して、前記入力回路6の内部回路に異常が発生した場合は、前記入力波形が異常となり、正または負に偏るため、上記の数式3及び数式4は成立せず次の式が成立する。
【0022】
Σ(i1+i2+・・・・+in)≠0・・・・・・・・・・・・・・・・・(数式5)
Σ(v1+v2+・・・・+vn)≠0・・・・・・・・・・・・・・・・・(数式6)
ただし、波形一周期(360°)にn回のデータサンプリングを実施しているものとする。また、i1・・・・in、及びv1・・・・vnは、それぞれサンプリングされた電流および電圧の値である。
【0023】
実際の電力系統ディジタル処理システムへの適用においては、例えば、増幅手段2やアナログフィルタ3で使用しているオペアンプのオフセット誤差や抵抗、コンデンサの誤差が存在するため、前記入力回路6の内部回路に異常が発生した場合に、前記数式5及び数式6の通りには必ずしも成立しない。従って、実際の電力系統ディジタル処理システムへの適用においては、判定基準を設け、前記数式5及び数式6の左辺がその範囲内であれば前記入力回路6を経由した信号波形は正常であるとする必要がある。
【0024】
実際の電力系統ディジタル処理システムへ適用した場合における前記入力回路6の異常判定の式は、例えば以下の数式7及び数式8のようにするのが好ましい。
判定値Ref1<Σ(i1+i2+・・・・+in)<判定値Ref2・・・・・・・(数式7)
判定値Ref3<Σ(v1+v2+・・・・+vn)<判定値Ref4・・・・・・・(数式8)
ただし、波形一周期(360°)にn回のデータサンプリングを実施しているものとする。i1・・・・in、及びv1・・・・vnは、それぞれサンプリングされた電流および電圧の値である。また、前記判定値Ref1,Ref2,Ref3,Ref4は、例えば、前記増幅手段2や前記アナログフィルタ3等で使用しているオペアンプのオフセット誤差や抵抗、コンデンサ等の誤差を考慮して任意に設定した値である。
【0025】
なお、数式7、数式8において、前記判定値Ref1と判定値Ref2の各絶対値は同じ値としてもよく、前記判定値Ref3と判定値Ref4の各絶対値は同じ値としてもよい。また電流波形と電圧波形の前記判定値を同じとしてもよい。
【0026】
前記CPU7は、前記数式7、数式8の範囲に入っておれば入力波形は正常、前記数式7、数式8の範囲に入っていなければ入力波形は異常と判定する。前記CPU7は、この判定を一周期(360°)毎に実施し、異常と判定した場合は、保護リレーや計測装置に付属している表示装置等、電力系統ディジタル処理システムに付属の表示装置(図示省略)へのCPU7の入力回路が異常である旨の表示、ブザ−等の報知装置の作動、電力系統ディジタル処理システムに必要な本来の処理機能の出力のロック、等を行う。また、もし保護リレーや計測装置等に外部への出力が可能な接点を有している場合は、前記入力回路の異常発生と伴って当該接点を動作させることにより、前記入力回路の異常を外部へ通報し、併せて入力回路の異常か電力系統の異常かを区別して表示装置に表示するようにしてもよい。
【0027】
また、実際の電力系統ディジタル処理システムへの適用においては、外乱等により入力波形が一時的に変動することも考えられるため、連続した数周期分の波形について前記判定を実施し、連続して前記数式7、数式8の範囲に入っていな場合に波形の異常を確定させるほうが好ましい。
【0028】
なお、CPU7の入力回路の異常により入力波形が異常となる要因としては、例えば次のようなものが考えられる。
1.増幅手段2のオペアンプの断線や内部短絡等の内部回路異常、
2.アナログフィルタ3のオペアンプの断線や内部短絡等の内部回路異常、
3.A/Dコンバータ4の断線や内部短絡等の内部回路異常、
4.サンプルホールド手段5に使用するICの内部回路の断線や内部短絡等の内部回路異常、
5.増幅手段2、アナログフィルタ3、A/Dコンバータ4、及びサンプルホールド手段5で使用されているコンデンサの温度による劣化。
【0029】
次に、図3〜図5により、CPU7の入力回路6に各種異常状態が発生した場合のこの発明の実施の形態1の作用を説明する。
【0030】
図3は、例えば、A/Dコンバータ4の内部回路に異常が発生した場合の、A/Dコンバータ4の出力をアナログ的に等価表示した波形図で、図示のように、正側に、正弦波形の波高値と同じ程度の波高値の異常波形が発生しており、この異常波形の発生に伴いCPU7によって前記数式1又は数式2により求められた実効値も相応に増加している。この図3に示すような状態においては、CPU7による演算結果は、Σ(i1+i2+・・・・+in)>判定値Ref2、Σ(v1+v2+・・・・+vn)>判定値Ref4となり、前記数式7、数式8の範囲に入っていないので、CPU7は「入力回路6に異常有り」の判定をし、前述のように、保護リレーや計測装置に付属している表示装置等、電力系統ディジタル処理システムに付属の表示装置(図示省略)へのCPU7の入力回路が異常である旨の表示、ブザ−等の報知装置の作動、電力系統ディジタル処理システムに必要な本来の処理機能の出力の出力しない方向へのロック、等を行う。また、もし保護リレーや計測装置等に外部への出力が可能な接点を有している場合は、前記入力回路の異常発生と伴って当該接点を動作させることにより、前記入力回路の異常を外部へ通報し、併せて入力回路の異常か電力系統の異常かを区別して表示装置に表示する。
【0031】
図4は、例えば、A/Dコンバータ4の内部回路に異常が発生した場合や、オペアンプにおけるグランド(ア−ス)と信号線とがショ−トした場合の、A/Dコンバータ4の出力をアナログ的に等価表示した波形図で、図示のように、負側に、異常波形が発生しており、この異常波形の発生に伴いCPU7によって前記数式1又は数式2により求められた実効値も相応に減少している。この図4に示すような状態においては、CPU7による演算結果は、判定値Ref1>Σ(i1+i2+・・・・+in)、判定値Ref3>Σ(v1+v2+・・・・+vn)となり、前記数式7、数式8の範囲に入っていないので、CPU7は「入力回路6に異常有り」の判定をし、前述のように、保護リレーや計測装置に付属している表示装置等、電力系統ディジタル処理システムに付属の表示装置(図示省略)へのCPU7の入力回路が異常である旨の表示、ブザ−等の報知装置の作動、電力系統ディジタル処理システムに必要な本来の処理機能の出力の出力しない方向へのロック、等を行う。また、もし保護リレーや計測装置等に外部への出力が可能な接点を有している場合は、前記入力回路の異常発生と伴って当該接点を動作させることにより、前記入力回路の異常を外部へ通報し、併せて入力回路の異常か電力系統の異常かを区別して表示装置に表示する。
【0032】
図5は、例えば、オペアンプのVcc 5Vと信号線とがショ−トした場合の、A/Dコンバータ4の出力をアナログ的に等価表示した波形図で、図示のように、正側に、正弦波形の波高値より高い波高値の異常波形が発生しており、この異常波形の発生に伴いCPU7によって前記数式1又は数式2により求められた実効値は、保護リレ−動作値以上に増加している。この図5に示すような状態においては、CPU7による演算結果は、Σ(i1+i2+・・・・+in)>判定値Ref2、Σ(v1+v2+・・・・+vn)>判定値Ref4となり、前記数式7、数式8の範囲に入っていないので、CPU7は「入力回路6に異常有り」の判定をし、前述のように、保護リレーや計測装置に付属している表示装置等、電力系統ディジタル処理システムに付属の表示装置(図示省略)へのCPU7の入力回路が異常である旨の表示、ブザ−等の報知装置の作動を行わせる。また、保護リレ−の動作出力を出力しないようにロックし、保護リレ−以外についても、電力系統ディジタル処理システムに必要な本来の他のリレ−や測定等の処理機能の出力を出力しない方向へのロック、等を行う。また、もし保護リレーや計測装置等に外部への出力が可能な接点を有している場合は、前記入力回路の異常発生と伴って当該接点を動作させることにより、前記入力回路の異常を外部へ通報し、併せて入力回路の異常か電力系統の異常かを区別して表示装置に表示する。
【0033】
なお、前述の図3及び図4において、前述のこの発明の実施の形態1のように、前記CPU7に前記数式7、数式8の演算及び前記入力回路6の異常の判定機能を設けなかった場合は、前記異常波形が発生することによって実効値が増加したり減少した場合には入力回路6の異常が無いものとして実効値への変換処理が継続実行され、CPU7においては入力回路6の異常により波形異常が発生しているにも拘わらず、当該異常下の実行値に相当する交流波形が入力されたものと認識され、電力系統の状態変化、例えば負荷大或いは小として誤認し、電力系統の状態を正しく把握することが出来ないが、このような不具合は、前述のように、この発明の実施の形態1により解消される。
【0034】
また、前述の図5において、前述のこの発明の実施の形態1のように、前記CPU7に前記数式7、数式8の演算及び前記入力回路6の異常の判定機能を設けなかった場合は、前記異常波形が発生することによって実効値が保護リレ−動作設定値以上に増加した場合には、入力回路6における異常であるにも拘わらず、電力系統の事故と誤認して保護リレ−が動作してしまう危惧があるが、このような危惧は、前述のように、この発明の実施の形態1により解消される。
【0035】
実施の形態2.
前述のこの発明の実施の形態1では、波形一周期(360°)にn回のデータサンプリングを実施している場合について例示したが、正側180°以内、負側180°以内の同一角度範囲(例えば正側0〜90°、負側0〜90°等)について、判定値Ref5<Σ(i1+i2+・・・・+in)<判定値Ref6(数式9)、判定値Ref7<Σ(v1+v2+・・・・+vn)<判定値Ref8(数式8)により入力回路6の異常の判定をするようにしても前述のこの発明の実施の形態1と同等の作用効果がある。なお、この場合、前記判定値Ref5≠前記判定値Ref1、前記判定値Ref6≠前記判定値Ref2、前記判定値Ref7≠前記判定値Ref3、前記判定値Ref8≠前記判定値Ref4であり、前記判定値Ref5、前記判定値Ref6、前記判定値Ref7、及び前記判定値Ref8は、前記判定値Ref1、前記判定値Ref2、前記判定値Ref3、及び前記判定値Ref4と同様に、例えば、前記増幅手段2や前記アナログフィルタ3等で使用しているオペアンプのオフセット誤差や抵抗、コンデンサ等の誤差を考慮して任意に設定する。
【0036】
実施の形態3.
前述のこの発明の実施の形態1では、前記CPU7は、前述のようにサンプルホ−ルド手段5のホ−ルド値に基づいて入力回路6の異常有無を監視する場合について例示したが、サンプルホ−ルド手段5より前段の増幅手段2、アナログフィルタ3、及びA/Dコンバ−タ4の各出力をもCPU7により、前記数式7〜10相当の数式により監視し、増幅手段2、アナログフィルタ3、A/Dコンバ−タ4、及びサンプルホ−ルド手段5の各出力の監視結果を比較することにより、前記入力回路6の内部において前記増幅手段2、アナログフィルタ3、及びA/Dコンバ−タ4、サンプルホ−ルド手段5の何れが異常であるか判別できる。例えば、前記増幅手段2、アナログフィルタ3、A/Dコンバ−タ4、及びサンプルホ−ルド手段5の何れの出力も異常と判定された場合は、前記増幅手段2の異常である、また、例えば、前記増幅手段2、及びアナログフィルタ3の各出力は正常、A/Dコンバ−タ4、及びサンプルホ−ルド手段5の何れの出力も異常と判定された場合は、前記A/Dコンバ−タ4の異常である。これらの判定により、
前記入力回路6の、増幅手段2、アナログフィルタ3、A/Dコンバ−タ4、及びサンプルホ−ルド手段5の何れが異常であるかを表示装置に表示するようにすれば、前記入力回路6の異常時における前記入力回路6のメインテナンスを早く的確に行える。
【0037】
【発明の効果】
この発明は前述のように、電力系統からの交流信号を入力回路で処理して得られたディジタル信号に基づいて電力系統のディジタル処理をCPUにより行う電力系統ディジタル処理システムにおいて、前記入力回路の出力に基づいて前記交流信号の正の領域に対応するディジタル信号と前記交流信号の負の領域に対応するディジタル信号とから前記入力回路内部の異常の有無を検出するようにしたので、安価で平易な方式によりCPUの入力回路の異常を確実に検出でき、ひいては、電力系統ディジタル処理システムにおいて、CPUが、入力回路の異常であるか、電力系統側の異常であるかを的確に判別することが可能となる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1の一例を示すシステム構成図、
【図2】この発明の実施の形態1の動作説明のための電力系統からの入力波形を示す図、
【図3】CPUの入力回路に各種異常状態が発生した場合のこの発明の実施の形態1の作用を説明するための波形図、
【図4】CPUの入力回路に各種異常状態が発生した場合のこの発明の実施の形態1の作用を説明するための波形図、
【図5】CPUの入力回路に各種異常状態が発生した場合のこの発明の実施の形態1の作用を説明するための波形図。
【符号の説明】
1 電力系統からの交流信号入力手段、
6 入力回路、 7 CPU。
Claims (2)
- 電力系統からの交流信号を入力回路で処理して得られたディジタル信号に基づいて電力系統のディジタル処理をCPUにより行う電力系統ディジタル処理システムにおいて、前記入力回路の出力に基づいて前記交流信号の正の領域に対応するディジタル信号と前記交流信号の負の領域に対応するディジタル信号とから前記入力回路内部の異常の有無を検出することを特徴とする電力系統ディジタル処理システムの入力回路監視方式。
- 請求項1に記載の電力系統ディジタル処理システムの入力回路監視方式において、前記交流信号の正の領域に対応するディジタル信号と前記交流信号の負の領域に対応するディジタル信号との和の値が所定範囲を超えたかどうかを判別して前記入力回路内部の異常の有無を検出することを特徴とする電力系統ディジタル処理システムの入力回路監視方式。
Priority Applications (1)
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